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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】コア
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/24 20060101AFI20230728BHJP
【FI】
H01F27/24 J
H01F27/24 P
H01F27/24 Q
H01F27/24 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019115485
(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公開番号】P2021002585
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳本 舎那
(72)【発明者】
【氏名】望月 賢人
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-058690(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0189847(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03330980(EP,A1)
【文献】特開平05-159936(JP,A)
【文献】特開2007-073903(JP,A)
【文献】特開2003-217945(JP,A)
【文献】特表2006-505143(JP,A)
【文献】特開平09-035965(JP,A)
【文献】特開2016-025273(JP,A)
【文献】特開2013-089774(JP,A)
【文献】特開2015-141918(JP,A)
【文献】特開2012-238743(JP,A)
【文献】特開2013-247265(JP,A)
【文献】特開2015-099902(JP,A)
【文献】特開2017-112309(JP,A)
【文献】特開平02-170510(JP,A)
【文献】特開2005-019716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線が巻回される巻回部と、
第1壁部と、前記第1壁部とは離間し、第1方向において前記第1壁部に対向して配置される第2壁部と、前記第1壁部に接触するように配置される第3壁部と、前記第3壁部とは離間し、前記第1方向とは異なる第2方向において前記第3壁部に対向して配置される第4壁部を有し、前記巻回部の周囲を囲む壁部と、
を備え、
前記第1壁部と前記第2壁部は別部材で構成され、前記第3壁部と前記第4壁部は別部材で構成され、
前記第2壁部は、外部の冷却部によって冷却され、
前記巻回部は、前記第1壁部、前記第3壁部および前記第4壁部とは離間しており、前記第2壁部と一体に構成され、
前記第2壁部は、前記第3壁部および前記第4壁部とは別部材で構成され、
前記第2壁部と前記第3壁部との接点、および、前記第2壁部と前記第4壁部との接点は、前記第1方向における前記巻回部の範囲内に位置され、
コアを冷却する前記冷却部と前記第1壁部との距離は、前記冷却部と前記第2壁部との距離よりも大きい、
コア。
【請求項2】
前記第1壁部、前記第2壁部、前記第3壁部、および、前記第4壁部は、前記壁部の熱膨張によって移動可能に構成されている、
請求項1に記載のコア。
【請求項3】
前記第3壁部は、前記第1壁部および前記第2壁部とは別部材で構成され、
前記第4壁部は、前記第1壁部および前記第2壁部とは別部材で構成されている、
請求項1または請求項2に記載のコア。
【請求項4】
前記巻回部は、前記壁部とは別部材で構成されている、
請求項1~3の何れか1項に記載のコア。
【請求項5】
前記巻回部および前記壁部は、ポッティング材によって固定されている、
請求項1~の何れか1項に記載のコア。
【請求項6】
前記第1壁部と前記第3壁部とは一体に構成されている、
