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特許7320945複合材料の中間層としてのハイブリッドベール
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】複合材料の中間層としてのハイブリッドベール
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20230728BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20230728BHJP
   B32B 11/02 20060101ALI20230728BHJP
   B32B 27/04 20060101ALI20230728BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20230728BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20230728BHJP
   C08K 3/10 20180101ALI20230728BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20230728BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20230728BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20230728BHJP
   D04H 1/413 20120101ALI20230728BHJP
【FI】
C08J5/04 CEV
C08J5/04 CFD
C08J5/04 CFG
B32B5/28 A
B32B11/02
B32B27/04 Z
C08J5/24 CEY
C08K3/08
C08K3/10
C08L77/00
C08L79/08 B
C08L101/02
D04H1/413
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018523518
(86)(22)【出願日】2016-11-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-02-14
(86)【国際出願番号】 US2016061506
(87)【国際公開番号】W WO2017083631
(87)【国際公開日】2017-05-18
【審査請求日】2019-10-21
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-13
(31)【優先権主張番号】62/254,224
(32)【優先日】2015-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517318182
【氏名又は名称】サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】レストゥッシア, カルメロ ルーカ
(72)【発明者】
【氏名】ブラックバーン, ロバート
【合議体】
【審判長】磯貝 香苗
【審判官】中村 和正
【審判官】加藤 友也
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-527626(JP,A)
【文献】特開平11-200218(JP,A)
【文献】特開平9-310296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16
B29B15/08-15/14
C08J5/04-5/10
C08J5/24
B32B1/00-43/00
D04H1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性であり、自立しており、かつ液体およびガスに対して透過性であるハイブリッドベールであって、
(a)不織布構造物の形態の混ぜ合わせられた不規則に配列された繊維と、
(b)前記不織布構造物の全体にわたって分散された粒子であって、前記粒子の大部分が前記不織布構造物の厚みにわたって浸透している粒子と、
(c)ベールの全体にわたって存在しているポリマーまたは樹脂バインダーを含み、
前記不織布構造物の前記繊維が、約3mm~約18mmの範囲の長さを有する細断繊維であり、炭素繊維、熱可塑性繊維、またはそれらの組合せから選択され、
前記粒子が、ポリマー粒子、コア-シェル粒子、および異なった材料の混合物から形成される複合粒子から選択され、
前記バインダーが前記ベールの全重量に基づいて5重量%~25重量%の量において存在しており、
前記粒子が、レーザー回折によって測定されるとき、約10μm~約50μmの範囲の粒度分布d50を有する、
ハイブリッドベール。
【請求項2】
12gsm以下の面積重量を有する、請求項1に記載のハイブリッドベール。
【請求項3】
前記ベール中の繊維の粒子に対する重量比が5:1~1:1の範囲内である、請求項1に記載のハイブリッドベール。
【請求項4】
前記粒子が、熱可塑性ポリマー、弾性ポリマー、および架橋熱可塑性ポリマーから選択される1つまたは複数のポリマーを含むポリマー粒子である、請求項1に記載のハイブリッドベール。
【請求項5】
前記粒子がポリアミドまたはポリイミド粒子である、請求項4に記載のハイブリッドベール。
【請求項6】
前記粒子が、少なくとも1つのポリマーと金属、金属合金、および炭素から選択される少なくとも1つの導電材料とを含む混合物から形成される複合粒子である、請求項1に記載のハイブリッドベール。
【請求項7】
前記バインダーが、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンビニルアルコール(PEVOH)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルエーテル、ポリ塩化ビニル(PVC)およびポリビニルエステルなどのビニル;ポリスチレンブタジエンおよびポリブタジエンアクリロニトリルなどのブタジエン;シリコーン;ポリエステル;ポリアミド;架橋ポリエステル;スチレンアクリル樹脂およびアクリロニトリルアクリル樹脂などのアクリル樹脂;エポキシ;フェノキシ;フェノール類;ポリウレタン;フェノールホルムアルデヒド樹脂;尿素ホルムアルデヒド樹脂;それらのコポリマーおよびそれらの組合せから選択される成分を含む、請求項1に記載のハイブリッドベール。
【請求項8】
各々のプリプレグプライが、硬化性母材樹脂で含浸された強化繊維の層を含む、積層配列において配列されたプリプレグプライの積み重ねと、
2つの隣接したプリプレグプライの間に挟まれた請求項1に記載の少なくとも1つのハイブリッドベールと
を含む、複合積層体。
【請求項9】
液体樹脂に対して透過性である複数の繊維層と、
2つの隣接した繊維層の間に挟まれた請求項1に記載の少なくとも1つのハイブリッドベールと
を含む、液体樹脂注入のために構成された繊維予備成形物。
【請求項10】
前記繊維層が織布および不織布、および多軸布から選択される、請求項に記載の繊維予備成形物。
【請求項11】
硬化性樹脂で含浸された強化繊維と、前記硬化性樹脂に埋め込まれた請求項1に記載のハイブリッドベールとを含むプリプレグ。
【請求項12】
前記強化繊維が一方向炭素繊維である、請求項11に記載のプリプレグ。
【請求項13】
請求項1に記載のハイブリッドベールに積層された一方向強化繊維の層を含む自動テープ敷設(ATL)または自動繊維配置(AFP)法において使用するために適した繊維テープであって、
3.17mm~305mmの狭い幅およびその幅の少なくとも10倍である連続長を有し、
液体樹脂に対して透過性である、繊維テープ。
【請求項14】
一方向繊維を含む少なくとも1つの布プライと、
前記布プライに付着された請求項1に記載のハイブリッドベールと
を含む、液体樹脂が注入され得る布。
【請求項15】
互いに平行に配列された一方向繊維トウ、および
製織パターンで前記一方向繊維トウと混ぜ合わせられた不織布材料のストリップ
を含む液体およびガスに対して透過性である織布であって、
各々の一方向繊維トウが複数の連続繊維フィラメントからなり、
前記不織布材料が請求項1に記載のハイブリッドベールである、織布。
【請求項16】
各々のプリプレグが硬化性母材樹脂と前記母材樹脂中に埋め込まれた強化繊維とを含む、複数のプリプレグを積層配列において積み重ねる工程と、
請求項1に記載の少なくとも1つのハイブリッドベールを隣接したプリプレグの間に挟む工程と、
前記プリプレグの積み重ねを団結および硬化する工程とを含む、複合構造物を製造するための方法であって、
団結および硬化後に、少なくとも1つのハイブリッドベールが、60μm未満の厚さを有する層間領域を形成する、複合構造物を製造するための方法。
【請求項17】
液体樹脂に対して透過性である繊維予備成形物を形成する工程であって、前記繊維予備成形物が、複数の繊維層と、隣接した繊維層の間に挟まれた請求項1に記載の少なくとも1つのハイブリッドベールとを含む工程と、
前記繊維予備成形物に1つまたは複数の熱硬化樹脂を含む液体樹脂を注入する工程と、
樹脂が注入された予備成形物を硬化する工程とを含む、複合構造物を製造するための方法であって、
硬化後に、少なくとも1つのハイブリッドベールが、80μm未満または60μm未満の厚さを有する層間領域を形成する、複合構造物を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
繊維強化ポリマー複合材の使用は、航空宇宙一次構造物、例えば、飛行機の胴体において、ならびに高性能スポーツ用品、海洋および風力エネルギー構造物においてますます普及している。繊維強化ポリマー複合材の利点には、構成要素の著しい低減、ならびにファスナーおよび接合部の必要性の低減を可能にする、高い強度対重量比、すぐれた疲労耐久度、耐蝕性および可撓性が含まれる。
【0002】
繊維強化複合材料を製造するための従来の方法は、強化用繊維を硬化性母材樹脂で含浸してプリプレグを形成する工程を包含する。この方法はしばしば、「プリプレグ化」方法と呼ばれる。構造用複合材部品は、プリプレグの複数層を成形面上に積み重ねて、その後に、団結および硬化することによって製造されてもよい。
【0003】
