(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】通信回路、及び通信方法
(51)【国際特許分類】
H04B 5/02 20060101AFI20230728BHJP
【FI】
H04B5/02
(21)【出願番号】P 2021514903
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(86)【国際出願番号】 JP2020015766
(87)【国際公開番号】W WO2020213489
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2019077261
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(ACCEL)「近接場結合集積技術による革新的情報処理システムの実現と応用展開」における研究題目 「近接場結合集積技術ならびに高効率情報処理システムの研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】黒田 忠広
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/010388(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0230387(US,A1)
【文献】国際公開第2015/076153(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/025690(WO,A1)
【文献】菅原俊彦 他,磁界結合を利用した“ワイヤレスICE”を開発,Interface,日本,CQ出版株式会社,2007年04月01日,第33巻, 第4号,第116-125頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信相手の結合器と電磁界結合する第1の通信用結合器と、
前記第1の通信用結合器から送信される送信データが入力されるとともに、前記第1の通信用結合器が受信した受信データを出力する第1ポートと、
前記第1ポートから前記第1の通信用結合器に前記送信データを伝送する送信経路と、
前記第1の通信用結合器から前記第1ポートに前記受信データを伝送する受信経路と、
前記送信経路に配置され、前記第1ポートからの前記送信データを前記第1の通信用結合器に出力する送信器と、
前記受信経路に配置され、前記第1の通信用結合器を介して受信した前記受信データを復元する受信器と、
前記第1の通信用結合器から前記受信器までの受信経路の一部と、前記送信器から前記第1の通信用結合器までの送信経路の一部とを共通にするために設けられた分岐ノードと、
前記
分岐ノードから前記送信器までの間の前記送信経路、又は前記
分岐ノードから前記受信器まで間の前記受信経路に配置された受動素子を有する伝送用結合器であって、前記送信データ又は前記受信データを電磁界結合により伝送する前記伝送用結合器と、を備えた通信回路。
【請求項2】
前記受動素子がキャパシタを有している請求項1に記載の通信回路。
【請求項3】
前記受動素子がトランスを有している請求項1に記載の通信回路。
【請求項4】
前記受動素子が、
基板上に形成された第1伝送線路と、
前記基板上に形成され、前記第1伝送線路と電磁界結合した第2伝送線路と、を有している請求項1に記載の通信回路。
【請求項5】
前記第1伝送線路が、前記受信器又は前記送信器を前記第1の通信用結合器に接続している請求項4に記載の通信回路。
【請求項6】
前記第1ポートに接続された第2の通信用結合器をさらに備え、
前記第2の通信用結合器で受信したデータが、前記送信データとして、前記送信経路を介して、前記第1の通信用結合器に伝送され、
前記第1の通信用結合器で受信したデータが、前記受信データとして、前記受信経路を介して、前記第2の通信用結合器に伝送される請求項1~5のいずれか1項に記載の通信回路。
【請求項7】
通信相手の結合器と電磁界結合する第1の通信用結合器と、
前記第1の通信用結合器から送信される送信データが入力されるとともに、前記第1の通信用結合器が受信した受信データを出力する第1ポートと、
前記第1ポートから前記第1の通信用結合器に前記送信データを伝送する送信経路と、
前記第1の通信用結合器から前記第1ポートに前記受信データを伝送する受信経路と、
前記送信経路に配置され、前記第1ポートからの前記送信データを前記第1の通信用結合器に出力する送信器と、
前記受信経路に配置され、前記第1の通信用結合器を介して受信した前記受信データを復元する受信器と、
前記第1の通信用結合器から前記受信器までの受信経路の一部と、前記送信器から前記第1の通信用結合器までの送信経路の一部とを共通にするために設けられた分岐ノードと、
前記分岐ノードから前記送信器までの間の前記送信経路、又は前記分岐ノードから前記受信器までの間の前記受信経路に配置された受動素子を有する伝送用結合器と、を備えた通信回路による通信方法であって、
前記第1ポートに入力された前記送信データを前記送信器が送信信号として出力するステップと、
前記送信器から出力された送信信号を
前記伝送用結合器の電磁界結合を介して、前記受信器に入力するステップと、を備えた通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁界結合を用いた通信回路、及び通信方法に関し、特に詳しくは、送受信を切り替えるタイミング信号を用いずに、半二重通信を行なうことができる通信回路、及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半二重通信とは、2つのモジュールの間で時分割に双方向に通信することである。具体的には、半二重通信とは、一方のモジュールが送信で他方のモジュールが受信となるように時間で切り替える方式である。コンピュータと周辺機器を接続するUSB(Universal Serial Bus)やコンピュータとディスプレイを接続するHDMI(登録商標)(High Definition Multimedia Interface)では、半二重通信が用いられている。例えば、2つの機器間で、相互認証を行ったり、暗号化されたデータやスクランブルのかかった映像データを復元する鍵をやり取りしている。
【0003】
