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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】生分解性袋体
(51)【国際特許分類】
   B65D 30/02 20060101AFI20230728BHJP
   B65D 33/25 20060101ALI20230728BHJP
   B65D 65/46 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
B65D30/02 BSP
B65D33/25 A ZBP
B65D33/25 BSF
B65D65/46 BRQ
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019099068
(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公開番号】P2020192993
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000147316
【氏名又は名称】株式会社生産日本社
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】野口 ▲隆▼之
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-137461(JP,A)
【文献】特開平06-032369(JP,A)
【文献】特開平08-157002(JP,A)
【文献】国際公開第2008/035494(WO,A1)
【文献】特開平10-129748(JP,A)
【文献】特開2003-276743(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0285773(US,A1)
【文献】特開2013-001400(JP,A)
【文献】登録実用新案第3217566(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/02
B65D 33/25
B65D 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材が二つ折りされた折り返し部と、該折り返し部に対向する縁に設けられた開口部と、前記折り返し部と該折り返し部に対向する縁とを結ぶ第1側縁封止部と、該第1側縁封止部に対向する第2側縁封止部とを有する袋体であって、
前記基材は、生分解性を有する多孔質基材であり、かつ、前記開口部の縁に沿って内表面に設けられた生分解性合成樹脂製の嵌合具を有し、
該嵌合具は、雌基部と雌鉤爪部とを有する雌型テープと、雄基部と雄鉤爪部とを有する雄型テープとを備え、前記雌基部及び前記雄基部はそれぞれ前記基材の内表面に熱接着部によって固定されており、かつ、前記雌基部及び前記雄基部を構成する生分解性樹脂は、前記基材の厚さ方向に20~100%含浸し、
前記第1側縁封止部及び前記第2側縁封止部は、前記基材の内表面間に配置された短冊状の生分解性フィルムを有し、かつ、前記基材及び前記生分解性フィルムの厚さ方向に沿って、前記基材の内表面と前記生分解性フィルムとの熱接着部と、前記生分解性フィルムと前記基材の内表面との熱接着部と、を有し、かつ、前記生分解性フィルムを構成する生分解性樹脂は、前記基材の厚さ方向に50~100%含浸することを特徴とする生分解性袋体。
【請求項2】
前記第1側縁封止部及び前記第2側縁封止部では、前記生分解性フィルムは、前記基材の内表面に重ね合わされて二つ折りで配置されており、
前記第1側縁封止部及び前記第2側縁封止部は、前記基材及び前記生分解性フィルムの厚さ方向に沿って、前記基材の内表面と前記生分解性フィルムの外表面との熱接着部と、前記生分解性フィルムの内表面同士の熱接着部と、前記生分解性フィルムの外表面と前記基材の内表面との熱接着部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の生分解性袋体。
【請求項3】
前記生分解性袋体は、前記開口部の縁を封止する開口封止部を有し、かつ、
前記第1側縁封止部若しくは前記第2側縁封止部のいずれか一方又は両方は、前記開口封止部と前記嵌合具との間の領域に開封用のノッチを有し、
前記開口封止部は、前記基材の内表面間に配置された短冊状の生分解性フィルムを有し、かつ、前記基材及び前記生分解性フィルムの厚さ方向に沿って、前記基材の内表面と前記生分解性フィルムとの熱接着部と、前記生分解性フィルムと前記基材の内表面との熱接着部と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の生分解性袋体。
【請求項4】
前記開口部の縁は、前記基材の内表面同士が非接着状態とされた非接着部を有し、かつ、
