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特許7320907液状着色組成物、ならびにポリエステル樹脂組成物およびポリエステル樹脂成形体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】液状着色組成物、ならびにポリエステル樹脂組成物およびポリエステル樹脂成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/02 20060101AFI20230728BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20230728BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20230728BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20230728BHJP
   C08G 63/183 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
C08L79/02
C08L71/00 Y
C08K5/053
C08K5/103
C08G63/183
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023034253
(22)【出願日】2023-03-07
【審査請求日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2022114680
(32)【優先日】2022-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大久保 渓介
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 誠
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-183531(JP,A)
【文献】特開2003-105236(JP,A)
【文献】特開2006-241286(JP,A)
【文献】特開2018-131615(JP,A)
【文献】特開昭49-018917(JP,A)
【文献】特開昭55-149344(JP,A)
【文献】特公昭50-034061(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 79/00 - 79/08
C08L 71/00 - 71/14
C08K 5/00 - 5/59
C08G 63/00 - 63/91
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂を重合する際に添加される液状着色組成物であって、
ジオール成分(A)、界面活性剤(B)、及び染料(C)を含み、
染料(C)は、25℃におけるエチレングリコール100mLに対する溶解度が0.5g以下であることを特徴とする、液状着色組成物。
【請求項2】
界面活性剤(B)は、ノニオン系界面活性剤および両性界面活性剤の少なくともいずれかである、請求項1記載の液状着色組成物。
【請求項3】
界面活性剤(B)は、ポリ(12-ヒドロキシステアリン酸)-ポリエチレンイミン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルベタイン、及びアルキルアミンオキサイドからなる群より選ばれる少なくともいずれかである、請求項2記載の液状着色組成物。
【請求項4】
ジオール成分(A)100質量部に対して、界面活性剤(B)を0.1~50質量部含む、請求項1又は2記載の液状着色組成物。
【請求項5】
染料(C)は、アンスラキノン系染料またはペリノン系染料である、請求項1又は2記載の液状着色組成物。
【請求項6】
重合触媒(Z)と液状着色組成物の存在下で、少なくともテレフタル酸を含むジカルボン酸成分(X)と少なくともエチレングリコールを含むジオール成分(Y)とを重合反応させて、ポリエステル樹脂組成物を製造する工程を備え、
前記液状着色組成物は、ジオール成分(A)、界面活性剤(B)、及び染料(C)を含み、
染料(C)は、25℃におけるエチレングリコール100mLに対する溶解度が0.5g以下であることを特徴とする、ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
重合触媒(Z)は、チタン系触媒である、請求項6記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
少なくともテレフタル酸を含むジカルボン酸成分(X)、および少なくともエチレングリコールを含むジオール成分(Y)の少なくともいずれかが、ポリエステル樹脂を解重合して得られた成分である、請求項6又は7記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
重合触媒(Z)と液状着色組成物の存在下で、少なくともテレフタル酸を含むジカルボン酸成分(X)と少なくともエチレングリコールを含むジオール成分(Y)とを重合反応させて、ポリエステル樹脂組成物を製造する工程と、
得られたポリエステル樹脂組成物を成形する工程とを備え、
前記液状着色組成物は、ジオール成分(A)、界面活性剤(B)、及び染料(C)を含み、
染料(C)は、25℃におけるエチレングリコール100mLに対する溶解度が0.5g以下であることを特徴とする、ポリエステル樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂を重合する際に添加される液状着色組成物、ならびにポリエステル樹脂組成物およびポリエステル樹脂成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック成形体は、成形加工が容易なことから、電気・電子機器部品、自動車部品、医療用部品、食品容器などの幅広い分野で使用されている。特にポリエステル樹脂を用いた成形体(ポリエステル樹脂成形体)は化学的及び物理的性質に優れているため、ペットボトル等に代表される食品容器、サニタリー容器、ポリエステル繊維、またはフィルムやシート等、非常に多岐の用途に利用されている。また、コスト及び環境への負荷低減のため、ポリエステル樹脂の再利用も進められている。
