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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】固定具
(51)【国際特許分類】
   F16B 25/00 20060101AFI20230728BHJP
   F16B 43/00 20060101ALI20230728BHJP
   E04D 5/14 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
F16B25/00 K
F16B43/00 Z
F16B25/00 Z
E04D5/14 J
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023010584
(22)【出願日】2023-01-27
【審査請求日】2023-02-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597175123
【氏名又は名称】北村精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109472
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 直之
(72)【発明者】
【氏名】平尾 元彦
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-315580(JP,A)
【文献】実公昭37-020220(JP,Y1)
【文献】特開2007-016864(JP,A)
【文献】特開2011-214618(JP,A)
【文献】特開2000-035017(JP,A)
【文献】特開2022-042404(JP,A)
【文献】実開昭51-021069(JP,U)
【文献】特開2018-123593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 25/00
F16B 43/00
E04D 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己穿孔ねじと座金プレートとを備え、
上記座金プレートは、
初期状態で平らな円板状であり、上記自己穿孔ねじを挿通させるための下穴を有し、上記下穴は、その内径が上記自己穿孔ねじの谷径よりも小さく設定され、上記下穴の内周から周囲に延びる複数のスリットと、スリットに挟まれた舌状部を含み、上記下穴に上記自己穿孔ねじが挿通される際の座金プレートの変形を容易にする変形容易化構造が設けられ、
上記自己穿孔ねじは、
軸部の頭部側にねじ無し部が設けられ、上記ねじ無し部に、上記変形した上記舌状部の先端が引っ掛かって抜け止めされる抜け止め構造が形成され、
上記座金プレートの上記下穴に上記自己穿孔ねじを挿通することにより、上記座金プレートの上記舌状部が上記自己穿孔ねじの挿通方向に変形し、上記ねじ無し部に形成された抜け止め構造に上記舌状部の先端が引っ掛かって、上記座金プレートの上面と上記自己穿孔ねじの上面とが大略面一に位置した状態で、上記抜け止めを行うように構成されている
ことを特徴とする固定具。
【請求項2】
上記抜け止め構造は、上記自己穿孔ねじの軸部に設けられた環状突部である
請求項1記載の固定具。
【請求項3】
上記抜け止め構造は、上記自己穿孔ねじの軸部に設けられたねじ山である
請求項1記載の固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば屋根の施工においてデッキプレート上に断熱材を固定する際に使用することができる固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の屋根を施工する際には、鉄骨梁に架設したデッキプレート上に、断熱材を敷設して固定具(固定装置)で固定することが行われる。上記固定装置で固定した断熱材の上を、さらに防水シートで覆って防水することが行われる。このようにして得られる屋根構造は、軽量で建物の負担が軽減され、工期も短いというメリットがあるため、近年では広く採用されている。
【0003】
