(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】リンス剤及びリンス剤の使用方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/26 20060101AFI20230728BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20230728BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20230728BHJP
C11D 7/32 20060101ALI20230728BHJP
C11D 7/50 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
H05K3/26 E
B08B3/08 Z
C11D7/26
C11D7/32
C11D7/50
(21)【出願番号】P 2019540107
(86)(22)【出願日】2019-01-31
(86)【国際出願番号】 JP2019003388
(87)【国際公開番号】W WO2019163465
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2018032126
(32)【優先日】2018-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000123491
【氏名又は名称】化研テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 薫夫
(72)【発明者】
【氏名】赤松 悠紀
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-339958(JP,A)
【文献】特開2018-053248(JP,A)
【文献】特開平09-059698(JP,A)
【文献】特開2010-043248(JP,A)
【文献】特開平10-219155(JP,A)
【文献】特開2002-156765(JP,A)
【文献】特開平07-197095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/26
B08B 3/08
C11D 7/26
C11D 7/32
C11D 7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水溶性グリコールエーテル化合物及び水を含み、ベンジルアルコールの溶解度が10vol%以上である、プリント配線基板
に付着したフラックス用洗浄剤を除くために用いられるリンス剤であって、
前記水溶性グリコールエーテル化合物100重量部に対して、前記水の配合量が150~400重量部であり、
前記水溶性グリコールエーテル化合物は、3-メトキシ-3-メチルブタノール、3-メトキシブタノール、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、及びジエチレングリコールジメチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である、リンス剤。
【請求項2】
室温から80℃の温度範囲における光透過率が90%以上である、請求項1に記載のリンス剤。
【請求項3】
引火点が50℃以上である、請求項1又は2に記載のリンス剤。
【請求項4】
感光性ソルダーレジスト硬化体により表面が保護されたプリント基板の表面に対する水の初期の接触角をθ
1とし、
前記プリント基板を30℃のリンス剤に10分間浸漬した後、100℃で5分の条件で乾燥させた前記プリント基板の表面に対する水の接触角をθ
2としたときに、
接触角θ
2とθ
1との差の絶対値|θ
2-θ
1|が3°以下である、請求項1又は2に記載のリンス剤。
【請求項5】
前記水溶性グリコールエーテル化合物は、その沸点が250℃以下である、請求項1又は2に記載のリンス剤。
【請求項6】
沸点が250℃以下であるアミン化合物を更に含み、
当該アミン化合物の配合量は、前記水溶性グリコールエーテル化合物100重量部に対して、0.1~10重量部である、請求項1又は2に記載のリンス剤。
【請求項7】
下記工程(1)~(2)を含む、リンス剤の使用方法。
(1)ベンジルアルコール及び疎水性グリコールエーテル化合物、あるいはいずれか一方を含む洗浄剤を用いて、被洗浄物に付着したフラックスを洗浄する工程であって、
前記被洗浄物はプリント配線基板である、工程、
(2)前記工程(1)で洗浄された前記被洗浄物を、少なくとも水溶性グリコールエーテル化合物及び水を含み、前記ベンジルアルコールの溶解度が10vol%以上であるリンス剤であって、前記水溶性グリコールエーテル化合物100重量部に対して、前記水の配合量が150~400重量部であるリンス剤を用いてリンスする工程であって、
前記水溶性グリコールエーテル化合物は、3-メトキシ-3-メチルブタノール、3-メトキシブタノール、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、及びジエチレングリコールジメチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である、工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンス剤及びリンス剤の使用方法に関する。特に、所定量の水を含むことにより、環境安全性(例えば、作業環境安全性)に優れる一方、特定洗浄剤(ベンジルアルコール等)による被洗浄物に対する洗浄後に、優れたリンス性を発揮できるリンス剤及びそのようなリンス剤の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用洗浄剤、例えば、フラックス用洗浄剤は、ソルダペーストを用いて、被洗浄物である電子部品をプリント配線基板の電極に接合した後、フラックス及びフラックス残渣を除去するために、幅広く使用されている。
そのため、良好な洗浄性を発揮し、環境問題等が比較的少ないことから、各種グリコール系化合物を主成分とした、グリコール系洗浄剤からなるフラックス用洗浄剤が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2009/020199号公報
【文献】特開平7-080423号公報
【文献】特開平5-175641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特定構造式で表される非ハロゲン系有機溶剤(A)と、特定構造式で表されるアミン化合物(B)と、アミノ基非含有キレート剤(C)と、必要に応じて、所定量の水とを含んでなる鉛フリーハンダフラックス除去用洗浄剤組成物が開示されている(例えば、WO2009/020199号公報(特許文献1)参照)。
【0005】
また、非イオン性界面活性剤及び/又は炭化水素化合物等を含んでなる洗浄剤組成物を用いて洗浄工程を実施した後、5~100℃の水を使用するリンス工程と、を有する洗浄方法が開示されている(例えば、特開平7-080423号公報(特許文献2)参照)。
【0006】
さらにまた、ロジン系ハンダフラックスが付着した基板に、特定のグリコールエーテル系化合物を含有してなる洗浄剤を接触せしめ、該基板よりフラックス洗浄除去し、次いですすぎ剤として低級アルコールもしくはその水溶液等を接触せしめる基板の洗浄処理方法が開示されている(例えば、特開平5-175641号公報(特許文献3)参照)。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたフラックス用洗浄剤自体は、通常、沸点が高く、短時間に乾燥させることが困難であるという課題があった。さらに、当該フラックス用洗浄剤は、被洗浄物に対する清浄度が低下しやすいという問題が見られた。
そのため、水及び含水アルコール等のリンス剤を用いて、フラックス用洗浄剤を置換しつつ、被洗浄物を乾燥させるプロセスを設けることが必要であるという問題が見られた。
【0008】
