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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】カーペット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47G 27/02 20060101AFI20230728BHJP
   B32B 5/00 20060101ALI20230728BHJP
   E04F 15/16 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
A47G27/02 101C
A47G27/02 103Z
A47G27/02 101Z
B32B5/00 C
E04F15/16 A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019067003
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2019181190
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2018068223
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390008394
【氏名又は名称】長谷虎紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 一也
(72)【発明者】
【氏名】武田 昌信
(72)【発明者】
【氏名】梶山 宏史
(72)【発明者】
【氏名】長谷 和治
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-507826(JP,A)
【文献】特開平08-056810(JP,A)
【文献】特開2008-006160(JP,A)
【文献】特開2015-181504(JP,A)
【文献】特開2016-073374(JP,A)
【文献】特開2012-165990(JP,A)
【文献】特開2008-168521(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0077312(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 27/02
B32B 5/00~ 5/32
E04F 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次基布の表面に複数のパイル糸がタフトされたパイル層と前記1次基布の裏面側に配置されたバッキング層とを有するカーペットであって、
前記1次基布は不織布であり、
前記バッキング層は、透明樹脂層を含み、
前記バッキング層は、前記1次基布の前記裏面に接しており、
前記カーペットの全光線透過率が0.5%以上であり、
前記カーペットを前記1次基布の表面側からみた場合の明度が30以上であり、
前記カーペットの摩擦を伴った動的荷重による厚さ減少率が25%以下である、
カーペット。
【請求項2】
前記パイル層への前記パイル糸の打ち込み密度が80~180本/6.45cmである、
請求項1に記載のカーペット。
【請求項3】
前記1次基布の全光線透過率が60%以上であり、
前記バッキング層の全光線透過率が50%以上である、
請求項1又は2に記載のカーペット。
【請求項4】
前記パイル層のパイル高さが4~10mmである、
請求項1~3の何れか一項に記載のカーペット。
【請求項5】
前記バッキング層の厚さが1~4mmである、
請求項1~の何れか一項に記載のカーペット。
【請求項6】
前記パイル糸が有する単繊維の異型度が1.1~8である、
請求項1~の何れか一項に記載のカーペット。
【請求項7】
前記カーペットが、2以上の領域を含み、
前記2以上の領域の各々は、前記2以上の領域のうちの別の1以上の領域と異なる全光線透過率を有する、
請求項1~の何れか一項に記載のカーペット。
【請求項8】
前記2以上の領域の各々を前記1次基布の表面側からみた場合の明度は、前記2以上の領域のうちの別の1以上の領域を前記1次基布の表面側からみた場合の明度と異なる、請求項に記載のカーペット。
【請求項9】
1次基布の表面に複数のパイル糸がタフトされたパイル層と前記1次基布の裏面側に配置されたバッキング層とを有するカーペットであって、
前記1次基布は不織布であり、
前記バッキング層は、透明樹脂層を含み、
前記バッキング層は、前記1次基布の前記裏面に接しており、
前記カーペットが第1の部分と第2の部分とを含み、
前記第1の部分の全光線透過率が0.5%以上であり、
前記第1の部分を前記1次基布の表面側からみた場合の明度が30以上であり、
前記第1の部分の摩擦を伴った動的荷重による厚さ減少率が25%以下であり、
前記第2の部分の全光線透過率が0.5%未満である、
カーペット。
【請求項10】
前記カーペットの前記第1の部分において、前記パイル層への前記パイル糸の打ち込み密度が80~180本/6.45cmである、
請求項に記載のカーペット。
【請求項11】
前記カーペットの前記第1の部分において、
前記1次基布の全光線透過率が60%以上であり、
前記バッキング層の全光線透過率が50%以上である、
請求項又は10に記載のカーペット。
【請求項12】
前記カーペットの前記第1の部分において、
前記パイル層のパイル高さが4~10mmである、
請求項11の何れか一項に記載のカーペット。
【請求項13】
前記カーペットの前記第1の部分において、
前記バッキング層の厚さが1~4mmである、
請求項12の何れか一項に記載のカーペット。
【請求項14】
前記カーペットの前記第1の部分において、
前記パイル糸が有する単繊維の異型度が1.1~8である、
請求項13の何れか一項に記載のカーペット。
【請求項15】
前記カーペットの前記第1の部分が、2以上の領域を含み、
前記2以上の領域の各々は、前記2以上の領域のうちの別の1以上の領域と異なる全光線透過率を有する、
請求項14の何れか一項に記載のカーペット。
【請求項16】
前記2以上の領域の各々を前記1次基布の表面側からみた場合の明度は、前記2以上の領域のうちの別の1以上の領域を前記1次基布の表面側からみた場合の明度と異なる、
請求項15に記載のカーペット。
【請求項17】
前記第1の部分を前記1次基布の表面側からみた場合の明度は、前記第2の部分を前記1次基布の表面側からみた場合の明度と異なる、
請求項16の何れか一項に記載のカーペット。
【請求項18】
請求項に記載のカーペットの製造方法であって、
1次基布の表面に複数のパイル糸がタフトされたパイル層と前記1次基布の裏面側に配置されたバッキング層とを有するカーペットであって、
前記1次基布は不織布であり、
前記バッキング層は、透明樹脂層を含み、
前記バッキング層は、前記1次基布の前記裏面に接しており、
前記カーペットの全光線透過率が0.5%以上であり、
前記カーペットを前記1次基布の表面側からみた場合の明度が30以上であり、
前記カーペットの摩擦を伴った動的荷重による厚さ減少率が25%以下である、
カーペットを用意すること、並びに、
前記カーペットのパイル層を位置選択的に染色して、前記1次基布の表面側からみた場合の明度が異なる前記2以上の領域を形成すること
を含む、方法。
【請求項19】
請求項16に記載のカーペットの製造方法であって、
1次基布の表面に複数のパイル糸がタフトされたパイル層と前記1次基布の裏面側に配置されたバッキング層とを有するカーペットであって、
前記1次基布は不織布であり、
前記バッキング層は、透明樹脂層を含み、
前記バッキング層は、前記1次基布の前記裏面に接しており、
前記カーペットの全光線透過率が0.5%以上であり、
前記カーペットを前記1次基布の表面側からみた場合の明度が30以上であり、
前記カーペットの摩擦を伴った動的荷重による厚さ減少率が25%以下である、
カーペットを用意すること、並びに、
前記カーペットのパイル層を位置選択的に染色して、前記1次基布の表面側からみた場合の明度が異なる前記2以上の領域を含む前記第1の部分を形成すること
を含む、方法。
【請求項20】
請求項17に記載のカーペットの製造方法であって、
