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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】パレットトラック
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/06 20060101AFI20230728BHJP
   B62B 3/06 20060101ALI20230728BHJP
   B62B 5/00 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
B66F9/06 A
B62B3/06 Z
B62B5/00 J
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019160615
(22)【出願日】2019-09-03
(65)【公開番号】P2021038064
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000126182
【氏名又は名称】株式会社をくだ屋技研
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】迫 祥平
(72)【発明者】
【氏名】岩永 晴義
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-113145(JP,A)
【文献】実開昭63-100367(JP,U)
【文献】実開昭60-043696(JP,U)
【文献】特開2011-046254(JP,A)
【文献】登録実用新案第3177067(JP,U)
【文献】特開2008-44775(JP,A)
【文献】特開2004-106717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
B62B 1/00- 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延出する左右一対のフォーク形荷台と、前記フォーク形荷台の前端部に上下移動可能に支持される走行用前輪とを有する荷物載置部と、
走行用後輪を有し、前記フォーク形荷台の後端部を支持するとともに前記フォーク形荷台を昇降させる昇降装置と、
前記昇降装置を操作する操作部とを備えたパレットトラックであって、
前記走行用前輪は、上方へ移動した状態において接地面から上方へ浮いており、
前記荷物載置部は、
前記フォーク形荷台の昇降に伴って前後方向へ移動し、前後方向へ移動することで前記走行用前輪を上下移動させる昇降ロッドと、
前記フォーク形荷台の後端部に接続され、前記昇降装置に支持される基部体とを有し、
前記基部体には、錘部材が取り付けられている、
ことを特徴とするパレットトラック。
【請求項2】
前記荷物載置部は、フォーク形荷台における前記走行用前輪よりも後方の位置に固定される中間車輪を有し、
前記中間車輪は、前記走行用前輪の下端と前記走行用後輪の下端とを結んだ直線よりも下方に突出しており、
前記走行用前輪が上方へ移動した状態において、前記走行用後輪および前記中間車輪が接地するとともに、前記走行用前輪が接地面から上方へ浮いている、
ことを特徴とする請求項1に記載のパレットトラック。
【請求項3】
前記荷物載置部は、
前記フォーク形荷台の昇降に伴って前後方向へ移動し、前後方向へ移動することで前記走行用前輪を上下移動させる昇降ロッドと、
前記昇降ロッドを、前後方向における前記走行用前輪を上方へ移動させる側に付勢する付勢部材を有する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパレットトラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレットトラックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、前後方向に延出する左右一対のフォーク形荷台と、前記フォーク形荷台の前端部に支持される走行用前輪とを有する荷物載置部と、走行用後輪を有し前記フォーク形荷台の後端部を支持するとともに前記フォーク形荷台を昇降させる昇降装置と、前記昇降装置を操作する操作部とを備え、フォーク形荷台をパレットの差込空間に差し込んだ後に上昇させることで、荷物が載置されたパレットを運搬可能に構成されたパレットトラックが知られている。
