(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】MNK1及びMNK2を阻害する多環式化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 471/22 20060101AFI20230728BHJP
A61K 31/4375 20060101ALI20230728BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230728BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230728BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
C07D471/22 CSP
A61K31/4375
A61P43/00 105
A61P35/00
A61P35/02
(21)【出願番号】P 2021538117
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 CN2019123077
(87)【国際公開番号】W WO2020155842
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-08-24
(31)【優先権主張番号】201910087247.4
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521281896
【氏名又は名称】諾沃斯達薬業(上海)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】李 兵
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-519782(JP,A)
【文献】国際公開第2017/087808(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/152117(WO,A1)
【文献】特表2007-504205(JP,A)
【文献】特表2018-533581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、
Aは、-CH-であり;
Xは、-C(=O)-、-CH
2-、-CD
2-からなる群より選択され;
Yは、-NH-であり;
W
1及びW
2は、Oであり;
R
1は、水素であり;
nは、1であり;
R
2及びR
3は、それぞれ独立に、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C6-C10アリールからなる群より選択されるか;あるいは、R
2及びR
3は、それらに結合した炭素原子とともに、C3-C10単環式アルキル、N、O、若しくはS原子を1~3個含む5~12員複素単環式アルキルからなる群より選択される基を形成し;
R
4は、C1-C4アルキルであり;
R
5は、-H、-NHC(O)R
10、-N(R
10)
2、C1-C8アルキルからなる群より選択され;
R
6は、水素であり;
R
10は、-H、C1-C8アルキル、-O(C1-C8アルキル)、C3-C8シクロアルキルからなる群より選択され;
上記アルキル、アリール、ヘテロシクリルはそれぞれ、1、2、又は3個のJ基で置換されていてもよく、上記J基は、ヒドロキシ、ハロゲン、C1-C4アルキルからなる群より選択される)
で表される化合物、又はその立体異性体、互変異性体、溶媒和物、水和物、安定同位体誘導体、若しくは薬学的に許容される塩。
【請求項2】
R
4は、メチルであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
5は、-H、-NH
2
、メチルからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R
2及びR
3は、それぞれ独立に、メチル、ビニリデン、フェニル、クロロフェニル、フルオロフェニルからなる群より選択されるか;あるいは、R
2及びR
3は、それらに結合した炭素原子とともに、シクロペンチル環、シクロヘキシル環からなる群より選択される環を形成することを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
【化2-1】
【化2-2】
【化2-3】
からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
(i)請求項1~5のいずれかに記載の化合物、又はその立体異性体、互変異性体、溶媒和物、水和物、安定同位体誘導体、若しくは薬学的に許容される塩を治療有効量で含み、必要に応じて(ii)薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項7】
MNKの活性又は発現量が関与する疾患又は障害の治療に使用されることを特徴とする請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
MNKの活性又は発現量が関与する疾患又は障害を治療又は予防するのに使用される請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物、又はその立体異性体、互変異性体、溶媒和物、水和物、安定同位体誘導体、若しくは薬学的に許容される塩。
【請求項9】
上記疾患又は障害は、大腸がん、胃がん、甲状腺がん、肺がん、胆管細胞がん、肝臓がん、食道がん、膀胱がん、尿路上皮がん、子宮頸がん、白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、毛様細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、膵臓がん、メラノーマ、多発性骨髄腫、脳がん、中枢神経系がん、頭頸部がん、腎臓がん、前立腺がん、卵巣がん、乳がん、骨がん、制御不能な細胞成長、増殖、及び/又は生存、不適切な細胞性免疫反応、不適切な細胞性炎症反応、白血病及び骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫、頭頸部腫瘍、肺腫瘍及び肺転移性腫瘍、胸部腫瘍、非小細胞腫瘍及び小細胞肺腫瘍、胃腸腫瘍、内分泌腫瘍、乳腺腫瘍等の婦人科系腫瘍、泌尿器腫瘍、腎臓、膀胱、及び前立腺腫瘍、皮膚腫瘍、肉腫、腫瘍転移、自己免疫疾患、神経変性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、並びに神経障害性疼痛からなる群より選択されることを特徴とする請求項8に記載の化合物、又はその立体異性体、互変異性体、溶媒和物、水和物、安定同位体誘導体、若しくは薬学的に許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、MAPキナーゼ相互作用キナーゼ(MNK)(MNK1及びMNK2等)を阻害する活性を有する化合物、及びその組成物に関する。上記化合物は、増殖性疾患(がん等)、炎症性疾患、及びアルツハイマー病等の神経変性疾患等の各種疾患の治療において医療用途に使用可能である。
【背景技術】
【0002】
本開示は、MAPキナーゼ相互作用セリン/スレオニン-タンパク質キナーゼ(MNK)の酵素活性を阻害する化合物に関する。MNKタンパク質は、MNK1及びMNK2を生成するMKNK1及びMKNK2という2つの遺伝子でコードされる。両タンパク質は、選択的スプライシングで生成される2つのサブタイプを有する。短いサブタイプはMNK1b/2bと呼ばれ、低基礎活性をもたらすMAPキナーゼ結合領域を有していない。MNK1aはERK及びp38で活性化する一方、MNK2aはERKのみで活性化されるようである。
【0003】
MNK1及びMNK2の触媒領域は極めて類似している。これらの領域は、ATP結合部位において典型的なDFGモチーフではなくDFDモチーフを呈示することから、他のキナーゼとは大きく異なっており、これは変化した活性化ループの存在を示している。一般に、MNK1/2は、リン酸化真核生物翻訳開始因子4E(eIF4E)、細胞質ホスホリパーゼA2(cPLA2)、異種核RNA結合タンパク質A1(hnRNP A1)、ポリピリミジントラクト結合タンパク質関連スプライシング因子(PSF)、及びSprouty2(hSPRY2)によって発現される。
【0004】
MNKは、eIF4Eのリン酸化を介してがんと関連する。eIF4Eは、がんにおいて増幅され、MNKのみによってリン酸化される癌遺伝子である。eIF4Eが過剰発現又は過剰活性化された場合、その量が増大する。大腸がん、乳がん、膀胱がん、肺がん、前立腺がん、胃腸がん、頭頚部がん、ホジキンリンパ腫、及び神経芽腫等、多くの種類の腫瘍及びがん細胞株においてeIF4E量の増大が見られる。eIF4Eのリン酸化によって、細胞生存、血管新生、及びがん転移に関与するmRNAの翻訳が最適化される。eIF4F複合体の一部としてのeIF4Eは、翻訳速度を制御する限定要因であり、従って、eIF4EはmRNA翻訳の重要な制御因子である。MNK活性はeIF4E介在性がん化に必要であるが、正常発生には必要とされない点は注目に値する。従って、MNKの薬理的阻害は、がんに対する魅力的な治療戦略である。
【0005】
MNKの構造及び機能に対する理解は進んでいるが、MNK阻害剤として報告されているものは比較的少なく、CGP052088、CGP57380、及びセルコスポラミド等が挙げられる。これらの化合物は主としてMNKターゲットバリデーションに使用されるが、臨床応用に欠けている。従って、この分野ではいくらかの進歩はあるものの、MNKキナーゼの活性を特異的に阻害できるMNK阻害剤化合物、特にがん経路を制御できるものに対して、依然としてこの分野では大きなニーズがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願は、様々な疾患の治療において医療用途に使用可能なMNK阻害剤化合物を提供することを目的とする。
【0007】
本出願の第1の態様によれば、式(I):
【化1】
(式中、
Aは、-N-又は-CR
7-であり;
Xは、-(CR
1aR
1b)
p-M-(CR
2aR
2b)
q-(式中、Mは化学結合であるか、あるいは-N(R
9)-、-O-、-S-、-C(O)-、-S=O、-S(O)
2-、-C(O)NH-、-C(=CH
2)-、又は-NHC(O)-からなる群より選択される)であり;
p及びqは、それぞれ独立に、0、1、又は2であり;
Yは、-N(R
8)-、-O-、-S-、-C(O)-、-S=O、-S(O)
2-、又は-CHR
9-からなる群より選択され;
W
1及びW
2は、独立に、O、S、又はN-OR’(式中、R’は水素又はC1-C8アルキルである)からなる群より選択され;
R
1は、水素、-OH、アセチル、C1-C8アルキル、-C(O)(C1-C8アルキル)、-C(O)(C3-C8シクロアルキル)、-COOH、-C(O)O-(C1-C8)アルキル、C3-C8シクロアルキル、5~12員アリール、5~12員ヘテロアリール、又は5~12員ヘテロシクリルからなる群より選択され;
nは、1、2、又は3であり;
R
2及びR
3は、それぞれ独立に、水素、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、C6-C10アリール、5~12員ヘテロアリール、C1-C4アルキレン-5~12員ヘテロアリール、C3-C8シクロアルキル、C1-C4アルキレン-(C3-C8)シクロアルキル、5~12員ヘテロシクリル、C1-C4アルキレン-5~12員ヘテロシクリルからなる群より選択されるか;あるいは、R
2及びR
3は、それらに結合した炭素原子とともに、C3-C10単環式アルキル、C3-C10二環式若しくは多環式アルキル、N、O、若しくはS原子を1~3個含む5~12員複素単環式アルキル、N、O、若しくはS原子を1~3個含む5~12員複素二環式若しくは複素多環式アルキルからなる群より選択される基を形成し;置換された単環式アルキル、二環式若しくは多環式アルキル、又は置換された複素単環式アルキル、置換された複素二環式若しくは複素多環式アルキルは、不飽和二重結合又は三重結合を1~3個含み;置換された単環式アルキル、置換された二環式若しくは多環式アルキル、又は置換された複素単環式アルキル、置換された複素二環式若しくは複素多環式アルキルは、任意の位置において、重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、複素環式アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、アリール、ヘテロアリール、-SR
3a、-N(R
3b)
2、-S(O)
2N(R
3b)
2、-NR
3bC(O)N(R
3b)
2、-NR
3bC(O)R
3a、-C(O)R
3a、-S(O)
0-2R
3a、-C(O)OR
3b、-(CH
2)
uOH、又は-(CH
2)
uN(R
3b)
2からなる群より選択される1個以上の基で置換されており;
R
1a、R
1b、R
2a、及びR
2bは、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、-SH、ヒドロキシ-(C1-C4)アルキレン、シアノ、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシからなる群より選択され;
R
3a及びR
3bは、それぞれ独立に、水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、複素環式アルキル、アリール、ヘテロアリール、(複素環式アルキル)アルキル、(シクロアルキル)アルキル、アリールアルキル、又はアリールアルキルからなる群より選択されるか、あるいは、2つのR
bは、それらに結合したN原子とともに3~8員複素単環式アルキルを形成し;
R
4は、独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、-SH、ヒドロキシ-(C1-C4)アルキレン、シアノ、C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、C1-C4アルコキシ、C1-C4ハロアルコキシ、-C(O)(C1-C8アルキル)、-C(O)(C3-C8シクロアルキル)、-COOH、-C(O)O-(C1-C8)アルキル、-S(C1-C8アルキル)、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、C3-C8シクロアルキル、C6-C10アリール、5~12員ヘテロアリール、又は5~12員ヘテロシクリルからなる群より選択され;
R
5、R
6、及びR
7は、それぞれ独立に、-H、-OH、-CN、-SR
10、ハロゲン、-S(O)
2(C1-C8)アルキル、-NH-S(O)
2(C1-C8)アルキル、-C(O)N(R
10)
2、-NHC(O)R
10、-N(R
10)
2、-(C1-C4アルキレン)N(R
10)
2、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、C1-C8ハロアルキル、-O(C1-C8アルキル)、-O(C1-C8ハロアルキル)、-O(C1-C8アルキレン)NHR
10、-O(C1-C8アルキレン)N(R
10)
2、C6-C10アリール、5~12員ヘテロアリール、C1-C4アルキレン-5~12員ヘテロアリール、C3-C8単環式アルキル、C3-C10二環式若しくは多環式アルキル、C1-C4アルキレン-(C3-C8)シクロアルキル、5~12員ヘテロシクリル、C1-C4アルキレン-5~12員ヘテロシクリルからなる群より選択されるか;あるいは、R
5及びR
7は、それらに結合した炭素原子とともに、C6-C10アリール、5~12員ヘテロアリール、C3-C8シクロアルキル、5~12員ヘテロシクリルを形成し;
R
10は、-H、-OH、-C(O)O(C1-C8アルキル)、-C(O)(C1-C8アルキル)、-C(O)-NH
2、-C(O)-NH(C1-C8アルキル)、-NH-(C1-C8アルキル)、-NH-C(O)(C1-C8アルキル)、NH
2-C(O)-(C1-C4アルキレン)、-S(C1-C8アルキル)、アセチル、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、-O(C1-C8アルキル)、-(C1-C8ハロアルキル)、C1-C8アルキルアミノ、-C(O)(C1-C8アルキル)、-C(O)(C3-C8シクロアルキル)、-C(O)O-(C1-C8アルキル)、C3-C8シクロアルキル、C6-C10アリール、5~12員ヘテロアリール、又は5~12員ヘテロシクリルからなる群より選択され;
上記アルキル、アルキレン、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アミノはそれぞれ、1、2、又は3個のJ基で置換されていてもよく、上記J基は、-SR
9、-S(O)R
9、-S(O)
2R
9、-S(O)N(R
9)
2、-N(R
9)
2、-C(O)OR
9、-C(O)R
9、-C(O)-N(R
9)
2、ヒドロキシ、シアノ、ハロゲン、アセチル、C1-C4アルキル、C2-C4アルケニル、C2-C4アルキニル、C1-C4アルコキシ、ハロアルキル、-S-(C1-C4アルキル)、シアノ-(C1-C4アルキレン)、C1-C4アルキルアミノ、NH
2-C(O)-(C1-C4)アルキレン、N(R
9)
2-C(O)-(C1-C4)アルキレン、-CHR
9-C(O)-(C1-C4)アルキル、-C(O)-(C1-C4)アルキル、5~12員ヘテロシクリル、C1-C4アルキレン-5~12員ヘテロシクリル、C3-C8シクロアルキル、C1-C4アルキレン-(C3-C8)シクロアルキル、C2-C4アルキレン-(C3-C8)シクロアルキル、-CHR
9-C(O)-(C3-C8)シクロアルキル、-C(O)-(C3-C8)シクロアルキル、-CHR
9-C(O)-(C6-C10)アリール、-CHR
9-(C6-C10)アリール、-C(O)-(C6-C10)アリール、-CHR
9-C(O)-5~12員ヘテロシクリル、-C(O)-5~12員ヘテロシクリルからなる群より選択されるか;あるいは、2個のJ基が同じ原子に結合してオキソ(=O)を形成し;
R
8及びR
9は、水素、C1-C4アルキル、ヒドロキシ-(C1-C4)アルキル、C3-C8シクロアルキル、5~12員ヘテロシクリル、-NH
2、又は-OHである)
で表される化合物、又はその立体異性体、互変異性体、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、安定同位体誘導体、若しくは薬学的に許容される塩が提供される。
【0008】
別の好ましい例において、nは1であり、Yは-N(R8)-である。
【0009】
別の好ましい例において、Xは、-C(=O)-、-CH2-、-CD2-、-C(=CH2)-、-CH(OH)-、-CH(CH3)-、又は-CF2-からなる群より選択される。
【0010】
別の好ましい例において、W1及びW2はOである。
【0011】
別の好ましい例において、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、ビニリデン、プロピニリデン、2-メチル-1-プロペニリデン、ベンジル、フルオロベンジル、クロロベンジル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ジフルオロシクロヘキシル、トリフルオロメチル、1,1,1-トリフルオロエテニル、チエニル、チアゾリル、メチレンニトリル、クロロフェニル、フルオロフェニル、フルオロクロロフェニル、ジフルオロフェニル、ピリジル、メチルピリジル、クロロピリジル、N-メチルアミノメチレン、アミノメチレン、1-アミノエテニル、メチルアミノメチレン、1-ヒドロキシエテニル、又は1,1-ジフルオロエテニルからなる群より選択されるか;あるいは、R
2及びR
3は、それらに結合した炭素原子とともに、シクロプロピル環、シクロブチル環、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、ビシクロ[2.2.2]オクタン環、ノルボルネオール環、又は
【化2】
からなる群より選択される環を形成する。
【0012】
別の好ましい例において、R2及びR3がそれらに結合した炭素原子とともに形成する環は、ハロゲン、ヒドロキシ、又はトリフルオロメチルからなる群より選択される置換基で置換されている。
【0013】
別の好ましい例において、R2及びR3は、それぞれ独立に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、トリフルオロメチル、1,1,1-トリフルオロエテニル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ジフルオロシクロヘキシル、クロロフェニル、又はフルオロフェニルである。
【0014】
別の好ましい例において、nは1であり、R2及びR3は、それらに結合した炭素原子とともにシクロアルキル又は複素環を形成し、それらは1、2、又は3個のJ基で置換されていてもよい。
【0015】
別の好ましい例において、R2及びR3は、それらに結合した炭素原子とともに複素環を形成し、該複素環は、ハロゲン、-CN、ヒドロキシ、N-メチルアミノ、メチル、ジフルオロエテニル、及びメチレンニトリルからなる群より選択される1、2、又は3個の基で置換されていてもよい。
【0016】
別の好ましい例において、上記ヘテロシクリルは、少なくとも2個のJ基によって同じ原子上で置換されており、該少なくとも2個のJ基はともにオキソを形成する。
【0017】
別の好ましい例において、AがC(R7)の場合、R7及びR5は、それらに結合した原子とともにヘテロアリール縮合環を形成し、該環は、1、2、又は3個のJ基で置換されていてもよい。
【0018】
別の好ましい例において、R4は水素、ハロゲン、又はアルキルから選択される。
【0019】
別の好ましい例において、YがN(R8)の場合、R8は水素である。
【0020】
別の好ましい例において、R6は水素である。
【0021】
別の好ましい例において、R5は、アミノ、C1-C8アルキル、ハロゲン、C3-C8シクロアルキルカルボニルアミン、5~12員ヘテロシクリルアミン、ヒドロキシ-(C1-C4アルキレン)、又はC3-C8シクロアルキル-(C1-C4アルキレン)からなる群より選択される。
【0022】
別の好ましい例において、Aが-CR7の場合、R7は、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、C1-C8ハロアルキル、-O(C1-C8アルキル)、C1-C4アルキレン-5~12員ヘテロアリール、C3-C8シクロアルキル、C1-C4アルキレン-(C3-C8)シクロアルキル、5~12員ヘテロシクリル、C1-C4アルキレン-5~12員ヘテロシクリルである。
【0023】
別の好ましい例において、Aは-N-又は-CR7であり、Aが-CR7の場合、R7はヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、メチル、又はエチルである。
【0024】
別の好ましい例において、上記化合物は、以下からなる群より選択される。
【化3-1】
【化3-2】
【化3-3】
【化3-4】
【化3-5】
【化3-6】
【化3-7】
【0025】
本出願の第2の態様は、(i)本出願の第1の態様に記載の化合物、又はその立体異性体、互変異性体、若しくは薬学的に許容される塩を治療有効量で含み、必要に応じて(ii)薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0026】
別の好ましい例において、上記医薬組成物は、第2の治療剤を更に含む。
【0027】
別の好ましい例において、上記医薬組成物は、MNKの活性又は発現量が関与する疾患又は障害の治療に使用される。
【0028】
