(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】B-RAFキナーゼのマレイン酸塩、結晶形、調整方法、及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20230728BHJP
A61K 31/4375 20060101ALI20230728BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230728BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230728BHJP
A61P 5/00 20060101ALI20230728BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230728BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20230728BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230728BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20230728BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230728BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20230728BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230728BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
C07D471/04 114A
C07D471/04 CSP
A61K31/4375
A61P1/04
A61P1/16
A61P5/00
A61P11/00
A61P13/10
A61P13/12
A61P15/00
A61P17/00
A61P19/00
A61P25/00
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2017553956
(86)(22)【出願日】2016-04-14
(86)【国際出願番号】 CN2016079251
(87)【国際公開番号】W WO2016165626
(87)【国際公開日】2016-10-20
【審査請求日】2019-04-08
【審判番号】
【審判請求日】2021-01-22
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2015/076639
(32)【優先日】2015-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514164650
【氏名又は名称】ベイジーン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】チャン、グオリャン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、チャンヨウ
【合議体】
【審判長】瀬良 聡機
【審判官】齋藤 恵
【審判官】関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-506353(JP,A)
【文献】特開2021-073246(JP,A)
【文献】C.G.WERMUTH編,「最新 創薬化学 下巻」,株式会社 テクノミック,1999年,pp.347-365
【文献】真野高司,創薬の探索段階における薬剤学的研究の意義と実践,日本薬理学雑誌,2009年 3月 1日,第133巻,第3号,第149-153頁
【文献】平山令明,有機化合物結晶作製ハンドブック -原理とノウハウ-,2008年 7月25日,p.17-23,37-40,45-51,57-65
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D,A61K
REGISTRY/CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)の構造を有する、5-(((1R,1aS,6bR)-1-(6-(トリフルオロメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-1a,6b-ジヒドロ-1H-シクロプロパ[b]ベンゾフラン-5-イル)オキシ)-3,4-ジヒドロ-1,8-ナフチリジン-2(1H)-オンのセスキマレイン酸塩の結晶であって、
6.3±0.2°、8.9±0.2°、9.4±0.2°、11.2±0.2°、12.6±0.2°、13.4±0.2°、17.9±0.2°、18.6±0.2°、18.8±0.2°、19.3±0.2°、20.1±0.2°、20.7±0.2°、21.2±0.2°、21.8±0.2°、22.4±0.2°、22.6±0.2°、23.3±0.2°、23.8±0.2°、24.7±0.2°、25.6±0.2°、26.1±0.2°、27.4±0.2°、28.3±0.2°、28.6±0.2°、29.0±0.2°、29.4±0.2°及び30.4±0.2°からなる群から独立して選択される2θ角度値を有する、7つ又はそれ以上の回折ピークを持つ粉末X線回折パターンによって特徴付けられる、結晶形A*である結晶。
【化1】
【請求項2】
請求項1に記載の結晶の治療有効量と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物であって、
脳腫瘍、肺癌、腎臓癌、骨癌、肝臓癌、膀胱癌、乳癌、頭頸部癌、卵巣癌、メラノーマ、皮膚癌、副腎癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、リンパ腫、又は甲状腺腫瘍及びそれらの合併症からなる群から選択される癌を治療又は予防するための使用のための医薬組成物。
【請求項3】
前記癌が、BRAF、NRAS及びKRAS突然変異の脳腫瘍、肺癌、腎臓癌、骨癌、肝臓癌、膀胱癌、乳癌、頭頸部癌、卵巣癌、メラノーマ、皮膚癌、副腎癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、リンパ腫、又は甲状腺腫瘍及びそれらの合併症からなる群から選択される、請求項
2に記載の使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、B-RAFキナーゼ、すなわち、5-(((1R,1aS,6bR)-1-(6-(トリフルオロメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-1a,6b-ジヒドロ-1H-シクロプロパ[b]ベンゾフラン-5-イル)オキシ)-3,4-ジヒドロ-1,8-ナフチリジン-2(1H)-オン(以下、化合物1と呼ぶ)のマレイン酸塩、特に化合物1のセスキマレイン酸、及びセスキマレイン酸の結晶形(多形体)、及び調整方法、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
B-RAFは細胞の増殖及び生存の鍵となるRAF-MEK-ERK MAPK経路の一部であるキナーゼである。B-RAFの突然変異はメラノーマ(43%)(H.Daviesら、Nature、417(2002)、949-54;D.R.Englishら、Cancer Epidemiol Biomarkers Prev、17(2008)、1774-80;G.V.Longら、Lancet Oncol.、13(2012)、1087-95を参照)、甲状腺癌(27%)(Y.Cohen、J Natl Cancer Inst、95(2003)、625-7;E.T.Kimuraら、Cancer Res、63(2003)、1454-7を参照)、結腸直腸癌(14%)(H.Daviesら、Nature、417(2002)、949-54;D.R.Englishら、Cancer Epidemiol Biomarkers Prev、17(2008)、1774-80;S.Oginoら、Gut、58(2009)、90-6;C.P.Vaughn、Genes Chromosomes Cancer、50(2011)、307-12を参照)、卵巣癌(15%)(H.DAviesら、Nature、417(2002)、949-54;S.E.Russell、J Pathol、203(2004)、617-9を参照)、及び肺癌(2%)(M.S.Borseら、Cancer Res、62(2002)、6997-7000を参照)を含むヒトの癌の7%以上で発見されている。メラノーマで発見されたB-RAFの突然変異の90%以上が構成的な活性化をもたらす、B-RAFタンパク質鎖の600番目のアミノ酸であるバリンのグルタミン酸への置換(V600E)である。
【0003】
ベムラフェニブ及びダブラフェニブのようなB-RAF阻害剤のメラノーマ患者への臨床経験は効能を証明し、B-RAF及びMAPKシグナル伝達に依存して腫瘍を標的とするという概念を確認した。腫瘍にB-RAFのV600E突然変異を抱えるメラノーマ患者への選択的阻害は優れた客観的応答率及び無憎悪生存期間の延長をもたらした。しかし、ベムラフェニブ及びダブラフェニブを含むB-RAF阻害剤の第1世代は、例えば、1)変異又は活性RASに関連するB-RAF/C-RAFヘテロダイマーの誘導を通じたMAPKシグナル伝達の逆説的な増加によるケラトアカントーマ又は有棘細胞癌の成長;及び2)B-RAFのV600E突然変異を有するメラノーマの外部(例えば、結腸直腸)での臨床活性の制限といった、いくつかの制限を有する。したがって、これらの領域を改善した第2世代阻害剤が非常に望ましい。
【0004】
5-(((1R,1aS,6bR)-1-(6-(トリフルオロメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-1a,6b-ジヒドロ-1H-シクロプロパ[b]ベンゾフラン-5-イル)オキシ)-3,4-ジヒドロ-1,8-ナフチリジン-2(1H)-オン(遊離塩基、化合物1)はセリン/スレオニンキナーゼのRAFファミリーに対する強力な阻害活性を実証する第2世代B-RAF阻害剤として開示されている。WO2013/097224A1を参照。
【化1】
【0005】
化合物1はB-RAF突然変異及びK-RAS/N-RAS突然変異を含む、RAF-MEK-ERK分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路に異常がある癌の治療のための、単独療法又は他の癌治療法との併用としての分子標的治療薬である。しかし、化合物1の遊離塩基の比較的乏しい経口吸収は化合物1を医薬品開発において不適当なものにする。
【0006】
化合物1の遊離塩基は、元々は
図1のXRPDの結果に基づいて非晶質固体として得られ、かつ、化合物1の遊離塩基は0.001mg/mLの定量下限値未満で水に実質的に不溶であり、かつ、0~80%の相対湿度で2.2%水分貯留し、わずかに吸湿性であることもまた明らかになっている。
【0007】
加えて、化合物1の合成は非効率的であった。例えば、光学的に純粋な異性体を調製するためのキラルHPLCカラムの要件及び、過程における不純物除去を阻害するという非晶質形態の化合物1の遊離塩基の傾向といった様々な要素が化合物1の大規模な調製及び精製を困難にさせる。
【0008】
事実上、どの特定の化合物の塩が医薬品加工において安定かつ適切であるかを、自信を持って予測することは困難である。特定の化合物が様々な結晶固体状態をとるかどうか、及び、それらの結晶固体状態の物理的特性を予測することはさらに困難である。
【0009】
したがって、はるかに良い生物学的利用能を有し、かつ、この薬品の処方及び貯蔵の間化学的及び物理的安定性を有する化合物1のいくつかの形態を大いに必要としており、かつ、良い品質及び再生産性を有する化合物1の大規模な調製に適した工程を大いに必要としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願は前述の困難及び必要性を化合物1の安定した塩及びその結晶形を提供することで処理するための発明を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の観点において、本願は5-(((1R,1aS,6bR)-1-(6-(トリフルオロメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-1a,6b-ジヒドロ-1H-シクロプロパ[b]ベンゾフラン-5-イル)オキシ)-3,4-ジヒドロ-1,8-ナフチリジン-2(1H)-オン(“化合物1”)の塩であって、塩酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、L-酒石酸塩、マレイン酸塩及びシュウ酸塩から選択される、化合物1の塩を提供する。1つの実施態様では、塩は薬学的に許容される。別の実施態様では、塩は固体である。1つの好ましい実施態様では、塩は結晶形である。本願の塩は固体であり、かつ、潜在的な塩候補であることを意味する、化合物1の遊離塩基とは異なる結晶形を示す。本願の結晶形の塩は医薬製剤に適した優れた物理的特性を有し、かつ、高品質及び優良な再生産性のもと大きな商業的規模で製造され得る。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発明者は化合物1の塩酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、L-酒石酸塩、マレイン酸塩及びシュウ酸塩の中で、化合物1のマレイン酸塩、特に、セスキマレイン酸塩が結晶形となることを偶然発見した。特に、化合物1のマレイン酸塩は、本願では結晶形A*、A**、A、B、C、D、E,F、G、H、I、J、K、L及びMとよぶ、複数の結晶形(多形体)で存在し得ることが思いがけず発見された。化合物1のマレイン酸塩及びその結晶形、具体的には結晶形A*及びAは、他の塩と比較して、製剤及び臨床用途において適した候補となる、改善された溶解性及び安全性、特に、長期的な化学的/物理的安定性のような優れた特性を有する。より具体的には、化合物1のマレイン酸塩の結晶形A*、A及び他の形の、改善された溶解性及び/又は長期的な化学的/物理的安定性は、生体内(インビボ)及び試験管内(インビトロ)で速く溶解し、及びそれによって遊離塩基と比較して生物学的利用能が増加した、これらの形を提供する。
【0013】
第2の観点において、本願は式(I)の化合物である、5-(((1R,1aS,6bR)-1-(6-(トリフルオロメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-1a,6b-ジヒドロ-1H-シクロプロパ[b]ベンゾフラン-5-イル)オキシ)-3,4-ジヒドロ-1,8-ナフチリジン-2(1H)-オンのマレイン酸塩
【化2】
(式中、nは約0.3~約1.5である)
を提供する。
【0014】
1つの実施態様では、式(I)の化合物において、nは0.5±0.05、1.0±0.1、及び1.5±0.2からなる群から選択される。
【0015】
別の実施態様では、式(I)の化合物において、nは0.5、1.0又は1.5である。
【0016】
別の好ましい実施態様では、式(I)の化合物は結晶形である。
【0017】
