(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】点灯装置、照明装置、及び移動体
(51)【国際特許分類】
H05B 45/345 20200101AFI20230728BHJP
B60Q 1/04 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
H05B45/345
B60Q1/04 E
(21)【出願番号】P 2019152365
(22)【出願日】2019-08-22
【審査請求日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2018179429
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森脇 淑也
(72)【発明者】
【氏名】村上 昌伸
(72)【発明者】
【氏名】小井関 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】神原 隆
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-113642(JP,A)
【文献】特開2003-031393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/00
B60Q 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流の入力電圧が入力され、前記入力電圧を電圧変換することにより、照明負荷に対して直流の出力電流を供給する電源回路と、
前記出力電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部が検出する前記出力電流の検出値を目標値に近付けるように前記電源回路を制御する制御回路と
を備え、
前記制御回路は、前記電源回路を制御する制御モードを複数有し、前記複数の制御モードのうちから択一的に選択した制御モードを実行して前記電源回路を制御し、
前記制御回路が有する前記複数の制御モードには、少なくとも第1の制御モードと第2の制御モードが含まれ、
前記第1の制御モードは、前記目標値を前記入力電圧に追随して調整する制御モードであり、
前記第2の制御モードは、前記目標値を前記入力電圧に追随せずに調整することを含む制御モードであ
り、
前記制御回路は、前記出力電流の検出値が前記目標値以上であるときは前記第1の制御モードを実行し、前記出力電流の検出値が前記目標値未満であるときは前記第2の制御モードを実行し、
前記制御回路は、前記第2の制御モードの実行中においては、一定の時間変化率で前記目標値を増加させ、前記一定の時間変化率を、前記第1の制御モードの実行中に前記目標値を減少させる際の時間変化率よりも小さくし、前記出力電流の検出値が前記目標値に達したら、前記第2の制御モードを終了して前記第1の制御モードを実行する、
点灯装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記第2の制御モードの実行中に前記目標値を増加する際の時間変化率を、前記第1の制御モードの実行中に前記目標値を減少させる際の時間変化率よりも小さい第1の時間変化率と、前記第1の時間変化率よりも大きい第2の時間変化率に切り替える、
請求項
1記載の点灯装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記第2の制御モードの実行中に前記目標値を増加する際の時間変化率を、前記第2の時間変化率から前記第1の時間変化率に切り替える、
請求項
2記載の点灯装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記第2の制御モードの実行中に増加させる前記目標値がしきい値未満のときは前記第2の時間変化率で前記目標値を増加させ、前記目標値が前記しきい値以上のときは前記第1の時間変化率で前記目標値を増加させる、
請求項
3記載の点灯装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記第2の制御モードの実行中における前記入力電圧の変動量がしきい値未満であるとき、前記目標値を増加する際の時間的変化率を前記第1の時間変化率よりも大きい第3の時間変化率に切り替える、
請求項
2~
4のいずれか1項に記載の点灯装置。
【請求項6】
前記入力電圧を検出する電圧検出部を備え、
