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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】ALDCの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/02 20060101AFI20230728BHJP
   C12N 9/48 20060101ALI20230728BHJP
   C12N 9/50 20060101ALI20230728BHJP
   C12N 9/88 20060101ALI20230728BHJP
   C12N 1/21 20060101ALN20230728BHJP
   C12N 9/00 20060101ALN20230728BHJP
   C12N 15/60 20060101ALN20230728BHJP
   C12N 15/75 20060101ALN20230728BHJP
   C12R 1/08 20060101ALN20230728BHJP
   C12R 1/10 20060101ALN20230728BHJP
   C12R 1/125 20060101ALN20230728BHJP
   C12R 1/13 20060101ALN20230728BHJP
   C12R 1/245 20060101ALN20230728BHJP
【FI】
C12P21/02 C
C12N9/48
C12N9/50
C12N9/88
C12N1/21
C12N9/00
C12N15/60 ZNA
C12N15/75 Z
C12N9/00
C12R1:08
C12R1:10
C12R1:125
C12R1:13
C12R1:245
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2017560530
(86)(22)【出願日】2016-05-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-06-21
(86)【国際出願番号】 US2016033043
(87)【国際公開番号】W WO2016191170
(87)【国際公開日】2016-12-01
【審査請求日】2018-11-12
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】62/165,690
(32)【優先日】2015-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/166,616
(32)【優先日】2015-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/168,415
(32)【優先日】2015-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513207806
【氏名又は名称】デュポン ニュートリション バイオサイエンシス エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(72)【発明者】
【氏名】クラマー、ヤコブ・フリブホルム
(72)【発明者】
【氏名】イェンセン、レネ・ボイセン
(72)【発明者】
【氏名】ケレットスミス、アーニャ・ヘミングセン
(72)【発明者】
【氏名】ラーセン、ビャーネ
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】福井 悟
【審判官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101948821(CN,A)
【文献】国際公開第2012/127002(WO,A1)
【文献】Metabolic Enginerring,2011年5月3日,Vol.13,p.364-372
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C12P21/00-21/08
C12N9/00-9/99
CAPLUS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Uniprot/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ai)7種の内因性プロテアーゼ遺伝子を欠損するバチルス(Bacillus)宿主細胞であって、3種の遺伝子の欠損は、親細胞と比較して低減された量の、内因性細胞外セリンプロテアーゼ(vpr)、内因性主要細胞内セリンプロテアーゼ酵素(IspA)、および細胞壁プロテアーゼ(wprA)を前記宿主細胞に産生させる遺伝子変異である、バチルス(Bacillus)宿主細胞を用意する工程であって、前記宿主細胞は、プロモーターと作動可能に結合した異種ALDC酵素をコードする核酸で形質転換されている、工程;および
ii)前記異種ALDC酵素の産生に好適な条件下で前記宿主細胞を培養する工程であって、それにより前記異種ALDC酵素が産生される、工程;または
Bi)7種の内因性プロテアーゼ遺伝子を欠損するバチルス(Bacillus)宿主細胞であって、3種の遺伝子の欠損は、親細胞と比較して低減された量の内因性細胞外セリンプロテアーゼ(vpr)、内因性主要細胞内セリンプロテアーゼ酵素(IspA)、および細胞壁プロテアーゼ(wprA)を前記宿主細胞に産生させる遺伝子変異である、バチルス(Bacillus)宿主細胞を用意する工程であって、前記宿主細胞は、前記宿主細胞に、ALDC酵素をコードする内因性核酸配列を前記親細胞と比較して過剰に発現させる核酸で形質転換されている、工程;および
ii)ALDC酵素の産生に好適な条件下で前記宿主細胞を培養する工程であって、それによりALDC酵素が産生される、工程
を含み、
前記遺伝子変異は、内因性主要細胞内セリンプロテアーゼ酵素(IspA)をコードするゲノムDNAの欠損を含む、アセト乳酸デカルボキシラーゼ(ALDC)酵素を製造する方法。
【請求項2】
前記産生されたALDC酵素を回収する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バチルス(Bacillus)宿主細胞は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記バチルス(Bacillus)宿主細胞は、内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Epr)をさらに欠失している、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記バチルス(Bacillus)宿主細胞は、内因性バシロペプチダーゼF酵素(Bpr)をさらに欠失している、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記バチルス(Bacillus)宿主細胞は、中性メタロプロテアーゼ酵素(NprE)を欠失している、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記宿主細胞は、内因性セリンアルカリプロテアーゼ酵素(AprE)をさらに欠失している、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記宿主細胞は、内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Vpr)をさらに欠失している、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記宿主細胞は、内因性細胞壁関連プロテアーゼ酵素(WprA)をさらに欠失している、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記宿主細胞は、低減された量の、ampS、aprX、bpf、clpCP、clpEP、clpXP、codWX、lonA、lonB、nprB、map、mlpA、mpr、pepT、pepF、dppA、yqyE、tepA、yfiT、yflG、ymfF、ypwA、yrrN、yrrOおよびywaDからなる群から選択される1種以上の追加のプロテアーゼをさらに有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記遺伝子変異は、前記親細胞に存在する遺伝子の破壊を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記破壊は、前記遺伝子の全部または一部の欠損の結果である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記遺伝子の破壊は、前記遺伝子を含むゲノムDNAの一部の欠損の結果である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記遺伝子の破壊は、変異誘発の結果である、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記遺伝子の破壊は、部位特異的組み換えを用いて行われる、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記遺伝子の破壊は、前記遺伝子の遺伝子座への選択マーカーの導入と組み合わされて行われる、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ALDC酵素は、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ブレビバクテリウム・アセチリカム(Brevibacterium acetylicum)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ロイコノストック・ラクティス(Leuconostoc lactis)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)DXまたはバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)に由来する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ALDC酵素は、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)またはバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)に由来する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ALDC酵素は、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7および配列番号8から選択されるいずれか1つと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
プロモーターと作動可能に結合した異種ALDC酵素をコードする核酸を含み、7種の内因性プロテアーゼ遺伝子を欠損するバチルス(Bacillus)宿主細胞であって、3種の遺伝子の欠損は、親細胞と比較して低減された量の、内因性細胞外セリンプロテアーゼ(vpr)、内因性主要細胞内セリンプロテアーゼ酵素(IspA)、および細胞壁プロテアーゼ(wprA)を前記宿主細胞に産生させる遺伝子変異であり、前記遺伝子変異は、内因性主要細胞内セリンプロテアーゼ酵素(IspA)をコードするゲノムDNAの欠損を含み、前記宿主細胞に、ALDC酵素をコードする内因性核酸配列を親細胞と比較して過剰に発現させる核酸を含む、バチルス(Bacillus)宿主細胞。
【請求項21】
前記バチルス(Bacillus)宿主細胞は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である、請求項20に記載のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
【請求項22】
前記宿主細胞は、低減された量の内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Epr)をさらに有する、請求項20または21に記載のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
【請求項23】
前記宿主細胞は、低減された量の内因性バシロペプチダーゼF酵素(Bpr)をさらに有する、請求項20~22のいずれか一項に記載のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
【請求項24】
前記宿主細胞は、低減された量の中性メタロプロテアーゼ酵素(NprE)をさらに有する、請求項20~23のいずれか一項に記載のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
【請求項25】
前記宿主細胞は、低減された量の内因性セリンアルカリプロテアーゼ酵素(AprE)をさらに有する、請求項20~24のいずれか一項に記載のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
【請求項26】
前記宿主細胞は、低減された量の内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Vpr)をさらに有する、請求項20~25のいずれか一項に記載のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
【請求項27】
前記宿主細胞は、低減された量の内因性細胞壁関連プロテアーゼ酵素(WprA)をさらに有する、請求項20~26のいずれか一項に記載のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
【請求項28】
前記宿主細胞は、低減された量の、ampS、aprX、bpf、clpCP、clpEP、clpXP、codWX、lonA、lonB、nprB、map、mlpA、mpr、pepT、pepF、dppA、yqyE、tepA、yfiT、yflG、ymfF、ypwA、yrrN、yrrOおよびywaDからなる群から選択される1種以上の追加のプロテアーゼをさらに有する、請求項20~27のいずれか一項に記載のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
【請求項29】
前記ALDC酵素は、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ブレビバクテリウム・アセチリカム(Brevibacterium acetylicum)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ロイコノストック・ラクティス(Leuconostoc lactis)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)DXまたはバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)に由来する、請求項20~28のいずれか一項に記載のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
【請求項30】
前記ALDC酵素は、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)またはバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)に由来する、請求項20~29のいずれか一項に記載のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
【請求項31】
前記ALDC酵素は、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7および配列番号8から選択されるいずれか1つと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項20~30のいずれか一項に記載のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2015年5月22日に出願された米国仮特許出願第62/165690号明細書、2015年5月26日に出願された米国仮特許出願第62/166616号明細書および2015年5月29日に出願された米国仮特許出願第62/168415号明細書の優先権および利益を主張するものであり、各仮特許出願の名称は「ALDC方法」である。
【0002】
配列表の参照による組み込み
2016年5月5日に作成され、本明細書に添付される、16,795バイトのサイズを有する「20160505_NB40737_PCT_SEQS_ST25.txt」という名称のファイルで提供される配列表は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
ジアセチルは、場合により、炭水化物を含有する基質、例えば、麦汁またはブドウ果汁の発酵プロセスの望ましくない副生物となることがある。ジアセチルの生成は、その強く不快な臭いのために最も不都合であり、ビールの場合、約0.10~0.15mg/リットルという少量でもビールの風味に負の効果をもたらす。ビールの熟成中、ジアセチルは酵母細胞中の還元酵素によってアセトインに変わる。風味に関し、アセトインは、ビールではジアセチルよりかなり高濃度でも許容可能である。
【0004】
アセト乳酸デカルボキシラーゼ(ALDC)もジアセチルの生成を防ぐ酵素として使用することができる。α-アセト乳酸は、発酵中、ALDC酵素を添加することにより、アセトインに変換することができる。しかしながら、ALDCは発酵条件下で、特に麦芽量の少ない発酵条件下で不安定であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、より良好な安定性および/または活性を有するALDC酵素を提供することであり、任意選択により、微生物から回収し得るALDC酵素の収量が改善される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、ALDC酵素のための組成物および方法を提供する。
【0007】
これらの組成物および方法の態様および実施形態を、以下の個別に番号を付した段落に記載する。
1.
Ai)バチルス(Bacillus)宿主細胞であって、親細胞と比較して低減された量の内因性細胞外セリンプロテアーゼ(vpr)および/または細胞壁プロテアーゼ(wprA)を宿主細胞に産生させる遺伝子変異を含む、バチルス(Bacillus)宿主細胞を用意する工程であって、その宿主細胞は、プロモーターと作動可能に結合した異種ALDC酵素をコードする核酸で形質転換されている、工程;および
ii)異種ALDC酵素の産生に好適な条件下で宿主細胞を培養する工程であって、それにより異種ALDC酵素が産生される、工程;または
Bi)バチルス(Bacillus)宿主細胞であって、親細胞と比較して低減された量の内因性細胞外セリンプロテアーゼ(vpr)および/または細胞壁プロテアーゼ(wprA)を宿主細胞に産生させる遺伝子変異を含む、バチルス(Bacillus)宿主細胞を用意する工程であって、その宿主細胞は、宿主細胞に、ALDC酵素をコードする内因性核酸配列を親細胞と比較して過剰に発現させる核酸で形質転換されている、工程;および
ii)ALDC酵素の産生に好適な条件下で宿主細胞を培養する工程であって、それによりALDC酵素が産生される、工程
を含む、アセト乳酸デカルボキシラーゼ(ALDC)酵素を製造する方法。
2.産生されたALDC酵素を回収する工程をさらに含む、段落1の方法。
3.バチルス(Bacillus)宿主細胞は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である、段落1または2の方法。
4.バチルス(Bacillus)宿主細胞は、内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Epr)をさらに欠失している、段落1~3のいずれか1つの方法。
5.バチルス(Bacillus)宿主細胞は、内因性主要細胞内セリンプロテアーゼ酵素(IspA)および/または内因性バシロペプチダーゼ(bacillopeptidase)F酵素(Bpr)をさらに欠失している、段落1~4のいずれか1つの方法。
6.バチルス(Bacillus)宿主細胞は、中性メタロプロテアーゼ酵素(NprE)を欠失している、段落1~5のいずれか1つの方法。バチルス(Bacillus)宿主細胞は、内因性中性メタロプロテアーゼ酵素(NprE)を欠失している、段落6の方法。
7.宿主細胞は、内因性セリンアルカリプロテアーゼ酵素(AprE)をさらに欠失している、段落1~6のいずれか1つの方法。
8.宿主細胞は、内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Vpr)をさらに欠失している、段落1~7のいずれか1つの方法。
9.宿主細胞は、内因性細胞壁関連プロテアーゼ酵素(WprA)をさらに欠損している、段落1~8のいずれか1つの方法。
10.宿主は、低減された量の、ampS、aprX、bpf、clpCP、clpEP、clpXP、codWX、lonA、lonB、nprB、map、mlpA、mpr、pepT、pepF、dppA、yqyE、tepA、yfiT、yflG、ymfF、ypwA、yrrN、yrrOおよびywaDからなる群から選択される1種以上の追加のプロテアーゼをさらに有する、段落1~9のいずれか1つの方法。宿主は、低減された量の、ampS、aprX、bpf、clpCP、clpEP、clpXP、codWX、lonA、lonB、nprB、map、mlpA、mpr、pepT、pepF、dppA、yqyE、tepA、yfiT、yflG、ymfF、ypwA、yrrN、yrrO、およびywaDからなる群から選択される1種以上の追加の内因性プロテアーゼをさらに有する、段落1~9のいずれか1つの方法。
11.遺伝子変異は、親細胞に存在する遺伝子の破壊を含む、段落1~10のいずれか1つの方法。
12.破壊は、遺伝子の全部または一部の欠損の結果である、段落11の方法。
13.遺伝子の破壊は、遺伝子を含むゲノムDNAの一部の欠損の結果である、段落11の方法。
14.遺伝子の破壊は、変異誘発の結果である、段落11~13のいずれか1つの方法。