もっと最近では、繊維強化ポリマー複合材部品は、樹脂トランスファー成形(RTM)および真空補助樹脂トランスファー成形(VARTM)など、液体樹脂注入方法によって製造される。典型的な樹脂注入方法において、乾燥繊維材料の予備造形された予備成形物を型内に置き、次に予備成形物を直接にin-situ注入するために液体樹脂を通常は高圧下で、型内に射出する。予備成形物は、樹脂含浸プリプレグが積み重ねられる方法と同様に積み重ねられる、強化用繊維または織布の複数の無樹脂層から構成される。樹脂注入後に、樹脂が注入された予備成形物を硬化サイクルに従って硬化させ、完成複合材物品を提供する。樹脂注入において、樹脂が注入される予備成形物は決定的な要素である-予備成形物は本質的に、樹脂を受け入れる構造部品である。液体樹脂注入技術は、他の場合なら従来のプリプレグの積み重ね技術を使用して製造するのが難しい複雑な形状の構造物を製造するのに特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】本開示の実施形態によるハイブリッドベールの略図である。
図2】湿式方法によって形成された実際のハイブリッドベールのコンピュータ断層撮影によって得られた3D再生像である。
図3A】ベールの表面上に散乱された強靭化用粒子を有する不織ベールを含有する同様な硬化複合積層体と比較して層間領域にハイブリッドベールを含有する硬化複合積層体を図解的に示す。
図3B】ベールの表面上に散乱された強靭化用粒子を有する不織ベールを含有する同様な硬化複合積層体と比較して層間領域にハイブリッドベールを含有する硬化複合積層体を図解的に示す。
図4A】凹形成形面および凸形成形面、それぞれの上で複合積層体上に作用する力を図解的に示す。
図4B】凹形成形面および凸形成形面、それぞれの上で複合積層体上に作用する力を図解的に示す。
図5A-D】ハイブリッドベールがその中に一体化された改質プリプレグを製造するための様々な実施形態を示す。
図6】本開示の実施形態による織布を図解的に示す。
図7】走査型電子顕微鏡(SEM)によって撮られた典型的なハイブリッドベールの上面画像を示す。
図8A-B】GIc試験に供せられた後に亀裂経路伝播を示す、異なったハイブリッドベールが挟まれる、2つの硬化複合パネルの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
従来の繊維/樹脂複数層状複合材(または複合積層体)の主な弱さは、それらの低い層間破壊靭性であり、それは高いエネルギー力の衝撃時に複合材層を離層させる。2つの層が互いに脱接着する時に離層が起こる。改良された耐離層性を有する硬化複合材は、改良された衝撃後圧縮強さ(CSAI)および破壊靭性を有する硬化複合材である。CAIは、複合材料が損傷を許容する能力を測定する。CAIを測定する試験において、複合材料を所定のエネルギーの衝撃に供し、次に圧縮において負荷する。破壊靭性は、亀裂が存在している時に材料の耐脆性破壊性を表わす定量的方法であり、新たに生じた破壊表面積の単位当たりの破壊中に散逸されるエネルギーである、歪エネルギー解放率(G)として定量化されてもよい。Gは、GIc(モード1-開口モード)またはGIIc(モードII-面内剪断)を包含する。下付き文字「Ic」は、亀裂に垂直な垂直引張応力下に形成される、モードI亀裂開口を意味し、下付き文字「IIc」は、亀裂の面に平行におよび亀裂前縁に垂直に作用する剪断応力によって生じたモードII亀裂を意味する。離層の開始および成長はしばしば、モードIおよびモードIIの破壊靭性を調べることによって決定される。
【0006】
複数層状複合材または複合積層体の厚さ方向の弱い性質のために、層間亀裂または離層は、特にこのような不良モードはしばしば外部から可視的でないので、複数層状複合材において重要な主な不良モードである。層間破壊靭性は、疲労、圧縮、または衝撃後の圧縮などの条件下で複合材の性能を評価する基準パラメーターである。これらの条件下で、モードIおよびII負荷による離層は、材料の不良の本質的原因である。離層をもたらす亀裂および欠陥は、材料の性質の局所的なばらつき、製造中に生じるボイドもしくは他の欠陥から生じる、または使用時に受ける損傷によって生じる場合がある。
【0007】
さらに、従来のプリプレグの積み重ね方法によって製造されるL、UまたはZ異形材などの曲がった形材を有する複雑な複合材部品はしばしば、曲がった領域において減少した厚さを示す。このような現象は、離層または亀裂などのあらゆる機械的破損を伴わずに負荷耐性要件がより薄い部品によってまだ満たされ得るかどうか検査するために構造物を再分析する必要性をもたらす。厚さ対半径比が増加するとき、厚さの変化もまた増加し、したがって、複合積層体中の全てのプリプレグプライは、それを超えると使用することができない臨界比を有する。複合積層体を団結する間に圧密以外の力を適用して薄化現象を最小にすることができるが、繊維強化材の構造および樹脂組成物はまだ、よりいっそう複雑な幾何学形状および構成要素を製造するのに制限要因である。
【0008】
より複雑な幾何学形状を有する複合構造物は、RTMおよびVaRTMなどの液体樹脂注入方法によって製造されてもよい。樹脂注入方法において、予備成形物を型内に配置し、それに硬化性液体樹脂を射出して繊維層を浸潤する。RTMおよびVaRTMシステムのための母材樹脂は、予備成形物の完全な湿潤および注入を可能にする非常に低い射出粘度を有さなければならない。複合材料の靭性を改良する先行の試みには、樹脂が型内に射出される前に可溶性熱可塑性強靭化剤を樹脂に添加する工程が含まれていた。しかしながら、樹脂に熱可塑性強靭化剤を添加することによって粘度の増加がもたらされ、したがって、添加することができる強靭化剤の量は、液体樹脂の射出のために必要である低い粘度によって制限される。この制限は、プリプレグに慣例的に添加される強靭化剤の添加を液体樹脂注入用途において不適当にする。
【0009】
別の解決策は、樹脂の注入前に不溶性熱可塑性粒子またはゴム強靭化用粒子を樹脂中に分散させることであった。しかしながら、粒子は非常に小さい(例えばサブミクロンサイズ)ものでなければ、粒子は、予備成形物中の強化繊維によってフィルターされ、粒子の不均一な分布および最終生成物中の粒子の望ましくない局在濃度をもたらす。さらに、このフィルタリング効果は、樹脂をさらに射出または注入しないように予備成形物の完全な遮断をもたらす場合がある。また、樹脂注入において使用される液体樹脂に添加され得る粒子のタイプおよび量が限定される。
【0010】
プリプレグ、樹脂注入のための予備成形物、自動堆積方法、例えば自動繊維配置(AFP)および自動テープ敷設(ATL)のために適した布および乾燥繊維素材などの複数複合材製品の形態のために適した多機能性の層間強靭化の解決策が依然として必要とされている。バルク導電率を維持または改良しながら硬化積層体の破壊靭性および圧縮強さ性質を同時に改良することができ、また、曲がった形材を有する複合材部品の薄化問題に結びついた現在の材料の制限条件を克服することもできる多機能性の層間材料を有することが望ましい。
【0011】
「ハイブリッドベール」とも称される、多機能性ベールならびにこのようなベールがその中に組み込まれた複合積層体、プリプレグ、布、および繊維予備成形物が本明細書に記載される。
【0012】
ハイブリッドベール
本明細書に開示されているハイブリッドベールは、繊維強化ポリマー複合材中の層間材料として使用されてもよい低面積重量多機能性ベールである。ハイブリッドベールは、混ぜ合わせられた、不規則に配列された繊維と不織布構造物の全体にわたって分散された粒子とから構成される可撓性、自立性の不織布構造物であり、そこで粒子の大部分が不織布構造物の厚みにわたって浸透している。一実施形態において、粒子は、不織布構造物の全体にわたって均質に分散される。また、ベールは、繊維と粒子とを一緒に保持すると共にベールの結合性を維持するために十分な量において少量のポリマーまたは樹脂バインダーを含有する。バインダーはベールの全体にわたって存在している。それ故に、ベールは自立性である-それは別の支持キャリアを必要としない別個の構造であることを意味する。粒子は繊維と混合され、ポリマー粒子の少なくとも一部が不織布構造物の繊維の間に存在している。粒子は、バインダーと、混ぜ合わせられた繊維によって作られる機械的絡み合わせ機構との組合せのために不織布構造物の全体にわたって所定の位置に保持される。図1は、断面図を示す、典型的なハイブリッドベールの略図である。図2は、湿式方法によって形成され、コンピュータ断層撮影によって走査された実際のベールの3D(三次元)再生像である。図2に示されるベールは、不織布炭素繊維とポリイミド粒子とから構成される。5×5×25mmのサイズの不織布試料が325nmの解像力で走査された。1600の単独の二次元X線放射線写真を獲得し、三次元体積に再現した。次に、炭素繊維と粒子とを分割して、不織布構造のマッピングおよび同定を可能にした。
【0013】
ハイブリッドベールは12gsm以下、例えば、5gsm~12gsmの面積重量を有してもよい。ベール中の繊維の、粒子に対する重量比は5:1~1:1であってもよい。
【0014】
ハイブリッドベールを構成する不織繊維は、炭素繊維もしくは熱可塑性繊維、または異なった繊維の組合せであってもよい。炭素繊維は金属被覆されてもよい。金属被覆は、限定されないが、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、銅、鉛、スズ、アルミニウム、チタン、合金およびそれらの混合物などの任意の適した金属からなってもよい。
【0015】
熱可塑性繊維には、ポリアミド、例えば脂肪族ポリアミド(PA)、脂環式ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリフタルアミド(PPA)、エーテルまたはエステルブロックポリアミド(PEBAX、PEBA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、フェニルトリメチルインダン構造を有するポリイミド、ポリアミドアミド(PAI)、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、例えばポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルスルホン-エーテルエーテルスルホン(PES:PEES)、ポリエーテルエーテルスルホン(PEES)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、例えばポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルニトリル、ポリベンゾイミダゾール、熱可塑性エラストマー、液晶ポリマー(LCP)、それらの組合せおよびコポリマーから製造される繊維が含まれる。