USBやHDMIで機器を接続する際にコネクタが用いられる。一般的な圧着接続のコネクタでは、信号が反射して高速通信できない、機器を小型化できないなどの課題がある。こうしたコネクタの課題を解決するために、本出願の発明者は、デジタルデータを無線通信する非接触コネクタを提案している(例えば特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1のモジュール間通信装置では、プリント回路基板(Printed Circuit Board;PCB)に伝送線路が形成されている。積層方向から見て、2つプリント回路基板の伝送線路が投影的に重なるように配置されている。このようにすることで、2つの伝送線路の間に容量結合及び/又は誘導結合を形成することができる。容量結合及び/又は誘導結合による結合器(以下、電磁界結合器とする)を介して、信号が送受信される。受信器は、ヒステリシス比較器を用いて、結合器を介して伝送された受信信号を、元の信号に復元する(段落0191)。
【0005】
特許文献2では、結合器を差動構成とするために、結合器に一対の入出力接続線が接続された構成が開示されている(
図2)。
【0006】
また、特許文献3では双方向性バス・バッファが開示されている。特許文献3の双方向性バス・バッファでは、両ポートにデジタル信号が入力されている。そして、タイミングを制御する制御信号が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5213087号公報
【文献】特開2014-33432号公報
【文献】特公平4-37447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電磁界結合器を介して受信されたデジタル信号は、DC成分が失われて、小振幅のパルス信号となる。小振幅のパルス信号をデジタル信号に復元する受信回路は、デジタル信号を送信する送信回路と接続して同時に用いることはできない。なぜなら、デジタル信号の振幅が受信信号に比べて大きいために、送信回路が出力しているデジタル信号を出力しているときに、小振幅のパルス信号を受信しても、受信回路がそれを検出できないからである。
【0009】
半二重通信において用いられる送受信を切り替えるタイミング信号を用いれば、受信時において、送信回路の出力をHigh-Z(ハイインピーダンス)にすることができるため、受信回路が受信信号を検出することができる。しかし、そのようなタイミング信号を、伝送線路の途中のコネクタにおいて抽出することは、一般に困難である。したがって、本実施形態は、送受信を切り替えるタイミング信号を得ずとも(すなわち非同期に)半二重通信を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施の形態に係る通信回路は、通信相手の結合器と電磁界結合する第1の通信用結合器と、前記第1の通信用結合器から送信される送信データが入力されるとともに、前記第1の通信用結合器が受信した受信データを出力する第1ポートと、前記第1ポートから前記第1の通信用結合器に前記送信データを伝送する送信経路と、前記第1の通信用結合器から前記第1ポートに前記受信データを伝送する受信経路と、前記送信経路に配置され、前記第1ポートからの前記送信データを前記第1の通信用結合器に出力する送信器と、前記受信経路に配置され、前記第1の通信用結合器を介して受信した前記受信データを復元する受信器と、前記第1の通信用結合器から前記送信器までの間の前記送信経路、又は前記第1の通信用結合器からの前記受信器までの前記受信経路に配置された受動素子を有する伝送用結合器であって、前記送信データ又は前記受信データを電磁界結合により伝送する前記伝送用結合器と、を備えている。
【0011】
上記の通信回路において、前記受動素子がキャパシタを有していてもよい。
【0012】
上記の通信回路において、前記受動素子がトランスを有していてもよい。
【0013】
上記の通信回路において、前記受動素子が、基板上に形成された第1伝送線路と前記基板上に形成され、前記第1伝送線路と電磁界結合した第2伝送線路と、を有していていてもよい、
【0014】
上記の通信回路において、前記第1伝送線路が、前記受信器又は前記送信器を前記第1の通信用結合器に接続していていてもよい。
【0015】
上記の通信回路において、前記第1ポートに接続された第2の通信用結合器をさらに備え、前記第2の通信用結合器で受信したデータが、前記送信データとして、前記送信経路を介して、前記第1の通信用結合器に伝送され、前記第1の通信用結合器で受信したデータが、前記受信データとして、前記受信経路を介して、前記第2の通信用結合器に伝送されていてもよい。
【0016】
本実施の形態にかかる通信方法は、通信相手の結合器と電磁界結合する第1の通信用結合器と、前記第1の通信用結合器から送信される送信データが入力されるとともに、前記第1の通信用結合器が受信した受信データを出力する第1ポートと、前記第1ポートから前記第1の通信用結合器に前記送信データを伝送する送信経路と、前記第1の通信用結合器から前記第1ポートに前記受信データを伝送する受信経路と、前記送信経路に配置され、前記第1ポートからの前記送信データを前記第1の通信用結合器に出力する送信器と、前記受信経路に配置され、前記第1の通信用結合器を介して受信した前記受信データを復元する受信器と、を備えた通信回路による通信方法であって、前記第1ポートに入力された前記送信データを前記送信器が送信信号として出力するステップと、前記送信器から出力された送信信号を伝送用結合器の電磁界結合を介して、前記受信器に入力するステップとを備えている。
【発明の効果】
【0017】
本実施の形態にかかる通信回路、及び通信方法によれば、送受信を切り替えるタイミング信号を用いずとも、半二重通信を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態1にかかる通信回路の構成を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態1の通信回路1の動作を示す波形図である。
【
図7】実施の形態2にかかる通信回路の構成を示すブロック図である。
【
図8】実施の形態2の通信回路1の動作を示す波形図である。
【
図11】実施の形態3にかかる通信回路の構成を示すブロック図である。
【
図12】実施の形態4にかかる通信回路の構成を示すブロック図である。
【
図13】伝送線路結合器のレイアウト構成を示す図である。
【
図14】実施の形態5にかかる通信回路の構成を示すブロック図である。
【
図15】伝送線路結合器のレイアウト構成を示す図である。
【
図16】実施の形態5の通信回路1の動作を示す波形図である。
【
図19】実施の形態6にかかる通信回路の構成を示すブロック図である。
【
図20】実施の形態7にかかる通信回路の構成を示すブロック図である。
【
図21】通信回路の構成例を示すブロック図である。
【
図22】通信回路の構成例を示すブロック図である。
【
図23】通信回路の構成例を示すブロック図である。
【
図24】通信回路の構成例を示すブロック図である。
【
図25】通信回路の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1.
