(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】咀嚼嚥下困難者用食品ブロック
(51)【国際特許分類】
A23L 29/269 20160101AFI20230728BHJP
A23L 29/219 20160101ALI20230728BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20230728BHJP
【FI】
A23L29/269
A23L29/219
A23L5/00 A
(21)【出願番号】P 2018209221
(22)【出願日】2018-11-06
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】519127797
【氏名又は名称】三菱商事ライフサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】岸江 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】北村 進吾
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 好美
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/017953(WO,A1)
【文献】特開2011-193803(JP,A)
【文献】特開平03-168052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
G06H
G06Q
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品ペーストとβ-1,3-グルカンを含む冷凍耐性のある咀嚼嚥下困難者用食品ブロックにおいて、前記食品ペーストが異なる種類のものであるブロックが2種類以上組み合わされており、さらに加熱によって形状を保持しない非耐熱性咀嚼嚥下困難者用食品が組み合わされている咀嚼嚥下困難者用食品のキットであって、
前記咀嚼嚥下困難者用食品ブロックが単一の重量に調整されており、該咀嚼嚥下困難者用食品ブロック中の食品ペースト含有量が20~80%、単一重量が3~10gである咀嚼嚥下困難者用食品キット。
【請求項2】
咀嚼嚥下困難者用食品ブロックが、加工デンプンをさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の咀嚼嚥下困難者用食品キット。
【請求項3】
咀嚼嚥下困難者用食品ブロックが加熱によっても形状を保持することを特徴とする、請求項1又は2に記載の咀嚼嚥下困難者用食品キット。
【請求項4】
食品ペーストとβ-1,3-グルカンを含む冷凍耐性のある咀嚼嚥下困難者用食品ブロックであって、該咀嚼嚥下困難者用食品ブロックが単一の重量に調整されており、該咀嚼嚥下困難者用食品ブロック中の食品ペースト含有量が20~80%、単一重量が3~10g/個である咀嚼嚥下困難者用食品ブロックを使用した、咀嚼嚥下困難者用食品の提供方法であって、
前記咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの栄養価データを記憶した栄養価記憶装置を備える栄養価管理システムに、提供する咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの種類と、提供重量又は個数を入力する工程(a)、
提供する咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの栄養価の合計が、前記栄養価記憶装置の情報に基づいて前記栄養価管理システムが備え
る栄養価計算装置で計算され、前記栄養価管理システムの表示装置に示される工程(b)、
を含む、前記咀嚼嚥下困難者用食品の提供方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか記載の咀嚼嚥下困難者用食品キットを使用した、咀嚼嚥下困難者用食品の提供方法であって、
食品ペーストとβ-1,3-グルカンを含む冷凍耐性のある咀嚼嚥下困難者用食品ブロックであり、前記食品ペーストが異なる種類のものであるブロックが2種類以上組み合わされており、前記咀嚼嚥下困難者用食品ブロックが単一の重量に調整されており、該咀嚼嚥下困難者用食品ブロック中の食品ペースト含有量が20~80%、単一重量が3~10g/個である咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの栄養価データを記憶した栄養価記憶装置を備える栄養価管理システムに、提供する咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの種類と、提供重量又は個数を入力する工程(a)、
提供する咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの栄養価の合計が、前記栄養価記憶装置の情報に基づいて前記栄養価管理システムが備え
