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特許73208782液型塗料組成物ならびにそれを用いた塗膜および塗装物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】2液型塗料組成物ならびにそれを用いた塗膜および塗装物
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20230728BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230728BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230728BHJP
【FI】
C09D175/04
C09D7/61
C09D7/63
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022169603
(22)【出願日】2022-10-24
【審査請求日】2022-11-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591242405
【氏名又は名称】イサム塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(74)【代理人】
【識別番号】100150326
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 知久
(72)【発明者】
【氏名】三崎 義治
(72)【発明者】
【氏名】清水 憲一
(72)【発明者】
【氏名】松本 幸二
(72)【発明者】
【氏名】河合 純兵
(72)【発明者】
【氏名】瀧上 知也
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-163204(JP,A)
【文献】特開平02-000620(JP,A)
【文献】特開2001-329223(JP,A)
【文献】特開2022-158089(JP,A)
【文献】特開2002-275415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
C09D 7/61
C09D 7/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤と硬化剤とを含む2液型塗料組成物であって、
該主剤が、10質量部~40質量部のポリオール成分、30質量部~60質量部の粘性付与剤、および1質量部~10質量部の模様形成剤を含有し、
該硬化剤が、5質量部~60質量部のポリイソシアネートを含有し、
該ポリオール成分が、ポリエステル系ポリオールおよびアクリル系ポリオールを含有し、
該模様形成剤がベントナイトを含有する、2液型塗料組成物。
【請求項2】
前記アクリル系ポリオールの含有量が、質量を基準として前記ポリエステル系ポリオールの含有量の2.5倍~4.5倍である、請求項に記載の2液型塗料組成物。
【請求項3】
前記粘性付与剤が、炭酸カルシウムおよびタルクからなる群か選択される少なくとも1種の材料を含有する、請求項1に記載の2液型塗料組成物。
【請求項4】
前記硬化剤が、さらに1質量部~5質量部の金属密着性付与剤を含有し、該金属密着性付与剤がシラン化合物を含有する、請求項1に記載の2液型塗料組成物。
【請求項5】
塗料希釈液を含有しない、請求項1に記載の2液型塗料組成物。
【請求項6】
自動車用塗料として使用される、請求項1からのいずれかに記載の2液型塗料組成物。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載の2液型塗料組成物の前記主剤と前記硬化剤とを配合してなる塗料組成物。
【請求項8】
請求項に記載の塗料組成物の硬化物である、塗膜。
【請求項9】
基材と、該基材上に配置された請求項に記載の塗膜とを含む、塗装物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液型塗料組成物ならびにそれを用いた塗膜および塗装物に関する。
【背景技術】
【0002】
大型トラック、軽トラックピックアップトラックなどの貨物車両では、荷台への様々な荷物の積み込みや積み下ろしが行われる。また、幌なしの貨物車両では荷台が炎天下や風雨に直接曝されることもある。貨物車両の荷台表面は、常に衝撃や摩耗による損傷または擦り傷、雨水や海水に加え、酸やアルカリ、ガソリンなどに対する腐食の懸念にも晒されている。
【0003】
このような貨物車両の荷台における耐衝撃性や耐擦傷性、耐食性を向上させるために、スプレーオン・ベッドライナーとも呼ばれる塗料組成物が当該荷台に付与されることがある。また、近年では、様々な車両の意匠性および外観を高めるために、このような塗料組成物は車両のボディ全体または部分的に使用されるカスタム塗装用の塗料としても注目されている。いわゆるマットな質感とともに、耐擦傷性や耐食性などの優れた機能が塗膜に提供される点で、カスタムカーなどの自動車のカスタマイズにおけるニーズに合致するためである。
【0004】