また、特許文献2に開示された洗浄方法の場合、洗浄剤組成物の種類が過度に制限されるという課題があった。さらに、当該洗浄方法の場合、リンス工程における水温を、厳格に所定範囲内の値(5~100℃)に制御しなければならないという問題が見られた。
その上、リンス剤として水を用いた場合、乾燥性が悪いばかりか、疎水性のフラックス用洗浄剤、例えば、ベンジルアルコール等に対する溶解性が低いため、濯ぎ不良となりやすいという問題も見られた。
【0009】
特許文献3に開示された基板の洗浄処理方法の場合、リンス剤として含水アルコールを用いていることから、疎水性のフラックス用洗浄剤に対する溶解性は、比較的良好である。しかしながら、当該リンス剤は、引火点が低く、環境安全性(例えば、作業環境安全性)が不十分であるという問題が見られた。
【0010】
そこで、本発明の発明者は鋭意検討した結果、水溶性グリコールエーテル化合物の配合量と、水の配合量との割合を所定割合としたリンス剤であって、かつ、リンス剤におけるベンジルアルコールの溶解度を所定値以上とすることによって、従来の問題を解決することを見出した。
すなわち、本発明は、疎水性の特定洗浄剤(ベンジルアルコール等)による被洗浄物の洗浄後に用いられる、環境安全性(例えば、作業環境安全性)に優れた水系リンス剤であって、かつ、優れたリンス性を発揮することができるリンス剤及びこのようなリンス剤の使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、少なくとも水溶性グリコールエーテル化合物及び水を含み、ベンジルアルコールの溶解度が10vol%以上であるリンス剤であって、水溶性グリコールエーテル化合物100重量部に対して、水の配合量が50~1000重量部であるリンス剤が提供される。本発明によれば、上述した問題点を解決することができる。
このように水溶性グリコールエーテル化合物の配合量と、水の配合量との割合を所定範囲内の値とした、環境安全性(例えば、作業環境安全性)に優れたリンス剤である。
そして、単位体積当たりのリンス剤に対するベンジルアルコールの溶解度を所定値以上とすることによって、従来水ではすすぎが困難であったベンジルアルコール等の疎水性化合物をはじめ、様々な洗浄剤をすすぐことが出来る。そのため、被洗浄物における所定洗浄剤の残留が極めて少ないリンス剤を提供することができる。
【0012】
また、本発明のリンス剤を構成するにあたり、室温から80℃の温度範囲における光透過率が90%以上であることが好ましい。
このように所定温度範囲において、所定の光透過率を有することによって、室温から80℃までの温度範囲において相分離することなく、事実上、曇点を有しないと判断することができる。したがって、通常の使用温度範囲では、曇点を有さず、透明性を維持することから、使い勝手が良好なリンス剤を提供することができる。
【0013】
また、本発明のリンス剤を構成するにあたり、リンス剤の引火点が50℃以上であることが好ましい。
このように引火点を有する場合であっても、所定温度以上の値とすることによって、より環境安全性(例えば、作業環境安全性)に優れるリンス剤を提供することができる。
【0014】
また、本発明のリンス剤を構成するにあたり、感光性ソルダーレジスト硬化体によって表面が保護されたプリント基板のレジスト表面に対する水の初期接触角をθ1とし、上記プリント基板を30℃のリンス剤に10分間浸漬した後、100℃で5分の条件で乾燥させた該プリント基板のレジスト表面に対する水の接触角をθ2としたときに、|θ2-θ1|が3°以下であることが好ましい。
このように所定接触角の差の絶対値とすることによって、プリント基板等の被洗浄物に対する悪影響が少ないリンス剤を、定量的に提供することができる。
【0015】
また、本発明のリンス剤を構成するにあたり、水溶性グリコールエーテル化合物は、その沸点(大気圧下)が250℃以下であることが好ましい。
このように水溶性グリコールエーテル化合物の沸点を制限することによって、リンス剤の再生をさらに容易に行うことができ、かつ、乾燥性にもさらに優れたものとなる。
【0016】
また、本発明のリンス剤を構成するにあたり、水溶性グリコールエーテル化合物は、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチルブタノール、3-メトキシブタノール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル及びジエチレングリコールジメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
このような水溶性グリコールエーテル化合物を用いることによって、環境安全性(例えば、作業環境安全性)に優れるとともに、洗浄剤の残留が少なく、さらには、比較的安価なリンス剤を提供することができる。
【0017】
また、本発明のリンス剤を構成するにあたり、上記リンス剤は沸点が250℃以下であるアミン化合物を更に含み、当該アミン化合物の配合量は、水溶性グリコールエーテル化合物100重量部に対して、0.1~10重量部であることが好ましい。
このように所定沸点を有するアミン化合物を所定量配合することによって、洗浄剤中に含まれるフラックス残渣との相溶性を上げることができるとともに、リンス剤の再生をさらに容易に行うことができ、かつ、プリント基板等の被洗浄物に対する悪影響が少ないリンス剤で被洗浄物を効率的に洗浄することができるリンス剤を提供することができる。
【0018】
本発明の別の態様は、下記工程(1)~工程(2)を有することを特徴としたリンス剤の使用方法である。
(1)被洗浄物に付着したフラックスを、ベンジルアルコール及び疎水性グリコールエーテル化合物、あるいはいずれか一方を含む洗浄液で洗浄する工程
(2)上記工程(1)で洗浄された被洗浄物を、少なくとも水溶性グリコールエーテル化合物及び水を含み、ベンジルアルコールの溶解度が10vol%以上であるリンス剤であって、水溶性グリコールエーテル化合物100重量部に対して、水の配合量が50~1000重量部であるリンス剤を用いて、リンスする工程
このように水溶性グリコールエーテル化合物の配合量と、水の配合量との割合を所定範囲内の値とし、かつ、ベンジルアルコールの溶解度を所定値以上としたリンス剤を用いることによって、所定洗浄剤を用いて被洗浄物を効率的に洗浄した後であっても、環境安全性(例えば、作業環境安全性)に優れたリンス処理を行うことができる。
その上、洗浄工程において、所定洗浄剤を用いた場合であっても、従来水ではすすぎが困難であったベンジルアルコール等の疎水性化合物をはじめ、様々な洗浄剤をすすぐことが出来、被洗浄物における所定洗浄剤の残留が極めて少ないリンス剤でリンス処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、疎水性の特定洗浄剤(ベンジルアルコール等)による被洗浄物の洗浄後に用いられる、環境安全性(例えば、作業環境安全性)に優れた水系リンス剤であって、かつ、優れたリンス性を発揮することができるリンス剤及びこのようなリンス剤の使用方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、リンス剤の単位体積(100ml)に対する、ベンジルアルコールの溶解度(vol%)と、相溶性(すすぎ性)の評価点(相対値)との関係を説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、少なくとも水溶性グリコールエーテル化合物及び水を含み、ベンジルアルコールの溶解度が10vol%以上であるリンス剤であって、水溶性グリコールエーテル化合物100重量部に対して、水の配合量を50~1000重量部の範囲内の値とすることを特徴とするリンス剤である。
言い換えると、上記リンス剤は、少なくとも水溶性グリコールエーテル化合物及び水を含み、ベンジルアルコールの溶解度が10vol%以上であるリンス剤であって、
上記水溶性グリコールエーテル化合物100重量部に対して、上記水の配合量が50~1000重量部である。
以下、本発明の第1の実施形態のリンス剤を、適宜図面を参照しながら、具体的に説明する。なお、本明細書において「A~B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。
