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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】自動倉庫システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/04 20060101AFI20230728BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
B65G1/04 521
B65G1/00 511J
B65G1/00 511A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019054712
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020152556
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】河野 龍太
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-109008(JP,A)
【文献】特開平10-181807(JP,A)
【文献】特開平07-025408(JP,A)
【文献】特開2004-131258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/04
B65G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動倉庫システムであって、
荷を保管可能な複数段の保管ステージと、
前記荷を搬送する搬送機構を制御する搬送制御部と、を備え、
前記搬送制御部は、自動運転中に前記複数段の保管ステージのうち何れかの保管ステージで異常が発生したとき、異常が発生した保管ステージ、前記異常が発生した保管ステージよりも上にある全ての保管ステージ及び真下の保管ステージの運転のみを停止させる、自動倉庫システム。
【請求項2】
前記保管ステージには、当該保管ステージの荷が所定範囲内からずれているかどうかを検出する異常検出センサが設けられている、請求項1に記載の自動倉庫システム。
【請求項3】
前記搬送制御部は、前記異常が発生した保管ステージの異常が当該保管ステージ内部にかかるものと判断した場合、異常を通知する、請求項1または2に記載の自動倉庫システム。
【請求項4】
前記搬送機構は、前記保管ステージを走行する台車を含み、
前記搬送制御部は、前記異常が発生した保管ステージの異常が前記台車にかかるものと判断した場合、当該台車の位置を確認するとともに異常を通知する、請求項1から3のいずれか1項に記載の自動倉庫システム。
【請求項5】
前記搬送制御部は、前記複数段の保管ステージのうち、前記異常が発生したときに停止させた保管ステージ以外の保管ステージにおける前記搬送機構による荷の搬送を可能とするように前記搬送機構を制御する、請求項1から4のいずれか1項に記載の自動倉庫システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動倉庫システムに関し、特に複数段の保管棚を有する自動倉庫システムに関する。
【背景技術】
【0002】
少ないスペースで多数の荷を効率的に入庫・出庫可能な自動倉庫システムが知られている。自動倉庫システムとしては様々な構成が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載されているような自動倉庫システムでは、倉庫内で例えば荷崩れ等の異常が発生したときにシステムを全て停止させて復旧作業を行う作業員の安全を確保してから、作業員は、異常が発生した箇所まで行き復旧作業を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-160040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、異常が発生したときに自動倉庫システムを全て停止させると異常が発生していない保管棚における作業も停止してしまうため、自動倉庫システムの稼働効率が低下してしまう、という問題があった。
【0006】
