(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】制御システム、スイッチシステム、電力変換装置、双方向スイッチ素子の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20230728BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20230728BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20230728BHJP
H01L 21/337 20060101ALI20230728BHJP
H01L 29/808 20060101ALI20230728BHJP
H03K 17/68 20060101ALI20230728BHJP
H03K 17/04 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/80 W
H03K17/68
H03K17/04 E
(21)【出願番号】P 2020527377
(86)(22)【出願日】2019-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2019023236
(87)【国際公開番号】W WO2020004030
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2021-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2018125451
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 雄介
(72)【発明者】
【氏名】山田 康博
(72)【発明者】
【氏名】梅田 英和
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-172298(JP,A)
【文献】特開2011-151528(JP,A)
【文献】特開2012-004253(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099053(WO,A1)
【文献】特開2010-094006(JP,A)
【文献】特開2011-109761(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159559(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/872
H01L 21/338
H01L 21/337
H03K 17/68
H03K 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
双方向スイッチ素子を制御する制御システムであって、
前記双方向スイッチ素子は、
基板と、
前記基板上に形成された第1の窒化物半導体層と、
前記第1の窒化物半導体層上に形成されており、前記第1の窒化物半導体層よりもバンドギャップの大きな第2の窒化物半導体層と、
前記第2の窒化物半導体層上に形成されている第1のソース電極、第1のゲート電極、第2のゲート電極、及び第2のソース電極と、
前記第1のゲート電極と前記第2の窒化物半導体層との間に介在している第1のp型窒化物半導体層と、
前記第2のゲート電極と前記第2の窒化物半導体層との間に介在している第2のp型窒化物半導体層と、を備え、
前記制御システムは、制御部を備え、
前記基板は、前記第1のソース電極、前記第2のソース電極、前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極の全てに対して電気的に絶縁されており、
前記制御部は、前記双方向スイッチ素子をターンオンさせる場合、前記第1のゲート電極又は前記第2のゲート電極であって前記第1のソース電極と前記第2のソース電極とのうち低電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第1タイミングと、高電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第2タイミングと、に時間差を生じさせるように前記双方向スイッチ素子を制御する、
制御システム。
【請求項2】
双方向スイッチ素子を制御する制御システムであって、
前記双方向スイッチ素子は、
基板と、
前記基板上に形成された第1の窒化物半導体層と、
前記第1の窒化物半導体層上に形成されており、前記第1の窒化物半導体層よりもバンドギャップの大きな第2の窒化物半導体層と、
前記第2の窒化物半導体層上に形成されている第1のソース電極、第1のゲート電極、第2のゲート電極、及び第2のソース電極と、
前記第1のゲート電極と前記第2の窒化物半導体層との間に介在している第1のp型窒化物半導体層と、
前記第2のゲート電極と前記第2の窒化物半導体層との間に介在している第2のp型窒化物半導体層と、を備え、
前記制御システムは、制御部を備え、
前記制御部は、前記双方向スイッチ素子をターンオンさせる場合、前記第1のゲート電極又は前記第2のゲート電極であって前記第1のソース電極と前記第2のソース電極とのうち低電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第1タイミングと、高電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第2タイミングと、に時間差を生じさせるように前記双方向スイッチ素子を制御し、
前記制御部は、前記双方向スイッチ素子をターンオフさせる場合、前記双方向スイッチ素子をダイオードとして動作させない、
制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1タイミングと前記第2タイミングとの間の期間に、前記双方向スイッチ素子をダイオードとして動作させ、
前記双方向スイッチ素子は、前記ダイオードとして動作するとき、前記第1のソース電極と前記第2のソース電極とのうち相対的に電位の低いソース電極から相対的に電位の高いソース電極へ電流を流さず、かつ相対的に電位の高いソース電極から相対的に電位の低いソース電極へ電流を流す、
請求項1又は2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記時間差は、50nsec以上である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記時間差を生じさせる遅延回路を含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記双方向スイッチ素子をターンオフさせる場合、前記双方向スイッチ素子をダイオードとして動作させない、
請求項
1に記載の制御システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の制御システムと、前記双方向スイッチ素子と、を備える、
スイッチシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のスイッチシステムを備える、
電力変換装置。
【請求項9】
双方向スイッチ素子の制御方法であって、
前記双方向スイッチ素子は、
基板と、
前記基板上に形成された第1の窒化物半導体層と、
前記第1の窒化物半導体層上に形成されており、前記第1の窒化物半導体層よりもバンドギャップの大きな第2の窒化物半導体層と、
前記第2の窒化物半導体層上に形成されている第1のソース電極、第1のゲート電極、第2のゲート電極、及び第2のソース電極と、
前記第1のゲート電極と前記第2の窒化物半導体層との間に介在している第1のp型窒化物半導体層と、
前記第2のゲート電極と前記第2の窒化物半導体層との間に介在している第2のp型窒化物半導体層と、を備え、
前記基板は、前記第1のソース電極、前記第2のソース電極、前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極の全てに対して電気的に絶縁されており、
前記双方向スイッチ素子をターンオンさせる場合、前記第1のゲート電極又は前記第2のゲート電極であって前記第1のソース電極と前記第2のソース電極とのうち低電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第1タイミングと、高電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第2タイミングと、に時間差を生じさせるように前記双方向スイッチ素子を制御する、
双方向スイッチ素子の制御方法。
【請求項10】
双方向スイッチ素子の制御方法であって、
前記双方向スイッチ素子は、
基板と、
前記基板上に形成された第1の窒化物半導体層と、
前記第1の窒化物半導体層上に形成されており、前記第1の窒化物半導体層よりもバンドギャップの大きな第2の窒化物半導体層と、
