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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/28 20210101AFI20230728BHJP
   G03B 17/18 20210101ALI20230728BHJP
   H04N 23/40 20230101ALI20230728BHJP
【FI】
G02B7/28 N
G03B17/18
H04N23/40
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020561253
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2019046836
(87)【国際公開番号】W WO2020129576
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2018237627
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100199314
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 寛
(72)【発明者】
【氏名】春日井 宏樹
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-155337(JP,A)
【文献】特開2013-115841(JP,A)
【文献】特開2011-178310(JP,A)
【文献】特開平06-214561(JP,A)
【文献】特開2008-217026(JP,A)
【文献】特開2012-165219(JP,A)
【文献】岩宮眞一郎 ほか著,サイン音に和音を用いることの効果の検討,人間工学,日本,一般社団法人日本人間工学会,2009年,第45巻,第6号,pp.329-335
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/28
G03B 13/36
G03B 17/18
H04N 23/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系を介して入射する被写体像を撮像する撮像部と、
前記光学系により前記被写体像に合焦する合焦動作を制御する制御部と、
前記合焦動作に応じて所定の周波数特性を有する合焦音を出力する報知部と、
を備え、
前記合焦音の周波数特性は、第1の周波数に基づく第1音成分と、前記第1の周波数よりも高くて且つ前記第1の周波数の2倍の周波数よりも低い第2の周波数に基づく第2音成分とを含み、
前記合焦音が、前記第1音成分と前記第2音成分とにおいて協和音を構成するように、前記第1及び第2の周波数が設定され、
前記合焦音の協和音は、完全5度と完全4度とのうちの少なくとも一方であり、
前記合焦音は、第1の音波と、前記第1の音波から時間間隔をあけて出力される第2の音波とを含み、
前記第2の音波の振幅は、前記第1の音波の振幅よりも大きい
撮像装置。
【請求項2】
前記報知部は、前記合焦音をフェードアウトさせるように出力する
請求項1に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、合焦時に応じた効果音である合焦音を発する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、撮像装置において合焦したことをユーザに報知するように合焦音が用いられている。例えば特許文献1のように、従来の合焦音は、単一の周波数による単音を複数回、鳴らす組み合わせ音(非特許文献1)で構成されている。
【0003】
特許文献2は、報時時計において不協音程が発音される際の不快感を解消させることを目的とした音階表音装置を開示している。音階表音装置は、12音音階の各音階音と定時に該当する各時刻とを対応付け、12音音階のうちの1つである基礎音を表音する毎に、その時刻に対応した音階構成音を表音するように表音部を制御する。この際、基礎音に対して不協音程の音階構成音が表音される場合がある。そこで、このような場合には当該音階構成音を含んだ長3和音等の少なくとも1つの和音構成音を重ねて表音させることで、不協音程による不快感の解消を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-121921号公報
