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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】超音波流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/66 20220101AFI20230728BHJP
【FI】
G01F1/66 Z
G01F1/66 101
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019082375
(22)【出願日】2019-04-24
(65)【公開番号】P2020180814
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-02-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木場 康雄
(72)【発明者】
【氏名】安田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】中井 弘
(72)【発明者】
【氏名】中村 政則
(72)【発明者】
【氏名】賀門 健一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕史
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-172556(JP,A)
【文献】特開2014-092467(JP,A)
【文献】特開平09-033308(JP,A)
【文献】特開2011-158470(JP,A)
【文献】特開2008-164465(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0236533(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波信号を送受信可能な一対の超音波振動子と、
一方の前記超音波振動子から送信され、流体を伝搬した超音波信号を他方の前記超音波振動子が受信するまでの超音波の伝搬時間を測定する伝搬時間測定部と、
受信側の前記超音波振動子が受信した受信波の第m波目を検知する受信検知回路と、
送信側の前記超音波振動子から超音波を送信して1回目の受信波の第m波目を前記受信検知回路で検知するまでの第1伝搬時間TPと、受信側の前記超音波振動子と送信側の前記超音波振動子で1回づつ反射して受信側の前記超音波振動子に達した2回目の受信波の第m波目を前記受信検知回路で検知するまでの第2伝搬時間TP2を測定し、前記第1伝搬時間TPと第2伝搬時間TP2の差の2分の1より前記超音波振動子間の真の伝搬時間TP0を求め、この真の伝搬時間TP0と前記第1伝搬時間TPの差より受信側の前記超音波振動子に超音波が到達して前記受信検知回路で受信開始から超音波の受信波の第m波目を受信したと検知するまでの受信遅れ時間TRを算出する受信遅れ時間測定手段と、
前記受信遅れ時間測定手段による前記受信遅れ時間TRの測定を所定のタイミングで行って所定回数分の前記受信遅れ時間TRを保存する受信遅れ時間保存手段と、
前記所定回数分の前記受信遅れ時間TRが保存された時点で保存された前記受信遅れ時間TRの平均値を受信遅れ時間補正値TRCとして保存し更新する受信遅れ時間補正値更新手段と、
前記受信遅れ時間補正値TRCを用いて前記伝搬時間測定部で測定した前記第1伝搬時間TPから前記受信遅れ時間補正値TRCを引いて補正伝搬時間TPCを求める伝搬時間補正手段と、
前記補正伝搬時間TPCまたは前記真の伝搬時間TP0から演算によって前記超音波振動子間を満たす流体の流量をもとめる制御部と、
被測定流体の温度を測定するための温度センサと、を備え、
前記受信遅れ時間保存手段は、前記温度センサで測定した流体の温度と、前記第1伝搬時間TPと、超音波の受信信号を所定の振幅に増幅する増幅率のいずれかが第1の所定の値以上に変化したタイミングで前記受信遅れ時間TRの保存を開始し、以後、前記流体の温度と、前記第1伝搬時間TPと、前記増幅率のいずれかの変化量が第2の所定の値以下の場合のみ前記受信遅れ時間測定手段により測定された前記受信遅れ時間TRを追加で保存する超音波流量計。
【請求項2】
前記受信遅れ時間測定手段の測定動作の前後において、前記温度センサで測定した前記流体の温度と、前記第1伝搬時間TPと、超音波の受信信号を所定の振幅に増幅する前記増幅率のいずれか、或いは、すべての値が所定の変化量以内であるか否かを判定する受信遅れ時間測定条件判定手段を備え、
