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特許73209981つ又はいくつかの同時に存在する周波数における局部発振器及びデュアルプロービングビームによるヘテロダイン検波のためのライダー、及びデュアルヘテロダイン検波によるライダー検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】1つ又はいくつかの同時に存在する周波数における局部発振器及びデュアルプロービングビームによるヘテロダイン検波のためのライダー、及びデュアルヘテロダイン検波によるライダー検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20230728BHJP
   G01N 21/49 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
G01N21/27 B
G01N21/49 C
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019111148
(22)【出願日】2019-06-14
(65)【公開番号】P2020024186
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】1855413
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】316019093
【氏名又は名称】オフィス ナショナル デチュデ エ ドゥ ルシェルシェ アエロスパシアレ (オネラ)
(73)【特許権者】
【識別番号】511174786
【氏名又は名称】セントレ ナショナル デテュッド スパティアレ
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL D‘ETUDES SPATIALES
【住所又は居所原語表記】2, place Maurice Quentin F-75001 Paris,France
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エベール フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ルメートル フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】セザール ニコラ
【審査官】古川 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-507005(JP,A)
【文献】特表2011-529180(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第03027116(FR,A1)
【文献】Xianyu Zhao et al.,Absolute distance measurement by multi-heterodyne interferometry using an electro-optic triple comb,Optics Letters,Optical Society of America,2018年02月09日,Vol. 43, Issue 4,p.807-810,<DOI: https://doi.org/10.1364/OL.43.000807>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01J 3/00 - G01J 4/04
G01J 7/00 - G01J 9/04
G01S 7/48 - G01S 7/51
G01S 17/00 - G01S 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質の遠隔分光のためのライダー(LIDAR)タイプの装置(1)であって、
光放出チャネル(2)と、
受信チャネル(7)と
を備え、
前記光放出チャネル(2)は、
発生周波数(FG)においてレーザーストライプを放出するように構成されたレーザー源(3)と、
放出された前記レーザーストライプから、
前記発生周波数(FG)から導出された安定した周波数を有する少なくとも1つの第1ストライプを含む第1くし(P1)、
前記発生周波数(FG)から導出された安定した周波数を有する少なくとも1つの第2ストライプを含む第2くし(P2)、及び、
前記発生周波数(FG)から導出された安定した周波数を有する少なくとも1つの局所ストライプを含む局所くし(POL)
を生成するように構成された光波周波数発生器(4)と、
