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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】新規な免疫原性CD1d結合ペプチド
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/10 20060101AFI20230728BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230728BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230728BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230728BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
A61K38/10
A61K38/16
A61P25/00
A61P37/02
C07K14/47 ZNA
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018555682
(86)(22)【出願日】2017-04-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2017059302
(87)【国際公開番号】W WO2017182528
(87)【国際公開日】2017-10-26
【審査請求日】2020-03-26
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】16166054.3
(32)【優先日】2016-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518370219
【氏名又は名称】アンシス・エスア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リュック・ヴァンダー・エルスト
【合議体】
【審判長】森井 隆信
【審判官】冨永 みどり
【審判官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-501508(JP,A)
【文献】国際公開第2015/063176(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
C12N
C07K
MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIDS/WPIX/CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多発性硬化症の治療に使用するための医薬の製造のための、[FWYHT]-X-X-[VILM]-X-X-[FWYHT][配列番号60]配列モチーフを有する、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)のCD1d結合ペプチドエピトープと、前記エピトープのN末端に直接結合された又は前記エピトープのN末端から最大で7アミノ酸により隔てられた[HW]-C-X-X-[CST][配列番号1]、[HW]-X-C-X-X-[CST][配列番号2]又は[HW]-X-X-C-X-X-[CST][配列番号3]レドックスモチーフ配列とを含む、12~30アミノ酸の単離免疫原性ペプチドの使用であって、記号Xは、任意のアミノ酸が許容される位置に対して使用され、大括弧([ ])の中のアミノ酸は、所与の位置に対するいずれか一つの許容可能なアミノ酸を列挙して示される、使用
【請求項2】
前記CD1d結合ペプチド配列モチーフが、[FWY]-X-X-[VILM]-X-X-[FWY][配列番号63]である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記レドックスモチーフが、[HW]-C-X-X-[CST][配列番号1]である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記レドックスモチーフが、[HW]-C-X-X-C[配列番号7]である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記レドックスモチーフが、H-C-X-X-C[配列番号48]である、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記ペプチドが、12~30アミノ酸の長さを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記エピトープが、MOG NKTエピトープFLRVPCWKIを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記ペプチドが、配列GGFLRVPCWKI[配列番号85]を含む;配列CGPCGGFLRVPCWKI[配列番号86]を含む;配列HCGPCGGFLRVPCWKI[配列番号87]を含む;配列WCGPCGGFLRVPCWKI[配列番号88]を含む;配列CHGCGGFLRVPCWKIを含む;配列HCHGCGGFLRVPCWKIを含む;又は配列WCHGCGGFLRVPCWKIを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
[FWYHT]-X-X-[VILM]-X-X-[FWYHT][配列番号60]配列モチーフを有する、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)のCD1d結合ペプチドエピトープと、前記エピトープのN末端に直接結合された又は前記エピトープのN末端から最大で7アミノ酸により隔てられた[HW]-C-X-X-[CST][配列番号1]、[HW]-X-C-X-X-[CST][配列番号2]又は[HW]-X-X-C-X-X-[CST][配列番号3]レドックスモチーフ配列とを含む、12~30アミノ酸の単離免疫原性ペプチドであって、記号Xは、任意のアミノ酸が許容される位置に対して使用され、大括弧([ ])の中のアミノ酸は、所与の位置に対するいずれか一つの許容可能なアミノ酸を列挙して示される、ペプチド
【請求項10】
前記ペプチドが、12~30アミノ酸の長さを有する、請求項9に記載のペプチド。
【請求項11】
前記レドックスモチーフ配列が、[HW]-C-X-X-[CST][配列番号1]である、請求項9または10に記載のペプチド。
【請求項12】
前記レドックスモチーフ配列が、H-C-X-X-[CST][配列番号101]である、請求項9から11のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項13】
前記レドックスモチーフが、H-C-X-X-C[配列番号48]である、請求項9から12のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項14】
前記エピトープが、MOG NKTエピトープFLRVPCWKIを含む、請求項9から13のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項15】
配列GGFLRVPCWKI[配列番号85]を含む;配列CGPCGGFLRVPCWKI[配列番号86]を含む;配列HCGPCGGFLRVPCWKI[配列番号87]を含む;配列WCGPCGGFLRVPCWKI[配列番号88]を含む;配列CHGCGGFLRVPCWKIを含む;配列HCHGCGGFLRVPCWKIを含む;又は配列WCHGCGGFLRVPCWKIを含む、請求項9から14のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項16】
CD1d結合ペプチドエピトープを有する抗原を提示する細胞に対して細胞溶解性であるNKT細胞の集団を得るためのインビトロ方法であって、
- 単離された末梢血細胞を、[FWYHT]-X-X-[VILM]-X-X-[FWYHT][配列番号60]配列モチーフを有する、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)のCD1d結合ペプチドエピトープと、前記エピトープのN末端に直接結合された又は前記エピトープのN末端から最大で7アミノ酸により隔てられた[HW]-C-X-X-[CST][配列番号1]、[HW]-X-C-X-X-[CST][配列番号2]又は[HW]-X-X-C-X-X-[CST][配列番号3]レドックスモチーフ配列とを含む、12~30アミノ酸の免疫原性ペプチドと、インビトロで接触させる工程であって、記号Xは、任意のアミノ酸が許容される位置に対して使用され、大括弧([ ])の中のアミノ酸は、所与の位置に対するいずれか一つの許容可能なアミノ酸を列挙して示される、工程と、
- 前記細胞をIL-2の存在下で拡大する工程と
を含む方法。
【請求項17】
ペプチドを調製するための方法であって、
- [FWYHT]-X-X-[VILM]-X-X-[FWYHT][配列番号60]配列モチーフを有するエピトープ配列を、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)アミノ酸配列内で同定する工程と、
- 上記の同定されたエピトープ配列と、前記エピトープ配列のN末端に直接結合された又は前記エピトープのN末端から最大で7アミノ酸により隔てられた[HW]-C-X-X-[CST][配列番号1]、[HW]-X-C-X-X-[CST][配列番号2]又は[HW]-X-X-C-X-X-[CST][配列番号3]レドックスモチーフ配列とを含む、12~30アミノ酸のペプチドを調製する工程であって、記号Xは、任意のアミノ酸が許容される位置に対して使用され、大括弧([ ])の中のアミノ酸は、所与の位置に対するいずれか一つの許容可能なアミノ酸を列挙して示される、工程
を含む、方法。
【請求項18】
[FWYHT]-X-X-[VILM]-X-X-[FWYHT][配列番号60]配列モチーフを有する、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)のCD1d結合ペプチドエピトープと、前記エピトープのN末端に直接結合された又は前記エピトープのN末端から最大で7アミノ酸により隔てられた[HW]-C-X-X-[CST][配列番号1]、[HW]-X-C-X-X-[CST][配列番号2]又は[HW]-X-X-C-X-X-[CST][配列番号3]レドックスモチーフ配列とを含む、12~30アミノ酸の単離免疫原性ペプチドの有効量を含む、対象における多発性硬化症の予防または治療のための医薬組成物であって、記号Xは、任意のアミノ酸が許容される位置に対して使用され、大括弧([ ])の中のアミノ酸は、所与の位置に対するいずれか一つの許容可能なアミノ酸を列挙して示される、組成物
【請求項19】
前記エピトープが、MOG NKTエピトープFLRVPCWKIを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記ペプチドが、配列GGFLRVPCWKI[配列番号85]を含む;配列CGPCGGFLRVPCWKI[配列番号86]を含む;配列HCGPCGGFLRVPCWKI[配列番号87]を含む;配列WCGPCGGFLRVPCWKI[配列番号88]を含む;配列CHGCGGFLRVPCWKIを含む;配列HCHGCGGFLRVPCWKIを含む;又は配列WCHGCGGFLRVPCWKIを含む、請求項18または19に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫原性ペプチドに関する。該ペプチドは、抗原特異的細胞溶解性NKT細胞を生成するのにインビトロ及びインビボ系で使用される。これらのペプチドにより得られたペプチド及び細胞は、多発性硬化症等の自己免疫疾患を含む様々な障害に対する薬学的に活性なペプチドとして使用される。
【背景技術】
【0002】
WO2012069568は、抗原のCD1d結合ペプチドとレドックスモチーフ配列とを含む新規なクラスのペプチドを開示している。
【0003】
レドックスモチーフ配列は、Fomenkoら(2003) Biochemistry 42、11214~11225頁に概説されている。レドックスモチーフ配列の異なる代替物は、C-(X)2-C[配列番号13]、C-(X)2-S[配列番号14]、C-(X)2-T[配列番号15]、S-(X)2-C[配列番号16]、及びT-(X)2-C[配列番号17]である。レドックスモチーフ配列に関する他の先行技術は、レドックスモチーフ配列内のヒスチジンの関連性について言及している[Kortemmeら(1996) Biochemistry 35、14503~14511頁]。
【0004】
WO2012069568は、ペプチド内における互いの近傍でのCD1d結合ペプチドエピトープ及びレドックスモチーフ配列の組み合わせが、以前に認識されていなかった特性をもたらすことを説明している。すなわち、そのようなペプチドは、ペプチド中に存在するCD1d結合ペプチドエピトープを含む抗原を提示する抗原提示細胞を特異的に死滅させる抗原特異的NKT細胞の集団を誘発する能力を有する。
【0005】
その結果、これらのペプチドは、極めて初期の段階で、すなわち抗原提示のレベルで免疫応答をブロックするのに使用することができる。WO2012/069568は、これらのペプチドの医療用途を実証している。該発明の概念は、後にCarlierら(2012) Plos one 7、10 e45366頁において公表された。
【0006】
この刊行物は、レドックスモチーフ配列のタイプ、及びレドックスモチーフとCD1dエピトープ配列の間のスペーシングを論じている。ペプチドの特性を改善させ得るペプチド中の更なる決定要因は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2012069568
【非特許文献】
【0008】
【文献】Fomenkoら(2003) Biochemistry 42、11214~11225頁
【文献】Kortemmeら(1996) Biochemistry 35、14503~14511頁
【文献】Carlierら(2012) Plos one 7、10 e45366頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
序論で言及された4アミノ酸レドックスモチーフ配列の異なる代替物は、[CST]-X(2)-C[配列番号54]又はC-X(2)-[CST][配列番号55]と書くこともできる。本発明は、該モチーフの外側で直接接している(モチーフのN末端(-1位)又はモチーフのC末端(+5位))追加のヒスチジン又はトリプトファンアミノ酸の存在が、レドックスモチーフの安定性を向上させることを明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
故に、本発明は、一般的構造[HW]-C-X(2)-[CST][配列番号1]又は[CST]-X(2)-C-[HW][配列番号4]を有する修飾レドックスモチーフに関する。
【0011】
この改善された安定性により、追加のヒスチジン又はトリプトファンが存在しないペプチドと比べて、例えば少ないペプチドが使用され得、又は注射の回数が減るというように、ペプチドの特異的還元活性は増加する。
【0012】
第1の態様は、医薬としての使用のための、抗原のCD1d結合ペプチドエピトープと、前記エピトープに直接接している又は前記エピトープから最大で7アミノ酸により隔てられた[HW]-X(0,2)-C-X(2)-[CST]([配列番号1]、[配列番号2]、[配列番号3])若しくは[CST]-X(2)-C-X(0,2)-[HW][配列番号4]、[配列番号5]、[配列番号6]レドックスモチーフ配列とを含む、12~100アミノ酸の単離免疫原性ペプチドに関する。
【0013】
特定の実施形態において前記抗原は、その配列中、前記エピトープの10アミノ酸の距離内に前記モチーフを含有せず、又はその配列中に前記モチーフを含有すらしない。
【0014】
特定の実施形態においてモチーフは、H-X-C-X(2)-[CST][配列番号56]、[CST]-X(2)-C-X-H[配列番号57]、[CST]-X(2)-C-X-W[配列番号58]、又はW-X-C-X(2)-[CST][配列番号59]である。
【0015】
他の実施形態においてモチーフは、[HW]-X(0,2)-C-X(2)-C([配列番号7]、[配列番号8]、[配列番号9])、又はC-X(2)-C-X(0,2)-[HW]([配列番号10]、[配列番号11]、[配列番号12])である。
【0016】
更に他の実施形態においてモチーフは、[HW]-C-X(2)-C[配列番号7]又はC-X(2)-C-[HW][配列番号10]、すなわちH-C-X(2)-C[配列番号48]、C-X(2)-C-H[配列番号42]、W-C-X(2)-C[配列番号51]又はC-X(2)-C-W[配列番号45]である。
【0017】
