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特許7320991酸化安定性に有益な効果を及ぼす潤滑剤組成物およびその分散剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】酸化安定性に有益な効果を及ぼす潤滑剤組成物およびその分散剤
(51)【国際特許分類】
   C10M 141/06 20060101AFI20230728BHJP
   C10M 141/12 20060101ALI20230728BHJP
   C10M 133/16 20060101ALN20230728BHJP
   C10M 129/10 20060101ALN20230728BHJP
   C10M 133/04 20060101ALN20230728BHJP
   C10M 139/00 20060101ALN20230728BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20230728BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20230728BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20230728BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20230728BHJP
【FI】
C10M141/06
C10M141/12
C10M133/16
C10M129/10
C10M133/04
C10M139/00 Z
C10N40:25
C10N30:04
C10N30:10
C10N10:12
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019099071
(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公開番号】P2019210466
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】16/000,362
(32)【優先日】2018-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ランソム
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/170769(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0016515(US,A1)
【文献】国際公開第2014/136973(WO,A1)
【文献】特表2012-504175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤組成物であって、
前記潤滑剤組成物の総重量に基づき、50重量%を超える基油と、
分散剤組成物と、
少なくとも1つの酸化防止剤とを含む潤滑剤組成物:
ここで、前記分散剤組成物は下記i)およびii)からなり、
i) 任意に、ポリイソブテニル基を有する少なくとも1つのポリイソブテニルコハク酸または無水物であって、ポリイソブテニル基が1300以下の数平均分子量を有するポリイソブテニルコハク酸または無水物と、少なくとも1つのポリアミンとの1つ以上の反応生成物からなる第1の分散剤、ここで、第1の分散剤は任意にホウ酸で後処理される、
ii) ポリイソブテニル基を有する少なくとも1つのポリイソブテニルコハク酸または無水物であって、ポリイソブテニル基が1300超の数平均分子量を有するポリイソブテニルコハク酸または無水物と、少なくとも1つのポリアミンとの2つ以上の反応生成物からなる第2の分散剤、
前記少なくとも1つの酸化防止剤は、硫化酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤アミン系酸化防止剤およびモリブデン含有酸化防止剤からなる群から選択され、銅を含まず、かつ下記(i)および(ii)のうち1つを満たし、
(i) フェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤の比が0.3:0.8~0.7:0.8の範囲である、
(ii) フェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤とモリブデン含有酸化防止剤の比が0.5~1.5:0.5~1.0:0.05~0.1である、
さらに、前記潤滑剤組成物は、下記(a)および(b)の比を満たす、
(a) 前記分散剤組成物に対する前記第2の分散剤の重量比が、0.42:1~1:1の範囲である、
(b) 前記分散剤組成物の窒素の重量パーセントに対する前記第2の分散剤により寄与される窒素の重量パーセントの比が、0.40:1~1:1である、
ただし、前記少なくとも1つの酸化防止剤がモリブデン含有酸化防止剤を含まない場合、比(a)は0.66:1~1:1の範囲であり、比(b)は0.62:1から1:1未満の範囲である。
【請求項2】
前記酸化防止剤が、0.5:0.8~0.7:0.8の比で前記フェノール系酸化防止剤と前記アミン系酸化防止剤とを含む、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項3】
前記分散剤組成物中の分散剤それぞれについての前記数平均分子量の合計に対する前記第2の分散剤それぞれについての前記数平均分子量の合計の比が、0.72:1~1:1である、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項4】
前記第2の分散剤が、1300超~2300の数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有するポリイソブテニルコハク酸または無水物から得られる少なくとも1つの分散剤を含む、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項5】
前記第2の分散剤が、前記潤滑剤組成物の総重量に基づき、0.1重量%~10重量%を構成する、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項6】
前記分散剤組成物が、前記潤滑剤組成物の総重量に基づき、0.1重量%~20重量%を構成する、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項7】
バイオディーゼルを燃料とするエンジンを潤滑する方法であって、前記方法が請求項1に記載の潤滑剤組成物を前記エンジンに供給することを含み、前記潤滑剤組成物が、前記エンジンの動作中に前記バイオディーゼルで汚染される、方法。
【請求項8】
前記分散剤組成物の窒素の重量パーセントに対する前記第2の分散剤により寄与される窒素の重量パーセントの比が、0.62:1~1:1である、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項9】
前記分散剤組成物が、前記潤滑剤組成物の総重量に基づき、0.1重量%~20重量%を構成する、請求項8に記載の潤滑剤組成物。
【請求項10】
前記第2の分散剤が、前記潤滑剤組成物の総重量に基づき、0.1重量%~10重量%を構成する、請求項8に記載の潤滑剤組成物。
【請求項11】
バイオディーゼルを燃料とするエンジンを潤滑する方法であって、請求項8に記載の潤滑剤組成物を前記エンジンに供給することを含み、前記潤滑剤組成物が、前記エンジンの動作中に前記バイオディーゼルで汚染される、方法。
【請求項12】
酸化安定性を改善しながら煤煙または汚泥取扱特性およびピストン清浄性を改善または維持するための請求項1に記載の潤滑剤組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、潤滑剤組成物に関し、より具体的には排他的ではないが、酸化安定性を改善しながらエンジン潤滑剤組成物の煤煙または汚泥取扱特性およびピストン清浄性を改善または維持するための添加剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
このセクションは、本開示のよりよい理解を容易にするのに役立ち得る態様を紹介する。したがって、このセクションの記述は、この観点から読まれるべきであり、従来技術にあるものまたは従来技術にないものに関する承認として理解されるべきではない。
【0003】
エンジン油潤滑剤は、典型的には基油および添加剤パッケージからなる。添加剤パッケージは、多くの場合、バルク潤滑剤中に不溶性汚染物質を懸濁させ、エンジン表面を比較的清浄に保持するのを助ける、1つ以上の洗剤および分散剤を含む。分散剤は、典型的な分散剤が金属を含まず、洗剤の有機部分よりも分子量が有意に高いという点で、洗剤と一般に区別される。
【0004】
エンジン油潤滑剤の別の重要な特徴は、酸化安定性であり、これは、例えば、酸化が経時的に粘度の増加をもたらし、汚泥、樹脂、ワニス、および/または硬い堆積物の形成を引き起こし得るためである。したがって、添加剤パッケージは、典型的にはヒドロペルオキシドおよびラジカルなどの高反応性酸化剤の形成を遅らせる傾向がある酸化阻害剤を含み、それにより全体的な酸化速度を低下させる。いったん酸化阻害剤が弱まるかまたは使い果たされると、エンジン油潤滑剤の劣化は、かなり急速に起こり得る。エンジン油潤滑剤の酸化安定性を定量化するために、粘度または酸価の特定の増加が生じるまでの時間を測定することなどのいくつかの方法が使用され得る。
【0005】
典型的に有意量の不飽和脂肪酸エステルを含有するバイオディーゼル燃料の使用は、石油由来のディーゼル燃料のみが使用される場合に示されるものと比較して、エンジン油潤滑剤の挙動を著しく変化させる可能性がある。バイオディーゼル燃料は、典型的には、石油由来のディーゼル燃料よりも揮発性がはるかに低いため、それは、未燃焼の燃料がピストンリングを通過することによってクランクケース内に蓄積する傾向があり、それによりエンジン油潤滑剤を希釈および汚染する。例えば、不飽和脂肪酸エステルは、酸化安定性が比較的低く、クランクケース内にそれらが存在すると、より速い潤滑剤の劣化および増粘を引き起こす可能性があるため、後者は深刻な問題である。バイオディーゼル燃料の使用によって引き起こされる悪影響の程度は、汚染物質の蓄積速度、燃料中のバイオディーゼル濃度、エンジン動作条件、および潤滑剤の化学組成に依存する傾向がある。したがって、バイオディーゼル燃料の使用のこれらおよび考えられる他の悪影響を少なくとも部分的に軽減するエンジン油潤滑剤およびその使用方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
上記のように、本開示は、バイオディーゼルを燃料とするエンジンをこの潤滑剤組成物で潤滑する潤滑剤組成物および方法に関する。本発明は、
潤滑剤組成物の総重量に基づき、50重量%を超える基油と、
分散剤組成物であって、
i)任意に、1300以下である数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有する少なくとも1つのポリイソブテニルコハク酸または無水物と少なくとも1つのポリアミンとの1つ以上の反応生成物を含む第1の分散剤、および
ii)1300を超える数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有する少なくとも1つのポリイソブテニルコハク酸または無水物と少なくとも1つのポリアミンとの1つ以上の反応生成物を含む第2の分散剤を含む、分散剤組成物と、
少なくとも1つの酸化防止剤と、を含む、潤滑剤組成物であり、
以下の比(a)および(b):
(a)分散剤組成物に対する第2の分散剤の重量比は、約0.42:1~1:1の範囲である、
(b)分散剤組成物の窒素の重量パーセントに対する第2の分散剤により寄与される窒素の重量パーセントの比は、約0.40:1~1:1である、のうちの少なくとも1つによってさらに定義され、
ただし、実質的に銅を含まない少なくとも1つの酸化防止剤がモリブデン含有酸化防止剤を含まない場合、代替比(a)は、約0.66:1~1:1の範囲であり、代替比(b)は、0.62:1~1:1の範囲であることを条件とする。
【0007】
一実施形態では、潤滑剤組成物は、
潤滑剤組成物の全重量に基づき、50重量%を超える基油と、
分散剤組成物であって、少なくとも
i)任意に、1300以下である数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有する少なくとも1つのポリイソブテニルコハク酸または無水物と少なくとも1つのポリアミンとの1つ以上の反応生成物を含有する第1の分散剤、および
ii)1300を超える数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有する少なくとも1つのポリイソブテニルコハク酸または無水物と少なくとも1つのポリアミンとの1つ以上の反応生成物を含有する第2の分散剤を含む、分散剤組成物と、
少なくとも1つの無灰酸化防止剤と、を含み、
分散剤組成物の総重量に対する第2の分散剤の重量比は、約0.66:1~1:1の範囲である。潤滑剤組成物は、金属含有酸化防止剤を含まなくてもよい。
【0008】
上記の実施形態では、無灰酸化防止剤は、硫化酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、およびアミン系酸化防止剤のうちの少なくとも1つを含んでもよい。上記の実施形態では、酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤とを約0.3:0.8~約0.8:0.3の比で、またはより好ましくは0.4:0.8~0.8:0.4の比で、またはより好ましくは0.5:0.8~0.8:0.5の比で、またはさらにより好ましくは0.5:0.8~0.7:0.8の比、または最も好ましくは0.5:0.8の比で含んでもよい。上記の実施形態の各々では、無灰酸化防止剤は、実質的に銅を含まなくてもよい。
【0009】
上記の実施形態の各々では、第2の分散剤は、各々が1300を超える数平均分子量を有する2つ以上の分散剤を含有してもよい。
【0010】
上記の実施形態の各々では、潤滑剤組成物は、モリブデン含有化合物をさらに含んでもよい。
【0011】
上記の実施形態の各々では、分散剤組成物の数平均分子量に対する第2の分散剤の数平均分子量の比は、約0.72:1~1:1または0.75:1~1:1であってもよい。上記の実施形態の各々では、第1の分散剤は、1290以下または1250以下である数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有するポリイソブテニルコハク酸または無水物から得られる少なくとも1つの分散剤を含んでもよい。好ましくは、それは、500を超え、より好ましくは900を超え、またはさらには1100である。上記の実施形態の各々では、第2の分散剤は、1320を超える数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有するポリイソブテニルコハク酸または無水物から得られる少なくとも1つの分散剤を含んでもよい。好ましくは、それは、1350を超え、より好ましくは少なくとも1400である。上限は、3500、好ましくは3000であってもよい。一実施形態では、第2の分散剤は、1300超~3500、好ましくは1320~3000または1350~2500の範囲の数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有するポリイソブテニルコハク酸または無水物から得られる少なくとも1つの分散剤を含んでもよい。または、第2の分散剤は、1300超~2300の範囲、特に1400~1600の範囲の数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有するポリイソブテニルコハク酸または無水物から得られる少なくとも1つの分散剤を含んでもよい。
【0012】
上記の実施形態では、第2の分散剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づき、約0.1重量%~約10重量%を構成してもよい。上記の実施形態の各々では、総分散剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づき、約0.1重量%~約20重量%を構成する。
【0013】
別の実施形態では、本開示は、上記の実施形態のいずれかの潤滑剤組成物をエンジンに供給することを含む、バイオディーゼルを燃料とするエンジンを潤滑する方法に関し、潤滑剤組成物は、エンジンの動作中にバイオディーゼルで汚染される。
【0014】
代替の実施形態では、本開示は、
潤滑剤組成物の総重量に基づき、50重量%を超える基油と、
分散剤組成物であって、
i)1300以下である数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有する少なくとも1つのポリイソブテニルコハク酸または無水物と少なくとも1つのポリアミンとの1つ以上の反応生成物を含む第1の分散剤、
ii)1300を超える数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有する少なくとも1つのポリイソブテニルコハク酸または無水物と少なくとも1つのポリアミンとの1つ以上の反応生成物を含む第2の分散剤を含む、分散剤組成物と、
少なくとも1つの酸化防止剤と、を含む、潤滑剤組成物に関し、
分散剤組成物の窒素の重量パーセントに対する第2の分散剤により寄与される窒素の重量パーセントの比は、約0.62:1~1:1または約0.70:1~1:1である。
【0015】
