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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】透明組成物および透明化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/35 20060101AFI20230728BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 8/40 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20230728BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20230728BHJP
   A61Q 1/06 20060101ALI20230728BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20230728BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
A61K8/35
A61K8/37
A61K8/40
A61K8/41
A61K8/49
A61K8/891
A61K8/92
A61K8/9789
A61Q1/00
A61Q1/06
A61Q1/12
A61Q17/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017087082
(22)【出願日】2017-04-26
(65)【公開番号】P2018184370
(43)【公開日】2018-11-22
【審査請求日】2020-04-06
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】直井 香代子
(72)【発明者】
【氏名】長井 宏一
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】瀬良 聡機
【審判官】宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-314459(JP,A)
【文献】特許第2584262(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2004/0185019(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)紫外線吸収剤と、
(b)屈折率が1.5~1.7の油分と、
(c)屈折率が1.3~1.5未満の油分と、
(d)屈折率が1.45~1.55の粉末と
を含み、
前記(b)屈折率が1.5~1.7の油分および前記(C)屈折率が1.3~1.5未満の油分の混合油分の屈折率が1.44~1.56であり、
前記(a)紫外線吸収剤に対する前記(d)屈折率が1.45~1.55の粉末の質量比が0.01以上0.5以下である透明組成物。
【請求項2】
さらに(e)油分増粘剤を含む請求項1記載の透明組成物。
【請求項3】
前記(d)屈折率が1.45~1.55の粉末が、ポリメタクリル酸メチル、シリカ、ナイロン、セルロース、ポリエチレン、ポリウレタン、またはそれらを含む共重合体もしくは被覆処理体である請求項1または2記載の透明組成物。
【請求項4】
前記(e)油分増粘剤がデキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリル脂肪酸エステル、アミノ酸系ゲル化剤、脂肪酸もしくはその塩、または有機変性粘土鉱物である請求項1~3いずれか1項記載の透明組成物。
【請求項5】
固形である、請求項2~4いずれか1項記載の透明組成物。
【請求項6】
スティック状である、請求項5記載の透明組成物。
【請求項7】
請求項1~6いずれか1項記載の透明組成物を基剤として含有する透明化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明でかつ高い紫外線防御効果を有する透明組成物、ならびにそれを基剤として含有する透明化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油性の透明化粧料は、主に、外観の美しさ、塗布したときの透明感のある仕上り等の利点を有するため、様々な透明基剤が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、12-ヒドロキシステアリン酸と油分からなる屈折率1.45~1.54の透明性基剤を用いた化粧料が開示されている。また、特許文献2には、12-ヒドロキシステアリン酸と重質流動パラフィンと液状油性成分からなる透明固形化粧料が開示され、特許文献3には、12-ヒドロキシステアリン酸と水酸基価120以下の透明液状油性成分とメチルフェニルポリシロキサンを含有する透明固形化粧料が開示されている。
【0004】
また、デキストリン脂肪酸エステルを配合した透明化粧料として、特許文献4には、塗布時のつやを改良する観点から、デキストリン脂肪酸エステルと重質流動パラフィンと液状油性成分とを配合した透明固形化粧料が開示されている。また、特許文献5には、皮膚の凹凸補正効果を発揮して毛穴を目立たなくする観点から、デキストリン脂肪酸エステルと、揮発性油分と、屈折率が1.4~1.6の油分と、屈折率が1.3~1.6であり平均粒径3~30μmの球状粉末とを配合した透明固形組成物が開示されている。