る栄養価計算装置で計算され、前記栄養価管理システムの表示装置に示される工程(b)、
を含む、前記咀嚼嚥下困難者用食品の提供方法。
【請求項6】
咀嚼嚥下困難者用食品ブロックが加工デンプンをさらに含むことを特徴とする、請求項4又は5記載の咀嚼嚥下困難者用食品の提供方法。
【請求項7】
栄養価管理システムに、加熱によって形状を保持しない非耐熱性咀嚼嚥下困難者用食品の種類、提供量、又は栄養価を入力する工程(a2)を含み、
提供する咀嚼嚥下困難者用食品ブロックと非耐熱性咀嚼嚥下困難者用食品の栄養価の合計が、前記栄養価記憶装置の情報に基づいて前記栄養価管理システムが備える前記栄養価計算装置で計算され、前記栄養価管理システムが備える表示装置に示される工程(b2)を含む請求項4~6のいずれかに記載の咀嚼嚥下困難者用食品の提供方法。
【請求項8】
工程(b)又は工程(b2)で計算される栄養価が、カロリー、塩分、タンパク質量、脂質、及び炭水化物のいずれか1種以上であることを含む、請求項4~7のいずれか記載の咀嚼嚥下困難者用食品の提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や基礎疾患患者などの咀嚼嚥下困難者に簡便に提供できる咀嚼嚥下困難者用食品ブロック、それを含む食品キット、及びその提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療・介護用途の食品として、咀嚼嚥下困難者用食品が知られている(例えば、特許文献1~3)。これらの食品は、食品ペーストをゲル化剤などで固形化し、口腔内での押しつぶしが容易な軟らかさを有し、誤嚥をおこさないような飲み込みやすい物性となっている。
【0003】
近年、これらの咀嚼嚥下困難者用食品も、ペーストを固形化し成形された加工済みの製品が冷凍・冷蔵などで流通し、病院や施設などの介護・看護の現場では、それらの加工済み製品や、それぞれの介護の現場で調理した材料を組み合わせ、さらなる調理や盛り付けなどを行っている。
【0004】
高齢者や患者らのQOL向上には、温かい食事はあたたかいまま提供されることが望まれ、咀嚼嚥下困難者用食品であっても、煮物・シチューなどの煮込みメニューも配膳直前まで加温されることもある。そのような状況でも形状を保持する耐熱性咀嚼嚥下困難者用食品も多く検討されている。
【0005】
また、成形された加工済み咀嚼嚥下困難者用製品は、大きな塊のままで包装されていることがあり、そういった加工品は調理する際、一口大に切り分けるなどの二次加工をしなくてはならないことから、現場の負担になっていた。また、調理残を再冷蔵・再冷凍すると、冷蔵品は衛生上の問題が起こりやすいし、冷凍品は解凍・凍結を繰り返し、物性上の問題がおこったり、味や臭いに影響があったりしていた。そして衛生上や物性上の問題が起こった加工品はもはや咀嚼困難者に提供することは出来ず、廃棄することになるため、食品ロスの問題も起きていた。さらに、冷蔵品では、調理時や盛り付け時に、咀嚼嚥下困難者用食品特有の軟らかさに起因して、切り分けている途中で崩れてしまうなど、課題があった。
【0006】
さらに、摂食する高齢者や患者は、栄養価の管理が重要であることが多くあり、市販の咀嚼嚥下困難者用食品を上記のような二次加工をすると、そのたびに切り分けた分量を計量し、栄養価を計算するなど手間になっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-319048号
【文献】特開2014-236700号
【文献】国際公開第WO2017/17953号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明の課題は、高齢者や基礎疾患患者などの咀嚼嚥下困難者に適した食品を、介護・看護の現場で簡便に提供できる製品及びその方法を提供することにある。詳細には、現場作業の軽減や調理時間の短縮、さらに調理時の菌汚染のリスク低減といった衛生面にも寄与しつつ、耐熱性を付与する事で加熱後も形状を保ち、温かいまま提供する事が可能である咀嚼嚥下困難者用食品、及びその提供方法である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、β-1,3-グルカン、特にカードランを含む耐熱性を有する咀嚼嚥下困難者用食品を特定の重量単位のブロックに加工すること、その結果、提供時にブロック単位で組合せることで調理時の手間が省け、栄養価の計算も簡便となり、メニューの組み合わせも広がることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、(1)食品ペーストとβ-1,3-グルカンを含む冷凍耐性のある咀嚼嚥下困難者用食品ブロックであって、該咀嚼嚥下困難者用食品ブロックが単一の重量に調整されており、該咀嚼嚥下困難者用食品ブロック中の食品ペースト含有量が20~80%、単一重量が3~10g/個である咀嚼嚥下困難者用食品ブロックや(2)加工デンプンをさらに含むことを特徴とする、上記(1)記載の咀嚼嚥下困難者用食品ブロックや、(3)食品ペーストとβ-1,3-グルカンを含む冷凍耐性のある咀嚼