そこで本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、復旧作業を行っているときでも稼働効率の低下を抑制できる自動倉庫システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、自動倉庫システムであって、荷を保管可能な複数段の保管ステージと、荷を搬送する搬送機構を制御する搬送制御部と、を備え、搬送制御部は、自動運転中に複数段の保管ステージうち何れかの保管ステージで異常が発生したとき、異常が発生した保管ステージの運転、及び指定された保管ステージの運転のみを停止させることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、異常が発生したときに運転を停止させる保管棚の数を減らすことができ、稼働効率の低下を抑制することができる。
【0009】
また本発明の異なる態様は、自動倉庫システムであって、荷を保管可能な複数段の保管ステージと、荷を搬送する搬送機構を制御する搬送制御部と、を備え、搬送制御部は、自動運転中に複数段の保管ステージうち何れかの保管ステージで異常が発生したとき、異常が発生した保管ステージの運転を停止させると共に、当該異常が発生した保管ステージとは異なる保管ステージにおける搬送機構による荷の搬送を可能とするように搬送機構を制御する。
【0010】
この構成によれば、異常が発生したときに運転を停止させる保管棚の数を減らすことができ、稼働効率の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明によれば、復旧作業を行っているときでも稼働効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係る自動倉庫システムの一例を概略的に示す平面図である。
図2図1の自動倉庫システムの保管棚の配置を示す平面図である。
図3図1の自動倉庫システムを概略的に示す正面図である。
図4図1の自動倉庫システムの保管棚の配置を示す正面図である。
図5図1の自動倉庫システムの第1台車の一例を概略的に示す平面図である。
図6図5の第1台車の側面図である。
図7図1の自動倉庫システムの第2台車の一例を概略的に示す平面図である。
図8図7の第2台車の側面図である。
図9図1の自動倉庫システムのブロック図である。
図10図1の自動倉庫システムの動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施の形態、比較例および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0014】
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0015】
[第1実施形態]
図面を参照して実施形態に係る自動倉庫システムの構成について説明する。図1は、実施形態に係る自動倉庫システムの一例を概略的に示す平面図である。図2は、自動倉庫システムの保管棚の配置を示す平面図である。図3は、自動倉庫システムを概略的に示す正面図である。図4は、自動倉庫システムの保管棚の配置を示す正面図である。これらの図では、説明に重要でない柱や梁などの記載を省略しており、以下の図についても同様である。
【0016】
説明の便宜上、図示のように、水平なある方向をX方向、X方向に直交する水平な方向をY方向、両者に直交する方向すなわち鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系を定める。なお、以降の説明ではXYZ直交座標系を用いて説明するが、必ずしもX方向、Y方向、Z方向は互いに直交していなくとも、略90度で交差していればよい。X軸、Y軸、Z軸のそれぞれの正の方向は、各図における矢印の方向に規定され、負の方向は、矢印と逆向きの方向に規定される。また、X軸の正方向側を「右側」、X軸の負方向側を「左側」ということもある。また、Y軸の正方向側を「前側」、Y軸の負方向側を「後側」、Z軸の正方向側を「上側」、Z軸の負方向側を「下側」ということもある。このような方向の表記は自動倉庫システムの構成を制限するものではなく、自動倉庫システムは、用途に応じて任意の構成で使用されうる。
【0017】
まず、自動倉庫システム1の全体構成を先に説明する。自動倉庫システム1は、多数の荷2を保管可能な保管棚4を含むシステムである。自動倉庫システム1は、保管棚4と、第1台車6と、第2台車8と、第1レール10と、第2レール12と、給電部(不図示)と、制御部14と、を含む。保管棚4は、荷2を保管する。本実施形態では、第1方向としてX軸方向を例示している。第1レール10は、X軸方向に延在する。給電部は、第2レール12の近傍をY軸方向に延在する給電線を含む。