【文献】特開2004-145098号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】「家電製品における操作性向上のための報知音に関するガイドライン」、一般財団法人 家電製品協会 ユニバーサルデザイン技術委員会、2018年3月
【文献】岩宮眞一郎、「音質評価指標 -入門とその応用-」、日本音響学会誌、66巻、12号、2010年、p.603-609
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、合焦音は同じ周波数の単音による組み合わせ音で構成されており、特に不協音程を有していない。しかし、従来の合焦音は、不協音程とは別の耳障りな不快感をユーザに与えてしまう問題に、本願発明者は着目し、この問題を解決するべく鋭意研究を重ねた。
【0007】
本開示は、合焦音による耳障りを和らげることができる撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の撮像装置は、撮像部と、制御部と、報知部と、を備える。撮像部は、光学系を介して入射する被写体像を撮像する。制御部は、光学系により被写体像に合焦する合焦動作を制御する。報知部は、合焦動作に応じて所定の周波数特性を有する合焦音を出力する。合焦音の周波数特性は、第1の周波数に基づく第1音成分と、第1の周波数よりも高くて且つ第1の周波数の2倍の周波数よりも低い第2の周波数に基づく第2音成分とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の撮像装置によれば、合焦音による耳障りを和らげることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態1に係るデジタルカメラの構成を示す図
図2】デジタルカメラの動作を示すフローチャート
図3】デジタルカメラの合焦音の周波数特性を説明するための図
図4】2音間の協和度を示す図
図5】実施の形態1に係るデジタルカメラの合焦音の波形を説明するための図
図6】他の実施の形態に係るデジタルカメラの合焦音の波形を説明するための図
図7】他の実施の形態に係るデジタルカメラの合焦音の波形を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者(ら)は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0012】
(実施の形態1)
実施の形態1では、本開示に係る撮像装置の一例として、合焦動作を行って合焦音を出力するデジタルカメラについて説明する。本実施の形態のデジタルカメラは、レンズ一体型のデジタルカメラである。
【0013】
〔1-1.構成〕
実施の形態1に係るデジタルカメラの構成について、図1を用いて説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係るデジタルカメラ100の構成を示す図である。本実施形態のデジタルカメラ100は、イメージセンサ115と、画像処理エンジン120と、表示モニタ130と、コントローラ135とを備える。さらに、デジタルカメラ100は、バッファメモリ125と、カードスロット140と、フラッシュメモリ145と、操作部150と、通信モジュール155と、報知部165と、を備える。また、デジタルカメラ100は、例えば光学系110及びレンズ駆動部112を備える。
【0015】
光学系110は、フォーカスレンズ、ズームレンズ、光学式手ぶれ補正レンズ(OIS)、絞り、シャッタ等を含む。フォーカスレンズは、イメージセンサ115上に形成される被写体像のフォーカス状態を変化させるためのレンズである。ズームレンズは、光学系で形成される被写体像の倍率を変化させるためのレンズである。フォーカスレンズ等は、それぞれ1枚又は複数枚のレンズで構成される。
【0016】
レンズ駆動部112は、光学系110におけるフォーカスレンズ等を駆動する。レンズ駆動部112はモータを含み、コントローラ135の制御に基づいてフォーカスレンズを光学系110の光軸に沿って移動させる。レンズ駆動部112においてフォーカスレンズを駆動する構成は、DCモータ、ステッピングモータ、サーボモータ、または超音波モータなどで実現できる。
【0017】
