(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】撮像システム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20230728BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230728BHJP
C12M 1/04 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
C12M1/34 D
C12M1/00 C
C12M1/04
(21)【出願番号】P 2019031886
(22)【出願日】2019-02-25
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 博司
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-014675(JP,A)
【文献】特開2014-059288(JP,A)
【文献】国際公開第2018/179081(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/34
C12M 1/00
C12M 1/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料容器に担持された試料を撮像する撮像部と、
前記試料容器を収容可能な収容室を有する培養チャンバを保管する保管部と、
前記保管部と前記撮像部との間で、前記試料容器が収容された前記培養チャンバを搬送する搬送部と、
前記収容
室内の雰囲気制御を行う制御部と
を備え、
前記保管部は、前記培養チャンバを着脱可能に保持する保管用保持体を有し、
前記搬送部は、前記培養チャンバを搬送する際に前記培養チャンバを保持する搬送用保持体を有し、
前記保管用保持体および前記搬送用保持体のそれぞれは、前記培養チャンバを保持するときに前記収容
室に接続されるコネクタを有し、
前記制御部は、前記保管用保持体に保持される前記培養チャンバに対しては前記保管用保持体の前記コネクタを介して前記雰囲気制御を行い、前記搬送用保持体に保持される前記培養チャンバに対しては前記搬送用保持体の前記コネクタを介して前記雰囲気制御を行う、撮像システム。
【請求項2】
前記制御部は、温度、湿度および組成の少なくとも1つが調整されたガスを、前記コネクタを介して前記収容室に供給する請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
前記制御部は、温度および湿度の少なくとも一方に関する情報を、前記コネクタを介して取得する請求項1または2に記載の撮像システム。
【請求項4】
前記保管用保持体は、上部に前記培養チャンバが載置されることで前記培養チャンバを下方から支持する支持台であり、
前記保管用保持体の前記コネクタは、前記保管用保持体の上面に設けられ、前記培養チャンバが前記保管用保持体に載置されたときに前記培養チャンバの下面に設けられたコネクタと係合する請求項1ないし3のいずれかに記載の撮像システム。
【請求項5】
前記搬送用保持体は、上部に前記培養チャンバが載置されることで前記培養チャンバを下方から支持して移動する支持体であり、
前記搬送用保持体の前記コネクタは、前記搬送用保持体の上面に設けられ、前記培養チャンバが前記搬送用保持体に載置されたときに前記培養チャンバの下面に設けられたコネクタと係合する、請求項1ないし4のいずれかに記載の撮像システム。
【請求項6】
前記保管用保持体の前記コネクタは、前記培養チャンバに設けられた第1のコネクタと係合し、前記搬送用保持体の前記コネクタは、前記培養チャンバに前記第1のコネクタとは異なる位置に設けられた第2のコネクタと係合する請求項1ないし5のいずれかに記載の撮像システム。
【請求項7】
前記撮像部は、前記試料容器を収容した前記培養チャンバが前記搬送用保持体に保持された状態で、前記試料容器内の前記試料を撮像する請求項1ないし6のいずれかに記載の撮像システム。
【請求項8】
前記撮像部は、前記培養チャンバに設けられた、撮像に用いられる電磁波に対し透明な窓部を介して前記試料を撮像する請求項7に記載の撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、雰囲気制御された環境で保管される試料、例えば所定の培養環境下で培養された細胞等の試料を撮像対象物として撮像する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医学や生化学の技術分野では、容器中で培養された細胞や微生物を観察することが行われる。観察対象となる細胞等に影響を与えることなく観察を行う方法として、顕微鏡等を用いて細胞等を撮像する技術が提案されている。試料の培養は、例えばインキュベータ装置等を使用して温度、湿度、雰囲気の組成等の条件を一定に維持した環境で行われるが、撮像時にはこのような培養環境から試料が取り出されて撮像装置にセットされる。
【0003】
この種の撮像においては、例えば試料の経時的な変化を観察するために、培養を継続しながら、時間をおいて複数回の撮像が行われることがある。そのような場合、一時的にせよ試料の培養環境が変化することによって、試料が変質したり細胞の状態が変化したりするおそれがある。
【0004】
この問題に対応するものとして、例えば特許文献1に記載の技術がある。この従来技術のインキュベータ装置においては、複数の試料容器を収容可能なインキュベータの内部空間が部分的に外側に突出しており、この部分に載置された試料容器が外部の撮像装置により撮像される。これにより、培養および撮像の間、試料を外部空間に露出させることがない。インキュベータ内における試料容器の搬送は、インキュベータ内に設置された搬送ロボットが担う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術では、搬送ロボットとして多関節アームを採用し搬送時の動きを工夫することによりインキュベータ内容積の削減が図られているが、複数の試料容器および搬送ロボットを収容するための大きな空間を依然として必要とする。このことは、単に装置の大型化を招くというだけでなく、雰囲気を制御するべき空間の体積が大きくなることで適切な雰囲気制御を難しくする。
【0007】
このため、小容積空間の雰囲気制御で適切な培養環境を創出することができ、しかも、保管場所と撮像のための場所との間での搬送の間も培養環境を維持することのできる技術が求められる。しかしながら、このような要求に応えることのできる技術はこれまで確立されるに至っていない。
