(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】トイレットペーパーロールの製造方法
(51)【国際特許分類】
A47K 10/16 20060101AFI20230728BHJP
B26D 1/18 20060101ALI20230728BHJP
B26D 3/16 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
A47K10/16 D
B26D1/18
A47K10/16 A
B26D3/16 E
(21)【出願番号】P 2022171421
(22)【出願日】2022-10-26
【審査請求日】2022-11-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391021466
【氏名又は名称】春日製紙工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】久保田 隆三
(72)【発明者】
【氏名】久保田 雅則
(72)【発明者】
【氏名】渡部 泰
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-118493(JP,A)
【文献】特開2020-108825(JP,A)
【文献】特開2018-000728(JP,A)
【文献】特開平11-277485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/16
B26D 3/16
B26D 1/00-1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原反ロールからウェブを巻き取ってログを作製し、前記ログを切断することによりトイレットペーパーロールとするトイレットペーパーロールの製造方法であって、
前記ログの巻密度が0.30g/cm
3以上であり、前記ログを前記ログ中心の空洞部に挿入した支持棒により支持して円周方向に回転させながら、前記ログの外側に設けた切断刃を前記ログの外周面から内周面まで前記ログの径方向に前記ログに対して相対的に移動させることにより、前記切断刃によって前記ログを円周方向と径方向に切り進めて、前記ログを外周面から内周面の方向に切断する
製造方法であり、前記支持棒が、前記切断刃が前記ログに切り込んでくる位置に対応する部分に凹部が設けられている支持棒であることを特徴とするトイレットペーパーロールの製造方法。
【請求項2】
ログの巻長さが200m以上であることを特徴とする請求項1記載のトイレットペーパーロールの製造方法。
【請求項3】
トイレットペーパーの米坪が8.0~25.0g/m
2であることを特徴とする請求項1又は2記載のトイレットペーパーロールの製造方法。
【請求項4】
トイレットペーパーログの切断方法であって、
前記ログの巻密度が0.30g/cm
3以上であり、前記ログを前記ログ中心の空洞部に挿入した支持棒により支持して円周方向に回転させながら、前記ログの外側に設けた切断刃を前記ログの外周面から内周面まで前記ログの径方向に前記ログに対して相対的に移動させることにより、前記切断刃によって前記ログを円周方向と径方向に切り進めて、前記ログを外周面から内周面の方向に切断する
切断方法であり、前記支持棒が、前記切断刃が前記ログに切り込んでくる位置に対応する部分に凹部が設けられている支持棒であることを特徴とするトイレットペーパーログの切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレットペーパーロールの製造方法及びトイレットペーパーログの切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレットペーパーロールの製造方法としては、原反ロールから幅広のウェブを所定の長さに巻き取りログとし、回転する円形の切断刃により、このログをトイレットペーパーロールの幅に複数切断して、トイレットペーパーロールを製造する方法(以下、「ログカット法」と呼ぶ。特許文献1参照)と、原反ロールからの幅広のウェブをトイレットペーパーロールの幅にスリット切断した後、所定の長さに巻き取ってトイレットペーパーロールを製造する方法(以下、「スリット法」と呼ぶ。特許文献2参照)の2通りの方法がある。しかし、スリット法では、巻き取りの際に高速で走行する各ウェブが横ブレを起こすため、巻き取ったロールの端面に凹凸が発生して端面が奇麗な平面にならない、各ウェブ間の間隔はごく僅かであるので、互いに重なった状態で巻き取られ各ロールの分離ができない、スリット切断後のウェブは幅が狭く強度が弱くなるので、巻き取る際に破断する等の問題の発生が指摘されている。そのため、スリット法は生産性が低く製造コストが高くなることから、従来、トイレットペーパーロールの製造方法としては、ログカット法が一般的に採用されてきた。
【0003】