1次基布の表面に複数のパイル糸がタフトされたパイル層と前記1次基布の裏面側に配置されたバッキング層とを有するカーペットであって、
前記1次基布は不織布であり、
前記バッキング層は、透明樹脂層を含み、
前記バッキング層は、前記1次基布の前記裏面に接しており、
前記カーペットの全光線透過率が0.5%以上であり、
前記カーペットを前記1次基布の表面側からみた場合の明度が30以上であり、
前記カーペットの摩擦を伴った動的荷重による厚さ減少率が25%以下である、
カーペットを用意すること、並びに、
前記カーペットのパイル層を位置選択的に染色して、前記1次基布の表面側からみた場合の明度が異なる前記第1の部分と前記第2の部分とを形成すること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーペット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーペットとして、例えば、光源の上に配置され、光源から光が出力されていないときは通常のカーペットとして使用される一方、緊急時等で光源から光を発光して誘導路やイルミネーション等に使用するためのカーペットが求められている。特許文献1,2には、上述したような光透過性を有するカーペットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2011-505181公報
【文献】特表2012-517263公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に記載のカーペットは、カーペットの製造時には光透過性を有する。しかしながら、カーペットが使用された際には、カーペット上を人が通ったり、キャスターなどが移動したりすることから、毛倒れ等が生じる。そのような毛倒れ等が生じると、光透過性を含む品質が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の一側面は、光透過性を有するとともに、光透過性を含む品質を維持可能なカーペットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の側面に係るカーペットは、1次基布の表面に複数のパイル糸がタフトされたパイル層と上記1次基布の裏面側に配置されたバッキング層とを有するカーペットであり、上記カーペットの全光線透過率が0.5%以上であり(以下、「条件1」とも称す)、カーペットを上記1次基布の表面側からみた場合の明度が30以上であり(以下、「条件2」とも称す)、上記カーペットの摩擦を伴った動的荷重による厚さ減少率が25%以下である(以下、「条件3」と称す)。
【0007】
上記構成のカーペットは、上記条件1及び条件を満たすため光透過性を有し、条件3を満たすため、カーペットを使用しても光透過性を含む品質を維持することができる。
【0008】
本発明の第一の側面に係るカーペットの一実施形態において、上記パイル層への上記パイル糸の打ち込み密度は80~180本/6.45cmであってもよい。これにより、上記条件1,3をより満たしやすい。
【0009】
本発明の第一の側面に係るカーペットの一実施形態において、上記1次基布の全光線透過率が60%以上であり、上記バッキング層の全光線透過率が50%以上であってもよい。これにより、上記条件1を満たしやすい。
【0010】
本発明の第一の側面に係るカーペットの一実施形態において、上記パイル層のパイル高さが4~10mmであってもよい。これにより、条件3を満たしながら条件1を満たしやすい。
【0011】
本発明の第一の側面に係るカーペットの一実施形態において、上記パイル糸がポリアミド系繊維を含み、上記1次基布がポリエステル系長繊維不織布であり、上記バッキング層が、塩化ビニル樹脂と補強材と含んでもよい。これにより、光透過性を高めながら、カーペットの反り及び寸法変化などを抑制できる。
【0012】
本発明の第一の側面に係るカーペットの一実施形態において、上記バッキング層の厚さの例は1~4mmである。
【0013】
本発明の第一の側面に係るカーペットの一実施形態において、上記バッキング層は、上記1次基布の上記裏面に接していてもよい。これにより、上記条件1を満たしやすい。
【0014】
本発明の第一の側面に係るカーペットの一実施形態において、上記パイル糸が有する単繊維の異型度は1.1~8であってもよい。これにより、条件1,3をより満たしやすい。
【0015】
本発明の第一の側面に係るカーペットの一実施形態において、前記カーペットが、2以上の領域を含み、前記2以上の領域の各々は、前記2以上の領域のうちの別の1以上の領域と異なる全光線透過率を有していてもよい。この実施形態に係るカーペットは、領域ごとに光透過性に強弱があるため、光透過時に、所定の文字、画像、意匠等を表示する用途に有用である。この実施形態では、前記2以上の領域の各々を前記1次基布の表面側からみた場合の明度は、前記2以上の領域のうちの別の1以上の領域を前記1次基布の表面側からみた場合の明度と異なることが好ましい。前記2以上の領域の各々について、パイル層のタフト糸の染色の種類及び強弱により明度を調節することで、全光線透過率を互いに異なるものとすることが容易である。
【0016】
本発明の第二の側面に係るカーペットは、1次基布の表面に複数のパイル糸がタフトされたパイル層と前記1次基布の裏面側に配置されたバッキング層とを有するカーペットであり、前記カーペットが、第1の部分と第2の部分とを含み、前記第1の部分が前記の条件1、条件2及び条件3を満たし、前記第2の部分の全光線透過率が0.5%未満である。
【0017】
前記の、本発明の第二の側面に係るカーペットは、前記第1の部分が前記条件1及び条件を満たすため光透過性を有し、且つ、条件3を満たすため、カーペットを使用しても光透過性を含む品質を維持することができる。前記の、本発明の第二の側面に係るカーペットは更に、前記第1の部分と前記第2の部分を含むことにより、光透過時に前記第1の部分に集中して光を透過させることができるため、所定の文字、画像、意匠等を表示する用途に有用である。特に、前記第2の部分に囲まれた前記第1の部分、或いは、前記第1の部分に囲まれた前記第2の部分は、前記カーペットへの裏面からの光出力時に鮮明な像として視認され易いため好ましい。この実施形態では、前記第1の部分を前記1次基布の表面側からみた場合の明度は、前記第2の部分を前記1次基布の表面側からみた場合の明度と異なることが好ましい。前記第1の部分及び前記第2の部分の各々について、パイル層のタフト糸の染色の種類及び強弱により明度を調節することで、全光線透過率を互いに異なるものとすることが容易である。
【0018】
本発明の第二の側面に係るカーペットの一実施形態では、前記第2の部分の摩擦を伴った動的荷重による厚さ減少率が25%以下であることが好ましい。
【0019】
本発明の第二の側面に係るカーペットの一実施形態では、少なくとも前記第1の部分において、好ましくは前記第1の部分及び前記第2の部分の両方において、前記パイル層への前記パイル糸の打ち込み密度は80~180本/6.45cmであってもよい。これにより、前記条件1,3をより満たしやすい。
【0020】
本発明の第二の側面に係るカーペットの一実施形態では、少なくとも前記第1の部分において、好ましくは前記第1の部分及び前記第2の部分の両方において、前記1次基布の全光線透過率が60%以上であり、前記バッキング層の全光線透過率が50%以上であってもよい。これにより、前記条件1を満たしやすい。
【0021】
本発明の第二の側面に係るカーペットの一実施形態では、少なくとも前記第1の部分において、好ましくは前記第1の部分及び前記第2の部分の両方において、前記パイル層のパイル高さが4~10mmであってもよい。これにより、条件3を満たしながら条件1を満たしやすい。
【0022】
本発明の第二の側面に係るカーペットの一実施形態では、少なくとも前記第1の部分において、好ましくは前記第1の部分及び前記第2の部分の両方において、前記パイル糸がポリアミド系繊維を含み、前記1次基布がポリエステル系長繊維不織布であり、前記バッキング層が、塩化ビニル樹脂と補強材と含んでもよい。これにより、光透過性を高めながら、カーペットの反り及び寸法変化などを抑制できる。
