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特許7320909キャリブレーションブロックおよびキャリブレーションブロックの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】キャリブレーションブロックおよびキャリブレーションブロックの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20230728BHJP
【FI】
G01B11/00 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020095003
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021189051
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】393002634
【氏名又は名称】キヤノン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(72)【発明者】
【氏名】大橋 浩典
(72)【発明者】
【氏名】栗原 信明
(72)【発明者】
【氏名】松田 隆幸
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-066110(JP,A)
【文献】特開平10-104033(JP,A)
【文献】特開2009-236533(JP,A)
【文献】特開2014-235074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置の位置補正の標的として用いるキャリブレーションブロックであって、
背景面を有するブロック部と、ターゲット面を有するターゲット部とを有し、
該背景面と、該ターゲット面とは同一平面にあり、
該ターゲット部の、該ターゲット面に隣接する側面は該ブロック部に覆われており、
該ブロック部は樹脂からなり、該ターゲット部は液状樹脂材料の硬化物からなり、
該背景面と、該ターゲット面との色差ΔEは80以上であり、
該背景面の表面粗さRzjisをRzbとし、該ターゲット面の表面粗さRzjisをRztとしたとき、該Rzbおよび該Rztは、それぞれ5μm以上、20μm以下であり、
該Rzbと該Rztとの差の絶対値ΔRzjisは2.0μm以下である、ことを特徴とするキャリブレーションブロック。
【請求項2】
前記ブロック部が、1×10-4/℃以下の線膨張係数を有する請求項1に記載のキャリブレーションブロック。
【請求項3】
前記ブロック部が、ポリカーボネート樹脂からなる請求項1または2に記載のキャリブレーションブロック。
【請求項4】
前記ポリカーボネート樹脂が、ガラス繊維を含む請求項3に記載のキャリブレーションブロック。
【請求項5】
前記ブロック部および前記ターゲット部のいずれか一方がカーボンブラックを含有し、もう一方が酸化チタンを含有する請求項1~4のいずれか1項に記載のキャリブレーションブロック。
【請求項6】
装置の位置補正の標的として用いるキャリブレーションブロックの製造方法であって、
被加工面と、該被加工面に開口を有する空間部とを有するブロック部前駆体を用意する工程(A)と、
該空間部に、該開口から液状樹脂材料を満たす工程(B)と、
該液状樹脂材料を硬化させる工程(C)と、
該被加工面と、該液状樹脂材料の硬化物の表面と、を同時にボールエンドミルにより切削することで、背景面を有するブロック部と、ターゲット面を有するターゲット部を形成する工程(D)と、を有し、
該ブロック部前駆体は樹脂からなり、
該背景面と、該ターゲット面とは同一平面にあり、
該背景面と、該ターゲット面との色差ΔEは80以上である、ことを特徴とするキャリブレーションブロックの製造方法。
【請求項7】
前記背景面の表面粗さRzjisをRzbとし、前記ターゲット面の表面粗さRzjisをRztとしたとき、該Rzbおよび該Rztは、それぞれ5μm以上20μm以下であり、
該Rzbと該Rztとの差の絶対値ΔRzjisは2.0μm以下である請求項6に記載のキャリブレーションブロックの製造方法。
【請求項8】
前記液状樹脂材料が、3,000mPa・s以下の粘度を有する請求項6または7に記載のキャリブレーションブロックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置の位置補正の標的として用いるキャリブレーションブロックおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットをはじめとする可動装置の位置決めのキャリブレーション作業や画像処理における歪み補正、光源の位置補正に際し、従来、撮像装置を用いて特定の標的を認識し、これを基準として位置補正することが行われている。
位置補正に用いられる標的としては、印刷されたパターンや、ブロック等の構造物に、ブロック本体と明暗差のある材料を埋め込んで作製されたキャリブレーションブロックがある。
【0003】
印刷されたパターンは、一つのパターン内にある2つの標識間の距離が正確であり、カメラの倍率やフォーカスのキャリブレーションや、測長装置のキャリブレーションに用いられることが多い。しかし、印刷されたパターンは、産業用ロボット等が可動する過酷な環境下や可動装置等との接触によって、パターンに変化を生じることがあり、耐久性が不十分であるという課題を有する。一方で、構造物からなるキャリブレーションブロックは耐久性に優れ、また、ブロック本体と、埋め込まれた材料との境界線が明瞭であることから、位置補正の精度を高くすることが可能である。
【0004】