嚥下困難者用食品ブロックにおいて、前記食品ペーストが異なる種類のものであるブロックが2種類以上組み合わされていることを特徴とする、咀嚼嚥下困難者用食品のキットであって、該咀嚼嚥下困難者用食品ブロックが単一の重量に調整されており、該咀嚼嚥下困難者用食品ブロック中の食品ペースト含有量が20~80%、単一重量が3~10gである咀嚼嚥下困難者用食品キットや、(4)咀嚼嚥下困難者用食品ブロックが、加工デンプンをさらに含むことを特徴とする、上記(3)記載の咀嚼嚥下困難者用食品キットや、(5)咀嚼嚥下困難者用食品ブロックが加熱によっても形状を保持することを特徴とする、上記(1)若しくは(2)に記載の耐熱性咀嚼嚥下困難者用食品ブロック、又は上記(3)若しくは(4)記載の咀嚼嚥下困難者用食品キットや、(6)加熱によって形状を保持しない非耐熱性咀嚼嚥下困難者用食品がさらに組み合わされていることを特徴とする、上記(3)又は(4)記載の咀嚼嚥下困難者用食品キットに関する。
【0011】
また、本発明は、(7)上記(1)若しくは(2)に記載の咀嚼嚥下困難者用食品ブロック、又は上記(3)乃至(6)のいずれかに記載の咀嚼嚥下困難者用食品キットを使用した、咀嚼嚥下困難者用食品の提供方法や、(8)上記(1)又は(2)に記載の咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの栄養価データを記憶した栄養価記憶装置を備える栄養価管理システムに、提供する咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの種類と、提供重量又は個数を入力する工程(a)、提供する咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの栄養価の合計が、前記栄養価記憶装置の情報に基づいて前記栄養価管理システムが備える前記栄養価計算装置で計算され、前記栄養価管理システムの表示装置に示される工程(b)、を含む上記(7)に記載の咀嚼嚥下困難者用食品の提供方法や、(9)上記(1)又は(2)に記載の咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの栄養価データを記憶した栄養価記憶装置を備える栄養価管理システムに、加熱によって形状を保持しない非耐熱性咀嚼嚥下困難者用食品の種類、提供量、又は栄養価を入力する工程(a2)を含み、提供する咀嚼嚥下困難者用食品ブロックと非耐熱性咀嚼嚥下困難者用食品の栄養価の合計が、前記栄養価記憶装置の情報に基づいて前記栄養価管理システムが備える前記栄養価計算装置で計算され、前記栄養価管理システムが備える表示装置に示される工程(b2)を含む上記(8)に記載の咀嚼嚥下困難者用食品の提供方法や、(10)工程(b)又は工程(b2)で計算される栄養価が、カロリー、塩分、タンパク質量、脂質、及び炭水化物のいずれか1種以上であることを含む、上記(8)又は(9)記載の咀嚼嚥下困難者用食品の提供方法や、(11)咀嚼嚥下困難者用食品加温機の内部で加熱されることを含む、上記(7)乃至(10)のいずれかに記載の咀嚼嚥下困難者用食品の提供方法や、(12)加熱温度が60℃以上である、上記(11)記載の咀嚼嚥下困難者用食品の提供方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、咀嚼嚥下困難者のための様々なメニューを短時間で簡便に調理することができ、また、食材の定量を行うことなく食事の栄養価を計算することができる。したがって、本発明は、調理者の負担を低減しながら、咀嚼嚥下困難者の食事の質を向上させる効果を奏するとともに、調理時の食中毒原因菌汚染リスク低減や、食品ロスの削減などの効果も奏する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明における咀嚼嚥下困難者用食品ブロックとは、単一の重量に調整された、咀嚼嚥下困難者用食品の小塊を指す。本発明の咀嚼嚥下困難者用食品ブロックとしては、食品ペーストとβ-1,3-グルカンを含む混合物をブロック状に成形したものであって、上記食品ペースト含有量が20~80%であり、各ブロックの重量が3~10gの範囲内で一定に調整されているものであれば特に制限されない。上記ブロックの形状は、外観上おおよそ、直方体、立方体、三角柱、四面体などの多面体、円柱形、円錐形、球体や楕円体などの回転体、不定立体形であってよく、立体であれば任意の形状としてよい。好ましくは誤嚥のリスクの低い多面体又は円柱形であり、特に好ましくは、成形のしやすさの点から、直方体、または円柱形である。ひとつの態様として、直方体の底面の1辺が2cm程度、円柱の直径が2cm程度であると介護用スプーンに乗りやすい。また、別の態様として、立方体の1辺を1cm以上2cm未満とし、この辺を高さ方向となるように提供すると、開口機能が衰えたり、開口障害をもった者にも食べやすい大きさである。
【0014】