【0008】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、雰囲気制御の対象となる空間を小容積に抑えつつ、保管場所と撮像場所との間の搬送中においても雰囲気を適切に制御することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の一の態様は、試料容器に担持された試料を撮像する撮像部と、前記試料容器を収容可能な収容室を有する培養チャンバを保管する保管部と、前記保管部と前記撮像部との間で、前記試料容器が収容された前記培養チャンバを搬送する搬送部と、前記収容室内の雰囲気制御を行う制御部とを備える撮像システムである。この撮像システムでは、上記目的を達成するため、前記保管部は前記培養チャンバを着脱可能に保持する保管用保持体を有し、前記搬送部は前記培養チャンバを搬送する際に前記培養チャンバを保持する搬送用保持体を有し、前記保管用保持体および前記搬送用保持体のそれぞれは、前記培養チャンバを保持するときに前記収容室に接続されるコネクタを有し、前記制御部は、前記保管用保持体に保持される前記培養チャンバに対しては前記保管用保持体の前記コネクタを介して前記雰囲気制御を行い、前記搬送用保持体に保持される前記培養チャンバに対しては前記搬送用保持体の前記コネクタを介して前記雰囲気制御を行う。
【0010】
このように構成された発明では、培養チャンバが保管部に保管されているときには、制御部は保管用保持体に設けられたコネクタを介して収容室内の雰囲気を制御する。一方、培養チャンバが搬送部に保持されているときには、制御部は搬送用保持体に設けられたコネクタを介して収容室内の雰囲気を制御する。このため、培養チャンバが保管部に保管されているとき、搬送部により保持されているときのいずれにおいても、収容室に対する制御部からの雰囲気制御を機能させることができる。
【0011】
また、試料容器は収容室の雰囲気が制御された培養チャンバ内に収容された状態で保管部から撮像部へ搬送される。このため、制御部が雰囲気制御すべき培養チャンバ内の収容室は、内部に試料容器を収容可能な容積を有していれば足りる。
【発明の効果】
【0012】
上記のように、本発明によれば、保管部に保管された状態、搬送部により搬送される状態のいずれにおいても、制御部から培養チャンバへの雰囲気制御が機能する。また、制御部が雰囲気制御すべき培養チャンバ内の収容室は小容積で済む。そのため、雰囲気制御の対象となる空間を小容積に抑えつつ、保管場所と撮像場所との間の搬送中においても雰囲気を適切に制御することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る撮像システムの一実施形態の概略構成を示す図である。
【
図2】この撮像システムの動作の概要を示すフローチャートである。
【
図3】培養チャンバを搬送する際の搬送部の動きを示す図である。
【
図4】培養チャンバを搬送する際の搬送部の動きを示す図である。
【
図5】培養チャンバを搬送する際の搬送部の動きを示す図である。
【
図6】培養チャンバの構造を示す分解組立図である。
【
図7】培養チャンバと支持台との間でのコネクタの関係を示す図である。
【
図8】給気用コネクタの係合の様子を示す断面図である。
【
図9】培養チャンバと支持ハンドとの間でのコネクタの関係を示す図である。
【
図10】支持台から支持ハンドへの培養チャンバの受け渡しの様子を示す図である。
【
図11】支持台から支持ハンドへの培養チャンバの受け渡しの様子を示す図である。
【
図12】この撮像システムの制御系を示すブロック図である。
【
図13】培養チャンバの他の構造を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る撮像システムの具体的な実施形態について説明する。本実施形態は、インキュベータ内で継続的に培養される細胞等、例えばヒト受精卵のような試料を適宜の撮像方法により撮像する撮像システムである。この撮像システム100は、一定の培養環境で培養される試料を所定の時間間隔を隔てて撮像する、いわゆるタイムラプス撮像に好適なものである。撮像方法は特に限定されないが、例えば光干渉断層撮像(Optical Coherence Tomography;OCT)技術に基づく撮像方法を好適に適用可能である。
【0015】
図1は本発明に係る撮像システムの一実施形態の概略構成を示す図(正面図および平面図)である。この撮像システム100は、基台101に保管部2、撮像部3および搬送部4が配置された構造を有している。また、撮像システム100は後述する制御部5を備えている。以下の各図における方向を統一的に示すために、
図1に示すようにXYZ直交座標軸を設定する。ここでXY平面が水平面を表す。また、Z軸が鉛直軸を表し、より詳しくは(-Z)方向が鉛直下向き方向を表している。
【0016】
保管部2は、内部空間の雰囲気が所定の培養環境に調整された可搬型の培養チャンバ9を保管する機能を有するものである。具体的には、保管部2は、鉛直方向を長手方向とし下端が基台11に固定された支柱21と、支柱21に取り付けられ上面が平坦な支持面となった平板状の支持台22とを備えている。支持台22は、培養チャンバ9下面のうち中央部分に当接することで培養チャンバ9を下方から支持する。支持台22が複数設けられる場合、それらは支柱21の(-Y)方向側側面に、鉛直方向(Z方向)に一定のピッチで配設される。この実施形態では5つの支持台22が設けられており、各支持台22が1つずつ培養チャンバ9を支持することができる。培養チャンバ9の構造については後述する。
【0017】
撮像部3は、培養チャンバ9の内部に収容された試料を撮像する機能を有する。その構成は特に限定されないが、例えば
図1に示すように、カメラや照明光源等を内蔵する本体31の上部に、1つまたは用途に応じ使い分けられる複数の対物レンズ32が取り付けられたものとすることができる。また、詳しい理由については後述するが、
図1に一点鎖線で示される上方空間にカメラや照明光学系等の構造物が設けられてもよい。
【0018】
搬送部4は、保管部2と撮像部3との間で培養チャンバ9を搬送する機能を有する。具体的には、搬送部4は、保管部2に保管されている培養チャンバ9の1つを取り出して撮像部3に搬送し、撮像部3による撮像後の培養チャンバ9を保管部2に戻す。この機能を実現するために、搬送部4は以下のような構造を有している。
【0019】
