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特許7320850輸送タンパク質過剰発現関連疾患の陽電子放出断層撮映放射性トレーサー、蛍光映像診断及び光力学治療のための輸送タンパク質標的リガンド及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】輸送タンパク質過剰発現関連疾患の陽電子放出断層撮映放射性トレーサー、蛍光映像診断及び光力学治療のための輸送タンパク質標的リガンド及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 51/04 20060101AFI20230728BHJP
   C07D 471/04 20060101ALI20230728BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20230728BHJP
   A61P 25/00 20060101ALN20230728BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20230728BHJP
   A61K 31/437 20060101ALN20230728BHJP
   A61K 47/34 20170101ALN20230728BHJP
   A61P 9/10 20060101ALN20230728BHJP
【FI】
A61K51/04 200
C07D471/04 108K
G01T1/161 A
A61P25/00
A61P35/00
A61K31/437
A61K47/34
A61P9/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020539800
(86)(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 KR2018015117
(87)【国際公開番号】W WO2019143016
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-09-15
(31)【優先権主張番号】10-2018-0007226
(32)【優先日】2018-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519001383
【氏名又は名称】ソウル ナショナル ユニバーシティ アールアンドディービー ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,サン ウン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ビュン チュル
(72)【発明者】
【氏名】イ,サン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】デノーラ,ヌンツィオ
(72)【発明者】
【氏名】ラクィンタナ,ヴァレンチノ
(72)【発明者】
【氏名】ロペドタ,アンジェラ アッスンタ
(72)【発明者】
【氏名】クトリネッリ,アンナリーザ
(72)【発明者】
【氏名】フランコ,マッシモ
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】A Novel PET Imaging Probe for the Detection and Monitoring of Translocator Protein 18 kDa Expression in Pathological Disorders,Scientific Reports,2016年02月08日,Vol. 6,20422,DOI: 10.1038/srep20422
【文献】Radiosynthesis and Preclinical Evaluation of [18F]F-DPA, A Novel Pyrazolo[1,5a]pyrimidine Acetamide TSPO Radioligand, in Healthy Sprague Dawley Rats,Mol Imaging Biol,2017年01月12日,DOI: 10.1007/s11307-016-1040-z
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 51/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素18が溶解した水をアセトニトリルに添加し、85~95℃の温度で加熱することにより、溶媒が蒸発したフッ素18反応液を製造するフッ素18反応液製造段階と、
2-アリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体と(ジアセトキシ)ヨードアレーン誘導体を反応させてヨードニウム塩前駆体を製造するヨードニウム塩前駆体製造段階と、
前記ヨードニウム塩前駆体と2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシルをアセトニトリルに溶解させてヨードニウム塩前駆体反応液を製造するヨードニウム塩反応液製造段階と、
前記ヨードニウム前駆体反応液を前記フッ素18反応液に添加し、加熱して反応させることにより、フッ素18標識放射性トレーサー物質が含まれた組成物を得る放射性トレーサー物質組成物製造段階と、
を含み、
前記ヨードニウム塩前駆体は、以下の化学式2で表される、フッ素18標識輸送タンパク質過剰発現標的PET放射性トレーサーの製造方法:
【化1】

ここで、前記XはC又はN、前記YはC又はNであり、
前記Zは、ヨードベンゼントシレート、ヨードトルエントシレート、2-ヨード-1,3,5-トリメチルベンゼントシレート、4-ヨードアニソールトシレート、3-ヨードアニソールトシレート、2-ヨードチオフェントシレート、3-ヨードチオフェントシレート、ヨードベンゼンブロミド、ヨードトルエンブロミド、2-ヨード-1,3,5-トリメチルベンゼンブロミド、4-ヨードアニソールブロミド、3-ヨードアニソールブロミド、2-ヨードチオフェンブロミド、3-ヨードチオフェンブロミド、ヨードベンゼンヨージド、ヨードトルエンヨージド、2-ヨード-1,3,5-トリメチルベンゼンヨージド、4-ヨードアニソールヨージド、3-ヨードアニソールヨージド、2-ヨードチオフェンヨージド、3-ヨードチオフェンヨージド、ヨードベンゼントリフラート、ヨードトルエントリフラート、2-ヨード-1,3,5-トリメチルベンゼントリフラート、4-ヨードアニソールトリフラート、3-ヨードアニソールトリフラート、2-ヨードチオフェントリフラート、及び3-ヨードチオフェントリフラートからなる群から選択される官能基である。
【請求項2】
フッ素18が溶解した水をアセトニトリルに添加し、85~95℃の温度で加熱することにより、溶媒が蒸発したフッ素18反応液を製造するフッ素18反応液製造段階と、
2-アリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体とビス(ピナコラート)ジボロンを反応させてホウ素エステル前駆体を製造するホウ素エステル前駆体製造段階と、
前記ホウ素エステル前駆体と銅触媒(銅(II)トリフルオロメタンスルホネート、又はテトラキス(ピリジン)銅(II)トリフラート)をジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させてホウ素エステル前駆体反応液を製造するホウ素エステル反応液製造段階と、
前記ホウ素エステル前駆体反応液を前記フッ素18反応液に添加し、加熱して反応させることにより、フッ素18標識放射性トレーサー物質が含まれた組成物を得る放射性トレーサー物質組成物製造段階と、
を含み、
前記ホウ素エステル前駆体は、以下の化学式2で表される、フッ素18標識輸送タンパク質過剰発現標的PET放射性トレーサーの製造方法:
【化2】

ここで、前記XはC又はN、前記YはC又はN、前記Zはピナコールホウ素エステルである。
【請求項3】
前記放射性トレーサー物質組成物に塩酸水溶液を添加してC18 Sep-Pakカートリッジに吸着させ、水で洗浄した後、エタノールで溶出させて前記組成物を精製する第1精製段階をさらに含む、請求項1又は2に記載のフッ素18標識輸送タンパク質過剰発現標的PET放射性トレーサーの製造方法。
【請求項4】
前記放射性トレーサー物質組成物を244~264nmのUV検出器と放射性アイソトープガンマ線検出器が含まれたHPLCシステムを用いて精製する第2精製段階をさらに含む、請求項1又は2に記載のフッ素18標識輸送タンパク質過剰発現標的PET放射性トレーサーの製造方法。
【請求項5】
前記フッ素18反応液製造段階は、前記アセトニトリルに炭酸水素セシウム(CsHCO)及び18-Crown-6([CO])をさらに添加して行う、請求項1又は2に記載のフッ素18標識輸送タンパク質過剰発現標的PET放射性トレーサーの製造方法。
【請求項6】
下記の化学式1で表される、フッ素18標識輸送タンパク質過剰発現標的PET放射性トレーサー:
【化3】

ここで、前記Rは18F又は19F、前記XはC又はN、前記YはC又はNである。
【請求項7】
下記の化学式1で表される放射性トレーサー化合物を含むフッ素18標識陽電子放出断層撮映(PET)放射性トレーサー組成物の製造方法であって、
下記の化学式2で表される前駆体の製造段階と、
前記前駆体をフッ素18反応液に添加することにより、前記放射性トレーサー化合物を含む放射性トレーサー組成物を製造する段階と、
を含む、製造方法:
【化4】

ここで、前記Rは18F又は19F、前記XはC又はN、前記YはC又はNである:
【化5】

ここで、前記XはC又はN、前記YはC又はNであり、
前記Zは、ヨードベンゼントシレート、ヨードトルエントシレート、2-ヨード-1,3,5-トリメチルベンゼントシレート、4-ヨードアニソールトシレート、3-ヨードアニソールトシレート、2-ヨードチオフェントシレート、3-ヨードチオフェントシレート、ヨードベンゼンブロミド、ヨードトルエンブロミド、2-ヨード-1,3,5-トリメチルベンゼンブロミド、4-ヨードアニソールブロミド、3-ヨードアニソールブロミド、2-ヨードチオフェンブロミド、3-ヨードチオフェンブロミド、ヨードベンゼンヨージド、ヨードトルエンヨージド、2-ヨード-1,3,5-トリメチルベンゼンヨージド、4-ヨードアニソールヨージド、3-ヨードアニソールヨージド、2-ヨードチオフェンヨージド、3-ヨードチオフェンヨージド、ヨードベンゼントリフラート、ヨードトルエントリフラート、2-ヨード-1,3,5-トリメチルベンゼントリフラート、4-ヨードアニソールトリフラート、3-ヨードアニソールトリフラート、2-ヨードチオフェントリフラート、3-ヨードチオフェントリフラート、及びピナコールホウ素エステルからなる群から選択される官能基である。
【請求項8】
下記の化学式2で表される化合物:
【化6】


ここで、前記XはC又はN、前記YはC又はNであり、
前記Zは、ヨードベンゼントシレート、ヨードトルエントシレート、2-ヨード-1,3,5-トリメチルベンゼントシレート、4-ヨードアニソールトシレート、3-ヨードアニソールトシレート、2-ヨードチオフェントシレート、3-ヨードチオフェントシレート、ヨードベンゼンブロミド、ヨードトルエンブロミド、2-ヨード-1,3,5-トリメチルベンゼンブロミド、4-ヨードアニソールブロミド、3-ヨードアニソールブロミド、2-ヨードチオフェンブロミド、3-ヨードチオフェンブロミド、ヨードベンゼンヨージド、ヨードトルエンヨージド、2-ヨード-1,3,5-トリメチルベンゼンヨージド、4-ヨードアニソールヨージド、3-ヨードアニソールヨージド、2-ヨードチオフェンヨージド、3-ヨードチオフェンヨージド、ヨードベンゼントリフラート、ヨードトルエントリフラート、2-ヨード-1,3,5-トリメチルベンゼントリフラート、4-ヨードアニソールトリフラート、3-ヨードアニソールトリフラート、2-ヨードチオフェントリフラート、3-ヨードチオフェントリフラート、及びピナコールホウ素エステルからなる群から選択される官能基である。
【請求項9】
下記の化学式3で表される蛍光及び光力学治療用光線感作剤標識リガンド輸送タンパク質過剰発現標的トレーサー:
【化7】

前記XはC又はN、前記YはC又はNである。また、前記ポリエチレングリコール(PEG)数nは1~10である。前記PEGと蛍光染料及び光力学治療用光線感作剤を連結するリンカー(Linker)は、エーテル(ether)、アミド(amide)、エステル(ester)、ウレア(urea)、ウレタン(urethane)、チオウレア(thiourea)、及びジスルフィド(disulfide)からなる群から選択される化合物であり得、X、Yを含む環の2、3及び4位の中でいずれか一位に置換される。
【請求項10】
下記の化学式4で表される化合物:
【化8】

前記XはC又はN、前記YはC又はN、前記ポリエチレングリコール(PEG)数nは1~10であり、X、Yを含む環の2、3及び4位の中でいずれか一位に置換される。
【請求項11】
フッ素-18又はフッ素-19標識輸送タンパク質過剰発現標的陽電子放出断層撮映(PET)放射性トレーサーが投与された患者における、前記フッ素-18又はフッ素-19標識PET放射性トレーサーの摂取の生体内PET映像を得ること;
を含み、
前記フッ素-18又はフッ素-19標識PET放射性トレーサーが以下の化学式1で表される、患者における神経炎症、脳疾患、又は腫瘍患者の診断のための映像を提供するための方法:
【化9】