前記開口部の縁を構成する2つの前記基材の縁のうちいずれか一方の縁が他方の縁よりも前記折り返し部とは反対側に突出して配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の生分解性袋体。
【請求項5】
前記基材の片面又は両面は、バリア性塗工層を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の生分解性袋体。
【請求項6】
前記基材は、天然紙、生分解性不織布又は生分解性織布であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の生分解性袋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生分解性袋体、特には再封止可能な嵌合具付きの生分解性袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
再封止が可能なチャック(嵌合具とも呼ばれる。)付き袋体としては、様々な形態が提案されている。例えば、大小異なる複数の袋部の開口及び収納物の取り出しを容易とした合成樹脂製ファスナー付きの袋体が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。複数の袋部を一体に形成し、各袋部に分別収納を可能とした合成樹脂製袋体が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。外袋の内部に更に内袋が収納され、各袋に備えられたチャックによって各袋を封止することができるチャック付き二重袋が提案されている(例えば、特許文献3を参照。)。二枚のシートの間に不織布が配置され、二枚のシートの上部にファスナが取り付けられており、二枚のシートと不織布とが溶断によって一体に密着固定されたコンパクトディスク収納用包装容器が提案されている(例えば、特許文献4を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-25794号公報
【文献】特開2005-145536号公報
【文献】特開2012-20463号公報
【文献】特開2010-269825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1~4の袋体は、いずれも合成樹脂製フィルムが用いられているところ、これらの袋体は、使用後廃棄されることが多い。廃棄された後は、埋立処理されることが多いが、袋体に用いられるポリエチレン又はポリプロピレンなどの合成樹脂は、化学的に安定であるため、ほとんど分解せずに残留してしまう問題があった。
【0005】
そこで、土壌中で分解する生分解性のチャック付袋体が求められている。例えば、天然紙と生分解性フィルムとを積層させた基材を用いたチャック付袋体がある。しかし、このようなチャック付袋体では、従来、天然紙と生分解性フィルムとを貼り合わせるために、接着層が用いられていた。この接着層は生分解性を有さないため、該接着層だけは生分解されずに自然界に残留してしまう問題があった。
【0006】
本開示は、生分解性を有さない接着層を用いない、生分解性の基材と生分解性フィルムとを用いた再封止可能な嵌合具付きの生分解性袋体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る生分解性袋体は、基材が二つ折りされた折り返し部と、該折り返し部に対向する縁に設けられた開口部と、前記折り返し部と該折り返し部に対向する縁とを結ぶ第1側縁封止部と、該第1側縁封止部に対向する第2側縁封止部とを有する袋体であって、前記基材は、生分解性を有する多孔質基材であり、かつ、前記開口部の縁に沿って内表面に設けられた生分解性合成樹脂製の嵌合具を有し、該嵌合具は、雌基部と雌鉤爪部とを有する雌型テープと、雄基部と雄鉤爪部とを有する雄型テープとを備え、前記雌基部及び前記雄基部はそれぞれ前記基材の内表面に熱接着部によって固定されており、かつ、前記雌基部及び前記雄基部を構成する生分解性樹脂は、前記基材の厚さ方向に20~100%含浸し、前記第1側縁封止部及び前記第2側縁封止部は、前記基材の内表面間に配置された短冊状の生分解性フィルムを有し、かつ、前記基材及び前記生分解性フィルムの厚さ方向に沿って、前記基材の内表面と前記生分解性フィルムとの熱接着部と、前記生分解性フィルムと前記基材の内表面との熱接着部と、を有し、かつ、前記生分解性フィルムを構成する生分解性樹脂は、前記基材の厚さ方向に50~100%含浸することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る生分解性袋体は、前記第1側縁封止部及び前記第2側縁封止部では、前記生分解性フィルムは、前記基材の内表面に重ね合わされて二つ折りで配置されており、前記第1側縁封止部及び前記第2側縁封止部は、前記基材及び前記生分解性フィルムの厚さ方向に沿って、前記基材の内表面と前記生分解性フィルムの外表面との熱接着部と、前記生分解性フィルムの内表面同士の熱接着部と、前記生分解性フィルムの外表面と前記基材の内表面との熱接着部と、を有することが好ましい。生分解性フィルムを折り返し部までより確実に配置することが容易となる。