【0022】
1.水溶性グリコールエーテル化合物
水溶性グリコールエーテル化合物は、リンス剤の主成分である。ここで、「グリコールエーテル化合物」とは、ジオール又はその縮合体の水酸基の片方又は両方がエーテル化した化合物を意味する。
そして、本発明のリンス剤を構成するグリコールエーテル化合物は、上記の第1工程(工程(1))で使用したもの(洗浄液に含まれる疎水性グリコールエーテル化合物)とは異なり、水溶性グリコールエーテル化合物である。
この理由は、かかる水溶性グリコールエーテル化合物を用いることにより、水100重量部に100ml溶解させても、懸濁又は分離が生じないことになるためである。
そして、被洗浄物に残留する疎水性を有するベンジルアルコール又は疎水性グリコールエーテル化合物を除去して、被洗浄物を効率的にリンスすることが可能になるためである。
なお、ここで使用される水溶性グリコールエーテル化合物としては、例えば、水への溶解度(測定温度:20℃)が50重量%を超える水溶性を示すものが好ましい。
【0023】
また、本発明で使用する水溶性グリコールエーテル化合物は、その沸点(大気圧下)を、通常、250℃以下の値とすることが好ましい。すなわち、上記水溶性グリコールエーテル化合物は、その沸点(大気圧下)が250℃以下であることが好ましい。本実施形態において、「大気圧」は1013.25hPaである。
この理由は、このような沸点を有する水溶性グリコールエーテル化合物を使用することにより、リンス剤の再生をさらに容易に行うことができ、かつ、得られるリンス剤が引火性でなくなり、環境安全性(例えば、作業環境安全性)にもさらに優れたものとなるためである。
従って、本発明のリンス剤は、引火点を有する場合であっても、それが50℃以上であるか、又は引火点を有していないことが好ましい。
すなわち、洗浄装置の運転中に、リンス剤への引火の危険性がなくなり、非常に安定したリンス工程を含む洗浄作業を行うことができる。
よって、水溶性グリコールエーテル化合物の沸点を120~230℃の範囲内の値とすることがより好ましく、140~220℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0024】
また、このような水溶性グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル(ETB)、3-メトキシ-3-メチルブタノール(MMB)、2-メトキシブタノール(2MB)、3-メトキシブタノール(3MB)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(iPG)、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル(IPDM)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(MEDG)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(DMTG)及びジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)からなる群より選ばれる少なくとも一種類の化合物を挙げることができる。
上記水溶性グリコールエーテル化合物は、一種を単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。複数種の上記水溶性グリコールエーテルの組み合わせとしては、例えば、PSとMMB、PSと3MB、PSとIPDM、PSとDPM、PSとDMTG、ETBとMMB、ETBとDPM、MMBとDPM、及びMMBとDMTGが挙げられる。なお、上記水溶性グリコールエーテル化合物の三種以上を組み合わせてもよいことは言うまでもない。
【0025】
本実施形態の一側面において、上記水溶性グリコールエーテル化合物は、以下の式1、式2又は式3で表される構造を有する化合物であってもよい。
HO-[C3H6-O]2-R1 (式1)
R2-O-[(CH2)2-O]3-R3 (式2)
CH3-CR4R5-CR6R7-CH2-OH (式3)
(式1中、R1は炭素数1~3のアルキル基を示す。式2中、R2は炭素数1又は2のアルキル基を示し、R3は水素原子又は炭素数1又は2のアルキル基を示す。式3中、R4及びR6は、一方が水素原子を示し、他方が炭素数1又は2のアルコキシ基を示す。式3中、R5及びR7は、一方が水素原子を示し、他方が水素原子又は炭素数1若しくは2のアルキル基を示す。)
【0026】
式1中、-[C3H6-O]2-で表される基としては、例えば、-[(CH2)3-O]2-で表される基、-[CH2CH(CH3)-O]2-で表される基、及び-[CH(CH3)CH2-O]2-で表される基が挙げられる。本実施形態において、式1中の-[C3H6-O]2-で表される基は、-[CH2CH(CH3)-O]2-で表される基であることが好ましい。
【0027】
そして、これらの水溶性グリコールエーテル化合物中、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチルブタノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等であれば、安全性、疎水性化合物との相溶性(すすぎ性)、乾燥性の理由から、より好適な水溶性グリコールエーテル化合物として使用することができる。
【0028】
2.水
リンス剤を構成するにあたり、水溶性グリコールエーテル化合物100重量部に対して、水の配合量を50~1000重量部の範囲内の値とすることを特徴とする。言い換えると、上記水溶性グリコールエーテル化合物100重量部に対して、上記水の配合量が50~1000重量部である。
この理由は、過度に水の配合量が少なくなると、得られるリンス剤の引火性が高まったり、レジストに対する悪影響(接触角変化)が生じたりする場合があるためである。
一方、過度に水の配合量が多くなると、リンス剤によるリンス性又はフラックスの再付着防止性が著しく低下する場合があるためである。
【0029】
したがって、リンス剤を構成するにあたり、水溶性グリコールエーテル化合物100重量部に対して、水の配合量を80~600重量部の範囲内の値とすることが好ましく、100~400重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。言い換えると、上記水溶性グリコールエーテル化合物100重量部に対して、水の配合量が80~600重量部であることが好ましく、100~400重量部であることがさらに好ましい。
そして、水溶性グリコールエーテル化合物に対して、配合する水としては、純水(イオン交換水、蒸留水等)が好ましく、電気伝導率が10μS/cm程度の清浄性を有することが好ましく、1μS/cm程度の清浄性を有することがより好ましい。言い換えると、上記水は、その電気伝導率が1~10μS/cmであることが好ましく、1~5μS/cmであることがより好ましい。
【0030】
3.溶解度
また、リンス剤の特性に関して、当該リンス剤の単位体積(100ml)に対する、ベンジルアルコールの溶解度を10vol%以上の値とすることを特徴とする。言い換えると、上記リンス剤の単位体積(100ml)に対する、ベンジルアルコールの溶解度が10vol%以上である。
すなわち、本発明で使用するリンス剤は、特定の洗浄剤、例えば、ベンジルアルコール又は疎水性グリコールエーテル化合物を用いた場合であっても、それらが付着した被洗浄物をリンスするため、上述の構成を備える。
ここで、ベンジルアルコールの溶解度を指標としたのは、ベンジルアルコール、疎水性グリコールエーテル化合物のうち、当該リンス剤への溶解性が最も低いのがベンジルアルコールであるためである。
また、かかるリンス剤の単位体積(100ml)に対する、ベンジルアルコールの溶解度が10vol%以上の値であれば、洗浄時の濁度の値の変化を極力低下させることができ、透明性に富んだリンス剤の状態を維持できるためである。
【0031】
但し、かかるリンス剤の単位体積(100ml)に対する、ベンジルアルコールの溶解度が過度に大きくなると、使用可能な水溶性グリコールエーテル化合物の種類が過度に制限される場合がある。