上記屋根構造に使用する固定装置には、円盤状のプレート(ワッシャー)と、タッピングねじ(自己穿孔ねじ)とからなるものである。このような固定装置に関する先行技術文献として、出願人は下記にあげる特許文献1を把握している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2022-42404号公報
【0005】
上記特許文献1は、薄板金属用ドリルねじ及びこれを使用した構造体並びに固定装置に関するものである。
【0006】
上記特許文献1には、つぎの記載がある。
[0035]
(1).ドリルねじの構造
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、ドリルねじに適用している。ドリルねじは鋼やステンレス等の金属製であり、図1(A)(B)に示すように、軸1とその先端(一端)に設けたドリル部2(自己穿孔部)と、軸1の基端(他端)に設けた頭3とから成っており、軸1には1条のねじ山4より成るねじ部が形成されている。以下では、方向を特定するため便宜的に上下の文言を使用するが、ドリル部2が下に位置して頭3が上に位置していると定義している。従って、平面視では頭3の頂面が現れる。
[0036]
ドリル部2は従来から知られた形状のものであり、一対の縦溝5を形成して一対の切り刃6を形成しており、ドリル部2の先端にはチゼルエッジが形成されている。縦溝5はねじ部の先端部に掛かっており、ねじ山4の始端部が縦溝5によって分断されている。
[0037]
頭3は下窄まりテーパ形の座面を有する皿タイプになっており、頂面にはドライバビット(図示せず)が係合する四角形の係合溝(リセス)7を形成している。係合溝7は十字形などの他の形態であってもよい。また、頭3は、六角頭や鍋頭、平板状のタイプなど、用途に応じて任意の形状に設定できる。
[0043]
軸1の首下部にはねじ山4が形成されていないねじ無し部13が存在しているが、図1の(B)では(A)よりもねじ無し部13が少し長くなっている。従って、厳密には、図1の(A)と(B)とは同一と云えないが、ねじ無し部13の有無やその長さは用途に応じて選択するものであり、発明の本質には影響しない要素であるので、図1(A)の形態も図1(B)の形態も同じ実施形態と見做して差し支えない。なお、図4(A)に別例として示すように、かなり長いねじ無し部13を有するドリルねじもある(図4(A)では切欠き溝14は明示していていないが、ねじ部は図1(A)(B)と同じ形態になっている。)。図4(B)では、切欠き溝14の全体を表示している。
[0047]
(2).施工状態
本実施形態のドリルねじは、様々な現場(構造体)に使用できる。例えば、図2(A)(B)に示すように、断熱材17をデッキプレート18(相手材10)に押さえ固定することに使用できる。施工には円形のワッシャー19が使用されており、ワッシャー19は、ドリルねじにおける頭3の座面に重なる下窄まりテーパ状の受け座19aを備えている。ねじの頭3と断熱材17は、防水シート16で覆われている。
[0053]
更に、本実施形態では、切欠き溝14のうちねじ込み方向に向いた進み側端面14bが切り刃として作用することにより、ねじ込みに要する力を低減できると共に、内周縁部21の厚肉部21aに対するねじ山4の食い込みを良好ならしめて、雌ねじ形成機能を向上できる。この場合、切欠き溝14は8条形成されており、隣り合った切欠き溝14の軸方向の高さはP/8になるため、半周程度の範囲で、少なくとも3条又は4条の切欠き溝14がデッキプレート18における下穴20の内周に重なっている。
[0054]
このため、切欠き溝14は下穴20の内周面と頻繁に重なって、切欠き溝14の進み側端面14bによる切削機能を確実化できる。図3ではバリ23が見えるが、このようにバリ23が発生することは、切欠き溝14の進み側端面14bが切り刃として機能していることの証左であると云える。また、切欠き溝14の追い側端面14cは緩みに対して抵抗として作用するが、複数の切欠き溝14の追い側端面14cが特に厚肉部21aの箇所で下穴20に突っ張っているため、高い緩み止め効果を発揮できる。
[0060]
図5では、ドリルねじとワッシャー19と組み合わせに係る固定装置の例を示している。ドリルねじは基本的には既述の実施形態と同じであり、相違点は、頭3の座面3aが平断面多角形(8角形)になっている点のみである。そして、ドリルねじにおける頭3の座面3aが多角形になっていることに対応して、ワッシャー19の受け座19aも、座面3aと相似形の平断面多角形(8角形)になっている。