本出願の第3の態様によれば、MNKの活性又は発現量が関与する疾患又は障害を治療又は予防するための医薬組成物を調製するのに使用されることを特徴とする本出願の第1の態様に記載の化合物の使用が提供される。
【0029】
別の好ましい例において、上記疾患又は障害は、大腸がん、胃がん、甲状腺がん、肺がん、胆管細胞がん、肝臓がん、食道がん、膀胱がん、尿路上皮がん、子宮頸がん、白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、毛様細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、膵臓がん、メラノーマ、多発性骨髄腫、脳がん、中枢神経系がん、頭頸部がん、腎臓がん、前立腺がん、卵巣がん、乳がん、骨がん、制御不能な細胞成長、増殖、及び/又は生存、不適切な細胞性免疫反応、不適切な細胞性炎症反応、白血病及び骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫、頭頸部腫瘍、肺腫瘍及び肺転移性腫瘍、胸部腫瘍、非小細胞腫瘍及び小細胞肺腫瘍、胃腸腫瘍、内分泌腫瘍、乳腺腫瘍等の婦人科系腫瘍、泌尿器腫瘍、腎臓、膀胱、及び前立腺腫瘍、皮膚腫瘍、肉腫、腫瘍転移、自己免疫疾患、神経変性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、神経障害性疼痛等から選択されるが、これらに限定されない。
【0030】
本出願の別の態様は、MNKを過剰発現している少なくとも1つの細胞においてMNK活性を軽減又は阻害する方法であって、上記少なくとも1つの細胞を、本出願の第1の態様に記載の化合物、又はその立体異性体、互変異性体、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、安定同位体誘導体、若しくは薬学的に許容される塩と接触させる工程を有する方法を提供する。
【0031】
別の好ましい例において、上記少なくとも1つの細胞は、大腸がん細胞、胃がん細胞、甲状腺がん細胞、肺がん細胞、胆管細胞がん細胞、肝臓がん細胞、食道がん細胞、膀胱がん細胞、尿路上皮がん細胞、子宮頸がん細胞、白血病細胞、B細胞リンパ腫細胞、T細胞リンパ腫細胞、毛様細胞リンパ腫細胞、ホジキンリンパ腫細胞、非ホジキンリンパ腫細胞、バーキットリンパ腫細胞、膵臓がん細胞、メラノーマ細胞、多発性骨髄腫細胞、脳がん細胞、中枢神経系がん細胞、腎臓がん細胞、前立腺がん細胞、卵巣がん細胞、又は乳がん細胞である。
【0032】
本出願の別の態様によれば、治療を要する哺乳類においてMNK依存性疾患を治療する方法であって、該哺乳類に、(i)本出願の第1の態様に記載の化合物、又はその立体異性体、互変異性体、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、安定同位体誘導体、若しくは薬学的に許容される塩を少なくとも1つ、又は(ii)本出願の第2の態様に記載の医薬組成物を投与する工程を有する方法が提供される。
【0033】
別の好ましい例において、上記神経変性疾患はタウタンパク質疾患であり、より好ましくはアルツハイマー病である。
【0034】
別の好ましい例において、上記神経変性障害はパーキンソン病である。
【0035】
別の好ましい例において、上記化合物は、異常MNK活性により引き起こされる疾患、異常MNK活性に関連する疾患、又は異常MNK活性を伴う疾患を治療するのに使用される。
【0036】
別の好ましい例において、上記薬物は、大腸がん、胃がん、甲状腺がん、肺がん、胆管細胞がん、肝臓がん、食道がん、膀胱がん、尿路上皮がん、子宮頸がん、白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、毛様細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、膵臓がん、メラノーマ、多発性骨髄腫、脳がん、中枢神経系がん、頭頸部がん、腎臓がん、前立腺がん、卵巣がん、乳がん、骨がん、制御不能な細胞成長、増殖、及び/又は生存、不適切な細胞性免疫反応、不適切な細胞性炎症反応、白血病及び骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫、頭頸部腫瘍、肺腫瘍及び肺転移性腫瘍、胸部腫瘍、非小細胞腫瘍及び小細胞肺腫瘍、胃腸腫瘍、内分泌腫瘍、乳腺腫瘍等の婦人科系腫瘍、泌尿器腫瘍、腎臓、膀胱、及び前立腺腫瘍、皮膚腫瘍、肉腫、腫瘍転移、自己免疫疾患、神経変性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、神経障害性疼痛からなる群より選択される疾患を治療するのに使用される。
【0037】
別の好ましい例において、上記薬物は、制御不能な細胞成長、増殖、及び/又は生存、不適切な細胞性免疫反応、又は不適切な細胞性炎症反応の治療、あるいは神経変性疾患、好ましくはタウタンパク質疾患、更により好ましくはアルツハイマー病の治療又は予防に使用される。
【0038】
別の好ましい例において、上記薬物は、神経障害性疼痛の治療に使用される。
【0039】
本出願の別の態様では、哺乳類において疾患を治療する方法であって、該疾患は、制御不能な細胞成長、増殖、及び/又は生存、不適切な細胞性免疫反応、又は不適切な細胞性炎症反応、又は神経変性疾患、好ましくはタウタンパク質疾患、更により好ましくはアルツハイマー病であり、上記方法は、本出願の第1の態様に記載の化合物を治療有効量で上記哺乳類に投与する工程を有する方法が提供される。
【0040】
本出願の別の態様では、病的状態である哺乳類を治療する方法であって、該病的状態は、MNKを阻害することで軽減され、上記方法は、本出願の第1の態様に記載の化合物を治療有効量で上記哺乳類に投与する工程を有する方法が提供される。
【0041】
本出願の別の態様では、MNK阻害剤の候補化合物の検出及び同定における上記化合物の使用が提供される。
【0042】
本発明の範囲内において、上述した本発明の技術的特徴及び以下の項(実施例等)で詳細に記載される技術的特徴を互いに組み合わせることで、新しい又は好ましい解決手段を構成できることを理解されたい。スペースを考慮し、以下ではこれらを繰り返したり記載したりしない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】各種野生型プロテインキナーゼに対する化合物2の阻害率を表す。
【
図2】本出願の化合物によるPD-1発現の阻害結果を表す。
【
図3】本出願の化合物によるTim-3発現の阻害を表す。
【
図4】本出願の化合物によるLag-3発現の阻害を表す。
【
図5】本出願の化合物によるサイトカインIL-10の分泌レベルの阻害を表す。
【
図6】本出願の化合物によるサイトカインIL-6の分泌レベルの阻害を表す。
【
図7】本出願の化合物によるサイトカインTNF-αの分泌レベルの阻害を表す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本出願は、MNK活性を阻害又は制御する化合物、並びにその立体異性体、互変異性体、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、安定同位体誘導体、及び薬学的に許容される塩に関する。本出願はまた、上記化合物を含む薬学的に許容される組成物、並びにがん、炎症性疾患、及びアルツハイマー病やパーキンソン病のような神経変性疾患等、MNKの阻害が有益となり得る疾患を治療するための関連方法に関する。
【0045】
専門用語
特に定めのない限り、本明細書中、「置換」という語は、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、C1-C12アルキル又はシクロアルキル、C1-C12アルコキシ、酸素原子(すなわちO)、置換されていないC1-C12アルキルアミノ、又はC1-C4アルキルアミノで置換されたC1-C12アルキルアミノ、C2-C6エステル、C2-C6アシル、C2-C6アミド、C1-C12チオアルキル、カルボキシル、C5-C12アリール又はヘテロアリール、(N、O、又はSから選択されるヘテロ原子を1~5個、好ましくは1~3個含む)C5-C12ヘテロシクリルからなる群より選択される置換基で、基上の水素原子を1つ以上置換することを意味する。
【0046】
「C1-C8アルキル」という語は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、又はtert-ブチル等、1~8個の炭素原子を有する直鎖又は分岐状アルキル基を意味する。
【0047】
「C3-C8シクロアルキル」という語は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、又はシクロヘプチル等、3~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基を意味する。
【0048】
「C1-C8アルコキシ」という語は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブチルオキシ、イソブチルオキシ、sec-ブチルオキシ、又はtert-ブチルオキシ等、1~8個の炭素原子を有する直鎖又は分岐状アルコキシ基を意味する。
【0049】
「ハロゲン」という語は、F、Cl、Br、及びIを意味する。
【0050】
「C1-C8アルキルアミノ」という語は、「C1-C8アルキル-NH-」又は「(アルキル)2-N-(全炭素原子数:1~8)」、「-C1-C8アルキレン-NH2」、「アルキル-N-アルキレン-(全炭素原子数:1~8)」、又は「(アルキル)2-N-アルキレン-(全炭素原子数:1~8)」という構造を有する基、例えばCH3NH-、C2H5NH-、C3H7NH-、(CH3)2N-、-CH2NH2、-C2H5NH2、-C3H7NH2、又は-C2H4N(CH3)2等、アミノ基で置換されたC1-C8アルキル基を意味する。ここで、C1-8アルキルの定義は上述の通りである。
【0051】
「C1-C8アシル」という語は、アセチル、プロピオニル、又はブタノイル等、「0~7個の炭素原子を有する直鎖又は分岐状アルキル/シクロアルキル/アリール/ヘテロアリール-カルボニル-アミノ」等の構造の置換基を意味する。
【0052】
「C6-C10アリール」という語は、フェニル、ナフチル等、6~10個の炭素原子を有するアリール基であって、置換されていても置換されていなくてもよい基を意味する。
【0053】
「5~12員ヘテロアリール」という語は、1~12個の炭素原子と、O、S、及び/又はNから選択される1個以上(好ましくは1~3個)のヘテロ原子とを有するヘテロアリール基を意味し、好ましくは5~8員ヘテロアリール基である。上記ヘテロアリール基は、置換されていても置換されていなくてもよい。
【0054】
「5~12員複素環」という語は、5~12員環状飽和、部分不飽和、又は芳香族基を意味し、上記複素環は、O、S、及び/又はNからなる群より選択される少なくとも1つの環原子を有する。
【0055】
「5~12員ヘテロアリール」という語は、5~12員環状芳香族基を意味し、上記ヘテロアリールは、O、S、及び/又はNからなる群より選択される少なくとも1つの環原子を有する。
【0056】
特に、「C1-Cn」という表現は、当該基が1~n個の炭素原子を有することを意味する。例えば、「C1-C8」という表現は、当該基が1、2、3、4、5、6、7、又は8個の炭素原子を有することを意味し、「C6-C10」という表現は、当該基が6、7、8、9、又は10個の炭素原子を有することを意味する。
【0057】
本出願において、「薬学的に許容される」成分とは、過剰な有害反応(毒性、刺激、及びアレルギー等)を起こすことなくヒト及び/又は動物に好適な物質、すなわち、合理的なベネフィット/リスク比を有する物質を意味する。
【0058】
本出願において、「有効量」という語は、標的の疾患又は障害を治療、軽減、又は予防するための治療剤の量、あるいは検出可能な治療又は予防効果を示す量を意味する。対象への厳密な有効量は、対象の体型及び健康状態、疾患の性質及び程度、並びに選択した治療剤及び/又は治療剤の組み合わせによって異なる。従って、事前に正確な有効量を特定することは無用である。しかしながら、所定の条件において、臨床医が実施できる従来の実験を採用して有効量を決定することができる。
【0059】
特に定めのない限り、本出願における化合物はいずれも、単一キラル化合物、又は各種キラル化合物の混合物(すなわちラセミ体)等の考えられる光学異性体を全て包含するものである。本出願の全ての化合物において、各キラル炭素原子はR配置であってもS配置であってもよく、R配置とS配置との混合であってもよい。
【0060】
本明細書中、「本出願の化合物」という語は、式Iの化合物を意味する。本用語はまた、式Iの化合物の各種結晶型、薬学的に許容される塩、水和物、又は溶媒和物を包含する。
【0061】
本明細書中、「薬学的に許容される塩」という語は、本出願の化合物と酸又は塩基とで形成される薬物に好適な塩を意味する。薬学的に許容される塩は、無機塩及び有機塩を包含する。好ましい種類の塩は、本出願の化合物と酸とで形成される塩である。塩を形成するのに好適な酸としては、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、及びリン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、及びベンゼンスルホン酸等の有機酸、並びにアスパラギン酸及びグルタミン酸等の酸性アミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書中、「薬学的に許容される塩」という語は、本発明の化合物と酸又は塩基とで形成された、薬物として使用するのに好適な塩を意味する。薬学的に許容される塩は、無機塩及び有機塩を包含する。好ましい種類の塩は、本発明の化合物と酸とで形成される塩である。塩形成に好適な酸としては、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、及びリン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、及びベンゼンスルホン酸等の有機酸、並びにアスパラギン酸及びグルタミン酸等の酸性アミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
「治療」、「処置」、及び「療法」という語は、疾患や疾患関連症状の軽減又は根絶を意味する。いくつかの実施形態において、これらの用語は、1種以上の予防剤又は治療剤を疾患患者に投与することで疾患の伝播又は悪化を最小限に抑えることを意味する。本出願の内容において、「治療」、「処置」、及び「療法」という語はまた、
(i)哺乳類において、特に哺乳類が上記疾患を患う傾向にあるが、上記疾患を有するとは診断されていない場合に、上記疾患又は障害の発生を予防すること、
(ii)上記疾患又は障害(の発達)を阻害すること、
(iii)上記疾患又は障害を軽減すること(すなわち、後退させること)、あるいは
(iv)上記疾患又は障害によって引き起こされる症状を軽減すること、すなわち、上記基礎疾患又は障害を解消することなく痛みを軽減すること
を意味する。
【0064】
本明細書中、「疾患」及び「障害」という語は交換可能に使用できるが、異なる場合、その具体的な疾患又は障害は病原体が知られていないことがあり(そのために病因が知られていないことがあり)、従って、疾患としては認識されていないが、臨床医が具体的な一連の症状を多少なりとも特定している望ましくない状態又は症候群としては認識されているものであってもよい。
【0065】
「制御」及び「調節」という語は、例えば、MAPキナーゼ相互作用キナーゼ(MNK)の機能又は活性を増加又は減少させる化合物の能力を意味する。「制御」やその各種形態は、MNK関連活性の阻害、拮抗、部分拮抗、活性化、及び/又は部分活性化を包含するものである。MNK阻害剤は、結合する、部分的若しくは完全に刺激を阻害する、活性化を低減、予防、遅延させる、不活化する、感度を低下させる、又はシグナル伝達を下方制御する化合物である。化合物のMNK活性制御能は、酵素アッセイ又は細胞アッセイで確認できる。
【0066】
「患者」又は「対象」には、ヒト、ウシ、ウマ、ヒツジ、子ヒツジ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、又はモルモット等の動物が包含される。動物は、非霊長類及び霊長類(例えばサル及びヒト)等の哺乳類であってもよい。一実施形態において、患者は、例えば、ヒト乳児、小児、青少年、又は成人等のヒトである。
【0067】
「プロドラッグ」という語は、薬物の前駆体であって、患者への投与後に代謝過程で必ず化学的変換を受けて活性薬理物質となる化合物を意味する。式Iの化合物のプロドラッグとしては、エステル、アセトアミド、及びアミドが例示される。
【0068】
「互変異性体」という語は、ある分子の一原子から同じ分子の別原子へのプロトン移動を意味する。例えば、W1及びW2がオキソ置換基であり、R
1がHである場合、本出願は、以下の通り式Iの化合物の互変異性体を提供する。
【化4】
【0069】
式Iの化合物及びその調製
本出願は、式(I):
【化5】
(式中、
Aは、-N-又は-CR
7-であり;
Xは、-(CR
1aR
1b)
p-M-(CR
2aR
2b)
q-(式中、Mは化学結合であるか、あるいは-N(R
9)-、-O-、-S-、-C(O)-、-S=O、-S(O)
2-、-C(O)NH-、-C(=CH
2)-、又は-NHC(O)-からなる群より選択される)であり;
p及びqは、それぞれ独立に、0、1、又は2であり;
Yは、-N(R
8)-、-O-、-S-、-C(O)-、-S=O、-S(O)
2-、又は-CHR
9-からなる群より選択され;
W
1及びW
2は、独立に、O、S、又はN-OR’(式中、R’は水素又はC1-C8アルキルである)からなる群より選択され;
R
1は、水素、-OH、アセチル、C1-C8アルキル、-C(O)(C1-C8アルキル)、-C(O)(C3-C8シクロアルキル)、-COOH、-C(O)O-(C1-C8)アルキル、C3-C8シクロアルキル、5~12員アリール、5~12員ヘテロアリール、又は5~12員ヘテロシクリルからなる群より選択され;
nは、1、2、又は3であり;
R
2及びR
3は、それぞれ独立に、水素、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、C6-C10アリール、5~12員ヘテロアリール、C1-C4アルキレン-5~12員ヘテロアリール、C3-C8シクロアルキル、C1-C4アルキレン-(C3-C8)シクロアルキル、5~12員ヘテロシクリル、C1-C4アルキレン-5~12員ヘテロシクリルからなる群より選択されるか;あるいは、R
2及びR
3は、それらに結合した炭素原子とともに、C3-C10単環式アルキル、C3-C10二環式若しくは多環式アルキル、N、O、若しくはS原子を1~3個含む5~12員複素単環式アルキル、N、O、若しくはS原子を1~3個含む5~12員複素二環式若しくは複素多環式アルキルからなる群より選択される基を形成し;置換された単環式アルキル、二環式若しくは多環式アルキル、又は置換された複素単環式アルキル、置換された複素二環式若しくは複素多環式アルキルは、不飽和二重結合又は三重結合を1~3個含み;置換された単環式アルキル、置換された二環式若しくは多環式アルキル、又は置換された複素単環式アルキル、置換された複素二環式若しくは複素多環式アルキルは、任意の位置において、重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、複素環式アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、アリール、ヘテロアリール、-SR
3a、-N(R
3b)
2、-S(O)
2N(R
3b)
2、-NR
3bC(O)N(R
3b)
2、-NR
3bC(O)R
3a、-C(O)R
3a、-S(O)
0-2R
3a、-C(O)OR
3b、-(CH
2)
uOH、又は-(CH
2)
uN(R
3b)
2からなる群より選択される1個以上の基で置換されており;
R
1a、R
1b、R
2a、及びR
2bは、それぞれ独立に、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシ、-SH、ヒドロキシ-(C1-C4)アルキレン、シアノ、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシからなる群より選択され;
R
3a及びR
3bは、それぞれ独立に、水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、複素環式アルキル、アリール、ヘテロアリール、(複素環式アルキル)アルキル、(シクロアルキル)アルキル、アリールアルキル、又はアリールアルキルからなる群より選択されるか、あるいは、2つのR
bは、それらに結合したN原子とともに3~8員複素単環式アルキルを形成し;
R
4は、独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、-SH、ヒドロキシ-(C1-C4)アルキレン、シアノ、C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、C1-C4アルコキシ、C1-C4ハロアルコキシ、-C(O)(C1-C8アルキル)、-C(O)(C3-C8シクロアルキル)、-COOH、-C(O)O-(C1-C8)アルキル、-S(C1-C8アルキル)、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、C3-C8シクロアルキル、C6-C10アリール、5~12員ヘテロアリール、又は5~12員ヘテロシクリルからなる群より選択され;
R
5、R
6、及びR
7は、それぞれ独立に、-H、-OH、-CN、-SR
10、ハロゲン、-S(O)
2(C1-C8)アルキル、-NH-S(O)
2(C1-C8)アルキル、-C(O)N(R
10)
2、-NHC(O)R
10、-N(R
10)
2、-(C1-C4アルキレン)N(R
10)
2、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、C1-C8ハロアルキル、-O(C1-C8アルキル)、-O(C1-C8ハロアルキル)、-O(C1-C8アルキレン)NHR
10、-O(C1-C8アルキレン)N(R
10)
2、C6-C10アリール、5~12員ヘテロアリール、C1-C4アルキレン-5~12員ヘテロアリール、C3-C8単環式アルキル、C3-C10二環式若しくは多環式アルキル、C1-C4アルキレン-(C3-C8)シクロアルキル、5~12員ヘテロシクリル、C1-C4アルキレン-5~12員ヘテロシクリルからなる群より選択されるか;あるいは、R
5及びR
7は、それらに結合した炭素原子とともに、C6-C10アリール、5~12員ヘテロアリール、C3-C8シクロアルキル、5~12員ヘテロシクリルを形成し;
R
10は、-H、-OH、-C(O)O(C1-C8アルキル)、-C(O)(C1-C8アルキル)、-C(O)-NH
2、-C(O)-NH(C1-C8アルキル)、-NH-(C1-C8アルキル)、-NH-C(O)(C1-C8アルキル)、NH
2-C(O)-(C1-C4アルキレン)、-S(C1-C8アルキル)、アセチル、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、-O(C1-C8アルキル)、-(C1-C8ハロアルキル)、C1-C8アルキルアミノ、-C(O)(C1-C8アルキル)、-C(O)(C3-C8シクロアルキル)、-C(O)O-(C1-C8アルキル)、C3-C8シクロアルキル、C6-C10アリール、5~12員ヘテロアリール、又は5~12員ヘテロシクリルからなる群より選択され;
上記アルキル、アルキレン、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アミノはそれぞれ、1、2、又は3個のJ基で置換されていてもよく、上記J基は、-SR