【0009】
本発明に係る生分解性袋体では、前記生分解性袋体は、前記開口部の縁を封止する開口封止部を有し、かつ、前記第1側縁封止部若しくは前記第2側縁封止部のいずれか一方又は両方は、前記開口封止部と前記嵌合具との間の領域に開封用のノッチを有し、前記開口封止部は、前記基材の内表面間に配置された短冊状の生分解性フィルムを有し、かつ、前記基材及び前記生分解性フィルムの厚さ方向に沿って、前記基材の内表面と前記生分解性フィルムとの熱接着部と、前記生分解性フィルムと前記基材の内表面との熱接着部と、を有することが好ましい。開口封止部によって、未開封状態を確保することができる。
【0010】
本発明に係る生分解性袋体では、前記開口部の縁は、前記基材の内表面同士が非接着状態とされた非接着部を有し、かつ、前記開口部の縁を構成する2つの前記基材の縁のうちいずれか一方の縁が他方の縁よりも前記折り返し部とは反対側に突出して配置されていることが好ましい。開口部をより容易に開くことができる。
【0011】
本発明に係る生分解性袋体では、前記基材の片面又は両面は、バリア性塗工層を有することが好ましい。内容物の品質低下をより抑制することができる。
【0012】
本発明に係る生分解性袋体では、前記基材は、天然紙、生分解性不織布又は生分解性織布である形態を包含する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、生分解性を有さない接着層を用いない、生分解性の基材と生分解性フィルムとを用いた再封止可能な嵌合具付きの生分解性袋体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る生分解性袋体の一例を示す正面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図1のB-B線断面図の一例である。
図4図1のB-B線断面図の別例である。
図5】開口封止部を有する生分解性袋体の一例を示す正面図である。
図6図5のC-C線断面図である。
図7】開口部の縁の変形例を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0016】
図1は、本実施形態に係る生分解性袋体の第一例を示す正面図である。図2は、図1のA-A線断面図、図3は、図1のB-B線断面図である。本実施形態に係る生分解性袋体1は、図1及び図2に示すように、基材2が二つ折りされた折り返し部4と、折り返し部4に対向する縁に設けられた開口部5と、折り返し部4と折り返し部4に対向する縁とを結ぶ第1側縁封止部6Aと、第1側縁封止部6Aに対向する第2側縁封止部6Bとを有する袋体であって、基材2は、生分解性を有する多孔質基材であり、かつ、開口部5の縁に沿って内表面に設けられた生分解性合成樹脂製の嵌合具8を有し、嵌合具8は、雌基部8A1と雌鉤爪部8A2とを有する雌型テープ8Aと、雄基部8B1と雄鉤爪部8B2とを有する雄型テープ8Bとを備え、雌基部8A1及び雄基部8B1はそれぞれ基材2の内表面に熱接着部H1,H2によって固定されており、第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bは、図3に示すように、基材2の内表面間に配置された短冊状の生分解性フィルム3を有し、かつ、基材2及び生分解性フィルム3の厚さ方向Tに沿って、基材2の内表面と生分解性フィルム3との熱接着部H3と、生分解性フィルム3と基材2の内表面との熱接着部H4と、を有する。
【0017】
生分解性袋体1は、図1に示すように、正面視で四角形状の袋体であることが好ましく、下縁に折り返し部4、左右の側縁にそれぞれ第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6B、上縁に開口部5を有する一重袋である。生分解性袋体1は、図2に示すように、基材2の内表面同士の間の空間S1を有する。空間S1は、開口部5に連通する収容部となる空間であり、開口部5が嵌合具8で再封止可能となっている。生分解性袋体1は、外表面が天然紙、生分解性不織布又は生分解性織布などの基材2で覆われており、遮光性を有するため、お茶、コーヒー、紅茶などの包装袋として好適である。また、生分解性袋体1は、天然紙、生分解性不織布又は生分解性織布などの基材2の持つ自然な風合いを生かして、お菓子、お米又は自然食品などの包装袋としても好適である。
【0018】
基材2は、生分解性を有する多孔質基材である。多孔質基材とは、基材の表面に、基材を構成する繊維などの絡み合いによって生じる細孔又は凹凸を有する基材である。基材2は、シート状、フィルム状又は板状であることが好ましい。本実施形態では、多孔質基材は、天然紙、生分解性不織布又は生分解性織布である形態を包含する。
【0019】
