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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】ボール弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 5/06 20060101AFI20230728BHJP
【FI】
F16K5/06 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019178683
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021055736
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】平松 浩司
(72)【発明者】
【氏名】薬師神 忠幸
(72)【発明者】
【氏名】毛利 友裕
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-66324(JP,A)
【文献】実開昭55-171760(JP,U)
【文献】実開昭49-90928(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第1323965(EP,A1)
【文献】中国実用新案第203686213(CN,U)
【文献】実開昭48-23323(JP,U)
【文献】米国特許第5577708(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 5/00- 5/22
F16K 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体入口通路、流体出口通路及びこれらの通路間に設けられた連通部を有する本体と、
流体連通路を有し前記本体の前記連通部に、前記流体入口通路と流体出口通路とを繋ぐ軸線と直交する基準軸回りに回転可能に配設されたボールと、
周壁に所要の開口部が設けられた略円筒状をなし前記ボールと前記本体との間に配設されたボールシートと、
前記ボールを基準軸回りに回転させる操作機構と、
前記ボールシートの上面と当接する上側ボールシート押えと、
前記連通部の上方に開口する部分にねじ合わされ前記上側ボールシート押えを下方に押圧する上側押えねじと、を備え、
前記ボールを前記基準軸回りに回転させることで前記流体入口通路と流体出口通路との連通と遮断を行うボール弁であって、
前記連通部は、前記本体の下方にも貫通しており、前記連通部の下方に開口する部分に、さらに、前記ボールシートの下面と当接する下側ボールシート押えと、前記連通部の下方に開口する部分にねじ合わされ前記下側ボールシート押えを上方に押圧する下側押えねじと、を有するボール弁。
【請求項2】
前記ボールシートの前記開口部に内嵌されているリテーナをさらに有している請求項1に記載のボール弁。
【請求項3】
前記上側ボールシート押えと前記上側押えねじの間、及び/または、前記下側ボールシート押えと前記下側押えねじの間にばね部材を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のボール弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボールを回転させることで連通遮断を行うボール弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図4に示すような流体入口通路11、流体出口通路12およびこれらの通路間に設けられた連通部(凹部)13を有する本体10と、流体連通路21を有し本体10の連通部13に基準軸回りに回転可能に配設されたボール20と、周壁に所要の開口部が設けられた略円筒状をなしボール20と本体10との間に配設されたボールシート40とを備えており、ボールを基準軸回りに回転させることで流体入口通路11と流体出口通路12との連通遮断を行うボール弁1はよく知られている。
【0003】
ボール弁1から流体が漏れ出さないようにするため、ボールシート押えねじ42をねじ込み、皿バネ43を介して、ボールシート押え41を上方から下方へ力Fで押圧し、その力は、ボールシート40を押さえる力となる。力Fは、上方から下方に、リテーナ50を押圧する力Fとボール20を押圧する力Fに分かれ、Fの分力F2nがボール20を法線方向に押圧する。力Fは、下方で、リテーナ50がボールシート40を押圧する力Fとなり、FはFに比べて減衰して小さくなっている。ボール20の下方では、力F2nが伝達され、F3nとなってボールシート40は、ボール20によって押圧される。最終的に伝達された力は、力Fで本体10を押圧する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の図4に示すバルブにおいて、ボールシート40とボール20の間の境界に生じる面圧において、下部での面圧は上部での面圧に比べて減衰して小さくなっている。このボールシート40とボール20との間の面圧に関して、上部と下部でのばらつきが生じる現象は、このボールシート40と本体10との間の面圧についても同様に生じる。下部において、流体が漏れないようにするために必要な面圧を得るためには、大きな力Fをかける必要があるが、バルブを流れる流体の圧力が大きくなればなるほど、その力Fはさらに大きくしなければならず、限界がある。
【0005】
バルブを流れる流体の圧力が高圧の場合、ボールシート40の上部と下部にかかる力のばらつきを小さくすることができれば、図4に示すような一般的ボールバルブにおいて、力Fをさほど大きくする必要はなくなり、ボールシート押え41、ボールシート40及びリテーナ50などの部品に対して要求される強度なども軽減される。
【0006】