9、-S(O)R
9、-S(O)
2R
9、-S(O)N(R
9)
2、-N(R
9)
2、-C(O)OR
9、-C(O)R
9、-C(O)-N(R
9)
2、ヒドロキシ、シアノ、ハロゲン、アセチル、C1-C4アルキル、C2-C4アルケニル、C2-C4アルキニル、C1-C4アルコキシ、ハロアルキル、-S-(C1-C4アルキル)、シアノ-(C1-C4アルキレン)、C1-C4アルキルアミノ、NH
2-C(O)-(C1-C4)アルキレン、N(R
9)
2-C(O)-(C1-C4)アルキレン、-CHR
9-C(O)-(C1-C4)アルキル、-C(O)-(C1-C4)アルキル、5~12員ヘテロシクリル、C1-C4アルキレン-5~12員ヘテロシクリル、C3-C8シクロアルキル、C1-C4アルキレン-(C3-C8)シクロアルキル、C2-C4アルキレン-(C3-C8)シクロアルキル、-CHR
9-C(O)-(C3-C8)シクロアルキル、-C(O)-(C3-C8)シクロアルキル、-CHR
9-C(O)-(C6-C10)アリール、-CHR
9-(C6-C10)アリール、-C(O)-(C6-C10)アリール、-CHR
9-C(O)-5~12員ヘテロシクリル、-C(O)-5~12員ヘテロシクリルからなる群より選択されるか;あるいは、2個のJ基が同じ原子に結合してオキソ(=O)を形成し;
R
8及びR
9は、水素、C1-C4アルキル、ヒドロキシ-(C1-C4)アルキル、C3-C8シクロアルキル、5~12員ヘテロシクリル、-NH
2、又は-OHである)
で表される化合物、又はその立体異性体、互変異性体、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、安定同位体誘導体、若しくは薬学的に許容される塩を提供する。
【0070】
一実施形態において、上記化合物は、下記式IIa又はIIbで表される構造を有する。
【化6】
【0071】
別の好ましい例において、Xは、-CH2-、CD2、-CH(OH)-、-C(=CH2)-、-C(O)-、又は-CF2-からなる群より選択される。
【0072】
一実施形態において、上記化合物は、下記式IIIa又はIIIbで表される構造を有するが、式IIIa又はIIIb中、「Y」が-CHR
9-である場合、置換基R
9は水素、低級アルキル、アミノ、又はヒドロキシである。
【化7】
【0073】
別の好ましい例において、Yは、-O-、-S-、-C(O)-、-S=O、-S(O)2-、又は-CHR9-からなる群より選択される。
【0074】
一実施形態において、式IIIa又はIIIb中、Xは、-(CR1aR1b)-、-C(O)-、N(R8)-、-O-、-S-、-S=O、-S(O)2-、-C(O)NH-、又は-NHC(O)-からなる群より選択されることが好ましく、Xは、-CH2-、CD2、-CH(OH)-、-C(O)-、又は-CF2-からなる群より選択されることがより好ましい。
【0075】
本出願の別の実施形態において、上記化合物は、下記式IVa又は式IVbで表される構造を有する。
【化8】
【0076】
本出願の別の実施形態において、上記化合物は、下記式Va又は式Vbで表される構造を有する。
【化9】
【0077】
別の好ましい例において、式IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、及びVb中のR2及びR3はそれぞれ水素である。あるいは、式IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、及びVb中のR2又はR3基の一方は水素であり、他方の基は置換された又は置換されていないC1-C8アルキル(すなわち、1、2、又は3個のJ置換基で置換されている)である。
【0078】
別の好ましい例において、R2は置換されていないアルキルであり、R3は1、2、又は3個のJ基で置換されたアルキルである。
【0079】
別の好ましい例において、上記化合物は、下記式VIa又はVIbで表される構造を有するが、式中、AはC3-C8シクロアルキル又は5~12員ヘテロシクリル基であり、更に、該シクロアルキル又はヘテロシクリル環「A」は、1、2、又は3個のJ基で置換されていてもよい。
【化10】
【0080】
一実施形態において、式VIa又はVIb中、Xは-CHR9-、-CR9R9-、-C(O)-、-N(R8)-、-O-、-S-、-S=O、-S(O)2-、-C(O)NH-、又は-NHC(O)-からなる群より選択されることが好ましく、置換基R9は、水素、重水素、ハロゲン、低級アルキル、アミノ、又はヒドロキシからなる群より選択されることが好ましく、R8は、水素、低級アルキル、アミノ、又はヒドロキシからなる群より選択されることが好ましい。Xは、-CH2-、CD2、-CH(OH)-、-C(O)-、又は-CF2-からなる群より選択されることがより好ましい。
【0081】
別の好ましい例において、上記化合物は、下記式VIIa又はVIIbで表される構造を有し、式中、AはC3-C8シクロアルキル又は5~12員ヘテロシクリル基であり、更に、該シクロアルキル又はヘテロシクリル環「A」は、1、2、又は3個のJ基で置換されていてもよい。
【化11】
【0082】
好ましい実施形態において、Aが縮合環である場合、J基は、ハロゲン、アミノ、C1-C4アルキルアミノ、及びC1-C4アルキルからなる群より選択される。
【0083】
別の好ましい例において、式VIa、VIb、VIIa、又はVIIbの環Aは、ピロリジニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、チエタニル、又はアゼチジニル等のヘテロシクリル基である。
【0084】
別の好ましい例において、環Aは、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、N-メチルアミノ、メチル、ジフルオロエテニル、及びメチレンニトリルからなる群より選択されるJ基で置換されている。
【0085】
別の好ましい例において、上記化合物は、下記式VIIIで表される構造を有し、式中、Bは5~12員ヘテロシクリルであり、1、2、又は3個のJ基で置換されていてもよい。
【化12】
【0086】
別の好ましい例において、上記化合物は、下記式IXaで表される構造を有し、式中、Cは、C3-C8シクロアルキル、5~12員アリール、5~12員ヘテロアリール、又は5~12員ヘテロシクリルであり、1、2、又は3個のJ基で置換されていてもよい。
【化13】
【0087】
別の好ましい例において、上記化合物は、下記式IXbで表される構造を有し、式中、Cは、C3-C8シクロアルキル、5~12員アリール、5~12員ヘテロアリール、又は5~12員ヘテロシクリルであり、1、2、又は3個のJ基で置換されていてもよい。
【化14】
【0088】
本出願の好ましい実施形態において、W2はオキソ基である。
【0089】
別の好ましい例において、R1は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、sec-ブチル、又はtert-ブチルからなる群より選択される。
【0090】
本出願の化合物にはまた、同位体マーカーが包含されてもよく、例えば、該化合物中の1つ以上の原子が、原子質量又は原子質量数が異なる原子で置換されており、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、塩素、又はヨウ素の同位体が挙げられる。
【0091】
式Iの化合物の調製
本出願の化合物は、従来の合成方法で、より具体的には以下で記載するような一般的な方法で合成される。本出願の化合物の具体的な合成スキームを以下の実施例に記載する。
【0092】
(一般的な合成方法)
(方法1)
【化15-1】
酸性条件下、中間体Xaをアルデヒド又はケトン等価物Xc-fと反応させることで、Xb(n=1且つX=ハロゲン又は他の脱離基(-OTf、-OTs、又は-OMs等)である場合)が得られる。式中、R
2及びR
3は上で定義した通りであり、R
mはH、CH
3、CH
2CH
3、又はアルキルであり、より具体的には、加熱条件下、Xa(式中、TはCl又はBr)を、アルデヒド又はケトン等価物Xc-fと酸(濃硫酸又は塩酸等)とを含む溶媒(1,4-ジオキサン等)に添加することで、中間体Xb(n=1)を生成する。
【化15-2】
【0093】
化合物XIの脱離基Uを好適なN、O、又はS求核剤で置換する等の各種方法によって、XIから式XIIa又はXIIb(式中、YはN(R
8)、O、又はSであり、Pは保護基である)の化合物が得られる。得られた化合物XIIbを脱保護することで、XIIaを生成できる。
【化16】
【0094】
式XIII中、YがNR
8である場合、化合物XIIa(Qは、式I中のXの前駆体基であり、例えば、エステル、アルキレンエステル、-O-P、-S-P等であり、Pは任意の保護基である)及び化合物Xb(Tは、ハロゲン、-OTf、-OTs、又は-OMs等の脱離基である)をバックワルド・ハートウィッグ条件(例えば、パラジウム触媒、リガンド、塩基、溶媒、及び熱)下で反応させることで、化合物XIIIが得られる。
【化17】
【0095】
あるいは、銅媒介性ウルマン型条件(ヨウ化銅(I)、アルカリ、溶媒、及び熱等)下、化合物XIIa及び化合物Xb(Tは、ハロゲン、-OTf、-OTs、又は-OMs等の脱離基である)を反応させることで、XIII(Yは-NR8、-O-)を形成する。
【0096】
以下のプロセスによって、I(Qはエステル基)が形成される。アルカリ条件下、化合物XIIIが酸中間体を形成する。該酸中間体を、ポリリン酸、トリフルオロメタンスルホン酸-ポリリン酸、POCl
3、及びAlCl
3を含む任意の条件下、加熱処理し、必要に応じて追加反応(還元又は脱保護等)を行うことで、化合物Iが得られる。
【化18】
【0097】
医薬製剤及び治療適用
本出願の化合物又はその薬学的に許容される塩を治療有効量で投与するが、該治療有効量は、使用する具体的な化合物の活性、化合物の代謝安定性及び作用持続時間、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与の方式及び時間、排泄率、併用薬、具体的な疾患又は障害の重症度、並びに治療対象等の各種要因によって異なる。
【0098】
「有効量」又は「治療有効量」とは、以下で記載する通り、(哺乳類、好ましくはヒトに投与する場合)、哺乳類(好ましくはヒト)におけるMNK関連障害又は疾患に対して効果的な治療を施すのに十分な本出願の化合物の量を意味する。「治療有効量」を構成する本出願の化合物の量は、化合物、疾患とその重症度、投与方式、及び治療を受ける哺乳類の年齢によって異なっていてもよいが、当業者であれば、その知識及び本出願の内容に従って常法で決定できる。
【0099】
本出願の化合物又はその薬学的に許容される塩はまた、1種以上の他の治療剤を投与する前、投与と同時に、又は投与した後に投与できる。このような併用療法としては、本出願の化合物と1種以上の他の有効成分とを含む単回用量製剤を投与すること、又は本出願の化合物と各有効成分とを別々の薬物用量製剤として投与することが挙げられる。例えば、本出願の化合物及び他の有効成分は、錠剤又はカプセル等の単回経口用量組成物として患者へ一緒に投与してもよいし、これらの物質を別々の経口用量製剤として投与してもよい。別々の用量製剤を用いる場合、本出願の化合物と1種以上の他の有効剤とをほぼ同じ時間(すなわち同時)に投与してもよいし、時間をずらして別々に(すなわち順次)投与してもよいが、併用療法にはこれら全ての選択肢が包含されることを理解されたい。
【0100】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示した化合物は、MNK活性の阻害、及び/又はモデル系におけるMNKシグナル伝達活性の分析、及び/又はMNKに関与する疾患、障害、又は病態に関連する症状、好ましくはヒトに苦痛を引き起こすものの予防、治療、又は軽減に有用である。MNK活性を阻害できる化合物は、以下の事象における症状又は疾患の進行を予防、治療、軽減、又は低減するのに使用できる。制御不能な細胞成長、増殖、及び/又は生存、不適切な細胞性免疫反応、又は不適切な細胞性炎症反応、あるいは制御不能な細胞成長、増殖、及び/又は生存、不適切な細胞性免疫反応、又は不適切な細胞性炎症反応を伴う疾患、特に上記制御不能な細胞成長、増殖、及び/又は生存、不適切な細胞性免疫反応、又は不適切な細胞性炎症反応がMNKによって媒介されるもの、例えば、白血病及び骨髄異形成症候群、ワルデンストレームマクログロブリン血症、及び悪性リンパ腫(B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、毛様細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、及びバーキットリンパ腫等)等の血液腫瘍、固形腫瘍及び/又はその転移、脳腫瘍及び脳転移等の頭頸部腫瘍、非小細胞及び小細胞肺腫瘍等の胸部腫瘍、胃腸腫瘍、内分泌腫瘍、乳腺腫瘍等の婦人科系腫瘍、腎臓、膀胱、及び前立腺腫瘍等の泌尿器系腫瘍、皮膚腫瘍、及び肉腫、及び/又はそれらの転移。
【0101】
加えて、本出願の化合物及びその医薬組成物は、炎症性疾患やアレルギー等の炎症促進性サイトカインに関連する疾患等、サイトカイン関連疾患の予防及び/又は治療の候補治療剤である。炎症性疾患としては、慢性又は急性炎症、関節炎、例えば、慢性炎症性関節炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、変形性関節症、若年性関節リウマチ、ライター症候群、関節リウマチ、風疹関節炎、急性滑膜炎、及び痛風性関節炎;日焼け、乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬、湿疹、皮膚炎、急性又は慢性移植片形成、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、蕁麻疹、及び強皮症等の炎症性皮膚疾患;炎症性腸疾患、クローン病及び関連疾患、潰瘍性大腸炎、大腸炎、並びに憩室炎等の胃腸炎;腎炎、尿道炎、卵管炎、卵巣炎、子宮内膜炎、脊椎炎、全身性エリテマトーデス及び関連疾患、多発性硬化症、喘息、髄膜炎、脊髄炎、脳脊髄炎、脳炎、静脈炎、血栓性静脈炎、喘息、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、炎症性肺疾患及び成人呼吸促迫症候群、及びアレルギー性鼻炎等の呼吸器疾患;心内膜炎、骨髄炎、リウマチ熱、リウマチ性心膜炎、リウマチ性心内膜炎、リウマチ性心筋炎、リウマチ性僧帽弁疾患、リウマチ性大動脈弁疾患、前立腺炎、前立腺膀胱炎、脊椎関節症、強直性脊椎炎、滑膜炎、腱鞘炎、筋炎、咽頭炎、リウマチ性多発性筋痛、肩腱炎又は滑液包炎、痛風、偽痛風、血管炎、肉芽腫性甲状腺炎、リンパ球性甲状腺炎、浸潤性線維性甲状腺炎、及び急性甲状腺炎から選択される甲状腺炎;橋本甲状腺炎、川崎病、レイノー現象、シェーグレン症候群、神経炎症性疾患、敗血症、結膜炎、角膜炎、虹彩毛様体炎、視神経炎、耳炎、リンパ節炎、上咽頭炎、副鼻腔炎、咽頭炎、扁桃炎、喉頭炎、喉頭蓋炎、気管支炎、肺炎、口内炎、歯肉炎、食道炎、胃炎、腹膜炎、肝炎、胆石症、胆嚢、糸球体腎炎、良性肺炎、半月体形成性糸球体腎炎、膵炎、子宮内膜炎、子宮筋層炎、子宮炎、子宮頸管炎、子宮頸管内膜炎、子宮頸外膜炎、子宮傍組織炎、結核、膣炎、外陰炎、珪肺症、肉腫症、塵肺症、膿瘍、炎症性多発性関節炎、乾癬性関節炎、腸線維症、気管支拡張症、及び腸炎性関節炎等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
炎症はこれらの疾患の統一された発症過程であるが、現在の療法では疾患の症状を治療するだけであり、根底にある炎症の原因を治療するわけではない。本出願の組成物は、炎症性疾患並びに関連する合併症及び障害を治療及び/又は予防するのに有用である。
【0103】
従って、ある実施形態は、治療を必要とする哺乳類においてMNK依存性障害を治療する方法であって、上記医薬組成物(すなわち、式Iの化合物をいずれか1種以上含む医薬組成物)を有効量で哺乳類に投与する工程を有する方法に関する。
【0104】
上述した通り、タンパク質合成障害はヒトのがんにおいて一般的な事象である。翻訳調節の主要な制御因子はeIF4Eであり、その活性が腫瘍形成能の主要な決定因子である。eIF4Eの活性化は、MAPキナーゼ相互作用キナーゼ(MNK)に特異的に影響される主要なセリン(Ser209)のリン酸化を伴うので、MNK阻害剤は増殖性疾患(がん等)の治療に対する好適な候補治療剤である。本明細書に記載した組成物及び方法を用いて、固形腫瘍、リンパ腫、及び白血病等の各種がんを治療できる。治療できるがんの種類としては、乳腺がん、前立腺がん、及び大腸腺がん;あらゆる形態の肺気管支がん;骨髄;メラノーマ;肝臓がん;神経芽腫;乳頭腫;アプドーマ;迷芽腫;分岐腫瘍;悪性カルチノイド症候群;カルチノイド心疾患;並びにがん(例えば、ウォーカー、基底細胞、基底扁平細胞、ブラウン・ピアース、腺管、エールリッヒ腫瘍、クレブス2、メルク細胞、粘液、非小細胞肺、燕麦細胞、乳頭細胞、硬性がん、気管支、気管支原性、扁平細胞、及び移行細胞)等が挙げられるが、これらに限定されない。治療できる他の種類のがんとしては、組織球性疾患;急性及び慢性白血病、骨髄及びリンパ性/リンパ芽球性(毛様細胞白血病等);悪性組織球症;ホジキン病;免疫増殖性腫瘍;ホジキンリンパ腫;B細胞及びT細胞非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫及びバーキットリンパ腫等);形質細胞腫;細網内皮組織増殖;メラノーマ;多発性骨髄腫;軟骨芽細胞腫;軟骨腫;軟骨肉腫;線維腫;線維肉腫;骨髄線維症;巨細胞腫;組織球腫;脂肪腫;脂肪肉腫;中皮腫;粘液腫;粘液肉腫;骨腫;骨肉腫;脊索腫;頭蓋咽頭腫;未分化胚細胞腫;過誤腫;間葉系腫瘍;中腎腫;筋腫;エナメル上皮腫;セメント質腫;歯牙腫;奇形腫;胸腺腫;絨毛性腫瘍等が挙げられる。
【0105】
本出願の化合物で治療できる他のがんとしては、腺腫;胆管腫;真珠腫;円柱腫;嚢胞腺がん;嚢胞腺腫;顆粒膜細胞腫;ギナンドロブラストーマ;肝細胞腫;汗腺がん;膵島細胞がん;精巣ライディッヒ細胞腫;乳頭腫;精巣セルトリ細胞腫;膜細胞腫;平滑筋腫;平滑筋肉腫;筋芽細胞腫;筋腫;筋肉腫;横紋筋腫;横紋筋肉腫;上衣腫;神経節腫;神経膠腫;髄芽腫;髄膜腫;シュワン腫;神経芽腫;神経上皮腫;神経線維腫;神経腫;傍神経節腫;非クロム親和性傍神経節腫等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
一実施形態において、本出願の化合物は、例えば、血管腫;好酸球増加症を伴う血管リンパ球の増殖;硬化性血管腫;血管腫症;グロムス腫瘍;血管内皮腫;血管腫;血管周皮腫;血管肉腫;リンパ管腫;リンパ管筋腫;リンパ管肉腫;松果体腫瘍;癌肉腫;軟骨肉腫;葉状嚢胞肉腫;線維肉腫;血管肉腫;平滑筋肉腫;白血球肉腫;脂肪肉腫;リンパ管肉腫;筋肉腫;粘液肉腫;卵巣腫;横紋筋肉腫;肉腫;新生物;神経線維腫症;及び子宮頸部異形成の治療のための候補治療剤である。
【0107】
具体的な実施形態において、本出願は、大腸がん、結腸直腸がん、胃がん、甲状腺がん、肺がん、白血病、膵臓がん、メラノーマ、多発性骨髄腫、脳がん、悪性神経膠腫及び神経膠芽腫等の原発性及び続発性CNSがん、腎臓がん、去勢抵抗性前立腺がん等の前立腺がん、卵巣がん、又は三種陰性乳がん、HER2陽性乳がん、及びホルモン受容体陽性乳がん等の乳がんといった疾患を治療する方法を提供する。上記方法によれば、増殖性疾患(がん等)であると診断された対象に対して、少なくとも1つの式Iの化合物、又はその立体異性体、互変異性体、若しくは薬学的に許容される塩を治療有効量で投与できる。あるいは、がんであると診断された対象に対して、少なくとも1つの式Iの化合物、又はその立体異性体、互変異性体、若しくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を投与できる。
【0108】
いくつかの実施形態において、本出願の化合物と、放射線療法又は手術等の他の従来のがん治療とは、組み合わせてがん対象に投与される。放射線療法は当該分野でよく知られており、ガンマ線照射等のX線療法及び放射性医薬品治療が挙げられる。
【0109】
いくつかの実施形態において、本出願のMNK阻害剤化合物は、少なくとも1種の抗がん剤と組み合わせて使用される。抗がん剤としては化学療法剤が挙げられる。化学治療剤としては、クロマチン機能阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管阻害剤、DNA破壊剤、抗代謝剤(葉酸拮抗剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、及び糖修飾類似体等)、DNA合成阻害剤、DNA相互作用剤(干渉物質等)、及びDNA修復阻害剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
化学療法剤の例としては、navulizumab、pablizumab、atzumab、duvalizumab、avelumab、sindilimab、treprizumab、及びepizumab等の免疫チェックポイント阻害剤;ピリミジン類似体(5-フルオロウラシル、フルオロウリジン、カペシタビン、ゲムシタビン、及びシタラビン)及びプリン類似体、葉酸拮抗剤及び関連阻害剤(チオプリン、チオグアニン、pemistatin、及び2-クロロデオキシアデノシン(クラドリビン))等の代謝拮抗薬/抗がん剤;ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビノレルビン)等の天然物、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロン、及びビノレルビン等の微小管干渉剤、エピポドフィロトキシン(エトポシド、テニポシド)、DNA損傷剤(アクチノマイシン、アクリジン、アニソマイシン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、エンドキサン、pleistomycin、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミンオキシム酸、イソフォスファミド、メルファラン、メロペネム、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、procalcamycin、procarbazide、パクリタキセル、タキソテール、テモゾロミド、テニポシド、トリエチレンチオホスファミド、及びエトポシド(VP16))等の増殖/有糸分裂阻害剤;ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、ミトラマイシン(ミリンカマイシン)、及びマイトマイシン等の抗生物質;酵素(L-アスパラギンを代謝し、自身のアスパラギンの合成能を持たない細胞を奪うL-アスパラギナーゼ);抗血小板薬;ナイトロジェンマスタード(メチオニンマスタード、シクロホスファミド及び類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミン、及びメチルメラミン(ヘキサメチルメラミン及びチオテパ)、スルホン酸アルキル-ブスルファン、ニトロソウレア(カルムスチン(BCNU)及び類似体、ストレプトゾトシン)、DTIC等の抗増殖性/抗有糸分裂性アルキル化剤;葉酸類似体(メトトレキサート)等の抗増殖性/抗有糸分裂性代謝拮抗薬;白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、procarbazide、ヒドロキシウレア、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン、ホルモン類似体(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、niromide)、及びアロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール);抗凝固剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩、及び他のトロンビン阻害剤);血栓溶解薬(組織プラスミノーゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼ、及びウロキナーゼ等)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、acizumab;防カビ剤;抗分泌剤(breveldin);免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス(FK-506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);抗血管新生化合物(TNP470、ゲニステイン)及び成長因子阻害剤(血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤、線維芽細胞増殖因子(FGF)阻害剤);アンジオテンシン受容体遮断薬;一酸化窒素ドナー;アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗体(トラスツズマブ、リツキシマブ);キメラ抗原受容体;細胞周期阻害剤及び分化誘導因子(レチノイン酸);mTOR阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アクリジン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、enobicin、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イリノテカン(CPT-11)及びプレドニゾロン、トポテカン、イリノテカン);副腎皮質ステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、及びプレドニゾロン);成長因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤;ミトコンドリア機能不全誘導剤、コレラ毒素、リシン、シュードモナス外毒素、ジフテリア毒素、及びシスタチンアクチベーター等の毒素;並びにクロマチン破壊剤からなる群等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