前記第1及び前記第2くし(P1,P2)を含む放出信号(6)を、前記放出信号(6)によって横切られる前記物質に向けて放出するように構成された送出望遠鏡(5)と、
を含み、
前記受信チャネル(7)は、
前記放出信号(6)によって横切られる物質によって反射された信号(9)を受信するように構成された受信望遠鏡(8)であって、前記反射された信号(9)が、
前記放出信号の前記第1くしの前記少なくとも1つの第1ストライプによって横切られた前記物質によって反射された少なくとも1つの第1ストライプを含む第1反射くし、及び、
前記放出信号の前記第2くしの前記少なくとも1つの第2ストライプによって横切られた前記物質によって反射された少なくとも1つの第2ストライプを含む第2反射くし
を含み、前記局所くしの各局所ストライプが、前記第1反射くしの対応する第1ストライプ、及び前記第2反射くしの対応する第2ストライプと関連付けられた、受信望遠鏡(8)と、
前記局所くしの前記少なくとも1つの局所ストライプの、前記第1反射くしの前記対応する第1ストライプとの少なくとも1つの第1ビート信号(11)、
前記局所くしの前記少なくとも1つの局所ストライプの、前記第2反射くしの前記対応する第2ストライプとの少なくとも1つの第2ビート信号(12)、及び、
前記少なくとも1つの第1ビート信号(11)の、前記少なくとも1つの第2ビート信号(12)との少なくとも1つの第3ビート信号(13)
を検出するように構成された検出システム(10)とを備え、
前記第3ビート信号は、第1周波数シフト(FMAO1)と第2周波数シフト(FMAO2)との間の差の絶対値に等しい周波数の周辺でフィルタが掛けられる、
物質の遠隔分光のためのライダータイプの装置(1)。
【請求項2】
前記第1くし、前記第2くし、及び前記局所くしのそれぞれは、2以上の数のストライプを含む
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1くし、前記第2くし、及び前記局所くしのそれぞれは、2と13との間に含まれる数のストライプを含む
請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記局所くしの前記局所ストライプの周波数は、前記発生周波数の周辺に局所ステップ(FMEOL)で、規則正しい間隔をおいて配置されており、前記局所ステップ(FMEOL)の値は、500MHzと2000MHzとの間に含まれる
請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第1くしの前記第1ストライプの周波数は、前記発生周波数と第1周波数シフト(FMAO1)との和に等しい第1中心周波数(FC1)の周辺に、第1ステップ(FMEO1)に従って規則正しい間隔をおいて配置される
請求項3又は4に記載の装置。
【請求項6】
前記第2くしの前記第2ストライプの周波数は、前記発生周波数と第2周波数シフト(FMAO2)との和に等しい第2中心周波数(FC2)の周辺に、第2ステップ(FMEO2)に従って規則正しい間隔をおいて配置される
請求項3~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記第1くしの前記第1ストライプの周波数は、前記発生周波数と第1周波数シフト(FMAO1)との和に等しい第1中心周波数(FC1)の周辺に、第1ステップ(FMEO1)に従って規則正しい間隔をおいて配置され、
前記第2くしの前記第2ストライプの周波数は、前記発生周波数と第2周波数シフト(FMAO2)との和に等しい第2中心周波数(FC2)の周辺に、第2ステップ(FMEO2)に従って規則正しい間隔をおいて配置され、
前記第1ステップ(FMEO1)の値及び前記第2ステップ(FMEO2)の値は、前記局所ステップ(FMEOL)の値と偏移(D)との和に等しい
請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記検出システムは、少なくとも1つの第3ビート信号(13)を生成するために、前記少なくとも1つの第1ビート信号(11)及び前記少なくとも1つの第2ビート信号(12)を処理するように構成されたデジタル処理ユニット(UTN)を備える
請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記デジタル処理ユニット(UTN)は、
デジタル信号(11N,12N)を生成するために、前記少なくとも1つの第1ビート信号(11)及び前記少なくとも1つの第2ビート信号(12)を含む時間信号をデジタル化するように構成されたアナログ・デジタル変換器(ADC)と、