【0003】
特許文献1に示すパレットトラックにおいては、フォーク形荷台をパレットの差込空間へ差し込むときに、フォーク形荷台の前端部に位置する走行用前輪がパレットの下面デッキを乗り越える必要があるため、走行用前輪よりも前方へ突出するガイド部材を設けて、差込作業を容易にすることが行われていた。
【0004】
つまり、ガイド部材は前方へ至るにつれて上昇する傾斜面を有しており、フォーク形荷台をパレットの差込空間に差し込むときにはガイド部材の傾斜面が下面デッキに当接し、ガイド部材が下面デッキを摺動することにより走行用前輪が持ち上げられて、フォーク形荷台の差込空間への差込作業をスムーズに行うことが可能となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-231748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のようにガイド部材が設けられたパレットトラックのフォーク形荷台をパレットの差込空間へ差し込むときには、ガイド部材がパレットの下面デッキに当接するため、ガイド部材とパレットとの衝突音が発生していた。また、フォーク形荷台をパレットの差込空間へ差し込むときには、ガイド部材を下面デッキに対して摺動させる必要があるため、フォーク形荷台を差込空間へ押し込むために比較的大きな力を要することとなり、依然としてフォーク形荷台の差込空間への差込作業が行いにくくなることがあった。
【0007】
そこで、本発明においては、下面デッキを有するパレットの差込空間へフォーク形荷台を差し込むときに、フォーク形荷台の差し込みを行い易くすることができるパレットトラックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するパレットトラックは、以下の特徴を有する。
即ち、本発明のパレットトラックは、前後方向に延出する左右一対のフォーク形荷台と、前記フォーク形荷台の前端部に上下移動可能に支持される走行用前輪とを有する荷物載置部と、走行用後輪を有し、前記フォーク形荷台の後端部を支持するとともに前記フォーク形荷台を昇降させる昇降装置と、前記昇降装置を操作する操作部とを備えたパレットトラックであって、前記走行用前輪は、上方へ移動した状態において接地面から上方へ浮いており、前記荷物載置部は、前記フォーク形荷台の昇降に伴って前後方向へ移動し、前後方向へ移動することで前記走行用前輪を上下移動させる昇降ロッドと、前記フォーク形荷台の後端部に接続され、前記昇降装置に支持される基部体とを有し、前記基部体には、錘部材が取り付けられている。
【0009】
これにより、フォーク形荷台の差込空間への差込作業を行い易くすることができる。
また、走行用前輪を上方位置に維持することができる。
【0010】
また、前記荷物載置部は、フォーク形荷台における前記走行用前輪よりも後方の位置に固定される中間車輪を有し、前記中間車輪は、前記走行用前輪の下端と前記走行用後輪の下端とを結んだ直線よりも下方に突出しており、前記走行用前輪が上方へ移動した状態において、前記走行用後輪および前記中間車輪が接地するとともに、前記走行用前輪が接地面から上方へ浮いている。
【0011】
これにより、走行用前輪が浮いた状態を安定して維持することができる。
【0014】
また、前記荷物載置部は、前記フォーク形荷台の昇降に伴って前後方向へ移動し、前後方向へ移動することで前記走行用前輪を上下移動させる昇降ロッドと、前記昇降ロッドを、前後方向における前記走行用前輪を上方へ移動させる側に付勢する付勢部材を有する。
【0015】
これにより、走行用前輪を上方位置に維持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フォーク形荷台の差込空間への差込作業を行い易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】パレットトラックおよびパレットを示す側面図である。
図2】パレットトラックを示す側面図である。
図3】パレットトラックを示す底面図である。
図4】パレットトラックの荷物載置部を示す正面断面図である。
図5】フォーク形荷台をパレットの差込空間に差し込む際のパレットトラックの動作を示す側面図である。
