IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社呉竹の特許一覧

<>
  • 特許-ペン 図1
  • 特許-ペン 図2
  • 特許-ペン 図3
  • 特許-ペン 図4
  • 特許-ペン 図5
  • 特許-ペン 図6
  • 特許-ペン 図7
  • 特許-ペン 図8
  • 特許-ペン 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】ペン
(51)【国際特許分類】
   A45D 34/04 20060101AFI20230728BHJP
   B43K 8/02 20060101ALI20230728BHJP
   B05C 17/00 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
A45D34/04 525A
B43K8/02 120
B05C17/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019101377
(22)【出願日】2019-05-30
(65)【公開番号】P2020192253
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000142920
【氏名又は名称】株式会社呉竹
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】津田 美代子
(72)【発明者】
【氏名】森本 真紀子
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2007/063590(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0263144(US,A1)
【文献】国際公開第2017/033555(WO,A1)
【文献】特表平11-507994(JP,A)
【文献】特開平08-060065(JP,A)
【文献】特開昭62-074472(JP,A)
【文献】米国特許第03095343(US,A)
【文献】特開2003-33398(JP,A)
【文献】米国特許第3681188(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
B43K 8/02
B05C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾粒子を含むインクを貯留するインク貯留部と、インク貯留部からインクが供給されるペン先部とを備え、インク貯留部は、遮液性を有する筒状の外被材と、外被材内に配置されたインク吸蔵材とを含み、外被材は、当該外被材の中心線の延びる方向に第一開放端と該第一開放端の反対側の第二開放端とを有するとともに、第一開放端をペン先部に向けて配置され、インク吸蔵材は、外被材内に配置された多数の繊維材を含み、多数の繊維材のそれぞれの一端が外被材の第一開放端又は第二開放端と対応した位置に配置されるとともに、多数の繊維材のそれぞれの他端が外被材の第一開放端又は第二開放端と対応した位置に配置され、前記多数の繊維材が所定数ずつ一纏めにされ、一纏めにされた繊維材毎にペン軸方向に延びる基準線回りで螺旋状に捩じられていることを特徴とするペン。
【請求項2】
多数の繊維材のそれぞれは、外被材の中心線と同方向に延び、多数の繊維材のそれぞれの一端が第一開放端と対応した位置に配置されるとともに、多数の繊維材のそれぞれの他端が第二開放端と対応した位置に配置されている請求項1に記載のペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具や化粧具として用いられるペンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、筆記具や化粧具等に用いられるペンは、インクを貯留するインク貯留部と、インク貯留部からインクが供給されるペン先部であって、インクの塗布対象にインクを塗布するためのペン先部とを備える。
【0003】
インク貯留部には、種々タイプのものがある。その一つとして、遮液性を有する筒状の外被材と、吸液性を有する綿体であって、外被材内に充填された綿体とを含むものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この種のインク貯留部において、外被材は、当該外被材の中心線(自身の中心線)の延びる方向(以下、この方向をペン軸方向という)に、第一開放端と該第一開放端の反対側の第二開放端とを有する。外被材は、第一開放端をペン先部に向けて配置される。