ここで、前記Rは18F又は19F、前記XはC又はN、前記YはC又はNである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は輸送タンパク質過剰発現標的フッ素18標識陽電子放出断層撮映放射性トレーサーと蛍光映像及び光力学治療用蛍光リガンド及びその製造方法に関するもので、より詳しくは、ヨードニウム塩又はホウ素エステル前駆体を用いて神経炎症及び腫瘍モデルにおいて炎症性領域に対する選択的/特異的摂取に優れたフッ素18を標識した陽電子放出断層撮映放射性トレーサーと、フッ素18の代わりに蛍光物質の導入によって製造された輸送タンパク質過剰発現標的蛍光映像及び光力学治療のための蛍光リガンド及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中枢神経系の小膠細胞(microglial cell)は、神経系の活性化と恒常性維持に寄与し、ニューロトロフィン(neurotrophin)、酸化窒素又は炎症を誘発するサイトカインなどを分泌して神経細胞の維持又はアポトーシス(apoptosis)などを引き起こす機能を持っている。実際に、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの多様な退行性神経系疾患と脳卒中又は損傷、そして脳感染などの疾患で小膠細胞の活性化が報告された。また、アルツハイマー病の発病及び進行要因であるベータアミロイドの沈着は小膠細胞の活性化を誘発すると知られている。
【0003】
現在、小膠細胞の活性化は、ミトコンドリアの膜に存在する18kDaの輸送タンパク質(TSPO、translocator protein)の発現増加によって起こり、疾病が発生してから数時間内に始まって数日間持続すると報告された。したがって、多様な中枢神経系疾患で、小膠細胞のTSPO発現程度の測定は、神経炎症過程中の細胞活性化を評価する生体内バイオマーカーとして活用することができる。実際に、1984年にTSPO評価のための陽電子放出断層撮映(PET、positron emission tomography)用放射性トレーサーでC-11(半減期=20.4分)を標識した(R)-N-メチル-N-(1-メチルプロピル)-1-(2-クロロフェニル)イソキノリン-3-カルボキサミド([11C]PK11195)が最初に開発された。
【0004】
しかし、[11C]PK11195は、使用された放射性同位体である炭素-11の短い半減期と体内脳の非特異的結合及び低い信号対雑音比(signal-to-noise)の問題点のため、広範囲に使うのには制限的であった。去る20年間、神経炎症映像のための[11C]PK11195の欠点が補完された多様な新しい放射性トレーサーが開発されている。それらの一つとして、[11C]PK11195に比べて4倍以上摂取され、身体内代謝物が血液脳関門(blood brain barrier)を通過しなかったC-11を標識したN-5-フルオロ-2-フェノキシフェニル)-N-(2,5-ジメトキシベンジル)アセトアミド([11C]DAA1106)が開発された。しかし、[11C]DAA1106もTSPOに低い特異的シグナル(specific signal)を示す問題点があることが発表された。このような[11C]DAA1106が有する薬物動態学的欠点を克服するために開発されたC-11を標識したN-アセチル-N-(2-メトキシベンジル)-2-フェノキシ-5-ピリジンアミン([11C]PBR28)は、[11C]DAA1106が有する基本化学的構造を維持しながら高い信号対雑音比(signal-to-noise)の特性を有し、輸送タンパク質過剰発現映像放射性トレーサーとして多様な有効性が検証され、臨床研究が行われた。しかし、[11C]PBR28も半減期の短い炭素-11で標識された化合物であるから、生産後に短時間使用のみ可能な放射性トレーサーであり、同伴する放射線被爆の可能性が高いだけでなく、一回生産時の保有PET装備数によって多くても2人の患者のみに適用することができるという欠点がある。
【0005】
一方、さらに他の陽電子放出核種であるフッ素18は、比較的長い半減期(半減期=109.8分)を有し、有機合成法による目標化合物標識方法が容易であり、高い収率によって生産後に比較的長期間にわたって多数のPET装備で放射性トレーサーを用いた診断に応用することができる。このような利点のため、現在までフッ素18が標識された多様なPET映像用放射性トレーサーの開発が多くの研究グループで行われている。最近には、本研究陣もTSPO PET映像のための放射性トレーサーとして高い体外結合親和度と前臨床PET映像研究でTSPO標的と高い信号対雑音比を示すフッ素18を標識した2-(2-(4-(2-フルオロエチル)フェニル)-6,8-ジクロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)-N,N-ジプロピルアセトアミド([18F]CB251)を開発した。[18F]CB251の合成に使用された脂肪族エチルフッ素18標識方法は、標識方法が簡単であるという利点があるが、体内で手軽く代謝されることができる。ここで、生成されたフッ素18イオンは主に骨に摂取される。骨に摂取された場合、低い標的部位対雑音比を有するイメージを提供する欠点がある。このような脂肪族フッ素18標識の欠点を克服するために、多くの研究グループは相対的に体内安全性を高めるために、芳香族に直接フッ素18を標識した化合物を開発しようとする。このような芳香族フッ素18標識方法は強い炭素-フッ素(C(sp2)-F)結合によって高い信号対雑音比を有する体内イメージを提供するのに有用であるが、芳香族求核性フッ素18標識の反応性は脂肪族フッ素18標識より低いから、現在までも反応性を高めるための多様な前駆体と反応技法が開発されている状態である。よって、放射性同位元素のフッ素18を目的化合物の芳香族位置に簡便で効率的に標識することができながら、疾患特異的輸送タンパク質過剰発現標的が可能な放射性トレーサーが要求されている実情である。
【0006】
最近になって、神経炎症とともに脳癌、乳房癌、前立腺癌、膀胱癌のような癌細胞でも高い輸送タンパク質過剰発現が発見されているので、高い輸送タンパク質結合親和力と体内選択的映像を提供するリガンドが、PET用放射性トレーサーだけではなく蛍光物質を導入して手術するとき、光学映像を提供して腫瘍の分布情報を視覚的に助けることができる蛍光映像誘導手術(fluorescence imaging guided surgery)と光力学治療(photodynamic therapy)に用いられる蛍光リガンドとしてその活用範囲が拡大することに期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、輸送タンパク質過剰発現に関連した神経炎症及び癌疾患の診断のために、輸送タンパク質標的リガンドに陽電子放出核種であるフッ素18が標識されたPET映像用放射性トレーサーと同じリガンドに、フッ素18の代わりに蛍光映像誘導手術及び光力学治療のために蛍光物質を導入した蛍光リガンド及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明による輸送タンパク質過剰発現標的フッ素18が標識されたPET映像用放射性トレーサーの製造方法は、サイクロトロンによって生産されたフッ素18が溶解した水を相間移動触媒と共にアセトニトリル(CHCN、acetonitrile)に添加し、85~95℃の温度で加熱することにより、フッ素18反応液を製造するフッ素18反応液製造段階、2-(4-トリメチルスズアリール-6,8-ジクロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ジプロピルアセトアミドと(ジアセトキシ)ヨードアレーン誘導体を反応させてヨードニウム塩前駆体(precursor A type)又は2-(4-ブロモアリール-6,8-ジクロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ジプロピルアセトアミドとビス(ピナコラート)ジボロンを反応させてホウ素エステル前駆体(precursor B type)を製造する前駆体製造段階、前記ヨードニウム塩前駆体と2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル(TEMPO)をCHCNに溶解させてヨードニウム塩前駆体反応液を製造するヨードニウム塩反応液製造段階、前記ホウ素エステル前駆体と銅触媒(銅(II)トリフルオロメタンスルホネート、又はテトラキス(ピリジン)銅(II)トリフラート)をジメチルホルムアミド(DMF、dimethylformamide)に溶解させてホウ素エステル前駆体反応液を製造するホウ素エステル反応液製造段階、及び前記ヨードニウム前駆体反応液を前記フッ素18反応液に添加し、加熱して反応させることにより、フッ素18標識放射性トレーサー物質が含まれた組成物を得る放射性トレーサー物質組成物製造段階又は前記ホウ素エステル前駆体反応液を前記フッ素18反応液に添加し、加熱して反応させることにより、フッ素18標識放射性トレーサー物質が含まれた組成物を得る放射性トレーサー物質組成物製造段階を含んでなることができる。
【0009】
前記放射性トレーサー物質組成物に塩酸水溶液を添加してC18 Sep-Pakカートリッジに吸着させ、水で洗浄した後、エタノールで溶出させて前記組成物を精製する第1精製段階をさらに含むことができる。
【0010】
前記放射性トレーサー物質組成物を244~264nmのUV検出器と放射性アイソトープガンマ線検出器が含まれた高性能液体クロマトグラフィー(HPLC、high performance liquid chromatography)システムを用いて精製する第2精製段階をさらに含むことができる。
【0011】
前記フッ素18反応液製造段階は、フッ素18標識反応性を増加させるために、相間移動触媒として18-クラウン-6([CO])/炭酸水素セシウム(CsHCO)をさらに添加して遂行することができる。
【0012】
また、本発明は、前記目的を達成するために、フッ素18が溶解した水をCHCNに添加し、85~95℃の温度で加熱することにより、溶媒が蒸発したフッ素18反応液を製造するフッ素18反応液製造段階、2-(4-トリメチルスズアリール-6,8-ジクロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ジプロピルアセトアミドと(ジアセトキシ)ヨードアレーンを反応させてヨードニウム塩前駆体を製造するヨードニウム塩前駆体(precursor A type)製造段階、前記ヨードニウム塩前駆体とTEMPOをCHCNに溶解させてヨードニウム塩前駆体反応液を製造するヨードニウム塩反応液製造段階、前記ヨードニウム前駆体反応液を前記フッ素18反応液に添加し、加熱して反応させることにより、フッ素18標識放射性トレーサーが含まれた組成物を得る放射性トレーサー物質組成物製造段階、2-(4-トリメチルスズアリール-6,8-ジクロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ジプロピルアセトアミドとビス(ピナコラート)ジボロンを反応させてホウ素エステル前駆体(precursor B type)を製造するホウ素エステル前駆体製造段階、前記ホウ素エステル前駆体と銅触媒(銅(II)トリフルオロメタンスルホネート、又はテトラキス(ピリジン)銅(II)トリフラート)をDMFに溶解させてホウ素エステル前駆体反応液を製造するホウ素エステル反応液製造段階、及び前記ホウ素エステル前駆体反応液を前記フッ素18反応液に添加し、加熱して反応させることにより、フッ素18標識放射性トレーサーが含まれた組成物を得る放射性トレーサー物質組成物製造段階を含む製造方法によって製造され、下記の化学式1のように示される輸送タンパク質過剰発現標的リガンド及びフッ素18標識PET映像用放射性トレーサーを提供する。
【0013】
【化1】
【0014】
ここで、前記Rは18F又は19F、前記XはC又はN、前記YはC又はNである。
【0015】
前記2-フルオロアリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体は、下記の化学式2のように示されるヨードニウム又はホウ素エステル前駆体(precursor A or B type)から合成することができる。
【0016】
【化2】
【0017】
ここで、前記XはC又はN、前記YはC又はNである。
【0018】
前記Zは、ヨードベンゼントシレート、ヨードトルエントシレート、2-ヨード-1,3,5-トリメチルベンゼントシレート、4-ヨードアニソールトシレート、3-ヨードアニソールトシレート、2-ヨードチオフェントシレート、3-ヨードチオフェントシレート、ヨードベンゼンブロミド、ヨードトルエンブロミド、2-ヨード-1,3,5-トリメチルベンゼンブロミド、4-ヨードアニソールブロミド、3-ヨードアニソールブロミド、2-ヨードチオフェンブロミド、3-ヨードチオフェンブロミド、ヨードベンゼンヨージド、ヨードトルエンヨージド、2-ヨード-1,3,5-トリメチルベンゼンヨージド、4-ヨードアニソールヨージド、3-ヨードアニソールヨージド、2-ヨードチオフェンヨージド、3-ヨードチオフェンヨージド、ヨードベンゼントリフラート、ヨードトルエントリフラート、2-ヨード-1,3,5-トリメチルベンゼントリフラート、4-ヨードアニソールトリフラート、3-ヨードアニソールトリフラート、2-ヨードチオフェントリフラート、3-ヨードチオフェントリフラート、及びピナコールホウ素エステルからなる群から選択される化合物であり得る。
【0019】
また、本発明は、前記目的を達成するために、下記の化学式4のように蛍光性質を有する分子と結合するとき、一般的に(汎用的に)使われる作用基を含むポリエチレングリコール(PEG)鎖が置換された2-アリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン前駆体に、これと相補的な結合のための作用基を有する蛍光染料(fluorescent dyes)又は光線感作剤(fluorescent sensitizer)を導入させ、下記の化学式3のように示される輸送タンパク質過剰発現標的蛍光リガンドを提供する。
【0020】
【化3】
【0021】
前記XはC又はN、前記YはC又はNである。また、前記ポリエチレングリコール鎖数nは1~10である。前記PEGと蛍光染料及び光線感作剤を連結するリンカー(Linker)は、エーテル(ether)、アミド(amide)、エステル(ester)、ウレア(urea)、ウゲタン(urethane)、チオウレア(thiourea)、及びジスルライド(disulfide)からなる群から選択される化合物であり得、X、Yを含む環の2、3及び4位の中でいずれか一位に置換される。