ここで、第1の分散剤は、1290以下または1250以下である数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有するポリイソブテニルコハク酸または無水物から得られる少なくとも1つの分散剤を含んでもよい。好ましくは、それは、500を超え、より好ましくは900を超え、またはさらには1100である。
【0016】
上記の実施形態の各々では、第2の分散剤は、1320を超える数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有するポリイソブテニルコハク酸または無水物から得られる少なくとも1つの分散剤を含んでもよい。好ましくは、それは、1350を超え、より好ましくは少なくとも1400である。上限は、3500、好ましくは3000であってもよい。一実施形態では、第2の分散剤は、1300超~3500、好ましくは1320~3000または1350~2500の範囲の数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有するポリイソブテニルコハク酸または無水物から得られる少なくとも1つの分散剤を含んでもよい。または、第2の分散剤は、1300超~2300の範囲、特に1400~1600の範囲の数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有するポリイソブテニルコハク酸または無水物から得られる少なくとも1つの分散剤を含んでもよい。
【0017】
この実施形態では、少なくとも1つの酸化防止剤は、無灰酸化防止剤であってもよい。潤滑剤組成物は、金属含有酸化防止剤を含まなくてもよい。
【0018】
代替実施形態では、本開示は、
潤滑剤組成物の総重量に基づき、50重量%を超える基油と、実質的に銅を含まない少なくとも1つの酸化防止剤と、
分散剤組成物であって、
i)1300以下である数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有する少なくとも1つのポリイソブテニルコハク酸または無水物と少なくとも1つのポリアミンとの1つ以上の反応生成物を含有する第1の分散剤、および
ii)1300を超える数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有する少なくとも1つのポリイソブテニルコハク酸または無水物と少なくとも1つのポリアミンとの1つ以上の反応生成物を含有する第2の分散剤を含む、分散剤組成物と、を含む、潤滑剤組成物に関し、
分散剤組成物の総重量に対する第2の分散剤の重量比は、約0.42:1~1:1、または0.61:1~1:1、または0.66:1~1:1、またはさらには0.75:1~1:1の範囲である。
【0019】
上記の代替実施形態では、酸化防止剤は、モリブデン含有酸化防止剤を含んでもよく、好ましくは、それは、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、およびモリブデン含有酸化防止剤を約0.5:1:0.1の比で含んでもよい。
【0020】
上記の代替実施形態の各々では、分散剤組成物の数平均分子量に対する第2の分散剤の数平均分子量の比は、約0.5:1~1:1であってもよい。
【0021】
上記の代替実施形態の各々では、第1の分散剤は、1290以下または1250以下である数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有するポリイソブテニルコハク酸または無水物から得られる少なくとも1つの分散剤を含んでもよい。好ましくは、それは、500を超え、より好ましくは900を超え、またはさらには1100である。
【0022】
上記の代替実施形態の各々では、第2の分散剤は、1320を超える数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有するポリイソブテニルコハク酸または無水物から得られる少なくとも1つの分散剤を含んでもよい。好ましくは、それは、1350を超え、より好ましくは少なくとも1400である。上限は、3500、好ましくは3000であってもよい。一実施形態では、第2の分散剤は、1300超~3500、好ましくは1320~3000または1350~2500の範囲の数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有するポリイソブテニルコハク酸または無水物から得られる少なくとも1つの分散剤を含んでもよい。または、第2の分散剤は、1300超~2300の範囲、特に1400~1600の範囲の数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有するポリイソブテニルコハク酸または無水物から得られる少なくとも1つの分散剤を含んでもよい。
【0023】
上記の代替実施形態の各々では、第2の分散剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づき、約0.1重量%~約10重量%を構成してもよい。上記の代替実施形態の各々では、総分散剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づき、約0.1重量%~約20重量%を構成する。
【0024】
さらなる代替実施形態では、本開示は、
潤滑剤組成物の総重量に基づき、50重量%を超える基油と、
実質的に銅を含まない酸化防止剤のうちの少なくとも1つと、
分散剤組成物であって、
i)1300以下である数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有する少なくとも1つのポリイソブテニルコハク酸または無水物と少なくとも1つのポリアミンとの1つ以上の反応生成物を含む第1の分散剤、および
ii)1300を超える数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有する少なくとも1つのポリイソブテニルコハク酸または無水物と少なくとも1つのポリアミンとの1つ以上の反応生成物を含む第2の分散剤を含む、分散剤組成物と、を含む、潤滑剤組成物に関し、
分散剤組成物の窒素の重量パーセントに対する第2の分散剤により寄与される窒素の重量パーセントの比は、約0.40:1~1:1、または約0.62:1~1:1、またはさらには約0.70:1~1:1である。
【0025】
上記の第2の代替実施形態では、酸化防止剤は、モリブデン含有酸化防止剤を含んでもよく、好ましくは、それは、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、およびモリブデン含有酸化防止剤を約0.5:1:0.1の比で含んでもよい。
【0026】
上記の第2の代替実施形態の各々では、分散剤組成物の数平均分子量に対する第2の分散剤の数平均分子量の比は、約0.5:1~1:1であってもよい。
【0027】
上記の代替実施形態の各々では、第1の分散剤は、1290以下または1250以下である数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有するポリイソブテニルコハク酸または無水物から得られる少なくとも1つの分散剤を含んでもよい。好ましくは、それは、500を超え、より好ましくは900を超え、またはさらには1100である。
【0028】
上記の代替実施形態の各々では、第2の分散剤は、1320を超える数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有するポリイソブテニルコハク酸または無水物から得られる少なくとも1つの分散剤を含んでもよい。好ましくは、それは、1350を超え、より好ましくは少なくとも1400である。上限は、3500、好ましくは3000であってもよい。一実施形態では、第2の分散剤は、1300超~3500、好ましくは1320~3000または1350~2500の範囲の数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有するポリイソブテニルコハク酸または無水物から得られる少なくとも1つの分散剤を含んでもよい。または、第2の分散剤は、1300超~2300の範囲、特に1400~1600の範囲の数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有するポリイソブテニルコハク酸または無水物から得られる少なくとも1つの分散剤を含んでもよい。
【0029】
上記の代替実施形態の各々では、第2の分散剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づき、約0.1重量%~約10重量%を構成してもよい。上記の代替実施形態の各々では、総分散剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づき、約0.1重量%~約20重量%を構成する。
【0030】
別の実施形態では、本開示は、バイオディーゼルを燃料とするエンジンを潤滑する方法に関し、方法は、潤滑剤組成物をエンジンに供給することを含み、潤滑剤組成物は、エンジンの動作中にバイオディーゼルで汚染され、潤滑剤組成物は、上記の代替実施形態のうちのいずれかであってもよい。
【0031】
以下の用語の定義は、本明細書で使用される所定の用語の意味を明白にするために提供される。
【0032】
用語「油組成物」、「潤滑組成物(lubrication composition)」、「潤滑油組成物」、「潤滑油」、「潤滑剤組成物」、「潤滑組成物(lubricating composition)」、「完全配合潤滑剤組成物」、「潤滑剤」、「クランクケース油」、「クランクケース潤滑剤」、「エンジン油」、「エンジン潤滑剤」、「モータ油」、および「モータ潤滑剤」は、主要量の基油に加えて少量の添加剤組成物を含む最終潤滑生成物を指す、同義の完全に互換性のある専門用語であるとみなされる。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「添加剤パッケージ」、「添加剤濃縮物」、「添加剤組成物」、「エンジン油添加剤パッケージ」、「エンジン油添加剤濃縮物」、「クランクケース添加剤パッケージ」、「クランクケース添加剤濃縮物」、「モータ油添加剤パッケージ」、「モータ油濃縮物」は、主要量の基油ストック混合物を除外する潤滑油組成物の一部を指す、同義の完全に互換性のある専門用語であるとみなされる。添加剤パッケージは、粘度指数改善剤または流動点降下剤を含んでも含まなくてもよい。
【0034】
「過塩基性」という用語は、存在する金属の量が化学量論的量を超える、スルホン酸塩、カルボン酸塩、サリチル酸塩、および/またはフェネートの金属塩などの金属塩に関する。このような塩は、100%を超える変換レベルを有してもよい(すなわち、酸をその「標準」、「中性」の塩に変換するのに必要な理論的量の金属の100%より多くを含み得る)。しばしばMRと略される「金属比」という表現は、既知の化学反応性および化学量論に従って中性塩中の金属の化学当量に対する過塩基性塩中の金属の全化学当量の比を示すために使用される。標準または中性塩では、金属比は、1であり、過塩基性塩では、MRは、1より大きい。これらは、一般に、過塩基性、高塩基性または超塩基性塩と称され、有機硫黄酸、カルボン酸、サリチル酸塩、および/またはフェノールの塩であり得る。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」は、その通常の意味で使用され、これは当業者に周知である。具体的には、分子の残りに直接結合した炭素原子を有し、主に炭化水素特性を有する基を指す。各ヒドロカルビル基は、独立して、炭化水素置換基、ならびにハロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、酸素、および窒素のうちの1つ以上を含有する置換された炭化水素置換基から選択され、ヒドロカルビル基中の10個の炭素原子ごとに2個以下の非炭化水素置換基が存在する。
【0036】
本明細書で使用される場合、別段明確に述べられない限り、用語「重量パーセント」は、引用される構成成分が組成物全体の重量に対して表す百分率を意味する。
【0037】
本明細書で使用される「可溶性」、「油溶性」、または「分散性」という用語は、化合物または添加剤が可溶性、溶解性、混和性、または油中にあらゆる割合で懸濁可能であることを示し得るが、必ずしもそうではない。しかしながら、前述の用語は、油が使用される環境において意図された効果を発揮するのに十分な程度に、例えば油中に可溶性、懸濁性、溶解性、または安定に分散性であることを意味する。さらに、他の添加剤の追加の組み込みはまた、所望であれば、特定の添加剤のより高いレベルの組み込みを可能にすることができる。
【0038】
本明細書で使用される「TBN」という用語は、例えば、ASTM D2896またはASTM D4739またはDIN 51639-1またはISO 3771の方法によって測定した際に、mgKOH/g単位での総塩基価を示すのに使用される。
【0039】
本明細書で用いられる場合、用語「アルキル」は、約1~約100個の炭素原子の直鎖状、分岐状、環状、及び/または置換飽和鎖部分を指す。
【0040】
本明細書で用いられる場合、用語「アルケニル」は、約3~約10個の炭素原子の直鎖状、分岐状、環状、及び/または置換不飽和鎖部分を指す。
【0041】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロ置換基、ならびに/または窒素、酸素、および硫黄を含むがこれらに限定されないヘテロ原子を含むことができる単環式および多環式の芳香族化合物を指す。
【0042】
本明細書の潤滑剤、成分の組み合わせ、または個々の成分は、様々な種類の内燃エンジンにおける使用に好適であり得る。好適なエンジンタイプには、重負荷ディーゼル、乗用車、軽負荷ディーゼル、中速ディーゼル、ハイブリッドエンジン、または船舶エンジンが含まれ得るが、これらに限定されない。内燃エンジンは、ディーゼル燃料エンジン、ガソリン燃料エンジン、天然ガス燃料エンジン、バイオ燃料エンジン、混合ディーゼル/バイオ燃料-燃料エンジン、混合ガソリン/バイオ燃料-燃料エンジン、アルコール燃料エンジン、混合ガソリン/アルコール燃料エンジン、圧縮天然ガス(CNG)燃料エンジン、またはこれらの混合物であってもよい。ディーゼルエンジンは、圧縮点火エンジンであり得る。ガソリンエンジンは、火花点火エンジンであってもよい。内燃エンジンは、電気またはバッテリ電源と組み合わせて使用されてもよい。このように構成されたエンジンは、一般にハイブリッドエンジンとして知られている。ハイブリッドエンジンは、ガソリン燃料の予混合圧縮着火(HCCI)エンジン、ディーゼルHCCIエンジン、ガソリンの予混合圧縮着火-電気ハイブリッドエンジン、ディーゼル-電気ハイブリッド車、およびガソリン-電気ハイブリッド車であってもよい。内燃エンジンは、2ストローク、4ストローク、またはロータリエンジンであってもよい。好適な内燃エンジンには、船舶ディーゼルエンジン(内陸船舶などの)、航空ピストンエンジン、低負荷ディーゼルエンジン、ならびにオートバイ、自動車、機関車、およびトラックエンジンが含まれる。
【0043】
内燃エンジンは、アルミニウム合金、鉛、スズ、銅、鋳鉄、マグネシウム、セラミック、ステンレス鋼、複合材、および/またはこれらの混合物のうちの1つ以上の成分を含んでもよい。成分は、例えば、ダイヤモンド様カーボンコーティング、潤滑コーティング、リン含有コーティング、モリブデン含有コーティング、グラファイトコーティング、ナノ粒子含有コーティング、および/またはこれらの混合物でコーティングしてもよい。アルミニウム合金は、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、または他のセラミック材料を含み得る。一実施形態では、アルミニウム合金は、ケイ酸アルミニウム表面である。本明細書で使用される場合、「アルミニウム合金」という用語は、「アルミニウム複合体」と同義であり、その詳細な構造にかかわらず、顕微鏡レベルまたはほぼ顕微鏡レベルで混合または反応するアルミニウムおよび他の成分を含む成分または表面を表すことが意図される。これには、アルミニウム以外の金属を有する任意の従来の合金、ならびにセラミック様料のような非金属元素または化合物を有する複合または合金様構造が含まれる。
【0044】
内燃エンジンのための潤滑油組成物は、硫黄、リン、または硫酸灰分(ASTM D874)含有量とは無関係に、あらゆるエンジン潤滑剤に好適であり得る。エンジン油潤滑剤の硫黄含有量は、約1重量%以下、または約0.8重量%以下、または約0.5重量%以下、または約0.3重量%以下、または約0.2重量%以下であってもよい。一実施形態では、硫黄含有量は、約0.001重量%~約0.5重量%、または約0.01重量%~約0.3重量%の範囲であってもよい。リン含有量は、約0.2重量%以下、または約0.1重量%以下、または約0.085重量%以下、または約0.08重量%以下、または約0.06重量%以下、または約0.055重量%以下、または約0.05重量%以下であってもよい。一実施形態では、リン含有量は、約50ppm~約1000ppmまたは約325ppm~約850ppmであり得る。総硫酸灰分含有量は、約2重量%以下、または約1.5重量%以下、または約1.1重量%以下、または約1重量%以下、または約0.8重量%以下、または約0.5重量%以下であり得る。一実施形態では、硫酸灰分含有量は、約0.05重量%~約0.9重量%、または約0.1重量%もしくは約0.2重量%~約0.45重量%であり得る。別の実施形態では、硫黄含有量は約0.4重量%以下であり得、リン含有量は約0.08重量%以下であり得、硫酸灰分は約1重量%以下である。さらに別の実施形態では、硫黄含有量は約0.3重量%以下であり得、リン含有量は約0.05重量%以下であり、硫酸灰分は約0.8重量%以下であり得る。