【0005】
上記の12-ヒドロキシステアリン酸若しくはデキストリン脂肪酸エステルを配合した透明化粧料は広く知られているが、それら透明固形化粧料に、付加的作用を発揮させる他の有効成分を配合しようとすると、成形性や安定性、あるいは透明性が損なわれるという問題があった。
【0006】
特許文献6には、アミノ酸誘導体変性シリコーンによって増粘またはゲル化させた透明固形化粧料において、非極性油分に難溶である紫外線吸収剤を配合しても外観の透明性を維持する観点から、特定のリジン誘導体変性シリコーンと、シリコーン油と、IOB(Inorganic Organic Balance)が0.17~0.63である極性油分と、紫外線吸収剤とを配合した、透明固形組成物が開示されている。
【0007】
特許文献6に記載の透明化粧料は紫外線吸収剤が配合されたものであるが、一般に、皮膚に塗布した化粧料は、皮膚から分泌される汗や海水といった外部環境からの水分など、塗膜の内外から様々な水分に曝されるため、耐水性を付与するための樹脂や被膜剤を高配合しても、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤等の流出を完全に阻止することは難しく、紫外線防御効果が低下することが避けられない。
【0008】
一方、出願人は、油分増粘剤等を用いることで、水や汗等の水分と接触することにより塗布直後よりも紫外線防御効果が向上するという従来にない特性を有する乳化型日焼け止め化粧料を提案している(特許文献7および8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平1-163111号公報
【文献】特開平2-264707号公報
【文献】特開平4-91010号公報
【文献】特開平9-235210号公報
【文献】特開平2005-213145号公報
【文献】特開2007-314459号公報
【文献】国際公開第2016/068298号
【文献】国際公開第2016/068300号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献6に記載されているように、透明化粧料において紫外線吸収剤が配合されたものは知られているが、水や汗等の水分と接触すると紫外線吸収剤等の外部への流出が起こり、得られる紫外線防御効果は塗布直後よりも下がってしまうという問題があった。水や汗等の水分接触による紫外線防止効果の低下を抑制するためには、特許文献7および8のように油分増粘剤を適用することが考えられる。しかし、透明化粧料の場合には、付加的作用を発揮させる他の有効成分を配合しようとすると、安定性や本来の機能である透明性が損なわれるという問題がある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、高い透明性を維持したまま、紫外線防御効果を有するとともに、水や汗等の水分と接触することにより塗布直後よりも紫外線防御効果が向上するという特性を有する透明組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、紫外線吸収剤と油分増粘剤に、屈折率が特定の範囲の2種類の油分と、屈折率が特定の範囲の粉末とを配合することにより、高い透明性を維持したまま、塗布直後よりも紫外線防御効果が向上する透明組成物を作製し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の透明組成物は、(a)紫外線吸収剤と、
(b)屈折率が1.5~1.7の油分と、
(c)屈折率が1.3~1.5未満の油分と、
(d)屈折率が1.45~1.55の粉末と
を含み、(b)屈折率が1.5~1.7の油分および(C)屈折率が1.3~1.5未満の油分の混合油分の屈折率が1.44~1.56である。
【0014】
本発明の透明組成物は、さらに(e)油分増粘剤を含むことが好ましい。
【0015】
(d)屈折率が1.45~1.55の粉末は、ポリメタクリル酸メチル、シリカ、ナイロン、セルロース、ポリエチレン、ポリウレタン、またはそれらを含む共重合体もしくは被覆処理体であることが好ましい。
【0016】
(a)紫外線吸収剤に対する(e)屈折率が1.45~1.55の粉末の質量比は0.01以上1以下であることが好ましい。
【0017】
(e)油分増粘剤はデキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリル脂肪酸エステル、アミノ酸系ゲル化剤、脂肪酸もしくはその塩、または有機変性粘土鉱物であることが好ましい。
【0018】
本発明の透明組成物は固形であることが好ましく、その形態はスティック状であってよい。
【0019】
本発明の透明化粧料は、上記の透明組成物を基剤として含有するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の透明組成物は、高い透明性を維持したまま、水や汗等の水分と接触しても塗布直後よりも紫外線防御効果が向上するという特性を有するので、高い紫外線防御効果をもたらすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の透明組成物について詳細に説明する。
本発明の透明組成物(以下、単に組成物ともいう)は、
(a)紫外線吸収剤と、
(b)屈折率が1.5~1.7の油分と、
(c)屈折率が1.3~1.5未満の油分と、