請求項1に記載のコア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力変換装置等に設けられるトランスでは、E字状またはU字状のコアを2つ結合して用いられることが一般的に知られている。例えば、E字状のコアの場合、1つのコアは、所定方向に延びる本体部と、所定方向と直交する方向に本体部から延びる3つの脚部を有するが、トランスでは、2つのコアの脚部同士を対向配置させた状態で2つのコアが用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、E字状のコアとI字状のコアとが結合された構成が開示されている。この構成では、各構成部品が、それぞれの相対位置を維持するべく固着されている。また、トランスにおいて、各コアの脚部間にギャップが設けられる場合、ギャップ長を正確にするため、E字状のコアが用いられることが主流となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-143439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらのコアは、装置の動作中に発熱するため、装置内に設けられる冷却部によって冷却されるが、コアの全部分を均等に冷却することが困難であるので、冷却部に冷却される部分と、それ以外の部分とで温度勾配が発生する。その結果、コアにおける発熱に起因してコアに応力がかかり、ひいてはコアの損失が増大する。コアの損失が増大すると、その損失によって温度勾配がさらに大きくなり、コアの損失がさらに増大する。
【0006】
また、E字状のコア等、複数の脚部を有するコアである場合、温度勾配がさらに大きくなって脚部間にさらなる応力がかかると、当該応力によりコアが破損してしまうおそれがあった。特に、特許文献1に記載の構成のように、各構成部品が、それぞれの相対位置を維持するべく固着されている構成であると、各構成部品の接点部分が完全に固着された状態であるため、接点部分以外の部分が破損してしまうおそれがあった。
【0007】
本開示の目的は、自身にかかる応力に起因した発熱量の増大および損失の増大を低減することが可能なコアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るコアは、
巻線が巻回される巻回部と、
第1壁部と、前記第1壁部とは離間し、第1方向において前記第1壁部に対向して配置される第2壁部と、前記第1壁部に接触するように配置される第3壁部と、前記第3壁部とは離間し、前記第1方向とは異なる第2方向において前記第3壁部に対向して配置される第4壁部を有し、前記巻回部の周囲を囲む壁部と、
を備え、
前記第1壁部と前記第2壁部は別部材で構成され、前記第3壁部と前記第4壁部は別部材で構成され
前記第2壁部は、外部の冷却部によって冷却され、
前記巻回部は、前記第1壁部、前記第3壁部および前記第4壁部とは離間しており、前記第2壁部と一体に構成され、
前記第2壁部は、前記第3壁部および前記第4壁部とは別部材で構成され、
前記第2壁部と前記第3壁部との接点、および、前記第2壁部と前記第4壁部との接点は、前記第1方向における前記巻回部の範囲内に位置され、
コアを冷却する外部の冷却部と前記第1壁部との距離は、前記冷却部と前記第2壁部との距離よりも大きい。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、自身にかかる応力に起因した発熱量の増大および損失の増大を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態に係るコアを示す図である。
図2】コアにおけるポッティング材が充填された状態を示す図である。
図3】コアにおける作用効果を説明するための図である。
図4】E字状のコアにおいて発生する問題を説明するための図である。
図5】変形例にかかるコアの一例を示す図である。
図6】変形例にかかるコアの一例を示す図である。
図7】変形例にかかるコアの一例を示す図である。
図8】変形例にかかるコアの一例を示す図である。
図9】変形例にかかるコアの一例を示す図である。
図10】変形例にかかるコアの一例を示す図である。
図11】変形例にかかるコアの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本開示の実施の形態に係るコア1を示す図である。
【0012】
図1に示すように、コア1は、例えば電源装置等の電力変換装置に設けられるトランスに用いられる鉄心等の磁性体であり、巻回部2と、壁部3とを有する。巻回部2および壁部3は、互いに別部材で構成されている。
【0013】
巻回部2は、巻線(不図示)に巻回される部分であり、上下方向に延びている。上下方向は、本開示の「第1方向」に対応する。
【0014】
巻回部2の下端部の端面は、壁部3における後述する第2壁部32の上面に接触している。巻回部2の上端部は、壁部3における後述する第1壁部31の下面とは離間して配置されている。
【0015】