前記受信遅れ時間保存手段は、前記受信遅れ時間測定条件判定手段で所定の変化量以内でないと判定された場合は、前記受信遅れ時間測定手段により測定された前記受信遅れ時間TRを保存しない請求項1に記載の超音波流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の送受信可能な超音波振動子を用いて超音波の伝搬時間を測定し、被測定流体の流量を計測する超音波流量計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波流量計に用いられている超音波伝搬時間の測定方法は、一対の送受信可能な超音波振動子を対向して配置し、一方の超音波振動子をバースト信号で駆動し、超音波を送信し、他方の超音波振動子で受信して測定していた。図4は、伝搬時間の測定方法を説明する為の受信波形のイメージ図で、横軸に時間を、縦軸に電圧を示す。図中の起点T0は駆動波16の開始時点を、終点T1は駆動開始後、第m(図ではm=3)波終了時点を示す。起点R0は受信開始時点を、終点R1は受信開始後、第m波終了時点を示す。このように、駆動波16の第m波目のゼロクロス点を終点T1とし、受信側の超音波送受信器で受信した受信波の第m波目を終点R1として、終点T1と終点R1との間の時間を超音波の伝搬時間TP1として測定し、この伝搬時間TP1を用いて流体の流速を計測し、流量を演算していた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は、特許文献2に記載された超音波流量計の構成を示すものである。この超音波流量計100は流体の流れる測定流路101に設置した超音波振動子102と、超音波振動子102を駆動する駆動回路103と、駆動回路103にスタート信号を出力する制御部104と、超音波の伝搬時間を測定する伝搬時間測定部105と、超音波振動子102から送信した超音波を受ける超音波振動子107と、超音波振動子107の出力を増幅するアンプ106と、アンプ106の出力と検知基準電圧18とを比較し大小関係が反転したときに伝搬時間測定部105を停止させる受信検知回路108から構成されている。
【0004】
また、音速に対する温度の影響を無視できるように伝搬時間逆数差法を用いるために、測定流路101の上流側から下流側への超音波の伝搬時間と下流側から上流側への伝搬時間が測定できるように、切り替えスイッチ109を備えている。
【0005】
さらに、超音波振動子のバラツキや温度変化等によって超音波振動子内の遅れ時間や受信波の変化による受信遅れ時間が変化した場合でも、超音波の伝搬時間が正確に測定できるように、送信側の超音波振動子から超音波を送信して1回目の受信波(第1受信波)の第m波目を受信検知回路108で受信するまでの伝搬時間TPと、受信側の超音波振動子と送信側の超音波振動子に1回づつ反射して受信側の超音波振動子に達した2回目の受信波(第2受信波)の第m波目を受信検知回路108で受信するまでの第2伝搬時間TP2を測定し、伝搬時間TPと第2伝搬時間TP2の差の2分の1より超音波振動子間の真の伝搬時間TP0と真の受信遅れ時間TRを求める受信遅れ時間測定手段110を備えている。
【0006】
図6に第1受信波と第2受信波のイメージ図を示す。図に示すように、送信側の超音波振動子は、駆動波16で駆動されて超音波信号を送信し、受信側の超音波振動子は第1受信波17として受信する。同時に、反射波が発生して送信側の超音波振動子に波形21として到達して反射される。そして、この反射波を受信側の超音波振動子が第2受信波22として受信する。ここで、TRが測定した伝搬時間の遅れ時間である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平9-33308号公報
【文献】特開2005-172556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載された超音波流量計によると受信遅れ時間の測定が可能となり高精度の流量計測が行えるが、第2受信波は被計測流体が気体の場合、伝搬中の減衰が大きく受信信号が非常に小さいため、ノイズや温度の影響を受けやすく、要求される精度での計測を実現するためには超音波流量計の使用環境を電気的、温度的に限定する必要があるという課題があった。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、ノイズや温度の影響を軽減することによって、設置環境が限定されずに高精度な計測を実現できる超音波流量計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明の超音波流量計は、超音波信号を送受信可能な一対の超音波振動子と、一方の前記超音波振動子から送信され、流体を伝搬した超音波信号を他方の前記超音波振動子が受信するまでの超音波の伝搬時間を測定する伝搬時間測定部と、受信側の前記超音波振動子が受信した受信波の第m波目を検知する受信検知回路と、送信側の前記超音波振動子から超音波を送信して1回目の受信波の第m波目を前記受信検知回路で検知するまでの第1伝搬時間TPと、受信側の