(d)屈折率が1.45~1.55の粉末と、を含み、(b)屈折率が1.5~1.7の油分および(C)屈折率が1.3~1.5未満の油分の混合油分の屈折率が1.44~1.56である。
以下、各成分について詳細に説明する。
【0022】
<(a)紫外線吸収剤>
本発明で用いられる(a)紫外線吸収剤(以下、単に(a)成分ともいう)は、化粧料等の皮膚外用剤に配合し得るものから選択され、特に限定はされないが、油溶性吸収剤であることが好ましい。具体例として、例えば、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(オクチルメトキシシンナメート)、サリチル酸フェニル、サリチル酸オクチル、サリチル酸ホモメンチル(ホモサレート)、サリチル酸エチルヘキシル、オクトクリレン、2-ヒドロキシ4-メトキシベンゾフェノン、ポリシリコン-15、エチルヘキシルトリアゾン、エチルヘキシルトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、オキシベンゾン-3、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、2,4,6-トリアニリノ-p-(カルボ-2’-エチルヘキシル-1’-オキシ)-1,3,5-トリアジン、{2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]}安息香酸ヘキシルエステル、2,4-ビス-[{4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、ドロメトリゾールトリシロキサン等を挙げることができる。
【0023】
特に、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸オクチル、オクトクリレンおよび2-ヒドロキシ4-メトキシベンゾフェノン等を本発明の組成物において好ましく用いることができる。
紫外線吸収剤は単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0024】
紫外線吸収剤の配合量は、組成物全量に対して3~50質量%であり、好ましくは5~35質量%である。
【0025】
なお、本発明の透明組成物は、散乱剤を含まないことが好ましく、含んでいても0.1質量%以下であることが望ましい。散乱剤を配合すると濁りが生じ、透明度が落ちる場合があるため好ましくない。
【0026】
<(b)屈折率が1.5~1.7の油分>
(b)屈折率が1.5~1.7の油分は、25℃における屈折率が1.5~1.7の相対的に高い屈折率を有する油分(以下、単に(b)成分あるいは高屈折率油分ともいう)である。そのような高屈折率油分として、限定はされないが、例えば水添ポリイソブテン、トリメチルペンタフェニルポリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ジフェニルジメチコン、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、イソステアリン酸フィトステリルなどが挙げられる。例えば、トリメチルペンタフェニルポリシロキサンとして、東レ・ダウコーニング社のPH-1555HRIC(屈折率1.58)、信越化学工業社製のシリコーンKF56(屈折率約1.5)日本ユニカー製のFZ-3156(屈折率:1.575)、ジフェニルジメチコンとして信越化学工業社製のKF-54(屈折率1.505)、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリルとして日本精化社製のPlandool-MAS(屈折率:1.501)等が市販されており、これらを好適に使用することができる。
【0027】
本発明の透明組成物における、屈折率が1.5~1.7の高屈折率油分の配合量は、後述する(c)屈折率が1.3~1.5未満の油分と組み合わせて、これら混合油分の平均屈折率が1.44~1.56の範囲内にする量であり、配合されるものの種類や組合せ等によって異なるが、好ましくは組成物に対して5~50質量%、より好ましくは10~40質量%、さらに好ましくは15~35質量%である。
高屈折率油分は単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0028】
<(c)屈折率が1.3~1.5未満の油分>
(c)屈折率が1.3~1.5未満の油分は、25℃における屈折率が1.3~1.5未満の相対的に低い屈折率を有する油分(以下、単に(c)成分あるいは低屈折率油分ともいう)である。そのような低屈折率油分として、限定はされないが、例えば、セバシン酸ジイソプロピル(屈折率約1.43)、トリエチルヘキサノイン(屈折率約1.45)、ミリスチン酸イソプロピル(屈折率約1.43)、水添ポリデセン(屈折率約1.46)、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(屈折率約1.45)、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(屈折率約1.44)、2-エチルヘキサン酸セチル(屈折率約1.44)、トリオクタン酸トリメチロールプロパン(屈折率約1.45)、スクワラン(屈折率約1.45)、α-オレフィンオリゴマー(屈折率約1.46)、ジイソステアリン酸グリセリル(屈折率約1.46)、リンゴ酸ジイソステアリル(屈折率約1.46)、トリイソステアリン酸ポリグリセリル(屈折率約1.47)、マカデミアナッツ油(屈折率約1.47)、流動パラフィン(屈折率約1.47)、イソドデカン(屈折率約1.42)、イソヘキサデカン(屈折率約1.43)、軽質イソパラフィン(屈折率約1.43)、ジメチルポリシロキサン(屈折率約1.40)、ポリオキシアルキレン・ポリアルキルシロキサン(アルキレン=エチレン:屈折率約1.42)等が挙げられる。特に、セバシン酸ジイソプロピル、トリエチルヘキサノイン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル等を好ましく用いることができる。