【0045】
一実施形態では、潤滑油組成物はエンジン油であり、潤滑油組成物は、(i)約0.5重量%以下の硫黄含有量、(ii)約0.1重量%以下のリン含有量、及び(iii)約1.5重量%以下の硫酸灰分含有量を有し得る。
【0046】
一実施形態では、潤滑油組成物は、2ストロークまたは4ストロークの船舶ディーゼル内燃エンジンに好適である。一実施形態では、船舶用ディーゼル燃焼エンジンは、2ストロークエンジンである。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、船舶用エンジンの動力供給に使用される燃料の高硫黄含有量および海洋に適したエンジンオイル(例えば、海洋に適したエンジンオイルでは約40TBN超)に必要な高いTBNを含むがこれらに限定されない、1つ以上の理由のために、2ストロークまたは4ストローク船舶用ディーゼル内燃エンジンに好適でない。
【0047】
いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、約1~約5%の硫黄を含有する燃料などの低硫黄燃料によって動力を供給されるエンジンでの使用に好適である。高速道路車両燃料は約15ppmの硫黄(または約0.0015%の硫黄)を含有する。
【0048】
低速ディーゼルは、典型的に船舶エンジンを指し、中速ディーゼルは、一般に機関車を指し、高速ディーゼルは、典型的に高速道路車両を指す。潤滑油組成物は、これらのタイプのうちの1つのみまたは全てのものに好適であってもよい。
【0049】
さらに、本明細書の潤滑剤は、ILSAC GF-3、GF-4、GF-5、GF-6、PC-11、CF、CF-4、CH-4、CI-4、CJ-4、API SG、SJ、SL、SM、SN、ACEA A1/B1、A2/B2、A3/B3、A3/B4、A5/B5、C1、C2、C3、C4、C5、E4/E6/E7/E9、Euro5/6、Jaso DL-1、Low SAPS、Mid SAPS、などの業界仕様要件、またはDexos(商標)1、Dexos(商標)2、MB-Approval 229.1、229.3、229.5、229.31、229.51、229.52、229.6、229.71、226.5、226.51、228.0/.1、228.2/.3、228.31、228.5、228.51、228.61、VW 501.01、502.00、503.00/503.01、504.00、505.00、505.01、506.00/506.01、507.00、508.00、509.00、508.88、509.99、BMW Longlife-01、Longlife-01 FE、Longlife-04、Longlife-12 FE、Longlife-14 FE+、Longlife-17 FE+、Porsche A40、C30、Peugeot Citroen Automobiles B71 2290、B71 2294、B71 2295、B71 2296、B71 2297、B71 2300、B71 2302、B71 2312、B71 2007、B71 2008、Renault RN0700、RN0710、RN0720、Ford WSS-M2C153-H、WSS-M2C930-A、WSS-M2C945-A、WSS-M2C913A、WSS-M2C913-B、WSS-M2C913-C、WSS-M2C913-D、WSS-M2C948-B、WSS-M2C948-A、GM 6094-M、Chrysler MS-6395、Fiat 9.55535 G1、G2、M2、N1、N2、Z2、S1、S2、S3、S4、T2、DS1、DSX、GH2、GS1、GSX、CR1、Jaguar Land Rover STJLR.03.5003、STJLR.03.5004、STJLR.03.5005、STJLR.03.5006、STJLR.03.5007、STJLR.51.5122などの相手先ブランド名製造者仕様の1つ以上の要件、またはここに記載されてない過去または将来のPCMOもしくはHDDの仕様を満たすために好適であり得る。乗用車用モータ油(PCMO)用途のいくつかの実施形態では、完成した流体中のリンの量は、1000ppm以下、または900ppm以下、または800ppm以下である。
【0050】
他のハードウェアは、開示される潤滑剤と共に使用するのに好適ではない可能性がある。「機能性流体」は、トラクタ油圧作動流体、自動変速機流体を含む動力伝達流体、連続可変トランスミッション流体および手動トランスミッション流体、トラクタ油圧作動流体を含む油圧作動流体、いくつかのギア油、パワーステアリング流体、風力タービン、圧縮機に使用される流体、いくつかの工業用流体、および動力伝達装置構成要素に関連する流体を含むがこれらに限定されない種々の流体を包含する用語である。例えば自動変速機流体のようなこれらの流体の各々の中には、顕著に異なる機能特性の流体を必要とさせる異なる設計を有する様々なトランスミッションのために種々の異なるタイプの流体が存在することに留意すべきである。これは、動力の発生または伝達に使用されない「潤滑流体」という用語とは対照的である。
【0051】
例えば、トラクタ油圧作動流体に関しては、これらの流体は、エンジンを潤滑することを除いて、トラクタ内の全ての潤滑剤用途に使用される汎用製品である。これらの潤滑用途には、ギアボックス、パワーテイクオフおよびクラッチ(複数可)、リアアクスル、リダクションギア、湿式ブレーキ、および油圧アクセサリの潤滑が含まれ得る。
【0052】
機能性流体が自動変速機流体である場合、自動変速機流体は、クラッチ板が動力を伝達するのに十分な摩擦を有していなければならない。しかしながら、流体の摩擦係数は、動作中に流体が加熱されるので温度の影響により低下する傾向がある。トラクタ油圧作動流体または自動変速機流体は、高温で高い摩擦係数を維持することが重要であり、さもなければブレーキシステムまたは自動変速機が故障する可能性がある。これはエンジン油の機能ではない。
【0053】
トラクタ流体、および例えば、スーパートラクタユニバーサルオイル(STUO)またはユニバーサルトラクタトランスミッションオイル(UTTO)は、変速機、差動装置、ファイナルドライブ遊星ギア、湿式ブレーキ、および油圧性能とエンジン油の性能を組み合わせてもよい。UTTOまたはSTUO流体を配合するのに使用される添加剤の多くは官能性が類似しているが、適切に組み込まれていないと有害な影響を及ぼすことがある。例えば、エンジン油に使用される耐摩耗性および極圧添加剤の中には、油圧ポンプの銅成分に対して極めて腐食性のものがあり得る。ガソリンまたはディーゼルエンジンの性能に使用される洗剤および分散剤は、湿式ブレーキ性能に有害であり得る。静粛な湿式ブレーキ鳴きに特有の摩擦調整剤は、エンジン油の性能に必要な熱安定性を欠いている可能性がある。これらの流体の各々は、機能性、トラクタ性、または潤滑性にかかわらず、特定の厳格な製造業者の要件を満たすように設計されている。
【0054】
本開示は、自動車用クランクケース潤滑剤としての使用のために配合された新規の潤滑油ブレンドを提供する。本開示は、2Tおよび/または4Tオートバイ用クランクケース潤滑剤としての使用のために配合された新規の潤滑油ブレンドを提供する。本開示の実施形態は、クランクケース用途に好適であり、かつ以下の特徴:空気混入、アルコール燃料適合性、酸化防止性、耐摩耗性能、バイオ燃料適合性、泡低減特性、摩擦低減、燃料経済性、過早点火防止、錆抑制、汚泥および/または煤煙分散性、ピストン清浄性、堆積物形成、ならびに耐水性の改善を有する、潤滑油を提供し得る。
【0055】
本開示のエンジン油は、以下に詳細に記載されるような1つ以上の添加剤を適切な基油配合物に添加することによって配合してもよい。添加剤は、添加剤パッケージ(または濃縮物)の形態の基油と組み合わせてもよく、代替的に、基油(または両方の混合物)と個別に組み合わせてもよい。完全に配合されたエンジン油は、添加された添加剤およびそれらのそれぞれの割合に基づき、改善された性能特性を示すことができる。
【0056】
別段の記載がない限り、全てのパーセントは、重量パーセントであり、全ての分子量は、数平均分子量である。
【0057】
本開示のさらなる詳細および利点は、以下の説明に部分的に記載され、かつ/または本開示の実施によって習得され得る。本開示の詳細および利点は、添付の特許請求の範囲に特に指摘された要素および組み合わせによって実現および達成され得る。前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は両方とも例示的及び説明的なものに過ぎず、特許請求される本開示を限定するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本明細書に開示される例示的な実施形態は、バイオディーゼル成分を中に有する液体燃料を燃料とするクランクケース潤滑エンジンに特に有用であり得る潤滑剤組成物を提供する。そのようなエンジンにおいてそのような潤滑剤組成物を使用することの利点のいくつかとしては、以下:(i)改善された酸化抵抗、(ii)改善された粘度特性、(iii)予定された潤滑剤洗浄間のより長い間隔、ならびに(iv)汚泥および堆積物の形成速度の低下、のうちの1つ以上が挙げられ得るが、これらに限定されない。これらの利点のうちの少なくともいくつかは、潤滑剤組成物中に、本明細書に記載の1つ以上の分散剤が存在することによって生じる。いくつかの実施形態はまた、バイオディーゼル成分を中に含まない石油由来のディーゼル燃料を燃料とするクランクケース潤滑エンジンにも有用であり得る。
【0059】
本明細書で使用される場合、「バイオディーゼル」という用語は、動物供給源および/または植物供給源に由来するある特定の割合の脂肪酸アルキルエステルを含有する燃料を指す。認められているバイオディーゼル命名法では、燃料グレードは、記号「Bxx」によって示され、ここで文字Bは、生物由来の燃料成分の存在を示し、数字xxは、組成物中の生物由来の燃料の百分率を示す。例えば、B30と表示された燃料は、30%の生物由来の燃料と70%の石油由来のディーゼル燃料を含有する。本明細書に開示される実施形態は、グレードB2燃料およびより高いグレード、場合によっては実質的に純粋なバイオディーゼルである最大でグレードB100までの燃料に特に有用であり得る。
【0060】
バイオディーゼル燃料は、関連技術分野において既知のような、例えば、動物性脂肪、植物種子、および/または植物油由来であってもよい。得られる脂肪酸エステルは、メチル、エチル、プロピル、およびイソプロピルエステルを含み得る。対応する前駆体脂肪酸は、炭素鎖長、分岐などの点で比較的純粋な一成分酸であり得るか、または特定の動物もしくは植物供給源に典型的な異なる脂肪酸の混合物であり得る。例えば、一般的なタイプのバイオディーゼル燃料は、例えば、天然脂肪または油を1~3個の炭素原子を有する脂肪族アルコールとエステル交換することによって調製され得る菜種油の天然脂肪酸のエステルを含む。他のタイプのバイオディーゼル燃料としては、ダイズ油、ヒマワリ油、ココナッツ油、コーン油、オリーブ油、パーム油、落花生油、キャノーラ油、ヒマシ油、および/またはゴマ油のエステルが挙げられ得る。そのようなバイオディーゼル燃料は、様々な程度の分岐および/または百分率の不飽和基を有する、典型的には8~24、または12~22、または16~18個の炭素原子を有するエステルの混合物を含み得る。そのようなバイオディーゼル燃料のいくつかは、オレイン酸(C18)、リノール酸(C18)、リノレン酸(C18)、およびエルカ酸(C22)のエステルを含有すると考えられている。植物油由来のバイオディーゼル燃料は、対応するトリグリセリドのエステルを含むと考えられている。
【0061】
クランクケース内の潤滑剤とバイオディーゼル燃料の長期の相互作用は、例えば、バイオディーゼル燃料の不飽和エステルがエンジン動作条件下で対応する有機酸に比較的容易に変換され得るため、潤滑剤の使用中の特性に悪影響を及ぼす可能性がある。これらの有機酸は、経時的な粘度変化速度、ならびに汚泥、樹脂、ワニス、および/または堆積物の形成速度を不利に高める可能性がある。最先端技術におけるこれらおよび他の関連する問題の少なくともいくつかは、例えば、以下に記載され、かつ添付の特許請求の範囲に記載されるように、開示された実施形態によって対処される。
【0062】
例えば、本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、内燃エンジンにおけるバイオディーゼル燃料の使用によって引き起こされる上記の悪影響の少なくともいくつかを軽減するために使用され得る方法および組成物を提供する。特に、出願者らは、分散剤および酸化防止剤のある特定の組み合わせが、現在提案されている、および将来の潤滑剤性能基準を満たすか、または超えるのに適した煤煙および汚泥処理特性を提供すると同時に、対応する潤滑剤が、少なくとも約2重量%の生物由来の燃料を含有する液体燃料を燃料とするエンジンで使用される場合に、比較的長い期間にわたって十分な粘度特性を維持することを可能にもすると判断した。
【0063】
潤滑剤組成物への分散剤の導入は、ある特定のタイプのエンジンで使用される潤滑剤に所望の煤煙および汚泥処理特性を付与することが知られているが、カスタマイズされていない分散剤を含有する潤滑剤組成物は、バイオディーゼル成分を中に有する液体燃料を燃料とするエンジンにおいて同様に機能しない可能性がある。特に、出願者らは、いくつかの従来の潤滑剤組成物がバイオディーゼルの存在下で実施されるいくつかまたは全ての酸化試験に不合格であると判断した。そのような酸化試験の一例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、ACEA 2012 EUROPEAN OIL SEQUENCES FOR SERVICE-FILL OILSにおけるその正式名称「GFC-Lu-43A-11」によって知られている。その正式名称「CEC L-109」によって知られるそのような酸化試験の別の例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるACEA 2016 Engine Oil Sequencesに含まれる。これらおよびいくつかの他の関連する酸化試験は、試験管またはフラスコ中の模擬使用条件下で指定された時間の長さの後に、ベースライン動粘度に対する潤滑剤粘度変化を測定する。潤滑剤は、例えば、所定の時間に観察された粘度増加がベースライン動粘度の固定された所定の百分率より高い場合、または潤滑剤が部分的もしくは完全に固化する場合、試験に不合格と見なされる。
【0064】
本発明の実施形態は、バイオディーゼル成分を中に含有する液体燃料を燃料とするエンジンにおいて、潤滑剤が従来の潤滑剤のそれと比較して十分な煤煙および汚泥処理特性を提供する時間の長さを延長するために使用され得る方法および組成物を提供する。例えば、出願者らは、分散剤および酸化防止剤のある特定の組み合わせにより、潤滑剤が比較的長期間にわたって十分な粘度を維持することが可能になると判断した。特に、いくつかの実施形態では、分散剤の平均分子量および/または分散剤のタイプは、対応する潤滑剤の観察された酸化安定性および動粘度に予想外に大きい影響を及ぼす。いくつかの実施形態では、異なるそれぞれの平均分子量を有する2つ以上の分散剤の組み合わせは、場合によっては、ある特定の単一分散剤で観察される効果と同様であり得るが、対応する潤滑剤組成物のコストを下げて有益な効果をもたらし得る。
【0065】
例示的な実施形態では、潤滑剤組成物は、A)1300以下の数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有するポリイソブテニルコハク酸または無水物の反応生成物である少なくとも1つの分散剤を含有する第1の分散剤成分と、B)少なくとも1つのポリアミンと、A’)1300を超える数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有するポリイソブテニルコハク酸または無水物の反応生成物、およびB’)少なくとも1つのポリアミンの反応生成物である少なくとも1つの分散剤を含有する第2の分散剤成分とを含む、分散剤組成物を含む。分散剤組成物に対する第2の分散剤成分の重量パーセントの比は、約0.66:1~1:1である。
【0066】
成分AおよびA’
成分AおよびA’のヒドロカルビル-ジカルボン酸または無水物のヒドロカルビル部分は、ブテンポリマー、例えば、イソブチレンのポリマーから得られ得る。本明細書での使用に適したポリイソブテンは、ポリイソブチレンまたは少なくとも約60%、例えば約70%~約90%以上の末端ビニリデン含有量を有する高反応性ポリイソブチレンから形成されるものを含む。好適なポリイソブテンは、BF触媒を用いて調製されたものを含み得る。ポリアルケニル置換基の平均数分子量は、上記のようにポリスチレンを較正基準として使用するGPCによって決定されるように、例えば約100~約5000、例えば約500~約5000などの広い範囲にわたって変動し得る。
【0067】
成分AおよびA’のジカルボン酸または無水物は、無水マレイン酸から、または無水マレイン酸以外のカルボン酸反応物、例えばマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸、シトラコン酸無水物、メサコン酸、エチルマレイン酸無水物、ジメチルマレイン酸無水物、エチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、ヘキシルマレイン酸などから、対応する酸ハロゲン化物および低級脂肪族エステルを含めて選択することができる。適切なジカルボン酸無水物は無水マレイン酸である。成分AおよびA’を作製するために使用される反応混合物中のヒドロカルビル部分に対する無水マレイン酸のモル比は、広く変動し得る。したがって、モル比は、約5:1~約1:5、例えば約3:1~約1:3と変動し得、さらなる例として、無水マレイン酸は、反応を完了まで促進するために化学量論的過剰量で使用され得る。未反応の無水マレイン酸は真空蒸留により除去することができる。
