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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】サッシ枠の取付け方法および取付け構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/02 20060101AFI20230728BHJP
   E06B 1/64 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
E06B1/02
E06B1/64 B
E06B1/64 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022008651
(22)【出願日】2022-01-24
【審査請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中野 祝
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 誉士
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英司
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-101471(JP,A)
【文献】特開2001-295554(JP,A)
【文献】実開昭61-058383(JP,U)
【文献】特開2009-167745(JP,A)
【文献】特開平03-069783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸建住宅の2階以上の取付け位置に形成された矩形形状の開口枠部に、左右一対の縦枠と上下一対の横枠とを有するサッシ枠を、剛性材により形成されている固定プレートを介して内嵌した状態で固定して取り付けるサッシ枠の取付け方法であって、
それぞれの前記固定プレートの裏面にシール材が予め取り付けられていて、かつ、前記固定プレートの幅方向一方端部には表面側に突出して前記固定プレートの長手方向に延在する係止部が備わり、前記係止部には前記固定プレートの幅方向他方側に突出して前記固定プレートの長手方向に延在するシール片が取付けられていて、
屋内作業によって、それぞれの前記固定プレートの裏面を前記開口枠部の左右の側面に対向させて、前記係止部を対向させた前記側面での屋外側に配置して上下に延在させた状態で、それぞれの前記固定プレートを対向する前記側面に固定することで、それぞれの前記固定プレートの裏面と対向する前記側面とをそれぞれの前記シール材により水密に接合し、
次いで、前記サッシ枠を屋内側から前記開口枠部に挿入してそれぞれの前記縦枠の屋外側端と、それぞれの前記固定プレートの前記係止部とで、それぞれの前記シール片を挟んだ状態で、前記サッシ枠を内周面から外周面に貫通する貫通穴に挿入されたビスにより、それぞれの前記縦枠と対向する前記固定プレートとを連結することで、それぞれの前記縦枠と対向する前記係止部とをそれぞれの前記シール片により水密に接合するサッシ枠の取付け方法。
【請求項2】
それぞれの前記係止部に前記固定プレートの長手方向に延在する取付け溝が形成されていて、それぞれの前記取付け溝にそれぞれの前記シール片の基端部が長手方向にスライド可能に嵌合して、それぞれの前記シール片が、それぞれの前記取付け溝に対して着脱自在に取り付けられていて、それぞれの前記シール片が前記基端部から突出するヒレ部を有し、
それぞれの前記シール片として、前記ヒレ部のそれぞれの前記係止部から前記固定プレートの幅方向他方側への突出長さが所望範囲の仕様のものを選択して使用し、それぞれの前記ヒレ部をそれぞれの前記固定プレートの表面側に向かって屈曲した状態、または、それぞれの前記固定プレートの表面側とは反対側に向かって屈曲した状態にして、それぞれの前記縦枠の屋外側端と、それぞれの前記固定プレートの前記係止部とで挟む請求項1に記載のサッシ枠の取付け方法。
【請求項3】
それぞれの前記固定プレートは、前記係止部と、前記サッシ枠を前記開口枠部に挿入した際に対向する前記側面と前記縦枠との間に介在する板状の平面部とを有し、前記係止部と前記平面部とは一体化されて形成されている請求項1または2に記載のサッシ枠の取付け方法。
【請求項4】