いくつかの実施形態において、本出願のMNK阻害剤は、同じ又は別々の製剤として、併用療法レジメンの一部である別の試薬と同時に又は順次使用する。
【0112】
式IのMNK阻害剤(対応する塩及び式Iの化合物の医薬組成物を含む)はまた、治療剤として、患者(好ましくはヒト)における炎症等のサイトカイン介在性疾患を効果的に治療又は予防できる。一実施形態において、本出願の化合物又は組成物は、慢性又は急性炎症、慢性炎症性関節炎、関節リウマチ、乾癬、COPD、炎症性腸疾患、敗血症性ショック、クローン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、及び喘息からなる群より選択される疾患の治療又は予防に対して特に有益である。
【0113】
本出願の化合物及び対応する塩、並びに薬学的に許容される組成物は、これらに限定されないが、自閉症、脆弱X症候群、パーキンソン病、及びアルツハイマー病等の脳関連疾患の治療に対する候補治療剤である。治療は、その治療を必要とする対象に、式Iの化合物、その薬学的に許容される塩、又は式Iの化合物若しくはその塩の薬学的に許容される組成物を投与することで達成できる。
【0114】
本発明の別の態様において、本出願の化合物又は本出願の化合物の薬学的に許容される製剤は、MNK活性の阻害剤として提供される。阻害は、MNK発現細胞を上記化合物又は薬学的に許容される製剤と接触させてMNK活性を低減又は阻害することによって、治療を必要とする哺乳類においてMNK依存性障害に対する治療効果を得ることで達成される。
【0115】
式Iの化合物又は式Iの化合物の組成物の治療有効量の一般的な範囲は、約1~2000mg/日、約10~1000mg/日、約10~500mg/日、約10~250mg/日、約10~100mg/日、又は約10~50mg/日であってもよい。上記治療有効量は1回で又は複数回に分けて投与できる。しかしながら、任意の具体的な患者に対する本出願の化合物の具体的な用量は、治療を受ける患者の年齢、性別、体重、一般的な健康状態、食事、及び個別の反応、投与時間、治療する疾患の重症度、投与する具体的な化合物の活性、剤形、投与形態、並びに併用薬等の各種要因によって異なることを理解されたい。所定の状況における治療有効量は、臨床医又は医師の能力及び判断の範囲内で、常法通りの実験によって決定できる。いずれの場合も、上記化合物又は組成物は、患者の個別の環境に基づき、治療有効量の送達が可能となる方法で、複数回に分けて投与できる。
【0116】
具体的な実施例と組み合わせて、本発明を更に説明する。これらの実施例は本発明の説明を意図したものにすぎず、本発明の範囲を限定する意図はないことを理解されたい。以下の実施例では実験方法の具体的な条件は示していないが、通常は従来の条件に従って又は製造業者が推奨する条件に従って実施する。特に言及しない限り、パーセント及び部は重量基準で算出される。
【実施例】
【0117】
合成
以下に示す実施例は説明のためでしかなく、限定するものではない。
【0118】
実施例1:化合物1及び2
中間体Aの合成
【化19】
【0119】
工程A:4-アミノ-6-クロロニコチン酸エチル
【化20】
4,6-ジクロロニコチン酸エチル(60g、0.27mmol)のジメチルスルホキシド(500ml)溶液に、2,4-ジメトキシベンジルアミン(47.8g、0.287mmol)及びトリエチルアミン(55g、0.545mmol)を室温で添加し、反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応物に水(2L)を添加し、反応混合物を酢酸エチル(2.5L×2)で抽出し、ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、6-クロロ-4-(2,4-ジメトキシベンジルアミノ)ニコチン酸エチルを得た。生成物をトリフルオロ酢酸(300ml)に溶解させ、反応混合物を加熱し、50℃で一晩撹拌した。混合物を室温まで冷却し、乾燥するまで濃縮した。混合物を酢酸エチル(2.5L×2)で抽出し、ブライン(500ml)で洗浄した後、有機相を重炭酸ナトリウム飽和水溶液(500ml)で洗浄し、乾燥し、真空下で濃縮した。得られた生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油/酢酸エチル=2/1)で精製して、4-アミノ-6-クロロニコチン酸エチル(34g、収率62.3%)を白色固体として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ8.69(s,1H),6.57(s,1H),4.36(q,J=7.1Hz,2H),1.40(t,J=7.1Hz,3H).
【0120】
工程B:4-アミノ-6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)ニコチン酸エチル
【化21】
4-アミノ-6-クロロニコチン酸エチル(2g、0.01mmol)をN-メチルピロリドン(7.5ml)に室温で溶解させ、2,4-ジメトキシベンジルアミン(2.5g、0.015mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(3.87g、0.03mmol)を順次添加した。室温での窒素保護下、反応混合物をマイクロ波で150℃で8時間加熱した。混合物を室温まで冷却し、水(50ml)を添加し、酢酸エチル(200ml)で抽出した。有機相をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油/酢酸エチル=2/1)で精製して、所望の化合物(1.5g、収率45.4%)を黄色固体として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO)δ8.34(s,1H),7.04(d,J=8.3Hz,1H),6.91(t,J=6.1Hz,1H),6.77(s,2H),6.54(d,J=2.3Hz,1H),6.45(dd,J=8.3,2.4Hz,1H),5.56(s,1H),4.26(d,J=5.9Hz,2H),4.18(q,J=7.1Hz,2H),3.80(s,3H),3.73(s,3H),1.26(t,J=7.1Hz,3H).
【0121】
【0122】
工程A:5-ブロモ-2-(メトキシカルボニル)-3-メチルピリジン1-オキシド
【化23】
5-ブロモ-3-メチルピリジンギ酸メチル(4.0g、17.4mmol)をジクロロメタン100mlに溶解させた。反応溶液を0℃まで冷却し、過酸化尿素(4.91g、52.2mmol)を添加した後、トリフルオロ酢酸無水物(10.96g、52.2mmol)を0℃で滴下した。反応溶液を室温で一晩撹拌し、氷水へ注ぎ、リン酸水素二カリウム飽和溶液でpHを7に調整した。混合物をジクロロメタン(100ml)で2回抽出し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、生成物(4.0g、収率93.4%)を得た。
LC-MS(ESI
+):m/z246.24 248.24(M+H)
+.
【0123】
工程B:5-ブロモ-3-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2-ギ酸メチル
【化24】
5-ブロモ-2-(メトキシカルボニル)-3-メチルピリジン1-オキシド(3.6g、14.6mmol)のジメチルホルムアミド(100ml)撹拌溶液に、トリフルオロ酢酸無水物(30.7g、146mmol)を0℃で滴下した。反応混合物を50℃まで加温し、更に3時間撹拌した。酸化完了後、反応溶液を室温まで冷却し、重炭酸ナトリウム飽和溶液でクエンチし、ジクロロメタン(100ml×2)で抽出した。有機相を分離し、それらをひとまとめにし、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮して、白色固体である所望の化合物(1.21g、収率33.3%)とした。
LC-MS(ESI
+):m/z246.24(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6):δ11.87(s,1H),8.01(s,1H),3.83(s,3H),2.29(s,3H).
【0124】
工程C:5-ブロモ-3-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2-ホルムアミド
【化25】
250ml封管中、5-ブロモ-3-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2-ギ酸メチル(2.7g、10.98mmol)のメタノール(10ml)撹拌溶液にアンモニア水(100ml)を添加した。反応フラスコを封止し、反応混合物を撹拌して63℃で5時間加熱した。TLC(石油エーテル/酢酸エチル=2/1、シリカゲルプレート)により、原料が完全に消費されたことが分かった。反応混合物を真空下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、石油エーテル/酢酸エチル=1/1で溶出して、所望の化合物(2.1g、収率83.2%)を白色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z231.3,233.23(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6):δ11.87(s,1H),7.88(s,2H),7.77(s,1H),2.15(s,3H).
【0125】
工程D:6’-ブロモ-8’-メチル-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1,5-a]ピリジン]-1’,5’-ジオン(中間体B)
【化26】
5-ブロモ-3-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2-ホルムアミド(2.1g、9.13mmol)の1,4-ジオキサン(50ml)溶液に、シクロヘキサノン(8.95g、91.3mmol)及び濃硫酸(89.5mg、0.913mmol)を室温で添加し、反応混合物を100℃で8時間加熱した。TLC(石油エーテル/酢酸エチル=2/1)シリカゲルプレートにより、原料が完全に消費されたことが分かった。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、石油エーテル/酢酸エチル=1/1で溶出して、所望の中間体B(1.7g、収率60.1%)を白色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z311.3 313.3(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6):δ10.38(s,1H),8.02(s,1H),2.91(td,J=13.4,4.3Hz,2H),2.38(s,3H),1.65(dt,J=27.4,13.1Hz,5H),1.43(d,J=12.0Hz,2H),1.28-1.15(m,1H).
【0126】
【0127】
工程A:6-((3,4-ジメチルベンジル)アミノ)-4-((8’-メチル-1’,5’-ジオキソ-1’,5’-ジヒドロ-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1,5-a]ピリジン]-6’-イル)アミノ)ニコチン酸エチル
【化28】
6’-ブロモ-8’-メチル-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1,5-a]ピリジン]-1’,5’-ジオン(1.32g、4.26mmol)の1,4-ジオキサン(70ml)溶液に、4-アミノ-6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)ニコチン酸エチル(1.69g、5.11mmol)、Pd
2(dba)
3(585.3mg、0.639mmol)、x-phos(305mg、0.639mmol)、炭酸セシウム(4.19g、12.8mmol)を窒素保護下、室温で添加した。窒素保護下、反応溶液を105℃で12時間加熱した。TLC(石油エーテル/酢酸エチル=2/1、シリカゲルプレート)により、原料が完全に消費されたことが示された。混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(150ml×2)で抽出した。有機層をひとまとめにし、ブライン(50ml×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。生成物をクロマトグラフィーカラム(石油エーテル/酢酸エチル=1/1)で精製して、所望の化合物(850.0mg、収率35.6%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI+):m/z562.3(M+H)+.
【0128】
工程B:6-((3,4-ジメチルベンジル)アミノ)-4-((8’-メチル-1’,5’-ジオキソ-1’,5’-ジヒドロ-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1,5-a]ピリジン]-6’-イル)アミノ)ニコチン酸
【化29】
6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-4-((8’-メチル-1’,5’-ジオキソ-1’,5’-ジヒドロ-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1,5-a]ピリジン]-6’-イル)アミノ)ニコチン酸エチル(850mg、1.52mmol)を、テトラヒドロフラン(200ml)とメタノール(100ml)との混合溶液に溶解させ、水酸化リチウム(191mg、4.55mmol)及び脱イオン水(2ml)を添加した。反応物を40℃で12時間加熱した。TLC(ジクロロメタン/メタノール=10/1、シリカゲルプレート)により、原料が完全に消費されたことが示された。混合物を室温まで冷却し、残渣をジエチルエーテル(50ml)で洗浄した。水層を1M塩酸水溶液でpH=6まで酸性化した。混合物を酢酸エチル(100ml×2)で抽出した。ひとまとめにした有機層をブライン(50ml×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、標的化合物(780mg、粗製)を灰色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z534.3(M+H)
+.
【0129】
工程C:8’-アミノ-12’-メチル-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン]-1’,5’,11’(6’H)-トリオン(化合物1)
【化30】
6-((3,4-ジメチルベンジル)アミノ)-4-((8’-メチル-1’,5’-ジオキソ-1’,5’-ジヒドロ-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1,5-a]ピリジン]-6’-イル)アミノ)ニコチン酸(700mg、1.313mmol、粗製)とポリリン酸(10g)との混合物を130℃で12時間加熱した。TLC(ジクロロメタン/メタノール=10/1、シリカゲルプレート)により、原料が完全に消費されたことが示された。混合物を室温まで冷却した後、氷水へ注いだ。まず、水層をジエチルエーテル(50ml)で洗浄し、1M水酸化ナトリウムでpH=7.5まで塩基性化し、酢酸エチル(150ml×2)で抽出した。ひとまとめにした有機層をブライン(50ml×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、標的化合物1(291mg、61.7%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z366.2(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ11.42(s,1H),10.08(s,1H),8.73(s,1H),6.64(s,2H),6.55(s,1H),2.90(s,3H),1.93(dd,J=24.7,12.4Hz,1H),1.80-1.53(m,6H),1.44(d,J=12.4Hz,3H).
【0130】
工程D:8’-アミノ-12’-メチル-6’,11’-ジヒドロ-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾール[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-B][1,6]ナフチリジン]-1’,5’-ジオン塩酸塩(化合物2)
【化31】
250ml封管中、亜鉛粉末(448.1mg、6.85mmol)を、8’-アミノ-12’-メチル-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン]-1’,5’,11’(6’H)-トリオン(250mg、0.685mmol)とNH
4OH(50ml)との混合溶液に室温で添加した。反応物質を105℃で12時間撹拌した。TLC(ジクロロメタン/メタノール=10/1、シリカゲルプレート)により、原料が完全に消費されたことが示された。反応混合物を室温まで冷却し、乾燥するまで真空下で濃縮した。混合物を1N塩酸水溶液(30ml)に溶解させた後、ジクロロメタンとイソプロパノールとの混合溶媒(ジクロロメタン及びイソプロパノール=3/1、100ml×5)で抽出し、有機相をブラインで洗浄し、乾燥濾過し、真空下で濃縮した。得られた濃縮物を逆相カラムクロマトグラフィー(アセトニトリル/水)で精製して、標的化合物2(108.3mg、収率45.04%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z352.0(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6):δ12.33(s,1H),10.14(s,1H),9.97(s,1H),7.63(s,1H),7.37(s,2H),6.46(s,1H),3.88(s,2H),3.03-2.92(m,2H),2.39(s,3H),1.79-1.59(m,5H),1.43(d,J=12.0Hz,2H),1.27-1.14(m,1H).
【0131】
実施例2:化合物3及び4の合成
合成スキーム:
【化32】
【0132】
工程A:6-ブロモ-3,3,8-トリメチル-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[1,5-a]ピリジン-1.5-ジオン
【化33】
5-ブロモ-3-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2-ホルムアミド(1.4g、6.09mmol)の1,4-ジオキサン(50ml)溶液に、アセトン(6.6g、121.74mmol)及び濃硫酸(89.48mg、0.913mmol)を室温で添加し、封管中、100℃で16時間加熱して反応させた。液体クロマトグラフィー質量分析法により、原料が完全に消費されたことが分かった。反応混合物を室温まで冷却し、ジクロロメタンで抽出し、有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ、真空下で濃縮した。生成物をカラムクロマトグラフィーで精製して、所望の化合物(800mg、収率48.3%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z273.1(M+H)
+.
【0133】
工程B:6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-4-((3,3,8-トリメチル-1,5-ジオキソ-1,2,3,5-テトラヒドロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-6-イル)アミノ)ニコチン酸エチル
【化34】
4-アミノ-6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)ニコチン酸エチル(612.9mg、1.852mmol)の1,4-ジオキサン(50ml)溶液に、6-ブロモ-3,3,8-トリメチル-2,3-ジヒドロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-1.5-ジオン(500mg、1.852mmol)、Pd
2(dba)
3(254.6mg、0.278mmol)、キサントホス(160.8mg、0.278mmol)、炭酸セシウム(1.822g、5.556mmol)を窒素保護下、室温で添加した。反応溶液を真空引きし、窒素で3回置換した。窒素保護下、反応溶液を105℃で12時間加熱した。TLC(石油エーテル/酢酸エチル=2/1、シリカゲルプレート)により、原料が完全に消費されたことが示された。混合物を室温まで冷却した。混合物を酢酸エチル(150ml×2)で抽出した。ひとまとめにした有機層をブライン(50ml×3)で洗浄し、有機層をひとまとめにし、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。生成物をクロマトグラフィーカラム(石油エーテル/酢酸エチル=1/1)で精製して、所望の化合物(311mg、収率32.2%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI+):m/z522.2(M+H)+.