したがって、かかるリンス剤の単位体積(100ml)に対する、ベンジルアルコールの溶解度を15vol%~40vol%の範囲内の値とすることが好ましく、20vol%~30vol%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0032】
ここで、
図1を参照して、リンス剤の単位体積(100ml)に対する、ベンジルアルコールの溶解度(vol%)と、相溶性(すすぎ性、又はリンス性)の評価点(相対値)との関係を説明する。
すなわち、
図1の横軸に、リンス剤の単位体積に対する、ベンジルアルコールの溶解度(vol%)をとって示してあり、縦軸に、相溶性(すすぎ性、又はリンス性)の評価点(相対値)をとって示してある。ここで、縦軸の評価点0、1、2、3、4及び5は、それぞれ後述する実施例におけるリンス性の評価E、D、C、B、A’及びAに対応している。
そして、
図1中の特性曲線から判断して、ベンジルアルコールの溶解度が5vol%程度では、評価点は未だ低いものの、ベンジルアルコールの溶解度が10vol%を超えると、急激に評価点が高くなる傾向がある。
そして、ベンジルアルコールの溶解度(vol%)が15vol%程度を超え、少なくとも25vol%程度までは、最高の評価点が得られている。
したがって、リンス剤におけるベンジルアルコールの溶解度を10vol%以上に適宜調整することにより、相溶性(すすぎ性、又はリンス性)の評価に関して、良好な結果が得られることが理解される。
【0033】
4.所定沸点のアミン化合物
また、本発明で使用するリンス剤には、大気圧下の沸点が250℃以下のアミン化合物を配合することが好ましい。すなわち、上記リンス剤は、沸点が250℃以下であるアミン化合物を更に含むことが好ましい。
この理由は、かかる沸点を有するアミン化合物を配合することにより、リンス剤の再生を大きく妨げることなく、フラックスの溶解度を高めることができ、ひいては、洗浄性の向上が図られるためである。
その上、かかるアミン化合物を配合することにより、フラックスの再付着についても有効に防止でき、かかるリンス剤を洗浄剤としての機能も発揮させるためである。
したがって、かかるアミン化合物の沸点を120~230℃の範囲内の値とすることがより好ましく、140~220℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0034】
本実施形態において「アミン化合物」とは、アンモニアの水素原子を炭化水素基又は芳香族原子団で置換した化合物を意味する。上記アミン化合物には、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミンが含まれる。また、他の側面において、上記アミン化合物には、脂肪族アミン及び芳香族アミンが含まれる。さらに他の側面において、上記アミン化合物には、モノアミン、ジアミン及びポリアミンが含まれる。
【0035】
また、このような沸点を有するアミン化合物の配合量を、リンス剤中に含まれる水溶性グリコールエーテル化合物100重量部に対して、通常、0.1~10重量部の範囲内の値とすることが好ましい。言い換えると、当該アミン化合物の配合量は、上記水溶性グリコールエーテル化合物100重量部に対して、0.1~10重量部であることが好ましい。
すなわち、過度に少なく配合すると、アミン化合物の配合効果が得られない場合があるためである。
一方、過度に配合すると、洗浄装置を構成する金属、基板における導体等を腐食させたり、臭気が強くなったりする場合があるためである。
したがって、上記アミン化合物の配合量は、リンス剤中に含まれる水溶性グリコールエーテル化合物100重量部に対して、0.2~5重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5~3重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0036】
また、沸点が250℃以下のアミン化合物の引火点を30~100℃の範囲内の値とすることが好ましい。すなわち、上記アミン化合物は、その引火点が30~100℃であることが好ましい。
このような引火点を有するアミン化合物であれば、比較的多く配合したとしても、リンス剤の引火点の変動が殆ど発現しないためである。
【0037】
よって、沸点が250℃以下のアミン化合物の好適例としては、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサメチレンジアミン(TMHMDA)、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ジアミノブタン(TMDAB)、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン(TMDAP)、ジブチルアミン(DBA)、N,N-ジエチルヒドロキシアミン(DEHA)、N-エチルエタノールアミン(MEM)の一種単独又は二種以上の組み合わせを挙げることができる。二種以上の上記アミン化合物の組み合わせとしては、例えば、DBAとDEHAが挙げられる。
【0038】
本実施形態の一側面において、沸点が250℃以下のアミン化合物は、以下の式4~式7のいずれかで表される構造を有する化合物であってもよい。式7中、-CqH2q-で表される基は、直鎖状であってもよいし(qが1~4の整数の場合)、分岐鎖状であってもよい(qが2~4の整数の場合)。式7中、-CrH2r-で表される基は、直鎖状であってもよいし(rが1~4の整数の場合)、分岐鎖状であってもよい(rが2~4の整数の場合)。
(CH3)2-N-(CH2)n-N-(CH3)2 (式4)
(H-(CH2)m)2-NH(式5)
(H-(CH2)p)2-N-OH (式6)
H-CqH2q-NH-CrH2r-OH (式7)
(式4中、nは3~6の整数を示す。式5中、mは4又は5の整数を示す。式6中、pは2~4の整数を示す。式7中、qは1~4の整数を示し、rは1~4の整数を示す。)
【0039】
5.他の配合成分
また、リンス剤に配合される、その他の成分としては、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、粘度調整剤等の少なくとも一種を挙げることができる。
そして、これらの成分の配合量は、それぞれ配合目的に応じて適宜決めることができるが、通常、リンス剤の全体量に対して、0.01~10重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
【0040】
6.引火点
JIS K 2265-1及び4(引火点の求め方)に準じて測定されるリンス剤の引火点を50℃以上の値とすることが好ましい。すなわち、上記リンス剤は、その引火点が50℃以上であることが好ましい。
この理由は、リンス剤が引火点を有する場合であっても、その値が50℃以上であれば、取り扱いがさらに容易になるとともに、安全性をさらに向上させることができるためである。
但し、リンス剤が引火点を有する場合、その値が120℃を超えると、再生上、使用可能なリンス剤の配合成分の種類が過度に制限されたり、コストが高くなって、経済的に不利となったりする場合がある。
したがって、リンス剤の引火点を60~120℃の範囲内の値とすることが好ましく、70~100℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0041】
7.光透過率
また、室温から80℃の温度範囲における、リンス剤の光透過率(可視光透過率)を90%以上の値とすることが好ましい。すなわち、上記リンス剤は、室温から80℃の温度範囲における光透過率が90%以上であることが好ましい。
この理由は、このような温度範囲(室温から80℃)において、所定の光透過率を有することによって、相分離することなく、事実上、曇点を有しないと判断することができるためである。したがって、所定温度範囲内に曇点を有しない以上、使い勝手が良好なリンス剤を提供することができる。