15.遺伝子の破壊は、部位特異的組み換えを用いて行われる、段落11~14のいずれか1つの方法。
16.遺伝子の破壊は、遺伝子の遺伝子座への選択マーカーの導入と組み合わされて行われる、段落11~15のいずれか1つの方法。
17.ALDC酵素は、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ブレビバクテリウム・アセチリカム(Brevibacterium acetylicum)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ロイコノストック・ラクティス(Leuconostoc lactis)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・ブレビス(Bacillu sbrevis)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)DXまたはバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)に由来する、段落1~16のいずれか1つの方法。
18.ALDC酵素は、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)またはバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)に由来する、段落1~17のいずれか1つの方法。
19.ALDC酵素は、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7および配列番号8、またはそれらのいずれかの機能的断片から選択されるいずれか1つと少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、段落1~18のいずれか1つの方法。
20.プロモーターと作動可能に結合した異種ALDC酵素をコードする核酸を含むバチルス(Bacillus)宿主細胞であって、親細胞と比較して低減された量の内因性細胞外セリンプロテアーゼ(vpr)および/もしくは細胞壁プロテアーゼ(wprA)を宿主細胞に産生させる遺伝子変異を含む、バチルス(Bacillus)宿主細胞、またはバチルス(Bacillus)宿主細胞であって、親細胞と比較して低減された量の内因性細胞外セリンプロテアーゼ(vpr)および/もしくは細胞壁プロテアーゼ(wprA)を宿主細胞に産生させる遺伝子変異を含み、宿主細胞に、ALDC酵素をコードする内因性核酸配列を親細胞と比較して過剰に発現させる核酸を含む、バチルス(Bacillus)宿主細胞。
21.バチルス(Bacillus)宿主細胞は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である、段落20のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
22.宿主は、低減された量の内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Epr)をさらに有する、段落20または段落21のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
23.宿主は、低減された量の内因性主要細胞内セリンプロテアーゼ酵素(IspA)および/または内因性バシロペプチダーゼF酵素(Bpr)をさらに有する、段落20~22のいずれか1つのバチルス(Bacillus)宿主細胞。
24.宿主は、低減された量の中性メタロプロテアーゼ酵素(NprE)をさらに有する、段落20~23のいずれか1つのバチルス(Bacillus)宿主細胞。宿主は、低減された量の内因性中性メタロプロテアーゼ酵素(NprE)をさらに有する、段落20~23のいずれか1つのバチルス(Bacillus)宿主細胞。
25.宿主は、低減された量の内因性セリンアルカリプロテアーゼ酵素(AprE)をさらに有する、段落20~24のいずれか1つのバチルス(Bacillus)宿主細胞。
26.宿主細胞は、低減された量の内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Vpr)をさらに有する、段落20~25のいずれか1つのバチルス(Bacillus)宿主細胞。
27.宿主細胞は、低減された量の内因性細胞壁関連プロテアーゼ酵素(WprA)をさらに有する、段落20~26のいずれか1つのバチルス(Bacillus)宿主細胞。
28.宿主は、低減された量の、ampS、aprX、bpf、clpCP、clpEP、clpXP、codWX、lonA、lonB、nprB、map、mlpA、mpr、pepT、pepF、dppA、yqyE、tepA、yfiT、yflG、ymfF、ypwA、yrrN、yrrOおよびywaDからなる群から選択される1種以上の追加のプロテアーゼをさらに有する、段落20~27のいずれか1つのバチルス(Bacillus)宿主細胞。宿主は、低減された量の、ampS、aprX、bpf、clpCP、clpEP、clpXP、codWX、lonA、lonB、nprB、map、mlpA、mpr、pepT、pepF、dppA、yqyE、tepA、yfiT、yflG、ymfF、ypwA、yrrN、yrrOおよびywaDからなる群から選択される1種以上の追加の内因性プロテアーゼをさらに有する、段落20~27のいずれか1つのバチルス(Bacillus)宿主細胞。
29.ALDC酵素は、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ブレビバクテリウム・アセチリカム(Brevibacterium acetylicum)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ロイコノストック・ラクティス(Leuconostoc lactis)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)DXまたはバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)に由来する、段落20~28のいずれか1つのバチルス(Bacillus)宿主細胞。
30.ALDC酵素は、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)またはバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)に由来する、段落20~29のいずれか1つのバチルス(Bacillus)宿主細胞。
31.ALDC酵素は、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7および配列番号8、またはそれらのいずれかの機能的断片から選択されるいずれか1つと少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、段落20~30のいずれか1つのバチルス(Bacillus)宿主細胞。
32.プロモーターと作動可能に結合した異種ALDC酵素をコードする核酸を含むバチルス(Bacillus)宿主細胞であって、親細胞と比較して低減された量の内因性細胞外セリンプロテアーゼ、および/もしくは細胞壁プロテアーゼ、および/もしくはALDC酵素のC末端から配列を切断することができる中性メタロプロテアーゼを宿主細胞に産生させる遺伝子変異を含む、バチルス(Bacillus)宿主細胞、またはバチルス(Bacillus)宿主細胞であって、親細胞と比較して低減された量の内因性細胞外セリンプロテアーゼ、および/もしくは細胞壁プロテアーゼ、および/もしくは前記ALDC酵素のC末端から配列を切断することができる中性メタロプロテアーゼを宿主細胞に産生させる遺伝子変異を含み、宿主細胞に、ALDC酵素をコードする内因性核酸配列を親細胞と比較して過剰に発現させる核酸を含む、バチルス(Bacillus)宿主細胞。
33.ALDC酵素は、バチルス・ブレビス(B.brevis)AldBであり、かつC末端の配列は、QVHQAESERKである、段落32の宿主細胞。ALDC酵素は、バチルス・ブレビス(B.brevis)AldBであり、かつこのプロテアーゼは、前記ALDC酵素の前記C末端から配列QVHQAESERK(配列番号9)を切断することができる、段落32の宿主細胞。
34.バチルス(Bacillus)宿主細胞は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である、段落32のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
35.プロモーターと作動可能に結合した異種ALDC酵素をコードする核酸を含むバチルス(Bacillus)宿主細胞であって、親細胞と比較して低減された量のプロテアーゼを宿主細胞に産生させる遺伝子変異を含み、そのプロテアーゼは、ALDC酵素のC末端および/もしくはN末端を開裂することができる、バチルス(Bacillus)宿主細胞、またはバチルス(Bacillus)宿主細胞であって、親細胞と比較して低減された量のプロテアーゼを宿主細胞に産生させる遺伝子変異を含み、そのプロテアーゼは、ALDC酵素のC末端および/もしくはN末端を開裂することができ、その宿主細胞は、宿主細胞に、ALDC酵素をコードする内因性核酸配列を親細胞と比較して過剰に発現させる核酸を含む、バチルス(Bacillus)宿主細胞。
36.バチルス(Bacillus)宿主細胞は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である、段落35のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
37.プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するC末端の275位で開裂することができる、段落35または36のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
38.プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するC末端の276位で開裂することができる、段落35または36のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
39.プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するN末端の37位で開裂することができる、段落35または36のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
40.プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するN末端の38位で開裂することができる、段落35または36のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
41.プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するN末端の39位で開裂することができる、段落35または36のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
42.プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するN末端の40位で開裂することができる、段落35または36のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
43.プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するN末端の42位で開裂することができる、段落35または36のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
44.プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するN末端の43位で開裂することができる、段落35または36のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
45.プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するN末端の39位で開裂することができる、段落35または36のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
46.ALDC酵素は、配列番号5、配列番号2または配列番号7と少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含む、段落35~45のいずれか1つのバチルス(Bacillus)宿主細胞。
47.ALDC酵素は、バチルス・ブレビス(B.brevis)AldBであり、かつC末端の配列は、QVHQAESERKである、段落35~46のいずれか1つのバチルス(Bacillus)宿主細胞。前記ALDC酵素は、バチルス・ブレビス(B.brevis)AldBであり、かつこのプロテアーゼは、前記ALDC酵素の前記C末端から配列QVHQAESERKを開裂することができる、段落35~46のバチルス(Bacillus)宿主細胞。
48.プロテアーゼは、中性メタロプロテアーゼである、段落35~47のいずれか1つのバチルス(Bacillus)宿主細胞。
49.プロテアーゼは、サーモリシンである、段落35~48のいずれか1つのバチルス(Bacillus)宿主細胞。
【0008】
本発明の特徴および利点は、本発明の原理を用いた実施形態を記載する以下の詳細な説明、および以下の添付図面により、より深く理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】アセト乳酸デカルボキシラーゼ、aldBを発現させるためのプラスミドマップを示す。
図2】アセト乳酸デカルボキシラーゼ、aldBを発現させるためのRIHI-aldBのプラスミドマップを示す。
図3】バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)株において様々な時点で発現したaldBの切断変異体を示すSDS-PAGEを示し、同定されたAldB変異体はドットでマークされている。レーン:1)24時間、2-欠損株、2)24時間、5-欠損株、3)24時間、7-欠損株、4)48時間、2-欠損株、5)48時間、5-欠損株、6)48時間、7-欠損株、7)72時間、2-欠損株、8)72時間、5-欠損株および9)72時間、7-欠損株。
図4】40℃でのインキュベーション2日後(左)および10日後(右)の2-欠損、5-欠損および7-欠損バチルス(Bacillus)株の2つのカゼインスポットプレートアッセイを示す。プロテアーゼ活性後、ホワイトハロー形成を行ってもよい。プレートにラベルを記載し、バチルス・サブチリス(B.subtilis)由来の中性プロテアーゼをポジティブコントロールとして使用し、バッファをネガティブコントロールとして使用した。
図5】各種の宿主細胞由来のaldB酵素:A)2-欠損株由来のaldB、B)5-欠損株由来のaldBおよびC)7-欠損株由来のaldBの存在下または非存在下での3種の個々の麦芽を使用した発酵におけるビシナルジケトン(VDK)の相対的生成を示す。比較のため、計算により算出されたVDK含有量(ジアセチルと2,3-ペンタンジオンとの合計と定義される)を、酵素を含まないコントロール試料で得られた最高値に正規化した(100%)。全てのaldB酵素に類似のALDC活性0.04U/ml-麦汁を与えた。14℃で8日間の発酵中、VDKの生成を追った。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、より良好な安定性および/または活性を有するALDC酵素を含み、任意選択により、微生物から回収し得るALDC酵素の収量が改善される、方法、組成物、装置およびキットを提供する。
【0011】
特に定義しない限り、本明細書において使用する全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同一の意味を有する。Singleton,et al.,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY,20 ED.,John Wiley and Sons,New York(1994)、およびHale&Marham,THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY,Harper Perennial,NY(1991)は、本開示で使用される用語の多くの一般辞書を当業者に提供する。
【0012】
本開示は、本明細書に開示の例示的な方法および材料により限定されず、本明細書に記載のものと類似のまたは均等な任意の方法および材料を本開示の実施形態の実施または試験において使用することができる。数値範囲には、範囲を定義する数字が含まれる。特に明記しない限り、核酸配列はいずれも左から右に5’から3’に向けて記載され;アミノ酸配列は、左から右にアミノ基からカルボキシ基に向けてそれぞれ記載される。
【0013】
本明細書において提供される見出しは、本明細書を全体として参照することにより有し得る本開示の種々の態様にも実施形態にも限定されない。したがって、この直下に定義した用語は、本明細書全体を参照することにより、より十分に定義される。
【0014】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上特に明記されない限り、複数形の指示対象も含むことに留意しなければならない。したがって、例えば、「プロテアーゼ」への言及は、そのような酵素を複数種含み、「食事」への言及は、1食分以上の食事および当業者に知られたその均等物を含む。
【0015】
本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日よりも先に開示されているという意味でのみ提供される。本明細書において、このような刊行物が本明細書に添付の特許請求の範囲に対する先行技術を構成することの容認と解釈すべきでない。
【0016】
本明細書で言及する特許および刊行物は全て参照により組み込まれる。
【0017】
ALDC
いくつかの態様において、本発明は、より良好な安定性および/または活性を有するALDC酵素を提供し、任意選択により、微生物から回収し得るALDC酵素の収量が改善される。
【0018】
アセト乳酸デカルボキシラーゼ(ALDC)は、炭素-炭素結合の開裂を担っているカルボキシラーゼのファミリーに属する酵素である。アセト乳酸デカルボキシラーゼは、2-アセト乳酸(2-ヒドロキシ-2-メチル-3-オキソブタン酸としても知られる)の2-アセトインへの変換を触媒し、COを放出する。「ALDC」と「ALDC酵素」とは、本明細書では互換的に使用され得る。
【0019】
アセト乳酸デカルボキシラーゼは、分類EC4.l.l.5(アセト乳酸デカルボキシラーゼ活性)および遺伝子オントロジー(GO)用語ID、GO:0047605に属する酵素反応を触媒する。GO用語IDは、この関連したGO用語を有しているとされた任意のタンパク質が、アセト乳酸デカルボキシラーゼ触媒活性を有する酵素をコードすることを規定する。
【0020】