特定の実施形態において、ペプチドは、12~75アミノ酸、12~50アミノ酸、又は12~30アミノ酸の長さを有する。
【0018】
CD1d結合ペプチドは、前記モチーフから最大で4アミノ酸配列、例えば2アミノ酸配列により隔てられていてもよい。
【0019】
特定の実施形態において、レドックスモチーフ内のXはGly若しくはProであり、又はレドックスモチーフ内のXはCysではない。
【0020】
他の特定の実施形態においてレドックスモチーフの外側のXは、Cys、Ser又はThrではない。
【0021】
別の態様は、抗原のCD1d結合ペプチドと、前記エピトープに直接接している又は前記エピトープから最大で7アミノ酸により隔てられた[HW]-X(0,2)-C-X(2)-[CST]([配列番号1]、[配列番号2]、[配列番号3])若しくは[CST]-X(2)-C-X(0,2)-[HW]([配列番号4]、[配列番号5]、[配列番号6])レドックスモチーフ配列とを含む12~100アミノ酸の単離免疫原性ペプチドであって、但し、前記抗原がその配列中、前記エピトープの10アミノ酸の距離内に前記モチーフを含有しない、ペプチドに関する。
【0022】
特定の実施形態において抗原は、その配列中に前記モチーフを含有しない。
【0023】
モチーフの特定の実施形態は、[HW]-X-C-X(2)-[CST][配列番号2]、[CST]-X(2)-C-X-[HW][配列番号5]、[HW]-C-X(2)-[CST][配列番号1]又は[CST]-X(2)-C-[HW][配列番号4]、[HW]-X(0,2)-C-X(2)-C([配列番号7]、[配列番号8]、[配列番号9])、C-X(2)-C-X(0,2)-[HW]([配列番号10]、[配列番号11]、[配列番号12])、[HW]-C-X(2)-C[配列番号7]又はC-X(2)-C-[HW][配列番号10]である。
【0024】
ペプチドの特定の実施形態において、前記モチーフが[HW]-X(0,2)-C-X(2)-[CST]([配列番号1]、[配列番号2]、[配列番号3])であるならば、モチーフはペプチド内のCD1d結合ペプチドエピトープからN末端に位置し、及び前記モチーフが[CST]-X(2)-C-X(0,2)-[HW]([配列番号4]、[配列番号5]、[配列番号6])であるならば、モチーフはCD1d結合ペプチドエピトープからC末端に位置する。モチーフは、CD1d結合ペプチドエピトープからN末端に位置してもよい。ペプチドは、12~75アミノ酸、12~50アミノ酸、12~30アミノ酸の長さを有してもよい。
【0025】
特定の実施形態において、CD1d結合ペプチドは、最大で4アミノ酸配列により前記モチーフから隔てられ、又は2アミノ酸配列により前記モチーフから隔てられる。
【0026】
特定の実施形態においてレドックスモチーフ内のXは、Gly若しくはProであり、又はレドックスモチーフ内のXはCysではない。
【0027】
特定の実施形態においてレドックスモチーフの外側のXは、Cys、Ser又はThrではない。
【0028】
別の態様は、抗原のCD1d結合ペプチドと、前記エピトープに直接接している又は前記エピトープから最大で7アミノ酸により隔てられた[HW]-X(0,2)-C-X(2)-[CST]([配列番号1]、[配列番号2]、[配列番号3])若しくは[CST]-X(2)-C-X(0,2)-[HW]([配列番号4]、[配列番号5]、[配列番号6])レドックスモチーフ配列とを含む、12~100アミノ酸の免疫原性ペプチドの有効量を投与する工程を含む治療又は予防の方法である。
【0029】
本発明の別の態様は、抗原特異的NKT細胞の生成のための上記のペプチドのインビトロ使用に関する。
【0030】
別の態様は、抗原を提示する細胞に対して細胞溶解性である集団NKT細胞を得る方法であって、末梢血細胞を提供する工程と、前記細胞を、抗原のCD1d結合ペプチドと、前記エピトープに直接接している又は前記エピトープから最大で7アミノ酸により隔てられた[HW]-X(0,2)-C-X(2)-[CST]([配列番号1]、[配列番号2]、[配列番号3])若しくは[CST]-X(2)-C-X(0,2)-[HW]([配列番号4]、[配列番号5]、[配列番号6])レドックスモチーフ配列とを含む12~100アミノ酸の免疫原性ペプチドと、インビトロで接触させる工程と、前記細胞をIL-2の存在下で拡大する工程とを含む方法に関する。
【0031】
別の態様は、医薬としての使用のための、上記の方法により得られる細胞の集団に関する。
【0032】
別の態様は、上記のように細胞の有効量を投与する工程を含む治療及び予防の方法に関する。
【0033】
本発明は、医薬としての使用のための、[FWYHT]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWYHT][配列番号60]配列モチーフを有する抗原のCD1d結合ペプチドエピトープと、前記エピトープに直接接している又は前記エピトープから最大で7アミノ酸により隔てられた[HW]-X(0,2)-C-X(2)-[CST]([配列番号1]、[配列番号2]、[配列番号3])、若しくは[CST]-X(2)-C-X(0,2)-[HW]([配列番号4]、[配列番号5]、[配列番号6])レドックスモチーフ配列とを含む12~100アミノ酸の単離免疫原性ペプチドであって、但し、前記ペプチドが、その配列中にMHCクラスII T細胞エピトープを含有しない、ペプチドに関する。
【0034】
その実施形態において前記抗原は、その配列中、前記エピトープの10アミノ酸の距離内に前記CD1d結合ペプチドモチーフを含有しない。
【0035】
その実施形態においてCD1d結合ペプチド配列モチーフは、[FWY]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWY][配列番号63]である。
【0036】
その実施形態においてレドックスモチーフは、[HW]-X-C-X(2)-[CST][配列番号2]又は[CST]-X(2)-C-X-[HW][配列番号5]である。
【0037】
その実施形態においてレドックスモチーフは、[HW]-C-X(2)-[CST][配列番号1]又は[CST]-X(2)-C-[HW][配列番号4]である。
【0038】
その実施形態においてレドックスモチーフは、H-C-X(2)-[CST][配列番号101]又は[CST]-X(2)-C-H[配列番号102]である。
【0039】
その実施形態においてレドックスモチーフは、[HW]-X(0,2)-C-X(2)-C([配列番号7]、[配列番号8]、[配列番号9])又はC-X(2)-C-X(0,2)-[HW]([配列番号10]、[配列番号11]、[配列番号12])である。
【0040】
その実施形態においてレドックスモチーフは、[HW]-C-X(2)-C[配列番号7]又はC-X(2)-C-[HW][配列番号10]である。
【0041】
その実施形態においてレドックスモチーフは、H-C-X(2)-C[配列番号48]又はC-X(2)-C-H[配列番号42]である。
【0042】
その実施形態において前記ペプチドは、12~50アミノ酸の長さを有する。
【0043】
その実施形態においてレドックスモチーフ内のXは、Gly若しくはProであり、又はレドックスモチーフ内のXはCysではなく、又はレドックスモチーフの外側のXは、Cys、Ser若しくはThrではない。
【0044】
本発明は更に、[FWYHT]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWYHT][配列番号60]配列モチーフを有する抗原のCD1d結合ペプチドと、前記エピトープに直接接している又は前記エピトープから最大で7アミノ酸により隔てられた[HW]-X(0,2)-C-X(2)-[CST]([配列番号1]、[配列番号2]、[配列番号3])若しくは[CST]-X(2)-C-X(0,2)-[HW]([配列番号4]、[配列番号5]、[配列番号6])レドックスモチーフ配列とを含む12~100アミノ酸の単離免疫原性ペプチドであって、但し、前記ペプチドが、その配列中にMHCクラスII T細胞エピトープを含有しない、ペプチドに関する。
【0045】
その実施形態において前記抗原は、その配列中、前記レドックスモチーフ配列の10アミノ酸の距離内に前記CD1d結合ペプチドモチーフを含有しない。
【0046】
その実施形態において前記抗原は、その配列中に前記CD1d結合ペプチドモチーフを含有しない。
【0047】
その実施形態においてレドックスモチーフは、[HW]-X-C-X(2)-[CST][配列番号2]又は[CST]-X(2)-C-X-[HW][配列番号5]である。
【0048】
その実施形態においてレドックスモチーフ配列は、[HW]-C-X(2)-[CST][配列番号1]又は[CST]-X(2)-C-[HW][配列番号4]である。
【0049】
その実施形態においてレドックスモチーフ配列は、H-C-X(2)-[CST][配列番号101]又は[CST]-X(2)-C-H[配列番号102]である。
【0050】
その実施形態において
- 前記レドックスモチーフが、[HW]-X(0,2)-C-X(2)-[CST]([配列番号1]、[配列番号2]、[配列番号3])であるならば、レドックスモチーフは、ペプチド内のCD1d結合ペプチドエピトープからN末端に位置し、及び
- 前記レドックスモチーフが、[CST]-X(2)-C-X(0,2)-[HW]([配列番号4]、[配列番号5]、[配列番号6])であるならば、レドックスモチーフは、ペプチド内のCD1d結合ペプチドエピトープからC末端に位置する。
【0051】
その実施形態においてレドックスモチーフは、[HW]-X(0,2)-C-X(2)-C([配列番号7]、[配列番号8]、[配列番号9])又はC-X(2)-C-X(0,2)-[HW]([配列番号10]、[配列番号11]、[配列番号12])である。
【0052】
その実施形態においてレドックスモチーフは、[HW]-C-X(2)-C[配列番号7]又はC-X(2)-C-[HW][配列番号10]である。
【0053】
その実施形態においてレドックスモチーフは、H-C-X(2)-C[配列番号48]又はC-X(2)-C-H[配列番号42]である。
【0054】
その実施形態において前記レドックスモチーフは、CD1d結合ペプチドエピトープからN末端に位置する。
【0055】
その実施形態において前記ペプチドは、12~50アミノ酸の長さを有する。
【0056】
その実施形態においてレドックスモチーフ内のXは、Gly若しくはProであり、又はレドックスモチーフ内のXはCysではなく、又はレドックスモチーフの外側のXは、Cys、Ser若しくはThrではない。
【0057】
本発明は更に、抗原特異的細胞溶解性NKT細胞の生成のための上記のようなペプチドのインビトロ使用に関する。
【0058】
本発明は更に、CD1d結合ペプチドエピトープを有する抗原を提示する細胞に対して細胞溶解性であるNKT細胞の集団を得るための方法であって、
- 末梢血細胞を提供する工程と、
- 前記細胞を、[FWYHT]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWYHT][配列番号60]配列モチーフを有する抗原のCD1d結合ペプチドエピトープと、前記エピトープに直接接している又は前記エピトープから最大で7アミノ酸により隔てられた[HW]-X(0,2)-C-X(2)-[CST]([配列番号1]、[配列番号2]、[配列番号3])若しくは[CST]-X(2)-C-X(0,2)-[HW]([配列番号4]、[配列番号5]、[配列番号6])レドックスモチーフ配列とを含み、前記ペプチドがその配列中にMHCクラスII T細胞エピトープを含有しない12~100アミノ酸の免疫原性ペプチドと、インビトロで接触させる工程と、
- 前記細胞をIL-2の存在下で拡大する工程と
を含む方法に関する。
【0059】
本発明は更に、医薬としての使用のための、上記の方法により得られる細胞の集団に関する。
【0060】
本発明は更に、ペプチドを調製するための方法であって、
- [FWYHT]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWYHT][配列番号60]配列モチーフを有する配列を抗原内で同定する工程と、
- 上記の同定された配列と、直接接している又はそこから最大で7アミノ酸により隔てられた[HW]-X(0,2)-C-X(2)-[CST]([配列番号1]、[配列番号2]、[配列番号3])若しくは[CST]-X(2)-C-X(0,2)-[HW]([配列番号4]、[配列番号5]、[配列番号6])レドックスモチーフ配列とを含む、12~100アミノ酸のペプチドを調製する工程と
を含み、調製された配列がその配列中にMHCクラスII T細胞エピトープを含有しないことを条件とする、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0061】
定義
「ペプチド」という用語は、本明細書で使用される場合、ペプチド結合によりつながった2~200アミノ酸のアミノ酸配列を含むが、非アミノ酸構造を含み得る分子を指す。本発明によるペプチドは、従来の20アミノ酸若しくはその修飾バージョンのいずれも含有することができ、或いは化学的ペプチド合成又は化学的若しくは酵素的修飾により組み込まれた天然に存在しないアミノ酸を含有することができる。「抗原」という用語は、本明細書で使用される場合、高分子、典型的にはタンパク質(多糖を含む又は含まない)の構造、又は1つ若しくは複数のハプテンを含み、及びT細胞エピトープを含むタンパク質組成物でできた構造を指す。「抗原タンパク質」という用語は、本明細書で使用される場合、1つ又は複数のT細胞エピトープを含むタンパク質を指す。「自己抗原」又は「自己抗原タンパク質」は本明細書で使用される場合、体内に存在するヒト又は動物タンパク質であって、同じヒト又は動物の体内で免疫応答を誘発するタンパク質を指す。
【0062】
「食品又は医薬品抗原タンパク質」という用語は、食品又はワクチン等の医薬製品中に存在する抗原タンパク質を指す。本発明の文脈における「T細胞エピトープ」という用語は、ドミナント、サブドミナント、又はマイナーT細胞エピトープ、すなわち、Tリンパ球の細胞表面の受容体により特異的に認識及び結合される抗原タンパク質の一部を指す。エピトープがドミナント、サブドミナント、又はマイナーであるかどうかは、エピトープに対して誘発される免疫反応に依存する。優勢性は、タンパク質のあらゆるT細胞エピトープのうち、そのようなエピトープがT細胞により認識される頻度、及びT細胞を活性化することができる頻度に依存する。
【0063】
T細胞エピトープは、MHC II分子の溝に嵌る8又は、典型的には9アミノ酸の配列からなる、MHCクラスII分子により認識されるエピトープである。T細胞エピトープを表すペプチド配列内で、エピトープ中のアミノ酸はP1~P9と番号付けされ、エピトープのアミノ酸N末端はP-1、P-2等と番号付けされ、エピトープのアミノ酸C末端はP+1、P+2等と番号付けされる。MHCクラスII分子により認識され、MHCクラスI分子には認識されないペプチドは、MHCクラスII拘束T細胞エピトープと呼ばれる。MHCクラスII T細胞エピトープを同定する方法は、以下に記載される。
【0064】
「CD1d拘束NKT細胞ペプチドエピトープ」という用語は、細胞表面で発現されNKT細胞により認識されるCD1d分子により特異的に結合される抗原タンパク質の一部を指す。
【0065】
CD1d拘束NKT細胞ペプチドエピトープは、一般モチーフ[FWYHT]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWYHT][配列番号60]を有する。この一般モチーフの代替バージョンは、1位及び/又は7位に代替物[FWYH]を有し、故に[FWYH]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWYH][配列番号61]である。
【0066】
この一般モチーフの代替バージョンは、1位及び/又は7位に代替物[FWYT]を有する、[FWYT]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWYT][配列番号62]である。この一般モチーフの代替バージョンは、1位及び/又は7位に代替物[FWY]を有する、[FWY]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWY][配列番号63]である。
【0067】
1位及び/又は7位のアミノ酸にかかわらず、該一般モチーフの代替物バージョンは、4位に代替物[ILM]を有する、例えば[FWYH]-X(2)-[ILM]-X(2)-[FWYH][配列番号64]、又は[FWYHT]-X(2)-[ILM]-X(2)-[FWYHT][配列番号65]、又は[FWY]-X(2)-[ILM]-X(2)-[FWY][配列番号65]である。
【0068】