イメージセンサ115は、光学系110を介して形成された被写体像を撮像して、撮像データを生成する。撮像データは、イメージセンサ115による撮像画像を示す画像データを構成する。イメージセンサ115は、所定のフレームレート(例えば、30フレーム/秒)で新しいフレームの画像データを生成する。イメージセンサ115における、撮像データの生成タイミングおよび電子シャッタ動作は、コントローラ135によって制御される。イメージセンサ115は、CMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサ、またはNMOSイメージセンサなど、種々のイメージセンサを用いることができる。
【0018】
イメージセンサ115は、静止画像の撮像動作、スルー画像の撮像動作等を実行する。スルー画像は主に動画像であり、ユーザが静止画像の撮像のための構図を決めるために表示モニタ130に表示される。スルー画像及び静止画像は、それぞれ本実施形態における撮像画像の一例である。イメージセンサ115は、本実施形態における撮像部の一例である。
【0019】
画像処理エンジン120は、イメージセンサ115から出力された撮像データに対して各種の処理を施して画像データを生成したり、画像データに各種の処理を施して、表示モニタ130に表示するための画像を生成したりする。各種処理としては、ホワイトバランス補正、ガンマ補正、YC変換処理、電子ズーム処理、圧縮処理、伸張処理等が挙げられるが、これらに限定されない。画像処理エンジン120は、ハードワイヤードな電子回路で構成してもよいし、プログラムを用いたマイクロコンピュータ、プロセッサなどで構成してもよい。
【0020】
表示モニタ130は、種々の情報を表示する表示部の一例である。例えば、表示モニタ130は、イメージセンサ115で撮像され、画像処理エンジン120で画像処理された画像データが示す画像(スルー画像)を表示する。また、表示モニタ130は、ユーザがデジタルカメラ100に対して種々の設定を行うためのメニュー画面等を表示する。表示モニタ130は、例えば、液晶ディスプレイデバイスまたは有機ELデバイスで構成できる。なお、図1では図示を省略しているが、デジタルカメラ100は、EVFなどのファインダを備えてもよい。
【0021】
操作部150は、デジタルカメラ100の外装に設けられた操作釦や操作レバー等のハードキーの総称であり、使用者による操作を受け付ける。操作部150は、例えば、レリーズ釦、モードダイヤル、タッチパネルを含む。操作部150はユーザによる操作を受け付けると、ユーザ操作に対応した操作信号をコントローラ135に送信する。
【0022】
コントローラ135は、デジタルカメラ100全体の動作を統括制御する。コントローラ135はCPU等を含み、CPUがプログラム(ソフトウェア)を実行することで所定の機能を実現する。コントローラ135は、CPUに代えて、所定の機能を実現するように設計された専用の電子回路で構成されるプロセッサを含んでもよい。すなわち、コントローラ135は、CPU、MPU、GPU、DSU、FPGA、ASIC等の種々のプロセッサで実現できる。コントローラ135は1つまたは複数のプロセッサで構成されてもよい。また、コントローラ135は、画像処理エンジン120などと共に1つの半導体チップで構成されてもよい。コントローラ135は、制御部の一例である。
【0023】
バッファメモリ125は、画像処理エンジン120やコントローラ135のワークメモリとして機能する記録媒体である。バッファメモリ125は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などにより実現される。フラッシュメモリ145は不揮発性の記録媒体である。また、図示していないが、コントローラ135は各種の内部メモリを有してもよく、例えばROMを内蔵してもよい。ROMには、コントローラ135が実行する様々なプログラムが記憶されている。また、コントローラ135は、CPUの作業領域として機能するRAMを内蔵してもよい。
【0024】
カードスロット140は、着脱可能なメモリカード142が挿入される手段である。カードスロット140は、メモリカード142を電気的及び機械的に接続可能である。メモリカード142は、内部にフラッシュメモリ等の記録素子を備えた外部メモリである。メモリカード142は、画像処理エンジン120で生成される画像データなどのデータを格納できる。
【0025】
通信モジュール155は、通信規格IEEE802.11またはWi-Fi規格等に準拠した通信を行う通信モジュール(回路)である。デジタルカメラ100は、通信モジュール155を介して、他の機器と通信することができる。デジタルカメラ100は、通信モジュール155を介して、他の機器と直接通信を行ってもよいし、アクセスポイント経由で通信を行ってもよい。通信モジュール155は、インターネット等の通信ネットワークに接続可能であってもよい。