【0134】
工程C:6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-4-((3,3,8-トリメチル-1,5-ジオキソ-1,2,3,5-テトラヒドロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-6-イル)アミノ)ニコチン酸
【化35】
6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-4-((3,3,8-トリメチル-1,5-ジオキソ-1,2,3,5-テトラヒドロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-6-イル)アミノ)ニコチン酸エチル(589mg、1.131mmol)を、テトラヒドロフラン(55ml)とメタノール(10ml)との混合溶液に室温で溶解させ、水酸化リチウム(142.4mg、3.392mmol)及び脱イオン水(10ml)を添加した。反応物を40℃で12時間加熱した。TLC(ジクロロメタン/メタノール=10/1、シリカゲルプレート)により、原料が完全に消費されたことが示された。混合物を室温まで冷却し、残渣をジエチルエーテル(50ml)で洗浄した。水層を1M塩酸水溶液でpH=6まで酸性化し、水相を乾燥するまで濃縮した。混合物に脱イオン水(10ml)を添加し、5分間撹拌し、濾過し、水及びメタノールで洗浄した。得られた固体を真空下で乾燥させて、化合物6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-4-((3,3,8-トリメチル-1,5-ジオキソ-1,2,3,5-テトラヒドロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-6-イル)アミノ)ニコチン酸(491mg、粗製)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z494.2(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ12.73(s,1H),9.35(s,1H),8.47(s,1H),7.15(d,J=8.3Hz,1H),7.06(s,1H),6.62(s,1H),6.56(d,J=2.3Hz,1H),6.47(dd,J=8.3,2.3Hz,1H),6.40(s,1H),4.33(d,J=5.5Hz,2H),3.80(s,3H),3.73(s,3H),2.33(s,3H),1.76(s,6H).
【0135】
工程D:8-アミノ-3,3,12-トリメチル-2,3,6,11-テトラヒドロイミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン-1,5-ジオン(化合物3)
【化36】
6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-4-((3,3,8-トリメチル-1,5-ジオキソ-1,2,3,5-テトラヒドロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-6-イル)アミノ)ニコチン酸(400mg、0.811mmol)とポリリン酸(15g)との混合物を130℃で12時間加熱した。TLC(ジクロロメタン/メタノール=10/1、シリカゲルプレート)により、原料が完全に消費されたことが示された。混合物を室温まで冷却した後、氷水へ注いだ。水層をジエチルエーテル(50ml)で洗浄し、1M水酸化ナトリウムでpH=7.5まで塩基性化し、酢酸エチル(150ml×4)で抽出し、ひとまとめにした有機層をブライン(50ml×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、標的化合物(251.1mg、95.2%)を黄色固体化合物3として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z326.0(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ11.88(s,1H),9.69(s,1H),8.80(s,1H),7.43(s,2H),6.88(s,1H),2.92(s,3H),1.81(s,6H).
【0136】
工程F:8-アミノ-3,3,12-トリメチル-2,3,6,11-テトラヒドロイミダゾ[1,5’:1.6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン誘導体-1,5-ジオン塩酸塩(化合物4)
【化37】
250ml封管中、亜鉛粉末(302mg、4.62mmol)を、8-アミノ-3,3,12-トリメチル-2,3-ジヒドロイミダゾ[1,5’:1.6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン-1,5,11(6H)-トリオン(150mg、0.462mmol)と酢酸(10ml)との混合溶液に室温で添加した。反応物質を147℃で3時間撹拌した。TLC(ジクロロメタン/メタノール=10/1、シリカゲルプレート)により、原料が完全に消費されたことが示された。反応混合物を室温まで冷却し、濾過し、濾液を乾燥するまで真空下で濃縮した。混合物を4Mジオキサンの塩酸(30ml)溶液に溶解させ、生成物を真空下で濃縮した。得られた濃縮物を逆相カラムクロマトグラフィー(アセトニトリル/水)で精製し、分取シリカゲルプレートで精製して、化合物4(6.1mg、収率4.2%)を茶色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z312.0(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6):δ12.49(s,1H),9.69(s,1H),9.57(s,1H),7.63(s,1H),6.95(s,2H),6.37(s,1H),3.86(s,2H),2.37(s,3H),1.77(s,6H).
【0137】
実施例3:化合物5及び6の合成
合成スキーム:
【化38】
【0138】
工程A:6-ブロモ-8-メチル-2H-スピロ[シクロペンタン-1,3-イミダゾ[1,5-a]ピリジン]-1,5-ジオン
【化39】
5-ブロモ-3-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2-ホルムアミド(1.5g、6.522mmol)の1,4-ジオキサン(50ml)溶液に、シクロペンタノン(8.229g、97.83mmol)及び濃硫酸(95.87mg、0.978mmol)を室温で添加し、反応混合物を100℃で16時間加熱した。液体クロマトグラフィー質量分析法により、原料が完全に消費されたことが分かった。反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチルで抽出し、有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ、真空下で濃縮した。生成物をカラムクロマトグラフィーで精製して、所望の化合物を得た。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、石油エーテル/酢酸エチル=1/1で溶出して、所望の化合物(1.4g、収率72.0%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z297.1(M+H)
+.
【0139】
工程B:6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-4-((8-メチル-1,5-ジオキソ-1,5-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロペンタン-1,3-イミダゾ[1,5-a]ピリジン]-6-イル)アミノ)ニコチン酸エチル
【化40】
6-ブロモ-8-メチル-2H-スピロ[シクロペンタン-1,3-イミダゾ[1,5-a]ピリジン]-1,5-ジオン(1.0g、3.78mmol)の1,4-ジオキサン(100ml)溶液に、4-アミノ-6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)ニコチン酸エチル(1.118g、3.378mmol)、Pd
2(dba)
3(464.1mg、0.507mmol)、キサントホス(293.2mg、0.507mmol)、炭酸セシウム(2.77g、8.45mmol)を窒素保護下、室温で添加した。窒素保護下、反応溶液を105℃で12時間加熱した。TLC(石油エーテル/酢酸エチル=2/1、シリカゲルプレート)により、原料が完全に消費されたことが示された。混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(150ml×2)で抽出した。ひとまとめにした有機層をブライン(50ml×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。生成物をクロマトグラフィーカラム(石油エーテル/酢酸エチル=1/1)で精製して、所望の化合物(611.0mg、収率33.1%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z548.2(M+H)
+.
【0140】
工程F:6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-4-((8-メチル-1,5-ジオキソ-1,5-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロペンタン-1,3-イミダゾ[1,5-a]ピリジン]-6-イル)アミノ)ニコチン酸
【化41】
6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-4-((8-メチル-1,5-ジオキソ-1,5-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロペンタン-1,3-イミダゾ[1,5-a]ピリジン]-6-イル)アミノ)ニコチン酸エチル(611mg、1.117mmol)を、テトラヒドロフラン(115ml)とメタノール(15ml)との混合溶液に溶解させ、水酸化リチウム(141mg、3.35mmol)及び脱イオン水(12ml)を添加した。反応物を60℃で12時間加熱した。TLC(ジクロロメタン/メタノール=10/1、シリカゲルプレート)により、原料が完全に消費されたことが示された。混合物を室温まで冷却し、残渣をジエチルエーテル(50ml)で洗浄した。水層を1M塩酸水溶液でpH=6まで酸性化した。混合物を乾燥するまで濃縮した。混合物に脱イオン水(10ml)を添加し、5分間撹拌し、濾過し、水及びメタノールで洗浄した。得られた固体を真空下で乾燥させて、標的化合物(551mg、95%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z520.2(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ11.03(s,1H),9.83(s,1H),8.55(s,1H),7.23(s,2H),7.15(d,J=8.3Hz,1H),6.58(d,J=2.0Hz,2H),6.49(dd,J=8.3,2.1Hz,1H),4.39(d,J=4.4Hz,2H),3.80(s,3H),3.74(s,3H),2.88-2.72(m,2H),2.38(s,3H),2.04-1.91(m,2H),1.88-1.73(m,2H),1.70-1.58(m,2H).
【0141】
工程G:8-アミノ-12-メチル-2H-スピロ[シクロペンタン-1,3-イミダゾ[1,5:1,6]ピリジン[3,4-b][1,6]ナフチリジン]-1,5,11(6H)-トリオン(化合物5)
【化42】
6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-4-((8-メチル-1,5-ジオキソ-1,5-ジヒドロ-2H-スピロ[シクロペンタン-1,3-イミダゾ[1,5-a]ピリジン]-6-イル)アミノ)ニコチン酸(551mg、1.062mmol)とポリリン酸(20g)との混合物を130℃で12時間加熱した。TLC(ジクロロメタン/メタノール=10/1、シリカゲルプレート)により、原料が完全に消費されたことが示された。混合物を室温まで冷却した後、氷水へ注いだ。水層をジエチルエーテル(50ml)で洗浄し、1M水酸化ナトリウムでpH=7.5まで塩基性化した後、ジクロロメタンとイソプロパノールとの混合溶媒(ジクロロメタン及びイソプロパノール=3/1、100ml×8)で抽出した。ひとまとめにした有機層をブライン(50ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。生成物を1N塩酸水溶液でpH=6.0に調整し、メタノール(10ml)に溶解させ、シリカゲルでサンプルに調製し、それを逆相カラムクロマトグラフィー(アセトニトリル/水)で精製して、化合物5(166.1mg、44.6%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z352.0(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ11.70(s,1H),9.96(s,1H),8.79(s,1H),6.98(s,2H),6.70(s,1H),2.94(s,3H),2.86-2.74(m,2H),2.02(qt,J=9.9,5.1Hz,2H),1.84(dd,J=15.4,10.9Hz,2H),1.73(dd,J=12.3,5.8Hz,2H).
【0142】
工程H:8’-アミノ-12’-メチル-6’,11’-ジヒドロ-2’H-スピロ[シクロペンタン-1,3’-イミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン]-1’,5’-ジオン(化合物6)
【化43】
250ml封管中、亜鉛粉末(224mg、3.42mmol)を、8-アミノ-12-メチル-2H-スピロ[シクロペンタン-1,3-イミダゾ[1,5:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン]-1,5,11(6H)-トリオン(化合物5)(120mg、0.342mmol)とNH
4OH(15ml)との混合溶液に室温で添加した。反応物質を105℃で12時間撹拌した。TLC(ジクロロメタン/メタノール=10/1、シリカゲルプレート)により、原料が完全に消費されたことが示された。反応混合物を室温まで冷却し、乾燥するまで真空下で濃縮した。混合物をテトラヒドロフラン(25ml)及びメタノール(25ml)に溶解させ、濾過した後、濾液を濃縮し、1N塩酸水溶液でpH=6.0に調整し、乾燥するまで真空下で濃縮した。得られた濃縮物を逆相カラムクロマトグラフィー(アセトニトリル/水)で精製して、化合物6(21.1mg、収率18.3%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z338.0(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6):δ12.34(s,1H),10.02(s,1H),9.93(s,1H),7.63(s,1H),7.37(s,2H),6.44(s,1H),3.88(s,2H),2.85-2.71(m,2H),2.38(s,3H),2.04-1.92(m,2H),1.89-1.76(m,2H),1.74-1.62(m,2H).
【0143】
実施例4:化合物7及び8の合成
合成スキーム:
【化44】
【0144】
工程A:6-ブロモ-3,8-ジメチル-3-フェニル-2,3-ジヒドロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-1,5-ジオン
【化45】
無水1,4-ジオキサン(50ml)に、5-ブロモ-3-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2-ホルムアミド(2.2g、9.57mmol)、アセトフェノン(17.24g、143.44mmol)、及び濃硫酸(140.6mg、1.43mmol)を室温で添加し、100℃まで加熱し、16時間撹拌した。TLCプレート(石油エーテル/酢酸エチル=2/1、シリカゲルプレート)により、出発材料が完全に消費されたことが分かった。反応溶液を常温まで冷却し、酢酸エチルで抽出し、ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、真空減圧下で濃縮した。濃縮残渣をシリカゲル溶出カラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=1/1)で精製して、白色の標的生成物(1.676g、変換率52.6%)を得た。
LC-MS(ESI
+):m/z333.0(M+H)
+.
【0145】
工程B:メチル-4-((3,8-ジメチル-1,5-ジオキソ-3-フェニル-1,2,3,5-テトラヒドロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-6-イル)アミノ)-6-((3-,4-メチルベンジル)アミノ)ニコチン酸エチル
【化46】
無水1,4-ジオキサン(14ml)に、6-ブロモ-3,8-ジメチル-3-フェニル-2,3-ジヒドロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-1,5-ジオン(550mg、1.66mmol)、4-アミノ-6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)ニコチン酸エチル(500mg、1.49mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(152mg、0.166mmol)、4,5-ビス(ジフェニルホスフィン)-9,9-ジメチルキサンテン(192mg、0.332mmol)、炭酸セシウム(1.09g、3.323mmol)を無水及び無酸素条件下、室温で添加した。反応溶液を真空引きし、窒素で3回置換した後、反応混合物をマイクロ波で120℃で3.5時間反応させた。LC-MSにより、原料が完全に消費されたことが示された。混合物に水(50ml)を添加し、酢酸エチル(50ml×3)で抽出した。ひとまとめにした有機層をブライン(50ml×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。濃縮生成物をクロマトグラフィーカラム(石油エーテル/酢酸エチル=1/1)で精製して、黄色の標的生成物(725mg、変換率82.4%)を得た。
LC-MS(ESI
+):m/z584.4(M+H)
+.
【0146】
工程C:4-((3,8-ジメチル-1,5-ジオキソ-3-フェニル-1,2,3,5-テトラヒドロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-6-イル)アミノ)-6-((3-,4-ジメチルベンジル)アミノ)ニコチン酸
【化47】
テトラヒドロフラン(40ml)に、4-((3,8-ジメチル-1,5-ジオキソ-3-フェニル-1,2,3,5-テトラヒドロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-6-イル)アミノ)-6-(-(3,4-ジメチルベンジル)アミノ)ニコチン酸エチル(1.45g、2.49mmol)、水(10ml)、水酸化リチウム(627mg、14.9mmol)を無酸素環境において室温で添加し、65℃まで加熱し、16時間撹拌した。LC-MSにより、原料が完全に消費されたことが示された。混合物を室温まで冷却し、真空下で濃縮した。混合物に水(10ml)を添加し、5分間撹拌し、1M塩酸溶液でpH5に調整し、濾過して、標的生成物(1.34g、収率97%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z556.4(M+H)
+.
【0147】
工程D:8-アミノ-3,12-ジメチル-3-フェニル-2,3-ジヒドロイミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-B][1,6]ナフチリジン-1,5,11(6H)-トリオン(化合物7)
【化48】
ポリリン酸(30ml)と4-((3,8-ジメチル-1,5-ジオキシン-3-フェニル-1,2,3,5-テトラヒドロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-6-イル)アミノ)-6-((3,4-ジメチルフェニル)アミノ)ニコチン酸(1.2g、2.162mmol)との混合物を130℃まで加熱し、16時間反応させた。LC-MSにより、原料が完全に消費されたことが示された。混合物を常温まで冷却し、氷水へ注ぎ、炭酸ナトリウム飽和溶液でpH7.0に調整し、ジクロロメタン/イソプロパノール混合有機溶媒(ジクロロメタン/イソプロパノール=3/1)(150ml×4)で抽出し、綿状沈降物を濾別した。有機相を濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィーで精製して、標的生成物7(182mg、収率21.71%)を緑色固体として得た。
LC-MS(ESI+):m/z388.0(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ11.67(s,1H),10.00(s,1H),8.80(s,1H),7.44-7.35(m,5H),7.35(s,2H),6.70(s,1H),2.99(s,3H),2.66(s,3H).
【0148】
工程5:8-アミノ-3,12-ジメチル-3-フェニル-2,3,6,11-テトラヒドロイミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン-1,5-ジオン塩酸塩(化合物8)
【化49】
亜鉛粉末(281mg、4.4mmol)を、8-アミノ-3,12-ジメチル-3-フェニル-2,3-ジヒドロイミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-B][1,6]ナフチリジン-1,5,11(6H)-トリオン(170mg、0.44mmol)を含有するアンモニア溶液(40ml)に室温で添加した。350ml封管中、反応物を100℃で16時間撹拌した。LC-MSにより、原料が完全に消費されたことが示された。反応混合物を室温まで冷却し、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。濃縮生成物を塩酸のメタノール溶液に溶解させ、逆相カラムクロマトグラフィー(メタノール/水=33/100)で精製して、標的生成物8(10.6mg、収率6.4%)をピンク色固体として得た。
LC-MS(ESI+):m/z374.0(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO)δ12.32(s,1H),9.94(s,1H),9.88(s,1H),7.63(s,1H),7.41-7.26(m,7H),6.35(s,1H),3.91(s,2H),2.45(s,3H),2.23(s,3H).
【0149】
実施例5:化合物9及び10の合成
合成スキーム:
【化50】
【0150】
工程A:6-ブロモ-3-(3-フルオロフェニル)-3,8-ジメチル-2,3-ジヒドロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-1,5-ジオン
【化51】
ジオキサン(50ml)溶媒に、5-ブロモ-3-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2-ホルムアミド(1.7g、7.35mmol)、3-フルオロベンゾフェノン(10.1g、73.5mmol)、濃硫酸(72mg、0.74mmol)を順次添加し、反応物を100℃で16時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、水で希釈し、酢酸エチル(50ml×2)で抽出した。有機相を乾燥させ、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(移動相:石油エーテル/酢酸エチル=1/1)にかけて、白色生成物(1.4g、収率:54.3%)を得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ7.77(s,1H),7.34(td,J=8.1,5.9Hz,1H),7.23(ddd,J=7.9,1.8,0.9Hz,1H),7.14(dt,J=9.9,2.2Hz,1H),7.06(tdd,J=8.2,2.5,0.8Hz,1H),6.90(s,1H),2.53(s,3H),2.34(s,3H).
LC-MS(ESI
+):m/z352.2(M+H)
+.
【0151】
工程B:6-(2,4-ジメトキシベンジルアミノ)-4-(3-(3-フルオロフェニル)-3,8-ジメチル-1,5-ジオキソ-1,2,3,5-テトラヒドロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-6-イルアミノ)ニコチン酸エチル
【化52】
25mlマイクロ波管に、ジオキサン(2ml)、4-アミノ-6-(2,4-ジメトキシベンジルアミノ)ニコチン酸エチル(1.4g、3.98mmol)、6-ブロモ-3-(3-フルオロフェニル)-3,8-ジメチル-2,3-ジヒドロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-1,5-ジオン(1.15g、3.48mmol)、ビ-トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(354mg、0.386mmol)、4,5-ビス(ジフェニルホスフィン)-9,9-ジメチルキサンテン(449mg、0.77mmol)、炭酸セシウム(2.54g、7.73mmol)を窒素保護下で順次添加し、マイクロ波で120℃で4時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却し、水へ注ぎ、酢酸エチル(50ml×2)で抽出した。有機相を乾燥させ、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=1:1)にかけて、黄色固体(1.5g、収率:62.5%)を得た。
LC-MS(ESI
+):m/z602.3(M+H)
+.