別の好ましい実施態様では、nは1.5であり、かつ、化合物は式(II)の5-(((1R,1aS,6bR)-1-(6-(トリフルオロメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-1a,6b-ジヒドロ-1H-シクロプロパ[b]ベンゾフラン-5-イル)オキシ)-3,4-ジヒドロ-1,8-ナフチリジン-2(1H)-オンの結晶セスキマレイン酸塩である。
【化3】
【0018】
1つの実施態様では、式(II)の化合物は、6.3±0.2°、8.9±0.2°、9.4±0.2°、11.2±0.2°、12.6±0.2°、13.4±0.2°、17.9±0.2°、18.6±0.2°、18.8±0.2°、19.3±0.2°、20.1±0.2°、20.7±0.2°、21.2±0.2°、21.8±0.2°、22.4±0.2°、22.6±0.2°、23.3±0.2°、23.8±0.2°、24.7±0.2°、25.6±0.2°、26.1±0.2°、27.4±0.2°、28.3±0.2°、28.6±0.2°、29.0±0.2°、29.4±0.2°及び30.4±0.2°からなる群から独立して選択される2θ角度値を有する7つ又はそれ以上の回折ピークを持つ粉末X線回折パターンによって特徴付けられる結晶形A*である。
【0019】
別の実施態様では、式(II)の化合物は結晶形A**の単結晶である。
【0020】
別の実施態様では、式(II)の化合物は、8.3±0.2°、11.2±0.2°、17.9±0.2°、18.4±0.2°、18.6±0.2°、19.3±0.2°、20.8±0.2°及び22.5±0.2°からなる群から独立して選択される2θ角度値を有する3つ又はそれ以上の回折ピークを持つ粉末X線回折パターンによって特徴付けられる結晶形Aである。
【0021】
別の実施態様では、式(I)の化合物は、11.1±0.2°、15.8±0.2°、17.7±0.2°、18.4±0.2°、19.6±0.2°、22.3±0.2°、23.1±0.2°及び28.8±0.2°からなる群から独立して選択される2θ角度値を有する3つ又はそれ以上の回折ピークを持つ粉末X線回折パターンによって特徴付けられる結晶形Bである。
【0022】
別の実施態様では、式(I)の化合物は、3.1±0.2°、8.8±0.2°、11.2±0.2°、17.8±0.2°、18.5±0.2°、19.3±0.2°、20.1±0.2°、20.7±0.2°、21.9±0.2°及び22.4±0.2°からなる群から独立して選択される2θ角度値を有する3つ又はそれ以上の回折ピークを持つ粉末X線回折パターンによって特徴付けられる結晶形Cである。
【0023】
別の実施態様では、式(I)の化合物は、8.9±0.2°、14.9±0.2°、16.7±0.2°、17.8±0.2°、19.9±0.2°、20.4±0.2°、20.9±0.2°及び26.9±0.2°からなる群から独立して選択される2θ角度値を有する3つ又はそれ以上の回折ピークを持つ粉末X線回折パターンによって特徴付けられる結晶形Dである。
【0024】
別の実施態様では、式(I)の化合物は、12.9±0.2°、17.0±0.2°、18.5±0.2°、19.4±0.2°、20.5±0.2°、22.5±0.2°及び24.1±0.2°からなる群から独立して選択される2θ角度値を有する3つ又はそれ以上の回折ピークを持つ粉末X線回折パターンによって特徴付けられる結晶形Fである。
【0025】
別の実施態様では、式(I)の化合物は、3.4±0.2°、5.6±0.2°、7.0±0.2°、10.3±0.2°、10.9±0.2°、11.7±0.2°、12.4±0.2°、13.1±0.2°、14.0±0.2°、14.9±0.2°、16.4±0.2°、17.4±0.2°、18.6±0.2°、19.3±0.2°、20.1±0.2°、21.0±0.2°、21.9±0.2°、23.6±0.2°、24.2±0.2°、25.6±0.2°及び26.4±0.2°からなる群から独立して選択される2θ角度値を有する7つ又はそれ以上の回折ピークを持つ粉末X線回折パターンによって特徴付けられる結晶形Gである。
【0026】
別の実施態様では、式(I)の化合物は、6.3±0.2°、9.0±0.2°、10.1±0.2°、11.2±0.2°、12.7±0.2°、14.5±0.2°、16.1±0.2°、16.6±0.2°、17.9±0.2°、18.1±0.2°、18.5±0.2°、19.0±0.2°、20.1±0.2°、21.9±0.2°、22.4±0.2°、23.9±0.2°、25.1±0.2°、26.2±0.2°及び28.7±0.2°からなる群から独立して選択される2θ角度値を有する7つ又はそれ以上の回折ピークを持つ粉末X線回折パターンによって特徴付けられる結晶形Hである。
【0027】
別の実施態様では、式(I)の化合物は、3.1±0.2°、5.5±0.2°、6.8±0.2°、10.8±0.2°、11.5±0.2°、13.7±0.2°、16.1±0.2°、16.3±0.2°、17.8±0.2°、19.8±0.2°、21.5±0.2°、23.8±0.2°、24.4±0.2°及び28.3±0.2°からなる群から独立して選択される2θ角度値を有する5つ又はそれ以上の回折ピークを持つ粉末X線回折パターンによって特徴付けられる結晶形Iである。
【0028】
別の実施態様では、式(I)の化合物は、5.5±0.2°、8.2±0.2°、10.9±0.2°、11.3±0.2°、13.6±0.2°、14.8±0.2°、15.8±0.2°、17.4±0.2°、18.0±0.2°、19.1±0.2°、19.8±0.2°、20.0±0.2°、20.4±0.2°、21.1±0.2°、21.9±0.2°、22.6±0.2°、23.4±0.2°、24.1±0.2°、25.0±0.2°、26.1±0.2°、26.9±0.2°、27.3±0.2°、28.4±0.2°、29.1±0.2°、33.1±0.2°及び35.9±0.2°からなる群から独立して選択される2θ角度値を有する7つ又はそれ以上の回折ピークを持つ粉末X線回折パターンによって特徴付けられる結晶形Jである。
【0029】
別の実施態様では、式(I)の化合物は、3.1±0.2°、8.9±0.2°、9.3±0.2°、11.2±0.2°、16.7±0.2°、17.9±0.2°、18.6±0.2°、18.8±0.2°、19.4±0.2°、20.2±0.2°、21.9±0.2°、22.4±0.2°、23.4±0.2°、23.9±0.2°、24.6±0.2°、26.2±0.2°、27.4±0.2°、28.5±0.2°、29.4±0.2°及び30.4±0.2°からなる群から独立して選択される2θ角度値を有する7つ又はそれ以上の回折ピークを持つ粉末X線回折パターンによって特徴付けられる結晶形Kである。
【0030】
別の実施態様では、式(I)の化合物は、9.7±0.2°及び14.1±0.2°の2θ角度値を有する回折ピークを持つ粉末X線回折パターンによって特徴付けられる結晶形Lである。
【0031】
別の実施態様では、式(I)の化合物は、5.0±0.2°、9.3±0.2°、11.3±0.2°、14.9±0.2°、15.9±0.2°、17.4±0.2°、18.0±0.2°、18.7±0.2°、19.4±0.2°、20.2±0.2°、22.1±0.2°、23.4±0.2°、24.3±0.2°、25.4±0.2°、26.5±0.2°、27.5±0.2°、28.5±0.2°及び29.3±0.2°からなる群から独立して選択される2θ角度値を有する7つ又はそれ以上の回折ピークを持つ粉末X線回折パターンによって特徴付けられる結晶形Mである。
【0032】
いくつかの実施態様では、式(I)の化合物において、nは1であり、すなわち、化合物1のマレイン酸塩(1:1)である。他の実施態様では、本願は3.30±0.2°、6.61±0.2°、9.88±0.2°、11.73±0.2°、13.14±0.2°、15.23±0.2°、16.56±0.2°、17.94±0.2°、18.72±0.2°、19.34±0.2°、19.93±0.2°、20.76±0.2°、22.04±0.2°、22.95±0.2°、23.86±0.2°、25.19±0.2°、26.61±0.2°、28.36±0.2°、30.13±0.2°、31.36±0.2°、33.49±0.2°及び37.22±0.2°からなる群から独立して選択される2θ角度値を有する7つ又はそれ以上の回折ピークを持つ粉末X線回折パターンによって特徴付けられる化合物1のマレイン酸塩(1:1)の結晶形Nを提供する。
【0033】
【0034】
いくつかの実施態様では、化合物1のマレイン酸塩(1:1)の結晶形Nは、
図33に示す粉末X線回折パターンによって実質的に特徴付けられる化学的に安定な結晶形である。
【0035】
別の観点では、本願は式(II)の5-(((1R,1aS,6bR)-1-(6-(トリフルオロメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-1a,6b-ジヒドロ-1H-シクロプロパ[b]ベンゾフラン-5-イル)オキシ)-3,4-ジヒドロ-1,8-ナフチリジン-2(1H)-オンのマレイン酸塩の結晶形の調製方法であり、以下の工程のいずれかを含む、調製方法を提供する:
(a)5-(((1R,1aS,6bR)-1-(6-(トリフルオロメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-1a,6b-ジヒドロ-1H-シクロプロパ[b]ベンゾフラン-5-イル)オキシ)-3,4-ジヒドロ-1,8-ナフチリジン-2(1H)-オンの遊離塩基又はマレイン酸塩以外の塩を溶媒又は溶媒混合物に溶解して、溶液又は懸濁液を生成し;結果として生ずる溶液又は懸濁液をマレイン酸と混合して混合物を生成し;かつ、5-(((1R,1aS,6bR)-1-(6-(トリフルオロメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-1a,6b-ジヒドロ-1H-シクロプロパ[b]ベンゾフラン-5-イル)オキシ)-3,4-ジヒドロ-1,8-ナフチリジン-2(1H)-オンのマレイン酸塩を目的の結晶形として沈殿させる工程;
(b)5-(((1R,1aS,6bR)-1-(6-(トリフルオロメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-1a,6b-ジヒドロ-1H-シクロプロパ[b]ベンゾフラン-5-イル)オキシ)-3,4-ジヒドロ-1,8-ナフチリジン-2(1H)-オンのセスキマレイン酸塩を溶媒又は混合溶媒に溶解又は懸濁させ;かつ、5-(((1R,1aS,6bR)-1-(6-(トリフルオロメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-1a,6b-ジヒドロ-1H-シクロプロパ[b]ベンゾフラン-5-イル)オキシ)-3,4-ジヒドロ-1,8-ナフチリジン-2(1H)-オンのマレイン酸塩を目的の結晶形として沈殿させる工程;
(c)5-(((1R,1aS,6bR)-1-(6-(トリフルオロメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-1a,6b-ジヒドロ-1H-シクロプロパ[b]ベンゾフラン-5-イル)オキシ)-3,4-ジヒドロ-1,8-ナフチリジン-2(1H)-オンのセスキマレイン酸塩を目的の結晶形を得るために長期間保存する工程;
(d)5-(((1R,1aS,6bR)-1-(6-(トリフルオロメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-1a,6b-ジヒドロ-1H-シクロプロパ[b]ベンゾフラン-5-イル)オキシ)-3,4-ジヒドロ-1,8-ナフチリジン-2(1H)-オンのセスキマレイン酸塩の結晶又は非晶質を加熱して昇温し、その後塩を冷却して目的の結晶形を得る工程;及び
(e)5-(((1R,1aS,6bR)-1-(6-(トリフルオロメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-1a,6b-ジヒドロ-1H-シクロプロパ[b]ベンゾフラン-5-イル)オキシ)-3,4-ジヒドロ-1,8-ナフチリジン-2(1H)-オンのマレイン酸塩の結晶又は非晶質を溶媒の蒸気に晒して目的の結晶形を得る工程。
【0036】
本観点の1つの実施態様では、工程(a)又は(b)は、加熱、不溶な不純物を除去するための濾過、溶媒の蒸留、カウンターの溶媒又は溶媒混合物の添加、種結晶の添加、沈殿誘発剤の添加、冷却、沈殿及び結晶生成物を採取するためのろ過から独立して選択される1つ又はそれ以上の工程をさらに含む。
【0037】
本観点の別の実施態様では、工程(a)又は(b)は、溶媒又は溶媒混合物が水、低級アルキルアルコール、ケトン、エーテル、エステル、低級脂肪族カルボン酸、低級脂肪族ニトリル、任意にハロゲン化された芳香族溶媒及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0038】
本観点の別の実施態様では、工程(a)又は(b)は、溶媒がイソプロパノール、エタノール、メタノール、アセトン、THF、1,4-ジオキサン、酢酸、アセトニトリル、水又はそれらの組み合わせである。
【0039】
本観点の別の実施態様では、工程(a)において、遊離塩基は単離され精製された遊離塩基、単離されたが精製されていない遊離塩基又は遊離塩基を含む粗反応生成物である。
【0040】
本観点の別の実施態様では、工程(c)において、長期間とは少なくとも3日、少なくとも1週間又は少なくとも2週間である。
【0041】
本観点の別の実施態様では、工程(d)において、昇温は少なくとも40℃、少なくとも60℃、少なくとも80℃又は少なくとも100℃であるが、セスキマレイン酸塩の分解温度よりも低い。
【0042】
本観点の別の実施態様では、工程(e)において、蒸気は酢酸の蒸気である。
【0043】
本観点の別の実施態様では、方法は:
1)結晶形A*を生成するための溶媒としてイソプロパノール-水(v/v>60/40)を用いる工程(a)又は(b);
2)結晶形A**を生成するための溶媒としてアセトンを用いる工程(a)又は(b);
3)結晶形Aを生成するための溶媒としてIPA-水混合物(v:v=4:1)を用いる工程(a)又は(b);
4)結晶形Bを生成するための溶媒として1,4-ジオキサンを用いる工程(a)又は(b);
5)結晶形Cを生成するための溶媒としてエタノールを用いる工程(a)又は(b);
6)結晶形Dを生成するための溶媒としてメタノールを用いる工程(a)又は(b);
7)結晶形Fを生成するための溶媒としてアセトニトリル-水混合物(v:v=1:1)用いる工程(a)又は(b);
8)結晶形Gを生成するための溶媒として酢酸-水混合物を用いる工程(a)又は(b);
9)結晶形Hを生成するための溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いる工程(a)又は(b);
10)結晶形Iを生成するための溶媒としてIPA-水混合物(v:v=3:1)を用いる工程(a)又は(b);
11)結晶形Kを生成するために結晶形Dを室温で2週間保存する工程(c);
12)結晶形Mを生成するために結晶形Jを室温で2週間保存する工程(c);
13)結晶形Lを生成するために結晶形Gを140℃に加熱し、その後室温まで冷却する工程(d);及び
14)結晶形Jを生成するために結晶形Aを酢酸蒸気と接触させる工程(e);
から選択される。
【0044】