【0018】
第1台車6は、第1レール10上をX軸方向に走行する。第2台車8は、第2レール12上をY軸方向に走行する。第1台車6、及び第2台車8を総称するときは単に台車ということがある。また、第1台車6と、第2台車8と、第1レール10と、第2レール12と、を総括するときは単に「搬送機構」ということがある。制御部14は、第1台車6、及び第2台車8の動作を制御する。
【0019】
なお、第1実施形態では、荷2をパレットに載せた状態で扱うが、これに限られず、パレットを用いずに荷2を単独で扱うようにしてもよい。なお、荷2をパレットに載せた状態で搬送することを、単に荷2を搬送するという。
【0020】
自動倉庫システム1の入庫・出庫動作を説明する。自動倉庫システム1は、例えばフォークリフト(不図示)によって倉庫外部からの荷2を入庫部18に搬入する。自動倉庫システム1は、入庫部18に搬入された荷2を、第1台車6、及び第2台車8を含む搬送機構によって所定の保管部20に搬送して保管する。また、自動倉庫システム1は、所定の保管部20で保管していた荷2を、搬送機構によって出庫部22に搬送する。自動倉庫システム1は、出庫部22に搬送された荷2を、例えばフォークリフトによって倉庫外部に搬出する。
【0021】
(保管棚)
保管棚4は、多数の荷2を保管可能な、いわば高密度保管型の保管スペースである。保管棚4の構成は、複数の荷2を収容・保管可能であれば、特に限定されない。この例では、保管棚4は、上下方向に層状に重ねられた複数段(例えば4段)の保管ステージ24を含む。各保管ステージ24は、Y軸方向に並べられた複数(例えば7つ)の保管行26を含む。7行の保管行26のうち6行は、X軸方向に並んだ複数(例えば12つ)の保管部20を含む。また、7行の保管行26のうち残りの1行は、X軸方向に並んだ複数(例えば6つ)の保管部20を含む。なお図示の例では、7行の保管行26のうち6行は、第2レール12を挟んで右側及び左側にそれぞれ6つずつの保管部20を有し、残りの1行は第2レール12の左側に6つの保管部20を有している。しかしながら保管行26の数、各保管行26中の保管部20の数、及び第2レール12の位置は倉庫の形状に応じて適宜変更可能である。保管部20は、荷2を保管する単位である。
【0022】
ここで、複数段の保管ステージ24にはそれぞれ入庫部18と出庫部22が設けられており、フォークリフトで各段の保管ステージ24に荷2を入庫、又は出庫してもよい。また、各段の保管ステージ24に荷2を昇降させる昇降機構(不図示)が別途設けられており、入庫部18と出庫部22は最下段の保管ステージ24のみに設けられていてもよい。この場合、入庫部18から入庫された荷2は昇降機構によって上げられて各段の保管ステージ24に移動し、また各段の保管ステージ24から出庫された荷2は昇降機構によって下げられて出庫部22に出庫される。
【0023】
(レール)
第1レール10は、保管行26において、X軸方向に延在する。第2レール12は、保管行26の端部近傍において、Y軸方向に延在する。第1レール10および第2レール12を総称するときは単にレールということがある。本明細書において、レールは、その延在方向に台車を走行させるように構成された車輪の転動面を有する部材または部分である。したがって、レールは、棒状または帯状の部材に形成された転動面を有するレールであってもよいし、平面上に形成された転動面を有するレールであってもよい。
【0024】
(第1台車)
次に、図5、及び図6を参照して第1台車6について説明する。図5は、第1台車の一例を概略的に示す平面図である。図6は、第1台車の側面図である。第1台車6は、荷2を搬送するために、保管行26の中で第1レール10をX軸方向に走行する。第1台車6は、保管部20に対して荷2を出し入れする。第1台車6は、第2台車8に乗降するために、第2台車8上をX軸方向に走行する。
【0025】
第1台車6は、車体28と、載置部30と、リフト機構32と、複数(例えば4個)の車輪34と、電池36と、を主に含む。車体28は、上下方向に偏平な略直方体形状の輪郭を有する。車体28の内部には、複数の車輪34を駆動するモータ(不図示)と、このモータを制御する制御回路(不図示)と、電池36と、を搭載している。第1台車6は、電池36の電力によってモータを駆動するように構成されている。電池36は繰り返し充電可能なリチウムイオン電池などの二次電池であってもよい。