アセト乳酸デカルボキシラーゼ酵素をコードする種々のアセト乳酸デカルボキシラーゼ遺伝子(alsDまたはaldBなど)は、当技術分野で知られている。ALDC酵素をコードするalsD遺伝子は、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)に由来するものであっても、由来し得るものであってもよい。ALDC酵素をコードするaldB遺伝子は、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)に由来するものであっても、由来し得るものであってもよい。ALDC酵素をコードするalsD遺伝子は、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)に由来するものであっても、由来し得るものであってもよい。UNIPROTアクセッション番号Q65E52.1は、ALDC酵素の一例である。UNIPROTアクセッション番号Q65E52.1は、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)に由来するか、または由来し得るALDC酵素の一例である。アセト乳酸デカルボキシラーゼ遺伝子の例としては、限定はされないが、以下のものが挙げられる:gi|375143627|ref|YP_005006068.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[ニアステラ・コリエンシス(Niastella koreensis)OR20-10];gi|361057673|gb|AEV96664.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[ニアステラ・コリエンシス(Niastella koreensis)OR20-10];gi|218763415|gb|ACL05881.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[デスルファチバチラム・アルケニボランス(Desulfatibacillum alkenivorans)AK-01];gi|220909520|ref|YP_002484831.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[シアノセイス種(Cyanothece sp.)PCC7425];gi|218782031|ref|YP_002433349.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[デスルファチバチラム・アルケニボランス(Desulfatibacillum alkenivorans)AK-01];gi|213693090|ref|YP_002323676.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[ビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.infantis)ATCC15697=JCM1222];gi|189500297|ref|YP_001959767.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[クロロビウム・ファエオバクテロイデス(Chlorobium phaeobacteroides)BS1];gi|189423787|ref|YP_001950964.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[ゲオバクター・ロブレイ(Geobacter lovleyi)SZ];gi|172058271|ref|YP_00181473l.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[エキシグオバクテリウム・シビリクム(Exiguobacterium sibiricum)255-15];gi|163938775|ref|YP_001643659.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[バチルス・ウェイヘンステファネンシス(Bacillus weihenstephanensis)KBAB4];gi|158522304|ref|YP_001530174.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[デスルホコッカス・オレオボランス(Desulfococcus oleovorans)Hxd3];gi|57371670|ref|YP_001479659.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[セラチア・プロテアマキュランス(Serratia proteamaculans)568];gi|150395111|ref|YP_001317786.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[スタフィロコッカス・アウレウス亜種アウレウス(Staphylococcus aureus subsp.aureus)JHl];gi|150394715|ref|YP_001317390.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[スタフィロコッカス・アウレウス亜種アウレウス(Staphylococcus aureus subsp.aureus)JH1];gi|146311679|ref|YP_001176753.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[エンテロバクター種(Enterobacter sp.)638];gi|109900061|ref|YP_663316.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[シュードアルテロモナス・アトランティカ(Pseudoalteromonas atlantica)T6c];gi|219866131|gb|ACL46470.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[シアノセイス種(Cyanothece sp.)PCC7425];gi|213524551|gb|ACJ53298.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[ビフィドバクテリウム・ドロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.infantis)ATCC15697=JCM1222];gi|189420046|gb|ACD94444.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[ゲオバクター・ロブレイ(Geobacter lovleyi)SZ];gi|158511130|gb|ABW68097.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[デスルホコッカス・オレオボランス(Desulfococcus oleovorans)Hxd3];gi|157323434|gb|ABV42531.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[セラチア・プロテアマキュランス(Serratia proteamaculans)568];gi|145318555|gb|ABP60702.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[エンテロバクター種(Enterobacter sp.)638];gi|1499475631gb|ABR53499.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[スタフィロコッカス・アウレウス亜種アウレウス(Staphylococcus aureus subsp.aureus)JH1];gi|149947167|gb|ABR53103.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[スタフィロコッカス・アウレウス亜種アウレウス(Staphylococcus aureus subsp.aureus)JH1];gi|163860972|gb|ABY42031.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[バチルス・ウェイヘンステファネンシス(Bacillus weihenstephanensis)KBAB4];gi|109702342|gb|ABG42262.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[シュードアルテロモナス・アトランティカ(Pseudoalteromonas atlantica)T6c];gi|189495738|gb|ACE04286.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[クロロビウム・ファエオバクテロイデス(Chlorobium phaeobacteroides)BS1];gi|171990792|gb|ACB61714.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[エキシグオバクテリウム・シビリクム(Exiguobacterium sibiricum)255-15];gi|223932563|ref|ZP_03624564.1アセト乳酸デカルボキシラーゼ[ストレプトコッカス・スイス(Streptococcus suis)89/1591];gi|194467531|ref|ZP_03073518.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[ラクトバチルス・ロイテリー(Lactobacillus reuteri)100-23];gi|223898834|gb|EEF65194.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[ストレプトコッカス・スイス(Streptococcus suis)89/1591];gi|194454567|gb|EDX43464.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[ラクトバチルス・ロイテリー(Lactobacillus reuteri)100-23];gi|384267135|ref|YP_005422842.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[バチルス・アミロリクエファシエンス亜種プランタルム(Bacillus amyloliquefaciens subsp.plantarum)YAUB9601-Y2];gi|375364037|ref|YP_005132076.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[バチルス・アミロリクエファシエンス亜種プランタルム(Bacillus amyloliquefaciens subsp.plantarum)CAUB946];gi|34079323|ref|YP_004758694.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[コリネバクテリウム・バリアビレ(Corynebacterium variabile)DSM44702];gi|336325119|ref|YP_004605085.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[コリネバクテリウム・レジステンス(Corynebacterium resistens)DSM45100];gi|148269032|ref|YP_001247975.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[スタフィロコッカス・アウレウス亜種アウレウス(Staphylococcus aureus subsp.aureus)JH9];gi|148268650|ref|YP_001247593.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[スタフィロコッカス・アウレウス亜種アウレウス(Staphylococcus aureus subsp.aureus)JH9];gi|1485433721|ref|YP_001270742.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[ラクトバチルス・ロイテリー(Lactobacillus reuteri)DSM20016];gi|380500488|emb|CCG51526.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[バチルス・アミロリクエファシエンス亜種プランタルム(Bacillus amyloliquefaciens subsp.plantarum)YAUB9601-Y2];gi|371570031|emb|CCF06881.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[バチルス・アミロリクエファシエンス亜種プランタルム(Bacillus amyloliquefaciens subsp.plantarum)CAUB946];gi|340533141|gb|AEK35621.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[コリネバクテリウム・バリアビレ(Corynebacterium variabile)DSM44702];gi|336101101|gb|AE108921.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[コリネバクテリウム・レジステンス(Corynebacterium resistens)DSM45100];gi|148530406|gb|ABQ82405.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[ラクトバチルス・ロイテリー(Lactobacillus reuteri)DSM20016];gi|147742101|gb|ABQ50399.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[スタフィロコッカス・アウレウス亜種アウレウス(Staphylococcus aureus subsp.aureus)JH9];gi|147741719|gb|ABQ50017.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[スタフィロコッカス・アウレウス亜種アウレウス(Staphylococcus aureus subsp.aureus)JH9];gi|392529510|ref|ZP_10276647.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[カーノバクテリウム・マルタロマティカム(Carnobacteriumm altaromaticum)ATCC35586];gi|366054074|ref
|ZP_09451796.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[ラクトバチルス・スエビカス(Lactobacillus suebicus)KCTC3549];gi|339624147|ref|ZP_08659936.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[フルクロバチルス・イルクトサス(Fructobacillus jructosus)KCTC3544];andgi|336393727|ref|ZP_08575126.1|アセト乳酸デカルボキシラーゼ[ラクトバチルス・コリニフォルミス亜種トルクエンス(Lactobacillus coryniformis subsp.torquens)KCTC3535]。UNIPROTアクセッションアクセッション番号P23616.1(Diderichsenetal.,JBacteriol.(1990)172(8):4315)は、ALDC酵素の一例である。UNIPROTアクセッション番号P23616.1は、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)に由来するか、または由来し得るALDC酵素の一例である。前述のアクセッション番号と結び付いた各配列は参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
いくつかの実施形態において、本発明は、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)(Godtfredsen,1984)、ブレビバクテリウム・アセチリカム(Brevibacterium acetylicum)(Oshiro,1989)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、(VincentPhalip,1994)、ロイコノストック・ラクティス(Leuconostoc lactis)(Osulivan,2001)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)(Blomquist,1993)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)(Renna,1993)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)(Svendsen,1989)およびラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)DX(Yuxing,2014)由来のALDC酵素に関する。いくつかの実施形態において、ALDC酵素は、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ブレビバクテリウム・アセチリカム(Brevibacterium acetylicum)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ロイコノストック・ラクティス(Leuconostoc lactis)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)DXまたはバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)に由来する。本明細書で使用する場合、「ALDC酵素は由来する」という用語は、ALDC酵素が由来するかまたは由来し得ることを指す。
【0022】
好適なALDC酵素、すなわち、任意の微生物から産生した、活性が金属イオンに依存するALDCはいずれも本発明に使用することができると理解されるべきである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法および組成物に使用されるALDCは、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)またはバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のALDCである。
【0023】
本発明の酵素組成物のALDC活性は、本明細書に記載のALDCアッセイ、または当技術分野で知られている任意の好適なアッセイにより測定される。標準的なアッセイはpH6.0で行われ、酵素のさらなる特性評価および特定は、異なるpH値および温度で行われ得る。
【0024】
ALDC活性の1単位は、アッセイ条件下(例えば、pH6.0(または指定のpH)および30℃)、1分当たり1μモルのアセトインを生成する酵素量と定義される。
【0025】
いくつかの実施形態において、ALDC酵素は、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号8、またはそれらのいずれかの機能的断片と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。本発明の一態様は、ALDC活性を示す酵素に関し、その酵素は、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7、および配列番号8、またはそれらのいずれかの機能的断片から選択されるいずれか1つと少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ALDC酵素は、配列番号1、配列番号4、配列番号6、またはそれらのいずれかの機能的断片と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%の同一性を有する核酸配列によってコードされる。本明細書で使用する「核酸」、「核酸配列」および「ヌクレオチド配列」という用語は互換可能である。
【0026】
いくつかの実施形態において、この酵素は、5~80℃の範囲、例えば、5~40℃または15~80℃の範囲、例えば、20~80℃の範囲、例えば、5~15℃、10~40℃、10~50℃、15~20℃、45~65℃、50~65℃、55~65℃または60~80℃の範囲に最適温度を有する。いくつかの実施形態において、この酵素は、45~65℃の範囲に最適温度を有する。いくつかの実施形態において、この酵素は、約60℃の最適温度を有する。
【0027】
いくつかの実施形態において、この酵素はアミノ酸の総数が350未満、例えば、340未満、例えば、330未満、例えば、320未満、例えば、310未満、例えば、300未満、例えば、200~350の範囲、例えば、220~345の範囲である。
【0028】
いくつかの実施形態において、この酵素のアミノ酸配列は、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7および配列番号8、またはそれらのいずれかの機能的断片から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列と比較したとき、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のアミノ酸が置換されている。
【0029】
いくつかの実施形態において、この酵素のアミノ酸配列は、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7および配列番号8、またはそれらのいずれかの機能的断片から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列と最大で1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のアミノ酸が置換されている。
【0030】
いくつかの実施形態において、この酵素は、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号8、またはそれらのいずれかの機能的断片のいずれか1つで特定されるアミノ酸配列を含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、この酵素は、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号8、またはそれらのいずれかの機能的断片のいずれか1つで特定されるアミノ酸配列から構成される。
【0032】
いくつかの実施形態において、本発明のALDC組成物、培地および方法は、任意の1種以上のさらなる酵素を含む。いくつかの実施形態において、1種以上のさらなる酵素は、アセト乳酸レダクトイソメラーゼ、アセト乳酸イソメラーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、ヘミセルラーゼ、セルラーゼ、グルカナーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、エンドグルカナーゼおよび関連ベータ-グルカン加水分解アクセサリー酵素、キシラナーゼ、キシラナーゼアクセサリー酵素(例えば、アラビノフラノシダーゼ、フェルラ酸エステラーゼ、およびキシランアセチルエステラーゼ)、ベータ-グルコシダーゼ、ならびにプロテアーゼからなる一覧から選択される。
【0033】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物、培地および方法は、ALDC活性を示す酵素を含み、前記ALDC酵素の活性はタンパク質1mg当たり950~2500単位の範囲にある。いくつかの実施形態において、本発明の組成物、培地および方法は、ALDC活性を示す酵素を含み、前記ALDC酵素の活性はタンパク質1mg当たり1000~2500単位の範囲にある。いくつかの実施形態において、本発明の組成物、培地および方法は、ALDC活性を示す酵素を含み、前記ALDC酵素の活性はタンパク質1mg当たり1500~2500単位の範囲にある。いくつかの実施形態において、ALDC活性を示す酵素は、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7および配列番号8またはそれらのいずれかの機能的断片から選択されるいずれか1つと少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む酵素である。いくつかの実施形態において、ALDC活性を示す酵素は、配列番号1、配列番号4、配列番号6、またはそれらのいずれかの機能的断片と少なくとも80%の同一性を有する核酸配列によってコードされる。
