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特許7320975レーザ照射装置、レーザ照射方法、及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】レーザ照射装置、レーザ照射方法、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/10 20060101AFI20230728BHJP
   H01L 21/268 20060101ALI20230728BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20230728BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20230728BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20230728BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
H01S3/10 Z
H01L21/268 J
H01L21/20
H01L29/78 627G
H01L29/78 627F
H01S3/00 A
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2019077707
(22)【出願日】2019-04-16
(65)【公開番号】P2020177968
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】521476506
【氏名又は名称】JSWアクティナシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】大森 賢一
(72)【発明者】
【氏名】鄭 石煥
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-186046(JP,A)
【文献】特開2018-037646(JP,A)
【文献】特開2013-211415(JP,A)
【文献】特開2012-015445(JP,A)
【文献】国際公開第2015/092855(WO,A1)
【文献】特開2018-018866(JP,A)
【文献】国際公開第2016/147308(WO,A1)
【文献】特開2018-060927(JP,A)
【文献】特表2017-525144(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0053658(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105206517(CN,A)
【文献】特開2009-031634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 - 4/00
H01L 21/26 - 21/268
H01L 21/322 - 21/326
H01L 21/42 - 21/425
H01L 21/428
H01L 21/477 - 21/479
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスレーザ光を発生させるレーザ光源と、
前記パルスレーザ光を分岐する第1のビームスプリッタを備え、前記第1のビームスプリッタで分岐された2つの光ビームに光路長差に応じた遅延を与えることで前記パルスレーザ光のパルス波形を成形する第1の波形成形部と、
前記第1の波形成形部からの前記パルスレーザ光の偏光状態を変化させる波長板と、
前記波長板からの前記パルスレーザ光を分岐する第2のビームスプリッタを備え、前記第2のビームスプリッタで分岐された2つの光ビームに光路長差に応じた遅延を与えることで前記パルスレーザ光のパルス波形を成形する第2の波形成形部と、を備え、
前記第1のビームスプリッタは、第1の偏光成分を2つに分岐し、かつ第1の偏光成分と直交する第2の偏光成分の光を2つに分岐する非偏光ビームスプリッタであり、
前記波長板は、前記第1の偏光成分と前記第2の偏光成分をそれぞれ90°回転させ、
前記第2のビームスプリッタは、第1の偏光成分を2つに分岐し、かつ第1の偏光成分と直交する第2の偏光成分の光を2つに分岐する非偏光ビームスプリッタであり、
前記第1のビームスプリッタでは、前記第1の偏光成分に対する分岐比と、前記第2の偏光成分に対する分岐比が異なっており、
前記第2のビームスプリッタでは、前記第1の偏光成分に対する分岐比と、前記第2の偏光成分に対する分岐比が異なっているレーザ照射装置。
【請求項2】
前記第1のビームスプリッタが前記パルスレーザ光の一部を反射し、一部を透過することで、前記パルスレーザ光が第1の光ビームと第2の光ビームとに分岐され、
前記第1の波形成形部は、前記第2の光ビームの光路長が前記第1の光ビームの光路長よりも長くなるように、前記第2の光ビームを反射する複数の第1ミラーを備え、
前記第1のビームスプリッタは、前記複数の第1ミラーで反射された前記第2の光ビームを前記第1の光ビームと合成し、
前記第2のビームスプリッタが前記パルスレーザ光の一部を反射し、一部を透過することで、前記パルスレーザ光が第3の光ビームと第4の光ビームとに分岐され、
前記第2の波形成形部は、前記第4の光ビームの光路長が前記第3の光ビームの光路長よりも長くなるように、前記第4の光ビームを反射する複数の第2ミラーを備え、
前記第2のビームスプリッタは、前記複数の第2ミラーで反射された前記第4の光ビームを前記第3の光ビームと合成する請求項1に記載のレーザ照射装置。
【請求項3】
前記第2の波形成形部で成形された後に、対象物に照射されるパルスレーザ光において、P偏光成分とS偏光成分との強度をパルスエネルギーで規格化した場合に、前記P偏光成分と前記S偏光成分の強度の差が12%以下となっている請求項1、又は2に記載のレーザ照射装置。
【請求項4】
前記第2の波形成形部で成形された後に、対象物に照射されるパルスレーザ光をラインビームに変換する手段をさらに備えた請求項1~3のいずれか1項に記載のレーザ照射装置。
【請求項5】
前記第2の波形成形部で成形された後に、対象物に対するパルスレーザ光の照射位置を変えながらパルスレーザ光を非晶質膜に照射していくことで、前記非晶質膜を結晶化して結晶化膜を形成する請求項1~4のいずれか1項に記載のレーザ照射装置。
【請求項6】
第1のパルスレーザ光及び第2のパルスレーザ光を発生させるレーザ光源と、
前記第1のパルスレーザ光を分岐する第1のビームスプリッタを備え、前記第1のビームスプリッタで分岐された2つの光ビームに光路長差に応じた遅延を与えることで前記第1のパルスレーザ光のパルス波形を成形する第1の波形成形部と、
前記第1の波形成形部からの前記第1のパルスレーザ光の偏光状態を変化させる第1の波長板と、
前記レーザ光源からの前記第2のパルスレーザ光の偏光状態を変化させる第2の波長板と、
前記第2の波長板からの前記第2のパルスレーザ光を分岐する第2のビームスプリッタを備え、前記第2のビームスプリッタで分岐された2つの光ビームに光路長差に応じた遅延を与えることで前記第2のパルスレーザ光のパルス波形を成形する第2の波形成形部と、
前記第1の波長板からの第1のパルスレーザ光と、前記第2の波形成形部からの第2のパルスレーザ光とを合成して、合成パルスレーザ光とする合成器と、を備え、
前記第1のビームスプリッタは、第1の偏光成分を2つに分岐し、かつ第1の偏光成分と直交する第2の偏光成分の光を2つに分岐する非偏光ビームスプリッタであり、
前記第1の波長板は、前記第1の偏光成分と前記第2の偏光成分をそれぞれ90°回転させ、
前記第2の波長板は、前記第1の偏光成分と前記第2の偏光成分をそれぞれ90°回転させ、
前記第2のビームスプリッタは、第1の偏光成分を2つに分岐し、かつ第1の偏光成分と直交する第2の偏光成分の光を2つに分岐する非偏光ビームスプリッタであり、
前記第1のビームスプリッタでは、前記第1の偏光成分に対する分岐比と、前記第2の偏光成分に対する分岐比が異なっており、
前記第2のビームスプリッタでは、前記第1の偏光成分に対する分岐比と、前記第2の偏光成分に対する分岐比が異なっているレーザ照射装置。
【請求項7】
前記第1のビームスプリッタが前記第1のパルスレーザ光の一部を反射し、一部を透過することで、前記第1のパルスレーザ光が第1の光ビームと第2の光ビームとに分岐され、
前記第1の波形成形部は、前記第2の光ビームの光路長が前記第1の光ビームの光路長よりも長くなるように、前記第2の光ビームを反射する複数の第1ミラーを備え、
前記第1のビームスプリッタは、前記複数の第1ミラーで反射された前記第2の光ビームを前記第1の光ビームと合成し、
前記第2のビームスプリッタが前記第2のパルスレーザ光の一部を反射し、一部を透過することで、前記第2のパルスレーザ光が第3の光ビームと第4の光ビームとに分岐され、
前記第2の波形成形部は、前記第4の光ビームの光路長が前記第3の光ビームの光路長よりも長くなるように、前記第4の光ビームを反射する複数の第2ミラーを備え、
