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特許7320919小さい活動性脈絡膜新生血管病変を有する加齢黄斑変性症の治療
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  • 特許-小さい活動性脈絡膜新生血管病変を有する加齢黄斑変性症の治療 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】小さい活動性脈絡膜新生血管病変を有する加齢黄斑変性症の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20230728BHJP
   A61K 31/409 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230728BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
A61K38/16
A61K31/409
A61K39/395 N
A61P27/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017530277
(86)(22)【出願日】2015-12-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-12-14
(86)【国際出願番号】 US2015065022
(87)【国際公開番号】W WO2016094673
(87)【国際公開日】2016-06-16
【審査請求日】2018-12-07
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2014/093548
(32)【優先日】2014-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2015/089251
(32)【優先日】2015-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】507021757
【氏名又は名称】バイエル・ヘルスケア・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・ツァイツ
(72)【発明者】
【氏名】オラフ・ソウェイデ
(72)【発明者】
【氏名】ハイヤン・ウ
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】森井 隆信
【審判官】齋藤 恵
(56)【参考文献】
【文献】DGUR DELIVERY SYSTEM,2009年,24-2,pp.103-108
【文献】白神史雄他編 眼科インストラクションコース,No.5,打倒!加齢黄斑変性(2005年11月10日 第1版第1刷)(株)メジカルビュー社 pp.36-45
【文献】Clin.Ophthalmol.,2014年3月,Vol.8,pp.343-346
【文献】EYE,2013年,Vol.27,pp.663-668
【文献】Clin.Ophthalmol.,2014年10月17日,Vol.8,pp.2129-2131
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K38/00
A61K31/409
A61K39/395
A61P27/02
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗VEGF剤としてアフリベルセプトを含む、フルオレセイン蛍光眼底造影によって決定される全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変サイズを有する湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)患者の治療における使用のための医薬組成物であって、
wAMD患者が以下の重要な組み入れ基準
・試験眼においてフルオレセイン蛍光眼底造影(FA)によって明らかになる、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変、
・ETDRSの試験眼の最高矯正視力(BCVA)は73~25文字(試験眼のスネレン等価視力は20/40~20/320)、及び
・50歳以上の年齢
を満たし、
wAMD患者が以下の重要な除外基準
・全病変サイズは、FAによって評価される12の乳頭領域(30.5mm2、血液、瘢痕および新生血管を含む。)より大きい、
・網膜下出血は全病変領域の50%以上であるか、または血液が中心窩の下にある場合、1つまたは複数の乳頭領域のサイズである(血液が中心窩の下にある場合、中心窩は目に見えるCNVによって270度囲まれていなければならない)、
・ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)を有する被験者を含む、wAMD以外の起源を持つCNVの存在、
・実質的に不可逆的な視力喪失を示す中心窩を含む瘢痕、線維症または萎縮症の存在、
・網膜色素上皮断裂または黄斑に関与する裂け目の存在、及び
・糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫またはwAMD以外の何らかの網膜血管疾患の病歴または臨床的証拠を含む、wAMD以外の起源を持つCNVの存在