【0026】
報知部165は、コントローラ135から入力される音データを、音に変換して出力するモジュールである。報知部165は、DAコンバータ、スピーカ等で構成される。DAコンバータは、コントローラ135から入力される、音データを含むデジタル信号をアナログ信号に変換する。スピーカは、DAコンバータから入力されるアナログ信号を、音に変換して出力する。
【0027】
〔1-2.動作〕
以上のように構成されるデジタルカメラ100の動作について、以下説明する。
【0028】
図2は、デジタルカメラ100の静止画の撮影動作を示すフローチャートである。図2のフローチャートによる各処理は、デジタルカメラ100のコントローラ135によって実行される。本フローチャートは、例えばデジタルカメラ100の起動後に、ユーザ操作に応じて行われる。
【0029】
まず、コントローラ135は、操作部150におけるレリーズ釦が半押しされたか否かを検知する(S101)。ユーザは、例えばデジタルカメラ100のファインダを覗いたり、表示モニタ130を視認したりしながら、所望の被写体が映ったとき等にレリーズ釦を操作することができる。
【0030】
ユーザがレリーズ釦を半押しすると(S101でYES)、コントローラ135は、レンズ駆動部112を介して、例えば被写体に対して合焦するように、光学系110のフォーカスレンズを駆動する合焦動作を制御する(S102)。ステップS102では、画像中で合焦対象として予め定められた領域に対して合焦が行われてもよいし、合焦対象の被写体の画像認識が行われてもよい。
【0031】
合焦動作が完了すると、コントローラ135は、合焦が完了したことをユーザに報知する合焦音を、報知部165から出力する(S103)。後述するように、本実施の形態のデジタルカメラ100は、ユーザにとって聞き心地が良い合焦音を出力する。
【0032】
また、コントローラ135は、レリーズ釦が全押しされたか否かを検知する(S104)。なお、レリーズ釦の半押しが解除された場合、コントローラ135は、操作部135からの半押しの解除を検知して、ステップS101に戻ることができる。
【0033】
コントローラ135は、レリーズ釦が全押しされたことを検知すると(S104でYES)、コントローラ135は、イメージセンサ115による撮像動作を制御して、撮像結果の画像データをメモリカード142等に記録する(S105)。これにより、本フローチャートによる処理は終了する。
【0034】
ステップS102の合焦動作は、ワンショットAFであってもよいし、コンティニュアスAFであってもよい。例えば、レリーズ釦の半押し後(S102でYES)に、合焦動作が複数回行われた場合、コントローラ135は、各回の合焦動作に応じて合焦音を出力させてもよいし、合焦音の出力を適宜、制限してもよい。
【0035】
〔1-3.合焦音について〕
以上のようなデジタルカメラ100の動作時に出力される(図2のS103)、本実施形態の合焦音について、以下詳細に説明する。
【0036】
図3は、実施の形態1のデジタルカメラ100の合焦音の周波数特性を説明するための図である。図3(A)は、単音に基づく合焦音の周波数特性を例示する。図3(B)は、本実施形態における合焦音の周波数特性を例示する。図3(A),(B)において、横軸は周波数を示し、縦軸は音の出力レベル(即ち音圧レベルに相当する)を示す。
【0037】
図4は、2音間の協和度を説明するための図である。協和度は、例えば2音が美しく調和して響く度合いをいう。図4のような協和度は、例えば亀岡モデルなどの予測モデルにより計算可能である(非特許文献2参照)。
【0038】
図4の横軸において、2音間の音程を半音の数で表すと共に、2音のうちの高音の周波数を例示している。また、図中の比a:bは、2音間の周波数比を例示している。図4の各グラフG(n)は、倍音数n(=1~6)における2音間の協和度を示す。例えば、グラフG(1)は、2音のうちの高音でない基本音が440Hzに対して高音880Hzまでを考慮しており、グラフG(4)は基本音1760Hzに対して高音3520Hzまでを考慮している。
【0039】
図3(A)の例では、合焦音は、4.40kHzにおいて音の出力レベルがピークとなる周波数成分f1に加えて、8.80kHzの周波数成分f2も含んでいる。合焦音に単音の周波数が設定された場合であっても、スピーカの性能等によっては、出力される合焦音の周波数特性には、設定された周波数の整数倍、即ち倍音の周波数成分が含まれ得る。この場合であっても、図4によると協和度は2音の周波数が同じ場合と同程度に高くなる。
【0040】
