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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】ゴム補強用繊維コード
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/41 20060101AFI20230728BHJP
   D06M 13/395 20060101ALI20230728BHJP
   D06M 13/477 20060101ALI20230728BHJP
   D06M 15/55 20060101ALI20230728BHJP
   D06M 15/693 20060101ALI20230728BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20230728BHJP
   D07B 1/16 20060101ALI20230728BHJP
   F16G 1/08 20060101ALI20230728BHJP
   F16L 11/08 20060101ALI20230728BHJP
   F16L 11/10 20060101ALI20230728BHJP
   D06M 101/36 20060101ALN20230728BHJP
【FI】
D06M15/41
D06M13/395
D06M13/477
D06M15/55
D06M15/693
B60C9/00 D
D07B1/16
F16G1/08 A
F16L11/08 A
F16L11/10 A
D06M101:36
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020535490
(86)(22)【出願日】2019-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2019008768
(87)【国際公開番号】W WO2020031408
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2018148087
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219266
【氏名又は名称】東レ・デュポン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115440
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 光子
(72)【発明者】
【氏名】安藤 圭一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 正道
(72)【発明者】
【氏名】草西 義洋
(72)【発明者】
【氏名】太田 直樹
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-195777(JP,A)
【文献】特開平03-097965(JP,A)
【文献】特開2010-095814(JP,A)
【文献】特開平05-148770(JP,A)
【文献】特開平10-025667(JP,A)
【文献】特開2001-146686(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003572(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00
B60C 9/00
C08J 5/00 - 5/02
C08J 5/12 - 5/22
C09J 1/00 - 5/10
C09J 9/00 -201/10
D02G 1/00 - 3/48
D02J 1/00 - 12/00
D06M 13/00 - 15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成が異なる第1の処理液と第2の処理液に順にディップ処理され、2層の接着剤層が形成されてなるゴム補強用繊維コードであって、
前記第1の処理液が、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)とブロックドイソシアネート化合物を含む処理液であり(ただし、クロロフェノール化合物を含まない)、
前記第2の処理液が、クロロフェノール化合物ブロックドイソシアネート化合物、及びレゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)を含む処理液であることを特徴とするゴム補強用繊維コード。
【請求項2】
前記第1の処理液が、さらに硬化性エポキシ化合物を含む処理液である、請求項に記載のゴム補強用繊維コード。
【請求項3】
前記第2の処理液が、さらにトリアジン化合物を含む処理液である、請求項1または2に記載のゴム補強用繊維コード。
【請求項4】
前記第1の処理液及び前記第2の処理液で用いるブロックドイソシアネート化合物が、同一化合物である、請求項1~のいずれかに記載のゴム補強用繊維コード。
【請求項5】
前記第1の処理液において、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)が固形分で50~80質量%、ブロックドイソシアネート化合物が5~40質量%であり、該ブロックドイソシアネート化合物100質量部に対する硬化性エポキシ化合物の比率が1~50質量部である、請求項に記載のゴム補強用繊維コード。
【請求項6】
前記第2の処理液において、ブロックドイソシアネート化合物が5~40質量%、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)が固形分で35~70質量%、トリアジン化合物が5~30質量%であり、該レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)100質量部に対するクロロフェノール化合物の比率が5~50質量部である、請求項に記載のゴム補強用繊維コード。