【0034】
宿主
一態様において、本発明は、ALDC酵素の収量を増大させ、かつ/または安定性および/もしくは活性が増大したALDC酵素を産生する、1つ以上の遺伝子変異を有する宿主細胞を提供する。「遺伝子変異を含む宿主細胞」、「宿主細胞は遺伝子変異を含む」、「変異宿主細胞」、「変異株」、「変異体」、「宿主細胞」および「微生物」は、本明細書では互換的に使用され得る。本明細書で使用する場合、「遺伝子変異」は、親宿主細胞との比較で少なくとも1つの遺伝子変異を有する宿主細胞を指し、通常、遺伝子変異は宿主細胞のゲノムの変化である。宿主細胞の遺伝子変異は、自然突然変異および/または遺伝子工学(ベクターによる細胞の形質転換、ゲノムの特定遺伝子の除去など)の結果であり得る。遺伝子変異の例としては、親細胞と比較して低減された量の少なくとも1種の内因性プロテアーゼを変異株の細胞に産生させる遺伝子変異が挙げられる。一実施形態では、変異株は、親細胞と比較して異種のALDC酵素をコードする核酸配列を含むようにさらに改質される。一実施形態では、親株は、ALDC酵素をコードする異種核酸配列を含む。一実施形態では、変異株は、ALDC酵素をコードする内因性核酸配列を親株と比較して過剰に発現するように改質されている。一実施形態では、変異種は、宿主細胞に、ALDC酵素をコードする内因性核酸配列を親株と比較して過剰に発現させる核酸で形質転換される。本明細書で使用する場合、「過剰発現している」、「過剰発現」および「過剰発現する」という用語は、ALDCをコードする核酸配列の発現を許容する同じ条件下で培養したときの、変異株におけるALDC酵素をコードする核酸配列の発現が、親株におけるALDC酵素をコードする核酸配列の発現と比較して増加することを指す。例えば、変異株によるALDC酵素をコードする核酸配列の発現は、親株によるALDC酵素をコードする核酸配列の発現より少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%高い。理論に拘束されることを望むものではないが、宿主細胞におけるALDC酵素をコードする内因性核酸配列の過剰発現は、宿主細胞におけるALDC酵素の産生量を、親細胞におけるALDC酵素の産生量より増大させる。宿主細胞は、親細胞と比較してプロテアーゼ活性および/またはプロテアーゼ機能が低下した細胞をスクリーニングすることにより確認し得る。遺伝子変異は、例えば、プロテアーゼをコードする1つ以上の遺伝子の破壊であってもよい。そのような遺伝子によってコードされるプロテアーゼの例としては、wprA、vpr、epr、ispA、bpr、nprE、aprE、ampS、aprX、bpf、clpCP、clpEP、clpXP、codWX、lonA、lonB、nprB、map、mlpA、mpr、pepT、pepF、dppA、yqyE、tepA、yfiT、yflG、ymfF、ypwA、yrrN、yrrOおよびywaDが挙げられる。遺伝子変異は、例えば、プロテアーゼをコードする遺伝子の調節配列(例えば、プロモーター)、またはプロテアーゼの発現を制御し得る核酸配列の破壊であってもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、破壊は、遺伝子および/または調節配列の全部または一部の欠損を引き起こし得る。遺伝子変異は、例えば、プロテアーゼをコードする核酸配列に結合可能なアンチセンス核酸配列をコードする核酸配列、またはプロテアーゼの発現を制御し得る核酸配列の宿主細胞への導入によってもたらされてもよい。遺伝子変異は、例えば、プロテアーゼをコードする1つ以上の遺伝子(WprA、Vpr、Epr、IspA、Bpr、NprE、AprE、ampS、aprX、bpf、clpCP、clpEP、clpXP、codWX、lonA、lonB、nprB、map、mlpA、mpr、pepT、pepF、dppA、yqyE、tepA、yfiT、yflG、ymfF、ypwA、yrrN、yrrOおよびywaDなど)、またはプロテアーゼをコードする遺伝子の発現を制御し得る核酸配列の全部または一部の欠損であってもよい。遺伝子変異は、例えば、プロテアーゼをコードする遺伝子の調節配列(例えば、プロモーター)、またはプロテアーゼの発現を制御し得る核酸配列の欠損であってもよい。遺伝子変異は、例えば、プロテアーゼをコードする遺伝子、またはプロテアーゼをコードする遺伝子の発現を制御し得る核酸配列を含むゲノムDNAの一部の欠損であってもよい。ALDC酵素の収量に関連した「改善された」という用語および「増加した」という用語は、遺伝子変異を有する宿主細胞を培養したときに生成される(例えば、回収される)ALDC活性を有するタンパク質量が、親宿主細胞を同じ条件(例えば、同じ時間および温度)下で培養したときに生成されるALDC活性を有するタンパク質量と比較して増加したことを意味する。本明細書で使用する「より良好な安定性」および「増大した安定性」という用語は、遺伝子変異を有する宿主細胞が産生したALDC酵素のALDC活性が、同じ条件(例えば、同じ温度)下で培養された親株が産生したALDC酵素のALDC活性と比較して、より長期間維持されることを意味する。本明細書で使用する「より良好な活性」および「増大した活性」という用語は、遺伝子変異を有する宿主細胞が産生したALDC酵素が、同じ条件(例えば、同じ温度)下で培養された親株が産生したALDC酵素のALDC活性と比較して、より高いALDC活性を有していることを意味する。プロテアーゼに関連した「低減された量」という用語は、本明細書で使用する場合、遺伝子変異を有する宿主細胞が産生するプロテアーゼの量が、同じ条件下で培養した親株が産生するプロテアーゼの量と比較して低減されていることを意味する。機能性プロテアーゼに関連した「低減されたた量」という用語は、本明細書で使用する場合、遺伝子変異を有する宿主細胞が産生するプロテアーゼの量および/または活性が、同じ条件下で培養した親株が産生するプロテアーゼの量および/または活性と比較して低減されていることを意味する。プロテアーゼ活性は、本明細書に記載のプロテアーゼアッセイ(例えば、カゼインスポットプレートアッセイ)、または当技術分野で知られている任意の好適なアッセイで測定される。いくつかの実施形態において、本発明の宿主細胞では、実施例に記載のカゼインアッセイによるインキュベーション2日、5日または10日後に明確なハロー形成が見られない。
【0035】
いくつかの実施形態において、ALDC酵素は、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)(Godtfredsen,1984)、ブレビバクテリウム・アセチリカム(Brevibacterium acetylicum)(Oshiro,1989)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、(VincentPhalip,1994)、ロイコノストック・ラクティス(Leuconostoc lactis)(Osulivan,2001)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)(Blomquist,1993)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)(Renna,1993)、バチルス・ブレビス(Bacillu sbrevis)(Svendsen,1989)およびラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)DX(Yuxing,2014)由来のALDC酵素である。
【0036】
いくつかの実施形態において、ALDC酵素は、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacilluscasei)、ブレビバクテリウム・アセチリカム(Brevibacterium acetylicum)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ロイコノストック・ラクティス(Leuconostoc lactis)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)DXまたはバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)に由来する。いくつかの実施形態において、ALDC酵素は、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)またはバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のALDCである。
【0037】
一実施形態では、親細胞に由来するか、または由来し得る変異宿主細胞が提供される。一態様において、変異宿主細胞は、親細胞と比較して低減された量の1つ以上のプロテアーゼを変異株の細胞に産生させる遺伝子変異を1つ以上含む。前記プロテアーゼは、好ましくは、WprA、Vpr、Epr、IspA、Bpr、NprE、AprE、ampS、aprX、bpf、clpCP、clpEP、clpXP、codWX、lonA、lonB、nprB、map、mlpA、mpr、pepT、pepF、dppA、yqyE、tepA、yfiT、yflG、ymfF、ypwA、yrrN、yrrO、およびywaDからなる群から選択される。本明細書では、そのような宿主細胞を「プロテアーゼ欠乏」または「プロテアーゼマイナス株」と称することがある。一態様において、変異宿主細胞は、異種ALDC酵素をコードする核酸配列を含む。一態様において、変異宿主細胞は、宿主細胞に、ALDC酵素をコードする内因性核酸配列を親細胞と比較して過剰に発現させる遺伝子変異を1つ以上含む。一態様において、変異宿主細胞は、宿主細胞に、ALDC酵素をコードする内因性核酸配列を親細胞と比較して過剰に発現させる核酸を含む。一態様において、親細胞に由来する変異宿主細胞が提供され、その変異宿主細胞は、親細胞と比較して低減された量の機能性プロテアーゼを変異種細胞に産生させる遺伝子変異を含み、ここで、そのプロテアーゼは、ALDC酵素のC末端および/またはN末端を開裂することができる。本明細書で使用する「プロテアーゼはALDC酵素のC末端および/またはN末端を開裂することができる」という用語は、プロテアーゼがALDC酵素をC末端および/またはN末端で開裂することを意味する。例えば、プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の275または276のアミノ酸位置に対応するアミノ酸位置でALDC酵素を開裂することができ、さらにまたは代替として、プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の37、38、39、40、42または43のアミノ酸位置に対応するアミノ酸位置でALDC酵素を開裂することができる。配列番号5、配列番号2または配列番号7の275または276位のアミノ酸は、ALDCのC末端にある。配列番号5、配列番号2または配列番号7の37、38、39、40、42または43位のアミノ酸は、ALDCのN末端にある。本明細書で言及するプロテアーゼは、ALDC酵素、例えば、配列番号5、配列番号2または配列番号7として示す配列と少なくとも80%の同一性を有するALDCのC末端から配列QVHQAESERKを開裂し得る。「切断する」と「開裂する」とは、本明細書では互換的に使用され得る。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するC末端の275位で開裂することができる。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するC末端の276位で開裂することができる。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するN末端の37位で開裂することができる。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するN末端の38位で開裂することができる。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するN末端の39位で開裂することができる。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するN末端の40位で開裂することができる。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するN末端の42位で開裂することができる。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するN末端の43位で開裂することができる。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するN末端の39位で開裂することができる。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、中性メタロプロテアーゼである。NprEは、中性メタロプロテアーゼの一例である。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、サーモリシンである。サーモリシンは、グルテン加水分解および/または穀物加工に使用することができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、バチルス(Bacillus)などの細菌宿主である。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、バチルス(Bacillus)である。いくつかの実施形態において、バチルス(Bacillus)は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である。いくつかの実施形態において、ALDC酵素はバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)の培養によって製造することができる。
【0039】
いくつかの実施形態において、本発明は、親細胞と比較して低減された量の機能性内因性細胞壁関連プロテアーゼ酵素(WprA)を変異株の細胞に産生させる遺伝子変異を含む変異宿主細胞を提供する。ここで、宿主細胞は、プロモーターと作動可能に結合した異種ALDC酵素をコードする核酸で形質転換されている。いくつかの実施形態において、本発明は、親細胞と比較して低減された量の機能性内因性細胞壁関連プロテアーゼ酵素(WprA)を変異株の細胞に産生させる遺伝子変異を含む変異宿主細胞を提供する。ここで、宿主細胞は、宿主細胞に、ALDC酵素をコードする内因性核酸配列をコードする核酸を親細胞と比較して過剰に発現させる核酸で形質転換されている。「細胞壁関連プロテアーゼ」および「WprA」という用語は、本明細書で使用する場合、「細胞壁プロテアーゼ」および「wprA」という用語と互換可能であり得る。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、バチルス(Bacillus)である。いくつかの実施形態において、バチルス(Bacillus)は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である。
【0040】
いくつかの実施形態において、遺伝子変異は、親株に存在するwprA遺伝子の破壊を含む。いくつかの実施形態において、wprA遺伝子の破壊は、wprA遺伝子の全部または一部の欠損の結果である。いくつかの実施形態において、wprA遺伝子の破壊は、wprA遺伝子を含むゲノムDNAの一部の欠損の結果である。いくつかの実施形態において、wprA遺伝子の破壊は、wprA遺伝子の突然変異誘発の結果である。
【0041】
いくつかの実施形態において、wprA遺伝子の破壊は、部位特異的組み換えを用いて行われる。いくつかの実施形態において、wprA遺伝子の破壊は、wprA遺伝子の遺伝子座への選択マーカー(例えば、スペクチノマイシン耐性遺伝子など)の導入と組み合わされて行われる。
【0042】
いくつかの実施形態において、変異株は機能性wprAタンパク質を産生しない。いくつかの実施形態において、変異株はwprAタンパク質を産生しない。
【0043】
いくつかの実施形態において、WprAタンパク質の産生量の低減は、当技術分野で知られている任意の好適な方法、例えば、アンチセンスRNAで達成される。
【0044】
いくつかの実施形態において、本発明は、親細胞と比較して低減された量の機能性細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Vpr)を変異株の細胞に産生させる遺伝子変異を含む変異宿主細胞を提供する。ここで、宿主細胞は、プロモーターと作動可能に結合した異種ALDC酵素をコードする核酸で形質転換されている。いくつかの実施形態において、本発明は、親細胞と比較して低減された量の機能性細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Vpr)を変異株の細胞に産生させる遺伝子変異を含む変異宿主細胞を提供する。ここで、宿主細胞は、宿主細胞に、ALDC酵素をコードする内因性核酸配列をコードする核酸を親細胞と比較して過剰に発現させる核酸で形質転換されている。「細胞外セリンプロテアーゼ酵素」および「Vpr」という用語は、本明細書で使用する場合、「微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素」、「Vpr」、「epr」および「Epr」という用語と互換可能であり得る。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、バチルス(Bacillus)である。いくつかの実施形態において、バチルス(Bacillus)は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である。
【0045】
いくつかの実施形態において、遺伝子変異は、親株に存在するvpr遺伝子の破壊を含む。いくつかの実施形態において、vpr遺伝子の破壊は、vpr遺伝子の全部または一部の欠損の結果である。いくつかの実施形態において、vpr遺伝子の破壊は、vpr遺伝子を含むゲノムDNAの一部の欠損の結果である。いくつかの実施形態において、vpr遺伝子の破壊は、vpr遺伝子の突然変異誘発の結果である。
【0046】
いくつかの実施形態において、vpr遺伝子の破壊は、部位特異的組み換えを用いて行われる。いくつかの実施形態において、vpr遺伝子の破壊は、vpr遺伝子の遺伝子座への選択マーカー(例えば、カナマイシン耐性遺伝子など)の導入と組み合わされて行われる。
【0047】
いくつかの実施形態において、変異株は機能性vprタンパク質を産生しない。いくつかの実施形態において、変異株はvprタンパク質を産生しない。
【0048】
いくつかの実施形態において、Vprタンパク質の産生量の低減は、当技術分野で知られている任意の好適な方法、例えば、アンチセンスRNAで達成される。
【0049】
いくつかの実施形態において、本発明は、親細胞と比較して低減された量の機能性細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Vpr)を変異株の細胞に産生させる遺伝子変異を含む変異宿主細胞を提供する。ここで、宿主細胞は、プロモーターと作動可能に結合した異種ALDC酵素をコードする核酸で形質転換されている。いくつかの実施形態において、本発明は、親細胞と比較して低減された量の機能性細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Vpr)および機能性内因性細胞壁関連プロテアーゼ酵素(WprA)の両方を変異株の細胞に産生させる遺伝子変異を含む変異宿主細胞を提供する。ここで、宿主細胞は、宿主細胞に、ALDC酵素をコードする内因性核酸配列を親細胞と比較して過剰に発現させる核酸で形質転換されている。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、バチルス(Bacillus)である。いくつかの実施形態において、バチルス(Bacillus)は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である。いくつかの実施形態において、タンパク質の産生量の低減は、本明細書に記載の方法のいずれか、または当技術分野で知られている任意の好適な方法、例えば、アンチセンスRNAで達成される。いくつかの実施形態において、変異株は機能性VprおよびWprAタンパク質を産生しない。いくつかの実施形態において、変異株はVprおよびWprAタンパク質を産生しない。
【0050】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、低減された量の機能性細胞外セリンアルカリプロテアーゼ酵素(AprE)および内因性細胞外中性メタロプロテアーゼ酵素(NprE)の両方を変異株の細胞に産生させる遺伝子変異をさらに有する。ここで、宿主細胞は、プロモーターと作動可能に結合した異種ALDC酵素をコードする核酸で形質転換されている。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、低減された量の機能性細胞外セリンアルカリプロテアーゼ酵素(AprE)および内因性細胞外中性メタロプロテアーゼ酵素(NprE)の両方を変異株の細胞に産生させる遺伝子変異をさらに有する。ここで、宿主細胞は、宿主細胞に、ALDC酵素をコードする内因性核酸配列を親細胞と比較して過剰に発現させる核酸で形質転換されている。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、バチルス(Bacillus)である。いくつかの実施形態において、バチルス(Bacillus)は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である。いくつかの実施形態において、タンパク質の産生量の低減は、本明細書に記載の方法のいずれか、または当技術分野で知られている任意の好適な方法、例えば、アンチセンスRNAで達成される。いくつかの実施形態において、変異株は機能性NprEおよびAprEタンパク質を産生しない。いくつかの実施形態において、変異株は機能性NprEおよびAprEタンパク質を産生しない。