【0016】
いくつかの実施形態において、ベール中の不織繊維は、3mm~18mmの範囲の長さを有する細断繊維である。不織繊維の大部分は、約3.0μm~15μmの範囲の断面直径を有し、いくつかの実施形態において、直径が≦5.5μmである。
【0017】
ハイブリッドベールが繊維強化ポリマー複合材中に組み込まれるとき、粒子は層間強靭化材料として機能する。本明細書において開示される目的のために適している粒子には、熱可塑性粒子およびエラストマー粒子、異なった材料の混合物から形成される複合粒子、ならびにコア-シェル粒子が含まれる。コア-シェル粒子は、1つまたは複数のシェルによって囲まれるコアを有する粒子を意味する。
【0018】
より具体的には、粒子は、脂肪族ポリアミド(PA)、脂環式ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリフタルアミド(PPA)、エーテルまたはエステルブロックポリアミド(PEBAX、PEBA)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)およびポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエステル、ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエーテルニトリル、ポリベンゾイミダゾール、熱可塑性エラストマー、液晶ポリマー(LCP)、それらのコポリマー、およびそれらの誘導体から選択されるポリマー粒状形態であってもよい。特に適しているのは、例えばPA-10,10または微結晶性PA-12などのポリアミドの粒子である。
【0019】
いくつかの実施形態において、ポリマー粒子の組成物は、架橋ポリブタジエン、ブチルゴム、ポリアクリル、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、メチルメタクリレート、それらのコポリマー、およびそれらの誘導体から選択される少なくとも1つの弾性ポリマーまたは材料を含有する。
【0020】
また、特定の銘柄のポリイミド粒子が適している場合がある。例えば、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、4,4’-メチレンジアニリン(MDA)、および2,4-トルエンジアミン(TDA)から調製され、90~92パーセントの間の芳香族炭素を含有する非フタルイミド炭素含有量を有するポリイミド。
【0021】
適している市販の粒子の例には、Zeon Chemicals Inc.によって販売されるDuoMod DP5045、HP Polymer Inc.製のP84(商標)ポリイミド、Evonik製のVestamid(登録商標)Terra生物由来ポリアミドおよびTrogamid(登録商標)CX-銘柄ポリアミド、クラレ(日本)製のPA9T(脂肪族-芳香族ハイブリッドポリアミド)が含まれる。
【0022】
また、適したポリマー粒子には、米国特許第8,846,818号明細書および米国特許出願公開第2010/0304118号明細書(両方とも、参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されたポリマー粒子などの架橋熱可塑性ポリマー粒子が含まれる。
【0023】
また、樹脂可溶性熱可塑性粒子が使用されてもよい。例には、ポリアリールスルホン、例えばポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルスルホン(PEES)、PES-PEESコポリマー、ポリエーテルイミド(PEI)およびポリイミド(PI)から選択される粒状熱可塑性ポリマーが含まれる。これらの樹脂可溶性熱可塑性粒子は、周囲温度(20℃~25℃)で固体粒子(例えば粉末)であるが、例えば、熱硬化樹脂の硬化サイクルの間に、樹脂が加熱される時に熱硬化樹脂中に溶解する。したがって、これらの粒子は、硬化樹脂母材中で離散的粒子のままではない。
【0024】
本明細書中で用いられるとき、樹脂中に「溶解する」は、樹脂と均質なまたは連続的な相を形成することを意味する。本明細書中で用いられるとき「離散的粒子」は、母材樹脂中にはっきりと認められ、走査型電子顕微鏡(SEM)、光学顕微鏡、または微分干渉コントラスト顕微鏡(DIC)を使用して検出され得る粒子を意味する。
【0025】
他の実施形態において、粒子は、ポリマーと導電材料との混合物から形成される。ポリマーは、ポリマー粒子について上に記載された通りである。導電材料は、約1×10S/m超の電気導電率を有する、金属、非金属導電材料、金属被覆材料およびそれらの組合せから選択されてもよい。適した金属には、限定されないが、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、銅、鉛、スズ、アルミニウム、チタン、合金およびそれらの混合物などの任意の公知の金属が含まれる。適した非金属導電材料には、限定されないが、炭素および黒鉛が含まれる。前述の導電材料の電気導電率は、DIN EN2004-1およびASTM E1004に従って4点方法を使用してまたは渦電流方法を使用して決定することができる。このタイプの粒子の特定の例は、国際公開第WO2014/011293号パンフレット(その内容を参照によって本願明細書に組み入れるものとする)に記載された複合粒子である。
【0026】
また、コア-シェル構造、すなわち1つまたは複数のシェルによって囲まれたコアを有する粒子が考えられる。例には、金属被覆ポリマーコア、炭素被覆ポリマーコア、金属被覆セラミックコア、炭素被覆セラミックコア、金属被覆ガラス球、金属被覆中空ガラス球が含まれる。
【0027】
上に考察された粒子は、球状またはロッド形状など、任意の三次元形状であってもよい。粒子は5:1未満のアスペクト比を有してもよく、好ましくは、アスペクト比は約1:1である。粒子に関して、用語「アスペクト比」は、粒子の最大断面寸法の、最小断面寸法に対する比を意味する。
【0028】
球状粒子(約1:1のアスペクト比を有する)については、平均粒度はその直径を指す。非球状粒子については、平均粒度は粒子の最大横断面寸法を指す。
【0029】
本明細書において開示される目的のために、粒子は、レーザー回折技術によって、例えば、0.002ナノメートル~2000ミクロンの範囲で動作する、Malvern Mastersizer2000計測器を使用して測定されるとき、100μm未満、特に、10μm~50μmの範囲内、または15μm~35μmの範囲内の粒度分布(d50)を有してもよい。「d50」は、粒度分布の中央値を表わし、あるいは代わりに、粒子の50%がこの値以下の粒度を有するような分布上の値である。
【0030】
ハイブリッドベールは、繊維とポリマー粒子とを一緒に保持するために十分な量のバインダーを有するが、バインダーの量は、得られたベールを多孔性かつ流体(液体およびガス)に対して透過性のままにしておくために十分に小さい。ベールの厚さ方向の通気性は、一定の体積流量での飽和流実験に従って測定することができる。この方法は、試験試料を通して圧力降下を記録することを必要とする。次に、記録された圧力降下を使用して、以下の圧力降下の式
【数1】

(式中、
K3=透過性
Q=体積流量
η=試験流体の粘度
h=試料の厚さ
ΔP=試料全体にわたる圧力降下
A=円筒形流路の断面積
である)
を用いて試料の透過性を決定する。
【0031】
試料のいずれかの面上に取付けられる圧力変換器は、面内実験のために使用される流体と同じである試験流体の圧力降下を記録する。ナショナル・インスツルメントLabVIEW(商標)プログラムを使用して、実験データを獲得して評価し、この厚さ方向のデータについて透過性値をもたらすことができる。
【0032】
ベール中のバインダーの量は、ベールの全重量に基づいて約2重量%~約30重量%、いくつかの実施形態において、約5重量%~約25重量%、他の実施形態において、約10重量%~約20重量%であってもよい。バインダーは熱可塑性、熱硬化性またはエラストマーバインダーであってもよい。適したバインダーには、ポリビニルアルコール(PVA)。ポリエチレンビニルアルコール(PEVOH)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルエーテル、ポリ塩化ビニル(PVC)およびポリビニルエステルなどのビニル、ポリスチレンブタジエンおよびポリブタジエンアクリロニトリルなどのブタジエン、シリコーン、ポリエステル、コ-ポリエステル、ポリアミド、コ-ポリアミド、架橋ポリエステル、スチレンアクリル樹脂およびアクリロニトリルアクリル樹脂などのアクリル樹脂、エポキシ、フェノキシ、フェノール類、ポリウレタン、フェノールホルムアルデヒド-または尿素ホルムアルデヒド樹脂、それらの組合せおよびコポリマーが含まれる。市販のバインダーの例には、BASF製のAcronal(登録商標)888およびAcrodur(登録商標)950アクリルバインダー、Bayer製のBaybond(登録商標)PU330およびXP2569、CelaneseCorp.製のVinamul(登録商標)8828、COIM製のFilco(登録商標)309が含まれる。
【0033】
本明細書において考察されるハイブリッドベールは、実施例として、従来の湿式方法によって製造されてもよい。湿式方法において、細断繊維およびポリマー粒子は、バインダーと、任意選択により、界面活性剤、粘度調整剤、脱泡剤、濾水剤および/または他の化学薬剤などの添加剤とを含有してもよい水性スラリー中に分散される。特定の添加剤は、湿式製造プロセスの間に水中の繊維の安定な分散体を達成するように選択される。細断繊維がスラリー中に導入されると、繊維が分散されるようにスラリーは激しく撹拌される。次いで繊維および粒子を含有するスラリーを移動スクリーン上に堆積させ、そこで水のかなりの部分を取り除いてシートを形成する。その後、液体を真空および/または熱空気乾燥によってシートから取り除いてもよい。両方の液体除去方法が使用されるとき、熱空気乾燥は、バインダーを溶融または硬化するために使用されてもよいので、後で適用されるのが好ましい。このようなウエットレイド法は典型的に、繊維および/または重量の均一な分布が望ましい時に使用される。
【0034】