戸建住宅の2階以上の取付け位置に形成されている矩形形状の開口枠部に、左右一対の縦枠と上下一対の横枠とを有するサッシ枠が、剛性材により形成されている固定プレートを介して内嵌した状態で固定されて取り付けられているサッシ枠の取付け構造であって、
それぞれの前記固定プレートの裏面にシール材が取り付けられていて、かつ、前記固定プレートの幅方向一方端部には表面側に突出して前記固定プレートの長手方向に延在する係止部が備わり、前記係止部には前記固定プレートの幅方向他方側に突出して前記固定プレートの長手方向に延在するシール片が取付けられていて、
それぞれの前記固定プレートの裏面が前記開口枠部の左右の側面に対向し、前記係止部が対向する前記側面での屋外側に配置されて上下に延在した状態で、それぞれの前記固定プレートが対向する前記側面に、前記サッシ枠を貫通していないビスによって固定されていて、それぞれの前記固定プレートの裏面と対向する前記側面とが介在するそれぞれの前記シール材により水密に接合されていて、
前記開口枠部に内嵌されている前記サッシ枠のそれぞれの前記縦枠の屋外側端と、それぞれの前記固定プレートの係止部とで、それぞれの前記シール片が挟まれた状態で、前記サッシ枠を内周面から外周面に貫通する貫通穴に挿入されているビスにより、それぞれの前記縦枠と対向する前記固定プレートとが連結されていて、それぞれの前記縦枠と対向する前記係止部とがそれぞれの前記シール片により水密に接合されているサッシ枠の取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サッシ枠の取付け方法および取付け構造に関し、さらに詳しくは、戸建住宅の2階以上の高所にシール性を確保してサッシ枠を取付ける際に、作業の軽労化を図ることができるサッシ枠の取付け方法および取付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
左右一対の縦枠と上下一対の横枠とを有する矩形のサッシ枠は様々な建物に設置されている。このようなサッシ枠を建物に取付ける方法や取付け構造は種々知られている(例えば、特許文献1参照)。一般的にサッシ枠を戸建住宅などの建物に取り付ける際には、建物に形成されている矩形の開口枠部に対して、作業者が屋外側からサッシ枠を位置決めし、次いで、そのサッシ枠の固定片をネジなどによって開口枠部に固定している(特許文献1の段落0022、図2)。
【0003】
サッシ枠の取付け位置が、戸建住宅の2階以上の高所であると、作業者が足場や梯子などの上で屋外にてサッシ枠を保持しつつ位置決めをして取り付ける作業が必要になる。さらに、取り付けたサッシ枠のシール性(水密性)を確保するには、サッシ枠まわりにシーリング材を塗布する作業が必要になる。シール性を確保してサッシ枠を高所に取付けるには、不安定な高所でのこのような重労働が必要になるため、作業を軽労化することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-256893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、戸建住宅の2階以上の高所にシール性を確保してサッシ枠を取付ける際に、作業の軽労化を図ることができるサッシ枠の取付け方法および取付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のサッシ枠の取付け方法は、戸建住宅の2階以上の取付け位置に形成された矩形形状の開口枠部に、左右一対の縦枠と上下一対の横枠とを有するサッシ枠を、剛性材により形成されている固定プレートを介して内嵌した状態で固定して取り付けるサッシ枠の取付け方法であって、それぞれの前記固定プレートの裏面にシール材が予め取り付けられていて、かつ、前記固定プレートの幅方向一方端部には表面側に突出して前記固定プレートの長手方向に延在する係止部が備わり、前記係止部には前記固定プレートの幅方向他方側に突出して前記固定プレートの長手方向に延在するシール片が取付けられていて、屋内作業によって、それぞれの前記固定プレートの裏面を前記開口枠部の左右の側面に対向させて、前記係止部を対向させた前記側面での屋外側に配置して上下に延在させた状態で、それぞれの前記固定プレートを対向する前記側面に固定することで、それぞれの前記固定プレートの裏面と対向する前記側面とをそれぞれの前記シール材により水密に接合し、次いで、前記サッシ枠を屋内側から前記開口枠部に挿入してそれぞれの前記縦枠の屋外側端と、それぞれの前記固定プレートの前記係止部とで、それぞれの前記シール片を挟んだ状態で、前記サッシ枠を内周面から外周面に貫通する貫通穴に挿入されたビスにより、それぞれの前記縦枠と対向する前記固定プレートとを連結することで、それぞれの前記縦枠と対向する前記係止部とをそれぞれの前記シール片により水密に接合することを特徴とする。