を満たす、医薬組成物。
【請求項2】
光増感剤としてベルテポルフィンを含む、フルオレセイン蛍光眼底造影によって決定される全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変サイズを有するwAMD患者の治療のための医薬組成物であって、
wAMD患者が以下の重要な組み入れ基準
・試験眼においてフルオレセイン蛍光眼底造影(FA)によって明らかになる、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変、
・ETDRSの試験眼の最高矯正視力(BCVA)は73~25文字(試験眼のスネレン等価視力は20/40~20/320)、及び
・50歳以上の年齢
を満たし、
wAMD患者が以下の重要な除外基準
・全病変サイズは、FAによって評価される12の乳頭領域(30.5mm2、血液、瘢痕および新生血管を含む。)より大きい、
・網膜下出血は全病変領域の50%以上であるか、または血液が中心窩の下にある場合、1つまたは複数の乳頭領域のサイズである(血液が中心窩の下にある場合、中心窩は目に見えるCNVによって270度囲まれていなければならない)、
・ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)を有する被験者を含む、wAMD以外の起源を持つCNVの存在、
・実質的に不可逆的な視力喪失を示す中心窩を含む瘢痕、線維症または萎縮症の存在、
・網膜色素上皮断裂または黄斑に関与する裂け目の存在、及び
・糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫またはwAMD以外の何らかの網膜血管疾患の病歴または臨床的証拠を含む、wAMD以外の起源を持つCNVの存在
を満たす、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
加齢黄斑変性(AMD)は、通常、高齢者に影響を及ぼし、網膜の損傷のために視野の中心(黄斑)の視力を失う病状である。それは「乾燥」および「湿潤」形態で生じる。乾燥形態では、ドルーゼンと呼ばれる細胞破片が網膜と脈絡膜との間に蓄積し、網膜が剥離することがある。より重篤な湿潤形態(wAMD)では、脈絡膜新生血管(CNV)とも呼ばれる網膜の背後の脈絡膜から血管が成長する。CNVの結果、網膜も剥離することがある。
【0002】
網膜における異常な血管の増殖は、血管内皮増殖因子(VEGF)によって刺激される。抗血管新生剤または抗VEGF剤は、異常な血管の退行を引き起こし、硝子体内投与されたときに視力を改善し得る。いくつかの抗VEGF薬は眼内使用が認可されており、以下の特許出願に記載されている:
【0003】
アフリベルセプト(Eylea(登録商標)) WO 2000/75319
ベバシズマブ(Avastin(登録商標)) WO 9845331
ラニビズマブ(Lucentis(登録商標)) WO 9845331
ペガプタニブ(Macugen(登録商標)) WO 9818480
KH-902/conbercept(Langmu(登録商標)) WO 2007112675
【0004】
抗VEGF治療の他に、wAMDはVerteporfin(登録商標)(V(登録商標)-PDT)を用いた光線力学療法でも治療することができ、これにより、静注可能な光増感剤であるビスダインと組み合わせたレーザー光によって漏出の閉鎖が誘導される。
【0005】
抗VEGF剤を用いて実施された臨床試験では、全病変の少なくとも50%を占めなければならないクラシック主体型活動性中心窩下CNV領域(active predominantly classic,subfoveal CNVarea)を有する患者を含める必要があった[Rosenfeldら、N Engl J Med 2006,355:1419-1431;Brownら、N Engl J Med 2006,355:1432-1444;Heierら、Ophthalmology 2012,119:2537-2548;Regilloら、Am J Ophthalmol 2008,145:239-248]。したがって、全病変の50%未満を占めるクラシック主体型活動性中心窩下CNV領域を有する眼の、抗VEGF療法に対する反応に関する情報は不足している。
【0006】
CATT研究グループは、加齢性黄斑変性症治療試験(CATT)の比較に登録した、血液で構成される病変を50%を超えて有する眼(B50群)と他のすべての眼(他の群)のベースライン特性、治療頻度、視力(VA)および形態学的予後を比較した。試験眼の治療は、ラニビズマブまたはベバシズマブのいずれかにランダムに割り当てられ、2年間にわたって異なる3つの投与レジメンに割り当てられた。リーディングセンターのグレーダーは、カラー眼底写真、フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)および光干渉断層撮影(OCT)においてベースラインおよびフォローアップ形態を評価した。平均視力(VA)の上昇は、「B50群」および「他の群」において、1年目(+9.3対+7.2文字;P=0.22)および2年目(9.0対6.1文字;P=0.17)で同等であった。