前記第2のビームスプリッタは、前記複数の第2ミラーで反射された前記第4の光ビームを前記第3の光ビームと合成する請求項6に記載のレーザ照射装置。
【請求項8】
対象物に照射される前記合成パルスレーザ光において、P偏光成分とS偏光成分との強度をパルスエネルギーで規格化した場合に、前記P偏光成分と前記S偏光成分の強度の差が12%以下となっている請求項6、又は7に記載のレーザ照射装置。
【請求項9】
対象物に照射される前記合成パルスレーザ光をラインビームに変換する手段をさらに備えた請求項6~8のいずれか1項に記載のレーザ照射装置。
【請求項10】
対象物に対する前記合成パルスレーザ光の照射位置を変えながら前記合成パルスレーザ光を非晶質膜に照射していくことで、前記非晶質膜を結晶化して結晶化膜を形成する請求項6~9のいずれか1項に記載のレーザ照射装置。
【請求項11】
(A)パルスレーザ光を発生させるステップと
(B)第1のビームスプリッタにより、前記パルスレーザ光を2つの光ビームに分岐するステップと、
(C)前記第1のビームスプリッタで分岐された前記2つの光ビームに光路長差に応じた遅延を与えることで、前記パルスレーザ光のパルス波形を成形するステップと、
(D)(C)ステップの後に、波長板によって前記パルスレーザ光の偏光状態を変化させるステップと、
(E)第2のビームスプリッタにより、前記波長板からの前記パルスレーザ光を2つの光ビームに分岐するステップと、
(F)前記第2のビームスプリッタで分岐された前記2つの光ビームに光路長差に応じた遅延を与えることで、前記パルスレーザ光のパルス波形を成形するステップと、を備え、
前記第1のビームスプリッタは、第1の偏光成分を2つに分岐し、かつ第1の偏光成分と直交する第2の偏光成分の光を2つに分岐する非偏光ビームスプリッタであり、
前記波長板は、前記第1の偏光成分と前記第2の偏光成分をそれぞれ90°回転させ、
前記第2のビームスプリッタは、第1の偏光成分を2つに分岐し、かつ第1の偏光成分と直交する第2の偏光成分の光を2つに分岐する非偏光ビームスプリッタであり、
前記第1のビームスプリッタでは、前記第1の偏光成分に対する分岐比と、前記第2の偏光成分に対する分岐比が異なっており、
前記第2のビームスプリッタでは、前記第1の偏光成分に対する分岐比と、前記第2の偏光成分に対する分岐比が異なっているレーザ照射方法。
【請求項12】
(B)ステップでは、
前記第1のビームスプリッタが前記パルスレーザ光の一部を反射し、一部を透過することで、前記パルスレーザ光が第1の光ビームと第2の光ビームとに分岐され、
(C)ステップでは、
前記第2の光ビームの光路長が前記第1の光ビームの光路長よりも長くなるように、前記第2の光ビームが複数の第1ミラー反射され、
前記第1のビームスプリッタは、前記複数の第1ミラーで反射された前記第2の光ビームを前記第1の光ビームと合成し、
(E)ステップでは、
前記第2のビームスプリッタが前記パルスレーザ光の一部を反射し、一部を透過することで、前記パルスレーザ光が第3の光ビームと第4の光ビームとに分岐され、
(F)ステップでは
前記第4の光ビームの光路長が前記第3の光ビームの光路長よりも長くなるように、前記第4の光ビームが複数の第2ミラーで反射され、
前記第2のビームスプリッタは、前記複数の第2ミラーで反射された前記第4の光ビームを前記第3の光ビームと合成する請求項11に記載のレーザ照射方法。
【請求項13】
(F)ステップでパルス波形が成形された後に、対象物に照射されるパルスレーザ光において、P偏光成分とS偏光成分との強度をパルスエネルギーで規格化した場合に、前記P偏光成分と前記S偏光成分の強度の差が12%以下となっている請求項11、又は12に記載のレーザ照射方法。
【請求項14】
(F)ステップでパルス波形が成形された後に、パルスレーザ光をラインビームに変換して、対象物に照射する請求項11~13のいずれか1項に記載のレーザ照射方法。
【請求項15】
(F)ステップでパルス波形が成形された後に、対象物に対するパルスレーザ光の照射位置を変えながらパルスレーザ光を非晶質膜に照射していくことで、非晶質膜を結晶化して結晶化膜を形成する請求項11~14のいずれか1項に記載のレーザ照射方法。
【請求項16】
(a)第1のパルスレーザ光、及び第2のパルスレーザ光を発生させるステップと
(b)第1のビームスプリッタにより、前記第1のパルスレーザ光を2つの光ビームに分岐するステップと、
(c)前記第1のビームスプリッタで分岐された前記2つの光ビームに光路長差に応じた遅延を与えることで、前記第1のパルスレーザ光のパルス波形を成形するステップと、
(d)(c)ステップの後に、第1の波長板によって前記第1のパルスレーザ光の偏光状態を変化させるステップと、
(e)第2の波長板により第2のパルスレーザ光の偏光状態を変化させるステップと、
(f)(e)ステップの後に、第2のビームスプリッタにより、前記第2のパルスレーザ光を2つの光ビームに分岐するステップと、
(g)前記第2のビームスプリッタで分岐された前記2つの光ビームに光路長差に応じた遅延を与えることで、前記第2のパルスレーザ光のパルス波形を成形するステップと、
(h)前記パルス波形が成形された第1及び第2のパルスレーザ光を合成して、合成パルスレーザ光とするステップと、を備え、
前記第1のビームスプリッタは、第1の偏光成分を2つに分岐し、かつ第1の偏光成分と直交する第2の偏光成分の光を2つに分岐する非偏光ビームスプリッタであり、
前記第1の波長板は、前記第1の偏光成分と前記第2の偏光成分をそれぞれ90°回転させ、
前記第2の波長板は、前記第1の偏光成分と前記第2の偏光成分をそれぞれ90°回転させ、
前記第2のビームスプリッタは、第1の偏光成分を2つに分岐し、かつ第1の偏光成分と直交する第2の偏光成分の光を2つに分岐する非偏光ビームスプリッタであり、
前記第1のビームスプリッタでは、前記第1の偏光成分に対する分岐比と、前記第2の偏光成分に対する分岐比が異なっており、
前記第2のビームスプリッタでは、前記第1の偏光成分に対する分岐比と、前記第2の偏光成分に対する分岐比が異なっているレーザ照射方法。
【請求項17】
(b)ステップでは、
前記第1のビームスプリッタが前記第1のパルスレーザ光の一部を反射し、一部を透過することで、前記第1のパルスレーザ光が第1の光ビームと第2の光ビームとに分岐され、
(c)ステップでは、
前記第2の光ビームの光路長が前記第1の光ビームの光路長よりも長くなるように、前記第2の光ビームが複数の第1ミラーで反射され、
前記第1のビームスプリッタは、前記複数の第1ミラーで反射された前記第2の光ビームを前記第1の光ビームと合成し、
(f)ステップでは、
前記第2のビームスプリッタが前記第2のパルスレーザ光の一部を反射し、一部を透過することで、前記第2のパルスレーザ光が第3の光ビームと第4の光ビームとに分岐され、
(g)ステップでは、
前記第4の光ビームの光路長が前記第3の光ビームの光路長よりも長くなるように、前記第4の光ビームが複数の第2ミラーで反射され、
前記第2のビームスプリッタは、前記複数の第2ミラーで反射された前記第4の光ビームを前記第3の光ビームと合成する請求項16に記載のレーザ照射方法。
【請求項18】
対象物に照射される前記合成パルスレーザ光において、P偏光成分とS偏光成分との強度をパルスエネルギーで規格化した場合に、前記P偏光成分と前記S偏光成分の強度の差が12%以下となっている請求項16、又は17に記載のレーザ照射方法。
【請求項19】
前記合成パルスレーザ光をラインビームに変換して、対象物に照射する請求項16~18のいずれか1項に記載のレーザ照射方法。
【請求項20】
対象物に対する前記合成パルスレーザ光の照射位置を変えながら前記合成パルスレーザ光を非晶質膜に照射していくことで、非晶質膜を結晶化して結晶化膜を形成する請求項16~19のいずれか1項に記載のレーザ照射方法。
【請求項21】
(S1)基板上に非晶質膜を形成するステップと、
(S2)前記非晶質膜を結晶化して結晶化膜を形成するように、パルスレーザ光を前記非晶質膜に照射するステップと、を備えた半導体装置の製造方法であって、
(S2)のステップは、
(SA)パルスレーザ光を発生させるステップと
(SB)第1のビームスプリッタにより、前記パルスレーザ光を2つの光ビームに分岐するステップと、
(SC)前記第1のビームスプリッタで分岐された前記2つの光ビームに光路長差に応じた遅延を与えることで、前記パルスレーザ光のパルス波形を成形するステップと、
(SD)(SC)ステップの後に、波長板によって前記パルスレーザ光の偏光状態を変化させるステップと、
(SE)第2のビームスプリッタにより、前記波長板からの前記パルスレーザ光を2つの光ビームに分岐するステップと、
(SF)前記第2のビームスプリッタで分岐された前記2つの光ビームに光路長差に応じた遅延を与えることで、前記パルスレーザ光のパルス波形を成形するステップと、を備え、
前記第1のビームスプリッタは、第1の偏光成分を2つに分岐し、かつ第1の偏光成分と直交する第2の偏光成分の光を2つに分岐する非偏光ビームスプリッタであり、