特許文献1には、ブロック本体の表面に、所定の標的模様に対応する凹部を形成し、該凹部にブロック本体とは明暗差の有る材料を埋め込んだ光学式測定装置用のキャリブレーションブロックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平5-23012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
可動領域の大きい産業用ロボット等で使用する場合には、位置補正のための標的に対して多様な方向から標的を認識することが必要となる場合がある。特許文献1に記載のキャリブレーションブロックでは、キャリブレーションブロックを認識する撮像装置が位置する方向によっては、光の反射等により、キャリブレーションブロックの認識が難しく、正確に位置補正できない場合があった。
【0007】
そこで、本発明においては、多様な方向から認識して正確に位置補正することが可能なキャリブレーションブロックおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るキャリブレーションブロックは、装置の位置補正の標的として用いるキャリブレーションブロックであって、背景面を有するブロック部と、ターゲット面を有するターゲット部とを有し、該背景面と、該ターゲット面とは同一平面にあり、該ターゲット部の、該ターゲット面に隣接する側面は該ブロック部に覆われており、該ブロック部は樹脂からなり、該ターゲット部は液状樹脂材料の硬化物からなり、該背景面と、該ターゲット面との色差ΔEは80以上であり、該背景面の粗さRzjisをRzbとし、該ターゲット面の表面粗さRzjisをRztとしたとき、該Rzbおよび該Rztは、それぞれ5μm以上20μm以下であり、該Rzbと該Rztとの差の絶対値ΔRzjisは2.0μm以下である、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の別の態様に係るキャリブレーションブロックの製造方法は、装置の位置補正の標的として用いるキャリブレーションブロックの製造方法であって、被加工面と、該被加工面に開口を有する空間部とを有するブロック部前駆体を用意する工程(A)と、該空間部に、該開口から液状樹脂材料を満たす工程(B)と、該液状樹脂材料を硬化させる工程(C)と、該被加工面と、該液状樹脂材料の硬化物の表面と、を同時にボールエンドミルにより切削することで、背景面を有するブロック部と、ターゲット面を有するターゲット部を形成する工程(D)と、を有し、該ブロック部前駆体は樹脂からなり、該背景面と、該ターゲット面とは同一平面にあり、該背景面と、該ターゲット面との色差ΔEが80以上である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、多様な方向から認識して正確に位置補正することが可能なキャリブレーションブロックおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るキャリブレーションブロックを用いた装置の位置補正を説明するための模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係るキャリブレーションブロックを示す上面斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係るキャリブレーションブロックを示す下面斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係るキャリブレーションブロックの、図2中のA-A線における断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るキャリブレーションブロックの、図3中のB-B線における断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るキャリブレーションブロックの製造方法に用いる材料を示す上面斜視図である。
図7】本発明の一実施形態に係るキャリブレーションブロックの製造方法に用いる材料を示す下面斜視図である。
図8】本発明の一実施形態に係るキャリブレーションブロックの製造方法に用いる材料の、図6中のC-C線に沿った断面図である。
図9】実施例における位置補正を説明するための模式図である。
図10】実施例における位置補正を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
まず、本発明の一実施形態に係るキャリブレーションブロックについて、図1~5を用いて説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るキャリブレーションブロックを用いた装置の位置補正を説明するための模式図である。図2は、本発明の一実施形態に係るキャリブレーションブロックを示す上面斜視図である。図3は、本発明の一実施形態に係るキャリブレーションブロックを示す下面斜視図である。図4は、本発明の一実施形態に係るキャリブレーションブロックの、図2中のA-A線における断面図である。図5は、本発明の一実施形態に係るキャリブレーションブロックの、図3中のB-B線における断面図である。
【0014】
キャリブレーションブロック1は、図1に示すように、装置10の位置補正の標的として用いる。図2および図4に示すように、キャリブレーションブロック1は、背景面2aを有するブロック部2と、ターゲット面3aを有するターゲット部3とを有する。ターゲット面3aは、装置が位置補正に際して認識するターゲット部3の表面であり、背景面2aは、ブロック部2が有する面のうち、装置がターゲット面3aを認識する際に、ターゲット面3aの背景となる面である。