すなわち、このようにリンス剤が相分離せず透明な間は、前工程である洗浄工程で使用したベンジルアルコール、疎水性グリコールエーテル化合物等を有効に相溶することができるためである。それと共にフラックスの再付着も起こらず、充分にリンス剤として機能することができるためである。
したがって、室温から80℃の温度範囲における、リンス剤の光透過率を95%以上の値とすることがより好ましく、98%以上の値とすることがさらに好ましい。上記光透過率の上限は、本発明の効果を損なわない範囲において特に制限されないが、例えば、100%以下が挙げられる。
なお、光透過率の測定は、分光光度計(日本分光株式会社製、製品名:紫外可視分光光度計V-530)を用いて、可視光(波長660nm)、室温(25℃)~80℃の条件で行う。
【0042】
8.接触角
また、本発明で使用するリンス剤につき、被洗浄物に対する表面改質を少なくすることが好ましい。
すなわち、本発明で使用するリンス剤と被洗浄物とが接触しても、被洗浄物の乾燥後における水の接触角変化が非常に少なく、本発明のリンス剤が被洗浄物に及ぼす影響が極めて少ないといえる。
より具体的には、感光性ソルダーレジスト硬化体によって表面が保護されたプリント基板のレジスト表面に対する水の初期接触角をθ1とし、30℃のリンス剤に10分間浸漬した後のこのレジスト表面に対する水の接触角をθ2としたときに、これら接触角の差の絶対値|θ2-θ1|を3°以下の値とすることが好ましい。
言い換えると、感光性ソルダーレジスト硬化体により表面が保護されたプリント基板のレジスト表面に対する水の初期の接触角をθ1とし、上記プリント基板を30℃のリンス剤に10分間浸漬した後、100℃で5分の条件で乾燥させた上記プリント基板のレジスト表面に対する水の接触角をθ2としたときに、接触角θ2とθ1との差の絶対値|θ2-θ1|が3°以下であることが好ましい。
この理由は、かかる接触角の差の絶対値が3°を超えると、レジストの封止樹脂との密着性又は電気絶縁性、さらには機械的強度が過度に低下する場合があるためである。
したがって、かかる接触角の差の絶対値|θ2-θ1|を2°以下の値とすることがより好ましく、1°以下の値とすることがさらに好ましい。上記接触角の差の絶対値|θ2-θ1|の下限は特に制限されないが、例えば、0°以上が挙げられる。
【0043】
9.製造方法
本実施形態に係るリンス剤の製造方法は、上述した水溶性グリコールエーテル化合物及び水などの成分を混合する工程を含む。当該混合する工程は、上述した水溶性グリコールエーテル化合物及び水などの成分が均一に混合されれば、どのような手法を用いてもよい。混合する工程としては、例えば、フラスコに所定の成分を加えて、マグネチックスターラーで攪拌混合することが挙げられる。また、化学プラント等において、工業的規模で上述した水溶性グリコールエーテル化合物及び水などの成分を混合してもよい。
【0044】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、下記工程(1)~工程(2)を有することを特徴としたリンス剤の使用方法である。
(1)被洗浄物に付着したフラックスを、ベンジルアルコール及び疎水性グリコールエーテル化合物、あるいはいずれか一方を含む洗浄液で洗浄する工程。
(2)上記工程(1)で洗浄された被洗浄物を、少なくとも水溶性グリコールエーテル化合物及び水を含み、ベンジルアルコールの溶解度が10vol%以上であるリンス剤であって、水溶性グリコールエーテル化合物100重量部に対して、水の配合量を50~1000重量部としたリンス剤を用いてリンスする工程
すなわち、第2の実施形態は、工程(1)~工程(2)を有することを特徴とした特定洗浄剤及びリンス剤を用いてなるフラックスの洗浄方法でもある。
【0045】
上記第2の実施形態の他の側面において、上記リンス剤の使用方法は、下記工程(1)~(2)を含む、リンス剤の使用方法である。
(1)ベンジルアルコール及び疎水性グリコールエーテル化合物、あるいはいずれか一方を含む洗浄剤を用いて、被洗浄物に付着したフラックスを洗浄する工程
(2)上記工程(1)で洗浄された上記被洗浄物を、少なくとも水溶性グリコールエーテル化合物及び水を含み、上記ベンジルアルコールの溶解度が10vol%以上であるリンス剤であって、上記水溶性グリコールエーテル化合物100重量部に対して、上記水の配合量が50~1000重量部であるリンス剤を用いてリンスする工程
【0046】
1.工程(1)
工程(1)は、ハンダ付けされた半導体素子、例えば、BGA(ball grid array)、CSP(chip size package)、PGA(pin grid array)、LGA(land grid array)等の半導体部品、半導体搭載TAB(tape automated bonding)テープ、半導体搭載リードフレーム、半導体搭載コンデンサ、半導体搭載抵抗、半導体素子用基板などの被洗浄物を、洗浄剤を用いて洗浄する工程である。
すなわち、これらの被洗浄物のハンダ付けに際して、フラックスが使用されるので、ハンダ付けされた部分にはフラックスが付着していることになる。
そして、このようなフラックスは、ロジンを主成分とし、有機酸塩、グリシジルエーテル化合物、オキシ酸、(ジ)カルボン酸などが含有されている。
また、加熱下でハンダ付けされることから、当該フラックスはロジン等の熱変成体も含有されることになる。
そのため、水溶性のグリコールエーテル化合物を用いて、フラックスを除去するのは非常に困難であることから、フラックスの除去には疎水性のグリコールエーテル化合物又はベンジルアルコールが好適に使用される。
【0047】
したがって、使用するベンジルアルコール類(単に、「ベンジルアルコール」と称する場合もある。)の好適例としては、エチルベンジルアルコール、メチルベンジルアルコール、ベンジルアルコールなどを挙げることができるが、これらは単独使用又は二種以上の組み合わせで使用されることになる。
そして、特に本発明では、ベンジルアルコールを使用することが最も好ましい。
この理由は、ベンジルアルコールであれば、比較的短時間であっても、優れた洗浄性を示すことができるためである。
【0048】
また、本発明で使用される疎水性グリコールエーテル化合物の例としてはプロピレングリコールモノブチルエーテル(BFG)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMFDG)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(BFDG)、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(PFDG)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(HeDG)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(PhG)、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(PhDG)、エチレングリコールモノベンジルエーテル(BzG)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル(PhFG)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DBDG)等の一種単独又は二種以上の組み合わせを挙げることができる。なお、ここで使用される疎水性グリコールエーテル化合物としては、例えば、水への溶解度(測定温度:20℃)が50重量%以下の疎水性を示すものが好ましい。
【0049】
さらにまた、本発明において、ベンジルアルコールと、疎水性グリコールエーテル化合物とは両者を混合して使用することもできる。
また、ベンジルアルコール又は疎水性グリコールエーテル化合物に、その他の成分を配合することもできる。
なお、洗浄剤に配合される、その他の成分としては、水溶性グリコールエーテル化合物、アミン化合物、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、防錆剤、粘度調整剤等の少なくとも一つを挙げることができる。
【0050】
2.工程(2)