【0023】
本発明の第二の側面に係るカーペットの一実施形態では、少なくとも前記第1の部分において、好ましくは前記第1の部分及び前記第2の部分の両方において、前記バッキング層の厚さの例は1~4mmである。
【0024】
本発明の第二の側面に係るカーペットの一実施形態では、少なくとも前記第1の部分において、好ましくは前記第1の部分及び前記第2の部分の両方において、前記バッキング層は、前記1次基布の前記裏面に接していてもよい。これにより、前記条件1を満たしやすい。
【0025】
本発明の第二の側面に係るカーペットの一実施形態では、少なくとも前記第1の部分において、好ましくは前記第1の部分及び前記第2の部分の両方において、前記パイル糸が有する単繊維の異型度は1.1~8であってもよい。これにより、条件1,3をより満たしやすい。
【0026】
本発明の第二の側面に係るカーペットの一実施形態では、前記第1の部分が2以上の領域を含み、前記2以上の領域の各々は、前記2以上の領域のうちの別の1以上の領域と異なる全光線透過率を有していてもよい。この実施形態に係るカーペットの第1の部分は、領域ごとに光透過性に強弱があるため、光透過時に、所定の文字、画像、意匠等を表示する用途に有用である。この実施形態では、前記2以上の領域の各々を前記1次基布の表面側からみた場合の明度は、前記2以上の領域のうちの別の1以上の領域を前記1次基布の表面側からみた場合の明度と異なることが好ましい。前記2以上の領域の各々について、パイル層のタフト糸の染色の種類及び強弱により明度を調節することで、全光線透過率を互いに異なるものとすることが容易である。
【0027】
本発明の第三の側面は、前記の本発明の第一の側面の一実施形態に係るカーペットであって、前記カーペットが2以上の領域を含み、前記2以上の領域の各々は、前記2以上の領域のうちの別の1以上の領域と、全光線透過率及び前記1次基布の表面側からみた場合の明度が異なるカーペットの製造方法に関する。この本発明の第三の側面に係る方法は、
1次基布の表面に複数のパイル糸がタフトされたパイル層と前記1次基布の裏面側に配置されたバッキング層とを有するカーペットであって、
前記カーペットの全光線透過率が0.5%以上であり、
前記カーペットを前記1次基布の表面側からみた場合の明度が30以上であり、
前記カーペットの摩擦を伴った動的荷重による厚さ減少率が25%以下である、
カーペットを用意すること、並びに、
前記カーペットのパイル層を位置選択的に染色して、前記1次基布の表面側からみた場合の明度が異なる前記2以上の領域を形成すること
を含むことができる。
【0028】
本発明の第五の側面に係る方法では、染色の種類及び強弱の調節によりカーペットのパイル層の明度を調節することで、全光線透過率の異なる2以上の領域を有する光透過性のカーペットを容易に製造することができる。
【0029】
本発明の第四の側面は、前記の本発明の第二の側面の一実施形態に係るカーペットであって、前記カーペットの前記第1の部分が、2以上の領域を含み、前記2以上の領域の各々は、前記2以上の領域のうちの別の1以上の領域と、全光線透過率及び前記1次基布の表面側からみた場合の明度が異なるカーペットの製造方法に関する。この本発明の第四の側面に係る方法は、
1次基布の表面に複数のパイル糸がタフトされたパイル層と前記1次基布の裏面側に配置されたバッキング層とを有するカーペットであって、
前記カーペットの全光線透過率が0.5%以上であり、
前記カーペットを前記1次基布の表面側からみた場合の明度が30以上であり、
前記カーペットの摩擦を伴った動的荷重による厚さ減少率が25%以下である、
カーペットを用意すること、並びに、
前記カーペットのパイル層を位置選択的に染色して、前記1次基布の表面側からみた場合の明度が異なる前記2以上の領域を含む前記第1の部分を形成すること
を含むことができる。
【0030】
本発明の第五の側面に係る方法では、染色の種類及び強弱の調節によりカーペットのパイル層の明度を調節することで、全光線透過率の異なる2以上の領域を有する第1の部分を含むカーペットを容易に製造することができる。
【0031】
本発明の第五の側面は、前記の本発明の第二の側面の一実施形態に係るカーペットであって、前記第1の部分を前記1次基布の表面側からみた場合の明度が、前記第2の部分を前記1次基布の表面側からみた場合の明度と異なるカーペットの製造方法に関する。この本発明の第五の側面に係る方法は、
1次基布の表面に複数のパイル糸がタフトされたパイル層と前記1次基布の裏面側に配置されたバッキング層とを有するカーペットであって、
前記カーペットの全光線透過率が0.5%以上であり、
前記カーペットを前記1次基布の表面側からみた場合の明度が30以上であり、
前記カーペットの摩擦を伴った動的荷重による厚さ減少率が25%以下である、
カーペットを用意すること、並びに、
前記カーペットのパイル層を位置選択的に染色して、前記1次基布の表面側からみた場合の明度が異なる前記第1の部分と前記第2の部分とを形成すること
を含むことができる。
【0032】
本発明の第五の側面に係る方法では、染色の種類及び強弱の調節によりカーペットのパイル層の明度を調節することで、全光線透過率の異なる第1の部分及び第2の部分を含むカーペットを容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の第一の側面及び第二の側面によれば、光透過性を有するとともに、光透過性を含む品質を維持可能なカーペットを提供できる。
【0034】
本発明の第三の側面、第四の側面及び第五の側面によれば、光透過性の異なる複数の部分を含む光透過性のカーペットを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、一実施形態に係るカーペットの概略構成を説明するための図面である。
図2図2は、全体が条件1~3を満たし、且つ、第1の領域31、第2の領域32、第3の領域33の三種に区画されており、第1の領域31、第2の領域32、第3の領域33は、互いに異なる全光線透過率を有するカーペット1の、パイル層10の側からの平面視での模式図を示す。
図3図3は、条件1~3を満たす第1の部分30と、全光線透過率が0.5%未満の第2の部分40とを含み、且つ、第1の部分30が更に第1の領域31及び第2の領域32の二種に区画されており、第1の領域31及び第2の領域32が互いに異なる全光線透過率を有するカーペット1の、パイル層10の側からの平面視での模式図を示す。
図4図4は、実施例9のカーペット1の、パイル層10の側からの平面視での模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0037】
図1は、一実施形態に係るカーペットの概略構成を説明するための図面であり、カーペットの一部の断面構造の模式図である。図1に示したように、カーペット1は、1次基布11の表面11aに複数のパイル糸12がタフトされたパイル層10と、1次基布11の裏面11b側に配置されたバッキング層20とを備える。カーペット1は、バッキング層20とパイル層10との積層体である。以下、説明の便宜のため、カーペット1において、バッキング層20側を裏面側と称し、パイル層10側(具体的には、パイル糸12が露出している側)を表面側と称す。
【0038】
カーペット1は、光透過性を有するカーペット1である。カーペット1が光透過性を有することから、光源(例えば、歩行可能なLEDディスプレイ、床に埋め込んだ照明等)上に、カーペット1を設置することで、カーペット1を通して文字、画像などを表示可能である。このような光透過性を有するカーペット1は、光源から光が出力されていないときは通常のカーペット1として使用できるとともに、緊急時等には光源から光を発光して誘導路やイルミネーション等に好適に使用可能である。カーペット1の用途は上記例示したものに限定されず、カーペット1に光を通す必要がある用途であればよい。カーペット1は例えば、オフィスや病院、ホテル、美術館、銀行、映画館、空港などの商業用施設や、鉄道車両、船舶、自動車などで使用し得る。
【0039】
カーペット1は、次の条件1~3を満たす。
・条件1:カーペット1の全光線透過率が0.5%以上である。