【0022】
前記蛍光染料又は光線感作剤が導入された蛍光リガンドは、下記の化学式4のように示される末端に蛍光性質を有する分子と結合可能な作用基を含むポリエチレングリコール鎖が置換された2-(アリール-6,8-ジクロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ジプロピルアセトアミド前駆体から合成することができる。
【0023】
【化4】
【0024】
前記XはC又はN、前記YはC又はNである。また、前記ポリエチレングリコール鎖数nは1~10である。前記Zは、酸(acid)、アルコール(alcohol)、チオール(thiol)、アミン(amine)、イソシアネート(isocyanate)、イソチオシアネート(isothiocyanate)、ブロミド(bromide)、ヨージド(iodide)、クルロリド(chloride)、N-スクシンイミジルエステル(N-succinimidyl ester)、及びスルホN-スクシンイミジルエステル(Sulfo N-succinimidyl ester)からなる群から選択される化合物であり得、X、Yを含む環の2、3及び4位の中でいずれか一位に置換される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、輸送タンパク質過剰発現標的フッ素18標識PET放射性トレーサーによって新しい神経炎症及び腫瘍映像を得ることにより、多様な輸送タンパク質過剰発現関連脳疾患及び腫瘍患者を診断することができ、フッ素18の長い半減期によって従来の炭素-11トレーサーに比べて多くの患者に神経炎症及び腫瘍映像診断を提供することができる効果がある。本発明のヨードニウム塩又はホウ素エステル前駆体を用いて芳香環にフッ素18を直接標識する方法は、既存の脂肪族に標識されたフッ素-18に比べ、輸送タンパク質過剰発現標的フッ素18が標識されたPET映像用放射性トレーサーの体内代謝安全性を高め、結果的に高い信号対雑音比映像を提供することができる。また、右側のベンゼンの代わりにピリジンを導入して正常脳からの排出を補うことにより、TSPO過剰発現領域と正常細胞との間の差を早くて正確に提供して診断時間を縮めることができる。また、同じリガンドにフッ素18の代わりに蛍光染料及び光線感作剤を導入した蛍光リガンドは、輸送タンパク質過剰発現に係わる疾患の蛍光映像誘導手術及び光力学治療に活用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明のヨードニウム塩又はホウ素エステル前駆体を用いた一実施例によるフッ素18標識放射性トレーサーの合成過程を示す化学式である。
図2】化学式2の誘導体である一実施例の合成混合物から純粋なフッ素18標識放射性トレーサーを分離するためのHPLCクロマトグラムを示すグラフである。
図3】化学式2の誘導体である一実施例によって合成され、純粋なフッ素18標識放射性トレーサーと非放射性同位体を有する基準物質を同時に注入して同一物質であることを確認するHPLCクロマトグラムを示すグラフである。
図4】本発明による輸送タンパク質過剰発現標的PET映像のためのフッ素18標識放射性トレーサー、その合成及び生物学的結果評価方法で神経炎症有用性評価のためにラットの脳に直接注入されたリポ多糖体(LPS、lipopolysaccharide)によって誘導された神経炎症誘発部分に対するフッ素18標識放射性トレーサー[18F]BS224([18F]BS compound、18F-labeled Bari and Seoul National University compound)の摂取を示す資料である。
図5】本発明による輸送タンパク質過剰発現標的PET映像のためのフッ素18標識放射性トレーサー[18F]BS224、その合成及び生物学的結果評価方法で脳卒中又は脳梗塞疾患における診断有用性評価のために中大脳動脈閉塞(MCAO、middle cerebral artery occlusion)ラットモデルによって誘導された脳虚血誘発部分に対するフッ素18標識放射性トレーサーの摂取を示す資料である。
図6】本発明による輸送タンパク質過剰発現標的リガンドであるBS224(Bari and Seoul National University compound 224)と既存にTSPO又はCBRに結合すると知られた化合物の結合親和度をラット大脳皮質サンプル(rat cerebrocortical samples)で比較した図表である。
図7】本発明による輸送タンパク質過剰発現標的PET映像用放射性トレーサー[18F]BS224と既存の[18F]CB251を用いて獲得した正常人における比較PET映像イメージである。
図8】本発明による輸送タンパク質過剰発現標的リガンドである[18F]BS224の正常人と中脳脳梗塞患者におけるTSPO PET比較映像と病変部位における放射能(Radio activity)を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
前記目的を達成するために、本発明による輸送タンパク質過剰発現標的フッ素18が標識されたPET映像用放射性トレーサーの製造方法は、サイクロトロンによって生産されたフッ素18が溶解した水を相間移動触媒と共にアセトニトリル(CHCN、acetonitrile)に添加し、85~95℃の温度で加熱することにより、フッ素18反応液を製造するフッ素18反応液製造段階、2-(4-トリメチルスズアリール-6,8-ジクロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ジプロピルアセトアミドと(ジアセトキシ)ヨードアレーン誘導体を反応させてヨードニウム塩前駆体(precursor A type)又は2-(4-ブロモアリール-6,8-ジクロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ジプロピルアセトアミドとビス(ピナコラート)ジボロンを反応させてホウ素エステル前駆体(precursor B type)を製造する前駆体製造段階、前記ヨードニウム塩前駆体と2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル(TEMPO)をCHCNに溶解させてヨードニウム塩前駆体反応液を製造するヨードニウム塩反応液製造段階、前記ホウ素エステル前駆体と銅触媒(銅(II)トリフルオロメタンスルホネート、又はテトラキス(ピリジン)銅(II)トリフラート)をジメチルホルムアミド(DMF、dimethylformamide)に溶解させてホウ素エステル前駆体反応液を製造するホウ素エステル反応液製造段階、及び前記ヨードニウム前駆体反応液を前記フッ素18反応液に添加し、加熱して反応させることにより、フッ素18標識放射性トレーサー物質が含まれた組成物を得る放射性トレーサー物質組成物製造段階又は前記ホウ素エステル前駆体反応液を前記フッ素18反応液に添加し、加熱して反応させることにより、フッ素18標識放射性トレーサー物質が含まれた組成物を得る放射性トレーサー物質組成物製造段階を含んでなることができる。
【0028】
前記放射性トレーサー物質組成物に塩酸水溶液を添加してC18 Sep-Pakカートリッジに吸着させ、水で洗浄した後、エタノールで溶出させて前記組成物を精製する第1精製段階をさらに含むことができる。
【0029】
前記放射性トレーサー物質組成物を244~264nmのUV検出器と放射性アイソトープガンマ線検出器が含まれた高性能液体クロマトグラフィー(HPLC、high performance liquid chromatography)システムを用いて精製する第2精製段階をさらに含むことができる。
【0030】
前記フッ素18反応液製造段階は、フッ素18標識反応性を増加させるために、相間移動触媒として18-クラウン-6([CO])/炭酸水素セシウム(CsHCO)をさらに添加して遂行することができる。
【0031】
また、本発明は、前記目的を達成するために、フッ素18が溶解した水をCHCNに添加し、85~95℃の温度で加熱することにより、溶媒が蒸発したフッ素18反応液を製造するフッ素18反応液製造段階、2-(4-トリメチルスズアリール-6,8-ジクロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ジプロピルアセトアミドと(ジアセトキシ)ヨードアレーンを反応させてヨードニウム塩前駆体を製造するヨードニウム塩前駆体(precursor A type)製造段階、前記ヨードニウム塩前駆体とTEMPOをCHCNに溶解させてヨードニウム塩前駆体反応液を製造するヨードニウム塩反応液製造段階、前記ヨードニウム前駆体反応液を前記フッ素18反応液に添加し、加熱して反応させることにより、フッ素18標識放射性トレーサーが含まれた組成物を得る放射性トレーサー物質組成物製造段階、2-(4-トリメチルスズアリール-6,8-ジクロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ジプロピルアセトアミドとビス(ピナコラート)ジボロンを反応させてホウ素エステル前駆体(precursor B type)を製造するホウ素エステル前駆体製造段階、前記ホウ素エステル前駆体と銅触媒(銅(II)トリフルオロメタンスルホネート、又はテトラキス(ピリジン)銅(II)トリフラート)をDMFに溶解させてホウ素エステル前駆体反応液を製造するホウ素エステル反応液製造段階、及び前記ホウ素エステル前駆体反応液を前記フッ素18反応液に添加し、加熱して反応させることにより、フッ素18標識放射性トレーサーが含まれた組成物を得る放射性トレーサー物質組成物製造段階を含む製造方法によって製造され、下記の化学式1のように示される輸送タンパク質過剰発現標的リガンド及びフッ素18標識PET映像用放射性トレーサーを提供する。
【0032】
【化5】
【0033】
ここで、前記Rは18F又は19F、前記XはC又はN、前記YはC又はNである。
【0034】
前記2-フルオロアリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体は、下記の化学式2のように示されるヨードニウム又はホウ素エステル前駆体(precursor A or B type)から合成することができる。
【0035】
【化6】
【0036】
ここで、前記XはC又はN、前記YはC又はNである。
【0037】
前記Zは、ヨードベンゼントシレート、ヨードトルエントシレート、2-ヨード-1,3,5-トリメチルベンゼントシレート、4-ヨードアニソールトシレート、3-ヨードアニソールトシレート、2-ヨードチオフェントシレート、3-ヨードチオフェントシレート、ヨードベンゼンブロミド、ヨードトルエンブロミド、2-ヨード-1,3,5-トリメチルベンゼンブロミド、4-ヨードアニソールブロミド、3-ヨードアニソールブロミド、2-ヨードチオフェンブロミド、3-ヨードチオフェンブロミド、ヨードベンゼンヨージド、ヨードトルエンヨージド、2-ヨード-1,3,5-トリメチルベンゼンヨージド、4-ヨードアニソールヨージド、3-ヨードアニソールヨージド、2-ヨードチオフェンヨージド、3-ヨードチオフェンヨージド、ヨードベンゼントリフラート、ヨードトルエントリフラート、2-ヨード-1,3,5-トリメチルベンゼントリフラート、4-ヨードアニソールトリフラート、3-ヨードアニソールトリフラート、2-ヨードチオフェントリフラート、3-ヨードチオフェントリフラート、及びピナコールホウ素エステルからなる群から選択される化合物であり得る。
【0038】
また、本発明は、前記目的を達成するために、下記の化学式4のように蛍光性質を有する分子と結合するとき、一般的に(汎用的に)使われる作用基を含むポリエチレングリコール(PEG)鎖が置換された2-アリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン前駆体に、これと相補的な結合のための作用基を有する蛍光染料(fluorescent dyes)又は光線感作剤(fluorescent sensitizer)を導入させ、下記の化学式3のように示される輸送タンパク質過剰発現標的蛍光リガンドを提供する。
【0039】
【化7】
【0040】
前記XはC又はN、前記YはC又はNである。また、前記ポリエチレングリコール鎖数nは1~10である。前記PEGと蛍光染料及び光線感作剤を連結するリンカー(Linker)は、エーテル(ether)、アミド(amide)、エステル(ester)、ウレア(urea)、ウレタン(urethane)、チオウレア(thiourea)、及びジスルフィド(disulfide)からなる群から選択される化合物であり得、X、Yを含む環の2、3及び4位の中でいずれか一位に置換される。
【0041】
前記蛍光染料又は光線感作剤が導入された蛍光リガンドは、下記の化学式4のように示される末端に蛍光性質を有する分子と結合可能な作用基を含むポリエチレングリコール鎖が置換された2-(アリール-6,8-ジクロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ジプロピルアセトアミド前駆体から合成することができる。
【0042】
【化8】
【0043】
前記XはC又はN、前記YはC又はNである。また、前記ポリエチレングリコール鎖数nは1~10である。前記Zは、酸(acid)、アルコール(alcohol)、チオール(thiol)、アミン(amine)、イソシアネート(isocyanate)、イソチオシアネート(isothiocyanate)、ブロミド(bromide)、ヨージド(iodide)、クロリド(chloride)、N-スクシンイミジルエステル(N-succinimidyl ester)、及びスルホN-スクシンイミジルエステル(Sulfo N-succinimidyl ester)からなる群から選択される化合物であり得、X、Yを含む環の2、3及び4位の中でいずれか一位に置換される。