前記第2の窒化物半導体層上に形成されている第1のソース電極、第1のゲート電極、第2のゲート電極、及び第2のソース電極と、
前記第1のゲート電極と前記第2の窒化物半導体層との間に介在している第1のp型窒化物半導体層と、
前記第2のゲート電極と前記第2の窒化物半導体層との間に介在している第2のp型窒化物半導体層と、を備え、
前記双方向スイッチ素子をターンオンさせる場合、前記第1のゲート電極又は前記第2のゲート電極であって前記第1のソース電極と前記第2のソース電極とのうち低電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第1タイミングと、高電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第2タイミングと、に時間差を生じさせるように前記双方向スイッチ素子を制御し、
前記双方向スイッチ素子をターンオフさせる場合、前記双方向スイッチ素子をダイオードとして動作させない、
双方向スイッチ素子の制御方法。
【請求項11】
基板と、
前記基板上に形成された第1の窒化物半導体層と、
前記第1の窒化物半導体層上に形成されており、前記第1の窒化物半導体層よりもバンドギャップの大きな第2の窒化物半導体層と、
前記第2の窒化物半導体層上に形成されている第1のソース電極、第1のゲート電極、第2のゲート電極、及び第2のソース電極と、
前記第1のゲート電極と前記第2の窒化物半導体層との間に介在している第1のp型窒化物半導体層と、
前記第2のゲート電極と前記第2の窒化物半導体層との間に介在している第2のp型窒化物半導体層と、を備え、
前記基板は、前記第1のソース電極、前記第2のソース電極、前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極の全てに対して電気的に絶縁されている、双方向スイッチ素子を制御するコンピュータシステムに、
前記双方向スイッチ素子をターンオンさせる場合、前記第1のゲート電極又は前記第2のゲート電極であって前記第1のソース電極と前記第2のソース電極とのうち低電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第1タイミングと、高電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第2タイミングと、に時間差を生じさせる遅延処理を実行させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御システム、スイッチシステム、電力変換装置、双方向スイッチ素子の制御方法及びプログラムに関し、より詳細には、2つのゲート電極を備える双方向スイッチ素子を制御する制御システム、その制御システムを備えるスイッチシステム、そのスイッチシステムを備える電力変換装置、双方向スイッチ素子の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダブルゲート(デュアルゲート)の半導体素子である双方向スイッチ素子が提案されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載された双方向スイッチ素子は、シリコンからなる導電性の基板上にAlNからなるバッファ層を介在させて、半導体層積層体が形成されている。半導体層積層体は、アンドープのGaNからなる第1の層(GaN層)と、アンドープのAlGaNからなる第2の層(第1のAlGaN層)とが下側から順次積層されている。
【0004】
第1の層の第2の層とのヘテロ界面近傍には、2次元電子ガス層であるチャネル領域が生成されている。
【0005】
半導体層積層体の上には、互いに間隔をおいて第1のオーミック電極(第1のソース電極)及び第2のオーミック電極(第2のソース電極)が形成されている。半導体層積層体の上における第1のオーミック電極と第2のオーミック電極との間の領域に、第1のオーミック電極側から順に、第1のp型窒化物半導体層を介在させて形成された第1のゲート電極と、第2のp型窒化物半導体層を介在させて形成された第2のゲート電極と、が並んでいる。
【0006】
特許文献1に記載の双方向スイッチ素子では、例えば基板を電気的にフローティングにした状態で使用された場合に、基板を接地して使用した場合と比べて、ターンオン時のスイッチング速度が遅くなってしまうという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【0008】
本開示の目的は、双方向スイッチ素子をターンオンさせるときのスイッチング速度を向上させることが可能な制御システム、スイッチシステム、電力変換装置、双方向スイッチ素子の制御方法及びプログラムを提供することにある。
【0009】
本開示に係る一態様の制御システムは、双方向スイッチ素子を制御するシステムである。前記双方向スイッチ素子は、基板と、第1の窒化物半導体層と、第2の窒化物半導体層と、第1のソース電極と、第1のゲート電極と、第2のゲート電極と、第2のソース電極と、第1のp型窒化物半導体層と、第2のp型窒化物半導体層と、を備える。前記第1の窒化物半導体層は、前記基板上に形成されている。前記第2の窒化物半導体層は、前記第1の窒化物半導体層上に形成されている。前記第2の窒化物半導体層のバンドギャップは、前記第1の窒化物半導体層のバンドギャップよりも大きい。前記第1のソース電極、前記第1のゲート電極、前記第2のゲート電極、及び前記第2のソース電極は、前記第2の窒化物半導体層上に形成されている。前記第1のp型窒化物半導体層は、前記第1のゲート電極と前記第2の窒化物半導体層との間に介在している。前記第2のp型窒化物半導体層は、前記第2のゲート電極と前記第2の窒化物半導体層との間に介在している。前記制御システムは、制御部を備える。前記基板は、前記第1のソース電極、前記第2のソース電極、前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極の全てに対して電気的に絶縁されている。前記制御部は、前記双方向スイッチ素子をターンオンさせる場合、前記第1のゲート電極又は前記第2のゲート電極であって前記第1のソース電極と前記第2のソース電極とのうち低電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第1タイミングと、高電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第2タイミングと、に時間差を生じさせるように前記双方向スイッチ素子を制御する。
本開示に係る一態様の制御システムは、双方向スイッチ素子を制御するシステムである。前記双方向スイッチ素子は、基板と、第1の窒化物半導体層と、第2の窒化物半導体層と、第1のソース電極と、第1のゲート電極と、第2のゲート電極と、第2のソース電極と、第1のp型窒化物半導体層と、第2のp型窒化物半導体層と、を備える。前記第1の窒化物半導体層は、前記基板上に形成されている。前記第2の窒化物半導体層は、前記第1の窒化物半導体層上に形成されている。前記第2の窒化物半導体層のバンドギャップは、前記第1の窒化物半導体層のバンドギャップよりも大きい。前記第1のソース電極、前記第1のゲート電極、前記第2のゲート電極、及び前記第2のソース電極は、前記第2の窒化物半導体層上に形成されている。前記第1のp型窒化物半導体層は、前記第1のゲート電極と前記第2の窒化物半導体層との間に介在している。前記第2のp型窒化物半導体層は、前記第2のゲート電極と前記第2の窒化物半導体層との間に介在している。前記制御システムは、制御部を備える。前記制御部は、前記双方向スイッチ素子をターンオンさせる場合、前記第1のゲート電極又は前記第2のゲート電極であって前記第1のソース電極と前記第2のソース電極とのうち低電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第1タイミングと、高電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第2タイミングと、に時間差を生じさせるように前記双方向スイッチ素子を制御する。前記制御部は、前記双方向スイッチ素子をターンオフさせる場合、前記双方向スイッチ素子をダイオードとして動作させない。
【0010】
本開示に係る一態様のスイッチシステムは、前記制御システムと、前記双方向スイッチ素子と、を備える。
【0011】
本開示に係る一態様の電力変換装置は、前記スイッチシステムを備える。
【0012】