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態1にかかる通信回路及び通信装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、通信回路1は、第1基板SUB1と、送信経路10と、受信経路20と、結合器31p、31nと、第1ポート32と、を備えている。送信経路10と受信経路20とは、結合器31と第1ポート(図ではポート1と記載)32との間に並列に接続されている。
【0020】
送信経路10は、送信器13、及び送信伝送路11p、11nを備えている。受信経路20は、受信伝送路21p、21n、キャパシタ22、受信器23、及び抵抗24を備えている。
【0021】
なお、第1ポート32から送信器13までの間の構成、及び受信器23から第1ポート32までの間の構成が、シングルエンド(片差動)信号を伝送するシングルエンド構成となっている。また、送信器13から結合器31までの間、結合器31から受信器23までの間の構成が、差動信号を伝送する差動構成となっている。したがって、第1基板SUB1には、2つの結合器31p、31nが設けられている。また、結合器31p、31nから送信器13までの送信経路10には、2本の送信伝送路11p、11nが設けられ、受信器23から結合器31p、31nまでの受信経路20には、2本の受信伝送路21p、21nが設けられている。
【0022】
差動信号を伝送する2つの構成要素(差動対)を識別する場合、p、又はnの添え字を付して説明する。差動信号を伝送する2つの構成要素を特に区別しない場合は、p、及びnの添え字を付さずに説明する。例えば、2本の送信伝送路11p、11nを識別する場合、送信伝送路11p、11nとし、識別しない場合、送信伝送路11とする。同様に、2本の受信伝送路21p、21nを識別する場合、受信伝送路21p、21nとし、識別しない場合、受信伝送路21とする。また、キャパシタ22p、22n等の他の構成要素についても同様に記載する。
【0023】
なお、結合器31が、差動信号ではなく、シングルエンド信号を伝送する構成であってもよい。シングルエンド伝送の場合、基準電圧に対する信号レベルの高低で0又は1のデジタルデータが表現される。この場合、通信回路1には、1つの結合器31が設けられていればよい。また、第1ポート32から送信器13までの間、及び受信器23から第1ポート32までの間は、シングルエンド伝送の構成となっているが、差動伝送の構成となっていてもよい。
【0024】
通信回路1は、通信相手となる通信回路100との間で、半二重通信を行なう。通信回路1及び通信回路100は、無線通信によりデータを送受信する通信装置となる。具体的には、通信回路1の結合器31は、通信用結合器であり、通信回路100の結合器131と非接触で結合している。より詳細には、結合器31pが結合器131pと電磁界結合し、結合器31nが結合器131nと電磁界結合する。
【0025】
結合器31、及び結合器131は、例えば、特許文献1、2に示した電磁界結合器である。結合器31、及び結合器131は、例えば、電界および磁界で分布定数系として結合するように互い平行に配置された伝送線路とすることができる。あるいは、結合器31、及び結合器131は、集中定数系として磁界結合(誘導結合)するように、重複配置されたコイル(誘導結合器)とすることができる。あるいは、結合器31、及び結合器131は、集中定数系として電界結合(容量結合)するように、互い平行に配置された電極とすることができる。電磁界結合とは、電界及び磁界の少なくとも一方を用いた結合であればよい。なお、結合器31pと結合器31nとの間に、終端抵抗(
図15参照)が接続されていてもよい。
【0026】
通信回路100は、第2基板SUB2と、送信経路110と、受信経路120と、結合器131と、第2ポート(
図1ではポート2と記載)132と、を備えている。なお、通信回路100の構成は、通信回路1と同様の構成となっている。例えば、送信経路110の送信器113、及び送信伝送路111は、送信経路10の送信器13、及び送信伝送路11にそれぞれ対応する。同様に、受信経路120の受信伝送路121、キャパシタ122、受信器123、及び抵抗134は、受信経路20の受信伝送路21、キャパシタ22、受信器23、及び抵抗24にそれぞれ対応する。以下の説明では、通信回路100の説明については適宜省略し、通信回路1の構成を中心に説明を行う。
【0027】
送信経路10において、第1ポート32と結合器31との間には、送信伝送路11及び送信器13が設けられている。例えば、送信伝送路11は、第1基板SUB1に形成された配線であり、送信器13と結合器31とを接続する。つまり、送信器13から送信された送信データは、送信伝送路11を介して、結合器31に伝送される。
【0028】
受信経路20には、受信伝送路21と、キャパシタ22と、受信器23と、抵抗24とが設けられている。具体的には、受信伝送路21は、第1基板SUB1に形成された配線であり、送信器13と結合器31との間に設けられている。分岐ノードBから結合器31までの間で、送信伝送路11と受信伝送路21とは共通になっている。
【0029】
受信器23の出力側には、抵抗24が設けられている。なお、受信器23と第1ポート32との間に抵抗24が設けられているが、この抵抗24は無くてもよい。つまり、抵抗24の抵抗値は0Ωであってもよい。
【0030】
受信器23の入力側には、キャパシタ22が設けられている。具体的には、結合器31から受信器23までの受信経路20には、キャパシタ22が配置されている。受信伝送路21pの途中にはキャパシタ22pが設けられ、受信伝送路21nの途中には、キャパシタ22nが設けられている。キャパシタ22は、分岐ノードBから受信器23までの間に配置されている。受信伝送路21は途中で分断されており、その分断箇所にキャパシタ22が形成される。キャパシタ22の一方の電極に結合器31が接続され、他方の電極に受信器23の入力端子が接続されている。このように、受信器23の入力と結合器31との間にキャパシタ22が介在している。キャパシタ22は、電界結合(容量結合)を用いて信号を伝送することができる。
【0031】
送信経路10は、送信データを第1ポート32から結合器31に伝送する。そして、結合器31と結合器131との間の電磁界結合を利用して、通信回路1が送信データを通信回路100に送信する。また、結合器31と結合器131との間の電磁界結合を利用して、通信回路1が送信データを通信回路100から受信する。受信経路20は、受信データを結合器31から受信器23に伝送する。受信器23は受信データを復元する。したがって、受信器23によって復元された受信データが第1ポート32に入力される。
【0032】
送信器13の回路構成の一例を
図2に示す。送信器13は、例えば、信号の立ち上がり時間及び立ち下がり時間を所定値にするリドライバである。
図2では、INが送信器13の入力端子となっており、OUTP、OUTNが差動出力端子となっている。
【0033】
受信器23の回路構成の一例を
図3に示す。受信器23は、例えば、ヒステリシス比較器を有している。