タンパク質中のCD1d結合モチーフは、手動で、又はScanProsite De Castro E.ら(2006) Nucleic Acids Res. 34(ウェブサーバー版):W362~W365頁等のアルゴリズムを用いて、上記の配列モチーフについて配列をスキャンして同定することができる。
【0069】
「ナチュラルキラーT」すなわち「NKT」細胞は、非古典的MHC複合体分子CD1dにより提示される抗原を認識する非従来型Tリンパ球の別個のサブセットを構成する。NKT細胞の2つのサブセットが現在記載されている。インバリアントNKT細胞(iNKT)とも呼ばれるI型NKT細胞は最も豊富である。これらは、マウスにおいてはValpha14及びヒトにおいてはValpha24であるインバリアントアルファ鎖でできたアルファ-ベータT細胞受容体(TCR)の存在を特徴とする。このアルファ鎖は、可変であるが限られた数のベータ鎖に結合される。2型NKT細胞は、アルファ-ベータTCRを有するが、多型アルファ鎖である。しかし、NKT細胞の他のサブセットが存在し、その表現型は依然として完全には定義されていないが、CD1d分子と関連して提示される糖脂質により活性化される特徴を共有することは明らかである。
【0070】
NKT細胞は典型的には、NKG2D及びNK1.1を含むナチュラルキラー(NK)細胞受容体の組み合わせを発現する。NKT細胞は、完全なエフェクター能を獲得する前に拡大を必要としないという事実によって、獲得免疫系と区別され得る自然免疫系の一部である。NKT細胞のメディエーターのほとんどが性能を発揮し、転写を必要としない。NKT細胞は、細胞内病原体及び腫瘍拒絶に対する免疫応答の主な関与者であることが示されている。自己免疫疾患及び移植拒絶の制御におけるその役割も提唱されている。
【0071】
認識単位であるCD1d分子は、ベータ-2ミクログロブリンの存在を含め、MHCクラスI分子と酷似した構造を有する。CD1d分子は、2つのアルファ鎖に隣接された、高度に疎水性の残基を含有する深い間隙を特徴とし、脂質鎖を受け入れる。間隙は、両端が開口しており、より長い鎖に対応することを可能にする。CD1dに対する標準的リガンドは、合成アルファガラクトシルセラミド(アルファGalCer)である。しかし、糖リン脂質及びリン脂質、ミエリンで見出される天然脂質スルファチド、微生物ホスホイノシトールマンノシド及びアルファ-グルクロノシルセラミドを含む多くの天然代替リガンドが記載されている。当技術分野における現在のコンセンサス(Matsudaら(2008)、Curr. Opinion Immunol.、20 358~368頁; Godfreyら(2010)、Nature rev. Immunol 11、197~206頁)は、依然として、脂質鎖を含有するリガンド、又は一般的に、CD1dの中に埋没した脂質尾部及びCD1dから突き出る糖残基頭部基でできた共通構造のみをCD1dが結合するということである。
【0072】
本発明の文脈において使用されるエピトープに関して、「相同体」という用語は、本明細書で使用される場合、天然に存在するエピトープと少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも98%アミノ酸配列同一性を有し、これによりCD1d分子を結合するエピトープの能力を維持する分子を指す。エピトープの特定の相同体は、最大で3個、より具体的には最大で2個、最も具体的には1個のアミノ酸において修飾された天然エピトープに対応する。
【0073】
本発明のペプチドに関して、「誘導体」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくともペプチド活性部分(すなわち、細胞溶解性NKT細胞活性を誘発することができる)を含有し、これに加えてペプチドの安定化、又はペプチドの薬物動態学的若しくは薬力学的特性の変更等の異なる目的を有し得る相補的部分を含む分子を指す。
【0074】
2つの配列の「配列同一性」という用語は、本明細書で使用される場合、同一のヌクレオチド又はアミノ酸を有する位置の数を、2つの配列を並べたときにより短い方の配列中のヌクレオチド又はアミノ酸の数で割った値に関する。特に、配列同一性は、70%~80%、81%~85%、86%~90%、91%~95%、96%~100%、又は100%である。
【0075】
「ペプチドコードポリヌクレオチド(又は核酸)」及び「ペプチドをコードするポリヌクレオチド(又は核酸)」という用語は、本明細書で使用される場合、適当な環境で発現される時、適切なペプチド配列又はその誘導体若しくは相同体の生成をもたらすヌクレオチド配列を指す。そのようなポリヌクレオチド又は核酸は、ペプチドをコードする通常の配列、並びに必要とされる活性を有するペプチドを発現することができるこれらの核酸の誘導体及び断片を含む。本発明によるペプチド又はその断片をコードする核酸は、哺乳動物に由来する、又は哺乳動物、最も具体的にはヒトのペプチド断片に対応するペプチド又はその断片をコードする配列である。
【0076】
「免疫障害」又は「免疫疾患」という用語は、免疫系の反応が、生物における機能不全又は非生理的状態に関与する、又はこれを持続する疾患を指す。免疫障害に含まれるのは、とりわけアレルギー障害及び自己免疫疾患である。
【0077】
「アレルギー疾患」又は「アレルギー障害」という用語は、本明細書で使用される場合、アレルゲンと呼ばれる特定の物質(花粉、刺傷、薬物、又は食品等)に対する免疫系の過敏反応を特徴とする疾患を指す。アレルギーは、アトピー性の個々の患者が、既に感作されているアレルゲンに遭遇すると常に観察される徴候及び症状のアンサンブルであり、様々な疾患、特に気管支喘息等の呼吸器疾患及び症状の発症をもたらす場合がある。様々なタイプの分類が存在し、たいていアレルギー障害は、それが哺乳動物の体のどこで生じるかに応じて異なる名前を有する。「過敏症」は、感作されるようになった抗原に曝露すると個体で引き起こされる望ましくない(有害な、不快感を生む、時として致死的な)反応である。「即時型過敏症」はIgE抗体の産生に依存し、したがってアレルギーに相当する。
【0078】
「自己免疫疾患」又は「自己免疫障害」という用語は、生物自身の構成要素(分子下レベルに至るまで)を「自己」として認識しないことによる、自身の細胞及び組織に対する生物の異常な免疫応答から生じる疾患を指す。疾患群は、2つのカテゴリー、臓器特異的疾患及び全身疾患に分けることができる。「アレルゲン」は、素因、特に遺伝的に素因がある個体(アトピー性)患者においてIgE抗体の産生を誘発する物質、通常は高分子又はタンパク質組成物として定義される。同様の定義が、Liebersら(1996) Clin. Exp. Allergy 26、494~516頁に示されている。
【0079】
「治療的に有効な量」という用語は、患者に所望の治療又は予防効果をもたらす本発明のペプチド又はその誘導体の量を指す。例えば、疾患又は障害に関して、これは、疾患又は障害の1つ又は複数の症状をある程度低減し、より具体的には、疾患若しくは障害と関連する又は疾患若しくは障害の原因となる生理学的又は生化学的パラメーターを部分的又は完全に正常に戻す量である。典型的には、治療的に有効な量は、正常な生理学的状態の改善又は回復をもたらすと予想される本発明のペプチド又はその誘導体の量である。例えば、免疫障害に罹患している哺乳動物を治療的に処置するのに使用される場合、治療的に有効な量は、1日量のペプチド/前記哺乳動物のkg体重である。或いは、投与が遺伝子療法による場合、裸のDNA又はウイルスベクターの量が、適切な投与量の本発明のペプチド、その誘導体又は相同体の局所産生を確保するために調整される。
【0080】
ペプチドに関する場合、「天然の」という用語は、配列が天然に存在するタンパク質(野生型又は変異体)の断片と同一であるという事実に関する。これと対照的に「人工の」という用語は、それ自体天然に生じない配列を指す。人工配列は、天然に存在する配列内の1つ若しくは複数のアミノ酸の変換/欠失/挿入等の限定的な修飾、又は天然に存在する配列のアミノ酸N若しくはC末端への付加/除去により、天然配列から得られる。
【0081】
これに関連して、ペプチド断片は、典型的にはエピトープスキャニングの場合、抗原から生成されることが理解される。偶然にもそのようなペプチドは、その配列中にMHCクラスIIエピトープと、その近接に修飾レドックスモチーフ[HW]-X(0,2)-C-X(2)-[CST]([配列番号1]、[配列番号2]、[配列番号3])又は[CST]-X(2)-C-X(0,2)-[HW]([配列番号4]、[配列番号5]、[配列番号6])を有する配列とを含み得る。本明細書では「近接」は、MHCクラスIIエピトープ配列間と上記の[HW]-X(0,2)-C-X(2)-[CST]([配列番号1]、[配列番号2]、[配列番号3])又は[CST]-X(2)-C-X(0,2)-[HW]([配列番号4]、[配列番号5]、[配列番号6])モチーフの間に、最大で7アミノ酸、最大で4アミノ酸、最大で2アミノ酸、又は更には0アミノ酸のアミノ酸配列がある可能性がある(換言すれば、エピトープ及びモチーフ配列は互いに直接接している)ことを意味する。
【0082】
したがって、本発明の特定の実施形態は、互いに直接接している、又は最大2、4若しくは7アミノ酸のアミノ酸配列により隔てられたCD1d結合ペプチドエピトープとレドックスモチーフ配列とを偶然含む抗原のペプチド断片を除外する。
【0083】
更に、CD1d結合モチーフの上記の実施形態の存在に照らして、CD1d結合ペプチドとして同定された特定のペプチドは、特定の例外的な条件においてMCHクラスII T細胞エピトープも含有することが理解される。配列中にMCHクラスII T細胞エピトープを含むペプチドは、本発明から排除される。
【0084】
より具体的には、そのような偶然のMHCクラスIIペプチドが、レドックスモチーフ配列の外側のペプチドの部分に存在するペプチドが排除される。この場合、MCHクラスII T細胞エピトープ及びCD1d結合ペプチドエピトープの配列は、互いに部分的又は完全に重複する可能性がある。後者の場合、CD1d結合ペプチドの7アミノ酸配列は、MHCクラスII T細胞エピトープの9アミノ酸配列内に完全に含まれる。
【0085】
抗原のペプチド断片は、免疫原性特性について研究されているが、一般的に治療剤として使用されていない(アレルギー及び腫瘍ワクチン接種の分野は別として)。故に、本発明のペプチドの改善された特性の何らかの知見の非存在下、そのようなペプチドの医薬としての使用は前例がない。
【0086】
アミノ酸は、本明細書では正式名称、三文字略号、又は一文字略号で呼ばれる。
【0087】
アミノ酸配列のモチーフは、本明細書ではPrositeのフォーマットに従って書かれる。モチーフは、配列の特定の部分の特定の配列多様性を記載するのに使用される。記号Xは、任意のアミノ酸が許容される位置に対して使用される。代替物は、大括弧(「[ ]」)の間に所与の位置に対する許容可能なアミノ酸を列挙して示される。例えば[CST]は、Cys、Ser又はThrから選択されるアミノ酸を表す。代替物として除外されるアミノ酸は、中括弧(「{ }」)の間にそれらを列挙して示される。例えば{AM}は、Ala及びMetを除く任意のアミノ酸を表す。モチーフ中の異なる要素は、ハイフン-により互いに隔てられる。モチーフ内の同一要素の繰り返しは、その要素の後ろの括弧の間に数値又は数値範囲を入れて示すことができる。例えばX(2)はX-Xに対応し、X(2,5)は2、3、4又は5 Xアミノ酸に対応し、A(3)はA-A-Aに対応する。
【0088】
故に、[HW]-C-X(2)-C[配列番号7]は、[HW]CXXCと書くことができる。
【0089】
同様に、C-X(2)-C-X(0,2)-[HW]([配列番号10]、[配列番号11]、[配列番号12])は、CとH又はWの間にアミノ酸がない、1個又は2個のアミノ酸がある3つの可能性、すなわちC-X(2)-C-[HW][配列番号10]、C-X(2)-C-X-[HW][配列番号11]、及びC-X(2)-C-X(2)-[HW][配列番号12]を表す。
【0090】
同様に、[HW]-X(0,2)-C-X(2)-C([配列番号7]、[配列番号8]、[配列番号9])は、H又はWとCの間に、アミノ酸がない、1個又は2個のアミノ酸がある3つの可能性、すなわち[HW]-C-X(2)-C[配列番号7]、[HW]-X-C-X(2)-C[配列番号8]、及び[HW]-X(2)-C-X(2)-C[配列番号9]を表す。
【0091】
アミノ酸X間で区別するために、H又はWとCの間のものは外部アミノ酸X(上記配列の一重下線)と呼ばれ、レドックスモチーフ内のものは内部アミノ酸X(上記配列の二重下線)と呼ばれる。
【0092】
Xは、任意のアミノ酸、具体的にはL-アミノ酸、より具体的には20個の天然に存在するL-アミノ酸の1つを表す。
【0093】
還元活性を有する、CD1d結合ペプチドエピトープと修飾ペプチドモチーフ配列とを含むペプチドは、抗原提示細胞に対する抗原特異的細胞溶解性NKT細胞の集団を生成することができる。
【0094】
したがって、最も広い意味において、本発明は、免疫反応を引き起こす可能性を有する抗原(自己又は非自己)の少なくとも1つのCD1d結合ペプチドエピトープと、ペプチドジスルフィド結合に対する還元活性を有する修飾チオレダクターゼ配列モチーフとを含むペプチドに関する。CD1d結合エピトープ及び修飾レドックスモチーフ配列は、ペプチド中で互いに直接接していてもよく、又は場合により1つ若しくは複数のアミノ酸(いわゆるリンカー配列)により隔てられていてもよい。場合によりペプチドは、エンドソーム標的化配列及び/又は追加の「フランキング」配列を更に含む。
【0095】
本発明のペプチドは、免疫反応を引き起こす可能性を有する抗原(自己又は非自己)のCD1d結合ペプチドエピトープと、修飾レドックスモチーフとを含む。ペプチド中のモチーフ配列の還元活性は、還元するとインスリンの溶解性が変化するインスリン溶解性アッセイ等のように、又はインスリン等の蛍光標識基質により、スルフヒドリル基を還元する能力についてアッセイすることができる。そのようなアッセイの例は、本出願の実験セクションにより詳細に記載される。
【0096】
修飾レドックスモチーフは、CD1d結合ペプチドエピトープのアミノ末端側、又はCD1d結合ペプチドエピトープのカルボキシ末端に配置されてもよい。
【0097】
還元活性を有するペプチド断片は、グルタレドキシン、ヌクレオレドキシン、チオレドキシン及び他のチオール/ジスルフィドオキシドレダクターゼを含む、小さなジスルフィド還元酵素であるチオレダクターゼ中に見られる(Holmgren (2000) Antioxid. Redox Signal. 2、811~820頁; Jacquotら(2002) Biochem. Pharm. 64、1065~1069頁)。これらは、多機能性、遍在性であり、多くの原核生物及び真核生物で見出される。これらは、保存された活性ドメインのコンセンサス配列: C-X(2)-C[配列番号13]、C-X(2)-S[配列番号14]、C-X(2)-T[配列番号15]、S-X(2)-C[配列番号16]、T-X(2)-C[配列番号17](Fomenkoら(2003) Biochemistry 42、11214-11225頁; Fomenkoら(2002) Prot. Science 11、2285-2296頁)(Xは任意のアミノ酸を表す)内のレドックス活性システインを通じて、タンパク質(酵素等)のジスルフィド結合に対する還元活性を発揮する。そのようなドメインは、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)及びホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼC等のより大きなタンパク質で見出される。
【0098】
例えばFomenko及びWO2008/017517から知られるような4アミノ酸レドックスモチーフは、1位及び/又は4位にシステインを含み、故にモチーフは、C-X(2)-[CST][配列番号55]又は[CST]-X(2)-C[配列番号54]のどちらかである。そのようなテトラペプチド配列が、「モチーフ」と呼ばれることになる。ペプチド中のモチーフは、代替物C-X(2)-C[配列番号13]、S-X(2)-C[配列番号16]、T-X(2)-C[配列番号17]、C-X(2)-S[配列番号14]、又はC-X(2)-T[配列番号15]のいずれかであり得る。特に、ペプチドは、配列モチーフC-X(2)-C[配列番号13]を含有する。
【0099】
本発明のペプチドの「修飾」レドックスモチーフは、直接接しているシステイン、及びモチーフの外側にヒスチジン又はトリプトファンが存在している点で先行技術と異なる。換言すれば、修飾レドックスモチーフは、[HW]-X(0,2)-C-X(2)-[CST]([配列番号1]、[配列番号2]、[配列番号3])又は[CST]-X(2)-C-X(0,2)-[HW]([配列番号4]、[配列番号5]、[配列番号6])と書かれる。
【0100】