すなわち、搬送部4は、基材11の上面にY方向に延設されたガイドレール12に対し水平移動自在に取り付けられたベース部41を有している。そして、ベース部41の上面から上向きに延びる支柱42が設けられている。支柱42の(+X)方向側側面には、鉛直方向に延びるガイドレール43,43が取り付けられている。このガイドレール43に対し、スライダ44が昇降自在に取り付けられている。スライダ44には、(+X)方向側に延びて上面が平坦な支持ハンド45が取り付けられている。詳しくは後述するように、支持ハンド45は、中央部分に大きな切り欠き部451を有する平板状部材であり、その上面を培養チャンバ9の下面周縁部に当接させることにより培養チャンバ9を支持することが可能である。
【0020】
後述するように、ガイドレール12に沿ったベース部41の水平移動、および、ガイドレール43に沿ったスライダ44の昇降移動については制御部5によって制御される。ベース部41の水平移動とスライダ44の昇降移動との組み合わせにより、保管部2のいずれかの支持台22から撮像部3へ、あるいは撮像部3から元の支持台22への培養チャンバ9の搬送が実現される。
【0021】
このように、この撮像システム100では、撮像の対象となる試料を収容した培養チャンバ9が保管部2に保管されている。培養チャンバ9は、搬送部4により必要に応じて撮像部に搬送されて、撮像部3による撮像に供される。また、撮像後の培養チャンバ9は保管部2に戻される。この撮像システム100の主たる特徴は、培養チャンバ9が保管部2に保管されている期間、搬送部4により搬送されている期間、および撮像部3により撮像が行われている期間を通して培養チャンバ9内空間の雰囲気制御が機能しており、これにより試料にとって好適な培養環境が維持されているという点である。以下、これを可能とする本実施形態の構成についてより詳しく説明する。
【0022】
図2はこの撮像システムの動作の概要を示すフローチャートである。最初に、撮像対象とされる試料を収容した培養チャンバ9が撮像システム100に搬入され、保管部2の支持台22に載置される。前述したように、支持台22に載置された状態でも培養チャンバ9内の雰囲気制御が機能する(ステップS101)。処理対象となる培養チャンバ9が複数ある場合には、各培養チャンバ9がそれぞれ異なる支持台22に載置される。
【0023】
これと前後して、各培養チャンバ9に対する撮像スケジュールが取得される(ステップS102)。この撮像スケジュールは、各培養チャンバ9に収容された試料をどのタイミングで撮像するかを規定したものである。以下の動作はこの撮像スケジュールに基づき実行される。なお、撮像スケジュールとともに培養条件や撮像条件等を規定した情報が取得されるようにしてもよい。
【0024】
保管部2に保管された培養チャンバ9に収容された試料のうちのいずれかについて、撮像スケジュールに規定された撮像予定時刻が到来すると(ステップS103)、当該試料を収容する培養チャンバ9が、搬送部4により保管部2から取り出され(ステップS104)、撮像部3へ搬送される(ステップS105)。培養チャンバ9が搬送部4の支持ハンド45により支持されている状態でも、チャンバ内の雰囲気制御が機能している。
【0025】
撮像部3は予め定められた撮像条件で培養チャンバ9内の試料を撮像する(ステップS106)。撮像終了後の培養チャンバ9は、搬送部4により元の支持台22に戻される(ステップS107)。予定された撮像スケジュールが完了するまで上記の処理が繰り返される(ステップS108)。スケジュール完了後においては、培養チャンバ9はそのまま保管部2に保管されてもよく、また必要に応じて外部へ搬出されてもよい(ステップS109)。こうして一連の処理が完了する。
【0026】
図3ないし
図5は培養チャンバを搬送する際の搬送部の動きを示す図である。具体的には、これらの図は、培養チャンバ9を保管部2から撮像部3へ搬送する過程における搬送部4の動きを示す図である。より詳しくは、
図3は搬送部4が保管部2から1つの培養チャンバ9を取り出す際の動きを示している。また、
図4は培養チャンバ9を搬送中の搬送部4を示している。また、
図5は培養チャンバ9を撮像部3に搬送したときの搬送部4を示している。
図3では、互いに重なり合う搬送部4と保管部2および培養チャンバ9とを区別して明示するために、搬送部4の構成部品にハッチングを付している。
【0027】
なお、ここでは、保管部2において最上段の支持台22に載置された培養チャンバ9を撮像部3へ搬送するときの動きについて説明する。しかしながら、他の支持台22に載置された培養チャンバ9についても、取り出し時の支持ハンド45の鉛直方向位置が異なるだけで基本的に同様に考えることができる。また、撮像部3から保管部2へ培養チャンバ9を搬送する際の動作については、以下に説明する動作を逆にたどることにより同様に考えることができる。
【0028】
図3(a)上部に正面図、下部に平面図で示すように、培養チャンバ9を保管部2から取り出すとき、搬送部4は保管部2の(-X)方向側隣接位置に位置決めされる。このとき、支持ハンド45は、その上面が培養チャンバ9の下面より僅かに低い位置となるように位置決めされる。したがって、このとき支持ハンド45は、支持台22に支持された培養チャンバ9の直下位置に位置する。支持ハンド45には、支持台22の幅(X方向長さ)よりも幅広の切り欠き部451が設けられている。搬送チャンバ9の受け渡し時においては、支持台22がこの切り欠き部451に入り込むため支持ハンド45と支持台22とは平面視において互いに重ならず、これにより両者の空間的干渉は予め回避されている。
【0029】
この状態から、
図3(b)に白抜き矢印で示すように支持ハンド45が少し上昇する。そうすると、支持ハンド45の上面が培養チャンバ9の下面に当接し、さらに支持ハンド45が上昇すると、培養チャンバ9は支持台22から持ち上げられ支持ハンド45のみで支持されることとなる。こうして培養チャンバ9は支持台22による支持から解放されて搬送可能な状態となる。すなわち、培養チャンバ9を支持する支持ハンド45を(-Y)方向側へ移動させることにより、保管部2から培養チャンバ9を取り出すことができる。
【0030】
図4に横向きの白抜き矢印で示すように、ベース部41がガイドレール12に沿って(-Y)方向側へ水平移動することで、搬送部4全体が同方向に移動する。これにより支持ハンド45に支持された培養チャンバ9が(-Y)方向側へ移動する。また、
図4に上下方向の白抜き矢印で示すように、スライダ44がガイドレール43に沿って昇降移動することで、支持ハンド45に支持された培養チャンバ9の高さ、つまりZ方向位置が変更される。このような水平移動と昇降移動との組み合わせにより、支持ハンド45に支持された培養チャンバ9が撮像部3へ向けて搬送される。