「B50群」の平均病変サイズは、1年目と2年目のいずれも1.2 DA減少(主に出血の回復による。)し、「その他の群」では1年目に0.33 DA、2年目に0.91 DA増加した(P<0.001)。著者らは、「B50群」は「他の群」と同様の視覚予後を有していると結論付けた。病変サイズは2年間で著しく減少した。50%を超える血液で構成される血管新生性AMD病変を有する、CATTに登録されたもののような眼は、血液が少ないかまたは全くないものと同様に管理することができる。[Altaweel MMら、Ophthalmology.2015 122(2):391-398]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Rosenfeldら、N Engl J Med 2006,355:1419-1431
【文献】Brownら、N Engl J Med 2006,355:1432-1444
【文献】Heierら、Ophthalmology 2012,119:2537-2548
【文献】Regilloら、Am J Ophthalmol 2008,145:239-248
【文献】Altaweel MMら、Ophthalmology.2015 122(2):391-398
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
しかし、血液で構成される病変を50%を超えて有する上記の評価された亜集団は、本出願(実施例1)に記載された調査の全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変を有する患者の亜集団と同等ではない。
【0009】
本発明によれば、次のwAMDの2つのサブタイプが存在する:(I)小さい活動性CNV病変-wAMDのタイプ、または(II)活動性主体型(predominantly active)CNV病変-wAMDのタイプ。病変の位置は、中心窩に影響を及ぼす中心窩下または傍中心窩であり得る。病変のタイプは、クラシック主体、最小限のクラシックまたはオカルトを含むすべてのサブタイプであり得る。
【0010】
2つのタイプのwAMDの用語は暫定的(preliminary)である。「小さい活動性CNV病変-wAMDのタイプ」の代替用語は以下を含んでもよい:
1)「sCNV wAMD」
2)「小さい活動性CNVを有するwAMD」
3)「活動性CNVが減少したwAMD」
4)「CNVがより少ないwAMD」
5)「非CNV関連のwAMD」
6)「wAMDタイプ1」
7)「wAMDタイプ2」
8)「wAMDタイプX」(Xは任意の数字、文字または両方の組み合わせ)。
【0011】
列記した「活動性CNVが減少した-wAMDのタイプ」の代替用語1~8のもと、「wAMD」の代替用語は以下があり得る:
a.「湿潤AMD」
b.「血管新生性AMD」
c.「nAMD」
d.「滲出型AMD」
e.「eAMD」
【0012】
「活動性主体型CNV病変-wAMDのタイプ」の代替用語は以下を含んでもよい:
1)「pCNV wAMD」
2)「活動性CNVを主体とするwAMD」
3)「活動性CNVを有するwAMD」
4)「大きな活動性CNVを有するwAMD」
5)「CNV関連wAMD」
6)「wAMDタイプ1」
7)「wAMDタイプ2」
8)「wAMDタイプX」(Xは任意の数字、文字または両方の組み合わせ)。
【0013】
列記した「活動性CNVが減少した-wAMDのタイプ」の代替用語1~8のもと、「wAMD」の代替用語は以下があり得る
a.「湿潤AMD」
b.「血管新生性AMD」
c.「nAMD」
d.「滲出型AMD」
e.「eAMD」
【0014】
以下では、「sCNV wAMD」および「pCNV wAMD」という用語が使用される。
【0015】
活動性CNV病変の存在およびそれによるwAMDの診断は、通常、蛍光血管造影(FA)によって確認されるが、2つのwAMDタイプは、以下の通り区別することができる:
1)「sCNV wAMD」は、全病変サイズの50%未満を占める活動性CNV病変を特徴とする
2)「pCNV wAMD」は、全病変サイズの少なくとも50%を占める活動性CNV病変を特徴とする。
【0016】
病変の位置は、中心窩に影響を及ぼす中心窩下または傍中心窩であり得る。病変のタイプは、クラシック主体、最小限のクラシックまたはオカルトを含むすべてのサブタイプであり得る。
【0017】
活動性CNV病変のサイズならびに全病変サイズは、MPSプロトコル[Macular Photocoagulation Study Group,Arch Ophthalmol 1991,109:1242-1257]に記載の通り、蛍光血管造影(FA)を用いて測定される。
【0018】
本発明では、CNV病変の小さい活動性部分を有する病変(全病変サイズの50%未満;「sCNV wAMD」)が、抗VEGF治療、すなわちアフリベルセプトまたはPDTを用いる治療に良好に反応することが示されている。この結論は、アフリベルセプトまたはV(登録商標)-PDTの硝子体内注射のいずれかで治療された、「sCNV wAMD」および「pCNV wAMD」を有する患者の臨床試験での観察に基づく。驚くべきことに、「sCNV wAMD」患者の視力によって測定されるアフリベルセプト治療に対する反応は、「pCNV wAMD」患者の反応に対して数値的に高かった。これは、CNV病変の大きな活動性部分を有する病変が、CNV病変の小さい活動性部分を有する病変よりも、抗VEGF治療の漏出防止作用に対してより受容性があると推定されるため、予想されていなかった。さらに、「sCNV wAMD」患者のV(登録商標)-PDT治療に対する反応は、「pCNV wAMD」患者の反応に対して数値的に高く、これも予想されていなかった。