【0026】
載置部30は、荷2を持上げて保持する部分である。リフト機構32は、載置部30を昇降させる機構である。図6において、破線で示す載置部30は上昇した状態にあり、実線で示す載置部30は下降した状態にある。リフト機構32は載置部30を上昇させて荷2を保管部20から持上げることができる。リフト機構32は、載置部30を降下させて荷2を保管部20に降ろすことができる。複数の車輪34は第1レール10上および第2台車8上を走行する。
【0027】
(第2台車)
次に、図7、及び図8を参照して第2台車8を説明する。図7は、第2台車の一例を概略的に示す平面図である。図8は、第2台車の側面図である。第2台車8は、第2レール12をY軸方向に走行する。第2台車8は、空荷の状態または荷2を積載した状態の第1台車6を搬送する。
【0028】
第2台車8は、車体38と、凹部40と、複数の車輪42と、集電ユニット44と、を主に含む。車体38は、上下方向に偏平な略直方体形状の輪郭を有する。車体38の内部には、各車輪42を駆動するモータ(不図示)と、このモータを制御する制御回路(不図示)と、を搭載している。車輪42は、第2レール12上を走行する。集電ユニット44は、第2レールに沿って延びる給電線に接触して電力の供給を受ける。第2台車8は、その集電ユニット44を介して給電線から電力を受け取る。第2台車8は、受け取った電力によってモータを駆動すると共に、第1台車6に給電するように構成されている。
【0029】
第2台車8は、第1台車6を搭載するための凹型形状の凹部40を有する。凹部40は、第1台車6を載せるために、車体38の上面から下向に窪んで形成されている。凹部40の大きさは、第1台車6が凹部40の周囲と干渉することなくX軸方向に走行できるように、第1台車6の大きさに十分な量のマージンを加えた大きさとされる。第1台車6は凹部40上を走行する。
【0030】
(メンテナンスエリア)
各保管ステージ24(図1及び図2参照)には、少なくとも第2台車8が進入可能なメンテナンスエリア48が設けられている。メンテナンスエリア48は、第2レール12の端に配置されている。メンテナンスエリア48には外部からメンテナンスエリア48内にアクセスできるようにドア50が設けられている。メンテナンスエリア48は、上段の保管ステージ24で荷崩れ等が発生した場合でも作業員の安全を確保できる、作業員保護構造を有している。作業員保護構造とは、強固で隙間のない床及び天井を有する構造であり、上からの落下物から作業員を保護すると共に、落下物がより下の保管ステージへ落ちない構造となっている。第2台車8をメンテナンスエリア48に移動させることで、作業員が第2台車8のメンテナンスを行える。また、第1台車6を搭載させた状態で第2台車8をメンテナンスエリア48に移動させることで第1台車6のメンテナンスも行える。
【0031】
また、メンテナンスエリア48にアクセスするためのドア50の外側には、外側コントロールパネル52aが設けられており、ドア50の内側には内側コントロールパネル52bが設けられている。外側コントロールパネル52aは、自動倉庫システム1の運転モードを切り替えるキースイッチ54のような切り替え手段を備えている。また、外側コントロールパネル52aの周辺、即ちドア50の外側には、搬送機構への給電を停止させるための安全プラグ52cと、キースイッチ54の操作により搬送機構が停止したことを示すランプ52dとが設けられている。また、ドアセンサー52eによってドア50の開閉を検出できるようになっている。内側コントロールパネル52bは、台車への給電のオン/オフを切り替える給電スイッチ52fを備えている。自動倉庫システム1の運転モードとしては、全自動運転モード、自段停止モード、及び複数段停止モードがある。全自動運転モードでは、自動倉庫システム1は、自動倉庫システム1に搭載されているプログラムにしたがって全ての保管ステージ24を運転する。自段停止モードでは、自動倉庫システム1は、キースイッチ54が設けられている保管ステージ24の運転だけを停止させ他の保管ステージ24の運転を許容する。複数段停止モードでは、自動倉庫システム1は、キースイッチ54が設けられている保管ステージ24、及び指定された保管ステージ24の運転だけを停止させ、他の保管ステージ24の運転を許容する。