【0015】
背景面2aと、ターゲット面3aとは同一平面にある。すなわち、ターゲット面3aは、背景面2aの面内に標的模様を形成している。なお、ここで「同一平面にある」とは、実質的に同一平面であることを意味し、背景面2aとターゲット面3aとが、後述するそれぞれの面を形成するための表面加工において技術的に生じ得る段差を許容する。具体的には、背景面2aと、ターゲット面3aとの高低差が2μm以下である場合、背景面2aと、ターゲット面3aとは同一平面にあるとする。
【0016】
装置10の位置補正の際には、キャリブレーションブロック1を標的として捉える撮像装置等がこの標的模様を識別することで、装置10の位置補正がなされる。ここで、背景面2aは、撮像装置等がターゲット面3aを識別するのに十分な範囲を有すればよく、ブロック部2の、背景面2aを有する面全体であることに限定されない。例えば、ブロック部2の、背景面2aを有する面は、撮像装置等がターゲット面3aを識別するのを妨げない範囲で、さらに凹凸形状等を有していてもよい。
【0017】
ターゲット部3は、ブロック部2を形成するための材料が有する空間に満たされた液状樹脂材料の硬化物からなる。そのため、ターゲット部3の、ターゲット面3aに隣接する側面はブロック部2に覆われている。
【0018】
背景面2aと、ターゲット面3aとは、互いに明確に異なる色を有し、具体的には背景面2aと、ターゲット面3aとの色差ΔEは80以上である。これにより、照明の輝度が低い環境下においても、撮像装置等は、背景面2aとターゲット面3aとを明確に区別することができ、ターゲット面3aにより形成される標的模様を正確に認識することができる。
【0019】
キャリブレーションブロック1において、ターゲット面3aにより形成された標的模様を有する面(以下、単に標的模様形成面ともいう)は、特定の範囲内の表面粗さを有する。具体的には、背景面2aの表面粗さRzjisをRzbとし、ターゲット面3aの表面粗さRzjisをRztとしたとき、RzbおよびRztは、それぞれ5μm以上20μm以下である。これにより、キャリブレーションブロック1の標的模様形成面に対して多様な方向から撮像装置等によって標的模様を認識することが可能となる。なお、ここで表面粗さRzjisは、10点平均粗さを示す。
【0020】
さらに、背景面2aと、ターゲット面3aとは、ほぼ同様の表面粗さを有しており、RzbとRztとの差の絶対値ΔRzjisは2.0μm以下である。これにより、多様な方向に位置する撮像装置等によるターゲット面3aの認識において、背景面2aとターゲット面3aとにおける光の反射率の差を低減することが可能になり、背景面2aとターゲット面3aとの色差を明瞭に認識することができる。
【0021】
ブロック部2は樹脂からなる。ブロック部2として用いられる樹脂は特に限定されず、公知のものを使用することができる。具体的には、ブロック部2として用いられる樹脂としては例えば、アクリル系樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂等が使用できる。これらの樹脂は単独または2種類以上を混合して用いることもできる。
【0022】
また、ブロック部2は、1×10-4/℃以下の線膨張係数を有することが好ましい。これにより、キャリブレーションブロックが使用される環境の温度が変化しても、膨張、収縮等による形状変化が少なく、精度よく位置補正を行うことができる。
【0023】
以上の線膨張係数の観点、および硬度が高く耐久性に優れる観点から、ブロック部2は、ポリカーボネート樹脂からなることが好ましい。また、ブロック部2として用いられるポリカーボネート樹脂は、ガラス繊維を含むことがより好ましい。
【0024】
本実施形態において、ブロック部2は直方体であり、ターゲット部3により満たされた凹部4を、1つの面内に2つ有する。ブロック部2の形状に特に制限はないが、製造および設置の容易さの観点から、本実施形態に示すような直方体であることが好ましい。
【0025】
また、ブロック部2は、2つ以上の面内に凹部4を有していてもよく、また、1つの面内に有する凹部4の数も1つ、あるいは3つ以上であってもよい。ブロック部2が有する凹部4は、装置10の位置補正において撮像装置等によって認識されるターゲット部3を設けるための部分である。そのため、ブロック部2において凹部4が設けられる面の数、ブロック部2の1つの面内に設けられる凹部4の数、およびブロック部2の面内における凹部4の位置は、使用条件に応じて適宜定めることができる。
【0026】
本実施形態において、ブロック部2は、ターゲット部3を収容するために円柱状の凹部4を有するが、ターゲット部3を収容するための形状はこれに限らない。ブロック部2におけるターゲット部3を収容するための形状の開口面は、ターゲット面3aに対応し、その形状および大きさは使用条件に応じて適宜定めることができる。ターゲット部3を収容するための形状の深さについても特に限定はなく、ブロック部2の背景面2aを有する面と対向する、反対側の面まで貫通していてもよい。ターゲット部3を収容するための形状が凹部4である場合は、ターゲット面3aから、凹部4の底にあるブロック部2の一部分が透けて見えない程度の深さを有することが好ましい。これにより、ブロック部2の表面とターゲット部3の表面との色差が小さくなることを抑制できる。
【0027】