本開示に係る一態様の双方向スイッチ素子の制御方法では、前記双方向スイッチ素子は、基板と、第1の窒化物半導体層と、第2の窒化物半導体層と、第1のソース電極と、第1のゲート電極と、第2のゲート電極と、第2のソース電極と、第1のp型窒化物半導体層と、第2のp型窒化物半導体層と、を備える。前記第1の窒化物半導体層は、前記基板上に形成されている。前記第2の窒化物半導体層は、前記第1の窒化物半導体層上に形成されている。前記第2の窒化物半導体層のバンドギャップは、前記第1の窒化物半導体層のバンドギャップよりも大きい。前記第1のソース電極、前記第1のゲート電極、前記第2のゲート電極、及び前記第2のソース電極は、前記第2の窒化物半導体層上に形成されている。前記第1のp型窒化物半導体層は、前記第1のゲート電極と前記第2の窒化物半導体層との間に介在している。前記第2のp型窒化物半導体層は、前記第2のゲート電極と前記第2の窒化物半導体層との間に介在している。前記基板は、前記第1のソース電極、前記第2のソース電極、前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極の全てに対して電気的に絶縁されている。前記双方向スイッチ素子の制御方法は、前記双方向スイッチ素子をターンオンさせる場合、前記第1のゲート電極又は前記第2のゲート電極であって前記第1のソース電極と前記第2のソース電極とのうち低電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第1タイミングと、高電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第2タイミングと、に時間差を生じさせるように前記双方向スイッチ素子を制御する。
本開示に係る一態様の双方向スイッチ素子の制御方法では、前記双方向スイッチ素子は、基板と、第1の窒化物半導体層と、第2の窒化物半導体層と、第1のソース電極と、第1のゲート電極と、第2のゲート電極と、第2のソース電極と、第1のp型窒化物半導体層と、第2のp型窒化物半導体層と、を備える。前記第1の窒化物半導体層は、前記基板上に形成されている。前記第2の窒化物半導体層は、前記第1の窒化物半導体層上に形成されている。前記第2の窒化物半導体層のバンドギャップは、前記第1の窒化物半導体層のバンドギャップよりも大きい。前記第1のソース電極、前記第1のゲート電極、前記第2のゲート電極、及び前記第2のソース電極は、前記第2の窒化物半導体層上に形成されている。前記第1のp型窒化物半導体層は、前記第1のゲート電極と前記第2の窒化物半導体層との間に介在している。前記第2のp型窒化物半導体層は、前記第2のゲート電極と前記第2の窒化物半導体層との間に介在している。前記双方向スイッチ素子の制御方法は、前記双方向スイッチ素子をターンオンさせる場合、前記第1のゲート電極又は前記第2のゲート電極であって前記第1のソース電極と前記第2のソース電極とのうち低電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第1タイミングと、高電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第2タイミングと、に時間差を生じさせるように前記双方向スイッチ素子を制御する。前記双方向スイッチ素子の制御方法は、前記双方向スイッチ素子をターンオフさせる場合、前記双方向スイッチ素子をダイオードとして動作させない。
【0013】
本開示に係る一態様のプログラムは、基板と、第1の窒化物半導体層と、第2の窒化物半導体層と、第1のソース電極と、第1のゲート電極と、第2のゲート電極と、第2のソース電極と、第1のp型窒化物半導体層と、第2のp型窒化物半導体層と、を備え、前記基板は、前記第1のソース電極、前記第2のソース電極、前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極の全てに対して電気的に絶縁されている、双方向スイッチ素子を制御するコンピュータシステムに、前記双方向スイッチ素子をターンオンさせる場合、前記第1のゲート電極又は前記第2のゲート電極であって前記第1のソース電極と前記第2のソース電極とのうち低電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第1タイミングと、高電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第2タイミングと、に時間差を生じさせる遅延処理を実行させる、ためのプログラムである。前記第1の窒化物半導体層は、前記基板上に形成されている。前記第2の窒化物半導体層は、前記第1の窒化物半導体層上に形成されている。前記第2の窒化物半導体層のバンドギャップは、前記第1の窒化物半導体層のバンドギャップよりも大きい。前記第1のソース電極、前記第1のゲート電極、前記第2のゲート電極、及び前記第2のソース電極は、前記第2の窒化物半導体層上に形成されている。前記第1のp型窒化物半導体層は、前記第1のゲート電極と前記第2の窒化物半導体層との間に介在している。前記第2のp型窒化物半導体層は、前記第2のゲート電極と前記第2の窒化物半導体層との間に介在している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1Aは、実施形態に係る制御システムを備えるスイッチシステムの回路ブロック図である。
図1Bは、同上の制御システムの一部の回路構成図である。
【
図2】
図2は、同上の制御システムを備えるスイッチシステムにおける双方向スイッチ素子の断面図である。
【
図3】
図3は、同上の制御システムにおいて双方向スイッチ素子をターンオンさせるときの動作説明図である。
【
図4】
図4は、同上の制御システムを備えるスイッチシステムにおける双方向スイッチ素子のターンオン波形と比較例に係るスイッチシステムにおける双方向スイッチ素子のターンオン波形との比較図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る制御システムを備えるスイッチシステムにおける双方向スイッチ素子のスイッチング速度と比較例におけるスイッチング速度の説明図である。
【
図6】
図6は、同上の制御システムにおいて双方向スイッチ素子をターンオフさせるときの動作説明図である。
【
図7】
図7は、実施形態の変形例1に係る制御システムを備えるスイッチシステムの回路ブロック図である。
【
図8】
図8は、実施形態の変形例2に係る制御システムを備える電力変換装置の回路図である。
【
図9】
図9は、実施形態の変形例3に係る制御システムを備える電力変換装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
下記の実施形態等において説明する
図2は、模式的な図であり、
図2中の各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0016】
(実施形態)
以下では、実施形態に係る制御システム100を備えるスイッチシステム200について、
図1A及び1Bに基づいて説明する。
【0017】
スイッチシステム200は、双方向スイッチ素子1と、双方向スイッチ素子1を制御する、上述の制御システム100と、を備える。
【0018】
以下では、まず双方向スイッチ素子1について、
図2に基づいて説明してから制御システム100について説明する。
【0019】
(1)双方向スイッチ素子
(1.1)双方向スイッチ素子の構成
双方向スイッチ素子1は、基板2と、第1の窒化物半導体層4と、第2の窒化物半導体層5と、第1のソース電極S1と、第1のゲート電極G1と、第2のゲート電極G2と、第2のソース電極S2と、第1のp型窒化物半導体層61と、第2のp型窒化物半導体層62と、を備える。
【0020】
第1の窒化物半導体層4は、基板2上に形成されている。第2の窒化物半導体層5は、第1の窒化物半導体層4上に形成されている。第2の窒化物半導体層5は、第1の窒化物半導体層4よりもバンドギャップが大きい。第1のソース電極S1は、第2の窒化物半導体層5上に形成されている。第1のゲート電極G1は、第2の窒化物半導体層5上に形成されており、第1のソース電極S1から離れている。第2のゲート電極G2は、第2の窒化物半導体層5上に形成されており、第1のゲート電極G1から見て第1のソース電極S1とは反対側において第1のゲート電極G1から離れている。第2のソース電極S2は、第2の窒化物半導体層5上に形成されており、第2のゲート電極G2から見て第1のゲート電極G1とは反対側において第2のゲート電極G2から離れている。第1のp型窒化物半導体層61は、第1のゲート電極G1と第2の窒化物半導体層5との間に介在している。第2のp型窒化物半導体層62は、第2のゲート電極G2と第2の窒化物半導体層5との間に介在している。双方向スイッチ素子1では、基板2上に、第1の窒化物半導体層4と第2の窒化物半導体層5と第1のp型窒化物半導体層61及び第2のp型窒化物半導体層62とを含む積層体10が形成されている。
【0021】
以下、双方向スイッチ素子1について、より詳細に説明する。
【0022】