しかし、このような塗料組成物については、さらなる技術開発が求められている。例えば、鋼材などの基材に対してプライマーなしで塗布した場合に塗膜が十分な接着性を有しておらず、経時で塗膜が剥がれ易い点が挙げられる。さらに、耐擦傷性や耐衝撃性についてもさらなる改良が期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、優れた耐衝撃性および耐食性を有し、かつ厚塗りが可能な2液型塗料組成物ならびにそれを用いた塗膜および塗装物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、主剤と硬化剤とを含む2液型塗料組成物であって、
該主剤が、10質量部~40質量部のポリオール成分、および30質量部~60質量部の粘性付与剤を含有し、
該硬化剤が、5質量部~30質量部のポリイソシアネートを含有し、
該ポリオール成分が、少なくとも2種のポリオールで構成されている、2液型塗料組成物である。
【0007】
1つの実施形態では、上記ポリオール成分は、ポリエステル系ポリオールおよびアクリル系ポリオールを含む。
【0008】
さらなる実施形態では、上記アクリル系ポリオールの含有量は、質量を基準として上記ポリエステル系ポリオールの含有量の2.5倍~4.5倍である。
【0009】
1つの実施形態では、上記粘性付与剤は、炭酸カルシウムおよびタルクからなる群か選択される少なくとも1種の材料を含有する。
【0010】
1つの実施形態では、上記主剤は、さらに5質量部~10質量部の模様形成剤を含有し、該模様形成剤は、非晶質シリカおよびベントナイトからなる群から選択される少なくとも1種の材料物を含有する。
【0011】
1つの実施形態では、上記硬化剤は、さらに1質量部~5質量部の金属密着性付与剤を含有し、該金属密着性付与剤がシラン化合物を含有する。
【0012】
1つの実施形態では、本発明の2液型塗料組成物は塗料希釈液を含有しない。
【0013】
1つの実施形態では、本発明の2液型塗料組成物は自動車用塗料として使用される。
【0014】
本発明はまた、上記2液型塗料組成物の上記主剤と上記硬化剤とを配合してなる塗料組成物である。
【0015】
本発明はまた、上記塗料組成物の硬化物である、塗膜である。
【0016】
本発明はまた、基材と、該基材上に配置された上記塗膜とを含む、塗装物である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐衝撃性および耐食性に優れた塗膜を提供することができる。本発明の2液型塗料組成物はまた、様々な基材に対してプライマーレスで塗膜を形成することができる。さらに本発明の2液型塗料組成物は黒色以外の調色も当業者が簡便に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳述する。
【0019】
(2液型塗料組成物)
本発明の2液型塗料組成物は主剤と硬化剤とを含む。
【0020】
本発明において、主剤と硬化剤とは通常別々の容器中に保管され、使用の際に混合して使用するものである。本発明の2液型塗料組成物はウレタン塗料の一種である。
【0021】
(主剤)
主剤は、ポリオール成分および粘性付与剤を含有する。
【0022】
ポリオール成分は、いわゆるポリオール全般を包含して言い、例えば、アクリル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリウレタン系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール等が挙げられる。
【0023】
アクリル系ポリオールは、水酸基を含有する(メタ)アクリル酸エステルと重合性不飽和基を有する化合物との共重合体である。
【0024】
水酸基を含有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、および4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0025】
重合性不飽和基を有する化合物は、上記水酸基する含有(メタ)アクリル酸エステルを除くものであって、例えば、スチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、および(メタ)アクリロニトリル、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0026】
ポリエステル系ポリオールは、多価アルコールと多塩基カルボン酸との脱水縮合反応により得られたものである。
【0027】
多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトール、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0028】
多塩基カルボン酸の例としては、フタル酸、マレイン酸、トリメリット酸、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、セバシン酸、ピメリン酸、およびスベリン酸、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0029】
なお、上記ポリエステル系ポリオールを得る際には、上記多塩基カルボン酸とともに、大豆油、アマニ油、米ぬか油、ヒマシ油、パーム油などの天然油脂を多価アルコールで分解して得られる脂肪酸エステルを、多価アルコールに代えてあるいは多価アルコールに加えて使用してもよい。