【0068】
成分BおよびB’
官能化分散剤を調製する際に、成分BおよびB’として多数のポリアミンのいずれが使用され得る。ポリアミン成分BおよびB’は、ポリアルキレンポリアミンであってもよい。ポリアミンの非限定的な例としては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)アミノエチルピペラジン、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、N-メチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、重炭酸アミノグアニジン(AGBC)、およびE100重質アミンボトムなどの重質ポリアミンが挙げられ得る。重ポリアミンは、TEPAおよびPEHAなどの少量の低級ポリアミンオリゴマーを有するが、主に1分子当たり7個以上の窒素原子、2個以上の第1級アミン、および従来のポリアミン混合物よりも広範囲の分岐を有するオリゴマーを有する、ポリアルキレンポリアミンの混合物を含んでもよい。ヒドロカルビル置換スクシンイミド分散剤を調製するために使用され得るさらなる非限定的なポリアミンの例は、米国特許第6,548,458号に開示されており、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。好ましくは、第1および第2の分散剤を形成するための反応において成分BおよびB’として使用されるポリアミンは、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、E100重質アミンボトム、およびそれらの組み合わせの群から選択される。1つの好ましい実施形態では、ポリアミンは、テトラエチレンペンタミン(TEPA)であってもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、第1および第2の分散剤のいくつかまたは全ては、式(I)の化合物から得られてもよい。
【0070】
【化1】
【0071】
式中、nは、0または1~5の整数を表し、Rは、上で定義されたヒドロカルビル置換基である。例示的な実施形態では、nは、3であり、Rは、少なくとも約60%、例えば約70%~約90%以上の末端ビニリデン含有量を有するポリイソブチレンから得られるものなどのポリイソブテニル置換基である。式(I)の化合物は、ポリイソブテニル無水コハク酸(PIBSA)などのヒドロカルビル置換無水コハク酸と、ポリアミン、例えばテトラエチレンペンタミン(TEPA)との反応生成物であってもよい。
【0072】
上記の式(I)の化合物は、1:1~10:1、好ましくは1:1~5:1、または4:3~3:1、または4:3~2:1の範囲の(B)ポリアミンに対する(A)ポリイソブテニル置換無水コハク酸のモル比を有してもよい。特に有用な分散剤は、較正基準としてポリスチレンを使用してGPCによって測定した場合、約500~5000の範囲の数平均分子量(Mn)を有するポリイソブテニル置換無水コハク酸のポリイソブテニル基と、(B)一般式HN(CH)m-[NH(CH-NHを有するポリアミンであって、式中、mが2~4の範囲内であり、nが1~2の範囲内である、ポリアミンと、を含む。好ましくは、AまたはA’は、ポリイソブチレン無水コハク酸(PIBSA)である。PIBSAまたはAおよびA’は、ポリマー当たり平均約1.0~約2.0のコハク酸部分を有してもよい。
【0073】
式(I)のN-置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例としては、ポリイソブチレン置換基の数平均分子量が約350から約50,000まで、または約5,000まで、または約3,000までであるポリイソブチレンスクシンイミドが挙げられる。スクシンイミド分散剤およびそれらの調製は、例えば、米国特許第7,897,696号または米国特許第4,234,435号に開示されている。ポリオレフィンは、約2~約16、または約2~約8、または約2~約6個の炭素原子を含有する重合性モノマーから調製され得る。
【0074】
例示的な実施形態では、第1および第2の分散剤のいずれかまたはいくつかは、約350~約50,000、または約5000、または約3000の範囲の数平均分子量を有するポリイソブチレン(PIB)から得られ得る。いくつかの実施形態では、ポリイソブチレンは、含まれる場合、50モル%超、60モル%超、70モル%超、80モル%超、または90モル%超の含有量の末端二重結合を有してもよい。そのようなPIBは、高反応性PIB(「HR-PIB」)とも称される。約800~約5000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBは、本開示の実施形態における使用に好適である。従来のPIBは、典型的には、50モル%未満、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、または10モル%未満の含有量の末端二重結合を有する。アルケニルまたはアルキル無水コハク酸の活性%は、クロマトグラフィー技術を使用して測定することができる。この方法は、米国特許第5,334,321号の第5欄および第6欄に記載されている。
【0075】
ヒドロカルビルコハク酸または無水物のスクシンイミドへの変換は、当該技術分野において周知であり、ヒドロカルビルコハク酸または無水物とポリアミンとの反応を通して達成され得、ポリアミンは、米国特許第3,215,707号および米国特許第4,234,435号に記載されるように、化合物中に少なくとも1個の塩基性窒素を有する。好適なポリアミンは、少なくとも3個の窒素原子および約4~20個の炭素原子を有し得る。1個以上の酸素原子もまた、ポリアミン中に存在し得る。
【0076】
本開示で使用するためのポリアミンの特に好適な基は、アルキレンジアミンを含むポリアルキレンポリアミンである。そのようなポリアルキレンポリアミンは、約2~約12個の窒素原子および約2~約24個の炭素原子を含有し得る。好ましくは、そのようなポリアルキレンポリアミンのアルキレン基は、約2~約6個の炭素原子、より好ましくは約2~約4個の炭素原子を含有し得る。
【0077】
好適なポリアルキレンポリアミンの例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、イソプロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンチレンジアミン、ヘキシレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジイソプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、ジ-sec-ブチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、トリプロピレンテトラアミン、トリイソブチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジメチルアミノプロピルアミン、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
ポリアミンとヒドロカルビルコハク酸または無水物との反応により、ポリアミンとコハク酸または無水物の電荷比に応じて、モノ-スクシンイミド、ビス-スクシンイミド、トリス-スクシンイミド、または他のスクシンイミドを得る。いくつかの実施形態では、ヒドロカルビルコハク酸/無水物とポリアミンとの間の比は、1:1~3.2:1、または2.5:1~3:1、または2.9:1~3:1、または1.6:1~2.5:1、または1.6:1~2:1、または1.6:1~1.8:1、1.3:1~1.6:1、1.4:1~1.6:1、または1:1~1.3:1、または1.2:1~1.3:1である。
【0079】
本開示での使用に適したポリアミンの多くは、市販されており、他のものは、当該技術分野において周知である方法によって調製され得る。例えば、アミンの調製方法およびそれらの反応は、Sidgewickの「The Organic Chemistry of Nitrogen」Clarendon Press,Oxford,1966、Nollerの「Chemistry of Organic Compounds」Saunders,Philadelphia,2nd Ed.,1957、Kirk-Othmerの「Encyclopedia of Chemical Technology」2nd Ed.,特にVolume 2,pp.99-116に詳述されている。
【0080】
約900~約3000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、本明細書に開示される実施形態における使用のために好適であり得る。そのようなHR-PIBは、市販されているか、またはBoerzelらの米国特許第4,152,499号およびGateauらの米国特許第5,739,355号に記載されているような三フッ化ホウ素のような非塩素化触媒の存在下でのイソブテンの重合によって合成することができる。前述の熱エン反応で使用される場合、HR-PIBは、反応性の増加により、反応中の高い転化率、ならびに低い沈殿物の形成量をもたらす。好適な方法は、米国特許第7,897,696号に記載されている。
【0081】
分散剤は、本発明の組成物に含まれ得る追加の分散剤に関して以下に考察される後処理方法のうちの任意の1つ以上を使用して後処理されてもよい。後処理ステップは、無水コハク酸を有するオレフィンコポリマーと少なくとも1つのポリアミンとの反応の完了後に行われ得る。
【0082】
好適な分散剤のTBNは、油を含まないで約10~約65であり得、これは、約50%の希釈油を含有する分散剤試料で測定した場合の約5~約30TBNに匹敵する。
【0083】
分散剤組成物は、好ましくは、潤滑剤組成物の総重量に基づき、少なくとも約0.06重量%の窒素含有量を提供するのに十分な量で潤滑剤組成物中に存在する。上記の例示的な実施形態では、第1の分散剤成分と第2の分散剤成分の両方が、潤滑組成物に窒素含有量を与える。好ましくは、分散剤組成物によって提供される窒素の総重量パーセントに対する第2の分散剤成分により寄与される窒素の重量パーセントの比は、約0.62:1~1:1である。さらに、分散剤組成物の数平均分子量に対する第2の分散剤成分の数平均分子量の比は、好ましくは、約0.72:1~1:1である。
【0084】
分散剤の組み合わせを用いる上記の潤滑剤組成物は、無灰酸化防止剤と組み合わせて有益な効果を示す。いくつかの実施形態では、酸化防止剤は、実質的に銅を含まなくてもよい。具体的には、アミン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤の組み合わせが、潤滑組成物で使用され得る。好ましい実施形態では、アミン系酸化防止剤に対するフェノール系酸化防止剤の比は、0.3:0.8~0.7:0.8、または約0.5:0.8である。
【0085】
フェノール系酸化防止剤として使用され得る好適な酸化防止剤は、好ましくは、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む。ヒンダードフェノール酸化防止剤は、立体障害基として、第二級ブチル基および/または第三級ブチル基を含んでいてもよい。フェノール基は、ヒドロカルビル基および/または第2の芳香族基に結合する架橋基でさらに置換されてもよい。好適なヒンダードフェノール酸化防止剤の例としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールまたは4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、または4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールが挙げられる。一実施形態では、ヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであってもよく、例えば、BASFから入手可能なIrganox(商標)L-135または2,6-ジ-tert-ブチルフェノールおよびアルキルアクリレートから得られる付加生成物を含むことができ、アルキル基は、約1~約18個、または約2~約12個、または約2~約8個、または約2~約6個、または約4個の炭素原子を含有してもよい。別の市販のヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであってもよく、Albemarle Corporationから入手可能なEthanox(商標)4716を含み得る。
【0086】
アミン系酸化防止剤は、アミンまたはポリアミンを含んでもよい。そのような化合物は、飽和もしくは不飽和、またはその混合物のいずれかの直鎖であるヒドロカルビル基を有することができ、約12~約25個の炭素原子を含有し得る。好適な摩擦調整剤のさらなる例としては、アルコキシル化アミンおよびアルコキシル化エーテルアミンが挙げられる。そのような化合物は、飽和、不飽和、またはその混合物のいずれかの、直鎖であるヒドロカルビル基を有し得る。それらは、約12~約25個の炭素原子を含有し得る。好適なアミン系酸化防止剤としては、好ましくは、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、ノニルジフェニルアミン、ジ-ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ-オクチルジフェニルアミン)が挙げられ得る。例示的なアミン系酸化防止剤は、ノニル化ジフェニルアミン(Naugalube(登録商標)438L)である。
【0087】
別の代替実施形態では、酸化防止剤組成物はまた、上述のフェノール系およびアミン系酸化防止剤に加えてモリブデン含有酸化防止剤を含有する。これら3つの酸化防止剤の組み合わせが使用される場合、好ましくは、フェノール系酸化防止剤対アミン系酸化防止剤対モリブデン含有酸化防止剤の重量比は、0~2:0~2:0~1であり、量のうちの少なくとも1つは、ゼロではない。より好ましい実施形態では、フェノール系酸化防止剤対アミン系酸化防止剤対モリブデン含有酸化防止剤の重量比は、0.5~1.5:0.25~1:0.05~0.2である。特に好ましい実施形態では、フェノール系酸化防止剤対アミン系酸化防止剤対モリブデン含有酸化防止剤の重量比は、1:0.5:0.1である。
【0088】
好適なモリブデン含有酸化防止剤としては、油溶性モリブデン含有化合物が挙げられ、以下に例示される。
【0089】
I.硫黄およびリンを含まない有機モリブデン化合物
硫黄およびリンを含まない有機モリブデン化合物は、硫黄およびリンを含まないモリブデン源を、アミノ基および/またはアルコール基を含有する有機化合物と反応させることによって調製され得る。硫黄およびリンを含まないモリブデン源の例としては、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、およびモリブデン酸カリウムが挙げられる。アミノ基は、モノアミン、ジアミン、またはポリアミンであってもよい。アルコール基は、一置換アルコール、ジオールもしくはビス-アルコール、またはポリアルコールであってもよい。一例として、脂肪油とジアミンとの反応は、硫黄およびリンを含まないモリブデン源と反応することができるアミノ基およびアルコール基の両方を含有する生成物を生成する。
【0090】
参照により本明細書に完全に組み込まれる特許および特許出願に現れる硫黄およびリンを含まない有機モリブデン化合物の例としては、以下のものが挙げられる。
1.米国特許第4,259,195号および同第4,261,843号に定義されるように、ある特定の塩基性窒素化合物をモリブデン源と反応させることによって調製される化合物。
2.米国特許第4,164,473号に定義されるように、ヒドロカルビル置換ヒドロキシアルキル化アミンをモリブデン源と反応させることによって調製される化合物。
3.米国特許第4,266,945号に定義されるように、フェノールアルデヒド縮合生成物、モノ-アルキル化アルキレンジアミン、およびモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
4.米国特許第4,889,647号に定義されるように、脂肪油、ジエタノールアミン、およびモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
5.米国特許第5,137,647号に定義されるように、脂肪油または酸を2-(2-アミノエチル)アミノエタノール、およびモリブデン源と反応させることによって調製される化合物。
6.米国特許第4,692,256号に定義されるように、第2級アミンをモリブデン源と反応させることによって調製される化合物。
7.米国特許第5,412,130号に定義されるように、ジオール、ジアミノ、またはアミノ-アルコール化合物をモリブデン源と反応させることによって調製される化合物。
8.欧州特許出願第EP 1 136 496 A1号に定義されるように、脂肪油、モノ-アルキル化アルキレンジアミン、およびモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
9.欧州特許出願第EP 1 136 497 A1に定義されるように、脂肪酸、モノ-アルキル化アルキレンジアミン、グリセリド、およびモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
【0091】
