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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】摂食可能な食器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A21D 13/48 20170101AFI20230728BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20230728BHJP
   A23L 7/17 20160101ALN20230728BHJP
   A23L 7/109 20160101ALN20230728BHJP
【FI】
A21D13/48
A23L5/00 G
A23L7/17
A23L7/109 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019061609
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020156427
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】591096303
【氏名又は名称】株式会社ブルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【氏名又は名称】藤井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】宝島 哲央
(72)【発明者】
【氏名】新保 知能
(72)【発明者】
【氏名】水島 悠希
(72)【発明者】
【氏名】三膳 孝弘
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-069985(JP,U)
【文献】登録実用新案第3195310(JP,U)
【文献】特開2003-265109(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0037112(US,A1)
【文献】Starbucks Is Now Sticking Cookie Straws in All Frappuccinos, EATER[online], 2015年4月28日, [retrieved on 2023.02.09], Retrieved from the Internet, URL, https://eater.com/2015/4/28/8507691/starbucks-cookie-straw-smores-frappuccinos-coffee
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D、A23L、A23G、A47G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を含む、摂食可能な食器の製造方法:
焙焼した穀物生地に油脂を含浸させる工程、
含浸させた穀物生地を油脂切りする工程、および
油脂切りした穀物生地を冷風下で回転させる工程。
【請求項2】
油脂切りした穀物生地を冷風下で回転させる工程が、油脂切りした穀物生地を冷風下で1回転/分以上で回転させる工程である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
穀物生地が、ビスケット類生地、パスタ生地、およびパフスナック生地からなる群から選択される一種以上である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
穀物生地が、クッキー生地である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
摂食可能な食器が、棒状の摂食可能な食器である、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
摂食可能な食器が、ストローまたはマドラーである、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焙焼した穀物生地に油脂を含浸させる工程、および含浸させた穀物生地を冷風下で回転させる工程を含む摂食可能な食器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海に流出したプラスチックは塩分や紫外線などで細かく分解され、微小なプラスチック(マイクロプラスチック)となり、海洋汚染に繋がることが近年大きな社会問題となっている。この問題へ対処するために、特定の製品へのプラスチックを制限する動きが広がっている。
【0003】
一方で、プラスチックは安価で且つ耐久性がある利便性が高い材料であることから、食器(例えば、ストロー)やペットボトルなどの種々の製品を製造するのに用いられ、プラスチックの生産はここ数十年にわたって飛躍的に増大している。この問題に対処するために、生分解性プラスチックの開発も進められているが、自然環境中で消えてなくなるまでの時間は通常のプラスチックに比べて短くなることは示唆されているものの、海などの自然環境下では、完全に生分解されるまで長期間要する場合もある。
【0004】