【0030】
ポリウレタン系ポリオールは、多価アルコールとポリイソシアネートとの反応生成物であり、例えば過剰のアルコール存在下でそれらの反応を行うことにより得ることができる。
【0031】
ポリウレタン系ポリオールを得ることのできる多価アルコールの例は、上記ポリエステル系ポリオールを得る際に使用する多価アルコールと同様である。
【0032】
ポリイソシアネートの例としては、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、およびリジンジイソシアネート、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0033】
なお、上記ポリウレタン系ポリオールを得る際には、上記ポリイソシアネートとともに、上記多価アルコールに代えて、あるいは上記多価アルコールに加えて、上記脂肪酸エステルを使用してもよい。
【0034】
ポリエーテル系ポリオールは、多価アルコールとアルキレンオキシドとの反応付加生成物である。
【0035】
ポリエーテル系ポリオールを得ることのできる多価アルコールの例は、上記ポリエステル系ポリオールを得る際に使用する多価アルコールと同様である。
【0036】
アルキレンオキシドの例としては、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシド、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
なお、上記ポリエーテル系ポリオールを得る際には、上記アルキレンオキシドとともに、上記多価アルコールに代えて、あるいは上記多価アルコールに加えて、上記脂肪酸エステルを使用してもよい。
【0038】
本発明においては、
例えば、自動車等の荷台への塗装を想定した際に、塗膜性能として重量物の積載に耐え得る耐久性と屋外使用に耐え得る耐候性との両方を高めることができるという理由から、ポリオール成分は少なくとも2種のポリオールで構成されている。本発明においては、ポリオール成分としてポリエステル系ポリオールおよびアクリル系ポリオールを含有していることが好ましい。
【0039】
ポリオール成分として、ポリエステル系ポリオールおよびアクリル系ポリオールを含有する場合、アクリル系ポリオールの含有量は、質量を基準としてポリエステル系ポリオールの含有量の好ましくは2.5倍~4.5倍、より好ましくは2.9倍~3.4倍である。質量を基準として、アクリル系ポリオールの含有量がポリエステル系ポリオールの含有量の2.5倍を下回ると、耐候性が悪化し、長期間経過すると退色および密着性の低下に伴って得られる塗膜が劣化し剥離することがある。質量を基準として、アクリル系ポリオールの含有量がポリエステル系ポリオールの含有量の4.5倍を上回ると、耐薬品性が悪くなり、酸性雨や洗浄する際の薬液に侵されやすくなることがある。
【0040】
粘性付与剤は、主剤と硬化剤とを配合した際の混合組成物(以下、塗料組成物ということがある)に適度な粘性を付与することができるものである。粘性付与剤の例としては、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、および水酸化アルミニウム、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。塗装時の流動性を調整し易いという理由から、粘性付与剤は、炭酸カルシウムおよびタルク、ならびにそれらの組み合わせが好ましい。
【0041】
本発明において、主剤を構成する上記ポリオール成分および粘性付与剤は両者が適切な含有量となるように調製されていることが好ましい。例えば、後述の粘性付与剤の含有量との関係において、主剤における上記ポリオール成分の含有量は、10質量部~40質量部、好ましくは15質量部~25質量部である。主剤に含まれるポリオール成分の含有量が10質量部を下回ると、塗膜を形成する際に内部に気泡が発生し易い、および/または表面が一部白化して塗膜の強度が十分に担保されないことがある。主剤に含まれるポリオール成分の含有量が40質量部を上回ると、主剤、およびこれと硬化剤とを配合した塗料組成物が反応しきらず、硬化不良となることがある。
【0042】
また、上記ポリオール成分の含有量との関係において、主剤における上記粘性付与剤の含有量は、30質量部~60質量部、好ましくは37質量部~47質量部である。主剤に含まれる粘性付与剤の含有量が30質量部を下回ると、主剤、およびこれと硬化剤とを配合した塗料組成物は適度な粘性を有しておらず、各種基材に付与しても流動し易く、厚みのある塗膜を形成することが困難となることがある。主剤に含まれる粘性付与剤の含有量が60質量部を上回ると、主剤、およびこれと硬化剤とを配合した塗料組成物は粘性が高すぎて塗装することが困難になることがある。
【0043】
主剤はまた、必要に応じて模様形成剤を含有していてもよい。
【0044】
模様形成剤は、本発明の2液型塗料組成物を例えば大口径のスプレーガンにて塗装した際に、凹凸感のある塗膜を形成し得る役割を果たす。模様形成剤の例としては、非晶質シリカ、ベントナイト、セピオライトおよび硅砂、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。スプレーガンで塗装できる粘度に調整可能であり、スプレーガンが破損する可能性を低減することができるという理由から、非晶質シリカおよびベントナイト、ならびにそれらの組み合わせが好ましい。