いくつかの実施態様では、本願は、還流温度以下の温度で混合する工程、例えば、化合物1とマレイン酸を混合溶媒であるi-PrOH及び水の中で約50℃で混合する工程、又は、還流温度以下で混合する工程、例えば、化合物1とマレイン酸の混合物、若しくは懸濁液、若しくは溶液を混合溶媒であるi-PrOH及び水の中で約50℃で混合する工程、又は、還流温度以下で混合する工程、例えば、化合物1の混合物、若しくは懸濁液、若しくは溶液を、マレイン酸が含まれる、混合溶媒であるi-PrOH及び水の中で約50℃で混合する工程、を含み、i-PrOHの量はi-PrOH及び水の全容積に対して40体積%より大きく、好ましくは60体積%より大きく、更に好ましくは90体積%より大きい、化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形の調製工程を提供する。いくつかの好ましい実施態様では、上記の混合溶媒はi-PrOHに置き換えられる。他の実施態様では、工程は室温まで冷却した後に、いくらかの種結晶を結果として生ずる混合物に添加し、その後混合物を12時間、24時間、2、3、もしくは4日、又は1週間、2週間といった一定期間放置する工程をさらに含む。
【0045】
いくつかの実施態様では、本願は化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形とメタノールを混合する工程を含む化合物1のマレイン酸塩の調製工程を提供する。いくつかの実施態様では、上述の混合する工程は撹拌して行われる。いくつかの実施態様では、化合物1のマレイン酸塩(1:1)の結晶形は本願で開示されている結晶形Nである。いくつかの実施態様では、化合物1のマレイン酸塩の結晶形は、結晶形A*、A**、A、B、C、D、F、G、H、I、J、K、L及びMからなる群から選択されるいずれかの結晶形である。いくつかの実施態様では、上述の混合する工程は約1日、又は2日、又は3日、又は4日、又は5日、又は6日、又は1週間、又は2週間である。化合物1のセスキマレイン酸塩(1:1.5)のマレイン酸塩(1:1)への当該変換は非常に単純な工程、例えば、例として結晶形A*、A**、及びAのいずれかである化合物1のセスキマレイン酸塩を室温又は昇温で、メタノール中で単に撹拌することによって、有効医薬品成分である化合物1を製造及び/又はさらに精製するための、費用対効果の高い工程を提供する。当該変換は、得られた結晶質(すなわち、化合物1のマレイン酸塩(1:1)の結晶形)の結晶粒径の減少を生じさせ、次に、薬品の溶解速度を速め、かつ、さらに、薬品の化学的純度を高める可能性があることも発見されている。この点について、当該変換は薬品の製造工程をさらに簡素化、例えば、微粉化及び圧縮の工程を使用せずにすむことを期待されている。
【0046】
別の観点では、本願は、本願に記載されるいずれかの実施形態による式(I)又は(II)の化合物及び薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物を提供する。
【0047】
1つの実施態様では、医薬生成物は経口摂取に適している。
【0048】
別の実施態様では、医薬生成物は錠剤又はカプセルの形態である。
【0049】
別の実施態様では、錠剤又はカプセルの単位投与量は5~80mgである。
【0050】
別の実施態様では、医薬組成物中の化合物の重量パーセンテージは1~99%である。
【0051】
別の観点では、本願は、被検体に治療的に有効な量の、本願に記載されるいずれかの実施形態による式(I)もしくは(II)の化合物、又は式(I)もしくは(II)の化合物を含む医薬組成物を投与することを含む、ヒトのような前記被検体の疾患又は障害を治療又は予防する方法を提供する。
【0052】
1つの実施態様では、疾患又は障害は、脳腫瘍、肺癌、腎臓癌、骨癌、肝臓癌、膀胱癌、乳癌、頭頸部癌、卵巣癌、メラノーマ、皮膚癌、副腎癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、リンパ腫又は甲状腺腫瘍及びそれらの合併症からなる群から選択される癌である。
【0053】
別の実施態様では、疾患はBRAF、NRAS及びKRAS突然変異の脳腫瘍、肺癌、腎臓癌、骨癌、肝臓癌、膀胱癌、乳癌、頭頸部癌、卵巣癌、メラノーマ、皮膚癌、副腎癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、リンパ腫又は甲状腺腫瘍及びそれらの合併症からなる群から選択される癌である。
【0054】
別の実施態様では、化合物の投与量は1~100mg/日であり、かつ、投与頻度は1日あたり1~3回である。
【0055】
別の実施態様では、化合物の投与量は5~50mg/日であり、かつ、投与頻度は1日あたり1~3回である。
【0056】
別の実施態様では、化合物の投与量は10~40mg/日であり、かつ、投与頻度は1日1回である。
【0057】
別の実施態様では、化合物は結晶形A*、A**、A、B、C、D、F、G、H、I、J、K、L、M及びNからなる群から選択される結晶形の5-(((1R,1aS,6bR)-1-(6-(トリフルオロメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-1a,6b-ジヒドロ-1H-シクロプロパ[b]ベンゾフラン-5-イル)オキシ)-3,4-ジヒドロ-1,8-ナフチリジン-2(1H)-オンのマレイン酸塩である。
【0058】
別の観点では、本願はBRAF、NRAS及びKRAS活性に関連する疾患又は障害の治療のための、医薬品の製造において本願に記載されるいずれかの実施形態による式(I)もしくは(II)の化合物の使用を提供する。
【0059】
好ましい実施態様では、疾患は癌である。
【0060】
別の好ましい実施態様では、化合物は結晶形A*、A**、A、B、C、D、F、G、H、I、J、K、L、M及びNからなる群から選択される結晶形の5-(((1R,1aS,6bR)-1-(6-(トリフルオロメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-1a,6b-ジヒドロ-1H-シクロプロパ[b]ベンゾフラン-5-イル)オキシ)-3,4-ジヒドロ-1,8-ナフチリジン-2(1H)-オンのマレイン酸塩である。本発明のこれら及び他の観点は、以下の図面、詳細な説明及び特許請求の範囲の観点からより高く評価されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】無定形の化合物1のX線回折パターンを示す。
【
図2】(イソプロパノール/水からの結晶化により得られた)化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*のX線回折パターンを示す。
【
図3】化合物1の塩酸塩(1:1)のX線回折パターンを示す。
【
図4】化合物1のメタンスルホン酸塩(1:1)のX線回折パターンを示す。
【
図5】化合物1の2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩(1:1)のX線回折パターンを示す。
【
図6】化合物1のL-酒石酸塩(1:1)のX線回折パターンを示す。
【
図7】化合物1のシュウ酸塩(1:1)のX線回折パターンを示す。
【
図8】リン酸を含む化合物1(1:1)より得られた固体、トルエンスルホン酸を含む化合物1(1:1)より得られた固体、エタンジスルホン酸を含む化合物1(1:1)より得られた固体、スルホン酸を含む化合物1(1:1)より得られた固体、API懸濁液のコントロール及びAPIのX線回折パターンを重ね合わせたものを示す。
【
図9】L-乳酸を含む化合物1(1:1)より得られた固体、L-マレイン酸を含む化合物1(1:1)より得られた固体、マロン酸を含む化合物1(1:1)より得られた固体、ニコチンアミドを含む化合物1(1:1)より得られた固体、サッカリンを含む化合物1(1:1)より得られた固体、コハク酸を含む化合物1(1:1)より得られた固体、API懸濁液のコントロール及びAPIのX線回折パターンを重ね合わせたものを示す。
【
図10】安息香酸を含む化合物1(1:1)より得られた固体、クエン酸を含む化合物1(1:1)より得られた固体、フマル酸を含む化合物1(1:1)より得られた固体、ゲンチジン酸を含む化合物1(1:1)より得られた固体、グリコール酸を含む化合物1(1:1)より得られた固体、API懸濁液のコントロール及びAPIのX線回折パターンを重ね合わせたものを示す。
【
図11】ニコチン酸を含む化合物1(1:1)より得られた固体、ニコチン酸の懸濁液のコントロール、API懸濁液のコントロール及びAPIのX線回折パターンを重ね合わせたものを示す。
【
図12】アジピン酸を含む化合物1(1:1)より得られた固体、アジピン酸の懸濁液のコントロール、API懸濁液のコントロール及びAPIのX線回折パターンを重ね合わせたものを示す。
【
図13】(アセトンからの再結晶により得られた)化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A**の絶対構造を示す。
【
図14】化合物1のセスキマレイン酸塩の単結晶形A**の水素結合を図解する。
【
図15】化合物1のセスキマレイン酸塩の単結晶形A**の結晶充填を示す。
【
図16】MERCURYソフトウェアを用いて計算した化合物1のセスキマレイン酸塩の単結晶形A*の理論上のXRPDパターンを示す。
【
図17】(イソプロパノール/水からの再結晶により得られた)化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形AのX線回折パターンを示す。
【
図18】化合物1のマレイン酸塩の結晶形BのX線回折パターンを示す。
【
図19】化合物1のマレイン酸塩の結晶形CのX線回折パターンを示す。
【
図20】化合物1のマレイン酸塩の結晶形DのX線回折パターンを示す。
【
図21】化合物1のマレイン酸塩の結晶形FのX線回折パターンを示す。
【
図22】化合物1のマレイン酸塩の結晶形GのX線回折パターンを示す。
【
図23】化合物1のマレイン酸塩の結晶形HのX線回折パターンを示す。
【
図24】化合物1のマレイン酸塩の結晶形IのX線回折パターンを示す。
【
図25】化合物1のマレイン酸塩の結晶形JのX線回折パターンを示す。
【
図26】化合物1のマレイン酸塩の結晶形KのX線回折パターンを示す。
【
図27】化合物1のマレイン酸塩の結晶形LのX線回折パターンを示す。
【
図28】化合物1のマレイン酸塩の結晶形MのX線回折パターンを示す。
【
図29】化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*の
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図30】化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*の
13C-NMRスペクトルを示す。
【
図31】DVSによる化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*の吸湿性を示す。
【
図32】化合物1のマレイン酸塩(1:1)の結晶形Nの
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図33】化合物1のマレイン酸塩(1:1)の結晶形NのX線回折パターンを示す。
【
図34】化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形Aの
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図35】化合物1のマレイン酸塩(1:1.2)の結晶形Bの
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図36】化合物1のマレイン酸塩(1:1.3)の結晶形Cの
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図37】化合物1のマレイン酸塩(1:1)の結晶形Dの
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図38】化合物1のマレイン酸塩(1:0.5)の結晶形Fの
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図39】化合物1のマレイン酸塩(1:0.5)の結晶形Gの
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図40】化合物1のマレイン酸塩(1:1)の結晶形Hの
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図41】化合物1のマレイン酸塩(1:0.5)の結晶形Iの
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図42】化合物1のマレイン酸塩(1:1)の結晶形Jの
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図43】化合物1のマレイン酸塩(1:1)の結晶形Kの
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図44】化合物1のマレイン酸塩(1:0.3)の結晶形Lの
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図45】化合物1のマレイン酸塩(1:1.3)の結晶形Mの
1H-NMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明の塩を調製する過程で、製薬業界で一般的に使用される多くの塩形成剤が研究された。特に、本発明で検討される塩形成剤は、塩酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、グリコール酸、L-乳酸、フマル酸、L-酒石酸、クエン酸、L-マレイン酸、コハク酸、馬尿酸、マレイン酸、アジピン酸、安息香酸、ゲンチジン酸、マロン酸、エタンジスルホン酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸、ニコチン酸、ニコチンアミド及びサッカリンからなる群から選択される25の酸又は塩形成剤を含む。
【0063】
しかし、化合物1と6つの塩のみが反応により塩の形成を示した。特に、塩酸(
図3)、メタンスルホン酸(
図4)、2-ヒドロキシエタンスルホン酸(
図5)、L-酒石酸(
図6)、マレイン酸(
図2、
図17等)及びシュウ酸(
図7)を含む6つの酸との化合物1の塩の固体形は、遊離塩基、APIコントロール及び固体酸コントロールとは異なる結晶形を示した。本出願の上記6種の結晶性塩とは対照的に、他の塩は結晶化することができなかった。
【0064】
一の観点では、本願で提供されるものは、本願に開示された方法によって大量に調製される、化合物1のセスキマレイン酸塩である。
図2に示すように、化合物1のセスキマレイン酸塩は結晶形(本図では結晶形A*とよぶ)であり、そのX線粉末回折スペクトルは典型的には以下のピーク回折角を有する(「間隔」は
図2では「d値」として示される)。
【0065】
【0066】
化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*は、非常に安定した結晶形である。微粉化後、平均粒径(D90)が約1~10ミクロンの良好に分布した微粒子になるため、臨床用途のために容易に製剤化され得る。
【0067】
別の実施態様において、本願では化合物1のセスキマレイン酸塩の単結晶形A**が提供される。化合物1の結晶形A**の構造は、アセトン中でゆっくり冷却することによって成長させた単結晶から収集した一連の回折データを用いて決定した。 結晶データ及び構造精密化を表2に示す。