また、廃プラスチックのプラスチック製品をリサイクルする方法も知られているが(例えば、特許文献1参照)、先進国で発生した多くのプラスチックごみは、リサイクルのために環境規定の低い国に送られ、技術の低い家族経営の施設などで再処理されていることから、抜本的な対策とはいえない側面がある。
【0005】
従って、これまでプラスチックを用いて製造されていた製品を、プラスチック以外の材料で代替して製造すれば、そもそもプラスチックゴミが生み出されないことから抜本的な解決策の一つとなり得る。特に、ストローなどの食器によるプラスチック汚染の問題は深刻であり、早急な解決が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-31684号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、焙焼した穀物生地を特定の工程を経て製造することにより、プラスチックを用いることなしに、良好な品質や作業性を有する食器を製造できることが分かった。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0008】
従って、本発明は、焙焼した穀物生地に油脂を含浸させる工程、および含浸させた穀物生地を冷風下で回転させる工程を含む、摂食可能な食器の製造方法を提供する。
【0009】
本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)下記工程を含む、摂食可能な食器の製造方法:
焙焼した穀物生地に油脂を含浸させる工程、および
含浸させた穀物生地を冷風下で回転させる工程。
(2)含浸させた穀物生地を冷風下で回転させる工程が、含浸させた穀物生地を冷風下で1回転/分以上で回転させる工程である、(1)に記載の製造方法。
(3)穀物生地が、ビスケット類生地、パスタ生地、およびパフスナック生地からなる群から選択される一種以上である、(1)または(2)に記載の製造方法。
(4)穀物生地が、クッキー生地である、(1)または(2)に記載の製造方法。
(5)摂食可能な食器が、棒状の摂食可能な食器である、(1)~(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)摂食可能な食器が、ストローまたはマドラーである、(1)~(4)のいずれかに記載の製造方法。
(7)(1)~(6)のいずれかに記載の製造方法により製造された、摂食可能な食器。
【0010】
本発明によれば、海洋汚染などの原因となり得るプラスチックを用いることなしに、良好な品質や作業性を有する摂食可能な食器を製造することができる点で有利である。
【発明の具体的説明】
【0011】
本発明は、焙焼した穀物生地に油脂を含浸させる工程、および含浸させた穀物生地を冷風下で回転させる工程を含む、摂食可能な食器の製造方法である。
【0012】
本発明において、穀物生地とは、イネ、ムギ、アワ、ヒエ、豆などの穀物を用いて作られた生地を意味し、穀物を用いて作られた生地であれば特に限定されるものではないが、好ましくは、ビスケット類生地、パスタ生地、およびパフスナック生地からなる群から選択される一種以上である。例えば、「ビスケット類」とは、ビスケット、クラッカーカットパンおよびパイ並びにこれらの加工品を意味し、これらの2種以上の生地を本発明の製造方法に用いてもよいが、これらのうちの1種の生地を用いることが好ましい。本発明の製造方法に用いられる穀物生地は、特に好ましくは、クッキー生地であり、これはビスケット生地の一態様である。
【0013】
本発明において、「ビスケット」とは、小麦粉、糖類、食用油脂及び食塩を原料とし、必要により澱粉、乳製品、卵製品、膨脹剤、食品添加物の原材料を配合し、又は添加したものを混合機、成形機及びビスケットオーブンを使用して製造した食品を意味する。
【0014】
本発明において、「クラッカー」とは、小麦粉、糖類、食用油脂及び食塩を原料とし、必要により澱粉、乳製品、卵製品、イースト、酵素、膨脹剤、食品添加物等の原材料を配合し、又は添加したものを混合機、成形機及びビスケットオーブンを使用して製造した食品を意味する。プレッツェルは、クラッカーの一態様であり、棒状、リング型等に成型した生種(なまだね)をアルカリ処理して焼きあげたものをいう。
【0015】
本発明において、「カットパン」とは、小麦粉、糖類、食用油脂、食塩及びイーストを原料とし、必要により澱粉、乳製品、卵製品、膨脹剤、食品添加物等の原材料を配合し、又は添加し、混合機にかけ醗酵させたものを成形機及びビスケットオーブンを使用して製造した水分の多い食品を意味する。
【0016】
本発明において、「パイ」とは、次に掲げる基準に適合した食品を意味する。
(1)小麦粉及び食用油脂を原料とし、必要により澱粉、糖類、乳製品、卵製品、イースト、膨脹剤、食品添加物等の原材料を配合し、又は添加したものを混合機、成型機及びビスケットオーブンを使用して製造した小麦粉を主体とする部分と油脂とが交互に層状になった食品、
(2)小麦粉及び食用油脂を原料とし、必要により澱粉、糖類、乳製品、卵製品、イースト、膨脹剤、食品添加物等の原材料を配合し、又は添加したものを混合機、成型機及びビスケットオーブンを使用して製造した小麦粉を主体とする部分が製品の外側部分になるようにし、その中に果物、肉の加工品、マシュマロ等の詰めものをした水分の多い食品。