・条件2:カーペット1の明度(L値)が30以上である。
・条件3:カーペット1の摩擦を伴った動的荷重による厚さ減少率が25%以下である。
【0040】
「カーペット1の全光線透過率」は、「JIS7361」に従って測定して得られる値である。例えば、カーペット1の任意の複数の箇所(例えば5箇所)を抽出して測定して上記JIS7361に従って全光線透過率を測定した場合には、複数の箇所の測定値の平均値を採用し得る。
「カーペット1の明度」は、分光測色計を用いて測定した値であり、例えばカーペット1の任意の5箇所から同じ面積領域を抽出して測定した測定値の平均値であり得る。カーペット1の明度は、カーペット1の表面側の明度である。
「摩擦を伴った動的荷重による厚さ減少率」は、「JIS L 1021の7:2007 5.1(摩擦を伴った動的荷重による厚さ減少)」に従った測定で得られる値である。摩擦を伴った動的荷重による厚さ減少率は、実質的には、カーペット1の表面側(パイル糸側)の厚さ減少率に相当する。
【0041】
カーペット1が条件1を満たすことにより、例えば、カーペット1を光源上に配置して、カーペット1を通して文字、画像(例えば標識)などを表示する場合、文字、画像などを適切に認識できる。カーペット1の全光線透過率は0.6%以上が好ましい。
【0042】
カーペット1が条件2を満たすことにより、色に関係なくパイル糸12が光を吸収することを抑えることができ、光透過性を確保できる。すなわち、条件2を満たすことにより、カーペット1の全光線透過率に対する色の影響を低減できる。明度(L値)は50~85の範囲であることが好ましい。
【0043】
パイル糸12として原着糸を使用する場合は糸に含有する顔料の濃度(原着濃度)を調整することで明度を調整できる。パイル糸12として、白い糸を染料で染めたものを使用する場合は、その染め具合で明度を調整できる。この場合の染色方法としては、例えばチーズ染色、カセ染色等が採用され得る。パイル層10を形成した後又はパイル層10とバッキング層20とを組み合わせた後に、パイル層10(パイル糸部分)を染料で染める場合には、その染め具合で明度を調整可能である。この場合の手法としては、ウィンス染色、インクジェット染色等が採用され得る。
【0044】
カーペット1が条件3を満たすことにより、例えば靴の踵や椅子のキャスター等がカーペット1上を移動した際の摩擦によるパイル糸12の毛倒れ等を抑制可能である。上記毛倒れ等が生じると光透過性が低下するが、条件3を満たすことにより毛倒れ等に起因する光透過性の低下を防止できる。そのため、カーペット1が使用されてもカーペット1の光透過性を含む品質を維持可能である。摩擦を伴った動的荷重による厚さ減少率は、20.0%以下であることが好ましい。光透過性の低下防止といった品質維持の観点からは上記減少率は小さいほどよいが、条件1を満たすために、上記減少率は8%以上が好ましい。同様の観点から上記減少率は10%以上であってもよい。
【0045】
よって、カーペット1は条件1~3を満たすことにより、光透過性を有するとともに、カーペット1を使用しても、光透過性を含む品質を維持可能である。
【0046】
カーペット1を実際に使用する場合にはカーペット1上を、人、キャスター、台車等が移動し、踵、タイヤ等によって踏まれる。そのため、パイル糸12の抜糸強度は10N以上であることが好ましい。10N以上であればカーペット1が使用されたとき、例えば足で踏みつられてもパイル糸12が1次基布11から抜けることを防ぐことができる。そのため、カーペット1の品質を維持し易い。抜糸強度は、更に好ましくは13N以上である。抜糸強度は、「JIS L 1021の8.B法(パイル糸引抜き強さ)」に従い測定した値とし得る。
【0047】
カーペット1の耐光性(光堅ろう度)は3級以上が好ましい。カーペット1の耐光性が3級以上であれば、例えばカーペット1を屋外や窓際で使用した場合に紫外線による明度の変化(変色)を抑制でき、明度の変化による光の透過性の変動を低下できる。その結果、カーペット1の品質をより維持可能である。耐光性は、「JIS L 4405の9.5.1(耐光堅ろう度)」に従い測定した値とし得る。
【0048】
カーペット1の反りは1.5mm以下が好ましく、寸法変化率は0.1%以下であることが好ましい。この場合、所定の設置箇所に設置されたカーペット1が、反り、寸法変化等の影響で上記設置箇所から剥がれることを抑制できる。カーペット1の反りは、「JIS L 4406の7.9(反り)」に従い測定した値とし得る。カーペット1の寸法変化率は、「JIS L 4406の7.8(熱及び水の影響による寸法の変化率)」に従い測定した値とし得る。
【0049】
次に、条件1~3を満たすカーペット1の構成の一例を詳細に説明する。前述したようにカーペット1は、パイル層10とバッキング層20とを備える。バッキング層20は、パイル層10との間に他の層(例えばプリコート層)を介さずに、パイル層10の1次基布11に接している。
【0050】
[パイル層]
パイル層10は1次基布11と複数のパイル糸12とを有し、複数のパイル糸12は1次基布11にタフトされている。
【0051】
1次基布11は、光を通すとともに、パイル糸12をタフト可能なものであればよい。1次基布11の全光線透過率は例えば60%以上である。全光線透過率の値は、上記カーペット1の全光線透過率の測定方法と同様の測定方法で測定して得られる値とし得る。全光線透過率が60%以上であれば、上記条件1をより満たしやすい。1次基布11の目付は、例えば、80~120g/mである。目付が上記範囲であれば、1次基布11へのパイル糸12のタフト時に1次基布11が裂けにくい。全光線透過率は高い方がよいが、上記目付の範囲を実現できる値であることが好ましい。1次基布11の厚さの例は0.2mm~0.9mmである。
【0052】
1次基布11の例は不織布である。例えば、織物では空隙部と糸部の光透過率の差が大きくなるが、不織布であれば均一に光を透過させ易い。1次基布11は例えばポリエステル系長繊維不織布である。ポリエステル系長繊維不織布の例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いてスパンボンド法で製造されたPET長繊維不織布である。1次基布11がポリエステル系長繊維不織布である場合、ポリエステル系長繊維(糸部)は、好ましくは1次基布11内において実質的に均一に分散されている。この場合、均一に光を透過させ易い。ポリエステル系長繊維不織布の目付が上記80~120g/mであれば、前述したようにパイル糸12のタフト時に1次基布11が裂けにくい。不織布におけるバインダーは、条件1を満たすように構成されていればよい。
【0053】
1次基布11へのパイル糸12の打ち込み密度(以下、単に「パイル打ち込み密度」と称す)は、例えば80~180本/6.45cmである。パイル糸12の打ち込み密度が80本/6.45cm以上であることによって光を通しながら、カーペット1としての耐摩耗性、意匠性、品位を維持し易い。パイル打ち込み密度が180本/6.45cm以下であることによって、光を通した時にカーペット1の上部(表面側)から光を確認し易い。よって、パイル打ち込み密度が上記範囲であれば、条件1,3をより満たしやすい。パイル打ち込み密度は、好ましくは100~170本/6.45cmであり、より好ましくは、105~160本/6.45cmである。
【0054】
パイル糸12の素材としては、例えばポリアミド系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、天然繊維(羊毛、綿)などが挙げられる。パイル糸12には例示した上記素材のうち1種を単独で用いても良いし、複数の素材を用いてもよい。耐摩擦性の観点から、パイル糸12としてポリアミド系繊維を用いることが好ましく、更に、ポリアミド系繊維を80~100質量%で用いることが好ましい。
【0055】
パイル糸12の断面形態は限定されないが、例えばY型、田型またはY型中空などである。
【0056】