前記制御回路は、前記電圧検出部で検出される前記入力電圧に応じて前記第1の制御モード及び前記第2の制御モードを実行する、
請求項1~
5のいずれか1項に記載の点灯装置。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれかの点灯装置と、
前記点灯装置の出力電流によって点灯する照明負荷と
を備える、
照明装置。
【請求項8】
請求項
7の照明装置と、
前記照明装置を搭載する本体と
を備える、
移動体
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、点灯装置、照明装置、及び移動体に関し、より詳細には、蓄電池などの直流電源から給電されて照明負荷を点灯する点灯装置、当該点灯装置と照明負荷を有する照明装置、及び当該照明装置を搭載した移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来例として特許文献1記載のLED駆動用電源装置(点灯装置)を例示する。この従来例は、二次電池(蓄電池)から供給される直流電圧を昇圧してLEDユニット(照明負荷)に出力することにより、当該LEDユニットを点灯させる。また、当該従来例は、二次電池の電池電圧を監視し、電池電圧が正常な範囲内であれば、LEDユニットに流す出力電流を定電流制御する。さらに、従来例は、電池電圧が正常な範囲よりも低下したときにLEDユニットに流す出力電流を減少させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来例のような点灯装置において、電池電圧(入力電圧)が短い周期で変動した場合、電池電圧に追従して出力電流も短い周期で変動してしまう。そして、点灯装置の出力電流が短い周期で変動した場合、LEDユニットの光量も短い周期で変動してちらついてしまう可能性がある。
【0005】
本開示の目的は、入力電圧の変動に起因して照明負荷のちらつきが発生することの抑制を図ることができる点灯装置、照明装置、及び移動体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る点灯装置は、直流の入力電圧が入力され、前記入力電圧を電圧変換することにより、照明負荷に対して直流の出力電流を供給する電源回路と、前記出力電流を検出する電流検出部とを備える。前記点灯装置は、前記電流検出部が検出する前記出力電流の検出値を目標値に近付けるように前記電源回路を制御する制御回路を備える。前記制御回路は、前記電源回路を制御する制御モードを複数有し、前記複数の制御モードのうちから択一的に選択した制御モードを実行して前記電源回路を制御する。前記制御回路が有する前記複数の制御モードには、少なくとも第1の制御モードと第2の制御モードが含まれる。前記第1の制御モードは、前記目標値を前記入力電圧に追随して調整する制御モードである。前記第2の制御モードは、前記目標値を前記入力電圧に追随せずに調整することを含む制御モードである。前記制御回路は、前記出力電流の検出値が前記目標値以上であるときは前記第1の制御モードを実行し、前記出力電流の検出値が前記目標値未満であるときは前記第2の制御モードを実行する。前記制御回路は、前記第2の制御モードの実行中においては、一定の時間変化率で前記目標値を増加させ、前記一定の時間変化率を、前記第1の制御モードの実行中に前記目標値を減少させる際の時間変化率よりも小さくし、前記出力電流の検出値が前記目標値に達したら、前記第2の制御モードを終了して前記第1の制御モードを実行する。
【0007】
本開示の一態様に係る照明装置は、前記点灯装置と、前記点灯装置の出力電流によって点灯する照明負荷とを備える。
【0008】
本開示の一態様に係る移動体は、前記照明装置と、前記照明装置を搭載する本体とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の点灯装置、照明装置、及び移動体は、入力電圧の変動に起因して照明負荷のちらつきが発生することの抑制を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る点灯装置及び照明装置のブロック図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係る移動体(例えば、自動車)の斜視図である。
【
図4】
図4は、同上の点灯装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図5】
図5Aは、同上の点灯装置における出力電流の波形図である。
