(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】ナノ材料及び高純度化学物質を連続製造する装置、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/00 20060101AFI20230728BHJP
B01F 25/42 20220101ALI20230728BHJP
B01F 23/40 20220101ALI20230728BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20230728BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230728BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20230728BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230728BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230728BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230728BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20230728BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20230728BHJP
A61K 31/4709 20060101ALI20230728BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20230728BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20230728BHJP
A61P 23/00 20060101ALI20230728BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
B01J19/00 321
B01F25/42
B01F23/40
A61K9/107
A61K47/26
A61K47/44
A61K47/14
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/24
A61K31/05
A61K31/4709
A61K31/496
A61P25/20
A61P23/00
A61P31/04
(21)【出願番号】P 2020570488
(86)(22)【出願日】2019-06-24
(86)【国際出願番号】 US2019038705
(87)【国際公開番号】W WO2019246615
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-24
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519213997
【氏名又は名称】デルファイ サイエンティフィック、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パナジオトウ、トーメイ
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー、ロバート、ジョセフ
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-509173(JP,A)
【文献】特開2009-067999(JP,A)
【文献】特開2016-221477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00
B01F 23/40-47
B01F 25/20-46
B81B 1/00
A61K 9/10-133
A61K 31/4709
A61K 31/496
A61K 31/05
A61K 47/06
A61K 47/10
A61K 47/12
A61K 47/14
A61K 47/24
A61K 47/26
A61K 47/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの液体供給ストリームを連続的に処理する方法であって、
能動的に自動的に制御された速度でインラインミキサに第1の供給ストリームをポンプ輸送すること、
第2の供給ストリームを前記インラインミキサに流すこと、
前記第1及び第2の供給ストリームを混合して、実質的に均質な混合物を達成すること、
前記実質的に均質な混合物を能動的に制御された流量で高圧ポンプにポンプ輸送すること、
前記高圧ポンプ内の前記実質的に均質な混合物を少なくとも35MPaの高圧に加圧すること、及び
前記実質的に均質な混合物を前記高圧ポンプの下流のマイクロリアクタに送達することであって、前記マイクロリアクタは500ミクロン以下の最小チャネル寸法を有し、前記第1及び第2の液体ストリームをナノスケールレベルで前記マイクロリアクタ内で相互作用させること、
を含み、前記第1及び第2の供給ストリームを混合して、実質的に均質な混合物を達成することが、高圧ポンプの上流及びインラインミキサと高圧ポンプとの間に配置された
機器の上流の位置においてインラインミキサで前記第1及び第2の供給ストリームを混合することを含
み、
前記機器が導管、オーバーフロータンク、逆止弁、供給ポンプ、蠕動ポンプ、フィルタ、又は計量ポンプから選択される、方法。
【請求項2】
前記第1の供給ストリームが第1の構成成分を含み、前記第2の供給ストリームが第2の構成成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の供給ストリームが、同軸に整列された供給ラインで前記インラインミキサに送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の構成成分が溶媒を含み、前記第2の構成成分が貧溶媒を含み、前記マイクロリアクタにおける前記溶媒と前記貧溶媒との相互作用が、ナノ懸濁液を規定するのに有効であり、前記方法は、
前記ナノ懸濁液から構成成分ナノ粒子結晶を取得すること
を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、メタノール、エタノール、アセトン、ジクロロメタン、オクタノール及びイソプロピルアルコール、からなる群から選択され、前記貧溶媒が、水、ヘキサン及びヘプタンからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒がDMSOであり、前記ナノ懸濁液が約50~100nmのメジアン粒径で取得されるアジスロマイシンのナノ粒子を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記マイクロリアクタ内での相互作用後に前記ナノ懸濁液を冷却又は急冷することを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記高圧が少なくとも約70MPaである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記マイクロリアクタにおいて少なくとも約1.2×10
6s
-1の剪断速度をもたらすことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1及び第2の供給ストリームの少なくとも1つがシード粒子を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の構成成分が第1の反応剤であり、前記第2の構成成分が第2の反応剤であり、前記方法が、
前記マイクロリアクタ内の前記ナノスケールレベルの相互作用の前に、前記第1及び第2の反応剤の間の相互作用を制御することによって反応選択性を調整すること
を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記実質的に均質な混合物を達成するために、前記高圧ポンプにおいて加圧する前に、前記インラインミキサ内の前記第1及び第2の反応剤の間の接触を促進することによって、前記第1及び第2の反応剤の間の前記相互作用の制御が行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記マイクロリアクタ内での反応後、前記実質的に均質な混合物を冷却又は急冷することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1及び第2の構成成分が前記マイクロリアクタ内で相互作用して、エマルジョンを達成する、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記第1及び第2の供給ストリームの1つが油相であり、前記油相が、植物油、ナッツ油、動物油、無機油、脂質、界面活性剤、ポリマー、有効成分、香味料、着色料、アルコール、有機溶媒、及び/又はそれらの誘導体を含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも2つの液体供給ストリームを連続的に処理するためのシステムであって、
能動的に自動的に制御された速度で第1の供給ストリームを下流にポンプ輸送するように適合された供給ポンプ、
前記供給ポンプからの前記第1の供給ストリームと、供給ラインからの第2の供給ストリームとを受け取るように配置されたインラインミキサであって、前記インラインミキサが前記第1及び第2の供給ストリームを混合して実質的に均質な混合物を達成するように適合された、インラインミキサ、
前記インラインミキサから前記実質的に均質な混合物を受け取るように配置された高圧ポンプであって、前記高圧ポンプが前記第1及び第2の供給ストリームを少なくとも35MPaの高圧に加圧するように適合された、高圧ポンプ、及び
前記高圧ポンプの下流にあるマイクロリアクタであって、前記マイクロリアクタが、500ミクロン以下の最小チャネル寸法を有し、前記マイクロリアクタが、前記実質的に均質な混合物の完全な混合を達成するように高剪断場をもたらすように適合された、マイクロリアクタ
を含み、インラインミキサが、高圧ポンプの上流及びインラインミキサと高圧ポンプとの間に配置された
機器の上流に位置
し、
前記機器が導管、オーバーフロータンク、逆止弁、供給ポンプ、蠕動ポンプ、フィルタ、又は計量ポンプから選択される、システム。
【請求項17】
前記マイクロリアクタの下流に冷却ユニットを更に備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記供給ポンプが計量ポンプである、又は
前記第1及び第2の供給ストリームが、同軸構成で前記インラインミキサに送達される、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記マイクロリアクタは、ナノスケールレベルで、前記第1の供給ストリーム中の第1の反応剤と前記第2の供給ストリーム中の第2の反応剤との相互作用をもたらすように適合され、前記システムは、前記マイクロリアクタ内のナノスケールレベルの相互作用の前に、前記第1及び第2の反応剤の間の相互作用を制御することによって反応選択性が制御され得るように構成され、前記実質的に均質な混合物を達成するために、前記高圧ポンプにおいて加圧する前に、前記インラインミキサ内の前記第1及び第2の反応剤の間の接触を促進することによって、前記第1及び第2の反応剤の間の前記相互作用の制御が行われる、請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年6月22日に出願された米国仮特許出願第62/688,755号及び2019年1月4日に提出された米国仮特許出願第62/788,298号に対する優先権を主張し、各出願の内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、特定の反応チャンバ内で、分子の接触を非常に効率的に促進し、それによって、様々な混合及び/又は反応現象を向上及び/又は促進する、装置、システム及び方法を対象とする。より具体的には、開示された装置、システム、及び方法は、マイクロリアクタに供給される液体の連続ストリームの混合を強化して、ナノ材料を生成する、化学反応の速度を高める、又は化学反応の生成物の純度を改善するように設計されている。
【背景技術】
【0003】
流体力学の役割は、エンジニアリング科学のファセットにおいて、過小評価されるべきではない。プロセスユニット及びそれらに関連する移送ライン内のフローパターンは、質量、エネルギー、及び、運動量輸送率及び反応能において、重大な影響力を持つ。従って、システム設計は、一般に、エネルギー散逸メカニズムの同一性、それ故、混合及び接触効果の強度の定量性から恩恵を受ける。これらのファクタは、材料の取り扱い及び製造プロセスにおいて、一般的に重要である。
【0004】
例えば、乱流の強度は、一般に、流体中に分散した粒子のサイズ、エマルジョンの質、及び化学反応の進捗及び選択性を決定する滞留時間分布プロファイルに影響を及ぼす。これは、沈殿及び結晶化のプロセスが、製品の品質に重大な影響を持つ、新興のナノテクノロジー分野において、特に明白である。更に、混合特性は、研究及び製品規模の両方で、反応槽の性能に影響を与え、及び/又は、その性能を決定し、そして適切に設計され/実現された混合システムは、生産性を向上するために、バッチシステムの代わりに、連続システムの使用を可能とし及び/又は促進し得る。
【0005】
混合技術に関しては、均一化作業のため、すなわち、コロイド液体中の懸濁粒子を分散させるために、産業界においては、キャビテーションが用いられている。多数の工学原理が、キャビテーション挙動と関わりを持っている。(例えば、Christopher Earls Brennen、「Cavitation and Bubble Dynamics」、Oxford University Press(1995)を参照)。キャビテーションに基づく混合は、しばしば固形物と共に行われるが、薬剤シャベロンにおけるのと同様に、ナノエマルジョン及びベシクルローディングの生成のための最良の選択ではない場合もある。キャビテーションは、結果として、混合装置の製造に関して、創出及び/又はスケールアップの問題といった材料に関連した問題を生じ得る。特に、狭い入口オリフィスと、それよりずっと広い出口オリフィスとを有する環状開口から液体を強制的に送ることにより、圧力の劇的な減少が、流体加速を起こし、その結果、キャビテーションバブルの容量及び生成がより大きくなる。これらのバブルが衝突している(それらの内破を引き起こしている)表面は、驚異的な圧力にさらされる。従って、多結晶ダイヤモンド及びステンレススチール等のような材料が、一般的に要求される。高圧ホモジナイザは、高剪断を利用して小さな粒子を生成する。上記の技術は、多段階のプロセスを必要とし、エネルギーを大量に消費する。このような技術では、最初に全ての成分を比較的低エネルギーの装置で混合し、次に製品の品質が達成されるまで、キャビテーション装置の高圧ホモジナイザで数回処理する必要がある。
【0006】
混合関連の問題とは別に、潜在的に高い薬理学的値を有する化合物の多数は、疎水性が高すぎるために効率的に形成されないため、初期のスクリーニング試験を通過することができない。文献に広く書かれているように、大部分の配合戦略は、粒径の減少によって、そのような薬のバイオアベイラビリティの増加を狙うものである。かかる戦略は、剪断プロセスによる、エマルジョン、リポソーム及び官能性シャペロンの生成、製粉、微粉化又は高剪断プロセスによるナノ懸濁液の生成、及び、ナノポーラス材料の生成を含む。
【0007】
ナノエマルジョン、リポソーム、及び、他の汎用のカーゴ積載システムは、限られた量の薬剤のみをカプセル化することができる。よって、現在のアプローチは、高い投薬量が必要とされる場合には、薬剤として選択の戦略とはならないことがある。ナノ懸濁液は、溶媒希釈薬剤システムに比べると、より少ない体積でより多量の薬剤を運ぶことができ、よって、高用量が必要な場合の製剤の戦略としては、潜在的な利点を有し得る。更に、これらの従来の方法は、高いエネルギー需要を有し、多段階である。
【0008】
