(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】播種装置
(51)【国際特許分類】
A01C 7/12 20060101AFI20230728BHJP
A01C 7/20 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
A01C7/12 Z
A01C7/20 Z
(21)【出願番号】P 2019181713
(22)【出願日】2019-10-01
【審査請求日】2022-09-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1-(1)試験日 2019年3月5日、6日 1-(2)試験場所 錦江育苗センター(大韓民国大田広域市) 1-(3)公開者 八鹿鉄工株式会社 2-(1)試験日 2019年3月5日、6日 2-(2)試験場所 靈光代理店(大韓民国全羅南道靈光郡) 2-(3)公開者 八鹿鉄工株式会社 3-(1)試験日 2019年3月5日、6日 3-(2)試験場所 珍島代理店(大韓民国全羅南道珍島郡) 3-(3)公開者 八鹿鉄工株式会社 4-(1)試験日 2019年3月5日、6日 4-(2)試験場所 完州農家(大韓民国全羅北道完州郡) 4-(3)公開者 八鹿鉄工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391025914
【氏名又は名称】八鹿鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 真嗣
(72)【発明者】
【氏名】田路 光洋
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-157905(JP,U)
【文献】特開2009-195115(JP,A)
【文献】特開2006-042631(JP,A)
【文献】特公昭44-031126(JP,B1)
【文献】特開2006-129812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 7/00- 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に延びる軸線を中心として回転し、外周面に軸線方向および周方向に沿って形成された複数の播種穴を有する播種ロールと、
前記播種ロールの上部に臨む開口部を有する種子ホッパと、
前記種子ホッパに装着され種子を貯留可能な播種ガイドと
、
前記播種ロールの外周面に周方向に沿って形成され、前記播種穴を貫通するように形成される細溝と、
前記播種ロールの外周面のうちの下半分の部分に配置され、前記播種穴を塞ぐガイド板と、
前記
播種ロールの下端部よりも回転方向の下流側に配置され、前記細溝に挿入されるスクレイパと、を備え、
前記播種ガイドは、前記播種ロールの外周面に対向するとともに軸線方向において前記播種穴に対応した位置に配置され、種子が通過可能な複数の供給孔を有し、
前記供給孔は、周方向の長さが、前記播種穴の周方向の長さ以上、かつ周方向において隣接する播種穴と播種穴との間の長さ以下であ
り、
前記ガイド板における前記播種ロールの下端部に位置する部分には、前記播種ロールの下端部から回転方向の下流側へ向けて延出し、前記播種穴を開放するスリット孔が形成されており、
前記スクレイパの先端は、前記スリット孔の上流側端部から下流側へ向けて播種穴の直径と同じ距離を隔てた位置に配置される
ことを特徴とする播種装置。
【請求項2】
前記供給孔は、周方向の長さが、軸線方向の長さよりも長い長孔形状に形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の播種装置。
【請求項3】
前記播種ガイドよりも前記播種ロールの回転方向における下流側に配置され、前記播種ロールの外周面に摺接する摺り切り部材を有する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の播種装置。
【請求項4】
前記播種ロールの回転方向における前記播種ガイドよりも下流側の位置において、前記播種ロールの外周面に対向して配置される除電部材を有する