【0051】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、低減した量の内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Epr)をさらに有する。「欠失する」という用語は、本明細書で使用する場合、「低減された量」という用語と互換可能である。さらなる実施形態において、宿主細胞は、内因性主要細胞内セリンプロテアーゼ酵素(IspA)および内因性バシロペプチダーゼF酵素(Bpr)の一方、または両方をさらに欠失している。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、バチルス(Bacillus)である。いくつかの実施形態において、バチルス(Bacillus)は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である。いくつかの実施形態において、タンパク質の産生量の低減は、本明細書に記載の方法のいずれか、または当技術分野で知られている任意の好適な方法、例えば、アンチセンスRNAで達成される。いくつかの実施形態において、変異株は機能性Epr、IspAおよびBprタンパク質を産生しない。いくつかの実施形態において、変異株はEpr、IspAおよびBprタンパク質を産生しない。
【0052】
いくつかの実施形態において、本発明は、低減された量の内因性セリンアルカリプロテアーゼ酵素(AprE)、内因性細胞外中性メタロプロテアーゼ酵素(NprE)、内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Vpr)、内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Epr)、内因性主要細胞内セリンプロテアーゼ酵素(IspA)および内因性バシロペプチダーゼF酵素(Bpr)を有する宿主細胞を提供する。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、バチルス(Bacillus)である。いくつかの実施形態において、バチルス(Bacillus)は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である。いくつかの実施形態において、タンパク質の産生量の低減は、本明細書に記載の方法のいずれか、または当技術分野で知られている任意の好適な方法、例えば、アンチセンスRNAで達成される。いくつかの実施形態において、変異株は機能性AprE、NprE、Vpr、Epr、IspAおよびBprタンパク質を産生しない。いくつかの実施形態において、変異株はAprE、NprE、Vpr、Epr、IspAおよびBprタンパク質を産生しない。
【0053】
いくつかの実施形態において、本発明は、低減された量の内因性セリンアルカリプロテアーゼ酵素(AprE)、内因性細胞外中性メタロプロテアーゼ酵素(NprE)、内因性細胞壁関連プロテアーゼ酵素(WprA)、内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Epr)、内因性主要細胞内セリンプロテアーゼ酵素(IspA)および内因性バシロペプチダーゼF酵素(Bpr)を有する宿主細胞を提供する。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、バチルス(Bacillus)である。いくつかの実施形態において、バチルス(Bacillus)は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である。いくつかの実施形態において、タンパク質の産生量の低減は、本明細書に記載の方法のいずれか、または当技術分野で知られている任意の好適な方法、例えば、アンチセンスRNAで達成される。いくつかの実施形態において、変異株は機能性AprE、NprE、WprA、Epr、IspAおよびBprタンパク質を産生しない。いくつかの実施形態において、変異株はAprE、NprE、WprA、Epr、IspAおよびBprタンパク質を産生しない。
【0054】
いくつかの実施形態において、本発明は、低減された量の内因性セリンアルカリプロテアーゼ酵素(AprE)、内因性細胞外中性メタロプロテアーゼ酵素(NprE)、内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Vpr)、内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Epr)、内因性主要細胞内セリンプロテアーゼ酵素(IspA)、内因性バシロペプチダーゼF酵素(Bpr)および内因性細胞壁関連プロテアーゼ酵素(WprA)を有する宿主細胞を提供する。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、バチルス(Bacillus)である。いくつかの実施形態において、バチルス(Bacillus)は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である。いくつかの実施形態において、バチルス(Bacillus)は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である。いくつかの実施形態において、タンパク質の産生量の低減は、本明細書に記載の方法のいずれか、または当技術分野で知られている任意の好適な方法、例えば、アンチセンスRNAで達成される。いくつかの実施形態において、変異株は機能性AprE、NprE、WprA、Vpr、Epr、IspAおよびBprタンパク質を産生しない。いくつかの実施形態において、変異株はAprE、NprE、WprA、Vpr、Epr、IspAおよびBprタンパク質を産生しない。
【0055】
さらなる実施形態において、宿主細胞は、低減された量の1種以上の追加のプロテアーゼ、例えば、ampS、aprX、bpf、clpCP、clpEP、clpXP、codWX、lonA、lonB、nprB、map、mlpA、mpr、pepT、pepF、dppA、yqyE、tepA、yfiT、yflG、ymfF、ypwA、yrrN、yrrO、ywaD、または当業者に知られている他のプロテアーゼをさらに有する。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、バチルス(Bacillus)である。いくつかの実施形態において、バチルス(Bacillus)は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である。
【0056】
さらに、本発明は、本明細書に記載の宿主を培養することによって製造されるALDC酵素を含む組成物を提供する。ここで、組成物は、バチルス(Bacillus)プロテアーゼ活性量が低減されている。いくつかの実施形態において、組成物は、0.50U/ml未満のプロテアーゼ活性、好ましくは0.05U/ml未満のプロテアーゼ活性、より好ましくは0.005U/ml未満のプロテアーゼ活性を有する。いくつかの実施形態において、組成物では、実施例に記載のカゼインアッセイによるインキュベーション10日後に明確なハロー形成が見られない。いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載の宿主を培養することによって製造されるALDC酵素を含む組成物を提供する。ここで、この組成物は、バチルス(Bacillus)セリンプロテアーゼ酵素(AprE)により実質的に汚染されていない。いくつかの好ましい実施形態において、含まれるAprE汚染は、そのALDC酵素の約1重量%未満である。いくつかの好ましい実施形態において、AprE汚染のプロテアーゼ活性は、0.50U/ml未満であり、好ましくは0.05U/ml未満であり、より好ましくは0.005U/ml未満である。いくつかの特に好ましい実施形態において、ALDC組成物は、アセト乳酸レダクトイソメラーゼ、アセト乳酸イソメラーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、ヘミセルラーゼ、セルラーゼ、グルカナーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、エンドグルカナーゼおよび関連ベータ-グルカン加水分解アクセサリー酵素、キシラナーゼ、キシラナーゼアクセサリー酵素(例えば、アラビノフラノシダーゼ、フェルラ酸エステラーゼ、およびキシランアセチルエステラーゼ)、ベータ-グルコシダーゼ、ならびにプロテアーゼから選択される少なくとも1種の追加酵素または酵素誘導体をさらに含む。いくつかの実施形態において、組成物は、ALDC酵素を少なくとも約0.0001重量パーセント、好ましくは約0.001~約5.0重量パーセント含む。いくつかの実施形態において、組成物は、ALDC酵素を0.01~約3.0重量パーセント含む。いくつかの実施形態において、組成物は、ALDC酵素を0.5~約2.0重量パーセント含む。いくつかの実施形態において、組成物は、ALDC酵素を0.8~約1.0重量パーセント含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物および方法は、ALDC活性を示す酵素を含み、前記ALDC酵素の活性はタンパク質1mg当たり約950~2500単位の範囲にある。いくつかの実施形態において、本発明の組成物および方法は、ALDC活性を示す酵素を含み、前記ALDC酵素の活性はタンパク質1mg当たり1000~2500単位、または1500~2500単位の範囲にある。いくつかの実施形態において、ALDC活性を示す酵素は、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7および配列番号8、またはそれらのいずれかの機能的断片から選択されるいずれか1つと少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0058】
いくつかの実施形態において、ALDC酵素は、ALDC誘導体を生成するためにグルタルアルデヒドで処理されるか、または処理されている。いくつかの実施形態において、ALDC酵素は、純粋なALDC酵素1g当たり約0,1~約5gのグルタルアルデヒドに相当する濃度のグルタルアルデヒドで処理されるか、または処理されている。
【0059】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のALDC酵素組成物は、飲料製造プロセス、例えば、ビール、ワイン、サイダー、もしくはペリー、または酒の発酵および/または成熟中にジアセチル濃度を低下させるために使用される。
【0060】
本明細書で使用する場合、「飲料」および「飲料製品」という用語には、100%麦芽醸造ビール、異なる制御法で醸造されるビール、エール、ドライビール、ニアビール、ライトビール、低アルコールビール、低カロリービール、ポーター、ボックビール、スタウト、モルトリカー、ノンアルコールビール、ノンアルコールモルトリカーなどの発泡性発酵飲料が含まれる。「飲料」または「飲料製品」という用語にはまた、非発泡ビール、ならびに果実風味の麦芽飲料、例えば、レモン、オレンジ、ライムまたはベリー風味などの柑橘類風味麦芽飲料、リカー風味の麦芽飲料、例えば、ウオッカ、ラムまたはテキーラ風味の麦芽リカー、またはカフェイン風味麦芽リカーなどのコーヒー風味麦芽飲料などの代替麦芽飲料なども含まれる。「飲料」または「飲料製品」という用語にはまた、大麦麦芽と異なる代替材料、例えば、ライ麦、コーン、カラスムギ、米、キビ、ライ小麦、キャッサバ、小麦、大麦、ソルガムおよびこれらの組み合わせで作られたビールも含まれる。「飲料」または「飲料製品」という用語にはまた、ワイン、サイダー、ペリーまたは酒などの他の発酵製品も含まれる。
【0061】
ビールは、従来、大麦粒由来の麦芽などの麦芽と、任意選択により、植物材料(例えば、穀物)を含有するデンプンなどの添加物とから生成され、かつ任意選択により、例えば、ホップで風味を付けられたアルコール飲料といわれている。本発明との関連において、「ビール」という用語には、植物材料含有デンプンの発酵/醸造によって製造されたあらゆる発酵麦汁が含まれ、したがって、特に添加物、または麦芽と添加物との任意の組み合わせからのみ製造されるビールも含まれる。ビールは、様々なデンプン含有植物材料から実質的に同じ方法で作ることができる。ここで、デンプンは、主として、グルコース残基が、アルファ-1,4-結合またはアルファ-1,6-結合により、主成分である前者と結合しているグルコースホモポリマーからなる。ビールは、ライ麦、コーン、カラスムギ、米、キビ、ライ小麦、キャッサバ、小麦、大麦、ソルガム、およびこれらの組み合わせなどの代替材料で作ることができる。
【0062】
方法
いくつかの態様において、本発明は、微生物からのALDCの回収を改善する方法を提供する。他の態様において、本発明は、本明細書に記載の宿主細胞中でALDCを生成する方法を提供する。
【0063】
いくつかの実施形態において、本発明は、親細胞と比較して低減された量の機能性プロテアーゼを変異株の細胞に産生させる遺伝子変異と、プロモーターと作動可能に結合した異種ALDC酵素をコードする核酸とを含む宿主細胞を用意する工程であって、そのプロテアーゼは、ALDC酵素のC末端および/またはN末端を開裂することができる、工程と、異種ALDC酵素の産生に好適な条件下で、形質転換された宿主細胞を培養する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するC末端の275位で開裂することができる。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するC末端の276位で開裂することができる。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するN末端の37位で開裂することができる。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するN末端の38位で開裂することができる。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するN末端の39位で開裂することができる。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するN末端の40位で開裂することができる。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するN末端の42位で開裂することができる。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するN末端の43位で開裂することができる。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、配列番号5、配列番号2または配列番号7の対応するN末端の39位で開裂することができる。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、中性メタロプロテアーゼである。いくつかの実施形態において、プロテアーゼは、サーモリシンである。
【0064】
いくつかの実施形態において、方法は、産生された異種ALDC酵素を回収する工程をさらに含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、バチルス(Bacillus)などの細菌宿主である。いくつかの実施形態において、ALDC酵素はバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)の培養によって製造される。
【0066】
いくつかの実施形態において、本発明は、親細胞と比較して低減された機能性内因性細胞壁関連プロテアーゼ酵素(WprA)を変異株の細胞に産生させる遺伝子変異を含む宿主細胞を用意する工程であって、宿主細胞は、プロモーターと作動可能に結合した異種ALDC酵素をコードする核酸で形質転換されている、工程と、異種ALDC酵素の産生に好適な条件下で、形質転換された宿主細胞を培養する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、親細胞と比較して低減された量の機能性内因性細胞壁関連プロテアーゼ酵素(WprA)を変異株の細胞に産生させる遺伝子変異を含む宿主細胞を用意する工程であって、宿主細胞は、変異株の細胞に、ALDC酵素をコードする内因性核酸配列を親細胞と比較して過剰に発現させる核酸で形質転換されている、工程と、ALDC酵素の産生に好適な条件下で、形質転換された宿主細胞を培養する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、バチルス(Bacillus)である。いくつかの実施形態において、バチルス(Bacillus)は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である。
【0067】
いくつかの実施形態において、本発明は、親細胞と比較して低減された量の機能性細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Vpr)を変異株の細胞に産生させる遺伝子変異を含む宿主細胞を用意する工程であって、宿主細胞は、プロモーターと作動可能に結合した異種ALDC酵素をコードする核酸で形質転換されている、工程と、異種ALDC酵素の産生に好適な条件下で、形質転換された宿主細胞を培養する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、親細胞と比較して低減された量の機能性細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Vpr)を変異株の細胞に産生させる遺伝子変異を含む宿主細胞を用意する工程であって、宿主細胞は、変異株の細胞に、ALDC酵素をコードする内因性核酸配列を親細胞と比較して過剰に発現させる核酸で形質転換されている、工程と、ALDC酵素の産生に好適な条件下で、形質転換された宿主細胞を培養する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、バチルス(Bacillus)である。いくつかの実施形態において、バチルス(Bacillus)は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である。
【0068】
いくつかの実施形態において、本発明は、親細胞と比較して低減された量の機能性細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Vpr)および機能性内因性細胞壁関連プロテアーゼ酵素(WprA)の両方を変異株の細胞に産生させる遺伝子変異を含む宿主細胞を用意する工程であって、宿主細胞は、プロモーターと作動可能に結合した異種ALDC酵素をコードする核酸で形質転換されている、工程と、異種ALDC酵素の産生に好適な条件下で、形質転換された宿主細胞を培養する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、親細胞と比較して低減された量の機能性細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Vpr)および機能性内因性細胞壁関連プロテアーゼ酵素(WprA)の両方を変異株の細胞に産生させる遺伝子変異を含む宿主細胞を用意する工程であって、宿主細胞は、変異株の細胞に、ALDC酵素をコードする内因性核酸配列を親細胞と比較して過剰に発現させる核酸で形質転換されている、工程と、ALDC酵素の産生に好適な条件下で、形質転換された宿主細胞を培養する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、バチルス(Bacillus)である。いくつかの実施形態において、バチルス(Bacillus)は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である。
【0069】
いくつかの実施形態において、本発明は、親細胞と比較して低減された量の内因性セリンアルカリプロテアーゼ酵素(AprE)および内因性細胞外中性メタロプロテアーゼ酵素(NprE)の両方を変異株の細胞に産生させる遺伝子変異を含む宿主細胞を用意する工程であって、宿主細胞は、プロモーターと作動可能に結合した異種ALDC酵素をコードする核酸で形質転換されている、工程と、異種ALDC酵素の産生に好適な条件下で、形質転換された宿主細胞を培養する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、親細胞と比較して低減された量の機能性内因性セリンアルカリプロテアーゼ酵素(AprE)および内因性細胞外中性メタロプロテアーゼ酵素(NprE)の両方を変異株の細胞に産生させる遺伝子変異を含む宿主細胞を用意する工程であって、宿主細胞は、変異株の細胞に、ALDC酵素をコードする内因性核酸配列を親細胞と比較して過剰に発現させる核酸で形質転換されている、工程と、ALDC酵素の産生に好適な条件下で、形質転換された宿主細胞を培養する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、バチルス(Bacillus)である。いくつかの実施形態において、バチルス(Bacillus)は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である。