上記咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの原料となるβ-1,3-グルカンとしては、カードラン、シゾフィラン、スクレログリカンなどが知られている。これらの中で、カードランについては食品への利用が多くされている加熱凝固性多糖類であり、本発明に好ましく使用できる。このようなカードランとしては、例えば、アルカリゲネス属又はアクロバクテリウム属の微生物によって生産することもできるが、市販品(例えば、商品名カードラン;MCフードスペシャリティーズ社製など)を好適に用いることもできる。カードランの配合量は、咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの1~6質量%、好ましくは1.5~5.0質量%であり、特に1.5~3.5質量%がより好ましく、1.5~2質量%であることがさらに好ましく、1.675質量%であることが特に好ましい。
【0015】
また、原料となる食品ペーストは、野菜、果物、魚介類、肉類、卵類、乳製品類、また、これらの加工品を、生又は加熱した後、大きな塊のないように破砕、摩砕や、裏ごしなど従来知られた方法で微細化することにより、柔らかで口当たりの良い状態にしたペースト状食品である。また野菜などが粉末状に加工されたものに適量の水分を加えたペースト状食品でもよい。具体的には、にんじん、じゃがいも、玉ねぎ、カボチャ、インゲン、大根、サトイモ、サツマイモ、ホウレンソウ、小松菜、キャベツ、ピーマン、ゴボウ、しいたけ、リンゴ、ミカン、梨、柿、イチゴ、あずきなどの野菜・果物類、鶏肉、豚肉、牛肉、鴨肉などの畜肉類、鮭、サバ、マグロ、タラ、カレイ、タイ、ヒラメ、ウナギ、イカ、エビなどの魚介類、これらの加工品である調味済みの野菜の煮物、魚の煮つけやソテー、肉団子やハンバーグ、卵焼きなどのペーストがあげられ、食品ペースト1種類で1種の咀嚼嚥下困難者用食品ブロックにすることができる。また必要に応じて、素材2種以上の食品ペーストで1種の咀嚼嚥下困難者用食品ブロックにすることもできる。
【0016】
これらの食品ペーストの含有量は20~80%が好ましく、素材の味や栄養価を考慮すると40~60%がより好ましい。食品ペーストの含有量がこの範囲であると、食品ペーストのざらつきなども気にならないし、食材の味が適度に感じられるものとなる。例えば、じゃがいも、にんじん、玉ねぎ、ピーマン又は豚肉のペーストを使用する場合には、食品ブロック中の食品ペーストの含有量が50質量%であることが好ましく、小松菜などの葉野菜を使用する場合には、40質量%であることが好ましく、卵液を使用する場合には、30質量%であることが好ましい。
【0017】
本発明の咀嚼困難者用食品ブロックには、発明の効果を阻害しない限りにおいて、味付け、風味の味の増強・マスキングやテクスチャー改善、日持ち向上などの目的から、調味料や香辛料、甘味料などの食品素材、カードラン以外の増粘多糖類やデキストリン、加工デンプン、油脂、食品添加物などを添加してもよい。特に、本発明の咀嚼困難者用食品ブロックは、加工デンプンをさらに含むものであることが好ましい。上記加工デンプンとは、バレイショ、コーン、タピオカなどから採れるデンプンを化学的に変性させたものであり、例えば、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン、リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化酸化架橋デンプン、オクテニルコハクデンプンナトリウムなど好適に挙げることができるが、中でも、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプンやアセチル化リン酸架橋デンプンなど架橋デンプンであることが好ましい。また、上記咀嚼困難者用食品ブロック中の加工デンプンの含有量は、1~10質量%であることがより好ましく、2~6質量%であることがより好ましく、3~5質量%であることがさらに好ましく、3~4質量%であることがより好ましく、3.325質量%であることが特に好ましい。
【0018】
本発明の咀嚼嚥下困難者用食品ブロックは、原料とする食品ペーストと、カードランと水分、必要に応じてその他に添加する食品素材や添加物を均質になるように混合し、カップや食品型などに充填し、加熱して固形化される。さらに、冷凍耐性を有するため、固形化したのち冷凍されてもよい。
【0019】
固形化のための加熱温度は、カードランを用いたゲル状食品がゲルとして固形となればどのような温度であってもよいが、80℃以上に加熱する方法を好適に挙げることができる。具体的には、スチームコンベクションオーブン、電子レンジ、スチーマーなどを加熱装置として好適に挙げることができる。冷凍する場合は、加熱によりゲル化した咀嚼嚥下困難者用食品をカップや食品型などの成形型から抜出し冷凍するか、カップや食品型などの成形型に充填したまま冷凍したのちに抜き出して、咀嚼嚥下困難者用食品ブロックとすることができる。充填の際に、咀嚼嚥下困難者用食品ブロック一つひとつが同じ重量、つまり単一重量となるように充填して単一重量としてもよい。また、大型の型に充填し、加熱したのちに食品ブロック一つひとつが略同じ重量となるように切り分けてから冷凍してもよいし、大型の型のまま加熱・冷凍したのちに、切り分けてもよい。こうして得られた咀嚼嚥下困難者用食品ブロックは、そのまま冷凍保存で流通させることができ、また耐熱性を有するため、加熱調理することもできる。