【0003】
また、ポリエステル樹脂は、重合時に用いる原料や重合条件により、色相が黄味になることがあり、これを用いたポリエステル樹脂成形体は、外観上好ましくないという問題がある。具体的には、重合触媒として多く使われているアンチモン系触媒は毒性が高いことから、近年ではチタン触媒への置き換えが進んでいるが、チタン触媒は反応速度が早いため、従来のアンチモン触媒を用いて得られたポリエステル樹脂よりも、黄味であることが問題となっている。
【0004】
さらに、ポリエステル樹脂からなる食品包装容器や飲料ボトルにガスバリア性を付与する目的で、例えばポリアミドMXD6樹脂が併用されることがあるが、ポリエステル樹脂のケミカルリサイクル時にポリアミドMXD6樹脂と分別することが難しく、これが重合時に混在すると、得られたポリエステル樹脂の外観が黄味になるという問題もある。
【0005】
このような問題を解決する方法として、特許文献1には着色を防止する目的で、リン酸化合物や亜リン酸化合物を重合時に添加する技術が開示されている。特許文献2には、ポリエステルの製造方法により、黄色度の低いポリエステルを得る技術が開示されている。さらに色調改善等の目的で、酢酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルトおよびそれらの水和物等のコバルト化合物、その他無機および有機の顔料、染料、蛍光増白剤などを使用する手法が記載されており、これらの添加方法として、重縮合反応中には、粉末や、ポリエステルのモノマーの1つに溶解させて添加する手法、または重縮合反応終了後には、粉末や、マスターバッチとして添加する手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-335974号公報
【文献】特開2005-314515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらのような従来の方法では、粉末状または顆粒状であるブルーイング剤となる色材を、ポリエステル樹脂組成物中で均一に分散することは難しく、得られた成形体は、色調整が充分でなく、色ムラもおこるという問題がある。
また、色材をポリエステル樹脂の原料に分散して用いただけでは、相溶性が悪く均一に分散できないことから、これを用いて得られた成形体は色ムラが発生する。
さらに、重縮合反応終了後にマスターバッチを添加する場合には、別途計量設備や混合設備が必要になることからコスト増の要因となるだけでなく、マスターバッチ製造時の熱により劣化した樹脂が成形体に含まれることとなり、機械物性の低下がおこる。
【0008】
そこで本発明の課題は、色材の分散性と保存安定性に優れる液状着色組成物であって、ポリエステル樹脂を製造する際の重合反応を阻害せず、色ムラなく均一にブルーイングができ、色材の色移行性が無いポリエステル樹脂組成物、およびポリエステル樹脂成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の実施形態を含む。本発明の実施形態は以下に限定されない。
〔1〕ポリエステル樹脂を重合する際に添加される液状着色組成物であって、
ジオール成分(A)、界面活性剤(B)、及び染料(C)を含み、
染料(C)は、25℃におけるエチレングリコール100mLに対する溶解度が0.5g以下であることを特徴とする、液状着色組成物。
〔2〕界面活性剤(B)は、ノニオン系界面活性剤および両性界面活性剤の少なくともいずれかである、〔1〕記載の液状着色組成物。
〔3〕界面活性剤(B)は、ポリ(12-ヒドロキシステアリン酸)-ポリエチレンイミン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルベタイン、及びアルキルアミンオキサイドからなる群より選ばれる少なくともいずれかである、〔2〕記載の液状着色組成物。
〔4〕ジオール成分(A)100質量部に対して、界面活性剤(B)を0.1~50質量部含む、〔1〕~〔3〕いずれか記載の液状着色組成物。
〔5〕染料(C)は、アンスラキノン系染料またはペリノン系染料である、〔1〕~〔4〕いずれか記載の液状着色組成物。
〔6〕重合触媒(Z)と液状着色組成物の存在下で、少なくともテレフタル酸を含むジカルボン酸成分(X)と少なくともエチレングリコールを含むジオール成分(Y)とを重合反応させて、ポリエステル樹脂を製造する工程を備え、
前記液液状着色組成物は、ジオール成分(A)、界面活性剤(B)、及び染料(C)を含み、
染料(C)は、25℃におけるエチレングリコール100mLに対する溶解度が0.5g以下であることを特徴とする、ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
〔7〕重合触媒(Z)はチタン系触媒である、〔6〕記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
〔8〕少なくともテレフタル酸を含むジカルボン酸成分(X)、および少なくともエチレングリコールを含むジオール成分(Y)の少なくともいずれかが、ポリエステル樹脂を解重合して得られた成分である、〔6〕又は〔7〕記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
〔9〕重合触媒(Z)と液状着色組成物の存在下で、少なくともテレフタル酸を含むジカルボン酸成分(X)と少なくともエチレングリコールを含むジオール成分(Y)とを重合反応させて、ポリエステル樹脂組成物を製造する工程と、