【0070】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、低減された量の内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Epr)をさらに有する。さらなる実施形態において、宿主細胞は、内因性主要細胞内セリンプロテアーゼ酵素(IspA)および内因性バシロペプチダーゼF酵素(Bpr)の一方または両方をさらに欠失している。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、バチルス(Bacillus)である。いくつかの実施形態において、バチルス(Bacillus)は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である。
【0071】
いくつかの実施形態において、本発明は、低減された量の内因性セリンアルカリプロテアーゼ酵素(AprE)、内因性細胞外中性メタロプロテアーゼ酵素(NprE)、内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Vpr)、内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Epr)、内因性主要細胞内セリンプロテアーゼ酵素(IspA)および内因性バシロペプチダーゼF酵素(Bpr)を有する宿主細胞を用意する工程であって、宿主細胞は、プロモーターと作動可能に結合した異種ALDC酵素をコードする核酸で形質転換されている、工程と、異種ALDC酵素の産生に好適な条件下で、形質転換された宿主細胞を培養する工程とを含む方法を提供する。
【0072】
いくつかの実施形態において、本発明は、低減された量の内因性セリンアルカリプロテアーゼ酵素(AprE)、内因性細胞外中性メタロプロテアーゼ酵素(NprE)、内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Vpr)、内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Epr)、内因性主要細胞内セリンプロテアーゼ酵素(IspA)および内因性バシロペプチダーゼF酵素(Bpr)を有する宿主細胞を用意する工程であって、宿主細胞は、変異株の細胞に、ALDC酵素をコードする内因性核酸配列を親細胞と比較して過剰に発現させる核酸で形質転換されている、工程と、ALDC酵素の産生に好適な条件下で、形質転換された宿主細胞を培養する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、バチルス(Bacillus)である。いくつかの実施形態において、バチルス(Bacillus)は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である。
【0073】
いくつかの実施形態において、本発明は、低減された量の内因性セリンアルカリプロテアーゼ酵素(AprE)、内因性細胞外中性メタロプロテアーゼ酵素(NprE)、内因性細胞壁関連プロテアーゼ酵素(WprA)、内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Epr)、内因性主要細胞内セリンプロテアーゼ酵素(IspA)および内因性バシロペプチダーゼF酵素(Bpr)を有する宿主細胞を用意する工程であって、宿主細胞は、プロモーターと作動可能に結合した異種ALDC酵素をコードする核酸で形質転換されている、工程と、異種ALDC酵素の産生に好適な条件下で、形質転換された宿主細胞を培養する工程とを含む方法を提供する。
【0074】
いくつかの実施形態において、本発明は、低減された量の内因性セリンアルカリプロテアーゼ酵素(AprE)、内因性細胞外中性メタロプロテアーゼ酵素(NprE)、内因性細胞壁関連プロテアーゼ酵素(WprA)、内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Epr)、内因性主要細胞内セリンプロテアーゼ酵素(IspA)および内因性バシロペプチダーゼF酵素(Bpr)を有する宿主細胞を用意する工程であって、宿主細胞は、変異株の細胞に、ALDC酵素をコードする内因性核酸配列を親細胞と比較して過剰に発現させる核酸で形質転換されている、工程と、ALDC酵素の産生に好適な条件下で、形質転換された宿主細胞を培養する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、バチルス(Bacillus)である。いくつかの実施形態において、バチルス(Bacillus)は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である。
【0075】
いくつかの実施形態において、本発明は、低減された量の内因性セリンアルカリプロテアーゼ酵素(AprE)、内因性細胞外中性メタロプロテアーゼ酵素(NprE)、内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Vpr)、内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Epr)、内因性主要細胞内セリンプロテアーゼ酵素(IspA)、内因性バシロペプチダーゼF酵素(Bpr)および内因性細胞壁関連プロテアーゼ酵素(WprA)を有する宿主細胞を用意する工程であって、宿主細胞は、プロモーターと作動可能に結合した異種ALDC酵素をコードする核酸で形質転換されている、工程と、異種ALDC酵素の産生に好適な条件下で、形質転換された宿主細胞を培養する工程とを含む方法を提供する。
【0076】
いくつかの実施形態において、本発明は、低減された量の内因性セリンアルカリプロテアーゼ酵素(AprE)、内因性細胞外中性メタロプロテアーゼ酵素(NprE)、内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Vpr)、内因性微量細胞外セリンプロテアーゼ酵素(Epr)、内因性主要細胞内セリンプロテアーゼ酵素(IspA)、内因性バシロペプチダーゼF酵素(Bpr)および内因性細胞壁関連プロテアーゼ酵素(WprA)を有する宿主細胞を用意する工程であって、宿主細胞は、変異株の細胞に、ALDC酵素をコードする内因性核酸配列を親細胞と比較して過剰に発現させる核酸で形質転換されている、工程と、ALDC酵素の産生に好適な条件下で、形質転換された宿主細胞を培養する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、バチルス(Bacillus)である。いくつかの実施形態において、バチルス(Bacillus)は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である。
【0077】
さらなる実施形態において、宿主細胞は、低減された量の1種以上の追加のプロテアーゼ、例えば、ampS、aprX、bpf、clpCP、clpEP、clpXP、codWX、lonA、lonB、nprB、map、mlpA、mpr、pepT、pepF、dppA、yqyE、tepA、yfiT、yflG、ymfF、ypwA、yrrN、yrrO、ywaD、または当業者に知られている他のプロテアーゼをさらに有する。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、バチルス(Bacillus)である。いくつかの実施形態において、バチルス(Bacillus)は、バチルス・サブチリス(B.subtilis)である。
【0078】
いくつかの実施形態において、アセトインを製造する方法が本開示で提供される。いくつかの実施形態において、アセト乳酸を分解する方法が本開示で提供される。これらの方法は、本明細書に記載のALDC酵素組成物で基質を処理する工程を含む。
【0079】
いくつかの実施形態において、ALDC酵素は、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7および配列番号8、またはそれらのいずれかの機能的断片から選択されるいずれか1つと少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、発酵飲料の製造中にアセトインを製造する方法が本開示で提供される。いくつかの実施形態において、発酵飲料の製造中にアセトインを分解する方法が本開示で提供される。
【0081】
発酵生成物
一態様において、本発明は、炭水化物含有基質の微生物による発酵により、ジアセチル低含有発酵アルコール製品を製造する方法に関する。「ジアセチル低含有」発酵アルコール製品は、本明細書で使用する場合、炭水化物含有基質を、本明細書に記載の宿主細胞、ならびに/または本明細書に記載のALDCおよび/もしくはALDC誘導体組成物による発酵によって製造される発酵アルコール製品(例えば、ビール、ワイン、サイダー、ペリーおよび/または酒)であって、ジアセチル濃度が本明細書に記載の宿主細胞、ならびに/または本明細書に記載のALDCおよび/もしくはALDC誘導体組成物の非存在下において同じ発酵条件(例えば、同じ温度で、同じ時間)で炭水化物含有基質を発酵させることによって製造される発酵アルコール製品と比較して低い製品を指す。ジアセチル低含有発酵アルコール製品の例としては、ジアセチル濃度が約1ppm未満、および/またはジアセチル濃度が約0.5mg/L未満の発酵アルコール製品がある。一実施形態において、ジアセチル濃度は、約0.5ppm未満、約0.1ppm未満、約0.05ppm未満、約0.01ppm未満、または約0.001ppm未満である。一実施形態において、ジアセチル濃度は、約0.1mg/L未満、約0.05mg/L未満、約0.01mg/L未満、または約0.001mg/L未満である。
【0082】
麦汁(例えば、麦芽量の少ない麦汁)内容物、またはフルーツジュース(ブドウジュース、リンゴジュースまたはナシジュースなど)などの炭水化物含有基質を酵母またはその他の微生物で発酵させると、アルコール発酵に加え、様々なプロセスが起こり、例えば、非常に低濃度であっても強く不快な臭いを有するジアセチルを生成するなど、望ましくない副生物を生成することがある。したがって、ビール、ワイン、サイダー、ペリーまたは酒などのアルコール飲料は、ジアセチル含有量がある限界(例えば、いくつかのビールでの場合、約0.1ppm)を大きく超えると、許容できない香気および風味を有し得る。
【0083】
蒸留によりエタノールからジアセチルを分離することが難しいため、エタノールの工業生産でもジアセチルの生成は不都合である。エタノールをベンゼンとの共沸蒸留によって脱水する絶対エタノールの製造において、特有の問題が起こる。共沸蒸留中、ベンゼン層にジアセチルが蓄積して、ジアセチルとベンゼンとの混合物が生成され、共沸蒸留に使用したベンゼンの回収が困難になるおそれがある。
【0084】
ビールの従来の醸造では、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomycescerevisae)またはサッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomycescarlsbergensis)などの好適な酵母種による麦汁で発酵させることを含む。
【0085】
一般に従来の醸造では、発酵は、通常、二工程、すなわち、通常5~12日間の主発酵と、最大で12週間を要し得る二次発酵、いわゆる熟成プロセスとで行われる。主発酵の期間中、麦汁中の炭水化物の殆どはエタノールと二酸化炭素とに転換する。熟成は、通常、残存する丈量の酵母の存在下において低温で行われる。熟成の目的は、特に望ましくない高分子量化合物を沈澱させ、望ましくない化合物をジオールなどの風味および香気に影響しない化合物に転換させるためである。例えば、ビール中のアセト酪酸とジアセチルの最終変換生成物であるブタンジオールとは、一般に、中性の感覚特性を有する化合物として報告されている。
【0086】
いくつかの態様において、本発明は、本明細書に記載の宿主細胞、および/または本発明に記載の組成物の、ビール、ワイン、サイダー、ペリーおよび/または酒の発酵における使用に関する。いくつかの実施形態において、本発明は、ビール、ワイン、サイダー、ペリーおよび/または酒の発酵または熟成期間中のアセト乳酸の分解のための、本明細書に記載の宿主細胞、および/または本明細書に記載のALDC組成物の使用を含む。本発明はまた、ビール、ワイン、サイダー、ペリーおよび/または酒の発酵または熟成期間中のアセト乳酸の分解のための、本明細書に記載の宿主細胞、および/または本明細書に記載のALDC誘導体の使用を含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、したがって、発酵プロセス、例えば、熟成の期間中またはそれに続いて、本明細書に記載の宿主細胞、および/または本明細書に記載のALDCを含む組成物またはALDC誘導体で基質を処理することを特徴としている。
【0088】
したがって、いくつかの実施形態において、アセト乳酸は酵素によりアセトインに脱カルボキシル化され、その結果、望ましくない場合にアセト乳酸からのジアセチルの生成が回避される。いくつかの実施形態において、α-アセト乳酸の転換に、他の酵素が宿主細胞および/またはALDCと併用される。そのような酵素の例としては、限定はされないが、アセト乳酸レダクトイソメラーゼまたはイソメラーゼが挙げられる。
【0089】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の宿主細胞、ならびに/または本明細書に記載のALDCおよび/もしくはALDC誘導体組成物がバッチ式発酵において通常の酵母とともに使用される。
【0090】
酵母を遊離した状態で使用する代わりに固定した状態で使用してもよく、酵素は、発酵中または発酵に続いて(例えば、熟成中に)添加される。固定酵素はまた、発酵麦汁またはビールを通過させるカラムに維持させてもよい。酵素は酵母細胞と別に固定してもよく、酵母細胞と同時固定してもよく、また、アセト乳酸デカルボキシラーゼを使用してもよい。
【0091】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の宿主細胞、ならびに/または本明細書に記載のALDCおよび/もしくはALDC誘導体組成物は、ジアセチル濃度を約1ppm未満、約0.5ppm未満、約0.1ppm未満、約0.05ppm未満、約0.01ppm未満、または約0.001ppm未満に低減するために、ビール、ワイン、サイダー、ペリーおよび/または酒の発酵または熟成期間中に使用される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の宿主細胞、ならびに/または本明細書に記載のALDCおよび/もしくはALDC誘導体組成物は、ジアセチル濃度を0.1ppm未満に低減するために、ビール、ワイン、サイダー、ペリーおよび/または酒の発酵または熟成期間中に使用される。
【0092】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の宿主細胞、ならびに/または本明細書に記載のALDCおよび/もしくはALDC誘導体組成物は、VDKを約0.1mg/L未満、約0.05mg/L未満、約0.01mg/L未満、または約0.001mg/L未満に低減するために、ビール、ワイン、サイダー、ペリーおよび/または酒の発酵または熟成期間中に使用される。VDK総量は、ジアセチルに2,3-ペンタンジオンをプラスした量を指す。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の宿主細胞、ならびに/または本明細書に記載のALDCおよび/もしくはALDC誘導体組成物は、VDK総含有量を0.1mg/L未満に低減するために、ビール、ワイン、サイダー、ペリーおよび/または酒の発酵または熟成期間中に使用される。
【0093】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の宿主細胞、ならびに/または本明細書に記載のALDCおよび/もしくはALDC誘導体組成物は、ジアセチル濃度を約0.5mg/L未満、約0.1mg/L未満、約0.05mg/L未満、約0.01mg/L未満、または約0.001mg/L未満に低減するために、ビール、ワイン、サイダー、ペリーおよび/または酒の発酵または熟成期間中に使用される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の宿主細胞、ならびに/または本明細書に記載のALDCおよび/もしくはALDC誘導体組成物は、ジアセチル濃度を0.1mg/L未満に低減するために、ビール、ワイン、サイダー、ペリーおよび/または酒の発酵または熟成期間中に使用される。
【0094】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の宿主細胞、ならびに/または本明細書に記載のALDCおよび/もしくはALDC誘導体組成物は、他のビシナルケトンを約0.1mg/L未満、約0.05mg/L未満、約0.01mg/L未満、または約0.001mg/L未満に低減するために、ビール、ワイン、サイダー、ペリーおよび/または酒の発酵または熟成期間中に使用される。
【0095】
本発明のプロセスは、ビールの醸造に関連して使用することができるだけでなく、ジアセチル濃度またはビシナルジケトンの量を低減することが望まれる好適なアルコール飲料(例えば、ワイン、酒、サイダー、ペリーなど)の製造にも好適である。いくつかの実施形態において、本発明のプロセスは、類似の利点、特に熟成中の低減およびプロセスの簡略化が達成されるワインの製造に特に使用することができる。これに関連して特に興味深いのは、いわゆるマロラクティック発酵に関連したアセト酪酸変換酵素の使用である。ロイコノストック(Leuconostoc)、ラクトバチルス(Lactobacillus)またはペディオコッカス(Pediococcus)種などの微生物によってなされるこのプロセスは、ワインの主発酵後、製品のpHおよびその生物学的安定性を増大させ、かつワインの風味を高めるために行われる。さらに、そのような発酵を行うことは、それにより急速な瓶詰が可能となり、ワイナリーのキャッシュフローを実質的に改善するため、非常に望ましい。しかし、残念ながら、このプロセスは、ジアセチルによって異臭が発生するおそれがある。ジアセチルの生成はアセト乳酸変換酵素を用いて低減することができる。
【0096】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明のプロセスは、本明細書に記載の宿主細胞、ならびに/または本明細書に記載のALDCおよび/もしくはALDC誘導体組成物を使用しないプロセスと比較してジアセチル含有量が少ないアルコール飲料の製造であって、ジアセチル含有量の少ないアルコール飲料の製造に要する時間が、本明細書に記載の宿主細胞、ならびに/または本明細書に記載のALDCおよび/もしくはALDC誘導体組成物を使用しないプロセスと比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低減される製造を提供する。いくつかの実施形態において、本発明のプロセスは、本明細書に記載の宿主細胞、ならびに/または本明細書に記載のALDCおよび/もしくはALDC誘導体組成物を使用しないプロセスと比較してジアセチル含有量が少ないアルコール飲料の製造であって、熟成工程が完全に除かれる製造を提供する。
【0097】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の宿主細胞、ならびに/または本明細書に記載のALDCおよび/もしくはALDC誘導体組成物は、本明細書に記載の宿主細胞、ならびに/または本明細書に記載のALDCおよび/もしくはALDC誘導体組成物を使用しないプロセスと比較して、発酵プロセスに要する時間が、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低減されるように発酵プロセス(ビール、ワイン、サイダー、ペリーおよび/または酒の発酵)において使用される。
【0098】
いくつかの実施形態において、本発明のプロセスは、本明細書に記載の宿主細胞、ならびに/または本明細書に記載のALDCおよび/もしくはALDC誘導体組成物を使用しないプロセスと比較してジアセチル含有量が少ないアルコール飲料の製造であって、熟成工程が完全に除かれる製造を提供する。
【0099】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の宿主細胞、ならびに/または本明細書に記載のALDCおよび/もしくはALDC誘導体組成物は、本明細書に記載の宿主細胞、ならびに/または本明細書に記載のALDCおよび/もしくはALDC誘導体組成物を使用しないプロセスと比較して、発酵プロセスに要する時間が少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低減されるように熟成またはコンディショニングプロセス(例えば、ビールの熟成またはコンディショニング)において使用される。いくつかの実施形態において、本発明のプロセスは、本明細書に記載の宿主細胞、ならびに/または本明細書に記載のALDCおよび/もしくはALDC誘導体組成物を使用しないプロセスと比較してジアセチル含有量が少ないアルコール飲料の製造であって、熟成工程が完全に除かれる製造を提供する。
【0100】
さらに、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のプロセスは、ジアセチルを含有しないか、実質的に含有しない発酵製品が得られ、それにより、蒸留工程、特に絶対エタノール、すなわち、純粋な無水エタノールを得るための共沸蒸留の場合の工程が簡略化されることから、エタノールを発酵製品として工業生産することに優位性を付与するために使用することができる。
【0101】
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載の1種以上の宿主細胞、ならびに/または本明細書に記載のALDCおよび/もしくはALDC誘導体組成物を添加することを含む、ビール、ワイン、サイダー、ペリーおよび/または酒の製造方法を提供する。
【0102】
ALDC酵素の製造
一態様において、本発明は、本明細書に記載のALDC酵素の異種発現体を有する宿主細胞に関する。他の態様において、宿主細胞は、本明細書に記載のプラスミドまたは発現ベクターを含み、好ましくは、それによって形質添加されている。他の態様において、本発明は、ALDC酵素をコードする内因性核酸配列を親細胞と比較して過剰に発現させる核酸で形質転換されている宿主細胞に関する。