ほとんどの場合、ナノ懸濁液は、製粉、微粉化又は高剪断プロセスによって製造される。よって、ナノ懸濁液の現行の製造方法は、主として乾燥した又は湿性の製剤における薬剤パウダーの粒径の減少に依拠する。かかる、「トップ-ダウン」のプロセスは、一般的に遅く、反復的な処理サイクルを必要とし、また実質的なエネルギーを必要とする。実際、目標とする粒径、通常0.5ミクロン未満は、しばしば、所望の粒径分布を達成するために、多大な時間を必要とし、製造コストがかかり、しばしば、製粉/高剪断装置による、繰り返しの処理循環/通過プロセスを必要とする。
【0009】
薬剤の制御された結晶化は、所望の粒径分布を生成するためのサイズを減少するための技術による、薬剤ナノ懸濁液を生成するための1つの代替手段である。結晶化は、所望の純度の微粒化学物質及び薬剤の生成に用いられる、及び/又は、所望の結晶構造及び関連する性質を伴う特定の結晶多形体の製剤のために用いられる方法である。しかしながら、現在の結晶化技術は、一般的に、高疎水性薬剤を送達するためには適しない数ミクロンの範囲で粒子を製造する。更に近年、結晶化によるナノ懸濁液の製造方法が提案されたが、しかしそれらは、必要な生産性の堅牢性を示していない。特に、最新の手順は、結晶化(結晶形態及び安定化までの核生成速度)、プロセススケーラビリティ、及び、一般的な適用性の、多様な機構的ステップの際に必要とされる制御を欠いている。
【0010】
特許文献は、粒径制御及び操作に関する装置の処理を開示している。例えば、一般に、Cookらに特許付与された米国特許第4,533,254号及び第4,908,154号は、エマルジョン及びマイクロエマルジョン処理における、特定の用途を持つ、処理システム及び装置を開示する。フローストリームは、圧力下、低圧の乱流域で強制的に衝突させられる。開示されたシステム/装置は、共通する液体噴流相互衝突フロントに沿ったフローシートの衝突に影響を与える複数のノズルを含む。
【0011】
Greenwoodらは、殺菌可能な、粒径を減少する装置を国際公開第2005/018687号に開示している。Kippらは、粒子のプレサスペンジョンを形成する第二の溶媒を伴う、水混合性の溶媒中で溶解する薬学的活性化合物を含む溶剤を混合し、次に、100μm未満の平均粒径を有する粒子サスペンジョンを形成するために混合物を活性化することを含む、サブミクロン粒子サスペンジョンを生成する方法/装置を開示する(米国特許公開2003/0206959号及び2004/0266890号、米国特許6,977,085号参照)。
【0012】
結晶化の分野においては、特許文献は、薬剤産業からの多様な教示を含む。例えば、Midler,Jr.らに特許付与された米国特許第5,314,506号は、連続した結晶化プロセスにおける核生成の開始前に、均一な組成を形成すべく流体の高強度マイクロ混合を達成するための衝突噴流の使用を開示する。核生成及び沈降は、特定の溶媒において結晶化する化合物の溶解度に対する温度減少の影響を活用することにより(熱調節)、又は、溶媒混合物中の化合物の溶媒特性を利用することにより、又はそれらの組み合わせにより開始される。Dauerらに特許付与された米国特許第5,578,279号は、結晶化、又は、向かい合った角度で配置された噴出ノズルを有する混合チャンバを含む二重の噴流結晶化装置を開示する。ノズルが、結晶化される化合物及び結晶化剤を供給する。Am Endeらに特許付与された米国特許第6,558,435号は、衝突ポイントで液体ストリームが合流して、垂直の衝突フィルムを生成し、製品を生産するための反応中間体の反応を可能にする温度及び圧力の条件のもとで、それらの衝撃点で乱流を生成するように、直径方向に、対抗する液体噴流ストリームを接触させることを含む、薬剤の化合物の合成/結晶化のプロセスを開示する。噴流ストリームは、噴流ストリーム構成成分のマイクロ混合、続いて反応及び核生成を達成して、高表面領域結晶を形成するために十分な線形速度を有するように開示されている。Katoらに特許付与された米国特許公開第2006/0151899号も参照のこと。
【0013】
より最近では、Panagiotouらの米国特許第8,187,554号及び第8,367,004号は、混合及び/又は反応現象を促進するために相互作用チャンバ内の成分の相互作用を達成するための装置、システム、及び方法を記載している。しかし、残念ながら、‘554及び‘004特許に開示されている装置、システム、及び方法には重大な欠点がある。1つの欠点は、そのような装置、システム、及び方法が、不正確な比率の構成成分を有するナノ粒子又はマイクロ粒子製剤をもたらすことである。‘554及び‘004特許の装置、システム、及び方法は、2つの供給ストリーム間の相互作用が増圧ポンプ内の加圧前に実質的に防止され、それにより、それらに記載されている相互作用チャンバ内のマイクロ及び/又はナノスケールの相互作用の前に、潜在的な反応及び他の構成成分の相互作用を回避するように、異なる個別に能動的に制御された速度で増圧ポンプに直接供給される2つの供給ストリームを説明している。従って、そのようなシステムは、第1のポンプを使用して第1の供給ストリームを制御し、第2のポンプを使用して第2の供給ストリームを制御し、増圧ポンプを使用して第1の供給ストリームと第2の供給ストリームの混合物を制御する(すなわち、入力及び出力が制御されている)。理論的には、各供給ストリームを能動的に制御することにより、システムの流量を能動的に制御することが有利であるように思われる(例えば、各供給ストリームをシステムに入れ、システムを通過させ、同じ流量でシステムから出すことを試みる)。しかし、実際には、そのような十分な流量を達成するために、システム内の機器及びプロセスを十分に制御することは非常に困難であり、ほとんどの用途では不可能である。このような困難は、流量が完全に一定ではなく脈動し、その結果、十分な流量が達成されないために発生する。このようなシステムでは、流量は、低すぎるか高すぎる処理速度を意味する。そのような不十分な流量は、供給ストリームの構成成分の所望の比率の崩壊をもたらし、最終的に、所望のマイクロ及び/又はナノ粒子製剤を達成することに失敗する。更に、システムの流量を制御できないと、スケールアップが非常に問題になる可能性がある。
【0014】
別の欠点は、‘554及び‘004特許に開示されている装置、システム、及び方法の主な目標が、増圧ポンプに入るまで第1及び第2の供給ストリームを分離しておくことである(すなわち、第1及び第2の供給ストリームの事前混合を防ぐため)。そのようなストリームが増圧ポンプに入るとき、第1及び第2の供給ストリームは混合する。ただし、増圧ポンプでの混合を制御することは困難であり、多くの場合不可能である。このような制御の欠如は、特に構成成分が非混合性の液体で構成されている場合、構成成分の塊の生成をもたらす。反応チャンバの内部容積が非常に小さいため、これは重大な問題である。水と油を含む例では、水のみ又は油のみの塊が増圧ポンプから反応チャンバに流れる可能性がある。しかしながら、特定の比率の油及び水の均質な混合物が一般的に望まれるであろう。システムが油及び/又は水の塊を反応チャンバに通すと、結果として生じるマイクロ粒子又はナノ粒子が大きすぎ、また、所望の比率にならない。システムの処理速度が遅いと、塊が反応チャンバ内のマイクロチャネルを塞ぐことになり、そのようなシステムは、特に化学及び製薬産業での大規模生産に不適切になる。
【0015】
更なる欠点は、‘554及び‘004特許に開示されている装置、システム、及び方法が、特定の所望のプロセス及び化学反応を達成するのに十分な時間を提供しないことである。例えば、第1及び第2の供給ストリームは、増圧ポンプ及び反応チャンバのみを通過する。増圧ポンプの一般的な滞留時間は通常約1秒又は2秒であるが、プロセスには約40秒かかる場合がある。反応チャンバに対する一般的な滞留時間は約1ミリ秒である。‘554及び‘004特許に開示されている装置、システム、及び方法でプロセスを実施するためのそのような最小の時間枠を考えると、より多くの時間を必要とする多くの所望のプロセス及び化学反応は不可能であろう。
【0016】
今日までの活動にもかかわらず、ナノ粒子の生成における効率的な、システム/装置及び方法の必要性は未だに残っている。効率的、連続的、かつ信頼できる方法による、ナノ粒子の生成のシステム/装置及び方法がまた必要とされている。ナノ粒子の処理とは別に、多様な材料の処理作業、例えば、とりわけ、反応剤及び/又は結晶化構成成分の間に必要な相互作用への分散限度を最小化することにより、反応剤、エマルジョン及び/又は結晶処理など、の促進に効果的な、システム/装置及び方法の必要性が未だに残っている。更にまた、効率的なプロセス設計及び/又は制御によって、所望の粒径分布、モルフォロジー及び/又は組成/層純度を産出するシステム及び方法の必要性が残されている。実際、例えば、望まない副反応が起きる可能性を低減するため、所望の処理結果を達成するために、構成成分の間での界面での反応/接触を効率的に制御するシステム及び装置の必要性が未だ残されている。
【発明の概要】
【0017】
本開示は、少なくとも2つの液体供給ストリームを連続的に処理するための開示されたシステム/装置及び方法を提供することによって、上記の問題に対処する。本開示の一態様は、少なくとも2つの液体供給ストリームを連続的に処理するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、能動的に自動的に制御された速度でインラインミキサに第1の供給ストリームをポンプ輸送すること、第2の供給ストリームをインラインミキサに流すこと、第1及び第2の供給ストリームを混合して、実質的に均質な混合物を達成すること、実質的に均質な混合物を能動的に制御された速度で高圧ポンプにポンプ輸送すること、高圧ポンプ内の実質的に均質な混合物を少なくとも35MPaの高圧に加圧すること、及び実質的に均質な混合物を高圧ポンプの下流のマイクロリアクタに送達すること、を含む。いくつかの実施形態では、マイクロリアクタは500ミクロン以下の最小チャネル寸法を有し、第1及び第2の液体ストリームをナノスケールレベルで、マイクロリアクタ内で相互作用させる。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1の供給ストリームは第1の構成成分を含み、第2の供給ストリームは第2の構成成分を含む。いくつかの実施形態では、第1及び第2の供給ストリームは、同軸に整列された供給ラインでインラインミキサに送達される。いくつかの実施形態では、第1及び第2の供給ストリームは、インラインミキサによって規定された間隔を置いたポートを介してインラインミキサに導入される。いくつかの実施形態では、インラインミキサへの第1の供給ストリームの送達のための能動的に制御された速度が、第1の供給ストリーム用の能動的に制御された供給ポンプによってもたらされる。いくつかの実施形態では、方法は、マイクロリアクタ内での相互作用後、実質的に均質な混合物を冷却又は急冷することを更に含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1の構成成分は溶媒を含み、第2の成分は貧溶媒を含む。いくつかの実施形態では、マイクロリアクタ内の溶媒と貧溶媒との相互作用は、ナノ懸濁液を規定するのに効果的である。いくつかの実施形態では、方法は、ナノ懸濁液から構成成分ナノ粒子結晶を取得することを更に含む。いくつかの実施形態では、溶媒ストリームが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、メタノール、エタノール、アセトン、ジクロロメタン、オクタノール及びイソプロピルアルコール、からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、貧溶媒ストリームは、水、ヘキサン、及びヘプタンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、溶媒ストリームがDMSOであり、アジスロマイシンのナノ粒子が約50~100nmのメジアン粒径で取得される。いくつかの実施形態では、溶媒ストリームがDMSOであり、オキシカルバゼピンのナノ粒子が、1000nm未満のメジアン粒径で取得される。いくつかの実施形態では、溶媒ストリームはDMSO又はNMPであり、ロラタジンのナノ粒子は、500nm未満のメジアン粒径で取得される。いくつかの実施形態では、方法は、マイクロリアクタ内での相互作用後にナノ懸濁液を冷却又は急冷することを更に含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、高圧は少なくとも約70MPaである。いくつかの実施形態では、高圧は少なくとも約140MPaである。いくつかの実施形態では、高圧は少なくとも約207MPaである。いくつかの実施形態では、第2のストリームの流量と第1のストリームの流量との比が少なくとも約2:1である。いくつかの実施形態では、第2のストリームの流量と第1のストリームの流量との比が少なくとも約3:1である。いくつかの実施形態では、第2のストリームの流量と第1のストリームの流量との比が少なくとも約10:1である。
【0021】
いくつかの実施形態では、マイクロリアクタは、10~500ミクロンの範囲の最小寸法を有するチャネルを有する。いくつかの実施形態では、マイクロリアクタチャネル内の平均流体速度が300~500m/sの範囲にある。いくつかの実施形態では、方法は、マイクロリアクタにおいて少なくとも約1.2×106s-1の剪断速度をもたらすことを更に含む。いくつかの実施形態では、マイクロリアクタは単一のスロット形状を有する。
【0022】
いくつかの実施形態では、液体供給ストリームの少なくとも1つは固体粒子を含む。いくつかの実施形態では、供給ストリームの少なくとも1つはシード粒子を含む。いくつかの実施形態では、供給ストリームの少なくとも1つは触媒粒子を含む。いくつかの実施形態では、第1の構成成分は第1の反応剤であり、第2の構成成分は第2の反応剤である。いくつかの実施形態では、方法は、マイクロリアクタ内のナノスケールレベルの相互作用の前に、第1及び第2の反応剤の間の相互作用を制御することによって反応選択性を調整することを更に含む。いくつかの実施形態では、実質的に均質な混合物を達成するために、高圧ポンプにおいて加圧する前に、インラインミキサ内の第1及び第2の反応剤の間の接触を促進することによって、第1及び第2の反応剤の間の相互作用の制御が行われる。いくつかの実施形態では、実質的に均質な混合物が、高圧ポンプによって規定されたポートを介して高圧ポンプにポンプ輸送される。いくつかの実施形態では、方法は、マイクロリアクタ内での反応後、実質的に均質な混合物を冷却又は急冷することを更に含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の供給ストリームは非混合性である。いくつかの実施形態では、第1及び第2の供給ストリームは混合性である。いくつかの実施形態では、構成成分がマイクロリアクタ内で相互作用して、エマルジョン、拡散、リポソーム製剤、脂質ナノ粒子、又は結晶性若しくはアモルファス材料を達成する。いくつかの実施形態では、第1の供給ストリームは油相であり、第2の供給ストリームは水相である。いくつかの実施形態では、油相が、植物油、ナッツ油、動物油、無機油、脂質、界面活性剤、ポリマー、有効成分、香味料、着色料、アルコール、有機溶媒、及び/又はそれらの誘導体から選択される。いくつかの実施形態では、水相が、水、脂質、界面活性剤、粘度調整剤、pH調整剤、及び糖から選択される。いくつかの実施形態では、第1の供給ストリームは水相であり、第2の供給ストリームは油相である。いくつかの実施形態では、油相が、植物油、ナッツ油、動物油、無機油、脂質、界面活性剤、ポリマー、有効成分、香味料、着色料、アルコール、有機溶媒、及び/又はそれらの誘導体から選択される。いくつかの実施形態では、水相が、水、脂質、界面活性剤、粘度調整剤、pH調整剤、及び糖から選択される。
【0024】
本開示の別の態様は、少なくとも2つの液体供給ストリームを連続的に処理するためのシステムを提供する。いくつかの実施形態では、システムは、能動的に自動的に制御された速度で第1の供給ストリームを下流にポンプ輸送するように適合された供給ポンプ、供給ポンプからの第1の供給ストリームと、供給ラインからの第2の供給ストリームとを受け取るように配置されたインラインミキサ、インライン混合物から実質的に均質な混合物を受け取るように配置された高圧ポンプ、及び高圧ポンプの下流のマイクロリアクタ、を含む。いくつかの実施形態では、インラインミキサは、実質的に均質な混合物を達成するために、第1及び第2の供給ストリームを混合するように適合されている。いくつかの実施形態では、マイクロリアクタは、500ミクロン以下の最小チャネル寸法を有する。いくつかの実施形態では、マイクロリアクタは、実質的に均質な混合物の完全な混合を達成するように、高剪断場をもたらすように適合されている。