得られたポリエステル樹脂組成物を成形する工程とを備え、
前記液状着色組成物は、ジオール成分(A)、界面活性剤(B)、及び染料(C)を含み、
染料(C)は、25℃におけるエチレングリコール100mLに対する溶解度が0.5g以下であることを特徴とする、ポリエステル樹脂成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、色材の分散性と保存安定性に優れる液状着色組成物であって、ポリエステル樹脂を得るための重合反応の際に添加することで、ポリエステル樹脂原料の重合反応を阻害せず、色ムラなく均一にブルーイングし、色材の色移行性が無いポリエステル樹脂組成物およびポリエステル樹脂成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。
なお、本明細書では、「少なくともテレフタル酸を含むジカルボン酸成分(X)」、「少なくともエチレングリコールを含むジオール成分(Y)」、「ポリエステル樹脂組成物」、「ポリエステル樹脂成形体」を、それぞれ「ジカルボン酸成分(X)」、「ジオール成分(Y)」、「樹脂組成物」、「樹脂成形体」と称することがある。
ここで、「液状」とは、25℃において液状であることを指す。
また、「主成分」とは、その成分中最も配合量が多い成分であることをいう。
本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0012】
《液状着色組成物》
本発明の液状着色組成物は、ポリエステル樹脂を合成する際に添加される液状着色組成物であって、ジオール成分(A)、界面活性剤(B)、及び染料(C)を含み、染料(C)は、25℃におけるエチレングリコール100mLに対する溶解度が0.5g以下である。
色材として、染料(C)を用い、さらにジオール成分(A)と界面活性剤(B)を含む液状着色組成物とすることにより、色材の分散性と保存安定性に優れ、ポリエステル樹脂組を重合工程によって得る際に、重合反応を阻害せず、色ムラなくブルーイングでき、染料の色移行性が無いポリエステル樹脂組成物とすることができる。
【0013】
<ジオール成分(A)>
本発明のジオール成分(A)は、染料(C)の分散媒の役割を有する。ジオールはグリコールともよばれ、ポリエステル樹脂を構成する主原料の1つとして機能する。
すなわち、液状着色組成物中のジオール成分(A)は、ジカルボン酸成分(X)及びジオール成分(Y)を重合反応させて、ポリエステル樹脂を製造する際に、ジカルボン酸成分(X)と反応し、ポリエステル樹脂を形成する。
ジオール成分(A)を用いることで、ポリエステル樹脂原料の合成の際に添加しても重合反応を阻害せず、ポリエステル樹脂を均一にブルーイングすることができる液状着色組成物となる。

ジオール成分(A)は、ポリエステル樹脂の原料として使用できるものであれば制限されず、具体的には、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等に例示される脂肪族グリコールが挙げられる。
中でも、ポリエステル樹脂の色ムラを抑制する観点から、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールが好ましく、液状着色組成物の分散性の観点からエチレングリコールがより好ましい。
エチレングリコールは、1,2-エタンジオール(1,2-ethanediol)ともよばれるグリコール類であり、ポリエチレンテレフタレートの主原料の1つである。
【0014】
ジオール成分(A)は、エチレングリコールを主成分として含むことが好ましい。
【0015】
ジオール成分(A)の融点は、ポリエステル樹脂重合時の混合液の均一性の観点から、-30℃~50℃であることが好ましい。これにより、色ムラなく均一にブルーイングができるために好ましい。
ジオール成分(A)の融点は、示差走査熱量測定装置を用いて測定することができる。
【0016】
<界面活性剤(B)>
界面活性剤(B)は、ジオール成分(A)に、染料(C)を分散させる分散剤の役割を有する。界面活性剤は、その分子中に親水性基と親油性基を有しており、相互に混ざり合わない物質の界面への強い吸着と分子の配向によって、界面張力を低下させる。
【0017】
界面活性剤は、水溶液にしたときにイオンに解離する界面活性剤と解離しない界面活性剤に分類される。解離する界面活性剤は、界面活性を示す部分のイオンの性質に従ってアニオン系界面活性剤あるいはカチオン系界面活性剤にさらに分けられる。また、溶液の水素イオン濃度(pH)が高いときには界面活性を示す部分が陰イオンとなり、pHが低くなるとそれが陽イオンになる界面活性剤がある。これは両性界面活性剤とよばれる。水溶液にした場合、解離をしない界面活性剤はノニオン系界面活性剤とよばれる。
【0018】
本発明における界面活性剤(B)は、ノニオン系界面活性剤または両性界面活性剤が望ましく、ノニオン系界面活性剤がより望ましい。これらの界面活性剤を用いることで液状着色組成物中の染料(C)の分散性と保存安定性がより優れ、よりポリエステル樹脂の重合を阻害せず、色ムラなくブルーイングを行うことができる液状着色組成物となる。
【0019】
液状着色組成物における界面活性剤(B)の配合量は、染料(C)の分散性と、ポリエステル樹脂原料の重合反応を阻害しないという観点から、ジオール成分(A)100質量部に対し、0.1~50質量部が好ましく、1~20質量部がより好ましく、2~10質量部が更に好ましい。
【0020】
[ノニオン系界面活性剤]