【0017】
本発明において、「ビスケット、クラッカー、カットパンまたはパイの加工品」とは、ビスケット、クラッカー、カットパン又はパイにクリーム、ジャム、マシュマロ、あん等をはさんだもの又はこれらの表面にチョコレート、砂糖、卵白、醤油、油脂等を塗布若しくは被覆したものを意味する。
【0018】
本発明において、「パスタ」とは、デュラム小麦のセモリナ若しくは普通小麦粉又は強力小麦のファリナ若しくは普通小麦粉に水を加え、これに卵、野菜等を加え又は加えないで練り合わせ、マカロニ類成形機から高圧で押し出した後、切断し、及び熟成乾燥したものを意味し、スパゲッティやマカロニなどの麺の総称である。
【0019】
本発明において、「パフスナック」とは、水を含む穀物類を一軸エクストルーダーにて膨化成形しその後の水分を無くす為に焙焼したもの意味する。
【0020】
本発明において、「摂食可能」とは、必ずしもヒトが摂食可能であることを意味するものではなく、動物、例えばイヌやネコなどのペットにより摂食可能であってもよい。また、「摂食可能」とは、ヒトやペットなどが摂食することによりその身体に甚大な害がなければ摂食可能といえ、例えば、茹でる前のパスタなど、通常そのままでは摂食しないような態様であってもよい。
【0021】
本発明において、「食器」とは、食事や給餌などに用いるための器具や容器を意味し、食器としては、例えば、ナイフ、フォーク、スプーン、ストロー、またはマドラーなどが挙げられるが、好ましくは、ストローまたはマドラーなどの棒状の食器が挙げられ、より好ましくは、ストローまたはマドラーが挙げられ、特に好ましくはストローが挙げられる。
【0022】
本発明において、「焙焼」とは、あぶり焼くことを意味し、鉱石や金属などを融解しない程度の高温で焼くことを意味する。
【0023】
本発明の製造方法に用いる穀物生地に含浸させる油脂としては、植物性油脂であっても、動物性油脂であってもよいが、食用極度硬化油脂が好ましく用いられ、パーム油やひまわり油も好適に用いられる。
【0024】
本発明の製造方法に用いる穀物生地を油脂に含浸させる方法としては、穀物生地に油脂を染み込ませることができればどのような方法であってもよく、穀物生地に油脂を塗って染み込ませたり、油脂が入った容器に穀物生地を漬け込んでもよいが、好ましくは、油脂が入った容器に穀物生地を漬け込むことが好ましい。
【0025】
また、本発明の製造方法の好ましい態様によれば、「焙焼した穀物生地に油脂を含浸させる工程」と、「含浸させた穀物生地を冷風下で回転させる工程」との間に油脂切り工程が行われることが好ましい。油脂を含浸させた穀物生地から油脂切りできればどのような態様であってもよいが、好ましくは、生地を2~8度(好ましくは、5度)の傾斜状態で静止のまま30秒以上(好ましくは、30秒以上、より好ましくは、30~45秒間)放置して油脂切りを行う。
【0026】
本発明の製造方法において、含浸させた穀物生地を冷風下で回転させるとは、含浸させた穀物生地が冷風下で静止せずに回転してればどのような速度で回転していてもよいが、好ましくは、1回転/分以上で回転させる(1分当たり1回転以上させる)ことが好ましく、10~15回転/分で回転させることがより好ましい。また、本発明において、冷風下とは、0~30℃程度にコントロールされた環境下での冷風であれば限定されるものではないが、好ましくは、15~27℃にコントロールされた環境下での冷風であり、より好ましくは、18~22℃にコントロールされた環境下での冷風である。冷風の風速は特に限定されるものではないが、好ましくは、1~12m/sであり、より好ましくは、3~10m/sであり、さらに好ましくは、4~9m/sである。
【0027】
本発明の製造方法において、含浸させた穀物生地を冷風下で回転させる工程の後は、例えば、商品として流通させるために、回転後の生地を冷却して油脂をさらに固化させて、個包装、DC包装などの包装を行い製品化することができる。
【0028】
本発明の別の態様によれば、本発明の製造方法により製造された摂食可能な食器が提供できる。この態様における食器などは、本発明の製造方法に記載された食器であってもよい。
【実施例
【0029】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。以下の例において「%」と表示されているものは、「質量%」を表す。
【0030】
1.焙焼穀物生地の調製
(1)クッキー生地
焙焼
下記表1に記載の原材料を配合し、ミキサーにより混合して種粘度を2000CP±200とした。粘度調整後、デポジッター(ブルボン株式会社社製)により帯状に成形した(最終製品の種類により幅は自由に変更可能であるが、今回は60~65mmに調製した)。帯状に成形後、その生地を各種オーブンにて焙焼した(焙焼時間:1分20秒を基準とした)。
【表1】
【0031】
心棒を使用して巻き機(ブルボン株式会社製)にて成型を行った。巻き心棒については9mmを目安に実施した。心棒にて成型された生地を基準サイズ(200mm)にカットした。冷却しながら形状修正を行い、焙焼したクッキー生地とした。
【0032】
(2)プレッツェル生地の調製
焙焼