【0103】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、バチルス(Bacillus)などの細菌宿主である。いくつかの実施形態において、ALDC酵素は、ALDC酵素(例えば、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)のALDC)をコードし、発現する遺伝子を含有するバチルス・サブチリス(B.subtilis)株を培養することによって製造される。そのような宿主細胞の例およびそれらの培養については、DK149335Bに記載されている。いくつかの実施形態において、ALDC酵素は、ALDC酵素をコードし、過剰発現する遺伝子を含有するバチルス・サブチリス(B.subtilis)株を培養することによって製造される。
【0104】
好適な発現および/または組込み型ベクターの例は、Sambrook et al.(1989)supra、and Ausubel(1987)supra、and van den Hondel et al.(1991)in Bennett and Lasure(Eds.)More Gene Manipulations In Fungi,Academic Press pp.396-428、および米国特許第5,874,276号明細書に示されている。ベクターの一覧として、Fungal Genetics Stock Center Catalogue of Strains(FGSC,http://www.fgsc.net)も参照される。特に有用なベクターとしては、例えば、InvitrogenおよびPromegaから得られるベクターが挙げられる。細菌細胞に使用する好適なプラスミドとしては、大腸菌(E.coli)で複製可能なpBR322およびpUC19、ならびに例えばバチルス(Bacillus.)で複製可能なpE194が挙げられる。大腸菌(E.coli)での使用に好適な他の特定のベクターとしては、pFB6、pBR322、pUC18、pUC100、pDONRTM201、10pDONRTM221、pENTRTM、pGEM(登録商標)3ZおよびpGEM(登録商標)4Zなどが挙げられる。
【0105】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、グラム陽性菌細胞である。非限定的例として、ストレプトマイセス(Streptomyces)菌株(例えば、ストレプトマイセス・リビダンス(S.lividans)、ストレプトマイセス・コエリカラー(S.coelicolor)およびストレプトマイセス・グリセウス(S.griseu))s)およびバチルス(Bacillus)菌株が挙げられる。本明細書で使用する場合、「バチルス(Bacillus)属」には、当業者に知られる「バチルス(Bacillus)」属内の全ての菌株が含まれ、例えば、限定はされないが、バチルス・サブチリス(B.subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(B.licheniformis)、バチルス・レンツス(B.lentus)、バチルス・ブレビス(B.brevis)、バチルス・ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)、バチルス・アルカロフィルス(B.alkalophilus)、バチルス・アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)、バチルス・クラウシイ(B.clausii)、バチルス・ハロドゥランス(B.halodurans)バチルス・メガテリウム(B.megaterium)、バチルス・コアグランス(B.coagulans)、バチルス・サークランス(B.circulans)、バチルス・ラウツス(B.lautus)およびバチルス・チューリンギエンシス(B.thuringiensis)が挙げられる。バチルス(Bacillus)属について、分類学的な再編成が継続的に行われていることは認識されている。したがって、この属が、再分類された種、例えば、限定はされないが、今日、「ゲオバチルス・ステアロサーモモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)」という名前が付されているバチルス・ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)などの生物を含むものとする。
【0106】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、大腸菌(E.coli)またはシュードモナス(Pseudomonas)種などのグラム陰性菌細胞である。他の実施形態において、宿主細胞は、サッカロミケス株(Saccharomyces sp.)種、シゾサッカロミケス種(Schizosaccharomyces sp.)、ピキア種(Pichia sp.)、またはカンジダ種(Candida sp.)などの酵母細胞であってよい。他の実施形態において、宿主細胞は、細菌細胞または真菌細胞において、例えば欠損によって天然遺伝子が不活性化された遺伝子組み換え宿主細胞である。1つ以上の不活性化遺伝子を有する真菌宿主細胞を得ることが望ましい場合、既知の方法を使用することができる(例えば、米国特許第5,246,853号明細書、同第5,475,101号明細書および国際公報第92/06209号パンフレットに開示された方法)。遺伝子不活性化は、挿入不活化、または本来の目的で遺伝子を機能させなくする任意の他の手段で、(遺伝子が機能性タンパク質を発現することができないように)全部または一部を欠損させることによって行うことができる。他の実施形態において、宿主細胞は、プロテアーゼ欠乏株またはプロテアーゼマイナス株である。
【0107】
DNAコンストラクトまたはベクターの宿主細胞中への導入法としては、形質転換;電気穿孔;核微量注入;形質導入;形質移入(例えば、リポフェクション媒介性の、およびDEAE-デキストリン媒介性の形質移入);リン酸カルシウムDNA沈殿物とのインキュベーション;DNA被覆マイクロプロジェクタイル(DNA-coated microprojectile)による高速衝撃(high velocity bombardment);ならびにプロトプラスト融合などの手法が挙げられる。一般的な形質転換手法は当技術分野で知られている(例えば、Ausubel et al.(1987)supra、chapter 9;Sambrook et al.(1989)supra、およびCampbell et al.,Curr.Genet.16:53-56(1989)を参照)。
【0108】
バチルス(Bacillus)の形質転換方法は、Anagnostopoulos C.and J.Spizizen,J.Bacteriol.81:741-746(1961)、および国際公開第02/14490号パンフレットなど、多くの参考文献に記載されている。
【0109】
一態様において、本発明は、本明細書で定義されたALDC酵素を単離する方法に関し、その方法は、本明細書で定義された、前記ALDC酵素の異種発現体を有する宿主細胞中でALDC酵素の合成を誘導する工程と、前記宿主細胞によって分泌された細胞外タンパク質を回収する工程と、任意選択により、ALDC酵素を精製する工程とを含む。一態様において、本発明は、本明細書で定義されたALDC酵素を単離する方法に関し、その方法は、本明細書で定義された、前記ALDC酵素の相同発現体を有する宿主細胞中でALDC酵素の合成を誘導する工程と、前記宿主細胞によって分泌された細胞外タンパク質を回収する工程と、任意選択により、ALDC酵素を精製する工程とを含む。さらなる態様において、本発明は、本明細書で定義されたALDC酵素を製造する方法に関し、その方法は、本明細書で定義された、前記ALDC酵素の異種発現を有する宿主細胞中でALDC酵素の合成を誘導する工程と、任意選択により、ALDC酵素を精製する工程とを含む。さらなる態様において、本発明は、本明細書で定義されたALDC酵素を製造する方法に関し、その方法は、本明細書で定義された、前記ALDC酵素の相同発現を有する宿主細胞中でALDC酵素の合成を誘導する工程と、任意選択により、ALDC酵素を精製する工程とを含む。さらなる態様において、本発明は、本明細書で定義されたALDC酵素を発現させる方法に関し、その方法は、本明細書で定義された宿主細胞、または当業者に知られた任意の好適な宿主細胞を得る工程と、前記宿主細胞からALDC酵素を発現させる工程と、任意選択により、ALDC酵素を精製する工程とを含む。他の態様において、本明細書で定義されたALDC酵素は、主要分泌タンパク質である。
【0110】
いくつかの実施形態では、微生物からの回収量を増大するため、および/またはALDCの安定性を高めるため、および/またはALDCの活性を高めるため、Zn2+、Mg2+、Mn2+、Co2+、Cu2+、Ba2+、Ca2+およびFe2+、ならびにこれらの組み合わせなどの金属イオンがALDCの産生中および/または産生後に培養媒体に添加される。いくつかの実施形態において、金属イオンは培養媒体に、前記金属イオンが前記媒体に約1μM~約1mM、例えば、約25μM~約150μM、約40μM~約150μM、約60μM~約150μM、約25μM~約100μM、約25μM~約50μM、または30μM~約40μMの濃度で含まれるように添加される。いくつかの実施形態において、Zn2+、Mg2+、Mn2+、Co2+、Cu2+、Ba2+、Ca2+およびFe2+、ならびにこれらの組み合わせなどの金属イオンは、微生物からの回収量を増大するため、および/またはALDCの安定性を高めるため、および/またはALDCの活性を高めるため、ALDCの産生中および/または産生後に培養媒体(発酵培地および/または熟成培地など)に添加される。いくつかの実施形態において、金属イオンは発酵培地および/または熟成培地に、前記金属イオンが前記培地に約1μM~約300μM、例えば、約6μM~約300μM、約1μM~約100μM、約1μM~約50μM、約1μM~約25μM、または約6μM~約25μMの濃度で含まれるように添加される。本明細書で使用する「培養媒体」という用語は、ALDC産生宿主細胞などの微生物の増殖を支える培地を指す。培養媒体の例としては、例えば、主要窒素源として尿素を有し、主要炭素源としてmaltrinを含むMOPsバッファ、およびTSBブロスをベースとする培地が挙げられる。本発明で使用する「発酵培地」という用語は、酵母または他の微生物によって発酵し、例えば、ビール、ワイン、サイダー、ペリーまたは酒を生成することができる炭水化物含有基質を含む培地を指す。発酵培地の例としては、麦汁およびフルーツジュース(ブドウジュース、リンゴジュースおよびナシジュース)が挙げられる。本発明で使用する「熟成培地」という用語は、酵母または他の微生物によって発酵して、例えば、ビール、ワイン、サイダー、ペリーまたは酒が生成されている炭水化物含有基質を含む培地を指す。熟成培地の例としては、一部発酵している麦汁およびフルーツジュース(ブドウジュース、リンゴジュースおよびナシジュース)が挙げられる。金属イオンが添加された培地に関連して使用される「安定性を高める」という用語は、培地に金属イオン(Zn2+)が含まれていない場合の酵素のALDC活性と比較して、金属イオンが含まれていると、より長期間、そのALDC活性が維持されるALDC酵素を指す。金属イオンが添加された培地に関連して使用される「活性を高める」という用語は、培地に金属イオン(Zn2+など)が含まれていない場合の酵素のALDC活性と比較して、金属イオンが含まれていると、より高いALDC活性を有するALDC酵素を指す。金属イオンが添加された培地におけるALDC酵素の収量に関連した「改善されている」という用語は、宿主微生物が金属イオン(Zn2+など)の存在下にあるときに生成されるALDC活性が、宿主微生物が金属イオンの非存在下にあるときに生成されるALDC活性と比較して増大することを指す。理論に拘束されることを望むものではないが、金属イオン(Zn2+など)は、ALDC酵素の安定性を高め、活性を高め、かつ/または収量を増大させるために、培養プロセス(例えば、ALDC生成)中および/または培養プロセス後に添加することができる。
【0111】
いくつかの実施形態において、本発明は、金属イオンを約1μM~約1mM(例えば、約25μM~約150μM、約40μM~約150μM、約60μM~約150μM、約25μM~約100μM、約25μM~約50μM、または30μM~約40μM)の濃度で含むALDC産生宿主細胞用培養媒体を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、金属イオンを約25μM~約100μMの濃度で含むALDC産生宿主細胞用培養媒体を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、金属イオンを約25μM~約50μMの濃度で含むALDC産生宿主細胞用培養媒体を提供する。いくつかの実施形態において、金属イオンは、Zn2+、Mg2+、Mn2+、Co2+、Cu2+、Ba2+、Ca2+およびFe2+ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、金属イオンは、Zn2+、Mn2+およびCo2+からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、金属イオンは、Zn2+、Cu2+およびFe2+からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、金属イオンは、Zn2+である。硫酸亜鉛(ZnSO)は、Zn2+イオン源の例である。硫酸マグネシウム(MgSO)は、Mg2+イオン源の一例である。硫酸マンガン(II)(MnSO)は、Mn2+イオン源の一例である。塩化コバルト(II)(CoCl)は、Co2+イオン源の一例である。硫酸銅(II)(CuSO)は、Cu2+イオン源の一例である。硫酸バリウム(BaSO)は、Ba2+イオン源の一例である。硫酸カルシウム(CaSO)は、Ca2+イオン源の一例である。硫酸鉄(II)(FeSO)は、Fe2+イオン源の一例である。いくつかの実施形態において、前記ALDC酵素の活性は、タンパク質1mg当たり950~2500単位の範囲である。いくつかの実施形態において、前記ALDC酵素の活性は、タンパク質1mg当たり1000~2500単位、または1500~2500単位の範囲である。本明細書で使用する「ALDC産生宿主細胞」という用語は、ALDCをコードする核酸配列の発現を許容する条件下で前記宿主細胞を培養したとき、ALDC酵素を発現することができる宿主細胞を指す。ALDC酵素をコードする核酸配列は、宿主細胞に対し、異種であっても同種であってもよい。本明細書において言及する「ALDC産生宿主株」は、プロテアーゼ欠損株またはプロテアーゼマイナス株である。いくつかの実施形態において、ALDC産生宿主細胞は、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)である。いくつかの実施形態において、ALDC産生宿主細胞は、ALDC酵素をコードし発現する遺伝子を含むバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)であり、ここで、そのALDC酵素は、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号8、またはそれらのいずれかの機能的断片と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ALDC産生宿主細胞は、ALDCをコードする核酸配列を含むバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)であり、ここで、ALDCをコードする前記核酸配列は、配列番号1、配列番号4、配列番号6、またはそれらのいずれかの機能的断片と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%の同一性を有する。いくつかの実施形態において、ALDC産生宿主細胞は、バチルス・ブレビス(Bacillu sbrevis)由来のALDCをコードする遺伝子を含むバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)である。
【実施例
【0112】
以下の実施例で本開示をより詳しく説明するが、特許請求の範囲の開示を決して限定しようとするものではない。添付の図面は、本開示の明細書および説明に組み込まれた一部であるとみなされることが意図されている。以下の実施例は、説明のために提示するものであり、特許請求の範囲の開示を限定するものではない。
【0113】
実施例1 - アセト乳酸デカルボキシラーゼaldBの異種発現
ブレビバチルス・ブレビス(Brevibacillus brevis)(バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)と呼ばれることがある)のアセト乳酸デカルボキシラーゼブレビバチル(ALDC)aldB遺伝子は既に同定されており(Diderichsen et al,J Bacteriol.1990:172(8):4315)、その配列はUNIPROTアクセッション番号P23616.1として登録されている。この遺伝子aldBの配列を配列番号1に示す。太字および下線で強調表示したヌクレオチドはシグナルペプチドをコードするヌクレオチドである。
配列番号1は、aldB遺伝子のヌクレオチド配列を示す。
【化1】
配列番号6は、アセト乳酸デカルボキシラーゼをコードするヌクレオチド配列の一例を示す - 太字および下線で強調表示したヌクレオチドはシグナルペプチドをコードするヌクレオチドである。
【化2】
【0114】
aldB遺伝子でコードされる酵素前駆体を配列番号2に示す。SignalP-NNによって予測されたように、このタンパク質は、N末端に24アミノ酸長のシグナルペプチドを有する(Emanuelsson et al.,Nature Protocols(2007)2:953-971)。このシグナルペプチド配列は、配列番号2で下線が引かれ、太字で示されている。シグナルペプチドの存在は、このアセト乳酸デカルボキシラーゼが分泌酵素であることを示している。予測された完全にプロセッシングされた成熟鎖の配列(aldB、261アミノ酸)を配列番号3に示す。
配列番号2は、アセト乳酸デカルボキシラーゼ(ALDC)aldBのアミノ酸配列を示す。
【化3】
配列番号7は、アセト乳酸デカルボキシラーゼ(ALDC)前駆体aldBのアミノ酸配列の一例を示す - シグナルペプチド配列には下線が引かれ、太字で示されている。
【化4】
配列番号3は、成熟アセト乳酸デカルボキシラーゼ(ALDC)aldB(261アミノ酸)の予測されたアミノ酸配列を示す。
【化5】
配列番号8は、成熟アセト乳酸デカルボキシラーゼ(ALDC)aldB(261アミノ酸)の予測されたアミノ酸配列の一例を示す。
【化6】
【0115】
アセト乳酸デカルボキシラーゼ酵素(ALDC)をコードするaldB遺伝子を、バチルス・サブチリス(B.subtilis)内で、バチルス・サブチリス(B.subtilis)aprEプロモーター、バチルス・サブチリス(B.subtilis)aprEシグナルペプチド配列、成熟aldBおよびBPN’ターミネーターからなる発現カセットを使用して生成した。このカセットをpBNベースの複製シャトルベクターにクローニングし(Babe’et al.(1998),Biotechnol.Appl.Biochem.27:117-124)、バチルス・サブチリス(B.subtilis)株に形質転換した。
【0116】
aldB遺伝子を含有するpBNベクター(pBN-Bbrev-ssoU)のマップを図1に示す。
【0117】
aldBを生成するために、15mlのFalconチューブ内において、pBN-aldBを含むバチルス・サブチリス(B.subtilis)株の形質転換細胞を、ネオマイシン10ppmを含むTSB(培養液)中で16時間培養し、300μlのこの前培養物を、ネオマイシン10ppmを添加した30mLの培養媒体(後述)を入れた500mLのフラスコに加えた。フラスコを33℃で24、48および72時間にわたり180rpmの定速で回転混合させながらインキュベートした。14500rpmで20分間、コニカルチューブ内で遠心分離することにより、培養物を収穫した。培養物の上澄み液は、タンパク質の決定および分析に使用した。培養媒体は、MOPsバッファをベースとし、尿素を主な窒素源、グルコースを主な炭素源とし、頑強な細胞増殖のために1%ソイトンを添加した強化準合成培地とした。
【0118】
pBN-aldBプラスミド中におけるaldB遺伝子のヌクレオチド成熟配列を配列番号4に示す。
【化7】
【0119】
pBN-aldBプラスミドで発現するaldB前駆体タンパク質のアミノ酸配列を配列番号5に示す。
【化8】
【0120】
実施例2 - アセト乳酸デカルボキシラーゼaldBの異種発現
ブレビバチルス・ブレビス(Brevibacillus brevis)株由来のaldB遺伝子は、アセト乳酸デカルボキシラーゼ酵素(ALDC)をコードするが、この遺伝子を、バチルス・サブチリス(B.subtilis)aprEプロモーター、バチルス・サブチリス(B.subtilis)aprEシグナルペプチド配列、成熟aldBおよびBPN’ターミネーターからなる組み込み発現カセットを使用してバチルス・サブチリス(B.subtilis)内で産生させた。このカセットを、発現カセットと相同組み換えによりバチルス・サブチリス(B.subtilis)に導入したaldB発現カセットに関して先頭を合わせた配置方向でクローニングした。
【0121】
aldB遺伝子を含有するベクター(RIHI-aldB)のマップを図2に示す。
【0122】
aldBを生成するために、aldB発現カセットを含むバチルス・サブチリス(B.subtilis)株の形質転換細胞を、15mlのFalconチューブ内の、300ppmのベータ-クロロ-D-アラニン(CDA)を含むTSB(培養液)中で5時間培養し、この前培養物300μlを、300ppmのCDAおよび50μMのZn2+を添加した30mLの培養媒体(後述べ)を入れた500mLのフラスコに加えた。フラスコを33℃で24、48および72時間にわたり180rpmの定速で回転混合させながらインキュベートした。14500rpmで20分間、コニカルチューブ内で遠心分離することにより、培養物を収穫した。培養物の上澄み液は、タンパク質の決定および分析に使用した。培養媒体は、MOPsバッファをベースとし、尿素を主な窒素源、マルトリン(マルトデキストリンおよびコーンシロップの固形物)を主な炭素源とする強化準合成培地とした。
