(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】分電盤用キャビネット、及び分電盤
(51)【国際特許分類】
H02B 1/40 20060101AFI20230728BHJP
H02B 1/42 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
H02B1/40 A ZJE
H02B1/42
(21)【出願番号】P 2018196042
(22)【出願日】2018-10-17
【審査請求日】2021-02-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 博
(72)【発明者】
【氏名】末富 貴博
(72)【発明者】
【氏名】塩川 明実
(72)【発明者】
【氏名】田中 修平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 晋治
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】吉田 昌弘
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-088773(JP,A)
【文献】特開2018-007324(JP,A)
【文献】特開2013-084076(JP,A)
【文献】特開2016-185020(JP,A)
【文献】特開平05-091616(JP,A)
【文献】特開2008-125259(JP,A)
【文献】特開2015-019520(JP,A)
【文献】国際公開第2008/065904(WO,A1)
【文献】特開2011-015313(JP,A)
【文献】特開2009-259440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーカを収容し、造営材に設けられた取付孔に全体が取り付けられる本体と、
前記ブレーカの状態に応じて、発光部から天井面、床面及び壁面の少なくとも一つに光を投影することによって前記本体の存在を通知させる通知制御部と、を備え、
前記通知制御部は、前記ブレーカの状態が異常である場合、及び、前記ブレーカの状態が正常である場合に、前記発光部からの前記光により、前記ブレーカの状態に関する状態情報を前記本体の外部に通知させる、
分電盤用キャビネット。
【請求項2】
前記状態情報は、前記ブレーカが電気的に接続された電路に流れる電流が電流閾値を超えたか否かを示す情報を含む、
請求項1に記載の分電盤用キャビネット。
【請求項3】
前記状態情報は、前記ブレーカの周囲環境に関する環境情報を含み、
前記環境情報を検知するセンサを、更に備える、
請求項1又は2に記載の分電盤用キャビネット。
【請求項4】
前記通知制御部は、前記ブレーカの状態に関する状態情報及び前記本体の存在のうち少なくとも一方を、音出力部から音により通知させる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の分電盤用キャビネット。
【請求項5】
前記通知制御部は、電磁波を媒体とした信号により通知させる、
請求項1~4のいずれか1項に記載の分電盤用キャビネット。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の分電盤用キャビネットと、
前記分電盤用キャビネットに収容される前記ブレーカと、を含む、
分電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分電盤用キャビネット、及び分電盤に関する。より詳細には、本開示は、ブレーカを収容する分電盤用キャビネット、及び分電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、箱型のキャビネット(本体)を備えた分電盤が知られており、例えば特許文献1に開示されている。キャビネットの内部には、内器として主幹開閉器と複数の分岐開閉器とが収納されている。キャビネットには、内扉がヒンジを介して開閉可能に取り付けられている。内扉には、主幹開閉器及び分岐開閉器のハンドルをそれぞれ露出させる窓孔が設けられている。また、キャビネットには、外扉(蓋体)がヒンジを介して開閉可能に取り付けられている。外扉が閉じた状態では外扉が内扉を覆い、外扉が開いた状態では内扉が露出している。
【0003】
特許文献1に開示された分岐開閉器(ブレーカ)は、分電盤に設けられた接地端子に電気的に接続される接続端子と、表示部とを備えている。表示部は、接続端子が接地端子に電気的に接続されている第1状態では第1表示態様となり、接続端子が接地端子に電気的に接続されていない第2状態では第2表示態様となる。したがって、ユーザは、表示部の表示態様に基づいて、接続端子が接地端子に電気的に接続されているか否かを確認できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献に開示された分電盤では、分岐開閉器の表示部がキャビネットの内扉で覆われているため、内扉が閉じている状態では分岐開閉器の状態を目視で確認するのが難しく、利便性が悪かった。
【0006】
本開示の目的は、利便性の向上を図ることができる分電盤用キャビネット、及び分電盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の分電盤用キャビネットは、本体と、通知制御部とを備える。前記本体は、ブレーカを収容し、造営材に設けられた取付孔に全体が取り付けられる。前記通知制御部は、前記ブレーカの状態に応じて、発光部から天井面、床面及び壁面の少なくとも一つに光を投影することによって前記本体の存在を通知させる。前記通知制御部は、前記ブレーカの状態が異常である場合、及び、前記ブレーカの状態が正常である場合に、前記発光部からの前記光により、前記ブレーカの状態に関する状態情報を前記本体の外部に通知させる。
【0008】
本開示の一態様の分電盤は、前記分電盤用キャビネットと、前記分電盤用キャビネットに収容される前記ブレーカと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、利便性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る分電盤用キャビネットを備えた分電盤のブロック図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係る分電盤用キャビネットを備えた分電盤において蓋体が開いた状態の正面図である。
【
図3】
図3は、同上の分電盤用キャビネットを備えた分電盤において蓋体が開いた状態の側面図である。
【