【0068】
【0069】
図13に示す化合物1のマレイン酸塩の単結晶構造は、遊離塩基分子のイミダゾール窒素原子がプロトン化されたセスキマレイン酸塩を確認する。C1(S)、C2(R)及びC3(R)の絶対配置は、0.1(5)の絶対構造パラメータによって示されるように高い確率で決定された。水素結合相互作用を
図14に示す。この構造は、bc面内の二次元構造を示す。化合物1及びマレイン酸アニオンの遊離塩基分子は、b軸に沿って分子間相互作用(N3・・・N3 2.797Å)及び水素結合(N2-H2・・・O4 2.760Å)によって連結される。テープ構造は、c軸に沿った分子間相互作用(N3・・・O7 3.008Å及びN4・・・O7 2.715Å)及び水素結合(N1-H1・・・O8 2.659Å)を介してマレイン酸アニオンによって連結され、二次元構造を形成する。 化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶充填を
図15に示す。化合物1の単結晶形A**のMERCURYソフトウェアを用いて計算した理論上のPXRDパターンを
図16に示す。
【0070】
別の実施態様において、本願では化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形Aが提供される。
図17に示すように、結晶形AのX線粉末回折スペクトルは、典型的には、以下のピーク回折角を有する(「間隔」が
図17では「d値」として示される)。
【0071】
【0072】
別の実施態様において、本願では化合物1のマレイン酸塩の結晶形Bが提供される。
図18に示すように、結晶形BのX線粉末回折スペクトルは、典型的には、以下のピーク回折角を有する(「間隔」が
図18では「d値」として示される)。
【0073】
【0074】
別の実施態様において、本願では化合物1のマレイン酸塩の結晶形Cが提供される。
図19に示すように、結晶形CのX線粉末回折スペクトルは、典型的には、以下のピーク回折角を有する(「間隔」が
図19では「d値」として示される)。
【0075】
【0076】
別の実施態様において、本願では化合物1のマレイン酸塩の結晶形Dが提供される。
図20に示すように、結晶形DのX線粉末回折スペクトルは、典型的には、以下のピーク回折角を有する(「間隔」が
図20では「d値」として示される)。
【0077】
【0078】
別の実施態様において、本願では化合物1のマレイン酸塩の結晶形Fが提供される。
図21に示すように、結晶形FのX線粉末回折スペクトルは、典型的には、以下のピーク回折角を有する(「間隔」が
図21では「d値」として示される)。
【0079】
【0080】
別の実施態様において、本願では化合物1のマレイン酸塩の結晶形Gが提供される。
図22に示すように、結晶形GのX線粉末回折スペクトルは、典型的には、以下のピーク回折角を有する(「間隔」が
図22では「d値」として示される)。
【0081】
【0082】
別の実施態様において、本願では化合物1のマレイン酸塩の結晶形Hが提供される。
図23に示すように、結晶形HのX線粉末回折スペクトルは、典型的には、以下のピーク回折角を有する(「間隔」が
図23では「d値」として示される)。
【0083】
【0084】
別の実施態様において、本願では化合物1のマレイン酸塩の結晶形Iが提供される。
図24に示すように、結晶形IのX線粉末回折スペクトルは、典型的には、以下のピーク回折角を有する(「間隔」が
図24では「d値」として示される)。
【0085】
【0086】
別の実施態様において、本願では化合物1のマレイン酸塩の結晶形Jが提供される。
図25に示すように、結晶形JのX線粉末回折スペクトルは、典型的には、以下のピーク回折角を有する(「間隔」が
図25では「d値」として示される)。
【0087】
【0088】
別の実施態様において、本願では化合物1のマレイン酸塩の結晶形Kが提供される。
図26に示すように、結晶形KのX線粉末回折スペクトルは、典型的には、以下のピーク回折角を有する(「間隔」が
図26では「d値」として示される)。
【0089】
【0090】
別の実施態様において、本願では化合物1のマレイン酸塩の結晶形Lが提供される。
図27に示すように、結晶形LのX線粉末回折スペクトルは、典型的には、以下のピーク回折角を有する(「間隔」が
図27では「d値」として示される)。
【0091】
【0092】
別の実施態様において、本願では化合物1のマレイン酸塩の結晶形Mが提供される。
図28に示すように、結晶形MのX線粉末回折スペクトルは、典型的には、以下のピーク回折角を有する(「間隔」が
図28では「d値」として示される)。
【0093】
【0094】
別の実施態様において、本願では化合物1のマレイン酸塩(1:1)の結晶形Nが提供される。
図33に示すように、結晶形NのX線粉末回折スペクトルは、典型的には、以下のピーク回折角を有する(「間隔」が
図33では「d値」として示される)。
【0095】
【0096】
上記の結晶形A*、A**、A、B、C、D、F、G、H、I、J、K、L、M及びNについては、主なピーク(すなわち、最も特徴的であり、重要であり、固有であり、かつ/又は再現可能であるピーク)のみが要約される;追加のピークは従来の方法で回折スペクトルから得ることができる可能性がある。上記の主なピークは誤差の範囲内(最後に与えられた小数点以下の桁+若しくは-2、又は指定された値で+若しくは-0.2)で再現され得る。
【0097】
別の観点では、本願では式(I)又は式(II)の化合物を調製する方法が提供される。
【0098】
1つの実施態様では、本願ではスキーム1に示される手順に従って調製又は精製された化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*が提供される。本願に開示される新規の合成方法及び結晶化/再結晶化の工程は、99%以上の光学純度を有する重要なキラル中間体の調製など、以前に報告された工程に関連する多くの問題を克服し、かつ、従来の工程よりも多くの利点を提供する。 特に、本願に開示された方法は、高品質かつ良好な収率である、化合物1のセスキマレイン酸塩の再現性のある商業規模の製造に特に適している。
【化4】
【0099】
化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形は、以下の一般的な方法によって調製され得る。化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*を溶媒で完全に溶解するまで加熱する。濾過、冷却、結晶化、濾過及び乾燥の後、対応する異なる結晶形が得られる。化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形Aを調製するための結晶化工程の例は、実施例3(下記)に記載されている。上記の結晶化は、単一の溶媒、有機溶媒の混合物、又は水と有機溶媒との混合物中で実行され得る。 結晶化に適した有機溶媒は、低級アルキルアルコール、ケトン、エーテル、エステル、ハロゲン化炭化水素、アルカン、ハロゲン化ベンゼン、脂肪族ニトリル、及び他の芳香族溶媒から選択することができるが、これらに限定されない。 好ましい溶媒には、例えば、イソプロパノール、酢酸エチル、水、N,N-ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリル、及びそれらの混合物が含まれる。
【0100】
化合物1の遊離塩基はもともと、わずかに吸湿性であり、0~80%のRHから2.2%の水分増加を伴った無定形固体として得られた。 動的蒸気収着(DVS)後には形態変化は観察されなかった。偏光顕微鏡から不規則な形状の複屈折現象が観察された。
【0101】
本願では、驚くべきことに、マレイン酸塩、特にセスキマレイン酸塩が薬物候補の所望の特性を有することが判明した、化合物1の塩酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、L-酒石酸塩、マレイン酸塩及びシュウ酸塩が開示されている。例えば、化合物1は結晶性酒石酸塩を形成しないと思われ、かつ、シュウ酸塩は結晶性が悪い。2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、メシラート、及びHCl塩は水への溶解性が比較的良好であったが、HCl塩は化学的に不安定であり、60℃及び40℃/75%RHで1週間後に著しく劣化し、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩及びメシラート塩は両方吸湿性であり、0~80%RHから約4%の重量が増加する。2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩及びメシラート塩も、60℃及び40℃/75%RHで1週間後に分解を示し、したがって、所望の長期の化学的安定性を欠くと予想される。他方で、セスキマレイン酸塩(1:1.5遊離塩基/マレイン酸)は、本願に開示されたXRPDパターンによって示されるように良好な結晶化度を有し、水にわずかに可溶性であり、かつ、60℃及び40℃/75%RHで1週間後に分解を示さず、長期で安定する可能性を示している;したがって、セスキマレイン酸塩は、さらなる開発のために選択された。
【0102】
所望又は必要であれば、化合物1のセスキマレイン酸塩の純度は、セスキマレイン酸塩をメタノール-懸濁液工程によりマレイン酸塩(遊離塩基/酸の比率1:1)に変換することによりさらに改善することができる。1:1マレイン酸塩の結晶形の形成は、不純物の効率的な駆除を生じた。遊離塩基の非晶質形はまた、1:1マレイン酸塩を塩基で処理し、次いで溶媒で抽出することによって高純度で製造され得た。遊離塩基をマレイン酸で処理することにより、はるかに高純度のセスキマレエート結晶塩を調製した(スキーム2)。
【化5】
【0103】
本願における「低級アルキルアルコール」という用語は、直鎖又は分枝鎖であるC1~C8、好ましくはC1~C6、より好ましくはC1~C4のアルキルアルコールを含む。特定の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びブタノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
本願で使用される「約」という用語は、他に示されない限り、数(例えば、温度、pH、容積など)が±10%以内、好ましくは±5%以内で変化し得ることを意味する。
【0105】
本発明の結晶形の結晶化は、少なくとも1つの溶媒を含む適切な溶媒系中で、溶媒系中で過飽和を達成するための溶媒の蒸留、冷却及び/又は(化合物1のセスキマレイン酸塩を可溶化しにくい溶媒であり、本願に記載のものを含むがこれらに限定されない)貧溶媒の添加によって同様に実行され得る。
【0106】
結晶化は、本発明中に記載されている種結晶の有無にかかわらず行われる可能性がある。
【0107】
本発明によって提供される個々の結晶形は、結晶化工程の特定の熱力学的特性及び平衡特性に依存する特定の条件下で発生する。したがって、当業者は、形成された結晶が結晶化工程の動力学的及び熱力学的な特性の結果であることを知るだろう。特定の条件(例えば、溶媒、温度、圧力及び化合物の濃度)の下では、特定の結晶形は、他の結晶形よりも安定である可能性がある(又は実際に他の結晶形よりも安定である)。しかし、特定の結晶の比較的低い熱力学的安定性は、有利な動力学的安定性を有する可能性がある。動力学以外の時間、不純物分布、攪拌及び種結晶の有無等の付加的な要因も、結晶形に影響を与える可能性がある。
【0108】
別の観点では、本願では化合物1のマレイン酸塩の、上記の結晶形A*、A**、A、B、C、D、F、G、H、I、J、K、L、M及びNのいずれかの結晶形、特に化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*の有効量及び薬学的に許容される担体をそれぞれ含有する医薬組成物が提供される。活性化合物は、組成物の1~99重量%、好ましくは1~70重量%、又はより好ましくは1~50重量%、又は最も好ましくは5~40重量%である。
【0109】
医薬組成物は、カプセル、錠剤、丸剤、粉末、滅菌溶液、懸濁液又はエマルジョンのような形態の徐放性注射剤などの形態で経口により;ペースト、クリーム、又は軟膏のような形態で局所治療を介して;又は坐剤などの形態で直腸を介して投与され得る。医薬組成物は、正確な投与用途に適した単位投与量である可能性がある。加えて、医薬組成物は、他の活性成分を含む可能性がある。
【0110】
好適な医薬担体は、水、種々の有機溶媒及び種々の不活性希釈剤又は充填剤を含む。必要であれば、医薬組成物は、香料、接着剤及び賦形剤のような種々の添加物を含む可能性がある。経口投与のために、錠剤及びカプセル剤は、クエン酸、澱粉、アルギン酸及びいくつかのケイ酸塩などの種々の崩壊剤、並びにスクロース、ゼラチン及びアラビアゴムなどの種々の接着剤などの様々な賦形剤を含み得る。加えて、ステアリン酸マグネシウム及びタルク充填剤を含む潤滑剤が、錠剤の製造に一般的に使用される。同種の固体成分はまた、軟質及び硬質のゼラチンカプセルを製剤するためも使用され得る。水性懸濁液が経口投与のために必要とされる場合、活性化合物は、種々の甘味料又は着香剤、顔料又は染料の組み合わせと混合され得る。必要に応じて、種々の乳化剤を使用され得るものであり、また懸濁液が生成され得る;水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、又はそれらの組み合わせなどの希釈剤が利用され得る。
【0111】
上記の医薬組成物は、経口投与することが好ましい。
【0112】
上記の医薬組成物は、カプセル又は錠剤の形態であることが好ましい。
【0113】
別の観点では、本願で提供されるのは、EGFR、VEGFR、EPHA、EPHB等のBRAFキナーゼ又は他のキナーゼの阻害に応答する癌の治療に有用な医薬の製造における、本発明の化合物(すなわち、化合物1のマレイン酸塩並びに上記の結晶形A*、A**、A、B、C、D、F、G、H、I、J、K、L、M及びNのいずれか)の使用に関する。
【0114】
1つの実施態様では、本願で提供されるのは、哺乳動物の膵炎、腎臓疾患、癌、血管新生、又は血管新生関連疾患の治療又は予防に有用な医薬の製造における、本発明の化合物(すなわち、化合物1のマレイン酸塩並びに上記の結晶形A*、A**、A、B、C、D、F、G、H、I、J、K、L、M及びNのいずれか)の使用に関する。
【0115】
化合物1のマレイン酸塩並びに上記の結晶形A*、A**、A、B、C、D、F、G、H、I、J、K、L、M及びNのいずれか、又は本願における化合物1のマレイン酸塩(1:1)の結晶形Nは、腫瘍血管新生、リウマチ性関節炎などの慢性炎症性疾患、アテローム性動脈硬化症、乾癬及び強皮症などの皮膚疾患、糖尿病誘発皮膚疾患、糖尿病性網膜症、早期網膜症、加齢に関連する変性染色、血管腫、神経膠腫、カポジ体内腫瘍、卵巣癌、乳癌、肺癌、膵臓癌、リンパ腫、前立腺、結腸及び皮膚腫瘍、並びにそれらの合併症からなる群から選択されるが、これらに限られない疾患を治療又は予防するために使用され得る。本願中に記載されている哺乳動物の中では、ヒトが好ましい。
【0116】
上記治療方法の標的疾患は、B-RAF又はNRAS又はK-RAS突然変異の、非小細胞肺癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、骨癌、肝臓癌、膀胱癌、胸部癌、頸部癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、乳癌、卵巣癌、メラノーマ、皮膚癌、副腎癌、子宮頸癌、リンパ腫又は甲状腺腫瘍、及びそれらの合併症などのB-RAF、NRAS及びK-RAS突然変異の腫瘍から選択されることが好ましい。