前記波長板は、前記第1の偏光成分と前記第2の偏光成分をそれぞれ90°回転させ、
前記第2のビームスプリッタは、第1の偏光成分を2つに分岐し、かつ第1の偏光成分と直交する第2の偏光成分の光を2つに分岐する非偏光ビームスプリッタであり、
前記第1のビームスプリッタでは、前記第1の偏光成分に対する分岐比と、前記第2の偏光成分に対する分岐比が異なっており、
前記第2のビームスプリッタでは、前記第1の偏光成分に対する分岐比と、前記第2の偏光成分に対する分岐比が異なっている半導体装置の製造方法。
【請求項22】
(SB)ステップでは、
前記第1のビームスプリッタが前記パルスレーザ光の一部を反射し、一部を透過することで、前記パルスレーザ光が第1の光ビームと第2の光ビームとに分岐され、
(SC)ステップでは、
前記第2の光ビームの光路長が前記第1の光ビームの光路長よりも長くなるように、前記第2の光ビームが複数の第1ミラー反射され、
前記第1のビームスプリッタは、前記複数の第1ミラーで反射された前記第2の光ビームを前記第1の光ビームと合成し、
(SE)ステップでは、
前記第2のビームスプリッタが前記パルスレーザ光の一部を反射し、一部を透過することで、前記パルスレーザ光が第3の光ビームと第4の光ビームとに分岐され、
(SF)ステップでは
前記第4の光ビームの光路長が前記第3の光ビームの光路長よりも長くなるように、前記第4の光ビームが複数の第2ミラーで反射され、
前記第2のビームスプリッタは、前記複数の第2ミラーで反射された前記第4の光ビームを前記第3の光ビームと合成する請求項21に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項23】
(S2)ステップで前記非晶質膜に照射されるパルスレーザ光において、P偏光成分とS偏光成分との強度をパルスエネルギーで規格化した場合に、前記P偏光成分と前記S偏光成分の強度の差が12%以下となっている請求項21、又は22に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項24】
(S2)ステップでは、パルスレーザ光をラインビームに変換して、前記非晶質膜に照射する請求項21~23のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項25】
(S2)ステップでは、対象物に対するパルスレーザ光の照射位置を変えながらパルスレーザ光を前記非晶質膜に照射していくことで、前記非晶質膜を結晶化して前記結晶化膜を形成する請求項21~24のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項26】
(S1)基板上に非晶質膜を形成するステップと、
(S2)前記非晶質膜を結晶化して結晶化膜を形成するように、パルスレーザ光を前記非晶質膜に照射するステップと、を備えた半導体装置の製造方法であって、
(S2)ステップは、
(sa)第1のパルスレーザ光、及び第2のパルスレーザ光を発生させるステップと
(sb)第1のビームスプリッタにより、前記第1のパルスレーザ光を2つの光ビームに分岐するステップと、
(sc)前記第1のビームスプリッタで分岐された前記2つの光ビームに光路長差に応じた遅延を与えることで、前記第1のパルスレーザ光のパルス波形を成形するステップと、
(sd)(sc)ステップの後に、第1の波長板によって前記第1のパルスレーザ光の偏光状態を変化させるステップと、
(se)第2の波長板により第2のパルスレーザ光の偏光状態を変化させるステップと、
(sf)(se)ステップの後に、第2のビームスプリッタにより、前記第2のパルスレーザ光を2つの光ビームに分岐するステップと、
(sg)前記第2のビームスプリッタで分岐された前記2つの光ビームに光路長差に応じた遅延を与えることで、前記第2のパルスレーザ光のパルス波形を成形するステップと、
(sh)前記パルス波形が成形された第1及び第2のパルスレーザ光を合成して、合成パルスレーザ光とするステップと、を備え、
前記第1のビームスプリッタは、第1の偏光成分を2つに分岐し、かつ第1の偏光成分と直交する第2の偏光成分の光を2つに分岐する非偏光ビームスプリッタであり、
前記第1の波長板は、前記第1の偏光成分と前記第2の偏光成分をそれぞれ90°回転させ、
前記第2の波長板は、前記第1の偏光成分と前記第2の偏光成分をそれぞれ90°回転させ、
前記第2のビームスプリッタは、第1の偏光成分を2つに分岐し、かつ第1の偏光成分と直交する第2の偏光成分の光を2つに分岐する非偏光ビームスプリッタであり、
前記第1のビームスプリッタでは、前記第1の偏光成分に対する分岐比と、前記第2の偏光成分に対する分岐比が異なっており、
前記第2のビームスプリッタでは、前記第1の偏光成分に対する分岐比と、前記第2の偏光成分に対する分岐比が異なっている半導体装置の製造方法。
【請求項27】
(sb)ステップでは、
前記第1のビームスプリッタが前記第1のパルスレーザ光の一部を反射し、一部を透過することで、前記第1のパルスレーザ光が第1の光ビームと第2の光ビームとに分岐され、
(sc)ステップでは、
前記第2の光ビームの光路長が前記第1の光ビームの光路長よりも長くなるように、前記第2の光ビームが複数の第1ミラーで反射され、
前記第1のビームスプリッタは、前記複数の第1ミラーで反射された前記第2の光ビームを前記第1の光ビームと合成し、
(sf)ステップでは、
前記第2のビームスプリッタが前記第2のパルスレーザ光の一部を反射し、一部を透過することで、前記第2のパルスレーザ光が第3の光ビームと第4の光ビームとに分岐され、
(sg)ステップでは、
前記第4の光ビームの光路長が前記第3の光ビームの光路長よりも長くなるように、前記第4の光ビームが複数の第2ミラーで反射され、
前記第2のビームスプリッタは、前記複数の第2ミラーで反射された前記第4の光ビームを前記第3の光ビームと合成する請求項26に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項28】
前記非晶質膜に照射される前記合成パルスレーザ光において、P偏光成分とS偏光成分との強度をパルスエネルギーで規格化した場合に、前記P偏光成分と前記S偏光成分の強度の差が12%以下となっている請求項26、又は27に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項29】
前記合成パルスレーザ光をラインビームに変換して、前記非晶質膜に照射する請求項26~28のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項30】
(S2)ステップでは、前記基板に対する前記合成パルスレーザ光の照射位置を変えながら前記合成パルスレーザ光を前記非晶質膜に照射していくことで、前記非晶質膜を結晶化して前記結晶化膜を形成する請求項26~29のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ照射装置、レーザ照射方法、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多結晶シリコン薄膜を形成するためのレーザアニール装置が開示されている。特許文献1の図2には、レーザ光パルスの波形を整形する波形整形装置が示されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-15545公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなレーザ照射装置では、レーザ光の照射ムラをより低減することが望まれる。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態によれば、レーザ照射装置は、パルスレーザ光を分岐する第1のビームスプリッタを備え、前記第1のビームスプリッタで分岐された2つの光ビームに光路長差に応じた遅延を与えることで前記パルスレーザ光のパルス波形を成形する第1の波形成形部と、前記第1の波形成形部からの前記パルスレーザ光の偏光状態を変化させる波長板と、前記波長板からの前記パルスレーザ光を分岐する第2のビームスプリッタを備え、前記第2のビームスプリッタで分岐された2つの光ビームに光路長差に応じた遅延を与えることで前記パルスレーザ光のパルス波形を成形する第2の波形成形部と、を備えている。
【0007】
一実施の形態によれば、レーザ照射装置は、第1のパルスレーザ光を分岐する第1のビームスプリッタを備え、前記第1のビームスプリッタで分岐された2つの光ビームに光路長差に応じた遅延を与えることで前記第1のパルスレーザ光のパルス波形を成形する第1の波形成形部と、前記第1の波形成形部からの前記第1のパルスレーザ光の偏光状態を変化させる第1の波長板と、前記第2のパルスレーザ光の偏光状態を変化させる第2の波長板と、前記第2の波長板からの前記第2のパルスレーザ光を分岐する第2のビームスプリッタを備え、前記第2のビームスプリッタで分岐された2つの光ビームに光路長差に応じた遅延を与えることで前記第2のパルスレーザ光のパルス波形を成形する第2の波形成形部と、前記第1の波長板からの第1のパルスレーザ光と、前記第2の波形成形部からの第2のパルスレーザ光とを合成する合成器と、を備えている。