【0045】
また、上記ポリオール成分の含有量との関係において、主剤における上記模様形成剤の含有量は、好ましくは1質量部~10質量部、より好ましくは3質量部~6質量部である。主剤に含まれる模様形成剤の含有量が1質量部を下回ると、基材に付与されかつ硬化して得られる塗膜に十分な凹凸が形成され難くなることがある。主剤に含まれる模様形成剤の含有量が10質量部を上回ると、基材に付与されかつ硬化して得られる塗膜の凹凸が大きくなり、基材との密着性および塗膜強度が低下することがある。
【0046】
さらに、主剤はその他の成分として第1の添加剤を含有していてもよい。第1の添加剤としては、必ずしも限定されないが、例えば、顔料(例えば、黒色顔料、白色顔料、赤色顔料、青色顔料、および黄色顔料)、分散剤、消泡剤、防錆剤、脱水剤、レベリング剤、沈降防止剤、ダレ止め剤、防藻剤、防カビ剤、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定剤、および塗料希釈剤、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。主剤に含まれ得る第1の添加剤の含有量は特に限定されず、適切な量が当業者によって適宜選択され得る。なお、本発明においては、環境保護や人体に対する安全性の確保の観点から、主剤には塗料希釈剤を含まないか、あるいはできる限りその含有量が低減されていることが好ましい。
【0047】
(硬化剤)
硬化剤は、ポリイソシアネートを含有する。
【0048】
ポリイソシアネートは、反応性が比較的低くかつ優れた耐候性を有するとの理由から、脂肪族ポリイソシアネートが好ましい。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、ジシクロヘキサンメタン-4,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネート、ならびにこれらの変性体(例えばビウレット変性体、イソシアヌレート変性体、およびウレトジオン変性体)の1つまたはそれ以上の組み合わせが挙げられる。特に優れた耐候性を有しているとの理由から、脂肪族ポリイソシアネートはヘキサメチレンジイソシアネートであることが好ましい。
【0049】
本発明において、硬化剤に含まれる上記ポリイソシアネートの含有量は、例えば、上記主剤を構成するポリオール成分および/または粘性付与剤の含有量との関係において、5質量部~30質量部、好ましくは10質量部~20質量部である。硬化剤に含まれるポリイソシアネートの含有量が5質量部を下回ると、塗料組成物が反応しきらず、硬化不良となることがある。硬化剤に含まれるポリイソシアネートの含有量が30質量部を上回ると、塗料組成物内に気泡が発生し、塗膜強度が低下することがある。
【0050】
硬化剤はまた、必要に応じて金属密着性付与剤を含有していてもよい。
【0051】
金属密着性付与剤は、本発明の2液型塗料組成物が硬化した際に、得られる塗膜と基材(特に金属製基材)との間の密着性を高める役割を果たす。金属密着性付与剤の例としては、シラン化合物(例えば、トリメトキシ-[3-(オキシシラン-2-イルメトキシ)プロピル]シラン)、カルボキシル基を有する密着向上剤(例えば、Borchers GmbH社のBorchi Gen HMP-F)、およびビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、DIC株式会社製EPICLON 840)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。硬化剤の保存品質を維持することができるという理由から、シラン化合物が好ましく、トリメトキシ-[3-(オキシシラン-2-イルメトキシ)プロピル]シランがより好ましい。
【0052】
また、上記ポリオール成分の含有量との関係において、硬化剤における上記金属密着性付与剤の含有量は、好ましくは0.5質量部~5質量部、より好ましくは1質量部~3質量部である。硬化剤に含まれる金属密着性付与剤の含有量が0.5質量部を下回ると、特に鋼板のような金属製基材に対して得られる塗膜に十分な密着性を提供することができず、容易に剥離し易くなることがある。硬化剤に含まれる金属密着性付与剤の含有量が5質量部を上回ると、基材に対する塗膜の密着性はそれ以上変化しないことがある。
【0053】
さらに、硬化剤はその他の成分として第2の添加剤を含有していてもよい。第2の添加剤としては、必ずしも限定されないが、例えば、脱水剤(例えばオルトギ酸エチル)、および塗料希釈剤、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。硬化剤に含まれ得る第2の添加剤の含有量は特に限定されず、適切な量が当業者によって適宜選択され得る。なお、本発明においては、環境保護や人体に対する安全性の確保の観点から、硬化剤には塗料希釈剤を含まないか、あるいはできる限りその含有量が低減されていることが好ましい。
【0054】