ノニオン系界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリ(12-ヒドロキシステアリン酸)-ポリエチレンイミン共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられ、特に制限されないが、ポリ(12-ヒドロキシステアリン酸)-ポリエチレンイミン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、ポリオキシアルキレン誘導体がより好ましい。上記であることで、液状着色組成物中の染料(C)の分散性と保存安定性に優れ、ポリエステル樹脂原料の重合反応を阻害しないために好ましい。
【0021】
ノニオン系界面活性剤(B)のHLB値は、染料(C)の分散性の観点から、HLB値15以下が好ましく、1~15が更に好ましい。
【0022】
なお、HLB(Hydrophile-LipophileBalance)値とは、材料の親水・疎水性を表すパラメータの一つであり、小さいほど疎水性が高く、大きいほど親水性が高いことを表す。化学構造からHLB値を算出する方法は種々知られており、また実測する方法も様々知られているが、本発明では、グリフィン法を用いてHLB値の算出を行う。なおグリフィン法とは、対象の材料の分子構造と分子量を用いて、下記式を用いてHLB 値を算出する方法である。
式:HLB値= 20×(親水性部分の分子量の総和)÷(材料の分子量)
【0023】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルの具体例として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル等が挙げられるが、特に限定されない。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルの具体例として、エマルゲン109P(花王社製、25℃で液体、HLB値13.6)、エマルゲン102KG(花王社製、25℃で液体、HLB値6.3)が挙げられる。
【0024】
ポリオキシアルキレン誘導体の具体例として、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンジグリセリルエーテル等が挙げられるが、特に限定されない。
【0025】
ポリオキシアルキレン誘導体の具体例として、エマルゲンLS-114(花王社製、25℃で液体、HLB値14)、エマルゲンB-66(花王社製、25℃で液体、HLB値13.2)、アデカプルロニックL-61(ADEKA社製、25℃で液体、HLB値3)、アデカプルロニックL-43(ADEKA社製、25℃で液体、HLB値12、アデカプルロニックL-35(ADEKA社製、25℃で液体、HLB値18.5)等が挙げられる。
【0026】
ソルビタン脂肪酸エステルの具体例として、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノステアレート等が挙げられるが、特に限定されない。
ソルビタン脂肪酸エステルの具体例として、レオドールSP-O30-V(花王社製、25℃で液体、HLB値1.8)、レオドールSP-L10(花王社製、25℃で液体、HLB値8.6)、エマゾールL-120V(花王社製、25℃で液体、HLB値16.7)等が挙げられる。
【0027】
[両性界面活性剤]
両性界面活性剤は、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド等が挙げられ、特に制限されない。
【0028】
アルキルベタインの具体例として、アルリルベタイン、ステアリルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられるが、特に限定されない。
アルキルベタインの具体例として、アンヒトール20BS(花王社製、25℃で液体)、アンヒトール20Y-B(花王社製、25℃で液体)等が挙げられる。
【0029】
アルキルアミンオキサイドの具体例として、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられるが、特に限定されない。
アルキルアミンオキサイドの具体例として、アンヒトール20N(花王社製、25℃で液体)等が挙げられる。
【0030】
界面活性剤(B)は、ジオール成分(A)との相溶性、及び染料(C)の分散性に優れることから、25℃で液体であることが好ましい。
【0031】
<染料(C)>
染料(C)は、25℃におけるエチレングリコール100mLに対する溶解度が0.5g以下の染料である。本発明においてはポリエステル樹脂の重合反応の際のブルーイングのために用いられる。
染料(C)が、ジオール成分(Y)が含有するエチレングリコールに対して、溶解度が0.5g以下であることにより、ジカルボン酸成分(X)とジオール成分(Y)を含むポリエステル樹脂原料の重合反応を阻害せず、ポリエステル樹脂を色ムラなく均一にブルーイングし、色材の色移行性も無いポリエステル樹脂組成物とすることができる。
【0032】
疎水性であるポリエステル樹脂組成物からの色移行性を抑える観点から、染料(C)は親水性成分であるエチレングリコールに対する溶解度が低いことが好ましい。そのため、疎水性であることが好ましく、溶解度が0.5g以下であり、0.48g以下であることが好ましく、0.45以下であることがより好ましい。
このような、染料(C)を用いることにより、無機および有機顔料よりも、液状着色組成物の分散性および保存安定性に優れ、色ムラが少ない成形体を得ることができる。
また、染料(C)を用いることにより、コバルトブルーを用いる場合に比べて安全性に優れる。また、群青のような無機顔料や、フタロシアニンブルーのような有機顔料を用いる場合に比べて液状着色組成物中での分散性および保存安定性に優れる。
なお、染料および顔料とは、例えば、C.I Name(Color Index Generic Name)における分類に則って識別することができる。
【0033】
また、色材として25℃におけるエチレングリコール100mLに対する溶解度が0.5gより高い染料を用い、エチレングリコールに溶解して液状着色組成物として用いた場合に比べて、ポリエステル樹脂原料の重合反応時や成形時の温度でのブリードが抑制され、色移行性が起こらない。