【0008】
一実施の形態によれば、レーザ照射装置は、(B)第1のビームスプリッタにより、前記パルスレーザ光を2つの光ビームに分岐するステップと、(C)前記第1のビームスプリッタで分岐された前記2つの光ビームに光路長差に応じた遅延を与えることで、前記パルスレーザ光のパルス波形を成形するステップと、(D)(C)ステップの後に、波長板によって前記パルスレーザ光の偏光状態を変化させるステップと、(E)第2のビームスプリッタにより、前記波長板からの前記パルスレーザ光を2つの光ビームに分岐するステップと、(F)前記第2のビームスプリッタで分岐された前記2つの光ビームに光路長差に応じた遅延を与えることで、前記パルスレーザ光のパルス波形を成形するステップと、を備えている。
【0009】
一実施の形態によれば、レーザ照射方法は、(b)第1のビームスプリッタにより、前記第1のパルスレーザ光を2つの光ビームに分岐するステップと、(c)前記第1のビームスプリッタで分岐された前記2つの光ビームに光路長差に応じた遅延を与えることで、前記第1のパルスレーザ光のパルス波形を成形するステップと、(d)(c)ステップの後に、第1の波長板によって前記第1のパルスレーザ光の偏光状態を変化させるステップと、(e)第2の波長板により第2のパルスレーザ光の偏光状態を変化させるステップと、(f)(e)ステップの後に、第2のビームスプリッタにより、前記第2のパルスレーザ光を2つの光ビームに分岐するステップと、(g)前記第2のビームスプリッタで分岐された前記2つの光ビームに光路長差に応じた遅延を与えることで、前記第2のパルスレーザ光のパルス波形を成形するステップと、を備えている。
【0010】
一実施の形態によれば、半導体装置の製造方法は、(S2)前記非晶質膜を結晶化して結晶化膜を形成するように、パルスレーザ光を前記非晶質膜に照射するステップと、を備えた半導体装置の製造方法であって、(S2)のステップは、(SC)前記第1のビームスプリッタで分岐された前記2つの光ビームに光路長差に応じた遅延を与えることで、前記パルスレーザ光のパルス波形を成形するステップと、(SD)(SC)ステップの後に、波長板によって前記パルスレーザ光の偏光状態を変化させるステップと、(SF)前記第2のビームスプリッタで分岐された前記2つの光ビームに光路長差に応じた遅延を与えることで、前記パルスレーザ光のパルス波形を成形するステップと、を備えている。
【0011】
一実施の形態によれば、半導体装置の製造方法は、(S2)前記非晶質膜を結晶化して結晶化膜を形成するように、パルスレーザ光を前記非晶質膜に照射するステップと、を備えた半導体装置の製造方法であって、(S2)ステップは、(sc)前記第1のビームスプリッタで分岐された前記2つの光ビームに光路長差に応じた遅延を与えることで、前記第1のパルスレーザ光のパルス波形を成形するステップと、(sd)(sc)ステップの後に、第1の波長板によって前記第1のパルスレーザ光の偏光状態を変化させるステップと、(se)第2の波長板により第2のパルスレーザ光の偏光状態を変化させるステップと、(sg)前記第2のビームスプリッタで分岐された前記2つの光ビームに光路長差に応じた遅延を与えることで、前記第2のパルスレーザ光のパルス波形を成形するステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0012】
前記一実施の形態によれば、照射ムラを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態にかかるレーザアニール装置の光学系を示す図である。
図2】実施の形態1にかかる波形成形装置の光学系を示す図である。
図3】P偏光成分とS偏光成分のパルス波形を示す図である。
図4】P偏光成分とS偏光成分のパルス波形を示すグラフである。
図5】照射エネルギー密度を変えて、レーザ光の照射ムラを評価した評価結果を示すグラフである。
図6】実施の形態2にかかる波形成形装置の光学系を示す図である。
図7】有機ELディスプレイの構成を簡略化して示す断面図である。
図8】本実施の形態にかかる半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図9】本実施の形態にかかる半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図10】本実施の形態にかかる半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図11】本実施の形態にかかる半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図12】本実施の形態にかかる半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図13】本実施の形態にかかる半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図14】本実施の形態にかかる半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図15】本実施の形態にかかる半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
本実施の形態にかかるレーザ照射装置は、例えば、低温ポリシリコン(LTPS:Low Temperature Poly-Silicon)膜を形成するエキシマレーザアニール(ELA:Excimer laser Anneal)装置である。以下、図面を参照して本実施の形態にかかるレーザ照射装置、レーザ照射方法、及び製造方法について説明する。
【0015】
(ELA装置の光学系)
図1を用いて、本実施の形態にかかるELA装置1の構成について説明する。図1は、ELA装置1の光学系を模式的に示す図である。ELA装置1は、レーザ光L2を基板100上に形成されたシリコン膜101に照射する。これにより、非晶質のシリコン膜(アモルファスシリコン膜:a-Si膜)101を多結晶のシリコン膜(ポリシリコン膜:p-Si膜)101に変換することができる。基板100は、例えば、ガラス基板などの透明基板である。
【0016】
なお、図1では説明の明確化のため、XYZ三次元直交座標系が示されている。Z方向は鉛直方向となり、基板100に垂直な方向である。XY平面は、基板100のシリコン膜101が形成された面と平行な平面である。X方向は、矩形状の基板100の長手方向となり、Y方向は基板100の短手方向となる。また、ELA装置1では、ステージなどの搬送機構(不図示)により基板100を+X方向に搬送しながら、シリコン膜101にレーザ光L2が照射される。なお、図1では、シリコン膜101において、レーザ光L2の照射前のシリコン膜101をアモルファスシリコン膜101aと示し、レーザ光L2の照射後のシリコン膜101はポリシリコン膜101bと示している。
【0017】
ELA装置1は、アニール光学系10を備えている。アニール光学系10は、アモルファスシリコン膜101aを結晶化するためのレーザ光L2をシリコン膜101に照射するための光学系である。
【0018】
具体的には、アニール光学系10は、レーザ光源11、ミラー12、プロジェクションレンズ13、及び波形成形装置20を備えている。
【0019】
アニール光学系10は、基板100の上側(+Z側)に配置されている。レーザ光源11はパルスレーザ光源であり、パルスレーザ光を発生させる。レーザ光源11は、例えば、中心波長308nmのエキシマレーザ光を放出するエキシマレーザ光源である。また、レーザ光源11はパルス状のレーザ光L1を放出する。レーザ光源11はレーザ光L1を波形成形装置20に向けて出射する。
【0020】
レーザ光L1は、波形成形装置20に入射する。波形成形装置20は、時間軸上において、パルス波形を成形する。より具体的には、波形成形装置20は、レーザ光L1のパルス幅を伸ばす。波形成形装置20の構成については後述する。波形成形装置20で成形されたレーザ光L1をレーザ光L2とする。波形成形装置20からのレーザ光L2はミラー12に入射する。
【0021】
基板100の上には、ミラー12、及びプロジェクションレンズ13が配置されている。ミラー12は、例えば、波長に応じて選択的に光を透過するダイクロイックミラーである。ミラー12は、レーザ光L2を反射する。
【0022】
レーザ光L2はミラー12で反射して、プロジェクションレンズ13に入射する。プロジェクションレンズ13は、レーザ光L2を基板100上、すなわち、シリコン膜101に投射するための複数のレンズを有している。
【0023】