前記超音波振動子と送信側の前記超音波振動子で1回づつ反射して受信側の前記超音波振動子に達した2回目の受信波の第m波目を前記受信検知回路で検知するまでの第2伝搬時間TP2を測定し、前記第1伝搬時間TPと第2伝搬時間TP2の差の2分の1より前記超音波振動子間の真の伝搬時間TP0を求め、この真の伝搬時間TP0と前記第1伝搬時間TPの差より受信側の前記超音波振動子に超音波が到達して前記受信検知回路で受信開始から超音波の受信波の第m波目を受信したと検知するまでの受信遅れ時間TRを算出する受信遅れ時間測定手段と、前記受信遅れ時間測定手段による前記受信遅れ時間TRの測定を所定のタイミングで行って所定回数分の前記受信遅れ時間TRを保存する受信遅れ時間保存手段と、前記所定回数分の前記受信遅れ時間TRが保存された時点で保存された前記受信遅れ時間TRの平均値を受信遅れ時間補正値TRCとして保存し更新する受信遅れ時間補正値更新手段と、前記受信遅れ時間補正値TRCを用いて前記伝搬時間測定部で測定した前記第1伝搬時間TPから前記受信遅れ時間補正値TRCを引いて補正伝搬時間TPCを求める伝搬時間補正手段と、前記補正伝搬時間TPCまたは前記真の伝搬時間TP0から演算によって前記超音波振動子間を満たす流体の流量をもとめる制御部と、被測定流体の温度を測定するための温度センサと、を備える。前記受信遅れ時間保存手段は、前記温度センサで測定した流体の温度と、前記第1伝搬時間TPと、超音波の受信信号を所定の振幅に増幅する増幅率のいずれかが第1の所定の値以上に変化したタイミングで前記受信遅れ時間TRの保存を開始し、以後、前記流体の温度と、前記第1伝搬時間TPと、前記増幅率のいずれかの変化量が第2の所定の値以下の場合のみ前記受信遅れ時間測定手段により測定された前記受信遅れ時間TRを追加で保存する。これにより、受信遅れ時間へのノイズや温度の影響を軽減させることができ、高精度な超音波流量計が実現できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の超音波流量計は、ノイズや温度変化の影響を受けずに流量計算に使用する受信遅れ時間が設定できるため、使用環境が限定されずに高精度な流量計測を維持できる超音波流量計の実現が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態1における超音波流量計の構成図
図2】本発明の実施の形態2における超音波流量計の構成図
図3】本発明の実施の形態3における超音波流量計の構成図
図4】超音波の伝搬時間の測定方法を説明する為の超音波の受信波形のイメージ図
図5】従来例の超音波流量計の構成図
図6】第1受信波、第2受信波を含む受信波形のイメージ図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、超音波信号を送受信可能な一対の超音波振動子と、一方の前記超音波振動子から送信され、流体を伝搬した超音波信号を他方の前記超音波振動子が受信するまでの超音波の伝搬時間を測定する伝搬時間測定部と、受信側の前記超音波振動子が受信した受信波の第m波目を検知する受信検知回路と、送信側の超音波振動子から超音波を送信して1回目の受信波の第m波目を前記受信検知回路で検知するまでの第1伝搬時間TPと、受信側の超音波振動子と送信側の超音波振動子で1回づつ反射して受信側の超音波振動子に達した2回目の受信波の第m波目を前記受信検知回路で検知するまでの第2伝搬時間TP2を測定し、前記第1伝搬時間TPと第2伝搬時間TP2の差の2分の1より前記超音波振動子間の真で伝搬時間TP0を求め、この真の伝搬時間TP0と前記第1伝搬時間TPの差より受信側の前記超音波振動子に超音波が到達して受信検知回路で受信開始から超音波の受信波の第m波目を受信したと検知するまでの受信遅れ時間TRを算出する受信遅れ時間測定手段と、前記受信遅れ時間測定手段による前記受信遅れ時間TRの測定を所定のタイミングで行って所定回数分の受信遅れ時間TRを保存する受信遅れ時間保存手段と、前記所定回数分の受信遅れ時間TRが保存された時点で保存された受信遅れ時間の平均値を受信遅れ時間補正値TRCとして保存し更新する受信遅れ時間補正値更新手段と、前記受信遅れ時間補正値TRCを用いて前記伝搬時間測定部で測定した前記第1伝搬時間TPから前記受信遅れ時間補正値TRCを引いて補正伝搬時間TPCを求める伝搬時間補正手段と、前記補正伝搬時間TPCまたは前記真の伝搬時間TP0から演算によって前記超音波振動子間を満たす流体の流量をもとめる制御部と、を備えたことによって、流量計算に使用する受信遅れ時間へのノイズや温度の影響を軽減させることができ、高精度な超音波流量計が実現できる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明の構成に加えて、被測定流体の温度を測定するための温度センサを備え、前記受信遅れ時間保存手段は、前記温度センサで測定した流体の温度と、前記第1伝搬時間TPと、超音波の受信信号を所定の振幅に増幅する増幅率のいずれかが第1の所定の値以上に変化したタイミングで受信遅れ時間TRの保存を開始し、以後、前記流体の温度と、前記第1伝搬時間TPと、前記増幅率のいずれかの変化量が第2の所定の値以下の場合のみ前記受信遅れ時間測定手段により測定された受信遅れ時間TRを追加で保存することによって、温度や被測定気体の変化の影響を受けることなく、受信遅れ時間を正確に測定でき、高精度な超音波流量計が実現できる。