【0117】
上記の方法は、任意の化学療法(例えば、MEK阻害剤)、生物学的療法、又は放射線治療と組み合わせて適用され得る。
【0118】
投与される場合の活性成分又は化合物の投与量は、治療される患者の個々の必要性、投与経路、疾患又は病気の重症度、投与計画、並びに指定された医師の評価及び判断によって決定されるであろう。しかし、活性化合物に基づき、有効投与量の好ましい範囲は、体重1キログラムあたり毎日約0.01~120mgであり得る;又は、より好ましくは1日当たり0.1~10mg/kg体重であり得る。ある場合には、上記投与量範囲の下限を適用することがより適切であり、他の場合には、有害な副作用を引き起こさずにより高い投与量で使用される可能性がある。
【0119】
本願の別の観点は、臨床応用のために化合物1のセスキマレイン酸塩を提供することである。特に、本発明は、癌患者のための以下の治療の選択肢を有する化合物1のマレイン酸塩による臨床的処置に関する:化合物1のマレイン酸塩及び/又は結晶形A*、A**、A、B、C、D、F、G、H、I、J、K、L、M及びNの投与量は、1日に1~3回の投与頻度で1~100mg/日であり;好ましい投与量は1日に1~3回の投与頻度で5~50mg/日であり;より好ましい投与量は1日に1回の投与頻度で5~60mg/日であり;さらにより好ましい投与量は1日に1回の投与頻度で10~50mg/日である。
【0120】
以下の合成方法、具体例及び有効性試験は、本発明の特定の観点をさらに説明する。それらは、決して本発明の範囲を限定又は制限してはならない。
【実施例】
【0121】
以下の例は例示的なものであり、使用される数値(例えば、量、温度など)に関する正確性を保証するための努力がなされているが、いくつかの実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。特に断りのない限り、温度は摂氏である。試薬は、Sigma-Aldrich、Alfa Aesar、又はTCIのような市販の供給元から購入し、かつ、特に断りのない限り、さらなる精製を行わずに使用した。
【0122】
特に断りのない限り、以下に述べる反応は、正圧の窒素又はアルゴン下、又は乾燥管を用いた無水溶媒中で実施した;反応フラスコに、シリンジを介して基質及び試薬を導入するためのゴム隔壁を取り付けた;かつ、ガラス器具をオーブン乾燥及び/又は加熱乾燥した。
【0123】
特に断りのない限り、カラムクロマトグラフィー精製は、シリカゲルカラムを備えるBiotageシステム(製造元:Dyax Corporation)又はシリカSepTakカートリッジ(Waters)で行ったか、又は予め充填したシリカゲルカートリッジを用いてTeledyne Isco Combiflash精製システムで行った。
【0124】
1H NMRスペクトル及び13C NMRを、溶媒としてDMSO-d6を用いて、400MHzで動作するVarian装置で記録した。
【0125】
無色の板状結晶からのX線強度データを、Bruker APEX-II CCD回折計(CuKα線、λ=1.54178Å)を用いて173(2)Kで測定した。偏光顕微鏡の写真を室温で捕捉した。
【0126】
以下の実施例において、以下の略語を使用することができる:
ArOH 酢酸
ACN アセトニトリル
API 以下に化合物1と称することがある活性医薬成分
Aq 水性
Brine 飽和塩化ナトリウム水溶液
Bn ベンジル
BnBr 臭化ベンジル
CH2Cl2 ジクロロメタン
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
Dppf 1,1”-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
DBU 1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン
DIEA又はDIEPA N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMAP 4-N,N-ジメチルアミノピリジン
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
Et2O又はエーテル ジエチルエーテル
g グラム
h又はhr 時間
HATU O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)―N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HCl 塩酸
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
IPA 2-プロパノール
i-PrOH イソプロピルアルコール
Mg ミリグラム
mL ミリリットル
mmol ミリモル
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
min 分
ms又はMS 質量スペクトル
Na2SO4 硫酸ナトリウム
PE 石油エーテル
PPA ポリリン酸
Rt 保持時間
Rt又はrt 室温
TBAF フッ化テトラブチルアンモニウム
TBSCl 塩化tert-ブチルジメチルシリル
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
TMSCl 塩化トリメチルシリル
μL マイクロリットル
【0127】
実施例1:様々な塩形成剤による化合物1の塩の形成
実施例1A:化合物1の遊離塩基及び化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶A*の調製
工程1:中間体1の合成
【化6】
窒素保護下で35℃以下の温度で、DMF(989kg)中のEtONa(154kg)の攪拌溶液にEtSH(68.6kg)を添加した。混合物を内温35℃以下で60~90分間撹拌した。DMF(55.0kg)中の5-メトキシベンゾフラン(58.75kg)を添加した。混合物を110~130℃に加熱し、45時間撹拌し、次いで90℃未満の真空下で濃縮した。混合物を10~20℃に冷却した後、2N HCl(1326kg)を滴下し、EtOAc(531kg)及びH
2O
2(129kg)を内温35℃以下で添加した。混合物を30~60分間攪拌した。有機層を分離した後、水相をEtOAcで抽出した。一体化した有機相を飽和食塩水で2回洗浄し、次いで溶媒を蒸発乾固させた。MeOH及び水(185kg)中のNaOH(44.5kg)の溶液を40℃未満の残留物に滴下した。混合物を30~40℃で5~7時間攪拌した。水(77kg)で濡らした活性炭(74kg)を添加した。混合物を30~40℃で4~6時間撹拌し、濾過した後、濾過ケーキをMeOH及び水で洗浄した。DCMを濾液に充填し、40℃未満で、HCl(35%aq)でpHを1に調整した。水相をDCMで抽出し、有機相を25%NaClで洗浄し、40℃未満で濃縮した。残渣を次の工程で直接使用した。
1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ 9.14(s、1H)、7.86(d、J=2.0Hz、1H)、7.36(d、J=8.8Hz、1H)、6.94(d、J=2.4Hz、1H)、6.79(dd、J=2.0、0.9Hz、1H)、6.74(dd、J=8.8、2.4Hz、1H)ppm。MS:M/e 135(M+1)
+。
【0128】
工程2:中間体2の合成
【化7】
-5~0℃で、DCM(155kg)中のベンゾフラン-5-オール(中間体1、33.1kg)及びEt
3N(50.8kg)の撹拌溶液に、DCM(50kg)中のTMSCl(30.4kg)の溶液を滴下した。混合物を0~10℃に加温し、その温度で2時間撹拌した(工程内管理(IPC)でINT-1/INT-2=37.4%であると確認した)。混合物を-5~0℃に冷却し、TMSCl(10.6kg)のDCM(8kg)溶液を滴下し、次いで混合物を0~10℃に加温し、その温度で1時間撹拌した。混合物を40℃未満で濃縮し、混合物にn-ヘプタンを加えた。混合物を20~30分間撹拌し、濾過し、ケーキをn-ヘプタンで洗浄した。濾液から溶媒を蒸留して除き、粗中間体2(INT-2%:62.7%、KF:0.01%)を得た。上記の粗中間体2とDCM(149kg)中のEt
3N(8.6kg)の撹拌溶液に、DCM(10kg)中のTMSCl(9.0kg)の溶液を-5~0℃で滴下した。混合物を0~10℃に温め、その温度で1時間撹拌した(TLCは反応が終了したことを示した)。反応混合物40℃未満で濃縮し、混合物にn-ヘプタンを加えた。混合物を20~30分間撹拌し、次いで濾過し、ケーキをn-ヘプタンで洗浄した。濾液から溶媒を蒸留して除き、中間体2(41.5kg、INT-2%:98.1%)を無色油状物として得た。
1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ 7.69(d、J=2.0Hz、1H)、7.21(d、J=8.8Hz、1H)、6.84(d、J=2.5Hz、1H)、6.61(d、J=2.0Hz、1H)、6.56(dd、J=8.8、2.5Hz、1H)、0.00(s、9H)ppm。
【0129】
工程3:中間体3の合成
【化8】
銅(I)トリフラート(トルエンとの2:1錯体、0.41kg)及び(S,S)-エバンス配位子(0.552kg)を室温のN
2雰囲気下でDCM(160kg)中で1~2時間撹拌した。中間体2(37.0kg)を添加し、続いて20~30℃でDCM(450kg)中のジアゾエタン酸エチル(58kg)をゆっくりと添加した。反応物を20~30℃で0.5~1時間撹拌した(IPC:INT-2/INT-3≦0.2%、残留N
2CHCO
2Et:0.05%≦1.0%)。EDTA二ナトリウム溶液(0.05mol/L、150kg)を20~30℃で3~4回、40~50分間反応混合物に添加した。有機相を25%水性NaClで20~30℃で2回洗浄し、30℃未満で濃縮した。残渣を減圧蒸留し、粗中間体3(36.26kg、84.5%)を120~144℃で回収した。粗製化合物は、次の工程で除去することができるエンドエナンチオマーを含んでいた。
1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ 6.79(d、J=2.4Hz、1H)、6.59(d、J=8.4Hz、1H)、6.42(dd、J=8.4、2.4Hz、1H)、4.95(dd、J=5.4、1.0Hz、1H)、3.08(dd、J=5.4、1.0Hz、1H)、1.02(dd、J=3.1、1.2Hz、1H)、0.00(s、9H)ppm。
【0130】
工程4及び5:中間体5及び中間体6の合成
【化9】
MeOH(108kg)中の中間体4(36.3kg)の溶液に20~30℃でHCl/MeOH(5M、0.11kg)の溶液を加え、混合物を2~3時間撹拌した(IPC:L/M:0.5%、光学純度90.0%)。混合物を濃縮し、残渣をn-ヘプタン/EtOAc(4:1)で希釈し、次いで濃縮した。温度を10~20℃に調整し、10~20℃で2~4時間撹拌した後、濾過して湿潤生成物を得た(中間体5:94.0%、光学純度90.5%)。
1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ 9.05(s、1H)、6.89(d、J=2.4Hz、1H)、6.72(d、J=8.4Hz、1H)、6.55(dd、J=8.4、2.4Hz、1H)、5.11(dd、J=5.4、1.0Hz、1H)、3.27(dd、J=5.4、3.0Hz、1H)、1.19-1.17(m、1H)ppm。粗生成物をn-ヘプタン/EtOAc(20:1)で3回スラリー化して淡黄色固体を得て、これを40~50℃で12~16時間乾燥して16.55kgの生成物を得た(中間体6:98.6%;光学純度:99.3%)。
【0131】
工程6及び7:中間体7及び中間体8の合成
【化10】
DMF(66kg)中の中間体6(14kg)及び5-フルオロ-3,4-ジヒドロ-1,8-ナフチリジン-2(1H)-オン(SM2、11.2kg)の溶液に、Cs
2CO
3(26kg)を 40~60℃で添加し、混合物を110~120℃に加温し、110~120℃で3時間攪拌した。反応pHは25~35℃で、酢酸(12.0kg)で6に調整した。水(520kg)を加え、混合物を1~2時間撹拌した。濾過後、固体をEA(78kg)でスラリー化して湿潤生成物(純度:(中間体7+中間体8)%:98%)を得た。THF(240kg)中の湿潤生成物の撹拌溶液に水酸化ナトリウム水溶液(125kg、2M)を加え、20~30℃で2~3時間攪拌した(IPC:INT-7/INT-8:0.9%)。混合物を20~30℃で、4N HCl(37kg)でpH4~5に調整し、0.5~1時間攪拌した。混合物を50℃未満で濃縮し、固体を溶液から沈殿させた。濾過後、湿った生成物を35~45℃で、THF中で1~2時間再スラリー化し、次いで濾過した。得られた湿潤生成物を45~65℃で40時間乾燥させて、表題の化合物である中間体8(18.95kg:化学純度99%、光学純度100%)を得た。
1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ 12.59(s、1H)、10.43(s、1H)、7.92(d、J=5.8Hz、1H)、7.29(d、J=2.4Hz、1H)、6.97(d、J=8.8Hz、1H)、6.93(dd、J=8.8、2.4Hz、1H)、6.21(d、J=5.8Hz、1H)、5.21(dd、J=5.4、1.0Hz、1H)、3.27-3.25(m、1H)、2.89(t、J=7.8Hz、2H)、2.51(d、J=8.8Hz、2H)、1.19(dd、J=3.0、1.0Hz、1H)ppm。MS:M/e 339(M+1)
+。
【0132】
工程8:中間体9の合成
【化11】
DMF(167kg)中の中間体8(13.3kg)、DIEPA(16kg)及びHATU(18.1kg)の溶液を、0~15℃で、DMF(74kg)中の4-(トリフルオロメチル)ベンゼン-1,2-ジアミン(SM3、7.6kg)の混合物に滴下した。混合物を20~25℃で4~6時間撹拌した(IPC:INT-9/INT-9:検出されなかった)。反応混合物にDMF(7.5kg)中の活性炭(5.3kg)を添加し、40~45℃で2~4時間撹拌した後、濾過した。濾液に水(846kg)を15~30℃で滴下し、1~2時間撹拌すると固体が沈殿した。沈殿物を処理し、EtOH中で20~30℃で2~4時間スラリー化した。濾過後、湿潤生成物を45~60℃で37時間乾燥させて、表題の化合物である中間体9(17.60kg:95.5%)を得た。
【0133】
工程9:化合物1の遊離塩基の合成
【化12】
AcOH(360kg)中の中間体9(17kg)及び水(1.5kg)の溶液を65~70℃で20時間撹拌した(IPC:R/S≦1.0%)。混合物を55℃以下で濃縮乾固し、MeOH(32kg)中の活性炭(17kg)を残渣に加えた。混合物を約50℃で1時間撹拌した。ろ過後、ろ過を濃縮して溶媒を45℃未満で除去した。残渣にEA(160kg)と水(330kg)を加え、20~30℃でpHが8~9になるまでNaOH水溶液(2mol/L)を加えた。有機層を分離し、EAで水相を抽出した。一体化した有機相を水で2回洗浄し、濃縮乾固して、遊離塩基の形態の化合物1を得た。
1H NMR(600MHz、DMSO-d