本発明の2液型塗料組成物は、例えば、大型トラック、軽トラックピックアップトラックなどの貨物車両の荷台や自動車全般の外装をコーティングするための自動車用塗料、船底塗料、および住宅用塗料として有用である。
【0055】
(塗料組成物、塗膜および塗装物)
本発明の塗料組成物は、上記2液型塗料組成物の主剤と硬化剤とを配合したものである。
【0056】
例えば、上記2液型塗料組成物の主剤と硬化剤とを合わせて略均一となるように混合することにより、当該主剤と硬化物との反応が促進され、徐々に硬化して降下物である塗膜が形成される。形成され得る塗膜の厚さは、2液型塗料組成物の使用量、基材への塗布量等によって変動するため特に限定されないが、例えば、300μm~330μm、好ましくは360μm~400μmを有するように形成することも可能である。
【0057】
本発明の塗料組成物は、様々な基材に対して、例えばスプレーガンを用いて付与することができる。適用可能な基材は特に限定されないが、例えば、スチール、ステンレススチール、アルミニウムなどの金属;ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、FRP、ポリカーボネートなどの樹脂;ならびにそれらの組み合わせ;からなる板、管、ロッド、フィルム、シート等が挙げられる。これらの基材表面は、特にポリプロピレン以外のものは、プライマー処理を必要とすることなく、上記塗料組成物をそのまま付与してもよい。
【0058】
また、スプレーガンは、ノズル口径が比較的大きいものを使用することが好ましく、例えば3mm~10mm、好ましくは3mm~5mmのノズル口径を有するスプレーガンが使用され得る。
【0059】
本発明の塗装物は、基材上に上記塗料組成物の硬化物である塗膜が配置されたものであり、例えば、貨物車両の荷台、自動車全般の外装部分、船舶の船底部分、住宅の外壁などが包含される。例えば、本発明の塗装物が、貨物車両の荷台または自動車全般の外装部分である場合、これらの塗装物は、優れた耐衝撃性および耐食性に加え、耐候性、耐摩耗性、耐擦傷性およびチッピング性についても良好である。また、2液型塗料組成物の主剤に使用する顔料の種類を選択することにより、黒色に加え、それ以外の色調となるように調色することも可能である。
【実施例
【0060】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0061】
(実施例1:2液型塗料組成物(E1)の作製)
以下の主剤(A1)および硬化剤(B1)を別々に作製することにより、これらを組み合わせた2液型塗料組成物(E1)を得た。
【0062】
(1)主剤
ポリオール成分として、ポリエステル系ポリオール(KING INDUSTRIES,INC社製FLEXOREZ148)5質量部と、アクリル系ポリオール(DIC株式会社製WBU-305)16質量部とを混合(これらを合計したポリオール成分の含有量は21質量部であった)し、これに粘性付与剤として炭酸カルシウム30質量部およびタルク15質量部(これらを合計した粘性付与剤の含有量は45質量部であった)を添加した。その後、模様形成剤として非晶質シリカ(Evonik Industries AG社製AEROSIL200)1.5質量部とベントナイト3質量部(これらを合計した模様形成剤の含有量は4.5質量部であった)を添加し、さらに酢酸n-ブチル27.6質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1.4質量部、カーボンブラック0.5質量部を添加して均一になるまで混合することにより、黒色の主剤(A1)を得た。
【0063】
(2)硬化剤
一方、ポリイソシアネート(旭化成株式会社製DURANATE TKA-100)60質量部に、金属密着性付与剤としてトリメトキシ-[3-(オキシシラン-2-イルメトキシ)プロピル]シラン8質量部を添加し、さらに酢酸n-ブチル32質量部を添加して均一になる前混合することにより、硬化剤(B1)を得た。
【0064】
(実施例2:塗装基材(S1-1)の作製)
70mm×150mm×0.8tのサイズを有する冷間圧延鋼板(SPCC)を#320ペーパーにて研磨した後、脱脂剤で脱脂処理を行うことにより基材を得た。次いで、実施例1で得られた2液型塗料組成物(E1)の主剤(A1)と硬化剤(B1)とを4:1(質量比)で混合したものを、4.0mmのノズル口径を有するスプレーガンで900g/mの塗布量で上記脱脂処理を行った基材(脱脂処理をした面)を塗布し、室温で1時間乾燥させることにより、当該基材上に膜厚300μmの塗膜が形成された塗装基材(S1-1)を得た。
【0065】
(実施例3:塗装基材(S1-2)の作製)
SPCCの代わりに70mm×150mm×0.8tのサイズを有するボンデ鋼板(SECC)を基材として用いたこと以外は実施例2と同様にして、当該基材上に膜厚300μmの塗膜が形成された塗装基材(S1-2)を得た。
【0066】
(実施例4:塗装基材(S1-3)の作製)
SPCCの代わりに70mm×150mm×0.8tのサイズを有するステンレス鋼(SUS304)を基材として用いたこと以外は実施例2と同様にして、当該基材上に膜厚300μmの塗膜が形成された塗装基材(S1-3)を得た。
【0067】
(実施例5:塗装基材(S1-4)の作製)