プロジェクションレンズ13はレーザ光L2を基板100上に集光している。レーザ光L2は、基板100上において、ライン状の照射領域を形成している。すなわち、基板100上において、レーザ光L2は、Y方向に沿ったラインビームとなっている。つまり、基板100上に集光されたレーザ光L2は、Y方向を長手方向(長軸方向)とし、X方向を短手方向(短軸方向)とするライン状の照明領域を形成している。また、+X方向に基板100を搬送しながら、レーザ光L1がシリコン膜101に照射される。これにより、Y方向における照射領域の長さを幅とする帯状の領域にレーザ光L2を照射することができる。
【0024】
レーザ光L2の照射によって、アモルファスシリコン膜101aが結晶化する。基板100に対するレーザ光L2の照射位置を変えてながら、レーザ光L2をシリコン膜101に照射する。搬送機構(不図示)により基板100を+X方向に搬送することで、基板100上に均一なポリシリコン膜101bが形成される。もちろん、基板100を搬送する構成ではなく、プロジェクションレンズなどの光学系を移動させてもよい。つまり、基板と光学系とを相対的に移動させることで、レーザ光L2の照射領域が走査されていればよい。
【0025】
(波形成形装置20)
次に、波形成形装置20について、図2を用いて説明する。図2は、波形成形装置20の光学系を示す図である。波形成形装置20は、第1の波形成形部30と、1/2波長板37と、第2の波形成形部40と、を備えている。レーザ光源11側から、第1の波形成形部30と、1/2波長板37、第2の波形成形部40の順番で配置されている。波形成形装置20は、第1の波形成形部30と第2の波形成形部40とが直列に配置された2段構成を備えている。
【0026】
第1の波形成形部30、及び第2の波形成形部40は、パルス幅を伸ばすパルスエキスパンダーである。第1の波形成形部30は、第1のビームスプリッタ31と、ミラー32~35とを備えている。同様に、第2の波形成形部40は、第2のビームスプリッタ41と、ミラー42~45とを備えている。第1の波形成形部30と第2の波形成形部40との間の光路には、1/2波長板37が配置されている。
【0027】
レーザ光源11からのレーザ光L1は、特定の偏光比率を有している。つまり、レーザ光L1は、第1の偏光成分と、第2の偏光成分とを有している。第1の偏光成分と第2の偏光成分は互いに直交する偏光成分である。つまり、光軸と直交する平面において互いに直交する方向を第1の方向及び第2の方向とすると、第1の偏光成分は、第1の方向と平行な直線偏光成分であり、第2の偏光成分は第2の方向と平行な直線偏光成分となる。第1の偏光成分の電場ベクトルは、第1の方向に沿って振動し、第2の偏光成分の電場ベクトルは、第2の方向に沿って振動する。
【0028】
第1の偏光成分は、基板100に対するS偏光成分となり、第2の偏光成分は基板100に対するP偏光成分となる。また、ラインビームの長手方向が第1の方向と平行となり、短手方向が第2の方向となる。したがって、S偏光がラインビームの長手方向と平行になり、P偏光がラインビームの短手方向と平行になる。
【0029】
レーザ光L1では、第2の偏光成分の強度が第1の偏光成分の強度よりも大きくなっている。例えば、レーザ光L1における第1の偏光成分の割合は30%~40%であり、第2の偏光成分の割合は60%~70%となっている。パルス光全体に対する第1の偏光成分の比率を偏光比率とし、(第1の偏光成分)/(第1の偏光成分+第2の偏光成分)で表す。レーザ光L1における偏光比率は、(第1の偏光成分)/(第1の偏光成分+第2の偏光成分)=30%~40%となっている。
【0030】
レーザ光L1はまず、第1の波形成形部30の第1のビームスプリッタ31に入射する。第1のビームスプリッタ31は、例えば、プレート型のビームスプリッタであり、レーザ光L1の光軸に対して45度傾いて配置されている。第1のビームスプリッタ31は、入射光の一部を透過し、一部を反射することで、レーザ光L1を2本の光ビームL11、L12に分岐する。第1のビームスプリッタ31を透過した光ビームを光ビームL11とし、ビームスプリッタで反射した光ビームを光ビームL12とする。第1のビームスプリッタ31は、ハーフミラーであり、無偏光に対する透過率が50%、反射率が50%となっている。第1のビームスプリッタ31は、プレート型に限らず、キューブ型でもよい。
【0031】
第1のビームスプリッタ31は、第1の偏光成分の一部を透過し、一部を反射する。同様に、第1のビームスプリッタ31は、第2の偏光成分の一部を透過し、一部を反射する。第1のビームスプリッタ31は、例えば、非偏光ビームビームスプリッタであり、所定の偏光特性を有している。第1のビームスプリッタ31では、第1の偏光成分に対する分岐比と第2の偏光成分に対する分岐比とが異なっている。なお、ビームスプリッタの分岐比とは、ビームスプリッタにおける反射光と透過光の強度比である。換言すると、第1のビームスプリッタ31において、第1の偏光成分に対する透過率と、第2の偏光成分に対する透過率は異なっている。第1のビームスプリッタ31において、第1の偏光成分に対する反射率と、第2の偏光成分に対する反射率は異なっている。
【0032】
したがって、光ビームL11における偏光比率は、光ビームL12の偏光比率と異なっている。例えば、第1のビームスプリッタ31において、第2の偏光成分に対する反射率は、第1の偏光成分に対する反射率よりも高くなる。第1のビームスプリッタ31において、第2の偏光成分に対する透過率は、第1の偏光成分に対する透過率よりも低くなる。よって、レーザ光L1が第1のビームスプリッタ31で反射すると、反射した光ビームL12では相対的に第2の偏光成分が高くなる。レーザ光L1が第1のビームスプリッタ31を透過すると、光ビームL11では相対的に第1の偏光成分が高くなる。偏光比率は(第1の偏光成分)/(第1偏光比率+第2の偏光成分)で示されるため、光ビームL11の偏光比率は、光ビームL12の偏光比率よりも大きくなる。
【0033】
第1のビームスプリッタ31は、光ビームL12をミラー32に向けて反射する。ミラー32~35は、入射光のほぼ全てを反射する全反射ミラーであり、光軸に対して45°傾いて配置されている。第1のビームスプリッタ31で反射した光ビームL12は、ミラー32、ミラー33、ミラー34、ミラー35の順番で反射される。ミラー35で反射した光ビームL12は、第1のビームスプリッタ31に入射する。第1のビームスプリッタ31は、上記のように所定の偏光特性を有しているため、光ビームL12の一部を透過して、一部を反射する。
【0034】
光ビームL12の一部は、第1のビームスプリッタ31で、1/2波長板37に向けて反射される。第1のビームスプリッタ31で再び反射した光ビームL12は、第1のビームスプリッタ31を透過した光ビームL11と合成される。光軸と直交する平面視において、ミラー35及び第1のビームスプリッタ31で反射した光ビームL12は、第1のビームスプリッタ31を透過した光ビームL11とが重複する。光ビームL12は第1のビームスプリッタ31で再び反射すると、光ビームL11と同軸の光ビームとなる。第1のビームスプリッタ31で合成された光ビームL11、L12をレーザ光L13とする。
【0035】
第1のビームスプリッタ31で分岐された後、ミラー32~ミラー35を介して、再度第1のビームスプリッタ31に入射するまでの光路を遅延パスとする。遅延パスの光路長は、例えば、16nsecに対応する。
【0036】
第1のビームスプリッタ31で合成された2つの光ビームL11、L12には、光路長差に応じた時間遅延が与えられている。つまり、光ビームL12は、ミラー32~ミラー35での反射を繰り返した後に、第1のビームスプリッタ31で光ビームL11と合成されている。光ビームL12は光ビームL11よりも遅延パスの光路長分だけ遅延している。成形後のレーザ光L13のパルス長は、成形前のレーザ光L1のパルス長よりも長くなっている。第1の波形成形部30は、光ビームL11と光ビームL12の光路長差を利用して、レーザ光L13のパルス幅を伸ばしている。
【0037】
さらに、再度第1のビームスプリッタ31に入射した光ビームL12の一部は、第1のビームスプリッタ31を透過する。第1のビームスプリッタ31を透過した光ビームL12は、ミラー32~ミラー35で反射されて、第1のビームスプリッタ31に再度入射する。このように光ビームL12の一部は、遅延パスを繰り返し通過して、光ビームL11と合成される。光ビームL12の一部は、第1のビームスプリッタ31での分岐と遅延パスの通過を複数回繰り返す。光ビームL12は、遅延パスを通過した回数だけ遅延して、光ビームL11と合成される。例えば、遅延パスを1回通過した光ビームL12は光ビームL11に対して16nsec遅延し、2回通過した光ビームL12は光ビームL11に対して32nsec遅延する。また、遅延パスを通過する光ビームL12の光量は、第1のビームスプリッタ31で分岐される毎に減少する。
【0038】
第1の波形成形部30は、レーザ光L1の一部を反射し、一部を透過することで、2本の光ビームL11、L12に分岐する第1のビームスプリッタ31を備えている。第1の波形成形部30は、2つの光ビームL11、L12に光路長差に応じた時間遅延を与えることで、パルス波形を成形する。具体的には、第1のビームスプリッタ31で分岐された光ビームL12が、第1のビームスプリッタ31に再度入射するまでの遅延パスの通過を繰り返すことで、パルス幅を伸ばすことができる。