本願発明者の鋭意研究の結果、図3(A)のような合焦音は、協和度が高いだけでなく直進性も高く、耳に刺さるような耳障りな不快感をユーザに与え得るという問題が明らかになった。このような不快感は、倍音の周波数成分f2の有無に拘らず生じてしまう。また、ユーザは、例えばファインダを覗いて被写体に注視しながら、スピーカ近傍で合焦音を聴くこととなり、合焦音はユーザに強い印象を与えがちと考えられる。
【0041】
一方、合焦音は、合焦したことをユーザに報知するための効果音であって、合焦音の印象が強いことは一概に悪影響ではないとも考えられる。現行、カメラメーカ各社は、独自で選定した周波数に基づく単音の組み合わせ音を合焦音として用いている。合焦音の音色には各社のブランド的価値も化体しているとも考えられ、当業者が合焦音の周波数特性を抜本的に変更するような発想に到ることは困難であった。
【0042】
これに対して、本願発明者は上記問題の観点から合焦音について鋭意研究を重ね、合焦音を単音の周波数特性で構成する代わりに、倍音を除いた協和音のような和音の周波数特性で構成する発想を考案するに到った。このような合焦音によると、図4に示すように倍音よりは低い協和度となる一方で直進性も低減でき、ユーザの耳に刺さるような耳障りを和らげることができる。更なる鋭意研究により、本願発明者は、例えば図3(B)の周波数特性に例示するように、本実施形態のデジタルカメラ100に出力させる合焦音を想到するに到った。
【0043】
本実施形態において、デジタルカメラ100の合焦音は、完全5度の協和音に設定される。図3(B)の例において、合焦音は、周波数4.40kHzにおいて音の出力レベルがピークとなる基本音成分f11と、周波数6.60kHzにおいて音の出力レベルがピークとなる高音成分f21とを有する。基本音成分f11と高音成分f21との周波数比は2:3であり、完全5度の協和音が構成される。基本音成分f11は、当該成分f11のピークの周波数を第1の周波数とする第1音成分の一例である。高音成分f21は、当該成分f21のピークの周波数を第2の周波数とする第2音成分の一例である。
【0044】
図4によると、周波数が高くなる程、協和音と不協和音との協和度の差が大きくなることが分かる。合焦音に含める基本音成分f11と高音成分f21とは、周波数比によっては不協和音となるなど、協和度が低くなり過ぎて違和感をユーザに与える可能性についても、本願発明者は検討した。例えば完全5度の合焦音によると、図4では倍音の次に高い協和度が得られる。これにより、本実施形態のデジタルカメラ100は、ユーザが心地良く感じられる合焦音を出力することができる。
【0045】
デジタルカメラ100は、合焦音の周波数を高くするほど、合焦動作が高スピードで行われたような感覚すなわち合焦スピード感をユーザに与えると考えられる。ここで、周波数が高くなるほど音の直進性が強くなり、耳障りになる懸念が考えられる。これに対して、本実施形態のデジタルカメラ100によると、図3(B)等のような高周波数を用いた完全5度の周波数特性により、合焦スピード感を与えつつ耳障りを和らげた合焦音を実現することができる。例えば、図3(B)の例では高音の聞こえ方により、機械の精緻さを想起させるような印象を与えられる場合がある。
【0046】
図5は、実施の形態1に係るデジタルカメラ100の合焦音の波形を説明するための図である。図5において、縦軸は音の出力レベル[dB]を示し、横軸は時間を示す。
【0047】
図5(A)は、本実施の形態に係るデジタルカメラ100の合焦音の一部の波形を例示する波形図である。デジタルカメラ100の合焦音の振幅は、基本音成分f11と高音成分f21との重ね合わせにより、各々の周期よりも長い周期で周期的に変動する。
【0048】
本実施形態のデジタルカメラ100は、以上のような周波数特性を有する音波を2回、発して合焦音を出力する。これにより、例えば合焦音を擬音的に「ピピッ」と表現すると、後半の「ピッ」が聴こえた際に合焦動作が完了したと感じさせる印象(以下「合焦停止感」という)をユーザに与えることが可能である。
【0049】
図5(B)は、本実施形態における合焦音の全体の波形図を例示する。図5(B)に示すように、デジタルカメラ100の合焦音は、第1の音波W1と、第1の音波W1の後に出力される第2の音波W2と、を含む。
【0050】
第1の音波W1は振幅A1を有し、第2の音波W2は振幅A2を有する。本実施形態では、第1の音波W1の振幅A1が第2の音波W2の振幅A2よりも小さく、即ち振幅A1よりも振幅A2が大きく設定される。これにより、合焦音の後半に聴こえる音を際立たせて、合焦停止感を向上することができる。