この発明の目的は、ボールを回転させることで連通遮断を行うボール弁において、ボールシートの上部と下部に生じる面圧のばらつきが小さく、流体が漏れにくいボール弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(1)は、流体入口通路、流体出口通路及びこれらの通路間に設けられた連通部を有する本体と、流体連通路を有し前記本体の前記連通部に、前記流体入口通路と流体出口通路とを繋ぐ軸線と直交する基準軸回りに回転可能に配設されたボールと、周壁に所要の開口部が設けられた略円筒状をなし前記ボールと前記本体との間に配設されたボールシートと、前記ボールを基準軸回りに回転させる操作機構と、前記ボールシートの上面と当接する上側ボールシート押えと、前記連通部の上方に開口する部分にねじ合わされ前記上側ボールシート押えを下方に押圧する上側押えねじと、を備え、前記ボールを前記基準軸回りに回転させることで前記流体入口通路と流体出口通路との連通と遮断を行うボール弁であって、前記連通部は、前記本体の下方にも貫通しており、前記連通部の下方に開口する部分に、さらに、前記ボールシートの下面と当接する下側ボールシート押えと、前記連通部の下方に開口する部分にねじ合わされ前記下側ボールシート押えを上方に押圧する下側押えねじと、を有するボール弁である。
【0008】
本発明(1)のボール弁では、連通部は、本体の上下方に貫通しており、連通部の下方に開口する部分に、さらに、ボールシートの下面と当接する下側ボールシート押えと、連通部の下方に開口する部分にねじ合わされ下側ボールシート押えを上方に押圧する下側押えねじと、を有するので、下側からの押圧力があることによって、ボールシートの上部と下部における面圧の差が、図4に示す従来のボール弁と比べて少なく、均一化されるので、ボール弁を流れる流体が漏れにくくなる。
【0009】
ボールシートは、合成樹脂材料から形成されており、より具体的には、ボール径より小径の開口部から、ボールが圧入されることを許容する程度の弾性を有するPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、超高分子量ポリエチレン等から形成されることが好ましいとされる。
【0010】
本発明(2)は、前記ボールシートの前記開口部に内嵌されているリテーナをさらに有している本発明(1)のボール弁である。
【0011】
本発明(2)では、ボールシートの開口部に内嵌されているリテーナがさらに備えられている。リテーナはステンレス鋼製であることが耐腐食性や強度の観点から好ましい。このリテーナによって、ボールシートの変形が抑制され、流体通路となる開口が確保される。
【0012】
従来のボール弁においては、ボールシートとボールおよびボールシートと本体との間からの流体の漏出を防止するために、高圧流体を流す際には過剰な上方からの荷重をかけなければならず、このリテーナまで変形してしまい、動作不良につながる危険性があった。本発明のボール弁では、過剰な上方からの荷重をかける必要がなくなるので、リテーナが変形することもなくなる。
【0013】
本発明(3)は、前記上側ボールシート押えと前記上側押えねじの間、及び/または、前記下側ボールシート押えと前記下側押えねじの間にばね部材を有することを特徴とする本発明(1)または(2)のボール弁である。
【0014】
本発明(3)では、前記上側ボールシート押えと前記上側押えねじの間、及び/または、前記下側ボールシート押えと前記下側押えねじの間にばね部材を有しているので、上方及び/または、下方からの荷重がこのばね部材の反発力によって、ボールシートに対する負荷を維持し続けることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明のボール弁によると、ボールを回転させることで連通遮断を行うボール弁において、ボールシートの上部と下部に生じる面圧のばらつきが小さくすることができ、流体がバルブから漏れにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明によるボール弁の第1実施例の部分断面図を示す。
図2】第1実施例における力の伝達を模式的に示す。
図3】この発明によるボール弁による、ボールシートの上部と下部にかかる力(面圧)を模式的に示す棒グラフである。
図4】従前のボール弁における力の伝達を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。以下の説明において、上下は、図の上下をいうものとする。この「上下」は便宜的なもので、設置に際しては、上下が逆になったり、水平になったりすることもある。
【0018】
図1は、本発明の実施例のボール弁1を示す。ボール弁1は、流体入口通路11および流体出口通路12を有し、流体入口通路11および流体出口通路12を連通する連通部13を有する本体10を備えている。流体入口通路11および流体出口通路12には、それぞれに継手部14が取り付けられている。
【0019】
連通部13には、流体を遮断連通するためのボール20が納められ、ボール20には、流体の通路となる流体連通路21が形成されている。ボール20と本体10との間には、合成樹脂材料であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のボールシート40が配置されている。このボールシート40は一体型構造で、出入口の開口部と直交する開口部からボール20を圧入する。ボール20を圧入する開口部が弾性変形してボール20を内部に収納する。そして、このボールシート40に上方から圧縮荷重をかけることによって、流体の漏出が防止される。
【0020】