市販の硫黄およびリンを含まない油溶性モリブデン化合物の例は、Asahi Denka Kogyo K.K.からのSakura-Lube 700、ならびにR.T.Vanderbilt Company,Inc.からのMolyvan(登録商標)856BおよびMolyvan(登録商標)855である。
【0092】
米国特許第4,889,647号に定義されるように、脂肪油、ジエタノールアミン、およびモリブデン源を反応させることによって調製されるモリブデン化合物は、時に以下の構造(式中、Rは、脂肪アルキル鎖である)を有して例示されるが、これらの材料の正確な化学組成は、十分には知られておらず、実際には、いくつかの有機モリブデン化合物の多成分混合物であってもよい。
【0093】
【化2】
【0094】
II.硫黄含有有機モリブデン化合物
硫黄含有有機モリブデン化合物は、様々な方法によって調製され得る。一方法は、硫黄およびリンを含まないモリブデン源をアミノ基および1つ以上の硫黄源と反応させることを伴う。硫黄源としては、例えば、二硫化炭素、硫化水素、硫化ナトリウム、および元素状硫黄が挙げられ得るが、これらに限定されない。あるいは、硫黄含有モリブデン化合物は、硫黄含有モリブデン源をアミノ基またはチウラム基および場合により第2の硫黄源と反応させることによって調製され得る。硫黄およびリンを含まないモリブデン源の例としては、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、およびハロゲン化モリブデンが挙げられる。アミノ基は、モノアミン、ジアミン、またはポリアミンであってもよい。一例として、第2級アミンおよび二硫化炭素と三酸化モリブデンとの反応は、ジチオカルバミン酸モリブデンを生成する。あるいは、テトラアルキルチウラムジスルフィドと(NHMo13*n(HO)(式中、nは、0~2の間で変動する)との反応は、三核硫黄含有ジチオカルバミン酸モリブデンを生成する。
【0095】
特許および特許出願に現れる硫黄含有有機モリブデン化合物の例として、以下が挙げられる。
1.米国特許第3,509,051号および同第3,356,702号に定義されるように、三酸化モリブデンを第2級アミンおよび二硫化炭素と反応させることによって調製される化合物。
2.米国特許第4,098,705号に定義されるように、硫黄を含まないモリブデン源を第2級アミン、二硫化炭素、および追加の硫黄源と反応させることによって調製される化合物。
3.米国特許第4,178,258号に定義されるように、ハロゲン化モリブデンを第2級アミンおよび二硫化炭素と反応させることによって調製される化合物。
4.米国特許第4,263,152号、同第4,265,773号、同第4,272,387号、同第4,285,822号、同第4,369,119号、同第4,395,343号に定義されるように、モリブデン源を塩基性窒素化合物よび硫黄源と反応させることによって調製される化合物。
5.米国特許第4,283,295号に定義されるように、テトラチオモリブデン酸アンモニウムを塩基性窒素化合物と反応させることによって調製される化合物。
6.米国特許第4,362,633号に定義されるように、オレフィン、硫黄、アミン、およびモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
7.米国特許第4,402,840号明細書に定義されるように、テトラチオモリブデン酸アンモニウムを塩基性窒素化合物および有機硫黄源と反応させることによって調製される化合物。
8.米国特許第4,466,901号に定義されるように、フェノール化合物、アミン、およびモリブデン源を硫黄源と反応させることによって調製される化合物。
9.米国特許第4,765,918号に定義されるように、トリグリセリド、塩基性窒素化合物、モリブデン源、および硫黄源を反応させることによって調製される化合物。
10.米国特許第4,966,719号に定義されるように、アルカリ金属アルキルチオキサンテート塩をハロゲン化モリブデンと反応させることによって調製される化合物。
11.米国特許第4,978,464号に定義されるように、テトラアルキルチウラムジスルフィドをモリブデンヘキサカルボニルと反応させることによって調製される化合物。
12.米国特許第4,990,271号に定義されるように、アルキルジキサントゲンをモリブデンヘキサカルボニルと反応させることによって調製される化合物。
13.米国特許第4,995,996号に定義されるように、アルカリ金属アルキルキサンテート塩を四酢酸二モリブデンと反応させることによって調製される化合物。
14.米国特許第6,232,276号に定義されるように、(NHMo13*2Oをアルカリ金属ジアルキルジチオカルバメートまたはテトラアルキルチウラムジスルフィドと反応させることによって調製される化合物。
15.米国特許第6,103,674号に定義されるように、エステルまたは酸をジアミン、モリブデン源、および二硫化炭素と反応させることによって調製される化合物。
16.米国特許第6,117,826号に定義されるように、アルカリ金属ジアルキルジチオカルバメートを3-クロロプロピオン酸、続いて三酸化モリブデンと反応させることによって調製される化合物。
【0096】
市販の油溶性モリブデン化合物の例は、Asahi Denka Kogyo K.K.からのSakura-Lube 100、Sakura-Lube 155、Sakura-Lube 165、Sakura-Lube 200、Sakura-Lube 300、Sakura-Lube 310G、Sakura-Lube 525、Sakura-Lube 600、Sakura-Lube 700、Sakura-Lube 710、およびSakura-Lube 180、R.T.Vanderbilt CompanyからのMolyvan(登録商標)A、Molyvan(登録商標)L、Molyvan(登録商標)807、Molyvan(登録商標)2000、Molyvan(登録商標)3000、およびMolyvan(登録商標)822、ならびにCrompton CorporationからのNaugalube MolyFMである。
【0097】
酸化防止剤組成物中に3つの酸化防止剤が組み合わせて使用される場合、全分散剤組成物に対する第2の分散剤成分の比は、低減され得る。この代替実施形態では、潤滑剤組成物は、A)1300以下の数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有するポリイソブテニルコハク酸または無水物の反応生成物である少なくとも1つの分散剤を含有する第1の分散剤成分と、B)少なくとも1つのポリアミンと、A’)1300を超える数平均分子量を有するポリイソブテニル基を有するポリイソブテニルコハク酸または無水物の反応生成物、およびB’)少なくとも1つのポリアミンの反応生成物である少なくとも1つの分散剤を含有する第2の分散剤成分とを含む、分散剤組成物を含む。分散剤組成物に対する第2の分散剤成分の重量パーセントの比は、約0.42:1~1:1である。
【0098】
モリブデン含有酸化防止剤を有する上記の例示的な実施形態では、第1の分散剤成分と第2の分散剤成分の両方が、潤滑組成物に窒素含有量を与える。好ましくは、分散剤組成物によって提供される窒素の総重量パーセントに対する第2の分散剤成分により寄与される窒素の重量パーセントの比は、約0.40:1~1:1である。さらに、分散剤組成物の数平均分子量に対する第2の分散剤成分の数平均分子量の比は、約0.51:1~1:1である。
【0099】
いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物は、脂肪酸アルキルエステルを含有する液体燃料を燃料とするエンジンの動作によって引き起こされる希釈から生じる脂肪酸アルキルエステルを、潤滑剤組成物の総重量に基づき、少なくとも約0.05、または少なくとも約1.0、または少なくとも約3.0重量%含有する。
【0100】
上記の分散剤の組み合わせに加えて、潤滑剤組成物は、基油を含有し、摩擦調整剤、追加の分散剤、金属洗剤、耐摩耗剤、消泡剤、追加の酸化防止剤、粘度調整剤、流動点降下剤、腐食防止剤などが挙げられるが、これらに限定されない他の従来の成分を含み得る。
【0101】
基油
本明細書の潤滑油組成物中に使用される基油は、米国石油協会(American Petroleum Institute(API))Base Oil Interchangeability Guidelinesに明記される、I~V群における基油のいずれかから選択され得る。5つの基油の群は、以下の通りである。
【0102】
[表]
【0103】
I群、II群、およびIII群は、鉱物油プロセス原料である。IV群の基油は、オレフィン性不飽和炭化水素の重合によって生成される、真の合成分子種を含有する。多くのV群の基油もまた真の合成生成物であり、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、アルキル化芳香族、ポリホスフェートエステル、ポリビニルエーテル、及び/またはポリフェニルエーテルなどを含むことができるが、天然に存在する油、例えば植物油であってもよい。III群の基油が鉱物油に由来する場合、これらの流体が受ける厳密な処理は、これらの物理的性質をいくつかの真の合成物、例えばPAOに非常に類似させることに留意すべきである。したがって、III群の基油由来の油は、業界では合成流体と称されることがある。
【0104】
開示される潤滑油組成物で使用される基油は、鉱物油、動物油、植物油、合成油、またはそれらの混合物であってもよい。好適な油は、水素化分解、水素化、水素化仕上げ、未精製、精製および再精製油、ならびにこれらの混合物から誘導することができる。
【0105】
未精製油は、さらなる精製処理を全くまたはほとんど行わない天然源、鉱物源、または合成源から得られるものである。精製油は、1つ以上の特性の向上をもたらし得る、1つ以上の精製工程で処理されていることを除いて、未精製油と同様である。好適な精製技術の例は、溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、浸透などである。食用の品質に精製された油は、有用である場合もそうでない場合もある。食用油はまた、ホワイト油とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、食用油またはホワイト油を含まない。
【0106】
再精製油は、再生油または再加工油としても知られている。これらの油は、同じまたは類似の方法を使用して精製油と同様に得られる。多くの場合、これらの油は、使用済み添加剤および油分解生成物の除去に関する技法によってさらに加工される。
【0107】
鉱物油には、掘削によって得られる油、もしくは植物および動物から得られる油、またはこれらの任意の混合物が含まれ得る。例えば、そのような油としては、ヒマシ油、ラード油、オリーブ油、ピーナツ油、トウモロコシ油、ダイズ油、および亜麻仁油、ならびに液体石油、およびパラフィン性、ナフテン性、もしくはパラフィン-ナフテン混合性の種類の溶媒処理または酸処理鉱物潤滑油などの鉱物潤滑油を挙げることができるが、これらに限定されない。そのような油は、所望される場合、部分的または完全に水素化されていてもよい。石炭または頁岩由来の油もまた有用であり得る。
【0108】
有用な合成潤滑油としては、重合、オリゴマー化、もしくは内部重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー)などの炭化水素油;ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、1-デセンのトリマーもしくはオリゴマー、例えば、ポリ(1-デセン)(そのような材料はしばしばα-オレフィンと称される)、およびこれらの混合物;アルキル-ベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ-(2-エチルヘキシル)-ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル);ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルエーテル、およびアルキル化ジフェニルスルフィド、ならびにこれらの誘導体、類似体、および相同体、またはこれらの混合物を挙げることができる。ポリアルファオレフィンは、典型的には水素化された物質である。
【0109】
他の合成潤滑油としては、ポリオールエステル、ジエステル、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、およびデカンホスホン酸のジエチルエステル)、またはポリマーテトラヒドロフランが挙げられる。合成油は、フィッシャー・トロプシュ反応によって生成され得、典型的には、水素化異性化フィッシャー・トロプシュ炭化水素またはワックスであり得る。一実施形態では、油は、フィッシャー・トロプシュガス対液体合成手順ならびに他のガス対液体油によって調製することができる。
【0110】
潤滑組成物に含まれる過半量の基油は、I群、II群、III群、IV群、V群、および上記のうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されてもよく、過半量の基油は、組成物中の添加剤成分または粘度指数改善剤の提供に起因する基油以外である。別の実施形態では、潤滑組成物に含まれる主要量の基油は、少なくとも90%の飽和物を有するII群、少なくとも90%の飽和物を有するIII群、IV群、V群、および前述の2つ以上の組み合わせからなる群から選択することができ、主要量の基油は、組成物中の添加剤成分または粘度指数改善剤の提供に起因する基油以外である。
【0111】
存在する潤滑粘度の油の量は、粘度指数改善剤(複数可)及び/または流動点降下剤(複数可)及び/または他のトップトリート添加剤を含む性能添加剤の量の合計を100重量%から差し引いた残りの残量であり得る。例えば、完成した流体中に存在し得る潤滑粘度の油は、過半量、例えば、約50重量%超、約60重量%超、約70重量%超、約80重量%超、約85重量%超、または約90重量%超であり得る。
【0112】
酸化防止剤
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意に、1つ以上の追加の酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤化合物は、既知であり、例えば、フェネート、フェネートスルフィド、硫化オレフィン、ホスホ硫化テルペン、硫化エステル、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、ノニルジフェニルアミン、ジ-ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ-オクチルジフェニルアミン)、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン、フェノール、ヒンダードフェノール、油溶性モリブデン化合物、巨大分子酸化防止剤、またはそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、酸化防止剤は、無灰(無金属)であるか、または実質的に銅を含まない。酸化防止剤化合物は、単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0113】
有用な酸化防止剤は、ジアリールアミンおよび高分子量フェノールを含み得る。一実施形態では、潤滑油組成物は、ジアリールアミンと高分子量フェノールとの混合物を含有し得るため、各酸化防止剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、最大約5重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。一実施形態では、酸化防止剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.3~約1.5重量%のジアリールアミンと約0.4~約2.5重量%の高分子量フェノールとの混合物であり得る。
【0114】
硫化されて硫化オレフィンを形成することができる好適なオレフィンの例としては、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ポリイソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセンまたはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセンまたはこれらの混合物、ならびにこれらの二量体、三量体、および四量体が特に有用なオレフィンである。代替的に、オレフィンは、1,3-ブタジエンなどのジエンおよびブチルアクリレートなどの不飽和エステルのディールス・アルダー付加物であってもよい。
【0115】
別の種類の硫化オレフィンとしては、硫化脂肪酸およびそれらのエステルが挙げられる。脂肪酸は、しばしば、植物油または動物油から得られ、典型的には約4~約22個の炭素原子を含有する。好適な脂肪酸およびこれらのエステルの例としては、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、またはこれらの混合物が挙げられる。しばしば、脂肪酸は、ラード油、トール油、ピーナッツ油、大豆油、綿実油、ヒマワリ種子油、またはこれらの混合物から得られる。脂肪酸および/またはエステルは、α-オレフィンなどのオレフィンと混合されてもよい。
【0116】
1つ以上の追加の酸化防止剤(複数可)は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、または約0.1重量%~約10重量%、または約1重量%~約5重量%の範囲で存在し得る。
【0117】