【0025】
いくつかの実施形態では、供給ポンプは計量ポンプである。いくつかの実施形態では、第1及び第2の供給ストリームは、同軸構成でインラインミキサに送達される。いくつかの実施形態では、マイクロリアクタは単一のスロット形状を有する。いくつかの実施形態では、システムは、マイクロリアクタの下流に冷却ユニットを更に含む。いくつかの実施形態では、インラインミキサは、間隔を置いて複数の供給ポートを含む。いくつかの実施形態では、第1の供給ストリームが第1の供給ポートを介してインラインミキサに導入され、第2の供給ストリームが第2の供給ポートを介してインラインミキサに導入される。
【0026】
いくつかの実施形態では、第1の供給ストリームは第1の構成成分を含み、第2の供給ストリームは第2の構成成分を含む。いくつかの実施形態では、マイクロリアクタは、第1の構成成分と第2の構成成分との間の制御されたナノスケールの相互作用をもたらすように適合されている。いくつかの実施形態では、マイクロリアクタは、ナノスケールレベルで、第1の供給ストリーム中の第1の反応剤と第2の供給ストリーム中の第2の反応剤との相互作用をもたらすように適合されている。いくつかの実施形態では、システムは、マイクロリアクタ内のナノスケールレベルの相互作用の前に、第1及び第2の反応剤の間の相互作用を制御することによって反応選択性が制御され得るように構成される。いくつかの実施形態では、実質的に均質な混合物を達成するために、高圧ポンプにおいて加圧する前に、インラインミキサ内の第1及び第2の反応剤の間の接触を促進することによって、第1及び第2の反応剤の間の相互作用の制御が行われる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の反応剤は、インラインミキサによって規定された間隔を置いたポートを介してインラインミキサに送達される。
【0027】
いくつかの実施形態では、高圧は少なくとも約70MPaである。いくつかの実施形態では、高圧は少なくとも約140MPaである。いくつかの実施形態では、高圧は少なくとも約207MPaである。
【0028】
いくつかの実施形態では、第2のストリームの流量と第1のストリームの流量との比が少なくとも約2:1である。いくつかの実施形態では、第2のストリームの流量と第1のストリームの流量との比が少なくとも約3:1である。いくつかの実施形態では、第2のストリームの流量と第1のストリームの流量との比が少なくとも約10:1である。
【0029】
いくつかの実施形態では、マイクロリアクタは、10~500ミクロンの範囲の最小寸法を有するチャネルを有する。いくつかの実施形態では、マイクロリアクタチャネル内の平均流体速度が300~500m/sの範囲にある。いくつかの実施形態では、マイクロリアクタにおいてもたらされる剪断速度が少なくとも約1.2×106s-1である。いくつかの実施形態では、マイクロリアクタは単一の形状を有する。
【0030】
本開示によれば、所望の混合及び相互作用を、供給ストリーム構成成分の間で、マイクロ及び/又は分子レベルにて達成する、マイクロリアクタ技術を促進し実用化するマイクロスケールの装置、システム及び装置が提供される。開示された装置、システム及び方法は、エネルギー散逸メカニズムの多様な度合いでの混合強度及び制御が可能にし、それにより、分子/化合物の構成成分の間の表面及び界面を形成する際に有用な作用を最大化することができる。本発明の開示によれば、他の方法ではプロセス非効率から生じ得るシステムエントロピーを有利に低減させることが可能となる。かかるエントロピー低減は、それ自体非常に有益であるが、また、熱、音、光及びキャビテーションへのエネルギー損失の最小化につながる。実際、低減されたシステムエントロピーは、有利に、更に成分のダメージを低減する傾向へと導く。
【0031】
また、開示された装置、システム及び方法は、処理の強化を促進し及び/又はサポートし、それにより、操作ステップ、例えば、混合、反応及び分離ユニット操作などのスケールの減少及び一体化の双方によって、ユニット操作及びプロセスを小型化するのに好都合である。更に、開示された装置を用いるプロセス、システム及び方法は、向上した効率及びコスト効果を提供する。加えて、開示された装置、システム及び方法の、好適な例/実施形態は、携帯性が要求される環境での機能に適用され、それにより、アプリケーション及び使用時間に関して、向上された柔軟性が提供される。
【0032】
前記開示された装置、システム及び方法は、プロセス経路及び速度を決定/制御する、エネルギーインプット及び消失メカニズムの精確な制御によって、先行技術による制限を乗り越えることを実現した。例えば、本開示における好適な実施においては、溶媒の構成組成は、混合性の貧溶媒を追加する、等の超飽和状態に作用するために用いられる。本開示における更なる好適な実施においては、有利な薬剤ナノ懸濁液を生成するために、開示された装置/システムとともに、溶媒/貧溶媒の結晶化の技術を採用するプロセス/方法を提供する。文献中に報告された、マイクロ混合モデルと比較すると、開示された反応チャンバ/マイクロリアクタにおける、乱流エネルギーの消失率は、107W/kg以上の程度である。開示された装置/システムは、よって、1ms程度の反応チャンバにおいて、名目上の滞留時間で、急速なマイクロ混合(時間スケール4μs)及びメソ混合(時間スケール20μs)を達成する。加えて、ナノメータースケールにおける混合によって、結晶化及び成長の主要な制御ファクタである均一な超飽和比が達成される。溶媒及び貧溶媒の混合のタイミング及びロケーションを制御することにより、核生成プロセスの開始が制御される。この制御の結果として、均質な超飽和比との組み合わせで、望ましく均一な結晶成長及び安定率となる。
【0033】
開示された装置及びシステムの使用/実施から、多数のプロセスが恩恵を受けるであろう。特に、プロセスの実施は、少なくとも部分的には、相互作用の表面及び界面の形成/確立のために望ましく向けられたインプットエネルギーの程度を最大化する能力に基づいて、利点がある。本開示によって達成される乱流及び表面張力は、ナノスケール事象、例えば、結晶成長のための均質な核生成部位を生成/確立するため、安定的なナノエマルジョン及び十分な分子クラスタリングの形成、等を開始する際に、有利に効果的である。本開示の好適な応用/実施はまた、競合反応のネットワークにおける選択性の強化、分散した固体(反応沈殿、結晶化及び/又はデクラスタリングからか否か、にかかわらず)のサイズの制御、結晶性の薬多形体選択性の制御、及び活性成分のカプセル化によるシャペロンシステムの形成等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
前述の現象は、物質の移動速度/性能により制限及び/又は制御される反応/システム用の重要なパラメータである。従って、本開示は、高度の局所的超飽和による結晶の成長のための均質な核生成部位となる重要なサイズ化されたクラスターの形成を有利に促進する。かかる核生成部位は、分子拡散プロセス形成表面、それらの成長率、多様な分子種から表面への統一化、及び形成された粒子の最終的なサイズ及び純度に影響を及ぼす。
【0035】
前述の分子種は様々な多形体を形成することがあり、また、所望の形態が、例えば、マイクロリアクタ設計、マイクロリアクタ形状、高圧ポンプによって生ずる圧力、超飽和比率、溶媒、貧溶媒、温度及びそれらの組み合わせなどの操作パラメータの操作を通して得られ得る。多相反応系における物質移動の限度は、本開示、例えば、バイオディーゼルの製造等によって克服される。その理由は、液体反応剤が、互いに制限された溶解度を有し、このため、界面反応が初期の“誘導期”の間に起こるはずだからである。かかる界面反応速度は、1つの相から他の相への小さな液滴が分散することによって向上され、体積に対する界面の表面領域の比率が大いに改良される。
【0036】
固体粒子が含まれる異質な反応の際、同様の現象が指摘される。特に、表面積対体積の増大は、表面が触媒的か反応的であるかによって、表面領域の利用可能性に比例して入れ替わり率を加速させる。更に、境界相レジスタンスが粒径の減少に伴って減少し、再度それらの基本的な/固有の速度まで、反応速度を促進させる。ナノスケールサイズの液滴は熱力学的に不安定ではあるが極めてゆっくりした動力学反応により長期にわたるタイムスケールで存在するため、この現象は、表面活性剤のあるなしにかかわらず、例えば、下流抽出、吸収、及び、吸着プロセスのため、及び安定したエマルジョンの形成のため、界面の物質移動が下流分離プロセスを制限する際にも適用可能である。
【0037】
例えば、非混合性流体を含むシャペロンシステム、又は連続相からの分離の要件(例えば、画像化及び/又は薬剤送達のための標的化における)は、カプセル化された表面活性剤を用いる本開示によって容易に用意され、処理ベシクルの間の潜在的な熱効果を最小化することによって、タンパク質機能によるもののような、易熱性の表面活性剤を用いることができる。開示された反応チャンバに関連する高剪断力は、処理時に剪断細線化又は増大化挙動が活用される際、有利である。
【0038】
加えて、本開示は、とりわけ、栄養補助剤、薬剤、及び化粧料において、親水性の環境での拡散を目的とする、両方の形態を持つ界面活性剤内での疎水性物質のナノスケールに至るまでのカプセル化を促進する(又は逆もまた同様)。カプセル化はまた、膜の機能化、及び、「スマート」特性(“smart”characteristics)、例えば、(a)ガードシステムにおける金属イオン封鎖剤、(b)再生医療アプリケーションにおける成長因子の放出の制御、(c)溶解性のガス移送強化、(d)一般的なセンサ/記録システムなどの提供において有用である。開示された装置/システム及び方法は、高速プロセス及び低速プロセスのいずれを促進させるのに用いられてもよく、また、例えば、結晶化のような化学反応及び物理プロセスの促進に用いられてもよい。
【0039】
更に、本開示は、エマルジョン及び沈殿法の双方を使って、50~500nmの範囲で、ポリマーナノ懸濁液の製造を有利に促進する。処理パラメータを制御することにより、多種のポリマーサイズ及び密度を有するナノ懸濁液が生成される。開示されたシステム/方法は、ポリメリックマトリックス内にカプセル化された又は含まれた活性薬学的内容物(API)の製造に用いられてもよい。この意味で、ポリメリックマトリックスは、かかるAPIのための「シャペロン」として機能する。このポリメリックマトリックスは、一般に、アモルファスであって、生体適合性の及び/又は生体吸収性の製品として、有利に定義される。かかる処理技術の供給ストリームは、モノメリック成分、ポリメリック成分、又はそれらの組み合わせを含んでよい。
【0040】
処理計画の例示的な処理ロードマップは、開示された装置/システムを使用して開発することができる。例えば、薬剤結晶化のロードマップは次のように作成され得る:(i)溶解性、毒性、適合性、スクリーニング実験などの適用可能な入力基準に基づいて、溶媒、貧溶媒、及び界面活性剤の構成成分を決定し、(ii)選択された溶媒、貧溶媒及び界面活性剤構成成分を開示された装置/システムに導入して、適用可能なプロセス変数、例えば、マイクロリアクタチャンバの設計、圧力及び超飽和比に基づいて有利なナノ懸濁液を生成し、(iii)ナノ懸濁液を精製して(必要な場合)、例えば、遠心分離機、フィルタ、すすぎ、及び/又は凍結乾燥技術を使用して、結晶化した薬剤を回収する。開示されたロードマップを使用して、所望の粒径及び粒径分布によって特徴付けられる結晶化粒子を生成し得る。
【0041】
より一般的には、ロードマップは、本開示に従って、様々な処理計画のために開発及び実施され得る。例示的な方法は、とりわけ、
a.プロセスストリームを一緒に規定する溶媒又は第1の反応剤/連続相、及び貧溶媒又は第2の反応剤/分散相を特定すること、
b.プロセスストリームの所望の安定性/制御を達成するための界面活性剤(1又は複数)の必要性を判断すること、
c.溶媒又はプロセスストリーム/分散相内の標的分子/種又は反応剤の濃度、及び溶媒/貧溶媒又は反応剤/連続相/分散相の比率を決定して、例えば、結晶化メカニズム、反応メカニズム、エマルジョンメカニズム、コーティングメカニズムなど関連するメカニズムを駆動するための所定のレベルの超飽和又は接触能率/効率を達成すること、
d.プロセスストリームに(1又は複数の)所定量のエネルギーを導入すること、
e.システム内の指定された場所でのエネルギー散逸メカニズム(1又は複数)を調整すること、
f.ナノスケールで拘束された体積において溶媒/貧溶媒、反応剤、又は連続/分散相を接触させて、所望の特性の生成物、例えば、所望の粒径分布、形態、組成、及び/又はそれらの組み合わせを有する生成物を送達すること、を含み得る。
【0042】
本開示は、利用されてきた当技術分野の他のアプローチと比較して他の利点を提供する。いくつかの実施形態による装置、システム、及び方法の1つの利点は、そのような装置、システム、及び方法が、流量及び2つのストリームの流量比をリアルタイムで調整する能力と組み合わせて、高精度の各ストリームの所望の流量及び2つのストリームの流量比をもたらし、これにより、所望の配合を有するマイクロ粒子又はナノ粒子が得られることである。別の実施形態による利点は、滞留時間、従って2つのストリームの相互作用時間を自由に変えることができることであり、これにより、システムは、長い相互作用(数十秒)を必要とするプロセス及びより短い相互作用を必要とするプロセス(10秒未満)に適することができる。別の実施形態による利点は、マイクロリアクタに入る均質な材料が、均一な条件下で行われるプロセスをもたらすことである。従って、最終製品は、粒径、粒子組成、及び構造の点で均一である。本開示に記載されている全ての利点は、所望の流量、流量比、及び最終製品の製造における均一な条件を維持しながら、プロセスをスケールアップする能力を改善する。
【0043】
開示された装置、システム及び方法の更なる有利な特長、機能及び実施は、特に、添付の図と関連させて読み取られる以下の記載から、明白である。
【0044】
実施形態の上記の態様は、添付の図面と併せて行われる実施形態の以下の説明を参照することによって、より明白になり、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本開示の一実施形態による、少なくとも2つの液体供給ストリームを連続的に処理するためのシステムを示す。
【0046】
【
図2】本開示の一実施形態による、少なくとも2つの液体供給ストリームを連続的に処理するためのシステムを示す。
【0047】
【
図3】本開示の一実施形態による、少なくとも2つの液体供給ストリームを連続的に処理するためのシステムを示す。
【0048】
【
図4】本開示の一実施形態によるインラインミキサを示す。
【0049】
【
図5】本開示の一実施形態によるインラインミキサを示す。
【0050】
【
図6】本開示の一実施形態による、少なくとも2つの液体供給ストリームを連続的に処理するためのシステムを示す。
【0051】
【
図7】本開示の一実施形態によるマイクロリアクタを示す。
【0052】
【
図8】本開示の一実施形態による、少なくとも2つの液体供給ストリームを連続的に処理するためのシステムを示す。
【0053】
【
図9】本開示の一実施形態による、少なくとも2つの液体供給ストリームを連続的に処理するためのシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本開示は、様々な混合及び/又は反応現象を向上及び/又は促進すべく、特定のチャンバ、すなわちマイクロリアクタ内の構成成分の効果的な接触/相互反応を達成するための、有利な、システム及び方法を提供する。下記の示すのは、好適なシステム設計及び実施の詳述であって、それらによって達成される好適な実施及び利益的な結果も含んでいる。本開示のシステム及び方法は、好適な例及び実施を参照して詳述されており、本開示は、これら具体例に何ら限定されないことが理解される。むしろ、開示された装置、システム及び方法は、多様な物理的形態をとることができ、本開示の精神又は範囲から逸脱せずに、多数の処理スキームや環境にも適用することが可能である。
【0055】
A.装置/システム設計の好適例及び方法の好適例
ここで