壁部3は、巻回部2を取り囲んでおり、矩形状に構成されている。壁部3は、第1壁部31、第2壁部32、第3壁部33および第4壁部34を有する。第1壁部31、第2壁部32、第3壁部33および第4壁部34のそれぞれは、別部材である板状部材で構成されている。
【0016】
第1壁部31および第2壁部32は、左右方向に延びており、上下方向において巻回部2を挟むように配置されている。左右方向は、本開示の「第2方向」に対応する。
【0017】
第1壁部31は、巻回部2の上端部側に配置されている。第2壁部32は、巻回部2の下端部側に配置されている。
【0018】
第3壁部33および第4壁部34は、上下方向に延びており、左右方向において巻回部2を挟むように配置されている。第3壁部33および第4壁部34は、上下方向において第1壁部31と第2壁部32との間に配置されている。
【0019】
第3壁部33は、巻回部2の右方に配置されており、第4壁部34は、巻回部2の左方に配置されている。
【0020】
第3壁部33の上端部の端面は、第1壁部31の右端部における下面と接触している。第3壁部33の下端部の端面は、第2壁部32の右端部における上面と接触している。
【0021】
第4壁部34の上端部の端面は、第1壁部31の左端部における下面と接触している。第4壁部34の下端部の端面は、第2壁部32の左端部における上面と接触している。
【0022】
また、図2に示すように、巻回部2および壁部3は、ポッティング材4によって固定されている。ポッティング材4は、壁部3の内部に巻回部2および巻線とともに充填される。
【0023】
また、第2壁部32は、電力変換装置等の外部の装置に設けられる冷却部と接触する部分である。別の言い方をすると、第2壁部32は、外部の冷却部に冷却される被冷却部分である。また、巻回部2は、被冷却部分側の端部が壁部3に接触配置され、被冷却部分とは反対側の端部が壁部3と離間して配置されている。
【0024】
以上のように構成された本実施の形態に係るコア1の作用効果について説明する。
【0025】
コア1は、搭載される装置の動作中において発熱する。本実施の形態の場合、第2壁部32が被冷却部分であるので、第2壁部32の部分で冷却されることにより、コア1が冷却される。しかしながら、コア1における第2壁部32以外の部分については、冷却部に接触していないので、コア1全体が均等に冷却されない。そのため、第2壁部32と、それ以外の部分とで温度勾配が生じる。
【0026】
このような温度勾配が生じると、ポッティング材4の熱膨張により、コア1の各部に対して応力がかかる。また、壁部3自身の熱膨張によっても、コア1の各部に対して応力がかかる。例えば、図3に示すように、第3壁部33や第4壁部34の部分では、外側に広がろうとする応力Nが壁部3の内側からかかる。なお、図3では、一例として第3壁部33および第4壁部34の部分にかかる応力Nのみを示しており、第1壁部31および第2壁部32にかかる応力については図示を省略している。
【0027】
このような応力Nがかかると、巻線により発生している磁場に影響を与えてしまい、コア1における損失が増大する。コア1の損失が増大すると、その損失によって発熱量が増大して温度勾配がさらに大きくなり、応力がさらに増大し、ひいてはコア1の損失がさらに増大する。
【0028】
ここで、例えば、図4に示すように、本体部A1と、本体部A1の異なる部位から上下方向に延びる3つの脚部A2,A3,A4を有するようなE字状のコアAを含む構成の場合、本体部A1と各脚部間や、異なる2つの脚部間で応力Nがかかり合うこととなる。
【0029】
このような構成の場合、発熱量、応力、損失が増大し続けていき、最終的にはコアAが破損するという問題が生じる。
【0030】
それに対し、図3に示すように、本実施の形態では、壁部3における各部が別部材である。言い換えると、第1壁部31、第2壁部32、第3壁部33および第4壁部34が、壁部3の熱膨張によって移動可能に構成されている。
【0031】
そのため、各部が自身にかかる応力の方向に沿ってスライドするので(矢印X1,X2参照)、各部が互いにかかる応力を逃がすことができる。その結果、応力の影響を低減することができるので、当該応力に起因した発熱量の増大および損失の増大を低減することができる。
【0032】
また、巻回部2が壁部3と別部材で構成されているので、巻回部2と壁部3の各部が、それぞれにかかる応力の方向にスライドすることで、当該応力を逃がすことができる。その結果、応力の影響を低減することができ、ひいては応力に起因したさらなる発熱量の増大および損失の増大を低減することができる。
【0033】