図6】パレットトラックの変形例を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0019】
図1図4に示すパレットトラック1は、本発明に係るパレットトラックの一実施形態であり、荷物が載置される荷物載置部2と、荷物載置部2を昇降させる昇降装置3と、昇降装置3を操作する操作部5とを有している。
【0020】
パレットトラック1は、荷物が載置されたパレット80を運搬可能に構成されている。パレットトラック1は、木製パレット、樹脂パレットおよび鉄製パレット等の種々の材質のパレット80を運搬することが可能であるが、本実施形態においては、パレット80は木製パレットにて構成されている。
【0021】
また、以下の説明においては、図1における「左側」、「右側」、「紙面奥側」、および「紙面手前側」を、それぞれパレットトラック1の「後側」、「前側」、「左側」、および「右側」と規定する。また、図1における「上側」及び「下側」を、それぞれパレットトラック1の「上側」及び「下側」と規定する。
【0022】
荷物載置部2は、前後方向に延出する左右一対のフォーク形荷台21と、フォーク形荷台21の前端部に支持される走行用前輪22と、フォーク形荷台21の後端部に接続される基部体23と、フォーク形荷台21における走行用前輪22よりも後方の位置に固定される中間車輪29とを有している。
【0023】
荷物載置部2においては、荷物を載せたパレット80の差込空間81にフォーク形荷台21を差し込んで上昇させることにより、パレット80を持ち上げることが可能となっている。差込空間81は、パレット80の上面デッキ82と下面デッキ83との間に形成されている。
【0024】
フォーク形荷台21は、上面21aがパレット80の載置面となっている。フォーク形荷台21の前端部にはアーム24が支持されている。アーム24は、一端部(後端部)が回動軸24aによってフォーク形荷台21に支持されている。アーム24の他端部(前端部)には、走行用前輪22が前輪軸24bによって回転可能に支持されている。前輪軸24bは回動軸24aよりも前方に配置されている。
【0025】
アーム24は、回動軸24aを中心として回動可能に構成されており、アーム24が回動軸24を中心に回動することで、走行用前輪22がフォーク形荷台21に対して上下移動可能となっている。
【0026】
フォーク形荷台21の内部には、前後方向へ延出する昇降ロッド25が収容されている。昇降ロッド25は、各フォーク形荷台21における左右中央部に配置されている。昇降ロッド25の前端部は、連結軸24cを介してアーム24の一端部に連結されている。連結軸24cは回動軸24aの上方に配置されている。昇降ロッド25は、前後方向へ移動可能に構成されており、昇降ロッド25を前後方向へ移動させることで、アーム24を回動軸24aを中心として回動させることが可能となっている。
【0027】
具体的には、昇降ロッド25が後方へ移動すると、アーム24が回動軸24aを中心に回動して走行用前輪22がフォーク形荷台21に対して上方へ移動し、昇降ロッド25が前方へ移動すると、アーム24が回動軸24aを中心に回動して走行用前輪22がフォーク形荷台21に対して下方へ移動する。走行用前輪22の上下移動可能な範囲における最も上方の位置が上方位置(図2において実線で示す位置)であり、走行用前輪22の上下移動可能な範囲における最も下方の位置が下方位置(図2において2点鎖線で示す位置)である。
【0028】
フォーク形荷台21の前端部には、走行用前輪22の周囲を覆うガイド部材21bが設けられている。ガイド部材21bは走行用前輪22よりも前方へ突出している。ガイド部材21bは、フォーク形荷台21をパレット80の差込空間81に差し入れるときに、フォーク形荷台21の左右方向の位置をガイドするための部材である。
【0029】
中間車輪29は、フォーク形荷台21の前後中央部よりもやや後方に配置されており、ブラケット291を介してフォーク形荷台21に回転可能に支持されている。つまり、中間車輪29は、フォーク形荷台21における走行用前輪22よりも後方の位置に固定されている。
【0030】
中間車輪29は、走行用前輪22の下端と走行用後輪34の下端とを結んだ直線L(図2参照)よりも下方に突出している。中間車輪29は、昇降ロッド25の左右両側に配置されている。中間車輪29は、左右方向においてフォーク形荷台21の範囲内に配置されている。