【0020】
咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの単一重量としては3~10gであることがよい。より好ましくは5~8gであるとよい。3g以上であれば、嚥下障害をもつ高齢者・患者が食品が小さすぎて誤嚥につながるというリスクが低いし、10g以下であれば咀嚼困難者が、口腔内で飲み込みやすい。10g以上では咀嚼困難者がひとくちで食べられず、介助者が口に運ぶ前に切り分けるなどの手間がかかる。
【0021】
ここで、咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの原料となる食品ペーストの素材が異なる場合は、同一素材を原料とする咀嚼嚥下困難者用食品ブロック同士が等しい単一重量であればよく、異なる食品ペースト素材の咀嚼嚥下困難者用食品ブロック同士は異なる単一重量としてもよい。ここで、等しい単一重量とは、以下の重量の誤差の範囲内であることを言う。
【0022】
単一重量の咀嚼嚥下困難者用食品ブロック同士の重量について、等しい重量として許容される重量の誤差は、10個の咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの重量の平均値の±10%以下である。なお、平均値算出時は、加熱後のブロック同士、又は冷凍後のブロック同士から無作為に10個を抽出して、加熱後の状態、又は冷凍後の状態で計算される。つまり加熱後と冷凍後を混合して平均値を算出するのではなく、状態は統一して計算される。
【0023】
本発明の咀嚼嚥下困難者用食品キットとしては、上記本発明の咀嚼嚥下困難者用食品ブロックを2種以上組み合わされて含むものであれば特に制限されず、2以上の任意の個数又は種類の咀嚼嚥下困難者用食品ブロックを含むことができる。
【0024】
本発明の咀嚼嚥下困難者用食品キットは、キット専用の包装資材又は容器に1食分ずつの咀嚼嚥下困難者用食品ブロックが入れられていてもよいし、複数人、複数回の調理に使う量の咀嚼嚥下困難者用食品ブロックがまとめて一つの包装資材又は容器に入れられてもよい。1食分ずつ専用の容器に入れられている場合は、容器が耐熱性であると、そのまま加熱機器に入れられるため、好ましい。
【0025】
また、組み合わされた咀嚼嚥下困難者用食品ブロックは、複数種類が、等しい割合で組み合わせられてもいいし、特定の食品ペーストを原料として含む咀嚼嚥下困難者用食品ブロックが他の種類の食品ペーストを原料として含む咀嚼嚥下困難者用食品ブロックより多い比率で含まれてもよい。
【0026】
また、本発明において咀嚼嚥下困難者用食品ブロックは、調理段階での加熱によっても形状を保持することができる。形状の保持とは、加熱後に咀嚼嚥下困難者用食品ブロックが自立できず形状が崩れたり、溶けてしまったりせず、形が崩れず保形しているか、多少型崩れしても自立できている場合を指す。
【0027】
ここで、調理段階での加熱とは、冷凍されている咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの全体が加熱される方法が好ましく、特に好ましくは、温度調整付き配膳車、スチームコンベクションオーブン、又は電子レンジである。加熱温度としては、咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの中心温度が60℃以上となるように加熱されると、高齢者や患者が、本来あたたかい料理を温かいまま食することが出来るという面で好ましく、中心温度が80℃以上となるように加熱されると、調理したてのようなあたたかさとなるため特に好ましい。
【0028】
さらに本発明は、咀嚼嚥下困難者用食品ブロックとあわせて、加熱によって形状を保持しない非耐熱性咀嚼嚥下困難者用食品をさらに組み合わせることができる。ここで、加熱によって形状を保持しない非耐熱性咀嚼嚥下困難者用食品とは、加熱によって形状を保持する咀嚼嚥下困難者用食品ブロックと組み合わせて提供されることで、咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの調味料になり得る食品を指す。非耐熱性咀嚼嚥下困難者用食品の例として、ルウ、ソースなどが挙げられるが、より具体的には、和風出汁餡、味噌餡、とろろ餡、カレールウ、シチュールウ、ベシャメルソース、ドミグラスソース、トマトソース、酢豚餡風ソース、八宝菜餡風ソース、和風煮物風ソース、こしあん風ソース、みたらし風ソース、黒蜜風ソース、各種の果実のソースなどが挙げられ、冷蔵や冷凍の状態で組み合わされ得る。これらの非耐熱性咀嚼嚥下困難者用食品は、咀嚼嚥下困難者に提供されるという観点から、咀嚼嚥下困難者に適したとろみを有していることが好ましく、より好ましくは粘度が15000mPa.s以下又は、かたさが1×104N/m2以下のいずれかの物性であると、嚥下困難者の誤嚥のリスクが低くなる。咀嚼嚥下困難者に適した粘度へ調整する際は、従来知られた調理方法で調整してもよいし、市販の増粘剤や嚥下困難者用とろみ剤を用いてもよい。