【0034】
なお、ブルーイングとは、得られたポリエステル樹脂組成物またはポリエステル樹脂成形体を目視で見た際の色相が、青味色調に変化していることをいう。例えば、CIE1976L*a*b*表色系で表されるb*が、染料(C)を添加せずに得たポリエステル樹脂組成物よりも、染料(C)を添加して得られたポリエステル樹脂組成物の方が低いことと表すことができる。
【0035】
染料の25℃におけるエチレングリコール100mLに対する溶解度とは、25℃のエチレングリコール100mLに溶ける染料の量の上限の限度であって、25℃のエチレングリコール100mLに染料を加えて1分間撹拌し、木綿布上で濾過し、固体や結晶の認められないときの染料の上限の質量である。
【0036】
液状着色組成物における染料(C)の配合量は、染料(C)の分散性の観点から、ジオール成分(A)100質量部に対し、1~150質量部が好ましく、2~130質量部がより好ましく、2~120質量部が更に好ましい。
このような液状着色組成物であることにより、ポリエステル樹脂を重合する際に添加される濃厚染料組成物として、よりブルーイング剤含有組成物としての機能を有効に発揮することができる。
【0037】
染料(C)としては、25℃におけるエチレングリコール100mLに対する溶解度が0.5g以下であれば特に制限されず、ポリエステル樹脂の色調にあわせて選択することができる。染料(C)としては、アンスラキノン系染料、ペリノン系染料、アゾ系染料、チアゾール系染料、オキサジン系染料、フタロシアニン系染料、キサンテン系染料、フタロシアニン系染料、キノリン系染料、アジン系染料、インジゴイド系染料、キサンテン系染料、アジン系染料、アクリジン系染料、メチン系染料、チアゾール系染料、チアジン系染料、ローダミン系染料、トリアリールメタン系染料等が挙げられる。
なかでも、ブルーイング効果が高く、液状着色組成物中での分散性に優れることから、アンスラキノン系染料またはペリノン系染料が好ましい。
【0038】
アンスラキノン系またはペリノン系染料として具体的には、Solvent Red52、117、135、169、176、Disperse Red5、Solvent Orange63、67、68、72、78、 Solvent Yellow98、103、105、113、116、Disperse Yellow54、64、160、Solvent Green3、20、26、Solvent Blue35、36、45、59、63、78、83、94、97、104、122、132、Solvent Violet13、31、33、36、などが挙げられる。
なかでも、ブルーイングの効果の観点より、Solvent Red52、117、135、169、176、Solvent Green3、20、26、Solvent Blue35、36、45、59、63、78、83、94、97、104、122、132、Solvent Violet13、31、33、36が好ましく、
Solvent Red135、Solvent Blue35、36、45、59、63、78、83、94、97、104、122、132、Solvent Violet13、31、33、36がより好ましい。
【0039】
<その他添加剤>
本発明液状着色組成物は、他の任意の重合体や制電剤、消泡剤、染色性改良剤、艶消剤、蛍光増白剤、安定剤、酸化防止剤、粘度調整剤、その他の添加剤が含有されていてもよい。酸化防止剤としては、芳香族アミン系、フェノール系等の酸化防止剤が使用可能であり、安定剤としては、リン酸やリン酸エステル系等のリン系、硫黄系、アミン系等の安定剤が使用可能である。
【0040】
なお、液状着色組成物は、ジオール成分(A)以外の有機溶剤を含まないことが好ましい。これは、意図的に添加された状態を除く概念であり、実質的に含まないことを表し、液状着色組成物の全質量に対し、他の有機溶剤は1質量%以下、0.5質量%以下、または0.1質量%以下であればよく、あるいは0質量%であってよい。
【0041】
<液状着色組成物の製造方法>
本発明における液状着色組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ジオール成分(A)と、界面活性剤(B)と、染料(C)と、更に必要に応じてその他添加剤とを加え、ヘンシェルミキサーやタンブラー、ディスパー等で混合し、シルバーソンミキサー(シルバーソン社製)等を用いて分散することで、液状着色組成物を得ることができる。分散装置は、上記以外にもニーダー、ロールミル、ボールミル、サンドミル等、任意の装置を使用することができる。成形加工が容易で分散性に優れるといった理由からビーズミル、シルバーソンミキサー、またはロールミルを用いることが好ましい。
液状着色組成物は、染料(C)が分散された染料分散液により、ブルーイング剤含有組成物として用いることができる。
【0042】
《ポリエステル樹脂組成物》
ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂原料を重合してポリエステル樹脂を製造する際に、液状着色組成物を添加して得られる。
本発明の液状着色組成物を用いることで、ジカルボン酸成分(X)とジオール成分(Y)を含むポリエステル樹脂原料の重合反応を阻害せず、ポリエステル樹脂を色ムラなく均一にブルーイングし、色材の色移行性も無いポリエステル樹脂組成物とできる。
なお、このとき、液状着色組成物中のジオール成分(A)もジオール成分としてジカルボン酸成分(X)と重合反応し、ポリエステル樹脂となるため、ポリエステル樹脂原料としても機能する。
そのため、ジオール成分(A)も、ジオール成分(Y)が含有する成分である、エチレングリコールであることが好ましい。
液状着色組成物を添加する工程は、重合開始前でもよいし、重合反応中であってもよい。