下記表2に記載の原材料を配合し、ミキサーにより混合した。混合した原材料を筒状に成型するために、押し出し機による成型を行った。0.8~1.2%の水酸化ナトリウム溶液でアルカリ処理を行った。その生地を各種オーブンにて焙焼し、プレッチェル生地とした。
【表2】
【0033】
(3)パフスナック生地の調製
焙焼
下記表3に記載の原材料を配合し、加水を少量ずつ供給し均一に混合した(混練)。高回転で原料を送り込み圧力と熱によりダイス(ノズル形状)により膨化しながら成型した(エクストルーダー)。エクストルーダー後は生地に多くの水分が含まれ、水分を無くすために焙焼して、パフスナック生地とした。
【表3】
【0034】
(4)パスタ生地の調製
焙焼
下記表4に記載の原材料を配合し、加水を少量ずつ供給し均一に混合した(混練)。パスタ成形機により色々なダイス(ノズル形状)から押し出し成型により生地作りを行った(内径9mm、外径11mmのノズルを使用した)。一般的なパスタであれば、温度および湿度をコントロールしながら、長時間乾燥して透明感のあるパスタとするところ、この工程を省略して、上記で作成した生地を蒸気にて5分間蒸した。その後、水分調整のために乾燥を行い、焙焼して、パスタ生地とした。
【表4】
【0035】
上記(1)で調製した焙焼後のクッキー生地を以下の検討で用いた。
【0036】
2.油脂含浸
上記(1)で調製した焙焼後のクッキー生地をパーム油(ひまわり油であっても同様の結果であった(データ示さず))に15秒間漬け込んだ。
【0037】
3.油脂切り
上記油に漬け込んだクッキー生地を5度の傾斜状態で静止のまま30秒程度油脂を切った。
【0038】
4-1.冷風回転処理
静止させて油脂を切ったクッキー生地に対して、下記表5に記載の条件で処理を行い、摂食可能なストローを製造した。ここで、「冷風掛け」とは、風速5~6m/sで、20~25℃で行う処理である。また、「回転」とは、クッキー生地を、生地回転式冷却コンベアー(ブルボン株式会社製)により10~12回転/分で回転させる処理である。
【表5】
【0039】
5-1.官能評価
上記冷風回転処理したクッキー生地(第1群~第4群)に対して、以下の評価基準に沿い、官能評価を行った。官能評価は熟練した評価者8名により行った。下記の評価基準について、評価が1点上がる毎にどの程度の違いがあるかの基準を評価者間で統一した(すなわち、加点や減点の幅を各評価者で統一した)。各評点間の基準を共有して統一することにより、実際の各評価者の評点のばらつきが少なくなり、各平均値を比較した評価結果がより客観的に合理的なものとなった。
(i)外観および(ii)手触りの2つの評価項目にて判定を行った。各評価者は「外観」および「手触り」のそれぞれについて0~2点の評点をつけ(最大4点)、その平均評点が「0~1点」の場合には「D」、「1~2点」の場合には「C」、「2~3点」の場合には「B」、「3~4点」の場合には「A」とした。
【0040】
評価基準
(i)外観
0点:油脂溜りが有る
1点:油脂が筋状に残っている
2点:外観上、油脂が均一に分布している
(ii)手触り
0点:油脂が手に付く
1点:表面は滑らかだか手に付く
2点:表面が滑らかで手に付きにくい
【0041】
総合評価基準
D(0点~1点):商品として成立しない品質である
C(1点~2点):品質面が悪く、作業性面からも課題が多い
B(2点~3点):品質面は良いが作業性面から量産化に向いてないか、または作業性は良いが品質面で課題が多い
A(3点~4点):品質面および作業性において共に良好である
【0042】
上記評価基準に沿い、上記第1群~第4群について評価したところ、下記表6の通りの結果となった。
【表6】
【0043】
上記の総合評価結果から、冷風掛けを行わずに、回転処理を行った群(第3群)では、冷風掛けのみを行った群(第2群)および冷風掛け・回転処理を行わなかった群(第4群)に比べて若干は改善するものの、冷風掛けおよび回転処理を行った群(第1群)では、他の3群(第2群~第4群)に比べて顕著に外観や手触りが改善することが分かり、良好な品質や作業性を有する摂食可能な食器(ストロー)が製造できることが分かった。
【0044】
4-2.温風回転処理
上記「3.油脂切り」後の、静止させて油脂を切ったクッキー生地に対して、下記の表7に記載の条件で処理を行い、摂食可能なストローを製造した(冷風掛け処理は行っていない)。ここで、「温風掛け」とは、風速5~8m/sで、55~65℃で行う処理である。また、「回転」とは、クッキー生地を、生地回転式温風掛けコンベアー(ブルボン株式会社製)により10~12回転/分で回転させる処理である。
【表7】
【0045】
5-2.官能評価
上記温風回転処理したクッキー生地(第5群~第8群)に対して、上記「5-1.官能評価」と同じ評価者数で、同様の評価基準および総合評価基準により行った。上記第5群~第8群について評価したところ、下記の表8の通りの結果となった。
【表8】
【0046】
上記の総合評価結果から、冷風掛けの代わりに、温風掛けを行った場合には、回転処理の有無に関わらず、「C」(品質面が悪く、作業性面からも課題が多い)または「D」(商品として成立しない品質である)の総合評価結果となった。このことは、単に「風」があればよいものではなく、油脂を含浸させたクッキー(穀物)生地を冷風下で回転させることが、良好な品質や作業性を有する摂食可能な食器(ストロー)の製造にとって、重要であることが分かった。