潤滑剤組成物が、約0.66:1~1:1の分散剤組成物に対する第2の分散剤の重量比を有する代替実施形態では、酸化防止剤は、無灰であり、硫化酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、およびアミン系酸化防止剤のうちの少なくとも1つから選択されてもよい。好ましくは、酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤とを約0.3:0.8~約0.7:0.8または約0.5:0.8の比で含む。上記の実施形態では、酸化防止剤は、実質的に銅を含まなくてもよい。代替実施形態では、潤滑剤組成物はまた、モリブデン含有化合物をさらに含んでもよい。
【0118】
潤滑剤組成物が、約0.42:1~1:1の分散剤組成物に対する第2の分散剤の重量比を有する代替実施形態では、酸化防止剤は、実質的に銅を含まず、任意にフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、およびモリブデン含有酸化防止剤を約0.5:1.0:0.1の比で含む。
【0119】
耐摩耗剤
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意に、1つ以上の耐摩耗剤を含有してもよい。好適な耐摩耗剤の例としては、金属チオホスフェート、金属ジアルキルジチオホスフェート、リン酸エステルまたはその塩、ホスフェートエステル(複数可)、ホスファイト、リン含有カルボン酸エステル、エーテル、またはアミド、硫化オレフィン、チオカルバメートエステル、アルキレン結合チオカルバメート、およびビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドを含むチオカルバメート含有化合物、ならびにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好適な耐摩耗剤は、ジチオカルバミン酸モリブデンであってもよい。リン含有耐摩耗剤は、欧州特許第612839号により詳細に記載されている。ジアルキルジチオホスフェート塩の金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、チタン、または亜鉛であってもよい。有用な耐摩耗剤は、ジアルキルチオリン酸亜鉛であり得る。
【0120】
好適な耐摩耗剤のさらなる例としては、チタン化合物、酒石酸塩、タルトリミド、リン化合物の油溶性アミン塩、硫化オレフィン、亜リン酸塩(例えば、亜リン酸ジブチル)、ホスホン酸塩、チオカルバメート含有化合物、例えば、チオカルバミン酸エステル、チオカルバミン酸アミド、チオカルバミン酸エーテル、アルキレン結合チオカルバメート、およびビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドが挙げられる。酒石酸塩またはタルトリミドは、アルキル-エステル基を含有してもよく、アルキル基上の炭素原子の合計は、少なくとも8であり得る。耐摩耗剤は、一実施形態では、クエン酸塩を含み得る。
【0121】
耐摩耗剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約15重量%、または約0.01重量%~約10重量%、または約0.05重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約3重量%の範囲で存在し得る。
【0122】
ホウ素含有化合物
本明細書の潤滑油組成物は、任意に、1つ以上のホウ素含有化合物を含有してもよい。
【0123】
ホウ素含有化合物の例としては、米国特許第5,883,057号に開示されているように、ホウ酸エステル、ホウ酸脂肪アミン、ホウ酸エポキシド、ホウ酸化洗剤、およびホウ酸化スクシンイミド分散剤などのホウ酸化分散剤が挙げられる。
【0124】
ホウ素含有化合物は、存在する場合には、潤滑油組成物の最大約8重量%、約0.01重量%~約7重量%、約0.05重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約3重量%を提供するのに十分な量で使用することができる。
【0125】
洗剤
潤滑油組成物は、任意に、1つ以上の中性、低塩基性、もしくは過塩基性の洗剤、またはこれらの混合物をさらに含んでもよい。好適な洗剤基質には、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホン酸、カリキサラート、サリキサレート、サリチル酸、カルボン酸、リン酸、モノおよび/もしくはジチオリン酸、アルキルフェノール、硫黄結合アルキルフェノール化合物、またはメチレン架橋フェノールが含まれる。好適な洗剤およびその調製方法は、米国特許第7,732,390およびそこに引用されている参考文献を含む多数の特許公報に、より詳細に記載されている。洗剤基質は、限定されないが、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、またはこれらの混合物などのアルカリまたはアルカリ土類金属で塩基化されてもよい。いくつかの実施形態では、洗剤は、バリウムを含まない。好適な洗剤としては、石油スルホン酸および長鎖モノ-またはジ-アルキルアリールスルホン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩が挙げられ得、アリール基は、ベンジル、トリル、およびキシリルである。好適な洗剤の例としては、カルシウムフェネート、カルシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸カルシウム、カルシウムカリキサラート、カルシウムサリキサレート、サリチル酸カルシウム、カルボン酸カルシウム、リン酸カルシウム、カルシウムモノおよび/またはジチオリン酸、カルシウムアルキルフェノール、カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、カルシウムメチレン架橋フェノール、マグネシウムフェネート、マグネシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸マグネシウム、マグネシウムカリキサラート、マグネシウムサリキサレート、サリチル酸マグネシウム、カルボン酸マグネシウム、マグネシウムリン酸、マグネシウムモノおよび/またはジチオリン酸、マグネシウムアルキルフェノール、マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、マグネシウムメチレン架橋フェノール、ナトリウムフェネート、ナトリウム硫黄含有フェネート、スルホン酸ナトリウム、ナトリウムカリキサラート、ナトリウムサリキサレート、サリチル酸ナトリウム、カルボン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、モノおよび/またはジチオリン酸ナトリウム、ナトリウムアルキルフェノール、ナトリウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、またはナトリウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
過塩基性洗剤添加剤は、当該技術分野において周知であり、アルカリまたはアルカリ土類金属過塩基性洗剤添加剤であり得る。そのような洗剤添加剤は、金属酸化物または金属水酸化物を基質および二酸化炭素ガスと反応させることによって調製され得る。基質は、典型的には、酸、例えば、脂肪族置換スルホン酸、脂肪族置換カルボン酸、または脂肪族置換フェノールなどの酸である。
【0127】
「過塩基性」という用語は、存在する金属の量が化学量論的量を超える、スルホン酸塩、カルボン酸塩、およびフェネートの金属塩などの金属塩に関する。このような塩は、100%超の変換レベルを有してもよい(すなわち、これらは、酸をその「標準」「中性」の塩に変換するのに必要な理論的量の金属の100%より多くを含み得る)。しばしばMRと略される「金属比」という表現は、既知の化学反応性および化学量論に従って中性塩中の金属の化学当量に対する過塩基性塩中の金属の全化学当量の比を示すために使用される。標準または中性塩では、金属比は、1であり、過塩基性塩では、MRは、1より大きい。それらは一般に、過塩基性、高塩基性、または超塩基性の塩と称され、有機硫黄酸、カルボン酸、またはフェノールの塩であり得る。
【0128】
潤滑油組成物の過塩基性洗剤は、約200mgKOH/グラム以上、またはさらなる例として、約250mgKOH/グラム以上、もしくは約350mgKOH/グラム以上、もしくは約375mgKOH/グラム以上、もしくは約400mgKOH/グラム以上の全塩基価(TBN)を有してもよい。
【0129】
好適な過塩基性洗剤の例としては、過塩基性カルシウムフェネート、過塩基性カルシウム硫黄含有フェネート、過塩基性スルホン酸カルシウム、過塩基性カルシウムカリキサラート、過塩基性カルシウムサリキサレート、過塩基性サリチル酸カルシウム、過塩基性カルボン酸カルシウム、過塩基性リン酸カルシウム、過塩基性カルシウムモノおよび/またはジチオリン酸、過塩基性カルシウムアルキルフェノール、過塩基性カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、過塩基性カルシウムメチレン架橋フェノール、過塩基性マグネシウムフェネート、過塩基性マグネシウム硫黄含有フェネート、過塩基性スルホン酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカリキサラート、過塩基性マグネシウムサリキサレート、過塩基性サリチル酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカルボン酸、過塩基性マグネシウムリン酸、過塩基性マグネシウムモノおよび/またはジチオリン酸、過塩基性マグネシウムアルキルフェノール、過塩基性マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、過塩基性マグネシウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
過塩基性洗剤は、1.1:1から、または2:1から、または4:1から、または5:1から、または7:1から、または10:1からの金属対基質比を有してもよい。
【0131】
いくつかの実施形態では、洗剤は、エンジン内の錆を低減または防止するのに有効である。
【0132】
洗剤は、約0重量%~約10重量%、または約0.1重量%~約8重量%、または約1重量%~約4重量%、または約4重量%超~約8重量%で存在してもよい。
【0133】
追加の分散剤
潤滑油組成物は、任意に、1つ以上の追加の分散剤またはこれらの混合物をさらに含んでもよい。典型的な無灰分散剤には、N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドが含まれる。N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例としては、ポリイソブチレン置換基の数平均分子量が約350~約50,000、または約5,000~約3,000のポリイソブチレンスクシンイミドが挙げられる。スクシンイミド分散剤およびそれらの調製は、例えば、米国特許第7,897,696号または米国特許第4,234,435号に開示されている。ポリオレフィンは、約2~約16、または約2~約8、または約2~約6個の炭素原子を含有する重合性モノマーから調製され得る。スクシンイミド分散剤は、典型的には、ポリアミン、典型的にはポリ(エチレンアミン)から形成されたイミドである。
【0134】
一実施形態では、追加の分散剤は、ポリアルファオレフィン(PAO)無水コハク酸から誘導されてもよい。
【0135】
一実施形態では、追加の分散剤は、オレフィン無水マレイン酸コポリマーから誘導されてもよい。一例として、分散剤は、ポリ-PIBSAと記載され得る。
【0136】
好適な追加の分散剤の1つの種類は、マンニッヒ塩基であり得る。マンニッヒ塩基は、より高分子量のアルキル置換フェノール、ポリアルキレンポリアミン、およびホルムアルデヒドなどのアルデヒドの縮合によって形成される物質である。マンニッヒ塩基は、米国特許第3,634,515号により詳細に記載されている。
【0137】
好適な追加の分散剤の別の種類は、高分子量エステルまたは半エステルアミドであり得る。
【0138】
好適な追加の分散剤はまた、種々の薬剤のいずれかとの反応による従来の方法によって後処理することができる。これらの中には、ホウ素、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、炭酸塩、環状炭酸塩、ヒンダードフェノールエステル、およびリン化合物がある。米国特許第7,645,726、米国特許第7,214,649、および米国特許第8,048,831は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0139】
炭酸塩およびホウ酸の後処理に加えて、化合物は両方とも、異なる特性を向上または付与するように設計された様々な後処理により、後処理、またはさらに後処理されてもよい。このような後処理には、米国特許第5,241,003号の27-29欄に要約されたものが含まれ、これは参照により本明細書に組み込まれる。そのような処理には、
無機リン酸または無水物(例えば、米国特許第3,403,102号および同第4,648,980号)、
有機リン化合物(例えば、米国特許第3,502,677号)、
五硫化リン、
既に上述されたホウ素化合物(例えば、米国特許第3,178,663号および第4,652,387号)、
カルボン酸、ポリカルボン酸、無水物、および/または酸ハロゲン化物(例えば、米国特許第3,708,522号および第4,948,386号)、
エポキシドポリエポキシエート(polyepoxiate)、またはチオエポキシド(例えば、米国特許第3,859,318号および第5,026,495号)、
アルデヒドまたはケトン(例えば、米国特許第3,458,530号)、
二硫化炭素(例えば、米国特許第3,256,185号)、
グリシドール(例えば、米国特許第4,617,137号)、
尿素、チオ尿素、またはグアニジン(例えば、米国特許第3,312,619号、同第3,865,813号、および英国特許第GB 1,065,595号)、
有機スルホン酸(例えば、米国特許第3,189,544号および英国特許第GB 2,140,811号)、
シアン化アルケニル(例えば、米国特許第3,278,550号および第3,366,569号)、
ジケテン(例えば、米国特許第3,546,243号)、
ジイソシアネート(例えば、米国特許第3,573,205号)、
アルカンスルトン(例えば、米国特許第3,749,695号)、
1,3-ジカルボニル化合物(例えば、米国特許第4,579,675号)、
アルコキシル化アルコールまたはフェノールの硫酸塩(例えば、米国特許第3,954,639号)、
環状ラクトン(例えば、米国特許第4,617,138号、同第4,645,515号、同第4,668,246号、同第4,963,275号、および同第4,971,711号)、
環状炭酸塩もしくはチオ炭酸塩、直鎖状モノ炭酸塩もしくはポリ炭酸塩、またはクロロギ酸塩(例えば、米国特許第4,612,132号、同第4,647,390号、同第4,648,886号、同第4,670,170号)、
窒素含有カルボン酸(例えば、米国特許第4,971,598号および英国特許第GB 2,140,811号)、
ヒドロキシ保護クロロジカルボニルオキシ化合物(例えば、米国特許第4,614,522号)、
ラクタム、チオラクタム、チオラクトン、またはジトラクトン(ditholactone)(例えば、米国特許第4,614,603号および同第4,666,460号)、
環状炭酸塩もしくはチオ炭酸塩、直鎖状モノ炭酸塩もしくはポリ炭酸塩、またはクロロギ酸塩(例えば、米国特許第4,612,132号、同第4,647,390号、同第4,646,860号、および同第4,670,170号)、
窒素含有カルボン酸(例えば、米国特許第4,971,598号および英国特許第GB 2,440,811号)、
ヒドロキシ保護クロロジカルボニルオキシ化合物(例えば、米国特許第4,614,522号)、
ラクタム、チオラクタム、チオラクトン、またはジチオラクトン(例えば、米国特許第4,614,603号、および同第4,666,460号)、
環状カルバメート、環状チオカルバメート、または環状ジチオカルバメート(例えば、米国特許第4,663,062号および同第4,666,459号)、
ヒドロキシ脂肪族カルボン酸(例えば、米国特許第4,482,464号、同第4,521,318号、同第4,713,189号)、
酸化剤(例えば、米国特許第4,379,064号)、
五硫化リンとポリアルキレンポリアミンとの組み合わせ(例えば、米国特許第3,185,647号)、
カルボン酸またはアルデヒドまたはケトンと硫黄または塩化硫黄との組み合わせ(例えば、米国特許第3,390,086号、同第3,470,098号)、
ヒドラジンと二硫化炭素との組み合わせ(例えば、米国特許第3,519,564号)、
アルデヒドとフェノールとの組み合わせ(例えば、米国特許第3,649,229号、同第5,030,249号、同第5,039,307号)、
アルデヒドとジチオリン酸のO-ジエステルとの組み合わせ(例えば、米国特許第3,865,740号)、
ヒドロキシ脂肪族カルボン酸とホウ酸との組み合わせ(例えば、米国特許第4,554,086号)、
ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、次いで、ホルムアルデヒドおよびフェノールの組み合わせ(例えば、米国特許第4,636,322号)、
ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、次いで、脂肪族ジカルボン酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,663,064号)、
ホルムアルデヒドおよびフェノール、次いで、グリコール酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,699,724号)、
ヒドロキシ脂肪族カルボン酸またはシュウ酸、次いで、ジイソシアネートの組み合わせ(例えば、米国特許第4,713,191号)、
リンの無機酸もしくは無水物またはその部分的もしくは全体的硫黄類似体と、ホウ素化合物との組み合わせ(例えば、米国特許第4,857,214号)、
有機二酸、次いで、不飽和脂肪酸、次いで、ニトロソ芳香族アミン、任意選択で続いてホウ素化合物、次いで、グリコール化剤の組み合わせ(例えば、米国特許第4,973,412号)、
アルデヒドとトリアゾールとの組み合わせ(例えば、米国特許第4,963,278号)、
アルデヒドおよびトリアゾール、次いで、ホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,981,492号)、
環状ラクトンとホウ素化合物との組み合わせ(例えば、米国特許第4,963,275号および同第4,971,711号)による処理が含まれる。上記の特許は、それらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0140】
存在する場合、任意の追加の分散剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて最大で約20重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。使用され得る分散剤の別の量は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.1重量%~約15重量%、または約0.1重量%~約10重量%、または約3重量%~約10重量%、または約1重量%~約6重量%、または約7重量%~約12重量%であり得る。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、混合分散剤系を利用する。潤滑油組成物中の分散剤の総量に対する上述の特定の分散剤の百分率に従って、単一のタイプまたは2つ以上のタイプの分散剤の混合物が使用され得る。
【0141】
摩擦調整剤
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意に、1つ以上の摩擦調整剤を含有してもよい。好適な摩擦調整剤は、金属含有摩擦調整剤および金属を含まない摩擦調整剤を含み得、イミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、酸化アミン、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、第4級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアニジン、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステル、硫化脂肪化合物およびオレフィン、ヒマワリ油、他の天然植物油または動物油、ジカルボン酸エステル、ポリオールと1つ以上の脂肪族もしくは芳香族カルボン酸とのエステルまたは部分エステルなどが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0142】
好適な摩擦調整剤は、直鎖、分岐鎖、もしくは芳香族ヒドロカルビル基、またはそれらの混合物から選択されるヒドロカルビル基を含有することができ、飽和または不飽和であり得る。ヒドロカルビル基は、炭素および水素または硫黄もしくは酸素のようなヘテロ原子で構成され得る。ヒドロカルビル基は、約12~約25個の炭素原子の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、摩擦調整剤は、長鎖脂肪酸エステルであり得る。別の実施形態では、長鎖脂肪酸エステルは、モノエステルであっても、ジエステルであっても、(トリ)グリセリドであってもよい。摩擦調整剤は、長鎖脂肪アミド、長鎖脂肪エステル、長鎖脂肪エポキシド誘導体、または長鎖イミダゾリンであってもよい。
【0143】
他の好適な摩擦調整剤は、有機、無灰(金属非含有)、窒素非含有有機摩擦調整剤を含み得る。そのような摩擦調整剤は、カルボン酸および無水物をアルカノールと反応させることによって形成されるエステルを含み得、一般に、親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えば、カルボキシルまたはヒドロキシル)を含む。有機無灰窒素非含有摩擦調整剤の例は、一般に、オレイン酸のモノ-、ジ-、およびトリ-エステルを含有し得るモノオレイン酸グリセロール(GMO)として知られている。他の好適な摩擦調整剤は、米国特許第6,723,685号に記載され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0144】
アミン系摩擦調整剤は、アミンまたはポリアミンを含み得る。そのような化合物は、飽和もしくは不飽和、またはその混合物のいずれかの直鎖であるヒドロカルビル基を有することができ、約12~約25個の炭素原子を含有し得る。好適な摩擦調整剤のさらなる例としては、アルコキシル化アミンおよびアルコキシル化エーテルアミンが挙げられる。そのような化合物は、飽和、不飽和、またはその混合物のいずれかの、直鎖であるヒドロカルビル基を有し得る。それらは、約12~約25個の炭素原子を含有し得る。例としては、エトキシル化アミンおよびエトキシル化エーテルアミンが挙げられる。
【0145】
アミンおよびアミドは、それ自体として、または酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタホウ酸塩、ホウ酸、またはモノ-、ジ-、もしくはトリ-アルキルボレートなどのホウ素化合物との付加物もしくは反応生成物の形態で使用され得る。他の好適な摩擦調整剤は、米国特許第6,300,291号に記載され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0146】
摩擦調整剤は、任意に、約0重量%~約10重量%、または約0.01重量%~約8重量%、または約0.1重量%~約4重量%などの範囲で存在し得る。
【0147】
モリブデン含有成分
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意に、1つ以上のモリブデン含有化合物を含有してもよい。油溶性モリブデン化合物は、耐摩耗剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、またはこれらの混合物の機能的性能を有していてもよい。油溶性モリブデン化合物は、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、ジチオホスフィン酸モリブデン、モリブデン化合物のアミン塩、キサントゲン酸モリブデン、チオキサントンモリブデン、モリブデン硫化物、カルボン酸モリブデン、モリブデンアルコキシド、三核有機モリブデン化合物、および/またはこれらの混合物を含んでもよい。モリブデン硫化物は、二硫化モリブデンが含まれる。二硫化モリブデンは、安定な分散液の形態であってもよい。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、モリブデン化合物のアミン塩、およびこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、ジチオカルバミン酸モリブデンであってもよい。
【0148】
市販の油溶性モリブデン化合物の好適な例は、Asahi Denka Kogyo K.K.からのSakura-Lube 100、Sakura-Lube 155、Sakura-Lube 165、Sakura-Lube 200、Sakura-Lube 300、Sakura-Lube 310G、Sakura-Lube 525、Sakura-Lube 600、Sakura-Lube 700、Sakura-Lube 710、およびSakura-Lube 180、R.T.Vanderbilt CompanyからのMolyvan(登録商標)A、Molyvan(登録商標)L、Molyvan(登録商標)807、Molyvan(登録商標)2000、Molyvan(登録商標)3000、およびMolyvan(登録商標)822、ならびにCrompton CorporationからのNaugalube MolyFMである。好適なモリブデン成分は、米国特許第5,650,381、US RE37,363E1、US RE38,929E1およびUS RE40,595E1(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)にも記載されている。
【0149】
加えて、モリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物であり得る。モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、ならびに他のアルカリ金属モリブデン酸および他のモリブデン塩、例えば、モリブデン酸水素ナトリウム、MoOCl、MoOBr、MoCl6、三酸化モリブデン、または類似した酸性モリブデン化合物が含まれる。代替的に、組成物は、例えば、米国特許第4,263,152号、同第4,285,822号、同第4,283,295号、同第4,272,387号、同第4,265,773号、同第4,261,843号、同第4,259,195号、および同第4,259,194号、ならびにWO94/06897(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような塩基性窒素化合物のモリブデン/硫黄錯体によってモリブデンが提供されてもよい。
【0150】
好適な有機モリブデン化合物の別の分類は、式Moのもの、及びこれらの混合物などの三核モリブデン化合物であり、式中、Sは、硫黄を表し、Lは、化合物を油溶性または油分散性にするのに十分な数の炭素原子を有する有機基を有する、独立して選択されるリガンドを表し、nは、1~4であり、kは、4~7まで変動し、Qは、水、アミン、アルコール、ホスフィン、及びエーテルなどの中性電子供与性化合物の群から選択され、zは、0~5の範囲であり、非化学量論値を含む。全てのリガンドの有機基の中に、少なくとも21個の総炭素原子、例えば少なくとも25個、少なくとも30個、または少なくとも35個の炭素原子が存在してもよい。追加の好適なモリブデン化合物は、米国特許第6,723,685号に記載され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0151】
油溶性モリブデン化合物は、約0.5ppm~約2000ppm、約1ppm~約700ppm、約1ppm~約550ppm、約5ppm~約300ppm、または約20ppm~約250ppmのモリブデンを提供するのに十分な量で存在し得る。
【0152】
遷移金属含有化合物
別の実施形態では、油溶性化合物は、遷移金属含有化合物または半金属であってもよい。遷移金属には、チタン、バナジウム、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、タンタル、タングステンなどが含まれ得るが、これらに限定されない。好適なメタロイドとしては、ホウ素、ケイ素、アンチモン、テルルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0153】
一実施形態では、油溶性遷移金属含有化合物は、耐摩耗剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、付着物制御添加剤、またはこれらの機能のうちの2つ以上として機能することができる。一実施形態では、油溶性遷移金属含有化合物は、チタン(IV)アルコキシドなどの油溶性チタン化合物であってもよい。開示された技術に使用することができるか、または開示された技術の油溶性物質の調製に使用することができるチタン含有化合物には、様々なTi(IV)化合物、例えば、酸化チタン(IV)、硫化チタン(IV)、硝酸チタン(IV)、チタン(IV)アルコキシド、例えば、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、チタン2-エチルヘキソキシド、ならびにチタンフェネート、チタン(IV)2-エチル-1-3-ヘキサンジオエートまたはクエン酸チタンまたはオレイン酸チタンなどのチタンカルボン酸塩、およびチタン(IV)(トリエタノールアミナート)イソプロポキシドを含むがこれらに限定されない他のチタン化合物または錯体がある。開示された技術に包含される他の形態のチタンは、ジチオリン酸チタン(例えば、ジアルキルジチオチオリン酸)およびスルホン酸チタン(例えば、アルキルベンゼンスルホン酸)などのリン酸チタン、または一般に、油溶性塩のような塩を形成するチタン化合物と様々な酸物質との反応生成物を含む。したがって、チタン化合物は、とりわけ、有機酸、アルコールおよびグリコールから誘導され得る。Ti化合物はまた、Ti-O-Ti構造を含む二量体またはオリゴマー形態で存在してもよい。このようなチタン材料は、市販されているか、または当業者には明らかな適切な合成技術によって容易に調製することができる。これらは、特定の化合物によって、固体または液体として室温で存在し得る。それらはまた、適切な不活性溶媒中の溶液形態で提供されてもよい。
【0154】
一実施形態では、チタンは、スクシンイミド分散剤などのTi変性分散剤として供給することができる。このような材料は、チタンアルコキシドと例えばアルケニル-(またはアルキル)無水コハク酸のようなヒドロカルビル置換無水コハク酸、との間にチタン混合無水物を形成することによって調製することができる。得られたチタン酸コハク酸塩中間体は、直接使用することができ、またはそれは、(a)遊離の縮合可能な-NH官能基を有するポリアミン系スクシンイミド/アミド分散剤、(b)ポリアミンベースのスクシンイミド/アミド分散剤、すなわちアルケニル-(またはアルキル-)無水コハク酸およびポリアミンの成分、(c)置換無水コハク酸とポリオール、アミノアルコール、ポリアミンとの反応により調製されるヒドロキシ含有ポリエステル分散剤、またはこれらの混合物などの多くの物質のいずれかと反応させることができる。代替的に、チタン酸コハク酸塩中間体を、アルコール、アミノアルコール、エーテルアルコール、ポリエーテルアルコール、もしくはポリオール、または脂肪酸などの他の薬剤と反応させてもよく、その生成物は、潤滑剤にTiを付与するために直接使用されるか、または上記のようにコハク酸分散剤とさらに反応させてもよい。。一例として、テトライソプロピルチタネート1部(モル)をポリイソブテン置換無水コハク酸約2部(モル)と140~150℃で5~6時間反応させて、チタン変性分散剤または中間体を提供してもよい。得られた材料(30g)を、150℃で1.5時間、ポリイソブテン置換無水コハク酸およびポリエチレンポリアミン混合物(127グラム+希釈油)からのスクシンイミド分散剤とさらに反応させて、チタン変性スクシンイミド分散剤を生成することができる。
【0155】
別のチタン含有化合物は、チタンアルコキシドおよびC~C25カルボン酸の反応生成物であってもよい。反応生成物は、以下の式で表され得、
【0156】
【化3】
【0157】
式中、nは、2、3および4から選択される整数であり、Rは、約5~約24個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、または式:
【0158】
【化4】
【0159】
によって表され得、式中、R、R、RおよびRの各々は、同じであるかまたは異なり、かつ約5~約25個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択される。好適なカルボン酸としては、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、ネオデカン酸などが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0160】
一実施形態では、油溶性チタン化合物は、重量で約0ppm~約3000ppmのチタン、または重量で約25ppm~約1500ppmのチタン、または重量で約35ppm~約500ppmのチタン、または約50ppm~約300ppmを提供するための量で潤滑油組成物中に存在してもよい。
【0161】
粘度指数改善剤
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意に、1つ以上の粘度指数改善剤を含有してもよい。好適な粘度指数改善剤は、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、アルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役コポリマー、またはこれらの混合物を含み得る。粘度指数改善剤は、星型ポリマーを含んでもよく、好適な例は、米国公開第2012/0101017A1号に記載されている。
【0162】
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意に、粘度指数改善剤に加えて、または粘度指数改善剤の代わりに、1つ以上の分散剤粘度指数改善剤を含有してもよい。好適な粘度指数改善剤としては、官能化ポリオレフィン、例えば、アシル化剤(無水マレイン酸など)とアミンとの反応生成物で官能化されているエチレン-プロピレンコポリマー、アミンで官能化されたポリメタクリレート、またはアミンと反応したエステル化無水マレイン酸-スチレンコポリマーが挙げられ得る。市販の分散剤粘度指数改善剤は、Afton Chemical Corporationから入手可能なHiTEC(登録商標)5777である。