【0043】
すなわち、ポリエステル樹脂組成物は、重合触媒(Z)の存在下でジカルボン酸成分(X)と、ジオール成分(A)およびジオール成分(Y)とが重合反応して得られたポリエステル樹脂、界面活性剤(B)、ならびに染料(C)を含む。
【0044】
<ジカルボン酸成分(X)>
ジカルボン酸成分(X)は、少なくともテレフタル酸を含むジカルボン酸成分であり、ポリエステル樹脂の原料である。ジカルボン酸成分(X)は、テレフタル酸と、例えば、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジブチル等を含んでもよい。
ジカルボン酸成分(X)としては、テレフタル酸が主成分であることが好ましい。
なお、主成分とは、ジカルボン酸成分(X)を構成する成分中、最も含有率が高い成分がテレフタル酸であることをいう。
【0045】
ジカルボン酸成分(X)は、素原料から合成して得られたものを用いてもよいし、リサイクル等によりポリエステル樹脂を解重合して得られた成分を用いてもよい。
本発明の液状着色組成物は、ポリエステル樹脂を色ムラなくブルーイングする効果が高いため、リサイクルによりポリエステル樹脂を解重合して得られたジカルボン酸成分を用いた場合であっても、色調が良好な樹脂成形体が得られる。
【0046】
<ジオール成分(Y)>
ジオール成分(Y)は、少なくともエチレングリコールを含むジオール成分であり、ポリエステル樹脂の原料である。ジオール成分(Y)は、エチレングリコールと、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等、ジオール成分(A)で説明したエチレングリコール以外のジオール成分を含んでもよい。
ジオール成分(Y)としては、エチレングリコールが主成分であることが好ましい。
ただし、ジオール成分(Y)として、液状着色組成物が含有するジオール成分(A)は除く。
なお、主成分とは、ジオール成分(Y)を構成する成分中、最も含有率が高い成分がエチレングリコールであることをいう。
【0047】
ジオール成分(Y)は、素原料から合成して得られたものを用いてもよいし、リサイクルによりポリエステル樹脂を解重合して得られた成分を用いてもよい。
本発明の液状着色組成物は、ポリエステル樹脂を色ムラなくブルーイングする効果が高いため、リサイクル等によりポリエステル樹脂を解重合して得られた成分を用いた場合であっても、色調が良好な樹脂成形体が得られる。
【0048】
<重合触媒(Z)>
重合触媒(Z)は、ポリエステル樹脂原料の重合反応を促進させる触媒であり、ポリエステル樹脂の重合に際しては、特に制限はなく、例えば、チタンテトラアルコキシド、テトラブトキシチタン、酸化チタン等のチタン系触媒、ジブチルスズオキシド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ等のスズ系触媒、三酸化アンチモン等のアンチモン系触媒、二酸化ゲルマニウム、酢酸マグネシウム等の重合触媒を用いることができる。
【0049】
本発明の液状着色組成物は、ポリエステル樹脂原料の重合反応の際に、ポリエステル樹脂を色ムラ無く均一にブルーイングする効果が高いため、反応速度が速いチタン触媒を用いた場合であっても、色調が良好な樹脂成形体を得ることが可能となる。
【0050】
<その他成分>
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂原料の重合反応とポリエステル樹脂のブルーイングを阻害しない限り、上記以外の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、任意の重合体や制電剤、消泡剤、染色性改良剤、艶消剤、蛍光増白剤、安定剤、酸化防止剤、その他の添加剤が含有されていてもよい。酸化防止剤としては、芳香族アミン系、フェノール系等の酸化防止剤が使用可能であり、安定剤としては、リン酸やリン酸エステル系等のリン系、硫黄系、アミン系等の安定剤が使用可能である。
【0051】
<ポリエステル樹脂組成物の製造方法>
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ジカルボン酸成分(X)と、ジオール成分(Y)と重合触媒(Z)と、本発明の液状着色組成物を用いて製造できる。
ポリエステル樹脂を得るための重合方法は、特に制限はされないが、例えば、ジカルボン酸成分(X)と、ジオール成分(Y)を反応容器に投入し、更に本発明の液状着色組成物を投入した後、重合触媒(Z)を投入し、ジカルボン酸成分(X)と、ジオール成分(Y)のエステル化反応またはエステル交換反応により得られた生成物を、重縮合反応してポリエステル樹脂を製造する方法が挙げられる。本明細書では、これらの反応を含めて重合反応という。
【0052】
ポリエステル樹脂原料の重合反応の比率は、ジカルボン酸成分(X):ジオール成分(Y)のモル比が1:1.03~1:2.5の範囲であることが好ましく、1:1.05~1:1.2の範囲であることがより好ましい。上記範囲にあることで、機械物性に優れたポリエステル樹脂成形体を得ることができる。
【0053】
染料(C)の含有率は、ブリーイング効果の観点から、ポリエステル樹脂組成物100質量%を基準として、0ppmを超え10ppm以下であることが好ましく、より好ましくは5ppm以下であり、さらに好ましくは3ppm以下である。
【0054】
重合の反応温度は、特に制限されないが、180℃~280℃の範囲であることが好ましい。重合の反応温度が180℃以上の場合には、生産性が良好となる傾向にあり、280℃以下の場合には、樹脂の分解や、臭気の要因となる揮発分の副生成を抑制できる傾向にある。重合の反温度の下限値は200℃がより好ましく、220℃が特に好ましい。重合の反温度の上限値は270℃がより好ましい。重合の真空度は、0.5kPa以上が好ましい。0.5kPa以上の場合、反応性が良好となる傾向にあり、生産性が向上する。