【請求項7】
前記ゴム補強用繊維コードが、少なくともアラミド繊維を含むゴム補強用繊維によって構成される、請求項1~のいずれかに記載のゴム補強用繊維コード。
【請求項8】
前記アラミド繊維が、硬化性エポキシ化合物を繊維骨格内に浸透させたアラミド繊維複合体である、請求項に記載のゴム補強用繊維コード。
【請求項9】
前記硬化性エポキシ化合物の浸透量が、アラミド繊維の水分率を0%に換算したときの繊維質量に対して、0.1~2.0質量%である、請求項に記載のゴム補強用繊維コード。
【請求項10】
請求項1~のいずれかに記載のゴム補強用繊維コードを用いてなるタイヤ、ベルト、またはホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ、ベルト、ホース等のゴム製品、特に汎用ゴムの補強用コードとして好適に使用することのできるゴム補強用繊維コードに関する。
【背景技術】
【0002】
伝動ベルト、搬送ベルト、タイヤ、ホース等のゴム製品には、補強用繊維コードが埋設されている。補強用繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維等が知られている。
【0003】
しかし、補強用繊維は、表面が比較的不活性であるためゴムとの接着性に乏しい。繊維とゴムとの接着性を改良するために、繊維表面を活性化処理した後、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(以下、「RFL」という。)で処理する、2浴処理が一般的である。例えば、ゴム補強用繊維の原糸を複数本引き揃えて撚糸したものに、エポキシ化合物やポリイソシアネート化合物によるディップ処理を施して繊維表面を活性化処理した後、RFL処理液で処理する方法等が知られている。
【0004】
2浴処理により繊維とゴムの接着性を向上させる方法として、例えば、特許文献1は、アラミド撚糸コードを、エチレンイミン化合物、ポリエポキシド化合物を含むRFL処理液(第1の処理液)に浸漬し、熱処理した後、クロロフェノール化合物を含むRFL処理液(第2の処理液)に浸漬し、熱処理している。特許文献2は、アラミド撚糸コードを、第1処理剤としてポリエポキシド化合物とブロックドポリイソシアネート化合物の水分散液を使用して繊維表面を活性化し、熱処理した後、第2処理剤及び第3処理剤として、クロロフェノール化合物を含むRFL処理液で連続処理している。
【0005】
処理剤に添加剤を配合してゴムとの接着性を改良する方法も知られており、特許文献3は、アラミド撚糸コードを、ポリエポキシド化合物、ブロックドポリイソシアネート化合物及びゴムラテックスに無水珪酸を配合した第1処理液を付与し、熱処理した後、ブロックドポリイソシアネートまたはクロロフェノール化合物・レゾルシン・ホルムアルデヒドの共縮合物を含むRFL処理液を付与し、熱処理する方法を開示している。無水珪酸コロイドを配合し、第1処理液成分が繊維表面へ均一付着するようにすることで、ゴムとの接着性を向上させ、耐疲労性が優れたゴム補強用繊維コードを得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-148760号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【文献】特開2005-171431号公報(特許請求の範囲、実施例1等)
【文献】特開2001-064620号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの処理コードでは、撚糸コードに対する処理剤の接着性という点で未だ不十分であり、ゴムトッピング工程で処理剤がコードから剥落し、RFLカスが発生する問題点がある。また、タイヤ用途等では、高負荷かつ高温の環境下で、繊維コードがゴムから剥離しないこと(即ち、耐熱接着性)や、圧縮や伸張等の繰り返し疲労負荷を受けても繊維コードの破断強力が高く保持されること(即ち、耐疲労性)が求められているが、未だ満足するものが得られていないのが現状である。
【0008】
本発明は、繊維コードからの処理剤の剥落によるカスの発生を低減することが可能で、繊維コードとゴムとの耐熱接着性及び耐疲労性に優れる、ゴム補強用繊維コードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成するため本発明者等は鋭意検討を行った結果、繊維コードを組成が異なる第1の処理液と第2の処理液に順にディップ処理することにより、繊維コードに、性質が異なる2つの層(内層と外層)からなる接着剤層を形成できることに着目し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0011】
(1)組成が異なる第1の処理液と第2の処理液に順にディップ処理され、2層の接着剤層が形成されてなるゴム補強用繊維コードであって、
前記第1の処理液が、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)とブロックドイソシアネート化合物を含む処理液であり(ただし、クロロフェノール化合物を含まない)、
前記第2の処理液が、クロロフェノール化合物ブロックドイソシアネート化合物、及びレゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)を含む処理液であることを特徴とするゴム補強用繊維コード。
)前記第1の処理液が、さらに硬化性エポキシ化合物を含む処理液である、前記()に記載のゴム補強用繊維コード。
)前記第2の処理液が、さらにトリアジン化合物を含む処理液である、前記(1)または(2)に記載のゴム補強用繊維コード。