【0031】
中間車輪29は、本実施形態においては、昇降ロッド25の左右両側に設けられているが、昇降ロッド25の左右一方にのみ設けることも可能である。但し、中間車輪29を昇降ロッド25の左右両側に設けた場合の方が、パレットトラック1を走行させるときの直進性に優れているため好ましい。
【0032】
また、中間車輪29は、本実施形態においては、左右方向においてフォーク形荷台21の範囲内に配置されているが、左右方向においてフォーク形荷台21よりも左右に突出した位置に配置することも可能である。但し、中間車輪29を左右方向においてフォーク形荷台21の範囲内に配置した方が、パレットトラック1の走行時に中間車輪29が他の物と干渉したり、フォーク形荷台21のパレット80への差込時に中間車輪29がパレット80と干渉したりすることがないため好ましい。
【0033】
基部体23は、正面視略三角形状の箱型に形成されており、前低後高姿勢に傾斜して配置されている。基部体23の左右両側の下面にそれぞれフォーク形荷台21の後端部が接続されている。基部体23におけるフォーク形荷台21が接続される部分の上方には、昇降アーム26が配置されている。昇降アーム26は、左右のフォーク形荷台21に対応して左右一対設けられている。昇降アーム26は、支持軸27を介して基部体23に支持されており、支持軸27を中心として回動可能に構成されている。
【0034】
昇降アーム26は、支持軸27から下方へ延出する一端部26aと、支持軸27から後方へ延出する他端部26bとを有している。一端部26aと他端部26bとは、支持軸27を中心として一体的に回動可能に構成されている。昇降アーム26の一端部26aには、昇降ロッド25の後端部が接続されている。
【0035】
基部体23の上端部における左右中央には、後方に向けて延出する昇降装置連結部28が設けられている。昇降装置連結部28の後部はボス状に形成されている。基部体23の内部には、重量物である錘部材60が取り付けられている。
【0036】
昇降装置3は、切換バルブやリリーフバルブや油路が備えられる油圧ベース35と、油圧ベース35の前部に上下方向に貫通して固定される油圧シリンダ37と、油圧シリンダ37の下端に横設された車軸30に回転自在に支持される走行用後輪34と、油圧シリンダ37の下部外周に回転自在に支持される軸受体31と、油圧ベース35上において油圧シリンダ37の外周に配設される油タンク33と、油圧シリンダ37の上部に伸縮可能に設けられ油圧が送油されることにより上昇するラムピストン32と、油圧ベース35後部上に設けられる油圧ポンプ36と、該油圧ポンプ36を加圧するプランジャピストン38とを有している。
【0037】
軸受体31は油圧シリンダ37から左右側方に延出しており、軸受体31の左右外側の端部には、それぞれ昇降アーム26の他端部26bが接続されている。これにより、荷物載置部2と昇降装置3とが連結されている。走行用後輪34は油圧ベース35と連結されている。
【0038】
ラムピストン32の上端は昇降装置連結部28の後部に接続されている。これにより、フォーク形荷台21の後端部が昇降装置3に支持されており、ラムピストン32が伸縮することによって、昇降装置3によりフォーク形荷台21を昇降させることが可能となっている。フォーク形荷台21の昇降可能な範囲における最も低い位置が、フォーク形荷台21の下降位置(図2において実線で示す位置)であり、フォーク形荷台21の昇降可能な範囲における最も高い位置が、フォーク形荷台21の上昇位置(図2において2点鎖線で示す位置)である。
【0039】
パレットトラック1においては、フォーク形荷台21が下降位置にあるときには走行用前輪22が上方位置に移動した状態となり、フォーク形荷台21が上昇位置にあるときには走行用前輪22が下方位置に移動した状態となるように構成されている。
【0040】
操作部5は、油タンク33の後部に取り付けられるハンドルベースブラケット54と、ハンドルベースブラケット54の後部に連結されるハンドルベース55と、ハンドルベース55上に固定されるハンドル51と、ハンドル51の上部に設けられるグリップ52と、グリップ52に沿って配設される昇降切換レバー53を有している。ハンドルベース55は、プランジャピストン38の上部と接続されている。
【0041】