【0044】
発明の実施のための形態
【0045】
本明細書及び請求範囲に使用した用語や単語は、発明者が自分の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して本発明の技術的思想に合う意味と概念に解釈されなければならない。
【0046】
以下、本発明について詳細に説明する。しかし、本発明は以下で開示する一実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に具現可能であり、この実施例はただ本発明の開示が完全になるようにし、通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供するものである。
【0047】
図1には、本発明のヨードニウム前駆体及びホウ素エステル前駆体を用いた一実施例によるフッ素18標識放射性トレーサーの合成過程を示す化学式が開示されている。
【0048】
図2には、化学式2の誘導体である一実施例の合成混合物から純粋なフッ素18標識放射性トレーサーを分離するためのHPLCクロマトグラムを示すグラフが示されている。
【0049】
図3には、化学式2の誘導体である一実施例によって合成され、純粋なフッ素18標識放射性トレーサーと非放射性同位体のフッ素19を有する基準物質を同時に注入して同一物質であることを確認するHPLCクロマトグラムを示すグラフが開示されている。
【0050】
図4は、本発明による輸送タンパク質過剰発現標的PET映像のためのフッ素18標識放射性トレーサーの生物学的結果評価方法で神経炎症有用性評価のためにラットの脳に直接注入されたLPSによって誘導された神経炎症誘発部分に対するフッ素18標識放射性トレーサー([18F]BS224)の摂取を示す資料である。
【0051】
図5は、本発明による輸送タンパク質過剰発現標的PET映像のためのフッ素18標識放射性トレーサーの生物学的結果評価方法で脳卒中又は脳梗塞疾患における診断有用性評価のためにMCAOラットモデルによって誘導された脳虚血誘発部分に対するフッ素18標識放射性トレーサー([18F]BS224)の摂取を示す資料である。
【0052】
図6は、本発明による輸送タンパク質過剰発現標的リガンドであるBS224と既存にTSPO又はCBRに結合すると知られた化合物の体外結合親和度をラット大脳皮質から抽出したサンプルで比較した図表である。
【0053】
図7は、本発明による輸送タンパク質過剰発現標的フッ素18が標識されたPET映像用放射性トレーサー[18F]BS224と[18F]CB251を用いた正常人におけるPET映像と脳での比較摂取率図表である。
【0054】
図8は、本発明による輸送タンパク質過剰発現標的フッ素18が標識されたPET映像用放射性トレーサー[18F]BS224の正常人と中脳脳梗塞患者脳のPET映像と同じ中脳脳梗塞患者脳MRI映像、及びPET映像における正常脳細胞科病変部位での比較摂取率図表である。
【0055】
これらの図を参照すると、本発明による輸送タンパク質過剰発現標的フッ素18が標識されたPET映像用放射性トレーサーの製造方法は、サイクロトロンによって生産されたフッ素18が溶解した水を相間移動触媒とともにCHCNに添加し、85~95℃の温度に加熱することにより、フッ素18反応液を製造するフッ素18反応液製造段階、2-(4-トリメチルスズアリール-6,8-ジクロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ジプロピルアセトアミドと(ジアセトキシ)ヨードアレーン誘導体を反応させてヨードニウム塩前駆体(precursor A type)又は2-(4-ブロモアリール-6,8-ジクロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ジプロピルアセトアミドとビス(ピナコラート)ジボロンを反応させてホウ素エステル前駆体(precursor B type)を製造する前駆体製造段階、前記ヨードニウム塩前駆体とTEMPOをCHCNに溶解させてヨードニウム塩前駆体反応液を製造するヨードニウム塩前駆体反応液製造段階、前記ホウ素エステル前駆体と銅触媒(銅(II)トリフルオロメタンスルホネート、又はテトラキス(ピリジン)銅(II)トリフラート)をジメチルホルムアミド(DMF、dimethylformamide)に溶解させてホウ素エステル前駆体反応液を製造するホウ素エステル反応液製造段階、及び前記ヨードニウム前駆体反応液を前記フッ素18反応液に添加し、加熱して反応させることにより、フッ素18標識放射性トレーサー物質が含まれた組成物を得る放射性トレーサー物質組成物製造段階又は前記ホウ素エステル前駆体反応液を前記フッ素18反応液に添加し、加熱して反応させることにより、フッ素18標識放射性トレーサー物質が含まれた組成物を得る放射性トレーサー物質組成物製造段階を含んでなることができる。
【0056】
ここで、前記輸送タンパク質過剰発現標的リガンド及びフッ素18標識PET映像用放射性トレーサーは、下記の化学式1の物質で示すことができる。
【化9】
【0057】
ここで、前記Rは18F又は19F、前記XはC又はN、前記YはC又はNである。
【0058】
前記2-フルオロアリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体は、下記の化学式2に示すヨードニウム又はホウ素エステル前駆体(precursor A or B type)から合成することができる。
【0059】
【化10】
【0060】
ここで、前記XはC又はN、前記YはC又はNである。
【0061】
前記化学式1のフッ素18標識放射性トレーサー物質は、下記の反応式1に示すように、フッ素18標識反応性を増加させるために添加した相間移動触媒(18-クラウン-6/炭酸水素セシウム)によって形成された[18F]セシウムフルオリド化合物を用いて、前記化学式2のようなヨードニウム又はホウ素エステル前駆体と反応させて18Fを芳香環に標識させる過程によって製造することができる。
【0062】
【化11】
【0063】
前記反応式1の反応物はヨードニウム又はホウ素エステル前駆体であり、前記反応式1で、Zは、ヨードベンゼントシレート、ヨードトルエントシレート、2-ヨード-1,3,5-トリメチルベンゼントシレート、4-ヨードアニソールトシレート、3-ヨードアニソールトシレート、2-ヨードチオフェントシレート、3-ヨードチオフェントシレート、ヨードベンゼンブロミド、ヨードトルエンブロミド、2-ヨード-1,3,5-トリメチルベンゼンブロミド、4-ヨードアニソールブロミド、3-ヨードアニソールブロミド、2-ヨードチオフェンブロミド、3-ヨードチオフェンブロミド、ヨードベンゼンヨージド、ヨードトルエンヨージド、2-ヨード-1,3,5-トリメチルベンゼンヨージド、4-ヨードアニソールヨージド、3-ヨードアニソールヨージド、2-ヨードチオフェンヨージド、3-ヨードチオフェンヨージド、ヨードベンゼントリフラート、ヨードトルエントリフラート、2-ヨード-1,3,5-トリメチルベンゼントリフラート、4-ヨードアニソールトリフラート、3-ヨードアニソールトリフラート、2-ヨードチオフェントリフラート、3-ヨードチオフェントリフラート、及びピナコールホウ素エステルからなる群から選択される化合物であり得る。
【0064】
ここで、前記反応式1で、Xが窒素の場合にYは炭素であり得、Yが窒素の場合にXは炭素であり得、前記X、Yのいずれも炭素であり得る。
【0065】
前記化学式1のフッ素18が標識された放射性トレーサー化合物の製造の際、前記18Fの導入は、18-クラウン-6/炭酸水素セシウムが含まれたCHCN溶媒の下で[18F]フッ化セシウムを準備するために、85~95℃の温度に加熱して水が蒸発したフッ素18反応液を製造するフッ素18反応液製造段階、及び前記[18F]フッ化セシウムを、前記化学式2の出発物質とTEMPO又は銅触媒(銅(II)トリフルオロメタンスルホネート、又はテトラキス(ピリジン)銅(II)トリフラート)がCHCN又はDMF溶媒に溶解している反応容器に移した後、加熱して反応させる段階を含む過程で遂行することができる。
【0066】
ここで、前記フッ素18が導入された2-フルオロアリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体は、前記のような過程で製造した後、常温に冷却させてHPLCを行うことによって分離/精製することができる。
【0067】
前記フッ素18標識放射性トレーサーの製造において、出発物質として使われる前記化学式2の化合物は、ヨードベンゼントシレート、ヨードトルエントシレートなどがヨードニウム塩前駆体の右側ベンゼン又はピリジン環に置換されているから、ヨウ素を中心に二つの芳香族の中でヨードニウム塩前駆体のベンゼン又はピリジン環の相対的電子密度差をもたらす。その結果、フッ素18がヨードニウム塩前駆体の右側環に直接置換できるように役割すると共に収率及び選択性を高める効果を示す。
【0068】
前記化学式1のような2-フルオロアリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体は下記の反応式2のような方法によって製造することができる。
【0069】
【化12】
【0070】
ここで、反応式2の化合物dは、化学式1の2-フルオロアリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体の一種である。
【0071】
すなわち、前記2-フルオロアリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体は、化合物(a)をテトラヒドロフラン溶媒の下で1,1’-カルボニルイミダゾールとTEAを入れ、ジプロピルアミンと反応させて化合物(b)を製造する段階(誘導体製造段階1)、化合物(b)をテトラクロロカーボン溶媒の下で臭素と反応させて化合物(c)を製造する段階(誘導体製造段階2)、化合物(c)をジメチルホルムアミド溶媒の下で2-アミノ3,5-ジクロロピリジンと反応させて化合物(d)を製造する段階(誘導体製造段階3)によって製造することができる。
【0072】
前記2-フルオロアリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体の製造の際、各段階別に得られた中間生成物は有機合成分野で知られた濾過方法、精製方法などによって分離/精製することができる。
【0073】
前記化学式1のフッ素18が導入された[18F]2-フルオロアリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体は、下記の化学式2のようなヨードニウム塩又はホウ素エステル前駆体によって製造することができる。
【0074】
【化13】
【0075】
前記式で、ZとX及びYは、前記化学式2で定義した通りである。
【0076】
前記化学式2のヨードニウム塩又はホウ素エステル前駆体は、化学式1の[18F]フッ素18が導入された2-フルオロアリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体を製造する出発物質として使われることができる。前記Zは、ヨウ素を中心に反対側芳香族化合物に比べ、ヨードニウム塩前駆体の右側環に比べて相対的な電子密度を異にしてフッ素18がヨードニウム塩前駆体の右側ベンゼン又はピリジン環に直接導入されるようにする役割を果たすと共に収率及び選択性を高める効果を奏する。
【0077】
前記2-アリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体にフッ素を含む-Z基を導入する方法は、下記の反応式3及び4に示すように、化合物(e)の2-アリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体の右側環に-Z基を導入する段階によって遂行することができる。
【0078】
【化14】
【0079】
前記反応式3及び4で、ZとX及びYは、前記化学式2で定義した通りである。
【0080】
前記反応式3で、前記-Z基の導入のために化合物(e)と反応させる物質は、(ジアセトキシ)アレーンとp-トルエンスルホン酸を使って遂行することができる。
【0081】
前記反応式4で、前記ホウ素エステル基の導入のために化合物(g)と反応させる物質は、ビス(ピナコラート)ジボロンと[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドを使って遂行することができる。
【0082】
前記反応式3の反応は、CHCN溶媒にジアセトキシアレーンを溶かした後、p-トルエンスルホン酸を添加した後、前記-Z基の導入のための化合物をクロロホルム溶媒に溶かして滴加した後、15-18時間の間に50℃で撹拌することによって遂行することができる。
【0083】
前記反応式4の反応は、ジメチルホルムアミド溶媒に前記-R基の導入のための化合物とビス(ピナコラート)ジボロンと[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドを添加した後、3-5時間の間に80℃で撹拌することによって遂行することができる。
【0084】
これに関連して、また、本発明は、前記目的を達成するために、下記の化学式4のような生体分子と結合するときに一般的に(汎用的に)使われる作用基を有するPEG鎖が置換された2-アリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体の前駆体と、これと相補的な結合のための作用基を有する蛍光染料(fluorescent dyes)又は光力学治療(photodynamic therapy)用光線感作剤(sensitizer)を一緒に反応させて蛍光リガンドを製造して、下記の化学式3のように示される蛍光及び光力学治療用光線感作剤標識リガンド輸送タンパク質過剰発現標的トレーサーを提供する。
【0085】
【化15】
【0086】