1バールの圧力にかけられた後のハイブリッドベールの厚さの中央値は、積載重量マイクロメーターを使用して測定される時に好ましくは80μmである。いくつかの実施形態において、1バールの圧力にかけられた後のミクロン単位のベール厚さとgsm単位のベール面積重量(A/W)との間の比は10未満である。
【0035】
本明細書において考察されるベールの中央値厚さは、四角形パターン:300mm×300mmのベール試料で縦5つおよび横5つの25の試料を測定して決定することができる。
【0036】
複合積層体
上に記載されたハイブリッドベールは、複合積層体中の中間層またはインターリーフとして使用されてもよい。一実施形態において、複合積層体は、積層配列において配列されたプリプレグの積み重ねであり、少なくとも1つのハイブリッドベールが2つの隣接したプリプレグプライの間に挿入または挟まれる。好ましい実施形態において、プリプレグの積み重ねに挟む複数のハイブリッドベールがあり、隣接したプリプレグプライの間に各々のベールが間に置かれる。
【0037】
本明細書中で用いられるとき用語「プリプレグ」は、繊維体積の少なくとも一部分に硬化性母材樹脂が予備含浸された強化繊維の層を意味する。強化繊維を含浸する母材樹脂は、部分硬化または未硬化状態であってもよい。プリプレグは、すぐに積み重ねて三次元形態に造形でき、その後に、最終複合材部品に硬化することができる柔軟なまたは可撓性材料である。(熱を使用してまたは使用せずに)圧力を適用することによって団結を硬化の前に実施して、積み重ね内のボイドの形成を防いでもよい。このタイプのプリプレグは、航空機の翼、胴体、バルクヘッドおよび操縦面など、負荷を支える構造部品を製造するために特に適している。硬化プリプレグの重要な性質は、高強度および剛性であり、低減された重量を有する。
【0038】
本明細書において用いられるとき用語「含浸させる」は、繊維を樹脂で部分的にまたは完全に封入するために硬化性母材樹脂材料を強化繊維に導入することを意味する。プリプレグを製造するための母材樹脂は、樹脂フィルムまたは液体の形態をとってもよい。さらに、母材樹脂は、接着前に硬化性または未硬化状態である。含浸は、熱および/または圧力を適用することによって促進されてもよい。
【0039】
プリプレグ内の強化繊維の層は、連続した、一方向に整列された(または「一方向」)繊維またはトウ、織布、または不織多軸布(例えばノンクリンプ布またはNCF)の形態であってもよい。連続したトウは、複数繊維フィラメント、例えば、3000~24,000フィラメントから構成される。
【0040】
強化繊維は、ガラス(電気つまりE-ガラスなど)、炭素(黒鉛など)、アラミド、ポリアミド、高弾性率ポリエチレン(PE)、ポリエステル、ポリ-p-フェニレン-ベンゾオキサゾール(PBO)、ホウ素、石英、玄武岩、セラミック、およびそれらの組み合わせから選択されるが、それらに限定されない材料から製造されてもよい。高強度複合材料、例えば、宇宙空間および自動車用途のための材料の製造について、強化用繊維は、ASTM C1557-14に従って測定されるとき500ksi(または3447MPa)超の引張強さを有するのが好ましい。
【0041】
実施例として、プリプレグを製造するための含浸方法は、
(1)連続した、一方向繊維または布ウェブを溶融含浸のための母材樹脂組成物の(加熱された)槽を通して連続的に移動させ、繊維を十分にまたは実質的に十分に浸潤させる工程;または
(2)樹脂フィルムを連続した、一方向繊維または布ウェブの少なくとも1つの面に対して加圧する工程と、熱を適用して樹脂フィルムを溶融する工程とを包含するホットメルトプロセスを包含してもよい。
【0042】
好ましい実施形態において、プリプレグ内の強化繊維は、同じ面内にある、連続した一方向炭素または黒鉛繊維である。積み重ね内のプリプレグは、互いに対して選択された配向に配置されてもよい。例えば、プリプレグの積み重ねは、積み重ねの長さに対して0°、45°、または90°などの選択された角度θに配向された一方向繊維を有するプリプレグを含有してもよい。
【0043】
プリプレグの積み重ねを団結および硬化したとき、プリプレグ中の母材樹脂は、挟み込む多孔性ベール中のボイドまたは間隙にわたって浸透し、一体化された複合構造物をもたらす。団結は、加熱、真空処理、および加圧力のうちの1つまたは複数の処置下で行われるプロセスを意味し、それによって母材樹脂はボイドスペースを置き換えるように流動する。例えば、団結は、限定されないが、プリプレグ中の繊維間のボイドスペースへの樹脂の流入、プリプレグ間のボイドスペース等をもたらす場合がある。団結および硬化は、単一段階においてまたは別々に行われてもよい。
【0044】
硬化プロセスの間、ベール構造は、強化繊維の構造層への強靭化用粒子の浸入を防ぐ。この方法において、高濃度の強靭化用粒子が構造層の間の層間領域に作られ、伝播する亀裂前縁の一定のおよび制御された塑性変形領域が硬化複合構造物のために達成される。ハイブリッドベール構造は塑性変形領域を層間境界に閉じ込め、したがって亀裂は中間層と強化繊維との間の境界面に現れない。したがって、モードIおよびIIの層間破壊靭性およびCSAIのいっそう高い値を達成することができる。
【0045】
さらに、粒子は不織ベール内に化学的におよび機械的に閉じ込められるので、粒子を強化繊維束中に押し込むことができず、したがって、波状領域の生成を避けることができない。このような波状領域は通常、複合材の圧縮強さ性質の低減の原因である。
【0046】
いくつかの実施形態において、プリプレグの積み重ねから形成された硬化複合構造物内にハイブリッドベールによって作られた層間領域の中央値厚さは、60μm未満である。中央値厚さは、異なった位置での測定値を取って平均値を計算することによって決定される。
【0047】
図3Aおよび3Bは、ベールの表面上に散乱された強靭化用粒子を有する不織ベールを含有する同様な硬化複合積層体と比較して層間領域にハイブリッドベールを含有する硬化複合積層体を図解的に示す。図3Bの複合積層体は、粒子欠乏部分を有する制御されていない波状層間領域を含有する。対照的に、図3Aの複合積層体は、ベール中の粒子の閉じ込めのために十分に制御された層間領域を含有する。
【0048】
さらに、ベールが導電性繊維(例えば炭素繊維)からなっていてポリマー強靭化用粒子がベールの不織布構造物の全体にわたって均一に分散されるとき、硬化複合積層体のバルク導電率は維持されるかまたは改良され得る。
【0049】
複合構造物にハイブリッドベールを組み込むことはL、UまたはZ異形材を有する複合材部品において通常に観察されるコーナーの薄化問題への効果的な解決策であることが見出された。図4Aおよび4Bは、オートクレーブまたは脱オートクレーブ真空バッグ設備内での複合材の硬化サイクルの間、凹形成形面および凸形成形面それぞれの上の複合積層体上に作用する力を図解的に示す。
【0050】
図4Aを参照して、凹形コーナーにおいて、ツール表面(S)は、バッグ表面(S)よりも大きい。図4Bを参照して、凸形コーナーにおいて、ツール表面(S)は、バッグ表面(S)よりも小さい。バッグ表面は常に圧力(P)の1atmに暴露される。力のバランスを満たすために、凹形コーナーのツールからの反応圧力は1atm未満(P-ΔP)であるが、凸形コーナーのツールからの反応圧力は1atm超(P+ΔP)である。「T」は、引張縦応力を意味し、<Pはより低い圧密圧力を意味する。したがって、凹形コーナーは通常、コーナーの厚化を伴い、凸形コーナーは通常、コーナーの薄化を示す。
【0051】
複合積層体の層間領域でのハイブリッドベール中の強靭化用粒子の実質的に均一な分布は、離層を形成させる単位幅当たりの運動量の測定値である、曲がり梁強度を低下させずに薄化現象の発生を実質的に低減させるかまたは除くことができる。
【0052】
樹脂注入のために構成された予備成形物
別の実施形態において、本明細書において開示されるハイブリッドベールの1つまたは複数が、RTMおよびVaRTMなどの樹脂注入方法によって液体樹脂を受容するために構成された予備成形物中の中間層/インターリーフとして使用される。予備成形物は、乾燥強化繊維の隣接した層の間に挟まれた1つまたは複数のハイブリッドベールを有する乾燥強化繊維の複数層からなる。
【0053】
ハイブリッドベールの使用によって、RTMおよびVaRTM用途のための液体樹脂系に強靭化剤を添加することに伴なう前述の問題を避けることができる。
【0054】
予備成形物中の強化繊維の層は、複合材料を製造するための先行技術に公知の任意のタイプの繊維素材であってもよい。適した布タイプまたは形態の例には、限定されないが以下のものが含まれる:全ての織布、例としては、平織、綾織、朱子織、スパイラル織、および一重織である;全ての多軸布、それらの例には、たてメリヤス生地、および非クリンプ布(NCF)が含まれる;メリヤス生地;編み組布;全ての不織布、それらの例には、限定されないが、細断および/または連続繊維フィラメント、フェルトから構成されるマット布、および前述の布のタイプの組合せが含まれる。予備成形物中の強化繊維は、プリプレグに関して上に開示された材料から製造される。好ましい実施形態において、予備成形物中の繊維層の少なくとも一部が炭素または黒鉛繊維から構成される。
【0055】
液体樹脂注入のための型は、二成分密閉型または減圧バックでシールされた、片面型であってもよい。二成分密閉型の使用は公知であり、例えば、米国特許第4,891,176号明細書に記載されている。また、減圧バックでシールされた、片面型の使用もまた公知であり、例えば、米国特許第4,942,013号明細書、米国特許第4,902,215号明細書、米国特許第6,257,858号明細書、および米国特許第8,652,371号明細書を参照のこと。
【0056】
樹脂注入の前に、乾燥繊維予備成形物は、少量のポリマーバインダーを予備成形物の隣接した層の間に分散させる工程と、次に、所望の構成に造形する工程とによって安定化されてもよい。安定化のために適したバインダーは、米国特許第8,927,662号明細書(その内容をその全体において参照によって本願明細書に組み入れるものとする)に開示された熱可塑性エポキシバインダーである。
【0057】
本明細書において開示されるハイブリッドベールを布プライに付着させて、RTMおよびVaRTMなどの樹脂注入方法によって液体樹脂注入物が注入され得る予備成形物を形成するために使用されてもよい改質布を形成してもよい。布へのベールの付着は、ステッチ糸または編糸によってまたはベールおよび布の中間のバインダーの純粋な溶融および団結によって実施されてもよい。一実施形態において、1つまたは複数のハイブリッドベールは多軸ノンクリンプ布(NCF)に組み込まれる。NCFは、ステッチ糸によって接続される、ノンクリンプ繊維層からなる。NCF内の各々の繊維層は、別の繊維層中の繊維と異なった方向に方向付けられる連続した一方向繊維からなる。1つまたは複数のハイブリッドベールを隣接した繊維層の間に挟んで改質NCFを形成してもよく、それを使用して、樹脂注入用途のための予備成形物を形成してもよい。