ことを特徴とする請求項1~請求項3の何れか一項に記載の播種装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、播種装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水平方向に延びる軸線を中心として回転し、外周面に軸線方向および円周方向に沿って形成された複数の播種穴を有する播種ロールと、播種ロールの上部に臨む開口部を有する種子ホッパとを備え、種子ホッパの開口部を通じて播種ロールの播種穴に種子を順次充填し、種子が充填された播種穴が播種ローラの回転に伴って播種ローラの下面に達したときに、播種穴内の種子を播種ロールの下方に位置する育苗用トレイに落下させて、播種を行うように構成された播種装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の播種装置は、主に、種子の周囲にコーティングを施したコーティング種子を播種することを目的として構成されており、種子ホッパの開口部が、播種ロールの外周面における軸線方向の全域および周方向に並んだ複数の播種穴の範囲にわたって全体的かつ広範囲に開口している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、種子ホッパの開口部が広範囲にわたって開口した播種装置においては、周囲にコーティングが施されていない裸種子を播種しようとした場合、裸種子はコーティング種子に比べて粒が小さいため、播種ロールの播種穴内に充填される種子の数が播種穴毎に異なる等の原因により、育苗用トレイに対する播種量が大きくばらつくこととなっていた。
【0006】
そこで本発明においては、播種量のばらつきを抑制して均一な播種を行うことができる播種装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する播種装置は、以下の特徴を有する。
即ち、播種装置は、水平方向に延びる軸線を中心として回転し、外周面に軸線方向および周方向に沿って形成された複数の播種穴を有する播種ロールと、前記播種ロールの上部に臨む開口部を有する種子ホッパと、前記種子ホッパに装着され種子を貯留可能な播種ガイドと、前記播種ロールの外周面に周方向に沿って形成され、前記播種穴を貫通するように形成される細溝と、前記播種ロールの外周面のうちの下半分の部分に配置され、前記播種穴を塞ぐガイド板と、前記播種ロールの下端部よりも回転方向の下流側に配置され、前記細溝に挿入されるスクレイパと、を備え、前記播種ガイドは、前記播種ロールの外周面に対向するとともに軸線方向において前記播種穴に対応した位置に配置され、種子が通過可能な複数の供給孔を有し、前記供給孔は、周方向の長さが、前記播種穴の周方向の長さ以上、かつ周方向において隣接する播種穴と播種穴との間の長さ以下であり、前記ガイド板における前記播種ロールの下端部に位置する部分には、前記播種ロールの下端部から回転方向の下流側へ向けて延出し、前記播種穴を開放するスリット孔が形成されており、前記スクレイパの先端は、前記スリット孔の上流側端部から下流側へ向けて播種穴の直径と同じ距離を隔てた位置に配置される。
【0008】
これにより、播種量のばらつきを抑制して、均一な播種を行うことができる。
【0009】
また、前記供給孔は、周方向の長さが、軸線方向の長さよりも長い長孔形状に形成される。
【0010】
これにより、播種穴に種子が装填されない欠粒が生じたり、播種穴に装填される種子量が少なくなったりすることが抑制され、播種をさらに均一にすることができる。
【0011】
また、前記播種ガイドよりも前記播種ロールの回転方向における下流側に配置され、前記播種ロールの外周面に摺接する摺り切り部材を有する。
【0012】
これにより、播種穴に装填される種子量を一定にすることができ、播種を均一にすることができる。また、余分な種子が播種ガイドの外部にこぼれ出すことを抑制できる。
【0013】
また、前記播種ロールの回転方向における前記播種ガイドよりも下流側の位置において、前記播種ロールの外周面に対向して配置される除電部材を有する。
【0014】
これにより、種子を播種穴から確実に落下させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、播種量のばらつきを抑制して、均一な播種を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図8】ガイド板のスリット孔およびスクレイパ板を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