【0007】
本発明のサッシ枠の取付け構造は、戸建住宅の2階以上の取付け位置に形成されている矩形形状の開口枠部に、左右一対の縦枠と上下一対の横枠とを有するサッシ枠が、剛性材により形成されている固定プレートを介して内嵌した状態で固定されて取り付けられているサッシ枠の取付け構造であって、それぞれの前記固定プレートの裏面にシール材が取り付けられていて、かつ、前記固定プレートの幅方向一方端部には表面側に突出して前記固定プレートの長手方向に延在する係止部が備わり、前記係止部には前記固定プレートの幅方向他方側に突出して前記固定プレートの長手方向に延在するシール片が取付けられていて、それぞれの前記固定プレートの裏面が前記開口枠部の左右の側面に対向し、前記係止部が対向する前記側面での屋外側に配置されて上下に延在した状態で、それぞれの前記固定プレートが対向する前記側面に、前記サッシ枠を貫通していないビスによって固定されていて、それぞれの前記固定プレートの裏面と対向する前記側面とが介在するそれぞれの前記シール材により水密に接合されていて、前記開口枠部に内嵌されている前記サッシ枠のそれぞれの前記縦枠の屋外側端と、それぞれの前記固定プレートの係止部とで、それぞれの前記シール片が挟まれた状態で、前記サッシ枠を内周面から外周面に貫通する貫通穴に挿入されているビスにより、それぞれの前記縦枠と対向する前記固定プレートとが連結されていて、それぞれの前記縦枠と対向する前記係止部とがそれぞれの前記シール片により水密に接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記サッシ枠を前記開口枠部に取付ける際に、それぞれの前記固定プレートをそれぞれの前記側面に固定する固定プレートの固定作業を屋内側から行うことができる。また、固定プレートの固定作業を行なうことで、それぞれの前記固定プレートの裏面と、前記開口枠部のそれぞれの前記側面とを、それぞれの前記シール材を介在させて水密に接合することができる。
【0009】
また、前記サッシ枠を屋内側から前記開口枠部に挿入すると、それぞれの前記固定プレートの前記係止部が、それぞれの前記縦枠の屋外側端に係止してストッパとして機能する。そのため、前記サッシ枠を前記開口枠部に対して適切な挿入深さで配置することができる。さらに、それぞれの前記縦枠とそれぞれの前記係止部とを、それぞれの前記シール片を介在させて水密に接合することができる。
【0010】
それ故、屋内側の作業によって、前記開口枠部にシール性を確保して前記サッシ枠を取り付けることが可能になる。したがって、前記開口枠部が戸建住宅の2階以上の高所であっても、不安定な高所での重労働を回避できるので、作業を大幅に軽労化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】サッシ枠の取付け構造の実施形態が適用された戸建住宅を屋外側から正面視で例示する説明図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3図1のサッシ枠の取付け構造を、ガラス窓部を外した状態で屋内側から正面視で例示する説明図である。
図4図3のB-B断面図である。
図5図3のサッシ枠構造の構成部材を分離して例示する説明図である。
図6図5の固定プレートの表面側を平面視で例示する説明図である。
図7図5の固定プレートの裏面側を平面視で例示する説明図である。
図8図6のC-C断面図である。
図9図6のシール片を斜視で例示する説明図である。
図10】開口枠部の側面枠に固定プレートを固定する工程を例示する説明図である。
図11図10の固定プレートが固定された開口枠部にサッシ枠を挿入する工程を例示する説明図である。
図12図11の開口枠部に挿入されている途中のサッシ枠の一部を拡大して横断面視で例示する説明図である。