ボールシート40の2か所の出入り口の開口部には、金属製の略円環状のリテーナ50が配置されている。リテーナ50は、ボールシート40が変形し通路を塞ぐことを防ぐものであり、ステンレス鋼製とした。ボール20の上方には、ボール20と連なるステム22が形成され、このステム22の上端部は、操作機構30のハンドル31と連結されている。ハンドル31を回転することによって、ボール20は回転し、流体の連通遮断が行われるが、操作機構はこのような手動のものに限らず、アクチュエータを使用し、電気や空圧によって回転させるものでも良い。
【0021】
本体10の上部には筒状の突出部16が上方に突出しており、この突出部16の内部の空間と連通部13の中に、ボールシート40と接触する円環状のボールシート押え41、皿バネ43およびボールシート押えねじ42が配置されている。
【0022】
突出部16の内面には、突出部雌ねじ16bが切られ、ボールシート押えねじ42の外面に形成されたボールシート押えねじ雄ねじ42aと螺合している。ボールシート押えねじ42を回して、上方から荷重を付加して皿バネ43を圧縮し、皿バネ43の反発力でボールシート押え41に上方から荷重を付加して、その荷重はボールシート40に伝達され、ボールシート40が上方からの荷重によって圧縮される。
【0023】
突出部16の外面には突出部雄ねじ16aが切られ、この突出部雄ねじ16aは、パネルナット15の内面に形成されたパネルナット雌ねじ15aと螺合している。パネルナット15aと本体10の上面との間にパネル等を挟むことができる。
【0024】
本発明の連通部13は、本体10の上方のみならず下方にも貫通しており、連通部13の下方に開口する部分に、さらに、ボールシート40の下面と当接する下側ボールシート押え63と、連通部13の下方に開口する部分にねじ合わされ下側ボールシート押え63を上方に押圧する下側押えねじ61と、を有する。下側押圧ねじ61には下側押圧ねじ雄ねじ61bが切られ、この雄ねじと螺合する本体雌ねじ10aが本体10の下部に形成されている。
【0025】
下側ボールシート押え63と下側押圧ねじ61の間には、皿バネ62が介在されており、下側押圧ねじ61の下面に形成された六角穴61aにレンチ等の工具を係合させて、下側押圧ねじ61をねじ込んで皿バネ62を圧縮し、その反発力で、下側ボールシート押え63を押圧し、さらに下側ボールシート押え63がボールシート40の下面を押圧する。下側押圧ねじ61、皿バネ62及び下側ボールシート押え63が、図中の下側押圧機構60を形成し、従来のボール弁に、この下側押圧機構60が新たに備えられている。連通部13に下方に配設される皿ばね62や上方に配設される皿ばね43は、ボールシート押えを押圧する弾性部材であれば皿ばねに限られるものではなく、また、下側押圧ねじ61、ボールシート押えねじ42によって直接ボールシート押えを押圧するように構成しても構わない。
【0026】
図2は、本発明により発生するボールシート40を押圧する力F及びGと、これらの力が変化して伝達される様子を模式的に示している。力FとGは、実際には、基準軸(ステム22の軸)の周囲に均等に発生しているが、図2ではわかりやすいように、力Fを左側に、力Gを右側に示している。
【0027】
力Fは、力FとFに分けられ、力Fの法線成分F2nがボール20に伝わり、減衰してF3nとなる。リテーナ50がボールシート40の下部を押圧する力FはFよりも小さく、ボールシート40が下側ボールシート押え63を力Fで押圧する。
【0028】
下側押圧機構60側では、下側押圧ねじ61をねじ込んで発生する力Gは皿バネ62を圧縮し、その反発力による力によって、下側ボールシート押え63がボールシート40の下面を下から上方に押圧する力Gと、ボールシート40がボールを押圧する力Gとなる。力G2の法線成分G2nがボール20を押圧する力となり、ボール20の上方で、ボールシート40を法線方向に押圧する力G3nとなる。リテーナ50がボールシート40を押圧する力Gとボールシート40が上側ボールシート押え41を押圧する力Gと、減衰しながら伝えられていく。
【0029】
図3は、従来のボール弁と本発明のボール弁1において、ボール20とボールシート40の界面に発生する面圧を、対比して示している。左側は、従来のボール弁の上側と下側の面圧をそれぞれ棒グラフで示している。右側は、本発明のボール弁1の上側と下側の面圧をそれぞれ棒グラフで示している。
【0030】
右肩上がりのハッチングで示すものは、上方からの押圧力Fに起因する成分を示し、右肩下がりのハッチングで示すものは、下方からの押圧力Gに起因する成分を示している。このグラフを見ると、従来のボール弁では、上側と下側の面圧の差Dが大きいが、本発明のボール弁1では、この差Dが小さくなっている。これは、Dを小さくするように下からの力Gを加えていることに起因する。
【0031】
本発明のボール弁1では、上方からの押圧力Fを従来のボール弁よりも小さくでき、上方からの押圧力Fと下方からの押圧力Gのバランスを調整すると、差Dを零とすることも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
この発明によるボール弁は、ボールシートの上部及び下部の接触面圧の差を小さくできることから、従来のボール弁に比べて、高圧流体を流す場合においても、押圧力を大きくすることなく、流体がバルブから漏れにくくなる。
【符号の説明】
【0033】
1:ボール弁
10:本体
10a:本体雌ねじ
11:流体入口通路
12:流体出口通路
13:連通部
14:継手部
15:パネルナット
15a:パネルナット雌ねじ
16:突出部
16a:突出部雄ねじ
16b:突出部雌ねじ
20:ボール
21:流体連通路
22:ステム
30:操作機構
31:ハンドル
40:ボールシート
41:ボールシート押え
42:ボールシート押えねじ
42a:ボールシート押えねじ雄ねじ
43:皿バネ
50:リテーナ
60:下側押圧機構
61:下側押圧ねじ
61a:六角穴
61b:下側押圧ねじ雄ねじ
62:皿バネ
63:下側ボールシート押え
図1
図2
図3
図4