【0051】
また、本実施形態では、各音波W1,W2の波形において、終端に向けてフェードをかけることにより、合焦音がフェードアウトするように設定される。合焦音を和音で構成した場合、音の余韻に混じり気があるような違和感が残ることが考えられる。これに対して、合焦音にフェードをかけることにより、上記の違和感を解消し、歯切れが良い合焦音を実現することができる。
【0052】
以上のような合焦音の波形を示す音データは、デジタルカメラ100においてフラッシュメモリ145等に予め格納される。デジタルカメラ100のコントローラ135は、合焦音の出力時(図2のS102)に当該音データを用いて、報知部165を制御する。
【0053】
デジタルカメラ100の報知部165は、期間T1の間、第1の音波W1を出力し、期間T2の間隔をあけて、期間T4の間、第2の音波W2を出力する。デジタルカメラ100は、例えば期間T3経過後に振幅が0になるような一定の勾配でフェードをかけて第1の音波W1を出力する。同様に、デジタルカメラ100は、期間T5経過後に振幅が0になるような勾配でフェードをかけて第2の音波W2を出力する。
【0054】
本実施の形態において、期間T1,T2,T4は、それぞれ25msec.である。T3,T5は、37.5msec.である。第2の音波の振幅A2は、第1の音波の振幅A1よりも3dB程度大きい。ユーザは、第1の音波の後に第2の音波を聴くことによって、精緻に合焦した印象を得ることができる。さらに、第2の音波の振幅A2が第1の音波の振幅A1よりも大きいので、当該印象はより強くなる。
【0055】
3.まとめ
以上説明したように、実施の形態1のデジタルカメラ100は、イメージセンサ115と、コントローラ135と、報知部165と、を備える。イメージセンサ115は、光学系110を介して入射する被写体像を撮像する。コントローラ135は、光学系110により被写体像に合焦する合焦動作を制御する。報知部165は、合焦動作に応じて所定の周波数特性を有する合焦音を出力する。合焦音の周波数特性は、第1の周波数に基づく基本音成分と、第1の周波数よりも高くて且つ第1の周波数の2倍の周波数よりも低い第2の周波数に基づく高音成分とを含む。
【0056】
このことにより、デジタルカメラ100は、倍音よりは低い協和度となる一方で直進性も低減でき、ユーザの耳に刺さるような耳障りを和らげることができる。
【0057】
合焦音が、基本音成分と高音成分とにおいて協和音を構成するように、第1及び第2の周波数が設定される。
【0058】
このことにより、デジタルカメラ100は、合焦音が協和音を構成するので、ユーザが心地良く感じられかつ機械の精緻さを想起させるような印象を与える合焦音を出力することができる。
【0059】
報知部165は、合焦音をフェードアウトさせるように出力する。
【0060】
このことにより、デジタルカメラ100は、音の余韻に混じり気があるような違和感を解消し、歯切れの良い合焦音を出力することができる。
【0061】
合焦音は、第1の音波W1と、第1の音波W1から時間間隔をあけて出力される第2の音波W2とを含み、第2の音波の振幅は、第1の音波の振幅よりも大きい。
【0062】
このことにより、デジタルカメラ100は、合焦停止感をユーザに与えることができる。
【0063】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施の形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0064】
実施の形態1のデジタルカメラ100は、周波数4.40kHzにおいて音の出力レベルがピークとなる基本音成分f11と、周波数6.60kHzにおいて音の出力レベルがピークとなる高音成分f21とを有する合焦音を出力するが、本開示はこれに限定されない。図6(A)は、合焦音の周波数特性の変形例を示す。図6(B)は、本変形例の合焦音の波形図を示す。本実施形態において、デジタルカメラ100は、図6(A)に示すように、周波数6.60kHzにおいて音の出力レベルがピークとなる高音成分f21に代えて、周波数5.86kHzにおいて音の出力レベルがピークとなる高音成分f22とを有する合焦音を出力してもよい。このとき、基本音成分f11と高音成分f22との周波数比は3:4であり、完全4度の協和音が構成される。この場合の合焦音は、図6(B)に示すように、完全5度の場合(図5(A))とは異なった波形の周期性において出力される。
【0065】