一方で、近年、長持ちして購入回数や交換回数を減らせる、梱包したときの巻長さあたりの体積を減らせるので、製品の運送回数や倉庫面積を減らせる等の理由により、巻長さを長くした長尺のトイレットペーパーロールへの需要が高まり、長尺タイプの市場が急速に拡大している。しかしながら、トイレットペーパーロールの直径には、ホルダーの大きさ、使いやすさ等の面から制限があるため、巻長さを長くするためには直径をあまり大きくしないように固く巻く必要がある。その結果ログが固くなるので、従来のログカット法では、芯ありタイプの芯や芯なしタイプのコア部がつぶれる、切断面の斜め切りが生じる等の問題が生じていた。そのため、スリット法には上記のような問題点があるものの、例えば、巻長さ200m以上といった巻長さの長いトイレットペーパーロールの製造には、スリット法を使用せざるをえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-334486号公報
【文献】特開平9-118456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、芯又はコア部のつぶれがなく、端面が平坦なトイレットペーパーロールの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、巻長さの長いトイレットペーパーロールの製造方法について検討を進めた。検討を進めるなかで、従来のログカット法やスリット法の改良ではない他の新たな方法を探索し、ログをカットする方法ではあるものの、従来のログカット法とは全く異なった方法を見いだした。従来のログカット法は、回転する円形の切断刃を静止したログに振り下ろして、切断刃をログの一方の外周面から切り込み他方の外周面まで断面を横断させてログを切断する方法であった。これに対し本発明は、ログを円周方向に回転させながら、切断刃をログの外周面から内周面までログの径方向に相対的に移動させることにより、ログの円周のどの位置においても、切断刃がログの外周面から内周面の方向に向かって外周面と内周面の間を切り進み、その結果ログを切断する方法である。
【0007】
ログの切断では、数メートルの幅のログを、ログの幅方向の中心軸に対して垂直に切断して1個の幅が105~114mm程度のトイレットペーパーロールを多数切り取る必要があり、切り取られた全てのトイレットペーパーロールの形状が綺麗で揃っていることが求められる。切断時にログに歪み等があると、切断の角度がずれて切断面がログの幅方向の中心軸に対して垂直でなくなったり、切断面が荒れて凹凸が生じ平坦でなくなったりするため、形状が綺麗で揃ったトイレットペーパーロールを製造することは難しい。ログを回転させることは、回転によりログに歪み等が生じるおそれがあるため、トイレットペーパーロールの製造においては、ログを回転させるという発想は従来全くなかった。しかし、長尺タイプのトイレットペーパーロールでは、ログが固くなり歪み等の回転による影響を受け難くなるため、ログを回転させても形状が綺麗で揃ったトイレットペーパーロールを製造することが可能となる。本発明の方法によれば、切断刃をログの一方の外周面から反対側の外周面まで切り込んでログの断面を横断させるのではなく、切断刃は、ログの円周のどの位置においてもログの外周面から内周面の間を径方向に相対的に移動して外周面から内周面の方向に切断するので、ログに対して無理な力をかけずにログを切断することができ、切断面をログの幅方向の中心軸に対して垂直で、平坦で、寸法精度に優れたものとできる。そのため、トイレットペーパーロールの端面が側面に対して垂直で、平坦で、寸法精度に優れたトイレットペーパーロールを製造することができる。
【0008】
また、従来のログカット法では、切断刃がログの断面を横断するため、切断刃の側面の広い範囲がログに接しながら切断を進めることとなり、切断完了時には切断刃の側面はログの断面全体に接する。そのため、切断刃を高速回転させると、摩擦による切断刃の温度上昇や切断刃先端の摩耗が激しくなり、稼働時間が短くてもログを適正に切断できなくなる。本発明の方法によれば、切断工程の間、切断刃の側面は常にログの一部分の外周面から内周面の間にのみ接しており、切断刃の側面の広い範囲がログに接することはないため、摩擦による切断刃の温度上昇や切断刃先端の摩耗を低減できる。本発明は、こうして完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は以下に示す事項により特定されるものである。
(1)原反ロールからウェブを巻き取ってログを作製し、前記ログを切断することによりトイレットペーパーロールとするトイレットペーパーロールの製造方法であって、前記ログを円周方向に回転させながら、前記ログの外側に設けた切断刃を前記ログの外周面から内周面まで前記ログの径方向に前記ログに対して相対的に移動させることにより、前記切断刃によって前記ログを円周方向と径方向に切り進めて、前記ログを外周面から内周面の方向に切断することを特徴とするトイレットペーパーロールの製造方法。
(2)トイレットペーパーロールの巻密度が0.25g/cm3以上であることを特徴とする上記(1)のトイレットペーパーロールの製造方法。