図13図4のシール片の別の屈曲状態を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のサッシ枠の取付け方法および取付け構造を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1図4に例示するサッシ枠の取付け構造(以下、取付け構造という)の実施形態は、戸建住宅1の2階の開口枠部3に対するサッシ枠7の取付けに適用されている。この取付け構造は、戸建住宅1の2階以上の取付け位置に形成されている矩形形状の開口枠部3にサッシ枠7を取り付ける場合に採用される。尚、2階以上の取付け位置とは、開口枠部3の上端面が地盤から例えば4m以上の高さである場合をいう。この取付け構造は、具体的には屋根1aと壁面2とで囲まれて屋外に露出しない構造のインナーバルコニーや、いわゆるサンルームなどにサッシ枠7を取り付ける際に用いられる。
【0014】
サッシ枠7は開口枠部3に内嵌されている。固定プレート10は、サッシ枠7を開口枠部3に取り付けるために用いられている。固定プレート10は、一方の側面枠4と一方の縦枠8との間、他方の側面枠4と他方の縦枠8との間にそれぞれ設置されている。サッシ枠7にはガラス窓部17が装着される。この実施形態では、左右一対のガラス窓部17がサッシ枠7に装着されて左右にスライド可能になっている。ガラス窓部17はサッシ枠7とは別体であるので本発明の必須の構成部材ではない。尚、図中の矢印Lは固定プレート10(平面部11)の長手方向、矢印Wは固定プレート10(平面部11)の幅方向を示している。
【0015】
図5に例示するように、この取付け構造は、正面視で矩形形状の開口枠部3と、正面視で矩形形状のサッシ枠7と、固定プレート10とを有している。開口枠部3は、左右一対の側面枠4と上面枠5と下面枠6とを有していて、正面視で矩形形状である。開口枠部3は、壁面2に形成されている開口部の周縁を形成する公知の種々の仕様を用いることができる。したがって開口枠部3は、必要に応じてアルミニウム製、樹脂製、木製、或いは、これら複数種類の複合材などで形成される。
【0016】
サッシ枠7は、左右一対の縦枠8と上下一対の横枠9とを有していて、正面視で矩形形状である。サッシ枠7としては、公知の種々の仕様を用いることができる。したがってサッシ枠7は、必要に応じてアルミニウム製、樹脂製、木製、或いは、これら複数種類の複合材などで形成される。サッシ枠7には適宜の位置に、サッシ枠7を開口枠部3に固定するビス用の貫通穴7aが形成されている。
【0017】
図6図8に例示するように、それぞれの固定プレート10は、長方形の板状の平面部11と、平面部11の幅方向W一方端部で平面部11の厚さ方向に突出する係止部12と、シール材14およびシール片15とを有している。詳述すると、係止部12は、平面部11の表面11a側に突出して長手方向Lに延在している。係止部12と平面部11とは一体化されていて、金属(アルミニウム、アルミニウム合金、炭素鋼など)、硬質樹脂などの剛性材で形成されている。
【0018】
この実施形態では係止部12は、平面部11に対して断面視で直交して突出している。この係止部12は、長手方向Lに延在する断面T字状の取付け溝13を有している。係止部12および取付け溝13は、平面部11の全長に渡って延在している。係止部12はシール片15を取り付けることができればよいので、シール片15と係止部12とシール片15とが接着剤などで接合されるのであれば取付け溝13は不要になる。
【0019】
シール材14は、それぞれの固定プレート10の裏面11bに取り付けられている。シール材14は、圧縮可能な公知の加硫ゴム(ブチルゴム、シリコーンゴムなど)やエラストマ等の軟質材で形成されていて、気泡が内在する発泡体でも気泡が内在しない中実体でもよい。シール材14は非圧縮状態または圧縮された状態で、水分を遮断する水密性を有している。シール材14は平面部11の全長に渡って延在している。
【0020】
シール材14の幅(幅方向Wの寸法)は、例えば平面部11の幅方向Wの寸法の10%以上、厚さは例えば2mm以上20mm以下程度である。この実施形態では、1本の帯状のシール材14が延在しているが、例えば、複数本のシール材14を幅方向Wに間隔をあけて配置してもよく、或いは、裏面11bのほぼ全範囲を覆うシール材14を用いることもできる。
【0021】
係止部12には幅方向W他方側に突出して長手方向Lに延在するシール片15が取付けられている。シール片15は、圧縮可能な公知の加硫ゴム(ブチルゴム、シリコーンゴムなど)やエラストマ等の軟質材で形成されている。シール片15は、気泡が内在する発泡体を採用することもできるが、気泡が内在しない中実体が好ましい。シール片15は非圧縮状態または圧縮された状態で、水分を遮断する水密性を有している。シール片15は平面部11の全長に渡って延在している。
【0022】