図1に示す播種機1は、本発明に係る播種装置を備える播種機の一実施形態である。播種機1は、搬送装置2と、トレイ供給部3と、養土充填装置4と、潅水装置5と、養土鎮圧装置6と、播種装置7と、覆土装置8と、潅水装置9とを備えている。搬送装置2上には、トレイ供給部3、養土充填装置4、潅水装置5、養土鎮圧装置6、播種装置7、覆土装置8、および潅水装置9が、搬送方向の上流側(
図1における左側)から下流側(
図1における右側)へ向けて順に配置されている。
【0019】
トレイ供給部3は、搬送装置2の搬送方向における上流側端に配置されている。トレイ供給部3には、複数の育苗用トレイ11が積層されている。トレイ供給部3において最も下方に配置されている育苗用トレイ11が搬送装置2により養土充填装置4に搬送される。
【0020】
育苗用トレイ11が養土充填装置4に搬送されると、養土充填装置4のホッパ15に貯留される養土が、下方の育苗用トレイ11に充填されて、養土充填装置4が備える鎮圧ローラ16により均平される。その後、育苗用トレイ11が潅水装置5に搬送されて、潅水装置5にて育苗用トレイ11内の養土に潅水が施される。
【0021】
育苗用トレイ11は、潅水装置5を経た後に養土鎮圧装置6に搬送される。養土鎮圧装置6は、外周面から放射状に突出する突起17aを有した鎮圧ローラ17を備えており、育苗用トレイ11内の養土は、養土鎮圧装置6において鎮圧ローラ17の突起17aにより播種用穴が形成される
【0022】
次に、育苗用トレイ11は播種装置7に搬送される。播種装置7においては、播種ガイド23内の種子が播種ロール22によって繰り出されて、下方の育苗用トレイ11内の養土に播種が行われる。播種が行われた後、育苗用トレイ11は覆土装置8に搬送され、覆土装置8が備えるホッパ18内の覆土が育苗用トレイ11内に送出される。さらに、育苗用トレイ11は潅水装置9に搬送され、潅水装置9において育苗用トレイ11内の覆土に潅水が施されることにより、播種機1における播種作業が完了する。
【0023】
次に、播種装置7について説明する。播種装置7は、周囲にコーティングが施されていない裸種子を播種可能に構成された播種装置である。裸種子はコーティング種子よりも安価であるため、裸種子を用いて播種を行うことでコスト低減を図ることができる。播種を行う裸種子としては、例えば、ねぎの種子を用いることができる。
【0024】
図2、
図3に示すように、播種装置7は、種子ホッパ21と、播種ロール22と、播種ガイド23と、摺り切り部材24と、ガイド板25と、スクレイパ板26と、除電ブラシ27とを有している。
【0025】
播種ロール22は、回転軸22aを中心として回転可能な円筒状部材である。回転軸22aは、軸線が搬送装置2の搬送方向と直交する方向かつ水平方向に延びる姿勢に配置されている。回転軸22aは、回転軸22aの軸線方向における両側に配置されるサイドフレーム31、31に支持されている。サイドフレーム31、31は、搬送装置2に支持されている。これにより、播種ロール22は、搬送装置2の搬送方向と直交する方向かつ水平方向に延びる軸線を中心として回転可能に搬送装置2に支持されている。播種ロール22は、本実施形態においては
図2における反時計回り方向に回転駆動される。
【0026】
図4、
図5に示すように、播種ロール22の外周面22bには、複数の播種穴221が形成されている。播種穴221は、直径Roを有した円筒形状の穴であり、播種穴221の周縁部には、深さ方向において外周面22bに近づくにつれて拡径するテーパ面221aが形成されている。
【0027】
複数の播種穴221は、播種ロール22の外周面22bにおいて、軸線方向および周方向に沿ってマトリックス状に形成されている。軸線方向に沿って配置される播種穴221は、第1ピッチP1の間隔で形成されている。周方向に沿って形成される播種穴221は、第2ピッチP2の間隔で形成されている。
【0028】
播種ロール22の外周面22bには、周方向に沿って細溝222が形成されている。細溝222は、周方向に沿って形成される播種穴221の軸線方向中央部を貫通するように形成されており、播種ロール22における外周面22bの全周にわたって形成されている。細溝222の深さは、播種穴221の深さよりも深く形成されている。
【0029】