【0031】
図5(a)上部に正面図、下部に平面図で示すように、支持ハンド45がその下面を撮像部3の対物レンズ32と接触しない高さに保たれた状態で、搬送部4は撮像部3の(-X)方向側隣接位置に位置決めされる。このとき培養チャンバ9は、撮像に使用される対物レンズ32の直上位置に位置決めされる。なお、支持ハンド45をX方向に移動させるための機構が搬送部4に併設されていれば、培養チャンバ9中の試料と対物レンズ32との間の水平方向の位置合わせが可能である。
【0032】
図5(b)に下向きの白抜き矢印で示すように、上記の状態から支持ハンド45が下降することにより、培養チャンバ9の下面を対物レンズ32の直上で近接対向させることができる。この状態で、撮像部3による撮像処理を実行することができる。すなわち、この実施形態では、支持ハンド45に支持されたままの培養チャンバ9内の試料が、撮像部3によって撮像される。
【0033】
このように、この実施形態の撮像システム100において、培養チャンバ9の支持状態は、保管部2の支持台22に載置された状態で支持されているか、搬送部4の支持ハンド45に載置された状態で支持されているかのいずれかである。したがって、培養チャンバ9が支持台22に載置された状態、支持ハンド45に載置された状態のそれぞれでチャンバ内の雰囲気制御を実行することができれば、上記した処理の間、チャンバ内の培養環境を継続的に維持することが可能となる。これを実現するための各部の構造につき、以下に詳しく説明する。
【0034】
図6は培養チャンバの構造を示す分解組立図である。培養チャンバ9は、チャンバ本体91とベース部材92とに大別することができる。チャンバ本体91は、ガラス、樹脂材料(例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート、PET)等の透明な材料により略直方体形状に形成された箱体であり、その内部の収容空間SPに試料を収容することができる。すなわち、図示を省略しているが箱体の一部は開閉可能となっており、収容空間SPに対する試料の出し入れが可能である。
【0035】
具体的には、撮像対象となる細胞や受精卵等の試料は、適宜の培地を注入された試料容器中に担持されており、該試料容器がチャンバ本体91内に設置される。試料容器としては、細胞等の培養に用いられる一般的なもの、例えばディッシュ、シャーレ、ウェルプレート等を好適に適用することができる。
図6においては、収容空間SPに2つのディッシュDが載置された状態が破線により示されている。
【0036】
チャンバ本体91は、チャンバ本体91の平面サイズより大きな平面サイズを有する平板状部材であるベース部材92の上面に、チャンバ本体91の底面形状に応じて設けられた窪部921にはめ込まれている。窪部921の中央部には開口922が設けられており、培養チャンバ9を下方から見たときチャンバ本体91内の底面が開口922に臨んで露出している。チャンバ本体91が透明材料により形成されているため、開口922を介して収容空間SP内の試料を観察・撮像することが可能である。
【0037】
また、チャンバ本体91の底面には、支持台22に対応して設けられた第1コネクタC1と、支持ハンド45に対応して設けられた第2コネクタC2とが設けられている。第1コネクタC1は、給気用コネクタ93、排気用コネクタ94および信号用コネクタ95の総称である。これらのコネクタ93~95は、チャンバ本体91の底面のうちベース部材92の開口922に臨む位置に、それぞれチャンバ底面を貫通して設けられている。
【0038】
一方、第2コネクタC2は、給気用コネクタ96、排気用コネクタ97および信号用コネクタ98の総称である。これらのコネクタ96~98は、チャンバ本体91の底面のうちベース部材92の窪部921の上面と対向する位置に、それぞれチャンバ底面を貫通して設けられている。これらのコネクタに対応して、ベース部材92には貫通孔923~925が設けられている。したがって、コネクタ96は貫通孔923を介して、コネクタ97は貫通孔924を介して、またコネクタ98は貫通孔925を介して、それぞれ下方に開放されている。
【0039】
図7は培養チャンバと支持台との間でのコネクタの関係を示す図である。より具体的には、
図7(a)は培養チャンバ9が支持台22に載置されるときの両者のコネクタ間の係合状態を示す図であり、
図7(b)はそれぞれの給気用コネクタの構造を示す図である。
【0040】
第1コネクタC1は、培養チャンバ9が保管部2の支持台22に載置されている際に、これらに対応して支持台22側に設けられたコネクタと係合する。具体的には、支持台22の上面のうち、培養チャンバ9側の給気用コネクタ93と対応する位置には、給気用コネクタ221が設けられている。また、排気用コネクタ94と対応する位置には排気用コネクタ222が、信号用コネクタ95と対応する位置には信号用コネクタ223が、それぞれ設けられている。
【0041】
図7(b)は培養チャンバ9側の給気用コネクタ93および支持台22側の給気用コネクタ221の断面構造を示している。これらのコネクタは、互いに係合することで支持台22側から培養チャンバ9の収容空間SPへのガスの流通を可能にするガスコネクタである。なお、排気用のコネクタ94、222もその構造は基本的にそれぞれ給気用コネクタ93、221と同じであるので、これらの構造説明は省略する。また、信号用コネクタ95、223についても、電気信号を伝達するためのコネクタとして利用される一般的な構造を有するものを適用可能であるため、構造説明を省略する。
【0042】
まず支持台22側の給気用コネクタ221の構造について説明する。給気用コネクタ221の外観は、
図7(b)に示す断面を、中心を通る鉛直軸回りに回転させたものに対応し、鉛直軸に対し回転対称な形状となっている。給気用コネクタ221は支持台22の上面に取り付けられまたは埋め込まれたベース部221aと、その中央部から上向きに突出し、略円錐形または円錐台形の外形を有するプラグ部221bと、その周囲を取り囲んで設けられた環状のパッキン部221dとを有する。プラグ部221bの中心軸に沿って、ガスの流通経路として機能する貫通孔221cが設けられている。
【0043】
給気用コネクタ221のうち少なくともパッキン部221dについては、後述するようにチャンバ下面に押圧されることで弾性変形する弾性材料で形成されることが求められる。例えば弾性ゴム材料を適用可能である。なお、給気用コネクタ221の全体が単一の弾性材料で一体的に構成されてもよい。
【0044】
給気用コネクタ221の貫通孔221cには、