SPCCの代わりに70mm×150mm×0.8tのサイズを有するアルミ合金板(A5052P)を基材として用いたこと以外は実施例2と同様にして、当該基材上に膜厚300μmの塗膜が形成された塗装基材(S1-4)を得た。
【0068】
(比較例1-1:ラッカー塗料を用いた塗装基材(Q1-1)の作製)
実施例1で作製した2液型塗料組成物(E1)の代わりに黒色のラッカー塗料(イサム塗料株式会社製イサムラッカー(溶剤系1液型ラッカー塗料;薄膜タイプ)を用い、塗布量を150g/mに設定したこと以外は実施例2と同様にして、最終的にSPCC上に膜厚25μmの塗膜が形成された塗装基材(Q1-1)を得た。
【0069】
(比較例1-2:ラッカー塗料を用いた塗装基材(Q1-2)の作製)
実施例1で作製した2液型塗料組成物(E1)の代わりに黒色のラッカー塗料(イサム塗料株式会社製イサムラッカー(溶剤系1液型ラッカー塗料;薄膜タイプ)を用い、SPCCの代わりに70mm×150mm×0.8tのサイズを有するボンデ鋼板(SECC)を基材として用い、かつ塗布量を150g/mに設定したこと以外は実施例2と同様にして、最終的にSECC上に膜厚25μmの塗膜が形成された塗装基材(Q1-2)を得た。
【0070】
(比較例1-3:ラッカー塗料を用いた塗装基材(Q1-3)の作製)
実施例1で作製した2液型塗料組成物(E1)の代わりに黒色のラッカー塗料(イサム塗料株式会社製イサムラッカー(溶剤系1液型ラッカー塗料;薄膜タイプ)を用い、SPCCの代わりに70mm×150mm×0.8tのサイズを有するステンレス鋼(SUS304)を基材として用い、かつ塗布量を150g/mに設定したこと以外は実施例2と同様にして、最終的にSUS304上に膜厚25μmの塗膜が形成された塗装基材(Q1-3)を得た。
【0071】
(比較例1-4:ラッカー塗料を用いた塗装基材(Q1-4)の作製)
実施例1で作製した2液型塗料組成物(E1)の代わりに黒色のラッカー塗料(イサム塗料株式会社製イサムラッカー(溶剤系1液型ラッカー塗料;薄膜タイプ)を用い、SPCCの代わりに70mm×150mm×0.8tのサイズを有するアルミ合金板(A5052P)を基材として用い、かつ塗布量を150g/mに設定したこと以外は実施例2と同様にして、最終的にA5052P上に膜厚25μmの塗膜が形成された塗装基材(Q1-4)を得た。
【0072】
(比較例2-1:フタル酸塗料を用いた塗装基材(Q2-1)の作製)
実施例1で作製した2液型塗料組成物(E1)の代わりに黒色のフタル酸塗料(イサム塗料株式会社製ニューサンスピード(溶剤系1液型フタル酸塗料;薄膜タイプ)を用い、塗布量を150g/mに設定したこと以外は実施例2と同様にして、最終的にSPCC上に膜厚30μmの塗膜が形成された塗装基材(Q2-1)を得た。
【0073】
(比較例2-2:フタル酸塗料を用いた塗装基材(Q2-2)の作製)
実施例1で作製した2液型塗料組成物(E1)の代わりに黒色のフタル酸塗料(イサム塗料株式会社製ニューサンスピード(溶剤系1液型フタル酸塗料;薄膜タイプ)を用い、SPCCの代わりに70mm×150mm×0.8tのサイズを有するボンデ鋼板(SECC)を基材として用い、かつ塗布量を150g/mに設定したこと以外は実施例2と同様にして、最終的にSECC上に膜厚30μmの塗膜が形成された塗装基材(Q2-2)を得た。
【0074】
(比較例2-3:フタル酸塗料を用いた塗装基材(Q2-3)の作製)
実施例1で作製した2液型塗料組成物(E1)の代わりに黒色のフタル酸塗料(イサム塗料株式会社製ニューサンスピード(溶剤系1液型フタル酸塗料;薄膜タイプ)を用い、SPCCの代わりに70mm×150mm×0.8tのサイズを有するステンレス鋼(SUS304)を基材として用い、かつ塗布量を150g/mに設定したこと以外は実施例2と同様にして、最終的にSUS304上に膜厚30μmの塗膜が形成された塗装基材(Q2-3)を得た。
【0075】
(比較例2-4:フタル酸塗料を用いた塗装基材(Q2-4)の作製)
実施例1で作製した2液型塗料組成物(E1)の代わりに黒色のフタル酸塗料(イサム塗料株式会社製ニューサンスピード(溶剤系1液型フタル酸塗料;薄膜タイプ)を用い、SPCCの代わりに70mm×150mm×0.8tのサイズを有するアルミ合金板(A5052P)を基材として用い、かつ塗布量を150g/mに設定したこと以外は実施例2と同様にして、最終的にA5052P上に膜厚30μmの塗膜が形成された塗装基材(Q2-4)を得た。
【0076】
(比較例3-1:アクリルウレタン塗料を用いた塗装基材(Q3-1)の作製)
実施例1で作製した2液型塗料組成物(E1)の代わりに黒色のアクリルウレタン塗料(イサム塗料株式会社製ハイアートCBエコ(溶剤系2液型アクリルウレタン塗料;薄膜タイプ)を用い、塗布量を170g/mに設定したこと以外は実施例2と同様にして、最終的にSPCC上に膜厚35μmの塗膜が形成された塗装基材(Q3-1)を得た。
【0077】
(比較例3-2:アクリルウレタン塗料を用いた塗装基材(Q3-2)の作製)
実施例1で作製した2液型塗料組成物(E1)の代わりに黒色のアクリルウレタン塗料(イサム塗料株式会社製ハイアートCBエコ(溶剤系2液型アクリルウレタン塗料;薄膜タイプ)を用い、SPCCの代わりに70mm×150mm×0.8tのサイズを有するボンデ鋼板(SECC)を基材として用い、かつ塗布量を170g/mに設定したこと以外は実施例2と同様にして、最終的にSECC上に膜厚35μmの塗膜が形成された塗装基材(Q3-2)を得た。