図1を参照すると、本開示による、少なくとも2つの液体供給ストリームを連続的に処理するための例示的なシステム100が概略的に示されている。システム100は、保持タンク102及び保持タンク104を含む。いくつかの実施形態では、保持タンク102及び保持タンク104はオプションの機器である。保持タンク102は、第1の液体ストリーム130を保持するように適合されている。保持タンク104は、第2の液体ストリーム132を保持するように適合されている。保持タンク102は、第1の供給ライン108を介してポンプ106に接続される。いくつかの実施形態では、ポンプ106は、計量ポンプ、容積型ポンプ、シリンジポンプ、蠕動ポンプ、又はピストンポンプである。ポンプ106は、第1の供給ライン108を介してインラインミキサ112の第1のポート110に接続される。保持タンク104は、第2の供給ライン116を介してインラインミキサ112の第2のポート114に接続される。
【0056】
インラインミキサ112は、第1のポート110及び第2のポート114を含む。インラインミキサ112はまた、混合要素118を含む。いくつかの実施形態では、インラインミキサは、いくつか例を挙げると、Tミキサ、バッフルを備えた静的ミキサ、ロータ・ステータミキサ、プロペラミキサ、同軸オリフィス又は超音波ミキサである。このようなインラインミキサには、様々なエネルギーレベル及び混合強度がある。インラインミキサ112は、導管122を介して高圧ポンプ(図示せず)に接続される。高圧ポンプ(図示せず)は、導管122を介してマイクロリアクタ120に接続される。マイクロリアクタ120は、導管126を介して熱交換ユニット124に接続される。熱交換ユニット124は、導管126を介して収集タンク128に接続される。いくつかの実施形態では、熱交換ユニット124はオプションの機器である。いくつかの実施形態では、マイクロリアクタ120は、熱交換ユニット(図示せず)を含み、そのような実施形態では、熱交換ユニット124は不要である。
【0057】
例示的な実施形態では、ポンプ106は、第1の供給ライン108を介して、第1の液体ストリーム130をインラインミキサ112の第1のポート110に下流にポンプ輸送することができる。いくつかの実施形態では、ポンプ輸送は、指定された期間内に、正確な体積流量を提供して、正確な量の第1の液体ストリーム130を移動させる。いくつかの実施形態では、ポンプ106を利用して、能動的に自動的に制御される速度で、第1の液体ストリーム130を下流のインラインミキサ112にポンプ輸送する。いくつかの実施形態では、能動的に自動的に制御される速度は、個別に制御されるポンプ106の動作に基づいて達成される。第2の液体ストリーム132は、第2の供給ライン116を介して第2のポート114を通って下流に流れる。いくつかの実施形態では、第2の液体ストリーム132の流量は、マイクロリアクタ120のポンプ輸送作用によって間接的に制御される。第1の液体ストリーム130及び第2の液体ストリーム132は、本開示によれば、様々な形態を取り、様々な特性を示し得る。いくつかの実施形態では、第1の液体ストリーム130及び第2の液体ストリーム132は、多相流体、混合性流体、又は非混合性流体であり得る。いくつかの実施形態では、第1の液体ストリーム130及び第2の液体ストリーム132は、粒子を含むことがある、及び/又は互いに反応する構成成分を含むことがある。いくつかの実施形態では、第1の液体ストリーム130及び第2の液体ストリーム132がシステム100に導入される前に処理及び/又は貯蔵される方法は多種多様であり、開示されたリザーバ及び供給ラインは単に反応剤/流体の流れの前処理取り扱い/貯蔵の例示である。いくつかの実施形態では、ポンプ(図示せず)を使用して、第2の液体ストリーム132を第2のポート114を通して下流に送達する。第1の液体ストリーム130及び第2の液体ストリーム132はそれぞれ、所定の流量及び組成を有する。いくつかの実施形態では、ポンプ106は、第1の液体ストリーム130の流量を調整するために使用される。いくつかの実施形態では、バルブ又はオリフィス(図示せず)を使用して、第1の液体ストリーム130及び/又は第2の液体ストリーム132の流量を調整する。
【0058】
第1の液体ストリーム130及び第2の液体ストリーム132は、インラインミキサ112内で混合して、実質的に均質な混合物134を形成する。本明細書で使用される場合、「実質的に均質な混合物」という用語は、混合物の任意の所与のサンプル全体にわたってその構成成分の同じ又は実質的に同様の比率を有する2つの液体ストリームの混合物を意味する。例えば、2つの液体ストリームの混合物の体積を半分に分割する場合、同じ又は実質的に同様の量の構成成分が各半分に存在する。いくつかの実施形態では、2つの液体ストリームの混合物中の構成成分の組成は、混合物中の構成成分の平均組成よりわずかに上又は下で変動し得る。
【0059】
インラインミキサには以下の二重の機能がある:(a)インラインミキサは、マイクロリアクタ120に導入されて更に混合されることができる実質的に均質な混合物134を形成する、及び(b)インラインミキサにおいて開始する様々なプロセス(すなわち、結晶化、化学反応など)は、マイクロリアクタ120の出口で所望の完了状態に到達するのに十分な時間を有する。一般に、インラインミキサ112は、ナノ粒子136を生成するのに十分な高エネルギーを提供しないが、マイクロリアクタ120が、ナノ粒子136を作成するために使用される。従って、実質的に均質な混合物134は、マイクロリアクタ120が20nmという低い乱流渦を有する乱流場を生成するので、マイクロリアクタ120によって処理される。第1の液体ストリーム130及び第2の液体ストリーム132が互いに反応する種を含む場合、化学反応がこれらの渦の内部で起こり、ナノメートルサイズの粒子をもたらすことがある。第1の液体ストリーム130及び第2の液体ストリーム132が非混合性である場合、液体ストリーム130又は132の一方は、他方の液体に分散されるナノサイズの液滴を形成し得る。界面活性剤を使用する場合、液滴は安定化され、長い貯蔵寿命を有するナノエマルジョンを形成し得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、インラインミキサ112は、その中で第1の液体ストリーム130及び第2の液体ストリーム132が混合して実質的に均質な混合物134を形成し得る十分な長さの管(図示せず)に交換される。そのような実施形態では、混合は、分子拡散及び/又は乱流の結果である。いくつかの実施形態では、完全な混合に必要な時間は、管内の速度、管内のフローのタイプ(乱流又は層流、単相又は多相)、管の寸法、種の拡散係数やその他の物理的特性、並びに圧力及び温度の結果として計算され得る。
【0061】
例示的な実施形態では、実質的に均質な混合物134は、インラインミキサ112から導管122を介して高圧ポンプ(図示せず)に下流にポンプ輸送される。高圧ポンプは、一般に、実質的に均質な混合物134を高圧、例えば、最大40,000psiの圧力に加圧するのに効果的である。本明細書で使用される場合、「高圧ポンプ」という用語は、高圧出力ストリーム、例えば、500~40,000psi以上を送達するように適合された高圧ポンプを指す。いくつかの実施形態では、高圧ポンプは、増圧ポンプ又はピストンである。一実施形態による例示的な高圧ポンプは、油圧ポンプと、内部のシステム圧力を増大させるピストンとを含む。従って、そのような実施形態では、油圧ポンプは、約1500~3500psiの圧力を生成するのに有効であることがあり、ピストン機構は、そのような圧力を10倍から30倍の係数で乗算するのに有効であり得る。圧力アセンブリ内の各ピストンは、本開示の目的のために別個の高圧ポンプと見なし得る。本開示のいくつかの実施形態による例示的な高圧ポンプは、キャビテーションを回避し、それにより、それに関連する潜在的なエネルギー散逸を最小限に抑える。
【0062】
実質的に均質な混合物134は、高圧ポンプ(図示せず)から導管122を介してマイクロリアクタ120に下流にポンプ輸送される。マイクロリアクタ120のポンピング作用は、第2の液体ストリーム132をインラインミキサ112に引き込む(すなわち、第2の液体ストリーム132のインラインミキサ112への流れを引き起こす)。いくつかの実施形態では、マイクロリアクタ120は、マイクロリアクタ120のポート(図示せず)で特定の圧力を維持するポンプ(図示せず)を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、マイクロリアクタ120は、Microfluidics(米国マサチューセッツ州Westwood)、DyHydromatics(米国マサチューセッツ州Maynard)及びBEEI(米国マサチューセッツ州South Easton)などの固定形状、Niro Soavi(イタリア、Parma)、APV(PPXFLOW/英国)、Avestin(カナダ)などのバルブホモジナイザを含むがこれらに限定されない任意の市販の高圧ホモジナイザである。高圧ホモジナイザは高エネルギーレベルの混合装置であるため、ナノ粒子を生成することができる。例示的な実施形態では、マイクロリアクタ120は、ナノ粒子136を生成する。様々なホモジナイザは、様々な用途に適合するか、又は適合しない様々な特性がある。
【0064】
ナノ粒子136は、マイクロリアクタ120から導管126を介して熱交換ユニット124に流れる。熱交換ユニット124は、ナノ粒子136を冷却するために利用される。ナノ粒子136は、熱交換ユニット124から導管126を介して収集タンク128に流れる。混合は、沈殿、結晶化、乳化、又は化学反応を含む、ナノ粒子136の形成に関与する現象の速度に大きく影響する。これらのプロセスは、マイクロリアクタ120の出口で完了する必要がある。そのようなプロセスがマイクロリアクタ120の出口で完了しない場合、ナノ粒子136は、マイクロリアクタ120の後に制御不能に成長し続けるであろう。意図されたプロセスの完了を達成するために、第1の液体ストリーム130及び第2の液体ストリーム132は、マイクロリアクタ120内で処理される前に十分な接触時間を有するべきであり、これは、インラインミキサ112を介する2つの液体ストリーム130及び132の混合物の均一性と、インラインミキサ112及びマイクロリアクタ120の間の導管122の寸法とを制御することによって促進される。
【0065】
例示的な実施形態では、高圧ポンプ(図示せず)と組み合わせたポンプ106は、2つのストリームの流量比を制御する。システムの様々な場所で流体に入力されるエネルギーは、流路の形状によって制御される。従って、エネルギー散逸は、有利な配管設計/配置、マイクロリアクタ120の設計/形状、及びマイクロリアクタ120の下流に配置された熱交換ユニット124の設計/配置によって制御/最小化され得る。典型的には、エネルギー散逸は、マイクロリアクタ120の設計/形状、例えば、それに関連する乱流及び/又は剪断によって最も強く影響される。
【0066】
ここで
図2を参照すると、本開示による、少なくとも2つの液体供給ストリームを連続的に処理するための例示的なシステム200が概略的に示されている。インラインミキサ112は、導管122に接続される。導管122は導管204に接続する。導管204は、オーバーフロータンク202に接続する。例示的な実施形態では、オーバーフロータンク202は、任意選択で、インラインミキサ112の前及び/又は後に配置され得る。いくつかの実施形態では、オーバーフロータンク202は、インラインミキサ112及びマイクロリアクタ120の両方が最大能力で動作することを確実にするために使用される。いくつかの実施形態では、ある量の実質的に均質な混合物134が、導管122から導管204を介してオーバーフロータンク202に流入する。
【0067】
ここで
図3を参照すると、本開示による、少なくとも2つの液体供給ストリームを連続的に処理するための例示的なシステム300が概略的に示されている。ポンプ106は、第1の供給ライン108を介してインラインミキサ112の第1のポート110に接続される。逆止弁302は、ポンプ106とインラインミキサ112との間の第1の供給ライン108上に配置されている。第2の供給ライン116は、インラインミキサ112の第2のポート114に接続される。逆止弁304は、インラインミキサ112の第2のポート114の前の第2の供給ライン116上に配置されている。インラインミキサ112は、導管122を介してマイクロリアクタ120に接続される。逆止弁306は、インラインミキサ112とマイクロリアクタ120との間の導管122上に配置されている。逆止弁302、304、及び306は、第1の液体ストリーム130、第2の液体ストリーム132、及び/又は実質的に均質な混合物134の逆流を防ぐために使用される。いくつかの実施形態では、逆止弁302、304、及び306はオプションの機器である。
【0068】
ここで
図4を参照すると、本開示による例示的なインラインミキサ400が概略的に示されている。インラインミキサ400は、バッフル402を含む。いくつかの実施形態では、バッフル402は、インラインミキサ400で使用されて、第1の液体ストリーム130と第2の液体ストリーム132との間の相互作用のための接触面積を増加させる。いくつかの実施形態では、バッフル402は、本開示のシステムによって要求されるように、所望の流体力学的プロファイル、応力レベル、及び熱伝達を達成するために利用される。
【0069】
ここで
図5を参照すると、本開示による例示的なインラインミキサ500が概略的に示されている。インラインミキサ500はTミキサである。第1の液体ストリーム130は、インラインミキサ500の第1のポート110にポンプ輸送される。第2の液体ストリーム132は、インラインミキサ500の第2のポート114に流れる。第1の液体ストリーム130及び第2の液体ストリーム132は、それぞれ、第1のポート110及び第2のポート114を介してインラインミキサ500に入る。インラインミキサ500は、第1の液体ストリーム130及び第2の液体ストリーム132を混合して、実質的に均質な混合物134を形成する。
【0070】
ここで
図6を参照すると、本開示による、少なくとも2つの液体供給ストリームを連続的に処理するための例示的なシステム600が概略的に示されている。ポンプ106は、第1の供給ライン108を介して同軸オリフィス602の第1のポート606に接続される。同軸オリフィス602は、第1の同軸管610及び第2の同軸管612を含む。第2の供給ライン116は、同軸オリフィス602の第2のポート608に接続される。第1の同軸管610及び第2の同軸管612は、インラインミキサ604の第3のポート614に接続する。インラインミキサ604は、第3のポート614を含む。
【0071】
第1の液体ストリーム130は、第1の供給ライン108を介して同軸オリフィス602の第1のポート606にポンプ輸送される。第2の液体ストリーム132は、第2の供給ライン116を介して同軸オリフィス602の第2のポート608に流れる。第1の液体ストリーム130及び第2の液体ストリーム132は、それぞれ、第1のポート606及び第2のポート608を介して同軸オリフィス602に入る。第1の液体ストリーム130は第1の同軸管610に入り、第2の液体ストリーム132は第2の同軸管612に入る。第1の同軸管610及び第2の同軸管612内にある間、第1の液体ストリーム130及び第2の液体ストリーム132はそれぞれ、互いに別々に流れている。第1の液体ストリーム130及び第2の液体ストリーム132が第3のポート614を介してインラインミキサ604に入った後、インラインミキサ604は、第1の液体ストリーム130及び第2の液体ストリーム132を混合して、実質的に均質な混合物134を形成する。マイクロリアクタ(図示せず)と比較して、インラインミキサ604は、桁違いに低いエネルギーレベルを有する。
【0072】
いくつかの実施形態では、本開示のシステムの様々な構成要素/機器は、1つ又は複数のプロセッサ及び1つ又は複数のメモリデバイスを有するコントローラを含む制御システムによって制御され得る。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のメモリデバイスはそれに格納された命令を含むことがあり、これは、本開示のシステムによって実行される様々な機能及び動作を制御するために、1つ又は複数のプロセッサによって実行可能である。
【0073】
ここで