前記デジタル信号(11N,12N)の第1デジタルスペクトラム(SN11,SN12)を計算するように構成された第1計算ユニット(FFT)と、
以前に計算された前記第1デジタルスペクトラム(SN11,SN12)の異なるスペクトル要素を分離するように構成された第1フィルタリングユニット(UF1)と、
前記少なくとも1つの第1ビート信号(11)の少なくとも1つの第1時間要素及び前記少なくとも1つの第2ビート信号(12)の少なくとも1つの第2時間要素を含む少なくとも1つの時間要素を生成するために、前記第1フィルタリングユニット(UF1)によって分離された各スペクトル要素を並行してスペクトル領域から時間領域に変換するように構成され、前記少なくとも1つの時間要素の各第1時間要素及び前記少なくとも1つの第2時間要素の各第2時間要素が前記局所くしの局所ストライプに対応する、第2計算ユニット(FFT-1)と、
前記局所くしの各局所ストライプに対応する、前記少なくとも1つの第3ビート信号のうちの第3ビート信号を生成するために、前記局所くしの各局所ストライプについて並行して、前記少なくとも1つの第1ビート信号(11)の対応する前記第1時間要素と前記少なくとも1つの第2ビート信号(12)の対応する前記第2時間要素とのビートを生成するように構成された混合器(MEL)と、
前記少なくとも1つの第3ビート信号のうちの各第3ビート信号のデジタルスペクトラムを、各第3ビート信号に関して並行して計算するように構成された第3計算ユニット(FFT2)と、
前記少なくとも1つの第3ビート信号のうちの各第3ビート信号内で、低周波スペクトル要素(CSBF1,CSBF2,CSBF3,…,CSBFi,…)を分離するように構成された第2フィルタリングユニット(UF2)とを備える
請求項8に記載の装置。
【請求項10】
物質の遠隔分光のためのライダー検出方法(100)であって、
レーザー源(3)によって、発生周波数(FG)においてレーザーストライプを放出するステップ(101)と、
周波数発生器(4)によって、前記レーザーストライプから、
i. 前記発生周波数(FG)から導出された安定した周波数を有する少なくとも1つの第1ストライプを含む第1くし(P1)、
ii. 前記発生周波数から導出された安定した周波数を有する少なくとも1つの第2ストライプを含む第2くし(P2)、及び、
iii. 前記発生周波数から導出された安定した周波数を有する少なくとも1つの局所ストライプを含む局所くし(POL)
を生成するステップ(102)と、
前記第1及び前記第2くし(P1,P2)を含む放出信号(6)を、前記放出信号(6)によって横切られる前記物質に向けて、送出望遠鏡(5)によって放出するステップ(103)と、
前記放出信号(6)によって横切られる物質によって反射された信号(9)を、受信望遠鏡(8)によって受信するステップ(104)であって、前記反射された信号(9)が、
i. 前記放出信号の前記第1くしの前記少なくとも1つの第1ストライプによって横切られた前記物質によって反射された少なくとも1つの第1ストライプを備える第1反射くし、及び、
ii. 前記放出信号の前記第2くしの前記少なくとも1つの第2ストライプによって横切られた前記物質によって反射された少なくとも1つの第2ストライプを備える第2反射くし
を備え、前記局所くしの各局所ストライプが、前記第1反射くしの対応する第1ストライプ、及び前記第2反射くしの対応する第2ストライプと関連付けられた、受信するステップ(104)と、
検出システム(10)によって、
iii. 前記局所くしの前記少なくとも1つの局所ストライプの、前記第1反射くしの前記対応する第1ストライプとの少なくとも1つの第1ビート信号(11)、
iv. 前記局所くしの前記少なくとも1つの局所ストライプの、前記第2反射くしの前記対応する第2ストライプとの少なくとも1つの第2ビート信号(12)、及び、
v. 前記少なくとも1つの第1ビート信号の、前記少なくとも1つの第2ビート信号との第3ビート信号(13)
を検出するステップ(105)とを備え、
前記第3ビート信号は、第1周波数シフト(FMAO1)と第2周波数シフト(FMAO2)との間の差の絶対値に等しい周波数の周辺でフィルタが掛けられる、
物質の遠隔分光のためのライダー検出方法(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光による大気の探測に応用される検出及び測定レーザー、すなわちライダー(LIDAR)の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