[0062]
他方、固定後にはドリルねじが緩み回転しようとすると、座面3aの稜線が受け座19aの平面を乗り越えねばならず、従って、ねじの緩みに際しては、ワッシャー19は断熱材17を圧縮変形させねばならないが、ワッシャー19は大きな面積があることにより、ワッシャー19を断熱材17に押し込むことに大きな抵抗が発生するため、格段に高い緩み止め効果を得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したようなデッキプレート上に断熱材を敷設固定して防水シートで覆う屋根構造は、風圧により断熱材に軸方向の力や水平方向の力が繰り返し加わることにより、固定するためのドリルねじが緩んでくるという問題がある。上記ドリルねじに緩みが生じると、ドリルねじの頭部が飛び出し、風圧でバタついた防水シートに破れが生じ、防水シートの破断、漏水、飛散等トラブルの原因となる。上記屋根構造では、このようなフラッタリング現象が問題となっている。
【0008】
上記特許文献1の固定装置では、ドリルねじのねじ山4に切欠き溝14を設けたり、ドリルねじの頭3の座面3aおよびワッシャー19の受け座19aを多角形に形成したりすることにより、デッキプレート18にねじ込んだドリルねじを緩みにくくしている。しかしながら、上記特許文献1の固定装置は、ワッシャー10とドリルねじが分離する構造であるため、断熱材に軸方向の力や水平方向の力が繰り返し加わると、ワッシャー10とドリルねじが上下左右に振られ、やがてはデッキプレート18に形成されたねじ穴が拡がって、ドリルねじの頭3が飛び出し、固定強度が弱くなる。このように、上記特許文献1の技術では、ドリルねじの緩みが生じるのを遅らせることはできるが、上述したフラッタリング現象を根本的に解消しうるものではない。
【0009】
〔目的〕
本発明は、上記課題を解決するため、つぎの目的でなされたものである。
たとえばデッキプレート上に断熱材を固定した屋根構造において、有効な緩み防止効果が得られる固定具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の固定具は、上記の目的を達成するため、つぎの構成を採用した。
自己穿孔ねじと座金プレートとを備え、
上記座金プレートは、
初期状態で平らな円板状であり、上記自己穿孔ねじを挿通させるための下穴を有し、上記下穴は、その内径が上記自己穿孔ねじの谷径よりも小さく設定され、上記下穴の内周から周囲に延びる複数のスリットと、スリットに挟まれた舌状部を含み、上記下穴に上記自己穿孔ねじが挿通される際の座金プレートの変形を容易にする変形容易化構造が設けられ、
上記自己穿孔ねじは、
軸部の頭部側にねじ無し部が設けられ、上記ねじ無し部に、上記変形した上記舌状部の先端が引っ掛かって抜け止めされる抜け止め構造が形成され
上記座金プレートの上記下穴に上記自己穿孔ねじを挿通することにより、上記座金プレートの上記舌状部が上記自己穿孔ねじの挿通方向に変形し、上記ねじ無し部に形成された抜け止め構造に上記舌状部の先端が引っ掛かって、上記座金プレートの上面と上記自己穿孔ねじの上面とが大略面一に位置した状態で、上記抜け止めを行うように構成されている。
【0014】
請求項記載の固定具は、請求項1記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記抜け止め構造は、上記自己穿孔ねじの軸部に設けられた環状突部である。
【0015】
請求項記載の固定具は、請求項1記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記抜け止め構造は、上記自己穿孔ねじの軸部に設けられたねじ山である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の固定具は、自己穿孔ねじと座金プレートとを備えている。上記座金プレートは、初期状態で平らな円板状であり、上記自己穿孔ねじを挿通させるための下穴を有する。上記下穴は、その内径が上記自己穿孔ねじの谷径よりも小さく設定されている。上記下穴には変形容易化構造が設けられている。