図4】
図4は、同上の分電盤用キャビネットを備えた分電盤において蓋体が閉じた状態の正面図である。
【
図5】
図5は、同上の分電盤用キャビネットを備えた分電盤において蓋体が閉じた状態の側面図である。
【
図6】
図6は、同上の分電盤用キャビネットを備えた分電盤において蓋体及びカバーが外された状態を正面から見た説明図である。
【
図7】
図7は、本開示の一実施形態の変形例1に係る分電盤用キャビネットを備えた分電盤の使用状態を説明する説明図である。
【
図8】
図8は、本開示の一実施形態の変形例2に係る分電盤用キャビネットを備えた分電盤を含む通知システムのブロック図である。
【
図9】
図9は、同上の分電盤用キャビネットを備えた分電盤を含む通知システムに用いられる通信端末の表示画面の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に説明する実施形態は、本開示の種々の実施形態の一つに過ぎない。本開示の実施形態は、下記実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外も含み得る。また、下記の実施形態は、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0013】
(実施形態)
(1)概要
本実施形態の分電盤用キャビネット10は、本体11(
図2~
図5参照)と、通知制御部74(
図1参照)とを備える。
【0014】
本体11は、ブレーカ2を収容し、取付位置に取り付けられる。
【0015】
通知制御部74は、ブレーカ2の状態に応じて、ブレーカ2の状態に関する状態情報及び本体11の存在のうち少なくとも一方を、通知部75から本体11の外部に通知させる。
【0016】
本実施形態の分電盤1は、分電盤用キャビネット10と、分電盤用キャビネット10に収容されるブレーカ2と、を含む。
【0017】
以下の説明では、特に断りがない限り、
図2~
図5においてX軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向(奥行き方向)、Z軸方向を上下方向と規定する。さらに、X軸方向の正の向きを右側、Y軸方向の正の向きを前側、Z軸方向の正の向きを上側と規定する。ただし、これらの方向は一例であり、分電盤用キャビネット10及び分電盤1の使用時の方向を限定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0018】
本体11が取り付けられる取付位置は、例えば、分電盤用キャビネット10が設置される建物(戸建住宅、集合住宅の住戸、テナントビル等)内の部屋の壁100である。なお、取付位置は建物内の部屋の壁100に限定されず、部屋の天井又は床等の造営材でもよい。
【0019】
状態情報とは、例えば、ブレーカ2が電気的に接続された電路に流れる電流の計測結果に基づいて、ブレーカ2の状態が判定された判定結果を示す情報を含む。また、状態情報は、例えば、ブレーカ2の状態に関連する環境情報を検出するセンサ9から取得する取得情報に基づいて、ブレーカ2の状態が判定された判定結果を示す情報を含む。ここにおいて、センサ9は、本体11の内部に収容されていてもよいし、ブレーカ2の内部に収容されていてもよい。センサ9によって検出される環境情報は特に限定されない。以下では、一例として、環境情報が、ブレーカ2の周囲の温度であることを想定する。すなわち、分電盤用キャビネット10は、一例として、分電盤用キャビネット10の内部の温度を測定する温度センサであるセンサ9を備える。なお、センサ9は温度センサに限定されない。センサ9は、例えば、環境情報としてブレーカ2に加わる加速度を検知する加速度センサでもよく、加速度センサにより地震等の発生を検知することができる。また、センサ9は、環境情報として水の有無を検知する水検知センサでもよく、水検知センサにより洪水等の水害、又は漏水等の事故の発生を検知することができる。
【0020】
通知部75は、状態情報及び本体11の存在のうち少なくとも一方を、音と光との少なくとも一方で通知するものでもよい。通知部75は、通知部75自体が分電盤1のユーザに対して通知を行うものに限定されず、状態情報及び本体11の存在のうち少なくとも一方を、電磁波(電波又は光等)を媒体とする信号で通信端末に送信することで、通信端末からユーザに通知させるものでもよい。
【0021】
ところで、分電盤用キャビネット10及び分電盤1において、例えばブレーカ2の状態に何らかの変化があった場合、分電盤1のユーザは、ブレーカ2の状態、又は当該ブレーカ2の位置(つまりは分電盤用キャビネット10の位置)を知りたいという要望がある。これに対して、分電盤用キャビネット10は、本体11に収容されたブレーカ2の状態に応じて、状態情報及び本体11の存在のうち少なくとも一方を、通知部75から本体11の外部に通知させる通知制御部74を備える。そのため、ユーザは、例えばブレーカ2の状態、又はブレーカ2の位置(つまり、分電盤用キャビネット10の位置)を、容易に知ることができるため、利便性の向上を図ることができる。
【0022】
以下の「(2)詳細」の欄では、通知制御部74が、通知部75から本体11の外部に状態情報を通知させる場合を主に説明し、「(3)変形例」の欄では、通知制御部74が、通知部75から本体11の外部に本体11の存在を通知させる場合を主に説明する。
【0023】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る分電盤用キャビネット10及び分電盤用キャビネット10を備える分電盤1について
図1~
図6を参照して説明する。
【0024】
(2.1)構成
分電盤用キャビネット10は、上述のように、本体11と、通知制御部74とを備えている。本実施形態の分電盤用キャビネット10は、
図6に示すように、ブレーカ2と、電流計測装置5と、計測アダプタ6と、を更に備えている。また、本実施形態の分電盤用キャビネット10は、
図1に示すように、通知部75と、センサ9と、を更に備えている。ここで、ブレーカ2は、主幹ブレーカ3と、複数の分岐ブレーカ4とを含んでいる。なお、分電盤1の分電盤用キャビネット10には少なくともブレーカ2と通知制御部74とが収容されていればよく、分電盤用キャビネット10が、電流計測装置5、計測アダプタ6、及びセンサ9を収容することは必須ではなく、適宜省略が可能である。また、分電盤用キャビネット10が通知部75を収容することは必須ではなく、通知部75は本体11の外部に設けられていてもよい。
【0025】
分電盤用キャビネット10の本体11は、前面が開口した箱状のボディ12と、ボディ12の開口を塞ぐカバー13と、を備えている。