6)δ 12.84(s、1H)、10.47(s、1H)、7.98(d、J=5.8Hz、1H)、7.86(d、J=1.2Hz、1H)、7.69(m、1H)、7.48(t、J=6.2Hz、1H)、7.38(d、J=2.6Hz、1H)、7.08(d、J=8.7Hz、1H)、7.02(dd、J=8.7、2.6Hz、1H)、6.29(d、J=5.8Hz、1H)、5.43(dd、J=5.4、1.2Hz、1H)、3.55(dd、J=5.3、3.3Hz、1H)、2.95(t、J=7.7Hz、2H)、2.55(t、J=7.7Hz、2H)、1.97(d、J=1.3Hz、1H)ppm。
【0134】
工程10:化合物1のセスキマレイン酸塩の合成
【化13】
IPA(83kg)を工程9の残渣に添加した。水(29kg)中のマレイン酸(5kg)を混合物に加え、約50℃で4時間撹拌し、次いで35℃に冷却し、その温度で12時間撹拌した。得られた固体を濾過し、40~60℃で乾燥させ、微粉化機で微粉化して、D90=4.1μm、D10=1.5μm、D50=2.4μmの白色粉末(化合物1のセスキマレイン酸塩、8.36kg)を得た。結晶形A*の構造を特徴付けるために、粉末X線回折パターン法を用いた(
図2参照)。化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*の
1H-NMRスペクトルを
図29に示す。化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*の
13C-NMRスペクトルを
図30に示す。
【0135】
可溶性試験は、化合物1の遊離塩基(0.001mg/mLの定量下限値未満)よりも化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*の方がはるかに良好な水溶性(0.002mg/mL)が得られたことを示した。
【0136】
図31に示すように、化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*は非吸湿性であり、
95%RHに曝された水吸収量は0.1801%であった。
【0137】
実施例1B:他の塩形成剤との化合物1の塩の調製
約150mgの化合物1の遊離塩基を、40mLのガラス瓶中で2mLのIPAに個別に溶解した。表16に記載されたモル比である、IPA中の適切な塩形成剤の溶液(溶解できなかった塩形成剤は、塩形成剤をIPAに予め溶解し、懸濁液を加熱して溶解させた)を、マグネチックスターラー上でそれぞれ遊離塩基溶液にゆっくりと滴定し、次いで室温で24時間攪拌して固体を沈殿させた。固体が得られなかった場合、貧溶媒(例えば、ヘプタン)を溶液にゆっくりと加えて沈殿物を得た。新しい結晶形が得られたかどうかを決定するためにXRPDによって遠心固体を決定し、次いでさらなる特徴付けのために40℃で一晩真空乾燥した。IPA中に懸濁したAPI及び純粋な固体酸をAPIコントロール及び純粋な固体の塩形成剤コントロールとして使用し、塩/共結晶形成とAPI又は固体塩形成剤の多形を区別した。
【0138】
マレイン酸との結晶塩の形成に加えて、塩酸(
図3)、メタンスルホン酸(
図4)、2-ヒドロキシエタンスルホン酸(
図5)、L-酒石酸(
図6、酒石酸塩について化学シフトが検出されなかったので、真の酒石酸塩は形成されず、遊離塩基の多形である可能性がある)及びシュウ酸(
図7)を含む5つの酸からも、遊離塩基、APIコントロール及び固体酸コントロールと異なる結晶形を示す結晶形の固体が発見された。形成された結晶塩の中で、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩及びマレイン酸塩は、他の4種(塩酸、メタンスルホン酸、L-酒石酸及びシュウ酸)より良好な結晶化度を有する。
【0139】
他の塩生成剤から得られた固体は、すべて非晶質形態(
図8、
図9、
図10)又は純粋な固体塩形成剤と同じ形態(
図11及び
図12)であり、遊離形、又は無定形塩、又は遊離形と塩形成剤の混合物が得られたことを示唆した。
【表16】
【0140】
実施例2:化合物1のセスキマレイン酸塩の単結晶形A**の調製
溶媒、温度及び再結晶法を変化させることにより、94個の異なる条件下で単結晶成長スクリーニングを行い、そこから、アセトン中でゆっくりと冷却することによって構造決定に適した単結晶が得られた。
【0141】
実施例3:化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形Aの調製
化合物1の遊離塩基(145g)を1750mLのi-PrOH/H
2O(V:V=4:1)中の63.5gのマレイン酸(1.8当量)と合わせた。すべての固体が溶解するまで、混合物を還流した。透明な溶液を室温まで冷却し、いくつかの種結晶を添加し、次いで混合物を24時間放置した。白色固体を沈殿させ、濾過した。濾過ケーキを約500mLのi-PrOH/H
2O(V:V=4:1)で洗浄し、50℃で48時間高真空下で乾燥させて、表題の生成物(112g)を結晶として得た。結晶形Aの構造を特徴付けるために、粉末X線回折パターン法を用いた。
図17を参照のこと。TGAの結果は、重量減少が120℃までで0.3重量%であることを示した。DSCの結果は、194.2℃(開始温度)に融解吸熱を示した。
1H-NMRスペクトルは、遊離塩基/マレイン酸の1/1.5の化学量論比を示した(
図34参照)。
【0142】
実施例1Aは、化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形の大量生産(すなわち、形A*と呼ぶ)を対象とし、実施例3は、化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形の実験室調製(すなわち、形Aと呼ぶ)を対象とする。粉末X線回折パターン、1H-NMRスペクトル及び他の技術は、結晶形A*及び結晶形Aの2つの結晶形の間の一貫性を示す。
【0143】
実施例4:化合物1のマレイン酸塩の結晶形Bの調製
セスキマレイン酸塩の結晶形Aの1,4-ジオキサン溶液を60℃から5℃まで0.1℃/分の速度で冷却して結晶化させることにより、化合物1のマレイン酸塩の結晶形Bを調製した。手順:20.0mgのA形固体を3mLのガラス瓶に量り、1mLの1,4-ジオキサンを瓶に加える;混合物を50℃で、磁気によって800RPMの速度で撹拌する;0.45μmのナイロン膜を用いて60℃で2時間平衡化した後に、サンプルを濾過する;濾液を60℃から5℃まで0.1℃/分の速度で冷却する。試料は、分離前に5℃で保存した。結晶形Bの構造を特徴付けるために、粉末X線回折パターン法を用いた;
図18を参照のこと。TGAの結果は、重量減少が150℃までで15.1重量%であることを示した(結晶の1,4-ジオキサン溶媒和物/水和物の分子が含まれる)。DSCの結果は、分解前に多重重複吸熱(181.4及び189.6℃)を示した。
1H-NMRスペクトルは、遊離塩基/マレイン酸の約1/1.2の化学量論比を示した(
図35参照)。
【0144】
実施例5:化合物1のマレイン酸塩の結晶形Cの調製
結晶化のために、化合物1のエタノール溶液を60℃から5℃まで0.1℃/分の速度で冷却することによって、化合物1の結晶形態Cを調製した。手順:21.3mgのA形固体を3mLのガラス瓶に量り、1mLのエタノールを瓶に加える;混合物を50℃で磁気によって800RPMの速度で撹拌する;0.45μmのナイロン膜を用いて60℃で2時間平衡化した後に、サンプルを濾過する。濾液を60℃から5℃まで0.1℃/分の速度で冷却する。試料は、分離前に5℃で保存した。結晶形Cの構造を特徴付けるために、粉末X線回折パターン法を用いた;
図19を参照のこと。TGAの結果は、重量減少が180℃までで7.0重量%(結晶水和物の分子を含む)であることを示した。DSCの結果は、分解前の4つの吸熱(107.5、162.7、179.3及び196.0℃)を示した。
1H-NMRスペクトルは遊離塩基/マレイン酸の約1/1.3の化学量論比を示した(
図36参照)。
【0145】
実施例6:化合物1のマレイン酸塩の結晶形Dの調製
化合物1の結晶形Aのセスキマレイン酸塩のMeOH溶液を、室温でCF
3COO
-イオン性液体の存在下でゆっくりと蒸発させることにより、化合物1のマレイン酸塩の結晶形Dを調製した。手順:150.2mgのA形固体を20mLガラス瓶に量り、10.2mLのMeOHを瓶に加える;混合物を濾過して、0.45μmのナイロン膜を用いて飽和ストーク溶液を得る;2.8mgのCF
3COO
-イオン性液体を1mLのMeOHストック溶液に添加する。室温で撹拌して沈殿を誘導する。結晶形Dの構造を特徴付けるために、粉末X線回折パターン法を用いた。
図20を参照のこと。TGAの結果は、重量減少が120℃までで6.3重量%(結晶水和物の分子を含む)であることを示した。DSCの結果は、分解前の2つの吸熱(75.8及び161.4℃)を示した。
1H-NMRスペクトルは遊離塩基/マレイン酸の約1/1の化学量論比を示した(
図37参照)。
【0146】
実施例7:化合物1のマレイン酸塩の結晶形Fの調製
ACN/H2O(1:1、v/v)溶液からの化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形Aの結晶化により、化合物1のマレイン酸塩の結晶形Fを調製した。手順:18.9mgのA形固体を3mLガラス瓶に量り、1.5mLのACN/H2O(1:1、v/v)を加える;2mgのポリマー混合物(ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ酢酸ビニル(PVAC)、ヒプロメロース(HPMC)及びメチルセルロース(MC)を1:1:1:1:1:1の質量比)を懸濁液に添加し、室温で撹拌して沈殿を誘導する。
【0147】
結晶形Fの構造を特徴付けるために、粉末X線回折パターン法を用いた。
図21を参照のこと。TGAの結果は、重量減少が130℃までで3.2重量%(ACN溶媒和物/水和物の分子を含む)であることを示した。DSCの結果は、分解前の3つの吸熱(62.4、156.9及び169.3℃)を示した。
1H-NMRスペクトルは、約1/0.5の遊離塩基/マレイン酸の化学量論比を示した(
図38参照)。
【0148】
実施例8:化合物1のマレイン酸塩の結晶形Gの調製
化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形Aの酢酸溶液に水を添加することによって、化合物1のマレイン酸塩の結晶形Gを調製した。手順:20.2mgの形Aの固体を20mLガラス瓶に量り入れる;1.0mLの酢酸を瓶に加え、室温で撹拌して透明な溶液を得る;溶液に5mLの水を段階的に加えて沈殿を誘導する。
【0149】
結晶形Gの構造を特徴付けるために、粉末X線回折パターン法を用いた。
図22を参照のこと。TGAの結果は、重量減少が120℃までで11.0重量%(結晶水和物の分子を含む)であることを示した。DSCの結果は、分解前の4つの吸熱(84.3、126.9、139.4及び187.3℃)を示した。
1H-NMRスペクトルは約1/0.5の遊離塩基/マレイン酸の化学量論比を示した(
図39参照)。
【0150】
実施例9:化合物1のマレイン酸塩の結晶形Hの調製
THF中の化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形Aを室温でスラリー化することによって、化合物1のマレイン酸塩の結晶形Hを調製した。手順:17.7mgのA形固体を1.5mL瓶に量り、0.3mLのTHFを瓶に加えて懸濁液を得る;混合物を室温で、磁気によって800RPMで3日間撹拌する。結晶形Hの構造を特徴付けるために、粉末X線回折パターン法を用いた。
図23を参照のこと。TGAの結果は、二段階の重量減少が150℃までで13.0重量%(結晶THF溶媒和物/水和物の分子を含む)であることを示した。DSCの結果は、分解前の2つの吸熱(124.5及び178.0℃)を示した。
1H-NMRスペクトルは約1/1の遊離塩基/マレイン酸の化学量論比を示した(
図40参照)。
【0151】
実施例10:化合物1のマレイン酸塩の結晶形Iの調製
化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形Aの、IPA/H
2O(3:1、v/v)溶液の室温でのゆっくりとした蒸発によって、化合物1のマレイン酸塩の結晶形Iを調製した。手順:13.8mgのA形固体を3mLガラス瓶に量り、1.5mLのIPA/H
2O(3:1、v/v)を瓶に加えて透明な溶液を得る;室温で溶液から溶媒を蒸発させて沈殿を誘導する。結晶形Iの構造を特徴付けるために、粉末X線回折パターン法を用いた。
図24を参照のこと。TGAの結果は、二段階の重量減少が180℃までで20.7重量%(結晶IPA溶媒和物/水和物の分子を含む)であることを示した。DSCの結果は、分解前の4つの重複した吸熱(85.8、115.1及び138.2℃)を示した。
1H-NMRスペクトルは約1/0.5の遊離塩基/マレイン酸の化学量論比を示した(
図41参照)。
【0152】
実施例11:化合物1のマレイン酸塩の結晶形Jの調製
化合物1のマレイン酸塩の結晶形Aの固体と酢酸蒸気との相互作用によって、化合物1のマレイン酸塩の結晶形Jを調製した。手順:14.2mgの形Aの固体を3mLのガラス瓶に量り、3mL瓶を2mLの酢酸を含む20mLガラス瓶に密封する;系を室温に8日間保ち、蒸気と固体を相互作用させる。結晶形Jの構造を特徴付けるために、粉末X線回折パターン法を用いた。
図25を参照のこと。TGAの結果は、重量減少が130℃までで19.3重量%(結晶酢酸溶媒和物/水和物の分子を含む)であることを示した。DSCの結果は、分解前の3つの吸熱(102.9、155.7及び187.7℃)を示した。
1H-NMRスペクトルは約1/1の遊離塩基/マレイン酸の化学量論比を示した(
図42参照)。
【0153】
実施例12:化合物1のマレイン酸塩の結晶形Kの調製
化合物1のマレイン酸塩の結晶形Dを周囲条件下で2週間保存後に、化合物1のマレイン酸塩の結晶形Kを得た。結晶形Kの構造を特徴付けるために、粉末X線回折パターン法を用いた。
図26を参照のこと。TGAの結果は、重量減少が150℃までで4.2重量%(結晶水和物の分子を含む)であることを示した。DSCの結果は、186.6℃(ピーク温度)で溶融する前の2つの吸熱(59.6及び163.5℃)を示した。
1H-NMRスペクトルは、約1/1の遊離塩基/マレイン酸の化学量論比を示した(
図43参照)。
【0154】
実施例13:化合物1のマレイン酸塩の結晶形Lの調製
化合物1のマレイン酸塩の結晶形Gを140℃に加熱し、室温に冷却することにより、化合物1のマレイン酸塩の結晶形Lを得た。結晶形Lの構造を特徴付けるために、粉末X線回折パターン法を用いた。
図27を参照のこと。TGAの結果は、重量減少が120℃までで3.9重量%(結晶水和物の分子を含む)であることを示した。DSCの結果は、183.9℃(ピーク温度)で溶融する前の1つの吸熱(141.1℃、開始温度)を示した。
1H-NMRスペクトルは約1/0.3の遊離塩基/マレイン酸の化学量論比を示した(
図44参照)。
【0155】
実施例14:化合物1のマレイン酸塩の結晶形Mの調製
化合物1のマレイン酸塩の結晶形Jを周囲条件下で2週間保存後に、化合物1のマレイン酸塩の結晶形Mを得た。結晶形Mの構造を特徴付けるために、粉末X線回折パターン法を用いた。
図28を参照のこと。TGAの結果は、重量減少が140℃までで1.4重量%(結晶酢酸水和物/水和物の分子を含む)であることを示した。DSCの結果は、複数の吸熱(123.0、156.5、171.9、176.1及び195.3℃)を示した。