図5Bは、同上の点灯装置の比較例における出力電流の波形図である。
図5Cは、同上の点灯装置における入力電圧の波形図である。
【
図6】
図6は、同上の点灯装置における出力電流の波形図である。
【
図7】
図7Aは、同上の点灯装置における出力電流の波形図である。
図7Bは、同上の点灯装置における入力電圧の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
下記の実施形態において説明する各図は模式的な図であり、各構成要素の大きさの比及び厚さの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。なお、以下の実施形態で説明する構成は本開示の一例にすぎない。本開示は、以下の実施形態に限定されず、本開示の効果を奏することができれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0012】
実施形態に係る照明装置2は、
図1に示すように、実施形態に係る点灯装置1と、点灯装置1によって点灯される照明負荷20とを備える。なお、点灯装置1は、直流電源(例えば、バッテリ3)から給電されて照明負荷20を点灯する。
【0013】
照明負荷20は、例えば、複数のLED(Light Emitting Diode)を有するLEDモジュールである。ただし、照明負荷20は、有機エレクトロルミネッセンス素子又は半導体レーザ素子などのLED以外の固体光源であってもかまわない。
【0014】
バッテリ3は、例えば、定格電圧が12Vの自動車用のバッテリ(車載バッテリ)である。
【0015】
点灯装置1は、電源回路10と、電流検出部11と、電圧検出部12と、制御回路13とを備える。電源回路10は、例えば、ブースト型のDC/DCコンバータである。ただし、電源回路10は、例えば、バック型又はバックブースト型のDC/DCコンバータであってもかまわない。電源回路10は、バッテリ3から入力される直流の入力電圧Vinを出力電圧Voutに電圧変換する。電源回路10は、出力電圧Voutを照明負荷20に印加することによって、直流の出力電流Ioutを照明負荷20に供給する。なお、照明負荷20の光量は、電源回路10(点灯装置1)の出力電流Ioutの大きさに応じて変化する。つまり、出力電流Ioutの大きさが増減すると、照明負荷20の光量が増減する。
【0016】
電流検出部11は、電源回路10の出力電流Ioutを検出する。電流検出部11は、電源回路10から照明負荷20に出力電流Ioutを流す電路(導体)に挿入された抵抗器を有する。電流検出部11は、出力電流Ioutが流れることによって前記抵抗器の両端に生じる電圧降下(抵抗器の両端電圧)を、出力電流Ioutの検出値として制御回路13に出力する。
【0017】
電圧検出部12は、バッテリ3から入力される入力電圧Vinを検出する。電圧検出部12は、電源回路10の一対の入力端子と電気的に直列接続された複数の抵抗器を有する。電圧検出部12は、複数の抵抗器によって入力電圧Vinを分圧した電圧を、入力電圧Vinの検出値として制御回路13に出力する。
【0018】
制御回路13は、コンピュータシステムで構成されることが好ましい。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における制御回路13としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリにあらかじめ記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む一ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの回路に集約されていてもよいし、複数の回路に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、一つ以上のプロセッサ及び一つ以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む一ないし複数の電子回路で構成される。
【0019】
制御回路13は、電圧検出部12から入力される入力電圧Vinを分圧した電圧をA/D変換し、A/D変換した電圧を入力電圧Vinの検出値(ディジタル値)として取り込んでメモリに格納する。また、制御回路13は、電流検出部11に含まれる抵抗器の両端電圧が電流検出部11から入力され、当該抵抗器の両端電圧をA/D変換し、A/D変換した電圧を出力電流Ioutの検出値(ディジタル値)として取り込んでメモリに格納する。