【0029】
さらに、加熱によって形状を保持しない非耐熱性咀嚼嚥下困難者用食品は、咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの1回の提供で使用される量が明示されるか、1回の提供量ごとに分包されていると好ましい。1回の提供量の非耐熱性咀嚼嚥下困難者用食品、ルウ、ソースのいずれか1種以上を、咀嚼嚥下困難者用食品ブロックとともに容器に入れれば、その後の加熱工程で咀嚼嚥下困難者用食品ブロックとともに加熱され、咀嚼嚥下困難者用食品ブロックとともに提供することができ、咀嚼嚥下困難者用食品ブロックのみの組み合わせとあわせて、メニューのバリエーションが広がるものとなる。
【0030】
そして本発明は、咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの効率的な提供方法についても、包含する。本発明の咀嚼嚥下困難者用食品ブロック又は咀嚼嚥下困難者用食品キットを用いることで、簡便に咀嚼嚥下困難者用の食品の提供ができる。咀嚼嚥下困難者用の食品の提供は、単一の重量に調整された咀嚼嚥下困難者用食品ブロックを、咀嚼嚥下困難者用の食事において、少なくとも1種以上が用いられて提供される咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの提供方法及び、咀嚼嚥下困難者用の食事において咀嚼嚥下困難者用食品キットが1セット以上用いられて提供される咀嚼嚥下困難者用食品キットの提供方法を含む。本発明における食事は、朝食、昼食、夕食といった基本の3食の食事のみならず、3食の食事間に栄養や空腹を満たすためのおやつや補助食なども含まれる。これらの食事において提供される種々のメニューの1種以上に本発明の咀嚼嚥下困難者用食品ブロック又は咀嚼嚥下困難者用食品キットは用いられうる。提供された際に、咀嚼・嚥下の問題にならない範囲で、本発明の咀嚼嚥下困難者用食品ブロック以外の食品と組み合されることも含まれる。
【0031】
さらに、咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの提供方法は、提供する咀嚼嚥下困難者用の食品の栄養価を計算することも含むことができる。上記本発明の提供方法としては、以下の工程(a)及び(b)を含むもの、又は以下の工程(a2)及び(b2)を含むものであれば特に制限されない。
(a)上記咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの栄養価データを記憶した栄養価記憶装置を備える栄養価管理システムに、提供する咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの種類と、提供重量又は個数とを入力する工程;
(b)提供する咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの栄養価の合計が、前記栄養価記憶装置の情報に基づいて前記栄養価管理システムが備える前記栄養価計算装置で計算され、前記栄養価管理システムの表示装置に示される工程;
(a2)上記咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの栄養価データを記憶した栄養価記憶装置を備える栄養価管理システムに、加熱によって形状を保持しない非耐熱性咀嚼嚥下困難者用食品の種類、提供量、又は栄養価を入力する工程;
(b2)提供する咀嚼嚥下困難者用食品ブロックと非耐熱性咀嚼嚥下困難者用食品の栄養価の合計が、前記栄養価記憶装置の情報に基づいて前記栄養価管理システムが備える前記栄養価計算装置で計算され、前記栄養価管理システムが備える表示装置に示される工程;
【0032】
本発明の咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの提供方法では、咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの栄養価データを記憶した栄養価記憶装置を備えた栄養価管理システムを使用できる。栄養価記憶装置は、病院、介護施設又は個人のパソコンのハードディスクや、ネットワークサーバ―などの記憶装置でもよいし、インターネット上に開設された栄養情報管理サイトの接続するサーバーでもよい。前記栄養情報記憶装置は、パソコンやタブレットのキーボードなどの入力装置を用いて咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの単一重量あたり又は特定重量あたりの栄養価が入力されており、一度入力された栄養価は、消去又は更新されない限り栄養価記憶装置に保存されている。上記栄養価管理システムとしては、エクセル栄養君(健帛社製)、Mr.献ダテマン(タス社製)、栄養マイスターオンライン(アイネス社製)等の公知のものを好適に使用することができるし、Microsoftエクセルなどの表計算ソフトを用いて簡易なシステムを構築し使用することもできる。