【0152】
工程C:6-(2,4-ジメトキシベンジルアミノ)-4-(3-(3-フルオロフェニル)-3,8-ジメチル-1,5-ジオキソ-1,2,3,5-テトラヒドロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-6-イルアミノ)ニコチン酸
【化53】
テトラヒドロフラン(150ml)と水(100ml)との混合溶液に、6-(2,4-ジメトキシベンジルアミノ)-4-(3-(3-フルオロフェニル)-3,8-ジメチル-1,5-ジオキソ-1,2,3,5-テトラヒドロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-6-イルアミノ)ニコチン酸エチル(1.5g、2.5mmol)、水酸化リチウム(1.05g、25mmol)を添加し、混合物を60℃で12時間加熱して反応させた。混合物を室温まで冷却し、減圧させてテトラヒドロフランを除去し、水相を1M塩酸でpH6に調整した。固体の沈殿が見られた。濾過して得られた濾過ケークを真空下で乾燥させて、黄色固体(1.6g、粗製)を得た。
LC-MS(ESI
+):m/z574.3(M+H)
+.
【0153】
工程D:8-アミノ-3-(3-フルオロフェニル)-3,12-ジメチル-2,3-ジヒドロイミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフトピリジン-1,5,11(6H)-トリオン(化合物9)
【化54】
トリフルオロメタンスルホン酸とポリリン酸との混合溶媒(トリフルオロメタンスルホン酸/ポリリン酸=5/1、10ml)に、6-(2,4-ジメトキシベンジルアミノ)-4-(3-(3-フルオロフェニル)-3,8-ジメチル-1,5-ジオキソ-1,2,3,5-テトラヒドロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-6-イルアミノ)ニコチン酸(700mg、1.22mmol)を添加し、反応系を130℃で12時間加熱して反応させた。室温まで冷却後、混合物を氷水へ注ぎ、炭酸ナトリウム飽和溶液でpH=7.5に調整した後、ジクロロメタンとイソプロパノールとの混合溶媒(ジクロロメタン及びイソプロパノール=3/1、100ml×8)で抽出した。ひとまとめにした有機層をブライン(50ml×1)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。生成物を逆相カラムクロマトグラフィー(アセトニトリル/水)で精製して、標的生成物9(103mg、収率:20.8%)を黄色固体として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ11.44(s,1H),9.95(s,1H),8.79(s,1H),7.49-7.36(m,1H),7.31(dt,J=10.5,2.1Hz,1H),7.20(td,J=8.3,2.3Hz,2H),6.70(s,2H),6.50(s,1H),3.00(s,3H),2.23(s,3H).
LC-MS(ESI
+):m/z406.3(M+H)
+.
【0154】
工程E:8-アミノ-3-(トリフルオロフェニル)-3,12-ジメチル-2,3,6,11-テトラヒドロイミダゾ[1,5’:1.6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン誘導体-1,5-ジオン塩酸塩(化合物10)
【化55】
250ml封管中、8-アミノ-3-(3-フルオロフェニル)-3,12-ジメチル-2,3-ジヒドロイミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフトピリジン-1,5,11(6H)-トリオン(78mg、0.19mmol)及び亜鉛粉末(128mg、1.97mmol)をアンモニア水10mlに添加し、100℃で一晩加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、固体残渣を濾別し、濾液を真空下で濃縮した。生成物を塩酸のジオキサン(20ml)溶液に溶解させ、逆相カラムクロマトグラフィー(アセトニトリル/水)で精製して、赤色固体化合物10(15mg、収率:19.9%)を得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6):δ12.45(s,1H),9.97(s,1H),9.90(s,1H),7.64(s,1H),7.48-7.34(m,3H),7.27-7.13(m,3H),6.36(s,1H),3.91(s,2H),2.43(s,3H),2.21(s,3H).
LC-MS(ESI
+):m/z392.2(M+H)
+.
【0155】
実施例6:化合物11及び12の合成
合成スキーム:
【化56】
【0156】
工程A:6-メチル-4-((8-メチル-1,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-スピロ[シクロヘキサン-1,3-イミダゾ[1,5-a]ピリジン]-6-イル)アミノ)ニコチン酸メチル
【化57】
原料の4-アミノ-6-メチルニコチン酸メチル(510mg、3.07mmol)、原料の6-ブロモ-8-メチル-1H-スピロ[シクロヘキサン-1,3-イミダゾ[1,5-a]ピリジン]-1,5(2H)-ジオン(1.05g、3.38mmol)、Pd
2(dba)
3(280mg、0.31mmol)、キサントホス(356mg、0.61mmol)、及び炭酸セシウム(2.0g、6.14mmol)を窒素保護下、1,4-ジオキサン(15ml)中で室温にて混合した。窒素で置換した後、マイクロ波条件下、120℃で3.5時間反応を実施した。LC-MS検出により、原料が完全に変換されたことが分かった。反応溶液を室温まで冷却し、酢酸エチル(50ml)と水(100ml)との混合物へ注いだ。次いで、混合物を濾過し、濾過ケークを酢酸エチル20mlで洗浄し、乾燥するまで真空引きし、トルエンで2回水の除去を行って、生成物(1.41g、収率90%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z397.0(M+H)
+.
【0157】
工程B:6-メチル-4-((8-メチル-1,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-スピロ[シクロヘキサン-1,3-イミダゾ[1,5-a]ピリジン]-6-イル)アミノ)ニコチン酸
【化58】
6-メチル-4-((8-メチル-1,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-スピロ[シクロヘキサン-1,3-イミダゾ[1,5-a]ピリジン]-6-イル)アミノ)ニコチン酸メチル(1.4g、3.5mmol)及び水酸化リチウム一水和物(600mg、14.0mmol)をテトラヒドロフラン(40ml)及び水(20ml)中で室温にて混合した。反応物を65℃で16時間加熱した。LC-MSにより、完全に変換されたことが分かった。有機溶媒をロータリーエバポレーションで除去した。残留した水相をジクロロメタン(40ml)で抽出した後、水層を4M塩酸溶液でpH=4まで酸性化した。混合物を濾過し、濾過ケークを乾燥させて、黄色固体生成物(1.07g、収率80%)を得た。
LC-MS(ESI
+):m/z383.0(M+H)
+.
【0158】
工程C:8’,12’-ジメチル-1’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン]-1’,5’,11’(2’H,6’H)-トリオン(化合物11)
【化59】
6-メチル-4-((8-メチル-1,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-スピロ[シクロヘキサン-1,3-イミダゾ[1,5-a]ピリジン]-6-イル)アミノ)ニコチン酸(450mg、1.18mmol)をトリフルオロメタンスルホン酸及びポリリン酸(トリフルオロメタンスルホン酸/ポリリン酸=5/1、7ml)中で混合した。混合物を130℃で18時間撹拌した。LC-MSにより、原料が完全に消費されたことが分かった。反応溶液を室温まで冷却し、氷水(10ml)及びメタノール(10ml)へ注ぎ、混合物を炭酸ナトリウム飽和溶液(60ml)へ注ぎ、ジクロロメタンとイソプロパノールとの混合溶媒(ジクロロメタン及びイソプロパノール=3/1、70ml×6)で抽出した。抽出物をひとまとめにし、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。残渣をジクロロメタン/メタノール(30ml/1.5ml)中で半時間撹拌した後、混合物を濾過した。濾過ケークを乾燥させて、生成物(400mg、収率93%)を黄色固体化合物11として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6):δ12.07(s,1H),10.23(s,1H),9.15(s,1H),7.66(s,1H),2.97(m,5H),2.55(s,3H),1.70(m,5H),1.53(d,J=12.1Hz,2H),1.25(m,1H).
LC-MS(ESI
+):m/z365.0(M+H)
+.
【0159】
工程D:8,12-ジメチル-6,11-ジヒドロ-1H-スピロ[シクロヘキサン-1,3-イミダゾ[1,5:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン]-1,5(2H)-ジオン塩酸塩(化合物12)
【化60】
8,12-メチル-1H-スピロ[シクロヘキサン-1,3-イミダゾ[1,5:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]シクロアルカン]-1,5,11(2H,6H)-トリオン(100mg、0.275mmol)及び亜鉛粉末(180mg、2.75mmol)をアンモニア水(15ml)中で混合した。封管中、反応物を加熱し、100℃で16時間撹拌した。LC-MS検出により、原料が完全に消費されたことが分かった。反応混合物を室温まで冷却した。ロータリーエバポレーション後、混合物をテトラヒドロフラン(25ml)及びメタノール(25ml)に溶解させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。生成物を1N塩酸溶液でpH=6.0まで酸性化した。生成物を真空下で濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィー(メタノール/水)で精製して、標的化合物(15.0mg、収率15%)を黄色固体化合物12として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6):δ13.94(s,1H),10.28(s,1H),10.22(s,1H),8.23(s,1H),7.16(s,1H),4.10(s,2H),2.97(m,2H),2.45(s,3H),2.40(s,3H),1.79-1.58(m,5H),1.45(d,J=12.3Hz,2H),1.26-1.18(m,1H).
LC-MS(ESI
+):m/z351.0(M+H)
+.
【0160】
実施例7:化合物13及び14の合成
合成スキーム:
【化61】
【0161】
工程A:6-ブロモ-3-(3-クロロフェニル)-3,8-ジメチル-2,3-ジヒドロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-1,5-ジオン
【化62】
5-ブロモ-3-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2-ホルムアミド(1.5g、6.522mmol)の1,4-ジオキサン(50ml)溶液に、1-(3-クロロフェニル)エタン-1-オン(10.1g、65.22mmol)及び濃硫酸(95.9mg、0.978mmol)を室温で添加し、反応混合物を100℃で16時間加熱した。LC-MSにより、原料が完全に消費されたことが分かった。反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(50ml×2)で抽出し、ブラインで洗浄し、乾燥させ、真空下で濃縮した。生成物をカラムクロマトグラフィーで精製して、所望の化合物(1.23g、収率51.5%)を淡黄色固体として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6):δ10.17(s,1H),8.09(s,1H),7.50-7.35(m,3H),7.30-7.24(m,1H),2.44(s,3H),2.17(s,3H).
LC-MS(ESI
+):m/z367.0 369.0(M+H)
+.
【0162】
工程B:4-((3-(3-クロロフェニル)-3,8-ジメチル-1,5-ジオキソ-1,2,3,5-テトラヒドロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-6-イル)アミノ)-6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)ニコチン酸エチル
【化63】
4-アミノ-6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)ニコチン酸エチル(1.224g、3.696mmol)の1,4-ジオキサン(150ml)溶液に、6-ブロモ-3-(3-クロロフェニル)-3,8-ジメチル-2,3-ジヒドロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-1,5-ジオン(1.23g、3.36mmol)、Pd
2(dba)
3(461.8mg、0.504mmol)、キサントホス(291.7mg、0.504mg)、炭酸セシウム(2.76g、8.403mmol)を窒素保護下、室温で添加した。反応溶液を窒素で3回置換し、窒素保護下、反応混合物を105℃で12時間加熱した。TLC(石油エーテル/酢酸エチル=2/1、シリカゲルプレート)により、原料が完全に消費されたことが示された。反応混合物を室温まで冷却し、水(30ml)へ注ぎ、黄色固体が形成された。黄色固体を濾過で分離し、酢酸エチル(10ml×2)及び水(10ml×2)で洗浄した。固体を真空下で乾燥させて、所望の化合物(700.1mg、収率33.8%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z618.4(M+H)
+.
【0163】
工程C:4-((3-(3-クロロフェニル)-3,8-ジメチル-1,5-ジオキソ-1,2,3,5-テトラヒドロイミダゾール[1,5-a]ピリジン-6-イル)アミノ)-6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)ニコチン酸
【化64】
室温で、4-((3-(3-クロロフェニル)-3,8-ジメチル-1,5-ジオキソ-1,2,3,5-テトラヒドロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-6-イル)アミノ)-6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)ニコチン酸エチル(700mg、1.135mmol)をテトラヒドロフラン(90ml)及びエタノール(10ml)に溶解させ、水酸化リチウム(476.5mg、11.35mmol)及び脱イオン水(10ml)を添加した。反応物を60℃で12時間加熱した。TLC(ジクロロメタン/メタノール=10/1、シリカゲルプレート)により、原料が完全に消費されたことが示された。混合物を真空下で濃縮し、水(100ml)に溶解させ、水層をジエチルエーテル(30ml)で洗浄した。水層を1M塩酸水溶液でpH=6.0まで酸性化して、黄色固体を形成した。固体を濾過で分離し、真空下で乾燥させて、標的化合物(651mg、97.4%)を黄色固体として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ9.83(s,1H),8.51(s,1H),7.51(dd,J=13.1,5.9Hz,1H),7.44-7.37(m,4H),7.29-7.20(m,4H),7.15(d,J=8.3Hz,1H),6.58(d,J=2.4Hz,1H),6.48(dd,J=8.4,2.3Hz,1H),4.39(d,J=4.4Hz,2H),3.80(s,3H),3.74(s,3H),2.45(s,3H),2.19(s,3H).
LC-MS(ESI
+):m/z590.2(M+H)
+.
【0164】
工程D:8-アミノ-3-(3-クロロフェニル)-3,12-ジメチル-2,3-ジヒドロイミダゾール[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフトピリジン-1,5,11(6H)-トリオン(化合物13)
【化65】
4-((3-(3-クロロフェニル)-3,8-ジメチル-1,5-ジオキソ-1,2,3,5-テトラヒドロイミダゾ[1,5-a]ピリジン-6-イル)アミノ)-6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)ニコチン酸(651mg、1.105mmol)をトリフルオロメタンスルホン酸及びポリリン酸(トリフルオロメタンスルホン酸/ポリリン酸=5/1、15ml)に溶解させ、混合物を130℃で12時間加熱した。TLC(ジクロロメタン/メタノール=10/1、シリカゲルプレート)により、原料が完全に消費されたことが示された。混合物を室温まで冷却した後、混合物を氷水へ注いだ。水層をジエチルエーテル(50ml)で洗浄し、1M水酸化ナトリウム水溶液でpH=7.0まで塩基性化した後、ジクロロメタンとイソプロパノールとの混合溶媒(ジクロロメタン及びイソプロパノール=3/1、100ml×8)で抽出した。ひとまとめにした有機層をブライン(50ml×1)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。生成物を酢酸エチル(10ml×2)で洗浄した後、メタノール(10ml×2)で洗浄した。得られた固体を真空下で乾燥させて、標的化合物(398.1mg、85.6%)を黄色固体化合物13として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ11.44(s,1H),9.95(s,1H),8.79(s,1H),7.53(s,1H),7.50-7.29(m,3H),6.69(s,2H),6.51(d,J=11.1Hz,1H),3.00(s,3H),2.23(s,3H).
LC-MS(ESI
+):m/z422.0(M+H)
+.
【0165】
工程E:8-アミノ-3-(3-クロロフェニル)-3,12-ジメチル-2,3,6,11-テトラヒドロイミダゾール[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン-1,5-ジオン塩酸塩(化合物14)
【化66】
250ml封管中、亜鉛粉末(310.7mg、4.75mmol)を、8-アミノ-3-(3-クロロフェニル)-3,12-ジメチル-2,3-ジヒドロイミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン-1,5,11(6h)-トリオン(200mg、0.475mmol)とアンモニア水(50ml)との混合溶液に添加した。反応物質を105℃で12時間撹拌した。TLC(ジクロロメタン/メタノール=10/1、シリカゲルプレート)により、原料が完全に消費されたことが示された。反応混合物を室温まで冷却し、真空下で濃縮した。混合物をテトラヒドロフラン(50ml)及びメタノール(50ml)に溶解させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。生成物を1N塩酸水溶液でpH=6.0まで酸性化し、生成物を真空下で濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィー(アセトニトリル/水)で精製して、標的化合物14(25.7mg、収率13.3%)を黄色固体として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6):δ12.37(s,1H),9.98(s,1H),9.90(s,1H),7.63(s,1H),7.49-7.35(m,5H),7.31(d,J=7.1Hz,1H),6.36(s,1H),3.91(s,2H),2.43(s,3H),2.20(s,3H).
LC-MS(ESI
+):m/z408.2(M+H)
+.
【0166】
実施例8:化合物15及び16の合成
合成スキーム:
【化67】
【0167】
工程A:4-((8’-メチル-1’,5’-ジオキソ-2’,5’-ジヒドロ-1’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1,5-a]ピリジン]-6’-イル)アミノ)ニコチン酸メチル
【化68】
原料である4-アミノニコチン酸メチル(500mg、3.29mmol)、6-ブロモ-8-メチル-1H-スピロ[シクロヘキサン-1,3-イミダゾ[1,5-a]ピリジン]-1,5(2H)-ジオン(1.02g、3.29mmol)、Pd
2(dba)
3(300mg、0.33mmol)、キサントホス(380mg、0.66mmol)、及び炭酸セシウム(2.15g、6.58mmol)を1,4-ジオキサン(15ml)中で混合し、窒素で置換した後、マイクロ波条件下、反応物を120℃で6時間加熱した。LC-MS検出により、原料が生成物へ完全に変換されたことが分かった。反応溶液を酢酸エチル(50ml)と水(100ml)との混合物へ注いだ。次いで、混合物を濾過し、濾過ケークを乾燥するまで真空引きし、トルエンで2回水の除去を行って、黄色固体生成物(1.16g、収率92%)を得た。
LC-MS(ESI
+):m/z383.0(M+H)
+.
【0168】
工程B:4-((8-メチル-1,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-スピロ[シクロヘキサン-1,3-イミダゾ[1,5-a]ピリジン]-6-イル)アミノ)ニコチン酸
【化69】
4-((8-メチル-1,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-スピロ[シクロヘキサン-1,3-イミダゾ[1,5-a]ピリジン]-6-イル)アミノ)ニコチン酸メチル(1.34g、3.5mmol)及び水酸化リチウム一水和物(600mg、14.0mmol)をテトラヒドロフラン(70ml)、メタノール(20ml)、及び水(40ml)中で室温にて混合した。反応物を65℃で18時間加熱した。LC-MSにより、完全に変換されたことが分かった。有機溶媒をロータリーエバポレーションで除去した。残留した水相をジクロロメタン(40ml)で抽出した。次いで、水層を4mol/L塩酸溶液でpH=4まで酸性化した。混合物を濾過し、濾過ケークを乾燥させて、生成物(1.1g、収率85%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z369.0(M+H)
+.
【0169】
工程C:12’-メチル-1’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン]-1’,5’,11’(2’H,6’H)-トリオン(化合物15)
【化70】
4-((8-メチル-1,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-スピロ[シクロヘキサン-1,3-イミダゾ[1,5-a]ピリジン]-6-イル)アミノ)ニコチン酸(400mg、1.09mmol)をトリフルオロメタンスルホン酸及びポリリン酸(トリフルオロメタンスルホン酸/ポリリン酸=5/1、10ml)中で混合し、混合物を130℃で40時間撹拌した。LC-MSにより、原料が完全に消費されたことが分かった。反応溶液を室温まで冷却し、氷水(10ml)及びメタノール(10ml)へ注いだ。混合物を炭酸ナトリウム飽和溶液(80ml)へ注ぎ、ジクロロメタンとイソプロパノールとの混合溶媒(ジクロロメタン及びイソプロパノール=3/1、80ml×6)で抽出した。抽出物をひとまとめにし、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。残渣をジクロロメタン/メタノール(30ml/1.5ml)中で1時間撹拌した後、混合物を濾過した。濾過ケークを乾燥させて、生成化合物15(350mg、収率91%)を黄色固体として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6):δ12.70(s,1H),10.39(s,1H),9.31(s,1H),8.74(d,J=6.4Hz,1H),8.14(d,J=6.4Hz,1H),2.97(m,5H),1.87-1.62(m,5H),1.54(d,J=11.8Hz,2H),1.31-1.20(m,1H).
LC-MS(ESI
+):m/z351.0(M+H)
+.