【0005】
綿体は、外被材におけるペン軸方向の全長よりも短い繊維材を多数含む。多数の繊維材は、外被材内で絡み合い、繊維材間に微小空間を形成する。これに伴い、インクは、繊維材間(微小空間内)に保持され、毛細管現象によってペン先部に供給される。
【0006】
これにより、この種のペンは、ペン先部をインクの塗布対象に接触させることで、インクの塗布対象に対して連続的にインクを塗布できる。
【0007】
ところで、この種のペンには、インク貯留部に反射性或いは光沢性を有する装飾粒子を含むインクを貯留したものがある。かかるペンでは、インクを塗布対象に塗布する際、該インクに含まれる装飾粒子も塗布対象に塗布される。従って、インクの塗布された塗布対象の装飾性が高まる。
【0008】
しかしながら、この種のペンは、使用するにつれ、ペン先部に対する装飾粒子の供給量が少なくなる。具体的に説明すると、この種のペンでは、インク貯留部の綿体を構成する多数の繊維材が外被材の全長よりも短いため、外被材内の多数箇所に繊維材の端(端面)が存在する。
【0009】
そのため、インクがペン先部側に供給されるときに、インクに含まれる装飾粒子が外被材内にある繊維材の端面に引っ掛かってしまい、ペン先部に到達しなくなる。
【0010】
従って、この種のペンでは、使用するにつれて、ペン先部に対する装飾粒子の供給量が少なくなり、塗布対象に塗布される装飾粒子の数が初期に比べて減ってしまうといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2005-342950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、インクに装飾粒子が含まれていても、該装飾粒子を含めてインクをペン先部に安定供給することのできるペンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るペンは、装飾粒子を含むインクを貯留するインク貯留部と、インク貯留部からインクが供給されるペン先部とを備え、インク貯留部は、遮液性を有する筒状の外被材と、外被材内に配置されたインク吸蔵材とを含み、外被材は、当該外被材の中心線の延びる方向に第一開放端と該第一開放端の反対側の第二開放端とを有するとともに、第一開放端をペン先部に向けて配置され、インク吸蔵材は、外被材内に配置された多数の繊維材を含み、多数の繊維材のそれぞれの一端が外被材の第一開放端又は第二開放端と対応した位置に配置されるとともに、多数の繊維材のそれぞれの他端が外被材の第一開放端又は第二開放端と対応した位置に配置されることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、インク貯留部は、遮液性を有する筒状の外被材と、外被材内に配置されたインク吸蔵材とを含むため、装飾粒子を含むインクが外側に漏れることなくインク吸蔵材に吸蔵(貯留)される。
【0015】
そして、ペン先部によるインクの消費に伴って、インク吸蔵材に吸蔵されたインクがペン先部に供給される。すなわち、インクの塗布対象に対するインクの付着によってペン先部のインクが消費されるが、インク吸蔵材に吸蔵された装飾粒子を含むインクがペン先部に供給される。
【0016】
そして、上記構成のペンのインク吸蔵材では、多数の繊維材のそれぞれの一端が外被材の第一開放端又は第二開放端と対応した位置に配置され、多数の繊維材のそれぞれの他端が外被材の第一開放端又は第二開放端と対応した位置に配置されるため、外被材の中心線の延びる方向における外被材内の途中位置に繊維材の端(端面)が存在しない。
【0017】
従って、インクがペン先部に供給されるときに、インクに含まれる装飾粒子が外被材の途中位置で繊維材の端面に引っ掛かることなく、外被材の第二開放端側から第一開放端側に向けて装飾粒子を含むインク全体が移動できる。すなわち、インクがペン先部に供給される間、ペン先部に対する装飾粒子の供給量の減少が抑制される。
【0018】
これにより、ペンを使用している間(インクの塗布対象に対してインクを塗布するとき)に該インクに含まれる装飾粒子も安定してインクの塗布対象に塗布される。
【0019】
本発明の一態様として、多数の繊維材のそれぞれは、外被材の中心線と同方向に延び、多数の繊維材のそれぞれの一端が第一開放端と対応した位置に配置されるとともに、多数の繊維材のそれぞれの他端が第二開放端と対応した位置に配置されてもよい。
【0020】
このようにすれば、装飾粒子を含むインク全体がペン先部に向けて円滑に移動(流動)する。
【0021】