(3)トイレットペーパーロールの巻長さが200m以上であることを特徴とする上記(1)又は(2)のトイレットペーパーロールの製造方法。
(4)トイレットペーパーログの切断方法であって、前記ログを円周方向に回転させながら、前記ログの外側に設けた切断刃を前記ログの外周面から内周面まで前記ログの径方向に前記ログに対して相対的に移動させることにより、前記切断刃によって前記ログを円周方向と径方向に切り進めて、前記ログを外周面から内周面の方向に切断することを特徴とするトイレットペーパーログの切断方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、芯又はコア部のつぶれがなく、端面が平坦なトイレットペーパーロールを製造することができ、特に巻長さが200m以上の巻長さが長いトイレットペーパーロールにおいても芯又はコア部のつぶれがなく、端面が平坦なトイレットペーパーロールを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の製造方法を示す模式図であり、切断が開始される前の状態をログの先端方向から見た図である。
【
図2】
図2は、本発明の製造方法を示す模式図であり、切断途中の状態をログの先端方向から見た図である。
【
図3】
図3は、本発明の製造方法を示す模式図であり、切断終了時の状態をログの先端方向から見た図である。
【
図4】
図4は、本発明の製造方法を示す模式図であり、切断が開始される前の状態をログの上方向から見た図である。
【
図5】
図5は、実施例で製造されたトイレットペーパーロールの端面(ログの切断面)の画像である。
【
図6】
図6は、比較例で製造されたトイレットペーパーロールの端面(ログの切断面)の画像である。
【
図7】
図7は、比較例で製造されたトイレットペーパーロールを側面から見た画像であり、テーブル上に置き、その切断面を同じテーブルに垂直に立てた金尺に当てた状態の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のトイレットペーパーロールの製造方法は、原反ロールからウェブを巻き取ってログを作製し、前記ログを切断することによりトイレットペーパーロールとするトイレットペーパーロールの製造方法であって、前記ログを円周方向に回転させながら、前記ログの外側に設けた切断刃を前記ログの外周面から内周面まで前記ログの径方向に前記ログに対して相対的に移動させることにより、前記切断刃によって前記ログを円周方向と径方向に切り進めて、前記ログを外周面から内周面の方向に切断することを特徴とする。本発明において、原反ロール、ウェブ及びログ並びにこれらの製造方法としては、トイレットペーパーロールの製造に使用できる原反ロール、ウェブ及びログ並びにこれらを製造できる方法であれば特に制限されない。
【0013】
本発明では、ログを円周方向に回転させる。回転方法としては、ログの幅方向の中心軸を中心にログを回転させることが好ましいが、切断面の平坦性、中心軸に対する垂直性等の形状に影響を与えない範囲でログの回転軸が中心軸から外れた位置であってもよい。ログの幅方向とは、ログの長手方向をいう。ログを回転させる具体的方法としては、特に制限されず、例えば、ログの端部をログを固定する固定部を備えるチャックに固定してチャックを回転させることによりログを回転させることができる。この際、ログの端部を固定しただけで回転させてもよく、ログの回転時の振れ等を防ぐためにログ中心の空洞部に支持棒を挿入した状態で回転させてもよい。支持棒は、それ自体は回転せずにログを支持するだけでもよく、ログに接してチャックと共に回転してもよい。本発明では、ログを円周方向に回転させながら、前記ログの外側に設けた切断刃を前記ログに対して前記ログの外周面から内周面まで径方向に相対的に移動させる。ログの外周面とは、ログの外周の面のことであり、ログの内周面とは、芯ありタイプの場合は芯の内周の面のことであり、芯なしタイプの場合はトイレットペーパーの内周の面(コア部の内周の面)のことである。
【0014】
ここで、径方向とはログ断面の半径方向のことであり、切断刃をログに対して相対的に移動させるとは、切断刃がログの方に移動する場合、ログが切断刃の方に移動する場合、及び切断刃とログの両方が相手方の方に移動する場合を含む。ログの外側に設けた切断刃を、ログの幅方向の中心軸に対して垂直となるように、ログに対して相対的に移動させることが好ましい。本発明においては、ログが円周方向に回転しているため、ログの外周面に接触した切断刃がログの外周面から内周面まで移動する間に、ログは切断刃により円周方向に切り進められると共に径方向にも切り進められる。そのため、ログの円周のどの位置においても、ログは外周面から内周面の方向に切断される。本発明における切断刃としては、特に制限されるものではないが、例えば、丸刃、平刃、帯刃等を挙げることができる。本発明における切断刃は、ログの径方向への移動以外は静止していてもよく、切断力を高めるために、例えば、丸刃であれば回転させる、平刃であれば往復運動させる、帯刃であれば回転させる等の動きをさせてもよい。本発明においては、切断刃がログの内周面に達して内周面を切断した段階でログが切断される。本発明においては、切断刃の刃先が内周面に達し、内周面を一周切断したときにログが切断されるので、本発明における切断刃のログの径方向への移動は、切断刃の刃先が内周面に達した位置で停止すればよいが、その位置で正確に停止するのが難しい、切断を完全に行う等の観点から、切断刃の刃先が内周面を超えてログ空洞部の一部まで移動することを除外するものではない。