【0033】
そして、本発明は、上記栄養価管理システムの栄養価記憶装置に、提供する咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの種類と、提供重量又は個数とを入力する工程を含むことができる。咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの種類は、栄養価管理システムの栄養価記憶装置に記憶されている種類である。記憶されていない咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの種類の入力があった場合は、栄養価を新たに入力できるよう、栄養価記憶装置に接続されてもよい。
【0034】
さらに上記栄養価管理システムは、パソコン内や電気通信回線により、栄養価記憶装置に、組み合わせが入力された咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの種類を検索する検索手段と、検索された咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの栄養価の情報を照会する手段と、入力された組合せ情報と検索結果及び照会結果を栄養価計算装置に送信する手段を具備し、栄養価計算装置で咀嚼嚥下困難者用食品全体の栄養価を合計計算することができる。さらに、計算結果をパソコンやタブレットのモニターなどの表示装置に表示する表示手段をも含む。
【0035】
なお、組み合わされて提供される咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの種類は提供される患者・高齢者に合わせて任意に組み合わされてよいが、少量を組み合わせて、合計栄養価を計算し、その結果に基づいて、不足分をさらに組み合わせてもよい。本発明の咀嚼嚥下困難者用食品ブロックは単一重量に調整されているので、栄養価の不足分を少量ずつ追加で組み合わせられ、また、咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの単一重量あたりの栄養価を栄養価記憶装置に記憶させておくことで、栄養価の計算も簡便で効率的なものとなる。
【0036】
また、栄養価としては、エネルギー(カロリー)、タンパク質、脂質、炭水化物、食物繊維、ナトリウム、食塩相当量、亜鉛、鉄、カリウム、カルシウム、リン、コレステロール、各種ビタミン、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸などが挙げられるが、高齢者や基礎疾患患者の栄養管理という面からは、エネルギー、タンパク質、脂質、炭水化物、及び食塩相当量から選ばれる1種以上が好ましい栄養価の項目である。
【0037】
さらに、本発明の咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの提供方法では、咀嚼嚥下困難者用食品ブロックと組み合わされた非耐熱性咀嚼嚥下困難者用食品の栄養価も計算することも含むことができる。組み合わせる非耐熱性咀嚼嚥下困難者用食品について、種類及び、その1回の提供量あたりの栄養価を栄養価記憶装置に入力することができる。栄養価記憶装置は、咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの栄養価を入力する栄養価記憶装置と同様の装置であり、組み合わされた咀嚼嚥下困難者用食品ブロックと非耐熱性咀嚼嚥下困難者用食品との合計の栄養価が、栄養価計算装置で計算され、表示させることができる。
【0038】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0039】
[咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの製造]
(1)じゃがいもブロック
表1の配合により、じゃがいもブロックを製造した。じゃがいもはあらかじめ茹でて押しつぶし、マッシュポテト状にしたものを「じゃがいもペースト」として用いた。また、カードラン(MCフードスペシャリティーズ社製)と加工デンプン(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋でん粉、日澱化學社製)は、あらかじめ出汁に混合し、よく撹拌して準備した。上記じゃがいもペーストにカードラン、加工でんぷんを懸濁した出汁を加え、ミキサーで混合したものを直方体のシリコン型に5g程度ずつ充填し、スチームコンベクションオーブンのスチームモードで中心温度85℃となるよう加熱した。加熱後、型のまま冷凍し、完全に冷凍されたのち型から取り出した。取り出した咀嚼嚥下困難者用じゃがいもブロックは5.0~5.5g/個に調整されていた。
(2)他の野菜ペーストを含むブロック
表1の配合により、にんじん、玉ねぎ、ピーマン、小松菜の咀嚼嚥下困難者用ブロックを製造した。いずれの野菜も、あらかじめ茹でてミキサーにかけペースト状としたものを用いた。食品ペーストを変更した以外は、じゃがいもブロックと同様の手順で咀嚼嚥下困難者用食品ブロックを製造した。得られた咀嚼嚥下困難者用ブロックはいずれも5.0~5.5g/個に調整されていた。