図6においては、カバー13の図示を省略している。分電盤用キャビネット10の本体11は、造営材(例えば建物の壁100)に設けられた取付孔102に全体が埋め込まれた状態で取り付けられている。分電盤用キャビネット10の本体11は、例えば、平均的な身長の子供では手が届かないような高さ位置であって、平均的な身長の大人であれば操作が可能なような高さ位置に設けられている。
【0026】
また、分電盤用キャビネット10は、本体11が壁100に取り付けられた状態での本体11の前面(つまりカバー13の前面130)を覆う蓋体14を更に備える。蓋体14は、閉位置と開位置との間で移動可能な状態で本体11に取り付けられる。閉位置は本体11の前面を覆う位置(
図4及び
図5に示す位置)であり、開位置は本体11の前面の少なくとも一部を覆わない位置(
図2及び
図3に示す位置)である。なお、蓋体14は、ある方向から本体11を見た場合に本体11の一部を覆っていればよく、本実施形態では、閉位置にある蓋体14は、本体11を前方から見た場合に本体11の前面の一部を覆っている。
【0027】
分電盤用キャビネット10の本体11の内部には、主幹ブレーカ3、複数の分岐ブレーカ4、電流計測装置5、計測アダプタ6、センサ9、通知制御部74、及び通知部75が収容されている。主幹ブレーカ3、複数の分岐ブレーカ4、電流計測装置5、計測アダプタ6、センサ9、通知制御部74、及び通知部75は、ボディ12に直接又は取付用の金具等を介して取り付けられている。
図6は、本体11における主幹ブレーカ3、複数の分岐ブレーカ4、電流計測装置5、及び計測アダプタ6の配置を示している。なお、
図6では、センサ9、通知制御部74、及び通知部75の図示は省略している。
図6の例では、本体11の内部において、計測アダプタ6、主幹ブレーカ3、複数の分岐ブレーカ4は、左右方向において左からこの順に配置されている。
【0028】
主幹ブレーカ3は、本体11の内部において、左右方向の中央よりもやや左側の位置に配置されている。なお、本体11内での主幹ブレーカ3の位置は、例えば中央よりも右側等、他の位置であってもよい。主幹ブレーカ3は、一次側端子31と、二次側端子と、を備えている。主幹ブレーカ3は、一次側端子31と二次側端子との間の電路に接続された接点32(
図1参照)を備える。主幹ブレーカ3は、接点32をオン又はオフにするための操作レバー33を前面に備えている。また、主幹ブレーカ3は、例えば接点32に漏電電流又は過負荷電流等の過電流が流れる異常状態を検知すると、異常時に接点32を遮断する遮断部34(
図1参照)を備えている。
【0029】
本実施形態の分電盤1では、配電方式として単相三線式を想定しているので、主幹ブレーカ3の一次側端子31には、系統電源(商用電源)の単相三線式の引込線200が電気的に接続される。本実施形態では、ボディ12に配置された接続端子124に引込線200が電気的に接続されており、接続端子124と主幹ブレーカ3の一次側端子31との間は配線部材125を介して電気的に接続されている(
図6参照)。なお、分電盤用キャビネット10に接続端子124及び配線部材125が備えられていることは必須ではなく、引込線200が主幹ブレーカ3の一次側端子31に直接接続されていてもよい。
【0030】
また、主幹ブレーカ3の二次側端子には、第1電圧極(L1相)の導電バー、第2電圧極(L2相)の導電バー、及び中性極(N相)の導電バーが接続されている。各導電バーは、導電部材により左右方向に長い長尺板状に形成されており、本体11の内部において、上下方向の中央であって主幹ブレーカ3の右側の位置に配置されている。
【0031】
複数の分岐ブレーカ4は、各導電バーの上側と下側とに分かれて、それぞれ複数個ずつ左右方向に並ぶように配置されている。本実施形態では、
図6に示すように、各導電バーの上側には、12個の分岐ブレーカ4が左右方向に並ぶように配置されている。また、各導電バーの下側には、12個の分岐ブレーカ4が左右方向に並ぶように配置されている。
【0032】
各分岐ブレーカ4は、一対の一次側端子と、一対の二次側端子と、を備えている。各分岐ブレーカ4は、一次側端子と二次側端子との間に電気的に接続される接点を有している。各分岐ブレーカ4の前面には、接点をオン又はオフにするための操作レバー41が設けられている。
【0033】
分岐ブレーカ4には、100V用と200V用とがある。100V用の分岐ブレーカ4が備える一対の一次側端子は、第1電圧極の導電バー及び第2電圧極の導電バーのうちの一方と、中性極の導電バーとにそれぞれ電気的に接続される。200V用の分岐ブレーカ4が備える一対の一次側端子は、第1電圧極の導電バーと、第2電圧極の導電バーとにそれぞれ電気的に接続される。また、分岐ブレーカ4の二次側端子には、対応する配線が電気的に接続される。各分岐ブレーカ4の二次側端子に接続された配線には、例えば、照明器具、空調機器、テレビ受像器、給湯設備等の機器、コンセント(アウトレット)7(
図1参照)又は壁スイッチ等の配線器具が負荷として1つ以上接続される。
【0034】
ここで、
図6に示すように、ブレーカ2を収容するボディ12の底壁には、底壁を前後方向に貫通する貫通孔121が設けられており、本体11の外部から貫通孔121を通して本体11の内部に導入された電線がブレーカ2等に電気的に接続される。また、ボディ12の上部の周壁122には、周壁122を上下方向に貫通する貫通孔123が設けられている。換言すると、本体11は、ブレーカ2に接続される電線を、前後方向と交差する一方向(本実施形態では上下方向)に沿って本体11の外部から内部に導入させるための電線挿入口となる貫通孔123を有している。なお、電線挿入口は、ボディ12の下部の周壁122に設けられてもよいし、ボディ12の右側部又は左側部の周壁122に設けられていてもよいし、周壁122の複数箇所に電線挿入口が設けられていてもよい。
【0035】
本実施形態の分電盤用キャビネット10は、例えば、壁100に設けられた取付孔102に本体11の全体が埋め込まれた状態で取り付けられているので、本体11の後部のみが壁100に埋め込まれている場合に比べて、本体11の後側の空間が狭くなる。本実施形態では、ボディ12の上部の周壁122に貫通孔123が設けられているので、
図6に示すように、本体11の上側から、貫通孔123を通して、本体11の内部に引込線200を挿入することができる。したがって、ボディ12の後側の空間が狭い場合でも、施工業者等は、分電盤1に収納されたブレーカ2等に電線を接続する作業を容易に行うことができる。
【0036】
また、本実施形態の分電盤用キャビネット10は、接続端子124と、配線部材125とを更に備えている(