【0020】
制御回路13は、入力電圧Vinの検出値に基づいて出力電流Ioutの目標値を決定する。例えば、制御回路13のメモリには、入力電圧Vinの検出値と出力電流Ioutの目標値の対応関係を表したデータテーブルが格納される。そして、制御回路13は、前記データテーブルを参照し、入力電圧Vinの検出値に対応した出力電流Ioutの目標値を決定する。
【0021】
制御回路13は、制御信号を与えることによって電源回路10をPWM制御する。制御信号は、周期を一定とした方形波のパルス列からなり、デューティ比が調整可能な信号である。なお、制御信号のデューティ比が上がる(大きくなる)につれて電源回路10の出力電流Ioutが増加する。制御信号のデューティ比が下がる(小さくなる)につれて電源回路10の出力電流Ioutが減少する。すなわち、制御回路13は、電流検出部11で検出する出力電流Ioutの検出値と、出力電流Ioutの目標値との差分を求め、当該差分を減らすように電源回路10に与える制御信号のデューティ比を調整する。
【0022】
制御回路13は、電源回路10を制御する制御モードを複数有する。制御回路13は、所定のタイミングで、複数の制御モードのうちから択一的に選択した制御モードを実行して電源回路10を制御する。複数の制御モードには、少なくとも第1の制御モードと第2の制御モードが含まれる。第1の制御モードは、出力電流Ioutの目標値を入力電圧Vin(の検出値)に追随して調整する制御モードである。第2の制御モードは、出力電流Ioutの目標値を入力電圧Vin(の検出値)に追随せずに調整する制御モードである。
【0023】
ここで、照明装置2について更に詳しく説明する。照明装置2は、
図3に示すような自動車8(移動体)の車体80(本体)に搭載される前照灯装置(ヘッドライト)である。照明装置2は、
図2に示すように、点灯装置1及び照明負荷20に加えて、点灯装置1及び照明負荷20を保持して車体80に取り付けられる灯具21を備える。
【0024】
灯具21は、灯具本体22、カバー23、放熱体24、反射板25などを備える。灯具本体22は、合成樹脂により、前面が開口された有底筒状に形成される。カバー23は、石英ガラスやアクリル樹脂などの透光性を有する材料により、後面が開口された有底筒状に形成される。そして、灯具本体22の前端にカバー23の後端が結合され、カバー23で塞がれる灯具本体22内に、照明負荷20、放熱体24、反射板25が収容される。
【0025】
放熱体24は、例えば、アミルダイカストなどにより、平板の一面に多数の放熱フィンが設けられることが好ましい。放熱体24の上面に照明負荷20と反射板25が取り付けられる。反射板25は、半球状に形成されており、その内周面で照明負荷20から放射される光を前方に反射する。
【0026】
点灯装置1は、ケース100に収納されて灯具本体22の下面あるいは内部に取り付けられる。また、点灯装置1が灯具本体22の内部に取り付ける場合はケース100に収納されなくてもよい。なお、点灯装置1と照明負荷20とは、電源ケーブル101を介して電気的に接続されることが好ましい。
【0027】
自動車8には照明装置2以外にも様々な電気的負荷(例えば、エアコンディショナー、オーディオ機器、ナビゲーションシステム、セルモータなど)が搭載され、これらの電気的負荷に対してバッテリ3から給電されている。ゆえに、バッテリ3の電源電圧は、各種の電気的負荷への給電状態に応じて変動する。例えば、定格電圧(公称電圧)が12Vの車載用のバッテリの電圧は、通常の使用状況において、約10V~15Vの範囲で変動する。さらに、経年劣化及び気候などの要因により、車載用のバッテリの電圧が一時的に7V以下まで低下する場合もある。
【0028】
したがって、照明装置2においては、バッテリ3の電源電圧(入力電圧Vin)が低下したときに照明負荷20に供給する電流(出力電流Iout)を減少させることにより、バッテリ3を保護する(バッテリ上がりを防ぐ)必要がある。ゆえに、点灯装置1の制御回路13は、バッテリ3の電源電圧(入力電圧Vin)が低下したとき、出力電流Ioutの目標値を下げることでバッテリ3の保護を図っている。
【0029】
次に、点灯装置1の制御回路13の動作について、
図4のフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0030】