種子ホッパ21は、播種ロール22の上方に配置されており、下端部に播種ロール22の上部に臨む開口部21aを有している。種子ホッパ21の開口部21aは、播種ロール22の外周面22bにおいて軸線方向に沿って配置される複数の播種穴221、および周方向に沿って配置される複数の播種穴221を含む範囲において開口している。
【0030】
播種ガイド23は、種子ホッパ21に着脱可能に装着されており、播種を行う種子を貯留可能に構成されている。播種ガイド23は、播種ロール22の回転方向下流側に配置される下流側壁231と、播種ロール22の回転方向上流側に配置される上流側壁232と、下流側壁231および上流側壁232の軸線方向両側に配置される側壁233、233と、下端部に配置される底部235とを有し、上端が開放された箱形状に形成されている。
【0031】
下流側壁231は上下方向に沿って略垂直に配置されており、上流側壁232は、上方から下方へいくに従って下流側壁231との間隔が狭くなる方向に傾斜して配置されている。これにより、播種ガイド23の上端部の面積は下端部の面積よりも大きく形成されている。
【0032】
播種ガイド23の底部235は、播種ガイド23に貯留される種子が通過可能な供給孔235aを有している。供給孔235aは、種子ホッパ21の開口部21aを通じて播種ロール22の外周面22bに対向している。
【0033】
図6に示すように、供給孔235aは、軸線方向に沿って複数配置されている。複数の供給孔235aは、軸線方向において第1ピッチP1の間隔にて配置されている。各供給孔235aは、軸線方向において播種ロール22の播種穴221に対応した位置に配置されている。
【0034】
従って、播種ロール22が回転して播種穴221が周方向へ移動するのに伴って、周方向に沿って配置される播種穴221が、順次供給孔235aの下方を通過していくことになる。また、播種ロール22の播種穴221が供給孔235aの下方を通過する際に、播種ガイド23に貯留される種子が播種穴221に装填される。
【0035】
図7に示すように、供給孔235aは、周方向の長さRLが、軸線方向の長さRSよりも長い長孔形状に形成されている。供給孔235aの軸線方向の長さRSは、播種穴221の軸線方向の長さである直径Roと同じ長さ、または若大きい長さとなるように設定されている。供給孔235aの周方向の長さRLは、播種穴221の周方向の長さである直径Ro以上、かつ周方向において隣接する播種穴221と播種穴221との間の長さL以下の大きさとなるように設定されている。
【0036】
摺り切り部材24は、播種ガイド23よりも播種ロール22の回転方向における下流側に配置されている。摺り切り部材24は、種子ホッパ21の開口部21aを通じて播種ロール22の外周面22bに摺接している。摺り切り部材24は、播種ロール22の外周面22bの形状に対応した円弧形状に形成される摺接面24aを有しており、摺接面24aが播種ロール22の外周面22bに摺接している。
【0037】
摺り切り部材24および播種ガイド23は、種子ホッパ21内に配置されている。摺り切り部材24は、例えば樹脂部材にて構成されており、供給孔235aの下流側に隣接して配置されている。摺り切り部材24は播種ガイド23に取り付けられている。種子ホッパ21には押さえ部材21bが取り付けられており、摺り切り部材24は押さえ部材21bにより押さえ付けられて播種ロール22の外周面22bに当接した状態で固定されている。これにより、摺り切り部材24および播種ガイド23が種子ホッパ21内に装着されている。
【0038】
摺り切り部材24を播種ガイド23の下流側に設けることで、播種ガイド23内において種子を播種穴221に装填した際に、播種穴221から溢れた余分な種子を擦り切って播種ガイド23内に残すことができ、余分な種子が播種ガイド23の外部にこぼれ出すことを抑制することが可能となっている。
【0039】
ガイド板25は、播種ロール22の外周面22bのうち、略下半分の部分に配置されている。サイドフレーム31は、搬送装置2の搬送方向において、播種ロール22の上流側に配置されるステー部材25および播種ロール22の下流側に配置されるステー部材26を有している。ガイド板25の周方向における一端部はステー部材25に支持されており、他端部はステー部材26に支持されている。
【0040】