図3では、INP、INNが受信器23の差動入力端子となっており、OUTが受信器23の出力端子となっている。受信器23、及び送信器13には、汎用の半導体チップを用いることができる。例えば、市販されている汎用チップを受信器23、送信器13として第1基板SUB1に実装することができる。
【0034】
次に、通信回路1の回路動作について、
図4~
図6を用いて説明する。
図4~
図6は、回路シミュレーションによって得られた信号波形を示す図である。
図5は、
図4の398ns~405nsを拡大して示し、
図6は
図4の500s~507nsを拡大して示している。ここでは、100ns~500nsの間で、通信回路1が信号を通信回路100に送信し、500ns~900nsの間で、通信回路1が通信回路100からの信号を受信している。
【0035】
図4~
図6において、波形V1は第1ポート32の電位を示す(
図1参照)。波形VO1は、送信器13の出力側のノードの電位を示す(
図1のVO1P、VO1N参照)。VI1は受信器23の入力側のノードの電位を示す(
図1のVI1P、VI1N参照)。波形VO1は送信器13から結合器31の信号波形を示し、波形VI1はキャパシタ22から受信器23までの信号波形を示している。また、差動構成のため、波形VO1Pは結合器31p側の電位を示し、波形VO1Nは結合器31n側の電位を示す。同様に、波形VI1Pはキャパシタ22p側の電位を示し、波形VI1Nはキャパシタ22n側の電位を示す。
図4~
図6では、VO1P、VO1NをまとめてVO1とし、VI1P、VI1NをまとめてVI1として示している。そして、VO1P、VI1Pを実線で示し、VO1N、VI1Nを破線で示している。
【0036】
波形V2、VI2、VO2は、第2基板SUB2側の電位を示し、それぞれV1、VI1、VO1に対応している。つまり、波形V2は、第2ポート132の電位を示す。波形VI2は、受信器123の入力側の電位を示し、VO2は、送信器113の出力側の電位を示す。波形VI2は、差動構成の波形VI2P、VI2Nを示し、波形VO2は差動構成の波形VI2P、VI2Nを示している。
【0037】
まず、第1ポート32から第2ポート132に信号転送される場合を説明する。例えば、第1ポート32に入力されるデジタル信号(V1)が0から1に変化する場合を考える(
図4,
図5で時刻400ns)。第1ポート32に0が入力しているとき、後述するように、受信器23は0を出力している。したがって、次に第1ポート32に1が入力されるためには、受信器23の駆動力が第1ポート32を駆動する回路の駆動力に比べて十分に弱くなければならない。受信器23の駆動力を調整できない市販のチップを用いる場合などには、受信器23の駆動力を弱めるために抵抗24を挿入することがある。
【0038】
抵抗24の抵抗値Rの範囲には制約がある。Rが小さすぎると、第1ポート32にデジタル信号を入力し難くなる。すなわち、受信器23は0を出力し、第1ポート32を駆動する回路(第1ポート32の上流側に接続される不図示の駆動回路)が1を出力する場合、第1ポート32を駆動する回路から抵抗24を介して受信器23の出力に電流が流れ込む。抵抗値Rが十分に大きいと第1ポート32の電位はhighに十分に近づくが、抵抗値Rが小さすぎると第1ポート32の電位は著しく低下してしまう。一方、抵抗値Rが大きいほど受信器23の出力の駆動時間が長くなり高速に信号転送できなくなる。第1ポート32を駆動する回路の出力抵抗が伝送線路の特性インピーダンスに整合した50Ωの場合、抵抗値Rは典型的にはその10倍の500Ωである。
図4~
図6のシミュレーションでは、抵抗値Rが小さい場合の影響が見えるように、抵抗値Rを10Ωとしている。また、キャパシタ22の容量値を10pFとし、伝送レートを20Mbpsとしている。
【0039】
第1ポート32に入力されるデジタル信号が0から1に変化すると(
図5中のD)、送信器13の出力が0から1に変化する(
図5中のE)。この変化が結合器31を介して結合器131に伝搬する。これと同時に、この変化がキャパシタ22を介して受信器23に入力する(
図5中のF)。
【0040】
結合器131には正の極性を持つ小振幅の受信パルスが生じる(
図5のG)。この受信パルスは、キャパシタ122を介して受信器123に入力される(
図5のH)。よって、受信器123のヒステリシス比較器が、受信パルスをデジタル信号の1に復元する(
図5のI)。このようにして、第1ポート32に入力したデジタル信号が第2ポート132に転送される。
【0041】
これと同時に、第1ポート32側では、送信器13の出力の変化がキャパシタ22を介して受信器23に入力される。これにより、受信器23の出力が1に転じる。その結果、前述した、第1ポート32を駆動する回路と受信器23の出力の衝突は解消される(
図5のJ)。第1ポート32には既に1が入力されているので、受信器23が1を出力しても送信器13が再び1を送信することはない(
図5のK)。つまり、たとえると、自分が話した言葉を少し遅れて自分で聞くことになるが、2度以上同じ言葉を繰り返して話すことはない。
【0042】
一方、第2ポート132側では、受信器123が受信したデジタル信号の1が送信器113に入力される。このデジタル信号が入力されるまで0を出力していた送信器113が1を出力する。この変化が電磁界結合を介して第1ポート32側に正の極性の受信パルスを生じる。しかしながら、第1ポート32側の受信器23はすでに先ほど1の受信を完了しているので、このことにより受信器23が再び1を受信することはない。つまり、たとえると、第1ポート32が送信した信号が第2ポート132から山彦のように戻ってくるが、第1ポート32の受信器23も第2ポート132の受信器123もすでに1を受信し終えている。したがって、次には、負の極性の小振幅パルス信号を受信できるように、受信器23,123が入力しきい値を変化させているので、正の極性の入力信号に対しては出力を変化させない。その結果、山彦が2回以上繰り返されることはない。
【0043】
ここでキャパシタ22の容量値Cの大きさの範囲には制約がある。容量値Cが小さいほど、受信器23に入力される受信パルスの振幅が小さくなる。容量値Cが小さすぎると受信器23が信号を受信することができなくなる。一方、容量値Cが大きいほど、転送後に受信器の入力電位が元の電位に戻る時間が(次の逆極性の信号を受信できる準備が整う時間が)長くなる。このために、通信回路1が高速にデータを受信できなくなる。
【0044】
所望の通信速度が20Mbpsで、送信器13の出力インピーダンスが伝送線路結合器の特性インピーダンスと整合した50Ωの場合、50Ωと容量値Cを掛けた時定数がサイクル時間(50ps)の50%程度であるためには、容量値Cが80pF程度になる。回路シミュレーションによると、容量値Cは1pFから60pFの範囲で20Mbpsの双方向通信が可能になる。また、容量値Cが1pFの場合、最大で480Mbpsの双方向通信が可能になる。
【0045】