工程(2)は、工程(1)において、所定洗浄剤を用いて洗浄した被洗浄物を、所定のリンス剤を用いてリンスする工程である。
そして、工程(2)において、第1の実施形態で説明したリンス剤を用いることにより、工程(1)の洗浄工程において使用したベンジルアルコール等の溶解度を10vol%以上と高い値に調整することができる。
したがって、工程(1)の特定洗浄剤に起因して、工程(2)のリンス剤に対して、比較的多量のベンジルアルコールが流入したとしても、リンス剤は、室温から80℃までの間に相分離することがなく、濁度が低下せず、所定の透明性を維持することができる。
【0051】
また、本発明で使用するリンス剤は、上述のように水溶性グリコールエーテル化合物に特定量の水を配合することにより、ベンジルアルコールの溶解度を10vol%以上に保持することができる。
そのため、洗浄剤に起因して、リンス剤に混入するベンジルアルコール又は疎水性グリコールエーテル化合物を容易に相溶することができる。
しかも本発明のリンス剤によれば、洗浄剤に溶解したフラックスの再付着も有効に抑制することができ、洗浄液としての機能も発揮するため、非常に清浄度の高い被洗浄物を得ることができる。
【0052】
3.乾燥工程
リンス処理(工程(2))を行った後、被洗浄物を乾燥させる工程を実施することが好ましい。
かかる乾燥条件については、適宜設定できるが、乾燥温度を、通常、60~120℃の範囲内の値とすることが好ましく、80~100℃の範囲内の値とすることがより好ましい。
そして、この範囲内の乾燥温度において、通常は、1~20分間、好ましくは5~10分間、熱風を吹き付けることにより乾燥が行われる。
このように短時間で乾燥ができるのは、本発明のリンス剤を水系にして、沸点が比較的高いものの、所定のグリコールエーテルを少量加えるという構成を採用したからである。
したがって、上記のようにして乾燥させることにより、リンス剤の配合成分はほぼ完全に除去されて、防錆剤などの残留を意図した成分以外は、被洗浄物の表面には余剰成分は殆ど残存しない状態になる。
【実施例】
【0053】
次に本発明の実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
なお、次表に実施例のリンス剤を構成するのに使用する化合物の名称とその略号及びその物性を表記する。
【0054】
【0055】
[実施例1]
1.工程(1)
洗浄装置として、マイクロクリーナーMC3USHD-1.5E(化研テック株式会社製)を用いるとともに、その洗浄槽において、洗浄液としてベンジルアルコールを収容した。
次いで、洗浄装置を動作させ、被洗浄物としての半導体素子付き基板を洗浄した。
すなわち、洗浄槽に収容した洗浄液であるベンジルアルコールを用いて、それに被洗浄物を浸漬させ、70℃、5分間の条件で、超音波洗浄を行った。
【0056】
2.工程(2)
次いで、洗浄槽において洗浄した被洗浄物を、搬送装置を用いてリンス槽に移動させた。
すなわち、リンス液を収容したリンス槽において、30℃で5分間の条件で、被洗浄物に対して、リンス剤に対する浸漬処理を行い、さらにリンス処理を行った。このリンス剤の組成及び特性を表2に示す。
なお、リンス剤を貯留したリンス槽には、所定の蒸留装置が設けられており、リンス液を蒸留して、相溶しているベンジルアルコールの分離を行った。
【0057】
3.乾燥工程
上記のようにしてリンス処理を行った被洗浄物を、リンス槽から取り出し、100℃、5分の乾燥条件で、熱風乾燥を行った。
その結果、被洗浄物の表面から、リンス剤等は完全に除去されたことを目視にて確認した。
【0058】
4.物性評価(1)
(1)ベンジルアルコールの溶解度の測定方法
容量200mlのメスシリンダーにリンス剤を100ml秤取る。ここにベンジルアルコールを1ml滴下して攪拌する。攪拌して溶液が均一透明であれば、再度ベンジルアルコールを1ml滴下して攪拌する。
そして、上記の滴下及び攪拌を繰り返して、攪拌後白濁/分離した時点での滴下したベンジルアルコールの全容量(ml)を測定して、最終的にリンス剤に対してベンジルアルコールが、何ml溶解したかを測定した。
それからベンジルアルコールの溶解量(vol%)を算出して、リンス剤に対するベンジルアルコールの溶解度とした。
【0059】
(2)リンス性(すすぎ性)の評価方法
ベンジルアルコール及びリンス剤各200gを、それぞれ容量300mlのビーカー内部に収容した。その後、ベンジルアルコールは温度を60℃に、リンス剤は30℃に温度を維持した。
次いで、ガラスエポキシ基板を、ベンジルアルコール入りビーカーの内部に収容し、その状態で、当該ベンジルアルコール入りビーカー内のマグネチックスターラーを回転させて、10分の浸漬を行った。
次いで、マグネチックスターラーの回転を止めて、ガラスエポキシ基板をベンジルアルコールから取り出した後、ガラスエポキシ基板を、リンス剤入りビーカーの内部に収容し、その状態で、当該リンス剤入りビーカー内のマグネチックスターラーを回転させて、所定時間の浸漬を行った。
次いで、マグネチックスターラーの回転を止めて、ガラスエポキシ基板をリンス剤から取り出し、100℃に保持された循環オーブンを用いて、10分間の乾燥を行った。
その後、乾燥させたガラスエポキシ基板を循環オーブンから取り出し、目視により表面観察し、以下の基準に照らして、リンス剤のリンス性(すすぎ性)評価を行った。
A : リンス時間5分でベンジルアルコールの液残りなし。
A’: リンス時間7分でベンジルアルコールの液残りなし。
B : リンス時間10分でベンジルアルコールの液残りなし。
C : リンス時間10分でベンジルアルコールの液残りが少々ある。
D : リンス時間10分でベンジルアルコールの多くの液残りがある。
E : リンス時間15分でベンジルアルコールの多くの液残りがある。
【0060】
(3)乾燥性の評価方法
リンス剤200gを、容量300mlのビーカー内部に収容した後、温度を30℃に維持した。
次いで、ガラスエポキシ基板を、200gのリンス剤入りビーカーの内部に収容し、その状態で、当該ビーカー内のマグネチックスターラーを回転させて、10分の浸漬を行った。次いで、マグネチックスターラーの回転を止めて、ガラスエポキシ基板をリンス剤から取り出し、100℃に保持された循環オーブンを用いて、所定時間の乾燥を行った。その後、乾燥させたガラスエポキシ基板を循環オーブンから取り出し、目視により表面観察し、以下の基準に照らして、リンス剤の乾燥性評価を行った。
A : 5分以内で、乾燥可能である。
A’: 7分以内で、乾燥可能である。
B : 10分以内で、乾燥可能である。
C : 10分間の乾燥で、液残りが少々ある。
D : 10分間の乾燥で、多くの液残りがある。
【0061】
(4)イオン交換水接触角度の測定方法
感光性ソルダーレジスト(日立化成工業(株)製SRシリーズ)により表面が保護されたプリント配線基板を接触角測定標準サンプルとして用いた。洗浄前のソルダーレジスト表面と、各種リンス剤で攪拌浸漬30℃/10分の条件でリンス処理した後、熱風100℃/5分間の条件で乾燥処理したレジスト表面に対して、イオン交換水の接触角の変化(|θ2-θ1|)を測定した。ここで、θ1は洗浄前のソルダーレジスト表面に対するイオン交換水の接触角(初期の接触角)を示し、θ2は上述のリンス処理及び乾燥処理を施したレジスト表面に対するイオン交換水の接触角を示す。
【0062】
(5)曇点の測定方法
サンプル(リンス剤)の液温を20℃にして、外観を測定しながら徐々に昇温して、サンプルが白濁又は分離し始めた時の温度を曇点とした。
但し、かかる曇点は、少なくとも室温から80℃の温度範囲において、存在しないことが好ましい。
すなわち、このような使用温度範囲(室温から80℃)では、曇点を有さず、透明性を維持することから、使い勝手が良好なリンス剤を提供することができるためである。
したがって、このように所定温度範囲において、透明性を有しており、所定の光透過率を有することによって、室温から80℃までの温度範囲において相分離することがないほうが、実用上、便利である。
なお、後述する表2~表4における曇点の「なし」との評価は、20℃~80℃の範囲においてリンス剤が白濁及び分離しなかったことを意味する。