具体的には、多数の繊維材のそれぞれは、外被材の中心線と同方向に延びるため、繊維材間にできる微小空間も外被材の中心線と同方向に延びて形成される。すなわち、繊維材間にできる微小空間が繊維材に沿って形成される。
【0022】
これにより、インク全体が外被材の第二開放端側から第一開放端側に向けて円滑に移動(流動)する。従って、ペン先部に対するインクの供給が安定し、ペンを使用している間(インクの塗布対象に対してインクを塗布するとき)に該インクに含まれる装飾粒子も安定してインクの塗布対象に塗布される。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、インクに装飾粒子が含まれていても、該装飾粒子を含めてインクをペン先部に安定供給することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るペンの外観図である。
図2図2は、同実施形態に係るペンの断面図であって、図1のII―II断面図である。
図3図3は、同実施形態に係るペンの断面図であって、図1のII―II断面におけるペン本体からキャップを取り外した状態の断面図である。
図4図4は、同実施形態に係るペンが備えるインク貯留部の断面図であって、外被材の中心線の延びる方向と直交する方向から見た断面図である。
図5図5は、同実施形態に係るペンが備えるインク貯留部の部分拡大断面図であって、外被材の中心線の延びる方向から見た部分拡大断面図である。
図6図6は、同実施形態に係るペンの部分拡大図であって、図3のVI部拡大図である。
図7図7は、同実施形態に係るペンが備えるインク貯留部の部分拡大断面図であって、インクの流れを模式的に付加した図5のVII―VII断面図である。
図8図8は、本発明の他実施形態に係るペンが備えるインク貯留部の断面図であって、外被材の中心線の延びる方向と直交する方向から見た断面図である。
図9図9は、本発明の別の実施形態に係るペンが備えるインク貯留部の断面図であって、外被材の中心線の延びる方向と直交する方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0026】
本実施形態に係るペンは、図1乃至図3に示す如く、インクの塗布対象にインクを塗布するためのペン先部21(図2及び図3参照)を備えたペン本体2と、ペン本体2のペン先部21を覆うキャップ3とを備える。
【0027】
ペン本体2は、図2及び図3に示す如く、装飾粒子を含むインク(以下、単にインクという)を貯留するインク貯留部20と、インク貯留部20からインクが供給されるペン先部21とを備える。
【0028】
より具体的には、ペン本体2は、インクを貯留するインク貯留部20と、インク貯留部20からインクが供給されるペン先部21と、インク貯留部20からペン先部21にインクを誘導するインク誘導部22と、インク貯留部20及びインク誘導部22を収容する外装体23であって、当該ペン本体2の外装を構成する外装体23と、該外装体23に取り付けられたホルダー24であって、ペン先部21を保持するホルダー24とを備える。本実施形態において、インクは、モンモリロナイト系の増粘剤を含む。インクに含まれる装飾粒子には、ガラス、鉱物、金属、繊維、又は樹脂等の材料を粉状、粒状、或いは片状に微細化したものが採用される。本実施形態において、インクに含まれる装飾粒子は、反射性或いは光沢性を有する。より具体的には、インクに含まれる装飾粒子には、鱗片状にされたガラス(所謂、ガラスフレーク)が採用される。これに伴い、装飾粒子がラメの如く光を反射し、装飾性を高めるため、本実施形態に係るインクは、ラメ入りインクとも称される。
【0029】
インク貯留部20は、図4に示す如く、遮液性を有する筒状の外被材200と、外被材200内に配置されたインク吸蔵材201とを含む。
【0030】
外被材200は、当該外被材200の中心線CLの延びる方向(以下、この方向をペン軸方向という)に第一開放端OP1と該第一開放端OP1の反対側の第二開放端OP2とを有する。外被材200は、第一開放端OP1をペン先部21に向けて配置される(図3参照)。外被材200には、樹脂材料を筒状に成形したものや、樹脂フィルム材を筒状にしたものを採用することができる。本実施形態において、外被材200には、樹脂フィルム材を筒状にしたものが採用されている。
【0031】
インク吸蔵材201は、外被材200内に配置された多数の繊維材202を含む。繊維材202には、ポリエステル繊維、アセテート繊維等の化学繊維や天然繊維を採用することができる。本実施形態において、繊維材202には、クリンプ加工されたポリエステル繊維が採用されている。なお、クリンプ加工とは、繊維に捲縮(捩れ)を与える加工である。