【0055】
得られたポリエステル樹脂組成物は、ペレット状(円柱状チップ等)、粉体状、顆粒状あるいはビーズ状の形状とすることができる。混練力が強く、その後の成形加工が容易なことから、単軸押出機または二軸押出機にて製造したペレット状であることが好ましい。
【0056】
《ポリエステル樹脂成形体》
ポリエステル樹脂成形体は、ポリエステル樹脂を用いた成形体であって、前述のポリエステル樹脂組成物を成形して得られる。
具体的には、例えば、ポリエステル樹脂組成物を溶融混錬し、従来公知の成形機により成形することにより製造できる。成形機としては、射出成型機、押出成形機、回転成型機等が挙げられるがこれに限定されない。
【0057】
ポリエステル樹脂成形体は、フィルム、ラミネート、コーティング、繊維、食品用及び日用雑貨用等の射出成形体、圧縮射出成形体、回転成形体又は押出成形体等が挙げられる。
本発明のポリエステル樹脂成形体は、色ムラ無く均一にブルーイングされていることから、使用時において、消費者が目にし、とくに外観が良好であることが求められる用途であっても、好適に用いることができる。
【実施例
【0058】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例中、部および%は、特に断りがない場合は、それぞれ、質量部および質量%を表す。
また、表中の配合量は、質量部であり、不揮発分換算値である。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。
【0059】
実施例および比較例で使用した材料を以下に示す。
<ジオール成分(A)>
A1:エチレングリコール(丸善石油化学社製、融点-13℃)
A2:1,3-プロピレングリコール(三菱ケミカル社製、融点19.5℃)
A3:1,4-ブチレングリコール(三菱ケミカル社製、融点19℃)
A4:1,4-シクロヘキサンジメタノール(東京化成工業社製、融点31.5℃)
【0060】
<界面活性剤(B)>
B1:アデカプルロニックL-61(ADEKA社製)
B2:アデカプルロニックL-43(ADEKA社製)
B3:アデカプルロニックL-35(ADEKA社製)
B4:ポリ(12-ヒドロキシステアリン酸)-ポリエチレンイミン共重合体
B5:エマルゲン109P(花王社製)
B6:レオドールSP-O30-V(花王社製)
B7:アンヒトール20BS(花王社製)
B8:アンヒトール20N(花王社製)
B9:ラムテルPD-105(花王社製)
B10:コータミン24P(花王社製)
【0061】
界面活性剤(B)の構造と物性値を下記に示した。
【表1】
【0062】
<染料(C)>
C1:マクロレックスブルーRR(染料:アンスラキノン系染料、SolventBlue97、ランクセス社製、25℃におけるエチレングリコール100mLに対する溶解度が0.2g)
C2:スミプラストバイオレットB(染料:アンスラキノン系染料、SolventViolet13、住化ケムテックス社製、25℃におけるエチレングリコール100mLに対する溶解度が0.45g)
C3:ダイヤレジンレッドHS(染料:ペリノン系染料、SolventRed135、三菱化学社製、25℃におけるエチレングリコール100mLに対する溶解度が0.2g)
C’1:カヤラスターコイズブルーGL(染料、ダイレクトブルー86、日本化薬社製、25℃におけるエチレングリコール100mLに対する溶解度が7g)
【0063】
<顔料(D)>
D1:群青No1500(無機顔料、群青、第一化成工業社製、25℃におけるエチレングリコール100mLに対する溶解度が0.4g)
D2:リオノールブルーFG7330(有機顔料、フタロシアニンブルー、トーヨーカラー社製、25℃におけるエチレングリコール100mLに対する溶解度が0.2g)
【0064】
<ジカルボン酸成分(X)>
X1:素原料から合成して得られたテレフタル酸
X2:ポリエステル樹脂を解重合して得られたテレフタル酸
【0065】
<ジオール成分(Y)>
Y1:素原料から合成して得られたエチレングリコール
Y2:ポリエステル樹脂を解重合して得られたエチレングリコール
【0066】
<重合触媒(Z)>
Z1:酸化チタン
Z2:三酸化アンチモン
【0067】
[実施例1]
(液状着色組成物(T1)の製造)
ジオール成分(A)100質量部、界面活性剤(B1)15質量部、染料(C1)120質量部をビーズミルにて混合・分散し液状着色組成物(T1)を得た。
【0068】
[実施例2~26、比較例1、2]
(液状着色組成物(T2~28)の製造)
表2~4に示す材料と配合量(質量部)にそれぞれ変更した以外は、液状着色組成物(T1)と同様の方法で液状着色組成物(T2~28)をそれぞれ製造した。
【0069】
[比較例3、4]
(液状着色組成物(T29、30)の製造)
表4に示す材料と配合量(質量部)にそれぞれ変更した以外は、液状着色組成物(T1)と同様の方法で液状着色組成物(T29、30)をそれぞれ製造したものの、液状着色組成物中での分散性と保存安定性が悪く、良好な液状着色組成物を得ることができなかった。
【0070】
《液状着色組成物の評価》
得られた液状着色組成物の分散性と保存安定性を下記の方法で評価した。結果を表2~4に示す。
【0071】
(分散性評価)
累積体積百分率が90%のときの粒径(D90)を、動的光散乱式粒径分布測定装置LB-550(堀場製作所社製)を用いて測定した。下記基準で評価を行った。
[評価基準]
◎:D90が10μm未満であり、非常に良好
〇:D90が10μm以上30μm未満であり、良好
△:D90が30μm以上50μm未満であり、実用可能
×:D90が50μm以上であり、実用不可
【0072】
(保存安定性評価)
得られた液状着色組成物を30日間静置し、液状着色組成物中での染料(C)の分離、沈降を目視で確認し、下記基準で評価を行った。
[評価基準]
◎:分離、沈降が無く、非常に良好