これの実施形態は、[HW]-X(2)-C-X(2)-[CST][配列番号3]、[HW]-X-C-X(2)-[CST][配列番号2]、[HW]-C-X(2)-[CST][配列番号1]、[CST]-X(2)-C-X(2)-[HW][配列番号6]、[CST]-X(2)-C-X-[HW][配列番号5]、及び[CST]-X(2)-C-[HW][配列番号4]である。
より特定の実施形態は、
H-C-X(2)-S [配列番号18]
H-X-C-X(2)-S [配列番号19]
H-X(2)-C-X(2)-S [配列番号20]
W-C-X(2)-S [配列番号21]
W-X-C-X(2)-S [配列番号22]
W-X(2)-C-X(2)-S [配列番号23]
H-C-X(2)-T [配列番号24]
H-X-C-X(2)-T [配列番号25]
H-X(2)-C-X(2)-T [配列番号26]
W-C-X(2)-T [配列番号27]
W-X-C-X(2)-T [配列番号28]
W-X(2)-C-X(2)-T [配列番号29]
S-X(2)-C-H [配列番号30]
S-X(2)-C-X-H [配列番号31]
S-X(2)-C-X(2)-H [配列番号32]
S-X(2)-C-W [配列番号33]
S-X(2)-C-X-W [配列番号34]
S-X(2)-C-X(2)-W [配列番号35]
T-X(2)-C-H [配列番号36]
T-X(2)-C-X-H [配列番号37]
T-X(2)-C-X(2)-H [配列番号38]
T-X(2)-C-W [配列番号39]
T-X(2)-C-X-W [配列番号40]
T-X(2)-C-X(2)-W [配列番号41]
C-X(2)-C-H [配列番号42]
C-X(2)-C-X-H [配列番号43]
C-X(2)-C-X(2)-H [配列番号44]
C-X(2)-C-W [配列番号45]
C-X(2)-C-X-W [配列番号46]
C-X(2)-C-X(2)-W [配列番号47]
H-C-X(2)-C [配列番号48]
H-X-C-X(2)-C [配列番号49]
H-X(2)-C-X(2)-C [配列番号50]
W-C-X(2)-C [配列番号51]
W-X-C-X(2)-C [配列番号52]
W-X(2)-C-X(2)-C [配列番号53]
である。
【0101】
本発明の特定の実施形態において、[HW]-C-X(2)-C-[HW][配列番号67]モチーフを有するペプチドは、本発明の範囲から除外される。
【0102】
他の特定の実施形態は、レドックスモチーフのシステインアミノ酸が、HCHxC[配列番号68]等の2つのヒスチジン配列に挟まれたペプチドである。
【0103】
他の特定の実施形態は、レドックスモチーフのシステインアミノ酸が、WCWxC[配列番号69]等の2つのトリプトファン配列に挟まれたペプチドである。
【0104】
これより先に詳細に説明されているように、本発明のペプチドは、非天然アミノ酸の組み込みを可能にする化学合成により作成することができる。したがって、上記に列挙された修飾レドックスモチーフの「C」は、システイン又はチオール基を有する別のアミノ酸(メルカプトバリン、ホモシステイン、又はチオール機能を有する他の天然若しくは非天然アミノ酸等)のどちらかを表す。還元活性を有するためには、修飾レドックスモチーフ中に存在するシステインは、シスチンジスルフィド架橋の一部として生じるべきでない。それにもかかわらず、レドックス修飾レドックスモチーフは、インビボで遊離チオール基を有するシステインに変換されるメチル化システイン等の修飾システインを含み得る。Xは、S、C、若しくはTを含む20天然アミノ酸のいずれかであってもよく、又は非天然アミノ酸であってもよい。特定の実施形態において、XはGly、Ala、Ser又はThr等の小さな側鎖を有するアミノ酸である。更なる特定の実施形態において、XはTrp等のかさ高い側鎖を有するアミノ酸ではない。更なる特定の実施形態において、Xはシステインではない。更なる特定の実施形態において、修飾レドックスモチーフ中の少なくとも1つのXはHisである。他の更なる特定の実施形態において、修飾レドックスモチーフ中の少なくとも1つのXはProである。
【0105】
ペプチドは、N末端NH2基又はC末端COOH基(例えば、COOHのCONH2基への修飾)の修飾等の、安定性又は溶解性を高めるための修飾を更に含んでもよい。
【0106】
修飾レドックスモチーフを含む本発明のペプチドにおいて、モチーフは、エピトープがレドックスモチーフ配列を含有する場合、モチーフがCD1d分子のペプチド結合部分の外側に残るように位置する。修飾レドックスモチーフは、ペプチド内のCD1d結合ペプチドエピトープ配列に直接接している(換言すれば、モチーフとエピトープの間のゼロアミノ酸のリンカー配列)、又は7以下のアミノ酸のアミノ酸配列を含むリンカーによりCD1d結合ペプチドエピトープから隔てられているかのどちらかである。より具体的には、リンカーは1、2、3、又は4アミノ酸を含む。特定の実施形態は、エピトープ配列と修飾レドックスモチーフ配列の間に0、1又は2アミノ酸リンカーを有するペプチドである。或いは、リンカーは5、6、7、8、9又は10アミノ酸を含んでもよい。修飾レドックスモチーフ配列がエピトープ配列に接しているペプチドにおいて、これは、エピトープ配列と比べてP-4位~P-1位又はP+1位~P+4位として示される。ペプチドリンカーとは別に、他の有機化合物が、ペプチドの部分を互いに(例えば、修飾レドックスモチーフ配列をCD1d結合ペプチドエピトープ配列に)連結させるためのリンカーとして使用されてもよい。
【0107】
本発明のペプチドは、CD1d結合ペプチドエピトープと修飾レドックスモチーフとを含む配列のN又はC末端に追加の短いアミノ酸配列を更に含むことができる。そのようなアミノ酸配列は、本明細書では一般的に「フランキング配列」と呼ばれる。フランキング配列は、エピトープとエンドソーム標的化配列の間、及び/又は修飾レドックスモチーフとエンドソーム標的化配列の間に配置することができる。エンドソーム標的化配列を含まない特定のペプチドでは、短いアミノ酸配列が、ペプチド中の修飾レドックスモチーフ及び/又はエピトープ配列のN及び/又はC末端に存在してもよい。より具体的には、フランキング配列は、1~7アミノ酸の配列、最も具体的には2アミノ酸の配列である。
【0108】
修飾レドックスモチーフは、エピトープからN末端に位置してもよい。
【0109】
修飾レドックスモチーフが1個のシステインを含有する特定の実施形態において、このシステインはエピトープから遠く離れた位置の修飾レドックスモチーフ中に存在し、故に修飾レドックスモチーフは、例えば、エピトープのN末端にW-C-X(2)-T[配列番号27]、H-C-X(2)-T[配列番号24]、H-C-X(2)-S[配列番号18]、W-C-X(2)-S[配列番号21]として現れ、又はエピトープのC末端にT-X(2)-C-H[配列番号36]、T-X(2)-C-W[配列番号39]、S-X(2)-C-H[配列番号30]、S-X(2)-C-W[配列番号33]として現れる。
【0110】
本発明の特定の実施形態において、エピトープ配列と修飾レドックスモチーフ配列とを含むペプチドが提供される。更なる特定の実施形態において、修飾レドックスモチーフは、例えば1個若しくは複数個のアミノ酸により互いから間隔をおき得る修飾レドックスモチーフの繰り返しとして、又は互いに直接接している繰り返しとしてペプチド中に複数回(1、2、3、4回、又更に多い回数)現れる。或いは、1つ又は複数の修飾レドックスモチーフは、CD1d結合ペプチドエピトープのN及びC末端の両方に提供される。
【0111】
本発明のペプチドとして想定される他の変形形態には、各エピトープ配列が、修飾レドックスモチーフに先行される及び/又は修飾レドックスモチーフが後に続く(例えば、「修飾レドックスモチーフ-エピトープ」の繰り返し、又は「修飾レドックスモチーフ-エピトープ-修飾レドックスモチーフ」の繰り返し)CD1d結合ペプチドエピトープ配列の繰り返しを含有するペプチドが含まれる。本明細書では修飾レドックスモチーフは、全て同じ配列を有することができるが、これは必須ではない。自身の中に修飾レドックスモチーフを含むエピトープを含むペプチドの反復配列は、「エピトープ」及び「修飾レドックスモチーフ」の両方を含む配列ももたらすことが注意される。そのようなペプチドにおいて、1つのエピトープ配列内の修飾レドックスモチーフが、第2のエピトープ配列の外側で修飾レドックスモチーフとして機能する。
【0112】
典型的には本発明のペプチドは、1つのCD1d結合ペプチドのみを含む。以下に記載されるように、タンパク質配列中のCD1d結合ペプチドは、タンパク質配列をスキャンして同定することができ、7アミノ酸の長さを有する。本発明のペプチドのCD1d結合ペプチドエピトープは、タンパク質の天然エピトープ配列に対応する、又はその修飾バージョンである(但し、修飾CD1d結合ペプチドエピトープが、天然エピトープ配列と似たCD1d分子内で結合する能力を保持する)かのどちらかとなり得る。修飾エピトープは、天然エピトープと同じ、MHCタンパク質に対する結合親和性を有し得るが、低下した親和性も有し得る。特に、修飾ペプチドの結合親和性は、元のペプチドより10倍以上低く、より具体的には5倍以上低い。本発明のペプチドは、タンパク質複合体に対する安定化作用を有する。したがって、ペプチド-CD1d複合体の安定化作用は、修飾エピトープのCD1d分子に対する低下した親和性を代償する。
【0113】
ペプチド内にCD1d結合ペプチドエピトープと還元化合物とを含む配列は、プロセシング及び提示のための後期エンドソームへのペプチドの取り込みを促進するアミノ酸配列(又は別の有機化合物)に更に連結されてもよい。後期エンドソーム標的化は、タンパク質の細胞質尾部に存在するシグナルにより媒介され、ジロイシンベースの[DE]XXXL[LI][配列番号70]又はDXXLL[配列番号71]モチーフ、チロシンベースのYXXΦモチーフ[配列番号72]又はいわゆる酸性クラスターモチーフ等の十分に同定されたペプチドモチーフに対応する。記号Φは、Phe、Tyr及びTrp等のかさ高い疎水性側鎖を有するアミノ酸残基を表す。後期エンドソーム標的化配列は、プロセシング及び効率的な提示を可能にする。そのようなエンドソーム標的化配列は、例えば、gp75タンパク質(Vijayasaradhiら(1995) J. Cell. Biol. 130、807~820頁)、ヒトCD3ガンマタンパク質、HLA-BM 11(Copierら(1996) J. Immunol. 157、1017~1027頁)、DEC205受容体の細胞質尾部(Mahnkeら(2000) J. Cell Biol. 151、673~683頁)内に含有されている。エンドソームへの選別シグナルとして機能するペプチドの他の例は、Bonifacio及びTraub (2003) Annu. Rev. Biochem. 72、395~447頁の総説に開示されている。後期エンドソーム標的化配列は、効率的な取り込み及びプロセシングのために抗原由来ペプチドのアミノ末端又はカルボキシ末端のどちらかに位置してもよく、最大10アミノ酸のペプチド配列等のフランキング配列を通じて結合することもできる。
【0114】
したがって、本発明は、抗原タンパク質のペプチド及び特異的免疫反応の誘発におけるその使用を想定している。これらのペプチドは、どちらも、その配列内に、すなわち最大で10、好ましくは7以下のアミノ酸により隔てられた還元化合物及びCD1d結合ペプチドエピトープを含むタンパク質の断片に対応する。或いは、及びほとんどの抗原タンパク質に関して、本発明のペプチドは、還元化合物、より具体的には本明細書に記載されている還元修飾レドックスモチーフを、抗原タンパク質のCD1d結合ペプチドエピトープにN末端又はC末端で結合(これに直接接して、又は最大で10、より具体的には最大で7アミノ酸のリンカーを用いてのどちらか)することにより生成される。更に、タンパク質のCD1d結合ペプチドエピトープ配列及び/又は修飾レドックスモチーフは、天然に存在する配列と比べて、修飾されてもよく、並びに/或いは1つ若しくは複数のフランキング配列及び/又は標的化配列が導入(又は修飾)されてもよい。故に、本発明の特徴が、目的とする抗原タンパク質の配列内に見出され得るか否かに応じて、本発明のペプチドは、「人工の」又は「天然に存在する」配列を含み得る。
【0115】
本発明のペプチドは、長さが実質的に変わり得る。ペプチドの長さは、12から(すなわち7アミノ酸のCD1d結合分子、これに隣接するヒスチジン又はトリプトファンを有する5アミノ酸の修飾レドックスモチーフからなる)、20、25、30、40、50、75、100又は200アミノ酸まで変わり得る。例えば、ペプチドは、40アミノ酸のエンドソーム標的化配列、約2アミノ酸のフランキング配列、5アミノ酸の本明細書に記載されたモチーフ、4アミノ酸のリンカー、及び7アミノ酸のCD1d結合ペプチドエピトープを含んでもよい。
【0116】
したがって、特定の実施形態において完全なペプチドは、12から、20、30、50、75、100又は200までのアミノ酸からなる。より具体的には、還元化合物が本明細書に記載された修飾レドックスモチーフである場合、エンドソーム標的化配列がない、リンカーによって場合によりつながったエピトープと修飾レドックスモチーフとを含む(人工又は天然)配列(本明細書で「エピトープ-修飾レドックスモチーフ」配列」と呼ばれる)の長さが重要である。「エピトープ-修飾レドックスモチーフ」は、より具体的には12、13、14、15、16、17、18又は19アミノ酸の長さを有する。12~19アミノ酸のそのようなペプチドは、サイズはあまり重要でないエンドソーム標的化シグナルに場合により結合されてもよい。
【0117】
上記に詳述したように、特定の実施形態において本発明のペプチドは、CD1d結合ペプチドエピトープ配列に連結された本明細書に記載された還元修飾レドックスモチーフを含む。
【0118】
少数のタンパク質配列、タンパク質の断片、又は合成ペプチドは、修飾レドックスモチーフ配列を偶然含む可能性がある。しかし、これらのタンパク質が、CD1d結合ペプチドエピトープ細胞エピトープを修飾レドックス配列の近くに含む可能性は極めて小さくなる。存在する場合、そのようなペプチドはおそらく、重複するペプチド断片のセットが合成されるエピトープスキャニング実験からわかると予想される。そのような刊行物において、関心はCD1d結合に向けられており、ヒスチジン又はトリプトファンを有する修飾レドックスモチーフの意義、及び医学的応用におけるそのようなペプチドの意義は軽視されている。
【0119】
そのようなペプチドは、故に、本発明の発明的概念とは無関係の偶然の開示である。
【0120】
更なる特定の実施形態において、本発明のペプチドは、その天然配列内にレドックス特性を有するアミノ酸配列を含まないCD1d結合ペプチドエピトープを含むペプチドである。
【0121】
しかし、代替の実施形態において、CD1d結合ペプチドエピトープは、CD1d分子へのエピトープの結合を確実にするアミノ酸の任意の配列を含んでもよい。抗原タンパク質の目的とするエピトープが、そのエピトープ配列内に本明細書に記載されているような修飾レドックスモチーフを含む場合、本発明による免疫原性ペプチドは、本明細書に記載された修飾レドックスモチーフ、及び/又は(間隙内に埋れた、エピトープ内に存在する修飾レドックスモチーフとは対照的に)結合された修飾レドックスモチーフが還元活性を確保できるように、エピトープ配列にN若しくはC末端で結合された別の還元配列の配列を含む。
【0122】
したがって、CD1d結合ペプチドエピトープ及びモチーフは、直接接し又は互いから隔てられており、重なり合わない。「直接接している」又は「隔てられた」の概念を評価するには、CD1d分子に結合し、上記のCD1d結合モチーフを有する7アミノ酸配列が決定され、このヘプタペプチドトと修飾レドックスモチーフペンタペプチドとの間の距離が決定される。
【0123】
一般的に、本発明のペプチドは、天然ではなく(故に、タンパク質の断片それ自体がない)、更にCD1d結合ペプチドエピトープに加えて、本明細書に記載された修飾レドックスモチーフを含有し、これにより修飾レドックスモチーフが、最大7、最も具体的には最大4又は最大2アミノ酸からなるリンカーによりエピトープから直接隔てられた人工ペプチドである。
【0124】
哺乳動物に本発明によるペプチド(又はそのようなペプチドを含む組成物)を投与(すなわち注射)すると、ペプチドは、抗原由来CD1d結合ペプチドエピトープを認識するNKT細胞の活性化を誘発し、表面受容体の還元によりNKT細胞に追加のシグナルを与えることが示されている。この超最適活性化は、CD1d結合ペプチドエピトープを提示する細胞に対する細胞溶解特性、及びバイスタンダーT細胞に対する抑制特性を獲得するNKT細胞をもたらす。このようにして、抗原由来CD1d結合ペプチドエピトープ及び、該エピトープの外側に修飾レドックスモチーフを含有する、本発明に記載されたペプチドを含むペプチド又は組成物は、人間を含む哺乳動物の直接免疫化に使用され得る。本発明は故に、薬としての使用のための本発明のペプチド又はその誘導体を提供する。したがって、本発明は、1つ又は複数の本発明によるペプチドを、それを必要とする患者に投与する工程を含む治療方法を提供する。
【0125】