1H-NMRスペクトルは約1/1.3の遊離塩基/マレイン酸の化学量論比を示した(
図45参照)。
【0156】
実施例15:化合物1のマレイン酸塩及びセスキマレイン酸塩の形成のための条件のスクリーニング
【化14】
【0157】
条件1:EtOAc中でマレイン酸と反応させた化合物1
EtOAc(5mL)中の化合物1(47.8mg)の撹拌溶液に、マレイン酸のEtOAc溶液(0.2mol/L、vmL)を室温で加えた。混合物を30分間撹拌した。固体を濾過し、高真空下で乾燥させて、表題の塩を得た。驚くべきことに、0.5、0.9、1.8又は3.0当量のマレイン酸を使用した場合、全ての条件下で化合物1のセスキマレイン酸塩(1:1.5)の結晶が得られた。
【0158】
条件2:EtOH中でマレイン酸と反応させた化合物1
手順:EtOH中の化合物1及びマレイン酸の混合物を、すべての固体が溶解するまで20分間還流した。溶液を周囲温度に冷却し、3時間放置した。析出した白色固体を濾過し、高真空下で乾燥させて、表題の化合物を得た。驚くべきことに、1当量のマレイン酸を使用した場合、化合物1のマレイン酸塩(1:1)の結晶が得られたが、マレイン酸の量を1.3、1.5又は3.5当量に増加させた場合、すべての条件で化合物1のセスキマレイン酸塩(1:1.5)の結晶が生成物として得られた。
【0159】
条件3:MeOH中でマレイン酸と反応させた化合物1
手順:MeOH中の化合物1及びマレイン酸の混合物を、すべての固体が溶解するまで20分間還流した。溶液を周囲温度に冷却し、3時間放置した。析出した白色固体を濾過し、高真空下で乾燥させて化合物1のマレイン酸塩(1:1)を得た。驚くべきことに、溶媒としてMeOHを使用し、1.0、1.5又は3.5当量のマレイン酸を使用した場合、生成物は一貫して粉末状の化合物1のマレイン酸塩(1:1)であった。
【0160】
条件4:i-PrOH/水中でマレイン酸と反応させた化合物1
手順:混合溶媒(i-PrOH/H2O=4:1、容積1.7L)中の化合物1(145g、0.3mol)及びマレイン酸(63g、0.54mol)の混合物を、すべての固体が溶解するまで還流した。混合物を室温まで冷却し、種結晶を溶液に加え、混合物を24時間放置した。析出した白色結晶を濾過した。濾過ケーキを500mLの混合溶媒で洗浄し、50℃で48時間高真空下で乾燥して化合物1のセスキマレイン酸塩(112g、56.7%)を結晶針として得た。興味深いことに、溶媒として40体積%のi-PrOHを使用した場合、化合物1のヘミマレイン酸塩(1:0.5)が得られた。60体積%のi-PrOH、90体積%のi-PrOH又は100%のi-PrOHを溶媒として使用した場合、全ての条件で化合物1のセスキマレイン酸塩(1:1.5)の結晶が得られた。
【0161】
条件5:他の溶媒中でマレイン酸と反応させた化合物1
上記の同様の手順に従って、他の溶媒(THF、アセトン、DME、1,4-ジオキサン)を使用した場合、得られた生成物は一貫して化合物1のセスキマレイン酸塩(1:1.5)であった。
【0162】
条件6:化合物1のセスキマレイン酸塩(1:1.5)のマレイン酸塩(1:1)への変換
【化15】
化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶(1.0g、1.53mmol)をMeOH(20mL)に懸濁し、混合物を室温で1日間撹拌した。白色固体を濾過した。濾過ケーキをMeOH(10mL)で洗浄し、赤外線ランプ下、50℃で16時間乾燥させて化合物1のマレイン酸塩(1:1)(820mg、90%)を白色結晶固体として得た。
1H NMR(400MHz、dmso)δ 10.50(s、1H)、7.97(d、J=5.6Hz、1H)、7.86(s、1H)、7.68(d、J=8.4Hz、1H)、7.47(dd、J=8.4、1.2Hz、1H)、7.38(d、J=2.4Hz、1H)、7.08(d、J=8.8Hz、1H)、7.01(dd、J=8.8、2.4Hz、1H)、6.31-6.24(m、3H)、5.43(dd、J=5.2、1.2Hz、1H)、3.55(dd、J=5.2、3.2Hz、1H)、2.94(t、J=7.6Hz、2H)、2.54(t、J=7.6Hz、2H)、1.97(dd、J=3.2、1.2Hz、1H)(詳細なスペクトルは
図32を参照)。
【0163】
粉末X線回折パターンの調査は、条件6で得られた白色結晶固体の構造を決定するために用いられ、化合物1のマレイン酸塩(1:1)の結晶形N(
図33)と命名された。
【0164】
条件7:化合物1のマレイン酸塩(1:1)のセスキマレイン酸塩への変換
【化16】
i-PrOH/H
2O(4:1、v/v、50mL)の混合物中の、化合物1のマレイン酸塩(1:1)(4.3g)及びマレイン酸(0.67g、0.8当量のマレイン酸)の混合物を1時間還流した。少量の固体が残った。別の5mLの混合溶媒を加え、得られた混合物を30分間還流し、すべての固体を溶解した。混合物を室温まで冷却し、次いで16時間放置した。析出した白色結晶を濾過した。濾過ケーキを20mLの混合溶媒で洗浄し、赤外線ランプ下で24時間乾燥させて、化合物1のセスキマレイン酸塩(3.2g、68%)を結晶針として得た。
【0165】
実施例16
化合物1のAPIの不純物排出:第1の結晶化セスキマレイン酸塩(化学純度=98.82%)28.5kgをメタノールと共に45~50℃で4~5時間撹拌した。スラリー混合物を20~30℃で3~4時間冷却し、濾過して湿潤ケーキを得た(30.3kg;化学純度=99.76%)。湿潤ケーキを酢酸エチル及び水と混合し、炭酸ナトリウム水溶液でpH=7~8に処理し、次いで水で洗浄した。酢酸エチル中の化合物1の遊離塩基(16.2kg、化学純度=99.81%)を得た。蒸留により酢酸エチルをi-プロパノールに置き換えた。i-PrOH中の遊離塩基を、マレイン酸の水溶液及びセスキマレイン酸の種結晶と共に撹拌した。混合物を40~50℃で数時間、20~30℃で数時間撹拌した。得られた固体を濾過して、第2の結晶化セスキマレイン酸塩(19.6kg;化学純度=99.82%;光学純度=100%)を得た。
【0166】
実施例17:化合物1の塩又は結晶形の安定性試験
実施例17A:短期安定性試験
塩酸塩、メシル酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩及びマレイン酸塩を評価するために短期安定性試験を行った。
【0167】
上記塩をそれぞれ約2mg(XRPDについては10mg)40mLのガラス瓶中で別々に秤量した。遊離塩基形態をコントロールとして使用した。閉鎖したサンプルをキャップしてパラフィルムで封止し、開封したサンプルをピンホール付きアルミニウムホイルで覆った。すべてのサンプルを、対応する条件(60℃及び40℃/75%RH)で1週間、安定性チャンバー又は乾燥オーブンに保存した。
【0168】
塩酸塩は、1週間後の両方の条件で淡黄色粉末であるように見え、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、メシル酸塩及びマレイン酸塩の外観は目視観察で変化しなかった。XRPDの結果は、すべての塩試料について結晶形の変換が検出されなかったことを示した。
【0169】
化学的安定性の結果を表17に要約した。分解の変化が透過ラマン分光法(TRS)の増加として検出された(塩酸塩>2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩>メシル酸塩>マレイン酸塩>遊離塩基)。対照的に、塩試料のTRSが60℃でより増加したので、温度ストレス条件は、化合物1の塩形成の湿度ストレス条件よりも大きな影響を有する可能性がある。
【表17】
【0170】
実施例17B:長期安定性試験
化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*の長期安定性試験は、25℃/60%RHで最大18ヶ月保存した場合(w/w分析:T0=99.1%及びT18=98.8%)及び40℃/75%RH条件下で最大6ヶ月保存した場合(w/w分析:T0=99.1%及びT6=98.9%)、有意な化学的純度の変化はなかったことを示した。結果は、25℃/75%RHでの最大24ヶ月の安定性試験の後でも、化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*が純度を98.5%に維持したことを示した。さらに、25℃/60%RHで最大18ヶ月保存した場合及び40℃/75%RHの条件下で最大6ヶ月間保存した場合、結晶形及び光学純度の変化は観察されなかった。
【0171】
有効性テスト
試験1:化合物1のセスキマレイン酸塩によるキナーゼの阻害及び選択性(試験した結晶形A*)
方法:
Rafキナーゼ酵素アッセイ:
化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*を、Life Technologiesの組換えB-Raf(V600E)(PV3849)、C-Raf(Y340D/Y341D)(PV3805)及び野生型Braf(PV3848)に対して、均一時間分解蛍光(HTRF)法(Cisbio Bioassays)に基づくキナーゼ活性アッセイで試験した。アッセイは、RAFキナーゼ、kM濃度のATP、GST標識MEK1(K97R)並びに、25mM Tris pH7.4、10mMの塩化マグネシウム、0.5mMのEGTA、0.5mMのNa3VO4、5mMのβ-グリセロリン酸塩、0.01%のTriton X-100、2.5mMのDTT及び0.1%のBSAを含むバッファ中の化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*又はDMSOを含む混合物中で実行した。キナーゼを化合物1のセスキマレイン酸の結晶形A*と共に室温(RT)で1時間インキュベートし、反応をATP及びGST-MEK1(K97R突然変異を有する完全長タンパク質であり、細菌発現系から精製した組換えタンパク質)の添加によって開始した。室温で1時間反応させた後、停止/検出溶液を製造者の指示(Cisbio Bioassays)に従って添加した。停止/検出溶液は、25mM Tris pH7.4、400mMのKF、50mMのEDTA、0.1%のBSA及び0.01%のTriton X-100を含有する緩衝液中に、Eu3+クリプテート結合抗ホスホMEK1/2(Ser217/221)ウサギポリクローナル抗体、及びd2結合抗GSTマウスモノクローナル抗体を含有した。TR-FRETシグナル(337nm波長での励起における665nmでの蛍光発光と620nmでの発光との比)を1.5時間のインキュベーション後にPHERAstar FSプレートリーダー(BMG Labtech)で測定した。MEK1のリン酸化は、抗GST抗体上のアクセプターd2のすぐ近くに蛍光ドナー(Eu3+クリプテート)を配置する、GST-MEK1タンパク質への抗ホスホ-MEK1/2抗体の結合をもたらし、その結果、ドナーフルオロフォア(620nm)からアクセプターフルオロフォア(665nm)への高度の蛍光共鳴エネルギー移動をもたらした。化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*のIC50は、グラフパッドプリズム(Graphpad Prism)ソフトウェアによって用量応答%阻害データを4パラメータロジスティックモデルに適合させることにより得られた。
【0172】
EGFR、EPHA2、PDGFR-β、TXK、FLT3、VEGFR2、RET、BTK、ITK、TEC及びSRCのキナーゼアッセイ
組換えEGFR/EPHA2/BTK(Carna Bioscience製)、ITK/TEC/SRC/PDGFR-β/TXK/FLT3/VEGFR2/RET(Life Technologies製)及びHER2(aa676-1255、昆虫発現系から精製された組換えタンパク質)に対して化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*を、製造者の指示に従ってCisbio Bioassays製のHTRF KinEASE-TKアッセイで分析した。キナーゼ、kM濃度のATP、ビオチン化ペプチド基質(61TK0BLC、Cisbio Bioassays)及び化合物1のセスキマレイン酸の結晶形A*を含む反応混合物中でアッセイを行った。このキナーゼを化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*と室温で1時間又は2時間(EGFRについて)インキュベートし、反応をATP及び基質の添加によって開始した。反応後、停止/検出溶液を製造者の指示に従って添加した。停止/検出溶液は、25mM Tris pH7.4、400mMのKF、50mMのEDTA、0.01%のBSA及び0.01%のTriton X-100を含有する緩衝液中に、Eu3+クリプテート結合抗ホスホチロシン抗体(61T66kLB、CisBio Bioassays)及びストレプトアビジン-XL665(610SAXLB、CisBio Bioassays)を含有した。TR-FRETシグナル(337nm波長での励起における665nmでの蛍光発光と620nmでの発光との比)は、1時間のインキュベーション後にPHERAstar FSプレートリーダー(BMG Labtech)で記録した。ビオチン化ペプチド基質のリン酸化により、Eu+クリプテート結合抗ホスホチロシン抗体とストレプトアビジン-XL665の両方がビオチン化ペプチドに結合した。ドナー(Eu+クリプテート)及びアクセプター(XL665)のフルオロフォアの近接は、ドナーフルオロフォア(620nm)からアクセプターフルオロフォア(665nm)への高度の蛍光共鳴エネルギー移動をもたらした。化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*のIC50は、グラフパッドプリズム(Graphpad Prism)ソフトウェアによって用量応答%阻害データを4パラメータロジスティックモデルに適合させることにより得られた。
【0173】
結果:
化合物1のセスキマレイン酸塩(結晶形A*)は、V600E突然変異体B-RAF、野生型B-RAF及びC-RAF酵素の強力で可逆的な阻害剤である。さらに、これまでに試験された以下のキナーゼのうち、化合物1のセスキマレイン酸塩は、EGFR、EPHA2、PDGFR-β、FLT3、VEGFR2及びRETを強力に阻害し、HER2、SRC及びTXKに対する弱い阻害を有し、BTK、ITK及びTECに対する阻害を有さない。化合物1のセスキマレイン酸塩が阻害するこれらのキナーゼの多くは、抗癌療法の潜在的標的として同定されており、広範囲の腫瘍に対する化合物1セスキマレイン酸塩の潜在的な効力及び潜在的な適用性を高める可能性がある。
【表18】
【0174】
試験2:化合物1のセスキマレイン酸塩(試験した結晶形A*)によるヒト腫瘍細胞株のインビトロ増殖阻害
方法:
A375、Sk-Mel-28、HT29、Colo205、A431及びHCC827細胞株は、American Type Culture Collectionから購入した。細胞アッセイで用いたすべての細胞株は、10%ウシ胎児血清(FBS、Thermo Scientific)、100ユニット/mLペニシリン(Gibco)、0.1mg/mLストレプトマイシン(Gibco)で補充された指定培地中で、5%CO2を含む加湿された37℃の環境下で培養した。購入した元の細胞から3継代以内の凍結保存されたストックから細胞株を回収し、30回以上は継代しなかった。