第1ポート32に入力されるデジタル信号が1から0に変化する場合の回路動作は以上と同様の動作となる。第1ポート32に入力したデジタル信号は、結合器31を介して第2ポート132側に転送される。このデジタル信号は、キャパシタ22の電界結合を介して第1ポート32と第2ポート132で同時に受信される。第1ポート32では第1ポート32自身が送信したデジタル信号を再度受信することになる。第2ポート132は第1ポート32から受信したデジタル信号を第1ポート32に送信することになる。よって、受信器23の最初の送信から少し遅れて第2ポート132から第1ポート32に山彦のように同じ信号が戻ってくる。しかしながら、第1ポート32と第2ポート132の受信器23、123はすでにその信号を受信している。このため、受信器23、123は、次に反対の信号を聞く準備を済ませている。つまり、ヒステリシス比較器で閾値が変化しているので、同じ信号がそれ以上反響(往復)することはない。
【0046】
次に、第2ポート132から第1ポート32に信号を送信する場合について説明する。
図1の回路は、結合器31、131を挟んで第1ポート32側と第2ポート132側で対称な構成となっている。したがって、信号転送の方向が反対になった場合も、送信側と受信側の回路動作は先ほどの説明と同一になる。つまり、第2ポート132が信号を送信すると、第1ポート32が受信する。
図6のV2、VI2,VO2が、それぞれ
図5のV1、VI1,Vo1と同様の信号波形となる。
図6のV1、VI1,VO1が、それぞれ
図5のV2、VI2,VO2と同様の信号波形となる。よって、詳細な説明を省略する。
【0047】
送信器13から出力された送信信号をキャパシタ22の電界結合を介して、受信器23に入力される。送信器13と受信器23とは正帰還する。つまり、送信器13の入力と受信器23の出力は、同じ極性の信号であり、送信器13の出力と受信器23の入力が同じ極性に収束する。また、送信器113と受信器123とは正帰還する。つまり、送信器113の入力と受信器123の出力は、同じ極性の信号であり、送信器113の出力と受信器123の入力が同じ極性に収束する。
【0048】
本実施の形態の構成によれば、半二重通信を簡素な構成で実現することができる。送受信を切り替えるタイミング信号を得ずとも(すなわち非同期に)半二重通信を実現することができる。送信器13、及び受信器23はそれぞれ市販のチップを用いることができる。市販のチップと、受動素子としてのキャパシタ22を組み合わせることで通信回路1を実現できる。よって、開発コストを抑制することができる。これにより、実用性の高い通信回路1を実現することができる。
【0049】
実施の形態2.
図7を用いて、本実施の形態にかかる通信回路1について説明する。
図7は、通信回路1の構成を示すブロック図である。なお、実施の形態では、キャパシタの位置が異なっている。キャパシタの位置以外の構成については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0050】
本実施の形態では、送信器13から結合器31までの間の送信経路10にキャパシタ12が配置されている。キャパシタ12は送信器13の出力側から分岐ノードBまでの間に配置されている。よって、送信伝送路11の途中にキャパシタ12が介在している。このような構成においても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0051】
次に、本実施の形態にかかる通信回路1の回路動作について、
図8~
図10を用いて説明する。
図8~
図10は、回路シミュレーションによって得られた信号波形を示す図である。
図9は、
図8の398ns~405nsを拡大して示し、
図10は
図8の500s~507nsを拡大して示している。ここでは、100ns~500nsの間で、通信回路1が信号を通信回路100に送信し、500ns~900nsの間で、通信回路1が通信回路100からの信号を受信している。
【0052】
本実施の形態では、キャパシタ12が受信器23の入力ではなく送信器13の出力に接続されている。実施形態1では、送信器13から結合器31、131とキャパシタ122とキャパシタ22を介して、他方の受信器123にデジタル信号が入力されている。実施形態2では、送信器13からキャパシタ12と結合器31,131とキャパシタ122を介して、他方の受信器123にデジタル信号が入力される。したがって、実施の形態2の通信回路1の回路動作は実施の形態1の通信回路1と実質的に同一となる。よって、
図8~
図10の信号波形は、
図4~
図6と同様になる。
【0053】
ただし、実施形態1では、受信器23の入力信号のコモンモードを受信可能な電位に設定する回路が受信器23側に必要になる。例えば、
図3のVbが電位を設定する回路となる。これに対して、実施形態2では、受信器23の入力信号のコモンモードは結合器31の終端電位になるので、結合器31の終端電位を受信器23が受信可能な電位に設定しなければならない(実際には
図15に示す終端抵抗31R=100Ω)の中点を終端電位に接続する。)。
【0054】
実施の形態1と同様に、送信器13と受信器23とは正帰還する。本実施の形態の構成によれば、半二重通信を簡素な構成で実現することができる。送受信を切り替えるタイミング信号を得ずとも(すなわち非同期に)半二重通信を実現することができる。市販のチップ(例えば、送信器13又は受信器23)と、受動素子としてのキャパシタ12を組み合わせることで通信回路1を実現できる。よって、開発コストを抑制することができる。これにより、実用性の高い通信回路1を実現することができる。
【0055】
実施の形態3.
図11を用いて実施の形態3の通信回路1について説明する。
図11は、通信回路1の構成を示すブロック図である。実施形態1のキャパシタ22がトランス25に置き換わっている。トランス25以外の構成は、実施の形態1と同様であるため、詳細な説明を省略する。なお、
図11では、通信回路100の構成は通信回路1と同様であるため、通信回路100側の結合器131以外の構成を省略している。
【0056】
トランス25は、1次インダクタンス25L1と2次インダクタンス25L2を備えている。1次インダクタンス25L1と2次インダクタンス25L2はそれぞれコイルであり、互いに平行に配置されている。トランス25の2つのインダクタンス25L1、25L2は、非接触で、磁界結合(誘導結合)している。トランス25は磁界結合を用いて信号の変化を転送できるので、実施形態1と同様の回路動作をする。
【0057】
実施の形態1と同様に、送信器13と受信器23とは正帰還する。本実施の形態の構成によれば、半二重通信を簡素な構成で実現することができる。送受信を切り替えるタイミング信号を得ずとも(すなわち非同期に)半二重通信を実現することができる。市販のチッ(例えば、送信器13又は受信器23)と、受動素子としてのトランス25を組み合わせることで通信回路1を実現できる。よって、開発コストを抑制することができる。これにより、実用性の高い通信回路1を実現することができる。
【0058】
なお、
図11では、トランス25が受信器23の入力側に配置されているが、実施の形態2のキャパシタ12と同様に、トランス25が受信器23の出力側に配置されていてもよい、この構成によっても、同様の効果を得ることができる。トランス25は、受信伝送路21ではなく、送信伝送路11に配置してもよい。つまり、
図7のキャパシタ12の代わりにトランス25を配置してもよい。
【0059】
実施の形態4.