図6参照)。接続端子124には、本体11の外部から導入される電線(引込線200)が電気的に接続される。配線部材125は、本体11(具体的にはボディ12)に配置されて、接続端子124とブレーカ2(
図6の例では主幹ブレーカ3)との間を電気的に接続する。配線部材125は、導電部材により幅寸法が一定の板状に形成されている。接続端子124とブレーカ2との間が配線部材125を介して電気的に接続されているので、ブレーカ2に接続される電線を本体11の内部で曲げるためのスペースを確保する必要がない、という利点がある。本実施形態では、配線部材125は、接続端子124と主幹ブレーカ3との間を電気的に接続しているが、本体11には、接続端子と分岐ブレーカ4との間を電気的に接続する配線部材が配置されてもよい。なお、分電盤用キャビネット10が、接続端子124と配線部材125とを備えることは必須ではなく、本体11の外部から本体11の内部に導入された電線がブレーカ2(主幹ブレーカ3又は分岐ブレーカ4)に直接接続されてもよい。
【0037】
電流計測装置5は、複数の分岐ブレーカ4の各々に接続された負荷に流れる電流を計測するように構成されている。電流計測装置5は、例えば、基板と、複数のコイルと、を有している。基板は、左右方向に長い板状である。基板には、複数の孔が形成されている。複数の孔には、導電バーから延びて分岐ブレーカ4の一次側端子に接続される端子がそれぞれ挿入される。コイルは、例えばロゴスキコイルであり、基板の孔の周りに形成されている。本実施形態では、電流計測装置5は、複数の分岐ブレーカ4の各々に流れる電流を計測する。なお、電流計測装置5はロゴスキコイルを有するものに限定されず、例えば、変流器(カレントトランス)、ホール素子、GMR(Giant Magnetic Resistances)素子等の磁気抵抗素子、シャント抵抗等のセンサを有するものでもよい。
【0038】
計測アダプタ6は、本体11の内部において、主幹ブレーカ3の左側に配置されている。計測アダプタ6は、分電盤1内の主幹ブレーカ3及び分岐ブレーカ4の少なくとも一方を通過する電力を計測する計測機能、及び本体11の外部に配置された機器と通信する通信機能を有している。
【0039】
より詳しくは、本実施形態の計測アダプタ6は、主幹ブレーカ3に流れる電流を計測する主幹電流計測装置、及び電流計測装置5と電気的に接続されている。ここに、主幹電流計測装置は、例えばカレントトランス(CT)からなる電流センサを備えている。そして、計測アダプタ6は、電流計測装置5及び主幹電流計測装置が計測した電流の値に基づいて電力値を演算する機能(計測機能)を有している。
【0040】
また、計測アダプタ6は、HEMS(Home Energy Management System)に対応する機器(以下、HEMS対応機器という)の制御又は監視を行うように構成されたコントローラとの間で通信する機能(通信機能)を有している。コントローラは、本体11の外部に配置された機器である。ここに、HEMS対応機器は、例えばスマートメータ、太陽光発電装置、蓄電装置、燃料電池、電気自動車、エアコン、照明器具、給湯装置、冷蔵庫、又はテレビ受像機等を含む。なお、HEMS対応機器は、これらの機器に限定されない。
【0041】
計測アダプタ6とコントローラとの間の通信方式は、例えば、920MHz帯の特定小電力無線局(免許を要しない無線局)、Wi-Fi(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の通信規格に準拠した、電波を媒体とした無線通信である。計測アダプタ6とコントローラとの間の通信方式は、有線LAN(Local Area Network)等の通信規格に準拠した有線通信であってもよい。また、計測アダプタ6とコントローラとの間の通信における通信プロトコルは、例えば、Ethernet(登録商標)、ECHONET Lite(登録商標)等である。
【0042】
本実施形態の分電盤1では、計測アダプタ6は、電流計測装置5が計測した複数の分岐ブレーカ4の各々に流れる電流値を、電流計測装置5から受け取る。さらに、計測アダプタ6は、主幹電流計測装置が計測した電流値を主幹電流計測装置から受け取る。計測アダプタ6は、電流計測装置5、及び主幹電流計測装置が計測した電流値のそれぞれを電力値(瞬時電力値)に変換する。計測アダプタ6は、収集した瞬時電力のデータを所定時間に亘って積算した電力量のデータを演算する機能を有している。したがって、計測アダプタ6と通信するコントローラは、複数の分岐ブレーカ4に接続された複数の負荷の各々での瞬時電力や電力量に基づいてHEMS対応機器を制御又は監視することができる。
【0043】
また、計測アダプタ6は、太陽光発電装置、蓄電装置、及び電気自動車に電気的に接続される電力変換装置のうちの少なくとも1つとの間で通信する機能(通信機能)を有している。なお、電力変換装置は、分電盤1から電気自動車への単方向充電を行うための電力変換の他、双方向に電力変換を行うことで電気自動車の蓄電池の充電と放電との両方に用いられる構成であってもよい。
【0044】
また、計測アダプタ6は、ガスメータと水道メータとの少なくとも一方との通信機能を有している。計測アダプタ6と太陽光発電装置、蓄電装置、及び電力変換装置との間の通信方式は、例えば、RS-485等の通信規格に準拠した有線通信である。計測アダプタ6とガスメータ、水道メータとの間の通信方式は、有線通信に限らず、無線通信であってもよい。なお、計測アダプタ6は、例えば、貯湯型の給湯装置(エコキュート(登録商標))等と通信可能であってもよい。
【0045】
分電盤用キャビネット10の本体11は、壁100の取付孔102に本体11の全体が埋め込まれた状態で、壁100に取り付けられる。本体11は、例えば挟み金具を用いて、石膏ボードのような壁100を挟むことによって、壁100に固定されている。なお、本体11は、建物の躯体等に固定されたボルトを用いて壁100に固定されてもよい。
【0046】
ボディ12の開口は、後面が開口した箱状のカバー13によって覆われている。カバー13には、主幹ブレーカ3の操作レバー33を露出させるための窓孔131と、分岐ブレーカ4の操作レバー41を露出させるための窓孔132と、計測アダプタ6の操作ボタンを露出させるための窓孔133とが設けられている。したがって、ボディ12の開口にカバー13が取り付けられた状態では、カバー13の窓孔131,132,133から主幹ブレーカ3の操作レバー33、分岐ブレーカ4の操作レバー41、及び計測アダプタ6の操作ボタンが露出している。
【0047】
センサ9は、ブレーカ2の状態に関わる特定の事象として、ブレーカ2の周囲環境に関する環境情報(例えば温度、湿度、検知対象ガスのガス濃度等)を検出する。センサ9は、環境情報としてブレーカ2の周囲の温度、つまり本体11の内部の温度を検出する温度センサである。この種の温度センサとしてはサーモパイル、熱電対等がある。センサ9は、環境情報として温度の検出結果を通知制御部74に出力する。