第1周波数に中心を持つ第1の狭いスペクトル帯域の光放出から第1の複数のスペクトル要素を備える第1光波を生成するように構成されたレーザー源を使用することが知られており、各スペクトル要素は帯域、すなわちストライプをカバーし、帯域又はストライプは、周波数空間において光波のスペクトル構成が第1スペクトルくしの形を有するように、他の要素とは異なる周波数に中心を有する狭いスペクトル帯域又はストライプであり、くしの各ストライプの高さは、くしの各ストライプにわたって分布する第1の光放出のスペクトルストライプの光エネルギーに対応する。
【0003】
第1の光放出から、第1の輝く光波を生成するのみではなく、同時に第2の光波をも生成することも知られており、第2の光波は、第1の光波と干渉性があり、第1の光波のように第2の複数のスペクトル要素を含み、それらは第2スペクトルくしを形成し、第2くしの各スペクトルストライプは、それに対して周波数がわずかにシフトした第1くしのスペクトルストライプと関連付けられている。
【0004】
最後に、第1及び第2の光線のくしを標的、例えば大気の一部、に向けて放出し、ビートを生成するために、例えば、第1くしのストライプに対応する受信信号を、受信され第2くしのストライプに関係付けられた信号で変調し、変調された信号の無線周波数(RF)要素をフィルタに通すために、この標的によって送り返された信号を受信することも、知られている。この変調は、ストライプの各対(第1くし-第2くし)について行われる。
【発明の概要】
【0005】
この装置の不利な点は、放出された各ストライプに対して、標的から受信される信号が発光体と受信機との間で波の往復によって減衰し、したがって、もしこの距離が大きいなら、信号は低レベルのものである、ということである。フィルタを通ったRF要素の電力は、その結果として、個別に考えられた各ストライプから受信された信号の2倍減衰する。信号の信号対雑音比は、したがって、もし実験条件が光子雑音を支配的なものとしないなら、非常に劣化する。
【0006】
単一又は2つの発光ストライプ、かつ標的に単一の光波が放出される場合において、既知の改良は、長距離にわたる減衰を受けていない局部発振器の電力を利用するために、そのフィードバックを局部発振器のストライプと混合することにある。「ヘテロダイン検波」又は「コヒーレント検波(同期検波)」と呼ばれるこの装置は、レーザー源のコヒーレント長によって光周波数に限定され得、その結果、フィードバック光波と局部発振器との間でランダム位相シフトが生じる。この位相シフトは、無線周波数信号を好ましくない統計的標準偏差でランダムに変調し、それはいくつかのランダム強度測定の平均化を行うことを必要とし、したがって劣化した最終的な信号対雑音比が得られる。
【0007】
本発明は、したがって、これらの不利な点の全て又は一部を克服することを目指す。
【0008】
この目的のために、本発明は、物質の遠隔分光のためのライダー(LIDAR)タイプの装置に関し、この装置は、
光放出チャネルと、
受信チャネルとを備え、
前記光放出チャネルは、
発生周波数においてレーザーストライプを放出するように構成されたレーザー源と、
放出された前記レーザーストライプから、
前記発生周波数から導出された安定した周波数を有する少なくとも1つの第1ストライプを含む第1くし、
前記発生周波数から導出された安定した周波数を有する少なくとも1つの第2ストライプを含む第2くし、及び、
前記発生周波数から導出された安定した周波数を有する少なくとも1つの局所ストライプを含む局所くし
を生成するように構成された光波周波数発生器と、
前記第1及び前記第2くしを含む放出信号を、前記放出信号によって横切られる前記物質に向けて放出するように構成された送出望遠鏡と、
を含み、
前記受信チャネルは、
前記放出信号によって横切られる物質によって反射された信号を受信するように構成された受信望遠鏡であって、前記反射された信号が、
前記放出信号の前記第1くしの前記少なくとも1つの第1ストライプによって横切られた前記物質によって反射された少なくとも1つの第1ストライプを含む第1反射くし、及び、
前記放出信号の前記第2くしの前記少なくとも1つの第2ストライプによって横切られた前記物質によって反射された少なくとも1つの第2ストライプを含む第2反射くし
を含み、前記局所くしの各ストライプが、前記第1反射くしの対応する第1ストライプ、及び前記第2反射くしの対応する第2ストライプと関連付けられた、受信望遠鏡と、
前記局所くしの前記少なくとも1つのストライプの、前記第1反射くしの前記対応する第1ストライプとの少なくとも1つの第1ビート信号、
前記局所くしの前記少なくとも1つのストライプの、前記第2反射くしの前記対応する第2ストライプとの少なくとも1つの第2ビート信号、及び、
前記少なくとも1つの第1ビート信号の、前記少なくとも1つの第2ビート信号との少なくとも1つの第3ビート信号