【0015】
本発明の製造方法は、製造するトイレットペーパーロールの種類は特に制限されないが、長尺のトイレットペーパーロールの製造に好適に使用できる。本発明の製造方法が好適に使用できるトイレットペーパーロールの巻長さとしては、例えば、200m以上、250m以上、300m以上等を挙げることができる。本発明において巻長さとは、ダブル巻き(2枚重ね)の場合は、シングル巻き換算の長さをいう。巻長さの上限は、特に制限されるものではないが、製造や使用のしやすさの観点から、例えば、500m以下等を挙げることができる。本発明の製造方法が好適に使用できるトイレットペーパーロールの巻密度としては、例えば、0.25g/cm3以上、0.30g/cm3以上、0.35g/cm3以上、0.40g/cm3以上等を挙げることができる。巻密度は、芯ありタイプの場合は、芯を除いたトイレットペーパーロールの体積あたりの質量を表し、芯なしタイプの場合は、トイレットペーパーロール全体の体積あたりの質量を表す。巻密度は、トイレットペーパーロールの固巻きの程度を表す指標となる。巻密度の上限は、特に制限されるものではないが、製造や使用のしやすさの観点から、0.65g/cm3以下等を挙げることができる。また、本発明の製造方法が好適に使用できるトイレットペーパーロールのトイレットペーパーの米坪としては、8.0~25.0g/m2、15.0~19.0g/m2等を挙げることができる。シングル巻きの場合は、トイレットペーパーの米坪は15.0~19.0g/m2が好ましい。ログの巻長さ及び巻密度は、製造されるトイレットペーパーロールの巻長さ及び巻密度と同じであり、ログに巻かれるトイレットペーパーの米坪は、製造されるトイレットペーパーロールの米坪と同じである。
【0016】
本発明のトイレットペーパーロールの製造方法について図を用いて説明するが、本発明は図示した実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の製造方法を説明するために、ログの先端方向から見たログと切断刃との関係を示す図であり、切断が開始される前の状態を示す。ログ1は、ログ1の幅方向の中心軸を中心にして円周方向Aに回転している。ログ1は、外周面2と内周面3とを有している。切断刃4は、円形の切断刃であり、切断刃の回転軸5を中心に回転している。切断刃4は、ログ1の幅方向の中心軸に対して垂直にログ1の径方向Bにログ1の外周面2から内周面3に向かって移動していく。
図2は、切断刃4がログ1の外周面2に接触した後、内周面3に向かって一部切り進んだ状態を示す図である。切断部6は、この範囲が既に切断されていることを示す。切断部6は、ログ1の円周のどの位置においても外周面2から内周面3の方向に切断されリング状に切断されている。
図3は、切断刃4がログ1の内周面3まで切り進み切断部6がログの断面全体に及んだ状態を示している。こうしてログ1は切断される。
図1~3では、切断刃4がログ1の方に移動する形態を示したが、ログ1が回転しながら切断刃4の方に移動してもよく、切断刃4とログ1の両方が相手方の方に移動してもよい。また、
図1~3では切断刃4として円形の丸刃を使用したが、平刃や帯刃を使用してもよい。
図1~3では、ログ1は右回りに回転しているが、本発明においてログ1の回転方向(右回りか左回りか)は特に制限されず、切断刃4の回転方向も特に制限されない。
図1~3では、原反ロールやログの製造方法は省略したが、原反ロールやログは、例えば、トイレットペーパーロールの製造における公知の方法で製造することができる。
【0017】
図4は、本発明の製造方法を説明するために、ログの上方向から見たログと切断刃との関係を示す図であり、切断が開始される前の状態を示す。ログ1は、ログ固定具9を有するチャック8に取り付けられている。ログ1のログ固定具9に固定された側と反対側の端をログ1の先端とする。ログ1の中央空間部には支持棒10がログ1の幅方向全体にわたって挿入されている。チャック8はモーター(図示せず)により回転する。ログ1は、チャック8が回転することにより、円周方向Aに回転する。支持棒10は、チャック8の回転によって回転しないように挿入されており、ログ1の内周面3と支持棒10の表面との間には、1~2mm程度のわずかな空間が設けられている。切断刃4と切断刃の回転軸5は、切断刃の回転軸5を回転させるモータを備えた移動台7に取り付けられている。移動台7が、ログ1の幅方向の中心軸に対して垂直にログ1の径方向Bにログ1に向かって移動する。