【0170】
工程D:12-メチル-6,11-ジヒドロ-1H-スピロ[シクロヘキサン-1,3-イミダゾ[1,5:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン]-1,5(2H)-ジオン塩酸塩(化合物16)
【化71】
12’-メチル-1’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン]-1’,5’,11’(2’H,6’H)-トリオン(200mg、0.0.573mmol)及び亜鉛粉末(372.5mg、5.73mmol)をアンモニア水(40ml)中で混合した。封管中、反応物を105℃に加熱して16時間撹拌した。LC-MS検出により、原料が完全に消費されたことが分かった。反応混合物を乾燥するまで濃縮した。粗製生成物を4M塩酸のメタノール(10ml)溶液に溶解させた後、真空下で濃縮した。生成物を逆相カラムクロマトグラフィー(アセトニトリル/水)で精製して、標的化合物16(16.5mg、収率8.6%)を黄色固体として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6):δ13.93(s,1H),10.40(s,1H),10.23(s,1H),8.31(s,1H),8.27(d,J=6.8Hz,1H),7.36(d,J=6.7Hz,1H),4.15(s,2H),2.96(t,J=11.1Hz,2H),2.40(s,3H),1.81-1.57(m,5H),1.45(d,J=11.9Hz,2H),1.29-1.14(m,1H).
LC-MS(ESI
+):m/z337.0(M+H)
+.
【0171】
実施例9:化合物17及び18の合成
合成スキーム:
【化72】
【0172】
工程A:6-ブロモ-1’,8-ジメチル-2H-スピロ[イミダゾ[1,5-a]ピリジン-3,4’-ピぺリジン]-1,5-ジオン
【化73】
封管中、無水1,4-ジオキサン(8ml)に、5-ブロモ-3-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2-ホルムアミド(800mg、3.48mmol)、1-メチルピぺリジン-4-オン(472mg、4.17mmol)、及び塩酸のジオキサン(4M、8ml)溶液を室温で添加し、110℃まで加熱し、封管内で16時間反応させた。LC-MSにより、出発材料が完全に消費されたことが分かった。反応溶液を減圧下で濃縮した。濃縮粗製生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=10/1)で精製して、黄色の標的生成物(1g、収率88.2%)を得た。
LC-MS(ESI
+):m/z326.0(M+H)
+.
【0173】
工程B:6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-4-((1’,8-ジメチル-1,5-ジオキソ-1,5-ジヒドロ-2H-スピロ[イミダゾ[1,5-a]ピリジン-3,4’-ピペリジル]-6-イル)アミノ)ニコチン酸エチル
【化74】
無水1,4-ジオキサン(13ml)に、6-ブロモ-1’,8-ジメチル-2H-スピロ[イミダゾ[1,5-a]ピリジン-3,4’-ピぺリジン]-1,5-ジオン(700mg、2.15mmol)、4-アミノ-6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)ニコチン酸エチル(643.58mg、1.94mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(197.3mg、0.215mmol)、4,5-ビス(ジフェニルホスフィン)-9,9-ジメチルキサンテン(249.3mg、0.43mmol)、炭酸セシウム(1.407g、4.3mol)を無水及び無酸素条件下、室温で添加した。反応溶液を窒素で3回置換し、反応混合物を窒素保護下、マイクロ波で120℃で4時間反応させた。LC-MSにより、原料が完全に消費されたことが示された。反応混合物を室温まで冷却し、水(30ml)へ注いだ。黄色固体が形成された。黄色固体を濾過で分離し、酢酸エチル(10ml×2)及び水(10ml×2)で洗浄した。固体を真空下で乾燥させて、所望の化合物(650mg、収率53.5%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z577.4(M+H)
+.
【0174】
工程C:6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-4-((1’,8-ジメチル-1,5-ジオキソ-1,5-ジヒドロ-2H-スピロ[イミダゾ[1,5-a]ピリジン-3,4’-ピペリジル]-6-イル)アミノ)ニコチン酸
【化75】
テトラヒドロフラン(100ml)に、6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-4-((1’,8-ジメチル-1,5-ジオキソ-1,5-ジヒドロ-2H-スピロ[イミダゾ[1,5-a]ピリジン-3,4’-ピペリジル]-6-イル)アミノ)ニコチン酸エチル(1.3g、2.25mmol)、脱イオン水(20ml)、水酸化リチウム(567.37mg、13.51mmol)を室温で添加した後、65℃まで加熱し、16時間撹拌した。LC-MSにより、原料が完全に消費されたことが示された。混合物を室温まで冷却し、濾過した。濾液を1M塩酸溶液でpH=7に調整して、黄色固体を形成した。固体を濾過で分離し、真空下で乾燥させて、標的化合物(750mg、収率60.6%)を得た。
LC-MS(ESI
+):m/z549.4(M+H)
+.
【0175】
工程D:8-アミノ-1’,12-ジメチル-2H-スピロ[イミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-B][1,6]ナフチリジン-3,4’-ピぺリジン]-1,5,11(6H)-トリオン(化合物17)
【化76】
6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-4-((1’,8-ジメチル-1,5-ジオキソ-1,5-ジヒドロ-2H-スピロ[イミダゾ[1,5-a]ピリジン-3,4’-ピペリジル]-6-イル)アミノ)ニコチン酸(700mg、1.277mmol)をトリフルオロメタンスルホン酸及びポリリン酸(トリフルオロメタンスルホン酸/ポリリン酸=5/1、25ml)に溶解させ、130℃まで加熱し、撹拌下で16時間反応させた。LC-MSにより、出発材料が完全に消費されたことが分かった。混合物を常温まで冷却し、氷水へ注ぎ、炭酸ナトリウム飽和溶液でpH=7に調整した。不溶性固体の沈殿が見られた。混合物を濾過し、濾過ケークを逆相カラムクロマトグラフィー(メタノール/水)で精製して、標的化合物17(198.4mg、収率40.91%)を緑色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z381.4(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ11.71(s,1H),9.99(s,1H),8.81(s,1H),7.18(s,2H),6.80(s,1H),3.66(d,J=11.1Hz,2H),3.42(t,2H),3.34-3.24(m,2H),2.95(s,3H),2.81(s,3H),1.89(d,J=12.8Hz,2H).
【0176】
工程E:8-アミノ-1’,12-ジメチル-6,11-ジヒドロ-2H-スピロ[イミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-B][1,6]ナフチリジン-3,4’-ピぺリジン]-1,5-ジオン(化合物18)
【化77】
8-アミノ-1’,12-ジメチル-2H-スピロ[イミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-B][1,6]ナフチリジン-3,4’-ピぺリジン]-1,5,11(6H)-トリオン(100mg、0.263mmol)のエタノール(5ml)溶液に、亜鉛粉末(336.8mg、5.263mmol)及び水酸化ナトリウム溶液(1M、5ml)を室温で添加した。反応溶液を78℃まで加熱し、16時間撹拌した。LC-MSにより、原料が完全に消費されたことが示された。反応混合物を室温まで冷却し、濾過し、濾液を1M塩酸溶液でpH=5に調整し、真空下で濃縮した。粗製生成物を逆相カラムクロマトグラフィー(メタノール/水)で精製して、表題化合物(2.5mg、収率2.5%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z367.2(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ12.56(s,1H),10.29(s,1H),9.96(s,2H),7.65(s,1H),7.46(s,2H),6.49(s,1H),3.90(s,2H),3.64(d,J=11.1Hz,2H),3.46-3.37(m,2H),3.31-3.21(m,2H),2.80(s,3H)2.39(s,3H),1.82(d,J=12.8Hz,2H).
【0177】
実施例10:化合物19の合成
合成スキーム:
【化78】
【0178】
工程A:6-ブロモ-8-メチル-2’,3’,5’,6’-テトラヒドロ-2H-スピロ[イミダゾ[1,5-a]ピリジン-3,4’-ピラン]-1,5-ジオン
【化79】
5-ブロモ-3-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-2-ホルムアミド(1.5g、6.522mmol)の1,4-ジオキサン(50ml)溶液に、テトラヒドロ-4H-ピラン-4-オン(6.52g、65.22mmol)及び濃硫酸(95.9mg、0.978mmol)を室温で添加し、反応混合物を100℃で16時間加熱した。LC-MSにより、原料が完全に消費されたことが分かった。反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(50ml×2)で抽出し、ブラインで洗浄し、乾燥させ、真空下で濃縮した。生成物をカラムクロマトグラフィーで精製して、所望の化合物(1.31g、収率64.4%)を白色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z313.0(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6):δ10.63(s,1H),8.05(s,1H),3.92(dd,J=11.7,5.1Hz,2H),3.66(t,J=11.8Hz,2H),3.17(td,J=13.0,5.4Hz,2H),2.39(s,3H),1.43(d,J=12.8Hz,2H).
【0179】
工程B:6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-4-((8-メチル-1,5-ジオキソ-1,2’,3’,5,5’,6’-ヘキサヒドロ-2H-スピロ[イミダゾ[1,5-a]ピリジン-3,4’-ピラン]-6-イル)アミノ)ニコチン酸エチル
【化80】
4-アミノ-6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)ニコチン酸エチル(1.05g、3.17mmol)の1,4-ジオキサン(150ml)溶液に、6-ブロモ-8-メチル-2’,3’,5’,6’-テトラヒドロ-2H-スピロ[イミダゾ[1,5-a]ピリジン-3,4’-ピラン]-1,5-ジオン(900mg、2.885mmol)、Pd
2(dba)
3(396.4mg、0.433mmol)、キサントホス(250.5mg、0.433mmol)、炭酸セシウム(2.35g、7.213mmol)を窒素保護下、室温で添加した。反応溶液を窒素で3回置換し、反応混合物を窒素保護下、105℃で12時間加熱した。TLC(石油エーテル/酢酸エチル=2/1、シリカゲルプレート)により、原料が完全に消費されたことが示された。反応混合物を室温まで冷却し、水(30ml)へ注いだ。黄色固体が形成された。黄色固体を濾過で分離し、酢酸エチル(10ml×2)及び水(10ml×2)で洗浄した。固体を真空下で乾燥させて、所望の化合物(850mg、収率55.4%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z564.0(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6):δ11.14(s,1H),10.31(s,1H),8.55(s,1H),7.34(s,1H),7.30-7.22(m,1H),7.16(d,J=8.3Hz,1H),6.66-6.53(m,2H),6.48(dd,J=8.4,2.3Hz,1H),4.40(d,J=4.8Hz,2H),3.92(dd,J=11.5,5.0Hz,2H),3.80(s,3H),3.74(s,3H),3.72-3.62(m,2H),3.44(dd,J=14.0,7.0Hz,2H),3.24(td,J=12.7,5.0Hz,2H),2.41(s,3H),1.39(t,J=13.8Hz,2H),1.06(t,J=7.0Hz,3H).
【0180】
工程C:6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-4-((8-メチル-1,5-ジオキソ-1,2’,3’,5,5’,6’-ヘキサヒドロ-2H-スピロ[イミダゾ[1,5-a]ピリジン-3,4’-ピラン]-6-イル)アミノ)ニコチン酸
【化81】
6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-4-((8-メチル-1,5-ジオキソ-1,2’,3’,5,5’,6’-ヘキサヒドロ-2H-スピロ[イミダゾ[1,5-a]ピリジン-3,4’-ピラン]-6-イル)アミノ)ニコチン酸エチル(850mg、1.51mmol)をテトラヒドロフラン(90ml)及びエタノール(10ml)に室温で溶解させ、水酸化リチウム(317.1mg、7.55mmol)及び脱イオン水(10ml)を添加した。反応物を60℃で12時間加熱した。TLC(ジクロロメタン/メタノール=10/1、シリカゲルプレート)により、原料が完全に消費されたことが示された。混合物を真空下で濃縮し、水(100ml)に溶解させ、水層をジエチルエーテル(30ml)で洗浄した。水層を1M塩酸水溶液でpH=6.0まで酸性化して、黄色固体を形成した。固体を濾過で分離し、真空下で乾燥させて、標的化合物(755mg、93.5%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z536.2(M+H)
+.
【0181】
工程D:8-アミノ-3-(2-ヒドロキシエチル)-12-メチル-3-エテニル-2,3-ジヒドロイミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン-1,5,11(6H)-トリオン(化合物19)
【化82】
6-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-4-((8-メチル-1,5-ジオキソ-1,2’,3’,5,5’,6’-ヘキサヒドロ-2H-スピロ[イミダゾ[1,5-a]ピリジン-3,4’-ピラン]-6-イル)アミノ)ニコチン酸(450mg、0.841mmol)をトリフルオロメタンスルホン酸及びポリリン酸(トリフルオロメタンスルホン酸/ポリリン酸=5/1、15ml)に溶解させ、混合物を130℃で12時間加熱した。TLC(ジクロロメタン/メタノール=10/1、シリカゲルプレート)により、原料が完全に消費されたことが示された。混合物を室温まで冷却した後、混合物を氷水へ注いだ。水層をジエチルエーテル(50ml)で洗浄し、1M水酸化ナトリウム水溶液でpH=7.0まで塩基性化した後、ジクロロメタンとイソプロパノールとの混合溶媒(ジクロロメタン及びイソプロパノール=3/1、100ml×8)で抽出した。ひとまとめにした有機層をブライン(50ml×1)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。得られた濃縮物を逆相カラムクロマトグラフィー(アセトニトリル/水)で精製して、化合物19(28.1mg、収率9.1%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z368.0(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ11.84(s,1H),9.81(s,1H),8.80(s,1H),7.36(s,1H),7.27(s,1H),7.14(s,1H),7.01(s,1H),6.83(s,1H),6.58(dd,J=17.3,10.5Hz,1H),5.45(d,J=17.3Hz,1H),5.32(d,J=10.6Hz,1H),3.45-3.30(m,2H),2.92(s,3H),2.86-2.74(m,1H),2.28-2.18(m,1H).
【0182】
実施例11:化合物20の合成
合成スキーム:
【化83】
【0183】
工程A:8’-アミノ-12’-メチル-6’,11’-ジヒドロ-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン]-1’,5’-ジオン-11’,11’-d2塩酸塩(化合物20)
【化84】
8’-アミノ-12’-メチル-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン]-1’,5’,11’(6’H)-トリオン(化合物1)(100mg、0.27mmol)及び亜鉛粉末(180mg、2.74mmol)を水酸化ナトリウム(1M重水溶液、2ml)及び重水素化メタノール(2ml)中、室温で混合した。反応溶液を70℃に加熱して16時間撹拌した。反応のLC-MS検出により、生成物が形成され、原料はごくわずかしか残留していないことが分かった。反応溶液を室温まで冷却し、濾過した。濾液に塩化水素のメタノール(4M、15ml)溶液を添加してpH=3.0とし、ロータリーエバポレーターで乾燥するまで濃縮した。得られた粗製生成物を中圧逆相カラムクロマトグラフィー(メタノール/脱イオン水)で精製して、標的化合物20(18.9mg、収率19%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z354.2(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6):δ12.30(s,1H),10.15(s,1H),9.98(s,1H),7.64(s,1H),7.36(s,2H),6.46(s,1H),3.02-2.94(m,2H),2.39(s,3H),1.77-1.58(m,5H),1.44(d,J=12.4Hz,2H),1.27-1.15(m,1H).
【0184】
実施例12:化合物21の合成
合成スキーム:
【化85】
【0185】
工程A:12(N-メチル-1,5-2,5,6,11-テトラヒドロ-1H-スピロ[シクロヘキサン-1-イミダゾ[1,5-6]ピリド[3,4-b]ナフチリジン1.6][8]’-イル)アセトアミド(化合物21)
【化86】
塩化アセチル(44mg、0.569mmol)を8’-アミノ-12’-メチル-6’,11’-ジヒドロ-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン]-1’,5’-ジオン(100mg、0.284mmol)の酢酸(8ml)溶液に室温で添加した。反応混合物を90℃まで加熱し、一晩撹拌した。反応の完了をTLCで検出したら、反応溶液を遠心脱水し、塩化水素のジオキサン溶液で酸性化し、再度濃縮した。粗製生成物を逆相クロマトグラフィーカラムで分離、精製して、生成物(5mg、収率4.46%)を得た。
LC-MS(ESI
+):m/z394.2(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6):δ11.46(s,1H),10.16(s,2H),7.91(s,1H),7.09(s,1H),4.05(s,2H),2.97(t,J=11.3Hz,2H),2.40(s,3H),2.16(s,3H),1.69-1.51(m,5H),1.45-1.42(m,2H),1.21-1.25(m,1H).
【0186】
実施例13:化合物22の合成
合成スキーム:
【化87】
【0187】
工程A:12’-メチル-8’-(メチルアミノ)-1’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン]-1’,5’,11’(2’H,6’H)-トリオン(化合物1A)
【化88】
6-((3,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-4-((8’-メチル-1’,5’-ジオキソ-1’,5’-ジヒドロ-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1,5-a]ピリジン]-6’-イル)アミノ)ニコチン酸(22g、41.2mmol)を、ポリリン酸とトリフルオロメタンスルホン酸との混合溶液(ポリリン酸/トリフルオロメタンスルホン酸=1:5、160ml)中で混合し、反応混合物を130℃に加熱して16時間撹拌した。反応のLC-MS検出により、原料が完全に消費されたこと、主生成物は化合物1であること、及び副生成物は化合物1Aであることが分かった。混合物を室温まで冷却した後、ゆっくりと氷水へ注いでクエンチさせ、炭酸ナトリウム飽和溶液(1.5リットル)、次いで水1.5リットルを添加した。得られた混合物をジクロロメタンとイソプロパノールとの混合溶媒(ジクロロメタン及びイソプロパノール=3/1、2リットル×8)で抽出し、抽出物をひとまとめにし、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレーターで完全に乾燥するまで濃縮した。粗製生成物にジクロロメタン(150ml)及びメタノール(15ml)を添加し、室温で10分間撹拌し、濾過した。次いで、濾過ケークを水150ml中で10分間撹拌し、濾過し、濾過ケークを真空下で乾燥させて、主生成物である化合物1と副生成物1Aとの混合物(12g、粗製、1A含量:約20%)を黄緑色固体として得た。
化合物1A:LC-MS(ESI
+):m/z380.2(M+H)
+.
【0188】
工程B:12’-メチル-8’-(メチルアミノ)-6’,11’-ジヒドロ-1’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフトピリジン]-1’,5’(2’H)-ジオン塩酸塩(化合物22)
【化89】
100ml丸底フラスコ中、化合物1と副生成物1Aとの混合物(2.0g、粗製)を、エタノール(60ml)と1モル濃度の水酸化ナトリウム(60ml)との混合物に室温で溶解させ、亜鉛粉末(2.43g、37.3mmol)を室温で添加した。反応混合物を還流下で加熱し、24時間撹拌した。TLC(ジクロロメタン/メタノール=10/1、シリカゲルプレート)により、原料が完全に消費されたことが示された。反応混合物を熱いまま濾過し、濾液をロータリーエバポレーションにかけて有機溶媒を除去した後、1N希塩酸でpH=8に調整した。固体の沈殿が見られた。濾過後、濾過ケークをメタノール(60ml)中で混合し、塩化水素のメタノール(5ml、4M)溶液に添加して固体をほぼ完全に溶解させ、濃縮させて逆相シリカゲルでサンプルに調製した。得られた混合物を逆相カラムクロマトグラフィー(メタノール/水)で精製して、主生成物2と副生成物である化合物22(4.8mg、紫色固体)とを得た。
化合物22:LC-MS(ESI
+):m/z366.2(M+H)
+.
化合物22:
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ12.42(s,1H),10.14(s,1H),9.89(s,1H),7.97(s,1H),7.65(s,1H),6.51(s,1H),3.91(s,2H),3.03-2.91(m,2H),2.82(d,J=4.9Hz,3H),2.40(s,3H),1.79-1.59(m,5H),1.43(d,J=12.1Hz,2H),1.23(t,J=13.0Hz,1H).