実施の形態1の合焦音の協和音は完全5度の音であり、実施の形態2の合焦音の協和音は完全4度の音であるが、特にこれに限定されない。
【0066】
本実施形態のデジタルカメラ1は、イメージセンサ115と、コントローラ135と、報知部165と、を備える。イメージセンサ115は、光学系110を介して入射する被写体像を撮像する。コントローラ135は、光学系110により被写体像に合焦する合焦動作を制御する。報知部165は、合焦動作に応じて合焦音を出力する。合焦音は、完全5度と完全4度とのうちの少なくとも一方の協和音を構成してもよい。
【0067】
上記実施の形態において、合焦音は4.40kHzの基本音成分を含むが、本開示はこれに限定されない。本実施形態において、合焦音は別の周波数の基本音成分を含んでもよい。
【0068】
図5の例において、期間T2は25msec.であったが、本開示はこれに限定されない。ユーザが第1の音波及び第2の音波それぞれを認識できるようにする観点からは、期間T2は10msec.以上の期間であればよい。例えば、期間T2は、10msec.から50msec.までの間で設定されてもよい。
【0069】
図5の例における第2の音波の振幅A2は、第1の音波の振幅A1よりも3dB程度大きいが、本開示はこれに限定されない。ユーザが、第2の音波の音量が第1の音波のものよりも大きいことを認識できるようにする観点からは、第2の音波の振幅A2は、第1の音波の振幅A1より、少なくとも3dB大きければよい。
【0070】
図5(B)において、報知部165は、37.5msec.(T3)後に振幅が0になるような一定の勾配でフェードをかけて第1の音波W1を出力するが、本開示はこれに限定されない。例えば、報知部165は、音の出力レベルがピークとなる周波数が低いほど期間T3が短くなるような勾配でフェードをかけて第1の音波W1を出力してもよい。例えば、図7(A)のように、第1の音波が、3.520kHzにおいて音の出力レベルがピークとなる基本音成分と、5.280kHzにおいて音の出力レベルがピークとなる高音成分とを含む場合、期間T3は、50msec.である。また、図7(B)のように、第1の音波が、0.880kHzにおいて音の出力レベルがピークとなる基本音成分と、1.320kHzにおいて音の出力レベルがピークとなる高音成分とを含む場合、期間T3は、25msec.である。期間T5についても同様である。
【0071】
報知部165は、DAコンバータを含んでもよいが、これに限定されない。例えば、DAコンバータは、コントローラ135に含まれてもよい。
【0072】
報知部165は、一定の勾配でフェードをかけて各音波W1,W2を出力してもよいが、これに限定されない。例えば、報知部165は、変化する勾配でフェードをかけて各音波W1,W2を出力してもよい。
【0073】
上記実施の形態において、合焦音は、基本音成分と高音成分とにおいて協和音を構成したが、各成分の(ピークの)周波数は適宜、許容誤差の範囲内で設定可能である。例えば、当該高音成分は、基本音成分の周波数よりも理論的な協和音の周波数比の分、高い周波数に対して、4分音低い音程から4分音高い音程までの範囲内で設定されてもよい。また、当該高音成分は、図4における、協和音を構成する音の出力レベルのピークの半値幅の帯域内で設定されてもよい。
【0074】
上記実施の形態において、合焦音は、2つの音波W1,W2で構成されたが、3つ以上の音波で構成されてもよい。本実施形態の合焦音は、基本音成分と高音成分の2つの音成分を含むが、3つ以上の音成分を含んでもよい。
【0075】
本実施形態において、デジタルカメラ100は、レンズ一体型のデジタルカメラに限らず、例えばレンズ交換型のデジタルカメラであってもよい。
【0076】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面及び詳細な説明を提供した。
【0077】
従って、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0078】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略等を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本開示の思想は、合焦機能を備えた撮像機能を有する電子装置(デジタルカメラやカムコーダ等の撮像装置、携帯電話、スマートフォン等)に適用することができる。
図1
図2
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図6
図7