【0048】
通知部75は、分電盤用キャビネット10に備えられている。通知部75は、ブレーカ2の状態に関する状態情報を、音と光とで通知する機能を有している。すなわち、通知部75は、
図2に示すように、発光部75Aと、音出力部75Bと、を備える。発光部75Aは、例えばLED等の発光素子を含み、本体11の前面(つまり、カバー13の前面130)に配置されている。発光部75Aは、状態情報を光により通知する。音出力部75Bは、例えば、電気信号を音に変換するスピーカ等を含む。音出力部75Bは、状態情報を音(通知音又は音声メッセージ)により通知する。ここで、状態情報としては、ブレーカ2が電気的に接続された電路に流れる電流が電流閾値を超えたか否かを示す情報(以下、電流異常情報ともいう)と、ブレーカ2の周囲環境(例えば温度、湿度、検知対象ガスのガス濃度等)に関する環境情報とがある。
【0049】
通知制御部74は、計測アダプタ6から電流の計測値の情報を取得しており、ブレーカ2が電気的に接続された電路に流れる電流が所定の電流閾値以下であれば正常状態であると判断し、電流閾値を超えると異常状態であると判断する。通知制御部74は、計測アダプタ6から取得した電流の計測値に基づいて異常状態であると判断すると、通知部75から本体11の外部に電流異常情報を通知させる。なお、通知制御部74は、計測アダプタ6から取得した電流の計測値に基づいてブレーカ2の状態を判断しているが、電流以外の情報に基づいてブレーカ2の状態を判断してもよく、例えば、ブレーカ2が接続された電路の電圧値、負荷に供給される電力(瞬時電力、又は電力量など)に基づいて、ブレーカ2の状態を判断してもよい。
【0050】
また、通知制御部74は、センサ9によって計測された温度が所定の使用温度範囲内であれば正常状態であると判断し、センサ9によって計測された温度が使用温度範囲外になると異常状態であると判断する。通知制御部74は、センサ9によって計測された温度に基づいて異常状態であると判断すると、通知部75から本体11の外部に環境情報を通知させる。
【0051】
本実施形態では、分電盤用キャビネット10の本体11には、本体11の前面を覆う蓋体14(
図2~
図5参照)が取り付けられている。
【0052】
蓋体14は矩形の板状であり、上下方向に移動可能なように、本体11に取り付けられている。壁100には、蓋体14が入り込む凹部103が取付孔102の下側に設けられている。取付孔102及び凹部103には、蓋体14の左右の端部が挿入されるガイド溝104が上下方向に沿って形成されている。蓋体14の前面141の上部には取っ手142が設けられている。カバー13の前面130には、上下方向に沿って延びる一対のガイド溝134が左右両側にそれぞれ形成されている。蓋体14の後面には、一対のガイド溝134にそれぞれ挿入される一対の突起143が設けられている。したがって、蓋体14は、突起143がガイド溝134に挿入され、蓋体14の左右の端部がガイド溝104に挿入された状態で、上下方向に移動可能な状態で本体11に取り付けられている。
【0053】
分電盤1のユーザ(例えば建物の使用者)が蓋体14の取っ手142を持って蓋体14を可動範囲の上端まで移動させると、例えば蓋体14の突起143が、ガイド溝134内の突起135に引っ掛かることで、蓋体14が可動範囲の上端に移動した状態で保持される。
図3及び
図4は蓋体14が可動範囲の上端に移動している状態を示し、蓋体14が可動範囲の上端に移動している状態では、蓋体14によって本体11の前面の全体が覆われている。つまり、蓋体14が可動範囲の上端に移動したときの位置が、蓋体14が本体11の前面を覆う閉位置となる。
【0054】
ここで、蓋体14に設けられた突起143は、例えば取っ手142の上面に設けられたボタンが下向きに押されると、前方に移動するように構成されている。蓋体14が閉位置に保持されている状態で、ユーザが取っ手142に設けられたボタンを下向きに押すと、突起143が前方に移動し、蓋体14の突起143が突起135と引っ掛かっている状態が解除されるので、蓋体14が自重によって下側へと移動する。これにより、蓋体14の左右の端部がガイド溝104にガイドされるとともに、突起143がガイド溝134にガイドされながら、蓋体14は下向きに移動する。ここで、蓋体14が急速に落下しないように、摩擦力等で蓋体14の落下速度を減速させるブレーキが設けられていてもよい。
図1及び
図2は蓋体14が可動範囲の下端に移動している状態を示し、蓋体14が可動範囲の下端に移動している状態では、蓋体14は、前方から見て本体11の前面の一部しか覆っておらず、本体11の前面の略全体が露出している。つまり、蓋体14が可動範囲の下端に移動したときの位置が、蓋体14が本体11の前面の少なくとも一部を覆わない開位置となる。蓋体14が開位置に移動している状態では、主幹ブレーカ3及び分岐ブレーカ4の操作レバー33,41、及び計測アダプタ6の操作ボタン等が露出しているので、ユーザは操作レバー33,41及び計測アダプタ6の操作ボタン等を操作することができる。
【0055】
ところで、蓋体14には、蓋体14が閉位置に移動している状態で発光部75Aの前方に位置する部位に、透光性を有する材料で形成されたレンズ部144(
図4参照)が設けられている。したがって、蓋体14が閉位置に移動している状態でも、発光部75Aの発光はレンズ部144を通して蓋体14の前方に出力される。また、蓋体14には、蓋体14が閉位置に移動している状態で音出力部75Bの前方に位置する部位に、蓋体14を前後方向に貫通する複数の貫通孔145が設けられている。したがって、蓋体14が閉位置に移動している状態でも、音出力部75Bからの出力音は複数の貫通孔145を通して蓋体14の前方に出力されるので、音出力部75Bからの出力音が蓋体14で遮られて、出力音の大きさが小さくなるのを抑制できる。
【0056】
(2.2)動作
以下、分電盤用キャビネット10の動作について説明する。
【0057】
通知制御部74は、例えば第1判定期間(数十秒から数分程度の時間)が経過するごとに計測アダプタ6から主幹電流の計測結果、及び各分岐ブレーカ4が接続された電路に流れる電流の計測結果を取得する。通知制御部74は、計測アダプタ6から取得した電流の計測結果と電流閾値との大小を比較し、電流の計測結果が電流閾値を超えると、異常状態であると判断する。ここで、電流閾値は、主幹電流及び各分岐ブレーカ4が接続された電路ごとに適宜の電流値に設定されていればよい。
【0058】