を検出するように構成された検出システムとを備える。
【0009】
これらの装置のおかげで、局所くしの各ストライプは、第1反射くしの対応する第1ストライプ及び第2反射くしの対応する第2ストライプと混合され、局所くしの信号は発光体から受信機への往復によって減衰しない。
【0010】
第1及び第2くしのストライプは局所くしのストライプに関して同じ妨害を受けるので、局所くしの各ストライプと、一方では対応する第1ストライプとの、他方では対応する第2ストライプとの、起こり得る位相シフトは、常に同じである。よって、第3ビート信号は、共通の位相シフトを除去し、最先端のヘテロダイン検波に特有のランダム変調効果を相殺する。それにより、局部発振器の電力を十分に利用することが可能になり、よってそれにより、単一のくしのエネルギーであったエネルギーと比較して、各くしのエネルギーの2分割に関する減衰にもかかわらず、ヘテロダイン混合に関係する損失にもかかわらず、信号対雑音比を大幅に向上させることが可能になる。この利得は、局所くしの電力と反射くしの電力との比、及び第3ビートの周波数が低いことによって可能となった帯域の減少の関数である。
【0011】
一実施形態によると、本発明は、以下の1つ以上の特徴を、単独で又は組合せで備える。
【0012】
一実施形態によると、周波数発生器は、第2くしとは別々に第1くしを生成する。
【0013】
一実施形態によると、周波数発生器は、第1音響光学変調器及び第2音響光学変調器を備え、周波数発生器は、第2音響光学変調器の出力において形成される第2くしからは分離した、第1音響光学変調器の出力において形成される第1くしを生成するように構成される。
【0014】
一実施形態によると、前記第1くし、前記第2くし、及び前記局所くしのそれぞれは、1以上の数の、好ましくは2以上の数の、好ましくは2と13との間に含まれる数のストライプを含む。
【0015】
一実施形態によると、前記第1くし、前記第2くし、及び前記局所くしのそれぞれは、2以上の数の、好ましくは2と13との間に含まれる数のストライプを含む。
【0016】
これらの装置のおかげで、考慮される物質の吸収スペクトルバンドにおけるスペクトラムのいくつかの点において同時にその物質を調べることが可能である。放出信号の異なるストライプ(第1及び第2くし)は、調べられる物質の同じ領域を同時に横切り、反射信号を構成する異なる反射ストライプを同時に生じさせる。よって、放出信号の全体的な周波数の位置付けにおける小さな不確実性が、各くしにおいて全て異なる周波数を有するいくつかのストライプの同時放出によって得られる大きな周波数サンプリングによって補償され得、サンプリングの周波数ステップは上述の技術によって十分に制御される。吸収周波数に再び注目することが、受信後の処理によって可能である。この有利な点は、周波数くしを有するライダーに特有のものであるが、本発明の他の特徴と組み合わされるとき、より興味深いものとなり、信号対雑音比が非常に向上する。よって、これらの装置によると、局所くしによって提供される信号対雑音比の向上を利用することのみではなく、従来のライダーダイアル(DIAL)で行われる測定の非同時性によって引き起こされるバイアスをより効果的に除去することも可能になる。
【0017】
一実施形態によると、前記局所くしの前記ストライプの周波数は、前記発生周波数の周辺に局所ステップで、規則正しい間隔をおいて配置されており、前記局所ステップの値は、500MHzと2000MHzとの間に含まれ、好ましくは1000MHzに等しい。
【0018】
本発明の実施形態によると、発生周波数は光周波数であり、好ましくは200THz周辺に位置し、これは200000GHzを意味する。
【0019】
一実施形態によると、前記第1くしのストライプの周波数は、前記発生周波数と第1周波数シフトとの和に等しい第1中心周波数の周辺に、第1ステップに従って規則正しい間隔をおいて配置される。
【0020】
本発明の実施形態によると、第1周波数シフトは、第1音響光学変調器によって100MHzに等しい値の周辺で得られる。
【0021】
一実施形態によると、前記第2くしのストライプの周波数は、前記発生周波数と第2周波数シフトとの和に等しい第2中心周波数の周辺に、第2ステップに従って規則正しい間隔をおいて配置される。
【0022】
本発明の実施形態によると、第1及び第2周波数シフトは、それぞれ第1及び第2音響光学変調器によって、好ましくは約100MHzに等しい値の周辺で得られる。
【0023】
一実施形態によると、前記第1ステップの値及び前記第2ステップの値は、前記局所ステップの値と偏移との和に等しい。
【0024】