【0163】
粘度指数改善剤及び/または分散剤粘度指数改善剤の総量は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、約0.1重量%~約15重量%、約0.1重量%~約12重量%、または約0.5重量%~約10重量%であり得る。
【0164】
他の任意の添加剤
他の添加剤は、潤滑流体に要求される1つ以上の機能を実行するように選択されてもよい。さらに、述べられた添加剤のうちの1つ以上は、多機能性であり、本明細書で規定される機能に加えて、またはそれ以外の機能を提供し得る。
【0165】
本開示による潤滑油組成物は、任意に、他の性能添加剤を含んでもよい。他の性能添加剤は、本開示に明記される添加剤に対する追加であってもよく、かつ/または金属不活性化剤、粘度指数改善剤、洗剤、無灰TBNブースター、摩擦調整剤、耐摩耗剤、腐食防止剤、防錆剤、分散剤、分散剤粘度指数改善剤、極圧剤、酸化防止剤、泡抑制剤、解乳化剤、乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、およびそれらの混合物のうちの1つ以上を含んでもよい。典型的には、完全配合潤滑油は、これらの性能添加剤のうちの1つ以上を含有する。
【0166】
好適な金属不活性化剤は、ベンゾトリアゾールの誘導体(典型的には、トリルトリアゾール)、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、1,2,4-トリアゾール、ベンズイミダゾール、2-アルキルジチオベンゾイミダゾール、または2-アルキルジチオベンゾチアゾール、エチルアクリレートと2-エチルヘキシルアクリレート及び任意選択でビニルアセテートとのコポリマーを含む泡抑制剤、トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及び(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマーを含む解乳化剤、無水マレイン酸-スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレートまたはポリアクリルアミドを含む流動点降下剤を含み得る。
【0167】
好適な泡抑制剤は、シロキサンなどのシリコン系化合物を含む。
【0168】
好適な流動点降下剤は、ポリメチルメタクリレートまたはその混合物を含み得る。流動点降下剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0重量%~約1重量%、約0.01重量%~約0.5重量%、または約0.02重量%~約0.04重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。
【0169】
好適な防錆剤は、鉄金属表面の腐食を抑制する特性を有する単一の化合物または化合物の混合物であってもよい。本明細書で有用な防錆剤の非限定的な例は、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、およびセロチン酸などの油溶性高分子量有機酸、ならびにトール油脂肪酸、オレイン酸およびリノール酸から生成されたもののような二量体および三量体酸を含む油溶性ポリカルボン酸を含む。他の好適な腐食防止剤は、約600~約3000の分子量範囲の長鎖アルファ、オメガ-ジカルボン酸、およびテトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、およびヘキサデセニルコハク酸のような、アルケニル基が約10個以上の炭素原子を含むアルケニルコハク酸を含む。別の有用な種類の酸性腐食防止剤は、アルケニル基に約8~約24個の炭素原子を有するアルケニルコハク酸の、ポリグリコールのようなアルコールとの半エステルである。このようなアルケニルコハク酸の対応する半アミドも有用である。有用な防錆剤は、高分子量の有機酸である。いくつかの実施形態では、エンジン油は、防錆剤を欠いている。
【0170】
存在する場合、防錆剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0重量%~約5重量%、約0.01重量%~約3重量%、約0.1重量%~約2重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。
【0171】
一般的に言えば、好適なクランクケース潤滑剤は、以下の表に列挙される範囲の添加剤成分を含むことができる。
【0172】
【表1】
【0173】
上記の各成分の百分率は、最終潤滑油組成物の重量に基づく各成分の重量パーセントを表す。潤滑油組成物の残部は、1つ以上の基油からなる。
【0174】
本明細書に記載される組成物を配合する際に使用される添加剤は、個々に、または様々な部分的組み合わせで基油にブレンドされてもよい。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤プラス炭化水素溶媒などの希釈剤)を使用して、成分の全てを同時にブレンドすることが好適であり得る。好ましくは、添加剤の各々は、可溶性または油溶性である。「可溶性」または「油溶性」とは、モリブデン化合物が油溶性であるか、または通常のブレンドもしくは使用条件下で潤滑油または濃縮物用希釈剤に可溶化されることが可能であることを意味する。
【実施例
【0175】
以下の実施例は、本開示の方法および組成物を例示するものであって、限定するものではない。当該分野において通常遭遇される様々な条件およびパラメータの他の好適な修正および適応は、当業者にとって明らかであり、本開示の趣旨および範囲内である。本明細書で引用される全ての特許および刊行物は、それらの全体が参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0176】
動粘度および酸化速度を評価するための試験
潤滑剤組成物は、上記の表1に示された組成を用いて基油中で調製される。表1に示された材料に加えて、試験された潤滑剤組成物の各々は、様々な量の1つ以上の分散剤および2つ以上の酸化防止剤を有するように調製される。
【0177】
ACEA 2012規格に含まれるGFC Lu-49-T-11試験を使用して、バイオ燃料の存在下での酸化を通した潤滑組成物の経時変化を評価した。試験される潤滑組成物は、鉄触媒(100ppmの鉄)の存在下で、10L/時の一定の空気流下で、かつ試験中72時間から燃料を添加して、170℃に維持される。試験は、144時間を超える。試験中、参照燃料、GOPSA 10LUB(植物油からの10%メチルエステルを含有するディーゼル燃料)が使用される。
【0178】
例えば、典型的な試験混合物は、(i)試験中の潤滑剤組成物150gと、(ii)調製された触媒の一部としての鉄100ppmとを混合することによって生成される。調製された触媒は、1.9023gの触媒無水鉄(III)アセチルアセトネートを秤量し、それをいくらかのクロロホルムと共に100mLゲージ付き小瓶に注入し、クロロホルムでゲージラインまで充填することによって調製され得る。調製された触媒5mLは、試験に必要な100ppmの鉄を提供するはずである。
【0179】
試験のために、試験混合物を含むフラスコは、170℃に維持された加熱シリコン浴中に配置される。フラスコに接続された空気導入管に10L/時で空気が吹き込まれる。空気流は、試験されている潤滑剤を触媒と均質に混合するのに十分であるべきである。各20mLの試験混合物の試料が、評価のために72、96、120、および144時間に取り出される。試料が72時間で取り出されたとき、26.4gの参照燃料が試験混合物に添加され、96時間の試料には9.0gの参照燃料が添加され、120時間の試料には8.3gの参照燃料が添加される。取り出された試料は、100℃で動粘度について分析される。典型的な試験継続時間は、144時間である。
【0180】
動粘度(KV)は、ASTM D445規格または同等のもの(例えば、ISO 3104、AFNOR NF T60 100、IP 71)に従って100℃で全ての試料に関して決定される。時間tにおける絶対粘度変化(DKV)は、対応するランタイム-試料粘度(KV)からSOT-試料粘度(KVSOT)を引くことによって計算される。相対粘度変化(RKVまたはデルタKV)は、DKV値をKVSOTで除算し、その結果に100を掛けることによって計算される。したがって、RKV値は、パーセント(%)で表される。144時間後のデルタKVは、約200%未満の合格値で決定される。しかしながら、最大250%の値は、反復試験についての誤差の範囲内であり得るので、それらの値もまた、以下の比較例において合格値であると見なされる。
【0181】
以下の表に列挙される潤滑剤組成物の各々は、とりわけ、(i)表3および4に示される量の分散剤A、分散剤B、および/または分散剤Cから選択される1つ、2つ、または3つの分散剤、ならびに(ii)2つの比較例の間で量が異なり、各々の比較例内で識別される酸化防止剤または酸化防止剤の組み合わせを含む。実施例の全てにおいて、追加のエンジン油成分の量およびタイプは、一定に保たれ、これらの成分は、ZDDP、洗剤、消泡剤、基油、および粘度調整剤を含んでいた。
【0182】
実施例1では2つの異なる酸化防止剤を使用し、実施例2では3つの異なる酸化防止剤を使用した。実施例で使用される酸化防止剤としては、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、モリブデン含有酸化防止剤が挙げられる。
【0183】
分散剤Aは、(i)1300の数平均分子量を有するPIB基を有するPIBSAと、(ii)少なくとも1つのポリアミンとの反応生成物であり、ホウ酸で後処理される。
【0184】
分散剤Bは、(i)約1400~約1600の数平均分子量を有するポリイソブテニル(PIB)基を有するブレンドポリイソブテニル無水コハク酸(PIBSA)と、(ii)少なくとも1つのポリアミンとの反応生成物である。
【0185】
分散剤Cは、(i)約2300の数平均分子量を有するPIB基を有するPIBSAと、(ii)少なくとも1つのポリアミンとの反応生成物である。
【0186】
分散剤Aは、低分子量分散剤(1300以下の数平均分子量(Mn)を有するポリイソブテニル(PIB)基を有する分散剤)であると見なされ得、一方で、分散剤BおよびCは、高分子量分散剤(1300を超える数平均分子量(Mn)を有するポリイソブテニル(PIB)基を有する分散剤)であると見なされ得る。実験用潤滑組成物で使用される高分子量分散剤B-Cの量は、潤滑剤組成物の総重量に基づき、0.1~10重量%の範囲内であり、実施例の各々で使用された分散剤の総量は、潤滑剤組成物の総重量に基づき、1~10重量%の範囲内であった。
【0187】
この実施例の潤滑剤組成物には、酸化防止剤組成物も添加した。酸化防止剤の量は、実施例の全てに対して同じに保たれ、全潤滑組成物の重量%に基づき、0.8重量%のアミン系酸化防止剤および0.5重量%のフェノール系酸化防止剤を含んだ。組成物の各々についての144時間後のデルタKV値、ならびに全分散剤に対する分散剤AおよびBの合計によって提供される量、%N活性、および分子量の比が、表2に示される。
【0188】
【表2】
【0189】
試験結果は、表3に示される。実施例1、2、および3は、許容できるデルタKV(144)値を有する唯一の組成物が、0.66:1を超える分散剤の総量に対する分散剤B+Cの合計の比を有する組成物であることを示す。高分子量分散剤のこの比により、対応する潤滑剤組成物は、上記の予想外の有益な粘度特性を示し得る。
【0190】
実験用潤滑組成物を、上記の表1に示された量の成分を使用して作製した。分散剤Aは、低分子量分散剤であると見なされ得、一方で、分散剤BおよびCは、高分子量分散剤であると見なされ得る。表3は、これらの実験用潤滑組成物の各々に含有される分散剤A~Cの各々の量を示す。
【0191】
この実施例の潤滑剤組成物には、追加の酸化防止剤を添加した。酸化防止剤の量は、実施例の全てに対して同じに保たれ、全潤滑組成物の重量%に基づき、1.0重量%のアミン系酸化防止剤、および0.5重量%のフェノール系酸化防止剤、および0.1重量%のモリブデン含有酸化防止剤を含んだ。組成物の各々について上記のプロセスを使用して測定した144時間後のデルタKV値が、表3に示される。
【0192】
【表3】
【0193】
実施例4~7について表4に示される試験結果は、モリブデン含有酸化防止剤を添加すると、分散剤の総量に対する分散剤BおよびCの比が低減され得ることを示す。0.42:1を超える分散剤の総量に対する分散剤B+Cの合計の比を有する組成物に対するデルタKV(144)値の全て。高分子量分散剤(1300MWを超えるPIB基を有する分散剤)のこの比により、対応する潤滑剤組成物は、上記の予想外の有益な粘度特性を示し得る。
【0194】
【表4】
【0195】
実施例8は、比較例3よりも少ない酸化防止剤を有する。実施例8および比較例3についての表4の結果は、適切なレベルのより高い分子量の分散剤を使用することによって、より少ない全抗酸化剤を有する配合物においてより良好な結果を達成することが可能であることを示す。これは、他の分野、例えば総配合コストにおいて有益な効果を有し得る。
【0196】
本開示の他の実施形態は、本明細書の考慮および本明細書に開示される実施形態の実施から当業者に明らかとなるであろう。本明細書および特許請求の範囲全体を通して使用される場合、「a」および/または「an」は、1つまたは2つ以上を指し得る。したがって、反対の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低限、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値パラメータは、報告された有効数字の数および通常の丸め技術を適用することによって少なくとも解釈されるべきである。広範囲の開示を記載する数値範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も、それらのそれぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる、所定の誤差を本質的に含有する。本明細書および実施例が、例示的なものにすぎないと見なされ、本開示の真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【0197】
上記の実施形態は、実際にかなりの変動を受けやすい。したがって、実施形態は、本明細書の上記に説明される特定の例証に限定されることが意図されない。むしろ、上記の実施形態は、法律問題として利用可能なそれらの同等物を含む、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内にある。
【0198】
特許権所有者は、いかなる開示される実施形態も一般に開放することを意図せず、いかなる開示される変更または変形が文字通り特許請求の範囲に該当し得ない程度まで、それらは均等論下でこれらの一部であるとみなされる。
【0199】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、またはパラメータは、単独で、または本明細書に開示されるありとあらゆる他の成分、化合物、置換基、もしくはパラメータのうちの1つ以上との組み合わせで使用することについて開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。
【0200】
また、本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、またはパラメータについての各量/値または量/値の範囲は、本明細書に開示されるいずれかの他の成分(複数可)、化合物(複数可)、置換基(複数可)、またはパラメータ(複数可)の各量/値または量/値の範囲と組み合わせて開示されているとも解釈されるべきであり、したがって、本明細書に開示される2つ以上の成分(複数可)、化合物(複数可)、置換基(複数可)、またはパラメータについての量/値または量/値の範囲のいずれかの組み合わせも、この説明の目的で互いに組み合わせて開示されることも理解されたい。
【0201】
本明細書に開示される各範囲は、同じ有効桁の数字を有する開示範囲内の各特定値の開示として解釈されるべきであることをさらに理解されたい。したがって、1~4の範囲は、1、2、3、および4の値の明確な開示として解釈されるべきである。
【0202】
本明細書に開示される各範囲の各下限は、同じ成分、化合物、置換基、またはパラメータについて本明細書に開示される各範囲の各上限および各範囲内の各特定値と組み合わせて開示されると解釈されるべきであることをさらに理解されたい。したがって、本開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と、もしくは各範囲内の各特定値と組み合わせることによって、または各範囲の各上限を各範囲内の各特定値と組み合わせることによって導き出される全ての範囲の開示として解釈されるべきである。
【0203】
さらに、説明または実施例において開示される成分、化合物、置換基、またはパラメータの特定量/値は、範囲の下限または上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、したがって、本出願の他の箇所で開示される同じ成分、化合物、置換基、またはパラメータについての範囲の任意の他の下限もしくは下限または特定量/値と組み合わされて、その成分、化合物、置換基、またはパラメータについての範囲を形成することができる。