【0123】
実施例3 - タンパク質の決定法
Stain Free Imager Criterionによるタンパク質の決定
SDS-PAGEゲルおよびGel Doc(商標)EZイメージングシステムを用いた濃度測定により、タンパク質を定量した。この分析で使用した試薬:濃縮(2×)Laemmli Sample Buffer(Bio-Rad、カタログ番号161-0737);26-ウェルXT4-12%Bis-Tris Gel(Bio-Rad、カタログ番号345-0125);タンパク質マーカー「Precision Plus Protein Standards」(Bio-Rad、カタログ番号161-0363);タンパク質標準BSA(Thermo Scientific、カタログ番号23208)およびSimplyBlue Safestain(Invitrogen、カタログ番号LC 6060。分析は以下のように行った:96ウェル-PCRプレート中で、50μlの希釈酵素試料を、2.7mgのDTTを含有する50μLの試料バッファと混合した。プレートをBio-Rad製のMicroseal‘B’Filmで密封し、PCR装置に入れ、70°Cまで10分間加熱した。その後、容器をランニングバッファで満たし、ゲルカセットをセットした。次いで、10μLの各試料および標準(0.125~1.00mg/ml BSA)をゲル上に置き、5μLのマーカーを加えた。その後、200Vで45分間電気泳動を行った。電気泳動に続き、ゲルを水で3回、5分間濯ぎ、その後、Safestain中で終夜染色し、最後に水で脱染した。その後、ゲルをImagerに移した。各バンドの強度計算にImage Labソフトウェアを使用した。標準試料のタンパク質の量を知ることにより、検量線を作ることができる。試料の量は、バンド強度および検量線から決定することができる。以下の実施例で示す分析に使用するaldBアセト乳酸デカルボキシラーゼ酵素の試料は、タンパク質定量法を用いて調製した。
【0124】
MS-NおよびC末端アミノ酸決定法によるAldB配列の同定
配列確認の準備として、単離したaldB末端切断変異体のSDS-PAGEゲルを、後に説明するようにLC-MS/MSで分析した。NおよびC末端の決定を含めた配列確認の準備として、aldB酵素試料のSDS-PAGEゲルのタンパク質バンドに一連の化学処理を施した。個々の工程間で、Milli-Q水、50重量%エタノールおよび絶対エタノールをそれぞれ使用してゲル片を洗浄し、収縮させた。タンパク質をDTT/ヨードアセトアミド処理により還元/アルキル化した。リシンの側鎖のアセチル化を防ぐために、グアジニン化工程を実施し、リシンをホモアルギニンへと変換した。スルホ-NHS-酢酸(酢酸スルホスクシンイミジル)を使用するアセチル化反応は、タンパク質のN-末端残基のみを修飾する。40体積%18O水:60体積%16O水、およびタンパク質の消化に使用するタンパク質分解酵素(トリプシンおよびα-キモトリプシン)を含有するバッファでゲル片を膨潤させた。ペプチドの同位体パターンから明らかなように、得られたペプチドは、元の16Oを維持しているカルボキシル末端を除いて、18Oと16Oとの混合物を含有するであろう。N末端タンパク質由来のペプチドは、単にアセチル化されたペプチドとして生成するであろう。消化後、5重量%ギ酸およびアセトニトリルを用いてゲル片からペプチドを抽出し、次いで凍結乾燥させ、0.1重量%TFAに再溶解させた。消化生成物を分離(C18カラム)し、Proxeon nano-LCシステム、続いてLTQ Orbitrap(Thermo Fisher)高分解能質量分析計で分析し、ペプチドのMS/MSフラグメントスペクトルおよびペプチドの同位体パターンからアミノ酸配列を推定した(Xcalibur 2.0 SR2ソフトウェアを使用)。
【0125】
この分析に基づき、上記のアセチル化および18O-ラベル法により、単離された完全長タンパク質のN末端はA[25]で始まることが確認され(配列番号2により)、また単離された完全長タンパク質のC-末端はK[285]位で終わることが確認された(配列番号2により)(表1を参照)。成熟aldBのN-末端位A[25]は、遺伝子転写産物のSignalP-NNシステム(Emanuelsson et al.,(2007),Nature Protocols,2:953-971)に設定した、Signal P 3.0プログラム(http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/)による決定で予想されたシグナルペプチドの開裂と一致する。異なるNおよびC末端切断変異体をさらに同定し、配列番号2におけるそれらの個々のNおよびC末端の位置を表1に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
実施例4 - 活性分析法
α-アセト乳酸デカルボキシラーゼの分光光度分析
α-アセト乳酸デカルボキシラーゼ(ALDC)はα-アセト乳酸のアセトインへの脱カルボキシル化反応を触媒する。反応生成物のアセトインは、比色分析により定量化することができる。α-ナフト-ルおよびクレアチンと混合したアセトインは、OD522nmで特徴的な赤色吸収を示す。OD522nmおよびアセトイン検量線に基づいてALDC活性を算出した。分析は以下のように行った:100μLのエチル-2-アセトキシ-2-メチルアセトアセテート(Sigma、カタログ番号220396)と3.6mlの0.5M NaOHとを10℃で10分間混合することにより、20mMのアセト乳酸基質を調製した。20mlの50mM MES(pH6.0)を添加し、pHをpH6.0に調節し、50mMのMES(pH6.0)により体積を25mlに調節した。80μLの20mMアセト乳酸基質を、50mM MES(pH6.0)、0.6M NaCl、0.05%BRIJ35および0.01%BSAで希釈した20μLの酵素試料と混合した。基質/酵素混合物を30℃で10分間インキュベートした。その後、16μLの基質/酵素混合物を200μLの1M NaOH、1.0%α-ナフトール(Sigma、カタログ番号33420)および0.1%クレアチン(Sigma、カタログ番号C3630)中に移した。基質/酵素/発色試薬混合物を30℃で20分間インキュベートし、その後OD522nmを読み取った。ALDC活性の1単位を、この分析条件下で毎分1μモルのアセトインを生成する酵素の量と定義する。
【0128】
実施例5 - バチルス・サブチリス(B.subtilis)の各種プロテアーゼ欠損株におけるaldBの発現分析
バチルス・サブチリス(B.subtilis)におけるaldB遺伝子の組み換えタンパク質発現に適した宿主を同定するために、種々の数のプロテアーゼ遺伝子をノックアウトした、3種の異なる株を試験した(2-欠損、5-欠損および7-欠損)。本明細書で使用する「ノックアウトされた」という用語は、遺伝子がノックアウトされていない親株と比べて遺伝子の発現がないか、もしくは低減するような、および/またはその遺伝子によってコードされるポリペプチドの量がゼロかもしくは減少するような遺伝子の不活性化を指す。遺伝子は、例えば、遺伝子もしくはその一部または調節要素(プロモーターなど)を欠損させることにより、または遺伝子もしくは調節要素(プロモーターなど)の少なくとも一部に配列を挿入することにより不活性化し得る。本明細書で使用する「2-欠損」という用語は、2つのプロテアーゼ遺伝子をノックアウトしたバチルス・サブチリス(B.subtilis)を指す。本明細書で使用する「5-欠損」という用語は、5つのプロテアーゼ遺伝子をノックアウトしたバチルス・サブチリス(B.subtilis)を指す。本明細書で使用する「7-欠損」という用語は、7つのプロテアーゼ遺伝子をノックアウトしたバチルス・サブチリス(B.subtilis)を指す。本明細書で使用する「5-欠損」株は「2-欠損」株から得られ、したがって、5-欠損株は、「2-欠損」で欠損した遺伝子と同じ2つのプロテアーゼ遺伝子と、別の3つのプロテアーゼ遺伝子とが欠損している。本明細書で使用する「7-欠損」株は「5-欠損」株から得られ、したがって、7-欠損株は、「5-欠損」で欠損した遺伝子と同じ5つのプロテアーゼ遺伝子と、別の2つのプロテアーゼ遺伝子(すなわち、vprおよびwprA)とが欠損している。ノックアウトし得るプロテアーゼ遺伝子の例としては、vpr、wprA、Epr、IspA、Bpr、NprE、AprE、ampS、aprX、bpf、clpCP、clpEP、clpXP、codWX、lonA、lonB、nprB、map、mlpA、mpr、pepT、pepF、dppA、yqyE、tepA、yfiT、yflG、ymfF、ypwA、yrrN、yrrOおよびywaDをコードする遺伝子が挙げられる。「ノックアウトされた」という用語は、「破壊された」または「欠損した」という用語と互換的に使用し得る。遺伝子[配列番号4の]をpBN-ssoU発現ベクターに挿入し、実施例1に記載のように継時的に試料を取り出した。酵素試料を試料バッファ中で凍結させて、分解がさらに進まないよう制限し、aldB中に芳香族残基が存在しないことから、Coomassie染色を使用して、Criterion SDS-PAGE分析により全試料を一括して分析した(実施例3も参照)。2-、5-および7-欠損プロテアーゼ株におけるaldB発現体のSDS-pageを、醗酵時間24、48および72時間の試料のそれぞれについて図3に示す。完全長aldB(ゲル中で約35kDa)として、またはその切断変異体(ゲル中で28~35kDa)として同定されたバンドには、ゲル上にマークを付している。aldB変異体を、実施例3の方法に記載したMS配列決定により同定した。2-欠損プロテアーゼ株のaldB発現体に顕著な分解が観察され、醗酵過程で完全長タンパク質は検出されず、28および30kDaの分子量の切断生成物が存在した。5-欠損株でもAldB切断生成物が観察されたが、醗酵開始時(24および48時間)に完全長タンパク質が存在し、切断生成物は、2-欠損株の切断生成物と比較してより大きかった(ゲル中で32~35kDa)。完全長タンパク質から2つの主要な切断生成物への転換は、5-欠損株の醗酵過程の24時間から72時間にかけて進行するようと思われる。7-欠損プロテアーゼ株におけるaldB発現体は、醗酵の全過程を通して完全長aldBタンパク質のみを生成していることが観察され、切断生成物は検出されなかった。
【0129】
(実施例4)に記載したように、醗酵試料からALDC活性を決定し、これを表2に示す。2-欠損および5-欠損株では、活性は48時間後にピークを示し、その後、72時間後に低下した。7-欠損株では、aldB発現体の活性は醗酵期間を通して増加を続けた。72時間後に5-欠損株が最大の活性(658U/mL)を示し、7-欠損株(538U/mL)および2-欠損株(61U/mL)が続いた。
【0130】
【表2】
【0131】
Criterionソフトウェア(Image LabTMSoftware、BIO-RAD)を使用し、標準としてウシ血清アルブミンを用い、発現したaldBタンパク質の濃度を定量し、完全長および切断生成物の総和としてaldBタンパク質の濃度を計算した(図3に示す)。aldBタンパク質は、2-欠損および5-欠損では発酵48時間まで増加し、7-欠損株では醗酵中に増加を続け、醗酵72時間後に最大になった。醗酵72時間後、aldB濃度は、それぞれ2-欠損株で0.32mg/mL、5-欠損株で1.09mg/mL、7-欠損株で0.68mg/mLであった。
【0132】
【表3】
【0133】
ALDCの比活性を計算し、表4に示す。比活性は全ての株で醗酵期間を通して減少を続ける。全ての時点で、5-欠損株および2-欠損株と比べて7-欠損株は、観察された比活性が最大であった。醗酵72時間後の2-、5-および7-欠損株のALDC比活性は、188、602および796U/mgであった。
【0134】
【表4】
【0135】
5-欠損株の醗酵初期および7-欠損株からの物質に観察される高比活性(≧800U/mg)は、試料中の完全長タンパク質の相対的な量(表4参照)と相関があり、aldB切断生成物が効果のより低いaldB酵素変異体を構成していることを明確に示唆している。これは、7-欠損株でさらに欠損した2つのプロテアーゼ、すなわち細胞外セリンプロテアーゼ(vpr)および細胞壁プロテアーゼ(wprA)がaldB酵素の発現に重要な役割を果たしていることを示唆している。
【0136】
【表5】
【0137】
実施例6 - 2-欠損、5-欠損および7-欠損バチルス(Bacillus)株酵素のプロテアーゼスポットプレートアッセイ
カゼインスポットプレートアッセイの原理は、カゼインプレート上のハロー形成により、プロテアーゼ活性/加水分解を観察することである。
【0138】
バッファ:100mMのMcllwaine、pH6.0(22.48gのNaHPO.2HOおよび7.74gのC・HOを秤量し、1000mlのddHOに溶解)、および0.1M酢酸ナトリウムバッファ、pH5.60(7.46gの無水酢酸ナトリウムを800mlの蒸留HOに溶解する。酢酸でpHを5.60に調節する。1000mlになるまで満たし、必要に応じてpHを調節する)。
【0139】
プレート:2%カゼインおよび2%アガロースを(別々に)McIlwaineバッファに懸濁させ、両方の溶液をマイクロ波オーブンで約5分間加熱する。それらを穏やかに混合する(温度が約70℃の場合)。約20~30mlをペトリ皿に注ぎ、冷やしておく。
【0140】
内径1mmの小さi穴をゲルに穿ち、5μlの酵素溶液を穴に入れ、プレートを40℃でインキュベートした。カゼインゲル中のハローは時間の関数として形成される。比較のため、穴の1つにバッファのみのブランク液を添加した。ポジティブコントロールとして、バチルス・サブチリス(B.subtilis)由来の中性プロテアーゼnprE(EC.3.4.24.28)を使用した。1gのnprE(Veron W)試料を10mlの0.1M酢酸ナトリウムバッファ(pH5.6)中で希釈し、10分間混合した。その後、Whatman GF/Aにより試料をろ過し、5μlのnprE酵素溶液をプレートに移した。
【0141】
2-欠損、5-欠損および7-欠損株のaldBを含むカゼインスポットプレートを40℃で2日間インキュベーションした後の結果を図4に示す。ポジティブコントロールおよび2-欠損株のaldBには明確なハロー形成が見られる。5-欠損および7-欠損株では、前者で非常にかすかなハロー形成が見られ、後者ではハロー形成は見られなかった。
【0142】
10日間のインキュベーション後の結果では、2-欠損株からのものにおいて強いハロー形成、5-欠損株からのものにおいて小さいハローが見られ、7-欠損株からのものにはハローが見られない。これは、2-欠損株酵素でプロテアーゼ活性が最も高く、プロテアーゼのノックアウト順に、5-欠損株酵素および7-欠損株酵素で低下することを明確に示唆するものである(予想通り)。
【0143】
実施例7 - aldBによるビール醗酵時のジアセチルおよび2,3-ペンタンジオンの低減
この分析の目的は、種々のアセト乳酸デカルボキシラーゼ変異体の、14℃、7日間の醗酵でのジアセチルおよび2,3-ペンタンジオン(ビシナルジケトン、VDK)の生成を抑制する能力を試験することであった。
【0144】
ピュアモルト醸造酒の分析
1100gのMunton製Light Malt Extract(Batch XB 35189、有効期限2014年5月24日)抽出物を3000mlの温水道水に溶解した(45℃)。液体が均質になるまで、このスラリーを約10分間撹拌し、2.5M硫酸でpHを5.2に調節した。スラリーにHopfenveredlung、St.Johannから入手したビターホップを10ペレット加えた:アルファ酸含有量16.0%(EBC7.7 0規定HPLC分析、2013年10月1日)、その後、500mlのブルーキャップボトル(blue-cap bottle)に分割し、1時間沸騰させることによって確実にタンパク質を沈殿させ、潜在的細菌汚染を回避した。最終の麦汁の初期比重は1048(すなわち12°プラート)であった。ろ過した麦汁200gを500mlのコニカルフラスコに加え(醗酵容器;FV)、その後、13℃に冷却した。各コニカルフラスコに0.5%の最近製造された酵母、W34/70(Weihenstephan)を加えた(麦汁200g当たり、酵母1.0g)。類似のALDC活性となるよう酵素を加えた(0.04U/mL-麦汁、麦汁200g当たり8ALDC単位)。酵素を加えないコントロール醗酵では、酵素試料の量に対応する量の脱イオン水を加えた。
【0145】
研究室の標準の試験条件で、すなわちオービタルインキュベーター内で150rpmの穏やかな撹拌を行いながら、14℃で500mlコニカルフラスコ内の麦汁試料を醗酵させた。24時間で重量減少が0.25g未満になれば、醗酵温度を7℃に下げた。トータルで8日後に醗酵を停止させた。ジアセチルおよび2,3-ペンタンジオンの分析のために、1日に2回、好ましくは11~14時間の間隔で14mlの試料を採取し、醗酵の終了時には1日に1試料のみ採取した。採取前に酵母を沈降させ、各試料を10℃で10分間冷却し、その後、8℃で10分間、4000rpmで遠心分離を行い、全ての残留酵母を沈殿させた。この上澄み液を酵母から分離し、GC分析用試料に試料1ml当たり0.5gのNaClを加えた。このスラリーをヘッドスペースバイアルに移し、65℃で30分間の熱処理後、質量スペクトル検出器を備えたガスクロマトグラフィー(GCMS)により、ジアセチルおよび2,3-ペンタンジオンを分析した。
【0146】
分析は、CombiPALヘッドスペースオートサンプラーならびにMSChemStationデータ収録および分析ソフトウェアを備えたAgilent 6890N/5973N GCで行った。70℃で10分間、試料を平衡化させた後、試料上部の気相500μlをJ&W 122-0763 DB-1701カラム(60m×内径0.25mm×1μm)に注入した。注入温度を260℃とし、2ml/minの一定のヘリウム流量でシステムを操作した。オーブン温度は、50℃(2分間)、160℃(20℃/min)、220℃(40℃/min)とし、2分間保持した。MS検出は、選択したイオンでスプリット比5:1の500μLにおいて行った。全ての試料について2度行い、ジアセチルまたは2,3-ペンタンンジオンを加えた水道水を使用して標準を調製した。化合物の濃度は、次式で算出される:
【数1】
式中、
RFは酢酸の応答係数であり、
Areaは酢酸のGC面積であり、
使用した試料の量(単位:mL)である。
【0147】
ジアセチルの定量限界は0.016mg/L、2,3-ペンタンジオンの定量限界は0.012mg/Lと決定された。
【0148】
ALDC酵素の添加が真正醗酵度(RDF)および生成したアルコールの体積に影響を及ぼさなかったことの確認のために、Anton Paar(DMA 5000)を使用し、Standard Instruction Brewing,23.8580-B28に従ってRDFを測定し、Standard Instruction Brewing,23.8580-B28によりアルコールを測定した。
【0149】
真正発酵度(RDF)は、下記式により算出することができる:
【数2】
式中、RE=真正エキス濃度=(0.1808×initial)+(0.8192×final)であり、initialは醗酵前の標準化麦汁の比重であり、finalはプラート度で表した醗酵麦汁の比重である。
【0150】
これに関連して、真正発酵度(RDF)は比重とアルコール濃度とから決定した。
【0151】
Beer Alcolyzer PlusおよびDMA 5000比重計(両方ともAnton Paar、Gratz、Austriaより入手)を使用し、醗酵試料について比重およびアルコール濃度を決定した。これらの測定に基づき、下記式より真正発酵度(RDF)を算出した:
【数3】
式中、E(r)はプラート度(°P)で表した真正エキス濃度であり、OEは°Pを単位とする原麦汁濃度である。
【0152】
バチルス・サブチリス(B.subtilis)のそれぞれ2-欠損、5-欠損および7-欠損株のaldBを添加することにより、14℃、7日間の醗酵におけるジアセチルおよび2,3-ペンタンジオン(ビシナルジケトン、VDK)の生成を抑制する能力を調べた。3回の別々の醗酵を行い、上記のようにしてVDKの生成を分析した。酵素を含む醗酵を酵素無添加のコントロールと常に比較した。比較のため、VDK含有量(ジアセチルおよび2,3-ペンタンジオンの和と定義される)の計算値を、酵素を含まないコントロール試料で得られた最大値に対して正規化(観察された絶対最大が1.48~2.76mgVDK/Lと変動するからである)し、結果を図5に示す。コントロールと比べると、3種のaldB酵素全てが醗酵中のVDKの生成を抑制した。しかしながら、約40時間後に形成されるVDKのピークを検討すると、明らかに酵素の作用が異なることがわかる。形成されたVDKピークにおける相対抑制率は、2-欠損、5-欠損および7-欠損株のaldBでそれぞれ22.0、25.6および62.7%であった。さらに、VDKレベルをジアセチルのフレーバー閾値である0.1mg/mL未満より低くするのに要する醗酵時間は、2-欠損、5-欠損および7-欠損株のaldBを含有する醗酵で、それぞれ約138、163および97時間であることが観測された。併せると、ビール醗酵中のVDKの抑制に関するALDCの性能は、7-欠損株で生成されたaldBで最大であり、5-欠損および2-欠損株のaldBではそれより低いようである。
【0153】
本発明の好ましい実施形態を本明細書で示し、説明してきたが、当業者には、そのような実施形態が例示のためにのみ提示されていることは明らかであろう。今や、当業者には、本発明から逸脱することなく、非常に多くの変形形態、変化形態および置換形態が想到されるであろう。本明細書に記載した本発明の実施形態に対する各種代替形態が、本発明を実施するにあたり使用され得ることは理解されるべきである。以下の請求項は、本発明の範囲を定義するものであり、これらの請求項の範囲内の方法および構造、ならびにそれらの均等物は、それらの請求項に包含されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5A-5B】
図5C
【配列表】
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