)前記第1の処理液及び前記第2の処理液で用いるブロックドイソシアネート化合物が、同一化合物である、前記(1)~()のいずれかに記載のゴム補強用繊維コード。
)前記第1の処理液において、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)が固形分で50~80質量%、ブロックドイソシアネート化合物が5~40質量%であり、該ブロックドイソシアネート化合物100質量部に対する硬化性エポキシ化合物の比率が1~50質量部である、前記()に記載のゴム補強用繊維コード。
)前記第2の処理液において、ブロックドイソシアネート化合物が5~40質量%、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)が固形分で35~70質量%、トリアジン化合物が5~30質量%であり、該レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)100質量部に対するクロロフェノール化合物の比率が5~50質量部である、前記()に記載のゴム補強用繊維コード。
)前記ゴム補強用繊維コードが、少なくともアラミド繊維を含むゴム補強用繊維によって構成される、前記(1)~()のいずれかに記載のゴム補強用繊維コード。
)前記アラミド繊維が、硬化性エポキシ化合物を繊維骨格内に浸透させたアラミド繊維複合体である、前記()に記載のゴム補強用繊維コード。
)前記硬化性エポキシ化合物の浸透量が、アラミド繊維の水分率を0%に換算したときの繊維質量に対して、0.1~2.0質量%である、前記()に記載のゴム補強用繊維コード。
10)前記(1)~()のいずれかに記載のゴム補強用繊維コードを用いてなるタイヤ、ベルト、またはホース。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外層を形成するRFLを硬化させて耐熱接着力を向上させると共に、内層を形成するRFLを柔軟にすることで耐疲労性を付与し、また、ゴムトッピング工程で繊維コードが擦られても、外層を形成するRFLが内層の接着剤層を介して繊維コードに強固に固定されているため、カスが剥落する現象(カスの発生)を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のゴム補強用繊維コードは、常法により加撚工程にてコード化された有機繊維コードが、組成が異なる第1の処理液と第2の処理液に、順にディップ処理されることで、2層の接着剤層(内層と外層)が形成されるように構成したものである。繊維コードの内層部分は第1の処理液で形成され、繊維コードの外層部分は第2の処理液で形成される。
【0014】
また、本発明において、接着剤層の形成方法としては、例えば、浸漬、刷毛塗り、流延、噴霧、ロール塗布、ナイフ塗布等を挙げることができるが、繊維コードを処理液(コード用の接着剤組成物)に含浸して接着剤層を形成する方法が好ましい。
接着剤層の厚さは、内層・外層ともに、0.5~50μmとすることが好ましく、1~30μmとすることがさらに好ましい。耐熱接着性を向上させ、かつ耐疲労性を向上させるには、外層よりも内層を厚くすることが好ましい。
【0015】
[第1の処理液]
第1の処理液は、クロロフェノール化合物を含まない処理液である。クロロフェノール化合物を含む場合、第1の処理液で形成される接着剤層が硬くなり、繊維コードの耐疲労性が低下する傾向が見られるため、好ましくない。
【0016】
第1の処理液は、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)と、ブロックドイソシアネート化合物を含む処理液である。RFLにはラテックスが含まれているので繊維コード表面に形成される内層は柔軟な層となる。そしてブロックドイソシアネートは繊維表面を活性化するとともに、RFL中のレゾルシンとウレタン結合を形成するので、繊維とRFL間の接着性が良好になる。
【0017】
RFLは、レゾルシンとホルムアルデヒドの初期縮合物と、ゴムラテックスとを混合熟成したものである。レゾルシン-ホルムアルデヒド初期縮合物とは、アルカリ触媒または酸触媒の存在下で、レゾルシンとホルムアルデヒドを縮合させたものである。レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比は、1/0.5~1/3の範囲が好ましく、1/0.75~1/2の範囲がより好ましい。前記比率が1/0.5~1/3の範囲を外れると、接着性が低下したり、カスが発生して工程通過性が悪化することがある。
また、レゾルシン-ホルムアルデヒド初期縮合物として、あらかじめジヒドロキシベンゼンとホルムアルデヒドを酸性触媒の下で反応させて得られる、ノボラック型の樹脂を用いることもできる。具体的には、例えば、レゾルシン1モルに対してホルムアルデヒドを0.7モル以下の比率で縮合させた化合物(例えば、商品名“スミカノール700S”登録商標、住友化学株式会社製)が挙げられる。当該レゾルシンとホルムアルデヒドのノボラック型縮合物を使用するに際しては、レゾルシンをアルカリ触媒水分散液に溶解した後、ホルムアルデヒドを添加し、レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比を1/0.5~1/3に調整することが好ましい。
【0018】
ラテックスとしては、例えば、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン-ブタジエン系ラテックス、アクリロニトリル-ブタジエン系ラテックス、クロロプレン系ラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンラテックス、アクリレート系ラテックス、及び天然ゴムラテックス等が挙げられ、これらを単独または混合して使用することができる。なかでも、耐熱性及び接着性の点から、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ラテックスが50質量%以上を占めるラテックスが好ましい。