図7を参照すると、本開示による例示的なマイクロリアクタ700が概略的に示されている。マイクロリアクタ700は、数千又は数万psiの高圧を生成するポンプ機構を含む。本明細書で使用される場合、「マイクロリアクタ」という用語は、「反応チャンバ」、「相互作用チャンバ」、及び「処理モジュール」と同義である。マイクロリアクタ700はまた、通常10~5000ミクロンの小さな寸法の通路を含む処理モジュールを含む。マイクロリアクタ700で利用され得る様々なポンプシステムがあり、設計及び操作の原理が異なる。マイクロリアクタ700の形状は、所望の剪断場及び/又は剪断力をもたらすために様々な形態をとることがある。例えば、マイクロリアクタ700は、(i)「Z」若しくは「L」タイプのシングルスロット形状、(ii)「Y」若しくは「T」タイプのシングルスロット形状、(iii)「Z」若しくは「L」タイプのマルチスロット形状、又は(iv)「Y」若しくは「T」タイプのマルチスロット形状によって特徴付けられ得る。「Z」タイプ及び「Y」タイプという用語は、Microfluidicsの反応チャンバ形状を指す。「L」タイプ及び「T」タイプという用語は、DyHydromatics(マサチューセッツ州Maynard)の反応チャンバ形状を指す。前述のマイクロリアクタの形状のそれぞれは、当技術分野で知られており、一般に、それに導入された反応剤/構成成分間の相互作用のための高剪断場を提供するように適合されている。マイクロリアクタ700は、マイクロリットルのスケールの内部容積を有し、マイクロチャネル内の平均速度は、500m/sに達するか、及び/又はそれを超えることがある。マイクロリアクタ700に関連する速度の大きさ及び/又は方向の変化は、実質的に均一な高剪断場をもたらす。開示された反応チャンバ/マイクロリアクタで達成された高い乱流は、ナノメートルレベルでの混合/接触を有利に促進する。開示されたマイクロリアクタ700は、一般に、ナノスケール混合、小粒径分布、及び高再現性/拡張性を生ずるために効果的である。
【0074】
固定形状ホモジナイザは、バルブホモジナイザで生成される材料のサイズよりも小さい粒径及び狭い粒径分布の材料を生成することが知られている。ただし、バルブホモジナイザ内での流体の接触時間は、一般に固定形状のホモジナイザの場合よりも短くなる。従って、比較的高速な処理は、インラインミキサとホモジナイザとの間の導管の寸法を最小化することに加えて、バルブホモジナイザから利益を得る可能性がある。この違いの理由は、これらのホモジナイザが使用する高圧を生成するための異なるポンプ機構である。固定形状のホモジナイザは通常、定圧ポンプ機構を使用する。これらは、最初に流体を圧縮し、次にその流体を処理モジュールにポンプ輸送するピストン/増圧器である。従って、各増圧器を通るフローは断続的であり、流体の接触時間は比較的長い。ただし、バルブホモジナイザは定量ポンプ機構を使用している。これらは高圧ポンプであり、ホモジナイザを介して連続的なフローを生成し、結果として生じる滞留時間は比較的短い。
【0075】
非混合性流体の混合を強化する処理モジュールがあるが、他のモジュールは固体粒子の剪断を強化する。更に、流体のキャビテーションを可能にする処理モジュール構成があるが、キャビテーションを抑制する構成もある。従って、エマルジョンの場合、非混合性流体の混合を強化する処理モジュールを選択してもよい。キャビテーションを可能にする処理モジュール構成は、生物製剤などの敏感な材料に損傷を与える可能性があるため、このような用途では、このような構成を避ける必要がある。
【0076】
以下を含むがこれらに限定されない、システムのいくつかのパラメータを制御して、本開示のいくつかの実施形態による、所望の特性を有する調整されたナノ粒子を生成することができる:
-実質的に均質な混合物の粒径は、インラインミキサの乱流エネルギー散逸率(乱流混合強度)に依存する。各タイプのミキサには固有の率があり、これはインラインミキサの操作パラメータを調整することで更に制御され得る。このような操作パラメータには、インラインミキサの形状及び個々の液体ストリームの流量が含まれる。
-インラインミキサとマイクロリアクタとの間の導管の形状は、液体ストリームの接触時間に影響する。遅いプロセスは、速いプロセスよりも長い時間を必要とするため、より長い導管を必要とする。
-更に、インラインミキサとマイクロリアクタの内部形状も接触時間に影響する。
-マイクロリアクタは、(i)流体に与えられるエネルギーの尺度である圧力、及び(ii)マイクロリアクタの処理モジュールの形状によって最終的な粒径に大きく影響する。マイクロリアクタの処理モジュールには、デバイスの種類やメーカーによって様々な名称が付けられている。例えば、バルブホモジナイザでは、処理モジュールは均質バルブと呼ばれる。Microfluidicsはその処理モジュールを相互作用チャンバと名付け、DyHydromaticsはそれらの処理モジュールを反応チャンバと名付ける。処理モジュールを説明するために一般的に使用される別の名称は、マイクロリアクタである。
-システム全体の流体の温度は、最終製品に影響を与える。
【0077】
本開示の装置、システム、及び方法によって生成することができる材料のタイプには、いくつか例を挙げると、ナノエマルジョン、ナノ分散液、リポソーム(半固体)、脂質ナノ粒子(半固体)、結晶性又はアモルファス材料、固体、半固体、又は液体のマトリックスに成分が埋め込まれた粒子複合体、固体、半固体、又は液体の成分によってカプセル化された成分を含む粒子複合体、ポリマー粒子、及び高純度の化学物質(必ずしも粒子を含まない)が含まれる。このような材料は、一般に、2つの液相を作成し、相を混合することによって製造される。いくつかの実施形態では、相は混合性である。いくつかの実施形態では、相は非混合性である。大部分が疎水性又は大部分が親水性の構成成分を含む実施形態では、相は「油相」及び「水相」と呼ばれる。
【0078】
いくつかの実施形態において、油相は、植物油(大豆油、オリーブ油、ヤシ油、トウモロコシ油、カノーラ油、ゴマ油、米油、精製植物油、オメガ3脂肪酸が豊富な油、及び藻類油を含むがこれらに限定されない)、ナッツ油、動物油(魚油を含むがこれに限定されない)、無機油(鉱油、FC43及びパーフルオロデカリンを含むがこれらに限定されないパーフルオロカーボン油を含むがこれらに限定されない)、脂質(卵リン脂質、レシチン、ホスファチジルコリン、コレステロール、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、カチオン性脂質、及びアニオン性脂質を含むがこれらに限定されない)、修飾又は官能化脂質(大豆レシチンからの水素化ホスファチジルコリン、N-(メチルポリオキシエチレンオキシカルボニル)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、及びナトリウム塩(DSPE-PEG)を含むがこれらに限定されない)、ワックス(ミツバチワックス、パラフィンワックスを含むがこれらに限定されない)、界面活性剤(Tween(登録商標)、Span(登録商標)、188などのポロキサマー、ポリエチレングリコール(15)-ヒドロキシステアラートなどのSolutol(登録商標)、ブロックコポリマーを含むがこれらに限定されない)、ポリマー(ポリ乳酸(PLA)、ポリラクチド-co-グリコリド(PLGA)、ポリイプシロン-カプロラクトン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリラートなどのアクリル、架橋ポリマー、アルギン酸塩、及びポリマーの混合物を含むがこれらに限定されない)、有効成分(医薬品、栄養補助食品、薬用化粧品、小分子、タンパク質、ペプチド、RNA及びDNA、ビタミンE及びKなどの抗酸化剤、大麻製品(CBD/THC)、癌治療薬、麻酔薬、眼科薬、抗生物質、及び吸入薬を含むがこれらに限定されない)、香料及び着色料(天然又は合成香料油)、アルコール(エタノール、メタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、及びプロパノールを含むがこれらに限定されない)、有機溶媒(アセトン、DMSO、アルコール、酢酸エチル、塩化エチレン、ヘキサン、トルエン、及び様々な分子量のポリエチレングリコールを含むがこれらに限定されない)、及び/又はフッ素化、ペグ化臭素化、及び水素化を含むがこれらに限定されない、前述の構成成分のいずれかの誘導体から選択される油相構成成分を含み得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、水相は、水、脂質(卵リン脂質、レシチン、ホスファチジルコリン、コレステロール、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、ステロール、中性脂質、カチオン性脂質、及びアニオン性脂質を含むがこれらに限定されない)、修飾又は官能化脂質(大豆レシチンからの水素化ホスファチジルコリン、N-(メチルポリオキシエチレンオキシカルボニル)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、及びナトリウム塩(DSPE-PEG)を含むがこれらに限定されない)、界面活性剤(Tween(登録商標)、Span(登録商標)、188及び407などのポロキサマー、ポリエチレングリコール(15)-ヒドロキシステアラートなどのSolutol(登録商標)、ブロックコポリマー、多糖類、カゼイン、レシチン、ホエイプロテイン、ゼラチン、モノ及びジ-グリセリド、蒸留モノグリセリドのアセチル化、スクシニル化及びジアセチル化酒石酸エステル、ラクチル化エステル、ソルビタンエステル、ポリソルベート、プロピレングリコールエステル、スクロースエステル、及びポリグリセロールエステルなどの誘導体を含むがこれらに限定されない)、粘度調整剤(グリセロールを含むがこれに限定されない)、pH調整剤(水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、クエン酸、塩酸、硝酸、酢酸、及び緩衝液を含むがこれらに限定されない)、並びに糖(スクロース、フルクトース、多糖類、及びデンプンを含むがこれらに限定されない)から選択される水相構成成分を含み得る。
【0080】
下流のマイクロリアクタ内で、供給ストリームの間で、変化し得る/所望の比を達成するために、各々の開示されたシステム設計が、本願の開示によって有利に採用され得る。
【0081】
B.好適なプロセス実施
開示された装置/システムは、広い範囲の応用及び/又は実施、例えば、粒径低減への応用(例えば、エマルジョン及びサスペンジョンへの応用)、細胞破壊への応用(例えば、大腸菌及び酵母への応用)、及び反応への応用(例えば、結晶化への応用)に使用されてもよい。様々な好適な応用/実施が、本明細書において以下に述べられる。しかしながら、そのような好適な応用/実施は、単に例示であって、本願の開示の範囲に関して限定するものではない。
【0082】
本明細書において以下に示す「例」によって本願の開示の特定の好適な実施を説明する前に、開示された装置/システムへの適用可能性を有する複数の広範な原則及びそれらの応用について説明される。これらの広範な原則は、本願の開示にかかるオペレーションを特定し、評価し、実施し及び/又は向上させるために使用されてよい。
【0083】
(1)物理的なプロセス
本願の開示にかかる、促進され及び/又は支持され得る物理的なプロセスの例は、結晶化プロセス、沈殿プロセス、エマルジョン形成プロセス、粒子コーティングプロセス及び粒子混合プロセスを含む。概して、前述のプロセスにとって、ナノメートルスケールでの分子相互作用が有効である。これらのプロセスのそれぞれは、すでに当業者にとって明らかであるように、異なる方法及び/又はロードマップ(すなわち、特定の結果を達成するための特定のプロセスパラメータ下での特定の構成物質の処理)に応じて、開示された装置/システムを使用して行われ得る。例えば、開示された装置/システムを用いた溶媒又は貧溶媒ストリーム(及び任意に界面活性剤)の処理は、その溶媒ストリームに溶解された溶質の結晶化又は沈殿をもたらし得る。同様に、最終溶液のpHを変化させるストリームと最初の溶液を混合することによって溶液のpHを変化させることは、溶質の結晶化及び/又は沈殿という結果をもたらし得る。
【0084】
加えて、連続相及び分散相、例えば油ストリーム及び水性/水ストリーム、の直接的で連続的な相互作用によってエマルジョンが形成され得る。典型的には、安定なエマルジョン及びナノエマルジョンは、2つの工程で形成される。まず、粗いプレエマルジョンが、プロペラ又はロータ/ステータミキサといった従来の混合装置を用いて、不混合性液体を混合することによって作製される。続いて、いくつかの実施形態では、粗いエマルジョンが、標準的なMICROFLUIDIZER(登録商標)プロセッサ(Microfluidics Corp.,Newton,MA)又は高剪断ホモジナイザを用いて処理され得る。しかしながら、開示された装置/システムを用いると、プレエマルジョンを製造する工程は、有利に回避され得る。
【0085】
更に、固形粒子のコーティングが、本願の開示によると、固形粒子の液体サスペンジョンを所望のコーティング剤(1又は複数)を含む溶液と相互作用させることによって達成され得る。従って、コーティングは、粒子表面へのコーティング剤の物理的又は化学的な吸着によって形成され得る。
【0086】
(2)化学的プロセス(化学反応)
本願の開示によれば、例えば、反応剤のストリームが、一定の少量の形状の反応チャンバ/マイクロリアクタの内部で相互作用させられる場合、単相又は多相液体の化学反応が可能となり得る及び/又は促進され得る。反応チャンバ/マイクロリアクタを通るフローは、有利には、反応剤のストリームの間の相互作用の表面領域を有意な程度にまで増加させ、それによって、ポテンシャル拡散限界を最小化し、反応速度を増大させる。望ましくない副反応及び/又はゆっくりとした反応は、開示された反応チャンバ/マイクロリアクタ内を「撹拌槽リアクタ(well stirred reactor)」と類似した条件にすることによって最小化され得る。実際、開示された装置/システムは、濃度勾配の結果である反応を回避することにおいて有効であり得る。
【0087】
開示された装置/システムによって支持される好適な化学反応のカテゴリは、酸・塩基反応、イオン交換プロセス、還元/酸化反応、重合化反応、沈殿反応、置換反応、架橋反応、反応性結晶化反応、バイオディーゼル反応、などを含むが、これらに限定されない。更に具体的には、以下の好適な用途/実施カテゴリが、開示された装置/システムを用いて処理することから利益を受け得る:(i)結晶化、沈殿又は化学反応を介したナノ粒子の製造、(ii)粒子のコーティング、(iii)ナノメートルスケールでの不均一材料の混合、(iv)化学反応の促進、及び(v)プロセス強化。
【0088】
C.性能の向上
本願の開示に従って実施された試験によると、混合強度は、ナノメートルの範囲において乱流渦(及び、従ってKolmogorov拡散距離)に関連した長さスケールの評価から同定され得る。従って、マクロ、メソ、及びマイクロ混合プロセスに対する時間スケールが評価され得、その長さスケールに沿って、移動速度、粒子径の観察、及び良好に設定された理論的アプローチと良好に相関する操作上のロードマップの予測がなされ得る。そのような試験は、システム性能の向上を可能にするので、開示された装置、システム及び方法は、特に、ミリ秒の反応速度を測定し、マクロスケールの反応を実施し、乱流混合を介したナノエマルジョン/サスペンジョンの形成を促進し、及び例えば、タンパク質及び無機物のための沈殿及び結晶化における制御された核生成及び成長に必要な物質移動作用の向上を達成するために、効果的及び有利に使用され得る。
【0089】
本願の開示の好適な実施及び/又は適用によると、システムパラメータのための代表的な値は、以下のとおりである:
-0.5~1msの反応チャンバ滞在時間、
-1~4マイクロ秒のマイクロ混合時間スケール、
-約107~108W/kgでの乱流エネルギー散逸率、
-25~500nmにおけるナノエマルジョン小滴及び粒子直径、
-1~5×10-9m2/sからの拡散係数、及び
-0.5m/sという高さの境界面移動係数。
-100%の化学変換及び経路選択性は、本願の開示の好適な実施に従って、有利に示され得る。
【0090】
一般的な原則として、プロセス強化(PI)は、より少数のスケール低減ベッセル内での操作工程の統合を促進し、それによって、ユニット操作及びプロセスの縮小化を支持する。連続フローのマイクロリアクタ内でのIn situの分離スキームは好適な例である。本願の開示に基づくPI戦略の適応は、多くの利益をもたらす。開示されたPI戦略の適応によって実現され得る典型的で有利な結果は、以下を含む:
-より高い製品の純度及び単一性を有する高い生産性、
-効率的な開始及び終了手順、言い換えると、特に、インベントリー/サージ(inventory/surge)システムの低減及び「規格外(off specification)」材料の低減。
-支出の低減、言い換えると低く/低減された投資費用、より低いエネルギー利用及び他の運転費用の低減、及び低減された空間必要性/より小さい設備の設置場所、
-向上された操作性及び制御性、
-環境上の利点及び/又は汚染の防止、
-より低い設備の外形、及び
-安全性の利点、言い換えると特に、爆発性、危険性又は毒性化合物の量の低減、操作者の操作し易さの向上、及び必要に応じて第2の格納チャンバへの隔離可能性。
【0091】
本開示の装置/システム及び方法は、リアクタ性能の改善を促進する。特に、開示されたリアクタは、例えば、滞在時間の削減、反応速度の加速、副反応の最小化及び/又は、蒸留及び抽出といったエネルギー集約型の下流の処理工程の減少によって、多くの重要な利点をもたらし得る。多くの反応では、混合強度(すなわち、流体力学)を介して得られる接触パターンによって決定される、重大な熱及び物質移動限界がある。これらの熱/物質移動限界は、従って、反応系の基本的な反応速度というよりはむしろ観測されたシステムの動態を制御し得る。
【0092】
本開示によると、特定のシステムの反応動態に依存して、特定のシステムの見かけの反応速度が増加し得るいくつかの方法がある。例えば、不均一反応に共通する物質移動限界は、分散相の表面領域と量との比を増加させることによって除かれ得る。物質移動限界が一旦除かれると(又は実質的に低減されると)、反応は、固有の反応速度に従って有利に進行され得る。
【0093】
更なる例として、概して反応速度の良好な制御をもたらす、リアクタ全体にわたる温度プロファイルの同一性及び/又は制御性の向上が達成され得る。例として、大きなバッチベッセルにおいて実施される高発熱性の反応は、固有の反応速度の制限によるのではなく、従来型のコイル構成を用いた不十分な移動領域と量との比によって反応熱を安全に除去するのに必要な時間のために数時間を要し得る。本発明によると、リアクタにおける材料の低い停滞と関連した激しい混合及び改善された熱移動機構を用いて、より良好な生産性が可能となる。これらの向上された移動能力/特性の結果として、多数の反応スキームの選択性が増加し、結果として、分離の必要性が低減されるとともに、製造物の収率及び品質の改善がもたらされる。
【0094】
プロセスデータは、コンピュータ流体力学(CFD)モデリングと共に、有利に、システムデザイン及び配置の設計、再設計及び/又は再構成のための基礎を提供し得る。CFDはまた、(1)複雑なリアクタ性能試験における速度及びストレス分布図、(2)非理想的な境界面に関する移動特性、及び(3)特に自己集合機構、表面張力及び界面張力、及びプロセスを駆動する乱流エネルギーが支配するカプセル化技術及び機能的な表面の設計に有用な材料処理能、を予測するのに使用され得る。
【0095】
D.沈殿及び結晶化プロセス
沈殿及び結晶化プロセスはともに、溶液から形成される固形材料によって特徴付けられる。そのような処理スキームは、製薬的に活性な成分、タンパク質及び他の化学物質の製造において広く使用される。これら2つのプロセスの主な違いは、沈殿は、ほとんど定義されない形態を有する固体物を製造するのに対し、結晶は、良好に定義された3次元の格子構造で成長する。典型的には、沈殿及び結晶化プロセス両方に関する主要な目的は、(1)例えば、希釈溶液からの沈殿時に、濃度を増加させること、及び/又は(2)例えば、多数の種類を包含する溶液から1つの種類を選択的に結晶化する場合に材料を精製することである。
【0096】
それぞれのプロセスは、概して、溶液の熱力学状態における変化によって開始され、それによって、標的の種の溶解度が低下する。従って、温度の調節(1又は複数)、例えば、貧溶媒の添加による濃度の調節(1又は複数)、又は例えば、イオン性種の添加による溶液活性係数の調節を介して、開始され得る。例として、タンパク質の溶解度を取り扱う場合、処理アプローチは、(1)等電点へのpH調節、(2)有機溶媒の添加、(3)塩析を引き起こすイオン強度の増加、及び/又は(4)非イオン性ポリマーの添加を含み得る。
【0097】
結果として、自発成長をもたらす非常に高い過飽和を生じること(均一核生成)又は成長のための表面を有する不活性種又は所望の標的種のいずれかを溶液にシード(seed)すること(不均一核生成)のいずれかによって沈殿及び/又は結晶化プロセスを開始するために核生成部位が作製されなければならない。全ての場合において、標的種の溶解度が、溶液中の実際の濃度よりも低いことが必須である。これは、効果的に、熱力学的な平衡飽和値を越える濃度を作製し、プロセス速度は、その後、システムの動きを支配する。平衡からの逸脱の大きさ、すなわち過飽和度は、系の応答の種類及び速度の両方に影響する。
【0098】
沈殿条件は、しばしば、反応混合物中における制限された溶解度を有する種を製造する化学反応によって得られる。これは、所望の早い反応速度に要求される、局地的に高い過飽和度を生じる1つの方法である。そのプロセスは、4つの連続的ではあるが、しばしば一部が被っている以下の工程において行われる:
【0099】
(1)供給溶液及び試薬が混合される。均一性を達成するのに要する時間は、概して、標的種の拡散性と、標的種分子が、乱流理論を用いて設定され得る混合渦(すなわち、Kolmogorov長)内で移動しなければならない距離に依存する。計算/分析は、密度及び粘度といった溶液特性と共に、混合動力インプット及びそれに続くユニット量あたりのエネルギー散逸率の知識を必要とする。
【0100】
(2)所望の過飽和度を達成することを目的とする混合工程に続いて、小さな固形粒子の核生成が生じる。核生成速度は、過飽和に関して指数的に特定の限界速度まで増加し、形成された製造物の特性は、この速度に著しく依存する。核生成速度が高すぎると、結果としてコロイドとなり(すなわち、高く溶解され)、従って、複雑な下流の処理工程が必要とされ得る。
【0101】
(3)成長速度は、制限された粒子径に達するまでの、大量の溶液から固体表面への溶質分子の拡散及び/又は表面集積率によって決定される。制限された粒子径は、概して、混合溶液における剪断の大きさによって決定される。
【0102】
(4)一旦、制限された粒子径に達すると、更なる成長は凝集によるものであり、これにより、粒子は互いに衝突及び接着する。従って、粒子数は、粒子径が増加するに従い、時間とともに指数的に減少する。最終的に、粒子の大きさが成長するにつれて、混合溶液中の剪断力が断裂を引き起こし、結果として、長い混合時間では、サイズは頭打ちになる。
【0103】
従って、沈殿プロセスにおいて重要なパラメータは、(a)初期混合において達成された、試薬量に依存する過飽和度、及び(b)溶液のユニット量あたりの動力インプットに比例する、混合溶液中の剪断ストレスである。
【0104】
沈殿と同様に、結晶化プロセスは、標的種の溶解度の低下によって開始される。しかしながら、高い濃度では、形成された固体が(結晶というよりむしろ)アモルファス沈殿になる傾向があるので、比較的低い過飽和度が利用される。上述したようにプロセス速度の制御は、経路を所望の最終的な熱力学的状態に向けて、所望の形態を得るためには必要不可欠である。固体の自発形成は、望ましくない種を格子構造物に誤って入れ得る。従って、過飽和レベルを低減する/低くすることによって成長速度を遅くすることは、表面集積機構において、より高い選択性を可能にする。すなわち、他の不純物種を除外することによって非常に純粋な結晶が形成される。局所的に高い剪断力はまた、適切な/所望の移動勾配を維持するのを助け得る。従って、本開示によれば、結晶化は、最初の分離方法として及び/又は最終工程として、所望の純度の製造物を得るために使用され得る。
【0105】
E.ナノカプセル化
活性成分をカプセル化するナノスケール粒子及び/又はエマルジョンを形成する能力は、生命科学工学の多くの面において応用可能性を有する。例えば、ナノ技術は、化粧及びパーソナルケア製品及び栄養補給食品と同様に、薬剤送達、分子の標的化、医療画像化及びバイオセンサの開発に大きな影響を有している。不幸にも、高剪断の、長く伸びたフロー領域が高速ブレード(1又は複数)の先端近くに生じる従来の混合装置は、500nm以上の範囲の小滴サイズを有するエマルジョンしか生成しない。そのようなエマルジョンは、凝集及び再成長を制御するように十分な表面活性剤が存在する場合のみ安定である。エマルジョン安定化に対するこのアプローチは、小滴の適切な表面保護のための界面活性剤の適切な分散を必要とし、それによって、オスワルト熟成、及びそれに続く望ましくないサイズの分散変化が最小化される。本開示によって達成されるより高い剪断速度は、有利に、50~100nmの範囲の安定な平均粒径の生成及び必要な/所望の狭い範囲の粒子径分布を促進する。開示されたシステム/技術はまた、有利には、エマルジョン構成成分の表面特性及びそれらの意図される適用に依存して、安定性のための界面活性剤の必要性を省く。
【0106】
F.ナノスケール粒子/構成要素(Entity)の作製
高剪断場は、50~100nmの範囲の直径を有する粒子を製造するための本開示の反応チャンバ/マイクロリアクタにおいて発達している。そのような粒子は、ほぼ、そのような処理ユニットにおいて生じる最小の乱流渦のサイズである。例えば、固体表面の噴流衝突(例えばZ型マイクロリアクタ)又は他の噴流(例えばY型マイクロリアクタ)を有する噴流衝突は、非常に効率的であることが示されている。衝突する高速リニア流体噴流を備えるシステムは、そのストリームの間の分離スケールを急激に低下させ得る。これらの噴流は、自由(free)、もぐり(submerged)、又は拘束(confined)として見なされ得る。自由噴流ストリームは、周りのチャンバ/ベッセルの壁、又は周りの液体のいずれによっても影響されず、一方、もぐり噴流は、粘性の引っ張り力が重要となり得る。拘束衝突噴流では、噴流直径に対するチャンバ/ベッセルの寸法がシステム性能において重要な役割を果たし得る。
【0107】
噴流直径に対するチャンバ/ベッセルの寸法の重要性は、マイクロ混合時間及びそのような噴流に基づくシステムにおけるプロセス特有の時間と比較したその相対的な大きさから明らかである。混合に対するプロセス感度を最小化するために、概して、(マクロ、メソ、及びマイクロ混合を含む)混合時間定数を、最も重要な/関連するプロセス時間定数のごく一部にまで減らすことが必要である。長さスケールは、典型的には、混合プロセスを分類するために使用され、すなわち、マクロ混合は、ベッセル寸法のスケールで生じ、メソ混合は、乱流渦のスケールであり、及びマイクロ混合は、流体ラメラ晶を伸張する際の分子拡散のスケールである。
【0108】
本開示の装置/システムによると、例えば反応チャンバ/マイクロリアクタによって定義される非常に小さい容積内でのフローの衝突及び再方向付け、及びそれに関連する剪断力の結果として、各ストリームの動力学エネルギーが、乱流のような動きへと変換されるので、開示されたマイクロリアクタの設計において、高エネルギー散逸が観察される。本開示の好適なマイクロリアクタの垂直方向の円柱状の体積要素のサイズは、コンピュータ流体力学(CFD)技術を用いて定量化されてよく、衝突面の放射方向の寸法に対して約7~10の噴流直径であると計算されている。他の円柱の寸法(高さ)は、噴流直径に非依存的であることが示され、その設計は、典型的には、2つの噴流の相互浸透長に相関する。本開示の好適な実施形態において、最も高い寸法は、相互の噴射口(噴流分離)の距離の約10パーセントであると計算される。
【0109】
界面物質移動領域は、混合の質を特定し及び関連する長さスケールを定量するために使用され得る。公知の移動領域と、拡散距離と、移動パラメータを決定するための適切な速度現象の測定を可能にする流体の物理化学特性と、を用いれば、界面移動係数、物質拡散率、及びシステムの特徴的な時間定数を決定することが可能である。これらの基本的なパラメータをシステムの幾何学的な配置、操作変数及び測定された性能メトリクス(もし得られなければ、移動量及び平衡へのアプローチなど)と結びつけることで、反応チャンバ/マイクロリアクタに必ず存在するはずの移動領域を決定することが可能である。加えて、この界面領域から、渦サイズスケール(すなわち、Kolmogorov拡散距離)を特定することが可能である。結果として、ナノエマルジョン及び他の分散系を生成する際の所望の平均小滴サイズを予測及び/又は達成するための基準を提供する混合強度の比較基準を得ることができる。
【0110】
G.フローパターン、混合及び移動現象
すでに明らかなように、移動現象及び動的な応答(化学反応の反応速度又は他のプロセス速度のいずれか)への影響に関して適切な流体力学特性を有するシステムを設計することが重要である。システム設計を越えて、(i)混合のためのフロー不安定性を利用し、(ii)良好な反応流量性能及び移動流量を促進する相互作用を増強するための接触パターンを改善し、及び(iii)機械的な乱流促進機を介して移動を改善する、プロセスイノベーションが本明細書において開示される。
少なくとも2つの液体供給ストリームを連続的に処理する方法のためのプロセス及び制御の説明
【0111】
A.プロセス
このプロセスには以下のステップがある。
【0112】
1.各液体ストリームの体積分率の決定
このステップは通常、処理の各段階での最終生成物の所望の配合で始まる。以下の例は、2つの非混合性液体ストリームからエマルジョンを作成するために本開示のシステムを設定する方法を示す。この同様の手順は、とりわけ結晶化、沈殿、及び化学反応を行う目的で混合性液体ストリームを混合するときに使用される。
【0113】
オプション1.このオプションでは、油相が5体積%、水相が95体積%の油/水エマルジョンが作成される。最終配合物中のエマルジョンの油相の体積分率は5/100=0.05であり、水相の体積分率は95/100=0.95である。水対油の2つのストリームの比率は、0.95/0.05=19である。処理中、この比率は、この比率値で一定に保たれるか、この比率値からほとんど逸脱しないようにして、所望の組成で最終配合物を実現する必要がある。
【0114】
オプション2.最終生成物の所望の配合は、中間段階の配合とは異なることがある。オプション1では、油相が2つのステップで供給され得る。例えば、第1のステップでは、油の半分が水相に供給され、2.5体積%の油を含むエマルジョンが作成される。第2のステップでは、この第1のエマルジョンがストリームの一方になり、他方のストリームは残りの油で構成される。第1のエマルジョン中の水対油の比率は0.975/0.025=39である。第1のエマルジョン対第2の(そして最終の)油ストリームの体積比は100/0.025=40である。
【0115】
オプション3.濃縮エマルジョンが均質化され得る。均質化後、濃縮エマルジョンは、連続(水)相又は水相の一部を添加して更に希釈され得る。オプション2では、粒径を犠牲にすることなく、10vol%の油を含むエマルジョンを均質化できることがある。次に、このエマルジョンを水相又は純水を加えて希釈し、エマルジョン中の油相の最終濃度が5vol%になるようにする。
【0116】
B.流量較正
各ストリームの流量は次のように計算される。
【0117】
本開示のシステムの総流量は、ホモジナイザの排出口で測定される。続いて、各計量ポンプは、最終配合物中の特定のストリームの所望の体積分率に基づいて適切な流量を提供するように設定される。ホモジナイザの総流量は、圧力、ハードウェア、上流のインラインミキサのタイプ、及び材料の単一ストリームが処理されるときの温度、の設定された条件下で測定される。各ストリームの流量は、特定の配合に基づいて、総流量に、最終又は中間の配合物中のそのストリームのパーセンテージを乗算することによって計算される。
【0118】
前のセクションのオプション1で、総流量が300ml/minのときに5体積%の水中油型エマルジョンを生成するには、油計量ポンプ(存在する場合)を15ml/minに設定する必要があり(300ml/minの5%)、水計量ポンプ(存在する場合)を285ml/min(300ml/minの85%)に設定する必要がある。専用の計量ポンプを持たない入力ストリームの流量は、ホモジナイザのポンプ作用によって間接的に制御され得る。