【0015】
第3の発明は、第2の発明の構成に加えて、前記受信遅れ時間測定手段の測定動作の前後において、前記温度センサで測定した流体の温度と、前記第1伝搬時間TPと、超音波の受信信号を所定の振幅に増幅する増幅率のいずれか、或いは、すべての値が所定の変化量以内であるか否かを判定する受信遅れ時間測定条件判定手段を備え、前記受信遅れ時間保存手段は、前記受信遅れ時間測定条件判定手段で所定の変化量以内でないと判定された場合は、前記受信遅れ時間測定手段により測定された受信遅れ時間TRを保存しないことによって、第1伝搬時間TPと第2伝搬時間TP2を測定している間に温度変化や気体の変化があった場合の影響を受けた受信遅れ時間補正値TRCを補正することがなくなるため、より高精度な超音波流量計を実現できる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における超音波流量計の構成図を示すものである。
【0018】
本実施の形態の超音波流量計20の基本的な構成は、測定流路1の上流と下流に設置し
た一対の超音波振動子2、7と、一対の超音波振動子2、7の送受信の設定切り替えを行う切り替えスイッチ9と、送信側に設定された超音波振動子を駆動する駆動回路3と、駆動回路3にスタート信号を出力する制御部4と、超音波の伝搬時間を測定する伝搬時間測定部5と、受信側に設定された超音波振動子で受信した超音波信号を所定の振幅に増幅するアンプ6と、アンプ6の出力と検知基準電圧18とを比較し大小関係が反転したときに伝搬時間測定部5を停止させる受信検知回路8から構成されている。
【0019】
さらに、超音波振動子のバラツキや温度変化等によって超音波振動子内の遅れ時間や受信波形の変化による受信遅れ時間が変化した場合でも、超音波の伝搬時間が正確に測定できるように、送信側の超音波振動子から超音波を送信して1回目の受信波(第1受信波)の第m波目を受信検知回路8で受信するまでの伝搬時間TPと、受信側の超音波振動子と送信側の超音波振動子に1回づつ反射して受信側の超音波振動子に達した2回目の受信波(第2受信波)の第m波目を受信検知回路で受信するまでの伝搬時間TP2を測定し、前記2つの伝搬時間の差の2分の1より超音波振動子間の真の伝搬時間TP0と真の受信遅れ時間TRを求める受信遅れ時間測定手段10を備えている。
【0020】
また、制御部4は、流量計算に使用する受信遅れ時間TRが超音波流量計の設置環境による電気的、温度的な影響を受けることを軽減させるために、受信遅れ時間保存手段12と受信遅れ時間補正値更新手段13を備えている。
【0021】
受信遅れ時間保存手段12は、受信遅れ時間測定手段10で測定された受信遅れ時間TRを予め設定された所定回数分(N個とする)保存する。そして、受信遅れ時間補正値更新手段13は、受信遅れ時間保存手段12に保存されたN個の受信遅れ時間TRを平均し、平均した結果に基づき流量計算に使用する受信遅れ時間補正値TRCとして更新する。
【0022】
伝搬時間補正手段11は、伝搬時間測定部5で測定された第1受信波の伝搬時間TPから受信遅れ時間補正値更新手段13で更新された受信遅れ時間補正値TRCを引いて補正伝搬時間TPCを求める。
【0023】
そして、制御部4は、伝搬時間補正手段11で補正された補正伝搬時間TPCを用いることで流量を演算することができる。なお、第2受信波を計測する場合は、真の伝搬時間TP0を用いて流体の流量を演算することもできる。
【0024】
なお、受信遅れ時間補正値更新手段13による受信遅れ時間保存手段12に保存された受信遅れ時間補正値TRCの更新方法としては、受信遅れ時間測定手段10で新たな受信遅れ時間TRを測定する毎に今回測定した新たな受信遅れ時間TRに前回までに計測したN-1個の受信遅れ時間TRを加えたN個の平均による移動平均を求めて更新する方法や、受信遅れ時間測定手段10で受信遅れ時間TRをN個測定する毎に平均を求めて書き換える方法を採用できる。
【0025】
本実施の形態によると、受信遅れ時間測定手段10による受信遅れ時間TRの測定結果を平均化することによって、ノイズや温度変化の影響を軽減でき、設置環境を限定されずに高精度な流量計測を実現できる。