【0063】
(6)濁度の測定方法、フラックスの再付着性評価
市販のポストフラックス(型番:スパークルフラックスPO-Z―7(千往金属工業(株)製)を用いて、当該ポストフラックスから溶剤成分を留去した後、回収した固形分残渣(フラックス)を試料とした。
そして、ベンジルアルコールに対して3重量%になるようにフラックスを添加した。
こうして得られたフラックス混入ベンジルアルコール溶液を、各リンス剤に1重量%添加し、水質計WA-1(日本電色工業(株)製)を使用し濁度を測定した。この濁度をフラックスの再付着性の指標とした。なお、濁度が0に近いほど透明かつ均一で再付着しにくいといえる。
【0064】
(7)引火点の測定方法
リンス剤の引火点は、JIS K 2265-1及び4(引火点の求め方)に準じて測定した。
なお、引火点については、有しないほうが好適であるが、あったとしても、50℃以上の温度であることが好ましい。ここで、「引火点を有しない」とは室温以上、上記リンス剤の沸点以下の範囲において引火点が存在しないことを意味する。
【0065】
[実施例2]
実施例2においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)の代わりに、ETBを同量使用した以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表2に示す。
【0066】
[実施例3]
実施例3においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)の代わりに、MMBを同量使用した以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表2に示す。
【0067】
[実施例4]
実施例4においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)の代わりにiPGを同量使用した以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表2に示す。
【0068】
[実施例5]
実施例5においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)の代わりにDPMを同量使用した以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表2に示す。
【0069】
[実施例6]
実施例6においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)の代わりにMEDGを同量使用した以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表2に示す。
【0070】
[実施例7]
実施例7においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)の代わりにDMTGを同量使用した以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表2に示す。
【0071】
[実施例8]
実施例8においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)の代わりにDMDGを同量使用した以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表2に示す。
【0072】
[実施例9]
実施例9においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)30重量部の代わりに、PSの使用量を20重量部とし、水の量を80重量部に変えた以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表2に示す。
【0073】
[実施例10]
実施例10においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)30重量部の代わりにPS15重量部とMMB15重量部とを使用した以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表2に示す。
【0074】
[実施例11]
実施例11においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)の代わりにPS15重量部と、MMB15重量部とを使用し、さらにアミン化合物としてTMHMDAを1重量部使用し、水の量を69重量部に変えた以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表2に示す。
【0075】
[実施例12]
実施例12においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)の代わりにPS15重量部とMMB15重量部とを使用し、さらにアミン化合物としてDBA0.5重量部とDEHA0.5重量部をそれぞれ使用し、水の量を69重量部に変えた以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表2に示す。
【0076】
[実施例13]
実施例13においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)30重量部の代わりに、PS20重量部及びMMB20重量部を使用し、さらに、水の量を60重量部に変えた以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表2に示す。
【0077】
[実施例14]
実施例14においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)30重量部の代わりに、ETBを30重量部使用し、さらにアミン化合物としてTMHMDAを1重量部使用し、さらには、水の量を69重量部に変えた以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表2に示す。
【0078】
[実施例15]
実施例15においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)30重量部の代わりに、DPMを30重量部使用し、さらにアミン化合物としてDBAを0.5重量部と、DEHAを0.5重量部とを使用し、さらには、水の量を69重量部に変えた以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表2に示す。
【0079】
[実施例16]
実施例16においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)30重量部の代わりに、PS30重量部及びDPM5重量部を使用し、さらに、水の量を65重量部に変えた以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表3に示す。
【0080】
[実施例17]
実施例17においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)30重量部の代わりに、PS10重量部及びDMTG30重量部を使用し、さらに、水の量を60重量部に変えた以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表3に示す。
【0081】
[実施例18]
実施例18においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)30重量部の代わりに、ETB10重量部及びMMB20重量部を使用した以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表3に示す。
【0082】
[実施例19]
実施例19においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)30重量部の代わりに、ETB10重量部及びDPM15重量部を使用し、さらに、水の量を75重量部に変えた以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表3に示す。