ターゲット部3は、液状樹脂材料の硬化物からなる。液状樹脂材料は、硬化前に液状であり、紫外線等の高エネルギー線や熱、湿度、あるいは常温下において硬化させることができればよい。液状樹脂材料は、ブロック部2を形成するための材料が有する空間部に流し込んだ際、ブロック部2を形成するための材料と密着し、空間部の形状に合わせて、隙間なく空間部を満たすことができる。これにより、ブロック部2とターゲット部3との界面が隙間を有さず、背景面2aに対するターゲット面3aの範囲を明確にすることができる。また、ブロック部2が樹脂からなり、ターゲット部3が液状樹脂材料の硬化物からなることで、ブロック部2およびターゲット部3を形成するための切削加工において、背景面2aとターゲット面3aとを段差なく形成することができる。
【0028】
ターゲット部3として用いる液状樹脂材料の硬化物としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂およびエポキシ系樹脂等が挙げられる。中でも、ターゲット部3として用いる液状樹脂材料の硬化物としては、着色や取り扱いが容易であり、また、硬度が高く、切削加工性に優れたエポキシ系樹脂が好ましい。
【0029】
背景面2aと、ターゲット面3aとが、互いに明確に異なる色を有するようにするため、ブロック部2およびターゲット部3はそれぞれ着色剤を含有してもよい。それぞれに用いる着色剤としては、背景面2aとターゲット面3aとの色差ΔEが80以上となるような異なる色の着色剤の組み合わせである限り、特に限定されない。
【0030】
具体的には、着色剤としては例えば、無機顔料、有機顔料および有機染料等を使用することができる。無機顔料としては、カーボンブラック、シリカ、酸化チタン(TiO)、炭酸カルシウム、酸化鉄、酸化クロムおよびアルミ酸コバルト等が挙げられる。有機顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン、ペリレン、アントラキノン等が挙げられる。有機染料としては、ニグロシン染料、インジゴ染料、アリザリン染料等が挙げられる。
【0031】
中でも、ブロック部2およびターゲット部3のいずれか一方がカーボンブラックを含有し、もう一方が酸化チタンを含有することが好ましい。これにより、一方を黒色とし、もう一方を白色としてコントラストを大きくすることができる。
【0032】
ブロック部2はさらに、図3および図5に示すように、固定孔5を有する。固定孔5は、キャリブレーションブロック1をベースプレート等に固定するためのネジ用貫通孔や、キャリブレーションブロック1の位置決めに使用するための位置決め孔とすることができる。すなわち、ブロック部2が固定孔5を有することで、装置10の位置補正の際にキャリブレーションブロック1を正確な位置に取り付けることが可能である。
【0033】
本実施形態においては、ブロック部2が固定孔5を有する構成を示したが、ブロック部2は固定孔5を有しなくてもよい。また、本実施形態において固定孔5は円柱状であるが、固定孔の形状はこれに限らない。固定孔5の形状および大きさは使用条件に応じて適宜定めることができる。
【0034】
また、本実施形態では、ブロック部2は、背景面2aと対向する面に4つの固定孔5を有するがこれに限られない。ブロック部2において固定孔5が設けられる面の数、ブロック部2の1つの面内に設けられる固定孔5の数およびブロック部2の面内における固定孔5の位置は、使用条件に応じて適宜定めることができる。
【0035】
本発明において、ブロック部2が有する面は、撮像装置等がターゲット面3aを識別するのを妨げない範囲で、本実施形態では示していない窪み、C面および凹凸形状等をさらに有していても良い。
【0036】
続いて、本発明に係るキャリブレーションブロックの製造方法の一実施形態について、図6~8を用いて説明する。
【0037】
図6は、本発明の一実施形態に係るキャリブレーションブロックの製造方法に用いる材料を示す上面斜視図である。図7は、本発明の一実施形態に係るキャリブレーションブロックの製造方法に用いる材料を示す下面斜視図である。図8は、本発明の一実施形態に係るキャリブレーションブロックの製造方法に用いる材料の、図6中のC-C線に沿った断面図である。
【0038】
本実施形態に係るキャリブレーションブロックの製造方法は、以下の工程(A)、工程(B)、工程(C)および工程(D)を有する。工程(A)は、被加工面6aと、被加工面6aに開口を有する空間部7とを有するブロック部前駆体6を用意する工程である。工程(B)は、空間部7に、開口から液状樹脂材料を満たす工程である。工程(C)は、液状樹脂材料を硬化させる工程である。工程(D)は、被加工面と、液状樹脂材料の硬化物の表面と、を同時にボールエンドミルにより切削することで、背景面2aを有するブロック部2と、ターゲット面3aを有するターゲット部3とを形成する工程である。
【0039】
空間部7の形状は、製造されるキャリブレーションブロック1が有するターゲット部の形状に対応する。本実施形態においては、ブロック部前駆体6は、図6、7および8(a)に示すような、凹形状の空間部7を有するが、これに限らない。空間部7を有するブロック部前駆体6は、例えば、ブロック部2の材料を切削加工して空間部7を形成することで用意することができる。あるいは、例えば、ブロック部2の液状の材料を、金型に入れたのち硬化または固化させ、空間部7を有する形状として成型して用意することができる。中でも、精度およびコストの観点から、ブロック部2の材料を切削加工することで、空間部7を有するブロック部前駆体6を用意することが好ましい。切削加工により空間部7を形成する場合は、例えばマシニングセンタを用いることで、精度高く空間部7を形成することができる。
【0040】
工程(B)においては、空間部7を液状樹脂材料を注ぐことで満たす。これにより空間部7を液状樹脂材料により隙間なく満たすことができる。
【0041】