本発明は、細胞溶解特性を与えられた抗原特異的NKT細胞が、小ペプチドによる免疫化により誘発され得る方法を提供する。
【0126】
本発明のペプチド免疫原性特性は、免疫反応の治療及び予防において特に興味深い。
【0127】
本明細書に記載されたペプチドは、医薬として使用され、より具体的には、哺乳動物、より特にヒトにおける免疫障害の予防又は治療のための医薬の製造に使用される。
【0128】
本発明は、本発明のペプチド、その相同体又は誘導体を使用することによる、そのような治療又は予防を必要とする哺乳動物の免疫障害の治療又は予防の方法であって、免疫障害に罹患している又はそのリスクがある前記哺乳動物に、免疫障害の症状を低減し又は該個体を襲っている免疫障害を予防する等のために、本発明のペプチド、その相同体又は誘導体の治療的に有効な量を投与する工程を含む方法を記載する。ヒト並びにペット及び家畜等の動物の両方の治療が想定される。一実施形態において、治療される哺乳動物はヒトである。上述した免疫障害は、特定の実施形態においてアレルギー疾患及び自己免疫疾患から選択される。アレルギー疾患は、慣例的に1型媒介性疾患又はIgE媒介性疾患と記載される。アレルギー疾患の臨床徴候には、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食品過敏症及び虫刺され又は薬物に対するアナフィラキシー反応が含まれる。アレルギー疾患は、アレルゲン(花粉、刺傷、薬物、又は食品等)と呼ばれる特定の物質に対する免疫系の過敏反応により引き起こされる。アレルギー障害の最も重度の形態は、医学的緊急事態であるアナフィラキシーショックである。アレルゲンにはイエダニ、ペット及び花粉のアレルゲン等の空中アレルゲンが含まれる。アレルゲンには、果物、野菜及び乳汁を含む、食品過敏症に関与する摂取アレルゲンも含まれる。上記の疾患を治療するために、本発明によるペプチドは、疾患の原因因子であることが知られている又は考えられている抗原タンパク質又はアレルゲンから生成される。T細胞エピトープの選択に使用され得るアレルゲンは、典型的には、ピーナッツ、魚(例えば、タラ)、卵白、甲殻類(例えば、エビ)、乳汁(例えば、牛乳)、小麦、穀物、バラ科の果物(リンゴ、プラム、イチゴ)、ユリ科、アブラナ科、ナス科及びセリ科の野菜、堅果類、ゴマ、ピーナッツ、ダイズ及び他のマメ科アレルゲン、香辛料、メロン、アボカド、マンゴ、イチジク、バナナ....に存在する食物アレルゲン、ヒョウダニ属種(Dermatophagoides spp)又はヤケヒョウダニ(D. pteronyssinus)、コナヒョウダニ(D. farinae)及びミクロセラス(D. microceras)、シワチリダニ(Euroglyphus maynei)又はブロミア種(Blomia sp
.)から得られるイエダニアレルゲン、ゴキブリ又は膜翅目(Hymenoptera)に存在する昆虫由来のアレルゲン、花粉、特に樹木、草及び雑草の花粉由来のアレルゲン、動物、特にネコ、イヌ、ウマ及びげっ歯類由来のアレルゲン、真菌、特にアスペルギルス(Aspergillus)、アルテルナリア(Alternaria)又はクラドスポリウム(Cladosporium)由来のアレルゲン、及びラテックス、アミラーゼ等の製品に存在する職業性アレルゲンからなる群から選択されるアレルゲンである。
【0129】
本発明は更に、遺伝子療法及び遺伝子ワクチン接種において使用される、ウイルスベクターの骨格にコードされているウイルスタンパク質のCD1d結合ペプチドを含む、修飾レドックスモチーフを有するペプチドに関する。本発明は更に、ウイルスベクターに対する免疫原性応答の治療又は予防の方法に関する。
【0130】
本発明は更に、細胞内病原体のタンパク質のCD1d結合ペプチドを含む、修飾レドックスモチーフを有するペプチドに関する。本発明は更に、細胞内病原体による感染症の治療及び予防の方法に関する。細胞内病原体の例には、細胞内生活環を有するDNA vs RNAウイルス、一本鎖vs二本鎖ウイルス等のウイルス、細菌、マイコバクテリア又は寄生虫、及びWO2009101208に開示されている抗原(例えばヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)及びフラビウイルス科(Picornaviridae)、インフルエンザ、はしか及び免疫不全ウイルス、パピローマウイルス)が含まれる。細胞内病原体の例には、ヒト又は動物に対して病原性の、細菌及び結核菌(Mycobacterium tuberculosis)等のマイコバクテリア、並びに他のマイコバクテリア、例えば、エルシニア(Yersiniae)、ブルセラ(Brucellae)、クラミジア(Chlamydiae)、マイコプラズマ(Mycoplasmae)、リケッチア(Rickettsiae)、サルモネラ(Salmonellae)及びシゲラ(Shigellae)等も含む。更なる例には、プラスモジウム(Plasmodiums)、リーシュマニア(Leishmanias)、トリパノソーマ(Trypanosomas)、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、リステリア種(Listeria sp.)、ヒストプラズマ種(Histoplasma sp.)等の寄生虫が含まれる。
【0131】
本発明は更に、補充療法において使用されるような可溶性アロ因子(allofactor)のCD1d結合ペプチドを含む、修飾レドックスモチーフを有するペプチドに関する。本発明は更に、可溶性アロ因子に対する免疫反応の治療及び予防の方法に関する。可溶性アロ因子の例は、WO2009101206に開示されている。
【0132】
本発明は更に、腫瘍関連抗原のCD1d結合ペプチドを含む、修飾レドックスモチーフを有するペプチドに関する。本発明は更に、腫瘍の治療及び予防の方法に関する。関連する腫瘍(例えば、癌遺伝子、癌原遺伝子、ウイルスタンパク質、生存因子、クロノタイプ決定因子)及び腫瘍関連抗原の例は、WO2009101205に開示されている。そのような腫瘍関連抗原には、HPV等の腫瘍を引き起こすウイルスのウイルス抗原、野生型配列を有するが、腫瘍において発現が増加している患者の腫瘍関連抗原、又は点変異、欠失、フレームシフト、若しくは染色体再編成による変異配列を有する抗原が含まれる。
【0133】
本発明は更に、同種移植片の同種抗原タンパク質のCD1d結合ペプチドを含む、修飾レドックスモチーフを有するペプチドに関する。本発明は更に、同種移植片拒絶の治療及び予防の方法に関する。例は、骨髄移植片、腎臓、肺、心臓、肝臓、膵臓、骨、若しくは皮膚等の腎固形臓器移植片、又は臍帯血細胞移植片、幹細胞移植片、若しくは膵島細胞移植片等の細胞移植片である。マイナー組織適合抗原、主要組織適合抗原又は組織特異的抗原等の同種抗原タンパク質の例は、WO2009100505に開示されている。
【0134】
全ての上記のペプチドについて、ヒスチジン又はトリプトファンとシステインの間に、1個又は2個のアミノ酸Xが存在する追加のバリアントが想定される。典型的には、これらの外部アミノ酸Xは、His、Trp、Cys、Ser又はThrではない。
【0135】
本発明のペプチドは、試料中のCD1d陽性細胞を検出するためにインビトロ診断方法において使用することもできる。この方法において試料は、CD1d分子及び本発明によるペプチドの複合体と接触される。CD1d細胞は、複合体と試料中の細胞との結合を測定して検出され、細胞への複合体の結合は、試料中のCD1d陽性細胞の存在を示す。
【0136】
複合体は、ペプチド及びMHCクラスII分子の融合タンパク質であってもよい。
【0137】
或いは、複合体中のMHC分子は四量体である。複合体は、可溶性分子として提供されてもよく、又は担体に付着されてもよい。
【0138】
本発明の文脈における使用に適した抗原タンパク質(又は免疫原)に対応するCD1d結合ペプチドは、空中アレルゲン又は食品由来アレルゲンであってもよい。特定の実施形態において、アレルゲンは、鼻副鼻腔炎アレルゲン、アレルギー性気管支喘息アレルゲン、及びアトピー性皮膚炎アレルゲンからなる群から選択される。アレルゲンはまた、カビ、又はホルモン剤、抗生物質、酵素等の様々な薬物に存在する主なアレルゲンであってもよい(Clin. Exp. Allergy 26、494~516頁(1996)、及びMolecular Biology of Allergy and Immunology、R. Bush編(1996)の定義も参照のこと)。特定のアレルギー疾患に関連する他のアレルゲンも当技術分野で周知であり、インターネット、例えばwww.allergome.orgで見出すことができる。
【0139】
自己免疫疾患は、大きく2つのカテゴリー、臓器特異的疾患及び全身疾患に分類される。全身性自己免疫疾患の正確な病因は同定されていない。対照的に、臓器特異的自己免疫疾患は、臓器を標的にし、これにより局所炎症の慢性状態を誘導及び維持する、B及びT細胞を含む特異的免疫応答に関連している。臓器特異的自己免疫疾患の例には、1型糖尿病、重症筋無力症、甲状腺炎及び多発性硬化症が含まれる。これらの状態の各々で、それぞれインスリン、アセチルコリン筋肉受容体、甲状腺ペルオキシダーゼ及び腫瘍塩基性タンパク質を含む、単一又は少数の自己抗原が同定されている。この臓器特異的免疫応答の抑制は有益であり、臓器機能の部分的又は完全な回復に繋がることがよく認識されている。しかし、そのような免疫応答を抗原特異的に抑制する治療はない。現在の治療は、むしろ、コルチコステロイド及び免疫抑制剤の使用により得られる非特異的抑制を利用する。これらは全て、特異性の欠如に関連する重大な副作用を示し、これによりその使用及び全体的な有効性を制限する。本発明の文脈内で想定される臓器特異的自己免疫障害及びそれに関与する自己抗原の例の非限定的なリストは、
【0140】
【表1】
【0141】
本発明によれば、免疫反応を引き起こす可能性を有する抗原のCD1d結合ペプチドエピトープ(自己又は非自己)を含む免疫原性ペプチドが提供される。
【0142】
したがって、特定の実施形態において、本発明の治療及び予防の方法は、本明細書に記載された免疫原性ペプチドの投与を含み、該ペプチドは、治療される疾患(例えば、上記のもの等)において役割を果たす抗原タンパク質のCD1d結合ペプチドエピトープを含む。
【0143】
本発明は更に、CD1d結合ペプチドエピトープ及び修飾レドックスモチーフを有するペプチドを作製する方法に関する。
【0144】
第1の工程において、方法は、目的とする抗原タンパク質の配列を提供する工程と、CD1d結合ペプチドに対する上記のペプチドモチーフを用いて抗原中のCD1d結合ペプチド配列を同定する工程とを含む。
【0145】
そのようなエピトープ配列は、検討中の抗原タンパク質に関して既に記載されている可能性がある。或いは、該配列は、インシリコ方法、インビトロ方法又はインビボ方法により決定される。更に、抗原タンパク質は、修飾レドックスモチーフの存在についてスクリーニングされる。これは、インシリコ方法に特有のものを必要としない。
【0146】
抗原タンパク質が、その配列中、CD1d結合ペプチドエピトープ配列のすぐ近くに(すなわち、7以下のアミノ酸によりCD1d結合ペプチドエピトープから隔てられた)[HW]-X(0,2)-C-X(2)-[CST]([配列番号1]、[配列番号2]、[配列番号3])又は[CST]-X(2)-C-X(0,2)-[HW]([配列番号4]、[配列番号5]、[配列番号6])モチーフを含有する、極めて小さいが現存する可能性がある。もしそうであれば、CD1d結合ペプチドエピトープとモチーフとを含む抗原タンパク質の断片が、本発明の方法及び使用に使用されてもよい。そのようなタンパク質中のエピトープは、先行技術で論じられている可能性があるが、そのような修飾レドックスモチーフの適用可能性はもちろんのこと、存在すら論じられていない。したがって、そのようなペプチド断片を選択する、又は本明細書に記載された方法にそのようなペプチド断片を使用する動機が先行技術にはない。ペプチドが、CD1d結合ペプチド及び修飾レドックスモチーフを含有するタンパク質の断片に基づく特定の実施形態において、そのようなペプチド配列は、エピトープと修飾レドックスモチーフの間の配列の長さを変更すること、リンカー配列中のアミノ酸を変更すること、モチーフ中のSer若しくはThrをシステインに変更すること、又はモチーフ内の一方若しくは両方のX位のアミノ酸を変更することにより更に修飾されてもよい。
【0147】
ペプチドの設計に使用される他の抗原タンパク質は、その配列中に、CD1d結合ペプチドから更に遠く離れた(エピトープ配列から7アミノ酸を超える)[HW]-X(0,2)-C-X(2)-[CST]([配列番号1]、[配列番号2]、[配列番号3])又は[CST]-X(2)-C-X(0,2)-[HW]([配列番号4]、[配列番号5]、[配列番号6])配列を含有してもよい。
【0148】
そのような場合、エピトープとモチーフの間の距離のみが短縮され、これによりモチーフ及び隣接アミノ酸の配列は保存されたペプチドが作製され得る。適切と思われる場合、モチーフの外側のアミノ酸、モチーフ中のセリン又はスレオニン、又は一方若しくは両方のX位が変更される。
【0149】
一般的に、ペプチドの設計に使用される抗原タンパク質は、そのタンパク質配列内に[HW]-X(0,2)-C-X(2)-[CST]([配列番号1]、[配列番号2]、[配列番号3])又は[CST]-X(2)-C-X(0,2)-[HW]([配列番号4]、[配列番号5]、[配列番号6])配列を含有しないと予想される。本発明によるペプチドは、CD1d結合ペプチドエピトープと修飾レドックスモチーフが、0~7アミノ酸により隔てられるペプチドを合成して調製されると予想される。特定の実施形態において、修飾レドックスモチーフは、配列構成をタンパク質中に現れる通りに保存するために、1、2又は3変異をエピトープ配列の外側に導入して得ることができる。他の実施形態において、エピトープの配列N又はC末端は、CD1d結合ペプチドエピトープ配列を含有する抗原タンパク質の配列とは関係がないと予想される。
【0150】
他の特定の実施形態において、ペプチドは、CD1d結合ペプチドエピトープ及びWO2012069568に開示されているC-X(2)-[CST][配列番号55]又は[CST]-X(2)-C[配列番号54]モチーフを有するペプチドを修飾して調製される。ヒスチジン若しくはトリプトファンの付加又はアミノ酸のヒスチジン若しくはトリプトファンへの修飾は、[HW]-X(0,2)-C-X(2)-[CST]([配列番号4]、[配列番号5]、[配列番号6])又は[CST]-X(2)-C-X(0,2)-[HW]([配列番号4]、[配列番号5]、[配列番号6])配列を有する本発明のペプチドをもたらす。
【0151】
故に、ペプチドを設計するための上記の方法に基づき、ペプチドは、化学的ペプチド合成、組み換え発現方法、又はより例外的な場合において、タンパク質のタンパク質分解的又は化学的断片化により生成される。
【0152】
上記の方法で作製されるペプチドは、インビトロ及びインビボ方法でCD1d結合について試験することができ、インビトロアッセイでその還元活性について試験することができる。ペプチドが、修飾レドックスモチーフを有するペプチド中にも存在するエピトープ配列を含有する抗原を提示する抗原提示細胞に対して、アポトーシス経路を介して細胞溶解性であるNKT細胞を生成することができるかどうかを検証するために、最終品質管理として、ペプチドはインビトロアッセイで試験されてもよい。
【0153】
以上説明したように、ペプチドは、その配列中にCD1d結合ペプチドエピトープ及びMHCクラスIIエピトープの両方を例外的に含むことがある。そのようなペプチドは本発明から除外され、T細胞エピトープを同定する方法が本明細書に開示される。抗原タンパク質からのT細胞エピトープの同定及び選択は、当業者に知られている。
【0154】
エピトープを同定するために、抗原タンパク質の単離ペプチド配列が、例えばT細胞生物学的手法により試験されて、該ペプチド配列がT細胞応答を誘発するかどうかを決定する。T細胞応答を誘発することが見出されたペプチド配列は、T細胞刺激活性を有すると定義される。
【0155】
ヒトT細胞刺激活性は、例えばダニアレルゲンに感受性の個体(すなわち、ダニアレルゲンに対してIgE媒介免疫応答を有する個体)から得られた、該アレルゲンに由来するペプチド/エピトープを含むT細胞を培養すること、及び例えばトリチウム化チミジンの細胞取り込みにより測定されたT細胞の増殖が、ペプチド/エピトープに応答して生じているのかどうかを決定することにより、更に試験することができる。ペプチド/エピトープに対するT細胞による応答の刺激指数は、ペプチド/エピトープに応答した最大CPMを対照CPMで除して算出することができる。バックグラウンドレベルの2倍以上大きいT細胞刺激指数(S.I.)が「陽性」と見なされる。陽性結果は、試験されたペプチド/エピトープ群の各ペプチド/エピトープの平均刺激指数を算出するのに使用される。
【0156】