バッテリ3から点灯装置1への給電が開始されると、制御回路13が起動する。制御回路13は、デフォルト(初期設定)で第1の制御モードを実行する(ステップS1)。制御回路13は、電圧検出部12から入力される入力電圧Vinの検出値に応じて出力電流Ioutの目標値を決定する(ステップS2)。制御回路13は、入力電圧Vinの検出値がバッテリ3の定格電圧(12V)を含む所定の範囲(例えば、11V~13V)内にあれば、出力電流Ioutの目標値を照明負荷20の定格電流に一致させる。制御回路13は、制御信号のデューティ比を照明負荷20の定格電流に対応した値に設定し、当該制御信号を電源回路10に出力する。
【0031】
制御回路13は、出力電流Ioutの検出値が出力電流Ioutの目標値と一致するか否かを判断する(ステップS3)。ただし、この場合の「一致」とは、出力電流Ioutの検出値と出力電流Ioutの目標値が一致する状態だけでなく、出力電流Ioutの検出値と出力電流Ioutの目標値との差分の絶対値が所定値以下に収まっている状態を意味する。制御回路13は、出力電流Ioutの検出値が出力電流Ioutの目標値に一致する場合、制御信号のデューティ比を変更せず、再度、入力電圧Vinの検出値に応じて出力電流Ioutの目標値を決定する(ステップS2)。このとき、入力電圧Vinが上記範囲(例えば、11V~13V)内にあれば、制御回路13は、出力電流Ioutの目標値を変更しない。制御回路13は、出力電流Ioutの検出値が出力電流Ioutの目標値に一致しない場合、出力電流Ioutの検出値が出力電流Ioutの目標値よりも大きいか否かを判断する(ステップS4)。制御回路13は、出力電流Ioutの検出値が出力電流Ioutの目標値より大きい場合、制御信号のデューティ比を下げて出力電流Ioutを減少させる(ステップS5)。制御回路13は、制御信号のデューティ比を下げた後、再度、入力電圧Vinの検出値に応じて出力電流Ioutの目標値を決定する(ステップS2)。ただし、入力電圧Vinが上記範囲(例えば、11V~13V)内にあれば、制御回路13は、出力電流Ioutの目標値を変更しない。したがって、制御回路13がステップS2~ステップS5の処理を繰り返すことにより、出力電流Ioutの検出値を出力電流Ioutの目標値に一致させることができる。
【0032】
一方、出力電流Ioutの検出値が出力電流Ioutの目標値に一致せず、かつ、出力電流Ioutの検出値が出力電流Ioutの目標値より小さい場合、制御回路13は、制御モードを第1の制御モードから第2の制御モードに切り替えて第2の制御モードを実行する(ステップS6)。制御回路13は、第2の制御モードの実行中においては、入力電圧Vinの検出値を参照せずに、一定の傾き(時間変化率)で出力電流Ioutの目標値を増加させる(ステップS7)。そして、出力電流Ioutの検出値が出力電流Ioutの目標値に達したら、制御回路13は、第2の制御モードを終了し(ステップS8)、ステップS1に戻って、第1の制御モードを実行する。ここで、第2の制御モードにおける出力電流Ioutの目標値の時間変化率(傾き)は、第1の制御モードにおける出力電流Ioutの目標値の時間変化率(傾き)よりも小さいことが好ましい。
【0033】
ここで、バッテリ3の電源電圧(入力電圧Vin)が短時間に大きく変動する場合がある。例えば、いわゆるアイドリングストップ機能を有する自動車において、エンジンの再始動時に点灯装置1の入力電圧Vinが短時間に上昇と下降を繰り返すことがある。
図5Cは、アイドリングストップ後のエンジン再始動時における入力電圧Vinの時間的な変化の一例を表している。
図5Cにおいては、時間t=t0にエンジンを再始動させるためにセルモータが動作することにより、入力電圧Vinが下限電圧VLの近くまで一気に低下する。なお、下限電圧VLとは、点灯装置1が動作可能な入力電圧Vinの下限である。その後、時間t=t1を過ぎると、セルモータの消費電力の変動に合わせて入力電圧Vinも変動する。そして、エンジンが始動してセルモータが停止すれば、入力電圧Vinはほぼ定格電圧に安定する。
【0034】
点灯装置1の制御回路13が常に入力電圧Vinに追随して出力電流Ioutの目標値を調整した場合、
図5Bに示すように、入力電圧Vinに合わせて出力電流Ioutも大きく変動する。そして、出力電流Ioutが大きく変動すれば、照明負荷20の光量も変動してちらつきが発生する。
【0035】
しかしながら、制御回路13は、入力電圧Vinが大きく変動した場合、出力電流Ioutの目標値よりも出力電流Ioutの検出値が低いときに第2の制御モードを実行する。つまり、制御回路13は、入力電圧Vinの検出値を参照せずに、一定の傾き(時間変化率)で出力電流Ioutの目標値を増加させる。その結果、出力電流Ioutは、