双方向スイッチ素子1は、デュアルゲート型のGaN系GIT(Gate Injection Transistor)である。ここにおいて、双方向スイッチ素子1では、第1の窒化物半導体層4がGaN層であり、第2の窒化物半導体層5がAlGaN層である。第2の窒化物半導体層5は、第1の窒化物半導体層4上に形成されており、第1の窒化物半導体層4と共にヘテロ接合部HJを構成する。第1の窒化物半導体層4においては、ヘテロ接合部HJの近傍に、2次元電子ガス(Two-Dimensional Electron Gas)が発生している。2次元電子ガスを含む領域(以下、「2次元電子ガス層」ともいう)は、nチャネル層(電子伝導層)として機能することが可能である。また、双方向スイッチ素子1では、第1のp型窒化物半導体層61及び第2のp型窒化物半導体層62の各々がp型AlGaN層である。
【0023】
基板2は、導電性のシリコン基板である。したがって、基板2は、導電性基板の一種である。基板2は、第1主面21及び第2主面22を有する。基板2の第1主面21及び第2主面22は、基板2の厚さ方向に直交する。ここにおいて、「直交」とは、厳密に直交する場合のみに限定されず、略直交(厚さ方向と第1主面21又は第2主面22とのなす角度が例えば90°±5°)でもよい。第2主面22は、基板2の厚さ方向において第1主面21の反対側に位置している。双方向スイッチ素子1では、積層体10は、基板2の第1主面21上に形成されている。基板2の第1主面21は、例えば、(111)面である。基板2の第1主面21は、例えば、(111)面からのオフ角(以下、「第1オフ角」という)が0°よりも大きく5°以下の結晶面でもよい。ここにおいて、「第1オフ角」とは、(111)面に対する第1主面21の傾斜角である。したがって、オフ角が0°であれば、第1主面21は、(111)面である。(111)面は、3つの指数を括弧のなかに入れて表記したミラー指数(Miller Index)による結晶面である。基板2の厚さは、例えば、100μm以上1000μm以下である。
【0024】
第1の窒化物半導体層4は、バッファ層3を介して基板2上に形成されている。ここにおいて、上述の積層体10は、バッファ層3を含む。積層体10では、バッファ層3、第1の窒化物半導体層4及び第2の窒化物半導体層5は、基板2側からこの順に並んでいる。また、積層体10は、第2の窒化物半導体層5上に形成されている第1のp型窒化物半導体層61及び第2のp型窒化物半導体層62を含んでいる。
【0025】
積層体10は、基板2上に例えばMOVPE(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)によって成長されたエピタキシャル成長層である。基板2上に積層体10を成長させるエピタキシャル成長装置としてMOVPE装置を採用する場合、Alの原料ガスとしては、トリメチルアルミニウム(TMAl)を採用するのが好ましい。また、Gaの原料ガスとしては、トリメチルガリウム(TMGa)を採用するのが好ましい。Nの原料ガスとしては、NH3を採用するのが好ましい。p型導電性に寄与する不純物であるMgの原料ガスとしては、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)を採用するのが好ましい。各原料ガスそれぞれのキャリアガスとしては、例えば、H2ガスを採用するのが好ましい。各原料ガスは、特に限定されず、例えば、Gaの原料ガスとしてトリエチルガリウム(TEGa)、Nの原料ガスとしてヒドラジン誘導体を採用してもよい。
【0026】
バッファ層3は、例えば、アンドープのGaN層である。バッファ層3は、第1の窒化物半導体層4、第2の窒化物半導体層5、第1のp型窒化物半導体層61及び第2のp型窒化物半導体層62の結晶性の向上を目的として設けた層である。バッファ層3は、基板2の第1主面21上に直接形成されている。バッファ層3を構成するアンドープのGaN層は、その成長時に不可避的に混入されるMg、H、Si、C、O等の不純物が存在してもよい。バッファ層3の厚さは、例えば、100nm以上3000nm以下である。
【0027】
第1の窒化物半導体層4は、アンドープのGaN層である。第1の窒化物半導体層4を構成するアンドープのGaN層は、その成長時に不可避的に混入されるMg、H、Si、C、O等の不純物が存在してもよい。第1の窒化物半導体層4の厚さは、例えば、100nm以上700nm以下である。
【0028】
第2の窒化物半導体層5は、アンドープのAlGaN層である。第2の窒化物半導体層5を構成するアンドープのAlGaN層は、その成長時に不可避的に混入されるMg、H、Si、C、O等の不純物が存在してもよい。第2の窒化物半導体層5を構成するアンドープのAlGaN層のAlの組成比は、例えば、0.2である。本明細書において、Alの組成比とは、AlGaN層をAlxGa1-xN層で表したときのxの値である。つまり、第2の窒化物半導体層5は、アンドープのAl0.2Ga0.8N層である。組成比は、例えば、EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)による組成分析で求めた値である。組成比の相対的な大小関係を議論する上では、組成比は、EDXに限らず、例えば、オージェ電子分光(Auger Electron Spectroscopy)による組成分析、SIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)による組成分析で求めた値でもよい。第2の窒化物半導体層5の厚さは、例えば、20nm以上100nm以下である。
【0029】
第1のp型窒化物半導体層61及び第2のp型窒化物半導体層62の各々は、p型AlGaN層である。
【0030】
第1のp型窒化物半導体層61及び第2のp型窒化物半導体層62は、第2の窒化物半導体層5の表面51の一部のみを覆っている。したがって、第2の窒化物半導体層5の表面51は、第1のp型窒化物半導体層61及び第2のp型窒化物半導体層62に覆われている領域と、第1のp型窒化物半導体層61及び第2のp型窒化物半導体層62に覆われていない領域と、を含む。第1のp型窒化物半導体層61と第2のp型窒化物半導体層62とは、互いに離れている。第1のp型窒化物半導体層61及び第2のp型窒化物半導体層62は、その成長時にMgがドーピングされており、Mgを含有している。第1のp型窒化物半導体層61及び第2のp型窒化物半導体層62は、MOVPE装置によって第1のp型窒化物半導体層61と第2のp型窒化物半導体層62との元になるp型窒化物半導体層を第2の窒化物半導体層5上に成長させた後に、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を利用してp型窒化物半導体層をパターニングすることによって形成されている。
【0031】
第1のp型窒化物半導体層61及び第2のp型窒化物半導体層62の各々のAlの組成比は、第2の窒化物半導体層5を構成するAlGaN層のAlの組成比と同じ(例えば、0.2)であるが、第2の窒化物半導体層5を構成するAlGaN層のAlの組成比と異なっていてもよい。第1のp型窒化物半導体層61及び第2のp型窒化物半導体層62の各々の厚さは、例えば、50nm以上300nm以下である。
【0032】
第1のソース電極S1及び第2のソース電極S2は、第2の窒化物半導体層5の表面51において第1のp型窒化物半導体層61及び第2のp型窒化物半導体層62に覆われていない領域に形成されている。第1のソース電極S1と第2のソース電極S2とは、互いに離れている。第1のソース電極S1及び第2のソース電極S2は、ヘテロ接合部HJと電気的に接続されている。ここにおいて、「電気的に接続されている」とはオーミック接触していることを意味する。第1のソース電極S1及び第2のソース電極S2の各々は、例えば、TiとAlとを含んでいる。
【0033】
第1のゲート電極G1は、第1のp型窒化物半導体層61を介して第2の窒化物半導体層5上に形成されている。また、第2のゲート電極G2は、第2のp型窒化物半導体層62を介して第2の窒化物半導体層5上に形成されている。第1のゲート電極G1と第2のゲート電極G2との距離は、第1のp型窒化物半導体層61と第2のp型窒化物半導体層62との距離よりも長い。第1のゲート電極G1及び第2のゲート電極G2の各々は、第2の窒化物半導体層5の表面51に沿った方向において、対応する第1のソース電極S1及び第2のソース電極S2それぞれから離れている。第1のゲート電極G1及び第2のゲート電極G2は、例えば、第1のp型窒化物半導体層61及び第2のp型窒化物半導体層62にそれぞれオーミック接触している。第1のゲート電極G1及び第2のゲート電極G2の各々は、例えば、PdとAuとを含んでいる。
【0034】
双方向スイッチ素子1では、第2の窒化物半導体層5の表面51に沿った一方向において、第1のソース電極S1、第1のゲート電極G1、第2のゲート電極G2及び第2のソース電極S2が、この順に並んでいる。第1のソース電極S1、第1のゲート電極G1、第2のゲート電極G2及び第2のソース電極S2は、上記一方向において互いに離れている。
【0035】