天然紙は、生分解性であれば特に限定されず、和紙又は洋紙を問わないが、例えば、クラフト紙又はパラフィン紙(蝋引き紙)である。
【0020】
生分解性不織布は、生分解性プラスチックを原料とする不織布である。生分解性プラスチックは、例えば、ポリ乳酸又はポリグリコール酸である。また、生分解性プラスチックは、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、変性ポリビニルアルコール、カゼイン又は変性澱粉を成分とするものであってもよい。
【0021】
生分解性織布は、生分解性の繊維を織って作られた織物である。生分解性の繊維は、例えば、綿、絹、麻、モヘヤ、ウール若しくはカシミアなどの天然繊維、アセテート、キュプラ若しくはレーヨンなどの再生繊維、又はこれらのうち2種以上を組合せた繊維である。
【0022】
本実施形態に係る生分解性袋体1では、基材2の片面又は両面は、バリア性塗工層を有することが好ましい。バリア性塗工層によって内容物の品質低下をより抑制することができる。バリア性塗工層は、基材2の内表面だけに設けられる形態、基材2の外表面だけに設けられる形態、又は基材2の内表面及び外表面の両方に設けられる形態であってもよい。バリア性塗工層は、生分解性を有することが好ましい。また、バリア性塗工層を基材2の内表面に設ける場合、バリア性塗工層は熱接着性を有することが好ましい。バリア性塗工層を基材2の外表面に設ける場合、バリア性塗工層は印刷適性を有することが好ましい。生分解性、熱接着性及び印刷適性を有するバリア性塗工層としては、例えば日本製紙株式会社製のシールドプラス(登録商標)が挙げられる。
【0023】
生分解性フィルム3は、生分解性プラスチックからなるフィルムであればよく特に限定されないが、例えば、ポリ乳酸又はポリグリコール酸である。また、生分解性プラスチックは、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、変性ポリビニルアルコール、カゼイン又は変性澱粉を成分とするものであってもよい。
【0024】
生分解性フィルム3の形状は、短冊状である。本明細書において、短冊状とは、第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bの形状に合わせた細長い形状をいう。また、生分解性フィルム3の大きさは、第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bと同じであるか、又は第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bよりも大きくてもよい。
【0025】
嵌合具8は、図2に示すように、開口部5において対向する基材2の一方に固着された雌型テープ8Aと基材2の他方に固着された雄型テープ8Bとを有する。雌型テープ8Aは、基材2に固着される部分である雌基部8A1と雄鉤爪部8B2と係合する部分である雌鉤爪部8A2とを有する。雄型テープ8Bは、基材2に固着される部分である雄基部8B1と雌鉤爪部8A2と係合する部分である雄鉤爪部8B2とを有する。雌鉤爪部8A2及び雄鉤爪部8B2は互いに係脱可能に係合する形状であればよく、図2では一例として雌鉤爪部8A2は断面形状が矢尻状の頭部を有する形状であり、雄鉤爪部8B2は雌鉤爪部8A2の頭部が嵌まるような断面形状が凹形状であってその両側の先端に互いに向き合う鉤が設けられた形状である形態を示したが、本発明はこれに限定されない。
【0026】
嵌合具8の材質は、生分解性であれば特に限定されないが、例えば生分解性樹脂フィルム3の材質として列挙した生分解性プラスチックを用いることができる。
【0027】
雌基部8A1及び雄基部8B1はそれぞれ基材2の内表面に熱接着部H1,H2によって固定されている。熱接着部H1,H2は、基材2の内表面と雌基部8A1又は雄基部8B1とが熱によって接着された部分である。熱接着部H1、H2では、熱によって雌基部8A1及び雄基部8B1の樹脂が溶融又は軟化して基材2に固着(融着)している。このとき、多孔質基材2の表面には基材を構成する繊維などの絡み合いによって生じる細孔又は凹凸があるため、毛管現象によって雌基部8A1及び雄基部8B1を構成する生分解性樹脂の溶融物又は軟化物が基材の表面の細孔に含浸することで、両者はより強固に結合する。本明細書において、「含浸」とは、熱によって溶融又は軟化させた熱可塑性の樹脂素材を非樹脂素材に圧入し硬化させて樹脂素材と非樹脂素材との隙間を埋める技術をいう。すなわち、本実施形態では、樹脂素材(例えば生分解性樹脂)に熱を加え、溶融又は軟化状態にして非樹脂素材(例えば、天然紙、生分解性不織布又は生分解性織布などの多孔質基材)に含浸させ熱シールするものであり、分子結合させるものではない。従来は、熱シールには、一般的に溶融又は軟化する素材同士の熱接着が利用されてきたが、本発明では熱によって溶融又は軟化しない素材に、熱によって溶融又は軟化する素材を含浸させて熱シールする点で異なる。雌基部8A1及び雄基部8B1を構成する生分解性樹脂は、基材の厚さ方向に20~100%含浸することが好ましく、50~90%含浸することがより好ましい。また、雌基部8A1及び雄基部8B1を構成する生分解性樹脂は、基材の厚さ方向に100%を超えて含浸していてもよい。ここで、100%を超えて含浸するとは、雌基部8A1及び雄基部8B1を構成する生分解性樹脂が基材の嵌合具8側とは反対側の表面、すなわち基材の外表面まで染み出るように浸透していることをいう。