【0175】
TR-FRETに基づく方法を用いて、細胞のホスホ-ERK及びホスホ-EGFRを測定した。96ウェルプレートのウェルあたり3×104個の細胞を播種し、16時間放置して付着させた。増殖培地を、血清を含まない培地100μLと交換した。細胞を化合物の10点滴定で処理した。1時間の化合物処理の後、50μLの溶解緩衝液(Cisbio)を各ウェルに添加した。プレートを30分間振とうしながら室温でインキュベートした。96ウェルプレートの各ウェルからの合計16μLの細胞溶解物を、384ウェルの小容量の白色プレートに移した。各ウェルからの溶解産物を、2μLのEu3+又はTb3+クリプテート(ドナー)標識された抗ERK又は抗EGFR抗体(Cisbio)、及び2μLのD2(アクセプター)標識された抗ホスホERK又は抗ホスホEGFR抗体(Cisbio)と共に室温で2時間インキュベートした。FRETシグナルは、PHERAstar FSリーダー(BMG Labtech)を用いて測定した。グラフパッドプリズム(GraphPad Prism)ソフトウェアを用いてERK又はEGFRリン酸化のIC50値を決した。
【0176】
メラノーマ、結腸癌、乳癌及び肺癌の細胞のパネルにおける化合物の増殖阻害活性を、CellTiter-Glo発光細胞生存アッセイ(Promega)を用いて測定した。3日間の処理期間にわたる対数増殖を確実にするために、96ウェルプレートの1ウェルあたり播種した細胞の数を各細胞株について最適化した。細胞を16時間付着させたままにし、次いで10点希釈を二重の系列で処理した。化合物への3日間の暴露後、各ウェルに存在する細胞培養培地の容量に等しい量のCellTiter-Glo試薬を添加した。混合物をオービタルシェーカー上に2分間置いて細胞を溶解させ、続いて室温で10分間インキュベートして発光シグナルの発生及び安定化を可能にした。発光シグナルは、PHERAstar FSリーダー(BMG Labtech)を用いて測定した。グラフパッドプリズム(GraphPad Prism)ソフトウェアを用いて、細胞生存度のEC50値を決定した。
【0177】
結果:
細胞アッセイは、化合物1のセスキマレイン酸塩がRAFの下流の多数の直接的なシグナル伝達中間体を阻害することを確認した。例えば、化合物1のセスキマレイン酸塩は、B-RAF V600E突然変異誘発メラノーマA375及びSk-Mel-28細胞において、32及び77nMのIC
50でERKリン酸化を阻害した。それはまた、B-RAF V600E突然変異誘発HT29及びColo205結腸直腸癌細胞において、103及び53nMのIC
50でERKリン酸化を阻害する。さらに、化合物1のセスキマレイン酸塩は、EGFR過剰発現A431及びEGFR突然変異HCC827肺癌細胞株において、385及び161nMのIC
50でEGFRリン酸化を阻害する。化合物1のセスキマレイン酸塩は、癌細胞株のパネルにおいてその抗増殖活性について評価されている。それはB-RAF突然変異を有する多数の細胞系に対して抗増殖活性を示した(表19)。
【表19】
【0178】
試験3:化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*の生体内薬理学
腫瘍移植方法:
ヒト癌細胞をBALB/Cヌードマウスの右腋窩部に皮下接種して腫瘍異種移植片を作製した。移植の日に、細胞培養培地を新しい培地と交換した。3時間後、培地を除去し、細胞を回収し、接種前に冷却した(4℃)PBSで再懸濁した。各マウスの右腋窩領域を細胞接種の前に70%エタノールで洗浄した。各動物には、26ゲージの針を介して右前腹部に200μlの細胞懸濁液中の所望の細胞を皮下注射した。移植後、キャリパーを用いて、腫瘍体積を二次元で週に2回測定した。腫瘍体積は、式:V=0.5×(a×b2)を用いて計算した。ここで、a及びbはそれぞれ腫瘍の長径及び短径である。
【0179】
インビボでの有効性試験のために、平均腫瘍サイズが100~200mm3に達したとき、層別無作為化手順を用いて、グループ当たり6~10匹のマウスで所望の数のグループに動物を割り当てた。これらのグループは、コントロールグループ(薬物治療なし)及び異なる用量レベル(1~20mg/kgの範囲)の化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*の治療のグループからなっていた。全ての用量は遊離塩基重量に基づいた。薬物は、1日1回(qd)又は2回(bid)経口胃管投与によって毎日投与した。投薬頻度は、腫瘍増殖の個々の症例に依存した。処置は、10mL/kg体重の容量で経口胃管投与(p.o.)によって投与した。体重を投与直前に評価し、投与量をそれに応じて調整した。個体の体重及び腫瘍体積を毎週2回測定し、研究期間中の毒性の臨床徴候についてマウスを毎日モニターした。マウスの腫瘍体積が2000mm3以上に達したとき、腫瘍が潰瘍化したとき、又は体重減少が20%を超えたときに、二酸化炭素を用いてマウスを安楽死させた。すべてのグループデータを、t検定を用いて分析した。p値が0.05未満であれば、統計的に有意であると考えられた。
【0180】
腫瘍増殖阻害(TGI)を、以下の式を用いて計算した:
【数1】
treated t=時間tで処置した腫瘍の体積
treated t
0=時間0で治療された腫瘍の体積
placebo t=時間tにおけるプラセボの腫瘍の体積
placebo t
0=時間0におけるプラセボの腫瘍の体積
【0181】
PD試験の場合、平均腫瘍サイズが140~900mm3に達したとき、層別無作為化手順を用いて、グループあたり4匹のマウスで所望の数のグループに動物を割り当てた。これらのグループは、コントロールグループ(薬物治療なし)及び異なる用量レベル(1~20mg/kgの範囲)の化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*の治療のグループからなっていた。全ての用量は遊離塩基重量に基づいた。薬物は、1日1回(qd)又は2回(bid)で毎日経口胃管投与した。全ての処置は、10mL/kg体重の容量で経口胃管投与(p.o.)によって投与した。体重を投与直前に評価し、投与量をそれに応じて調整した。マウスは、投与後の所望の時点で二酸化炭素を用いて安楽死させた。腫瘍組織を安楽死させた直後に切開し、液体窒素を用いてMPビーズで予め満たしたチューブにスナップ凍結し、p-ERKアッセイの前に-80℃で保存した。500μLの完全溶解緩衝液を、MPビーズを用いて凍結した腫瘍に添加した。腫瘍組織の均質化をMPホモジナイゼーション装置で行い、溶解物を4℃で13,000rpmで10分間スピンダウンして不溶性物質を除去した。AlphaScreen(登録商標)SureFire(登録商標)p-ERK1/2アッセイ(PerkinElmer)によりリン酸化されたERK1/2レベルを測定するために、2μgのタンパク質溶解物を使用した。
【0182】
結果:
化合物1のセスキマレイン酸塩(結晶形A*)は、B-RAF V600Eに対する強力なキナーゼ阻害活性、細胞ベースのアッセイにおける抗増殖活性及び異種移植モデルにおける抗腫瘍活性を有する。化合物1のセスキマレイン酸塩(結晶形A*)は、ヌードマウスのヒトA375メラノーマ(B-RAF V600E突然変異)、LOXメラノーマ(B-RAF V600E突然変異)、Colo205結腸直腸癌(B-RAF V600E突然変異)、HT29結腸直腸癌(B-RAF V600E突然変異)、WiDr結腸直腸癌(B-RAF V600E突然変異)、HCC827肺癌(EGFR突然変異)及びA431類表皮癌(EGFR過剰発現)の異種移植片に対する顕著な抗腫瘍活性を有する。さらに、化合物1のセスキマレイン酸塩(結晶形A*)は、ドセタキセル又はMEK阻害剤、セルメチニブ(AZD6244)と組み合わせた場合、ヒトCalu-6肺腺癌(K-RAS突然変異)腫瘍において顕著な抗腫瘍活性を示した。
【0183】
化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*の経口投与は、マウスのA375異種移植片におけるERK1/2リン酸化の時間依存性及び用量依存性の阻害をもたらした。腫瘍組織におけるp-ERKレベルの阻害は、化合物1の血漿及び腫瘍薬物の濃度とよく相関する。さらに、化合物1のセスキマレイン酸塩(結晶形A*)及びMEK阻害剤AZD6244は、Calu-6 K-RAS変異型非小細胞肺腺癌の異種移植モデルにおけるp-ERKの阻害に対して強い相乗効果を示した。
【0184】
試験5:化合物1のセスキマレイン酸塩(結晶形A*)の毒性学
化合物1のセスキマレイン酸塩(結晶形A*)の前臨床安全性の評価のために、ラット及びイヌにおける28日間のGLP試験並びにいくつかの治験研究を含む包括的な非臨床毒性試験プログラムを実施した。これらの研究は、抗癌剤の前臨床開発のための利用可能な規制ガイダンスを考慮した。これらの研究において、化合物1のセスキマレイン酸塩は、好ましい毒性学及び安全性薬理学のプロフィールを示した。安全性の薬理試験結果は、化合物1のセスキマレイン酸塩(結晶形A*)は、呼吸、血圧及び循環機能に影響を与えず、自律神経系活動又は中枢神経系に影響を及ぼさないことを示した。追加の毒性試験の結果は、催奇性、突然変異誘発性及び生殖毒性を示さなかった。
【0185】
試験6:化合物1のセスキマレイン酸塩(結晶形A*)の薬物動態学
完全に検証済みのLC-MS/MS法は、以下の単回投与及び複数回投与後のSDラット並びにビーグル犬の、化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*の薬物動態学(K)試験によく用いられた。
【0186】
化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*は、ラット(51%~102%)及びイヌ(41%~82%)の両方において高い経口生物学的利用能を有する。その排泄半減期は、経口投与後にラットで4.4~9.4時間、犬で3.3~4.9時間の範囲であった。
【0187】
動態は、ラットで0.5~15mg/kg、イヌで1.5~15mg/kgの用量範囲にわたって線形であった。複数回投与した後、ラットでわずかな蓄積(約2倍)が観察された。このわずかな蓄積は、雌ラットでは統計的に有意であったが、雄ラットでは有意ではなかった。犬で複数回投与しても蓄積は認められなかった。
【0188】
試験7:化合物1のセスキマレイン酸塩(結晶形A*)のADME
化合物1は様々な組織に広く分布していたが、脳組織は低かった。これは、薬物が血液脳関門を容易に横切らないことを示している。CYP2C8(IC50=1.03μM)及びCYP2C19(IC50=1.96μM)の弱い阻害を除いて、ラット肝臓におけるP450酵素に対する顕著な誘発効果は見出されず、化合物1のセスキマレイン酸酸について薬物代謝酵素に対する阻害活性は見出されなかった。CYP3Aは、化合物1の代謝に関与する主要なCYPアイソフォームであったが、CYP1A2、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19及びCYP2D6は、化合物1の代謝にあまり寄与しなかった。
【0189】
試験8:化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*と遊離塩基の薬物動態比較
薬物及び試薬:D90=4.1μm、D10=1.5μm、D50=2.4μmの粒径を有する化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*。原料含量(純度)は98.0%以上であった。
【0190】
実験動物:雄及び雌のビーグル犬。
【0191】
製薬製剤:各物質の適切な量を量り、(化合物1の遊離塩基については)0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム、又は(化合物1のセスキマレイン酸塩については)0.5%メチルセルロース溶液に分散する。化合物1の所望の濃度で懸濁液を調製する。この試験では、化合物1のすべての用量及び濃度を遊離塩基で計算した。
【0192】
投与及び試料採取:投与溶液は、投与前に新たに調製される。実際の体重及び注入された実際の容積はそれに応じて記録される。イヌを一晩絶食させ、投薬の4時間後に食物を摂取させた。各懸濁液を0.5~15mg/kgの範囲の用量でイヌに経口投与した。血液サンプル(約1.0mL)を、投与前及び投与後36時間までの様々な時間に、頭部静脈叢を介して収集する。全血は遠心分離によって処理され、血漿試料は収集され、分析前に冷凍庫に保存される。血漿サンプルをタンパク質沈殿によって処理した。血漿サンプル中の化合物1の濃度を、有効な液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法(LC-MS/MS)法を用いて決定した。血漿濃度-時間データを、Pharsight WinNonlinを使用した非コンパートメントモデルを用いて分析した。
【表20】
【0193】
上記実験は、化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*のCmax(ng/mL)及びAUC0-inf(ng・h/mL)が遊離塩基形の約2~3倍であることを示した。したがって、化合物1の結晶形態A*は、化合物1(非晶質形)の遊離塩基よりも有意に優れた相対的な生物学的利用能を有する。
【0194】
試験9:臨床試験
カプセルを調製するために化合物1のセスキマレイン酸塩の結晶形A*を用いて、5、10、20、30、40及び50mgの単回用量を投与された25人の被験者について、第I相臨床安全性試験を完了した。その結果、5~50mgの単回投与は安全で耐容性が高いことが示された。化合物1の処置は、BRAF V600Eメラノーマ患者における部分的応答、BRAF V600E PTC患者における部分的応答及びBRAF V600E CRC患者におけるいくつかの抗腫瘍活性をもたらした。16人のKRAS癌患者も募集され、治療され、3人のPRと少なくとも12人の患者が2.2ヶ月以上生き延びた(治療を受けていないKRAS癌患者について報告された平均PFSは、Oncotarget、5、19、2014参照)。これらの予備的データは、化合物1のセスキマレイン酸塩(結晶形A*)がBraf及びK-ras突然変異癌の治療に有効であることを実証した。
【0195】
特定の実施形態の前述の実施例及び説明は、特許請求の範囲によって規定される本発明を限定するのではなく、例示として取られるべきである。容易に理解されるように、特許請求の範囲に記載された本発明から逸脱することなく、上述した特徴の多くの変形及び組み合わせを利用することができる。このような全ての変形は、本発明の範囲内に含まれるものとする。引用された全ての参考文献は、その全体が引用により本願に組み込まれる。
【0196】
いずれかの先行技術文献が本願で言及されている場合、そのような参考文献は、その刊行物がいずれかの国の当業界における一般的な知識の一部をなすことを認めるものではないことを理解されたい。
【0197】
以下の特許請求の範囲及び本発明の前述の説明において、文脈が明示的な言語又は必要な意味のために必要とする場合を除いて、「含む」という言葉、又は「備える」もしくは「包含する」などの変形は、包括的な意味で使用される。すなわち、記載された特徴の存在を特定するが、本発明の様々な実施形態におけるさらなる特徴の存在又は追加を排除するものではない。
【0198】
本願において識別引用によって引用される全ての刊行物、特許、特許出願及び公開特許出願の開示は、その全体が引用により本願に組み込まれる。