【0029】
なお、使用性の観点から、(c)成分は、常圧における沸点が300℃以下の揮発性油分を含んでいてもよい。揮発性油分を含めることにより、油っぽさが軽減され、ベタツキの少ない仕上がりとなる。
【0030】
本発明の透明組成物における、低屈折率油分の配合量は、上記の高屈折率油分と組み合わせて、これら混合油分の平均屈折率が1.44~1.56の範囲内にする量であり、配合されるものの種類や組合せ等によって異なるが、好ましくは組成物に対して5~50質量%、より好ましくは10~40質量%、さらに好ましくは15~35質量%である。
低屈折率油分は単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0031】
高屈折率油分((b)成分)と低屈折率油分((c)成分)とを混合した油分全体の配合量は、特に限定されないが、好ましくは10~80質量%であり、より好ましくは20~70質量%である。油分の配合量が10質量%未満であると、組成物にツヤのある仕上がりを付与することは難しい場合があり、また、80質量%を超えて配合するとベタツキが生じる場合がある。(b)成分と(c)成分の配合量を調整して、これら混合油分の平均屈折率が1.44~1.56の範囲内になるように配合する。
【0032】
<(d)屈折率が1.45~1.55の粉末>
(d)屈折率が1.45~1.55の粉末(以下、単に(d)成分ともいう)は、文献値の屈折率が1.45~1.55である粉末である。屈折率がこの範囲であると、本発明で用いられる油性成分との屈折率差が小さく、それによって基剤の高い透明性が実現できる。そのような粉末としては、限定はされないが、例えば、シリカ、ジメチルシリル化シリカ(約1.46)、ポリメタクリル酸メチル(約1.49)、(HDl/トリメチロールヘキシル ラクトン)クロスポリマー(約1.5)、(IPDI/ポリ(1,4-ブタンジオール)-14)クロスポリマー(約1.49)、ナイロン(約1.53)、セルロース(約1.49)、ポリエチレン(約1.51)、ポリウレタン(約1.50)、無水珪酸(約1.45~1.50)等が挙げられる。また、これらの粉末を常法により疎水化処理等の表面処理をして配合してもよい。
【0033】
疎水性シリカの市販品としては、例えば、ジメチルジクロロシラン処理品であるAEROSIL R972、R972V、R972CF、R974、R976、R976S(日本アエロジル株式会社製)、オクチルシラン処理品であるAEROSIL R805(日本アエロジル株式会社製)、ヘキサメチルジシラザン処理品であるAEROSIL R812、R812S、RX200(日本アエロジル株式会社製)、ジメチルシリコーンオイル処理品であるAEROSIL R202、RY200(日本アエロジル株式会社製)等を挙げることができる。
【0034】
また、ポリメタクリル酸メチルは、架橋型ポリメタクリル酸(PMMA)を主成分とする球状粉末であり、数質量%以下の他の成分、例えばシリカ等を含んでいてもよい。
市販品としては、例えば、ガンツパールGMX-0810(ガンツ化成社製)、マイクロスフェアー M-330(松本油脂製薬社製)等が挙げられる。
【0035】
無水珪酸の市販品としては、例えば、サンスフェアL-51、L-31、H-31、H-31、NP-30、NP-100(AGCエスアイテック株式会社製)等を挙げることができる。
【0036】
ポリウレタンとしては、ウレタン樹脂を主成分とする球状粉末であり、数質量%の他の成分、例えばシリカ等を含んでいてもよい。
市販品としては、例えば、TPパウダー Uシリーズ(東色ピグメント株式会社)等が挙げられる。
【0037】
粉末の配合量は、組成物全量に対して0.1~20質量%であり、好ましくは0.5~10質量%である。油分と粉末との屈折率を揃えることにより、相当量の粉末を配合しても透明であり、高い透明性を維持したまま、ベタツキを軽減して、使用性を高めることができる。さらに、そのような粉末とともに揮発性油分を含む場合、塗布前は透明の外観を有しているが、肌に塗布した際に揮発性油分が蒸発して、粉末と油分との屈折率がずれて半透明となり、凹凸補正効果をもたらすことができる。
【0038】
(a)紫外線吸収剤に対する(d)成分の質量比は0.01以上1以下であることが好ましく、0.01以上0.5以下であることがより好ましい。(a)成分に対する(d)成分の質量比がこの範囲であることにより、水分との接触により紫外線防御効果が向上するという効果をより高めることができる。
【0039】
<(e)油分増粘剤>
本発明の透明組成物は(e)油分増粘剤を含むことが好ましい。