【0078】
(比較例3-3:アクリルウレタン塗料を用いた塗装基材(Q3-3)の作製)
実施例1で作製した2液型塗料組成物(E1)の代わりに黒色のアクリルウレタン塗料(イサム塗料株式会社製ハイアートCBエコ(溶剤系2液型アクリルウレタン塗料;薄膜タイプ)を用い、SPCCの代わりに70mm×150mm×0.8tのサイズを有するステンレス鋼(SUS304)を基材として用い、かつ塗布量を170g/mに設定したこと以外は実施例2と同様にして、最終的にSUS304上に膜厚35μmの塗膜が形成された塗装基材(Q3-3)を得た。
【0079】
(比較例3-4:アクリルウレタン塗料を用いた塗装基材(Q3-4)の作製)
実施例1で作製した2液型塗料組成物(E1)の代わりに黒色のアクリルウレタン塗料(イサム塗料株式会社製ハイアートCBエコ(溶剤系2液型アクリルウレタン塗料;薄膜タイプ)を用い、SPCCの代わりに70mm×150mm×0.8tのサイズを有するアルミ合金板(A5052P)を基材として用い、かつ塗布量を170g/mに設定したこと以外は実施例2と同様にして、最終的にA5052P上に膜厚35μmの塗膜が形成された塗装基材(Q3-4)を得た。
【0080】
(比較例4-1:アルキッド塗料を用いた塗装基材(Q4-1)の作製)
実施例1で作製した2液型塗料組成物(E1)の代わりに黒色のアルキッド塗料(イサム塗料株式会社製ハイアートCBエコ・防錆コート(溶剤系1液型アルキッド塗料;厚膜タイプ)を用い、塗布量を900g/mに設定したこと以外は実施例2と同様にして、最終的にSPCC上に膜厚300μmの塗膜が形成された塗装基材(Q4-1)を得た。
【0081】
(比較例4-2:アルキッド塗料を用いた塗装基材(Q4-2)の作製)
実施例1で作製した2液型塗料組成物(E1)の代わりに黒色のアルキッド塗料(イサム塗料株式会社製ハイアートCBエコ・防錆コート(溶剤系1液型アルキッド塗料;厚膜タイプ)を用い、SPCCの代わりに70mm×150mm×0.8tのサイズを有するボンデ鋼板(SECC)を基材として用い、かつ塗布量を900g/mに設定したこと以外は実施例2と同様にして、最終的にSECC上に膜厚300μmの塗膜が形成された塗装基材(Q4-2)を得た。
【0082】
(比較例4-3:アルキッド塗料を用いた塗装基材(Q4-3)の作製)
実施例1で作製した2液型塗料組成物(E1)の代わりに黒色のアルキッド塗料(イサム塗料株式会社製ハイアートCBエコ・防錆コート(溶剤系1液型アルキッド塗料;厚膜タイプ)を用い、SPCCの代わりに70mm×150mm×0.8tのサイズを有するステンレス鋼(SUS304)を基材として用い、かつ塗布量を900g/mに設定したこと以外は実施例2と同様にして、最終的にSUS304上に膜厚300μmの塗膜が形成された塗装基材(Q4-3)を得た。
【0083】
(比較例4-4:アルキッド塗料を用いた塗装基材(Q4-4)の作製)
実施例1で作製した2液型塗料組成物(E1)の代わりに黒色のアルキッド塗料(イサム塗料株式会社製ハイアートCBエコ・防錆コート(溶剤系1液型アルキッド塗料;厚膜タイプ)を用い、SPCCの代わりに70mm×150mm×0.8tのサイズを有するアルミ合金板(A5052P)を基材として用い、かつ塗布量を900g/mに設定したこと以外は実施例2と同様にして、最終的にA5052P上に膜厚300μmの塗膜が形成された塗装基材(Q4-4)を得た。
【0084】
(評価)
実施例2~5で得られた塗装基材(S1-1)~(S1-4)、比較例1-1~1-4で得られた塗装基材(Q1-1)~(Q1-4)、比較例2-1~2-4で得られた塗装基材(Q2-1)~(Q2-4)、比較例3-1~3-4で得られた塗装基材(Q3-1)~(Q3-4)、および比較例4-1~4-4で得られた塗装基材(Q4-1)~(Q4-4)について、それぞれ以下の評価を行った。
【0085】
(1)外観
実施例2の塗装基材(S1-1)、比較例1-1の塗装基材(Q1-1)、比較例2-1の塗装基材(Q2-1)、比較例3-1の塗装基材(Q3-1)、および比較例4-1の塗装基材(Q4-1)のそれぞれに形成された塗膜の状態を目視で観察した。結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示すように、実施例1の2液型塗料組成物を用いて得られた塗装基材(S1-1)(実施例2)は、アルキッド塗料を用いて得られた塗装基材(Q4-1)のような塗膜表面に凹凸が形成されていた。これに対し、比較例1-1、2-1および3-1で得られた塗装基材(Q1-1)、(Q2-1)および(Q3-1)では塗膜表面にそのような凹凸が形成されず、フラットな仕上がりであった。
【0088】
(2)付着性