また、発熱量の増大および損失の増大を低減することにより、これらに起因した応力の増大を抑制することができるので、当該応力の増大によってコア1が破損することを抑制することができる。
【0034】
また、第2壁部32が被冷却部分であるので、巻回部2と第1壁部31との間隔が冷却部とは反対側に位置することとなる。巻回部2と第1壁部31とが接触していると、巻回部2で発生した熱が第1壁部31に伝わる。第1壁部31は、被冷却部分である第2壁部32とは反対側に位置することから、冷却されにくいので、巻回部2と接触していると、コア1全体の冷却効率が悪化する。
【0035】
しかし、本実施の形態では、巻回部2と第1壁部31との間隔によって、巻回部2で発生した熱が第1壁部31に伝わり難くなる。その結果、コア1全体の冷却効率が悪化することを抑制することができ、ひいてはコア1における冷却性能を向上させることができる。
【0036】
また、ポッティング材4により、巻回部2および壁部3が固定されているので、巻回部2と壁部3とを容易に固定することができる。また、ポッティング材4により、巻線も固定するので、例えばボビンなどを設ける必要がなくなる。その結果、コア1における部品点数を削減することができる。
【0037】
なお、上記実施の形態では、第3壁部33が第1壁部31の下面および第2壁部32の上面に接触していたが、本開示はこれに限定されない。例えば、図5に示すように、第3壁部33が第1壁部31の右端部の端面および第2壁部32の右端部の端面に接触していても良い。
【0038】
また、上記実施の形態では、第4壁部34が第1壁部31の下面および第2壁部32の上面に接触していたが、本開示はこれに限定されない。例えば、図5に示すように、第4壁部34が第1壁部31の左端部の端面および第2壁部32の左端部の端面に接触していても良い。
【0039】
また、上記実施の形態では、第1壁部31、第2壁部32、第3壁部33および第4壁部34の各側面形状が矩形状であったが、本開示はこれに限定されない。例えば、図6に示すように、第1壁部31、第2壁部32、第3壁部33および第4壁部34の各側面形状が台形状であっても良い。
【0040】
また、上記実施の形態では、壁部3が第1壁部31、第2壁部32、第3壁部33および第4壁部34の4つに分割されていたが、本開示はこれに限定されない。例えば、図7に示すように、壁部が第5壁部5および第6壁部6を有する構成であっても良い。
【0041】
第5壁部5は、第1延出部51と、第2延出部52とを有する。第1延出部51は、左右方向に延びており、巻回部2の上方に配置される。第2延出部52は、第1延出部51の右端部から下方向に延びており、巻回部2の右方に配置される。第1延出部51は、本開示の「第1壁部」に対応する。第2延出部52は、本開示の「第3壁部」に対応する。
【0042】
第6壁部6は、第5壁部5と同様に、第1延出部61と、第2延出部62とを有する。第1延出部61は、左右方向に延びており、巻回部2の下方に配置される。第2延出部62は、第1延出部61の左端部から上方向に延びており、巻回部2の左方に配置される。第1延出部61は、本開示の「第2壁部」に対応する。第2延出部62は、本開示の「第4壁部」に対応する。つまり、上記実施の形態において、第1壁部31と第3壁部33、および、第2壁部32と第4壁部34をそれぞれ一体に構成しL字型に形成してもよい。コアをL字型にすることで、自身にかかる応力に起因した発熱量の増大および損失の増大を低減することができる。
【0043】
詳述すると、第5壁部5の第2延出部52は、第6壁部6の第1延出部61の右端部の上面に接触する。第6壁部6の第2延出部62は、第5壁部5の第1延出部51の左端部の下面に接触する。巻回部2は、第6壁部6の第1延出部61の上面に配置される。第5壁部5と第6壁部6とで囲まれた空間にポッティング材4が充填される。
【0044】
このような構成では、例えば、第5壁部5の内側から、右方向に向かう応力がかかった場合、第5壁部5が、その応力に沿って右側にスライドする。また、例えば、第6壁部6の内側から、左方向に向かう応力がかかった場合、第6壁部6が、その応力に沿って左側にスライドする。
【0045】
すなわち、このような構成であっても、応力の影響を低減することができ、ひいては応力に起因した発熱量の増大および損失の増大を低減することができる。
【0046】
また、第5壁部5および第6壁部6の何れか一方が壁部に含まれていても良い。例えば、図8に示すように、壁部が、図1等に示す構成における第1壁部31および第3壁部33と、図7に示す第6壁部6とを有する構成であっても良い。つまり、上記実施の形態において、第1壁部31と第3壁部33、または、第2壁部32と第4壁部34を一体に構成しどちらか一方をL字型に形成してもよい。図8には、第2壁部32と第4壁部34を一体に構成したコアが示されている。