本発明の実施形態によると、一方の第1及び第2くしのステップの値と、他方の局所くしのステップの値との間の偏移の値は、約10MHzである。
【0025】
一実施形態によると、前記検出システムは、少なくとも1つの第3ビート信号を生成するために、前記少なくとも1つの第1ビート信号及び前記少なくとも1つの第2ビート信号を処理するように構成されたデジタル処理ユニットを備える。
【0026】
この第2ビートレベルは、例えば、デジタル的に操作され得、ヘテロダイン時間信号のスペクトルフィルタリング及びその信号を2乗することで構成され得る。新たなフィルタリングは、標的とされる物質において探し求められる分光情報を搬送する新たなビートの周波数を分離する。
【0027】
一実施形態によると、前記デジタル処理ユニットは、
デジタル信号を生成するために、前記少なくとも1つの第1ビート信号及び前記少なくとも1つの第2ビート信号を含む時間信号をデジタル化するように構成されたアナログ・デジタル変換器と、
前記デジタル信号の第1デジタルスペクトラムを計算するように構成された第1計算ユニットと、
以前に計算された前記デジタルスペクトラムの異なるスペクトル要素を分離するように構成された第1フィルタリングユニットと、
前記少なくとも1つの第1ビート信号の少なくとも1つの第1時間要素及び前記少なくとも1つの第2ビート信号の少なくとも1つの第2時間要素を含む少なくとも1つの時間要素を生成するために、前記第1フィルタリングユニットによって分離された各スペクトル要素を並行してスペクトル領域から時間領域に変換するように構成され、前記少なくとも1つの時間要素の各第1時間要素及び前記少なくとも1つの第2時間要素の各第2時間要素が前記局所くしのストライプに対応する、第2計算ユニットと、
前記局所くしの各ストライプに対応する、前記少なくとも1つの第3ビート信号のうちの第3ビート信号を生成するために、前記局所くしの各ストライプについて並行して、前記少なくとも1つの第1ビート信号の対応する前記第1時間要素と前記少なくとも1つの第2ビート信号の対応する前記第2時間要素とのビートを生成するように構成された混合器と、
前記少なくとも1つの第3ビート信号のうちの各第3ビート信号のデジタルスペクトラムを、各第3ビート信号に関して並行して計算するように構成された第3計算ユニットと、
前記少なくとも1つの第3ビート信号のうちの各第3ビート信号内で、低周波スペクトル要素を分離するように構成された第2フィルタリングユニットと
を備える。
【0028】
これらの装置によると、検出システムによる第3ビート信号の検出が、デジタル的に行われ得る。
【0029】
一実施形態によると、信号の最終的な対のそれぞれは、局所くしのストライプと、第2くしのストライプと同様に第1くしのストライプとに、対応する。信号の各対は、局所くしのストライプの、第1反射くしの対応する第1ストライプとの第1ビート信号と、局所くしのストライプの、第2反射くしの対応する第2ストライプとの第2ビート信号とを含む。
【0030】
一実施形態によると、前記第3ビート信号は、前記第1周波数シフトと前記第2周波数シフトとの間の差の絶対値に等しい周波数の周辺でフィルタが掛けられる。
【0031】
これらの装置によると、第3ビート信号にフィルタを掛けることにより、向上した信号対雑音比を利用しながら、探し求められる分光情報を搬送する信号を分離することが可能になる。
【0032】
本発明の実施形態によると、第3中間周波数の値は約1MHzである。
【0033】
一実施形態によると、本発明は、物質の遠隔分光のためのライダー検出方法にも関し、この方法は、
レーザー源によって、発生周波数においてレーザーストライプを放出するステップと、
周波数発生器によって、前記レーザーストライプから、
前記発生周波数から導出された安定した周波数を有する少なくとも1つの第1ストライプを含む第1くし、
前記発生周波数から導出された安定した周波数を有する少なくとも1つの第2ストライプを含む第2くし、及び、
前記発生周波数から導出された安定した周波数を有する少なくとも1つの局所ストライプを含む局所くし
を生成するステップと、
前記第1及び前記第2くしを含む放出信号を、前記放出信号によって横切られる前記物質に向けて、送出望遠鏡によって放出するステップと、
前記放出信号によって横切られる物質によって反射された信号を、受信望遠鏡によって受信するステップであって、前記反射された信号が、
前記放出信号の前記第1くしの前記少なくとも1つの第1ストライプによって横切られた前記物質によって反射された少なくとも1つの第1ストライプを備える第1反射くし、及び、