パイル糸12を構成する単繊維の異型度の例は8以下である。異型度は、パイル糸12を構成する単繊維の横断面の撮像データにおける横断面の外接円の直径D1と、内接円の直径D2の比(D1/D2)として定義する。外接円とは、単繊維の横断面の輪郭と少なくとも2点で接し、単繊維の横断面を包含する円の内で直径が最小のものと定義する。内接円とは、単繊維の横断面の輪郭と少なくとも2点で接し、単繊維の横断面に包含される円の内で直径が最大のものと定義する。パイル糸12が複数の他繊維から構成される場合には、パイル糸12を構成する全ての単繊維の異形度を算出した後、大きいものから数個(例えば10個)を選択して平均化し、小数第2位を四捨五入した値とし得る。
【0057】
異形度が8以下であれば、踏み付けや摩耗によって繊維が断裂するのをより抑制することができ、クリーニングや繰り返し踏みつけに対する耐久性が向上する。一方、異形度が大きいほどパイル層10の嵩高性を向上させることができる。パイル層10の嵩高性が向上すると光を通すためにパイル打ち込み密度を下げても十分な耐摩耗性を得ることができる。すなわち、条件1,3をより満たしやすい。その観点から異型度は、1.1以上が好ましく、1.3以上がより好ましい。
【0058】
例えば、ポリプロピレン及びポリエステル系はポリアミド系より耐久性が低い。よって、パイル糸12の素材が、ポリプロピレン又はポリエステル系である場合には、異型度は1.1~3.0が好ましい。パイル糸12の素材がポリアミド系(例えばナイロン)である場合には、異形度は1.5~7.5がより好ましく、2~7がさらに好ましく、2.5~6.5が特に好ましい。
【0059】
パイル糸12は、Bulked Continuous Filament(以下、「BCF」と称す)、紡績糸、モノフィラメントおよびマルチフィラメント(直線糸)からなる群から選ばれる1種以上を有してもよい。この場合、パイル糸12の一部または全部がBCFであってもよい。
【0060】
BCFは、単繊維の屈曲や、単繊維同士の絡み合いによって嵩高性を有する嵩高連続長繊維である。パイル糸12の一部または全部がBCFであることでパイル層10の嵩高性を向上させることができる。パイル層10の嵩高性が向上すると、前述したように、クリーニングや繰り返し踏みつけに対する耐久性が向上し、さらにクリーニングや繰り返し踏みつけに対する耐久性が向上することで、カーペット1を通して文字、画像などを表示するときに上記文字、画像などが変化しにくくなる。
【0061】
使用するBCFの総繊度は、800~5000デシテックス(dtex)であることが、光透過性と耐摩耗性の向上から好ましく、さらに好ましくは1000~3000dtexである。BCFの単繊維の繊度は2.5~30dtexであることが好ましい。
【0062】
BCFの沸騰水処理後の捲縮伸長率は10~30%であることが好ましい。BCFの沸騰水処理後の捲縮伸長率を10%以上とすることで柔らかく、弾性が良いカーペット1ができる。一方で、BCFの沸騰水処理後の捲縮伸長率を30%以下とすることでボリューム感(ふくらみ)があり、耐摩耗性を向上できる。
【0063】
BCFの沸騰水処理後の捲縮伸長率は、例えば次のようにして算出された値であり得る。室温25℃、相対湿度65%の雰囲気中に24時間放置されていたパッケージから解舒した捲縮糸(BCF)を、無荷重状態で、30分間沸騰水で浸漬処理した後、室温25℃、相対湿度65%で24時間乾燥し、これを沸騰水処理後の捲縮伸長率を測定する試料とする。この試料に、室温25℃、相対湿度65%の雰囲気下において、2mg/dtexの初荷重をかけ、30秒経過した後に試料長50cm(L1)にマーキングをする。次いで初荷重を除去した後、同試料に100mg/dtexの定荷重をかけて30秒経過後に伸びた試料長(L2)を測定する。そして下記式により、沸騰水処理後の伸長率(%)を算出する。
沸騰水処理後の捲縮伸長率(%)=[(L2-L1)/L1]×100
【0064】
BCFを構成する単繊維の異形度の例は、上記パイル糸12を構成する単繊維の異型度の例と同じである。
【0065】
パイル糸12には、パイル打ち込み密度を上げてもパイル糸12とパイル糸12との空隙を開けて光を通し易くするために撚り糸を用いてもよい。撚り方法は、片撚および諸撚のどちらでもよい。撚り数は10~250回/mが好ましい。片撚の場合、撚り数は、10~60回/mがより好ましい。諸撚の場合、上撚および下撚ともに、撚り数は、50~250回/mがより好ましい。諸撚りを実施する際には、撚り止めと捲縮糸のバルキー性を高めるため、熱セットしてもよい。熱セットの方法の例として、連続セット法(弛緩常態でスチームまたは乾熱によるセット法)やオートクレープ等が挙げられ、熱セット温度は例えば110~150℃である。
【0066】
パイル糸12は例えば酸化防止剤や耐熱安定剤、耐候剤、顔料、光沢改善剤、染料、結晶核剤、可塑剤、帯電防止剤及び難燃剤等からなる群より選ばれる1種以上を含んでもよい。
【0067】
酸化防止剤としては黄系・リン系酸が例示できる。耐熱安定剤としてはヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、リン系化合物、イミダゾール系化合物、チアゾール系化合物およびこれらの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等が例示できる。耐候剤としてはレゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等が例示できる。顔料としては硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等が例示できる。光沢改善剤としては酸化チタン、炭酸カルシウム等が例示できる。
染料としてはニグロシン、アニリンブラック等が例示できる。結晶核剤としてはタルク、シリカ、カオリン、クレー等が例示できる。可塑剤としてはp-オキシ安息香酸オクチル、N-ブチルベンゼンスルホンアミド等が例示できる。帯電防止剤としてはアルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等が例示できる。難燃剤としてはメラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等が例示できる。
【0068】
パイル層10のパイル高さの例は4~10mmである。パイル高さは、1次基布11の表面11aと1次基布11から表面11a側に露出しているパイル糸12の上端との間の距離t(図1参照)である。パイル高さを4mm以上とすることで、光を通しながらカーペット1としてのクッション性や品位を維持することができ、10mm以下とすることで十分に光を通すことが可能である。よって、パイル高さが上記範囲であれば、条件3を満たしながら条件1を満たしやすい。同様の観点から、パイル高さは、さらに好ましくは4~8mmである。
【0069】
パイル層10には柄が付与されていてもよい。柄は特に規定はされないが、カット柄、ループ柄、カット&ループ柄などが好ましい。
【0070】
パイル層10は染色されていてもよい。染色方法としては、前述したように、ウィンス染色機やプリント染色、タフトする前のパイル糸12を糸染め(チーズ染色、カセ染め)の手法、タフトする前のパイル糸12として原着された糸を使用する手法が挙げられる。これにより、明度を調整可能である。
【0071】
[バッキング層]
バッキング層20は光を通すとともに、パイル糸12が1次基布11から抜糸しにくいように構成されていればよい。バッキング層20は、その全光線透過率が50%以上であることが好ましい。例えば、1次基布11の全光線透過率が60%以上である場合において、バッキング層の全光線透過率が50%以上である形態では、条件1をより満たしやすい。
【0072】
バッキング層20の全光線透過率の測定方法は、カーペット1の全光線透過率の測定方法と同様の測定方法で得られた値とし得る。製品としてのカーペットが有するバッキング層の全光線透過率は、バッキング層のうち15cm(縦)×15cm(横)の領域(高さは任意)を切り出し、その領域と同じ材料構成で、10cm(縦)×10cm(縦)×3mm(高さ)のシートを作成した場合の全光線透過率をバッキング層20の全光線透過率とみなせばよい。
【0073】
バッキング層20の一例は主として透明樹脂層を有してもよい。透明樹脂層の材料の例は、塩化ビニル樹脂やポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などであり、耐久性の観点から塩化ビニル樹脂が好ましい。