非天然(又は修飾)T細胞エピトープは、MHCクラスII分子に対するその結合親和性について場合により更に試験されてもよい。これは、種々の方法で行うことができる。例えば、可溶性HLAクラスII分子は、所与のクラスII分子にホモ接合性の細胞の溶解により得られる。後者は、親和性クロマトグラフィーにより精製される。可溶性クラスII分子は、そのクラスII分子に対する強い結合親和性に従って作製されたビオチン標識参照ペプチドとインキュベートされる。クラスII結合について評価されるペプチドが次いで種々の濃度でインキュベートされ、クラスII結合から参照ペプチドを置き換えるその能力がニュートラアビジンの添加により算出される。方法は、例えばTexierら、(2000) J. Immunology 164、3177~3184頁に見出すことができる。
【0157】
最適なT細胞エピトープを例えば精細マッピング法により決定するために、T細胞刺激活性を有し、故に、T細胞生物学的手法により決定される少なくとも1つのT細胞エピトープを含むペプチドが、ペプチドのアミノ又はカルボキシ末端のどちらかにおけるアミノ酸残基の付加又は欠失により修飾され、試験されて修飾ペプチドに対するT細胞活性の変化を決定する。ナイーブタンパク質配列中に重複する領域を共有する2つ以上のペプチドが、T細胞生物学的手法により決定されるヒトT細胞刺激活性を有することが見出される場合、そのようなペプチドの全て又は一部を含む追加のペプチドが作製されてもよく、これらの追加のペプチドが同様の手順により試験されてもよい。この技術に従って、ペプチドは選択され、組み換えで又は合成的に作製される。T細胞エピトープ又はペプチドは、ペプチド/エピトープに対するT細胞応答の強さ(例えば、刺激指数)、及び個体集団におけるペプチドに対するT細胞応答の頻度を含む様々な要因に基づき選択される。
【0158】
更に及び/又は或いは、抗原タンパク質内のT細胞エピトープ配列を同定するのに、1つ又は複数のインビトロアルゴリズムが使用されてもよい。適切なアルゴリズムには、Zhangら(2005) Nucleic Acids Res 33、W180~W183頁(PREDBALB); Salomon及びFlower (2006) BMC Bioinformatics 7、501頁(MHCBN); Schulerら(2007) Methods Mol. Biol. 409、75~93頁(SYFPEITHI); Donnes及びKohlbacher (2006) Nucleic Acids Res. 34、W194~W197頁(SVMHC); Kolaskar及びTongaonkar (1990) FEBS Lett. 276、172~174頁、Guanら(2003) Appl. Bioinformatics 2、63~66頁(MHCPred)、並びにSingh及びRaghava (2001) Bioinformatics 17、1236~1237頁(Propred)に記載されているものが含まれるが、これらに限定されない。
【0159】
より具体的には、そのようなアルゴリズムは、MHC II分子の溝に嵌ると予想される抗原タンパク質内の1つ又は複数のオクタ又はノナペプチド配列、及び異なるHLA型に対する該配列の予測を可能にする。
【0160】
本発明のペプチドは、細菌、酵母、昆虫細胞、植物細胞又は哺乳動物細胞において組み換えDNA手法を用いて生成することができる。ペプチドの限られた長さに照らして、ペプチドは、異なるアミノ酸を互いに結合してペプチドが調製される化学的ペプチド合成により調製することができる。化学合成は、例えばD-アミノ酸、天然に存在しない側鎖を有するアミノ酸、又はメチル化システイン等の修飾側鎖を有する天然アミノ酸の包含に特に適している。
【0161】
化学的ペプチド合成方法は十分に記載されており、ペプチドはApplied Biosystems社等の企業及び他の企業に注文することができる。
【0162】
ペプチド合成は、固相ペプチド合成(SPPS)又は反対に溶液相ペプチド合成のどちらかとして行うことができる。最もよく知られているSPPS法は、t-Boc及びFmoc固相化学である。
【0163】
ペプチド合成中に幾つかの保護基が使用される。例えば、ヒドロキシル及びカルボキシル官能基はt-ブチル基により保護され、リジン及びトリプトファンはt-Boc基により保護され、アスパラギン、グルタミン、システイン及びヒスチジンはトリチル基により保護され、アルギニンはpbf基により保護される。適当な場合、そのような保護基は、合成後、ペプチドに残され得る。ペプチドは、Kentにより最初に記載され(Schnelzer及びKent (1992) Int. J. Pept. Protein Res. 40、180~193頁)、例えばTamら(2001) Biopolymers 60、194~205頁に概説されているようなライゲーション戦略(2つの未保護ペプチド断片の化学選択的結合)を用いて互いに連結されて、より長いペプチドを形成することができ、ライゲーション戦略は、SPPSの範囲を超えてタンパク質合成を達成する非常に大きな可能性をもたらす。この方法により100~300残基のサイズを有する多くのタンパク質の合成成功している。合成ペプチドは、SPPSの大きな進歩のために、生化学、薬学、神経生物学、酵素学、及び分子生物学の研究分野でますます高まる重要な役割を果たし続けている。
【0164】
或いは、ペプチドは、コードヌクレオチド配列を含む適当な発現ベクターに本発明のペプチドをコードする核酸分子を使用して合成することができる。そのようなDNA分子は、自動DNA合成機及び遺伝暗号の周知のコドン-アミノ酸関係を用いて容易に調製することができる。そのようなDNA分子は、オリゴヌクレオチドプローブ及び従来のハイブリダイゼーション方法論を用いて、ゲノムDNA又はcDNAとして得ることもできる。そのようなDNA分子は、細菌、例えば大腸菌(Escherichia coli)、酵母細胞、動物細胞又は植物細胞等の適切な宿主におけるDNAの発現及びポリペプチドの産生に適合した、プラスミドを含む発現ベクターに組み込まれてもよい。
【0165】
目的とするペプチドの物理的及び化学的特性(例えば溶解性、安定性)は、ペプチドが、治療組成物における使用に適する/適するかどうかを決定するために調べられる。典型的には、これは、ペプチドの配列を調節して最適化される。場合により、ペプチドは、合成(化学修飾、例えば官能基の付加/欠失)後に、当技術分野で知られている手法を用いて修飾されてもよい。
【0166】
本発明は、抗原特異的細胞溶解性NKT細胞をインビボ又はインビトロのどちらかで生成する方法、及びそれとは独立に、特徴的な発現データに基づきFoxp3+ Treg等の他の細胞集団からNKT細胞を識別する方法を提供する。
【0167】
本発明は、抗原特異的NKT細胞の作成のためのインビボ法を記載する。特定の実施形態は、動物(ヒトを含む)を本明細書に記載された本発明のペプチドで免疫化し、次いでNKT細胞を免疫化動物から単離することによるNKT細胞を作製又は単離する方法に関する。本発明は、APCに対する抗原特異的細胞溶解性NKT細胞の作製のためのインビトロ法を記載する。本発明は、APCに対する抗原特異的細胞溶解性NKT細胞を生成する方法を提供する。
【0168】
1つの実施形態において、末梢血細胞の単離と、本発明による免疫原性ペプチドによる細胞集団のインビトロでの刺激と、刺激された細胞集団の、より具体的にはガンマ鎖ファミリーのサイトカインの存在下での拡大とを含む方法が提供される。本発明による方法は、多数のNKT細胞が作製され、抗原タンパク質に特異的なNKT細胞が生成され得る(抗原特異的エピトープを含むペプチドを使用することにより)という利点を有する。
【0169】
代替の実施形態において、NKT細胞は、インビボで、すなわち、被験者への本明細書に記載された免疫原性ペプチドの注射、及びインビボで生成された細胞溶解性NKT細胞の採取により生成することができる。
【0170】
本発明の方法により得ることができるAPCに対する抗原特異的細胞溶解性NKT細胞は、アレルギー反応の予防及び自己免疫疾患の治療における免疫療法のための哺乳動物への投与が特に興味深い。同種及び自家細胞の使用の両方が想定される。
【0171】
本明細書に記載された抗原特異的細胞溶解性NKT細胞は、より具体的には養子細胞療法、より具体的には急性アレルギー反応及び多発性硬化症等の自己免疫疾患の再発の治療における使用のための医薬として使用することができる。単離細胞溶解性NKT細胞又は細胞集団、より具体的には、記載されているように生成された抗原特異的細胞溶解性NKT細胞集団は、免疫障害の予防又は治療のための医薬の製造に使用される。単離又は生成された細胞溶解性NKT細胞を使用することによる治療の方法が開示される。
【0172】
この機構は、本発明のペプチドが、特定の抗原の特異的CD1d結合ペプチドエピトープを含むにもかかわらず、同じ抗原の他のCD1d結合ペプチドエピトープに対する免疫反応により誘発される障害の予防若しくは治療に使用でき、又は特定の状況では、他の異なる抗原の他のCD1d結合ペプチドエピトープに対する免疫反応により誘発される障害の治療にすら使用できる(それらが、本発明のペプチドにより活性化されたT細胞の近くでCD1d分子により同じ機構を通じて提示されるならば)ことも意味し、実験結果はこのことを示している。
【0173】
上記の特徴を有し、更に抗原特異的である(すなわち、抗原特異的免疫応答を抑制することができる)細胞型の単離細胞集団が開示される。
【0174】
本発明のペプチドは、当技術分野で周知の遺伝子療法の方法においても使用することができ、本発明によるペプチドの使用を説明する本明細書で使用される用語は、本発明による免疫原性ペプチドをコード又は発現する核酸の使用も含む。
【0175】
本発明は、本発明のペプチドをコードする核酸配列、及びその使用方法を記載する。遺伝子療法のために、哺乳動物のインビボで本発明によるペプチド、その相同体又は誘導体のレベルを達成する種々の方法が、本発明の文脈において想定される。
【0176】
タンパク質配列をコードする組み換え核酸分子は、裸のDNAとして、又はリポソーム若しくは他の脂質系において標的細胞への送達に使用され得る。プラスミドDNAを細胞に直接導入するための他の方法は、ヒト遺伝子療法での使用に関して当業者に周知であり、プラスミドDNAをタンパク質に複合体化することにより細胞上の受容体にDNAを標的化することを必要とする。その最も簡単な形態において、遺伝子導入は、マイクロインジェクションのプロセスを通じて微量のDNAを細胞の核に単純に注射して行うことができる。組み換え遺伝子が細胞に導入されると、該遺伝子は細胞の通常の転写及び翻訳機構により認識され得、遺伝子産物が発現されると予想される。DNAをより多数の細胞に導入するための他の方法も試みられている。これらの方法には、DNAがリン酸カルシウムで沈殿され、飲作用により細胞に取り込まれるトランスフェクション;細胞が大電圧パルスに暴露されて膜に孔を導入するエレクトロポレーション;標的細胞と融合する脂溶性小胞にDNAが詰め込まれるリポフェクション/リポソーム融合;及び小さな発射体に結合されたDNAを用いる粒子銃が含まれる。DNAを細胞に導入する別の方法は、化学的修飾タンパク質にDNAを結合させることである。アデノウイルスタンパク質はエンドソームを不安定化し、細胞へのDNAの取り込みを増強することができる。DNA複合体を含有する溶液へのアデノウイルスの混合、又はタンパク質架橋剤を用いるアデノウイルスに共有結合されたポリリジンへのDNAの結合は、組み換え遺伝子の取り込み及び発現を実質的に改善する。アデノ随伴ウイルスベクターも、血管細胞への遺伝子送達に使用することができる。本明細書で使用される場合、「遺伝子導入」は、外来核酸分子を細胞に導入するプロセスを意味し、通常は遺伝子にコードされた特定の産物の発現を可能にするために行われる。産物には、タンパク質、ポリペプチド、アンチセンスDNA若しくはRNA、又は酵素活性RNAが含まれ得る。遺伝子導入は、培養細胞で又は哺乳動物への直接投与により行うことができる。別の実施形態において、本発明によるペプチドをコードする核酸分子配列を含むベクターが提供される。特定の実施形態においてベクターは、核酸分子配列が特定の組織でのみ発現されるように生成される。組織特異的遺伝子発現を達成す
る方法は、当技術分野で周知である。これは、例えば、本発明によるペプチドをコードする配列を、1つ又は複数の特定の組織で発現を駆動するプロモーターの制御下に置くことにより達成することができる。
【0177】
レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、RNAウイルス、又はウシパピローマウイルス等のウイルスに由来する発現ベクターが、本発明によるペプチド、その相同体又は誘導体をコードするヌクレオチド配列(例えば、cDNA)の、標的組織又は細胞集団への送達に使用されてもよい。当業者に周知である方法が、そのようなコード配列を含有する組み換えウイルスベクターを構築するのに使用され得る。
【0178】
したがって、本発明は、外来又は自己抗原に対する免疫応答により駆動される疾患の治療及び/又は予防のための、本発明のペプチドをインビボで発現することができる核酸の使用を開示する。1つの実施形態によれば、本発明によるペプチドをインビボで発現することができる核酸は、プロモーターに作動可能に連結された、そのようなペプチドをコードする配列である。そのような配列は、直接又は間接的に投与することができる。例えば、本発明によるペプチドのコード配列を含有する発現ベクターは、細胞に挿入されてもよく、その後、細胞はインビトロで増殖され、次いで患者に注射又は注入される。或いは、本発明によるペプチドをインビボで発現することができる核酸は、細胞の内因性発現を修飾する配列である。遺伝子療法の方法は、本発明によるペプチド、その相同体若しくは誘導体をコードするヌクレオチド配列、又は本発明によるペプチドをコードする裸の核酸分子を含むアデノウイルスベクターの使用を必要とする場合がある。或いは、本発明によるペプチドをコードする核酸分子を含有する改変細胞が、注射されてもよい。
【0179】
本発明による1つ又は複数のペプチドの投与が遺伝子導入により確保される場合(すなわち、投与した時に本発明によるペプチドのインビボでの発現を確保する核酸の投与)、核酸の適当な投与量は、例えば投与後に血中のペプチド濃度を決定すること等により、核酸の結果として発現されるペプチドの量に基づき決定することができる。故に、特定の実施形態において、本発明のペプチドは、発現ベクター中か否かにかかわらず該ペプチドをコードするポリヌクレオチドの使用により投与され、故に本発明は、遺伝子療法の方法にも関する。別の特定の実施形態は、免疫障害の治療又は予防のために本発明のペプチドの局所過剰発現を誘導する方法の使用に関する。
【0180】
本発明は、薬学的に許容可能な担体を更に含む、本発明による1つ又は複数のペプチドを含む医薬組成物を提供する。上記に詳述したように、本発明は、薬としての使用のための組成物、又は該組成物を使用して免疫障害の哺乳動物を治療する方法、及び免疫障害の予防若しくは治療のための医薬の製造のための該組成物の使用にも関する。該医薬組成物は、免疫障害、例えば空中浮遊物アレルギー及び食品由来アレルギー、並びにアレルギー起源の疾患の治療又は予防に適した、例えばワクチンであってもよい。医薬組成物の本明細書に更に記載される例として、本発明によるペプチドは、水酸化アルミニウム(alum)等の哺乳動物への投与に適したアジュバントに吸着される。典型的には、alumに吸着されたペプチド50μgが、2週間間隔で3回、皮下経路により注射される。経口、鼻内又は筋肉内を含む他の投与経路が可能であることは当業者に明白なはずである。また、注射の回数及び注射量は、治療される状態に応じて変わり得る。更に、alum以外のアジュバントが、CD1dによるペプチド提示及びT細胞活性化を促進することを条件として使用され得る。故に、活性成分は単独で投与されることが可能であるが、それらは典型的には医薬製剤として提示される。獣医学的用途及びヒト用途の両方とも、本発明の製剤は、上記した少なくとも1つの活性成分を場合により1つ又は複数の薬学的に許容可能な担体と一緒に含む。本発明は、活性成分として、本発明による1つ又は複数のペプチドを薬学的に許容可能な担体との混合で含む医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、治療又は予防の方法に関して以下に示すような活性成分の治療的に有効な量を含むべきである。場合により、組成物は、他の治療成分を更に含む。適切な他の治療成分、及びそれらが属するクラスに応じたその通常の投与量は当業者に周知であり、免疫障害を治療するのに使用される他の既知の薬物から選択することができる。
【0181】