【0019】
本発明によれば、「sCNV wAMD」を有する患者の治療にも、wAMDの治療を用いることができる。「sCNV wAMD」を有する患者のこのような治療は次の通りでもよい:
1)wAMDの治療と同様の硝子体内抗VEGF単独療法であるが、抗VEGF療法は、眼内の遊離VEGFを減弱させることを目的とした認可された治療および認可されていない治療すべてを指す。これには、特にアフリベルセプト、ラニビズマブ、ベバシズマブ、KH-902およびペガプタニブが含まれるが、これらの化合物に限定されない。抗VEGF治療は、以下の治療スケジュールにしたがって施すことができる:
a.毎月の硝子体内注射3回または4週間ごとの硝子体内注射3回、続いて隔月または4週間ごとに投与し、後の治療段階は、さらに治療間隔を延ばす選択肢あり、またはなしで投与する。
b.視力および/または網膜形態(例えば、OCT、フルオレセイン血管造影、インドシアニン血管造影、眼底検査などによって評価される。)まで治療が安定化し、続いて治療を中止する。視力および/または網膜形態の悪化時に治療を再開。
c.必要に応じて(pro-re-nata-「PRN」)任意のレジメン
d.任意の治療および延長レジメン
e.wAMDの治療に使用されている、または使用された他の任意の治療レジメン
【0020】
2)以下の治療のうちの1つまたは複数の療法。1つを超える治療が使用される場合、それらは同時に、または順次使用されてもよい。
a.1)に記載の抗VEGF治療
b.Visudyne(登録商標)(V(登録商標)-PDT)を用いる光線力学療法の単回または反復適用
c.徐放性製剤またはデポー製剤(例えば、Ozurdex(登録商標)、トリアムシノロン、デキサメタゾン、Iluvien(登録商標)など)を含むステロイドの単回または反復適用(すべての利用可能な局所または全身投与経路)
d.放射線療法
e.閾値以下の治療を含む熱レーザー療法
f.外科療法
g.薬理学的な硝子体液化(pharmacological vitreolysis)(例えば、Jetria(登録商標)あるいは他の認可された薬剤または認可されていない薬剤による)
h.全身的または局所的に適用されるチロシンキナーゼの阻害剤
i.全身的または局所的に適用されるVEGF受容体の阻害剤
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ベースラインにおいて全病変サイズの50%以上の活動性CNV病変を有する被験者における訪問によるETDRS BCVA文字数スコアのベースラインからの平均変化を示す図である。第1週(V3)4週(V4)、第8週(V5)、第12週(V6)、第16週(V7)、第20週(V8)、第24週(V9)、第28週(V10)、第32週(訪問11)、第36週(訪問12)、第40週(訪問13)、第44週(訪問14)、第28週(訪問15)、第52週(訪問16)における、ETDRSにより測定したBCVAスコア(文字数)のベースラインからの平均変化が、VTE2Q8群(実線と菱形)およびPDT→VTE群(点線と四角)について示されている。第28週(V10)のBCVAスコアのベースラインからの平均変化は、VTE2Q8群では12.7、PDT→VTE群では1.5である。第52週のBCVAスコアのベースラインからの平均変化は、VTE2Q8群では14.0、PDT→VTE群では6.4である。
図2】ベースラインにおいて全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変を有する被験者における訪問によるETDRS BCVA文字数スコアのベースラインからの平均変化を示す図である。第1週(V3)4週(V4)、第8週(V5)、第12週(V6)、第16週(V7)、第20週(V8)、第24週(V9)、第28週(V10)、第32週(訪問11)、第36週(訪問12)、第40週(訪問13)、第44週(訪問14)、第28週(訪問15)、第52週(訪問16)における、ETDRSにより測定したBCVAスコア(文字数)のベースラインからの平均変化が、VTE2Q8群(実線と菱形)およびPDT→VTE群(点線と四角)について示されている。第28週(V10)のBCVAスコアのベースラインからの平均変化は、VTE2Q8群では16.7、PDT→VTE群では8.0である。第52週(V10)のBCVAスコアのベースラインからの平均変化は、VTE2Q8群では18.1、PDT→VTE群では13.4である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施例1