【0019】
また、レゾルシン-ホルムアルデヒド初期縮合物とラテックスの配合比は、内層のRFLを柔らかく形成して耐疲労性を向上させる観点より、固形分質量比で1/5~1/40にすることが好ましく、1/10~1/30の範囲にすることがさらに好ましい。かかる範囲とすることにより、内層の柔軟性が得られることで耐疲労性が向上する。レゾルシン-ホルムアルデヒド初期縮合物及びラテックスの配合量は、合計で、第1の処理液の全固形分中での比率を50~80質量%にすることが好ましく、55~80質量%にすることがさらに好ましい。
【0020】
ブロックドイソシアネートは、ポリイソシアネート化合物とブロック化剤との付加物であり、加熱によりブロック化剤成分が遊離して活性なポリイソシアネート化合物を生じる化合物である。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のポリイソシアネート、あるいは、これらのポリイソシアネートと活性水素原子を2個以上有する化合物、例えば、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等とをイソシアネート基(-NCO)とヒドロキシル基(-OH)の比が1を超えるモル比で反応させて得られる末端イソシアネート基含有のポリオールアダクトポリイソシアネート等が挙げられる。なかでも、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートが良好な結果を与える。
ブロック化剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、レゾルシン等のフェノール類、ε-カプロラクタム、バレロラクタム等のラクタム類、アセトオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類、エチレンイミン等が挙げられる。その他、2,4-トルエンジイソシアネート2量体のように、ポリイソシアネート化合物自体がブロック化剤を兼ねている化合物等が挙げられる。
【0021】
ブロックドイソシアネート化合物としては、水系または溶剤系の溶液、分散液を用いることができるが、水溶液または水分散液が好ましい。ブロックドイソシアネート化合物の配合量は、前記のRFL及び後記の硬化性エポキシ化合物と併用する場合には、第1の処理液の全固形分中での比率を5~40質量%にすることが好ましく、10~30質量%にすることがさらに好ましい。
【0022】
また、第1の処理液は、硬化性エポキシ化合物を含む処理液であることが好ましい。硬化性エポキシ化合物は、ブロックドイソシアネート化合物との混合物として付与されることが、より好ましい。第1の処理液における配合比率は、ブロックドイソシアネート化合物100質量部に対して、硬化性エポキシ化合物1~50質量部を用いることが好ましく、5~50質量部を用いることがさらに好ましい。
【0023】
硬化性エポキシ化合物としては、例えば、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセロール等の多価アルコールのポリグリシジルエーテルから選ばれる1種または2種以上の混合物が挙げられる。なかでも、ソルビトールポリグリシジルエーテルが好ましい。
【0024】
第1の処理液は、硬化性エポキシ化合物の反応性をさらに高めることを目的として、アルカリ性の化合物、界面活性剤等を少量添加することもできる。アルカリ性の化合物としては炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア等が挙げられる。繊維の加水分解による強力低下を抑えながら硬化性エポキシ化合物に対する触媒効果を発揮させるためには、第1の処理液におけるアルカリ化合物の濃度を0.001~1質量%の範囲とすることが好ましい。
【0025】
第1の処理液を付与した繊維コードを、通常、好ましくは100~150℃で乾燥後、200~260℃で熱処理する。第1の処理液の付与量は、混合物として、乾燥質量比で繊維コードに対して2~20質量%が好ましく、3~15質量%がさらに好ましく、3~10質量%が特に好ましい。
【0026】
[第2の処理液]
第2の処理液は、クロロフェノール化合物を必須成分として含む。クロロフェノール化合物は、パラクロロフェノールとレゾルシンとホルムアルデヒドの共縮合物である。具体例としては、2,6-ビス(2´,4-ジヒドロキシ-フェニルメチル)4-クロロフェノール(トーマスワン社製「カサボンド」、ナガセ化成工業株式会社製「デナボンド」等)が挙げられる。なかでも、接着性の点から、ベンゼン核を3以上有するクロロフェノール化合物を主成分とするものが好ましく用いられる。
【0027】
第2の処理液は、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)と、ブロックドイソシアネート化合物を含む処理液であることが好ましい。RFLにより、同じくRFLを含有する内層との接着性が良好になる。そして、ブロックドイソシアネート化合物がクロロフェノール化合物及びRFLとウレタン結合することで架橋し、耐熱接着性に優れる層を形成することができる。
【0028】
クロロフェノール化合物の配合量は、固形分換算で、RFL100質量部に対して、5質量部以上、50質量部未満にすることが好ましく、10~45質量部にすることがさらに好ましく、20~45質量部にすることが特に好ましい。クロロフェノール化合物の配合量が50質量部以上になると、形成される外層が硬くなり過ぎることで、疲労性の悪化や、内層から剥離し易くなりカスの発生に繋がる恐れがある。
【0029】