(e)油分増粘剤(以下、単に(e)成分ともいう)は、化粧料等において油分に溶解または油分で膨潤することにより油分を増粘する効果を発揮する成分として使用されている物質から適宜選択できる。例えば、デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリル脂肪酸エステル、アミノ酸系ゲル化剤、脂肪酸もしくはその塩、または有機変性粘土鉱物等が好ましい。油分増粘剤は単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよく、2種以上を配合するのが特に好ましい。
【0040】
デキストリン脂肪酸エステルは、デキストリンまたは還元デキストリンと高級脂肪酸とのエステルであり、化粧料に一般的に使用されているものであれば特に制限されず使用することができる。デキストリンまたは還元デキストリンは平均糖重合度が3~100のものを用いるのが好ましい。また、デキストリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸としては、炭素数8~22の飽和脂肪酸を用いるのが好ましい。具体的には、パルミチン酸デキストリン、オレイン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、(パルミチン酸/2-エチルヘキサン酸)デキストリン等を挙げることができる。
【0041】
ショ糖脂肪酸エステルは、その脂肪酸が直鎖状あるいは分岐鎖状の、飽和あるいは不飽和の、炭素数12から22のものを好ましく用いることができる。具体的には、ショ糖カプリル酸エステル、ショ糖カプリン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル等を挙げることができる。
【0042】
グリセリル脂肪酸エステルは、グリセリン、炭素数18~28の二塩基酸及び炭素数8~28の脂肪酸(ただし、二塩基酸を除く)を反応させることにより得られるエステル化反応生成物であり、化粧料に一般的に使用されているものであれば特に制限されず使用することができる。具体的には、(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリル、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、(ベヘン酸/エイコサン二酸)ポリグリセリル-10等を挙げることができる。
【0043】
アミノ酸系ゲル化剤は、ジブチルラウロイルグルタミド、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド、ポリアミド‐8、ポリアミド-3等を挙げることができる。
【0044】
脂肪酸は、常温で固形のものを使用することができ、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等を挙げることができる。また、脂肪酸の塩としては、これらのカルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩等を挙げることができる。
【0045】
有機変性粘土鉱物の代表的な具体例としては、ジメチルジステアルアンモニウムヘクトライト、ジメチルアルキルアンモニウムヘクトライト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理ケイ酸アルミニウムマグネシウム等が挙げられる。市販品としては、ベントン27(ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト:エレメンティスジャパン社製)およびベントン38(ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト:エレメンティスジャパン社製)が好ましい。
【0046】
油分増粘剤の配合量は、組成物全量に対して、0.1~40質量%、さらに好ましくは0.2~30質量%、より好ましくは0.4~15質量%である。(e)油分増粘剤の配合量が0.1質量%未満では充分な安定性が得られにくく、40質量%を超えて配合すると高粘度となり、肌上での伸びが重くなるなどの使用性の点で好ましくない。
【0047】
なお、本発明において、屈折率とは、Rudolph Research Analytical社製AUTOMATIC REFRACTOMETERにて25℃で測定した値であり、粉末に関しては文献値によるものである。
【0048】
本発明の透明組成物は固形であることが好ましい。ここで固形とは、常温(15℃~25℃)、常圧において流動性のない組成物を意味する。剤型としては、スティック状、皿状、軟膏状などをとることができる。特に、スティック状のものは、指や道具を使う必要がなく、直接皮膚に塗布することができるため使いやすい。さらに、透明なスティックは見た目もよく、また見ただけで仕上がりの透明性が分かるため好ましい。
【0049】
透明とは、光路長10mm×光路幅10mmのプラスティックセルに、本発明は透明組成物の成分(d)以外の粉体を含まないベース部分を溶融充填した測定サンプルを、分光光度計(U-4100 HITACHI社製)にて透過率を測定した場合、700nmの光の波長領域での透過率が70%以上のものを指し、透過率がこの範囲であれば着色したものも含まれる。
【0050】
本発明の透明組成物には、本発明の効果を損なわない限り、上記必須成分に加えて、任意の成分を配合することができる。通常、化粧料に配合される成分を添加して常法により任意の透明化粧料を製造することができる。
【0051】