【0058】
別の実施形態において、ハイブリッドベールを製織パターンで一方向繊維トウにて織られた細いストリップに切断して、図6に示されるような織布を形成する。この布は、液体を透過性であり、RTMおよびVaRTMなどの樹脂注入方法によって液体樹脂が注入され得る予備成形物を形成するために使用されてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態において、樹脂が注入された予備成形物から形成された硬化複合構造物中のハイブリッドベールによって作られた層間領域の中央値厚さは80μm未満、または60μm未満である。中央値厚さは、異なった位置での測定値を取って平均値を計算することによって決定される。
【0060】
プリプレグ
一実施形態において、熱および圧力を適用することによってハイブリッドベールを既存のプリプレグの一方または両方の表面上に直接に積層して、ベールがその中に一体化された改質プリプレグを形成する。図5Aは、この実施形態の実施例を説明する。ハイブリッドベールVは、一対の上部および下部加圧ニップローラー11および12の補助によって、移動する連続したプリプレグ10に対して加圧される。また、加圧ニップローラー11および12によって熱をプリプレグおよびベールに適用することができる。初期プリプレグ10は、硬化性樹脂が予備含浸されるかまたは注入されている強化繊維(例えば一方向炭素繊維)の層から構成される。
【0061】
別の実施形態において、プリプレグを製造する間にハイブリッドベールをプリプレグに一体化する。最初に、樹脂を剥離紙上にコートして薄い樹脂フィルムを得る。次に、ハイブリッドベールは、強化用繊維の層と樹脂フィルムとの間にベールを挟む工程と、次に、組み合わせられた層に熱および圧力を適用する工程とによって樹脂フィルムおよび強化用繊維の層と組み合わせられる。図5Bは、この実施形態の実施例を説明する。連続した強化用繊維の層13(以下に「繊維層」に称される)は上部樹脂フィルム14と下部樹脂フィルム15との間に挟まれ、ハイブリッドベールVは上部樹脂フィルム14と繊維層13との間に挿入される。樹脂フィルム14および15の各々は剥離紙によって支持されてもよく、それは図5Bにおいて示される配列において最外層として配置される。熱および圧力を組み合わせられた層にローラー11および12によって適用して、ハイブリッドベールがその中に埋め込まれた樹脂含浸プリプレグを形成する。任意選択により、加熱および加圧前に第2のハイブリッドベールを繊維層13と下部樹脂フィルム15との間に挿入してもよい。
【0062】
図5Cは、図5Bに示される実施形態と同様である別の実施形態を示すが、ハイブリッドベールVが上部樹脂フィルム14の外面と接触して、樹脂フィルム14がベールVと繊維層13との間にあるようにする。この配列において、上部樹脂フィルム14を支持する剥離紙は、ベールVと接触する前に除去される。
【0063】
さらに別の実施形態において、ハイブリッドベールに硬化性樹脂組成物を含浸させて、樹脂含浸ハイブリッドベールを製造する。次に、熱および圧力を使用して、予備含浸されたベールを繊維層と組み合わせて、ベールがその中に一体化されたプリプレグを形成する。図5Dはこの実施形態の実施例を説明する。連続した繊維層13が予備含浸されたベール20と下部樹脂フィルム15との間に挟まれる。組み合わせられた層に熱および圧力をローラー11および12によって適用して、層を団結させる。あるいは、下部樹脂フィルム15を第2の予備含浸されたベールと取り替える。
【0064】
ATL/AFPテープ
本明細書において開示されるハイブリッドベールは、自動テープ敷設(ATL)または自動繊維配置(AFP)法において使用するために適した連続したプリプレグテープに組み込まれてもよい。一実施形態において、1つまたは複数のハイブリッドベールがその中に組み込まれたプリプレグが上に記載されたように形成され、次に、適したATL幅(例えば6インチ~12インチすなわち152mm~305mm)またはAFP幅(例えば、0.25インチ~0.50インチすなわち6.35mm~12.77mmなど、0.125インチ~1.5インチすなわち3.17mm~38.1mm)を有する細いテープに切断される。テープは、その幅の少なくとも10倍である連続長を有してもよい。
【0065】
ATLおよびAFPは、コンピュータ誘導ロボット工学を使用してプリプレグテープの連続層を成形面(例えばマンドレル)上に敷設して複合構造物を作る方法である。典型的な用途には、航空機の翼外板および胴体が含まれる。ATL/AFP法は、1つまたは複数のテープをマンドレル表面上に並列に分配して所望の幅および長さの層を作る工程を必要とし、次に付加的な層を先行層上に積み重ねて、所望の厚さを有する積み重ねを提供する。ATL/AFPシステムは、プリプレグテープをマンドレル表面上に直接に分配して圧縮するための手段を備えていてもよい。
【0066】
AFPは、複数の単独の予備含浸されたトウまたは細い切断テープ(例えば、0.125インチ~1.5インチ)をマンドレル上に自動的に配置して、所定の全プリプレグ帯域幅を構成する。数値的に制御される配置ヘッドを使用して材料配置を高速度で実施し、配置する間に各々のトウを分配し、クランプし、切断および再始動する。ATL装置は、AFPにおいて使用される単一トウまたは切断テープよりも幅が広い、プリプレグ一方向テープまたは布の連続したストリップを敷設する。典型的に、両方の方法によって、材料は、材料配置のために必要とされる機構を備える、ロボット制御ヘッドによって適用される。AFPは従来、非常に複雑な且つより小さい表面上で使用される。
【0067】
別の実施形態において、ハイブリッドベールを一方向強化繊維と組み合わせて、ATLおよびAFP法において使用するために適している乾燥繊維テープを形成する。この場合、乾燥繊維テープをATLまたはAFPによって敷設して、液体RTMおよびVaRTMなどの樹脂注入方法のために構成される予備成形物を形成する。
【0068】
乾燥繊維テープを形成するため、粉末形態または液体形態であってもよい、バインダーの補助によって、ハイブリッドベールを連続した一方向強化繊維、例えば炭素繊維の層に積層する。任意選択により、細長く切断する間に、バインダー処理された繊維材料の耐ほつれ性を改良するために積層構造物を液体形態の第2のバインダーにさらに暴露する。次に、バインダー処理された材料をATLまたはAFP法のために適している幅が狭いテープに切断する。
【0069】
一実施形態によれば、乾燥テープを製造するための方法は、粉末形態または液体形態において第1のバインダーを連続した、一方向強化繊維(例えば炭素繊維)の乾燥繊維ウェブに適用する工程と、ハイブリッドベールを繊維ウェブの少なくとも1つの面に接着して、繊維積層体を形成する工程と、液体組成物の形態において第2のバインダーを例えば浸漬コーティングによって繊維積層体に適用する工程と、バインダー処理された積層体を、例えば、炉内で乾燥させる工程とを包含する。あるいは、第1のバインダーをベールに適用し、次にベールを一方向繊維に接着する。次に、乾燥された、バインダー処理された積層体をATL/AFPのために適している幅が狭いテープに切断し、任意選択により、切断されたテープをスプール上に巻き取る。
【0070】
第1のバインダーに加えて第2の液体バインダーが存在することによって、切断中のテープのほつれを防ぐことができ、ならびに低バルクテープを作ることができる。乾燥繊維テープによって形成される予備成形物は、自動配置法の加熱および成形方法によって、および樹脂を注入して硬化後に複合構造物の硬化厚さによって決定されるとき加熱時に低バルク性質を示すので、このような「低バルク」性質は望ましい。したがって、バインダー処理されたテープを敷設して予備成形物を形成する時にATL/AFP法の間に減量が生じるので、硬化前の予備成形物の減量は最小である(または全く必要でない)。
【0071】
乾燥繊維テープを形成するための適したバインダー材料は、
i. 50℃までの温度で固体であり、DSCによって測定されるとき75℃~125℃の範囲の温度で軟化点を有し、そしてエポキシ樹脂と熱可塑性ポリマーとのブレンドから形成されるが、75℃超で活性である一切の触媒またはクロスカップリング剤を有さないバインダー;
ii. 少なくとも1つの多機能性エポキシ樹脂と、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーと、アニオン界面活性剤および非イオン性界面活性剤から選択される少なくとも1つの界面活性剤とを含む組成物;
iii. ポリヒドロキシエーテルとポリウレタンとの部分的または完全架橋コポリマー;
iv. 架橋されていない、部分的または完全に架橋されているか、または改質ウレタンポリマーである、ポリウレタン;
v. 架橋されていない、部分的または完全に架橋されているか、または改質エポキシである、エポキシ;および
vi. 架橋されていない、部分的または完全に架橋されている、ポリ(ヒドロキシエーテル)樹脂から選択されてもよい。
【0072】
特に適したバインダーは、米国特許第8,927,662号明細書(その内容を参照によってその全体において本願明細書に組み入れるものとする)に記載された熱可塑性エポキシバインダーである。この熱可塑性エポキシバインダーは粉末形態において適用され得る。別の特に適したバインダーは、米国特許出願公開第2014/0179187号明細書(その内容を参照によってその全体において本願明細書に組み入れるものとする)に記載された液体バインダー組成物である。これらのバインダーのどちらも、唯一のバインダーとしてまたは2つの異なったバインダーのうちの第1のバイダーとしてベールまたは一方向強化繊維に適用することができる。
【0073】
乾燥繊維テープの製造において使用されてもよい液体バインダーは、米国特許出願公開第2014/0370237号明細書(その内容を参照によってその全体において本願明細書に組み入れるものとする)に記載されたポリヒドロキシエーテル-ポリウレタンコポリマーを含有する液体バインダー組成物である。他の適した液体バインダーは、ポリウレタン、改質ウレタンポリマー、エポキシ樹脂、およびポリ(ヒドロキシエーテル)樹脂のうちの1つを含有する水性分散体から選択されてもよい。任意選択により、架橋剤がこれらの水性分散体に含有される。適した液体バインダーは、米国特許出願公開第2015/0375461号明細書に開示された液体バインダーであってもよい。