ハンドル51は左右方向へ回動可能に構成されており、ハンドル51の回動に連動して走行用後輪34も左右に回動するように構成されている。本実施形態では、ハンドル51および走行用後輪34は、約180度左右に回動可能に構成されている。ハンドル51は、垂直方向に立設した立設姿勢と、後方へ傾倒した傾倒姿勢とに変位可能に構成されており、下端部を中心として立設姿勢と傾倒姿勢との間で回動可能である。
【0042】
グリップ52はハンドル51の上端部に配置されており、正面視において横長の略四角形ループ状に形成されている。昇降切換レバー53は、グリップ52の中央部に配置されている。昇降切換レバー53は、操作することにより上昇操作位置と下降操作位置との間で変位可能に構成されている。
【0043】
昇降切換レバー53は油圧ベース35に設けられる切換バルブの操作部と連結されており、昇降切換レバー53を操作して上昇操作位置に変位させると油圧シリンダ37への圧油の送油が可能となる。また、昇降切換レバー53を操作して下降操作位置に変位させると、油圧シリンダ37から油タンク33への圧油のリリーフが可能となる。なお、グリップ52の形状は横長の略四角形ループ状に限定するものではない。例えば、楕円状に形成したり、水平方向に延出するバー形状に形成したりすることも可能である。
【0044】
このように構成されるパレットトラック1においては、フォーク形荷台21が下降位置にあるときには、昇降アーム26の他端部26bが相対的に上方に回動するとともに一端部26aが後方に回動し、昇降ロッド25が後方へ移動して走行用前輪22が上方位置に移動した状態となる。
【0045】
パレットトラック1の前後方向における重心は中間車輪29と走行用後輪34との間に位置しており、走行用前輪22が上方位置に移動した状態では、中間車輪29は直線Lよりも下方に突出している。従って、走行用前輪22が上方位置に移動した状態では、中間車輪29と走行用後輪34とが接地面Sに接地し、走行用前輪22は接地面Sから上方へ浮いた状態となる。
【0046】
フォーク形荷台21が下降位置にあるとともに、走行用前輪22が上方位置に移動した状態から、昇降切換レバー53を操作して上昇操作位置に切り換えた状態でハンドル51を立設姿勢と傾倒姿勢との間で回動させると、プランジャピストン38が昇降されて、油圧ポンプ36から圧油が切換バルブを介して油圧シリンダ37に送油され、ラムピストン32を押し上げる。このラムピストン32の上昇によりフォーク形荷台21の後端部に配置される昇降装置連結部28および基部体23が持ち上げられる。
【0047】
基部体23が持ち上げられると支持軸27が上昇して、昇降アーム26の他端部26bが支持軸27を中心として相対的に下方に回動され、一端部26aが前方へ回動する。昇降アーム26の一端部26aが前方へ回動することにより、昇降ロッド25が前方へ移動する。昇降ロッド25が前方へ移動すると、アーム24の他端部が下方に回動されて、走行用前輪22が下方に移動し、走行用前輪22が接地面Sに接地するようになる。
【0048】
フォーク形荷台21の基部体23が持ち上げられるとともに、走行用前輪22が接地することにより、フォーク形荷台21が前端部から後端部にわたって全体的に上昇する。そして、フォーク形荷台21が上昇位置にあるとともに、走行用前輪22が下方位置に移動した状態になると、走行用後輪34と走行用前輪22とが接地するとともに、中間車輪29が接地面Sから上方へ浮いた状態となる。
【0049】
一方、フォーク形荷台21が上昇位置にあるとともに、走行用前輪22が下方位置に移動した状態において、昇降切換レバー39を操作して下降操作位置に切り換えると、切換バルブが切り換えられて、圧油が油圧シリンダ37から油タンク33へリリーフされて、ラムピストン32がフォーク形荷台21の自重により下降する。フォーク形荷台21が下降位置まで下降すると、走行用前輪22が上方位置に移動して、中間車輪29と走行用後輪34とが接地面Sに接地し、走行用前輪22が接地面Sから浮いた状態となる。
【0050】
このように、操作部5は昇降装置3を操作可能に構成されており、操作部5により操作された昇降装置3はフォーク形荷台21を上昇位置と下降位置との間で昇降させることが可能である。また、パレットトラック1においては、フォーク形荷台21を下降位置に下降させると、中間車輪29と走行用後輪34とが接地面Sに接地するとともに、走行用前輪22が接地面Sから浮いた状態とすることができ、フォーク形荷台21を上昇位置に上昇させると、走行用後輪34と走行用前輪22とが接地するとともに、中間車輪29が接地面Sから上方へ浮いた状態とすることができる。