【0028】
第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bでは、図3に示すように、基材2の内表面間に短冊状の生分解性フィルム3が配置されている。なお、生分解性フィルム3は、厳密には、嵌合具8部分では基材2の内表面間ではなく、雌雄の鉤爪部8A2,8B2間に配置されており、嵌合具8部分以外の部分では、基材2の内表面間に配置される。
【0029】
第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bは、図3に示すように、基材2及び生分解性フィルム3の厚さ方向Tに沿って、基材2の内表面と生分解性フィルム3との熱接着部H3と、生分解性フィルム3と基材2の内表面との熱接着部H4と、を有する。本明細書において、「基材2及び生分解性フィルム3の厚さ方向Tに沿って」とは、基材2及び生分解性フィルム3の厚さ方向Tに伸びる仮想の同一直線(不図示)上に並んでいることを意味する。なお、図3には代表して第1側縁封止部6Aを示したが、第2側縁封止部6Bも第1側縁封止部6Aと同様の構造を有する。熱接着部H3、H4は、基材2の内表面と生分解性フィルム3とが熱によって接着された部分である。熱接着部H3、H4では、熱によって生分解性フィルム3の樹脂が溶融又は軟化して基材2に固着(融着)している。このとき、多孔質基材2の表面には基材を構成する繊維などの絡み合いによって生じる細孔又は凹凸があるため、毛管現象によって生分解性フィルム3を構成する生分解性樹脂の溶融物又は軟化物が基材の表面の細孔に含浸することで、両者はより強固に結合する。生分解性フィルム3を構成する生分解性樹脂は、基材の厚さ方向に20~100%含浸することが好ましく、50~90%含浸することがより好ましい。また、生分解性フィルム3を構成する生分解性樹脂は、基材の厚さ方向に100%を超えて含浸していてもよい。ここで、100%を超えて含浸するとは、生分解性フィルム3を構成する生分解性樹脂が基材の生分解性フィルム側とは反対側の表面、すなわち基材の外表面まで染み出るように浸透していることをいう。
【0030】
以上のとおり、本実施形態に係る生分解性袋体1では、基材2と嵌合具8とは、雌基部8A1及び雄基部8B1において熱による接着で直接的に固定されており、基材2と生分解性フィルム3とは、第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bにおいて熱による接着で直接的に固定されている。このように、本実施形態に係る生分解性袋体1では、接着剤などの生分解性を有さない材料が用いられていない。その結果、完全生分解性を達成することができる。
【0031】
図4は、図1のB-B線断面図の別例である。本実施形態に係る生分解性袋体1は、第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bでは、生分解性フィルム3は、基材2の内表面に重ね合わされて二つ折りで配置されており、第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bは、基材2及び生分解性フィルム3の厚さ方向Tに沿って、基材2の内表面と生分解性フィルム3の外表面との熱接着部H5と、生分解性フィルム3の内表面同士の熱接着部H6と、生分解性フィルム3の外表面と基材2の内表面との熱接着部H7と、を有していてもよい。図4図3と異なる点は、図3では生分解性フィルム3が折り返し部を有さなかったのに対して、図4では生分解性フィルム3が折り返し部4aを有する点だけである。生分解性フィルム3が折り返し部4aを有することで、生分解性袋体1の製造時に、生分解性フィルム3の折り返し部4aを基材2の折り返し部4に一致させることで、生分解性フィルム3を折り返し部4までより確実に配置することが容易となる。
【0032】
図5は、開口封止部を有する生分解性袋体の一例を示す正面図である。図6は、図5のC-C線断面図である。本実施形態に係る生分解性袋体1では、生分解性袋体1は、開口部5の縁を封止する開口封止部11を有し、かつ、第1側縁封止部6A若しくは第2側縁封止部6Bのいずれか一方又は両方は、開口封止部11と嵌合具8との間の領域に開封用のノッチ12を有し、開口封止部11は、基材2の内表面間に配置された短冊状の生分解性フィルム3を有し、かつ、基材2及び生分解性フィルム3の厚さ方向Tに沿って、基材2の内表面と生分解性フィルム3との熱接着部H8と、生分解性フィルム3と基材2の内表面との熱接着部H9と、を有することが好ましい。