図7(b)に実線矢印で示すように、後述するガス供給部から適宜に調整されたガスが供給される。供給されるガスは、収容室SP内の試料に応じてその培養環境を最適化すべく、温度、湿度、ガス組成の少なくとも1つが調整されたものである。後述するように、ガスは支持台22側の給気用コネクタ221から培養チャンバ9側の給気用コネクタ93を介して収容空間SPに送り込まれる。一方、同じ構造を有する排気用コネクタ222においては、点線矢印で示すように、貫通孔は収容室SP内の雰囲気を外部へ排出するための流路として機能する。
【0045】
次に、培養チャンバ9側の給気用コネクタ93の構造について説明する。給気用コネクタ93は、チャンバ本体91の下面に設けられた貫通孔911を収容空間SP側から塞ぐように取り付けられている。具体的には、貫通孔911には中心部に略円形の孔が設けられた弾性材料によるシール材931が取り付けられ、その上部を覆うように弁932が設けられている。弁932は支軸932aの周りに揺動可能となっており、これにより貫通孔911を開閉する。なお、弁932は弾性材料により構成され、弾性変形することで貫通孔911を開閉する構造であってもよい。
【0046】
図8は給気用コネクタの係合の様子を示す断面図である。支持台22に設けられた給気用コネクタ221と培養チャンバ9側の給気用コネクタ93との間で水平方向の位置が合わせられた状態で両者を接近させてゆくと、
図8(a)に示すように、給気用コネクタ221のプラグ部221aの上端が、給気用コネクタ93のシール材931の中央部に設けられた孔を通して弁932の下面に当接する。
【0047】
給気用コネクタ221がさらに上昇すると、
図8(b)に示すように弁932が押し上げられて開き始め、給気用コネクタ221の貫通孔221cと培養チャンバ9の収容空間SPとが連通する。このとき、パッキン部221dの上端がチャンバ本体91の下面に当接するようにする。こうしておけば、弾性体であるパッキン部221dがチャンバ本体91の下面に密着して貫通孔911の周囲をシールする機能を果たすため、収容空間SPが外部空間と連通することは回避される。
【0048】
最終的には、
図8(c)に示すように、プラグ部221aが収容空間SP内に大きく進出して弁932が開き、プラグ部221aの外周部がシール材931によりシールされ、さらにその外側で貫通孔911がパッキン部221dによりシールされた状態となる。この状態で、適宜に調整されたガスが支持台22側から給気用コネクタ931および給気用コネクタ221を介して収容空間SP内に供給される。
【0049】
排気用コネクタ222の構造も給気用コネクタ221と同様であり、また排気用コネクタ94の構造も給気用コネクタ93と同様である。そして、排気用コネクタ間の係合状態についても、排気用コネクタと同様である。支持台22の排気用コネクタ222は図示しない排気系に接続されている。そのため、収容空間SP内のガスが排気用コネクタ94,222を介して外部へ排出される。
【0050】
このように、培養チャンバ9が保管部2の支持台22に載置された状態では、試料に応じて調整されたガスが給気用コネクタを介して収容空間SPに供給され、余剰なガスが排気用コネクタを介して排出されることにより収容空間SP内のガスが循環し、収容空間SP内の雰囲気が試料に適した条件に常時制御される。したがって、試料を収容した培養チャンバ9を保管部2に保管しておくことで、チャンバ内の試料を好適な培養環境の中で培養することができる。
【0051】
図9は培養チャンバと支持ハンドとの間でのコネクタの関係を示す図である。より具体的には、
図7(a)は培養チャンバ9が支持ハンド45に載置されるときの両者のコネクタ間の係合状態を示す図であり、
図9(b)はコネクタ係合時の断面構造を示す図である。チャンバ本体91の底面に設けられた給気用コネクタ96、排気用コネクタ97の構造も、給気用コネクタ93と同じである。また、信号用コネクタ98も、信号用コネクタ95と同じである。
【0052】
一方、支持ハンド45の上面のうち、水平方向において給気用コネクタ96、排気用コネクタ97および信号用コネクタ98に対応する位置には、給気用コネクタ453、排気用コネクタ454および信号用コネクタ455が設けられている。給気用コネクタ453および排気用コネクタ454の構造および機能は、支持台22に設けられた給気用コネクタ221と同じである。また、信号用コネクタ455の構造および機能は、支持台22に設けられた信号用コネクタ223の構造と同じである。
【0053】
ただし、コネクタ間の係合がベース部材92の貫通孔を介して行われる点が、支持台22と培養チャンバ9との間でのコネクタの係合と異なっている。すなわち、
図9(b)に示すように、支持ハンド45の給気用コネクタ453は、ベース部材92に設けられた貫通孔923を通してチャンバ本体91下面に密着し給気用コネクタ96と係合する。あるいは、
図9(c)に示すように、一体化されたチャンバ本体91およびベース部材92に対し、その下面に給気用コネクタ453が密着する構造であってもよい。
【0054】
同様に、排気用コネクタ97,454の係合は貫通孔924を介して、信号用コネクタ98,458の係合は貫通孔925を介してそれぞれ行われる。なお、このように支持ハンド45側のコネクタと培養チャンバ9側のコネクタとがベース部材を介して係合することは必須の要件ではなく、支持台22のコネクタの場合と同様の係合が行われる構造であってもよい。
【0055】
培養チャンバ9が支持ハンド45により支持されコネクタが係合された状態では、調整されたガスが支持ハンド45側から給気用コネクタを介して収容空間SPに供給され、余剰なガスが排気用コネクタを介して排出される。したがって、培養チャンバ9が支持ハンド45に支持され搬送または撮像されている期間においても、チャンバ内の試料を好適な培養環境に維持することができる。
【0056】
図10および
図11は支持台から支持ハンドへの培養チャンバの受け渡しの様子を示す図である。より具体的には、
図10(a)ないし
図10(d)、
図11(a)ないし
図11(c)は受け渡しの過程における各部の状態変化を模式的に示した図であり、
図11(d)はガスの流路を開閉する電磁バルブの動作を示すタイミングチャートである。なお、これらの図においては、動作を視認しやすくするために各コネクタを簡略化して図示している。また、図示の都合上、信号用コネクタの記載を省いており、図示されたコネクタの配置も、培養チャンバ9における実際の空間配置とは一致していない。
【0057】