【0039】
第1の波形成形部30からのレーザ光L13は、1/2波長板37を透過する。1/2波長板37は、直交する偏光成分の間に位相差を生じさせる複屈折素子であり、レーザ光L13の偏光状態を変化させる。1/2波長板37を透過したレーザ光をレーザ光L14とする。光軸と直交する平面において、1/2波長板37の光学軸は、第1の方向に対して45度傾いている。よって、1/2波長板37は、第1及び第2の直線偏光成分をそれぞれ90°回転させる。1/2波長板37は、第1の偏光成分を第2の偏光成分に変換し、第2の偏光成分を第1の偏光成分に変換する。レーザ光L14の偏光比率が逆転する。レーザ光L13における偏光比率が30%であるとすると、レーザ光L14における偏光比率は70%(=100―30)となっている。
【0040】
1/2波長板37を透過したレーザ光L14は、第2の波形成形部40に入射する。第2の波形成形部40は第1の波形成形部30と同様の構成を備えている。第2の波形成形部40の第2のビームスプリッタ41、及びミラー42~ミラー45は、それぞれ第1の波形成形部30の第1のビームスプリッタ31、及びミラー32~ミラー35に対応する。例えば、第2のビームスプリッタ41、ミラー42~ミラー45の配置は、第1のビームスプリッタ31、ミラー32~ミラー35の配置と一致している。第1の波形成形部30における遅延パスと、第2の波形成形部40における遅延パスは、実質的に同じ光路長となっている。ミラー42~ミラー45は、全反射ミラーであり、光軸に対して45度傾いている。
【0041】
第2のビームスプリッタ41は、第1のビームスプリッタ31と同様の非偏光ビームスプリッタを用いることができる。よって、第2のビームスプリッタ41は、レーザ光L14の一部を透過し、一部を反射することで、レーザ光L14を2本の光ビームL15、L16に分岐する。そして、第2のビームスプリッタ41で反射した光ビームL16は、ミラー42~45で反射された後、再度第2のビームスプリッタ41に入射する。第2のビームスプリッタ41は、ミラー45で反射した光ビームL16を第2のビームスプリッタ41を透過した光ビームL15と合成する。2本の光ビームL15、L16には、ミラー42~ミラー45の遅延パスの光路長に応じた遅延時間が与えられる。
【0042】
このように、第2の波形成形部40は、レーザ光L14の一部を反射し、一部を透過することで、2本の光ビームL15、L16に分岐する。第2の波形成形部40の構成は、第1の波形成形部30と同様であるため、詳細な説明を省略する。第2の波形成形部40は、2つの光ビームL15、L16に光路長差に応じた時間遅延を与えることでパルスレーザ光のパルス波形を成形する。具体的には、第2のビームスプリッタ41で分岐された後、第2のビームスプリッタ41に再度入射するまでの遅延パスの通過を繰り返すことで、パルス幅を伸ばすことができる。
【0043】
そして、第2の波形成形部40からのレーザ光が図1のレーザ光L2となり、ミラー12に入射する。レーザ光L2は、プロジェクションレンズ13を介して、シリコン膜101に照射される。
【0044】
第1のビームスプリッタ31と第2のビームスプリッタ41とは、同じ偏光特性を有している。第1のビームスプリッタ31と第2のビームスプリッタ41との透過率、及び反射率の偏光特性は同じになっている。第1のビームスプリッタ31と第2のビームスプリッタ41との間で、第1の偏光成分に対する分岐比が同じとなっている。第1のビームスプリッタ31と第2のビームスプリッタ41との間で、第2の偏光成分に対する分岐比が同じとなっている。例えば、第1の偏光成分に対して、第1のビームスプリッタ31と第2のビームスプリッタ41との透過率は同じとなっている。第2の偏光成分に対して、第1のビームスプリッタ31と第2のビームスプリッタ41との透過率は同じとなっている。さらに、第2の波形成形部40における遅延パスは、第1の波形成形部30における遅延パスと同じ光路長となっている。
【0045】
よって、第2の波形成形部40は、第1の波形成形部30と同様に、パルス幅を伸ばすことできる。さらに、第1の波形成形部30と第2の波形成形部40との間には、1/2波長板37が配置されている。よって、第1の波形成形部30における第1の偏光成分及び第2の偏光成分が第2の波形成形部40では入れ替わる。つまり、第1の波形成形部30における第1の偏光成分が第2の波形成形部40では第2の偏光成分になる。第1の波形成形部30における第2の偏光成分が第2の波形成形部40では第1の偏光成分になる。
【0046】
レーザ光L1のパルス波形が第1の波形成形部30、及び第2の波形成形部40で成形されることで、基板100に対するS偏光成分とP偏光成分には、同様の時間遅延が与えられる。基板100に照射されるレーザ光L2において、S偏光成分のパルス形状と、P偏光成分のパルス形状が同様になる。このように、第1の波形成形部30、1/2波長板37、及び第2の波形成形部40を用いることで、レーザ光L1の直交する偏光成分に対して、同様の時間遅延を与えることができる。
【0047】
図3は、本実施の形態における波形成形装置20により成形されたパルス波形を示すグラフである。図4は、比較例にかかる波形整形装置で成形されたパルス波形を示すグラフである。比較例としては、特許文献1の図2に開示された波形整形装置と用いている。図3図4において、横軸は時間、縦軸なレーザ光強度を示している。また、図3図4において、W1がP偏光成分、つまりラインビームの短手方向と平行な直線偏光成分を示し、W2がS偏光成分、つまりラインビームの長手方向と平行な直線偏光成分を示す。また、図3図4では、パルスエネルギーでS偏光成分とP偏光成分の強度が規格化されている。つまり、1パルスにおけるS偏光成分とP偏光成分の面積が一致するようにS偏光成分とP偏光成分の少なくとも一方に一定の係数を乗じることで、光強度が規格化されている。
【0048】
本実施の形態にかかる波形成形装置20を用いることで、アモルファスシリコン膜101aに照射されるレーザ光の偏光比率の時間変化を小さくすることができる。つまり、パルス波形において、S偏光成分とP偏光成分との偏光比率の変動が小さくなっている。溶融、結晶化のプロセスにおいて、偏光に対する影響を小さくすることができる。これにより、照射ムラを低減することができる。例えば、基板100を移動しながら、パルスレーザ光が基板100に照射されている。よって、照射位置毎に偏光比率が大きく異なってしまうと、結晶状態にムラが生じるおそれがある。これに対して、本実施の形態によれば、結晶状態にムラが生じることを抑制することができる。
【0049】
本実施の形態によれば、S偏光成分とP偏光成分の強度差(以下、偏光比差とする)を常時12%以下にすることができる。例えば、図3では、最大の偏光比差が10%となっている。つまり、図3では、パルスのいずれのタイミングにおいても、S偏光成分とP偏光成分との強度差が10%以下になっている。図4では、最大の偏光比差が22%となっている。このように、レーザパルスにおけるS偏光成分とP偏光成分の強度差である偏光比差を小さくすることができる。
【0050】
図5は、図3、及び図4のパルス波形における照射ムラの評価結果を示す図である。図3のパルス波形での評価結果をP1とし、図4のパルス波形での評価結果をP2としている。図5の横軸は、レーザ光の照射エネルギー密度で有り、縦軸はムラスコアである。ムラスコアは、結晶化されたポリシリコン膜101bのムラを評価した値であり、小さいほどムラが小さいことを示す。図では、レーザ光の照射エネルギー密度を430mJ/cm~455mJ/cm範囲で5mJ/cm刻みに変化させた結果を示している。
【0051】
評価結果P1に示すように、波形成形装置20で成形されたパルスレーザ光を用いることで、440mJ/cm~450mJ/cmからの範囲で低いムラスコアを得ることができる。つまり、プロセス中にパルスレーザ光の照射エネルギーが変動した場合でも、ポリシリコン膜101bの結晶構造のムラを抑制することができる。一方、評価結果P2では、ムラスコアが小さくなる照射エネルギー密度が435mJ/cmしかない。よって、比較例では、照射エネルギー変動に対するプロセスマージンが小さくなってしまう。
【0052】
本実施の形態によれば、溶融、結晶化のプロセスにおいて、照射エネルギー密度に対するマージンを広げることができる。より均一な結晶構造を有するポリシリコン膜を形成することができる。これにより、半導体装置の性能向上に資することができる。
【0053】
また、レーザ光L2において、P偏光成分をS偏光成分よりも高くすることが好ましい。つまり、レーザ光L2における偏光比率を50%以上とすることが好ましい。また、レーザ光L2の照射対象はアモルファスシリコン膜101aを備えた基板100に限られるものではない。つまり、上記の波形成形装置20は、レーザアニール装置以外のレーザ照射装置に適用可能である。
【0054】
実施の形態2.