この実施形態では、断面T字状のシール片15が取付け溝13に着脱自在になっていて、取付け溝13に嵌合して取付けられている。詳述すると、図9(A)に例示するように、シール片15は、平板状の基端部15aと、基端部15aに対して直交する帯状のヒレ部15bとを有している。ヒレ部15bは幅方向W他方側に突出していて突出先端側が先細になっている。ヒレ部15bの係止部12からの突出長さhは適宜設定され、例えば5mm~20mm程度より好ましくは6mm以上15mm以下程度である。ヒレ部15bの厚さは例えば1mm~3mm程度である。
【0023】
シール片15は様々な形状を採用することでき、図9(B)に例示するシール片15を用いることができる。このシール片15は、断面H字状になっていてヒレ部15bの先端が平板状である。このシール片15も取付け溝13に着脱自在になっていて、取付け溝13に嵌合して取付けられる。単純に長手方向Lに延在する帯状のヒレ部15bを採用して、係止部12に接着剤などで接合することもできる。
【0024】
開口枠部3の側面枠4の高さ(開口枠部3の開口高さの内寸)と、固定プレート10の全長とは実質的に同じになっている。また、サッシ枠7は開口枠部3に過不足なく嵌合するサイズになっているので、サッシ枠7の高さ(それぞれの縦枠8の全長)は、開口枠部3の側面枠4の高さ(開口枠部3の開口高さの内寸)に対して若干小さい程度である。したがって、開口枠部3の側面枠4の高さ(開口枠部3の開口高さの内寸)と、固定プレート10の全長と、サッシ枠7の高さ(それぞれの縦枠8の全長)とは、概ね同じ寸法である。
【0025】
図1図4に例示するように、この取付け構造では、それぞれの固定プレート10が対向するそれぞれの側面枠4に固定されている。それぞれの固定プレート10の裏面11bが開口枠部3の左右の側面枠4の表面に対向している。それぞれの固定プレート10の係止部12は、その固定プレート10が固定されている側面枠4の表面での屋外側に配置されていて上下に延在した状態になっている。
【0026】
そして、図4に例示するように、それぞれの固定プレート10の裏面11bとそれぞれの側面枠4の表面との間でシール材14が圧縮されている。それぞれの固定プレート10とそれぞれの側面枠4とは両者の間で圧縮されているシール材14によって水密に接合されている。
【0027】
また、図4に例示するように、開口枠部3に内嵌されているサッシ枠7のそれぞれの縦枠8の屋外側端8aと、それぞれの固定プレート10の係止部12とで、それぞれのシール片15(ヒレ部15b)が挟まれている。この実施形態では、それぞれのヒレ部15bが屋外側端8aと係止部12とに挟まれることで、その係止部12を有する固定プレート10の表面11a側に向かって屈曲した状態になっている。それぞれの縦枠8とそれぞれの固定プレート10とは、両者の間でこのようにシール片15(ヒレ部15b)を挟むことにより、この挟まれているシール片15(ヒレ部15b)によって水密に接合されている。
【0028】
この取付け構造は、本発明のサッシ枠の取付け方法を用いて構築されるので、この取付け方法の手順の一例を以下で説明する。
【0029】
図10に例示するように、シール材14およびシール片15が予め取り付けられているそれぞれの固定プレート10を、屋内作業によって、対応するそれぞれの側面枠4の表面に固定する。詳述すると、それぞれの固定プレート10の裏面11bを、壁面に2に形成されている開口枠部3の側面枠4の表面に対向させ、それぞれの固定プレート10の係止部12は、それぞれの固定プレート10を対向させた側面枠4での屋外側に配置して上下に延在させた状態にする。
【0030】
このように固定プレート10を側面枠4に対して所定の位置にセットした後、貫通穴10aにビス16を挿入し、それぞれの固定プレート10をそれぞれの側面枠4にビス16によって固定する。これにより、シール材14は、裏面11bと側面枠4との間で圧縮された状態になり、それぞれの固定プレート10の裏面11bとそれぞれの側面枠4とがそれぞれのシール材14により水密に接合される。開口枠部3の開口内側には、屋外側で係止部12(シール片15)が突出して上下に延在した状態になる。
【0031】
次いで、図11図12に例示するように、サッシ枠7を屋内側から開口枠部3に挿入する。開口枠部3の開口内側には、係止部12が突出しているので、サッシ枠7を屋内側から開口枠部3に挿入すると、それぞれの縦枠8の屋外側端8aは対応するそれぞれのシール片15(ヒレ部15b)に先端側から当接する。ヒレ部15bは、当接した屋外側端8aによって押圧されることで弾性変形して徐々に屈曲する。