(1.2)双方向スイッチ素子の動作
以下では、説明の便宜上、第1のゲート電極G1と第1のソース電極S1との間に第1の閾値電圧以上の電圧が印加されていない状態を、第1のゲート電極G1がオフ状態ともいう。また、第1のゲート電極G1と第1のソース電極S1との間に第1のゲート電極G1を高電位側として第1の閾値電圧以上の電圧が印加されている状態を、第1のゲート電極G1がオン状態ともいう。また、第2のゲート電極G2と第2のソース電極S2との間に第2の閾値電圧以上の電圧が印加されていない状態を、第2のゲート電極G2がオフ状態ともいう。また、第2のゲート電極G2と第2のソース電極S2との間に第2のゲート電極G2を高電位側として第2の閾値電圧以上の電圧が印加されている状態を、第2のゲート電極G2がオン状態ともいう。
【0036】
双方向スイッチ素子1は、上述の第1のp型窒化物半導体層61及び第2のp型窒化物半導体層62を備えることにより、ノーマリオフ型のトランジスタを実現している。ここにおいて、第1のp型窒化物半導体層61は、第1のゲート電極G1がオフ状態のときに、第1のp型窒化物半導体層61直下において第2の窒化物半導体層5と第1の窒化物半導体層4とに空乏層を形成する。第2のp型窒化物半導体層62は、第2のゲート電極G2がオフ状態のときに、第2のp型窒化物半導体層62直下において第2の窒化物半導体層5と第1の窒化物半導体層4とに空乏層を形成する。双方向スイッチ素子1では、第1のゲート電極G1がオン状態のときには、第1のゲート電極G1と第1のソース電極S1との間を2次元電子ガス層でつなげることができる。言い換えれば、双方向スイッチ素子1では、第1のゲート電極G1がオン状態のときには、第1のゲート電極G1と第1のソース電極S1との間で2次元電子ガス層が空乏層により遮られなくなる。また、双方向スイッチ素子1では、第2のゲート電極G2がオン状態のときには、第2のゲート電極G2と第2のソース電極S2との間を2次元電子ガス層でつなげることができる。言い換えれば、双方向スイッチ素子1では、第2のゲート電極G2がオン状態のときには、第2のゲート電極G2と第2のソース電極S2との間で2次元電子ガス層が空乏層により遮られなくなる。
【0037】
双方向スイッチ素子1では、第1のゲート電極G1がオフ状態で、かつ第2のゲート電極G2がオフ状態である場合(第1の動作モードの場合)、第1のソース電極S1と第2のソース電極S2との間において、いずれの方向にも電流を流すことができない。より詳細には、第1の動作モードの場合、第1のソース電極S1が第2のソース電極S2よりも高電位のときに第1のソース電極S1から第2のソース電極S2へ流れる電流が遮断され、かつ、第2のソース電極S2が第1のソース電極S1よりも高電位のときに第2のソース電極S2から第1のソース電極S1へ流れる電流が遮断される。
【0038】
双方向スイッチ素子1では、第1のゲート電極G1がオン状態で、かつ第2のゲート電極G2がオン状態である場合(第2の動作モードの場合)、第1のソース電極S1と第2のソース電極S2との間において、双方向に電流を流すことができる。より詳細には、第2の動作モードの場合、第1のソース電極S1が第2のソース電極S2よりも高電位のときに第1のソース電極S1から第2のソース電極S2へ電流が流れ、かつ、第2のソース電極S2が第1のソース電極S1よりも高電位のときに第2のソース電極S2から第1のソース電極S1へ電流が流れる。
【0039】
双方向スイッチ素子1では、第1のゲート電極G1がオン状態で、かつ第2のゲート電極G2がオフ状態である場合(第3の動作モードの場合)、ダイオードとして機能する。より詳細には、第3の動作モードの場合、第1のソース電極S1が第2のソース電極S2よりも高電位のときには第1のソース電極S1から第2のソース電極S2へ流れる電流が遮断され、かつ、第2のソース電極S2が第1のソース電極S1よりも第2の閾値電圧以上、高電位のときには第2のソース電極S2から第1のソース電極S1へ電流が流れる。
【0040】
双方向スイッチ素子1では、第1のゲート電極G1がオフ状態で、かつ第2のゲート電極G2がオン状態である場合(第4の動作モードの場合)、ダイオードとして機能する。より詳細には、第4の動作モードの場合、第2のソース電極S2が第1のソース電極S1よりも高電位のときには第2のソース電極S2から第1のソース電極S1へ流れる電流が遮断され、かつ、第1のソース電極S1が第2のソース電極S2よりも第1の閾値電圧以上、高電位のときには第1のソース電極S1から第2のソース電極S2へ電流が流れる。
【0041】
双方向スイッチ素子1では、第1の閾値電圧と第2の閾値電圧とが同じ値であるが、互いに異なる値であってもよい。第1の閾値電圧は、第1のゲート電極G1の下側において2次元電子ガス層を遮るように広がっている空乏層が縮小し2次元電子ガス層に電流を流すことができるようになる閾値電圧である。第2の閾値電圧は、第2のゲート電極G2の下側において2次元電子ガス層を遮るように広がっている空乏層が縮小し2次元電子ガス層に電流を流すことができるようになる閾値電圧である。
【0042】
(2)制御システム
制御システム100は、
図1Aに示すように、制御部101を備える。制御システム100は、制御部101の他に、第1のゲート駆動回路102と、第2のゲート駆動回路103と、を備える。制御システム100は、例えば、
図1Aに示すように、双方向スイッチ素子1の第1のソース電極S1と第2のソース電極S2との間に、交流電源211と負荷212との直列回路が接続されている状態で使用される。
【0043】
制御部101、第1のゲート駆動回路102及び第2のゲート駆動回路103は、電源回路110から直流電圧を供給される。電源回路110は、例えば、交流電源(例えば、商用電源)211の出力電圧を全波整流するダイオードブリッジと、ダイオードブリッジの出力電圧を平滑化する平滑コンデンサと、平滑コンデンサの出力電圧を上記直流電圧に降圧する降圧チョッパ回路と、を含む。なお、電源回路110は、制御システム100の構成要素ではない。電源回路110の回路構成は特に限定されない。
【0044】
第1のゲート駆動回路102は、第1のゲート電極G1と第1のソース電極S1との間に第1のソース電極S1を基準とする第1のゲート電圧Vg1(
図3参照)を印加する回路である。第1のゲート駆動回路102は、制御部101からの制御信号により制御されて第1のゲート電圧Vg1を第1の閾値電圧よりも大きな電圧V1(例えば、5V)又は第1の閾値電圧よりも小さな電圧(例えば、0V)とする。
【0045】
第2のゲート駆動回路103は、第2のゲート電極G2と第2のソース電極S2との間に第2のソース電極S2を基準とする第2のゲート電圧Vg2(
図3参照)を印加する回路である。第2のゲート駆動回路103は、制御部101からの制御信号により制御されて第2のゲート電圧Vg2を第2の閾値電圧よりも大きな電圧V2(例えば、5V)又は第2の閾値電圧よりも小さな電圧(例えば、0V)とする。
【0046】
制御部101は、双方向スイッチ素子1をターンオンさせる場合、第1のゲート電極G1又は第2のゲート電極G2であって第1のソース電極S1と第2のソース電極S2とのうち低電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第1タイミングと、高電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第2タイミングと、に時間差Δt(
図3参照)を生じさせるように双方向スイッチ素子1を制御する。時間差Δtは、例えば、制御システム100のマージンを考慮して50nsec以上であるのが好ましい。これにより、制御システム100のシステムのゆらぎ、ばらつき等があってもΔtを10nsec以上とすることが可能となる。
【0047】
制御部101は、第1タイミングと第2タイミングとの間の期間に、双方向スイッチ素子1をダイオードとして動作させる。双方向スイッチ素子1は、この期間にダイオードとして動作するとき、第1のソース電極S1と第2のソース電極S2とのうち相対的に電位の低いソース電極から相対的に電位の高いソース電極へ電流を流さず、かつ相対的に電位の高いソース電極から相対的に電位の低いソース電極へ電流を流す。
【0048】
制御部101は、第2のソース電極S2が第1のソース電極S1よりも高電位である状態で双方向スイッチ素子1をターンオンさせるときに、
図3に示すように、第1のゲート電極G1と第1のソース電極S1との間の第1のゲート電圧Vg1を第1の閾値電圧以上の値としてから、第2のゲート電極G2と第2のソース電極S2との間の第2のゲート電圧Vg2を第2の閾値電圧以上の値とする。ここにおいて、制御部101は、第1のゲート電圧Vg1を第1のゲート電極G1と第1のソース電極S1との間に印加するタイミング(第1タイミングに相当)と、第2のゲート電圧Vg2を第2のゲート電極G2と第2のソース電極S2との間に印加するタイミング(第2タイミングに相当)との間の期間には、双方向スイッチ素子1を上述の第3の動作モードのダイオードとして動作させる。これにより、双方向スイッチ素子1は、第1のソース電極S1が第2のソース電極S2よりも高電位のときには第1のソース電極S1から第2のソース電極S2へ流れる電流が遮断され、かつ、第2のソース電極S2が第1のソース電極S1よりも第2の閾値電圧以上、高電位のときには第2のソース電極S2から第1のソース電極S1へ電流が流れる。