(3)豚肉ブロック
表1の配合により、豚肉ブロックを製造した。豚挽き肉はあらかじめ芯温80℃以上に加熱し、冷却したものを準備した。準備したひき肉にカードラン、加工でんぷんを懸濁した出汁を加え、ミキサーで混合しペーストとした。以降の手順は、じゃがいもブロックと同様にして咀嚼嚥下困難者用豚肉ブロックを得た。得られた咀嚼嚥下困難者用ブロックはいずれも5.0~5.5g/個に調整されていた。
(4)だし巻き卵ブロック
卵を溶きほぐし、カードラン、加工でんぷんを懸濁した出汁、その他の卵焼きに従来用いられる調味料(砂糖、みりん、しょうゆ)を加えてミキサーで混合した。以降の手順は、じゃがいもブロックと同様にして咀嚼嚥下困難者用だし巻きたまごブロックを得た。得られた咀嚼嚥下困難者用だし巻きたまごブロックは5~5.5gに調整されていた。
【0040】
【実施例2】
【0041】
[咀嚼嚥下困難者用食品ブロックのキット及びキットを用いた食事の製造例]
実施例1において製造した食品ブロックを、表2に示した組み合わせにより、咀嚼嚥下困難者用食品ブロックのキットを製造した。さらに咀嚼嚥下困難者用食品ブロックのキットを用いて、食事の1種となるおかずを作製した。
(1)カレーキット
組み合わされた咀嚼嚥下困難者用食品ブロックのカレーキットを耐熱性の容器に載せ、非耐熱性咀嚼嚥下困難者用食品として市販のカレー固形ルウ(こくまろ甘口、ハウス社製)をお湯に溶かし、とろみ剤(トロミダイヤ、三菱商事フードテック社製)で調整したルウを一緒に盛り付け、蓋をして、再加熱カートにセットし、120℃、35分加熱した。得られた食品の咀嚼嚥下困難者用食品ブロックは、加熱後も溶けたり崩れたりすることなく加熱前の形状を維持しており、全体として咀嚼嚥下困難者用食品のカレールウとして、咀嚼困難者用白飯とともに盛り付けてカレーとして提供できるものであった。
(2)酢豚キット
組み合わされた咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの酢豚キットを耐熱性の容器に載せ、非耐熱性咀嚼嚥下困難者用食品として市販の酢豚のたれ(酢豚ソース、MCフードスペシャリティーズ社製)を一緒に盛り付け、電子レンジ600Wで1分加熱した。得られた食品の咀嚼嚥下困難者用食品ブロックは、加熱後も溶けたり崩れたりすることなく加熱前の形状を維持しており、全体として咀嚼嚥下困難者用のおかずの酢豚として提供できるものであった。
(3)肉じゃがキット
非耐熱性咀嚼嚥下困難者用食品として市販の(煮物のたれ、マルハチ村松社製)をお湯に溶かし、とろみ剤(トロミダイヤ、三菱商事フードテック社製)でとろみをつけ、組み合わされた咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの肉じゃがキットとともに耐熱性の容器に盛り付けて、スチームコンベクションオーブンのスチームモードで、100℃、15分加熱した。得られた食品の咀嚼嚥下困難者用食品ブロックは、加熱後も溶けたり崩れたりすることなく加熱前の形状を維持しており、全体として咀嚼嚥下困難者用のおかずの肉じゃがとして提供できるものであった。
【0042】
【実施例3】
【0043】
[咀嚼嚥下困難者用食品ブロックを用いた食事の栄養計算]
実施例2の(1)~(3)で製造した咀嚼嚥下困難者用食品について、栄養管理ソフトを用いて栄養価を確認した。
実施例1で製造した咀嚼嚥下困難者用食品ブロックについて、パソコンを入力装置として、各咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの単一重量5gあたりの栄養価を、記憶装置であるパソコン上の栄養管理ソフトのデータベースに入力した。ここで入力した栄養価は、カロリー、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量である。同様に、市販カレー固形ルウ、市販煮物たれ、市販酢豚たれについても、市販品の表示をもとに100gあたりの栄養価を入力した。
パソコン上の栄養管理ソフト(エクセル栄養君、健帛社製)上の栄養価計算画面で、実施例2(1)のカレーキットに用いた咀嚼嚥下困難者用食品ブロックの種類と個数を、表2に従って入力した。さらに非耐熱性咀嚼嚥下困難者用食品である市販のカレー固形ルウについても使用量を入力した。
その結果、提供した咀嚼嚥下困難者用食品ブロック及び非耐熱性咀嚼嚥下困難者用食品の栄養価の合計はカロリー50kcal、たんぱく質5g、脂質0.4g、炭水化物6.1g、食塩相当量0.4gであった。
以上のように、本発明の咀嚼嚥下困難者用食品ブロックを用いることで、簡便に咀嚼嚥下困難者に食事が提供でき、また栄養価の計算も効率的に行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の食品ブロック及び食材キットは、医療や介護の分野において、咀嚼嚥下困難者用の食事作製のために利用することができる。