【0074】
乾燥繊維テープ中のバインダー材料(ベール中のバインダーを含める)の全量が、乾燥テープの全重量に基づいて約15重量%以下、例えば約0.1~約15重量%である。バインダーの全量は、バインダー処理された繊維テープが多孔性のままであり且つ樹脂注入方法において使用される液体樹脂に対して透過性であるように十分に小さい。
【0075】
母材樹脂
上に考察された強化繊維および予備成形物を含浸または注入するための硬化性母材樹脂は好ましくは、1つまたは複数の未硬化熱硬化性樹脂を含有する固化性または熱硬化樹脂であり、それらには、限定されないが、エポキシ樹脂、イミド(例えばポリイミドまたはビスマレイミド)、ビニルエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、ベンゾオキサジン、(例えば尿素、メラミンまたはフェノールなどの)ホルムアルデヒド縮合物樹脂、ポリエステル、アクリル系樹脂、それらのハイブリッド、ブレンドおよび組合せが含まれる。
【0076】
適したエポキシ樹脂には、芳香族ジアミン、芳香族モノ第一アミン、アミノフェノール、多価フェノール、多価アルコール、ポリカルボン酸のポリグリシジル誘導体が含まれる。適したエポキシ樹脂の例には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSおよびビスフェノールKなどのビスフェノールのポリグリシジルエーテル、およびクレゾールおよびフェノール系ノボラックのポリグリシジルエーテルが含まれる。
【0077】
特定の例は、4,4’-ジアミノジフェニルメタンのテトラグリシジル誘導体(TGDDM)、レソルシノールジグリシジルエーテル、トリグリシジル-p-アミノフェノール、トリグリシジル-m-アミノフェノール、ブロモビスフェノールFジグリシジルエーテル、ジアミノジフェニルメタンのテトラグリシジル誘導体、トリヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル、フェノールホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジルエーテル、o-クレゾールノボラックのポリグリシジルエーテルまたはテトラフェニルエタンのテトラグリシジルエーテルである。
【0078】
ホスト母材樹脂において使用するために適した市販のエポキシ樹脂には、N,N,N’,N’-テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(例えばHuntsman製のMY9663、MY720、およびMY721);N,N,N’,N’-テトラグリシジル-ビス(4-アミノフェニル)-1,4-ジイソ-プロピルベンゼン(例えばMomentive製のEPON1071);N,N,N’,N’-テトラクリシジル(テトラclycidyl)-ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン(例えばMomentive製のEPON1072);p-アミノフェノールのトリグリシジルエーテル(例えばHunstman製のMY0510);m-アミノフェノールのトリグリシジルエーテル(例えばHunstman製のMY0610);ビスフェノールA系材料のジグリシジルエーテル、例えば2,2-ビス(4,4’-ジヒドロキシフェニル)プロパン(例えばDow製のDER661、またはMomentive製のEPON828、および好ましくは25℃において粘度8~20Pa・sのノボラック樹脂;フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル(例えばDow製のDEN431またはDEN438);ジ-シクロペンタジエン系フェノールノボラック樹脂(例えばHuntsman製のTactix556);ジグリシジル1,2-フタレート(例えばGLY CELA-100);ジヒドロキシジフェニルメタン(ビスフェノールF)のジグリシジル誘導体(例えばHuntsman製のPY306)が含まれる。他のエポキシ樹脂には、例えば3’,4’-エポキシシクロヘキシル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えばHuntsman製のCY179)などの脂環式化合物が含まれる。
【0079】
一般的に、硬化性熱硬化性樹脂組成物は、他の添加剤、例えば硬化剤、硬化触媒、コモノマー、レオロジー制御剤、粘着付与剤、無機または有機充填剤、強化剤としての熱可塑性および/または弾性ポリマー、安定剤、抑制剤、顔料、染料、難燃剤、反応性稀釈剤、および硬化前および/または後の母材樹脂の性質を改良するための当業者に公知のその他の添加剤と組み合わせて1つまたは複数の熱硬化樹脂を含有する。しかしながら、液体樹脂注入のために樹脂に添加することができる任意選択の添加剤は、上に考察された低粘度の要件およびフィルタリング効果によって制限される。
【0080】
存在する場合、硬化性母材樹脂のための強化剤には、限定されないが、ポリアミド、コポリアミド、ポリイミド、アラミド、ポリケトン、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルスルホン(PEES)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリスルフィド、ポリフェニレンオキシド(PPO)および変性PPO、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)およびポリプロピレンオキシド、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリル、ポリフェニルスルホン、高性能炭化水素ポリマー、液晶ポリマー、エラストマーおよびセグメント化エラストマーの単独または組合せのどちらかのホモポリマーまたはコポリマーが含まれてもよい。
【0081】
硬化性母材樹脂中に硬化剤および/または触媒を添加することは任意選択であるが、このようなものの使用は、必要に応じて、硬化速度を増加させおよび/または硬化温度を低下させる場合がある。硬化剤は好適には、公知の硬化剤、例えば、芳香族または脂肪族アミン、またはグアニジン誘導体から選択される。芳香族アミン硬化剤が好ましく、好ましくは、1分子中に少なくとも2つのアミノ基を有する芳香族アミン、特に好ましいのは、例えばアミノ基がスルホン基に対してメタ位またはパラ位にある、ジアミノジフェニルスルホンである。特定の例は、3,3’-および4-,4’-ジアミノジフェニルスルホン(DDS);メチレンジアニリン;ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン;ビス(4-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン;4,4’メチレンビス-(2,6-ジエチル)-アニリン(Lonza製のMDEA);4,4’メチレンビス-(3-クロロ,2,6-ジエチル)-アニリン(Lonza製のMCDEA);4,4’メチレンビス-(2,6-ジイソプロピル)-アニリン(Lonza製のM-DIPA);3,5-ジエチルトルエン-2,4/2,6-ジアミン(Lonza製のD-ETDA80);4,4’メチレンビス-(2-イソプロピル-6-メチル)-アニリン(Lonza製のM-MIPA);4-クロロフェニル-N,N-ジメチル-尿素(例えばMonuron);3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチル-尿素(例えばDIURON TM)およびジシアノジアミド(例えばPacific Anchor Chemical製のAMICURE TM CG 1200)である。
【0082】
また、適した硬化剤には、無水物、特にポリカルボン酸無水物、例えばナド酸無水物、メチルナド酸無水物、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、エンドメチレン-テトラヒドロフタル酸無水物、およびトリメリト酸無水物などが含まれる。
【0083】
本開示における「硬化(curing)」または「硬化(cure)」は、ポリマー鎖の化学架橋によるポリマー材料の固化を意味する。組成物に関して用語「硬化性(curable)」は、組成物が、組成物を固化または熱硬化状態にする条件に供され得ることを意味する。
【0084】
本開示において使用されるとき用語「約」は、所望の機能をさらに実現するかまたは所望の結果を達成する記載された量に近い量を表わす。例えば、用語「約」は、記載された量の1%未満内である量を意味してもよい。
【実施例
【0085】
原材料
PY306は、Huntsman製のAraldite(登録商標)PY306、ビスフェノールFジグリシジル(diglycidlyl)エーテル樹脂を意味する。MY0510は、Huntsman製のAraldite(登録商標)MY 0510、p-アミノフェノール樹脂のトリグリシジルエーテルを意味し、SUMIKAEXCEL 5003Pは、住友化学株式会社製のポリエーテルスルホンポリマーを意味する。4,4’DDSは、4,4’-ジアミノジフェニルスルホンを意味する。
【0086】
PA-10,10(ポリアミド)粒子は、商標Vestamid(登録商標)Terra9161としてEvonikによって供給され、37℃のTg、206℃の融解ピークを有する、1,10-デカメチレンジアミン(D)と1,10-デカンジカルボン酸(セバシン酸、S)との重縮合物である。約26μmの平均粒度(d50)。
【0087】
P84Gは、HP Polymer Inc.から供給される、ポリイミド(P84 325メッシュ)とP84ポリイミド被覆黒鉛(70%黒鉛:30%P84、重量による)との70:30ブレンド;22μmの平均粒度(d50)である。
【0088】
PILTは、34μmの平均粒度(d50)を有する、米国特許第8,846,818号明細書に記載された方法に従って製造された、架橋PES-PEESコポリマー膨潤性粒子を意味する。
【0089】