液状樹脂材料の硬化は、用いる材料種に応じて適宜行うことができる。例えば、予め重合開始剤の添加等により重合を開始した状態で空間部7に注ぎ、その後室温等の適当な温度条件下に静置することで硬化させてもよい。また、紫外線等の高エネルギー線の照射や加熱等により樹脂を硬化させてもよい。また、例えば、液状樹脂材料が、加熱により溶融された熱可塑性樹脂等である場合は、冷却することで硬化させることができる。
【0042】
液状樹脂材料を硬化させる際に液状樹脂材料に温度変化がある場合は、空間部7と、液状樹脂材料との間に隙間が生じる可能性がある。そのため、予め液状樹脂材料の重合を開始した状態で空間部7に注ぎ、その後適当な温度条件下に静置して硬化させる、または、高エネルギー線を照射することで硬化させることが好ましい。
【0043】
工程(B)においては、液状樹脂材料は、3,000mPa・s以下の粘度を有することが好ましい。これにより、ターゲット部3が気泡を含むことを抑制することができる。ターゲット部3に気泡が存在すると、表面粗さが大きくなる場合、ブロック部2とターゲット部3との境界部分に間隙を生じる場合、あるいは所望するターゲット部3の形状を得ることができない場合がある。これにより、装置がターゲット面3aを正確に識別することができなくなる場合がある。なお、液状樹脂材料は、空間部7に満たされる際に3,000mPa・s以下の粘度を有していれば十分好ましく、工程(B)の前に用意する液状樹脂材料の粘度に特に制限はない。すなわち、工程(B)の前に、液状樹脂材料の粘度を3,000mPa・sを超えないように適宜調整した後、工程(B)で液状樹脂材料を空間部7に注いで満たすことが好ましい。
【0044】
また、特に、液状樹脂材料がエポキシ樹脂からなり、ブロック部前駆体6がポリカーボネート樹脂からなるとき、エポキシ樹脂は、1,000mPa・s以上の粘度を有する必要がある。これにより、分子量が小さいエポキシ樹脂が、ブロック部前駆体6のポリカーボネート樹脂を侵すことを避けることができ、ブロック部2とターゲット部3との境界が不明瞭となることを抑制することができる。ブロック部2とターゲット部3との境界が不明瞭であると、所望のターゲット部3の形状を形成できず、ターゲット部を適切に認識できなくなることがある。なお、エポキシ樹脂は、空間部7に満たされる際に1,000mPa・s以上の粘度を有していればよく、工程(B)の前に用意するエポキシ樹脂の粘度に特に制限はない。すなわち、工程(B)の前に、エポキシ樹脂の粘度を1,000mPa・s以上となるように適宜調整した後、工程(B)でエポキシ樹脂を空間部7に注いで満たせばよい。エポキシ樹脂の粘度は、主剤の分子量や、主剤と硬化剤とを混合した後に静置する時間により調整することができる。
【0045】
工程(B)においては、空間部7を液状樹脂材料で十分に満たすために、図8(b)に示すように、被加工面6a内に、液状樹脂材料の一部が凸形状を形成するようにしてもよい。
【0046】
工程(C)において、液状樹脂材料の硬化は、用いる材料種に応じて適宜行うことができる。例えば、予め重合開始剤の添加等により重合を開始した状態で空間部7に注ぎ、その後室温等の適当な温度条件下に静置することで硬化させてもよい。また、紫外線等の高エネルギー線の照射や加熱等により硬化させてもよい。また、例えば、液状樹脂材料が、加熱により溶融された熱可塑性樹脂等である場合は、冷却することで硬化させることができる。
【0047】
工程(D)では、被加工面6aと、液状樹脂材料の硬化物の、ブロック部前駆体6と接していない表面とを、同時にボールエンドミルにより切削する。被加工面6aと、液状樹脂材料の硬化物の表面とを同時に切削することで、図8(c)に示すように、形成されるブロック部2が有する背景面2aと、ターゲット部3が有するターゲット面3aとを同一平面にすることができる。
【0048】
ボールエンドミルによる表面加工は、ボールエンドミルのサイズや、送りピッチを変更することにより、所望の粗さRzjisを、加工された面全体に均一に付与することが可能である。これにより、工程(D)で形成されたブロック部2およびターゲット部3において、RzbおよびRztを、それぞれ5μm以上20μm以下とし、RzbとRztとの差の絶対値ΔRzjisを2.0μm以下とすることができる。
【0049】
一般的な表面加工の方法としては、ボールエンドミル以外にも正面フライス盤や、サンドペーパーを用いた方法があるが、正面フライス盤による加工の場合は、均一な粗さを付与することが困難である。また、サンドペーパーによる表面加工では、所望の表面粗さを付与することはできるが、粗さにばらつきやが発生しすく、さらに切削紛が表面に残留して背景面2aとターゲット面3aとの色差に影響を及ぼすことがある。そのため、本発明に係るキャリブレーションブロックの製造方法においては、ボールエンドミルによる表面加工を用いる。
【0050】
ボールエンドミルによる切削の走査方向は、一方向のみでもよく、一度目の切削が終了した後にさらに走査方向を変えて複数回切削してもよい。
【0051】
また、ボールエンドミルによる表面加工では、流水により洗浄しながら切削するため、切削紛が表面に残留せず、背景面2aおよびターゲット面3aの色が不明瞭となることを抑制することができる。
【0052】
本発明に係るキャリブレーションブロックの製造方法は、さらに、ブロック部2に固定孔5を設ける工程を有してもよい。固定孔5を設ける工程は、工程(A)と同時であっても良いし、工程(A)と工程(B)の間、工程(C)と工程(D)の間、あるいは、工程(D)の後であってもよい。固定孔5を設ける方法に特に制限はないが、加工の容易さの観点から切削加工により設けることがこのましい。特に、マシニングセンタにより切削加工することで、マシニングセンタの切削精度に応じた高い精度で固定孔5を形成することができる。