換言すれば、「全自動運転モード」は、全ての保管ステージ24を運転するモードであり、「自段停止モード」及び「複数段停止モード」は、異常が発生した保管ステージだけを停止させ、異常が発生していない保管ステージの全部又は一部を停止させず、搬送機構による荷の搬送を可能とする。また、自動倉庫システム1の運転モードとして、異常発生時とは別に、台車のメンテナンス等のために作業員がメンテナンスエリア48内に立ち入るために使用される「サイクル停止モード」がある。サイクル停止モードが選択されると、通常運転中の搬送機構が停止される。このとき停止される保管ステージ24は、操作されたキースイッチ54が設けられている保管ステージ24だけでも良いし、上下に隣接する保管ステージ24を停止しても良い。
【0032】
キースイッチ54はドア50のロックと連動しており、キースイッチ54が「自段停止モード」又は「複数段停止モード」に設定されていない場合には、ドア50を開くことができないか、仮にドア50を開いてしまったときに搬送機構が緊急停止するようになっている。したがって、キースイッチ54が「自段停止モード」又は「複数段停止モード」に切り替えられ、当該キースイッチ54が設けられている保管ステージ24の安全が確保できたときのみ、作業員がメンテナンスエリア48に立ち入ることができる。作業員がメンテナンスエリア48に立ち入ると、作業員は、内側コントロールパネル52bにアクセス可能となり、内側コントロールパネル52bが設けられている保管ステージ24内の台車への給電を停止することができる。
【0033】
制御部の構成を単純化するために、「自段停止モード」及び「複数段停止モード」は、異常が発生した保管ステージに加えて、指定された保管ステージの運転を停止するものとしても良い。この場合、「自段停止モード」においては、指定された保管ステージ24を示すフラグを立てないようにすることができる。この場合には、「自段停止モード」における、本発明でいうところの「異常が発生した保管ステージ」は、実際に異常が発生した保管ステージ24になり、「指定された保管ステージ」は値が存在しないため、0段の保管ステージ24となる。
【0034】
メンテナンスエリア48は、保管ステージ24を平面視したときに、Y軸に沿って最も前側にある保管行26の延長線上に位置する。より具体的には、第2台車8が最も前側にある保管行26から第2台車8を受け入れられる位置にいる場合には、第2台車8はメンテナンスエリアに進入することとなる。したがって、第2台車8等のメンテナンス時には、第2台車8を、最も前側にある保管行26と並ぶ位置に移動させることとなる。
【0035】
複数段停止モードにおいて運転が停止される指定された保管ステージ24とは、異常が発生した保管ステージ24の真上の保管ステージ24、異常が発生した保管ステージ24よりも上にある全ての保管ステージ24、異常が発生した保管ステージ24の真上の保管ステージ24及び真下の保管ステージ24、又は異常が発生した保管ステージ24よりも上にある全ての保管ステージ24及び真下の保管ステージ24の何れかであることが好ましい。このように複数段停止モードを選択して復旧作業をすることにより、異常が発生した保管ステージ24よりも上の保管ステージ24(上の一段又は全ての段)を停止させて、更なる荷崩れ等によって荷2の落下を防止することができる。また、異常が発生した保管ステージ24よりも下の保管ステージ24を停止させることによって、例えば復旧作業中に作業員が下の保管ステージ24で搬送されている荷2に接触するのを抑制することができる。複数段停止モードにおいて停止させる保管ステージ24、即ち複数段停止モードにおいて指定された保管ステージ24とは、自動倉庫システム1のシステム構築時に予め指定されるものであっても良い。また、例えばキースイッチ54近辺に入力装置を配置し、作業員が停止させる保管ステージ24を指定できるようにしても良い。
【0036】
また、保管ステージ24を2段有する自動倉庫システム1では、全自動運転モードで運転しているときには上下の2段の保管ステージ24が運転される。また、例えば上側の保管ステージ24にて異常が発生し、上側の保管ステージ24のキースイッチ54にて自段停止モードを選択すると、上側の保管ステージ24だけが運転を停止し、他段停止モードを選択すると、下側の保管ステージ24も運転を停止する。この場合には、本発明でいうところの「異常が発生した保管ステージ」は、上段の保管ステージ24になり、0段の保管ステージ24が停止されるべき「指定された保管ステージ」となる。