PA9Tは、120~130℃のTg、260℃および271℃の2つの融点、ならびに200℃を超える結晶化温度を有する、テレフタル酸、1,9ノナンジアミンおよび2-メチル-1,8オクタンジアミンの固相重縮合によって合成された、日本、クラレから入手可能な熱可塑性ポリアミドである。ポリマーを繊維に紡糸し、得られた生成物を所望の長さの繊維に細断した。
【0090】
CX7323は、Evonik製のTrogamid(登録商標)CX7323、すなわち、140℃のTg、260℃の融解温度、および13μmの平均粒度(d50)を有する、脂環式ジアミンとドデカン二酸との重縮合によって合成された半-芳香族/脂肪族非晶質ポリアミドを意味する。
【0091】
実施例において開示される全ての粒度分布は、Malvern Mastersizer 2000によって測定された。
【0092】
実施例1
5つの異なった樹脂組成物を表1に開示された調合に従って調製した。全ての量は重量比(w/w)のパーセンテージである。
【0093】
【表1】
【0094】
R1は、層間粒子のない均質に強靭化された基準樹脂系であり、R1の他の4つの改質された別形態は、5%および10%w/wでP84GまたはPA10,10粒子を含有する。
【0095】
次に、ホットメルト含浸法を使用して、樹脂組成物を使用して異なった一方向(UD)プリプレグを製造した。樹脂フィルムは、樹脂組成物を剥離紙上にコートすることによって製造された。次に、このような樹脂フィルムの2つを、熱および圧力の補助によって一方向炭素繊維(ドイツのToho Tenax製のTENAX(登録商標)-E IMS65 E23 24K 830tex)の連続した層の対向した面上に積層して、プリプレグを形成した。gsm(またはg/m)単位の繊維面積重量(FAW)および製造されたプリプレグの重量パーセントでの樹脂分が表2に示される。
【0096】
【表2】
【0097】
異なった面積重量のハイブリッドベールが、湿式または製紙方法を使用して製造された。約5.2μmの直径を有する細断した、中間弾性率(IM)炭素繊維(Hexcel製のIM7G 12K)と選択された熱可塑性粒子とを使用して、ハイブリッドベールを形成した。表3は、ベール組成物、熱可塑性粒子含有量、炭素繊維含有量、およびベール面積重量の一覧を提供する。表3において、IM7はIM7G炭素繊維を意味する。
【0098】
【表3】
【0099】
各々のベールを形成するために、最初に細断繊維と熱可塑性粒子との混合物を水中に懸濁し、次にスラリーを多孔性スクリーン上に堆積させて水を除去し、結果として不織布ウェブを形成し、次に、不織布ウェブを安定化させるため、液体スチレンアクリルバインダー(Basf製のAcronal(登録商標)888)を適用し、不織布生成物を炉内で乾燥させて一切の残りの水を蒸発させ、バインダーを架橋した。縦方向(MD)およびクロスウェブ方向(CD)の両方の方向において構造統合性を特徴とする得られた生成物をロールに巻き取った。
【0100】
図7は、走査電子顕微鏡(SEM)によって撮られたV1ハイブリッドベール(P84G/IM7)の上面画像を示す。粒子は、炭素繊維と混ぜ合わせられてベール構造物の全体にわたって均一に分散されているように示される。熱可塑性粒子はベールの厚さにわたって存在している。多くの粒子は、ベール構造物内の複数繊維の交点に集められ、バインダー「プール」内に捉えられてベール構造によって所定の位置に単に保持される。
【0101】
実施例2
機械的特性決定-UDプリプレグ
複合パネルは、表2に開示されたプリプレグ(P1、P2、P3)を積み重ねることによって製造された。各々のパネルは、表4に記載された積み重ね構成に従って方向付けされた特定の数のプリプレグプライからなる。また、P1プリプレグの積み重ねは、表3に開示された異なったハイブリッドベールが挟まれ、その後に、180℃のオートクレーブ内で2時間にわたっておよび85psiの圧力で団結および硬化された。比較目的のために、同じP1プリプレグの積み重ねは、4gsmのIM7G炭素ベールが挟まれた。様々な機械的性質を測定して、ベール構造および組成物が積層体性能に及ぼす効果を評価した。試験は、表4に記載された試験方法に従って実施された。
【0102】
【表4】
【0103】
RTは室温(25℃)を意味する。DCBは双片持ち梁を意味し、ENFは端面切欠き曲げを意味する。
【0104】
CAI、GIcおよびGIIcの結果は表5~7に記載される。σは標準偏差を意味する。
【0105】
【表5】
【0106】
表5に示されるように、一方向プリプレグのためのインターリーフとしてのハイブリッドベールの使用は、基準プリプレグ(P1)から製造された積層体と比較して30Jの衝撃後に圧縮強さの50%までの改良をもたらすことができる。
【0107】
とりわけ、ベールV2(PA10,10/IM7)中の少量(1.83gsm)のPA-10,10粒子の均質分布は、基準プリプレグパネルP1よりもCAIの40%改良をもたらした。より興味深いことには、炭素繊維とPA-10,10粒子とを含むハイブリッドベール構造は、炭素ベールまたは強靭化用粒子のどちらかによって別々に強靭化されるプリプレグパネルについて測定された値以上にCAIを改良する予想外の相乗効果を示した。ベールV2がプリプレグパネルのためのインターリーフとして使用されたとき、インターリーフとして4gsmのIM7炭素ベールを有するプリプレグパネルおよびPA-10,10粒子で改質されたプリプレグパネル(P2、P3)に対してCAIの12%、25%および22%の改良が見出された。
【0108】
インターリーフとしてベールV1(P84G/IM7)およびベールV4(PILT/IM7/PA9T)を含有するプリプレグパネルは、インターリーフのない基準プリプレグP1パネルと比較してCAIの45%~50%改良をもたらしたが、他方、ベールV2、V3およびV5は、同じインターリーフのないプリプレグP1パネルよりも33%~37%CAI性能を高めた。さらに、開示されたハイブリッドベール構造は、硬化複合パネルの損傷許容性および耐性性能を高める高純度炭素ベールよりも効率的であることがわかった。表3の全ての開示されたハイブリッドベールは、全てのハイブリッドベールが重量で炭素繊維のほぼ同じ量を含有したという事実にもかかわらず、インターリーフとして4gsmのIM7炭素ベールを有するパネルと比較して10%~20%高いCAI値を達成した。また、開示されたハイブリッドベール構造は、基準プリプレグP1パネルに対して30Jの衝撃後の硬化積層体の損傷領域のかなりの低減(約-50%)およびインターリーフとして4gsmの炭素ベールを有する同じプリプレグパネルに対してかなりの低減(10%~50%の間の低減)をもたらした。
【0109】
【表6】
【0110】
表6に示されるように、一方向プリプレグのためのインターリーフとしてのハイブリッドベールの使用は、未改質の基準プリプレグP1パネル(粒子なし、ベールなし)よりもモードIの離層強度耐性において70%までの改良をもたらし得る。
【0111】
より具体的には、PA-10,10、P84G、PILTおよびCX7323粒子を含有する炭素ベールを含有することによって、それぞれ、インターリーフのないプリプレグパネルP1よりも33%、50%,33%および67%の改良をもたらした。より興味深いことには、同じハイブリッドベールは、インターリーフとして4gsmのIM7炭素ベールを有するパネルと比較して15%および40%の間の改良をもたらした。
【0112】
さらに、新規なベール構造は、何分の一かの粒子含有量でプリプレグを強化する層間粒子と同じくらい効率的であることが判明した。実施例として、その構造物中にたった1.8gsmのPA10,10粒子を含んだベールV2は、樹脂中に5%のPA-10,10粒子を含有するプリプレグP2パネルについて測定された値よりもかなり上のおよびその樹脂中に10%のPA-10,10粒子を含有するプリプレグP3パネルと同等のGIc値をもたらした。
【0113】
【表7】
【0114】
表7の機械的結果は、ハイブリッドベール構造物は、基準プリプレグP1パネルと比較してモードIIの層間耐破壊性性能の4倍までの改良をもたらし得ることを示す。
【0115】
とりわけ、ベールV2中の非常に低い含有量のPA-10,10粒子(1.83%w/w)の均質分布は、樹脂(P2、P3)中に分散された同じ層間粒子を含有するプリプレグパネルよりもGIIcのそれぞれ25%および40%の改良をもたらした。
【0116】
さらに、ベールV1(非常に小さな濃度(1.8gsm)のP84G粒子の均質分布を含有する)およびベールV5(非常に小さな濃度(0.5gsm)のCX7323粒子を含有する)は、それぞれ、インターリーフとして4gsmのIM7炭素ベールを含有するパネルと比較してGIIcの12%および36%の改良をもたらした。
【0117】
図8Aは、インターリーフとしてCX7323/IM7(V5)ハイブリッドベールを有する硬化複合パネルの断面図を示し、図8Bは、GIc試験に供された後に、インターリーフとしてP84G/IM7(V1)ハイブリッドベールを有する硬化複合パネルを示す。図8Aおよび8Bから見ることができるように、新規なベール構造のために、比較的高い濃度の強靭化用粒子が層間領域に作られ、伝播する亀裂前縁の一定のおよび制御された塑性変形領域をもたらした。
【0118】
実施例3
電気導電率
実施例2において製造された複合パネルから試験クーポンが抽出され、それらのz方向導電率が4プローブ試験法に従ってDC条件において測定された。硬化複合材のZ方向電気導電率の結果が表8に示される。
【0119】
【表8】
【0120】
基準プリプレグパネル(P1)から製造された基準複合パネルと比較して、5%(P2)または10%(P3)PA-10,10粒子で改質された複合パネルは、1桁超のz方向導電率のかなりの低下をもたらした。厚さ方向の導電率のこのような低下はおそらく、航空機の複合材翼構造物におけるエッジグロー現象を決定する。
【0121】
対照的に、インターリーフとしてハイブリッドベールを含有する複合パネルは、強靭化基準パネルのかなり上のz-導電率値をもたらした(P1;0.7S/m)。
【0122】
ハイブリッドベールに誘電体強靭化用粒子を添加することは、炭素ベールが挟まれる積層体と比較してz方向導電率の実質的な損失を全くもたらさなかったことが発見されている。より興味深いことには、CX7323およびP84粒子で改質されたベールを含有するパネルは、4gsmの炭素ベールを有するパネルよりZ方向導電率において性能が優れていた。均質に分散されたPILTおよびPA-10,10粒子を含むベールは、炭素ベールを有するパネルの値と比較してわずかに低めの複合材のZ方向導電率の値をもたらした。それにもかかわらず、得られた導電率のレベルは、航空機の複合材翼のエッジグロー現象を制限するために十分であると考えられる。つまり、結果は、基準パネルP1について測定された結果よりもさらに5~10倍高く、開示されたベール構造は、誘電体強靭化要素が複合構造物に組み込まれる時に厚さ方向の導電率の低下に結びついた問題を克服することができる多角的な解決策であることを再び示す。