【0119】
入力液体ストリームごとに計量ポンプを備えたハードウェア構成が存在し得る。このような構成は、
図1に示すように、計量ポンプの下流に配置されたホモジナイザに供給するオプションのメインポンプに追加される。
【0120】
最後に、ホモジナイザがセルフフィードであるため、ホモジナイザ用のメイン供給ポンプがないハードウェア構成が存在する場合がある。この構成のフローは、上記のように調整できる。
【0121】
較正の精度は、最終的な組成物が許容範囲内にあることを確認するために最終配合に対して分析試験を実施することによって任意選択的に検証され得る。
【0122】
2.均質化
2.1 プライミング
プライミングは、本開示のシステムから空気を除去するために完了され、このシステムは、いくつかの実施形態では、計量ポンプ(1又は複数)、インラインミキサ、供給ポンプ(1又は複数)、ホモジナイザ、及びそれらを接続するラインを含む。プライミングは、一般的に低圧で液体をシステムに通過させることによって行われる。任意選択的に、プライミングは、最高流量のストリーム、又は容易に入手可能若しくは安価な成分を含むストリームを使用して完了することがある。
【0123】
2.2 処理
ホモジナイザがプライミングされると、圧力が目的の値に設定され、第2のストリームのポンプがオンになる。マシンのホールドアップボリュームに等しい初期ボリュームは、第2のストリームからの成分が含まれていないため破棄される。
【0124】
ホモジナイザが正しい圧力に設定され、初期材料が廃棄されると、ホモジナイザは所望の組成の材料を生成する。液体ストリームがホモジナイザを最初に通過した後、最初の通過の結果に応じて、他のいくつかのプロセスが存在する可能性がある。
【0125】
ホモジナイザの第1の通過により、粒径又は組成に関して所望の生成物品質が得られない可能性がある。この場合、次のように更に処理ステップが必要になる場合がある。
【0126】
(a)配合物の組成が所望の配合と類似しているが、粒径が所望よりも大きい場合、所望の粒径が達成されるまで、必要に応じて、材料をホモジナイザで更に数回処理する。この場合、第1の通過の後、ホモジナイザを通過するたびに単一の液体ストリームが処理される。
【0127】
(b)例えば、1つの液体ストリームの一部のみが予備配合物に組み込まれたために配合の組成が正しくない場合、残りの材料は、ホモジナイザへの第2の通過の間に同様の方法で組み込まれ得る。この場合、例えば、第1の通過からの最終配合物は、第2の通過のストリームの1つを構成し得る。
【0128】
(c)いくつかの実施形態では、(a)と(b)の組み合わせが必要となる場合がある。
【0129】
3.希釈
最終濃度が所望の濃度よりも高い場合は、希釈することが適切な場合がある。
【0130】
4.急冷
急冷は、プロセスの続行を停止するために使用される。例えば、急冷は、とりわけ、結晶化中の化学反応及び/又は結晶成長を停止するために、油滴が互いに合体するのを防ぐために、及び/又は粒子が凝集するのを防ぐために使用され得る。
【0131】
5.無菌ろ過
6.凍結乾燥
C.制御
1.流量比制御
運転中はリアルタイム又は一定の頻度で流量比を制御することができる。これは、最初にホモジナイザの端で特定の頻度でシステムの総流量を直接又は間接的に測定し、次に各ストリームの所望の流量比に基づいて各ストリームの流量を調整することによって実行される。
【0132】
ここで
図8を参照すると、本開示による、少なくとも2つの液体供給ストリームを連続的に処理するための例示的なシステム800が概略的に示されている。流量計802は、熱交換ユニット124と収集タンク128との間の導管126上に配置されている。流量計802は、システム800の総流量を測定する。流量比の直接測定は、流量計802を使用して実施することができる。いくつかの実施形態では、重量測定を実施することができる。間接測定は、マイクロリアクタ120のストローク速度を数えることによって実施することができる。マイクロリアクタ120が定圧ホモジナイザである実施形態では、そのようなホモジナイザは、通常、ストロークごとに一定の液体量を送達する。いくつかの実施形態では、流量の大きさに関連する電子信号(入力信号)が生成され得る。入力信号に基づいて、出力電子信号804(1又は複数)は、流量計802によって生成され、ポンプ106に送られ得る。いくつかの実施形態では、出力電子信号(1又は複数)804は、電気配線(図示せず)又は無線(図示せず)を介してポンプ106に送られる。出力電子信号(1又は複数)804は、各ストリームの所望の流量を表すように予測され得る。出力電子信号(1又は複数)804は、ポンプ106の流量を制御するために使用される。いくつかの実施形態では、ポンプ106の出力電子信号(1又は複数)804制御は、リアルタイムで発生する。いくつかの実施形態(図示せず)では、出力電子信号(1又は複数)804を使用して、弁(図示せず)の流量を制御する。
【0133】
2.緊急停止
ここで
図9を参照すると、本開示による、少なくとも2つの液体供給ストリームを連続的に処理するための例示的なシステム900が概略的に示されている。緊急停止(E停止)902は、マイクロリアクタ120及びポンプ106に電気的に接続されている。いくつかの実施形態では、E停止902は、電気配線を介して、又は無線で、マイクロリアクタ120及びポンプ106に電気的に接続されている。E停止902はスイッチ904に電気的に接続されている。ポンプ106及びマイクロリアクタ120は、E停止902に電子的に接続されている。いくつかの実施形態では、E停止902は、システム900で使用される任意の適切な機器に接続されている。
【0134】
E停止902は、緊急時にシステム900内の全ての主要機器を同時に停止するために使用される。ポンプ106が作動している間にマイクロリアクタ120が停止する場合、供給ラインが過圧されているか、高価な材料が漏れているか、さもなければ無駄になっている可能性がある。E停止902は、マイクロリアクタ902が停止すると、E停止902がポンプ106を強制的に停止させるように設計されている。更に、マイクロリアクタ120が、液体ストリームの遮断又は喪失のためにそれぞれ減速又は加速している場合、ポンプ106は強制的に停止される。
【0135】
いくつかの実施形態では、単一のE停止902が、ポンプ106、マイクロリアクタ120、自動弁(図示せず)、及び他の上流及び下流の機器(図示せず)に利用される。スイッチ904は、E停止902に接続されている全ての機器の電源をオフにするためにシステム900で使用される。
【実施例】
【0136】
例
以下の非限定的な例は、本開示のいくつかの実施形態による、少なくとも2つの液体供給ストリームを連続的に処理するための装置/システム及び方法の特定の利点及び改善を示す。これらの例は、例示のみを目的としており、本開示の他の実施形態を制限又は排除することを意図するものではない。
【0137】
例1
デュアルフィードエマルジョン法を使用した油/水エマルジョン
表1に示す重量及び体積による配合を調製する。
【表1】
【0138】
水(60.60g)を、ホットプレート上のビーカー中で55℃に加熱する。Tween(登録商標)80(2.40g)を水に加え、Tween(登録商標)80が完全に溶解するまで混合物をマグネチックスターラで絶えず撹拌する。鉱油も55℃に加熱する。
【0139】
1~2分後、20,000rpmで回転するロータ・ステータミキサ(T25 Ultra Turrax、IKA)を使用して混合物を均質化しながら、油を水に注ぐ。合計5分間の混合時間の後、粗いエマルジョンをDyHydromatics、LLC(Maynard、MA USA)から入手可能なHP350-30高圧ホモジナイザのリザーバに注ぐ。少量の粗いエマルジョンを、更なる分析のために保存する。
【0140】
高圧ホモジナイザは20,000psiに設定されており、エマルジョンに適した2つの反応チャンバが直列に装備されている。反応チャンバはそれぞれ75.3Tと200.2Lで、DyHydromatics、LLCから入手できる。反応チャンバの下流にはコイル熱交換器があり、これは21℃の水を冷却器として使用して処理済み材料を冷却する。エマルジョンを処理する前に、機器を湯で55~60℃に予熱する。エマルジョンは、各通過でそれぞれ初期温度55、37、及び30℃でホモジナイザを3回通過する。次に、エマルジョンを収集し、粒径分析を実行する。
【0141】
粒径分析は、Anton Paarから入手可能なPSA1190 L/D Laser Diffraction装置と、同じくAnton Paarから入手可能なLitesizer(商標)500 Dynamic Light Scattering装置を使用して実行する。結果を以下に示す。
【0142】
粗いエマルジョン
メジアン粒径(vol.):8.44ミクロン
【0143】
最終エマルジョン
流体力学的直径:280nm
多分散度指数:17.4%
【0144】
例2
本開示の方法を使用した油/水エマルジョン
表2に示す重量及び体積による配合を調製する。
【表2】
【0145】
水(60.60g)を、ホットプレート上のビーカー中で55℃に加熱する。Tween(登録商標)80(2.40g)を水に加え、Tween(登録商標)80が完全に溶解するまで混合物をマグネチックスターラで絶えず撹拌する。鉱油も55℃に加熱する。
【0146】
DyHydromatics、LLC(Maynard、MA USA)製の高圧ホモジナイザHP350-30には、Delphi Scientific、LLCのデュアルフィードDF-X-01が取り付けられている。6インチのインラインスタティックミキサ(1/4-40-3-12-2)は、Koflo Corporation(Cary、Ill.)から入手する。蠕動ポンプ、Golander、LLC(Norcross、GA)の#15チューブを備えたModel BT101L-CEバージョンV122S121を使用して、所定の流量でオイルをホモジナイザにポンプ輸送する。
【0147】
高圧ホモジナイザは20,000psiに設定されており、エマルジョンに適した2つの反応チャンバが直列に装備されている。反応チャンバはそれぞれ75.3Tと200.2Lで、DyHydromatics、LLCから入手できる。反応チャンバの下流にはコイル熱交換器があり、これは21℃の水を冷却器として使用して処理済み材料を冷却する。ホモジナイザ、デュアルフィード、及び全てのラインは、処理前に55~60℃に湯で予熱される。
【0148】
ホモジナイザの流量は、最初にこれらの処理条件下で決定され、そのような流量は403ml/minであると測定される。続いて、油の密度を55℃で測定すると、その密度は0.83g/mlであることがわかる。従って、油相の体積分率が計算される。これを、表2に示す。この場合、オイルの流量は403*44.58/100=179.65ml/minと推定される。蠕動ポンプは179.65ml/minに設定されている。
【0149】
ホモジナイザを通過する各通過の初期温度は、各通過でそれぞれ55、37、及び30℃である。次に、エマルジョンを収集し、粒径分析を実行する。
【0150】
粒径分析は、Anton Paarから入手可能なPSA1190 L/D Laser Diffraction装置と、同じくAnton Paarから入手可能なLitesizer(商標)500 Dynamic Light Scattering装置を使用して実行される。結果を以下に示す。
【0151】
最終エマルジョン
流体力学的直径:241nm
多分散度指数:9.6%
【0152】
従来のデュアルフィードエマルジョン法で調製された例1のエマルジョンと比較して、本開示の方法を使用して調製された例2のエマルジョンは、より小さな粒径(241nm対280nm)と、多分散度指数(9.6%対17.4%)によって推測されるように狭い粒径分布とを有する。
【0153】
例3及び例4は、2つのストリームの所望の比率、従って、所望の配合を達成する際の精度に関して、2つの異なるフィードシステムを比較している。
【0154】
例3
プロポフォールエマルジョンは、世界中の麻酔で使用されているエマルジョンである。表3に示すプロポフォールエマルジョンの一般的な配合を調製する。
【表3】
【0155】
表3(2列目)に示す配合に基づいて、400gのプロポフォールエマルジョンのバッチを調製する。注入用水(WFI)は、ホットプレート上のビーカー中で45℃に加熱される。卵レシチン、グリセロール、オレイン酸ナトリウムを加え、全ての成分が溶解するまで混合物を撹拌する。油相の全ての成分をビーカーに入れ、45℃に加熱する。油相と水相の密度は、各相の特定の体積の重量を測定することによって測定される。これらの結果に基づいて、油相は11.84vol%であり、水相は88.16wt%であることがわかる。
【0156】
DyHydromatics、LLC(Maynard、MA USA)製の高圧ホモジナイザHP350-30には、Delphi Scientific、LLCのデュアルフィードDF-X-01が取り付けられている。6インチのインラインスタティックミキサ(1/4-40-3-12-2)は、Koflo Corporation(Cary、Ill.)から入手する。蠕動ポンプ、Golander、LLC(Norcross、GA)の#15チューブを備えたModel BT101L-CEバージョンV122S121を使用して、所定の流量でオイルをホモジナイザにポンプ輸送する。
【0157】
次に、油相と水相を、DyHydromatics、LLC(Maynard、MA USA)製の高圧ホモジナイザHP350-30に別々に供給する。高圧ホモジナイザは21,000psiに設定されており、エマルジョンに適した2つの反応チャンバが直列に装備されている。反応チャンバはそれぞれ75.3Tと200.2Lで、DyHydromatics、LLCから入手できる。反応チャンバの下流にはコイル熱交換器があり、これは21℃の水を冷却器として使用して処理済み材料を冷却する。ホモジナイザ、デュアルフィード、及び全てのラインは、処理前に45~50℃に湯で予熱される。
【0158】
ホモジナイザの流量は、最初にこれらの処理条件下で決定され、そのような流量は367ml/minであると測定される。その場合、オイルの流量は367*11.84/100=40.65ml/minと推定される。油相を供給する蠕動ポンプは43.45ml/minに設定されている。
【0159】
最初に、ホモジナイザ、インラインミキサ、及び全てのラインを水でプライミングし、空気を除去する。続いて、水相をホモジナイザのリザーバに注ぎ、油相をビーカーに注ぐ。蠕動ポンプの注入口チューブは油相の内側に浸され、排出口はインラインミキサのポートの1つに接続されている。ホモジナイザ及び蠕動ポンプを始動する。処理されたエマルジョンを、ホモジナイザの排出口から収集する。
【0160】
このプロセスは、全ての水とほとんど全ての油が消費されるまで続ける。収集したエマルジョンの量と残りの油を別々に計量する。残っている油の量に基づいて、エマルジョン中の油の濃度は11.16wt%と計算され、これは、所望の11wt%の油と比較した場合、配合の1.45%高い油濃度(従って薬剤濃度)に対応する。これらの結果は許容範囲内であり、通常は平均値から+/-2%である。更に、必要に応じて、エマルジョンをわずかに希釈して、所望の11%を達成することができる。
【0161】
例4
表3に示す例3の配合を、例4で使用する。
【0162】
表3(2列目)に示す配合に基づいて、400gのプロポフォールエマルジョンのバッチを調製する。注入用水(WFI)を、ホットプレート上のビーカー中で45℃に加熱する。卵レシチン、グリセロール、オレイン酸ナトリウムを加え、全ての成分が溶解するまで混合物を撹拌する。油相の全ての成分をビーカーに入れ、45℃に加熱する。油相と水相の密度は、各相の特定の体積の重量を測定することによって測定される。これらの結果に基づいて、油相は11.84vol%であり、水相は88.16wt%であることがわかる。
【0163】