【0026】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における超音波流量計の構成図を示すものである。本実施の形態の超音波流量計30の基本的な構成、動作は実施の形態1と同じである。実施の形態1との差異は、測定流路1内に温度センサ14を備え、被測定気体の温度を測定可能にしたことと、受信遅れ時間保存手段12に受信遅れ時間TRを保存するための条件を追加したことである。
【0027】
本実施の形態の受信遅れ時間保存手段12は、前回、受信遅れ時間補正値更新手段13で受信遅れ時間補正値TRCが更新されてから温度センサ14で測定された被測定気体の温度と第1伝搬時間TPとアンプの増幅率のいずれかが、それぞれの値に対して設定された第1の所定の値以上変化した場合に受信遅れ時間測定手段10で測定された受信遅れ時間TRの保存を開始する。
【0028】
更に、受信遅れ時間保存手段12は、受信遅れ時間保存手段12で受信遅れ時間TRの保存を開始した時点の被測定気体の温度と第1伝搬時間TPと増幅率の3つの値に対するそれぞれの変化を監視し、3つの値のいずれか、あるいはすべて値の変化幅がそれぞれの値に対して設定された第2の所定の値以下の場合のみ受信遅れ時間TRを追加で保存する。
【0029】
そして、受信遅れ時間補正値更新手段13は、受信遅れ時間保存手段12に所定回数分(N個とする)の受信遅れ時間TRが保存されたタイミングでN個の受信遅れ時間TRを平均して受信遅れ時間補正値TRCを更新する。ただし、受信遅れ時間TRの保存の開始から所定の時間以内にN個の受信遅れ時間TRが保存できなかった場合は、受信遅れ時間保存手段12に保存できた個数の受信遅れ時間TRを平均して受信遅れ時間補正値TRCを更新する方法や、受信遅れ時間保存手段12に保存されている受信遅れ時間TRを消去し、次にN個の受信遅れ時間TRが保存されるまで受信遅れ時間補正値TRCの更新を延期する方法を採用する。
【0030】
本実施の形態によると、温度変化や被測定気体の種類が変化した場合の影響によって、誤った受信遅れ時間補正値TRCを採用することがなくなるため、超音波流量計の周囲環境の変化の影響を受けることなく、高精度な計測性能を実現できる。
【0031】
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3における超音波流量計の構成図を示すものである。本実施の形態の超音波流量計40の基本的な構成、動作は実施の形態2と同じである。実施の形態2との差異は、制御部4に受信遅れ時間測定条件判定手段15を設けたことである。
【0032】
受信遅れ時間測定条件判定手段15は、受信遅れ時間測定手段10で受信遅れ時間TRを測定する前後において、温度センサ14で測定した流体の温度と、第1伝搬時間TPと、アンプ6の増幅率のいずれか、或いは、すべての値がそれぞれの値に対して設定された所定の変化量以内であるか否かを確認する。そして、受信遅れ時間保存手段12は、受信遅れ時間測定条件判定手段15で、所定の変化量以内でないと判定された場合は測定された受信遅れ時間TRを保存しないようにする。
【0033】
本実施の形態によると、第1伝搬時間TPと第2伝搬時間TP2を測定している間に温度変化や気体の変化があった場合の影響を受けた受信遅れ時間TRを採用しなくなるので、より高精度な超音波流量計を実現できる。
【0034】
なお、本実施の形態では、超音波の伝搬経路が測定流路1の流れ方向に一致するように上流と下流に一対の超音波振動子2,7を対向して配置した構成で説明したが、一対の超音波振動子2,7と超音波の伝搬経路はこれに限らず、(1)超音波の伝搬経路が測定流路1の流れ方向に対して斜めに横切るように上流と下流に一対の超音波振動子2,7を対向して配置したもの、(2)測定流路1の上流と下流の同一面に一対の超音波振動子2,7を配置し、超音波の伝搬経路が測定流路1の対向する面に1回反射するようにしたもの、(3)測定流路1の上流と下流の同一面に一対の超音波振動子2,7を配置し、超音波の伝搬経路が測定流路1の対向する面に2回反射するようにしたものなど、種々の形態を
採用できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、本発明にかかる超音波流量計は、受信遅れ時間へのノイズや温度変化の影響を軽減できるため、ノイズや温度変化が想定される設置環境においても高精度な超音波流量計を実現することが可能となり、ガスメータ等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 測定流路
2、7 超音波振動子
3 駆動回路
4 制御部
5 伝搬時間測定部
6 アンプ
8 受信検知回路
9 切り替えスイッチ
10 受信遅れ時間測定手段
11 伝搬時間補正手段
12 受信遅れ時間保存手段
13 受信遅れ時間補正値更新手段
14 温度センサ
15 受信遅れ時間測定条件判定手段
20、30、40 超音波流量計
図1
図2
図3
図4
図5
図6