任意の成分としては、透明性を損なわない配合範囲において、上記に記載した(a)~(e)以外の、油分、高級アルコール、POE(ポリオキシエチレン)・POP(ポリオキシプロピレン)ジメチルエーテル、界面活性剤、保湿剤、金属封鎖剤、酸化防止剤、油溶性薬剤等が挙げられる。
【0052】
動植物油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ核油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0053】
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ホホバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0054】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、スクワレン、ワセリン等が挙げられる。
【0055】
高級アルコールとしては、炭素数6~20のアルキル基を有する高級アルコールで、カプロイルアルコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキニルアルコール等が挙げられる。アルキル基が分岐していてもよく、また、不飽和結合、水酸基、カルボキシル基、フェニル基等の置換基を有してもよい。
【0056】
POE・POPジメチルエーテルとしては、特開2003-113023号公報に記載されるアルキレンオキシド誘導体等が挙げられる。
【0057】
親油性非イオン界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロ-ルソルビタン等);グリセリンポリグリセリン脂肪酸類(例えば、モノ綿実油脂肪酸グリセリン、モノエルカ酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、α,α’-オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等);プロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール等);硬化ヒマシ油誘導体;グリセリンアルキルエーテル等が挙げられる。
【0058】
親水性非イオン界面活性剤としては、例えば、POE-ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、POE-ソルビタンモノオレエート、POE-ソルビタンモノステアレート、POE-ソルビタンモノオレート、POE-ソルビタンテトラオレエート等) ; POEソルビット脂肪酸エステル類(例えば、POE-ソルビットモノラウレート、POE-ソルビットモノオレエート、POE-ソルビットペンタオレエート、POE-ソルビットモノステアレート等);POE-グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、POE-グリセリンモノステアレート、POE-グリセリンモノイソステアレート、POE-グリセリントリイソステアレート等のPOE-モノオレエート等);POE-脂肪酸エステル類(例えば、POE-ジステアレート、POE-モノジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等);POE-アルキルエーテル類(例えば、POE-ラウリルエーテル、POE-オレイルエーテル、POE-ステアリルエーテル、POE-ベヘニルエーテル、POE-2-オクチルドデシルエーテル、POE-コレスタノールエーテル等);POE・POP-アルキルエーテル類(例えば、POE・POP -セチルエーテル、POE・POP -2-デシルテトラデシルエーテル、POE・POP-モノブチルエーテル、POE・POP -水添ラノリン、POE・POP-グリセリンエーテル等);POE-ヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体(例えば、POE-ヒマシ油、POE-硬化ヒマシ油、POE-硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE-硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE-硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE-硬化ヒマシ油マレイン酸等);POE-ミツロウ・ラノリン誘導体(例えば、POE-ソルビットミツロウ等);アルカノールアミド(例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等);POE-プロピレングリコール脂肪酸エステル;POE-アルキルアミン;POE-脂肪酸アミド;ショ糖脂肪酸エステル;トリオレイルリン酸等が挙げられる。
【0059】
保湿剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル-12-ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、d,l-ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO((エチレンオキシド)プロピレンオキシド)付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物、トレハロース、エリスリトール、POE・POPランダム共重合体メチルエーテル等が挙げられる。