DyHydromatics、LLC(米国マサチューセッツ州メイナード)製の高圧ホモジナイザHP350-30には、Microfluidics International Corporationに付与された米国特許第8,367,004号及び第8,187,554号(同軸フィード)に記載されているものと実質的に同様のフィードシステムが取り付けられている。蠕動ポンプ、Golander、LLC(Norcross、GA)の#15チューブを備えたModel BT101L-CEバージョンV122S121を使用して、水相をポンプ輸送する。Cole Palmer(Vernon Hills、IL)製のMasterflexのチューブL/S16を備えたLongerPump(Tucson、AZ)製の別の蠕動ポンプ、モデルYZ1515xを使用して、油相をポンプ輸送する。各ポンプの排出口は、同軸フィードの2つの注入口の1つに接続されており、このようなフィードは2つの同心円管で構成され、ホモジナイザの注入口に配置されている。各液体ストリームは1つのチューブに流れ込むため、このようなストリームがホモジナイザの注入口に到達するまで、2つのストリームが混合することはない。
【0164】
ホモジナイザの流量は、最初にこれらの処理条件下で決定され、そのような流量は367ml/minであると測定される。続いて、油の密度を45℃で測定すると、その密度は0.92g/mlであることがわかる。従って、油相の体積分率が計算される。これを、表3に示す。この場合、オイルの流量は367*11.84/100=43.45ml/minと推定される。油相を供給する蠕動ポンプは43.45ml/minに設定され、もう一方のポンプは367-43.45=323.55ml/minに設定される。
【0165】
最初に、ホモジナイザ、同軸フィード、及び全てのラインを水でプライミングし、空気を除去する。続いて、油相と水相を2つの別々のビーカーに注ぐ。各蠕動ポンプの注入口チューブは1つのビーカーの内側に浸され、排出口は同軸フィードのポートの1つに接続されている。ホモジナイザ及び蠕動ポンプを始動する。処理されたエマルジョンを、ホモジナイザの排出口から収集する。
【0166】
最初に、ほとんどの水相がホモジナイザを出たことに気づき、これは、水相が淡黄色でかなり半透明であるのに対し、処理されたエマルジョンは不透明で白色であるため、簡単に判別できる。水相を廃棄する。最終的に、白いエマルジョンがホモジナイザから出始めた。白いエマルジョンをビーカーに収集する。
【0167】
このプロセスを、ほとんど全ての油相及び水相が消費されるまで続ける。収集されたエマルジョンの量と残りの油相及び水相を別々に計量する。残っている油相及び水相の量に基づいて、エマルジョン中の油の濃度は9.97wt%と計算され、これは、所望の11wt%の油と比較した場合、配合の油濃度(従って薬剤濃度)における9.34%の誤りに対応する。この例4で調製された配合は許容範囲外であり、そのような配合を更に希釈して許容可能な仕様を達成することはできない。
【0168】
例5
表2に示される配合例2を、例4に記載されるシステムで使用する。オイルポンプの流量の設定値を9.34%増加して47.54ml/min(4.09ml/min)とし、水の流量は同じ量(4.09ml/min)減少させて、ポンプ流量の自動制御をシミュレートする。
【0169】
実験後、油分が推定され、そのような油分は9.97wt%であることがわかる。油分は、所望の値よりも9.36%低くなっているが、これはほとんどの用途では受け入れられない。
【0170】
例6
疎水性の高い(水への溶解度が限られている)医薬品であるノルフロキサシン(NFN)をモデル薬剤として選択し、(a)限られた水溶性、(b)可用性、及び(c)価格に基づいて開示された装置、システム、及び方法の適用性を実証する。ノルフロキサシンを、本開示の方法を使用して再結晶化し、サブミクロン粒子を得る。そのような粒子は、ノルフロキサシンの生物学的利用能を増加させる可能性があり、そのような生物学的利用能は、ノルフロキサシンの限られた水溶性によって制限される。
【0171】
10mgのノルフロキサシンを約30℃で40gのジメチルスルホキシド(DMSO)に完全に溶解し、マグネチックスターラを使用して混合する。約160mlの水を2グラムの界面活性剤Tween(登録商標)80と混合する。DMSOに溶解したノルブロキサシンのストリームがTween(登録商標)80と混合した水のストリームと混合する場合、ノルフロキサシンはDMSO、水、及びTween(登録商標)80の混合物に溶解しない。従って、ノルフロキサシンは結晶化する。
【0172】
処理には、例2で説明したシステムを使用する。装置の総流量は403ml/minである。DMSO相の密度は1.1g/mlであるように決定されている。マシンの総体積流量と比較したDMSO相の所望の体積分率は18.48%である。DMSO相を供給する蠕動ポンプの総流量は74.48ml/minに設定されている。
【0173】
2つのストリームを、DMSO相の全量と水相の混合及び相互作用を確実にするために、装置を介して1回処理する。白色のノルフロキサシン粒子を含む液体分散液が得られ、その後、そのような分散液を再びホモジナイザに通過させる。今回は、DMSO混合物を供給したポートは使用されず、閉じられている。分散液をマシンのリザーバに注ぎ、単一の混合物としてホモジナイザに送達する。分散液を再度処理して、第1の通過で形成された可能性のある凝集体を解凝集する。
【0174】
材料の粒径は、Anton Paarから入手可能なLitesizer Dynamic Light Scattering機器を使用して実施する。平均粒径は154nmであることがわかる。
【0175】
本開示は、典型的な例及びその実施形態についての言及が記載されたものであるが、本明細書はそのような説明した例/実施形態に限られるものではない。むしろ、本開示は、これの意図又は範囲から逸れた、変化、変形、改良及び/又は変異も属する。実際に、本開示は、全てのそのような変化、変形、改良及び変異を、明白にその範囲の中に包含している。
他の記載と重複するが、本発明に包含され得る諸態様を以下に示す。
[1]
少なくとも2つの液体供給ストリームを連続的に処理する方法であって、
能動的に自動的に制御された速度でインラインミキサに第1の供給ストリームをポンプ輸送すること、
第2の供給ストリームを前記インラインミキサに流すこと、
前記第1及び第2の供給ストリームを混合して、実質的に均質な混合物を達成すること、
前記実質的に均質な混合物を能動的に制御された流量で高圧ポンプにポンプ輸送すること、
前記高圧ポンプ内の前記実質的に均質な混合物を少なくとも35MPaの高圧に加圧すること、及び
前記実質的に均質な混合物を前記高圧ポンプの下流のマイクロリアクタに送達することであって、前記マイクロリアクタは500ミクロン以下の最小チャネル寸法を有し、前記第1及び第2の液体ストリームをナノスケールレベルで前記マイクロリアクタ内で相互作用させること、
を含む、方法。
[2]
前記第1の供給ストリームが第1の構成成分を含み、前記第2の供給ストリームが第2の構成成分を含む、[1]に記載の方法。
[3]
前記第1及び第2の供給ストリームが、同軸に整列された供給ラインで前記インラインミキサに送達される、[1]に記載の方法。
[4]
前記第1及び第2の供給ストリームが、前記インラインミキサによって規定された間隔を置いたポートを介して前記インラインミキサに導入される、[1]に記載の方法。
[5]
前記インラインミキサへの前記第1の供給ストリームの送達のための前記能動的に制御された速度が、前記第1の供給ストリーム用の能動的に制御された供給ポンプによってもたらされる、[1]に記載の方法。
[6]
前記マイクロリアクタ内での相互作用後、前記実質的に均質な混合物を冷却又は急冷することを更に含む、[1]に記載の方法。
[7]
前記第1の構成成分が溶媒を含み、前記第2の構成成分が貧溶媒を含み、前記マイクロリアクタにおける前記溶媒と前記貧溶媒との相互作用が、ナノ懸濁液を規定するのに有効であり、前記方法は、
前記ナノ懸濁液から構成成分ナノ粒子結晶を取得すること
を更に含む、[2]に記載の方法。
[8]
前記溶媒ストリームが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、メタノール、エタノール、アセトン、ジクロロメタン、オクタノール及びイソプロピルアルコール、からなる群から選択され、前記貧溶媒ストリームが、水、ヘキサン及びヘプタンからなる群から選択される、[7]に記載の方法。
[9]
前記溶媒ストリームがDMSOであり、アジスロマイシンのナノ粒子が約50~100nmのメジアン粒径で取得される、[8]に記載の方法。
[10]
前記溶媒ストリームがDMSOであり、オキシカルバゼピンのナノ粒子が、1000nm未満のメジアン粒径で取得される、[8]に記載の方法。
[11]
前記溶媒ストリームがDMSO又はNMPであり、ロラタジンのナノ粒子が500nm未満のメジアン粒径で取得される、[8]に記載の方法。
[12]
前記マイクロリアクタ内での相互作用後に前記ナノ懸濁液を冷却又は急冷することを更に含む、[7]に記載の方法。
[13]
前記高圧が少なくとも約70MPaである、[1]に記載の方法。
[14]
前記高圧が少なくとも約140MPaである、[1]に記載の方法。
[15]
前記高圧が少なくとも約207MPaである、[1]に記載の方法。
[16]
前記第2のストリームの流量と前記第1のストリームの流量との比が少なくとも約2:1である、[1]に記載の方法。
[17]
前記第2のストリームの流量と前記第1のストリームの流量との比が少なくとも約3:1である、[1]に記載の方法。
[18]
前記第2のストリームの流量と前記第1のストリームの流量との比が少なくとも約10:1である、[1]に記載の方法。
[19]
前記マイクロリアクタが、10~500ミクロンの範囲の最小寸法を有するチャネルを有する、[1]に記載の方法。
[20]
マイクロリアクタチャネル内の平均流体速度が300~500m/sの範囲にある、[1]に記載の方法。
[21]
前記マイクロリアクタにおいて少なくとも約1.2×10
6
s
-1
の剪断速度をもたらすことを更に含む、[1]に記載の方法。
[22]
前記マイクロリアクタが単一のスロット形状を有する、[1]に記載の方法。
[23]
前記液体供給ストリームの少なくとも1つが固体粒子を含む、[1]に記載の方法。
[24]
前記供給ストリームの少なくとも1つがシード粒子を含む、[7]に記載の方法。
[25]
前記供給ストリームの少なくとも1つが触媒粒子を含む、[7]に記載の方法。
[26]
前記第1の構成成分が第1の反応剤であり、前記第2の構成成分が第2の反応剤であり、前記方法が、
前記マイクロリアクタ内の前記ナノスケールレベルの相互作用の前に、前記第1及び第2の反応剤の間の相互作用を制御することによって反応選択性を調整すること
を更に含む、[2]に記載の方法。
[27]
前記実質的に均質な混合物を達成するために、前記高圧ポンプにおいて加圧する前に、前記インラインミキサ内の前記第1及び第2の反応剤の間の接触を促進することによって、前記第1及び第2の反応剤の間の前記相互作用の制御が行われる、[26]に記載の方法。
[28]
前記実質的に均質な混合物が、前記高圧ポンプによって規定されたポートを介して前記高圧ポンプにポンプ輸送される、[26]に記載の方法。
[29]
前記マイクロリアクタ内での反応後、前記実質的に均質な混合物を冷却又は急冷することを更に含む、[28]に記載の方法。
[30]
前記第1及び第2の供給ストリームが非混合性である、[1]に記載の方法。
[31]
前記第1及び第2の供給ストリームが混合性である、[1]に記載の方法。
[32]
前記構成成分が前記マイクロリアクタ内で相互作用して、エマルジョン、拡散、リポソーム製剤、脂質ナノ粒子、又は結晶性若しくはアモルファス材料を達成する、[2]に記載の方法。
[33]
前記第1の供給ストリームが油相であり、前記第2の供給ストリームが水相である、[1]に記載の方法。
[34]
前記油相が、植物油、ナッツ油、動物油、無機油、脂質、界面活性剤、ポリマー、有効成分、香味料、着色料、アルコール、有機溶媒、及び/又はそれらの誘導体から選択される、[33]に記載の方法。
[35]
前記水相が、水、脂質、界面活性剤、粘度調整剤、pH調整剤、及び糖から選択される、[33]に記載の方法。
[36]
前記第1の供給ストリームが水相であり、前記第2の供給ストリームが油相である、[1]に記載の方法。
[37]
前記油相が、植物油、ナッツ油、動物油、無機油、脂質、界面活性剤、ポリマー、有効成分、香味料、着色料、アルコール、有機溶媒、及び/又はそれらの誘導体から選択される、[36]に記載の方法。
[38]
前記水相が、水、脂質、界面活性剤、粘度調整剤、pH調整剤、及び糖から選択される、[36]に記載の方法。
[39]
少なくとも2つの液体供給ストリームを連続的に処理するためのシステムであって、
能動的に自動的に制御された速度で第1の供給ストリームを下流にポンプ輸送するように適合された供給ポンプ、
前記供給ポンプからの前記第1の供給ストリームと、供給ラインからの第2の供給ストリームとを受け取るように配置されたインラインミキサであって、前記インラインミキサが前記第1及び第2の供給ストリームを混合して実質的に均質な混合物を達成するように適合された、インラインミキサ、
前記インライン混合物から前記実質的に均質な混合物を受け取るように配置された高圧ポンプであって、前記高圧ポンプが前記第1及び第2の供給ストリームを少なくとも35MPaの高圧に加圧するように適合された、高圧ポンプ、及び
前記高圧ポンプの下流にあるマイクロリアクタであって、前記マイクロリアクタが、500ミクロン以下の最小チャネル寸法を有し、前記マイクロリアクタが、前記実質的に均質な混合物の完全な混合を達成するように高剪断場をもたらすように適合された、マイクロリアクタ
を含む、システム。
[40]
前記供給ポンプが計量ポンプである、[39]に記載のシステム。
[41]
前記第1及び第2の供給ストリームが、同軸構成で前記インラインミキサに送達される、[39]に記載のシステム。
[42]
前記マイクロリアクタが単一のスロット形状を有する、[39]に記載のシステム。
[43]
前記マイクロリアクタの下流に冷却ユニットを更に備える、[39]に記載のシステム。
[44]
前記インラインミキサが間隔を置いた複数の供給ポートを含み、前記第1の供給ストリームが第1の供給ポートを介して前記インラインミキサに導入され、前記第2の供給ストリームが第2の供給ポートを介して前記インラインミキサに導入される、[39]に記載のシステム。
[45]
前記第1の供給ストリームが第1の構成成分を含み、前記第2の供給ストリームが第2の構成成分を含み、前記マイクロリアクタが、前記第1の構成成分と前記第2の構成成分との間の制御されたナノスケールの相互作用をもたらすように適合される、[39]に記載のシステム。
[46]
前記マイクロリアクタが、ナノスケールレベルで前記第1の供給ストリーム中の第1の反応剤と前記第2の供給ストリーム中の第2の反応剤との相互作用をもたらすように適合され、前記システムは、反応選択性が、前記マイクロリアクタ内の前記ナノスケールレベルの相互作用の前に、前記第1及び第2の反応剤の間の相互作用を制御することによって制御され得るように構成される、[39]に記載のシステム。
[47]
前記実質的に均質な混合物を達成するために、前記高圧ポンプにおいて加圧する前に、前記インラインミキサ内の前記第1及び第2の反応剤の間の接触を促進することによって、前記第1及び第2の反応剤の間の前記相互作用の制御が行われる、[46]に記載のシステム。
[48]
前記第1及び第2の反応剤は、前記インラインミキサによって規定された間隔を置いたポートを介して前記インラインミキサに送達される、[46]に記載のシステム。
[49]
前記高圧が少なくとも約70MPaである、[39]に記載のシステム。
[50]
前記高圧が少なくとも約140MPaである、[39]に記載のシステム。
[51]
前記高圧が少なくとも約207MPaである、[39]に記載のシステム。
[52]
前記第2のストリームの流量と前記第1のストリームの流量との比が少なくとも約2:1である、[39]に記載のシステム。
[53]
前記第2のストリームの流量と前記第1のストリームの流量との比が少なくとも約3:1である、[39]に記載のシステム。
[54]
前記第2のストリームの流量と前記第1のストリームの流量との比が少なくとも約10:1である、[39]に記載のシステム。
[55]
前記マイクロリアクタが、10~500ミクロンの範囲の最小寸法を有するチャネルを有する、[39]に記載のシステム。
[56]
マイクロリアクタチャネル内の平均流体速度が300~500m/sの範囲にある、[39]に記載のシステム。
[57]
前記マイクロリアクタにおいてもたらされる前記剪断速度が少なくとも約1.2×10
6
s
-1
である、[39]に記載のシステム。
[58]
前記マイクロリアクタが単一の形状を有する、[39]に記載のシステム。