【0032】
サッシ枠7をさらに屋外側に挿入すると、図4に例示するように、それぞれの係止部12が、それぞれの縦枠8の屋外側端8aにシール片15を介在させて係止して、それぞれの係止部12と屋外側端8aによってヒレ部15bが挟まれる。即ち、それぞれの係止部12がストッパとして機能して、サッシ枠7は開口枠部3に対して適切な挿入深さで配置される。
【0033】
このようにサッシ枠7を開口枠部3に対して適切な挿入深さにセットした後、貫通穴7aにビス16を挿入する。これにより、それぞれの縦枠8の屋外側端8aと、それぞれの固定プレート10の係止部12とで、それぞれのシール片15を挟んだ状態にして、それぞれの縦枠8と対向するそれぞれの固定プレート10とを連結してサッシ枠7を開口枠部3に固定する。それぞれの縦枠8とそれぞれの係止部12とは、両者の間に介在するシール片15(ヒレ部15b)よって水密に接合される。その結果、図1図4に例示する取付け構造が構築される。一対のガラス窓部17は、サッシ枠7を開口枠部3に取り付けた後に、サッシ枠7に装着する。
【0034】
本発明によれば上述したように、それぞれの固定プレート10をそれぞれの側面枠4の表面に固定する固定作業を屋内側から容易に行うことができる。また、サッシ枠7を開口枠部3に挿入して固定する作業も屋内側から容易に行うことができる。そして、一方の側面枠4と一方の縦枠8との間、他方の側面枠4と他方の縦枠8との間のそれぞれを、シール材14およびシール片15によって水密に接合することができる。
【0035】
戸建住宅1の施工ではビルなどの施工とは異なり、大掛かりな装置が使用できないため、高所での作業を人力に大きく依存する。この実施形態によれば、屋内側の作業によって、サッシ枠7を開口枠部3に対してシール性を確保して取り付けできる。それ故、開口枠部3が戸建住宅1の2階以上の高所に位置していても、屋外の足場や梯子などの上での不安定な作業を不要にできる。一方の側面枠4と一方の縦枠8との間、他方の側面枠4と他方の縦枠8との間のそれぞれに、屋外側から別途、シーリング材を充填する作業を省略することも可能になる。このように、不安定な高所での重労働を回避できるので、作業の大幅な軽労化には有利になる。
【0036】
熟練の作業者でなくても、サッシ枠7を開口枠部3に、規定どおり取り付けることができるので当業者にとっては非常に有益である。さらには、一人作業でサッシ枠7を開口枠部3に取り付けることも可能になり、また、屋内側の作業で済むので天候に左右されずに取付け作業を行なうことができる。この点についても当業者にとって大きなメリットになる。
【0037】
開口枠部3の上面枠5とサッシ枠7の上端面(上側の横枠9の上面)との間、下面枠6とサッシ枠7の下端面(下側の横枠9の下面)との間のそれぞれは、屋根1aの軒先よりも屋内側に後退した位置にあり、かつ、これらの間でのそれぞれのすき間は水平方向に延在しているので、厳密に水密性を確保することは必須ではない。しかし、図11に例示するように、サッシ枠7の上端面(上側の横枠9の上面)および下端面(下側の横枠9の下面)にも、シール材14と同様のシール材14aを横枠9の全長に渡って延在させて取り付けておくとよい。これにより、上面枠5とサッシ枠7の上端面との間、下面枠6とサッシ枠7の下端面との間のそれぞれに、シール材14aが圧縮された状態で介在する。その結果、上面枠5とサッシ枠7の上端面との間、下面枠6とサッシ枠7の下端面との間のそれぞれは、介在するシール材14aによって水密に接合することができる。
【0038】
図4に例示するシール片15では、ヒレ部15bが、ヒレ部15bを挟んでいる係止部12の固定プレート10の表面11a側に向かって屈曲しているので、シール片15に太陽光の紫外線が直接照射されることがない。それ故、シール片15を長期に渡って健全に維持するには有利になる。
【0039】
図13に例示するように、それぞれのシール片15(ヒレ部15b)が、縦枠8の屋外側端8aと固定プレート10の係止部12とに挟まれて、その固定プレート10の表面11a側とは反対側に向かって屈曲した状態にすることもできる。このシール片15では、ヒレ部15bが屋外側端8aと係止部12と間から外部まで延在している。そのため、屋外側端8aと係止部12とのすき間に雨水などが進入することが防止される。その結果、固定プレート10やサッシ枠7の腐食防止や、下方の壁面2に雨垂れ跡が付着することを抑制するには有利になる。
【0040】