前記XはC又はN、前記YはC又はNである。また、前記ポリエチレングリコール(PEG)数nは1~10である。前記PEGと蛍光染料及び光力学治療用光線感作剤を連結するリンカー(Linker)は、エーテル(ether)、アミド(amide)、エステル(ester)、ウレア(urea)、ウレタン(urethane)、チオウレア(thiourea)、及びジスルフィド(disulfide)からなる群から選択される化合物であり得、X、Yを含む環の2、3及び4位の中でいずれか一位に置換される。
【0087】
前記蛍光染料又は光線感作剤が導入されたPEG鎖が置換された2-アリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体は、下記の化学式4のように示されるPEG鎖が置換された2-アリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体の前駆体から合成することができる。
【0088】
【化16】
【0089】
前記XはC又はN、前記YはC又はNである。また、前記ポリエチレングリコール(PEG)数nは1~10である。前記Zは、酸(acid)、アルコール(alcohol)、チオール(thiol)、アミン(amine)、イソシアネート(isocyanate)、イソチオシアネート(isothiocyanate)、ブロミド(bromide)、ヨージド(iodide)、クロリド(chloride)、N-スクシンイミジルエステル(N-succinimidyl ester)、及びスルホN-スクシンイミジルエステル(Sulfo N-succinimidyl ester)からなる群から選択される化合物であい得、X、Yを含む環の2、3及び4位の中でいずれか一位に置換される。
【0090】
前記化学式3の蛍光染料又は光線感作剤が導入されたPEG鎖が置換された2-アリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体は、下記の反応式に示すように、一般的に(汎用的に)生体分子に他の分子を共有結合で連結するときに使われる結合のために、前記化学式4のようなPEG鎖が置換された2-アリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体の前駆体と、これと相補的な結合のための作用基を有する蛍光染料(fluorescent dyes)又は光力学治療(photodynamic therapy)用光線感作剤(sensitizer)を反応させる過程で製造することができる。
【0091】
前記蛍光染料(fluoroscent dye)又は光線感作剤は、例えば、ポルフィリン(porphyrins)系化合物、ポルフィリン前駆体(porphyrin precursors)系化合物、フタロシアニン(phthalocyanines)系化合物、ポルフィセン(porphycenes)系化合物、塩素(chlorines)系化合物、フルオレセイン(fluoresceins)系化合物、アントラセン(anthracenes)系化合物、ヒペリシン(hypericin)、フロクマリン(furocoumarin)系化合物、クロロフィル誘導体(chlorophyll derivatives)、プルプリン(purpurins)系化合物、フェノチアジン(phenothiazines)、メチレンブルー(methylene blue)、バイオラットグリーン(violet green)、アズールC(azure C)、チオニン(thionine)、ナイルブルー(nile blue A)、ヒポクレリン(hypocrellin)、ローズベンガル(rose bengal)、ローダミン123(rhodamine123)、IR-700、IR-780、PC-413及びルテチウムテキサフィリン(lutetium texaphyrin)からなる群から選択される化合物を使うことができる。
【0092】
前記ポルフィリン(porphyrins)系化合物は、へマトポルフィリン誘導体(hematoporphyrin derivative)、ジヘマトポルフィリンエーテル/エステル(dihematoporphyrin ether/ester)、ポルフィマーナトリウム(porfimer sodium)、テトラナトリウム-メソ-テトラフェニルポルフィリン-スルホネート(tetrasodium-meso-tetraphenylporphyrin-sulphonate)及びメタロテトラ-アザポルフィリン(metallotetra-azaporphyrin)からなる群から選択されることができる。
【0093】
前記ポルフィリン前駆体(porphyrin precursors)系化合物は、d-アミノレブリン酸(d-aminolevulinic acid、ALA)、d-アミノレブリン酸(ALA)-メチル-(d-aminolevulinic acid(ALA)-methyl-)、プロピル-(propyl-)、及びヘキシル-エステル(hexyl-esters)からなる群から選択されることができる。
【0094】
前記フタロシアニン(phthalocyanines)系化合物は、クロロアルミニウムテトラ-スルホネートフタロシアニン(chloroaluminum tetra-sulfonated phthalocyanine)、亜鉛(II)フタロシアニン(zinc(II)phthalocyanine)、シリコンナフタロシアニン(silicone naphthalocyanine)及びアルミニウムスルホネートフタロシアニン(aluminum sulfonated phthalocyanine)からなる群から選択されることができる。
【0095】
前記ポルフィセン(porphycenes)系化合物は、9-アセトキシ-2,7,12,17-テトラ-N-プロピルポルフィセン(9-acetoxy-2,7,12,17-tetra-N-propylporphycene)、2-ヒドロキシエチル-7,12,17-トリス(メトキシエチル)ポルフィセン(2-hydroxyethyl-7,12,17-tris(methoxyethyl)porphycene)、23-カルボキシ-24-メトキシカルボニルベンゾ(2,3)-7,12,17-トリ(メトキシエチル)-ポルフィセン(23-carboxy-24-methoxycarbonylbenzo(2,3)-7,12,17-tri(methoxyethyl)-porphycene)からなる群から選択されることができる。
【0096】
前記塩素(chlorines)系化合物は、塩化モノアスパルチルe6(monoaspartylchlorine e6)、塩化ジアスパルチルe6(diaspartyl chlorine e6)、塩素e6ナトリウム(chlorine e6 sodium)、及びバクテリオクロリン(bacteriochlorin)からなる群から選択されることができる。
【0097】
前記フルオレセイン(fluoresceins)系化合物は、フルオレセインナトリウム(fluorescein sodium)及びテトラブロモフルオロセイン-エオシン(tetrabromofluorescein-eosin)からなる群から選択されることができる。
【0098】
前記アントラセン(anthracenes)系化合物は、アントラキノン(anthraquinone)、アクリジンオレンジ(acridine orange)、及びアクリジンイエロー(acridine yellow)からなる群から選択されることができる。
【0099】
前記フルオロクマリン(furocoumarin)系化合物は、5-メトキシソラレン(5-methooxypsoralen)及び8-メトキシソラレン(8-methoxypsoralen)からなる群から選択されることができる。
【0100】
前記プルプリン(purpurins)系化合物は、メタロプルプリン(metallopurpurin)及びティンエチオプルプリン(tinetiopurpurin)からなる群から選択されることができる。
【0101】
前記化学式1のフッ素18が導入された2-フルオロアリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体は、細胞内ミトコンドリアの外膜に存在するTSPOに高い結合を形成することにより、TSPO過剰発現に関連した疾患のPET放射能トレーサーとして使うことができる。前記体内TSPO結合の後にフッ素18から放出される陽電子が体内の近接電子と会って消滅するようになる。このときに生成される二つのガンマ線エネルギー(511keV)を収集して、体内特異的にTSPOが多く発現した該当部位をPETによって直接非侵襲的に映像化することができる。
【0102】
また、前記化学式3の蛍光分子が導入された2-アリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体は、前記と類似の機序で体内特異的TSPO過剰発現性質を有する癌腫に結合することにより、腫瘍手術過程で正確な腫瘍部位のイメージガイドを提供するか、あるいは患部の治療波長領域の光をもっと有効に受けることができる光線感作剤(sensitizer)として直接腫瘍内TSPOに結合してから局所的に光源に露出されたときに細胞怪死を引き起こす光力学治療に使うことができる。前記体内過剰発現したTSPOに結合性を有する2-アリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体化合物に蛍光染料を導入して体内に注入し、充分にTSPO標的の後に該当部位を蛍光染料に対応する特定波長の光を照射することにより、結合された物質が光を放出して視覚的に見られるようにして腫瘍手術のガイドラインを提供するか、光力学治療のために光線感作剤(sensitizer)が導入された2-アリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体の場合、特定波長の光を受けるとき、該当部位に活性酸素を放出して腫瘍を治療することができる。
【0103】
さらに、前記化学式3の蛍光分子が導入された2-アリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体において、PDT用光線感作剤が導入された場合、PETと同様に非侵襲的治療が可能であるという利点と共に、手術によって正常臓器の機能性を喪失し得る癌の場合、単純に光を照射して癌細胞のみ殺す治療が可能な利点がある。
【0104】
前記化学式1と2の2-アリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体の右側アリールのX又はYを変形させるか、又はフッ素18又はPET鎖が導入された蛍光染料又は光線感作剤の置換位置を異にすることにより、前記2-アリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体の脳及び腫瘍の摂取及び排出などを調節することができる。必要であれば、これらの置換基の極性を増加させて摂取及び排出の速度などを調節することができる。
【0105】
したがって、本発明による前記化学式1及び3の2-アリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体は、哺乳動物、好ましくはヒトに投与して各種の輸送タンパク質過剰発現に関連した脳疾患及び腫瘍の有無判断又は該当位置診断及び治療に有用に使うことができる。
【0106】
<製造例>化学式2のヨードニウム又はホウ素エステル前駆体の出発物質の製造
製造例1:
2-(6,8-ジクロロ-2-(4-(トリメチルスタニル)フェニル)-イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)-N,N-ジプロピルアセトアミドの製造
【化17】
【0107】
(段階1):4-(4-ブロモフェニル)-4-オキソ-N,N-ジプロピルブタンアミドの製造
【0108】
3-(4-ブロモベンゾイル)プロピオン酸(2.0g、7.8mmol)と1,1’-カルボニルイミダゾール(1.4g、8.6mmol)をテトラヒドロフラン(THF、50ml)に溶かし、30分間撹拌した。30分後にN、N’-ジプロピルアミン(1.2mL、8.6mmol)とトリエチルアミン(1.3ml、9.4mmol)を添加し、3時間撹拌した。溶媒を負圧で除去した後、残余物に0.1Nの塩化水素水溶液を入れ、エチルアセテートで抽出した。抽出された有機溶媒は硫酸ナトリウムで処理し、フィルタリングした後、残った有機溶媒を負圧で蒸発させた。残余物はカラムクロマトグラフィーで精製して目的化合物を得た。
【0109】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.86 (t, J = 7.4 Hz, 3H, CH3), 0.95 (t, J = 7.4 Hz, 3H, CH3), 1.53 (q, J = 7.4 Hz, 2H, CH2), 1.65 (q, J = 7.4 Hz, 2H, CH2), 2.77 (t, J = 7.4 Hz, 2H, CH2CO), 3.2-3.4 (m, 6H,CH2N+CH2CO), 7.58 (d, J = 6.8 Hz, 2H, Ar), 7.86 (d, J = 6.8 Hz, 2H, Ar); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 198.6, 171.1, 135.8, 132.0, 131.9, 129.8, 129.7, 128.2, 49.7, 47.9, 33.9, 27.3, 22.3, 21.1, 11.6, 11.5, 11.4; Anal. Calculated for (C16H22BrNO2): C, 56.48; H, 6.52; N, 4.12 %. Found: C, 56.59; H, 6.50; N, 4.11 %. MS: calculated for [M]+ = 339 Found: MS m/z (% relative to the base peak) = 339 (5, M+), 239 (base); IR (KBr): 1639, 1687 cm-1.