本実施の形態について、図6を用いて説明する。図6は、波形成形装置20の構成を示すである。なお、ELA装置1の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、適宜説明を省略する。本実施の形態では、第1の波形成形部30と第2の波形成形部40とが並列に配置されている。なお、第1の波形成形部30と第2の波形成形部40の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0055】
本実施の形態では、2台のレーザ光源を用いている。具体的には、レーザ光源11は、第1のレーザ光源11aと、第2のレーザ光源11bとを有している。第1のレーザ光源11aと、第2のレーザ光源11bは、同様のレーザ発振器である。例えば、第1のレーザ光源11aと、第2のレーザ光源11bとは、実施の形態1と同様に、エキシマレーザであり、波長308nmのパルスレーザ光を出射する。第1のレーザ光源11aは発生するレーザ光をレーザ光L100とし、第2のレーザ光源11bが発生するレーザ光をレーザ光L200とする。レーザ光L100とレーザ光L200とは同じ偏光比率を有している。
【0056】
レーザ光L100は、第1の波形成形部30、及び1/2波長板37を介して、合成器70に入射する。第1の波形成形部30、及び1/2波長板37は、実施の形態1の第1の波形成形部30、及び1/2波長板37と同様に配置されている。第1のビームスプリッタ31は、レーザ光L100を2本の光ビームL111、L112に分岐する。第1のビームスプリッタ31で反射した光ビームL112は、ミラー32~35で反射して、第1のビームスプリッタ31に入射する。よって、第1のビームスプリッタ31は、光ビームL112を第1のビームスプリッタ31を透過した光ビームL111と合成する。
【0057】
第1のビームスプリッタ31で合成された光ビームL111、L112をレーザ光L113とする。レーザ光L113は、1/2波長板37を透過する。1/2波長板37を透過したレーザ光L113をレーザ光L114とする。レーザ光L114は、合成器70に入射する。
【0058】
第1の波形成形部30は、2つの光ビームL111、L112に光路長差に応じた時間遅延を与えることで、パルス波形を成形する。具体的には、第1のビームスプリッタ31で分岐された光ビームL112が、第1のビームスプリッタ31に再度入射するまでの遅延パスの通過を繰り返すことで、パルス幅を伸ばすことができる。
【0059】
レーザ光L200は、1/2波長板47、及び第2の波形成形部40を介して、合成器70に入射する。1/2波長板47が第2の波形成形部40の前段に配置されている。図6の1/2波長板47、及び第2の波形成形部40の配置は、図2の1/2波長板37と第2の波形成形部40の配置と同じとなっている。
【0060】
1/2波長板47は、レーザ光L200の偏光状態を変化させる。1/2波長板47を透過したレーザ光L200をレーザ光L210とする。1/2波長板47は、1/2波長板37と同様になっている。すなわち、レーザ光L200の光軸と直交する平面において、1/2波長板47の光学軸は、第1の方向に対して45度傾いている。1/2波長板47は、第1の偏光成分を第2の偏光成分に変換し、第2の偏光成分を第1の偏光成分に変換する。レーザ光L200とレーザ光L210との偏光比率は逆転する。レーザ光L100とレーザ光L200の偏光比率が同じである場合、レーザ光L210の偏光比率={1-(レーザ光L100の偏光比率)}となる。例えば、レーザ光L100における偏光比率が30%であるとすると、レーザ光L210の偏光比率は70%となる。
【0061】
第2のビームスプリッタ41は、レーザ光L210を2本の光ビームL211、L212に分岐する。第2のビームスプリッタ41で反射した光ビームL212は、ミラー42~45で反射して、第2のビームスプリッタ41に入射する。よって、第2のビームスプリッタ41は、光ビームL212を第2のビームスプリッタ41を透過した光ビームL211と合成する。
【0062】
第2のビームスプリッタ41で合成された光ビームL211、L212をレーザ光L213とする。レーザ光L213は、合成器70に入射する。第2の波形成形部40は、2つの光ビームL211、L212に光路長差に応じた時間遅延を与えることで、パルス波形を成形する。具体的には、第2のビームスプリッタ41で分岐された光ビームL212が、第2のビームスプリッタ41に再度入射するまでの遅延パスの通過を繰り返すことで、パルス幅を伸ばすことができる。
【0063】
合成器70は、ビームスプリッタなどを有しており、レーザ光L114とレーザ光L213とを合成する。光軸と直交する平面視において、レーザ光L114とレーザ光L213が重複する。レーザ光L114とレーザ光L213とが空間的に重複して、レーザ光L2となる。具体的には、レーザ光L114とレーザ光L213とが同軸のレーザ光L2となる。合成器70で合成されたレーザ光L2が、ミラー12、及びプロジェクションレンズ13を介して基板100に照射される(図1参照)。なお、プロジェクションレンズ13の前段で合成器70がレーザ光L114、L213を合成するとしたが、レーザ光L114、L213を合成する位置は特に限定されるものではない。つまり、照射対象物である基板100において、レーザ光L114の照射位置とレーザ光L213の照射位置とが重複していればよい。
【0064】
また、第1のレーザ光源11aと、第2のレーザ光源11bは、同期して動作している。つまり、第1の波形成形部30からのレーザ光L114と、第2の波形成形部40からのレーザ光L213が同じタイミングで、合成器70に入射する。基板100に対して、レーザ光L114とレーザ光L213が同時に照射される。
【0065】
このような構成によっても、実施の形態1と同様に、S偏光成分とP偏光成分との偏光比差を低減することができる。よって、均一にレーザ光L2を照射することができ、照射ムラを低減することができる。さらに、2台のレーザ光源11a、11bを用いることで、レーザ光の照射強度を高くすることができる。
【0066】
なお、実施の形態2では2台のレーザ光源11a、11bを用いて、レーザ光L100及びレーザ光L200を発生させたが、1つのレーザ光源11からのレーザ光を分岐することで2つのレーザ光L100、L200を発生させてもよい。この場合、偏光状態によらず一定の分岐比で光ビームを透過又は反射する無偏光ビームスプリッタを用いればよい。例えば、S偏光成分とP偏光成分のいずれにおいても分岐比が50:50となる無偏光ビームスプリッタを用いて、第1及び第2のレーザ光を発生させればよい。このようにすることで、同じ偏光状態の2つのレーザ光を発生させることができる。
【0067】
さらに、3台以上のレーザ光源を用いてもよい。例えば、図2の構成と図6の構成とを組み合わせてもよい。あるいは、図2の構成を2組設けてもよい。また、図6の構成を2組設けてもよい。
【0068】
また、実施の形態1又は実施の形態2では、レーザ光の偏光状態を変化させる波長板として、1/2波長板37、47が用いられているが、1/2波長板以外の波長板を用いてもよい。例えば、1/4波長板を用いて、レーザ光の偏光状態を変化させてもよい。1/2波長板37、及び1/2波長板47を1/4波長板に置き換えることで、右回りの円偏光と、左回りの円偏光とを同様に遅延させることができる。この場合、円偏光を直線偏光に戻すための1/4波長板をレーザ光L2の光路中に配置してもよい。あるいは、右回りの円偏光と左回りの円偏光を含むレーザ光L2を基板100に照射してもよい。
【0069】
さらには、第1のビームスプリッタ31、及び第2のビームスプリッタ41の向きを調整することで、1/2波長板37及び1/2波長板47を省略することも可能である。例えば、図2又は図6において、第1のビームスプリッタ31、及び第2のビームスプリッタ41のいずれか一方を光軸周りに90度回転させる。具体的には、図2では、第1のビームスプリッタ31が図5の紙面内における上下方向にレーザ光L1の一部を反射し、第2のビームスプリッタ41が図5の紙面と直交する方向にレーザ光L14の一部を反射すればよい。このようにすることで、第1及び第2の偏光成分の偏光比率を変えることができる。
【0070】
(有機ELディスプレイ)
上記のポリシリコン膜を有する半導体装置は、有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイ用のTFT(Thin Film transistor)アレイ基板に好適である。すなわち、ポリシリコン膜は、TFTのソース領域、チャネル領域、ドレイン領域を有する半導体層として用いられる。
【0071】
以下、本実施の形態にかかる半導体装置を有機ELディスプレイディスプレイに適用した構成について説明する。図7は、有機ELディスプレイの画素回路を簡略化して示す断面図である。図7に示す有機ELディスプレイ300は、各画素PXにTFTが配置されたアクティブマトリクス型の表示装置である。
【0072】
有機ELディスプレイ300は、基板310、TFT層311、有機層312、カラーフィルタ層313、及び封止基板314を備えている。図17では、封止基板314側が視認側となるトップエミッション方式の有機ELディスプレイを示している。なお、以下の説明は、有機ELディスプレイの一構成例を示すものであり、本実施の形態は、以下に説明される構成に限られるものではない。例えば、本実施の形態にかかる半導体装置は、ボトムエミッション方式の有機ELディスプレイに用いられていてもよい。
【0073】
基板310は、ガラス基板又は金属基板である。基板310の上には、TFT層311が設けられている。TFT層311は、各画素PXに配置されたTFT311aを有している。さらに、TFT層311は、TFT311aに接続される配線(図示を省略)等を有している。TFT311a、及び配線等が画素回路を構成する。
【0074】
TFT層311の上には、有機層312が設けられている。有機層312は、画素PXごとに配置された有機EL発光素子312aを有している。有機EL発光素子312aは、例えば、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、及び陰極が積層された積層構造を有している。トップエミッション方式の場合、陽極は金属電極であり、陰極はITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜である。さらに、有機層312には、画素PX間において、有機EL発光素子312aを分離するための隔壁312bが設けられている。
【0075】