上記変形容易化構造は、上記自己穿孔ねじが挿通される際の座金プレートの変形を容易にする構造であり、上記下穴の内周から周囲に延びる複数のスリットと、スリットに挟まれた舌状部を含んでいる。上記自己穿孔ねじは、軸部の頭部側にねじ無し部が設けられている。上記ねじ無し部に、上記変形した下穴の内側が引っ掛かって抜け止めされる抜け止め構造が形成されている。そして、上記座金プレートの上記下穴に上記自己穿孔ねじを挿通することにより、上記座金プレートの上記舌状部が上記自己穿孔ねじの挿通方向に変形し、上記ねじ無し部に形成された抜け止め構造に上記舌状部が引っ掛かって、上記座金プレートの上面と上記自己穿孔ねじの上面とが大略面一に位置した状態で、上記抜け止めを行うように構成されている。上記固定具を使用する際には、上記自己穿孔ねじを上記座金プレートの下穴に挿通させる。これにより、上記座金プレートの上記舌状部が上記自己穿孔ねじの挿通方向に変形する。このとき、下穴の内径が上記自己穿孔ねじの谷径よりも小さく設定されているため、自己穿孔ねじは、初期状態で平らな円板状の座金プレートの下穴を押し広げるように変形させて挿通される。そして、上記下穴には上述した変形容易化構造が設けられているため、変形が容易で使いやすい。そして、上記自己穿孔ねじには、抜け止め構造が形成されている。このため、座金プレートの下穴を自己穿孔ねじが押し広げるように変形させ挿通された状態で、上記変形した上記舌状部が上記抜け止め構造に引っ掛かって抜け止めされる。さらに、上記ねじ無し部に形成された抜け止め構造に上記舌状部が引っ掛かって、上記座金プレートの上面と上記自己穿孔ねじの上面とが大略面一に位置した状態で、上記抜け止めを行う。このように、座金プレートの下穴を自己穿孔ねじが押し広げて変形させて挿通され、変形した下穴の内側にある舌状部が抜け止め構造に引っ掛かって抜け止めされるため、座金プレートから自己穿孔ねじが抜けにくく、たとえ自己穿孔ねじが回転したとしても緩まない。また、軸部の頭部側にねじ無し部が設けられ、上記ねじ無し部に上記抜け止め構造が形成されている。上述した屋根構造に使用した場合にねじ無し部の存在により、ねじ込む際の断熱材の浮き上がりを防止する。したがって、上記自己穿孔ねじが十分にねじ込まれた状態で自己穿孔ねじの抜け止めが行われる。この状態で、上記座金プレートの上面と上記自己穿孔ねじの上面とが大略面一に位置しており、上述した屋根構造に使用しても自己穿孔ねじの頭部が飛び出さない。したがって、たとえばデッキプレート上に断熱材を敷設固定する屋根構造に使用しても自己穿孔ねじの頭は飛び出さない。このため、防水シートにフラッタリング現象が生じたとしても、防水シートに破れが生じにくく、防水シートの破断、漏水、飛散等トラブルが防止できる。さらに、上記変形容易化構造は、上記下穴の内周から周囲に延びる複数のスリットを含んで構成されるため、上記複数のスリットがあることでスリット間の変形が容易になる。このような簡単な構造により、自己穿孔ねじが座金プレートの下穴を押し広げる際の変形を容易にする。
【0021】
請求項記載の固定具は、上記抜け止め構造は、上記自己穿孔ねじの軸部に設けられた環状突部である。上記環状突部により、確実に自己穿孔ねじの抜け止めが行われ、上述した屋根構造に使用しても自己穿孔ねじの頭部が飛び出さない。このため、防水シートにフラッタリング現象が生じたとしても、防水シートに破れが生じにくく、防水シートの破断、漏水、飛散等トラブルが防止できる。
【0022】
請求項記載の固定具は、上記抜け止め構造は、上記自己穿孔ねじの軸部に設けられたねじ山である。上記ねじ山により、確実に自己穿孔ねじの抜け止めが行われ、上述した屋根構造に使用しても自己穿孔ねじの頭部が飛び出さない。このため、防水シートにフラッタリング現象が生じたとしても、防水シートに破れが生じにくく、防水シートの破断、漏水、飛散等トラブルが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態の固定具を示す図であり、(A)は座金プレートの平面図、(B)は座金プレートの断面図、(C)は自己穿孔ねじの側面図である。
図2】上記固定具の使用状態を説明する図である。
図3】上記固定具の作用を説明する図である。
図4】本発明の固定具における自己穿孔ねじの変形例を示す側面図である。