【0032】
多数の繊維材202のそれぞれの一端は、外被材200の第一開放端OP1又は第二開放端OP2と対応した位置に配置される。これに対し、多数の繊維材202のそれぞれの他端は、外被材200の第一開放端OP1又は第二開放端OP2と対応した位置に配置される。
【0033】
本実施形態において、多数の繊維材202のそれぞれは、外被材200の全長(ペン軸方向の長さ)と同一又は略同一の長さに設定され、外被材200の中心線CLと同方向に延びている。本実施形態において、多数の繊維材202のそれぞれは、ペン軸方向に真っ直ぐ又は略真っ直ぐに延びている。これに伴い、多数の繊維材202のそれぞれの一端は、第一開放端OP1と対応した位置に配置されるのに対し、多数の繊維材202のそれぞれの他端は、第二開放端OP2と対応した位置に配置される。
【0034】
多数の繊維材202は、一束にされ、外被材200内に密に配置される。これに伴い、図5に示す如く、繊維材202間には、インクの入る微小空間203が形成されている。すなわち、微小空間203は、周囲にある複数の繊維材202によって形成される。これに伴い、微小空間203は、繊維材202に沿って形成される。すなわち、ペン軸方向でインク貯留部20の全長に亘って形成される。
【0035】
ペン軸方向から見た微小空間203のサイズは、インクに含まれる装飾粒子Pの最大の粒子サイズdよりも大きくなるように設定されている。繊維材202間に形成される微小空間203のサイズ(ペン軸方向から見たサイズ)は、インク吸蔵材201を構成する繊維材202の外径Dによって決定される。
【0036】
具体的に説明すると、多数の繊維材202を密集状態で束ねた状態において、隣接する繊維材202,202同士が線接触した状態になり、互いに線接触した繊維材202が微小空間203を画定する。すなわち、微小空間203の周囲には、複数の繊維材202が存在するとともに、該複数の繊維材202のうちの隣り合う繊維材202,202同士が接触した接触ラインLが複数存在する。微小空間203の周囲にある接触ラインL同士の間隔は、繊維材202の外径Dによって決定される。
【0037】
すなわち、繊維材202の外径Dが大きくなると、微小空間203の周囲で互いに隣り合う接触ラインL,L同士の間隔が広くなり、繊維材202の外径Dが小さくなると、微小空間203の周囲で互いに隣り合う接触ラインL,L同士の間隔が狭くなる関係にある。
【0038】
この接触ラインL,Lの間隔は、微小空間203を画定する周面を構成する複数の平面又は曲面の幅Wになる。従って、繊維材202の外径Dが大きくなれば微小空間203のサイズが大きくなり、繊維材202の外径Dが小さくなれば微小空間203のサイズが小さくなる。
【0039】
これに伴い、繊維材202の外径Dは、インクに含まれる装飾粒子Pの粒子サイズdに応じて決定される。なお、繊維材202の断面は、真円になっていないものがあるが、ここでは模式的に繊維材202の断面形状を真円で表現している。
【0040】
図6に示す如く、ペン先部21は、インク貯留部20のインクが供給される基端と、該基端の反対側の先端であって、インクの塗布対象に接触される先端とを有する。本実施形態に係るペン先部21は、基端から先端にかけて貫通したインク流通用穴210を備える。
【0041】
より具体的に説明すると、ペン先部21は、外観棒状に形成されている。これに伴い、ペン先部21における軸心方向の一端は、インク貯留部20からのインクが供給される基端とされ、ペン先部21における軸心方向の他端は、インクの塗布対象に接触される先端とされる。
【0042】
本実施形態のペン先部21は、樹脂材料(本実施形態においてはプラスチック)を押出成形することで、中心で貫通したインク流通用穴210を有した中空棒状(筒状)に成形されている。
【0043】
ペン先部21のインク流通用穴210は、ペン先部21の軸心方向(ペン軸方向)に延びている。ペン先部21のインク流通用穴210は、インクに含まれる装飾粒子Pがペン軸方向に移動可能にサイズ設定されている。すなわち、ペン先部21のインク流通用穴210は、インクに含まれる装飾粒子Pの最大の粒子サイズdよりも大きく設定され、ペン軸方向全長に亘って形成されている。これに伴い、ペン先部21のインク流通用穴210は、ペン軸方向の一端面及び他端面においても開口している。
【0044】
ペン先部21において、インク流通用穴210を画定する内周壁から中心に向けて突出した突片(図示しない)が周方向に間隔をあけて複数設けられている。これにより、突片間が微小な隙間となり、隙間による毛細管現象によってインクをペン先部21(ペン先)に供給する。