有機層312の上には、カラーフィルタ層313が設けられている。カラーフィルタ層313は、カラー表示を行うためのカラーフィルタ313aが設けられている。すなわち、各画素PXには、R(赤色)、G(緑色)、又はB(青色)に着色された樹脂層がカラーフィルタ313aとして設けられている。有機層312から放出された白色光は、カラーフィルタ313aを通過すると、RGBの色の光に変換される。なお、有機層312に、RGBの各色を発光する有機EL発光素子が設けられている3色方式の場合、カラーフィルタ層313を省略してもよい。
【0076】
カラーフィルタ層313の上には、封止基板314が設けられている。封止基板314は、ガラス基板などの透明基板であり、有機層312の有機EL発光素子の劣化を防ぐために設けられている。
【0077】
有機層312の有機EL発光素子312aに流れる電流は、画素回路に供給される表示信号によって変化する。よって、表示画像に応じた表示信号を各画素PXに供給することで、各画素PXでの発光量を制御することができる。これにより、所望の画像を表示することができる。
【0078】
有機ELディスプレイ等のアクティブマトリクス型表示装置では、1つの画素PXに、1つ以上のTFT(例えば、スイッチング用TFT、又は駆動用TFT)が設けられている。そして、各画素PXのTFTには、ソース領域、チャネル領域、及びドレイン領域を有する半導体層が設けられている。本実施の形態にかかるポリシリコン膜は、TFTの半導体層に好適である。すなわち、上記の製造方法により製造したポリシリコン膜をTFTアレイ基板の半導体層に用いることで、TFT特性の面内ばらつきを抑制することができる。よって、表示特性の優れた表示装置を高い生産性で製造することができる。
【0079】
(半導体装置の製造方法)
本実施の形態にかかるELA装置を用いた半導体装置の製造方法は、TFTアレイ基板の製造に好適である。TFTを有する半導体装置の製造方法について、図7図15を用いて説明する。図8図15は半導体装置の製造工程を示す工程断面図である。以下の説明では、逆スタガード(inverted staggered)型のTFTを有する半導体装置の製造方法について説明する。
【0080】
まず、図8に示すように、ガラス基板401上に、ゲート電極402を形成する。なお、ガラス基板401は、上記した基板100に相当する。ゲート電極402は、例えば、アルミニウムなどを含む金属薄膜を用いることができる。ガラス基板401上に、スパッタ法や蒸着法により金属薄膜を成膜する。そして、金属薄膜をフォトリソグラフィーにより、パターニングすることで、ゲート電極402が形成される。フォトリソグラフィー法では、レジスト塗布、露光、現像、エッチング、レジスト剥離等の処理が行われる。なお、ゲート電極402のパターニングと同工程で、各種の配線等を形成してもよい。
【0081】
次に、図9に示すように、ゲート電極402の上に、ゲート絶縁膜403を形成する。ゲート絶縁膜403は、ゲート電極402を覆うように形成される。そして、図10に示すように、ゲート絶縁膜403の上に、アモルファスシリコン膜404を形成する。アモルファスシリコン膜404は、ゲート絶縁膜403を介して、ゲート電極402と重複するように配置されている。
【0082】
ゲート絶縁膜403は、窒化シリコン膜(SiN)、酸化シリコン膜(SiO膜)、又はこれらの積層膜等などである。具体的には、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、ゲート絶縁膜403とアモルファスシリコン膜404とを連続成膜する。
【0083】
そして、アモルファスシリコン膜404にレーザ光L1を照射することで、図11に示すように、ポリシリコン膜405を形成する。すなわち、図1等で示したELA装置1によって、アモルファスシリコン膜404を結晶化する。これにより、シリコンが結晶化したポリシリコン膜405がゲート絶縁膜403上に形成される。ポリシリコン膜405は、上記したポリシリコン膜101bに相当する。
【0084】
この時、本実施の形態にかかる検査方法により、ポリシリコン膜405が検査されている。ポリシリコン膜405が所定の基準を満たさない場合、ポリシリコン膜405に再度レーザ光が照射される。このため、ポリシリコン膜405の特性をより均一にすることができる。面内のばらつきを抑制することができるため、表示特性の優れた表示装置を高い生産性で製造することができる。
【0085】
なお、図示を省略するがポリシリコン膜405をフォトリソグラフィー法によりパターニングする。また、イオン注入法などにより、ポリシリコン膜405に不純物を導入してもよい。
【0086】
その後、図12に示すように、ポリシリコン膜405の上に、層間絶縁膜406を形成する。層間絶縁膜406には、ポリシリコン膜405を露出するためのコンタクトホール406aが設けられている。
【0087】
層間絶縁膜406は、窒化シリコン膜(SiN)、酸化シリコン膜(SiO膜)、又はこれらの積層膜等などである。具体的には、CVD法により、層間絶縁膜406を成膜する。そして、フォトリソグラフィー法により、層間絶縁膜406をパターニングすることで、コンタクトホール406aが形成される。
【0088】
次に、図13に示すように、層間絶縁膜406の上に、ソース電極407a、及びドレイン電極407bを形成する。ソース電極407a、及びドレイン電極407bは、コンタクトホール406aを覆うように形成される。すなわち、ソース電極407a、及びドレイン電極407bは、コンタクトホール406a内から層間絶縁膜406の上まで形成される。よって、コンタクトホール406aを介して、ソース電極407a、及びドレイン電極407bは、ポリシリコン膜405と電気的に接続される。
【0089】
これにより、TFT410が形成される。TFT410は、上記したTFT311aに相当する。ポリシリコン膜405において、ゲート電極402と重複する領域がチャネル領域405cとなる。ポリシリコン膜405において、チャネル領域405cよりもソース電極407a側がソース領域405aとなり、ドレイン電極407b側がドレイン領域405bとなる。
【0090】
ソース電極407a、及びドレイン電極407bは、アルミニウムなどを含む金属薄膜により形成されている。層間絶縁膜406上に、スパッタ法や蒸着法により金属薄膜を成膜する。そして、金属薄膜をフォトリソグラフィーにより、パターニングすることで、ソース電極407a、及びドレイン電極407bが形成される。なお、ソース電極407a、及びドレイン電極407bのパターニングと同工程で、各種の配線を形成してもよい。
【0091】
そして、図14に示すように、ソース電極407a、及びドレイン電極407bの上に、平坦化膜408を形成する。平坦化膜408は、ソース電極407a、及びドレイン電極407bを覆うように形成される。さらに、平坦化膜408には、ドレイン電極407bを露出するためのコンタクトホール408aが設けられている。
【0092】
平坦化膜408は、例えば、感光性樹脂膜により形成されている。ソース電極407a、及びドレイン電極407bの上に、感光性樹脂膜を塗布して、露光、現像する。これにより、コンタクトホール408aを有する平坦化膜408をパターニングすることができる。
【0093】
そして、図15に示すように、平坦化膜408の上に、画素電極409を形成する。画素電極409は、コンタクトホール408aを覆うように形成される。すなわち、画素電極409は、コンタクトホール408a内から平坦化膜408の上まで形成される。よって、コンタクトホール408aを介して、画素電極409は、ドレイン電極407bと電気的に接続される。
【0094】
画素電極409は、透明導電膜又はアルミニウムなどを含む金属薄膜により形成される。平坦化膜408の上に、スパッタ法などにより、導電膜(透明導電膜、又は金属薄膜)を成膜する。そして、フォトリソグラフィー法により導電膜をパターニングする。これにより、平坦化膜408の上に画素電極409が形成される。有機ELディスプレイの駆動用TFTの場合、画素電極409の上に、図16で示したような有機EL発光素子312a、カラーフィルタ(CF)313a等が形成される。なお、トップエミッション方式の有機ELディスプレイの場合、画素電極409は、反射率の高いアルミニウムや銀などを含む金属薄膜により形成される。また、ボトムエミッション方式の有機ELディスプレイの場合、画素電極409は、ITOなどの透明導電膜により形成される。
【0095】
以上、逆スタガード(inverted staggered)型のTFTの製造工程を説明したが、本実施の形態にかかる製造方法を逆スタガード(inverted staggered)型のTFTの製造に適用してもよい。もちろん、TFTの製造方法は、有機ELディスプレイ用のTFTの製造に限られるものではなく、LCD(Liquid Crystal Display)用のTFTの製造に適用することもできる。
【0096】
さらに、上記の説明では、本実施の形態にかかるレーザアニール装置が、アモルファスシリコン膜にレーザ光を照射してポリシリコン膜を形成するものとして説明したが、アモルファスシリコン膜にレーザ光を照射してマイクロクリスタルシリコン膜を形成するものであってもよい。さらには、アニールを行うレーザ光はエキシマレーザに限定されるものではない。また、本実施の形態にかかる方法は、シリコン膜以外の薄膜を結晶化するレーザアニール装置に適用することも可能である。すなわち、非晶質膜にレーザ光を照射して、結晶化膜を形成するレーザアニール装置であれば、本実施の形態にかかる方法は適用可能である。本実施の形態にかかるレーザアニール装置によれば、結晶化膜付き基板を適切に検査することができる。
【0097】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 ELA装置
11 レーザ光源
11a 第1のレーザ光源
11b 第2のレーザ光源
12 ミラー
13 プロジェクションレンズ
20 波形成形装置
30 第1の波形成形部
31 第1のビームスプリッタ
32~35 ミラー
37 1/2波長板
40 第2の波形成形部
41 第2のビームスプリッタ
42~45 ミラー
47 1/2波長板
100 基板
101 シリコン膜
101a アモルファスシリコン膜101a
101b ポリシリコン膜101b
300 有機ELディスプレイ
310 基板
311 TFT層
311a TFT
312 有機層
312a 有機EL発光素子
312b 隔壁
313 カラーフィルタ層
313a カラーフィルタ(CF)
314 封止基板
401 ガラス基板
402 ゲート電極
403 ゲート絶縁膜
404 アモルファスシリコン膜
405 ポリシリコン膜
406 層間絶縁膜
407a ソース電極
407b ドレイン電極
408 平坦化膜
409 画素電極
410 TFT
PX 画素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15