(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
A01G 3/00 20060101AFI20230728BHJP
【FI】
A01G3/00 Z
(21)【出願番号】P 2020050470
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】594136170
【氏名又は名称】ニッケンかみそり株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 優作
(72)【発明者】
【氏名】三輪 拓也
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5588289(US,A)
【文献】実開昭58-125536(JP,U)
【文献】特開2013-86220(JP,A)
【文献】特開2005-224122(JP,A)
【文献】実開昭58-17849(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の蔓を除去するための電動工具であって、
使用者が把持可能なハンドルを有するハウジングと、
前記ハウジング内に配置されたモータと、
前記モータと電気的に接続されたバッテリと、
前記モータに接続された本体部と、前記本体部に設けられ、前記蔓を除去するための複数の刃と、を有する回転体と、
前記モータを起動及び停止させるトリガスイッチと、
前記ハウジングに引き込まれたとき前記トリガスイッチをオンし、前記ハウジングから離隔したとき前記トリガスイッチをオフするトリガレバーと、
前記トリガレバーと連動して前記回転体に対して接近及び離隔可能であり、前記回転体との間で前記蔓を挟持するための押さえ部材と、
を備える電動工具。
【請求項2】
前記ハンドルの上部には、使用者の手を支持する鍔状の支持部が設けられている、
請求項1の電動工具。
【請求項3】
前記バッテリは、リード線によって前記モータと接続され、前記ハウジングの外部に配置可能である、
請求項1又は2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記回転体は、着脱可能である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の蔓、特には葡萄の蔓を除去するための電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
葡萄を栽培する際には、ワイヤを張り、そのワイヤに葡萄の蔓が巻き付くようにする。葡萄の休眠期は11月~3月頃である。休眠期に蔓がワイヤに巻き付いたままにすると、ワイヤに巻き付いた蔓に害虫や細菌が発生し、生育期における葡萄の生育に悪影響を及ぼすおそれがある。そのため、休眠期には、ワイヤに巻き付いた蔓を除去する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来は、剪定はさみなどの手動工具を使用して蔓を除去しているが、手動工具での蔓の除去は、非常に手間が掛かる。
【0004】
本発明は、植物の蔓を簡単に除去できる電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下に掲げる態様の発明を提供する。
(項目1)
植物の蔓を除去するための電動工具であって、
使用者が把持可能なハンドルを有するハウジングと、
前記ハウジング内に配置されたモータと、
前記モータと電気的に接続されたバッテリと、
前記モータに接続された本体部と、前記本体部に設けられ、前記蔓を除去するための複数の刃と、を有する回転体と、
前記モータを起動及び停止させるトリガスイッチと、
前記ハウジングに引き込まれたとき前記トリガスイッチをオンし、前記ハウジングから離隔したとき前記トリガスイッチをオフするトリガレバーと、
前記トリガレバーと連動して前記回転体に対して接近及び離隔可能であり、前記回転体との間で前記蔓を挟持するための押さえ部材と、
を備える電動工具。
【0006】
(項目2)
前記ハンドルの上部には、使用者の手を支持する鍔状の支持部が設けられている、
項目1の電動工具。
【0007】
(項目3)
前記バッテリは、リード線によって前記モータと接続され、前記ハウジングの外部に配置可能である、
項目1又は2に記載の電動工具。
【0008】
(項目4)
前記回転体は、着脱可能である、
項目1から3のいずれか1項に記載の電動工具。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電動工具では、回転体と押さえ部材とによって蔓を挟み込み、回転する刃によって蔓を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】(a)回転体の斜視図、(b)刃の拡大図、(c)回転体の正面図である。
【
図5】(a)電動工具の使用前の状態を示す概略図、(b)電動工具の使用中の状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の電動工具について図面を参照しながら説明する。以下で説明する実施形態は、本発明の好ましい一具体例を示すものである。なお、明確性のため、断面図においてハッチングを省略することがある。
【0012】
<1 電動工具の構造>
図1は、非使用時の電動工具1の斜視図である。
図2は、使用時の電動工具1の斜視図である。
図3は、電動工具1の断面図である。説明の便宜上、
図1に示す前後及び上下を、電動工具1の前後及び上下として説明する。
【0013】