図5Aに示すように、時間t=t1から一定の傾きで上昇する。したがって、実施形態の点灯装置1及び照明装置2では、入力電圧Vinが変動した場合において、出力電流Ioutの変動を抑えることにより、入力電圧Vinの変動に起因して照明負荷20のちらつきが発生することの抑制を図ることができる。
【0036】
なお、制御回路13は、第2の制御モードの実行中に出力電流Ioutの目標値を増加する際の時間変化率を、第1の時間変化率と第2の時間変化率に切り替えることが好ましい。第1の時間変化率は、第1の制御モードの実行中に出力電流Ioutの目標値を減少させる際の時間変化率よりも小さいことが好ましい。第2の時間変化率は、第1の時間変化率よりも大きいことが好ましい。例えば、制御回路13は、
図6に示すように、第2の制御モードの実行中に増加させる目標値がしきい値Io1未満のとき(時間t=t1~t2)、第2の時間変化率で目標値を増加させることが好ましい。また、制御回路13は、目標値がしきい値Io1以上のとき(時間t=t2以降)、第1の時間変化率で目標値を増加させることが好ましい。
【0037】
点灯装置1は、制御回路13が上述のように動作することにより、照明負荷20のちらつきの抑制を図りつつ、照明負荷20の光量が規定値(定格値)に達するまでの時間の短縮を図ることができる。
【0038】
ところで、エンジン再始動時の入力電圧Vinの変動が短時間で収束する場合もある。入力電圧Vinの変動が短時間で収束した場合、照明負荷20の光量も速やかに既定値(定格値)に達することが望ましい。
【0039】
そこで、点灯装置1において、制御回路13は、第2の制御モードの実行中における入力電圧Vinの変動量がしきい値未満であるとき、出力電流Ioutの目標値を増加する際の時間的変化率を第3の時間変化率に切り替えることが好ましい。ただし、第3の時間変化率は、第1の時間変化率よりも大きく、特に、第2の時間変化率以上であることが好ましい。
【0040】
制御回路13は、第2の制御モードの実行中において、電圧検出部12の検出値の時間的な変化率を演算し、電圧検出部12の検出値の時間的な変化率がしきい値未満となったとき(
図7Bにおける時間t=t4)、入力電圧Vinの変動が収束したと判断する。そして、制御回路13は、出力電流Ioutの目標値の時間変化率を第1の時間変化率から第3の時間変化率に変更する(
図7Aにおける時間t=t4)。その結果、点灯装置1は、短時間(
図7Aにおける時間t=t4~t5)のうちに照明負荷20の光量も既定値(定格値)に到達させることができる。
【0041】
上述のように第1の態様に係る点灯装置(1)は、直流の入力電圧(Vin)が入力され、入力電圧(Vin)を電圧変換することにより、照明負荷(20)に対して直流の出力電流(Iout)を供給する電源回路(10)を備える。第1の態様に係る点灯装置(1)は、出力電流(Iout)を検出する電流検出部(11)と、電流検出部(11)が検出する出力電流(Iout)の検出値を目標値に近付けるように電源回路(10)を制御する制御回路(13)とを備える。制御回路(13)は、電源回路(10)を制御する制御モードを複数有する。制御回路(13)は、複数の制御モードのうちから択一的に選択した制御モードを実行して電源回路(10)を制御する。制御回路(13)が有する複数の制御モードには、少なくとも第1の制御モードと第2の制御モードが含まれる。第1の制御モードは、目標値を入力電圧(Vin)に追随して調整する制御モードである。第2の制御モードは、目標値を入力電圧(Vin)に追随せずに調整することを含む制御モードである。
【0042】
第1の態様に係る点灯装置(1)は、制御回路(13)が第2の制御モードを実行することにより、入力電圧(Vin)の変動に起因して照明負荷(20)のちらつきが発生することの抑制を図ることができる。
【0043】
第2の態様に係る点灯装置(1)は、第1の態様との組合せにより実現され得る。第2の態様に係る点灯装置(1)において、制御回路(13)は、出力電流(Iout)の検出値が目標値以上であるときは第1の制御モードを実行することが好ましい。制御回路(13)は、出力電流(Iout)の検出値が目標値未満であるときは第2の制御モードを実行することが好ましい。
【0044】
第2の態様に係る点灯装置(1)は、出力電流(Iout)が増加する速度を抑えることにより、照明負荷(20)のちらつきの発生のさらなる抑制を図ることができる。