また、通知制御部74は、例えば第2判定期間(数十秒から数分程度の時間)が経過するごとにセンサ9から温度の計測結果を取得する。通知制御部74は、センサ9から取得した温度の計測結果が、使用温度範囲外になると異常状態であると判断する。第1判定期間と第2判定期間とは同じ時間でもよいし、互いに異なる時間でもよい。一般に温度の変化は緩やかであるので、第2判定時間は第1判定時間よりも長い時間に設定されていればよい。
【0059】
通知制御部74は、計測アダプタ6から取得した計測結果又はセンサ9から取得した計測結果に基づいて、ブレーカ2の状態が異常状態であると判断すると、ブレーカ2の状態情報を通知部75から本体11の外部に通知させる。通知部75は、ブレーカ2の状態情報を音と光との両方で通知するので、分電盤1のユーザは、蓋体14等を開けなくてもブレーカ2の状態を把握できるようになり、利便性の向上を図ることができる。
【0060】
なお、通知制御部74は、計測アダプタ6から取得した計測結果又はセンサ9から取得した計測結果に基づいて、ブレーカ2の状態が正常状態であると判断した場合にも通知部75から本体11の外部にブレーカ2の状態を通知させてもよい。
【0061】
また、通知制御部74は、ブレーカ2の状態に基づいて、通知部75が状態情報を通知する態様を異ならせてもよい。通知部75が発光部75Aであれば、通知制御部74は、ブレーカ2の状態に基づいて、発光部75Aの発光色、及び発光部75Aが点滅する周期、発光の持続時間等のうちの少なくとも1つを異ならせればよい。また通知部75が音出力部75Bであれば、通知制御部74は、ブレーカ2の状態に基づいて、音出力部75Bから出力される音の高さ、音量、音声メッセージの内容等のうち少なくとも1つを異ならせればよい。通知制御部74が、ブレーカ2の状態に基づいて、通知部75が状態情報を通知する態様を異ならせることで、分電盤1のユーザは、通知部75による通知の態様をもとにブレーカ2の状態をより詳細に把握することができる。
【0062】
以上のように、通知制御部74は、ブレーカ2の状態(電流異常情報及び環境情報等)に基づいて、通知部75に状態情報を通知する通知動作を行わせているので、分電盤1のユーザが、ブレーカ2の状態に関する状態情報を把握しやすくなる。したがって、分電盤1のユーザは、ブレーカ2の状態に関する状態情報に基づいて、ブレーカ2の状態に対して適切な対応をとりやすくなる。例えば、分電盤1のユーザは、通知部75から出力された電流異常情報に基づいて電流閾値を超えた電流が流れた電路の負荷の点検を行うことができる。また分電盤1のユーザは、通知部75から出力された温度異常情報に基づいて、分電盤用キャビネット10又は負荷の点検を行うなどの対応をとることができる。
【0063】
なお、上述の動作は、分電盤用キャビネット10の動作の一例であり、通知制御部74が行う処理の順番は適宜変更されてもよいし、処理が適宜追加又は省略されてもよい。
【0064】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、上記実施形態に係る通知制御部74と同様の機能は、通知制御部74の通知方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
【0065】
以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。なお、以下では、上記実施形態を「基本例」と呼ぶこともある。
【0066】
本開示における分電盤用キャビネット10は、例えば、通知制御部74等に、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における分電盤用キャビネット10としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0067】
また、分電盤用キャビネット10における複数の機能が、1つの筐体(本体11)に集約されていることは分電盤用キャビネット10に必須の構成ではなく、分電盤用キャビネット10の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、通知制御部74等、分電盤用キャビネット10の少なくとも一部の機能は、例えば、クラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。反対に、上記実施形態のように、分電盤用キャビネット10の全ての機能が、1つの筐体(本体11)に集約されていてもよい。
【0068】
上記実施形態では、分電盤用キャビネット10は、壁100の取付孔102に本体11の全体が埋め込まれた状態で壁100に取り付けられているが、取付孔102に本体11の後部のみが埋め込まれた状態で壁100に取り付けられてもよい。また、分電盤用キャビネット10は、本体11の全体を壁100から露出させた状態で壁100に取り付けられていてもよい。
【0069】
上記実施形態において、電流の測定値などの2値の比較において、「超える」としているところは「以上」であってもよい。つまり、2値の比較において、2値が等しい場合を含むか否かは、基準値等の設定次第で任意に変更できるので、「超える」か「以上」かに技術上の差異はない。同様に、「以下」としているところは「未満」であってもよい。
【0070】
上記実施形態では、通知部75が、発光部75Aと音出力部75Bとを備え、状態情報を音と光との両方で通知しているが、通知部75は状態情報を音及び光の一方のみで通知してもよい。
【0071】
(3.1)変形例1
以下、変形例1について、
図7を参照しながら説明する。
【0072】
上記基本例では、通知制御部74が通知部75から状態情報を本体11の外部に通知していたが、変形例1では、通知制御部74が通知部75から本体11の存在を本体11の外部に通知する。なお、基本例と共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0073】
本変形例の通知部75は、
図7に示すように、例えば蓋体14に設けられた発光部75Cを備えている。発光部75Cは、例えばLED(Light Emitting Diode)又はレーザーダイオード等の発光素子と、発光素子から出力される光を投影するための光学系部品(レンズ等)と、を含む。発光部75Cは、天井面105及び床面106に光を投影することによって本体11の存在を通知する。なお、発光部75Cは本体11の前面に設けられてもよく、発光部75Cからの光は、蓋体14に設けられた透光部を通して天井面105及び床面106に投影されてもよい。
【0074】