電動工具1は、例えばワイヤに巻き付いた、例えば葡萄の蔓などを除去するために使用される。電動工具1は、ハウジング2と、モータ3と、バッテリ4と、回転体5と、トリガ6と、押さえ部材7と、を備える。
【0014】
モータ3は、ハウジング2内に収容されている。バッテリ4は、モータ3と電気的に接続されている。回転体5は、蔓を除去する複数の刃52を備える。回転体5は、動力伝達機構8を介してモータ3に接続されており、モータ3の回転に伴って回転する。トリガ6は、トリガスイッチ61と、トリガレバー62とによって構成され、モータ3のオン・オフを切り替える。押さえ部材7は、トリガレバー62に接続されており、トリガレバー62と連動する。
【0015】
使用者がトリガレバー62を引くことにより、トリガスイッチ61がオンになってモータ3が起動し、回転体5が回転する。回転体5と押さえ部材7とによって蔓を挟み込み、回転する刃52によって蔓を除去する。使用者がトリガレバー62から手を離すと、トリガスイッチ61がオフになってモータ3が停止すると共に、押さえ部材7は回転体5から離隔する。
【0016】
以下、各構成要素の詳細を説明する。
【0017】
図1及び
図2に示すように、ハウジング2は、略円筒状のハウジング本体21と、ハウジング本体21の下方に設けられたハンドル22と、鍔状の支持部23と、を備える。ハウジング2は、好ましくは樹脂製であり、より好ましくは樹脂製の一体成型品である。
【0018】
図3に示すように、ハウジング本体21内には、モータ3、動力伝達機構8、及び回転体5が収容されている。バッテリ4は、リード線によってモータ3と接続され、ハウジング2の外部に配置可能であることが好ましい。
【0019】
ハンドル22は、電動工具1の使用者が把持する部分である。支持部23はハンドル22の上部に設けられ、且つ、ハンドル22よりも張り出している。支持部23の下面は、ハンドル22を握っている使用者の手の上部が接触可能となっている。
【0020】
図3に示すように、動力伝達機構8は、第一ギヤ81と、第二ギヤ82と、軸部材83と、ベアリング84と、を備えた、減速機構から成る。第一ギヤ81及び第二ギヤ82は、好ましくは樹脂製である。第一ギヤ81は、外歯車であり、モータ3の軸に取り付けられている。第二ギヤ82は、第一ギヤ81と噛み合う内歯車であり、軸部材83の一端部に取り付けられている。ベアリング84はボールベアリングであり、内輪は軸部材83に嵌合され、外輪はハウジング本体21の内壁に嵌合されている。
【0021】
図4(a)は回転体5の斜視図、
図4(b)は刃52の拡大図、
図4(c)は回転体5の正面図である。なお、
図4(a)において、回転体5の回転方向を矢印にて示している。
【0022】
回転体5は、円板状の回転体本体51と、回転体本体51の一方の面に設けられた複数の刃52と、を備える。回転体5は、好ましくは金属製である。回転体本体51の中心には貫通穴が設けられている。この貫通穴に挿入されたボルトBを、軸部材83の他端部に設けられた雌ネジと螺合させることにより、回転体5は、軸部材83に着脱可能に固定される。
【0023】
複数の刃52は、周方向に互いに離隔して形成されている。また、径方向において隣接する二つの刃52は、周方向にずれて形成されている。つまり、複数の刃52は、径方向において、互い違いになるように形成されている。
【0024】
一実施形態において、刃52は、回転体本体51を切り起こすことにより形成されている。刃52は、回転方向前方側が、回転方向後方側よりも高くなるように傾斜している。刃52の傾斜角度αは、回転体本体51の平面に対して、40°から80°であることが好ましく、50°から70°がより好ましく、60°が最も好ましい。
【0025】
刃52の先端は、回転体5の周囲を覆うハウジング本体21の先端と面一であるか、又は、回転体5の周囲を覆うハウジング本体21の先端よりも前方に突出していない。言い換えると、回転体5の周囲を覆うハウジング本体21の先端は、刃52の先端と面一であるか、又は、刃52の先端よりも前方に突出している。具体的には、ハウジング本体21の先端は、刃52の先端と面一であるか、又は、刃52の先端よりも0mmより大きく0.2mm以下、突出していることが好ましい。
【0026】
また、回転体本体51の外周面と、回転体5の周囲を覆うハウジング本体21の先端の内周面との間の隙間は、0mmよりも大きく1mm以下であることが好ましい。
【0027】
図3に示すトリガレバー62は使用者によって操作され、トリガスイッチ61のオン・オフを切り替える。トリガレバー62は、その下端部が、ハンドル22の下端部に軸部材9によって接続されている。トリガレバー62は、軸部材9を中心として、ハンドル22に対して接近及び離隔するように旋回する。トリガレバー62とハンドル22との接続部には、付勢部材10が取り付けられている。付勢部材10は、例えばトーションバネである。付勢部材10は、トリガレバー62を、ハンドル22から離隔させる方向に付勢している。したがって、トリガレバー62は、その初期位置(すなわち、使用者がトリガレバー62を握っていない状態)において、ハンドル22から離隔した位置に配置される。また、トリガレバー62を握った状態から手を離すと、付勢部材10の復元力により、トリガレバー62は自動的に初期位置に戻る。
【0028】
トリガスイッチ61は、ハウジング2内に配置されている。使用者がトリガレバー62を引き込んだときに、トリガレバー62の上端がトリガスイッチ61に接触して、トリガスイッチ61がオンになる。すなわち、使用者がトリガレバー62を引き込むと、モータ3が回転する。一方、使用者がトリガレバー62から手を離すと、トリガレバー62が初期位置に戻る過程で、トリガレバー62の上端がトリガスイッチ61から離れるため、トリガスイッチ61はオフになる(すなわち、モータ3が停止する)。