「薬学的に許容可能な担体」という用語は本明細書で使用される場合、例えば組成物を溶解、分散若しくは拡散することによる治療される部位への適用若しくは播種を促進し、及び/又は有効性を損なうことなく保管、輸送若しくは取り扱いを促進するために、活性成分と共に製剤化される任意の材料又は物質を意味する。該担体には、任意の及び全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤(例えば、フェノール、ソルビン酸、クロロブタノール)、等張剤(糖又は塩化ナトリウム等)等が含まれる。追加の成分が、組成物中の免疫原性ペプチドの作用の持続時間を制御するために含まれてもよい。薬学的に許容可能な担体は、固体又は液体又は液体を形成するように圧縮されている気体であってもよく、すなわち、本発明の組成物は、濃縮液、乳剤、溶液、顆粒、粉剤、噴霧剤、エアロゾル、懸濁液、軟膏、クリーム、錠剤、ペレット又は粉末とし適切に使用され得る。医薬組成物及びその製剤における使用のための適切な薬学的担体は当業者に周知であり、本発明内でその選択に特別な制約はない。薬学的に許容可能な担体には、湿潤剤、分散剤、固着剤、接着剤、乳化剤、溶媒、コーティング、抗菌剤及び真菌剤(例えば、フェノール、ソルビン酸、クロロブタノール)、等張剤(糖又は塩化ナトリウム等)等の添加剤も含まれ得る(但し、これらが医薬慣例と一致していること、すなわち哺乳動物に永続的損傷をもたらさない担体及び添加剤である)。本発明の医薬組成物は、任意の既知の様式で、例えば、選択された担体材料、及び適当な場合、表面活性剤等の他の添加剤と共に、単一工程又は多工程手順で、活性成分を均一に混合、コーティング及び/又は粉砕して調製することができる。本発明の医薬組成物は、例えば通常は約1~10μmの直径を有するミクロスフェアの形態で、すなわち、活性成分の制御放出又は持続放出のためのマイクロカプセルの製造のために得ることを考慮して、微粒子化により調製することもできる。
【0182】
本発明の医薬組成物において使用される、エマージェント(emulgent)又は乳化剤としても知られる適切な表面活性剤が、優れた乳化、分散及び/又は湿潤特性を有する非イオン、カチオン及び/又はアニオン材料である。適切なアニオン性界面活性剤には、水溶性石鹸及び水溶性合成表面活性剤の両方が含まれる。適切な石鹸は、高級脂肪酸(C10~C22)のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩、非置換若しくは置換アンモニウム塩、例えばオレイン酸若しくはステアリン酸のナトリウム若しくはカリウム塩、又はヤシ油若しくは獣脂油から入手可能な天然脂肪酸混合物のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩、非置換若しくは置換アンモニウム塩である。合成界面活性剤には、ポリアクリル酸のナトリウム又はカルシウム塩;脂肪族スルホン酸塩及び硫酸塩;スルホン化ベンズイミダゾール誘導体及びアルキルアリールスルホン酸塩が含まれる。脂肪族スルホン酸塩又は硫酸塩は、通常、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、非置換アンモニウム塩又は8~22個の炭素原子を有するアルキル又はアシル基で置換されたアンモニウム塩、例えばリグノスルホン酸若しくはドデシルスルホン酸のナトリウム若しくはカルシウム塩、又は天然脂肪酸から得られた脂肪アルコール硫酸塩の混合物、硫酸若しくはスルホン酸エステルのアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩(ナトリウムラウリル硫酸塩等)、及び脂肪アルコール/エチレンオキシド付加物のスルホン酸の形態にある。適切なスルホン化ベンズイミダゾール誘導体は、典型的には8~22個の炭素原子を含有する。アルキルアリールスルホン酸塩の例は、ドデシルベンゼンスルホン酸若しくはジブチル-ナフタレンスルホン酸のナトリウム、カルシウム若しくはアルカノールアミン塩、又はナフタレン-スルホン酸/ホルムアルデヒド縮合産物である。同様に適切であるのは、対応するリン酸塩、例えばリン酸エステルの塩、並びにp-ノニルフェノールとエチレン及び/若しくはプロピレンオキシドとの付加物、又はリン脂質である。この目的に適切なリン脂質は、例えばホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセリン、リゾレシチン、カルジオリピン、ジオクタニルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン及びそれらの混合物等の、セファリン又はレシチン型の天然(動物又は植物細胞に由来する)又は合成リン脂質である。
【0183】
適切な非イオン性界面活性剤には、分子中に少なくとも12個の炭素原子を含有するアルキルフェノール、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪族アミン又はアミドのポリエトキシル化及びポリプロポキシル化誘導体、アルキルアレーンスルホン酸塩及びジアルキルスルホサクシネート(脂肪族及び脂環式アルコール、飽和及び不飽和脂肪酸及びアルキルフェノールのポリグリコールエーテル誘導体等)、アルキルフェノールの(脂肪族)炭化水素部分に3~10グリコールエーテル基及び8~20個の炭素原子、並びにアルキル部分に6~18個の炭素原子を典型的には含有する誘導体が含まれる。更なる適切な非イオン性界面活性剤は、ポリエチレンオキシドと1~10個の炭素原子をアルキル鎖に含有するポリプロピレングリコール、エチレンジアミノ-ポリプロピレングリコールとの水溶性付加物である。該付加物は、20~250個のエチレングリコールエーテル基及び/又は10~100個のプロピレングリコールエーテル基を含有する。そのような化合物は、通常、プロピレングリコール単位当たり1~5個のエチレングリコール単位を含有する。非イオン性界面活性剤の代表例は、ノニルフェノール-ポリエトキシエタノール、ヒマシ油ポリグリコールエーテル、ポリプロピレン/ポリエチレンオキシド付加物、トリブチルフェノキシポリエトキシエタノール、ポリエチレングリコール及びオクチルフェノキシポリエトキシエタノールである。ポリエチレンソルビタン(ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等)、グリセロール、ソルビタン、スクロース及びペンタエリスリトールの脂肪酸エステルも、適切な非イオン性界面活性剤である。適切なカチオン性界面活性剤には、ハロ、フェニル、置換フェニル又はヒドロキシで場合により置換された4個の炭化水素基を有する第四級アンモニウム塩(特にハロゲン化物);例えば、N-置換基として少なくとも1つのC8C22アルキル基(例えば、セチル、ラウリル、パルミチル、ミリスチル、オレイル等)並びに、更なる置換基として、非置換又はハロゲン化低級アルキル、ベンジル及び/又はヒドロキシ低級アルキル基を含有する第四級アンモニウム塩が含まれる。
【0184】
この目的に適した表面活性剤のより詳細な記載は、例えば「McCutcheon's Detergents and Emulsifiers Annual」(MC Publishing Crop.、Ridgewood、New Jersey、1981)、「Tensid-Taschenbucw」、第2版(Hanser Verlag、Vienna、1981)、及び"Encyclopaedia of Surfactants、(Chemical Publishing Co.、New York、1981)に見出すことができる。本発明によるペプチド、その相同体又は誘導体(及び「活性成分」という用語に全て含まれるその生理学的に許容可能な塩又は医薬組成物)は、治療される状態に適当な、並びに化合物、ここでは投与されるタンパク質及び断片に適当な任意の経路により投与することができる。可能性のある経路には、局部、全身、経口(固形又は吸入)、直腸、経鼻、局所(眼、口腔及び舌下を含む)、膣及び非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、動脈内、くも膜下及び硬膜外を含む)が含まれる。好ましい投与経路は、例えばレシピエントの状態又は治療される疾患により異なり得る。本明細書に記載するように、担体は、最適には、製剤の他の成分と適合性であり、そのレシピエントに対して有害でないという意味で「許容可能」である。製剤には、経口、直腸、経鼻、局所(口腔及び舌下を含む)、膣又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、動脈内、くも膜下及び硬膜外を含む)投与に適したものが含まれる。製剤は、好都合には単位投与形態で提示されてもよく、薬学の技術分野で周知の方法のいずれかにより調製されてもよい。そのような方法は、1つ又は複数の副成分を構成する担体と活性成分を結合させる工程を含む。一般的に製剤は、液体担体若しくは微粉化固体担体又はその両方と活性成分を均一及び密に結合させ、次いで必要であれば、製品を成形することにより調製される。経口投与に適した本発明の製剤は、それぞれが所定の量の活性成分を含有するカプセル、カシェ剤若しくは錠剤等の別個の単位として;粉末若しくは顆粒として;水性液体若しくは非水性液体での溶液又は懸濁液として;又は水中油型液体乳剤若しくは油中水型液体乳剤として提示されてもよい。活性成分は、ボーラス、舐剤又はペーストとして提示することもできる。錠剤は、場合により1つ又は複数の副成分と共に圧縮又は成形により作製されてもよい。圧縮錠剤は、結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、表面活性剤又は分散剤と場合により混合されて、粉末又は顆粒等の自由流動形態で活性成分を適切な機械で圧縮することにより調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械で成形することにより作製することができる。錠剤は、場合により被覆又は分割されてもよく、中の活性成分の徐放又は制御放出を提供するように製剤化されてもよい。
【0185】
例えば(関節等の)皮膚における局所治療には、製剤は、例えば、0.075~20%w/w(0.6%w/w、0.7%w/w等の0.1%w/wきざみで0.1%~20%の範囲に活性成分を含む)、特に0.2~15%w/w、及びより具体的には0.5~10%w/wの量で活性成分を含有する局所軟膏又はクリームとして場合により適用される。軟膏に製剤化される場合、活性成分は、パラフィン性又は水混和性軟膏基剤のどちらかと共に使用されてもよい。或いは、活性成分は、水中油型クリーム基剤と共にクリームに製剤化されてもよい。所望であれば、クリーム基剤の水性相は、例えば、少なくとも30%w/wの多価アルコール、すなわち、プロピレングリコール、ブタン1,3-ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール及びポリエチレングリコール(PEG400を含む)、並びにそれらの混合物等の2個以上のヒドロキシル基を有するアルコールを含んでもよい。局所製剤は、望ましくは、皮膚又は他の患部を通じた活性成分の吸収又は浸透を増強する化合物を含んでもよい。そのような皮膚浸透増強剤の例には、ジメチルスルホキシド及び関連する類似体が含まれる。本発明の乳剤の油性相は、既知の様式で既知の成分から構成されてもよい。油性相は単に乳化剤(さもなければエマージェントとして知られる)のみを含んでもよいが、望ましくは、少なくとも1つの乳化剤と脂肪若しくは油との、又は脂肪及び油の両方との混合物を含む。場合により、典型的には油及び脂肪の両方を含むことにより安定剤として作用する親水性乳化剤が、脂溶性乳化剤と一緒に含まれる。まとめると、安定剤を含む又は含まない乳化剤はいわゆる乳化ワックスを構成し、該ワックスは油及び脂肪と一緒に、クリーム製剤の油性分散相を形成するいわゆる乳化軟膏基剤を構成する。
【0186】
薬学的乳剤製剤で使用される可能性があるほとんどの油中における活性化合物の溶解性は極めて低いため、製剤に適切な油又は脂肪の選択は、所望の見た目の特性の達成に基づく。故にクリームは、場合により、チューブ又は他の容器からの漏出を避けるために適切な稠度を有する、べたべたしない、色が付かない及び洗浄可能な製品であるべきである。ジイソアジペート、ステアリン酸イソセチル、ヤシ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、及び特にステアリン酸ブチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル又はCrodamol CAPとして知られる分岐鎖エステルのブレンド等の直鎖又は分岐鎖、一塩基又は二塩基性アルキルエステルが使用されてもよい。これらは、必要とされる特性に応じて単独で又は組み合わせて使用されてもよい。或いは、白色軟パラフィン及び/若しくは液体パラフィン又は他の鉱油等の高融点脂質が使用されてもよい。眼への局所投与に適した製剤には、活性成分が、活性成分用に適切な担体、特に水性溶媒に溶解又は懸濁される点眼薬も含まれる。活性成分は、そのような製剤に0.5~20%、有利には0.5~10%、特に約1.5%w/wの濃度で場合により存在している。口内での局所投与に適した製剤には、風味付けされた基剤、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカントに活性成分を含むトローチ剤;ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシア等の不活性基剤に活性成分を含む香錠;並びに適切な液体担体に活性成分を含む口内洗浄薬が含まれる。直腸投与用製剤は、例えばカカオバター又はサリチル酸塩を含む適切な基剤を含む座薬として提示されてもよい。担体が固体である経鼻投与に適した製剤には、例えば、範囲20~500ミクロンの粒径(30ミクロン、35ミクロン等の5ミクロンきざみで20~50ミクロンの範囲に粒径を含む)を有する粗粉が含まれる。粗粉は、嗅ぎタバコを嗅ぐ様式で、すなわち、鼻の近くに保持された粉末容器から鼻腔を通る迅速吸入により投与される。担体が液体である、例えば鼻腔用スプレー又は点鼻薬としての投与に適切な製剤には、活性成分の水性又は油性溶液が含まれる。エアロゾル投与に適した製剤は、従来の方法に従って調製することができ、他の治療剤と共に送達することができる。膣投与に適した製剤は
、活性成分に加えて、適当であることが当技術分野で知られているような担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー製剤として提示されてもよい。非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬、及び意図されたレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性滅菌注射溶液;並びに懸濁剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性滅菌懸濁液が含まれる。製剤は、単位用量容器又は複数回用量容器、例えば密封アンプル及びバイアルで提示されてもよく、使用の直前に滅菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保管されてもよい。即時注射溶液及び懸濁液は、以前に記載した種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製されてもよい。
【0187】
典型的な単位投与製剤は、活性成分の、本明細書で上記に列挙した日用量若しくは単位準日用量、又はその適当な分量を含有するものである。特に上述した成分に加えて、本発明の製剤は、当該製剤のタイプを考慮して当技術分野で慣習的な他の薬剤を含んでもよく、例えば、経口投与に適したものは香味剤を含み得ることが理解されるべきである。本発明によるペプチド、その相同体又は誘導体は、活性成分として本発明の1つ又は複数の化合物を含有する制御放出医薬製剤(「制御放出製剤」)を提供するのに使用することができ、制御放出製剤は、低頻度の投与を可能にし、又は所与の本発明の化合物の薬物動態学的若しくは毒性プロファイルを改善するように活性成分の放出が制御及び調節される。別々の単位が本発明の1つ又は複数の化合物を含む経口投与に適合した制御放出製剤が、従来の方法に従って調製され得る。組成物中の活性成分の作用の持続時間を制御するために、追加の成分が含まれてもよい。制御放出組成物は、故に、例えばポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルピロリドン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、硫酸プロタミン等の適当なポリマー担体を選択して達成することができる。薬物放出の速度及び作用の持続時間は、ハイドロゲル、ポリ乳酸、ヒドロキシメチルセルロース、ポリメチルメタクリレート、及び他の上記のポリマー等の重合物質の粒子、例えばマイクロカプセルに活性成分を組み込むことにより制御することもできる。そのような方法には、リポソーム、ミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセル等のようなコロイド薬物送達系が含まれる。投与経路に応じて、医薬組成物は、保護コーティングを必要とする場合がある。注射に適した医薬形態には、その即時調製用の滅菌水性溶液又は分散液及び滅菌粉末が含まれる。したがって、この目的に対する典型的な担体には、生体適合性水性緩衝液、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等、及びそれらの混合物が含まれる。幾つかの活性成分が組み合わせて使用される場合、それらは治療される哺乳動物において、必ずしも同時に、直ちに複合治療効果を発揮するわけではないという事実に照らして、対応する組成物は、別個だが隣接した貯蔵庫又は区画に2つの成分を含有する医療キット又は包装の形態であることもできる。したがって、後者の文脈では、各活性成分は、他の成分とは異なる投与経路に適した方法で製剤化されてもよく、例えば活性成分の一方は経口又は非経口製剤の形態であり得るのに対し、他方は静脈内注射用のアンプル又はエアロゾルの形態にある。