【0049】
制御部101の実行主体は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、1又は複数のコンピュータを有している。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における制御部101の実行主体としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されていてもよいが、電気通信回線を通じて提供されてもよいし、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ(磁気ディスク)等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1乃至複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。
【0050】
制御システム100は、制御部101において第1のソース電極S1と第2のソース電極S2とのどちらが高電位であるかを判定できるように、例えば、
図1Bに示すように、抵抗分圧回路105と、第1のオペアンプOP1と、第2のオペアンプOP2と、第1のフォトカプラPC1と、第2のフォトカプラPC2と、を含む検出回路104を備えている。抵抗分圧回路105は、第1の抵抗R1と第2の抵抗R2との直列回路であり、双方向スイッチ素子1の第1のソース電極S1と第2のソース電極S2との間に接続される。
【0051】
第1のオペアンプOP1の非反転入力端子及び第2のオペアンプOP2の反転入力端子は、抵抗分圧回路105の第1の抵抗R1と第2の抵抗R2との接続点に接続されている。これにより、第1のオペアンプOP1の非反転入力端子及び第2のオペアンプOP2の反転入力端子には、第1のソース電極S1と第2のソース電極S2との間の電圧を第1の抵抗R1及び第2の抵抗R2により分圧した電圧が印加される。第1のオペアンプOP1の反転入力端子及び第2のオペアンプOP2の非反転入力端子は、第1のソース電極S1と接続されており、接地されている。第1のオペアンプOP1の出力端子は、第4の抵抗R4を介して第1のフォトカプラPC1のLED(Light Emitting Diode)のアノード端子と接続され、第2のオペアンプOP2の出力端子は、第5の抵抗R5を介して第2のフォトカプラPC2のLEDのアノード端子と接続されている。第1のフォトカプラPC1のLEDのカソード端子及び第2のフォトカプラPC2のLEDのカソード端子は、第1のソース電極S1と接続されており、接地されている。第1フォトカプラPC1のフォトトランジスタ及び第2のフォトカプラPC2のフォトトランジスタは、制御部101に接続されている。
【0052】
検出回路104では、第2のソース電極S2の電位が第1のソース電極S1の電位よりも高電位の場合には、第1のフォトカプラPC1がオン状態、第2のフォトカプラPC2がオフ状態となる。また、検出回路104では、第2のソース電極S2の電位が第1のソース電極S1の電位よりも低電位の場合には、第1のフォトカプラPC1がオフ状態、第2のフォトカプラPC2がオン状態となる。よって、制御部101は、検出回路104の第1のフォトカプラPC1の状態及び第2のフォトカプラPC2の状態に基づいて、第1のソース電極S1と第2のソース電極S2とのどちらが高電位であるかを判定できる。なお、検出回路104の構成は、
図1Bの例に限定されない。
【0053】
次に、制御システム100によって双方向スイッチ素子1をターンオンさせたときの波形について
図4に基づいて説明する。
【0054】
図4は、双方向スイッチ素子1の第1のソース電極S1と第2のソース電極S2との間に直流電源と負荷との直列回路を接続した状態で双方向スイッチ素子1をターンオンさせたときの電圧波形である。ここにおいて、
図4は、直流電源の正極を第2のソース電極S2に接続し、直流電源の負極を第1のソース電極S1に接続した状態で双方向スイッチ素子1をターンオンさせたときの電圧波形である。
図4の縦軸は第2のソース電極S2と第1のソース電極S1との間の電圧Vs2であり、横軸は時間である。なお、横軸の時間に関して、時間0nsecを基準として右側が「正」、左側が「負(-符号)」となっているが、「正」と「負(-符号)」は、時間0nsecの時点に対して以後か以前かを区別するために付した符号である。
【0055】
図4中の基板OPEN(VG2 OFF)は、双方向スイッチ素子1の基板2を電気的にフローティングした状態で、実施形態1に係る制御システム100によって双方向スイッチ素子1をターンオンさせたときのVs2の時間変化を示している。ここにおいて、「基板2を電気的にフローティングした状態」とは、基板2が第1のソース電極S1、第2のソース電極S2、第1のゲート電極G1及び第2のゲート電極G2の全てに対して電気的に絶縁された状態である。また、
図4中の基板OPEN(VG2 OFF)では、負荷電流を異ならせた場合それぞれのVs2の時間変化を示してあり、負荷電流が小さいほどスイッチング速度が速い。
【0056】
また、
図4中の基板GNDは、双方向スイッチ素子1の基板2をグランドに接地した状態で、双方向スイッチ素子1の第1のゲート電極G1に第1の閾値電圧よりも大きな第1のゲート電圧を印加するタイミングと、第2のゲート電極G2に第2の閾値電圧よりも大きな第2のゲート電圧を印加するタイミングと、を同じとして双方向スイッチ素子1をターンオンさせたときのVs2の時間変化を示している。
【0057】
また、
図4中の基板OPENは、双方向スイッチ素子1の基板2を電気的にフローティングにした状態で、双方向スイッチ素子1の第1のゲート電極G1に第1の閾値電圧よりも大きな第1のゲート電圧を印加するタイミングと、第2のゲート電極G2に第2の閾値電圧よりも大きな第2のゲート電圧を印加するタイミングと、を同じとして双方向スイッチ素子1をターンオンさせたときのVs2の時間変化を示している。また、
図4中の基板OPENでは、負荷電流を異ならせた場合それぞれのVs2の時間変化を示してあり、負荷電流が小さいほどスイッチング速度が速い。
【0058】
また、
図5は、負荷電流と双方向スイッチ素子1のスイッチング速度との関係を示している。
図5の横軸は負荷電流であり、縦軸はターンオン時の双方向スイッチ素子1のスイッチング速度に対応するdV/dtの絶対値である。ここにおいて、負荷電流は、負荷に流れる電流である。dV/dtは、電圧Vs2が最大値の90%の値から10%の値まで低下するときの電圧変化分を時間で除した値である。
【0059】
図4及び
図5から、実施形態1に係る制御システム100を採用することにより、双方向スイッチ素子1の基板2を電気的にフローティングした状態で、双方向スイッチ素子1をターンオンさせるときのスイッチング速度を向上できることが分かる。
【0060】
制御システム100では、双方向スイッチ素子1をターンオフさせる場合、第1のゲート電圧Vg1を電圧V1から0Vに変化させるタイミングと、第2のゲート電圧Vg2を電圧V2から0Vに変化させるタイミングと、の関係は特に限定されない。しかしながら、双方向スイッチ素子1での損失を低減する観点から、制御システム100の制御部101は、双方向スイッチ素子1をターンオフさせる場合、双方向スイッチ素子1をダイオードとして動作させないのが好ましい。制御部101では、双方向スイッチ素子1をターンオフさせる場合、例えば、
図6に示すように、第1のゲート電圧Vg1を電圧V1から0Vに変化させるタイミングと、第2のゲート電圧Vg2を電圧V2から0Vに変化させるタイミングと、を揃えることにより、双方向スイッチ素子1をダイオードとして動作させない。
【0061】
双方向スイッチ素子1の制御方法は、双方向スイッチ素子1をターンオンさせる場合、第1のゲート電極G1又は第2のゲート電極G2であって第1のソース電極S1と第2のソース電極S2とのうち低電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第1タイミングと、高電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第2タイミングと、に時間差Δtを生じさせるように双方向スイッチ素子1を制御する。
【0062】