【0045】
インク誘導部22は、インク貯留部20からのインクが供給される基端と、該基端の反対側の先端とを有する。本実施形態に係るインク誘導部22は、基端から先端にかけて貫通したインク流通用穴220を備える。
【0046】
より具体的に説明すると、インク誘導部22は、外観棒状に形成されている。これに伴い、インク誘導部22における軸心方向の一端は、インク貯留部20からのインクが供給される基端とされ、インク誘導部22における軸心方向の他端は、ペン先部21に接続される先端とされている。
【0047】
インク誘導部22のインク流通用穴220は、インク誘導部22の軸心方向(ペン軸方向)に延びている。インク誘導部22のインク流通用穴220は、インクに含まれる装飾粒子Pがペン軸方向に移動可能にサイズ設定されている。すなわち、インク誘導部22のインク流通用穴220は、インクに含まれる装飾粒子Pの最大の粒子サイズdよりも大きく設定され、ペン軸方向全長に亘って形成されている。これに伴い、インク誘導部22のインク流通用穴220は、ペン軸方向の一端面及び他端面においても開口している。
【0048】
本実施形態において、インク誘導部22は、一端を含む所定の範囲内に、周方向に間隔をあけて配置された複数のスリット221を有する。該複数のスリット221は、ペン軸方向に延び、当該インク誘導部22の径方向で内外を貫通させている。これにより、インク誘導部22は、一端面にある開口の他、複数のスリット221からもインク流通用穴220にインクを流入可能に構成される。
【0049】
インク誘導部22において、インク流通用穴220を画定する内周壁から中心に向けて突出した突片(図示しない)が周方向に間隔をあけて複数設けられている。これにより、突片間が微小な隙間となり、隙間による毛細管現象によってインクをインク誘導部22(ペン先)に供給する。
【0050】
本実施形態において、インク誘導部22は、ペン先部21と連続して一体的に形成される。すなわち、インク誘導部22の外形状、インク流通用穴220の穴形状が、ペン先部21の外形状及びインク流通用穴210の穴形状と同一に設定され、インク誘導部22の先端がペン先部21の基端に接続されている。これにより、ペン先部21のインク流通用穴210及びインク誘導部22のインク流通用穴220は、互いに連続している。インク誘導部22の基端側がインク貯留部20のインク吸蔵材201に差し込まれている。
【0051】
図3に戻り、外装体23は、一端と該一端の反対側の他端とを有する筒状の胴軸部230と、胴軸部230の一端を閉塞する尻部231とを備える。胴軸部230には、インク貯留部20が外被材200の中心線CLと同心又は略同心の状態で収容される。
【0052】
ホルダー24は、図6に示す如く、ペン先部21を挿通させる貫通穴240を有し、該貫通穴240にペン先部21が先端側を外部に延出させるようにして挿通されている。本実施形態において、ペン先部21とインク誘導部22とが一体的に成型されているため、ホルダー24の貫通穴240には、ペン先部21とインク誘導部22とが挿通される。
【0053】
より具体的に説明すると、ホルダー24は、大径筒部241と、大径筒部241よりも外径が小径な小径筒部242であって、大径筒部241と連続した小径筒部242とを備える。
【0054】
大径筒部241は、外観円錐台状に形成され、ペン軸方向において大径端面と小径端面とを有する。小径筒部242は、大径筒部241の大径端面に同心で接続されている。
【0055】
大径筒部241の大径端面は、外装体23の胴軸部230の他端開口よりも大径に設定されている。小径筒部242の外径は、外装体23の胴軸部230の他端開口と略同径に設定されている。これに伴い、小径筒部242が外装体23の胴軸部230の他端開口に圧入されることで、ホルダー24は、大径筒部241の大径端面を外装体23の胴軸部230の他端に接触させた状態で外装体23に取り付けられている。
【0056】
大径筒部241の内穴の穴径は、ペン先部21の外径と対応している。これに対し、小径筒部242の内穴の穴径は、インク誘導部22の外径と対応している。大径筒部241の内穴と小径筒部242の内穴とは同心で連続している。
【0057】
すなわち、大径筒部241の内穴及び小径筒部242の内穴は、互いに連続することで、一体成型されたペン先部21及びインク誘導部22を挿入する貫通穴240を形成している。これにより、ペン先部21及びインク誘導部22は、貫通穴240に挿通された状態でホルダー24に保持される。
【0058】