【0110】
(段階2):3-ブロモ-4-(4-ブロモフェニル)-4-オキソ-N,N-ジプロピルブタンアミドの製造
【0111】
4-(4-ブロモフェニル)-4-オキソ-N,N-ジプロピルブタンアミド(2.0g、5.9mmol)が溶けているテトラクロロカーボン(50mL)にブロミン(0.33ml、6.5mmol)が溶けているテトラクロロカーボン(1mL)を徐々に入れる。反応混合物は3時間撹拌した後、溶媒を負圧で除去した。残余物は飽和した炭酸水素ナトリウム水溶液で処理した後、エチルアセテートで抽出した。抽出された有機溶媒は硫酸ナトリウムで処理した後、フィルターし、負圧で蒸発させた。残余物はカラムクロマトグラフィーで精製して目的化合物を得た。
【0112】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.83 (t, J = 7.4 Hz, 3H, CH3), 0.98 (t, J = 7.4 Hz, 3H, CH3), 1.49 (q, J = 7.4 Hz, 2H, CH2), 1.66 (q, J = 7.4 Hz, 2H, CH2), 3.01 (dd, J1= 16.0 Hz, J2= 4.4 Hz, 1H, CH2CO), 3.1-3.4 (m, 4H,CH2N), 3.57 (dd, J1= 16.0 Hz, J3= 9.9 Hz, 1H, CH2CO), 5.59 (dd, J3= 9.9 Hz, J2= 4.4 Hz, 1H, CHBr), 7.62 (d, J = 6.8 Hz, 2H, Ar), 7.91 (d, J = 6.8 Hz, 2H, Ar); 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ 192.4, 169.3, 133.2, 132.3, 132.1, 130.7, 130.6, 130.5, 128.9, 49.7, 47.6, 40.6, 38.5, 38.4, 22.2, 21.0, 11.5, 11.4; Anal. Calculated for (C16H21Br2NO2): C, 45.85; H, 5.05; N, 3.34 %. Found: C, 46.03; H, 5.03; N, 3.35 %. MS: calculated for [M]+ = 419 Found: MS m/z (% relative to the base peak) = 419 (0.5, M+), 319 (base); IR (KBr): 1689, 1683 cm-1
【0113】
(段階3):2-(2-(4-ブロモフェニル)-6,8-ジクロロ-イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)-N,N-ジプロピルアセトアミドの製造
【0114】
3-ブロモ-4-(4-ブロモフェニル)-4-オキソ-N,N-ジプロピルブタンアミド(2.0g、4.8mmol)が溶けているジメチルホルムアミド(DMF、25mL)に2-アミノ3,5-ジクロロピリジン(1.0g、6.2mmol)を添加した。反応混合物は18時間の間に還流撹拌した。溶媒は負圧で除去した後、残余物はエチルアセテートで溶かし、0.1Nの塩酸水溶液で処理した後、有機層を抽出した。抽出された有機層は硫酸ナトリウムで処理した後、負圧で除去した。残余物はカラムクロマトグラフィーで精製して目的化合物を得た。
【0115】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.77 (t, J = 7.4 Hz, 3H, CH3), 0.86 (t, J = 7.4 Hz, 3H, CH3), 1.2-1.3 (m, 4H,CH2), 3.12 (t, J = 7.7 Hz, 2H, CH2NCO), 3.30 (t, J = 7.7 Hz, 2H, CH2NCO), 4.04 (s, 2H,CH2CO), 7.30 (d, J = 1.9 Hz, 1H, Ar), 7.53 (d, J = 8.2 Hz, 2H, Ar), 7.60 (d, J = 8.2 Hz, 2H, Ar), 8.24 (d, J = 1.9 Hz, 1H, Ar); 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ 167.4, 144.8, 141.6, 133.1, 132.3, 130.9, 125.3, 123.8, 123.1, 122.1, 120.1, 117.9, 50.4, 48.5, 30.6, 22.7, 21.4, 11.8, 11.5; Anal. Calculated for (C21H22BrCl2N3O): C, 52.20; H, 4.59; N, 8.70 %. Found: C, 52.34; H, 4.57; N, 8.74 %. MS: calculated for [M]+ = 483 Found: MS m/z (% relative to the base peak) = 483 (3, M+), 128 (base). ESI-MS: calculated for [M - H]- = 482. Found = 482: IR (KBr): 1698 cm-1
【0116】
(段階4):2-(6,8-ジクロロ-2-(4-(トリメチルスタニル)フェニル)-イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)-N,N-ジプロピルアセトアミドの製造
【0117】
2-(2-(4-ブロモフェニル)-6,8-ジクロロ-イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)-N,N-ジプロピルアセトアミド(0.5g、1.04mmol)をジオキサン(dioxane、20ml)に溶かした後、ヘキサメチル二スズ(0.43mL、2.08mmol)とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.17g、0.15mmol)を添加した。混合物はアルゴン雰囲気で120℃から6時間撹拌した。温度を下げた後、反応混合物はセライトでフィルタリングし、次いで水とエチルアセテートを添加して抽出した。抽出された有機溶媒は硫酸ナトリウムで処理した後、負圧で除去した。残余物はカラムクロマトグラフィーで精製して目的化合物を得た。
【0118】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.32 (s, 3H, CH3Sn), 0.67 (t, J = 7.4 Hz, 3H, CH3), 0.86 (t, J = 7.4 Hz, 3H, CH3), 1.4-1.6 (m, 4H,CH2), 3.06 (t, J = 7.7 Hz, 2H, CH2NCO), 3.29 (t, J = 7.7 Hz, 2H, CH2NCO), 4.09 (s,2H,CH2CO), 7.30 (d, J = 1.9 Hz, 1H, Ar), 7.59 (d, J = 7.8 Hz, 2H, Ar), 7.63 (d, J = 7.8 Hz, 2H, Ar), 8.36 (d, J = 1.9 Hz, 1H, Ar); 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ 167.3, 145.7, 143.0, 141.3, 136.2, 133.6, 128.5, 124.7, 123.4, 122.0, 120.0, 117.4, 50.1, 48.2, 30.5, 22.4, 21.1, 11.4, 11.0, -9.4; Anal. Calculated for (C24H31Cl2N3OSn): C, 50.83; H, 5.51; N, 7.41 %. Found: C, 51.08; H, 5.52; N, 7.43 %. ESI-MS: calculated for [M + Na]+ = 590. Found = 590: IR (KBr): 1645 cm-1:
【0119】
本発明によるフッ素18標識輸送タンパク質標的PET放射性トレーサーの製造方法は、高い非放射能(molar activity)を有する生成物を得ることができ、大量生産で扱いやすいフッ素18を用いるために、フッ素18が溶解した水をCHCNに添加して加熱することによってフッ素18反応液を製造し、電子を求引する別途の作用基(functional group)がなくても芳香環(aromatic ring)化合物に求核性フッ素18を標識することができるジアリールヨードニウム塩を用いることができるように、2-(6,8-ジクロロ-2-(4-(トリメチルスタニル)フェニル)-イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)-N,N-ジプロピルアセトアミドを製造し、4-(ジアセトキシ)ヨードアレーン(4-(diacetoxy)iodoarene)を反応させて((4-(6,8-ジクロロ-3-(2-(ジプロピルアミノ)-2-オキソエチル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル)フェニル)(アリール)ヨードニウム)アニオン前駆体を収得し、このようなヨードニウム塩前駆体をCHCNに溶解させてヨードニウム塩反応液を製造し、このフッ素18反応液とヨードニウム塩反応液を反応させることにより、容易にフッ素18標識放射性トレーサー物質が含まれた組成物([18F]BS224)を得る放射性トレーサー物質組成物を得ることができる。
【0120】
ここで、前記2-(6,8-ジクロロ-2-(4-(トリメチルスタニル)フェニル)-イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)-N,N-ジプロピルアセトアミドと4-(ジアセトキシ)ヨードトルエン(4-(diacetoxy)iodotoluene)を反応させて、((4-(6,8-ジクロロ-3-(2-(ジプロピルアミノ)-2-オキソエチル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル)フェニル)(アリール)ヨードニウム)アニオン前駆体を製造するヨードニウム塩前駆体製造段階は、下記の反応式5のような段階によって製造することができる。
【0121】
【化18】
【0122】
一方、前記フッ素18反応液製造段階は、フッ素18の反応性を促進するように、前記CHCNに炭酸水素セシウム/18-クラウン-6をもっと添加して遂行することができる。
【0123】
前記製造方法は、前記放射性トレーサー物質組成物に塩酸水溶液を添加してC18 Sep-Pakカートリッジに吸着させ、水で洗浄した後、エタノールで溶出させて前記組成物を精製する第1精製段階をさらに含むことができ、前記放射性トレーサー物質組成物を244~264nmのUV検出器と放射性アイソトープガンマ線検出器が含まれたHPLCシステムで精製する第2精製段階をさらに含むことができる。このような精製段階により、もっと高い純度と活性を有するフッ素18標識輸送タンパク質過剰発現標的PET放射性トレーサー([18F]BS224)を製造することができる。
【0124】
前記2-アリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体は、炎症又は腫瘍部位の特異的摂取力を用いて、反応式6のように、例えばIR-780化合物をアミド結合で導入した化学式3の構造の光線感作剤が導入されたPEG鎖が置換された2-アリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体として具現されることができる。
【0125】
【化19】
【0126】
このような2-アリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体に光線感作剤、IR-780化合物を導入した化合物は光力学治療用に使用可能な下記のような利点を有する。IR-780は特定領域の波長の光(780~800nm)を受ければ、摂取された細胞から熱を発生させる化合物として作用するので、膀胱のように腫瘍選択的除去術が難しくて手術によって臓器の機能性を失うおそれが高い腫瘍治療において、摂取された部位に光を照射することによって発生する熱で、該当部位の腫瘍を焼く治療が可能である。
【0127】
また、本発明は、フッ素18が溶解した水をCHCNに添加し、85~95℃の温度で加熱することにより、溶媒が蒸発したフッ素18反応液を製造するフッ素18反応液製造段階、2-トリメチルスズアリール-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体と4-(ジアセトキシ)ヨードアレーン(4-(Diacetoxy)iodoarene)を反応させて((4-(6,8-ジクロロ-3-(2-(ジプロピルアミノ)-2-オキソエチル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル)フェニル)(アリール)ヨードニウム)アニオン前駆体を製造するヨードニウム塩前駆体製造段階、前記前駆体と2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ(2,2,6,6-tetramethyl-1-piperidinyloxy)をCHCNに溶解させてヨードニウム塩前駆体反応液を製造するヨードニウム塩反応液製造段階、及び前記ヨードニウム前駆体反応液を前記フッ素18反応液に添加し、加熱して反応させることにより、フッ素18標識放射性トレーサー物質が含まれた組成物を得る放射性トレーサー物質組成物製造段階を含む製造方法によって製造し、下記の化学式5のように示されるフッ素18標識輸送タンパク質過剰発現標的PET放射性トレーサー([18F]BS224)を提供する。