実施例2~5で得られた塗装基材(S1-1)~(S1-4)、比較例1-1~1-4で得られた塗装基材(Q1-1)~(Q1-4)、比較例2-1~2-4で得られた塗装基材(Q2-1)~(Q2-4)、比較例3-1~3-4で得られた塗装基材(Q3-1)~(Q3-4)、および比較例4-1~4-4で得られた塗装基材(Q4-1)~(Q4-4)のそれぞれについて、JIS K5600-5-6(1999)による2mm碁盤目(クロスカット法)の付着性について、分類0~分類5までの6段階のいずれに該当するかを評価した(ここで、例えば「分類0」はカットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれがなかったことを示す)。結果を表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
表2に示すように、実施例1で得られた2液型塗料組成物(E1)は、プライマーレスの条件で各基材に塗膜が形成されたにも関わらず、SPCC、SECC、SUS304およびA5052Pのすべての基材に対して「分類0」と評価され、優れた付着性を有していたことがわかる。同様に、アルキッド塗料についても同様の基材に対して「分類0」と評価することができた。
【0091】
これに対し、ラッカー塗料、フタル酸塗料おびアクリルウレタン塗料を用いた場合には、「分類0」を得ることができないか、あるいは使用する基材の種類によってバラツキを生じており、プライマーレスの条件では各種基材に対して十分な付着性を有していないか、あるいは基材の種類に応じて付着性が大きく変動するものであったことがわかる。
【0092】
(3)耐衝撃性
実施例2の塗装基材(S1-1)、比較例1-1の塗装基材(Q1-1)、比較例2-1の塗装基材(Q2-1)、比較例3-1の塗装基材(Q3-1)、および比較例4-1の塗装基材(Q4-1)について、JIS K5600-5-3(1999)(デュポン式)による耐衝撃性の試験を行った。具体的には、荷重500gの重りを、高さ30cmおよび50cmの高さから各塗装基材上に落下させ、重りの落下後の塗膜表面に形成されたひび割れの有無を目視により観察した。結果を表3に示す。
【0093】
【表3】
【0094】
表3に示すように、実施例1で得られた2液型塗料組成物(E1)を用いた塗装基材(S1-1)(実施例2)は、500gの重りを30cmまたは50cmのいずれの高さから落下させても、塗膜表面にはひび割れが発生しておらず、優れた耐衝撃性を有していたことがわかる。
【0095】
これに対し、アクリルウレタン塗料やアルキッド塗料を用いて得られた比較例3-1および4-1の塗装基材(Q3-1)および(Q4-1)はいずれも、30cmの高さからの重りの落下では、塗膜表面にひび割れが発生しなかったが、50cmの高さからの落下でひび割れを生じており、実施例1で得られた2液型塗料組成物(E1)を用いた塗装基材(S1-1)(実施例2)よりも耐衝撃性が劣っていたことがわかる。
【0096】
(4)耐酸性、耐アルカリ性、および耐ガソリン性
実施例2の塗装基材(S1-1)、比較例1-1の塗装基材(Q1-1)、比較例2-1の塗装基材(Q2-1)、比較例3-1の塗装基材(Q3-1)、および比較例4-1の塗装基材(Q4-1)について、JIS K5600-6-1(1999)による耐酸性、耐アルカリ性および耐ガソリン性の各試験を行った。
【0097】
具体的には、耐酸性の試験については、各塗装基材の塗膜表面に、5%の硫酸水溶液を滴下し、そのまま24時間放置した後の塗膜の状態を目視で観察した。耐アルカリ性の試験については、各塗装基材の塗膜表面に、5%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、そのまま24時間放置した後の塗膜の状態を目視で観察した。耐ガソリン性の試験については、各塗装基材の塗膜表面に、レギュラーガソリンを滴下し、そのまま24時間放置した後の塗膜の状態を目視で観察した。なお、膨れの大きさおよび密度については、JISK5600-8-2:塗膜劣化の評価:膨れの等級に基づき、目視にて評価した。結果を表4に示す。
【0098】
【表4】
【0099】
表4に示すように、実施例1で得られた2液型塗料組成物(E1)を用いた塗装基材(S1-1)(実施例2)は、アクリルウレタン塗料を用いた塗装基材(Q2-1)と同様に、硫酸水溶液、水酸化ナトリウム水溶液およびガソリンのいずれに対しても塗膜に異常が認められず、優れた耐食性(耐薬品性)を有していたことがわかる。
【0100】
これに対し、フタル酸塗料やアルキッド塗料を用いて得られた比較例2-1および4-1の塗装基材(Q2-1)および(Q4-1)では、水酸化ナトリウム水溶液との接触によって塗膜が溶解した。また、アルキッド塗料を用いて得られた比較例4-1の塗装基材(Q4-1)では、レギュラーガソリンとの接触によっても塗膜が溶解しており、様々な溶液に対して塗膜が十分な強度を有しているものではなかったことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明によれば、塗料分野、自動車工業分野、造船分野、および住宅分野などの技術分野において有用である。
【要約】
【課題】 優れた耐衝撃性および耐食性を有し、かつ厚塗りが可能な2液型塗料組成物ならびにそれを用いた塗膜および塗装物を提供すること。
【解決手段】 本発明の2液型塗料組成物は、主剤と硬化剤とを含む。ここで、主剤は、10質量部~40質量部のポリオール成分、および30質量部~60質量部の粘性付与剤を含有し、硬化剤は、5質量部~30質量部のポリイソシアネートを含有し、そしてポリオール成分は少なくとも2種のポリオールで構成されている。
【選択図】 なし