ブロックドイソシアネート化合物としては、第1の処理液について記載した化合物を用いることができる。ブロックドイソシアネート化合物は、第1の処理液で用いる化合物と同一であっても、異なっていても良いが、第1の処理液との親和性を高め、より均一な第2の処理液の膜を形成できる点より、同一化合物を用いることが好ましい。ブロックドイソシアネート化合物の配合量は、第2の処理液の全固形分中での比率を5~40質量%にすることが好ましく、10~30質量%にすることがさらに好ましい。
【0030】
第2の処理液において、RFLは、第1の処理液と同様、ラテックスとレゾルシン-ホルムアルデヒド初期縮合物とを混合熟成したものが用いられる。レゾルシン-ホルムアルデヒド初期縮合物としては、例えば、レゾルシン-ホルムアルデヒドを酸触媒またはアルカリ触媒下で縮合させて得られたノボラック型縮合物等が挙げられる。ラテックスとしては、例えば、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン-ブタジエン系ラテックス、アクリロニトリル-ブタジエン系ラテックス、クロロプレン系ラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンラテックス、アクリレート系ラテックス、及び天然ゴムラテックス等が挙げられ、これらを単独または混合して使用することができる。なかでも、耐熱性及び接着性の点から、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ラテックスが50質量%以上を占めるラテックスが好ましい。
【0031】
また、レゾルシン-ホルムアルデヒド初期縮合物とラテックスの配合比は、ゴムとの接着性を向上させる点より、固形分質量比で1/1~1/20にすることが好ましく、1/2~1/15の範囲にすることがさらに好ましい。レゾルシン-ホルムアルデヒド初期縮合物及びラテックスの配合量は、合計で、第2の処理液の全固形分中での比率を35~70質量%にすることが好ましく、40~65質量%にすることがさらに好ましい。
【0032】
第2の処理液では、接着性を阻害しない範囲で、さらにトリアジン化合物を配合することができる。トリアジン化合物としては、ジまたはトリオールトリアジン、ジまたはトリチオール-s-トリアジンが挙げられる。具体例としては、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオール(シアヌル酸)、イソシアヌル酸、トリヒドロキシエチルイソシアヌレート、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール、6-ジブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール等が挙げられる。この中で好ましいものは、トリオールトリアジンである。
【0033】
トリアジン化合物は、ゴムの加硫接着性に寄与するため、添加量が少ないと加硫接着性が不十分となり、添加量が多すぎるとゴムがスコーチする恐れがある。
トリアジン化合物は、トリアジン化合物を含む水系もしくは溶剤系の溶液または分散液を用いることができるが、水溶液または水分散液が好ましい。トリアジン化合物の配合量は、第2の処理液の全固形分中での比率を、5~30質量%にすることが好ましく、7~25質量%にすることがさらに好ましい。また、RFLとトリアジン化合物を、質量比で、100/10~100/40で用いることが好ましい。
【0034】
またブロックドイソシアネート、クロロフェノール化合物の反応性をさらに高めることを目的として、第2の処理液にアルカリ性の化合物を少量添加することもできる。アルカリ性の化合物としては炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア等が挙げられる。アラミド繊維の加水分解による強力低下を抑えながらブロックドイソシアネート、クロロフェノール化合物の反応性を高めるには、第2の処理液におけるアルカリ化合物の濃度を0.001~1質量%の範囲とすることが好ましい。
【0035】
第2の処理液は、RFLを通常、20~30℃の温度で24時間以上熟成した後、これにブロックドイソシアネート、クロロフェノール化合物、トリアジン化合物を添加、混合することにより調製される。
【0036】
第2の処理液は、第1の処理液と同様の方法で繊維コードに付与される。第2の処理液を付与した繊維コードを、通常、好ましくは100~150℃で乾燥した後、200~260℃で熱処理して硬化させる。第2の処理液の付与量は、混合物として、乾燥質量比で繊維コードに対して1~10質量%が好ましく、2~8質量%がさらに好ましく、2~5質量%が特に好ましい。
【0037】
[繊維コード]
本発明において、繊維コードとしては、有機繊維が撚糸されてなる有機繊維コードが用いられる。有機繊維としては、6ナイロン、66ナイロン等のナイロン繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維、ポリケトン繊維等が挙げられる。繊維コードは、例えば、アラミド繊維とナイロン繊維の複合コード、アラミド繊維とポリエステル繊維の複合コードであっても良い。繊維コードのなかでも、機械的強度及び耐熱性に優れる点より、アラミド繊維コード、アラミド繊維とナイロン繊維の複合コードが好ましい。複合コードにおける好ましい繊維比率は、アラミド繊維20~80質量%、ナイロン繊維80~20質量%である。
【0038】
アラミド繊維には、パラ系アラミド繊維とメタ系アラミド繊維があるが、本発明は引張強さに優れているパラ系アラミド繊維に対して特に有効であり、好ましい。パラ系アラミド繊維としては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(米国デュポン社、東レ・デュポン株式会社製、商品名「Kevlar」(登録商標))、コポリパラフェニレン-3,4´-オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人テクノプロダクツ株式会社製、商品名「テクノーラ」(登録商標))等を挙げることができる。