【実施例
【0053】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることは無い。
【0054】
以下に、各実施例および比較例で用いた材料を示す。
・ABS樹脂(商品名:トヨラック600-309、東レ(株)社製)
・ポリカーボネート樹脂1(商品名:PC/GF20、クレハエクストロン(株)社製、ガラス繊維およびカーボンブラック含有)
・ポリカーボネート樹脂2(商品名:PC黒、クレハエクストロン(株)社製、カーボンブラック含有)
・ポリカーボネート樹脂3(商品名:パンライトL-1250Y、帝人(株)社製)
・ポリウレタン樹脂原料としてのポリカーボネートジオール(商品名:デュラノールT5650E、旭化成(株)社製)
・ポリウレタン樹脂原料としてのイソシアネート(商品名:デュラネート24A-100、旭化成(株)社製)
・エポキシ樹脂の主剤(商品名:jER825、三菱ケミカル(株)社製、粘度:4,000mPa・s(25℃))
・エポキシ樹脂の反応性希釈剤(商品名:YED216M、三菱ケミカル(株)社製、粘度:13mPa・s(25℃))
・エポキシ樹脂の硬化剤(アミン)(商品名:jERキュア3080、三菱ケミカル(株)社製、粘度:950mPa・s(25℃)社製)
・着色剤としてのシリカ(商品名:アエロジル200、日本アエロジル(株)社製)
・着色剤としての酸化チタン(商品名:TITANIX JR800、テイカ(株)社製)
・着色剤としてのニグロシン染料(商品名:NUBIAN BLACK PC-8550、オリヱント化学工業(株)社製)
・着色剤としてのカーボンブラック(商品名:COLOUR BLACK FW200、オリオンエンジニアドカーボンズ(株)社製)
【0055】
(実施例1)
ブロック部の材料として、板状のポリカーボネート樹脂1(厚さ10mm)を準備し、正面フライス盤にてポリカーボネート樹脂1の上面、下面をそれぞれ切削して厚さ5.0mmの板状部材に加工した。また、板状部材を30mm×30mmの大きさとなるようにさらに切削加工し、幅30mm、奥行30mm、高さ5.0mmの直方体を作製した。
【0056】
次に、直方体の上面をマシニングセンタを用いて切削加工することで直径10mm、深さ2.5mmの円柱状の空間部7を、円の中心点の間の距離が10mmとなるように2つ設けた。これにより図6、7および8(a)に示すようなブロック部前駆体6を用意した。
【0057】
続いて、エポキシ樹脂の主剤、エポキシ樹脂の硬化剤(アミン)および着色剤としての酸化チタンを60:40:60(主剤:硬化剤:酸化チタン)の質量比で混合した。得られた混合物を、撹拌機(商品名:練太郎、(株)シンキー社製)を用いて撹拌時間10分、脱泡時間5分の条件で撹拌した後、粘度が1,000mPa・sになるまで静置することで、液状樹脂材料を調製した。なお、粘度は、室温(25℃)下にてB型粘度計を用いて測定した。
【0058】
得られた液状樹脂材料を空間部7に注ぎ、図8(b)に示すように空間部7を液状樹脂材料で満たした。その後、80℃、2時間の条件で液状樹脂材料を硬化させた。
【0059】
次に、図8(b)に示すように、被加工面6aと、液状樹脂材料の表面とを、ボールエンドミルを用いて同時に切削し、厚さ4.5mmを有するキャリブレーションブロックを得た。ボールエンドミルによる切削の条件は、R寸法1.0、送りピッチ0.10mm、送り速度800mm/min、回転数4,000rpmとした。
【0060】
(実施例2)
実施例1において、被加工面6aおよび液状樹脂材料の表面をボールエンドミルにより切削する際の、ボールエンドミルの送りピッチを0.08mmに変更した。それ以外は、実施例1と同様にしてキャリブレーションブロックを得た。
【0061】
(実施例3)
実施例1において、被加工面6aおよび液状樹脂材料の表面をボールエンドミルにより切削する際の、ボールエンドミルの送りピッチを0.12mmに変更した。それ以外は、実施例1と同様にしてキャリブレーションブロックを得た。
【0062】
(実施例4)
実施例1において、被加工面6aおよび液状樹脂材料の表面をボールエンドミルにより切削する際の、ボールエンドミルの送りピッチを次のように変更した。すなわち、被加工面6aを切削する際は送りピッチを0.11mmとし、液状樹脂材料の表面を切削する際は送りピッチを0.10mmとした。それ以外は、実施例1と同様にしてキャリブレーションブロックを得た。
【0063】
(実施例5)
実施例1において、ブロック部の材料をポリカーボネート樹脂2に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャリブレーションブロックを得た。
【0064】
(実施例6)
ポリカーボネート樹脂3と、着色剤としての酸化チタンとを100:60(ポリカーボネート樹脂3:酸化チタン)の質量比で混合し、得られた混合物を二軸混練押出機を用いてペレットとした。さらに、得られたペレットを、シート押出機を用いて厚さ10mmの板状に加工し、酸化チタンを含有するポリカーボネート樹脂3の板を作製した。
【0065】
実施例1において、ブロック部の材料を上記の通り作製した酸化チタンを含有するポリカーボネート樹脂3に変更した。また、ターゲット部形成材料の調製に用いる原料およびその混合比を次のように変更した。すなわち、原料としてエポキシ樹脂の主剤、エポキシ樹脂の硬化剤(アミン)および着色剤としてのカーボンブラックを用い、60:40:40(主剤:硬化剤:カーボンブラック)の質量比で混合した。それ以外は、実施例1と同様にしてキャリブレーションブロックを得た。
【0066】