【0083】
[実施例20]
実施例20においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)30重量部の代わりに、MMB25重量部及びDPM15重量部を使用し、さらに、水の量を60重量部に変えた以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表3に示す。
【0084】
[実施例21]
実施例21においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)30重量部の代わりに、MMB15重量部及びDMTG20重量部を使用し、さらにアミン化合物としてTMHMDAを1重量部使用し、さらには、水の量を64重量部に変えた以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表3に示す。
【0085】
[実施例22]
実施例22においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)30重量部の代わりに、PS15重量部及びMMB15重量部を使用し、さらにアミン化合物としてTMDAPを1重量部使用し、さらには、水の量を69重量部に変えた以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表3に示す。
【0086】
[実施例23]
実施例23においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)30重量部の代わりに、PS15重量部及び3MB15重量部を使用し、さらに、水の量を70重量部に変えた以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表3に示す。
【0087】
[実施例24]
実施例24においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)30重量部の代わりに、PS20重量部及びIPDM20重量部を使用し、さらに、水の量を60重量部に変えた以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表3に示す。
【0088】
[比較例1]
比較例1においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)を30重量部使用する代わりに、PSの使用量を80重量部に変え、水の使用量を20重量部に変えた以外は同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表4に示す。
【0089】
[比較例2]
比較例2においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)を30重量部使用する代わりに、PSを15重量部、BFGを3重量部使用し、さらには、水の使用量を82重量部に変えた以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表4に示す。
【0090】
[比較例3]
比較例3においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)を30重量部使用する代わりに、BFGを40重量部使用し、水の量を60重量部に変えた以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表4に示す。
【0091】
[比較例4]
比較例4においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)を30重量部使用する代わりにDMFDGを25重量部使用し、水の量を75重量部に変えた以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表4に示す。
【0092】
[比較例5]
比較例5においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)を30重量部使用する代わりにDMFDGを20重量部とMMBを10重量部とを使用し、アミン化合物としてMEMを1重量部使用し、水の量を69重量部に変えた以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表4に示す。
【0093】
[比較例6]
比較例6においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)を30重量部使用する代わりに、DEDGを30重量部使用した以外は同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表4に示す。
【0094】
[比較例7]
比較例7においては、実施例1の工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)を30重量部使用する代わりにiBGを30重量部使用した以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表4に示す。
【0095】
[比較例8]
実施例1においては、工程(2)で使用したエチレングリコールモノプロピルエーテル(PS)を30重量部使用する代わりに、エタノールを60重量部使用し、水の量を40重量部に変えた以外は、同様にして被洗浄物の処理を行った。得られた結果を表4に示す。
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
5.物性評価(2)
(1)光透過率の測定方法
実施例1~24及び比較例1~8のリンス剤の光透過率を以下の方法で測定した。まず、リンス剤200gを、容量300mlのビーカーに収容した。次いで、所定の温度(20、40又は80℃)に維持し、マグネチックスターラーを用いてビーカー内の撹拌子回転させ、リンス剤を撹拌した。撹拌後のリンス剤を直ちに分光光度計のセルに収容した後、その光透過率を、以下の条件で測定した。測定結果を表5に示す。表5の結果から実施例1~24のリンス剤は、室温から80℃の温度範囲における光透過率が90%以上であることが確認された。
分光光度計:紫外可視分光光度計V-530(日本分光株式会社製)
測定波長 :可視光(660nm)
【0100】
【産業上の利用可能性】
【0101】
以上説明したように、本発明によれば、水溶性グリコールエーテル化合物の配合量と、水の配合量との割合を所定範囲内の値とするとともに、ベンジルアルコールの溶解度を所定値以上とすることによって、環境安全性(例えば、作業環境安全性)を著しく高めることができた。また、本発明によれば、従来の水溶性グリコールエーテル化合物だけでなく、ベンジルアルコール、疎水性グリコールエーテル化合物等の疎水性溶剤による被洗浄物に対するリンス性及び乾燥性を向上させることができるようになった。
【0102】
また、本発明によれば、洗浄後のリンス性も優れているとともに、洗浄性及びフラックスの再付着防止性についても向上していることから、リンス剤としても、洗浄剤としても、両用使用が可能となった。
【0103】
さらに、本発明は、所定リンス剤を用いた使用方法であることから、所定洗浄剤を用いて被洗浄物を効率的に洗浄した後、環境安全性(例えば、作業環境安全性)及び再生性に優れるとともに、洗浄剤の残留が少ない被洗浄物を効率的に得ることができるようになった。
よって、本発明のリンス剤及びそれを用いた使用方法によれば、産業上、被洗浄物を安全かつ効率的に、しかも安価に洗浄したり、リンスしたりすることが大いに期待される。
【0104】
以上のように本発明の実施形態及び実施例について説明を行なったが、上述の各実施形態及び各実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0105】
今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。