【0060】
金属イオン封鎖剤としては、例えば、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸四ナトリウム塩、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、エデト酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸3 ナトリウム等が挙げられる。
ビタミンとしては、例えば、ビタミンA 、B1、B2、B6、C、Eおよびその誘導体、パントテン酸およびその誘導体、ビオチン等が挙げられる。
【0061】
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール類、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸エステル類等が挙げられる。
【0062】
酸化防止助剤としては、例えば、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、ケファリン、ヘキサメタフォスフェイト、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸等が挙げられる。
【0063】
その他の配合可能成分としては、例えば、防腐剤(メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、フェノキシエタノール等);消炎剤(例えば、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、チオタウリン、ヒポタウリン、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン等);美白剤(例えば、ユキノシタ抽出物、アルブチン、トラネキサム酸、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩、L-アスコルビン酸グルコシド、4-メトキシサリチル酸カリウム等);各種抽出物(例えば、オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、海藻等);賦活剤(例えば、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等);血行促進剤等が挙げられる。
【0064】
本発明にかかる透明化粧料においては、パルミチン酸デキストリン、べへン酸エイコサン二酸グリセリル、ポリアミド-3、ポリアミド-8、2-エチルヘキサノイルグルタミン酸ブチルアミド、N-2-エチルヘキサノイル-L-グルタミン酸ジブチルアミド等の油性ゲル化剤成分を固化助剤として化粧料の透明性が維持される範囲で配合することが可能である。
【0065】
本発明の透明化粧料の剤型は特に限定されるものではないが、ゲルまたは固形であることが好ましく、その製品形態としては、特に限定されないが、例えば、ファンデーション、口紅、リップグロス、リップクリーム、アイシャドー等のメ-キャップ化粧料、化粧下地、サンスクリーン、スキンケア化粧料、ヘアスティック、ボディ用化粧料、制汗用化粧料、ポマード等の毛髪化粧料等を挙げることができる。容器充填やスティック状の透明固形化粧料として好ましく利用される。
【0066】
本発明の透明組成物、およびそれを用いた化粧料は、常法に従い調製することができる。例えば、上記の成分を70~100℃にて溶解および分散させたのち、所望の金型、または容器に流し込み、冷却固化させて調製することができる。
【実施例
【0067】
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。本発明は以下の実施例によってなんら限定されるものでない。配合量は特に断りがない限り質量%である。
【0068】
なお実施例および比較例は表1~3に示す処方で常法により製造したものである。具体的には、油分増粘剤を含む場合にはこれを油分に加え、80~130℃に加熱して溶解させた後、残りの成分(紫外線吸収剤、粉末等)を加えて均一になるまでホモミキサーにて分散し、脱気を行った後、室温にて固化させて各々の試料を得た。
【0069】
[屈折率]
屈折率は、Rudolph Research Analytical社製AUTOMATIC REFRACTOMETERを用いて、25℃で測定した。
【0070】
[透明性]
光路長10mm×光路幅10mmのプラスティックセルに、実施例および比較例の粉体を含まないベース部分を溶融充填した測定サンプルを、分光光度計(U-4100 HITACHI社製)を用いて700nmの光の波長領域における透過率を測定した。
【0071】
[水浴後の紫外線防御効果]
測定プレート(Sプレート)(5×5cmのV溝PMMA板、SPFMASTER-PA01)に各サンプルを2mg/cmの量で滴下し、60秒間指で塗布し、15分間乾燥した後に形成された塗膜の吸光度を株式会社日立製作所社製U-4100型自記録分光光度計にて測定した。何も塗布していない測定プレートをコントロールとし、吸光度(Abs)を以下の式で算出した。
Abs=-log(T/To)
T:サンプルの透過率、To:何も塗布していない測定プレートの透過率
測定したプレートを硬度50~500の水に充分に浸し、30分間そのまま水中で静置した。その後、表面の水滴がなくなるまで15~30分程度乾燥させ、再び吸光度を測定し、水浴前後のAbs積算値(波長280~400nmの範囲)からAbs変化率(以下の式)を紫外線防御能向上効果として算出した。