【0189】
実施例14:化合物23の合成
合成スキーム:
【化90】
【0190】
工程:(12-メチル-1,5-ジオキソ-1,5,6,11-テトラヒドロ-2H-スピロ[シクロヘキサン-1,3-イミダゾール[1,5:1,6]ピリド[3,4b][1,6]ナフタレン]-8-イル)アミノギ酸tert-ブチル(化合物23)
【化91】
8’-アミノ-12’-メチル-6’,11’-ジヒドロ-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン]-1’,5’-ジオン(300mg、0.85mmol)のテトラヒドロフラン(5ml)溶液に、N,N-ジメチルアミノピリジン(207.7mg、1.7mmol)、(Boc)
2O(927.5mg、4.25mmol)、及びジイソプロピルエチルアミン(549.2mg、4.25mmol)を窒素保護下、室温で順次添加した。次いで、窒素保護下、反応物を室温で一晩撹拌した。LCMSにより、原料が完全に消費されたことが分かった。反応溶液をジクロロメタン(30ml×2)で抽出し、有機相をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、遠心脱水して、粗製生成物を得た。粗製生成物を、石油エーテル及び酢酸エチルを溶離液(石油エーテル/酢酸エチル=6/1)として用いたカラムクロマトグラフィーにかけた。得られた生成物を分取HPLC(ACN/H
2O)で精製して、化合物23(13mg、収率3.4%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z452.53(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ10.15(s,1H),7.87(s,1H),7.10(s,1H),4.03(s,2H),2.97(t,J=10.8Hz,2H),2.39(s,3H),1.72-1.67(m,5H),1.52(s,9H),1.43(d,J=12.5Hz,2H),1.25-1.14(m,1H).
【0191】
実施例15:化合物24の合成
合成スキーム:
【化92】
【0192】
工程:N-(12メチル-1,5-ジオキソ-1,5,6,11-テトラヒドロ-2H-スピロ[シクロヘキサン-1,3-イミダゾール[1,5:1,6]ピリド[3,4b][1,6]ナフチリジン]-8-イル)イソブチルアミド(化合物24)
【化93】
8’-アミノ-12’-メチル-6’,11’-ジヒドロ-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン]-1’,5’-ジオン(100mg、0.285mmol)のDMF(5ml)溶液に、イソ酪酸(50.2mg、0.57mmol)、HATU(217mg、0.57mmol)、及びDIPEA(73.5mg、0.57mmol)を室温で添加し、室温で一晩撹拌した。LCMSにより、原料の約50%は消費されなかったことが分かった。反応溶液に水を添加した後、ジクロロメタン(20ml×2)で抽出した。有機相をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、遠心脱水して、粗製生成物を得た。これを分取HPLCで精製して、化合物24(10mg、収率8.3%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z422.2(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ11.58(s,1H),10.35(s,1H),10.20(s,1H),7.92(s,1H),7.06(s,1H),4.07(s,2H),2.97(t,J=11.6Hz,2H),2.74-2.70(m,1H),2.40(s,3H),1.78-1.59(m,5H),1.44(d,J=11.8Hz,2H),1.24-1.20(m,1H),1.15(d,J=6.7Hz,6H).
【0193】
実施例16:化合物25の合成
合成スキーム:
【化94】
【0194】
工程:(12-メチル-1,5-ジオキソ-1,5,6,11-テトラヒドロ(2’H-スピロシクロヘキサン-1,3-イミダゾ[1,5:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン[8]プロピオニル)アミン(化合物25)
【化95】
8’-アミノ-12’-メチル-6’,11’-ジヒドロ-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン]-1’,5’-ジオン(100mg、0.284mmol)のDMF(4ml)溶液に、HATU(216mg、0.569mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(146mg、1.138mmol)、及びプロピオン酸(42mg、0.569mmol)を室温で添加した。窒素保護下、反応物を室温で16時間撹拌した。LCMSにより、原料が完全に消費されたことが分かり、生成物のマススペクトルをモニタリングした。反応混合物をジクロロメタン(50ml×2)で抽出し、水で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、乾燥するまでロータリーエバポレーションにかけて、粗製生成物を得た。粗製生成物を分取HPLCで精製して、化合物25(4mg、収率3.4%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z408.4(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ11.54(s,1H),10.15(s,2H),7.90(s,1H),7.14(s,1H),4.04(s,2H),2.97(t,J=11.1Hz,2H),2.46(d,J=7.5Hz,2H),2.39(s,3H),1.69(dd,J=46.0,14.0Hz,5H),1.44(d,J=12.0Hz,2H),1.21(d,J=12.8Hz,1H),1.09(t,J=7.5Hz,3H).
【0195】
実施例17:化合物26の合成
合成スキーム:
【化96】
【0196】
工程:(12-メチル-1,5-ジオキソ-1,5,6,11-テトラヒドロ(2’H-スピロシクロヘキサン-1,3-イミダゾ[1,5:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン[8]シクロプロピルホルミル)アミン(化合物26)
【化97】
8’-アミノ-12’-メチル-6’,11’-ジヒドロ-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン]-1’,5’-ジオン(100mg、0.284mmol)のDMF(4ml)溶液に、HATU(216mg、0.569mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(146mg、1.138mmol)、及びシクロプロピルギ酸(49mg、0.569mmol)を室温で添加した。窒素保護下、反応物を室温で16時間撹拌した。LCMSにより、原料が完全に消費されたことが分かり、生成物のマススペクトルをモニタリングした。反応混合物をジクロロメタン(50ml×2)で抽出し、水で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、乾燥するまでロータリーエバポレーションにかけて、粗製生成物を得た。粗製生成物を分取HPLCで精製して、化合物26(6.3mg、収率5.2%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z420.4(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ11.81(s,1H),10.23(s,1H),10.17(s,1H),7.90(s,1H),7.09(s,1H),4.05(s,2H),2.97(t,J=11.3Hz,2H),2.39(s,3H),1.96-1.86(m,1H),1.69(dd,J=46.3,13.3Hz,5H),1.44(d,J=11.9Hz,2H),1.21(d,J=15.2Hz,1H),1.03-0.96(m,2H),0.94(s,2H).
【0197】
実施例18:化合物27の合成
合成スキーム:
【化98】
【0198】
工程:(12-メチル-1,5-ジオキソ-1,5,6,11-テトラヒドロ(2’H-スピロシクロヘキサン-1,3-イミダゾ[1,5:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン[8]シクロブチルホルミル)アミン(化合物27)
【化99】
8’-アミノ-12’-メチル-6’,11’-ジヒドロ-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン]-1’,5’-ジオン(100mg、0.3mmol)とシクロブチルギ酸(90mg、0.9mmol)とのDMF(5ml)溶液に、HATU(171mg、0.45mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(120mg、0.9mmol)を室温で添加した。反応物を室温で24時間撹拌した。LCMSにより、原料が完全に消費されたことが分かり、生成物のマススペクトルをモニタリングした。反応混合物をDCM(20ml×2)で抽出し、水で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、乾燥するまでロータリーエバポレーションにかけて、粗製生成物を得た。粗製生成物を分取HPLCで精製して、化合物27(5mg、収率3.8%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z434.3(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ11.32(s,1H),10.21(s,1H),10.17(s,1H),7.92(s,1H),7.10(s,1H),4.05(s,2H),3.38-3.31(m,1H),3.04-2.88(m,2H),2.39(s,3H),2.30-2.11(m,4H),2.03-1.93(m,1H),1.89-1.60(m,6H),1.49-1.37(m,2H),1.27-1.12(m,1H).
【0199】
実施例19:化合物28の合成
合成スキーム:
【化100】
【0200】
工程A:8’-((2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)エチル)アミノ)-12’-メチル-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-ジヒドロイミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン]-1’,5’,11’(6’H)-トリオン(化合物C)
【化101】
8’-アミノ12’-メチル-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-ジヒドロイミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-B][1,6]ナフチリジン]-1’,5’,11’(6’H)-トリオン(280mg、0.77mmol)のDMF(5ml)溶液に、水素化ナトリウム(92mg、3.84mmol)を窒素保護下、室温で添加した。反応物を室温で5分間撹拌した後、(2-ブロモエトキシ)(tert-ブチル)ジメチルシラン(274mg、1.15mmol)を添加した。反応混合物を室温で10分間撹拌した後、80℃に加熱して2時間撹拌した。LCMSにより、反応が完了したことが分かった。反応溶液を室温まで冷却し、乾燥するまで真空下で濃縮した。水及びメタノール(1/1、5ml)を添加してスラリーを形成し、室温で30分間撹拌し、濾過した。得られた固体を真空下で乾燥させて、赤色生成物である化合物C(80mg、粗製)を得た。
LC-MS(ESI+):m/z524.2(M+H)
+.
【0201】
工程B:8’-((2-ヒドロキシエチル)アミノ)-12’-メチル-6’,11’-ジヒドロ-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-ジヒドロイミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン]-1’,5’-ジオン(化合物28)
【化102】
化合物C(70mg、0.13mmol)のエタノール(6ml)溶液に、亜鉛粉末(87mg、1.3mmol)及び水酸化ナトリウム溶液(2M、3ml)を窒素保護下、室温で添加した。反応混合物を85℃で1時間撹拌した。LCMSにより、原料が完全に消費されたことが分かった。反応溶液を85℃で急速濾過し、濾液を真空下で濃縮した。濃縮残渣に少量の水を添加して希釈した後、塩酸溶液でpH5~6に調整した。黄色固体が形成された。黄色固体を濾過して、粗製生成物を得た。粗製生成物を分取HPLCで精製して、生成化合物28(5mg、収率9.4%)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI
+):m/z396.2(M+H)
+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ12.38(s,1H),9.88(s,1H),7.61(s,1H),7.37(s,2H),6.44(s,1H),4.36(t,J=4.8Hz,2H),3.88(s,2H),3.76(t,J=4.8Hz,2H),3.01-2.92(m,2H),2.27(s,3H),1.75(m,5H),1.26(d,J=11.9Hz,3H).
【0202】
実施例20:化合物29の合成
合成スキーム:
【化103】
【0203】
実験手順:
工程A:2-アセトキシ酢酸
塩化アセチル(780mg、11mmol)を2-ヒドロキシ酢酸(760mg、10mmol)のジオキサン(30ml)溶液に室温で添加した。次いで、反応溶液を撹拌し、還流下で6時間反応させた。水(2ml)を反応溶液に添加して反応をクエンチした。反応溶液をそのまま無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、粗製生成物を得た。これをシリカゲルカラムで精製し、石油エーテル/酢酸エチル(PE/EA=1/1)で溶出して、生成物(450mg、収率38%)を白色固体として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ13.01(s,1H),4.53(s,2H),2.08(s,3H).
【0204】
工程B:2-((12’-メチル-1’,5’-ジオキソ-1’,5’,6’,11’-テトラヒドロ-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフトピリジン]-8’-イル)アミノ)-2-オキソエチルアセテート
EDCI.HCL(428mg、2.24mmol)を8’-アミノ-12’-メチル-6’,11’-ジヒドロ-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフチリジン]-1’,5’-ジオン(100mg、0.28mmol)と2-アセトキシ酢酸(132mg、1.12mmol)とのピリジン(5ml)溶液に添加した。次いで、反応溶液を52℃で16時間撹拌した。LCMSにより、原料の40%が消費されたことが分かった。反応混合物に水(2ml)を添加した後、ジクロロメタン/イソプロパノール(ジクロロメタン/イソプロパノール=3/1)で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、粗製生成物(40mg、粗製)を得た。これを次の工程でそのまま使用した。
LC-MS(ESI+):m/z452.4(M+H)+.
【0205】
工程C:2-ヒドロキシ-N-(12’-メチル-1’,5’-ジオキシン-1’,5’,6’,11’-テトラヒドロ-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフトピリジン]-8’-イル)アセトアミド(化合物29)
2-((12’-メチル-1’,5’-ジオキソ-1’,5’,6’,11’-テトラヒドロ-2’H-スピロ[シクロヘキサン-1,3’-イミダゾ[1’,5’:1,6]ピリド[3,4-b][1,6]ナフトピリジン]-8’-イル)アミノ)-2-オキソエチルアセテート(35mg、粗製)をアンモニア水(5ml)に溶解させ、室温で2時間撹拌した。LCMSにより、原料が完全に消費されたことが分かり、生成物のMSを検出した。反応溶液を水(10ml)で希釈した後、ジクロロメタン/イソプロパノール(ジクロロメタン/イソプロパノール=3/1)で抽出し、有機相をブラインで洗浄した。有機層を濃縮して得られた粗製生成物を分取HPLC(メタノール/水)で精製して、生成化合物29(1.5mg)を黄色固体として得た。
LC-MS(ESI+):m/z410.3(M+H)+.
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ11.32(s,1H),10.48(s,1H),10.21(s,1H),8.00(s,1H),7.49(s,1H),5.33(t,J=4.4Hz,1H),4.14(s,2H),4.08(s,2H),2.97(t,J=11.6Hz,2H),2.40(s,3H),1.63-1.77(m,5H),1.42-1.46(m,2H),1.30-0 1.33(m,1H).
【0206】
MNK生物学的酵素アッセイ
HTRFキナーゼアッセイキット(Cisbio、カタログ番号62ST1PEB)を用いて、化合物のMNK阻害活性を測定した。全てのキナーゼ反応は反応バッファ(キットに付属)で実施した。最終MNK1反応には、3ng/ulの組換えMNK1(ThermoFisher、PV6023)、1μMのMNK基質ペプチドSTK1(キットに付属)、100μMのATP、及び各濃度の対象阻害化合物を用いた。最終MNK2反応には、1ng/μlの組換えMNK2(ThermoFisher、PV5607)、1μMのMNK基質ペプチドSTK1(キットに付属)、100μMのATP、及び各濃度の対象阻害化合物を用いた。各反応における最終DMSO濃度は1%であった。
【0207】
キナーゼ反応は、384ウェル白色平底ポリスチレンプレートにおいて最終体積10μlで実施した。MNK1/2酵素を化合物及び基質ペプチドとともに5分間プレインキュベートした後、ATPを添加した。ATPの添加後、キナーゼ反応を25℃で120分間又は60分間インキュベートした。その後、5μlのEU3+基質抗体検出試薬と5μlのXL665検出試薬とを添加し、更に60分間インキュベートすることで、反応を終了させた。EnVisionマイクロプレートリーダーカウンタ(Perkin Elmer)で発光シグナルを検出し、化合物の10点希釈系列から得られたシグナルを用いて、酵素活性の50%阻害を達成するのに必要な化合物濃度(IC50)を算出した。
【0208】
上記アッセイの結果を以下の表1にまとめた。ここで、IC50値が0.01μM未満の場合を「+++」、0.01~0.1μMの場合を「++」、0.1超~10.0μMまでの場合を「+」と示し、NAは「未検出」を意味する。
【0209】
【0210】
細胞内peIF4Eシグナリングアッセイ
CisBio peIF4Eアッセイキット(CisBio、カタログ番号64EF4PEG)を用いてリン酸化eIF4Eを測定した。96ウェル細胞培養プレートに体積90μLで細胞を蒔き、ウェル当たりの細胞数は5*104とした。化合物(10X)を3倍段階希釈し、最終DMSO濃度を1%として体積10μLで細胞プレートに加え、37℃で2時間インキュベートした。細胞プレートを300gで5分間遠心分離し、細胞上清を慎重に除去した。すぐに細胞プレートへ細胞溶解バッファ(1X)50μLを加え、振とうしながら25℃で少なくとも30分間インキュベートした。ピペッティングで均質化した後、細胞ライセート16μLを96ウェル細胞培養プレートから384ウェル小容量マイクロウェルプレートへ移した。キットの指示書に従い、検出バッファで抗体混合溶液を調製し、細胞ライセートを含む384ウェル小容量マイクロウェルプレートへ体積4μLで添加した。プレートにプレートシーラーを被せ、25℃で一晩インキュベートし、EnVisionマイクロプレートリーダーカウンタを用いて、2つの異なる波長(665nm及び615nm)で蛍光発光を読み取った。発光比をGraphPadPrismソフトウェアへインポートして、酵素活性の50%阻害に必要な化合物濃度(IC50)をフィッティングした。
【0211】
上記アッセイの結果を以下の表2にまとめた。ここで、IC50値が0.05μM未満の場合を「+++」、0.05~1.0μMの場合を「++」、1.0超~100μMまでの場合を「+」と示し、NAは「未検出」を意味する。
【0212】
【0213】
化合物2のキナーゼ選択性の評価
KinomeScanを用いて、化合物2のキナーゼ選択性を測定した。化合物2の濃度が1μMの場合、468種のキナーゼ(そのうち403種は野生型キナーゼ)に対するKinomeScan分析から、GAK及びDRAK1を除き、MNK1/2以外のキナーゼとの相互作用は観察されないことが分かった。用量反応分析から、化合物2とGAK及びDRAK1との相互作用のKd値はそれぞれ50nM及び370nMであることが分かり、この阻害剤は優れたキナーゼ選択性を有することが示された。これらの結果を
図1及び表3に示す。上記結果から、化合物2は選択性が高いMNK1/2阻害剤であることが示された。
【0214】
【0215】
【0216】
細胞表面における免疫チェックポイントタンパク質の発現及びサイトカイン分泌量の検出
勾配遠心分離を用いて、健常者の末梢血からPBMC細胞を抽出した。PBMC細胞を5μg/mlのPHA(Sigma)で活性化し、各濃度の化合物(0、0.01、0.1、1、3、10μM)で処理した。48時間後、細胞及び培養上清をそれぞれ回収した。フローサイトメトリーを用いて、細胞表面における免疫チェックポイントPD-1、Tim-3、及びLag-3の発現を検出し、且つ細胞培養上清における各種サイトカイン(IL-6、IL-10、及びTNF-α)の分泌量を検出した。
【0217】
結果を
図2~
図7に示す。結果から、化合物2、21、及び26は、免疫チェックポイントタンパク質PD-1、Tim-3、及びLag-3の発現、並びにIL-10、IL-6、及びTNF-αの分泌を著しく阻害することが分かった。
【0218】
化合物の薬物動態試験
実施例では、化合物2及び26についてラットの薬物動態試験を実施して、ラットにおけるそれらの薬物動態特性を示した。
【0219】
化合物2の薬液の処方
静脈内投与用溶液の処方:20%PEG-400、10%プロピレングリコール、及び70%水からなる溶液に化合物2を溶解させた。
【0220】
胃内投与用懸濁液の処方:20%PEG-400、10%プロピレングリコール、及び70%水からなる溶液に化合物2を溶解させた。
【0221】
化合物2の投与量:静注の場合3mg/kg、胃内投与の場合10mg/kg。
【0222】
ラットにおける薬物動態試験の実験方法
SDラット6匹(オス、体重180~220g、絶食12時間)を、各群3匹の2群へランダムに分けた。A群の動物には、化合物薬液を10mg/kgの用量で胃内投与した。B群の動物には、化合物薬液を3mg/kgの用量で尾部から静脈内投与した。投与前にブランクの血液を採取し、また、投与後の各時点で約100μLの静脈血を採取し、ヘパリンを加えた試験管に入れ、遠心分離し、約50μLの血漿を回収し、試験まで-20℃で保存した。
【0223】
化合物26の薬液の処方
静脈内投与用溶液の処方:5%DMSO+10%Solutol HS15+85%(20%HP-β-CD生理食塩水)からなる溶液に化合物26を溶解させた。
【0224】
胃内投与用懸濁液の処方:5%DMSO+10%Solutol HS15+85%(20%HP-β-CD生理食塩水)からなる溶液に化合物26を溶解させた。
【0225】
化合物26の投与量:静注の場合1mg/kg、胃内投与の場合3mg/kg。
【0226】
ラットにおける薬物動態試験の実験方法
SDラット6匹(オス、体重180~220g、絶食12時間)を、各群3匹の2群へランダムに分けた。A群の動物には、化合物薬液を3mg/kgの用量で胃内投与した。B群の動物には、化合物薬液を1mg/kgの用量で尾部から静脈内投与した。投与前にブランクの血液を採取し、また、投与後の各時点で約100μLの静脈血を採取し、ヘパリンを加えた試験管に入れ、遠心分離し、約50μLの血漿を回収し、試験まで-20℃で保存した。
【0227】
実験結果を表5及び表6に示す。
【0228】
【0229】
【0230】
本明細書で言及した文献は全て、独立した各文献がそれぞれ参照により組み込まれると提示された場合と同じ程度に参照により本明細書に組み込まれる。加えて、本発明の上記教示内容を読めば、当業者は本発明に対して様々な変更又は修正を加えることができ、それらの均等物も、本出願に添付した特許請求の範囲で規定される範囲に包含されることを理解されたい。