これらの図に示すように、この撮像システム100には、収容空間SPへのガス供給および収容空間SPからの排気を適切に行うために、電磁バルブV1~V4がさらに設けられている。より具体的には、支持ハンド45の給気用コネクタ453には電磁バルブV1が、支持台22の給気用コネクタ221には電磁バルブV2がそれぞれ接続され、電磁バルブV1,V2には後述するガス供給部からガスが供給されている。一方、支持ハンド45の排気用コネクタ454には電磁バルブV3が、支持台22の排気用コネクタ222には電磁バルブV4がそれぞれ接続され、電磁バルブV3,V4は図示しない排気系に接続されている。以下の図において、電磁バルブV1~V4のうち開状態となっているものにはその近傍に「開」と付記することとする。一方、この付記のないバルブは閉状態にあるものとする。
【0058】
図10(a)は培養チャンバ9が支持台22に載置された状態を示している。このとき、培養チャンバ9のコネクタ93,94,95がそれぞれ支持台22のコネクタ221,222,223と係合している(信号用コネクタ95,223については図示省略)。
図11(d)に示すように、この状態にある時刻T1においては、電磁バルブV1,V3は閉じられ、電磁バルブV2,V4は開かれている。このため、矢印を付して示すように、収容空間SPへのガス供給は電磁バルブV2および支持台22の給気用コネクタ221を介して行われ、収容空間SPからの排気は支持台22の排気用コネクタ222および電磁バルブV4を介して行われる。
【0059】
図10(b)に示すように、支持ハンド45が支持台22から培養チャンバ9を受け取るために上昇する。
図11(d)に示すように、支持ハンド45側のコネクタ453,454,455がチャンバ側のコネクタ96,97,98と接触する時刻T2よりも前に(信号用コネクタ98,455については図示省略)、開いていた電磁バルブV2,V4は閉じられる。これにより収容空間SPへのガス供給および収容空間SPからの排気は停止される。
【0060】
図10(c)~
図11(b)に状態変化を示すように、支持ハンド45の上昇に伴い、支持ハンド45側のコネクタと培養チャンバ9側のコネクタとの係合が進行する一方で、支持台22側のコネクタと培養チャンバ9側のコネクタとの係合は解除されてゆく。そして、
図11(b)に示すように、支持台22側のコネクタと培養チャンバ9側のコネクタとの係合が完全に解消され受け渡しが完了する時刻T3よりも後に、電磁バルブV2,V4が開成される。開成後の時刻T4においては
図11(c)に矢印を付して示すように、電磁バルブV1および給気用コネクタ453を介して支持ハンド45から収容空間SPへガス供給が行われる。また、排気用コネクタ454および電磁バルブV3を介して、収容空間SPからの排気が行われる。
【0061】
撮像後の培養チャンバ9を支持ハンド45から保管部2の支持台22に戻す際の動作は上記と反対の動きとなる。このときも、
図11(d)に示すように、支持台22側のコネクタが培養チャンバ9側のコネクタと係合する時刻T5よりも早く電磁バルブV1,V3が閉じられる。そして、支持ハンド45側のコネクタと培養チャンバ9側のコネクタとの係合が完全に解除される時刻T6よりも後に、電磁バルブV2,V4が開かれる。これにより、再び支持台22を介したガス供給および排気が行われることとなる。
【0062】
このように、この実施形態においては、支持台22と支持ハンド45との間での培養チャンバ9の受け渡しの際に、一時的に収容空間SPへのガス供給および収容空間SPからの排気が停止されるブランク期間BPが設けられている。これは、支持台22を介した雰囲気制御と支持ハンド45を介した雰囲気制御とが並列的に実行されることにより生じ得る一時的な培養環境の乱れを抑制するためである。培養チャンバ9が受け渡される短い時間だけガスの流通が停止することは、試料の状態にはほぼ影響を与えない。当然に、ブランク期間BPはできるだけ短くなるようにすることが望ましい。
【0063】
図12はこの撮像システムの制御系を示すブロック図である。撮像システム100の撮像部3としては、例えば公知の顕微鏡撮像装置やOCT撮像装置等を適用することができる。この種の撮像装置の一般的な構成として、撮像部3は、被撮像物を照明する照明ユニット301、CCDカメラ等の撮像デバイスを有し撮像動作を実行する撮像ユニット302、対物レンズ32を含む光学系303、撮像により得られた画像データを処理する信号処理部304等を備えている。なお、画像データの処理については制御部5において行われてもよい。
【0064】
撮像システム100の制御部5は、所定の制御プログラムを実行することで上記した各部の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)51、CPU51の動作に伴い生成される各種データを一時的に記憶するメモリ52、制御プログラムや各種データを記憶するストレージ53およびユーザインターフェース(UI)54を備えている。これらは一般的な構成のパーソナルコンピュータやワークステーションによって実現することが可能である。一方、以下の各ブロックは本実施形態に特徴的なものであるが、その一部については上記したパーソナルコンピュータ等によりソフトウェア的に実現することも可能である。
【0065】
本実施形態の制御部5は、搬送部45の動作を司る搬送制御部551を備えている。搬送制御部551は、搬送部4に設けられてその水平移動を実行する水平移動機構401、および昇降移動を実行する昇降機構402を制御し、前記した搬送動作を実現する。水平移動機構401および昇降機構402としては、図示しない各種の直線駆動機構を用いることができる。例えばリニアモータ、ボールねじ機構、直動ガイド、ラック・ピニオン機構等を好適に適用可能である。
【0066】
また、制御部5には、搬送部4に設けられた電磁バルブV1,V3の開閉を制御するバルブ制御部552と、電磁バルブV1に調整されたガスを供給するガス供給部553とが設けられている。ガス供給部553はガス供給源と、温度、湿度およびガス組成の少なくとも1つを調整する調整機能とを有している。バルブ制御部552からの制御指令により電磁バルブV1,V3が開成されると、ガス供給部553から搬送部4を介したガスの流通が実現される。
【0067】
培養チャンバ9が搬送部4により支持されているとき、
図12に破線矢印で示すように、搬送部4と培養チャンバ9とは培養チャンバ9に設けられたコネクタC2(給気用コネクタ93、排気用コネクタ94、信号用コネクタ95)を介して相互に接続される。搬送部4(より具体的には支持ハンド45)を介したガスの流通は、コネクタC2を介して行われる。
【0068】