【0039】
アラミド繊維は、硬化性エポキシ化合物で表面処理したもの、あるいは、硬化性エポキシ化合物を繊維骨格内に浸透させたもの(繊維複合体)を用いることもできる。
【0040】
アラミド繊維複合体は、ポリパラフェニレンテレフタルアミドを濃硫酸に溶解した18~20質量%の粘調な溶液を、紡糸口金から吐出し、水洗中和処理した原糸を、100~160℃で好ましくは5~20秒間乾燥した、水分率15~200質量%のポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維に、硬化性エポキシ化合物を付与することで製造される。水分率が15質量%未満では、硬化性エポキシ化合物を均一に繊維骨格内に浸透させることが困難となる。一方、水分率が200質量%を超えると、浸透させた硬化性エポキシ化合物が巻き取り工程までにガイド等に接触した際に水分と共に脱落する恐れがあり、また繊維の巻き取り工程が難しくなる。前記の水分率は、15~100質量%がより好ましい。硬化性エポキシ化合物を繊維骨格内に均一に浸透させるためには、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維は、紡出後、水分率が15質量%未満に乾燥された履歴を持たないことが好ましい。アラミド繊維複合体への硬化性エポキシ化合物の浸透量は、アラミド繊維の水分率を0%に換算したときの繊維質量に対して、0.1~2.0質量%が好ましい。
【0041】
本発明のゴム補強用繊維コードを用いるゴムとしては、アクリルゴム(ACM)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム(HNBR)、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム(AU、EU)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム等を挙げることができる。
上記ゴムには、主成分のゴムの他に、通常ゴム業界で用いられるカーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウム等の無機充填剤、クマロン樹脂、フェノール樹脂等の有機充填剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤等の各種配合剤が含まれていてもよい。
【0042】
本発明のゴム補強用繊維コードは、耐熱接着力、耐疲労性に優れているため、タイヤのカーカス素材として、或いは、タイヤのサイドウオール部、ベルト層、パンク防止層の補強材等として用いることができる。また、動力伝達ベルト、搬送用ベルト、ゴムホースの心線補強コード等に用いることができる。
【実施例
【0043】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、実施例1は参照例である。
【0044】
また、以下の実施例等において、特に言及する場合を除き、「質量%」は「%」、「質量部」は「部」、と略記する。各測定値は次の方法にしたがった。
【0045】
(1)T-接着力及びT-耐熱接着力
JIS L 1017:2002の接着力-A法に準じて、処理コ-ドを未加硫ゴムに埋め込み、加圧下で、初期接着力は150℃×30min、耐熱接着力は170℃×16時間プレス加硫を行い、放冷後、コードをゴムブロックから300mm/minの速度で引き抜き、その引き抜きに要した荷重をN/cmで表示した。
接着評価におけるゴムコンパウンドとしては、以下の組成からなる天然ゴムとSBRゴムを主成分とするタイヤカーカス用の未加硫ゴムを使用した。
・天然ゴム(RSS#1):80(部)
・SBR(JSR1501):20(部)
・RFカーボンブラック:50(部)
・ステアリン酸:2(部)
・硫黄:2(部)
・亜鉛華:5(部)
・2,2´-ジチオベンゾチアゾール:4(部)
・ナフテン酸プロセスオイル:3(部)
【0046】
(2)クロス剥離接着テスト及び熱中クロス剥離テスト
処理コードを、26本/インチの密度で埋め込んだ厚み1mmのゴムトッピングシートを2枚作成し、各トッピングシート中の処理コードが45度で重なるように2枚を貼り合わせ、温度150℃、圧力50kg/cmで30分間プレス加硫した後、室温まで放冷し、クロス剥離テストは室温中にて、また熱中クロス剥離テストは80℃にて5cm/minの速度で剥離し、その剥離荷重をkgで表したものである。
接着評価におけるゴムコンパウンドとしては、上記の(1)と同じ組成のタイヤカーカス用の未加硫ゴムを使用した。
【0047】
(3)ディスク疲労試験(耐疲労性)
JIS L 1017:2002 附属書1の2.2.2 ディスク疲労強さ(グッドリッチ法)により評価した。処理コード2本をタイヤ用ゴム中に埋め込み、150℃で30分間加硫して、ゴムコンパウンドを作成する。この試験片を圧縮10%、伸張0%を1サイクルとする変形を、2600サイクル/minで6時間与えた後、ゴムからコードを取り出して疲労後の破断強力を測定し、該疲労試験前後の保持率で表したものである。
【0048】
(4)カス発生量(カス低減効果)
処理コードをガイドに擦らせながら走行させて、脱落した接着剤樹脂の重量を求める。詳しくは、硬質クロムメッキ製のφ10スネールガイド(湯浅糸道工業株式会社製、D105139-R)を固定し、これに処理コードを引っ掛けて180度でターンさせながら、速度20m/min、張力0.5g/デニールで長さ500m走行させる。その後、ガイド上に堆積もしくは落下した接着剤樹脂をすべて採取し、その重量を測定したものを「カス発生量」とした。
【0049】
(実施例1)
ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)繊維のマルチフィラメント(東レ・デュポン株式会社製、単糸繊度:1.65dtex、総繊度:1,110dtex)2本を用いて、下撚40回/10cm、上撚40回/10cmの撚数で撚糸してアラミド繊維コードとした。
続いて上記のアラミド繊維コードを、コンピュートリータ処理機(リッツラー社製)を用いて、第1の処理液に浸漬した後、140℃で150秒乾燥し、続いて245℃で60秒間熱処理することにより、ディップコードを作製した。
【0050】
第1の処理液は、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエンラテックス100部(固形分換算)に対し、水酸化ナトリウムの存在下で予めレゾルシンとホルムアルデヒドをモル比でレゾルシン/ホルムアルデヒド=1/1.25の割合で初期縮合させたものを、固形分として5部混合することにより調製した。第1の処理液の付与量は、乾燥質量比でアラミド繊維コードに対し5.0%であった。
【0051】
続いて上記のディップコードを、コンピュートリータ処理機(リッツラー社製)を用いて、第2の処理液に浸漬し、140℃で150秒乾燥し、続いて245℃で60秒間熱処理することにより、ディップコードを作製した。
第2の処理液は、以下のようにして調製した。即ち、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエンラテックス100部(固形分換算)に対し、水酸化ナトリウムの存在下で予めレゾルシンとホルムアルデヒドをモル比でレゾルシン/ホルムアルデヒド=1/1.25の割合で初期縮合させたものを固形分として10部混合し、24時間熟成させてRFL液を調製した。その後、クロロフェノール化合物として、クロロフェノール-ホルムアルデヒド-レゾルシノールの縮合物のアンモニア溶液を固形分として37部混合した。次いで、ブロックドイソシアネート化合物としてジフェニルメタン-ビス-4,4´-メチルエチルケトンオキシカルバメートの水系分散体を、固形分としてRFL液の固形分との質量比で10:3になるように混合し、第2の処理液とした。第2の処理液の付与量は、乾燥質量比でアラミド繊維コードに対し3.9%であった。
【0052】
(実施例2)
実施例1と同様にして作成したアラミド繊維コードを、コンピュートリータ処理機(リッツラー社製)を用いて、第1の処理液に浸漬した後、140℃で150秒乾燥し、続いて245℃で60秒間熱処理することにより、ディップコードを作製した。
第1の処理液は、実施例1の第1の処理液と同様にして調製したRFL液に、ブロックドイソシアネート化合物として実施例1の第2の処理液で用いたのと同じジフェニルメタン-ビス-4,4´-メチルエチルケトンオキシカルバメートの水系分散体を、固形分としてRFL液の固形分との質量比で10:3になるように配合して調製した。第1の処理液の付与量は、乾燥質量比でアラミド繊維コードに対し5.5%であった。
続いて上記のディップコードを、コンピュートリータ処理機(リッツラー社製)を用いて、実施例1の第2の処理液と同じ第2の処理液に浸漬し、140℃で150秒乾燥し、続いて245℃で60秒間熱処理することにより、ディップコードを作製した。第2の処理液の付与量は、乾燥質量比でアラミド繊維コードに対し4.0%であった。
【0053】
(実施例3)
実施例2で調製した第1の処理液に、硬化性エポキシ化合物としてソルビトールポリグリシジルエーテルを、ブロックドイソシアネートとして用いたジフェニルメタン-ビス-4,4´-メチルエチルケトンオキシカルバメートの水系分散体の固形分との質量比で、10:4になるように配合し、第1の処理液を調製した以外は、実施例1と同様の方法でディップコードを作製した。第1の処理液の付与量は、乾燥質量比でアラミド繊維コードに対し5.5%であった。
続いて上記のディップコードを、コンピュートリータ処理機(リッツラー社製)を用いて、第2の処理液に浸漬し、140℃で150秒乾燥し、続いて245℃で60秒間熱処理することにより、ディップコードを作製した。
第2の処理液は、実施例1で調製した第2の処理液に、トリアジン化合物としてシアヌル酸をRFL液の固形分との質量比で、10:2になるように配合して調製した。第2の処理液の付与量は、乾燥質量比でアラミド繊維コードに対し4.3%であった。
【0054】
(比較例1)
実施例1で作製したアラミド繊維コードに対し、実施例1と同様の方法で、第1の処理液及び第2の処理液による処理を行い、RFLディップコードを作製した。
第1の処理液は、実施例3の第1の処理液を使用した。第2の処理液は、クロロフェノール化合物を混合していない実施例3の第2の処理液を使用した。
第1の処理液及び第2の処理液の付与量は、乾燥質量比でアラミド繊維コードに対し5.5%及び4.1%であった。
【0055】
(比較例2)
実施例2において、第2の処理液を第1の処理液として用い、また第1の処理液を第2の処理液として用いた以外は、実施例2と同様の方法で、RFLディップコードを作製した。第1の処理液及び第2の処理液の付与量は、乾燥質量比でアラミド繊維コードに対し5.3及び2.5%であった。
【0056】
(実施例4)
ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)繊維のマルチフィラメント(東レ・デュポン株式会社製、単糸繊度:1.67dtex、総繊度:1,670dtex)2本、66ナイロン繊維のマルチフィラメント(東レ株式会社製、単糸繊度:6.91dtex、総繊度:940dtex)1本を用いて、PPTA繊維を下撚30回/10cm、ナイロン繊維を下撚32回/10cm、の条件で下撚りした。下撚りコード3本を撚り合せ、上撚24回/10cmの撚数で撚糸してアラミド繊維とナイロン繊維の複合繊維コードとした。
【0057】