【0128】
【化20】
【0129】
すなわち、本発明によるフッ素18標識輸送タンパク質過剰発現標的PET放射性トレーサー([18F]BS224、2-(6,8-ジクロロ-2-(4-[18F]フルオロフェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)-N,N-ジプロピルアセトアミド)として表現される化合物により、新しい輸送タンパク質標的神経炎症及び腫瘍映像を陽電子放出断層撮映で得ることができるようにして、多様な輸送タンパク質過剰発現関連脳疾患及び腫瘍患者を診断することができ、フッ素18の長い半減期によって、従来の炭素-11トレーサーに比べて多くの患者に脳神経炎症及び腫瘍映像診断を提供することができる。
【0130】
ここで、前記[18F]BS224化合物の右側ベンゼンの代わりにピリジン(Pyridine)を有するように、下記の反応式6のように2-ピリジル-6,8-ジクロロイミダゾピリジン誘導体形態に合成して正常脳からの排出を補い、TSPO過剰発現領域と正常細胞との間の違いをより早く提供することができる化合物としても具現されることができる。
【実施例
【0131】
<実施例1>ヨードニウム塩前駆体を用いた2-(6,8-ジクロロ-2-(4-[18F]フルオロフェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)-N,N-ジプロピルアセトアミドの合成
【化21】
【0132】
サイクロトロンで生産されたフッ素18が溶解している50-100μLの水をCsHCO(1.0mg)と18-クラウン-6(10.0mg)が溶解しているアセトニトリルに添加した(容器1)。窒素を用いて90℃に加熱しながら共沸蒸留(azeotropic distillation)によって溶媒を全部蒸発させた。ヨードニウム塩前駆体(4mg、(4-(6,8-ジクロロ-3-(2-(ジプロピルアミノ)-2-オキソエチル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル)フェニル)(p-トルイル)ヨードニウム)と1mgの2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシルを0.3mlのアセトニトリルに溶解させた後(容器2)、該当溶液を容器1に添加した後、10分間140℃に加熱して反応を進めた。反応の後、0.1NのHCl水溶液を10mL添加した後、C18-light Sep-Pakカートリッジに吸着させ、10mLの水で洗浄した後、0.5mLのエタノールで溶出させた。溶出された溶液を254nmのUV検出器と放射性アイソトープガンマ線検出器が含まれたHPLCシステム(Waters、Xterra Semi-preparative C18 column、10×250mm、10μm;50%アセトニトリル-水、254nm、流速:5.0mL/min)で精製し、34分に約25%の放射化学的収率を有するフッ素18が標識された[18F]BS224を収集した。
【0133】
<実施例2>ホウ素エステル前駆体を用いた2-(6,8-ジクロロ-2-(4-[18F]フルオロフェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)-N,N-ジプロピルアセトアミドの合成
【化22】
【0134】
サイクロトロンで生産されたフッ素18が溶解している50-100μLの水をCsHCO(1.1mg)と18-クラウン-6(3.5mg)又はKCO(0.8mg)とK222(5.0mg)が溶解しているアセトニトリルに添加する(容器1)。窒素を用いて90℃に加熱しながら共沸蒸留(azeotropic distillation)のために溶媒を全部蒸発させた。ホウ素エステル前駆体(3mg、2-(6,8-ジクロロ-2-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル-N,N-ジプロピルアセトアミド)と銅触媒(銅(II)トリフルオロメタンスルホネート、0.2mg又はテトラキス(ピリジン)銅(II)トリフラート、0.4mg)を0.5mlのジメチルホルムアミドに溶解させた後(容器2)、該当溶液を容器1に添加した後、10分間110℃の熱を加熱して反応を進めた。反応の後、0.1NのHCl水溶液を10mL添加した後、C18-light Sep-Pakカートリッジに吸着させ、10mLの水で洗浄した後、0.5mLのエタノールで溶出させた。溶出された溶液を254nmのUV検出器と放射性アイソトープガンマ線検出器が含まれたHPLCシステム(Waters、Xterra Semi-preparative C18 column、10×250mm、10μm;50%アセトニトリル-水、254nm、流量:5.0mL/min)で精製し、34分に約9%の放射化学的収率を有するフッ素18が標識された[18F]BS224ピリジンを収集した。
【0135】
<実施例3>2-(6,8-ジクロロ-2-(4-フルオロフェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)-N,N-ジプロピルアセトアミドの製造
【化23】
【0136】
18-クラウン-6(25.0μmol)が溶けているアセトニトリル(0.3mL)に水(10μL)に溶かしたセシウムフルオリド(25.0μmol)を添加した。窒素を用いて90℃に加熱しながら共沸蒸留(azeotropic distillation)のために溶媒を全部蒸発させ、(4-(6,8-ジクロロ-3-(2-(ジプロピルアミノ)-2-オキソエチル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル)フェニル)(p-トリル)ヨードニウムトシレートが溶けているアセトニトリル(0.3ml)を添加した後、撹拌しながら1時間の間に80~140℃の熱を加えタ。常温に冷却させた後、反応混合物は254nmのUV検出器と放射性アイソトープガンマ線検出器が含まれたHPLCシステム(Waters、Xterra Semi-preparative C18 column、10×250mm、10μm;50%アセトニトリル-水、254nm、流量:5.0mL/min)で精製し、約34分に2-(6,8-ジクロロ-2-(4-フルオロフェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)-N,N-ジプロピルアセトアミド(BS224)を収集した。
【0137】
1H NMR (400MHz; CDCl3)δ 8.26 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 7.63 (dd, J = 5.6 Hz, 8.8 Hz, 2H), 7.29 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.15 (t, J = 8.8 Hz, 2H), 4.04 (s, 2H), 3.29 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 3.10 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.44-1.60 (m, 4H), 0.86 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 0.75 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 13C NMR (100 MHz; CDCl3) δ 167.2, 164.3, 161.8, 144.7, 141.2, 130.9, 130.8, 130.7, 130.6, 130.0, 129.9, 124.9, 124.7, 123.4, 121.8, 121.7, 120.0, 117.3, 116.1, 115.9, 115.8, 50.0, 48.2, 30.3, 22.4, 21.0, 11.5, 11.4, 11.2, 11.1; 19F NMR (375MHz; CDCl3) δ -113.2; Anal. Calculated for (C21H22Cl2FN3O): C, 59.72; H, 5.25; N, 9.95 %. Found: C, 59.77; H, 5.21; N, 9.98 %. ESI-MS: calculated for [M - H]- = 421. Found = 421: IR (KBr): 1640 cm-1.
【0138】
<実施例4>2-(6,8-ジクロロ-2-(4-フルオロフェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)-N,N-ジプロピルアセトアミドの製造
【化24】
【0139】
(段階1)4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソ-N,N-ジプロピルブタンアミドの製造
【0140】
3-(4-フルオロベンゾイル)プロピオン酸(5.0g、25.5mmol)と1,1’-カルボニルイミダゾール(4.5g、28.0mmol)をテトラヒドロフラン(THF、50ml)に溶かし、常温で30分間撹拌させた。30分後、N、N’-ジプロピルアミン(4.2mL、30.6mmol)とTEA(4.6mL、33.1mmol)を入れ、4時間撹拌した。溶媒を負圧で除去した後、残余物を0.1N塩酸水溶液で処理した後、エチルアセテートで抽出した。抽出した有機層は硫酸ナトリウムで処理した後、フィルタリングし、有機溶媒は負圧で除去した。残余物はカラムクロマトグラフィーで精製して目的化合物を得た。
【0141】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) d 0.86 (t, J = 7.4 Hz, 3H, CH3), 0.95 (t, J = 7.4 Hz, 3H, CH3), 1.53 (q, J = 7.4 Hz, 2H, CH2), 1.65 (q, J = 7.4 Hz, 2H, CH2), 2.77 (t, J = 7.4 Hz, 2H, CH2CO), 3.2-3.4 (m, 6H, CH2N + CH2CO), 7.12 (d, J = 6.8 Hz, 2H, Ar), 7.90 (d, J = 6.8 Hz, 2H, Ar); Anal. Calculated for (C16H22FNO2): C, 68.79; H, 7.94; N, 5.01 %. Found: C, 68.94; H, 7.90; N, 5.03 %. MS: calculated for [M]+= 279 Found: MS m/z (% relative to the base peak) = 279 (5, M+), 179 (base). IR (KBr): 1640, 1685 cm-1.
【0142】
(段階2)3-ブロモ-4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソ-N,N-ジプロピルブタンアミドの製造
【0143】
4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソ-N,N-ジプロピルブタンアミドがテトラクロロカーボン溶媒に溶けて撹拌されている溶液に、Br(0.6mL、11.8mmol)が溶けているテトラクロロカーボン溶媒を徐々に入れた。反応混合物は2時間撹拌した後、溶媒を負圧で除去した。残余物は飽和した炭酸水素ナトリウム水溶液で処理した後、エチルアセテートで抽出した。抽出された有機層は負圧で除去し、残余物はカラムクロマトグラフィーで精製して目的化合物を得た。
【0144】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) d 0.83 (t, J = 7.4 Hz, 3H, CH3), 0.98 (t, J = 7.4 Hz, 3H, CH3), 1.49 (q, J = 7.4 Hz, 2H, CH2), 1.66 (q, J = 7.4 Hz, 2H, CH2), 3.02 (dd, J1 = 16.0 Hz, J2 = 4.4 Hz, 1H, CH2CO), 3.1-3.4 (m, 4H, CH2N), 3.57 (dd, J1 = 16.0 Hz, J3= 9.9 Hz, 1H, CH2CO), 5.59 (dd, J3 = 9.9 Hz, J2= 4.4 Hz, 1H, CHBr), 7.12 (d, J = 6.8 Hz, 2H, Ar), 7.90 (d, J = 6.8 Hz, 2H, Ar); Anal. Calculated for (C16H21BrFNO2): C, 53.64; H, 5.91; N, 3.91 %. Found: C, 53.73; H, 5.89; N, 3.93 %. MS: calculated for [M]+ = 358 Found: MS m/z (% relative to the base peak) = 358 (0.9, M+), 259 (base); IR (KBr): 1690, 1687 cm-1.