【0037】
また、各保管ステージ24には、保管ステージ24内の異常を検出する異常検出センサが配置されている。異常検出センサとしては、荷崩れのような保管部内の荷の状態の異常を検出する保管部異常検出センサ56と、第1台車6及び第2台車8の故障のような搬送機構の異常を検出する搬送機構異常検出センサ58とがある。保管部異常検出センサ56としては、カメラ等の撮像手段、又は赤外線センサ等を用いて荷が保管部内の所定範囲内からずれていないかを検出する手段を用いることができる。また、搬送機構異常検出センサ58としては、第1台車6及び第2台車8の走行状態をモニタリングし、第1台車6等が指令通りに移動していない場合に異常が発生したことを検出する手段を用いることができる。
【0038】
(制御系統)
図9は、自動倉庫システムのブロック図である。自動倉庫システム1は、保管部20に管理されている荷を管理する荷管理部60、上述したキースイッチ54、及び搬送機構を制御するための搬送制御部62を備えるシステム制御部64を有している。自動倉庫システム1はさらに、上述した保管部異常検出センサ56及び搬送機構異常検出センサ58を備える異常検出部66と、各保管ステージ24内に配置されている台車A,B,・・・と、を有している。自動倉庫システム1内における荷2の搬送、管理は、システム制御部64の台車制御部68A,68B,・・・によって対応する複数の台車A,B,・・・を同時に動作させることで行われる。そして、異常検出部66で異常が検出された場合や、キースイッチ54が操作された場合に、以下で説明するような、異常復旧のための処理を実行する。
【0039】
(台車のメンテナンス)
自動倉庫システムの運転に異常が発生していないが、台車のメンテナンス等により作業員が台車にアクセスしてメンテナンスをすることがある。この場合、作業員は、メンテナンス対象の台車がいる保管ステージ24のキースイッチ54にアクセスし、運転モードを「サイクル停止モード」に切り替える。これにより通常運転を行っている台車は停止する。次いで作業員は、キースイッチ54を外側コントロールパネル52aから外す。また、作業員は安全プラグ52cを抜く。これにより搬送機構への給電が停止される。次いで作業員は、ランプ52dを視認して台車が停止していることを確認してからドア50を開き、メンテナンスエリア48に入り、ドア50を閉じる。ドア50が閉じられるとドアセンサー52eがオンになり、搬送機構へ給電を行える状態となる。次いで作業員は内側コントロールパネル52bの給電スイッチ52fを操作し、台車への給電をオンにする。次いで作業員は、キースイッチ54を台車に挿し、手動モードに切り替える。これにより台車を手動で操作できるようになる。台車のメンテナンス後、作業員はキースイッチ54を操作し、台車を自動モードに切り替える。次いで、内側コントロールパネル52bの給電スイッチ52fをオフにし、ドア50の外側に出る。これによりドアセンサー52eがオンになる。次いで作業員は安全プラグ52cを差し込み、外側コントロールパネル52aにキースイッチ54を差し込み、キースイッチを全自動運転モードに切り替える。
【0040】
(異常復旧動作)
次に自動倉庫システム1の異常復旧動作を説明する。なお、以下で説明する自動倉庫システム1の制御は、予め記憶部に記憶されたソフトウェアを用いて、コンピュータのMPU(Micro Processing Unit)のようなハードウェアで実行される。
【0041】
図10は、自動倉庫システムの動作を示すフロー図である。一連の処理が開始すると、まず、ステップS1において自動倉庫システム1は、保管ステージ24内での異常を検出するまで待機する。この処理では、異常検出部66の検出結果に基づいて判断される。
【0042】
ステップS1において異常が検出されると、ステップS2において自動倉庫システム1は、異常が発生した保管ステージ24の運転を停止させる。保管ステージ24の運転を停止させるとは、該当する保管ステージ24内で走行中の第1台車6及び第2台車8をその場で停止させることをいう。異常が発生した保管ステージ24内の台車の走行を停止させることにより、作業員が復旧作業のために保管ステージ24内に入ったときの安全を確保できる。
【0043】
次にステップS3において自動倉庫システム1は、検出された異常が、台車にかかる異常であるか、保管ステージ24内部にかかる異常であるか、を判断する。この処理は、システム制御部64が異常検出部66の検出結果、即ち保管部異常検出センサ56又は搬送機構異常検出センサ58のうちのどちらのセンサが異常を検出したのかを判断することで行われる。