図12を用いて実施の形態4の通信回路1について説明する。
図12は、実施形態4の通信回路1の構成を示すブロック図である。
図12では、実施の形態1のキャパシタ22が伝送線路結合器26と伝送線路結合器27に置き換わっている。なお、伝送線路結合器26、27以外の構成は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
図12では、通信回路100の構成は通信回路1と同様であるため、通信回路100側の結合器131以外の構成を省略している。
【0060】
伝送線路結合器26、27は、第1基板SUB1上に形成された伝送線路(配線パターン)により構成されている。伝送線路結合器26、27の詳細な構成を
図13に示す。
図13は、第1基板SUB1上の伝送線路結合器26、27のレイアウトを示す図である。伝送線路結合器26の差動対を伝送線路結合器26p、26nとする。伝送線路結合器27の差動対を伝送線路結合器27p、27nとする。
【0061】
伝送線路結合器26pは、第1伝送線路261pを有し、伝送線路結合器26nは、第1伝送線路261nを有している。第1伝送線路261pと第1伝送線路261nをまとめて、第1伝送線路261とも称する。伝送線路結合器27pは、第2伝送線路271pを有し、伝送線路結合器27nは、第2伝送線路271nを有している。第2伝送線路271pと第2伝送線路271nをまとめて、第2伝送線路271とも称する。
【0062】
第1伝送線路261p、第1伝送線路261n、第2伝送線路271p、第2伝送線路271nは同一の第1基板SUB1上に形成された伝送線路(配線パターン)である。伝送線路結合器26、27は、特許文献1の
図33,又は特許文献2の
図2等に示す構成の結合器を用いることができる。
【0063】
第1伝送線路261p、第1伝送線路261nは、差動の伝送線路対であり、結合器31に接続されている。第1伝送線路261pの一端は結合器31pに接続され、第1伝送線路261nの一端は結合器31nに接続されている。さらに、第1伝送線路261pの他端は抵抗26Rに接続され、第1伝送線路261nの他端は抵抗26Rに接続されている。第1伝送線路261pと第1伝送線路261nとが抵抗26Rを介して接続されている。抵抗26Rは、第1伝送線路261pと第1伝送線路261nとを終端する終端抵抗となる。
【0064】
第2伝送線路271p、第2伝送線路271nは、差動の伝送線路対であり、受信器23の入力側に接続されている。第2伝送線路271pの一端は、受信器23の正極の入力端子に接続され、第2伝送線路271nの一端は、受信器23の負極の入力端子に接続される。さらに、第2伝送線路271nの他端は抵抗27Rに接続され、第2伝送線路271nの他端は抵抗27Rに接続されている。第2伝送線路271pと第2伝送線路271nとが抵抗27Rを介して接続されている。抵抗27Rは、第2伝送線路271pと第2伝送線路271nとを終端する終端抵抗となる。
【0065】
第1伝送線路261pと第2伝送線路271pとは、電磁界結合している。第1伝送線路261pと第2伝送線路271pとは、正極の差動信号を電磁界結合により伝送する。例えば、第1伝送線路261pと第2伝送線路271pとは、絶縁体を介して対向して配置されている。具体的には、第1伝送線路261pと第2伝送線路271pと互いに平行に形成され、近接配置された2つの伝送線路(配線パターン)である。第1伝送線路261pと第2伝送線路271pとは、異なる配線層で形成されていてもよく、同じ配線層で形成されていてもよい。
【0066】
第1伝送線路261pと第2伝送線路271pとが異なる配線層で形成されている場合、第1基板SUB1の厚さ方向と直交する平面視において、第1伝送線路261pと第2伝送線路271pとは、絶縁層を介して重複するように配置される。第1伝送線路261pと第2伝送線路271pとが同じ配線層で形成されている場合、平面視において第1伝送線路261pと第2伝送線路271pとは、近接して平行に配置される。
【0067】
第1伝送線路261nと第2伝送線路271nとは、第1伝送線路261pと第2伝送線路271pと同様に電磁界結合している。第1伝送線路261nと第2伝送線路271nとは、負極の差動信号を電磁界結合により伝送する。第1伝送線路261nと第2伝送線路271nとは、第1伝送線路261pと第2伝送線路271pと同様に、絶縁体を介して対向して配置されている。第1伝送線路261nと第2伝送線路271nと互いに平行に形成され、近接配置された2つの伝送線路(配線パターン)である。第1伝送線路261nと第2伝送線路271nとは、異なる配線層で形成されていてもよく、同じ配線層で形成されていてもよい。
【0068】
第1伝送線路261nと第2伝送線路271nとが異なる配線層で形成されている場合、第1伝送線路261nと第2伝送線路271nとは、平面視におい絶縁層を介して重複するように配置される。第1伝送線路261nと第2伝送線路271nが同じ配線層で形成されている場合、平面視において、第1伝送線路261nと第2伝送線路271nとは、近接して平行に配置される。
【0069】
伝送線路結合器26、27は電磁界結合を用いて信号の変化を転送できるので、実施形態1と同様の回路動作をする。本実施の形態の構成によれば、半二重通信を簡素な構成で実現することができる。送受信を切り替えるタイミング信号を得ずとも(すなわち非同期に)半二重通信を実現することができる。市販のチップ(例えば、送信器13又は受信器23)や受動素子としての伝送線路(第1伝送線路261p、261n、第2伝送線路271p、271n)を組み合わせることで通信回路1を実現できる。よって、開発コストを抑制することができる。これにより、実用性の高い通信回路1を実現することができる。
【0070】
実施の形態5.