通知制御部74は、計測アダプタ6又はセンサ9から取得した情報に基づいてブレーカ2の状態が異常状態であると判断すると、発光部75Cから天井面105及び床面106に光を投影させる。ここで、通知制御部74は、発光部75Cから天井面105及び床面106に連続的に光を投影させてもよいし、断続的に光を投影させてもよい。なお、
図7においてG1,G2は、天井面105及び床面106において発光部75Cからの光が投影される領域を示している。
【0075】
本変形例によれば、分電盤用キャビネット10が収容するブレーカ2の状態に異常がある場合に、ユーザは、発光部75Cから照射される光を通じて分電盤用キャビネット10の存在、つまり分電盤用キャビネット10の位置を知ることができる。したがって、分電盤1のユーザは、発光部75Cから照射される光に基づいて、分電盤用キャビネット10の存在(位置)を知ることができ、利便性の向上を図ることができる。
【0076】
なお、本変形例では発光部75Cは、天井面105及び床面106に光を投影しているが、本体11の左側にある壁面、本体11の右側にある壁面、又は本体11の正面にある壁面に光を投影してもよい。また、本体11が壁100に露出した状態で取り付けられている場合、発光部75Cは、壁100と平行な方向に向かって光を投影してもよく、本体11の上側(真上)、下側(真下)、左側、及び右側のうち少なくとも1つの方向に向かって、壁100の表面101と平行に光を投影してもよい。また、発光部75Cは、天井面105と床面106とに光を投影しているが、天井面105と床面106とのいずれかに光を投影してもよいし、天井面105、床面106、左側の壁面、右側の壁面、及び正面の壁面のうち1以上の面に光を投影してもよい。また、発光部75Cは、天井面105、床面106、左側の壁面、右側の壁面、及び正面の壁面のうち2以上の面に順番に又はランダムに光を投影してもよい。
【0077】
なお、発光部75Cは、例えば発光部75Cが備える光学系部品の向きをユーザが調整することで、投影する光の向きを変更できるように構成されてもよい。
【0078】
また、本変形例において通知制御部74は、発光部75Cから1以上の造営面に光を投影させることで、状態情報を通知するための映像を投影してもよい。ここで、1以上の造営面とは、天井面105、床面106、左側の壁面、右側の壁面、及び正面の壁面のうちの1以上の面である。例えば、通知制御部74は、発光部75Cから造営面に光を投影することで、ブレーカ2の状態を示す文字、図記号などを含む映像を造営面に投影してもよく、ユーザは造営面に投影された映像からブレーカ2の状態を把握することができる。
【0079】
以上のように、通知部75は、状態情報及び本体11の存在のうち少なくとも一方を光により通知する発光部75Cを有している。さらに言えば、発光部75Cは、天井面105に光を投影することで、状態情報及び本体11の存在のうち少なくとも一方を通知しており、ユーザは天井面105に投影された光をもとに、状態情報及び本体11の存在を把握することが可能になる。なお、発光部75Cは、天井面105、床面106、左側の壁面、右側の壁面、及び正面の壁面のうち1以上の面に光を投影することで、状態情報及び本体11の存在のうち少なくとも一方を通知してもよい。
【0080】
また、本変形例では、通知制御部74は、通知部75により分電盤用キャビネット10の存在(位置)を光で通知させているが、通知部75により分電盤用キャビネット10の存在(位置)を音で通知させてもよい。すなわち、通知制御部74は、分電盤用キャビネット10の存在を通知するための音声などを音出力部75Bから出力させてもよい。換言すれば、音出力部75Bは、状態情報及び本体11の存在のうち少なくとも一方を音(通知音又は音声メッセージ)により通知してもよい。
【0081】
(3.2)変形例2
以下、変形例2について、
図8及び
図9を参照しながら説明する。
【0082】
上記基本例及び変形例1では、通知部75が発光部75A,75C及び音出力部75Bを有しているが、本変形例では、通知部が、電磁波を媒体とした信号により通知する通信部76を有している。そして、変形例2では、通知制御部74は、ブレーカ2の状態に基づいて、状態に関する状態情報及び本体11の存在のうち少なくとも一方を、通信部76から通信端末8に送信させている。なお、基本例又は変形例1と共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0083】
本変形例の通知部は、電磁波を媒体とした信号により状態情報及び存在(位置)のうち少なくとも一方を通知する通信部76(
図8参照)を有している。ここでは、通信部76が、分電盤用キャビネット10の本体11の位置を示す存在のみを通知する例を説明する。また「電磁波を媒体とした信号」は、一例として、無線信号(電波信号)である。
【0084】
ここで、通知システム300について説明する。通知システム300は、
図8に示すように、分電盤用キャビネット10と、本体11の存在の通知を受ける通信端末8と、を備える。通知システム300では、ブレーカ2の状態が異常である場合に本体11の存在が通信端末8に通知されるが、ブレーカ2の状態が正常であっても本体11の存在(位置)が定期的又は不定期に通知されてもよい。なお、通信端末8は、状態情報と本体11の存在との少なくとも一方の通知を受ければよい。
【0085】
通信端末8は、例えば、ユーザが携帯するスマートフォン等の情報端末であることを想定するが、特に限定されない。通信端末8には、通信部76からの無線信号を受信可能(通信可能)とする専用のアプリケーションソフト(以下、「コンセント探索アプリ」と呼ぶ)がインストールされる。通信端末8は、本体11の位置をユーザに知らせるマップ画像等の情報を表示するための表示部81(
図9参照)を有している。
【0086】
分電盤用キャビネット10に設けられた通信部76は、例えば、アンテナと、通信回路とを備えている。通信部76は、例えば、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)の規格に準拠した近距離無線通信を行うように構成されている。「BLE」とは、無線PAN(Personal Area Network)技術であるBluetooth(登録商標)の仕様における、低消費電力仕様の呼称である。通信部76は、通知制御部74と電気的に接続されている。通信部76は、例えば、通知制御部74からの指令に従って、本体11の存在を示す情報(例えばマップ画面の画像データ)を、送信先として予め登録されている通信端末8に送信する。なお、通信部76の無線通信方式は、BLEに限定されず、Wi-Fi(登録商標)等の無線通信方式であってもよいし、可視光又は赤外光を利用した光通信でもよい。
【0087】