【0051】
次に、パレットトラック1のフォーク形荷台21をパレット80の差込空間81に差し込むときの、パレットトラック1の動作について説明する。まず、図1に示すように、フォーク形荷台21の先端部をパレット80の差込空間81に近接させて、フォーク形荷台21を下降位置に下降した状態とする。
【0052】
この場合、フォーク形荷台21が下降位置に下降した状態でパレットトラック1を走行させて、フォーク形荷台21の先端部をパレット80の差込空間81に近接させることができる。また、フォーク形荷台21が上昇位置に上昇した状態でパレットトラック1を走行させて、フォーク形荷台21の先端部をパレット80の差込空間81に近接させた後に、フォーク形荷台21を下降位置まで下降させることも可能である。
【0053】
図5(a)に示すように、フォーク形荷台21が下降位置に下降した状態では、走行用前輪22は上方位置に移動しており、パレット80の下面デッキ83における上面の接地面Sからの高さH1よりも高く、上面デッキ82における下面の接地面Sからの高さH2よりも低い位置に位置している。
【0054】
この状態から、パレットトラック1を前方へ移動させると、図5(b)に示すように、フォーク形荷台21の先端部が差込空間81内に進入する。この場合、走行用前輪22は接地面Sよりも上方に浮いていて、高さH1よりも高く、高さH2よりも低い位置にあるため、フォーク形荷台21を差込空間81内に差し込んだときに、下面デッキ83および上面デッキ82に当接することなく、差込空間81内に進入することが可能となっている。
【0055】
このように、フォーク形荷台21を差込空間81内に差し込むときに、パレット80が走行用前輪22に当接することがないため、パレットトラック1とパレット80との衝突音が発生しない。また、走行用前輪22等をパレット80に対して摺動させる必要がないため、フォーク形荷台21を差込空間81へ押し込むために力を要することがなく、フォーク形荷台21の差込空間81への差込作業を行い易くすることが可能となっている。さらに、フォーク形荷台21の差込空間81への差し込みをスムーズに行うことが可能である。
【0056】
特に、下面デッキ83の高さH1が大きいパレット80の場合、接地した走行用前輪22が下面デッキ83を乗り越えるためには、大きな力でフォーク形荷台21を差込空間81へ押し込むことが必要である。しかし、本実施形態におけるパレットトラック1は走行用前輪22が浮いていて接地していないため、下面デッキ83および上面デッキ82に接触することなく差込空間81に進入させることができ、フォーク形荷台21の差込空間81への差込作業が行い易い。
【0057】
また、パレットトラック1により運搬されるパレットとしては、樹脂パレットのように、下面デッキの端面に走行用前輪22の乗り上げを容易とするためのテーパー形状を形成したものがあるが、本実施形態におけるパレットトラック1の走行用前輪22は、下面デッキに当接することがないため、下面デッキにテーパー形状が形成されたパレットについても、フォーク形荷台21の差込空間81への差込作業をさらに容易にすることが可能である。
【0058】
また、パレットトラック1においては、フォーク形荷台21に中間車輪29を設けて、走行用後輪34および中間車輪29を接地させることにより走行用前輪22が接地面Sから上方へ浮くように構成しているため、走行用前輪22が接地面Sから浮いた状態を安定して維持することが可能となっている。
【0059】
また、パレットトラック1においては、支持軸27が昇降装置3に対して上下移動することにより、走行用前輪22がフォーク形荷台21に対して上下移動するように構成されている。また、昇降装置3の軸受体31と走行用前輪22との間において順に連結されている昇降アーム26、昇降ロッド25、およびアーム24の間には所定の遊びが設けられている。
【0060】
従って、中間車輪29と走行用後輪34とが接地面Sに接地するとともに走行用前輪22が接地面Sから浮いた状態にあるときに、走行中の振動等によって荷物載置部2が上下に移動してフォーク形荷台21が下降位置から上昇すると、走行用前輪22が上方位置から下方へ移動することがある。