図14を用いて実施の形態5の通信回路1について説明する。
図14は、実施形態5の通信回路1の構成を示すブロック図である。実施の形態5では、実施の形態4と同様に、同一の第1基板SUB1上に形成された伝送線路結合器26p、26n、27p、27nが用いられている。実施の形態4では、送信伝送路11に分岐ノードBが設けられているのに対して、実施の形態5では、伝送線路結合器で信号を分岐している。つまり、第1基板SUB1上に分岐ノードBがないため、信号反射を少なくすることができる。
【0071】
また、実施形態1と通信動作は同様であるが、キャパシタ22ではなく伝送線路結合器26、27で信号を分岐しているので、受信器23の入力コモンモード電位が信号受信後にすばやく元の電位に戻ることができる。従って、本実施の形態の構成により、高速にデータを転送できる。
【0072】
なお、通信回路100の構成は通信回路1と同様である。例えば、伝送線路結合器126p、126n、127p、127nがそれぞれ伝送線路結合器26p、26n、27p、27nに対応している。したがって、通信回路100の説明を省略する。
【0073】
図15は、第1基板SUB1上の伝送線路結合器26、27のレイアウトを示す図である。第1伝送線路261pの一端は、送信器13の出力に接続され、他端は結合器31pに接続されている。つまり、送信器13と結合器31pは、第1伝送線路261pを介して接続されている。第1伝送線路261nの一端は、送信器13の出力に接続され、他端は結合器31nに接続されている。結合器31pと結合器31nは終端抵抗31Rにより終端されている。つまり、送信器13と結合器31nは、第1伝送線路261nを介して接続されている。
【0074】
第2伝送線路271p、271nは、実施の形態4と同様に受信器23の入力に接続されている。第1伝送線路261pと第2伝送線路271pは、電磁界結合している。第1伝送線路261pと第2伝送線路271pは異なる配線層で形成され、絶縁膜を介して重複している。なお、第1伝送線路261pと第2伝送線路271pとは、同じ配線層で形成されていてもよい。
【0075】
第1伝送線路261nと第2伝送線路271nは、電磁界結合している。第1伝送線路261nと第2伝送線路271nは異なる配線層で形成され、絶縁膜を介して重複している。なお、第1伝送線路261nと第2伝送線路271nとは、同じ配線層で形成されていてもよい。
【0076】
よって、結合器31が受信した受信信号は、伝送線路結合器26と伝送線路結合器27の電磁界結合により、受信器23に入力される。また、送信器13からの送信信号は、伝送線路結合器26を介して、結合器31に入力される。
【0077】
送信信号は、結合器31及び結合器131の電磁界結合によって、通信回路100に送信される。通信回路100の受信器123が送信信号を復元する。これにより、通信回路100の第2ポート132が送信信号を受信する。
【0078】
第2ポート132が受信した送信信号は、第2基板SUB2上の、送信器113、伝送線路結合器126を介して、結合器131に送信される。送信信号は、結合器131及び結合器31の電磁界結合によって、通信回路1に送信される。通信回路1に戻ってきた送信信号は、伝送線路結合器26と伝送線路結合器27の電磁界結合によって、受信器23に入力される。つまり、通信回路1から通信回路100に送信された送信信号が、通信回路100から通信回路1に戻ってくる。
【0079】
伝送線路結合器26と伝送線路結合器27の結合係数をk、伝送線路結合器126と伝送線路結合器127の結合係数をk、結合器31と結合器131の結合係数をk0とする。受信器123に入力される信号は送信器13が出力する信号の(1-k)*k0*k倍に減衰する。したがって、k=0.5とすると、受信信号を最大にすることができる。
【0080】
図16~
図18は、回路シミュレーションによって得られた信号波形を示す図である。
図17は、
図16の398ns~405nsを拡大して示し、
図18は
図16の500s~507nsを拡大して示している。ここでは、100ns~500nsの間で、通信回路1が信号を通信回路100に送信し、500ns以降に、通信回路1が通信回路100からの信号を受信している。なお、
図16~
図18では、VTL1、VTL2の信号波形が追加されている。VTL1は、結合器31と伝送線路結合器26との間のノードの電位を示し、VTL2は、結合器131と伝送線路結合器126との間のノードの電位を示している。信号波形VTL1、VTL2において、正極側の差動信号の波形VTL1P、VTL2Pを実線で示し、負極側の差動信号の波形VTL1N、VTL2Nを破線で示している
【0081】
実施の形態5の構成においても、実施の形態1と同様の回路動作を行うことができる。したがって、実施の形態1と同様の信号波形となる。本実施の形態の構成によれば、半二重通信を簡素な構成で実現することができる。送受信を切り替えるタイミング信号を得ずとも(すなわち非同期に)半二重通信を実現することができる。また、送信経路10、及び受信経路20に分岐ノードBがないため、信号反射を抑制することができる。
【0082】
実施の形態6.
図19を用いて実施の形態6の通信回路1について説明する。
図19は、本実施形態の通信回路1の構成を示すブロック図である。実施の形態6では、実施の形態5の受信器23と送信器13の配置を入れ替えている。
【0083】
つまり、伝送線路結合器26pが結合器31pと受信器23との間に配置された伝送線路を有している。伝送線路結合器26nが結合器31nと受信器23との間に配置された伝送線路を有している。伝送線路結合器27p、27nが送信器13の出力側に接続されている。この構成においても実施の形態5の通信回路1と同様の動作を行うことができる。半二重通信を簡素な構成で実現することができる。送受信を切り替えるタイミング信号を得ずとも(すなわち非同期に)半二重通信を実現することができる。また、送信経路10、及び受信経路20に分岐ノードBがないため、信号反射を抑制することができる。
【0084】
実施の形態7.