図5】本発明の固定具における座金プレートの変形例を示す平面図であり、(A)は第1変形例、(B)は第2変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の締着部材の実施形態について詳細に説明する。
図1および図2は、本実施形態における締着部材を説明する図である。
【0026】
〔全体構造〕
図1は、本発明の第1実施形態の固定具を示す図である。(A)は座金プレートの平面図、(B)は座金プレートの断面図、(C)は自己穿孔ねじの側面図である。
【0027】
この固定具は、自己穿孔ねじ10と座金プレート30とを備えている。
【0028】
〔座金プレート30〕
上記座金プレート30は、この例では金属製の円板状である。上記座金プレート30は、上記自己穿孔ねじ10を挿通させるための下穴35を有している。この例では、上記下穴35は、円板状の座金プレート30の中心に位置している。
【0029】
上記下穴35は、その内径Hが上記自己穿孔ねじ10の谷径Vよりも小さく設定されている。上記下穴35に上記自己穿孔ねじ10が挿通される際の座金プレート30の変形を容易にする変形容易化構造が設けられている。上記変形容易化構造は、上記下穴35の内周から周囲に延びる複数のスリット37である。この例では、下穴35の内周からラジアル方向に延びる8本のスリット37が上記変形容易化構造として形成されている。上記各スリット37に挟まれた舌状部39が、上記自己穿孔ねじ10が挿通される際にその挿通方向に曲がって変形する。
【0030】
〔自己穿孔ねじ10〕
上記自己穿孔ねじ10は、頭部11と軸部12を有している。上記軸部12には、先端に穿孔部12Aが形成され、頭部側にねじ無し部12Cが設けられ、それらのあいだにねじ部12Bが形成されている。上記穿孔部12Aは、ねじ込み対象物(たとえばデッキプレート)に対して穿孔する部分である。上記ねじ部12Bには、上記穿孔でできた孔にねじ込まれる雄ねじが形成されている。上記ねじ無し部12Cは、上記雄ねじが形成されていない部分である。
【0031】
上記ねじ部12Bの山径Tは、上記ねじ無し部12Cの外径Rよりも大きく、上記ねじ部12Bの谷径Vは、上記ねじ無し部12Cの外径Rよりも小さい。また、上記穿孔部12Aの径Dは、上記ねじ部12Bの谷径Vよりも小さい。また、上述したように、座金プレート30の下穴35の内径Hは、上記ねじ部12Bの谷径Vよりも小さいが、上記穿孔部12Aの径Dよりも大きい。つまり、山径T>ねじ無し部12C外径R>谷径V>下穴内径H>穿孔部径Dである。
【0032】
上記自己穿孔ねじ10は、上記変形した下穴35の内側が引っ掛かって抜け止めされる抜け止め構造が形成されている。この例では、上記抜け止め構造は、上記自己穿孔ねじ10の軸部12における上記ねじ無し部12Bに設けられた環状突部13である。上記環状突部13は、ねじ山状の突条がらせん状でなく環状に形成されたものである。
【0033】
上記抜け止め構造である環状突部13は、後述するように、上記座金プレート30が上記自己穿孔ねじ10の頭部11の座面11Aに位置した状態で上記抜け止めを行う。また、上記抜け止め構造である環状突部13は、後述するように、上記座金プレート30の上面30Aと上記自己穿孔ねじ10の上面11Bとが大略面一に位置した状態で上記抜け止めを行う。上記抜け止め構造である環状突部13の外径Eは、上記ねじ無し部外径Rよりも大きい。これにより、自己穿孔ねじ10が挿通されることにより変形した上記舌状部39が確実に引っ掛かって抜け止めされる。
【0034】
〔使用方法〕
図2は、上記固定具の使用状態を説明する図である。
【0035】
この例では、上記固定具をデッキプレート1上への断熱材2の敷設に使用するケースを説明する。デッキプレート1上に断熱材2を載置し、所定の固定位置に座金プレート30を配置し、下穴35に対して上記自己穿孔ねじ10を挿通させる。まず、座金プレート30の下穴35に先端の穿孔部12Aを通し、電動工具等を用いて自己穿孔ねじ10をねじ込んでいく。このとき、下穴35の周辺に形成された舌状部39が挿通方向に変形し、下穴35が押し広げられる。さらに自己穿孔ねじ10をねじ込んでいくと、下穴35の内側が変形して拡がった下穴35の内周部(舌状部39の先端部である)が環状突部13に引っ掛かって抜け止めされる。