以上のように、本実施形態に係るペン1は、装飾粒子Pを含むインクを貯留するインク貯留部20と、インク貯留部20からインクが供給されるペン先部21とを備え、インク貯留部20は、遮液性を有する筒状の外被材200と、外被材200内に配置されたインク吸蔵材201とを含み、外被材200は、ペン軸方向に第一開放端OP1と該第一開放端OP1の反対側の第二開放端OP2とを有するとともに、第一開放端OP1をペン先部21に向けて配置され、インク吸蔵材201は、外被材200内に配置された多数の繊維材202を含み、多数の繊維材202のそれぞれの一端が外被材200の第一開放端OP1又は第二開放端OP2と対応した位置に配置されるとともに、多数の繊維材202のそれぞれの他端が外被材200の第一開放端OP1又は第二開放端OP2と対応した位置に配置される。
【0059】
上記構成のペン1によれば、インク貯留部20は、遮液性を有する筒状の外被材200と、外被材200内に配置されたインク吸蔵材201とを含むため、装飾粒子Pを含むインクが外側に漏れることなくインク吸蔵材201に吸蔵(貯留)される。
【0060】
そして、ペン先部21によるインクの消費に伴って、インク吸蔵材201に吸蔵されたインクがペン先部21に供給される。すなわち、インクの塗布対象に対するインクの付着によってペン先部21のインクが消費されるが、インク吸蔵材201に吸蔵された装飾粒子Pを含むインクがペン先部21に供給される。
【0061】
そして、上記構成のペンのインク吸蔵材201では、多数の繊維材202のそれぞれの一端が外被材200の第一開放端OP1又は第二開放端OP2と対応した位置に配置されるとともに、インク吸蔵材201に含まれる多数の繊維材202のそれぞれの他端が外被材200の第一開放端OP1又は第二開放端OP2と対応した位置に配置されるため、ペン軸方向における外被材200内の途中位置に繊維材202の端面が存在しない。
【0062】
従って、インクがペン先部21に供給されるときに、インクに含まれる装飾粒子Pが外被材200の途中位置で繊維材202の端面に引っ掛かることなく、図7に示す如く、外被材200の第二開放端OP2側から第一開放端OP1側に向けて装飾粒子Pを含むインク全体が移動できる。従って、装飾粒子Pを含むインク全体がペン先部21に供給される。すなわち、インクがペン先部21に供給される間、ペン先部21に対する装飾粒子Pの供給量の減少が抑制される。
【0063】
これにより、ペン1を使用している間(インクの塗布対象に対してインクを塗布するとき)に該インクに含まれる装飾粒子Pも安定してインクの塗布対象に塗布される。
【0064】
また、本実施形態において、多数の繊維材202のそれぞれは、外被材200の中心線CLと同方向に延び、多数の繊維材202のそれぞれの一端が第一開放端OP1と対応した位置に配置されるとともに、多数の繊維材202のそれぞれの他端が第二開放端OP2と対応した位置に配置されるため、装飾粒子Pを含めてインク全体がペン先部21に向けて円滑に移動(流動)する。
【0065】
具体的には、多数の繊維材202のそれぞれは、外被材200の中心線CLと同方向に延びるため、繊維材202間にできる微小空間203も外被材200の中心線CLと同方向に延びて形成される。すなわち、繊維材202間にできる微小空間203が繊維材202に沿って形成される。
【0066】
これにより、装飾粒子Pを含めてインク全体が外被材200の第二開放端OP2側から第一開放端OP1側に向けて円滑に移動(流動)する。従って、ペン先部21に対するインクの供給が安定し、ペン1を使用している間(インクの塗布対象に対してインクを塗布するとき)に該インクに含まれる装飾粒子Pも安定してインクの塗布対象に塗布される。
【0067】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0068】
上記実施形態において、特に言及しなかったが、上記構成のペン1は、化粧に用いられる化粧具としてのペンであってもよいし、筆記を行うための筆記具(文具)としてのペンであってもよい。
【0069】
上記実施形態において、多数の繊維材202は、ペン軸方向における外被材200の全長と対応する長さに設定され、一端を第一開放端OP1と対応させるとともに、他端を第二開放端OP2と対応させて配置されたが、これに限定されない。例えば、繊維材202が二つ折り以上にされて、該繊維材202の両端が第一開放端OP1又は第二開放端OP2と対応した位置に配置されてもよい。この場合、多数の繊維材202が同じ態様にされる必要がなく、例えば、インク吸蔵材201を構成する多数の繊維材202において、二つ折り以上にされた繊維材202と、真っ直ぐ延びる繊維材202とが混在していてもよい。すなわち、外被材200の途中位置に繊維材202の両端(端面)がなければよい。