【0033】
ノッチ12は、特に限定されず、例えば、Vノッチ(図5に図示)、Iノッチ(不図示)、又は傷加工などによるダメージ加工であってもよい(不図示)。また、ノッチ12は、図5に示すように第1側縁封止部6Aだけに設けられていてもよいし、第2側縁封止部6Bだけに設けられていてもよいし(不図示)、第1側縁封止部6A及び第2側縁封止部6Bの両方に設けられていてもよい(不図示)。図5及び図6に示す袋体1では、袋体1をノッチ12から嵌合具8に沿って切り開くと、例えば図2に示すように開口部5が形成される。熱接着部H8,H9は、熱接着部H1,H2と同様に、接着剤などを介在せずに熱による接着で直接的に固定されている。開口部5の縁が開口封止部11で封止されることによって、袋体1の未開封状態を確保することができる。
【0034】
図7は、開口部の縁の変形例を示す部分拡大断面図である。本実施形態に係る生分解性袋体1では、開口部5の縁は、基材2の内表面同士が非接着状態とされた非接着部N1を有し、かつ、開口部5の縁を構成する2つの基材2の縁のうちいずれか一方の縁が他方の縁よりも折り返し部4とは反対側に突出して配置されていることが好ましい。非接着部N1は、空間S1に連通する開口部5となる。図7に示すように、開口部5の隣り合う縁が互いに段差をもって配置されることによって、開口部5の縁を指先でずらしやすくなり、開口部5をより容易に開くことができる。
【0035】
本実施形態に係る生分解性袋体1の製造方法は、特に限定されないが、例えば、次の方法で製造してもよい。
【0036】
まず、製袋前の1枚のシート状に開かれた帯状の基材2を用意する。このとき、基材2の長手方向に延在する端部は、製袋後に開口部5(例えば図1及び図2に図示)の縁となる部分であり、基材2の長手方向に延在する両端の開口部5の縁の間の中央部は、製袋後に折り返し部4(例えば図1及び図2に図示)となる部分である。
【0037】
ついで、基材2の開口部5の縁となる部分に沿って生分解性合成樹脂性の嵌合具8を構成する雌型テープ8Aと雄型テープ8B(例えば図2に図示)とを熱接着して熱接着部H1,H2を設ける。ついで、短冊状の生分解性フィルム3を、短冊状の生分解性フィルム3の長手方向が帯状の基材2の長手方向に交差する方向となるように、天然紙の嵌合具8が接着された面上に所定の間隔毎に重ねて配置する。このとき、短冊状の生分解性フィルム3は、基材2の開口部5の縁となる部分のいずれか一方から折り返し部4となる部分にわたって配置するか、又は基材2の一方の開口部5の縁となる部分から、折り返し部4となる部分を跨って、他方の開口部5の縁となる部分にわたって配置してもよい。
【0038】
次に、生分解性フィルム3が基材2に重ねられた状態で生分解性フィルム3が内側になすようにして基材2を二つ折りする。このとき、折り返し部4となる部分に押さえバー(押さえ板)を押し当てて折り返し部4にテンションをかけつつ生分解性フィルム3ごと基材2を折り返すことが好ましい。
【0039】
その後、生分解性フィルム3が配置された部分に側縁封止部6A,6B(例えば図1二図示)を形成する。側縁封止部6A,6Bを形成する工程は、図3に示すように、基材2及び生分解性フィルム3の厚さ方向Tに沿って、基材2の内表面と生分解性フィルムとの熱接着部H3と、生分解性フィルム3と基材2の内表面との熱接着部H4と、を設ける工程であるか、又は図4に示すように、基材2及び生分解性フィルム3の厚さ方向Tに沿って、基材2の内表面と生分解性フィルム3の外表面との熱接着部H5と、生分解性フィルム3の内表面同士の熱接着部H6と、生分解性フィルム3の外表面と基材2の内表面との熱接着部H7と、を設ける工程であってもよい。熱接着部H1~H7を設けるにあたり、熱接着される部分の片面側(製袋時上側)からのみシールバーで加熱してもよいが、基材2の厚さに応じて、熱接着される部分の両面側(製袋時上側と下側)に同時にシールバーで加熱するか、又は熱接着される部分の片面側(製袋時上側)からシールバーで加熱した後、更に他方の面側(製袋時下側)からもシールバーで加熱してもよい。これによって、より安定的に生分解性樹脂を基材に含浸させることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 生分解性袋体
2 基材
3 生分解性フィルム
4 折り返し部
4a 折り返し部
5 開口部
6 側縁封止部
6A 第1側縁封止部
6B 第2側縁封止部
8 嵌合具
8A 雌型テープ
8A1 雌基部
8A2 雌鉤爪部
8B 雄型テープ
8B1 雄基部
8B2 雄鉤爪部
11 開口封止部
12 ノッチ
H1,H2,H3,H4,H5,H6,H7,H8.H9 熱接着部
N1 非接着部
S1 空間
T 厚さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7