【0123】
実施例4
曲がり梁剪断の特性決定
様々な複合パネルの曲がり梁強度は、ASTM D6415に従って決定された。[+,0,-,90]3s構成に従って24のプリプレグプライを積み重ねて、その後に、180℃のオートクレーブ内で2時間にわたっておよび85psiの圧力で硬化させることによって各々のパネルを形成した。実施例1に開示されたプリプレグ(P1、P2およびP3)を使用して、プリプレグの積み重ねを形成した。2つのプリプレグの積み重ねは、4gsmのIM7G炭素ベールが挟まれ、1つのプリプレグの積み重ねは、PA10,10/IM7ハイブリッドベール(V2)が挟まれた。パネル構成要素ならびに硬化複合パネルの曲がり梁強度(CBS)の結果が表9に開示された。90°曲がり梁の試験試料が全ての試験のために使用された。曲がり梁強度は、離層を形成させる単位幅当たりのモーメントを表わす。
【0124】
【表9】
【0125】
表9に報告される結果は、プリプレグP2およびP3にポリアミド層間粒子を含有することによって、基準パネルP1と比較して硬化複合パネルの曲がり梁剪断強さ(CBS)性能のかなりの低下がもたらされたことを示す。10%PA-10,10粒子で改質されたプリプレグパネル(P3)についてCBS値の25%低下が測定された。低面積重量IM7炭素ベール(4gsm)はCBS性能に影響を与えなかったが、それは未改質の基準P1パネルと一致している。
【0126】
ハイブリッドベールV2(PA10,10/IM7)を含有することによって、基準プリプレグP1から製造される積層体と比較してCBS値の低下は最小にされたが、他方、4gsmのIM7G炭素ベールと粒子で改質されたプリプレグ(P3)との組合せは、基準パネルP1と比較してかなり低めのCBS値を示した(-20%)。この場合、実験強度は、2つの異なった改質剤(炭素ベールおよびPA-10,10粒子)について測定された値の数平均である。
【0127】
熱可塑性粒子で強靭化されたプリプレグパネルについて観察されることとは対照的に、ハイブリッドベール構造は、高いCBS値を維持することができ、特定の強靭化用粒子の存在は、硬化複合材の機械的および電気的性能を同時に改良した。
【0128】
実施例5
複合積層体から形成される路および角度成分のために、形状のゆがみは角度の変化によって可視的になる。この現象はしばしばスプリング・インと呼ばれ、積層体の平面内のおよび厚さ方向の方向の異なった膨張の結果である。積層体が厚さにわたって均質な直交異方性である場合、コーナー半径はスプリング・イン角度に影響を与えない。しかしながら、コーナーがオートクレーブによって製造され、そこでツールの半分だけが剛性である場合、加工する間に局所的コーナーの薄化/厚化が予想される。従来のプリプレグ製造中、コーナーの厚化は雌型ツールコーナーにおいて生じる場合があり、コーナーの薄化は雄型コーナーにおいて生じる場合があることは公知である。厚さの変化は、スプリング・インに影響を与える繊維体積分率の変化を意味する。
【0129】
複合パネルを、凸状半径を有するツール上に製造して、厚さおよびスプリング・インに与える効果を調査した。プリプレグP1、P2、P3を使用して[0]24のプリプレグの積み重ねをツール上に形成し、その後、180℃のオートクレーブ内で2時間にわたっておよび85psiの圧力で硬化させた。また、P1プリプレグの積み重ねは、4gsmのIM7G炭素ベールおよびハイブリッドIM7/PA10,10ベールV2が挟まれ、他方、P3は、表10に示されるように4gsmの炭素ベールが挟まれた。
【0130】
ツールは、R8の凸状半径を有する炭素繊維複合材から製造された。これは、凸形コーナー上に製造されたパネルが8mmおよび12mmの内半径および外半径をそれぞれ有することを意味する。半径薄化は、平均フランジ厚さと半径厚さとの間の差として計算された。嵩係数は、公称パネル厚さと比較して百分位数の変化として計算された。
【0131】
半径薄化分析の結果は表10に示される。
【0132】
【表10】
【0133】
凸形ツール上にオートクレーブ内で硬化された基準プリプレグパネル(P1)は、半径においてバルクの約5%減少およびフランジ部分と比較して厚さの12%の差を示したことが見出された。PA-10,10層間粒子の存在は、このような現象を部分的に低減させることができる。最も低い嵩係数および半径部分とフランジ部分との間の厚さの最小差がハイブリッドベールV2で改質されたパネルにおいて測定された。他の全ての場合において、より低い嵩係数が半径部分について計算されたとしても、相当な厚化現象が特に基準パネルP1および粒子で改質されたパネル(P2、P3)についてフランジにおいて観察された。
【0134】
表11は、上に記載された同じ方法に従って製造されたプリプレグパネルについての結果を示すが、積み重ね構成は凖等方性であり、より具体的には、[+,0,-,90]3sである。同様な結果が凖等方性パネルについて見出されたが、表11を参照されたい。最も低い嵩係数がインターリーフとしてハイブリッドベールV2を有するパネルについて測定された。UDパネルについて観察されたことと同様に未改質材料は、基準プリプレグP1パネルと比較して半径の5%薄化およびフランジ厚さの2.5%厚化を示した。また、粒子で改質されたパネル(P2、P3)のフランジについて高い嵩係数が観察された。
【0135】
【表11】
【0136】
実施例6
Saertex(UK)によって供給される196gsmのIMS65E24K一方向非クリンプ布(UD-NCF)を使用して、液体樹脂注入によって複合積層体を製造した。この布は、炭素トウを一緒に維持するための4gsmのポリエステルステッチ糸を含有した。5gsmの細いポリエステル糸を布の端から端まで置き、横結合性および安定性を布に提供した。
【0137】
布は、5gsmの熱可塑性樹脂改質エポキシ系バインダー(Cytec Engineered Materials製のCycom(登録商標)7720)でコートされた。粉末散乱方法を使用して、約5gsmのバインダー組成物を各々の布の両面上に堆積した。散乱された粉末を有する布を、二重ベルトプレスを通過させてバインダーに繊維ウェブをさらに通り抜けさせ、UD繊維ウェブの十分な凝集を確実にした。これは安定化工程と呼ばれる。次に安定化された布を+/-1.0mm未満の幅変化がある幅50mmのテープに切断した。切断されたテープのエッジ品質は十分にきれいであり、ブリッジング繊維、毛羽立ち、およびその他の観察される欠陥は限られていた。
【0138】
からの非クリンプ布をより小さなプライに切断し、プライを[+/0/-/90]3sの積層順序で置いて、積み重ねを形成した。UD-NCF積み重ねは、V1、V4および4gsmのIM7炭素ベールを使用して挟まれた。次に、ベールが挟まれたUD-NCF積み重ねは、130℃の炉内で30分間にわたって積み重ねを予備成形することによって団結され、Prism(登録商標)EP2400(Cytec Industries Inc.から入手可能な強靭化エポキシ系)が注入された。注入された予備成形物を180℃で2時間にわたって硬化した後に54%~55%の範囲のV(繊維体積分率)を有するパネルが製造された。
【0139】
比較目的のために同じ初期の状態の一方向非クリンプ布を使用して、ほかの点では同一の試験パネルを作製した。
【0140】
機械的特性決定-非クリンプ布(NCF)
様々な機械的性質を測定して、ベール構造および組成物が硬化複合材性能に及ぼす効果を評価した。試験は表12に記載された試験方法に従って実施された。
【0141】
【表12】
【0142】
RTは室温(25℃)を意味する。DCBは双片持ち梁を意味し、ENFは端面切欠き曲げを意味する。
【0143】
CAI、GIcおよびGIIcの結果は表13および14に記載される。σは標準偏差を意味する。
【0144】
【表13】
【0145】
表13に示されるように、非クリンプ布のためにインターリーフとしてハイブリッドベールを使用することによって、未改質非クリンプ布から形成された同じパネルと比較して30Jの衝撃後に圧縮強さの30%までの改良をもたらすことができる。より詳しくは、ベールV4中の少量(1.83gsm)のPILT粒子の均質分布は、基準プリプレグパネルP1よりもCAIの40%の改良をもたらした。さらに、炭素繊維、PA9T繊維およびPILT粒子を含有する、ハイブリッドベールV4構造は、予想外の相乗効果をもたらした-4gsmの炭素ベールが挟まれたNCFについて測定された値よりもCAIを改良する。ベールV1が挟まれたNCFは、インターリーフのない基準布と比較してCAIの約25%の改良をもたらした。
【0146】
表14に示されるように、一方向非クリンプ布のためにインターリーフとしてハイブリッドベールを使用することによって、4gsmの炭素が挟まれた非クリンプ布よりもモードIの離層強度耐性の35%までの改良をもたらすことができる。
【0147】
【表14】
【0148】
より詳しくは、均質に分散された粒子を含有する不織布炭素ベールを含有することによって、炭素ベールが挟まれた非クリンプ布に対してP84GおよびPILTについてそれぞれ、35%および10%の改良をもたらした。さらに、ベールV4(PA9Tと炭素繊維がPILT粒子と組み合わせられた)は、炭素ベールが挟まれた非クリンプ布と比較してGIc性能を約15%改良した。
【0149】
表14の機械的結果は、開示されたベール構造が、炭素ベールが挟まれた非クリンプ布と比較してモードIIの層間耐破壊性性能の40%までの改良をもたらすことができることを示す。
【0150】
とりわけ、ベールV1(非常に低い含有量(1.9%w/w)のP84G粒子を含有する)およびベールV3(低い含有量(2.4%)のPILT粒子を含有する)は、それぞれ、炭素ベールが挟まれた非クリンプ布よりもGIIcの30%および40%の改良をもたらした。他方、ベールV4中のPA9T繊維、IM7炭素繊維およびPILT粒子の組合せは、炭素ベールが挟まれた非クリンプ布と比較してGIIcの約45%の増加をもたらした。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8A
図8B