加齢性血管新生または湿潤加齢性黄斑変性症を有する合計304人の中国人被験者を無作為化二重盲検臨床試験に登録して、V(登録商標)-PDTと比較した硝子体内(IVT)投与したアフリベルセプトの有効性を、BCVA(最高矯正視力)のベースラインからの平均変化で第28週まで評価した。試験眼のBCVAを、加齢性眼疾患調査(Age Related Eye Disease Study)(AREDS)に適合させたETDRS(早期治療糖尿病性網膜症調査(Early Treatment Diabetic Retinopathy Study))のために開発された標準的な手順にしたがって評価した。重要な組み入れ基準は以下の通りであった。
署名し、日付を入れた書面によるICF。
50歳以上の男性と女性。
試験眼においてフルオレセイン蛍光眼底造影(FA)によって明らかになる、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変
ETDRSの試験眼の最高矯正視力(BCVA)は73~25文字(試験眼のスネレン等価視力は20/40~20/320)。

【0023】
試験眼に適用される以下の重要な除外基準:
全病変サイズは、FAによって評価される12の乳頭領域(30.5mm2、血液、瘢痕および新生血管を含む。)より大きい。
網膜下出血は全病変領域の50%以上であるか、または血液が中心窩の下にある場合、1つまたは複数の乳頭領域のサイズである。(血液が中心窩の下にある場合、中心窩は目に見えるCNVによって270度囲まれていなければならない)
wAMD以外の起源を持つCNVの存在。糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫またはwAMD以外の何らかの網膜血管疾患の病歴または臨床的証拠。ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)を有する被験者を除外するために、特に注意が払われるべきである。
実質的に不可逆的な視力喪失を示す中心窩を含む瘢痕、線維症または萎縮症の存在。
網膜色素上皮断裂または黄斑に関与する裂け目の存在。
【0024】
適格な患者は3:1に無作為化され、アフリベルセプト(VTE)2Q8またはV(登録商標)-PDT(228 VTE+76 PDT)が投与された。50%以上の活動性CNV病変を有する患者194人(147 VTE2Q8+47 PDT)および50%未満の活動性CNV病変を有する患者106人(78 VTE2Q8+28 PDT)が含まれていた。病変サイズは、MPSプロトコル[Macular Photocoagulation Study Group,Arch Ophthalmol 1991,109:1242-1257]に基づき、セントラルリーディングセンターにより測定された。活動性CNVのサイズ、CNVの面積(mm2)ならびに全病変サイズをFAを用いて測定した。中心網膜厚は、光干渉断層撮影により測定した。VTE2Q8群では、ベースライン、第4週、第8週、第16週、第24週、第32週、第40週および第48週に硝子体内投与された2mg(0.05mL)のアフリベルセプトで患者を治療した。PDT群では、第12週および第24週に、ベースラインにおいてV(登録商標)-PDTを実施し、wAMDにおけるPDT治療の利用のガイドライン[Verteporfin Roundtable Participants,Retina.2005;25(2):119-34]にしたがって、可能性のあるPDT再治療を実施した。第28週に、一次および二次エンドポイントの評価後、PDT→VEGF Trap-Eye群の被験者にはVEGF Trap-Eye 2.0mgをIVT注射し、その後、第32週、第36週、第40週および第48週にさらにVEGF Trap-Eye 2.0mgをIVT注射した。
【0025】
ベースラインからの平均変化のBCVA文字数スコアは、調査集団全体において、活動性CNV病変サイズに関わらず、第28週にVTE2Q8群が14.0(-29~59)、PDT群が3.9(-36~43)(P<0.0001)と、アフリベルセプト2mgの硝子体内注射はV(登録商標)-PDTより優れていた。アフリベルセプト2mgの硝子体内注射は、全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変を有する患者にとって有効な治療であった(第28週のBCVAのベースラインからの平均変化:16.7(-21~59)。図2参照。)が、これは、全病変サイズの50%以上の活動性CNV病変を有する患者の治療結果(第28週のBCVAのベースラインからの平均変化:12.7(-29~40)。図1参照。)と同等であった。V(登録商標)-PDTの治療有効性は、全病変サイズの50%以上の活動性CNV病変を有する患者(第28週のBCVAのベースラインからの平均変化:1.5(-36~27)。図1参照。)よりも、全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変を有する患者(第28週のBCVAのベースラインからの平均変化:8.0(-18~43)、図2参照。)において数値的に高い。
【0026】
概して、他の有効性パラメータの大部分では、VTE2Q8およびV(登録商標)-PDTで治療された両方の患者について、全病変サイズの50%以上の活動性CNV病変を有する患者と比較して、全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変を有する患者において、より好ましい結果が観察された(表1)。
【0027】
【表1A】
【表1B】
【0028】
【表2】
図1
図2