上述のプログラムは、双方向スイッチ素子1を制御するコンピュータシステムに、双方向スイッチ素子1をターンオンさせる場合、第1のゲート電極G1又は第2のゲート電極G2であって第1のソース電極S1と第2のソース電極S2とのうち低電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第1タイミングと、高電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第2タイミングと、に時間差Δtを生じさせる遅延処理を実行させる、ためのプログラムである。
【0063】
図7は、実施形態の変形例1に係る制御システム100aを備えるスイッチシステム200aの回路ブロック図である。変形例1に係る制御システム100aを備えるスイッチシステム200aに関し、実施形態に係る制御システム100(
図1A参照)を備えるスイッチシステム200と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0064】
制御部101aは、実施形態に係る制御システム100の制御部101と同様、双方向スイッチ素子1をターンオンさせる場合、第1のゲート電極G1又は第2のゲート電極G2であって第1のソース電極S1と第2のソース電極S2とのうち低電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第1タイミングと、高電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第2タイミングと、に時間差Δt(
図3参照)を生じさせるように双方向スイッチ素子1を制御する。
【0065】
変形例1に係る制御システム100aでは、制御部101aは、アナログ回路により構成されており、時間差Δtを生じさせる遅延回路111を含む。
【0066】
実施形態の変形例2に係る制御システム100bを備えるスイッチシステム200bと、そのスイッチシステム200bを備える電力変換装置300bと、について、
図8に基づいて説明する。
【0067】
電力変換装置300bは、交流-交流電力変換を行うマトリクスコンバータである。ここにおいて、電力変換装置300bは、第1周波数の第1交流電圧を、第1周波数とは異なる第2周波数の第2交流電圧に変換する。第2周波数は、第1周波数よりも低い周波数である。電力変換装置300bは、第1交流電圧を入力するための2つの入力端子T1,T2を備えている。また、電力変換装置300bは、第2交流電圧を出力するための3つの出力端子T3,T4,T5を備えている。ここにおいて、第1交流電圧は、単相交流電圧であり、第2交流電圧は、三相交流電圧である。また、電力変換装置300bは、各々が双方向スイッチ素子1からなる6つのスイッチング素子Q1~Q6を備えている。なお、3つの出力端子T3,T4,T5には、負荷として、例えば、三相交流モータが接続される。
【0068】
電力変換装置300bでは、スイッチング素子Q1,Q2の直列回路と、スイッチング素子Q3,Q4の直列回路と、スイッチング素子Q5,Q6の直列回路と、が並列接続されている。各直列回路は、2つの入力端子T1,T2の間に接続されている。3つの出力端子T3,T4,T5のうち1つの出力端子T3は、スイッチング素子Q1,Q2の接続点に接続され、別の出力端子T4は、スイッチング素子Q3,Q4の接続点に接続され、残りの1つの出力端子T5は、スイッチング素子Q5,Q6の接続点に接続されている。なお、電力変換装置300bでは、電力変換を行う電力変換部が、6つのスイッチング素子Q1~Q6を含んでいる。電力変換装置300bは、双方向スイッチ素子1を含み電力変換を行う電力変換部と、制御システム100bと、を備える。
【0069】
電力変換装置300bの備える制御システム100bにおける制御部101bは、複数の双方向スイッチ素子1(スイッチング素子Q1~Q6)を制御する。ここにおいて、制御部101bは、複数の双方向スイッチ素子1の各々をターンオンさせる場合、第1のゲート電極G1又は第2のゲート電極G2であって第1のソース電極S1と第2のソース電極S2とのうち低電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第1タイミングと、高電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第2タイミングと、に時間差Δt(
図3)を生じさせるように双方向スイッチ素子1を制御する。
【0070】
実施形態の変形例3に係る制御システム100cを備えるスイッチシステム200cと、そのスイッチシステム200cを備える電力変換装置300cと、について、
図9に基づいて説明する。
【0071】
電力変換装置300cは、T型の3レベルインバータである。ここにおいて、電力変換装置300cは、2つのスイッチング素子Q11,Q12の直列回路と、スイッチング素子Q11に逆並列に接続されたダイオードD1と、スイッチング素子Q12に逆並列に接続されたダイオードD2と、2つのスイッチング素子Q11,Q12の接続点に接続された双方向スイッチ素子1と、を備える。2つのスイッチング素子Q11,Q12の各々は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。なお、電力変換装置300cでは、電力変換を行う電力変換部が、2つのスイッチング素子Q11,Q12の直列回路と、スイッチング素子Q11に逆並列に接続されたダイオードD1と、スイッチング素子Q12に逆並列に接続されたダイオードD2と、2つのスイッチング素子Q11,Q12の接続点に接続された双方向スイッチ素子1と、を含んでいる。電力変換装置300cは、双方向スイッチ素子1を含み電力変換を行う電力変換部と、制御システム100cと、を備える。
【0072】
電力変換装置300cの備える制御システム100cにおける制御部101cは、双方向スイッチ素子1を制御する。ここにおいて、制御部101cは、双方向スイッチ素子1をターンオンさせる場合、第1のゲート電極G1又は第2のゲート電極G2であって第1のソース電極S1と第2のソース電極S2とのうち低電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第1タイミングと、高電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第2タイミングと、に時間差Δt(
図3)を生じさせるように双方向スイッチ素子1を制御する。なお、制御部101cは、双方向スイッチ素子1だけでなく、2つのスイッチング素子Q11,Q12も制御するが、双方向スイッチ素子1のみを制御するように構成されていてもよい。
【0073】
上記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0074】
例えば、第1のp型窒化物半導体層61及び第2のp型窒化物半導体層62の各々は、p型AlGaN層に限らず、例えば、p型GaN層であってもよい。
【0075】
双方向スイッチ素子1は、バッファ層3と第1の窒化物半導体層4との間に、1層以上の窒化物半導体層を含んでいてもよい。また、バッファ層3は、単層構造に限らず、例えば、超格子構造を有していてもよい。
【0076】
また、基板2は、シリコン基板に限らず、例えば、GaN基板、SiC基板、サファイア基板等であってもよい。
【0077】
また、制御システム100は、第1のゲート駆動回路102及び第2のゲート駆動回路103の代わりに、制御部101により制御される第1の電源及び第2の電源を備えていてもよい。この場合、第1の電源は、制御部101により制御されて第1のゲート電圧Vg1を出力し、第2の電源は、制御部101により制御されて第2のゲート電圧Vg2を出力する。
【0078】
また、電力変換装置は、上述の電力変換装置300b,300c以外の構成であってもよい。
【0079】
(まとめ)
以上説明した実施形態等から本明細書には以下の態様が開示されている。
【0080】
第1の態様に係る制御システム(100;100a;100b;100c)は、双方向スイッチ素子(1)を制御するシステムである。双方向スイッチ素子(1)は、基板(2)と、第1の窒化物半導体層(4)と、第2の窒化物半導体層(5)と、第1のソース電極(S1)と、第1のゲート電極(G1)と、第2のゲート電極(G2)と、第2のソース電極(S2)と、第1のp型窒化物半導体層(61)と、第2のp型窒化物半導体層(62)と、を備える。第1の窒化物半導体層(4)は、基板(2)上に形成されている。第2の窒化物半導体層(5)は、第1の窒化物半導体層(4)上に形成されている。第2の窒化物半導体層(5)のバンドギャップは、第1の窒化物半導体層(4)のバンドギャップよりも大きい。第1のソース電極(S1)、第1のゲート電極(G1)、第2のゲート電極(G2)、及び第2のソース電極(S2)は、第2の窒化物半導体層(5)上に形成されている。第1のp型窒化物半導体層(61)は、第1のゲート電極(G1)と第2の窒化物半導体層(5)との間に介在している。第2のp型窒化物半導体層(62)は、第2のゲート電極(G2)と第2の窒化物半導体層(5)との間に介在している。制御システム(100;100a;100b;100c)は、制御部(101;101a;101b;101c)を備える。制御部(101;101a;101b;101c)は、双方向スイッチ素子(1)をターンオンさせる場合、第1のゲート電極(G1)又は第2のゲート電極(G2)であって第1のソース電極(S1)と第2のソース電極(S2)とのうち低電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第1タイミングと、高電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第2タイミングと、に時間差(Δt)を生じさせるように双方向スイッチ素子(1)を制御する。