【0036】
図3は、上記固定具の作用を説明する図である。
【0037】
このように、上記環状突部13により、上記座金プレート30の上面30Aが上記自己穿孔ねじ10の頭部11の座面11Aに位置した状態で上記抜け止めが行われる。また、上記環状突部13により、上記座金プレート30の上面30Aと上記自己穿孔ねじ10の上面11Bとが大略面一に位置した状態で上記抜け止めが行われる。
【0038】
〔作用効果〕
上記実施形態の固定具によれば、下記の作用効果を奏する。
【0039】
上記実施形態の固定具は、自己穿孔ねじ10と座金プレート30とを備えている。上記座金プレート30は、上記自己穿孔ねじ10を挿通させるための下穴35を有する。上記下穴35は、その内径Hが上記自己穿孔ねじ10の谷径Vよりも小さく設定されている。上記下穴35には変形容易化構造が設けられている。上記変形容易化構造は、上記自己穿孔ねじ10が挿通される際の座金プレート30の変形を容易にする構造である。上記固定具を使用する際には、上記自己穿孔ねじ10を上記座金プレート30の下穴35に挿通させる。このとき、下穴35の内径Hが上記自己穿孔ねじ10の谷径Vよりも小さく設定されているため、自己穿孔ねじ10は座金プレート30の下穴35を押し広げるように変形させて挿通される。そして、上記下穴35には上述した変形容易化構造が設けられているため、変形が容易で使いやすい。そして、上記自己穿孔ねじ10には、抜け止め構造が形成されている。このため、座金プレート30の下穴35を自己穿孔ねじ10が押し広げるように変形させ挿通された状態で、上記変形した下穴35の内側が上記抜け止め構造に引っ掛かって抜け止めされる。このように、座金プレート30の下穴35を自己穿孔ねじ30が押し広げて変形させて挿通され、変形した下穴35の内側が抜け止め構造に引っ掛かって抜け止めされるため、座金プレート30から自己穿孔ねじ10が抜けにくく、たとえ自己穿孔ねじ10が回転したとしても緩まない。したがって、たとえばデッキプレート1上に断熱材2を敷設固定する屋根構造に使用しても自己穿孔ねじ10の頭部11は飛び出さない。このため、防水シートにフラッタリング現象が生じたとしても、防水シートに破れが生じにくく、防水シートの破断、漏水、飛散等トラブルが防止できる。
【0040】
上記実施形態の固定具は、上記抜け止め構造は、上記座金プレート30が上記自己穿孔ねじ10の頭部11の座面11Aに位置した状態で上記抜け止めを行う。上記自己穿孔ねじ10が十分にねじ込まれて座金プレート30が頭部11の座面11Aに位置した状態で自己穿孔ねじ10の抜け止めが行われ、上述した屋根構造に使用しても自己穿孔ねじ10の頭部11が飛び出さない。このため、防水シートにフラッタリング現象が生じたとしても、防水シートに破れが生じにくく、防水シートの破断、漏水、飛散等トラブルが防止できる。
【0041】
上記実施形態の固定具は、上記抜け止め構造は、上記座金プレート30の上面30Aと上記自己穿孔ねじ10の上面11Bとが大略面一に位置した状態で上記抜け止めを行う。上記自己穿孔ねじ10が十分にねじ込まれて、上記座金プレート30の上面30Aと上記自己穿孔ねじ10の上面11Bとが大略面一に位置した状態で自己穿孔ねじ10の抜け止めが行われ、上述した屋根構造に使用しても自己穿孔ねじ10の頭部11が飛び出さない。このため、防水シートにフラッタリング現象が生じたとしても、防水シートに破れが生じにくく、防水シートの破断、漏水、飛散等トラブルが防止できる。
【0042】
上記実施形態の固定具は、上記自己穿孔ねじは、軸部12の頭部11側にねじ無し部12Cが設けられ、上記ねじ無し部12Cに上記抜け止め構造が形成されている。上述した屋根構造に使用した場合にねじ無し部12Cの存在により、ねじ込む際の断熱材2の浮き上がりを防止する。したがって、上記自己穿孔ねじ10が十分にねじ込まれた状態で自己穿孔ねじ10の抜け止めが行われ、上述した屋根構造に使用しても自己穿孔ねじ10の頭部11が飛び出さない。このため、防水シートにフラッタリング現象が生じたとしても、防水シートに破れが生じにくく、防水シートの破断、漏水、飛散等トラブルが防止できる。
【0043】