【0047】
ただし、第5壁部5または第6壁部6は、第1延出部と第2延出部とが接続された構成であるので、第1延出部と第2延出部との間で応力がかかり合う場合がある。そのため、可能な限り、図1等に示す構成のように、壁部の辺毎に分割された構成であることが好ましい。
【0048】
また、第1壁部31、第2壁部32、第3壁部33および第4壁部34の少なくとも1つが、さらに複数に分割された構成であっても良い。この場合、第1壁部31、第2壁部32、第3壁部33および第4壁部34における複数に分割された部分が、直線形状でなくても良い。
【0049】
また、上記実施の形態では、巻回部2と、壁部3とが別部材で構成されていたが、本開示はこれに限定されない。例えば、図9に示すように、巻回部と壁部とが一体に構成されていても良い。
【0050】
この構成における壁部3の第2壁部32は、巻回部32Aを有する。巻回部32Aは、第2壁部32の上面における左右方向の中央部から上方向に延びている。巻回部32Aの上端部は、第1壁部31と離間している。
【0051】
このような構成であっても、応力の影響を低減することができ、ひいては応力に起因した発熱量の増大および損失の増大を低減することができる。
【0052】
ところで、この構成では、巻回部32Aが第2壁部32と一体に構成されているので、ポッティング材4の膨張に基づく応力が巻回部32Aにもかかる。そのため、巻回部32Aと、第3壁部33および第4壁部34とで挟まれた範囲において、可能な限りコア1全体にかかる応力を逃がすことが可能な構成であることが好ましい。
【0053】
具体的には、第2壁部32と、第3壁部33および第4壁部34との各接点が、上下方向における巻回部32Aの範囲内に位置することが好ましく、当該接点が、巻回部32Aの基端部と上下方向において同じ位置であることがさらに好ましい。図9に示す構成の場合巻回部32Aの基端部は、巻回部32Aの下端部であり、第2壁部32と、第3壁部33および第4壁部34との各接点と、上下方向において同じ位置である。
【0054】
これにより、巻回部32Aと、第3壁部33および第4壁部34とで挟まれた範囲において、第3壁部33および第4壁部34が移動可能となるので、応力を逃がしやすくすることができる。
【0055】
また、図10に示すように、第1壁部31が巻回部31Aを有していても良い。この構成では、第1壁部31が巻回部31Aを有し、第2壁部32が巻回部32Aを有する。巻回部31Aは、第1壁部31の下面から下方向に延びており、第2壁部32の巻回部32Aと対向している。第2壁部32の巻回部32Aは、図9に示す構成よりも、長さが短くなっている。
【0056】
また、上記実施の形態では、巻回部と壁部とがポッティング材により固定されていたが、本開示はこれに限定されない。例えば、図11に示すように、各部の接点が接着剤7によって固着されることで、各部が固定されていても良い。
【0057】
ただし、コア1が、装置の動作中に発熱した際、接着剤7自身が軟化することにより固着状態が解除されるような融点(軟化点)を有する接着剤である必要がある。そうでないと、各部に応力がかかって壁部3が熱膨張した際、各部が移動可能とならないので、応力に起因した発熱量の増大および損失の増大を低減できなくなるからである。
【0058】
また、トランスが搭載される装置がポッティング材や接着剤等によってコアを固着する必要がないものである場合、クリップ等の固定部材によって壁部の各部が固定されていても良い。ただし、壁部が熱膨張した際、各部が移動可能となる程度の固定力である固定部材である必要がある。
【0059】
また、上記実施の形態では、壁部3が矩形状であったが、本開示はこれに限定されず、矩形状以外の形状であっても良い。
【0060】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示のコアは、自身にかかる応力に起因した発熱量の増大および損失の増大を低減することが可能なコアとして有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 コア
2 巻回部
3 壁部
4 ポッティング材
31 第1壁部
32 第2壁部
33 第3壁部
34 第4壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11