【0070】
この場合においても、インクの流れを円滑にするには、上記実施形態と同様に、外被材200の第一開放端OP1と第二開放端OP2との間で繊維材202がペン軸方向に延びる(長手をなす)ことは勿論である。
【0071】
なお、繊維材202が二つ折り以上にされる場合、その繊維材202の折り返し部は、外被材200の開放端(第一開放端OP1又は第二開放端OP2)と対応する位置に配置されることが好ましい。
【0072】
特に、繊維材202が二つ折りにされる場合においては、繊維材202の両端は、ペン先部21側にある第一開放端OP1と対応する位置に配置されるとともに、一か所に形成される折り返し部は、第二開放端OP2と対応する位置に配置されることが好ましい。
【0073】
上記実施形態において、多数の繊維材202は、ペン軸方向に真っ直ぐ又は略真っ直ぐに延び、一端を第一開放端OP1と対応させるとともに、他端を第二開放端OP2と対応させて配置されたが、これに限定されない。例えば、図8に示す如く、多数の繊維材202のそれぞれは、ペン軸方向に延びるとともに、多数の繊維材202が全数一纏めにされてペン軸方向に延びる基準線回りで螺旋状に捩じられてもよい。この場合においても、多数の繊維材202のそれぞれの一端が第一開放端OP1と対応した位置に配置されるとともに、多数の繊維材202のそれぞれの他端が第二開放端OP2と対応した位置に配置される。
【0074】
また、図9に示す如く、多数の繊維材202のそれぞれは、ペン軸方向に延びるとともに、多数の繊維材202が所定数ずつ一纏めにされ、一纏め毎にペン軸方向に延びる基準線回りで螺旋状に捩じられてもよい。この場合においても、多数の繊維材202のそれぞれの一端が第一開放端OP1と対応した位置に配置されるとともに、多数の繊維材202のそれぞれの他端が第二開放端OP2と対応した位置に配置される。
【0075】
これらによれば、繊維材202間にできる微小空間203は、ペン軸方向に延びて螺旋状に形成される。すなわち、繊維材202間にできる微小空間203は、ペン軸方向における外被材200の全長に亘って螺旋状に形成される。これにより、インク全体が外被材200の第二開放端OP2側から第一開放端OP1側に向けて螺旋状の経路を辿って円滑に移動(流動)する。従って、ペン先部21に対するインクの供給が安定し、ペン1を使用している間(インクの塗布対象に対してインクを塗布するとき)に該インクに含まれる装飾粒子Pも安定してインクの塗布対象に塗布される。
【0076】
上記実施形態において、ペン先部21とインク誘導部22とが一体にされることで、互いのインク流通用穴210,220が連続する筒状にされたが、これに限定されない。例えば、ペン先部21とインク誘導部22とが一体的にされる場合、インク流通用穴210,220に代えて、外周に対してペン軸方向に延びる少なくとも一つのインク流通用溝が形成されてもよい。このようにすれば、装飾粒子Pを含むインクがインク流通用溝によって誘導され、ペン先部21のペン先に供給される。
【0077】
この場合、インク流通用溝はペン先部21の中心側から外周側に向けて拡大してもよいし、ペン先部21の中心側から外周側に向けて同幅に形成されてもよい。さらに、ペン先部21及びインク誘導部22に複数のインク流通用溝が設けられる場合、該複数のインク流通用溝の間隔は、ペン先部21及びインク誘導部22の周囲で等間隔にされてもよいし、ペン先部21及びインク誘導部22の周囲で不均等な間隔で配置されてもよい。
【0078】
上記実施形態において、ペン先部21とインク誘導部22とが一体に形成されたが、これに限定されない。例えば、ペン先部21とインク誘導部22とが別体で形成されてもよい。但し、インク誘導部22からのインクがペン先部21に移行可能にされることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0079】
1…ペン、2…ペン本体、3…キャップ、20…インク貯留部、21…ペン先部、22…インク誘導部、23…外装体、24…ホルダー、200…外被材、201…インク吸蔵材、202…繊維材、203…微小空間、210…インク流通用穴、220…インク流通用穴、221…スリット、230…胴軸部、231…尻部、240…貫通穴、241…大径筒部、242…小径筒部、D…外径、d…粒子サイズ、L…接触ライン、OP1…第一開放端、OP2…第二開放端、P…装飾粒子、W…幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9