【0074】
バッキング層20には加工コストの低減を目的に光の透過を遮らない程度に無機粒子が添加されてもよい。例えば、上述した透明樹脂層に無機粒子が添加されてもよい。無機粒子の添加量は、バッキング層の透明樹脂層を構成する樹脂100重量部に対して5~50重量部が好ましく、更に好ましくは10~30重量部である。無機粒子の例は、酸化アルミや酸化チタン、大理石、カオリンなどであり、酸化アルミが光の透過性を阻害しないことから好ましい。
【0075】
バッキング層20にはカーペット1の反りや収縮(寸法変化率)を抑えるために補強材が一体化されていてもよい。例えば、補強材は、バッキング層20内に埋設され得る。補強材は例えばシート状を有する。上述した透明樹脂層にシート状の補強材が一体的に埋め込まれることによってバッキング層20が構成されていてもよい。このようなバッキング層20に上記無機粒子が添加されてもよい。補強材の例としては織物及びガラスの不織布が挙げられる。使用する補強材は光の透過性を阻害しないために全光線透過率が70%以上であることが好ましい。バッキング層20の形状を保持するために補強材の目付は30~80g/mが好ましく、更に好ましくは40~70g/mである。
【0076】
カーペット1の形態維持と光透過性を維持するために、バッキング層20の目付は1500~3000g/mであることが好ましい。バッキング層20の厚みは1~4mmであることが好ましく、さらに好ましくは2~4mmである。
【0077】
カーペット1は、パイル層10とバッキング層20とを貼り合わせることで製造され得る。パイル層10とバッキング層20とを貼り合せる方法としては、パイル層10からパイル糸12が抜けないように固着させる必要があるため、パイル層10の裏面11bにバッキング層20として溶融した透明樹脂をラミネートする方法が好ましい。
【0078】
上記構成のカーペット1は、条件1~3を満たすので、光透過性を有しながら、使用しても光透過性を含む品質を維持可能である。更に、光をとおすために導波路などの特殊構造を有しない簡易な構成である。よって、例えばカーペット1の製造コストも低減可能である。
【0079】
[全光線透過率が異なる複数の領域を含むカーペット]
上記構成のカーペット1は、平面視において、全体が条件1~3を満たすものであってもよいし、平面視において、一部が条件1~3を満たすものであってもよい。また、上記構成のカーペット1の、条件1~3を満たす部分は、全体に一様の全光線透過率を有していてもよいし、2以上の領域を含み、前記2以上の領域の各々は、前記2以上の領域のうちの別の1以上の領域と異なる全光線透過率を有していてもよい。この実施形態において、カーペット1の条件1~3を満たす部分のより好ましい実施形態は、カーペット1に関して既述の通りである。
【0080】
図2に、カーペット1の、パイル層10の側からの平面視において、全体が条件1~3を満たし、且つ、第1の領域31、第2の領域32、第3の領域33の三種に区画されており、第1の領域31、第2の領域32、第3の領域33は、互いに異なる全光線透過率を有する具体例を示す。この具体例では、第1の領域31、第2の領域32、第3の領域33はそれぞれ複数個所に設けられている。図2に示すカーペット1は、全光線透過率が、第1の領域31、第2の領域32、第3の領域33の順で低減する例を示す。この例では、全光線透過率が最も小さい第3の領域33でも全光線透過率が0.5%以上であるから、カーペット1は平面視における全体が光透過性を有する。そして、図2に示すカーペット1を光源上に設置し、前記光源から光を出力すると、第1の領域31、第2の領域32、第3の領域33の順で通過する光量が低減するため、第1の領域31、第2の領域32、第3の領域33の形状に応じた文字、画像、意匠等を表示することができる。
【0081】
第1の領域31、第2の領域32、第3の領域33の全光線透過率を調節する手段は特に限定されないが、例えば、平面視における全体が一様の構造を有し且つ条件1~3を満たすカーペットを用意し、このカーペットのパイル層を、各領域の染め具合が異なるように位置選択的に染色して、明度が異なる、すなわち全光線透過率が異なる、第1の領域31、第2の領域32、第3の領域33を形成することができる。カーペットのパイル層の位置選択的な染色は、インクジェットプリント機を用いて実施することが好ましい。
【0082】
[第1の部分と第2の部分を含むカーペット]
上記構成のカーペット1は、平面視において、条件1~3を満たす第1の部分と、全光線透過率が0.5%未満の第2の部分とを含んでいてもよい。更に、この場合も、条件1~3を満たす第1の部分は、全体に一様の全光線透過率を有していてもよいし、2以上の領域を含み、前記2以上の領域の各々が、前記2以上の領域のうちの別の1以上の領域と異なる全光線透過率を有していてもよい。
【0083】
図3に、カーペット1の、パイル層10の側からの平面視において、条件1~3を満たす第1の部分30と、全光線透過率が0.5%未満の第2の部分40とを含み、且つ、第1の部分30が更に第1の領域31及び第2の領域32の二種に区画されており、第1の領域31及び第2の領域32が互いに異なる全光線透過率を有する具体例を示す。この具体例では、第1の領域31、第2の領域32、第2の部分40はそれぞれ複数個所に設けられている。図3に示すカーペット1では、全光線透過率が、第1の領域31、第2の領域32、第2の部分40の順で低減する例である。この例では、全光線透過率が最も小さい第2の部分40は全光線透過率が0.5%未満であり光透過性が非常に低く、第1の部分30を構成する第1の領域31及び第2の領域32は光透過性が十分に高い。そして、図3に示すカーペット1を光源上に設置し、前記光源から光を出力すると、第2の部分40では光が遮られ、第1の領域31及び第2の領域32では光が透過し、しかも、第1の領域31、第2の領域32の順で通過する光量が低減するため、第1の領域31、第2の領域32、第2の部分40の形状に応じた文字、画像、意匠等を表示することができる。第2の部分40と隣接する第1の領域31又は第2の領域32は、特に鮮明な像として視認され易い。
【0084】
第1の領域31、第2の領域32、第2の部分40の全光線透過率を調節する手段は特に限定されないが、例えば、平面視における全体が一様の構造を有し且つ条件1~3を満たすカーペットを用意し、このカーペットのパイル層を、各領域の染め具合が異なるように位置選択的に染色して、明度が異なる、すなわち全光線透過率が異なる、第1の領域31、第2の領域32、第2の部分40を形成することができる。カーペットのパイル層の位置選択的な染色は、インクジェットプリント機を用いて実施することが好ましい。
【0085】
カーペット1の第2の部分40の明度(L値)は、全光線透過率が0.5%未満となるように適宜調節することができるが、明度(L値)が典型的には30未満であり、好ましくは20未満である。図示する例ではカーペット1の第2の部分40は、その明度及び全光線透過率が全体的に一様であるが、明度及び全光線透過率が異なる複数の領域を含んでいてもよい。
【0086】
図3に示すような、第1の部分と第2の部分とを含むカーペットにおいて、第1の部分の割合は特に限定されないが、カーペットの平面視において、第1の部分と第2の部分との合計面積に対して、第1の部分の面積が20%以上とすることが好ましい。
【0087】
図3に示すような、第1の部分と第2の部分とを含むカーペットにおいて、第1の部分のより好ましい実施形態は、カーペット1に関して既述の通りである。また、第2の部分の、全光線透過率及び明度以外の特徴に関するより好ましい実施形態は、カーペット1に関して既述の通りである。例えば、第2の部分の摩擦を伴った動的荷重による厚さ減少率は、25.0%以下であることが好ましく、光透過性の低下防止といった品質維持の観点からは上記減少率は小さいほど好ましいが、10%以上又は8%以上であってもよい。
【実施例