【0188】
本発明において得られる細胞溶解性NKT細胞は、インビトロ及びインビボで実証されているように、樹状細胞及びB細胞の両方に影響を及ぼす、CD1d依存性同種活性化後のAPCアポトーシスを誘導し、IL-10及び/又はTGF-ベータの非存在下で接触依存性機構によりバイスタンダーT細胞を抑制する。細胞溶解性NKT細胞は、WO2012/069568で論じられているように、天然及び適応Tregsの両方から区別することができる。
【0189】
本発明は、限定する意図なく提供される以下の例によってこれより例証される。更に、本明細書に記載された全ての参考文献は、参照により本明細書に明示的に含まれる。
【実施例
【0190】
(実施例1)
ペプチドの還元活性を評価するための方法論
ペプチドのレダクターゼ活性は、Tomazzolliら(2006) Anal. Biochem. 350、105~112頁に記載された蛍光を用いて決定する。FITC標識を有する2つのペプチドは、ジスルフィド架橋を介して互いに共有結合すると自己消光になる。本発明によるペプチドにより還元すると、還元された個々のペプチドは再び蛍光になる。
【0191】
対照実験を「通常の」還元ペプチドを含むペプチド、すなわちレドックスモチーフを含むが追加のヒスチジン又はトリプトファンを含まないペプチド、及びレドックスモチーフを含まないペプチドで行った。
【0192】
実際には、FITC-NH-Gly-Cys-Asp-COOHペプチドを合成し(Eurogentec社、ベルギー)、DMSOに可溶化して自己消光させた((FITC-Gly-Cys-Asp)ox)。続いて、2.5μM(FITC-Gly-Cys-Asp)oxの還元を、添付の表に列挙したペプチド(25μM)、又は2mMジチオスレイトール(DTT)とPBS中でインキュベーション後、96ウェルプレートで40分間(25℃)行った。還元を、CytoFluor(登録商標)マルチプレートリーダー(Applied Biosystems社)を用いて494nmで励起後、530nmで読み取った蛍光の増加の関数として測定した。
【0193】
(実施例2)
細胞の活性化の決定
本発明のペプチドにより得られる抗原特異的NKT細胞は、抗原提示細胞をアポトーシスに追い込むことができる。細胞溶解性細胞の活性化を評価し、自らをアポトーシスに追い込むことになる細胞溶解性細胞のやがて起こる過剰活性化を防ぐために、Akt及びShpのリン酸化状態は、細胞活性化(アポトーシスできる)と細胞の過剰活性化(自己アポトーシス)の相関を描けるようにする。
【0194】
(実施例3)
ヒト組み換えCD1dの重合
ヒト組み換えCD1d(300ng)を、緩衝液中、CD1d結合モチーフ及びレドックスモチーフを有するペプチド50μMと68℃で15分間インキュベートする。DTT 50μMを同じ条件下で陽性対照として使用する。LDS試料緩衝液(7.5μl;非還元)を次いでペプチド/CD1d混合物15μlに添加する。混合物を次いで非還元PAGEに供する。クマシーブルー染色後、タンパク質バンドを、ゲル中の泳動能の減少により同定される単量体、二量体、又は多量体recCD1dの存在について分析する。
【0195】
(実施例4)
フランキング残基にCD1d拘束T細胞エピトープ及びチオレダクターゼモチーフを含有するペプチドでの免疫化による、第VIII因子に特異的なNKT細胞の活性化の制御
BALB/c第VIII因子KOマウスの4群を、CD1d拘束NKT細胞を含有するペプチド50μgを用いて1週間間隔で4回免疫化する。
【0196】
使用する種々のペプチドは、
GG FTNMFATWSPSK[配列番号73]
CGHC GG FTNMFATWSPSK[配列番号74]
HCGHC GG FTNMFATWSPSK[配列番号75]
WCGHC GG FTNMFATWSPSK[配列番号76]
である。
【0197】
ヒト第VIII因子を、次いで1回の注射あたり10IUを用いて1週間隔てて5回、皮下経路により注射する。最終免疫化の10日後、マウスを殺処分し、脾臓NKT細胞を磁性細胞選別により調製する。そのような細胞を免疫化ペプチド及びFVIIIで2回、インビトロで刺激した後、IL-4及びIFN-ガンマの産生により測定される活性化状態を評価する。対照群は同じプロトコルに従って処置するが、ペプチドワクチン接種を一切受けない。
【0198】
対照群と比較した、種々のペプチドで免疫化したマウスから得られた第VIII因子特異的NKTによるIL-4及びIFN-ガンマ産生の低下を測定する。
【0199】
(実施例5)
CD1d拘束NKT細胞エピトープ及びチオレダクターゼモチーフを含有するペプチドでの免疫化による抗Ad5 IgG抗体応答の抑制
C57BL/6マウス(n=6)の種々の群を、1週間間隔で実施するalum中のペプチド50μgの4回の皮下注射により免疫化する。
【0200】
使用する種々のペプチドは、
GG FIGLMYY[配列番号77]
CHGC GG FIGLMYY[配列番号78]
HCHGC GG FIGLMYY[配列番号79]
WCHGC GG FIGLMYY[配列番号80]
である。
【0201】
これらのペプチドは、アデノウイルス(Ad5)のヘキソンタンパク質のCD1d拘束NKT細胞エピトープを含有する。マウスの対照群(n=6)は、ペプチドの代わりにalum中の生理的血清を受け取る。
【0202】
全てのマウスは、次いでIV経路による109 Ad5ウイルス粒子の2回の注射を1週間隔てて受ける。最終Ad5注射の10日後、マウスを採血し、直接結合ELISAでAd5粒子に対する総IgG抗体の濃度を測定する。簡単には、Ad5ウイルス粒子をポリスチレンプレートに不溶化し、その後洗浄し、マウス血清の希釈物とインキュベーションする。2回目の洗浄後、マウス抗Ad5抗体の結合をマウスIgGに対するヤギ抗血清の添加により検出する。
【0203】
(実施例6)
チオレダクターゼモチーフを含有するCD1d拘束NKTエピトープを包含するペプチドでのマウス免疫化により誘発されたCD4+NKT細胞による腫瘍細胞のアポトーシスの誘導
C57BL/6マウス(n=6)の種々の群を、1週間間隔で実施するalum中のペプチド50μgの4回の皮下注射により免疫化する。
【0204】
使用する種々のペプチドは、
GG FDKLPGF[配列番号81]
CGHC GG FDKLPGF[配列番号82]
HCGHC GG FDKLPGF[配列番号83]
WCGHC GG FDKLPGF[配列番号84]
である。
【0205】
そのようなペプチドは、オボアルブミンに由来するCD1d拘束NKT細胞エピトープを含有する。マウスの対照群(n=6)は、ペプチドの代わりにalum中の生理的血清を受け取った。最終免疫化の10日後、マウスを殺処分し、脾臓CD4+ T細胞を磁性細胞選別により調製する。そのような細胞を免疫化ペプチドで2回、インビトロで刺激した後、IL-4及びIFN-ガンマの産生により測定する活性化状態を評価する。CD4+ NKT細胞株を、次いでEG7腫瘍細胞を死滅させる能力についてインビトロアッセイする。EG7腫瘍細胞(H-2b)は、ova構築物で形質導入した胸腺腫に由来する。CD1d拘束ovaエピトープは、そのような細胞により提示され、NKT活性化及び腫瘍細胞死滅を引き起こすには不十分であることが知られている。EG7細胞を、1μM DiOC18(Invitrogen社製3,3'ジオクタデシルオキサカルボシアニン過塩素酸塩)を用いて膜レベルで標識する。EG7細胞(1ウェル当たり1×105)を、次いでNKT細胞株の存在下、1/1~1/5の比(EG7細胞対NKT細胞)で37℃、18時間培養する。NKT細胞株は、上記に示したそれぞれのペプチドがローディングされた抗原提示細胞で4時間、インビトロで最初に刺激していた。18時間後、細胞を採取し、製造者の指示に従ってアネキシンV及び7-AADに染色し(アポトーシス検出キット; BD Biosciences社)、FACSCantollフローサイトメーター(BD Biosciences社)で分析する。
【0206】
(実施例7)
MOG-特異的CD4+ NKTリンパ球の検出のためのCD1d分子の四量体の使用
多発性硬化症は、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)等の自己抗原に対するCD4+ NKT細胞が重要な役割を果たしている可能性がある慢性脱髄疾患である。その実験上の同等物、EAE(実験上の自己免疫脳脊髄炎)は、ヒト疾患の特徴のほとんどを模倣しており、発病機構を理解し、新たな治療を描くのに使用される。したがって、MOG特異的CD4+ NKT細胞を計数することは、疾患転帰を予測し得る。CD1d結合エピトープを、上記のアルゴリズム及び機能アッセイの組み合わせによりマウスMOGタンパク質で同定する。これは、配列200~206に対応する。CD4+ NKT細胞を、EAEが既に誘導されているC57BL/6マウスの脾臓から調製する。CD4(-)細胞を先ず磁性ビーズを用いて脾臓細胞懸濁液から除去する。フィコエリトリン等の蛍光標識を含むCD1d分子(H-2b)の四量体を、当技術分野で知られているように作成する。CD1d拘束MOG NKT細胞エピトープを包含する合成ペプチドを作製する。
【0207】
使用するペプチドは、
GG FLRVPCWKI[配列番号85]
CGPC GG FLRVPCWKI[配列番号86]
HCGPC GG FLRVPCWKI[配列番号87]
WCGPC GG FLRVPCWKI[配列番号88]
である。
【0208】
四量体を、室温で一晩ペプチドでローディングする。ローディングされた四量体を次いで洗浄し、CD4+ T細胞と37℃で2時間インキュベートする。懸濁液を次いで蛍光活性化細胞選別システムで読みとり、MOGペプチドに特異的なNKT細胞の比率を評価する。
【0209】
(実施例8)
未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)に由来するCD1d拘束NKT細胞エピトープにより誘発されたNKT細胞によるH-2b腫瘍細胞(R113)の直接死滅
未分化リンパ腫キナーゼは、個体発生中に多くの細胞で発現されるが、成人期には外胚葉起源の腫瘍でのみ発現される膜貫通受容体チロシンキナーゼである。したがって、未分化リンパ腫キナーゼは、動物モデル及びヒト腫瘍の両方で示されているように、外胚葉起源の全ての腫瘍に直接関係する癌原遺伝子と考えられる。例えば、ヒト乳癌の最大60%がALKを発現する。マウス起源のALK+腫瘍細胞株が利用可能であり、本発明のALK特異的細胞溶解性NKT細胞が腫瘍細胞を死滅させられるかどうかを評価するのに使用することができる。ナイーブマウスの脾臓から得られたNKT細胞(C57BL/6、H-2bバックグラウンド)を、チオレダクターゼモチーフを付加したALKのCD1d拘束NKT細胞エピトープがローディングされた自己樹状細胞で4回刺激する。
【0210】
使用するペプチドは、
GG WLQIVTWWGPGS[配列番号89]
CHGC GG WLQIVTWWGPGS[配列番号90]
HCHGC GG WLQIVTWWGPGS[配列番号91]
WCHGC GG WLQIVTWWGPGS[配列番号92]
である。
【0211】
NKT細胞は、それ自体が細胞溶解性活性を有することから、本発明者らは、チオレドックスモチーフがない天然配列中の同じCD1d拘束NKTエピトープへの曝露により、並行実験で刺激する細胞を含めた。最終刺激の10日後、NKT細胞を洗浄し、2対1の比(CD4の腫瘍細胞に対する)で104 R113腫瘍細胞を含有する細胞培養マイクロプレートに添加する。R113は、ALKを構成的に発現する、C57BL/6マウスから得られた腫瘍B細胞株である。共培養の20時間後、細胞アポトーシスのマーカーとして使用されるアネキシンV結合についてR113腫瘍細胞を評価する。
【0212】
第2の実験では、代替の遺伝的バックグラウンド(BALB/cマウス、H-2dバックグラウンド)由来のナイーブNKT細胞をナイーブマウスの脾臓から得、種々のペプチドがローディングされた自己樹状細胞で4回刺激する。BALB/c由来ALK+腫瘍細胞株(VAC)との共培養を上記したように実施する。腫瘍細胞のアポトーシスを、FACSによりアネキシンV結合を評価して測定する。
【0213】
(実施例9)
CD1d結合及びチオレダクターゼモチーフを含有するペプチドでの予備免疫化によるEAEの予防
EAE(実験上の自己免疫脳脊髄炎)は、中枢神経系の脱髄が生じ、多発性硬化症の実験上の同等物と見なされるモデル疾患である。少数の自己抗原が、疾患の誘発及び維持に関与すると考えられており、そのうちの1つがMOG(ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質)である。疾患は、MOGアミノ酸35~55個を包含するCD1d結合ペプチドエピトープを用いて、MOG免疫化によりC57BL/6マウスで誘発することができる。MOGはCD1dに結合し、NKT細胞を活性化する配列を含有する。
【0214】
使用するペプチドは、
GG FLRVPCWKI[配列番号85]
CHGC GG FLRVPCWKI[配列番号86]
HCHGC GG FLRVPCWKI[配列番号87]
WCHGC GG FLRVPCWKI[配列番号88]
である。
【0215】
C57BL/6マウス群を、配列番号86、87若しくは88のペプチド、又は対照として天然配列中のペプチドで皮下に4回(50μg)免疫化する。最終免疫化の10日後、ナイーブの非免疫化動物群を含む全てのマウスを、CFA中100μg MOG 35~55ペプチド/400μgウシ型結核死菌(Mycobacterium butyricum)の皮下注射、及びNaCl中300ng百日咳菌(Bortetella pertussis)のip注射により疾患に誘導する。+2日目、百日咳菌の2回目の注射を与える。EAEの徴候を経時的に追跡する。
【0216】
(実施例10)
GAD65由来ペプチドによる自然発症性インスリン依存性糖尿病の予防及び抑制
非肥満糖尿病(NOD)マウスは、自然発症性インスリン依存性糖尿病の適切な動物モデルとなる。人間と同様に、そのような動物では、自己抗原グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD65)に対する早期免疫応答が、インスリン炎が見られ得る時点で観察され、ここから早期免疫応答が分子内及び分子間拡散により広がる。新生児へのタンパク質の投与によるGAD65に対する寛容の誘導は、糖尿病の発症を予防する。GAD65は、CD1dに結合する能力を有するアミノ酸配列を含有する。
【0217】
使用するペプチドは、
GG HTNVCFWFV[配列番号93]
CHGC GG HTNVCFWFV[配列番号94]
HCHGC GG HTNVCFWFV[配列番号95]
WCHGC GG HTNVCFWFV[配列番号96]
である。
【0218】
メスNODマウスを4週齢から4回の皮下注射により免疫化し、非免疫化群との比較により、これらの群のそれぞれにおいて血糖を追跡する。
【0219】
(実施例11)
アレルゲン、Der p 1への曝露により誘導される喘息の予防
イエダニであるヤケヒョウダニ(D. pteronyssinus)由来のアレルゲンは、アレルギー性喘息に高い頻度で関与している。Der p Iは、ヤケヒョウダニの主なアレルゲンである。Der p Iの配列は、アミノ酸配列38~44に対応するCD1d結合モチーフを含有する。
【0220】
使用するペプチドは、
GG FSGVAATES[配列番号97]
CGPC GG FSGVAATES[配列番号98]
HCGPC GG FSGVAATES[配列番号99]
WCGPC GG FSGVAATES[配列番号100]
【0221】
アレルギー性喘息は、3日間連続で投与する100μg Der p 1の経鼻点滴によりBALB/cマウスで誘導することができる。喘息は、気管支過敏症及び肺への好酸球浸潤の誘引を特徴とする。BALB/cマウスを、配列番号98、99若しくは99のペプチド、又は対照としての天然配列中のペプチドのどちらかの50μgの4回注射により免疫化する。Der p1は、最終免疫化の10日後に経鼻点滴により投与する。好酸球を伴うメタコリン肺浸潤の吸入に対する気道反応性を決定する。
【配列表】
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