上記実施形態の固定具は、上記抜け止め構造は、上記自己穿孔ねじ10の軸部12に設けられた環状突部13である。上記環状突部13により、確実に自己穿孔ねじ10の抜け止めが行われ、上述した屋根構造に使用しても自己穿孔ねじ10の頭部11が飛び出さない。このため、防水シートにフラッタリング現象が生じたとしても、防水シートに破れが生じにくく、防水シートの破断、漏水、飛散等トラブルが防止できる。
【0044】
上記実施形態の固定具は、上記変形容易化構造は、上記下穴35の内周から周囲に延びる複数のスリット37である。上記複数のスリット37があることでスリット37間の変形が容易になる。このような簡単な構造により、自己穿孔ねじ10が座金プレート30の下穴35を押し広げる際の変形を容易にする。
【0045】
〔変形例〕
図4は、本発明の固定具における自己穿孔ねじ10の変形例を示す側面図である。
【0046】
この例では、上記抜け止め構造が、上記自己穿孔ねじ10の軸部12に設けられたねじ山13Aである。上記抜け止め構造であるねじ山13Aの外径は、上記ねじ無し部12C外径Rよりも大きい。それ以外は図1図3に示すものと同様であり、同様の部分にはおなじ符号を付している。
【0047】
この変形例の固定具は、上記抜け止め構造は、上記自己穿孔ねじ10の軸部12に設けられたねじ山13Aである。上記ねじ山13Aにより、確実に自己穿孔ねじ10の抜け止めが行われ、上述した屋根構造に使用しても自己穿孔ねじ10の頭部11が飛び出さない。このため、防水シートにフラッタリング現象が生じたとしても、防水シートに破れが生じにくく、防水シートの破断、漏水、飛散等トラブルが防止できる。それ以外は図1図3に示すものと同様の作用効果を奏する。
【0048】
図5は、本発明の固定具における座金プレート30の変形例を示す平面図である。
【0049】
図5(A)は第1変形例である。この例では、変形容易化構造を構成するスリット37がラジアル状でなく渦状に形成されている。それ以外は図1図3に示すものと同様であり、同様の作用効果を奏する。
【0050】
図5(B)は第2変形例である。この例では、変形容易化構造を構成するスリット37がラジアル状で、長いスリットと短いスリットが交互配置するよう形成されている。それ以外は図1図3に示すものと同様であり、同様の作用効果を奏する。
【0051】
〔その他の変形例〕
以上は本発明の特に好ましい実施形態について説明したが、本発明は図示した実施形態に限定する趣旨ではなく、各種の態様に変形して実施することができ、本発明は各種の変形例を包含する趣旨である。
【0052】
たとえば、上述した形態では、上記変形容易化構造がスリット37と舌状部39とから構成された例を示したが、これに限定する趣旨ではない。上記変形容易化構造としては、上記自己穿孔ねじ10を下穴35に挿通させるときに座金プレート30の下穴35周辺が変形容易になるものであれば、他の構造も含む趣旨である。たとえば、座金プレート30の下穴35周辺を薄肉にする等の構造であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1:デッキプレート
2:断熱材
10:自己穿孔ねじ
11:頭部
11A:座面
11B:上面
12:軸部
12A:穿孔部
12B:ねじ部
12C:ねじ無し部
13:環状突部
13A:ねじ山
30:座金プレート
30A:上面
35:下穴
37:スリット
39:舌状部
【要約】
【課題】デッキプレート上に断熱材を固定した屋根構造において、有効な緩み防止効果が得られる固定具を提供する。
【解決手段】自己穿孔ねじ10と座金プレート30とを備え、上記座金プレート30は、上記自己穿孔ねじ10を挿通させるための下穴35を有し、上記下穴35は、その内径Hが上記自己穿孔ねじ10の谷径Vよりも小さく設定され、上記下穴35に上記自己穿孔ねじ10が挿通される際の座金プレート30の変形を容易にする変形容易化構造が設けられ、上記自己穿孔ねじ10は、上記変形した下穴35の内側が引っ掛かって抜け止めされる抜け止め構造が形成されている。座金プレート30の下穴35を自己穿孔ねじ10が押し広げて変形させて挿通され、変形した下穴35の内側が抜け止め構造に引っ掛かって抜け止めされるため、座金プレート30から自己穿孔ねじ10が抜けにくく、たとえ自己穿孔ねじ10が回転したとしても緩まない。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5