尚、図9(A)に例示するシール片15では、屋外側端8aと係止部12とに挟まれたヒレ部15bが、図4に例示する向きに屈曲するのか、図13に例示する向きに屈曲するのか定まらない。そこで、図4図13とに例示されているヒレ部15bの屈曲の向きのいずれか一方の所望の方向にヒレ部15が確実に屈曲するように、基端部15aに対してヒレ部15bを断面視でいずれか一方の所望の方向に予め傾けて形成しておくとよい。
【0041】
図9(B)に例示するシール片15を用いると、ヒレ部15bが屋外側端8aと係止部12とに単純に挟まれて圧縮されるだけで屈曲しない。そのため、シール片15(ヒレ部15b)に対する負荷を軽減できるメリットがある。一方で、このシール片15では、開口枠部3に対するサッシ枠7の挿入深さの調整は、ヒレ部15bの圧縮変形量の範囲内になるので、その調整代が小さくなる。また、開口枠部3やサッシ枠7の多少の歪みなどに起因して、開口枠部3にサッシ枠7を挿入した際に、左右それぞれの縦枠8(屋外側端8a)とこれに対向する係止部12とのすき間が、左右で均等にならないことがある。この場合は、左右のいずれか一方側で、縦枠8(屋外側端8a)と係止部12との間でシール片15によるシール性を確保し難くなることがある。
【0042】
図9(A)に例示するシール片15を用いると、開口枠部3に対するサッシ枠7の挿入深さの調整は、ヒレ部15bの屈曲変形量と圧縮変形量との合計の範囲内になるので、調整代を大きくできるメリットがある。また、左右それぞれの縦枠8(屋外側端8a)とこれに対向する係止部12とのすき間が、左右で均等でなくても、ヒレ部15bの先端が屋外側端8aに当接してある程度押圧されていれば、縦枠8(屋外側端8a)と係止部12との間のシール性を確保できる。それ故、開口枠部3やサッシ枠7に多少の歪みがあってもシール性を確保するには有利になる。また、開口枠部3にサッシ枠7を取り付けた後に、地震などに起因して開口枠部3やサッシ枠7に多少の歪みが生じても、シール片15(ヒレ部15b)が弾性変形することで縦枠8(屋外側端8a)と係止部12との間のシール性を維持することができるメリットもある。
【0043】
この実施形態では、シール片15の基端部15aが取付け溝13に対して長手方向Lにスライドして着脱自在になっている。したがって、取り付けるサッシ枠7の仕様に応じて、サッシ枠7(屋外側端8a)と係止部12との間で十分なシール性を確保できる適切なシール片15を係止部12に取り付けて使用することができる。即ち、サッシ枠7の仕様に応じて、係止部12からの突出長さhが、十分なシール性を確保できる所望範囲のシール片15を選択して使用する。十分なシール性を確保できる突出長さhの所望範囲は、事前テストなどによって予め把握しておく。
【0044】
尚、本発明は、戸建住宅1の2階よりも下方の取付け位置に形成されている開口枠部3にサッシ枠7を取り付ける場合にも適用することができる。この場合は、高所での作業は必要ないが上述した実施形態と同様に、屋内側の作業によってサッシ枠7を開口枠部3にシール性を確保して取り付けることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 戸建住宅
1a 屋根
2 壁面
3 開口枠部
4 側面枠(側面)
5 上面枠
6 下面枠
7 サッシ枠
7a 貫通穴
8 縦枠
8a 屋外側端
9 横枠
10 固定プレート
10a 貫通穴
11 平面部
11a 表面
11b 裏面
12 係止部
13 取付け溝
14、14a シール材
15 シール片
15a 基端部
15b ヒレ部
16 ビス
17 ガラス窓部
【要約】
【課題】戸建住宅の2階以上の高所にシール性を確保してサッシ枠を取付ける際に、作業を軽労化できるサッシ枠の取付け方法および取付け構造を提供する。
【解決手段】屋内作業によって、各固定プレート10の裏面11bを開口枠部3の左右の側面枠4に対向させて、固定プレート10の幅方向一方端部で表面側に突出する係止部12を、対向させた側面枠4での屋外側に配置して上下に延在させた状態で、各固定プレート10を各側面枠4の表面に固定して、各固定プレート10の裏面11bと各側面枠4との表面をシール材14により水密に接合し、次いでサッシ枠7を屋内側から開口枠部3に挿入して各縦枠8と各固定プレート10とを連結して、各縦枠8と各係止部12とをシール片15により水密に接合する。
【選択図】図11
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13