続いて上記の複合繊維コードを、コンピュートリータ処理機(リッツラー社製)を用いて、第1の処理液に浸漬した後、140℃で150秒乾燥し、続いて245℃で60秒間熱処理することにより、ディップコードを作製した。第1の処理液は、実施例3で用いたものと同じものを用いた。第1の処理液の付与量は、乾燥質量比で複合繊維コードに対し6.0%であった。
続いて上記のディップコードを、コンピュートリータ処理機(リッツラー社製)を用いて、第2の処理液に浸漬し、140℃で150秒乾燥し、続いて245℃で60秒間熱処理することにより、ディップコードを作製した。第2の処理液は、実施例3で用いたものと同じものを使用した。第2の処理液の付与量は、乾燥質量比で複合繊維コードに対し4.4%であった。
【0058】
(比較例3)
実施例4において、第2の処理液として比較例1で調製した第2の処理液を用いた以外は、実施例4と同様の方法でRFLディップコードを作製した。
第1の処理液の付与量は、乾燥質量比で複合繊維コードに対し6.0%であった。第2の処理液の付与量は、乾燥質量比で複合繊維コードに対し4.2%であった。
【0059】
(実施例5)
公知の方法で得られたポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)(分子量約20,000)1kgを4kgの濃硫酸に溶解し、直径0.1mmのホールを1,000個有する口金から剪断速度30,000sec-1となるよう吐出し、4℃の水中に紡糸した後、10%の水酸化ナトリウム水溶液で、10℃×15秒の条件で中和処理した。その後、脱水処理をして、110℃で低温乾燥を行い、水分率を45%に調整した。
【0060】
このPPTA繊維に、硬化性エポキシ化合物としてソルビトールポリグリシジルエーテルを50%含有する油剤(ジイソステアリルアジペート/ジオレイルアジペート/硬化ヒマシ油エチレンオキサイド付加物/鉱物油の混合物)を、既知の油剤付与方法によって浸透させた。
続いて、得られた繊維を100℃の熱風循環式の乾燥炉で60秒乾燥することにより、水分率を7.0%まで下げ、硬化性エポキシ化合物を繊維骨格内に浸透させたPPTA繊維複合体を得た。硬化性エポキシ化合物の浸透量は、アラミド繊維の水分率を0%に換算したときの繊維質量に対して、1.0%であった。
【0061】
このPPTA繊維複合体(単糸繊度:1.67dtex、総繊度1,670dtex)2本を用いて、下撚40回/10cm、上撚40回/10cmの撚数で撚糸してアラミド繊維コードとした。
続いて上記のアラミド繊維コードを、コンピュートリータ処理機(リッツラー社製)を用いて、第1の処理液に浸漬した後、140℃で150秒乾燥し、続いて245℃で60秒間熱処理することにより、ディップコードを作製した。第1の処理液は、実施例3の第1の処理液を使用した。第1の処理液の付与量は、乾燥質量比でアラミド繊維コードに対し6.1%であった。
続いて上記のディップコードを、コンピュートリータ処理機(リッツラー社製)を用いて、第2の処理液に浸漬し、140℃で150秒乾燥し、続いて245℃で60秒間熱処理することにより、ディップコードを作製した。第2の処理液は、実施例3で用いたものと同じものを使用した。第2の処理液の付与量は、乾燥質量比でアラミド繊維コードに対し4.5%であった。
【0062】
[アラミド繊維の水分率(質量%)測定法]
約5gのPPTA繊維の質量(乾燥前質量)を測定する。次いで、105℃×1時間熱処理した後、24℃、55%RHで5分間放置し、再度質量(乾燥後質量)を測定する。
水分率(質量%)={(乾燥前質量-乾燥後質量)/(乾燥後質量)}×100
【0063】
(実施例6)
実施例5で得たPPTA繊維複合体(単糸繊度:1.67dtex、総繊度1,670dtex)2本、66ナイロン繊維のマルチフィラメント(東レ株式会社製、単糸繊度:6.91dtex、総繊度:940dtex)1本を用いて、PPTA繊維複合体を下撚30回/10cm、ナイロン繊維を下撚32回/10cm、の条件で下撚りした。下撚りコード3本を撚り合せ、24回/10cmの撚数で上撚りしてアラミド繊維とナイロン繊維の複合繊維コードとした。
【0064】
続いて上記の複合繊維コードを、コンピュートリータ処理機(リッツラー社製)を用いて、第1の処理液に浸漬した後、140℃で150秒乾燥し、続いて245℃で60秒間熱処理することにより、ディップコードを作製した。第1の処理液は、実施例3の第1の処理液を使用した。第1の処理液の付与量は、乾燥質量比で複合繊維コードに対し6.5%であった。
続いて上記のディップコードを、コンピュートリータ処理機(リッツラー社製)を用いて、第2の処理液に浸漬し、140℃で150秒乾燥し、続いて245℃で60秒間熱処理することにより、ディップコードを作製した。第2の処理液は、実施例3で用いたものと同じものを使用した。第2の処理液の付与量は、乾燥質量比で複合繊維コードに対し4.6%であった。
【0065】
実施例及び比較例で得た繊維コードの評価結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
2液処理を施した場合、第2の処理液としてクロロフェノール化合物とブロックドイソシアネートを含む処理液を用いたアラミド繊維コード及び複合コード(実施例)は、クロロフェノール化合物を含まない第2の処理液を用いたアラミド繊維コード(比較例)に比べて、カス低減効果に優れており、接着性(初期接着力、耐熱接着力、クロス剥離接着力、熱中クロス剥離接着力)が向上することがわかる。また、耐疲労性も良好な結果を示した。
【0068】
硬化性エポキシ化合物を浸透させたアラミド繊維コード及び複合コード(実施例)は、カス低減効果、耐疲労性に優れており、硬化性エポキシ化合物を浸透させていないアラミド繊維コードよりも接着性が向上することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のゴム補強用繊維コードは、耐熱接着性、耐疲労性が要求されるゴム製品の補強用に有用である。