ガイド板25は、ステンレス鋼板等の金属板にて構成されており、播種ロール22の外周面22bの形状に沿った円弧形状に形成されている。ガイド板25が配置された部分においては、播種ロール22の外周面22bに形成される播種穴221はガイド板25により塞がれており、播種穴221に装填された種子が落下しないようになっている。
【0041】
図8に示すように、ガイド板25における播種ロール22の下端部に位置する部分には、播種穴221を開放するスリット孔25aが形成されている。スリット孔25aは周方向に延びる形状に形成されており、播種ロール22の下端部から回転方向の下流側へ向けて延出している。播種ロール22が回転して、播種穴221がガイド板25により塞がれた状態からスリット孔25aにより開放された状態になると、播種穴221に装填された種子が下方へ落下するように構成されている。
【0042】
スクレイパ板26は、金属製の板状部材にて構成されており、播種ロール22の下端部よりも回転方向の下流側に配置されている。スクレイパ板26はステー部材26に支持されている。スクレイパ板26は、ガイド板25のスリット孔25aが形成された部分に配置されており、スクレイパ板26の先端部が播種ロール22の細溝222に挿入されている。スクレイパ板26の細溝222への挿入位置は、播種ロール22の最下端位置よりも回転方向の下流側となっている。
【0043】
スクレイパ板26を設けることで、播種穴221がスリット孔25aにより開放された際に、播種穴221から落下せずに播種穴221内に残った種子を、スクレイパ板26により掻き出して落下させることが可能となっている。播種穴221から下方に落下した種子は、播種ロール22の下方に搬送されてきた育苗用トレイ11内の養土に播種される。
【0044】
除電ブラシ27は、播種ロール22の回転方向における播種ガイド23よりも下流側、かつガイド板25よりも上流側の位置において、播種ロール22の外周面22bに対向して配置されている。除電ブラシ27は、播種ロール22の外周面22bに接触はしておらず、所定の隙間を空けた状態で近接して配置されている。播種ロール22には、回転に伴って静電気が生じるが、除電ブラシ27を播種ロール22の外周面22bに対向して配置することで、播種ロール22に生じた静電気を除去することができる。
【0045】
播種ロール22が静電気を帯びた状態にあると、播種穴221がスリット孔25aにより開放された際に、播種穴221に装填された種子が静電気により吸着されて落下しないことがある。しかし、除電ブラシ27により播種ロール22に生じた静電気を除去することで、播種穴221がスリット孔25aにより開放された際に、種子が播種穴221に吸着されることが抑制され、播種穴221から良好に落下させることが可能となる。
【0046】
なお、除電ブラシ27は、ブラシ状の部材に限るものではなく、播種ロール22の静電気を除去することが可能であれば、シート状部材等の他の部材であってもよい。
【0047】
このように構成される播種装置7においては、播種ガイド23内に貯留された種子が、以下のようにして育苗用トレイ11内の養土に播種される。
【0048】
まず、播種ロール22が回転すると、播種ガイド23内の種子が供給孔235aを通じて播種穴221に装填される。この場合、供給孔235aは、軸線方向において播種ロール22の播種穴221に対応した位置に配置されるとともに、周方向の長さRLが播種穴221の直径Ro以上かつ周方向における播種穴221間の長さL以下に形成されている。
【0049】
従って、種子が供給孔235aを通じて播種穴221に装填される際には、一つの供給孔235aに対して一つの播種穴221が連通した状態となり、各播種穴221には同様の状態で種子が装填されることとなる。これにより、播種を行う種子が裸種子であったとしても、播種穴221に装填される種子量を一定にすることができ、育苗用トレイ11に対する播種量のばらつきを抑制して、均一な播種を行うことが可能となっている。
【0050】
また、供給孔235aは、周方向の長さRLが軸線方向の長さRSよりも長い長孔形状に形成されているため、播種ロール22が回転する際に、播種穴221と供給孔235aとが重なる時間を多く確保することができ、種子を供給孔235aを通じて確実に播種穴221に装填することが可能となる。これにより、播種穴221に種子が装填されない欠粒が生じたり、播種穴221に装填される種子量が少なくなったりすることが抑制され、育苗用トレイ11に対する播種をさらに均一にすることができる。
【0051】