〇:分離、沈降が若干あるが撹拌すると均一になり、良好
△:分離、沈降があるが撹拌すると均一になり、実用可能
×:分離、沈降があり、撹拌しても均一にならず、実用不可
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
[実施例27]
(ポリエステル樹脂組成物の製造)
蒸留塔備え付けの反応容器に、ジカルボン酸成分(X1)(素原料から合成して得られたテレフタル酸)69質量部とジオール成分(Y1)(素原料から合成して得られたエチレングリコール)30.5質量部を投入し、その後、液状着色組成物(T1)をポリエステル樹脂組成物100質量部を基準として、染料(C)の含有率が1ppmとなるように、0.0002部投入し、更に重合触媒(Z1)を0.5質量部投入した。
次いで、反応容器中の攪拌翼の回転数を200rpmに保ち、昇温を開始し、反応系内の温度が265℃になるように加熱し、この温度を保持した。エステル化反応が終了し、反応系内からの水の留出がなくなった後、反応系内の温度を250℃にし、反応系内を約40分かけて減圧し、真空度を0.5kPaとし、反応系からジオール成分を留出させながら縮合反応を行った。反応とともに反応系の粘度が上昇し、攪拌翼のトルクが所定のトルクを示した時点で攪拌を停止し、反応系を常圧に戻し、ノズルからストランド状に押出し、水冷した後、切断して、ペレット状(直径約2.5mm、長さ約2.5mm)のポリエステル樹脂組成物を得た。
【0077】
[実施例28~55、比較例3~6]
表4に示す材料と配合量(質量部)にそれぞれ変更した以外は、実施例24のポリエステル樹脂組成物と同様の方法で、ポリエステル樹脂組成物をそれぞれ製造した。
【0078】
《ポリエステル樹脂組成物の評価》
得られたポリエステル樹脂組成物の重合時間、色相、色ムラ、色移行性を下記の方法で
評価した。結果を表5に示す。
【0079】
(重合時間評価)
本発明の液状着色樹脂組成物を添加せずに製造したポリエステル樹脂組成物が要した重合時間(イ)に対して、得られたポリエステル樹脂組成物が要した重合時間(ロ)の比を下記式にて算出し評価した。
重合時間比(%)=(ロ)/(イ)×100
[評価基準]
〇:重合時間比が120%未満であり、良好
△:重合時間比が120%以上150%未満であり、実用可能
×:重合時間比が150%以上であり、実用不可
【0080】
(色相評価)
得られたポリエステル樹脂組成物と、液状着色組成物を添加せずに得たポリエステル樹脂を、それぞれ射出成型機を用いて280℃で1mm厚のプレートに成形し、CIE1976L*a*b*表色系での色差Δb*を下記式より求め、評価した。

Δb*=(液状着色組成物を添加せずに得たポリエステル樹脂組成物の色度b*)
-(実施例または比較例で得られたポリエステル樹脂組成物の色度b*)
[評価基準]
〇: Δb*<0、ブルーイングされており良好
×: Δb*≧0、ブルーイングされておらず不良
【0081】
(色ムラ評価)
得られたポリエステル樹脂組成物を、射出成型機を用いて280℃で1mm厚のプレート10枚に成形し、それぞれの色相をCIE1976L*a*b*表色系で測色し、L*、a*、b*の標準偏差および目視から下記の通り評価した。
[評価基準]
〇:L*、a*、b*それぞれの標準偏差が0.5以下であり、
各プレート毎に色ムラが無く、良好
△:L*、a*、b*それぞれの標準偏差が0.5を超え、0.6以下であり、
各プレート毎に色ムラが無く、実用可能
×:L*、a*、b*それぞれの標準偏差が0.6を超え、0.7以下であり、
各プレート毎に色ムラがあり、実用不可
【0082】
(色移行性評価)
得られたポリエステル樹脂組成物を、射出成型機を用いて280℃で1mm厚のプレートに成形し、得られたプレートを50℃に加温して綿布でふき取り、綿布の着色を目視で確認した。
[評価基準]
〇:綿布の着色が無く、良好
×:綿布が着色し、実用不可
【0083】
【表5】
【0084】
表5に示す通り、本発明の液状着色組成物により、色材の分散性と保存安定性に優れており、さらに該液状着色組成物を用いることで、ポリエステル樹脂を製造する際の、ポリエステル樹脂原料の重合反応を阻害せず、色ムラなく均一にブルーイングすることができ、色材の色移行性が無いポリエステル樹脂成形体が得られることが確認できた。
重合触媒(Z)としては、チタン触媒を用いた場合であっても、色調が良好なポリエステル系樹脂成形体を形成できることが確認できた。
また、ジカルボン酸成分(X)と、ジオール成分(Y)の少なくともいずれかが、ポリエステル樹脂を解重合して得られた化合物であっても、重合時間評価、色相、色ムラ、および色移行性に優れており、ポリエステル樹脂の再利用の場合にも、有効に適用できることが確認できた。
【0085】
これに対して、可塑剤に染料(C)を分散して用いた比較例1の液状着色組成物は、分散性、保存安定性については実用可能なものではあるが、ポリエステル樹脂組成物の重合時間が長くなってしまい、実用できるものではない結果であった。
また、ポリエステル樹脂の原料に溶解する色材、すなわち親水性色材を用いた比較例2の液状着色組成物は、成形体からの染料の色移行がおこり、多様な用途、特に飲料容器としても用いられることのあるポリエステル樹脂組成物およびその成形体として実用することはできない結果であった。
【要約】
【課題】色材の分散性と保存安定性に優れる液状着色組成物であって、ポリエステル樹脂を製造する際の重合反応を阻害せず、色ムラなく均一にブルーイングができ、色材の色移行性が無いポリエステル樹脂組成物、およびポリエステル樹脂成形体を提供すること。
【解決手段】ポリエステル樹脂を重合する際に添加される液状着色組成物であって、
ジオール成分(A)、界面活性剤(B)、及び染料(C)を含み、
染料(C)は、25℃におけるエチレングリコール100mLに対する溶解度が0.5g以下であることを特徴とする、液状着色組成物により解決される。
【選択図】なし