【0044】
異常が台車にかかるものではなく、保管ステージ24内部にかかる異常である場合、ステップS4において自動倉庫システム1は、異常を作業員に通知する。この処理では、システム制御部64が、図示せぬモニター等に、特定の保管ステージ24内部に異常が発生したことを表示する。これにより作業員は、特定の保管ステージ24に異常が発生したことを知ることができ、復旧作業の準備を開始できる。復旧作業にあたって作業員は、異常が発生した保管ステージ24のメンテナンスエリア48の外まで移動し、キースイッチ54の操作をする。
【0045】
ステップS5において自動倉庫システム1は、キースイッチ54が操作されたか否かを判断する。キースイッチ54は、自動倉庫システム1が正常に運転されている状態では、「全自動運転モード」に設定されている。作業員は、自動倉庫システム1より通知された異常の内容に応じてキースイッチ54を操作し、「自段停止モード」か「複数段停止モード」の何れかを選択する。
【0046】
ステップS6において自動倉庫システム1が、複数段停止モードに設定されたと判断した場合、ステップS7において自動倉庫システム1は、既に停止している、異常が発生した保管ステージ24に加えて、指定された保管ステージ24を停止、又は運転を許可しない設定にする。これにより、異常が発生した保管ステージ24に加えて、上の保管ステージ24、下の保管ステージ24等、指定された保管ステージ24内の運転が行われなくなる。一方で、異常が発生した保管ステージ24、及び指定された保管ステージ24以外の保管ステージ24では、搬送制御部62による制御のもと、運転が可能となる。
【0047】
所定の保管ステージ24内での運転が停止したら作業員は、安全プラグ52cを抜いた上でメンテナンスエリア48のドア50を通って、メンテナンスエリア48内に入り、内側コントロールパネル52bの給電スイッチ52fをオフにして台車への給電を停止する。その後、作業員は保管部20内に荷崩れ等の異常の復旧作業をする。復旧作業の後、作業員は給電スイッチ52fをオンにし、再度メンテナンスエリアを通り、保管部20から退出する。次いで、作業員は、安全プラグ52cを差し込み、キースイッチ54を操作して「全自動運転モード」に設定する。
【0048】
ステップS8において自動倉庫システム1が、キースイッチ54が「全自動運転モード」に設定されたと判断すると、ステップS9において自動倉庫システムは、停止していた全ての保管ステージ24の運転を再開する。
【0049】
また、ステップS6において複数段停止モードが選択されていないと判断した場合、自動倉庫システム1は、自段停止モードが選択されたと判断する。この場合も作業員は、保管ステージ24内で異常の復旧を行ったのち、キースイッチ54を操作して「全自動運転モード」に設定する。
【0050】
また、ステップS3において自動倉庫システム1が、検出された異常が台車にかかるものであると判断した場合、ステップS10において自動倉庫システム1は、台車の位置を確認する。ここでいう台車とは、異常が発生した台車を意味し、例えば搬送機構異常検出センサ58が第1台車6に異常が発生したことを検出した場合、自動倉庫システム1は、異常が発生した第1台車6の位置を確認する。また、搬送機構異常検出センサ58が第2台車8に異常が発生したことを検出した場合、自動倉庫システム1は、第2台車8の位置を確認する。
【0051】
次いで、ステップS11において自動倉庫システム1は、異常を作業員に通知する。この処理では、システム制御部64が、図示せぬモニター等に、特定の保管ステージ24内部にある第1台車6又は第2台車8の何れか、又は両方に異常が発生したことを表示する。これにより作業員は、特定の台車に異常が発生したことを知ることができ、復旧作業の準備を開始する。復旧作業をするにあたって作業員は、異常が発生した台車がある保管ステージ24のメンテナンスエリア48の外まで移動し、キースイッチ54を操作する。この場合、作業員は、異常が発生した台車の位置を確認し、該当する台車が作業員保護構造であるメンテナンスエリア48内に停止している場合には、キースイッチ54を「自段停止モード」に設定する。台車がメンテナンスエリア48内で停止している場合には、台車の復旧作業にあたって作業員が保管部20内に入り込む必要がなくメンテナンスエリア48内で安全に復旧作業を行える。