【0145】
(段階3)2-(6,8-ジクロロ-2-(4-フルオロフェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)-N,N-ジプロピルアセトアミドの製造
【0146】
3-ブロモ-4-(4-フルオロフェニル)-4-オキソ-N,N-ジプロピルブタンアミド(2.0g、5.6mmol)が溶けているジメチルポムアミド(DMF、25mL)に2-アミノ3,5-ジクロロピリジン(1.2g、7.3mmol)を入れた。反応混合物は12時間の間に還流撹拌した。12時間後、溶媒を負圧で除去した後、残余物はエチルアセテートに溶かした後、0.1N塩酸水溶液で処理して抽出した。抽出された有機層を負圧で除去した後、硫酸ナトリウムで処理し、負圧で溶媒を除去した。残余物はカラムクロマトグラフィーで精製して目的化合物を得た。
【0147】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) d 0.77 (t, J = 7.4 Hz, 3H, CH3), 0.86 (t, J = 7.4 Hz, 3H, CH3), 1.2-1.3 (m, 4H, CH2), 3.12 (t, J = 7.7 Hz, 2H, CH2NCO), 3.30 (t, J = 7.7 Hz, 2H, CH2NCO), 4.04 (s, 2H, CH2CO), 7.30 (d, J = 1.9 Hz, 1H, Ar), 7.23 (d, J = 8.2 Hz, 2H, Ar), 7.56 (d, J = 8.2 Hz, 2H, Ar), 8.23 (d, J = 1.9 Hz, 1H, Ar); Anal. Calculated for (C21H22Cl2FN3O): C, 59.72; H, 5.25; N, 9.95 %. Found: C, 59.77; H, 5.21; N, 9.98 %. ESI-MS: calculated for [M - H]- = 421. Found = 421. IR (KBr): 1640 cm-1.
【0148】
<実施例5>(4-(6,8-ジクロロ-3-(2-(ジプロピルアミノ)-2-オキソエチル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル)フェニル)(p-トリル)ヨードニウムトシレートの製造
【化25】
【0149】
アセトニトリル(4mL)に4-(ジアセトキシ)ヨードトルエン(235.2mg、0.7mmol)を溶かした後、p-トルエンスルホン酸(133.2mg、0.7mmol)を添加した直後、クロロホルム(20ml)を添加して希釈させた。5分間常温で撹拌した後、クロロホルム(4mL)に溶けている2-(6,8-ジクロロ-2-(4-(トリメチルスタニル)フェニル)-イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)-N,N-ジプロピルアセトアミドウル徐々に入れた。反応混合物は50℃で18時間撹拌した。常温に冷却した後、有機溶媒を負圧で除去した。残余物はジクロロメタンと水を入れて抽出した後、抽出された有機層を負圧で除去した。得られたオイルは少量のジクロロメタンとジエチルエーテル(v/v=1:1)に溶かした後、冷ジエチルエーテル(10mL)が収容された円錐管に徐々に入れた後、遠心分離によって固体を得た。
【0150】
1H NMR (400MHz; CDCl3)δppm:8.03(d,J = 1.6 Hz, 1H), 7.99 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.77 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.64 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.53 (bd, J = 7.6 Hz, 2H), 7.29 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 7.11 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.03 (bd, J = 7.6 Hz, 2H), 4.02 (s, 2H), 3.32-3.26 (m, 2H), 3.23-3.17 (m, 2H), 2.34 (s, 3H), 2.29 (s, 3H), 1.60-1.50 (m, 4H), 0.86 (t, J = 7.6 Hz, 3H), 0.80 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 13CNMR(100MHz;CDCl3)δppm:166.8,143.3,142.9,141.3,139.6,137.4,135.5,135.1,132.7,131.8,128.7,126.1,125.3,123.7,121.5,120.1,118.7,115.0,111.9,50.1,48.2,29.8,22.4,21.5,21.4,21.1,11.5,11.3;MS(ESI)m/z 620 (M+-OTs). HRMS calcd for C28H29Cl2IN3 O620.0732, found620.0735.
【0151】
<実施例6>2-(6,8-ジクロロ-2-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル-N,N-ジプロピルアセトアミドの製造
【化26】
【0152】
2-(2-(4-ブロモフェニル)-6,8-ジクロロ-イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)-N,N-ジプロピルアセトアミド(230mg、0.48mmol)が溶けているジメチルホルムアミド(DMF、15mL)に[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド(41mg、0.05mmol)と酢酸カリウム(141mg、1.4mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(134mg、0.53mmol)を添加した。反応混合物は3時間の間に80℃で撹拌した。温度を常温に下げた後、反応混合物はセライトでフィルタリングした後、水とジクロロメタンを添加して抽出した。抽出された有機溶媒は硫酸ナトリウムで処理した後、負圧で除去した。残余物はカラムクロマトグラフィーで精製して目的化合物を得た。
【0153】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.67 (t, J = 7.4 Hz, 3H, CH3), 1.37 (s, 12H, CH3), 0.86 (t, J = 7.4 Hz, 3H, CH3), 1.4-1.6 (m, 4H,CH2), 3.09 (t, J = 7.7 Hz, 2H, CH2NCO), 3.29 (t, J = 7.7 Hz, 2H, CH2NCO), 4.07 (s,2H,CH2CO), 7.29 (d, J = 2.0 Hz, 1H, Ar), 7.67 (d, J = 8.0 Hz, 2H, Ar), 7.89 (d, J = 8.0 Hz, 2H, Ar), 8.28 (d, J = 1.9 Hz, 1H, Ar); 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ 167.2, 145.2, 141.2, 136.2, 135.1, 128.1, 124.6, 123.3, 121.7, 119.4, 117.6, 83.9, 49.9, 48.0, 31.6, 30.2, 24.9, 22.4, 22.2, 20.9, 14.1, 11.3, 11.0. ESI-MS: calculated for [M + H]+ = 530. Found = 530:
【0154】
<実験例1>ヒト血清での体外安全性の測定
フッ素18標識輸送タンパク質過剰発現標的PET放射性トレーサー([18F]BS224)の体外安全性実験は、ヒト血清0.4mLとフッ素18が置換されたフッ素18標識放射性トレーサー([18F]BS224)を含む1%エタノールが含有された水0.4mLと混合した後、37℃で0、10、30、60、120分間放置した後、薄層クロマトグラフィーで安全性を分析した。測定結果、フッ素18標識放射性トレーサー([18F]BS224)は最大120分まで98.7%以上が安定した。これは、フッ素18標識放射性トレーサー([18F]BS224)が体内生物学的研究を遂行するのに十分な安全性を示したものである。
【0155】
<実験例2>LPS誘導脳神経炎症モデルラットの製作
神経炎症モデルラットの製作は、200~250gの体重を有する雄性Sprague-Dawleyラットを使った。ラットを麻酔して頭蓋骨を露出させた後、骨ドリルを用いて小孔を開けた。ついで、LPS(lipopolysaccharide)50μgをハミルトン注射器で予め決めた右側脳領域(ブレグマからAP、0.8mm;L、-2.7mm及びP、-5.0mm)に0.5mL/minの流量で注入した。ハミルトン注射器におけるLPS逆流を防ぐために、投与してから10分後、頭蓋骨の小孔をワックスで充填した後、切開された頭皮を縫合する。
【0156】
<実験例3>中大脳動脈閉塞(MCAO)ラットモデルの製作
7週齢のSprague-Dawleyラットを準備し、1週間の順化期間を経た後、約8週齢(約300g)のラットを、中大脳動脈閉塞モデルのために、2%イソフルランで呼吸麻酔させた。ラットを側面で横たえた後、両足と頭部を固定した後、首部の毛を除去し、約3cm程度の皮膚を切開した。表皮下部の脂肪層を除去した後、左側に頸動脈部分を探して手術空間を確保した。総頸動脈の下端部位を縛って血流を遮断した後、内頸動脈にプローブを挿入することができる程度の間隔を置いて両側を縛って血流を遮断した。内頸動脈に血流が遮断された中間部分を少し切開した後、ナイロンプローブを挿入して中脳動脈部分まで挿入した。プローブの挿入後、切開された首部位をステープラーで縫合した後、60分間血流を遮断した。ステープラーを除去した後、プローブを丁寧に引き出し、内頸動脈の両側の糸を除去し、二つの糸の中で中脳動脈側にある糸をまた縛った後、総頸動脈部位の糸を除去し、切開された首部位を縫合した。
【0157】
<実験例4>脂肪親和度の測定
脂肪親和度の測定は、5%エタノール/食塩水に分散されている[18F]BS224をn-オクタノール(5mL)とリン酸ナトリウム緩衝液(0.15M、pH7.4、5.0Ml)に加えて混合した後、5回測定した。各段階のサンプルの放射能を測定し、脂肪親和度はリン酸ナトリウム緩衝液とn-オクタノールの分当たりカウントの比率で計算した。[18F]BS224の脂肪親和度は2.78±0.4であった。
【0158】
<実験例5>体外結合親和度の測定
体外結合親和度の測定
BS224のTSPOとCBRに対する体外結合親和度の測定は、[H]PK11195と[H]flunitrazepamの置換反応によって決定した。[Callaghan, P. D. et al. Comparison of in vivo binding properties of the 18-kDa translocator protein (TSPO) ligands [18F]PBR102 and [ 18 F]PBR111 in a model of excitotoxin-induced neuroinflammation. Eur. Nucl. Med. Mol. Imaging 42, 138-51 (2015)参照]
【0159】
以上のように本発明をたとえ限定された実施例と図面に基づいて説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野で通常の知識を有する者であればこのような記載から多様な修正及び変形が可能である。
【0160】
したがって、本発明の範囲は前述した実施例に限られて決定されてはならず、後述する特許請求の範囲だけではなくこの特許請求の範囲と均等なものによって決定されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明は、フッ素18が溶解した水をアセトニトリルに添加し、85~95℃の温度で加熱することにより、溶媒が蒸発したフッ素18反応液を製造するフッ素18反応液製造段階、2-(6,8-ジクロロ-2-(4-(トリメチルスタニル)フェニル)-イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)-N,N-ジプロピルアセトアミドと4-(ジアセトキシ)ヨードアレーンを反応させて((4-(6,8-ジクロロ-3-(2-(ジプロピルアミノ)-2-オキソエチル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル)フェニル)(アリール)ヨードニウム)アニオン前駆体を製造するヨードニウム塩前駆体製造段階、2-(2-(4-ブロモフェニル)-6,8-ジクロロ-イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)-N,N-ジプロピルアセトアミドとビス(ピナコラート)ジボロンを反応させて2-(6,8-ジクロロ-2-(4-(4,4,5,6-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル-N,N-ジプロピルアセトアミド前駆体を製造するホウ素エステル前駆体製造段階、前記ヨードニウム前駆体と2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシルアセトニトリルに溶解させてヨードニウム塩前駆体反応液を製造するヨードニウム塩反応液製造段階、前記ホウ素エステル前駆体と銅触媒(銅(II)トリフルオロメタンスルホネート、又はテトラキス(ピリジン)銅(II)トリフラート)をジメチルホルムアミドに溶解させてホウ素エステル前駆体反応液を製造するホウ素エステル反応液製造段階、及び前記ヨードニウム又はホウ素エステル前駆体反応液を前記フッ素18反応液に添加し、加熱して反応させることにより、フッ素18標識放射性トレーサー物質が含まれた組成物を得る放射性トレーサー物質組成物製造段階を含むフッ素18標識輸送タンパク質過剰発現標的PET放射性トレーサーの製造方法に関するものである。
【0162】
本発明によれば、フッ素18標識輸送タンパク質過剰発現標的PET放射性トレーサーによって新しい輸送タンパク質過剰発現に関連した神経炎症、脳卒中及び腫瘍の映像をPETから得ることによって多様な脳疾患及び腫瘍患者を診断することができ、フッ素18の長い半減期によって従来の炭素-11トレーサーに比べて多くの患者に脳神経炎症及び腫瘍映像診断を提供することができる効果がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8