また、培養チャンバ9には雰囲気センサ901が設けられている。雰囲気センサ901は、収容空間SP内の温度、湿度およびガス組成の少なくとも1つを検出し、その検出結果に応じた信号を出力するものである。雰囲気センサ901からの出力信号は、コネクタC2を介して搬送部4に伝達され、さらに制御部5に設けられた雰囲気制御部554に伝達される。
【0069】
雰囲気制御部554は、雰囲気センサ901からの出力に基づいて、ガス供給部553が送出するガスの温度、湿度、組成等を制御する。こうして収容空間SP内の環境検出結果を供給ガスの調整にフィードバックすることで、収容空間SP内の雰囲気を安定的に制御することができる。
【0070】
一方、培養チャンバ9が保管部2に保管されているとき、
図12に点線矢印で示されるように、支持台22と培養チャンバ9とは培養チャンバ9に設けられたコネクタC1(給気用コネクタ96、排気用コネクタ97、信号用コネクタ98)を介して相互に接続される。保管部2(より具体的には支持台22)を介したガスの流通は、コネクタC1を介して行われる。
【0071】
このとき、雰囲気センサ901からの出力信号は、コネクタC1を介して保管部2から雰囲気制御部554へ伝達される。制御部5には、電磁バルブV2へガスを供給するガス供給部555と、電磁バルブV2,V4を開閉制御するバルブ制御部556とがさらに設けられている。ガス供給部555はガス供給源と、温度、湿度およびガス組成の少なくとも1つを調整する調整機能とを有している。バルブ制御部556からの制御指令により電磁バルブV2,V4が開成されると、ガス供給部555から保管部2を介したガスの流通が実現される。
【0072】
雰囲気制御部554は、雰囲気センサ901の検出結果に基づき、ガス供給部555が送出するガスの温湿度、組成等を調整する。こうして調整されたガスが培養チャンバ9に供給されることで、保管部2に保管されている培養チャンバ9について、その内部の収容空間の雰囲気制御を行うことができる。
【0073】
なお、保管部2には複数の培養チャンバ9を保管することが可能である。この場合、保管されている培養チャンバ9のそれぞれについて個別に雰囲気制御が行われることが望ましい。これを可能とするために、保管部2の電磁バルブV2,V4は、複数の支持台22のそれぞれに対応して個別に設けられる。また、これに対応して、制御部5のバルブ制御部556も、各支持台22に設けられた電磁バルブV2,V4を個別に制御することが必要とされる。さらに、ガス供給部555は、各支持台22に設けられた電磁バルブV2に対し個別に調整されたガスを供給することが必要とされる。
【0074】
ただしこれらはハードウェアとして支持台22ごとに独立に設けられる必要は必ずしもなく、例えば共通のハードウェアによる並列処理によって、それぞれの培養チャンバ9の雰囲気制御を独立して制御することができれば足りる。また、各チャンバにおいて求められる雰囲気の条件が共通するものであれば、それぞれに供給されるガスも単一条件で調整されたものとすることも可能である。この場合でも、電磁バルブV2,V4については、ガスの流通経路をチャンバごとに個別に開閉することができるように構成されていることが望ましい。
【0075】
以上のように、この実施形態の撮像システム100は、保管部2に保管された培養チャンバ9を搬送部4が必要に応じて撮像部3へ搬送し、撮像部3によりチャンバ内の試料を撮像するという機能を有する。保管部2において培養チャンバ9が載置される支持台22、および搬送部4において培養チャンバ9が載置される支持ハンド45のそれぞれに、培養チャンバ9内の収容空間SPの雰囲気を検出することで取得される信号のためのコネクタと、調整されたガスを収容空間SPに送り込むとともに余剰なガスを排気するためのコネクタとが設けられている。また、これらのコネクタに対応するコネクタC1、C2が培養チャンバ9にも設けられている。
【0076】
このため、培養チャンバ9が保管部2に保管されているときには、保管部2の支持台22に設けられたコネクタを介して収容空間SPの雰囲気制御が実現される。また、培養チャンバ9が搬送部4に保持されているときには、搬送部4の支持ハンド45に設けられたコネクタを介して収容空間SPの雰囲気制御が実現される。このように、培養チャンバ9が保管部2に保管されているとき、搬送部4により搬送されるときのいずれにおいても、収容空間SP内の雰囲気制御を確実に行うことができる。したがって、搬送中に雰囲気の制御が行われずチャンバ内の試料の培養環境が乱れてしまうという問題は回避される。
【0077】
また、この撮像システム3では、搬送部4により培養チャンバ9が撮像部3に搬送された後、支持ハンド45によって培養チャンバ9を支持した状態のまま撮像が行われる。そして、上記した通り、支持ハンド45に載置された状態でもチャンバ内の雰囲気制御が機能している。このため、1つの培養チャンバ9が保管部2から搬出されて撮像が行われ再び保管部2へ戻されるまでの間も、チャンバ内の雰囲気制御が継続的に行われる。これにより、撮像中の培養環境の変化に起因する試料の変質を抑制することができる。
【0078】
また、培養チャンバ9に設けられるコネクタC1,C2はその底面に配置されている。このため、対応するコネクタが上面に設けられた支持台22、支持ハンド45の適切な位置に培養チャンバ9が載置されることで、自動的にコネクタの係合も行われることになる。このような構成により、支持台22から支持ハンド45へ、また支持ハンド45から支持台22への培養チャンバ9の受け渡しの際も、物理的なチャンバの移載がすなわちコネクタの接続切り替えとしての動作を兼ねることになるため、雰囲気制御の引き継ぎも含めた培養チャンバ9の受け渡しを短時間でかつ自動的に行うことができる。
【0079】
この場合、受け渡し時に複数の制御系統が競合して制御が不安定になることを回避するために、この実施形態では、電磁バルブの開閉によって一時的にガス供給および排気が停止される。
【0080】
また、雰囲気制御が必要な空間範囲は、各培養チャンバ9の収容空間SP内のみであり、保管部2や搬送部4はその空間範囲には含まれない。このため、雰囲気制御の対象空間は小容積で済み、比較的簡単に安定した制御を実現することが可能である。
【0081】
以上説明したように、上記実施形態においては、保管部2に設けられた支持台22が本発明の「保管用保持体」として機能する一方、搬送部4に設けられた支持ハンド45が本発明の「搬送用保持体」として機能している。また、培養チャンバ9に設けられたコネクタC1およびコネクタC2が、それぞれ本発明の「第1のコネクタ」および「第2のコネクタ」として機能している。また、培養チャンバ9のチャンバ本体91が、本発明の「収容室」に相当している。