【0088】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。実施例及び比較例では、複数のパイル糸を1次基布にタフトすることによって得られたパイル層に、補強材が埋設されたバッキング層を貼り合わせることによって、カーペットを製造した。カーペットの構成要素の条件を種々変更して実施例1~8及び比較例1~4のカーペットを準備し、各カーペットの全光線透過率、明度(L値)及び摩擦を伴った動的荷重による厚さ減少率を測定するとともに、目付(g/m)、抜糸強力(N)、反り(mm)、寸法変化率(%)及び耐光性(級)も測定した。実施例及び比較例におけるカーペットの構成要素及びカーペットの性能は次の方法で測定した。
【0089】
(1)BCFの総繊度および単繊維繊度
1m/周の検尺機にて0.05cN/dtexの張力を掛けながら10回転させて得た、全長10mのかせの重量を測定し、1000倍することで総繊度を求めた。そして総繊度をフィラメント数で除することで単繊維繊度を求めた。
(2)BCF異形度
捲縮糸(BCF)を包埋材で固定して切片を切り出し、脱包埋後、光学顕微鏡で500倍に拡大して写真撮影した。また同じく500倍でスケールも撮影した。該画像をデジタル化した後、三谷商事(株)の画像解析ソフト「WinROOF、ver5.0」を用い、単繊維の横断面の外接円の直径D1と、単繊維の横断面の内接円の直径D2を計測した。そして次式により単繊維の異形度を求めた。そしてBCFを構成する全ての単繊維の異形度を算出した後、大きいものから10個を選択して平均化し、小数第2位を四捨五入した値を異形度とした。
異形度=D1/D2
外接円とは、単繊維の横断面の輪郭と少なくとも2点で接し、単繊維の横断面を包含する円の内で直径が最小のものと定義する。内接円とは、単繊維の横断面の輪郭と少なくとも2点で接し、単繊維の横断面に包含される円の内で直径が最大のものと定義する。
(3)撚り数
JISL1013(2010)に従い、浅野機器(株)製の検撚機を用いて、つかみ間隔を50cmとして8.82mN×表示デシテックスの初荷重の下で試料を取り付け、撚り数を測定し、2倍して1mあたりの撚り数を求めた。
(4)パイル層へのパイル打ち込み密度
カーペットのパイル層をルーペで拡大して、2.54cm当たりのタテ/ヨコの本数を数えたものをパイル打ち込み密度(本/6.45cm)とした。
(5)パイル高さ
金尺定規をカーペット側面に当ててパイル高さ(mm)を測定した。
(6)バッキング層の厚み
金尺定規をカーペット側面に当ててバッキング層の厚さ(mm)を測定した。
(7)目付(重量)
目付の測定対象を50cm角に切り出して重量を測定して、単位面積(1m)あたりに換算したものを上記測定対象の目付(g/m)とした。
(8)明度(L値)
コニカミノルタジャパン株式会社製の分光測色計(CM-3600A)を用いて測定した。具体的には、カーペットから任意に測定面積が706.5mmの領域を5箇所抽出して上記分光測色計で測定し、その平均値を明度とした。
(9)全光線透過率
「JIS7361」に従い、日本電色工業(株)製のヘイズメーター(NDH4000)を用いて測定した。具体的には、測定対象における任意の5箇所の全光線透過率を測定し、その平均値を測定対象の全光線透過率とした。
(10)カーペットの抜糸強力
「JIS L 1021の8.B法(パイル糸引抜き強さ)」に従い、(株)エ-・アンド・デイ製のテンシロン万能材料試験機を用いて測定した。
(11)カーペットの反り
「JIS L 4406の7.9(反り)」に従い測定した。
(12)カーペットの寸法変化率
「JIS L 4406の7.8(熱及び水の影響による寸法の変化率)」に従い測定した。
(13)カーペットの耐光性
「JIS L 4405の9.5.1(耐光堅ろう度)」に従い、スガ試験機(株)製の紫外線フェードメーターを用いて測定した。
(14)摩耗試験
「JIS L 1021の7:2007 5.1(摩擦を伴った動的荷重による厚さ減少)」に従い測定した。
【0090】
[実施例1]
実施例1では、複数のパイル糸を1次基布にタフトすることによって得られたパイル層に、補強材と一体化されたバッキング層を貼り合わせることによって、カーペットを製造した。補強材はシート状を有し、バッキング層内に埋め込まれていた。実施例1のカーペットにおいて、バッキング層は1次基布の裏面に接していた。パイル層及びバッキング層の条件は次のとおりであった。
【0091】
[パイル層]
パイル糸にはBCFを2本撚りあわされた糸を用いた。
・パイル糸の素材:ナイロン6
・BCFの総繊度:1050dtex
・BCFのフィラメント数(単繊維数):54本
・BCFの単繊維の繊度:19.4dtex
・BCFの単繊維の断面形態:Y型
・BCFの単繊維の異型度:3.4
・パイル糸における2本のBCFの撚り数:180回/m
・パイル糸の総繊度:2100(=BCFの総繊度×2(撚り本数))dtex
・パイル糸の色:透明
【0092】
1次基布にはポリエチレンテレフタレート(PET)を用いてスパンボンド法で製造されたPET長繊維不織布を用いた。
・1次基布の目付:100g/m
・1次基布の全光線透過率:71%
・1次基布へのパイル打ち込み密度:128.0(本/6.45cm
・1次基布の厚さ:0.4mm
・パイル高さ:4.0mm
・パイル層の目付:555g/m
【0093】
[バッキング層]
バッキング層には、無機粒子が添加された透明樹脂層にシート状の補強材が埋設されたものを使用した。
・透明樹脂層の材料(バッキング樹脂):塩化ビニル樹脂
・無機粒子の材料:酸化アルミニウム(Al
・無機粒子の添加量:塩化ビニル樹脂100重量部あたり20重量部
・補強材:PETの織物
・補強材の全光線透過率:70%
・バッキング層の全光線透過率:58.8%
・バッキング層の目付:2200g/m
・バッキング層の厚さ:2.0mm
【0094】
[実施例2]
実施例2のカーペットは、以下の条件のパイル層及びバッキング層を用いた点以外は、実施例1と同様の方法で製造されたカーペットであった。
【0095】
[パイル層]
パイル糸には実施例1と同様にBCFを2本撚りあわされた糸を用いた。実施例2のパイル糸は原着されていた。
・パイル糸の素材:ナイロン6
・BCFの総繊度:1382dtex
・BCFのフィラメント数(単繊維数):66本
・BCFの単繊維の繊度:20.9dtex
・BCFの単繊維の断面形態:Y型
・BCFの単繊維の異型度:1.5
・パイル糸における2本のBCFの撚り数:180回/m
・パイル糸の総繊度:2764(=BCFの総繊度×2(撚り本数))dtex
・パイル糸の色:グレー
【0096】
1次基布には、実施例1と同様に、PET長繊維不織布を用いた。
・1次基布の目付:100g/m
・1次基布の全光線透過率:71%
・1次基布へのパイル打ち込み密度:128.0本/6.45cm
・1次基布の厚さ:0.4mm
・パイル高さ:4.0mm
・パイル層の目付:640g/m
【0097】
[バッキング層]
バッキング層には、実施例1と同様に、無機粒子が添加された透明樹脂層にシート状の補強材が埋設されたものを使用した。
・透明樹脂層の材料(バッキング樹脂):塩化ビニル樹脂
・無機粒子の材料:酸化アルミニウム(Al
・無機粒子の添加量:塩化ビニル樹脂100重量部あたり20重量部
・補強材:PETの織物
・補強材の全光線透過率:70%
・バッキング層の全光線透過率:58.8%
・バッキング層の目付:2200g/m
・バッキング層の厚さ:2.0mm
【0098】
[実施例3]
実施例3のカーペットは、原着濃度が異なるパイル糸を用いた点以外は、実施例2と同様に製造されたカーペットであった。実施例3で使用したパイル糸の色も目視ではグレーであった。
【0099】
[実施例4]
実施例4のカーペットは、パイル打ち込み密度が153.6本/6.45cmである点(それに伴いパイル層の目付が770g/mであった点)以外は、実施例2と同様に製造されたカーペットであった。
【0100】
[実施例5]
実施例5のカーペットは、パイル糸の打ち込み密度が166.4本/6.45cmである点(それに伴いパイル層の目付が830g/mであった点)以外は、実施例2と同様に製造されたカーペットであった。
【0101】
[実施例6]
実施例6のカーペットは、パイル糸の打ち込み密度が102.4本/6.45cmである点(それに伴いパイル層の目付が510g/mであった点)以外は、実施例2と同様に製造されたカーペットであった。