【0029】
押さえ部材7は、回転体5と共に、蔓を挟み込み、蔓の除去時に、蔓が回転することを防止する。押さえ部材7は、トリガレバー62に接続され、トリガレバー62と連動する。すなわち、トリガレバー62が引き込まれたとき、押さえ部材7は、回転体5に接近するように移動する。逆に、トリガレバー62がハンドル22から離れると、押さえ部材7は回転体5から離隔する。押さえ部材7を閉じたとき、押さえ部材7はハウジング本体21に接触し、刃52には接触しない。
【0030】
<2 電動工具の使用方法>
図5を参照して、電動工具1の使用方法について説明する。
図5(a)は、電動工具1の使用前の状態を示す概略図であり、
図5(b)は、電動工具1の使用中の状態を示す概略図である。
【0031】
図5(a)に示すように、蔓Vが巻き付いたワイヤWが、回転体5と押さえ部材7との間に配置されるように、電動工具1の位置を調節する。
【0032】
トリガレバー62を引き込む。これにより、回転体5が回転すると共に、押さえ部材7が回転体5に接近し、回転体5と押さえ部材7との間で、蔓Vを挟み込むことができる。そして、回転する刃52によって、蔓Vを除去することができる。
【0033】
<3 特徴>
本発明の電動工具1を使用することにより、簡単に蔓を除去できる。
【0034】
回転体5と押さえ部材7とによって蔓を挟み込むことにより、蔓の回転を抑えることができる。これにより、蔓を効率的に除去することができる。
【0035】
ハンドル22の上部に支持部23を設けることにより、使用者の手が支持部23によって支えられるため、使用者の手に掛かる負担を軽減できる。特に、電動工具1を斜め上向きにして作業するときに、使用者の手に掛かる負担を軽減できる。
【0036】
バッテリ4がリード線によってモータ3と接続され、且つハウジング2の外部に配置可能であることにより、例えばバッテリ4を使用者が身につけることができるようになる。これにより手に掛かる重量を低減することができる。
【0037】
ハウジング2が樹脂製であることにより、電動工具1を軽量化できる。これにより、非力な使用者(例えば、高齢者や女性)でも、電動工具1を容易に扱うことができるようになる。
【0038】
回転体5が軸部材83に着脱可能であることにより、回転体5(すなわち、刃52)を簡単に交換することができる。
【0039】
刃52の先端のほうが、ハウジング本体21の先端よりも突出していると、刃52がワイヤに接触し、ワイヤを傷付けるため、好ましくない。一方で、ハウジング本体21の先端が、刃52の先端よりも大きく突出していると、刃52が深くまで蔓に当たらず、ワイヤに蔓が残るおそれがある。本発明の電動工具1では、ハウジング本体21の先端が、刃52の先端と面一であるか、又は、刃52の先端よりも0mmより大きく0.2mm以下だけ突出していることにより、刃52がワイヤに直接接触せず、且つ、蔓を十分に除去することができる。
【0040】
回転体本体51の外周面と、回転体5の周囲を覆うハウジング本体21の先端の内周面との間の隙間が、0mmよりも大きく1mm以下であることにより、除去した蔓の破片が、その隙間に挟まり難くなる。これにより、電動工具1の故障を防止できる。
【0041】
<4 変形例>
本発明は、上記の実施形態に限定されず、その主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下に、電動工具1の変形例について説明する。以下で説明する変形例は、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わせ可能である。
【0042】
(1)回転体5は、動力伝達機構8を介さずに、モータ3と直結されていてもよい。
【0043】
(2)回転体5の軸部材83への固定方法は、回転体本体51の中心に貫通穴を設け、その貫通穴にボルトBを挿入して軸部材83に固定する方法に限られない。例えば、回転体本体51の、刃52が設けられた面とは反対側の面に、凹部を有するハブを取り付け、その凹部に軸部材83を挿入すると共に、ハブと軸部材83とをネジにより固定するようにしてもよい。あるいは、回転体本体51の、刃52が設けられた面とは反対側の面に、ボルトを取り付け、そのボルトを軸部材83の雌ネジに螺合するようにしてもよい。このような構成により、回転体本体51の中心に貫通穴を設ける必要がないため、回転体本体51の中心にも、刃52を形成することができる。これにより、蔓の除去効果を向上させることができる。
【0044】
(3)ハウジング本体21は、複数のパーツから構成され、複数のパーツは互いに分離可能であってもよい。例えば、ハウジング本体21は、回転体5を覆う先端部分が、それ以外の部分と分離可能であるように構成されていてもよい。このような構成により、ハウジング本体21の先端部分が摩耗等により損傷した場合に、取り換えることができるようになる。
【0045】
(4)押さえ部材7の、回転体5と対向する面には、蔓の回転を防止するための滑り止めが設けられていてもよい。滑り止めは、例えば、ゴムから成る部材や、突起部を有する部材から構成することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 電動工具
2 ハウジング
22 ハンドル
23 支持部
3 モータ
4 バッテリ
5 回転体
51 回転体本体(本体部)
52 刃
6 トリガ
61 トリガスイッチ
62 トリガレバー
7 押さえ部材