本実施の形態に係る通信回路1について、
図20を用いて説明する。
図20は本実施形態の通信回路1の構成を示すブロック図である。本実施の形態では、通信回路1は、信号を中継する中継器となっている。
【0085】
通信回路1は、通信回路300からの信号を中継して、通信回路100に送信する。また、通信回路1は、通信回路100からの信号を中継して、通信回路300に送信する。このように、通信回路1は、双方向の中継器となっている。
【0086】
通信回路100、及び通信回路300は、実施の形態1で示した通信回路100と同様の構成となっているため、説明を省略する。あるいは、通信回路100,通信回路300は、本実施の形態にかかる通信回路1と同様の構成を有する中継器となっていてもよい。この場合、信号を2回以上中継することができる。
【0087】
本実施の形態では、実施の形態1の通信回路1に対して、キャパシタ12、受信器18、及び送信器28が追加されている。さらに、結合器35p、35n(以下、まとめて結合器35とも称する)が追加されている。また、実施の形態1の通信回路1に対して、抵抗24が省略されている。実施の形態1と同様の構成については適宜説明を省略する。
【0088】
結合器35は、結合器31と同様の電磁界結合器である。結合器35は、通信相手の通信回路300の結合器331と電磁界結合している。結合器35から結合器31までの送信経路10には、キャパシタ12、受信器18,送信器13がこの順で直列に接続されている。従って、受信器18と結合器35との間には、送信器13が配置されている。送信器13は、受信器18が復元した信号を結合器31に出力する。受信器18と結合器31との間には、キャパシタ12が配置されている。キャパシタ12と結合器35との間には、第1ポート32が設けられている。つまり、結合器35は、第1ポート32と接続されている。
【0089】
結合器31から結合器35までの受信経路20には、キャパシタ22、受信器23,送信器28がこの順で直列に接続されている。従って、受信器23と結合器35との間には、キャパシタ22が配置されている。受信器23と結合器31との間には、送信器28が配置されている。送信器28は、受信器23が復元した信号を結合器35に出力する。
【0090】
なお、実施の形態1~7は適宜組み合わせることが可能である。例えば、中継器となる実施の形態7の通信回路1において、キャパシタ22、12の代わりに、トランス25を用いてもよく、伝送線路結合器26、伝送線路結合器27を用いてもよい。
【0091】
以上まとめると、本実施の形態にかかる通信回路1は、通信相手の結合器と電磁界結合する第1の通信用結合器と、前記第1の通信用結合器から送信される送信データが入力されるとともに、第1の通信用結合器が受信した受信データを出力する第1ポートと、前記第1ポートから前記第1の通信用結合器に前記送信データを伝送する送信経路と、前記第1の通信用結合器から前記第1ポートに前記受信データを伝送する受信経路と、前記送信経路に配置され、前記第1ポートからの前記送信データを前記第1の通信用結合器に出力する送信器と、前記受信経路に配置され、前記第1の通信用結合器を介して受信した前記受信データを復元する受信器と、を備えている。
【0092】
通信回路1による通信方法は、前記第1ポートに入力された前記送信データを前記送信器が送信信号として出力するステップと、前記送信器から出力された送信信号を伝送用結合器の電磁界結合を介して、前記受信器に入力するステップとを備えている。
【0093】
また、通信回路1は、前記第1の結合器から前記送信器までの間の前記送信経路、又は前記第1の結合器からの前記受信器までの前記受信経路に配置された伝送用結合器であって、前記送信データ又は前記受信データを電磁界結合により伝送する前記伝送用結合器、を備えている。
【0094】
伝送用結合器の配置例を
図21~
図25に示す。なお、
図21~
図25において、結合器31が第1の通信用結合器となっている。
図21では、伝送用結合器29が結合器31と受信器23との間の受信経路20に配置されている。
図22では、伝送用結合器19が結合器31と送信器13との間の送信経路10に配置されている。
図21は、実施の形態1,又は3に対応し、
図22は、実施の形態2に対応するため、詳細な説明を省略する。
【0095】
伝送用結合器19、29は、実施の形態1、2、7のキャパシタ22、又は実施の形態3のトランス25等の受動素子を有している。あるいは、伝送用結合器19、29は、実施の形態4~6のように、第1伝送線路261及び第2伝送線路271のような受動素子を有している。
【0096】
図23,
図24では、伝送用結合器19、29が分岐を構成する配置例を示している。伝送用結合器29が実施の形態5,6の伝送線路結合器26、27に対応している。
図23は、実施の形態6に対応し、
図24は、実施の形態5に対応する。
図23、
図24の基本的な構成は実施の形態5、6と同様であるため説明を省略する。
【0097】
図24では、伝送用結合器19が、
図15に示したように伝送線路結合器26、及び伝送線路結合器27を有している。そして、第1伝送線路261は、送信器13を結合器31に接続する。第2伝送線路271は、受信器23に接続されている。
【0098】
図23では、伝送用結合器29が、伝送線路結合器26、及び伝送線路結合器27を有している。ここでは、
図15と異なり、第1伝送線路261は、受信器23を結合器31に接続する。第2伝送線路271は、送信器13に接続されている。
【0099】
図25は、実施の形態7に示したように、通信回路1が中継器となっている。つまり、通信回路100と通信回路300との間のデータ通信を通信回路1が中継している。受信器123と結合器131との間の受信経路120には、伝送用結合器129が配置されている。受信器323と結合器331との間の受信経路320には、伝送用結合器329が配置されている。なお、伝送用結合器129は実施の形態2のように、結合器131と送信器113との間の送信経路110に配置されていてもよい。同様に、伝送用結合器329は実施の形態2のように、結合器331と送信器313との間の送信経路310に配置されていてもよい。
【0100】
第3ポート332からの送信データが、中継基板となる通信回路1を介して、第2ポート132に送信される。
図25の基本的な構成は上記と同様であるため説明を省略する。
図25に示す伝送用結合器29、129,329は、実施の形態1、2、7のキャパシタ22、又は実施の形態3のトランス25等の受動素子を有している。あるいは、伝送用結合器29、129,329は、実施の形態4~6のように、第1伝送線路261と第2伝送線路271のような受動素子を有している。
【0101】
図21~
図25の構成によれば、タイミング信号を用いずとも、半二重通信を行なうことができる。なお、
図21~
図25において抵抗24、124,324の抵抗値は0Ωでもよい。つまり、抵抗24、124,324は省略可能である。
【0102】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0103】
この出願は、2019年4月15日に出願された日本出願特願2019-77261を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0104】
1 通信回路
10 送信経路
11 送信伝送路
12 キャパシタ
13 送信器
20 受信経路
21 受信伝送路
22 キャパシタ
23 受信器
24 抵抗
25 トランス
26p、26n、27p、27n 伝送線路結合器
26R、27R 抵抗
261p、261n 第1伝送線路
271p、271n 第2伝送線路
29 伝送用結合器
31 結合器
32 第1ポート
100 通信回路
131 結合器
132 第2ポート