紫外線防御能向上効果:
Abs変化率(%)=(水浴後のAbs積算値)/(水浴前のAbs積算値)×100
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
表1に示すように、本発明の透明組成物は、高い透明性を維持したまま、水浴後の紫外線防御効果が向上するという特性を示した。一方、比較例1では透明性は維持されたものの、(d)粉末を含まないため水浴後の紫外線防御効果が低下した。
また、表2に示すように、本発明の透明組成物は油分増粘剤を含む場合(実施例11~15)でも、含まない実施例10と同様に高い透明性、水浴後の紫外線防御効果が向上するという特性を示した。一方、油分増粘剤を含んでいても(d)粉末を含まない比較例2は水浴後の紫外線防御効果が低下した。さらに、表3に示すように、(b)高屈折率油分を含まない比較例3や(c)低屈折率油分を含まない比較例4では、透明性に欠けた。
【0076】
下記の透明化粧料を常法により製造した。
処方例1:化粧下地
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 5%
ホモサレート 5%
t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン 2%
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 1%
ポリアミド-8 20%
エチルヘキサン酸セチル 40%
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 15%
グリチルレチン酸ステアリル 0.1%
トコフェロール 0.5%
シリカ 5%
ヂプロプレングリコール 1%
トリエチルヘキサノイン 残渣
【0077】
処方例2:部分用ファンデーション
ヒドロキシステアリン酸 7%
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 10%
サリチル酸エチルヘキシル 5%
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2%
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 1%
ジブチルラウロイルグルタミド 2%
ポリアミド-8 3%
メタクリル酸メチルクロスポリマー 10%
トリメチルペンタフェニルポリシロキサン 3%
水添ポリデセン 20%
セルロース 0.5%
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 残渣
【0078】
処方例3: リップグロス
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2%
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 10%
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 1%
トリメチルペンタフェニルポリシロキサン 6%
カプリリルメチコン 20%
ミリスチン酸イソプロピル 5%
イソステアリン酸 0.01%
ジメチルシリル化シリカ 0.5%
ポリアミド-8 10%
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 残渣
【0079】
処方例4: サンスクリーン
サリチル酸エチルヘキシル 5%
t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン 2%
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 1%
オクトクリレン 5%
エチルヘキシルトリアゾン 1.5%
ホモサレート 10%
セバシン酸ジイソプロピル 15%
ジピバリン酸PPG-3 15%
セスキイソステアリン酸ソルビタン 0.01%
パルミチン酸デキストリン 2%
(IPDI/ポリ(1,4-ブタンジオール)-14)クロスポリマー 1%
ジブチルラウロイルグルタミド 2%
ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド 2%
PEG/PPG-14/7ジメチルエーテル 0.5%
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 残渣
【0080】
処方例5: 化粧上地
ホモサレート 5%
サリチル酸エチルヘキシル 5%
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2%
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 1%
イソドデカン 20%
ジメチルシリル化シリカ 1%
トリメチルシロキケイ酸 0.1%
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 20%
ミリスチン酸イソプロピル 15%
アルコール 10%
パルミチン酸エチルヘキシル 残渣
【0081】
上記処方例の透明化粧料は基剤外観の透明感に優れ、使用感がよく、かつ水浴後に紫外線防御効果の向上する透明化粧料である。