移動台7の移動により、刃先がログ1の外周面2に達した切断刃4は、刃先がログ1の内周面3に達するまで移動する。こうして、切断刃4はログ1を切断してトイレットペーパーロールを製造する。切断刃4は、ログ1を切断した後、ログ1の径方向に後退して切断前の位置に戻る。その後、切断刃4は、移動台7の移動により、ログ1の幅方向にチャック8の方向に、すなわち切断前のログが残っている方向にトイレットペーパーロールの幅だけ移動する。そして、切断刃4は、再度ログ1の幅方向の中心軸に対して垂直にログ1の径方向Bにログ1に向かって移動し、前回の切断時と同じ動作を行い、ログ1を切断してトイレットペーパーロールを製造する。この動作を繰り返すことにより、ログ1を切断して複数のトイレットペーパーロールを製造していく。ログ1が切断されて製造されたトイレットペーパーロールは、支持棒10の先端側から取り出される。
図4では、移動台7により切断刃4がログ1の幅方向に移動する形態を示したが、切断後にログ1がトイレットペーパーロールの幅だけログ1の先端方向に移動して新たな切断箇所が切断刃4の前に来るようにしてもよい。また、支持棒10を使用する場合は、切断刃4の刃先が支持棒10に接触しないように、切断刃4の移動範囲を予め設定する、センサーにより接近を感知して停止させる等の措置をとることができる。また、切断刃4がログ1に切り込んでくる位置に対応する支持棒10の部分に凹部を設けて、切断刃4が支持棒10と接触するのを防ぐこともできる。
図4に示す方法の場合、ログ1及び切断刃4の回転数として、例えば5~1000rpmを挙げることができる。また、
図4では、切断刃が1つの場合を示したが、切断刃を複数設置して、同時に複数ロールの切断を行ってもよい。
【0018】
本発明のトイレットペーパーログの切断方法は、前記ログを円周方向に回転させながら、前記ログの外側に設けた切断刃を前記ログの外周面から内周面まで前記ログの径方向に前記ログに対して相対的に移動させることにより、前記切断刃によって前記ログを円周方向と径方向に切り進めて、前記ログを外周面から内周面の方向に切断することを特徴とする。本発明のトイレットペーパーログの切断方法は、本発明のトイレットペーパーロールの製造方法におけるトイレットペーパーが巻かれたログの切断方法であり、本発明のトイレットペーパーロールの製造方法において説明したとおりの切断方法である。
【実施例】
【0019】
図4に示す製造方法により、芯なしタイプで巻密度0.35g/cm
3のトイレットペーパーロールを製造した。チャックの回転数(すなわちログの回転数)を300rpm、切断刃の回転数を200rpmとした。実施例で製造されたトイレットペーパーロールの切断面の状態を撮影した画像を
図5に示す。
【0020】
[比較例]
従来のログカット法で、実施例と同じトイレットペーパーロールを製造した。比較例で製造されたトイレットペーパーロールの切断面の状態を撮影した画像を
図6に示す。
図7には、比較例で製造されたトイレットペーパーロールを側面から見た状態を撮影した画像を示す。
【0021】
図5から分かるように、実施例で製造されたトイレットペーパーロールは、切断面に凹凸や斜め切りがなく非常に平坦でコア部のつぶれもなく、綺麗な切断面を有していた。一方、
図6に示すトイレットペーパーロールでは、深く切り込まれた凹部が生じ、コア部のつぶれも発生していた。また、
図7は、テーブルに垂直に立てた金尺に、テーブル上に置いたトイレットペーパーロールの切断面を当てた状態を示しているが、
図7に示すトイレットペーパーロールでは、垂直に立てた金尺と切断面との間に空隙が生じており、トイレットペーパーロールの側面に対して垂直に切断されておらず、斜め切りが生じていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のトイレットペーパーロールの製造方法は、端面が平坦で芯又はコア部のつぶれのないトイレットペーパーロールを製造できるので、トイレットペーパーロールの製造に使用でき、特に、巻長さが200m以上といった巻長さの長いトイレットペーパーロールの製造に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0023】
A 円周方向
B 径方向
1 ログ
2 外周面
3 内周面
4 切断刃
5 切断刃の回転軸
6 切断部
7 移動台
8 チャック
9 ログ固定具
10 支持棒
【要約】
【課題】本発明の課題は、芯又はコア部のつぶれがなく、端面が平坦なトイレットペーパーロールの製造方法を提供することである。
【解決手段】原反ロールからウェブを巻き取ってログを作製し、前記ログを切断することによりトイレットペーパーロールとするトイレットペーパーロールの製造方法であって、前記ログを円周方向に回転させながら、前記ログの外側に設けた切断刃を前記ログの外周面から内周面まで前記ログの径方向に前記ログに対して相対的に移動させることにより、前記切断刃によって前記ログを円周方向と径方向に切り進めて、前記ログを外周面から内周面の方向に切断することを特徴とするトイレットペーパーロールの製造方法。
【選択図】
図3