(実施例7)
ABS樹脂と、着色剤としてのカーボンブラックとを100:10(ABS樹脂:カーボンブラック)の質量比で混合し、得られた混合物を二軸混練押出機を用いてペレットとした。さらに、得られたペレットを、シート押出機を用いて厚さ10mmの板状に加工し、カーボンブラックを含有するABS樹脂の板を作製した。
実施例1において、ブロック部の材料を上記の通り作製したカーボンブラックを含有するABS樹脂に変更したそれ以外は、実施例1と同様にしてキャリブレーションブロックを得た。
【0067】
(実施例8)
ポリウレタン樹脂原料としてのポリカーボネートジオールと、ポリウレタン樹脂原料としてのイソシアネートと、着色剤としての酸化チタンとを70:30:60(ポリカーボネートジオール:イソシアネート:酸化チタン)の質量比で混合した。得られた混合物を、撹拌機(商品名:練太郎、(株)シンキー社製)を用いて撹拌時間10分、脱泡時間5分の条件で撹拌し、酸化チタンを含有するポリウレタン原料混合物を調製した。
実施例1において、液状樹脂材料を上記の通り調製した酸化チタンを含有するポリウレタン原料混合物に変更した。それ以外は、実施例1と同様にしてキャリブレーションブロックを得た。
【0068】
(実施例9)
実施例8において、ブロック部の材料を実施例7と同様にして作製したカーボンブラックを含有するABS樹脂に変更した。それ以外は、実施例8と同様にしてキャリブレーションブロックを得た。
【0069】
(実施例10)
実施例1において、液状樹脂材料の調製における原料の混合および攪拌後の静置の時間を、液状樹脂材料の粘度が2,000mPa・sとなるように変更した。それ以外は、実施例1と同様にしてキャリブレーションブロックを得た。
【0070】
(実施例11)
実施例1において、液状樹脂材料の調製における原料の混合および攪拌後の静置の時間を、液状樹脂材料の粘度が3,000mPa・sとなるように変更した。それ以外は、実施例1と同様にしてキャリブレーションブロックを得た。
【0071】
(実施例12)
ポリカーボネート樹脂3と、着色剤としてのニグロシン染料とを100:20(ポリカーボネート樹脂3:ニグロシン染料)の質量比で混合し、二軸混練押出機を用いてペレットとした。さらに、得られたペレットを、シート押出機を用いて厚さ10mmの板状に加工し、ニグロシン染料を含有するポリカーボネート樹脂3の板を作製した。
実施例1において、ブロック部の材料を上記の通り作製したニグロシン染料を含有するポリカーボネート樹脂3に変更した。また、液状樹脂材料の調製に用いる原料およびその混合比を次のように変更した。すなわち、原料としてエポキシ樹脂の主剤、エポキシ樹脂の硬化剤(アミン)および着色剤としてのシリカを用い、60:40:30(主剤:硬化剤:シリカ)の質量比で混合した。それ以外は、実施例1と同様にしてキャリブレーションブロックを得た。
【0072】
(実施例13)
ポリカーボネート樹脂3と、着色剤としての染料とを100:30(ポリカーボネート樹脂3:シリカ)の質量比で混合し、二軸混練押出機を用いてペレットとした。さらに、得られたペレットを、シート押出機を用いて厚さ10mmの板状に加工し、シリカを含有するポリカーボネート樹脂3の板を作製した。
実施例1において、ブロック部の材料を上記の通り作製したシリカを含有するポリカーボネート樹脂3に変更した。また、ターゲット部形成材料の調製に用いる原料およびその混合比を次のように変更した。すなわち、原料としてエポキシ樹脂の主剤、エポキシ樹脂の硬化剤(アミン)および着色剤としての酸化チタンを用い、60:40:20(主剤:硬化剤:酸化チタン)の質量比で混合した。それ以外は、実施例1と同様にしてキャリブレーションブロックを得た。
【0073】
(比較例1)
実施例1において、被加工面6aおよび液状樹脂材料の表面をボールエンドミルにより切削する際の、ボールエンドミルの送りピッチを0.03mmに変更した。それ以外は、実施例1と同様にしてキャリブレーションブロックを得た。
【0074】
(比較例2)
実施例1において、被加工面6aおよび液状樹脂材料の表面をボールエンドミルにより切削する際の、ボールエンドミルの送りピッチを0.20mmに変更した。それ以外は、実施例1と同様にしてキャリブレーションブロックを得た。
【0075】
(比較例3)
実施例1において、凹部4を形成する前に、ブロック部の材料として用意したポリカーボネート樹脂1の直方体の上面(空間部の開口が形成される面)を、ボールエンドミルを用いて送りピッチ0.10mmで切削した。
また、空間部7を液状樹脂材料で満たす際には、被加工面6aと、液状樹脂材料の表面とが同一平面となるようにした。
さらに、空間部7を液状樹脂材料で満たした後の、ボールエンドミルによる切削を行わなかった。
それ以外は、実施例1と同様にしてキャリブレーションブロックを得た。
【0076】
(比較例4)
実施例1において、被加工面6aおよび液状樹脂材料の表面加工を、ボールエンドミルに代えてサンドペーパーを用いて行った。サンドペーパーを用いた表面加工においては、最後に#200のサンドペーパーを用いて仕上げ加工した。それ以外は、実施例1と同様にしてキャリブレーションブロックを得た。
【0077】
(比較例5)
実施例1において、被加工面6aおよび液状樹脂材料の表面を、ボールエンドミルを用いて切削する代わりに、正面フライス盤を用いて加工することで厚さが4.5mmとなるようにした。正面フライス盤を用いた加工には、φ80、45°カッター、刃数4枚のフライスカッターを用い、加工条件は回転数1,000rpm、送り速度200mm/secとした。それ以外は、実施例1と同様にしてキャリブレーションブロックを得た。
【0078】
(比較例6)