【0081】
第1の態様に係る制御システム(100;100a;100b;100c)は、双方向スイッチ素子(1)をターンオンさせるときのスイッチング速度を向上させることが可能となる。
【0082】
第2の態様に係る制御システム(100;100a;100b;100c)では、第1の態様において、制御部(101;101a;101b;101c)は、第1タイミングと第2タイミングとの間の期間に、双方向スイッチ素子(1)をダイオードとして動作させる。双方向スイッチ素子(1)は、ダイオードとして動作するとき、第1のソース電極(S1)と第2のソース電極(S2)とのうち相対的に電位の低いソース電極から相対的に電位の高いソース電極へ電流を流さず、かつ相対的に電位の高いソース電極から相対的に電位の低いソース電極へ電流を流す。
【0083】
第2の態様に係る制御システム(100;100a;100b;100c)では、双方向スイッチ素子(1)をターンオンさせるときのスイッチング速度をより確実に向上させることが可能となる。
【0084】
第3の態様に係る制御システム(100;100a;100b;100c)では、第1又は2の態様において、時間差(Δt)は、50nsec以上である。
【0085】
第3の態様に係る制御システム(100;100a;100b;100c)では、システムのゆらぎやばらつき等が発生しても時間差(Δt)を確保することができる。
【0086】
第4の態様に係る制御システム(100;100a;100b;100c)では、第1~3の態様のいずれか一つにおいて、基板(2)は、第1のソース電極(S1)、第2のソース電極(S2)、第1のゲート電極(G1)及び第2のゲート電極(G2)の全てに対して電気的に絶縁されている。
【0087】
第4の態様に係る制御システム(100;100a;100b;100c)では、基板(2)が第1のソース電極(S1)、第2のソース電極(S2)、第1のゲート電極(G1)及び第2のゲート電極(G2)の全てに対して電気的に絶縁されている状態において、双方向スイッチ素子(1)をターンオンさせるときのスイッチング速度をより確実に向上させることが可能となる。
【0088】
第5の態様に係る制御システム(100a)では、第1~4の態様のいずれか一つにおいて、制御部(101a)は、時間差(Δt)を生じさせる遅延回路(111)を含む。
【0089】
第5の態様に係る制御システム(100a)では、時間差(Δt)のばらつきを抑制することが可能となる。
【0090】
第6の態様に係る制御システム(100;100a;100b;100c)では、第1~5の態様のいずれか一つにおいて、制御部(101;101a;101b;101c)は、双方向スイッチ素子(1)をターンオフさせる場合、双方向スイッチ素子(1)をダイオードとして動作させない。
【0091】
第6の態様に係る制御システム(100;100a;100b;100c)は、双方向スイッチ素子(1)をターンオフさせる場合における双方向スイッチ素子(1)での損失を抑制することができる。
【0092】
第7の態様に係るスイッチシステム(200;200a;200b;200c)は、第1~6の態様のいずれか一つの制御システム(100;100a;100b;100c)と、双方向スイッチ素子(1)と、を備える。
【0093】
第7の態様に係るスイッチシステム(200;200a;200b;200c)は、双方向スイッチ素子(1)をターンオンさせるときのスイッチング速度を向上させることが可能となる。
【0094】
第8の態様に係る電力変換装置(300b;300c)は、第7の態様に係るスイッチシステム(200b;200c)を備える。
【0095】
第8の態様に係る電力変換装置(300b;300c)は、双方向スイッチ素子(1)をターンオンさせるときのスイッチング速度を向上させることが可能となる。
【0096】
第9の態様に係る双方向スイッチ素子(1)の制御方法では、双方向スイッチ素子(1)は、基板(2)と、第1の窒化物半導体層(4)と、第2の窒化物半導体層(5)と、第1のソース電極(S1)と、第1のゲート電極(G1)と、第2のゲート電極(G2)と、第2のソース電極(S2)と、第1のp型窒化物半導体層(61)と、第2のp型窒化物半導体層(62)と、を備える。第1の窒化物半導体層(4)は、基板(2)上に形成されている。第2の窒化物半導体層(5)は、第1の窒化物半導体層(4)上に形成されている。第2の窒化物半導体層(5)のバンドギャップは、第1の窒化物半導体層(4)のバンドギャップよりも大きい。第1のソース電極(S1)、第1のゲート電極(G1)、第2のゲート電極(G2)、及び第2のソース電極(S2)は、第2の窒化物半導体層(5)上に形成されている。第1のp型窒化物半導体層(61)は、第1のゲート電極(G1)と第2の窒化物半導体層(5)との間に介在している。第2のp型窒化物半導体層(62)は、第2のゲート電極(G2)と第2の窒化物半導体層(5)との間に介在している。双方向スイッチ素子(1)の制御方法は、双方向スイッチ素子(1)をターンオンさせる場合、第1のゲート電極(G1)又は第2のゲート電極(G2)であって第1のソース電極(S1)と第2のソース電極(S2)とのうち低電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第1タイミングと、高電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第2タイミングと、に時間差(Δt)を生じさせるように双方向スイッチ素子(1)を制御する。
【0097】
第9の態様に係る双方向スイッチ素子の制御方法は、双方向スイッチ素子(1)をターンオンさせるときのスイッチング速度を向上させることが可能となる。
【0098】
第10の態様に係るプログラムは、基板(2)と、第1の窒化物半導体層(4)と、第2の窒化物半導体層(5)と、第1のソース電極(S1)と、第1のゲート電極(G1)と、第2のゲート電極(G2)と、第2のソース電極(S2)と、第1のp型窒化物半導体層(61)と、第2のp型窒化物半導体層(62)と、を備える双方向スイッチ素子(1)を制御するコンピュータシステムに、双方向スイッチ素子(1)をターンオンさせる場合、第1のゲート電極(G1)又は第2のゲート電極(G2)であって第1のソース電極(S1)と第2のソース電極(S2)とのうち低電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第1タイミングと、高電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第2タイミングと、に時間差(Δt)を生じさせる遅延処理を実行させる、ためのプログラムである。第1の窒化物半導体層(4)は、基板(2)上に形成されている。第2の窒化物半導体層(5)は、第1の窒化物半導体層(4)上に形成されている。第2の窒化物半導体層(5)のバンドギャップは、第1の窒化物半導体層(4)のバンドギャップよりも大きい。第1のソース電極(S1)、第1のゲート電極(G1)、第2のゲート電極(G2)、及び第2のソース電極(S2)は、第2の窒化物半導体層(5)上に形成されている。第1のp型窒化物半導体層(61)は、第1のゲート電極(G1)と第2の窒化物半導体層(5)との間に介在している。第2のp型窒化物半導体層(62)は、第2のゲート電極(G2)と第2の窒化物半導体層(5)との間に介在している。
【0099】
第10の態様に係るプログラムは、双方向スイッチ素子(1)をターンオンさせるときのスイッチング速度を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0100】
1 双方向スイッチ素子
2 基板
4 第1の窒化物半導体層
5 第2の窒化物半導体層
61 第1のp型窒化物半導体層
62 第2のp型窒化物半導体層
G1 第1のゲート電極
G2 第2のゲート電極
S1 第1のソース電極
S2 第2のソース電極
100、100a、100b、100c 制御システム
101、101a、101b、101c 制御部
111 遅延回路
200、200a、200b、200c スイッチシステム
300b、300c 電力変換装置
Δt 時間差