【0061】
しかし、パレットトラック1においては、基部体23に錘部材60が取り付けられているため、錘部材60の重量によって荷物載置部2が走行中の振動等によって上下移動することがなく、走行用前輪22は上方位置に移動した状態を維持することが可能である。これにより、フォーク形荷台21を差込空間81内に差し込むときに、確実に走行用前輪22をパレット80に当接させることなく差し込むことが可能となっている。
【0062】
フォーク形荷台21を差込空間81内に差し込んだ後に、フォーク形荷台21を上昇位置に上昇させると、図5(c)に示すように、走行用前輪22が下方位置に移動して接地するとともにフォーク形荷台21が上昇して、フォーク形荷台21によりパレット80を接地面Sから持ち上げることができる。
【0063】
なお、フォーク形荷台21の前後方向における中間車輪29の配置位置は、走行用前輪22が接地してパレット80を持ち上げることができる位置まで、フォーク形荷台21を差込空間81に差し込むことができる位置に設定されている。
【0064】
例えば、図1に示すように、中間車輪29の配置位置は、中間車輪29の前端から走行用前輪22の後端までの距離Dが、パレット80の端部から下面デッキ83と下面デッキ83との間の位置までの距離D1となるように設定したり、パレット80の一方の端部から他方の端部までの距離D2よりも大きくなるように設定したりすることができる。
【0065】
パレット80がフォーク形荷台21によって持ち上げられた状態で、グリップ52を後方に引っ張ってまたは前方へ押すことにより、走行用前輪22および走行用後輪34が転動して、パレットトラック1によりパレット80上に載置された荷物を運搬することが可能である。また、パレット80上の荷物をパレットトラック1により所望の位置まで運搬した後に、フォーク形荷台21を下降位置まで下降させることで、パレット80を接地面Sに接地させることができる。
【0066】
フォーク形荷台21を下降位置まで下降させると、走行用前輪22は下方位置に移動して接地面Sよりも上方に浮いた状態となるため、パレット80の差込空間81からフォーク形荷台21を抜き出すときにも、走行用前輪22がパレット80に接触することがなく、差込空間81に差し込んだフォーク形荷台21を円滑に抜き出すことが可能である。
【0067】
[変形例]
上述の実施形態においては、上方位置に移動した状態の走行用前輪22を上方位置に維持するために、基部体23に錘部材60を取り付けた構成としていたが、走行用前輪22を上方位置に維持するための構成としては、以下に示すような構成とすることもできる。
【0068】
図6に示すパレットトラック1においては、フォーク形荷台21と昇降ロッド25との間にコイルスプリング61が設けられている。コイルスプリング61は、昇降ロッド25を、前後方向における走行用前輪22を上方へ移動させる側に付勢する付勢部材である。
【0069】
フォーク形荷台21にはブラケット21Aが固定されており、昇降ロッド25にはブラケット25Aが固定されていて、コイルスプリング61はブラケット21Aとブラケット25Aとの間に架け渡されている。コイルスプリング61は引っ張りバネに構成されており、昇降ロッド25をフォーク形荷台21に対して後方に付勢している。
【0070】
このように、昇降ロッド25を後方に付勢するコイルスプリング61を設けることで、走行中の振動等によってフォーク形荷台21が下降位置から上昇したとしても、昇降ロッド25が前方へ移動することが抑制される。これにより、走行用前輪22が上方位置から下方へ移動することを防止して、走行用前輪22を上方位置に維持することが可能となる。
【0071】
なお、フォーク形荷台21と昇降ロッド25との間にコイルスプリング61を設ける構成は、基部体23に錘部材60を取り付ける構成と併せて設けることも可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 パレットトラック
2 荷物載置部
3 昇降装置
5 操作部
21 フォーク形荷台
22 走行用前輪
23 基部体
25 昇降ロッド
29 中間車輪
34 走行用後輪
60 錘部材
61 コイルスプリング
80 パレット
81 差込空間
82 上面デッキ
83 下面デッキ
L 直線
S 接地面
図1
図2
図3
図4
図5
図6