実施例1において、液状樹脂材料の調製における原料の混合および攪拌後の静置の時間を、液状樹脂材料の粘度が5,000mPa・sとなるように変更した。それ以外は、実施例1と同様にしてキャリブレーションブロックを得た。
【0079】
実施例1~13および比較例1~6において、キャリブレーションブロックの製造に用いた各材料とそれらの混合比率をまとめて表1~3に示す。
【0080】
〔測定および評価〕
上記の各実施例および比較例で作成したキャリブレーションブロックについて、以下の測定および評価を行った。得られた結果をまとめて表1~3に示す。
【0081】
<表面粗さ>
表面粗さは、表面粗さ測定器(商品名:SE3500、(株)小坂研究所社製)を用い、10点平均粗さRzjisを測定することで評価した。背景面およびターゲット面それぞれについて、任意の3点について10点平均粗さRzjisの測定を行い、得られた3つの値の平均値を、それぞれRzbおよびRztとした。
【0082】
<色差ΔE>
色差ΔEの測定は、背景面およびターゲット面それぞれについて全反射率の測定を行い、得られた結果からL色空間表示し、下記式より色差ΔEを求めた。
ΔE=√{(L -L +(a -a +(b -b
:背景面の明度
:ターゲット面の明度
、b :背景面の色度
、b :ターゲット面の色度
全反射率は、分光光度計(商品名:V-670、日本分光(株)社製)に150mmφ積分球ユニットを取り付け、波長350nm~800nmの範囲を1nm刻みで測定した。
【0083】
<ブロック部の線膨張係数>
各実施例および比較例に係るキャリブレーションブロックの製造に用いたブロック部前駆体の線膨張係数を測定することで、ブロック部が有する線膨張係数を決定した。線膨張係数の測定は、日本産業規格(JIS)K7197に従って行った。
【0084】
<ターゲット部内の気泡の有無>
ターゲット部内の気泡の有無を目視により確認した。
【0085】
<環境温度の変化に伴う形状変化の評価>
使用環境の温度の変化に伴う、キャリブレーションブロックの形状変化を、各キャリブレーションブロックが有する2つのターゲット部の間の距離を測定することで評価した。
2つのターゲット部の間の距離は、それぞれのターゲット面を形成する円の中心点間の距離を、画像測定器(商品名:QV404-PRO、(株)ミツトヨ社製)を用いて測定することで決定した。2つのターゲット部の間の距離を測定は、キャリブレーションブロックを20℃の環境に24時間静置した後と、その後さらに50℃に設定した恒温槽にて24時間静置した後との2回行った。
2回の測定で得られた値から、2つのターゲット部の間の距離の変化率を算出し、環境温度の変化に伴うキャリブレーションブロックの形状変化を評価した。
【0086】
<多様な方向からの位置補正の正確性評価>
キャリブレーションブロックの、ターゲット面を有する面に対して、複数の異なる方向に画像測定器(商品名:QV404-PRO、(株)ミツトヨ社製)を設置し、ターゲット面の形状測定を行った。係る形状測定の正確性を評価することで、キャリブレーションブロックを、多様な方向からの装置の位置補正に供したときの、該位置補正の正確性を評価した。形状測定の正確性評価においては、実測された値と、画像測定器が設置された位置から観測されるターゲット面の形状の理論値との差を算出し、理論値と実測値の差が50μm以下であった場合に、形状測定を正確に行うことができたと判断した。
形状測定は、具体的には以下の通りにして行った。
【0087】
図9に示すように、2つのターゲット面を形成する円の中心を結ぶ線分の中点の直上から光源9を用いてキャリブレーションブロックに光を照射した。また、2つのターゲット面を形成する円の中心を結ぶ線分の中点を通り、キャリブレーションブロックの、ターゲット面を有する面から垂直な方向に延びる直線に対して、画像測定器8が位置する方向の角度をθとする。この角度θを、20°、45°、60°および75°の4通りに変えて画像測定器8を設置し、形状測定を行った。また、各角度θでの形状測定は、キャリブレーションブロックの、ターゲット面を有する面に平行な方向について、それぞれ図10に示すようなa~hの8通りの方向に画像測定器8を設置して行った。すなわち、2つのターゲット面を形成する円の中心を結ぶ線分の中点を中心として45°刻みでa~hの8通りに画像測定器8を設置する方向を変え、計8方向の位置から形状測定を行った。なお、2つのターゲット面を形成する円の中心を結ぶ線分の中点から、カメラのレンズまでの距離は20cmとした。
各角度θにおける8方向からの形状測定の結果について、正確に形状測定ができた方向の数に基づいて以下の通りに予備評価を行った。
A:8方向において正確に形状測定ができた。
B:7以下の方向において正確に形状測定ができた。
また、各角度θにおける上記の予備評価の結果から、総合評価を以下の通りに行った。
上記、ターゲット部の測定結果より、下記のとおり評価した。
A:θが75°以下のとき予備評価が全てAであった。
B:θが60°以下のとき予備評価が全てAであり、θが75°のとき予備評価がBであった。
C:θが45°以下のとき予備評価が全てAであり、θが60°以上のとき予備評価が全てBであった。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【符号の説明】
【0091】
1:キャリブレーションブロック
2:ブロック部
2a:背景面
3:ターゲット部
3a:ターゲット面
4:凹部
5:固定孔
6:ブロック部前駆体
6a:被加工面
7:空間部
8:画像測定器
9:光源
10:装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10