【0082】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態におけるコネクタの構造や配置はその一部の例を示したものであり、これらに限定されるものではない。
【0083】
また、上記実施形態の雰囲気制御は、培養チャンバ9に設けられた雰囲気センサ901の検出結果に基づき行われるが、これに代えて、例えば予め設定された条件に調整されたガスを常時送り込むことでチャンバ内雰囲気を強制的に所定条件に維持するものであってもよい。この場合には、チャンバ内の雰囲気を検出するための構成は必ずしも必要ではなくなる。
【0084】
また、培養チャンバ9と制御部5との電気的接続については、上記のようにチャンバ内からの検出信号を伝達するものだけでなく、例えばチャンバ内に設けられたヒータ等の電気的素子に電力を供給するための接続が存在してもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、培養チャンバ9を構成するチャンバ本体91に、保管部2の支持台22に対応するコネクタC1と支持ハンド45に対応するコネクタC2とが設けられている。これに代えて、以下に説明するようにベース部材に2組のコネクタが設けられてもよい。
【0086】
図13は培養チャンバの他の構造を例示する図である。この変形例の説明において、上記実施形態と同一のまたは対応する構造・機能を有する構成については上記実施形態と同一の符号を付して詳しい説明を省略する。この培養チャンバ9aは、チャンバ本体91aおよびベース部材92aを有している。そして、支持台22のコネクタ221~223に対応するコネクタC1a、支持ハンド45のコネクタ453~455に対応するコネクタC2aはいずれもベース部材92aに設けられている。
【0087】
ベース部材92aでは、コネクタC1aとコネクタC2aとが互いに並列に接続されている。このため、培養チャンバ9a全体としては2系統のコネクタを有するが、ベース部材92aとチャンバ本体91aとの間では1系統のみの接続があれば足りる。このような構成によっても、上記実施形態と同様の雰囲気制御が可能である。例えば、雰囲気制御のための入出力ポートを1系統のみ有する既存の培養チャンバを利用して本発明を実施することが可能である。
【0088】
また、上記実施形態では、培養チャンバ9のチャンバ本体91の全体が透明な材料で形成されているが、少なくとも撮像や目視観察のために必要な透明窓が設けられていれば足り、チャンバ全体が透明である必要はない。また、目視確認が不要であれば可視光に対して透明である必要はなく、撮像に用いられる波長の電磁波に対し透明であればよい。
【0089】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明において、制御部は、温度、湿度および組成の少なくとも1つが調整されたガスを、コネクタを介して収容室に供給するものであってよい。このような構成によれば、収容室内の雰囲気を試料に応じたものに調整することが可能である。
【0090】
また、制御部は、温度および湿度の少なくとも一方に関する情報を、コネクタを介して取得するものであってよい。このような情報を取得することで、収容室内の雰囲気の現状に応じたフィードバック制御が可能となる。
【0091】
また、保管用保持体は、上部に培養チャンバが載置されることで培養チャンバを下方から支持する支持台であり、保管用保持体のコネクタは、保管用保持体の上面に設けられ、培養チャンバが保管用保持体に載置されたときに培養チャンバの下面に設けられたコネクタと係合する構成であってよい。このような構成によれば、培養チャンバを保管用保持体に載置するという動作が、両者のコネクタ間を接続する動作を兼ねることとなるので、単に保管用保持体の適切な位置に培養チャンバを載置するだけで、雰囲気制御も有効に機能させることができる。
【0092】
同様に、搬送用保持体は、上部に培養チャンバが載置されることで培養チャンバを下方から支持して移動する支持体であり、搬送用保持体のコネクタは、搬送用保持体の上面に設けられ、培養チャンバが搬送用保持体に載置されたときに培養チャンバの下面に設けられたコネクタと係合する構成であってよい。この場合にも、搬送用保持体の適切な位置に培養チャンバを載置することで、雰囲気制御も有効に機能させることができる。
【0093】
また、保管用保持体のコネクタは、培養チャンバに設けられた第1のコネクタと係合し、搬送用保持体の前記コネクタは、培養チャンバに第1のコネクタとは異なる位置に設けられた第2のコネクタと係合する構成であってよい。培養チャンバに設けられた1組のコネクタに、保管用保持体のコネクタと搬送用保持体のコネクタとが選択的に係合するような構成も考えられる。しかしながら、この場合には一方のコネクタの係合を完全に解除してから他方のコネクタの係合を開始させる必要があるため、雰囲気制御が中断される期間が比較的長くなってしまうおそれがある。第1、第2のコネクタを個別に設けることで、いずれのコネクタも非係合状態にある期間を短くして、雰囲気制御の中断を最小限に抑えることができる。
【0094】
また、撮像部は、試料容器を収容した培養チャンバが搬送用保持体に保持された状態で試料容器内の試料を撮像する構成であってよい。このような構成によれば、搬送用保持体に保持されることで培養チャンバ内の雰囲気制御が継続的に実行されており、この状態を保ったまま撮像を行うことができる。そのため、撮像時に雰囲気制御が停止されて培養環境が変動するのを回避することができる。したがって、一定の培養環境で培養を継続しながら繰り返し撮像を行う場合に特に好適である。
【0095】
また、撮像部は、培養チャンバに設けられた、撮像に用いられる電磁波に対し透明な窓部を介して試料を撮像する構成であってよい。このような構成によれば、撮像に際して試料を培養チャンバから取り出す必要がなく、試料は雰囲気制御された培養チャンバ内に常に留め置かれるので、試料の培養環境の変化を回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
この発明は、容器中で継続的に培養される細胞等の試料を定期的に観察する目的に特有効であり、医療や創薬の分野に幅広く利用することが可能である。
【符号の説明】
【0097】
2 保管部
3 撮像部
4 搬送部
5 制御部
9 培養チャンバ
22 支持台(保管用保持体)
45 支持ハンド(搬送用保持体)
93,96,221,453 給気用コネクタ
94,97,222,454 排気用コネクタ
95,98,223,455 信号用コネクタ
100 撮像システム
C1 第1のコネクタ
C2 第2のコネクタ