本実施形態において、台車がメンテナンスエリア48内で停止する場合としては、第1台車6及び第2台車8がY軸に沿って最も前側にある保管行26に到着したときや、例えば第1台車6が充電やメンテナンスのためにメンテナンスエリア48に進入しているときがある。このような場合、キースイッチ54を「自段停止モード」とし、異常が発生した台車がある保管ステージ24だけを停止させ、他の保管ステージ24の運転を許容することで、自動倉庫システム1の作業効率の低下を抑制することができる。次いで作業員は、キースイッチ54を外し、安全プラグ52cを抜いた上で、ドア50を通ってメンテナンスエリア48に入る。次いで作業員は、ドア50を閉じた上で内側コントロールパネル52bの給電スイッチ52fを操作し、台車への給電をオンにする。次いで作業員は、キースイッチ54を台車に挿し、手動モードに切り替える。これにより台車を手動で操作できるようになる。台車のメンテナンス後、作業員はキースイッチ54を操作し、台車を自動モードに切り替える。次いで、内側コントロールパネル52bの給電スイッチ52fをオフにし、ドア50の外側に出る。これによりドアセンサー52eがオンになる。次いで作業員は安全プラグ52cを差し込み、外側コントロールパネル52aにキースイッチ54を差し込み、キースイッチを全自動運転モードに切り替える。
【0052】
台車のメンテナンスが完了した後、作業員がメンテナンスエリアから退出し、キースイッチ54を「全自動運転モード」に設定することにより、ステップS8において自動倉庫システム1は、停止していた保管ステージ24の運転を再開する。
【0053】
以上のように、本実施形態によれば、自動倉庫システム1内で異常が発生した場合に、異常が発生した保管ステージ24、及び必要に応じて指定された保管ステージ24だけを停止させ、残りの保管ステージ24の運転を許容することにより、異常発生時の作業効率の低下を最小限に抑制することができる。また、指定された保管ステージ24として、異常が発生した保管ステージ24の真上の保管ステージ24、異常が発生した保管ステージ24よりも上にある全ての保管ステージ24、異常が発生した保管ステージ24の真上の保管ステージ24及び真下の保管ステージ24、又は異常が発生した保管ステージ24よりも上にある全ての保管ステージ24及び真下の保管ステージ24の何れかとすることにより、作業員の安全を確保することができる。
【0054】
以上、本発明の各実施形態をもとに説明した。これらの実施形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求の範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0055】
(変形例)
以下、変形例について説明する。第1台車6を各段の各行に設けることは必須ではなく、第1台車6は各段に設けられなくてもよい。
【0056】
保管ステージ24は1列の保管行26から構成されてもよい。
【0057】
保管行26の保管部20の数を一様に構成することは必須ではない。保管行26を構成する保管部20の数は、保管棚4を収容する建物の壁の凹凸に応じて、数が多い行と少ない行とが設けられてもよい。
【0058】
上下方向に積層される保管ステージ24の段数を一様に構成することは必須ではない。保管ステージ24の段数は、保管棚4を収容する建物の天井の高さに応じて、段数が多い領域と少ない領域とが設けられてもよい。
【0059】
荷2がパレットを含むことは必須ではない。本自動倉庫システムは、パレットを含まない荷2を取り扱うようにしてもよい。
【0060】
フォークリフトに代えて、クレーンを備えた移載装置など、別の種類の移載装置によって、荷2を入庫、又は出庫するようにしてもよい。
【0061】
これらの各変形例は、実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0062】
上述した実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0063】
1 自動倉庫システム、 2 荷、 6 第1台車、 8 第2台車、 10 第1レール、 12 第2レール、 24 保管ステージ、 48 メンテナンスエリア、 62 搬送制御部
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