また、播種穴221の周縁部には、外周面22bに近づくにつれて拡径するテーパ面221aが形成されているため、種子が供給孔235aから播種穴221へスムーズに流入することができ、播種穴221に対する種子の装填を確実に行うことが可能となっている。
【0052】
なお、播種穴221の直径Roは、播種穴221に装填する種子の大きさおよび形状、ならびに播種穴221に装填する種子量に応じて適宜変更することが可能である。また、播種穴221が形成される播種ロール22は、透明の樹脂部材により形成することが可能である。播種ロール22を透明の部材にて形成することで、播種穴221への種子の装填状態を外部から視認することができるため、播種穴221への種子の装填状態が適正であるか否かを容易に確認することが可能となる。
【0053】
種子が播種穴221に装填された後に播種ロール22が回転すると、播種穴221よりも回転方向下流側に配置される摺り切り部材24によって、播種穴221から溢れた余分な種子が擦り切られる。これにより、播種穴221に装填される種子量を一定にすることができ、育苗用トレイ11に対する播種を均一にすることが可能となる。
【0054】
種子が装填された播種穴221は、摺り切り部材24を通過した後に除電ブラシ27が配置された箇所に到達して静電気が除去される。その後、播種ロール22がさらに回転すると、種子が装填された播種穴221はガイド板25により塞がれた状態で下方へ移動して、播種ロール22の下端部に至る。
【0055】
種子が装填された播種穴221が、播種ロール22の下端部に到達してスリット孔25aにより開放されると、播種穴221に装填された種子が下方へ落下して育苗用トレイ11に播種される。播種穴221がスリット孔25aにより開放された際に、落下せずに播種穴221内に残った種子がある場合は、残った種子はスクレイパ板26により播種穴221から掻き出されて下方に落下する。
【0056】
ここで、播種装置7により裸種子を播種する場合、裸種子は粒が小さいため、播種ロール22の外周面22bに形成される細溝222は、種子が嵌り込まないように溝幅を小さく形成する必要がある。この場合、例えば播種穴221内の種子を掻き出すスクレイパ部材をピアノ線等の線状部材にて構成すると、線状部材が細くなり過ぎて剛性が不足し、十分な掻き出し作用を奏することが困難となる。
【0057】
従って、裸種子を播種する場合には、スクレイパ部材として板状部材にて構成されるスクレイパ板26を用いることで、板状部材の厚みを薄くしたとしても必要な剛性を確保して、十分な掻き出し作用を奏することが可能となる。
【0058】
また、スクレイパ板26は、先端が播種ロール22の下端部の近くに位置するように配置することが好ましい。例えば、スクレイパ板26の先端は、播種ロール22の回転方向において、ガイド板25に形成されたスリット孔25aの上流側端部から下流側へ向けて播種穴221の直径Roと同程度の距離を隔てた位置に配置することができる。
【0059】
上述のように、播種穴221に装填された種子は、播種ロール22の下端部に到達したときにスリット孔25aにより開放されて自重により落下し、自重により落下せずに播種穴221に残った種子はスクレイパ板26により掻き出されて落下する。従って、スクレイパ板26の先端を播種ロール22の下端部の近くに配置することで、自重により落下した種子と、スクレイパ板26により掻き出されて落下した種子との落下位置を近くにすることができ、育苗用トレイ11に対する播種を均一にすることが可能となる。
【0060】
なお、播種ロール22の播種穴221は、
図9に示す播種穴221Aのように、側面の形状を全体的に外周面22bに近づくにつれて拡径するテーパ形状に形成することもできる。このように形成することで、播種穴221Aから種子を落下させる際に、種子が播種穴221Aに引っ掛りにくくなり、種子が播種穴221Aに残留することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 播種機
7 播種装置
11 育苗用トレイ
21 種子ホッパ
21a 開口部
22 播種ロール
23 播種ガイド
24 摺り切り部材
27 除電ブラシ
221 播種穴
235a 供給孔
L 周方向において隣接する播種穴と播種穴との間の長さ
Ro 播種穴の直径(播種穴の周方向の長さ)
RL 供給孔の周方向の長さ
RS 供給孔の軸線方向の長さ