【0045】
第3の態様に係る点灯装置(1)は、第1又は第2の態様との組合せにより実現され得る。第3の態様に係る点灯装置(1)において、制御回路(13)は、第2の制御モードの実行中に目標値を増加する際の時間変化率を、第1の制御モードの実行中に目標値を減少させる際の時間変化率よりも小さくすることが好ましい。
【0046】
第3の態様に係る点灯装置(1)は、出力電流(Iout)が増加する速度を抑えることにより、照明負荷(20)のちらつきの発生のさらなる抑制を図ることができる。
【0047】
第4の態様に係る点灯装置(1)は、第3の態様との組合せにより実現され得る。第4の態様に係る点灯装置(1)において、制御回路(13)は、第2の制御モードの実行中に目標値を増加する際の時間変化率を、第1の時間変化率と第2の時間変化率に切り替えることが好ましい。第1の時間変化率は、第1の制御モードの実行中に目標値を減少させる際の時間変化率よりも小さいことが好ましい。第2の時間変化率は、第1の時間変化率よりも大きいことが好ましい。
【0048】
第4の態様に係る点灯装置(1)は、照明負荷(20)のちらつきの抑制を図りつつ、照明負荷(20)の光量が規定値(定格値)に達するまでの時間の短縮を図ることができる。
【0049】
第5の態様に係る点灯装置(1)は、第4の態様との組合せにより実現され得る。第5の態様に係る点灯装置(1)において、制御回路(13)は、第2の制御モードの実行中に目標値を増加する際の時間変化率を、第2の時間変化率から第1の時間変化率に切り替えることが好ましい。
【0050】
第5の態様に係る点灯装置(1)は、照明負荷(20)のちらつきの抑制を図りつつ、照明負荷(20)の光量が規定値(定格値)に達するまでの時間の短縮を図ることができる。
【0051】
第6の態様に係る点灯装置(1)は、第5の態様との組合せにより実現され得る。第6の態様に係る点灯装置(1)において、制御回路(13)は、第2の制御モードの実行中に増加させる目標値がしきい値未満のときは第2の時間変化率で目標値を増加させることが好ましい。制御回路(13)は、目標値がしきい値以上のときは第1の時間変化率で目標値を増加させることが好ましい。
【0052】
第6の態様に係る点灯装置(1)は、照明負荷(20)の光量を短時間で既定値(定格値)に到達させることができる。
【0053】
第7の態様に係る点灯装置(1)は、第4~第6の態様のいずれか一つとの組合せにより実現され得る。第7の態様に係る点灯装置(1)において、制御回路(13)は、第2の制御モードの実行中における入力電圧(Vin)の変動量がしきい値未満であるとき、目標値を増加する際の時間的変化率を第1の時間変化率よりも大きい第3の時間変化率に切り替えることが好ましい。
【0054】
第7の態様に係る点灯装置(1)は、照明負荷(20)の光量を更に短時間で既定値(定格値)に到達させることができる。
【0055】
第8の態様に係る点灯装置(1)は、第1~第7の態様のいずれか一つとの組合せにより実現され得る。第8の態様に係る点灯装置(1)において、入力電圧(Vin)を検出する電圧検出部(12)を備えることが好ましい。制御回路(13)は、電圧検出部(12)で検出される入力電圧(Vin)に応じて第1の制御モード及び第2の制御モードを実行することが好ましい。
【0056】
第8の態様に係る点灯装置(1)は、入力電圧(Vin)の変動を電圧検出部(12)で確実に検出することができる。
【0057】
第9の態様に係る照明装置(2)は、第1~第8の態様のいずれかの点灯装置(1)と、点灯装置(1)の出力電流(Iout)によって点灯する照明負荷(20)とを備える。
【0058】
第9の態様に係る照明装置(2)は、入力電圧(Vin)の変動に起因して照明負荷(20)のちらつきが発生することの抑制を図ることができる。
【0059】
第10の態様に係る移動体(自動車8)は、第9の態様に係る照明装置(2)と、照明装置(2)を搭載する本体(車体80)とを備える。
【0060】
第10の態様に係る移動体は、入力電圧(Vin)の変動に起因して照明負荷(20)のちらつきが発生することの抑制を図ることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 点灯装置
2 照明装置
8 自動車(移動体)
10 電源回路
11 電流検出部
12 電圧検出部
13 制御回路
20 照明負荷
80 車体(本体)
Vin 入力電圧
Iout 出力電流