通信端末8は、通信部76から送信されたマップ画面の画像データを受信すると、表示部81にマップ画面を表示させる。表示部81に表示されたマップ画面には、分電盤1の位置、つまり分電盤1が備える分電盤用キャビネット10の本体11の位置が図示されているので、通信端末8を使用するユーザは、マップ画面に基づいて本体11の存在(位置)を把握できる。
【0088】
なお、表示部81は、
図9に示すように、通知システム300が適用されている建物内(例えば戸建住宅内)の1フロア分の見取図を概略的に画像表示することで、利便性が更に向上される。表示部81は、見取図の上に、分電盤用キャビネット10の本体11の位置を表示する。なお、
図9に示すマップ画面において、分電盤1を示す符号は説明のために表記しているに過ぎず、実際のマップ画面には表示されない。ここで、通信端末8は、表示部81に表示されたマップ画面に、当該通信端末8の位置、言い換えると、通信端末8を携帯するユーザの現在位置を表示させてもよい。ユーザ(通信端末8)の現在位置は、例えば、GPS(Global Positioning System)又は建物内での位置を検出するために用いられるLPS(Local Positioning System)から取得されればよい。
【0089】
また、通知制御部74は、本体11の存在(位置)に加えて状態情報を通信部76から通信端末8に送信させてもよく、通信端末8は、本体11の位置を示すマップ画面にブレーカ2の状態を示す状態情報を表示してもよい。これにより、通信端末8を使用するユーザは、表示部81に表示されたマップ画面に基づいて本体11の存在(位置)及びブレーカ2の状態を把握できる。
【0090】
本変形例によれば、ユーザは、例えば分電盤用キャビネット10から比較的離れた位置にいる場合でも分電盤用キャビネット10の本体11の存在を知ることができる。したがって、利便性の向上を更に図ることができる。
【0091】
なお、変形例2では通信端末8が、ユーザが携帯するスマートフォン、タブレットコンピュータ等の情報端末である場合を例に説明したが、通信端末はユーザが携帯する情報端末に限定されない。通信端末は、例えば建物内に設けられたHEMS(Home Energy Management System)コントローラ又はBEMS(Building Energy Management System)コントローラでもよい。また、通信端末は、分電盤用キャビネット10が設けられている建物の外部にあるサーバ等でもよい。
【0092】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様の分電盤用キャビネット(10)は、本体(11)と、通知制御部(74)と、を備える。本体(11)は、ブレーカ(2)を収容し、取付位置に取り付けられる。通知制御部(74)は、ブレーカ(2)の状態に応じて、状態に関する状態情報及び本体(11)の存在のうち少なくとも一方を、通知部(75)から本体(11)の外部に通知させる。
【0093】
この態様によれば、通知部(75)から本体(11)の外部に状態情報及び本体(11)の存在のうち少なくとも一方が通知されるので、利便性の向上を図ることができる。
【0094】
第2の態様の分電盤用キャビネット(10)では、第1の態様において、通知部(75)は、状態情報及び本体(11)の存在のうち少なくとも一方を光により通知する発光部(75A)を有する。
【0095】
この態様によれば、利便性の向上を図ることができる。
【0096】
第3の態様の分電盤用キャビネット(10)では、第2の態様において、発光部(75A)は、天井面(105)に光を投影することで、状態情報及び本体(11)の存在のうち少なくとも一方を通知する。
【0097】
この態様によれば、天井面(105)に光が投影されることによって、状態情報及び本体(11)の存在のうち少なくとも一方が通知されるので、利便性の向上を図ることができる。
【0098】
第4の態様の分電盤用キャビネット(10)では、第1~3のいずれかの態様において、通知部(75)は、状態情報及び本体(11)の存在のうち少なくとも一方を音により通知する音出力部(75B)を有する。
【0099】
この態様によれば、音出力部(75B)から出力される音によって、状態情報及び本体(11)の存在のうち少なくとも一方が通知されるので、利便性の向上を図ることができる。
【0100】
第5の態様の分電盤用キャビネット(10)では、第1~4のいずれかの態様において、通知部(75)は、電磁波を媒体とした信号により通知する通信部(76)を有する。
【0101】
この態様によれば、通信部(76)から状態情報及び本体(11)の存在のうち少なくとも一方が通知されるので、利便性の向上を図ることができる。
【0102】
第6の態様の分電盤用キャビネット(10)では、第1~5のいずれかの態様において、状態情報は、ブレーカ(2)が電気的に接続された電路に流れる電流が電流閾値を超えたか否かを示す情報を含む。
【0103】
この態様によれば、利便性の向上を図ることができる。
【0104】
第7の態様の分電盤用キャビネット(10)では、第1~6のいずれかの態様において、状態情報は、ブレーカ(2)の周囲環境に関する環境情報を含む。分電盤用キャビネット(10)は、環境情報を検知するセンサ(9)を、更に備える。
【0105】
この態様によれば、利便性の向上を図ることができる。
【0106】
第8の態様の分電盤用キャビネット(10)では、第1~7のいずれかの態様において、本体(11)は、造営材(100)に設けられた取付孔(102)に全体が埋め込まれる。
【0107】
この態様によれば、利便性の向上を図ることができる。
【0108】
第9の態様の分電盤(1)は、第1~8のいずれかの態様の分電盤用キャビネット(10)と、分電盤用キャビネット(10)に収容されるブレーカ(2)と、を含む。
【0109】
この態様によれば、利便性の向上を図ることができる。
【0110】
第10の態様の通知システム(300)は、第1~8のいずれかの態様の分電盤用キャビネット(10)と、通信端末(8)と、を備える。通信端末(8)は、状態情報及び本体(11)の存在のうち少なくとも一方の通知を受ける。
【0111】
この態様によれば、利便性の向上を図ることができる。
【0112】
第2~第8の態様に係る構成については、分電盤用キャビネット(10)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 分電盤
2 ブレーカ
8 通信端末
9 センサ
10 分電盤用キャビネット
11 本体
74 通知制御部
75 通知部
75A 発光部
75B 音出力部
76 通信部
100 壁(造営材)
102 取付孔
105 天井面
300 通知システム