【0102】
[実施例7]
実施例7のカーペットは、パイル高さが6.0mmである点(それに伴いパイル層の目付が900g/mであった点)以外は、実施例2と同様に製造されたカーペットであった。
【0103】
[実施例8]
実施例8のカーペットは、パイル高さが8.0mmである点(それに伴いパイル層の目付が1170g/mであった点)以外は、実施例2と同様に製造されたカーペットであった。
【0104】
[比較例1]
比較例1のカーペットは、パイル糸の色はグレーであるが原着濃度が異なるパイル糸を用いた点以外は、実施例2と同様に製造されたカーペットであった。比較例1で使用したパイル糸は、実施例3のパイル糸の原着濃度とも異なっていた。
【0105】
[比較例2]
比較例2のカーペットは、パイル糸の打ち込み密度が185.6本/6.45cmである点(それに伴いパイル層の目付が930g/mであった点)以外は、実施例2と同様に製造されたカーペットであった。
【0106】
[比較例3]
比較例3のカーペットは、パイル糸の打ち込み密度が70本/6.45cmである点(それに伴いパイル層の目付が350g/mであった点)以外は、実施例2と同様に製造されたカーペットであった。
【0107】
[比較例4]
比較例4のカーペットは、バッキング層における無機粒子の添加量が塩化ビニル樹脂100重量部あたり60重量部であった点及びバッキング層の全光線透過率が32%であった点以外は、実施例2と同様に製造されたカーペットであった。
【0108】
実施例1~8及び比較例1~4のカーペットの全光線透過率(%)、明度(L値)、摩擦を伴った動的荷重による厚さ減少率(%)、目付(g/m)、抜糸強力(N)、反り(mm)、寸法変化率(%)及び耐光性(級)の測定結果は表1~表3のとおりであった。
【0109】
【表1】
【表2】
【表3】
【0110】
表1~3に示した結果から理解されるように、比較例1~4では、条件1~3の少なくとも一つを満たしていない。具体的には、比較例1のカーペットは条件1,2を満たしておらず、比較例2のカーペットは条件1を満たしておらず、比較例3のカーペットは条件3を満たしておらず、比較例4のカーペットは条件1を満たしていない。これに対して、実施例1~8では、条件1~3の全てを満たしていた。よって、実施例1~8のカーペットは、条件1,2を満たすことにより優れた光透過性を有するとともに、条件3を満たしていることにより、光透過性を含む品質を維持可能なカーペットであると言える。
【0111】
上記光透過性を、実施例1~8及び比較例1~4のカーペットを実際に(株)オービカルのLEDディスプレイ(NS-FM2115S)の上にカーペットを載せ、カーペットからの文字の見え方を目視で検証した。その結果、条件1,2を満たす実施例1~8及び比較例3では文字を十分確認でき、特に実施例1,3,6及び比較例3では文字をよりはっきり確認できた。一方、条件1,2を満たさない比較例1,2,4では文字を適切に確認できなかった。したがって、条件1,2を満たすことにより、前述したように、カーペットをディスプレイ上に配置した場合に、カーペットを通してディスプレイの文字を表示でき且つ適切に確認可能であることがわかった。一方、比較例3は条件3を満たさないため、ディスプレイ上にカーペットを載せた当初は上記のようにディスプレイの文字を表示できても使用中に光透過性が劣化し、文字認識ができなくなると考えられる。これに対して、実施例1~8では、条件1~3を満たしているため、長期にわたり光透過性を含む品質を維持可能であり、上記のように文字を表示する場合に継続的にカーペットを通してディスプレイに表示された文字を確認可能である。
【0112】
実施例4,5,6及び比較例2,3のカーペットは、パイル打ち込み密度が異なる点以外は実施例2のカーペットと実質的に同じ構成である。具体的には、実施例2、4,5,6のパイル打ち込み密度はそれぞれ、128.0本/6.45cm、153.6本/6.45cm、166.4本/6.45cm、102.4本/6.45cmであり、比較例2,3のパイル打ち込み密度はそれぞれ185.6本/6.45cm、70本/6.45cmであった。このようなパイル打ち込み密度の違いにより、全光線透過率及び摩擦を伴った動的荷重による厚さ減少率に差が生じている。具体的には、パイル打ち込み密度が大きくなるにつれて全光線透過率が減少する一方、摩擦を伴った動的荷重による厚さ減少率は小さくなる。よって、パイル打ち込み密度を調整することで、全光線透過率が減少する一方、摩擦を伴った動的荷重による厚さ減少率を調整し得る。
【0113】
表1~3に示した実施例2,4,5,6及び比較例2,3の結果の比較より、パイル打ち込み密度を80~180本/6.45cmとすることで、条件1及び条件3を満たすことができること、すなわち、高い全光線透過率を実現するとともに、上記減少率を低減可能であることが理解され得る。更に、実施例2,4,5の結果の比較より、パイル打ち込み密度が100~170本/6.45cmであれば、高い全光線透過率を実現するとともに、上記減少率をより低減可能であることがわかる。同様の観点で、パイル打ち込み密度は105~160本/6.45cmが好ましい。
【0114】
実施例3及び比較例1のカーペットは、使用したパイル糸の原着濃度が異なる点以外は実施例2のカーペットと実質的に同じ構成である。表1と表3に示した実施例2,3及び比較例1の結果より、上記原着濃度の違いは明度(L値)の違いに反映され、更に、その明度の違いが全光線透過率の違いに現れていることがわかる。そして、条件2を満たす、すなわち、明度(L値)が30以上であることによって、全光線透過率が0.5%以上であること、すなち、条件1が満たされている。よって、明度を調整することで、カーペットの光透過性を向上でき、高い全光線透過率を実現するためには、明度が30以上である必要があることが理解される。
【0115】
実施例7,8のカーペットは、パイル高さが異なる点以外は実施例2のカーペットと実質的に同じ構成である。表1及び表2に示した実施例2,7,8の結果より、パイル高さの違いにより、全光線透過率及び摩擦を伴った動的荷重による厚さ減少率を調整可能であり、パイル高さが、4~10mm、好ましくは、4~8mmであることによって、条件1,3を満たしやすいことが理解され得る。
【0116】
[実施例9]
実施例1のカーペット1のパイル層(明度83)を、インクジェット染色機を用いて、図4に示すようなアイボリー色の領域31(明度69)、グレー色の領域32(明度40)、ブラック色の領域40(明度15)がそれぞれ複数形成される柄カーペットとなるように染色した。染色したカーペット1の、パイル層側から平面視したときの総面積に対して、明度30以上の領域31、32の合計面積の割合は30%であった。カーペット1の各領域での全光線透過率を確認したところ、アイボリー色の領域31は17.42%、グレー色の領域32は2.16%、ブラック色の領域40は0.13%であった。本実施例に係るカーペット1において、アイボリー色の領域31及びグレー色の領域32がそれぞれ光をよく透過することができる第1の部分30に該当し、なかでも、アイボリー色の領域31が光を特に良く透過することができた。本実施例に係るカーペット1において、ブラック色の領域4は、全光線透過率が0.5%未満の第2の部分に該当する。
【0117】
以上、本発明の種々の実施形態及び実施例を説明した。しかしながら、本発明は、例示した種々の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0118】
例えば、カーペットが条件1~3を満たす場合には、バッキング層は、パイル層に対して例えばプリコート層といった他の層を介して配置されてもよい。更に、実施形態及び実施例で示した各構成要素の条件は、条件1~3を満たすように適宜組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0119】
1…カーペット、10…パイル層、11…1次基布、11a…表面、11b…裏面、12…パイル糸、20…バッキング層、30・・・第1の部分、31・・・条件1~3を満たす第1の領域、32・・・条件1~3を満たす第2の領域、33・・・条件1~3を満たす第3の領域、40・・・第2の部分。
図1
図2
図3
図4