前記放出信号の前記第2くしの前記少なくとも1つの第2ストライプによって横切られた前記物質によって反射された少なくとも1つの第2ストライプを備える第2反射くし
を備え、前記局所くしの各ストライプが、前記第1反射くしの対応する第1ストライプ、及び前記第2反射くしの対応する第2ストライプと関連付けられた、受信するステップと、
検出システムによって、
前記局所くしの前記少なくとも1つのストライプの、前記第1反射くしの前記対応する第1ストライプとの少なくとも1つの第1ビート信号、
前記局所くしの前記少なくとも1つのストライプの、前記第2反射くしの前記対応する第2ストライプとの少なくとも1つの第2ビート信号、及び、
前記少なくとも1つの第1ビート信号の、前記少なくとも1つの第2ビート信号との第3ビート信号
を検出するステップとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0034】
よく理解するために、本発明は、本発明による装置の実施形態を限定しない例として表す添付の図面を参照して説明される。機能が類似する類似の要素は、さまざまな図において同じ参照番号で示される。
図1図1は、本発明の実施形態による遠隔分光装置の概略図である。
図2図2は、異なるくしの周波数スペクトラムの概略図である。
図3図3は、検出システムの一部分のデジタル実施形態の概略図である。
図4図4は、本発明による方法の異なるステップの簡略化された図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1において、遠隔分光装置1は、光放出チャネル2と、光受信チャネル7とを備える。
【0036】
光放出チャネル2は、発生周波数FGでレーザーストライプを放出するように構成されたレーザー源3を備え、レーザー源は、光ファイバによって周波数発生器4に接続されている。
【0037】
一般に、装置1の異なる光学コンポーネントの間の光信号の伝送は、光ファイバによって行われ、光ファイバは好ましくは送信光信号の偏光の維持を保証する。
【0038】
周波数発生器4の入力において、レーザービームは、第1局所くし(peigne local)POLを生成するように構成された第1電気光学変調器41へ導かれる第1ビームに分割される。この第1局所くしは、少なくとも1つの局所ストライプを備え、各ストライプ(raie)は発生周波数FGから導出される安定した周波数を有する。
【0039】
一実施形態によると、発生周波数は光周波数であって好ましくは200THzに近く、局所くしは2より大きな数、好ましくは2と13との間に含まれる数のストライプを備える。図2に示されているように、ストライプの周波数は、発生周波数FGの周辺に分布し、かつ、500MHzと2000MHzとの間に含まれる、好ましくは1000MHzに等しい所定値FMEOLだけ互いにシフトしており、この図において、発生周波数のどちらの側にも規則正しく分布する周波数を有する13個のストライプが、周波数fの軸に沿って表されている。
【0040】
周波数発生器4の入力において、レーザーストライプは、第1音響光学変調器43及び第2音響光学変調器44と組み合せて、第2音響光学変調器44の出力において形成される第2くしP2からは分離した、第1音響光学変調器43の出力において形成される第1くしP1を生成するように構成される第2電気光学変調器42へ導かれる第2ビームに同時に分割される。これらの第1及び第2くしP1,P2は、少なくとも1つのストライプを備え、各ストライプは発生周波数FGから導出される安定した周波数を有する。
【0041】
好ましくは、図2に示された実施形態によると、第1及び第2くしP1,P2のそれぞれは、局所くしのストライプ数と同じ数の、すなわち2より大きい数の、好ましくは2と13との間に含まれる数のストライプを備える。第1及び第2くしP1,P2のそれぞれのストライプの周波数は、発生周波数FGから導出される中心周波数FC1,FC2の周辺に分布し、第1くしP1については値FMEO1だけ、第2くしP2については値FMEO2だけ、互いにそれぞれシフトし、FMEO1は、例えば500MHzと2000MHzとの間に含まれ、好ましくは1000MHzに等しく、FMEO2は、例えば500MHzと2000MHzとの間に含まれ、好ましくは1000MHzに等しい。
【0042】
一実施形態によると、第1くしの中心周波数FC1及び第2くしの中心周波数FC2は、2つの音響光学変調器43,44のそれぞれによってそれぞれ求められた値FMAO1,FMAO2だけ発生周波数FGからそれぞれシフトしている。
【0043】
一実施形態によると、発生周波数、すなわち局所くしの中心周波数と、第1くしP1の中心周波数との間のシフトの値、及び、発生周波数と第2くしP2の中心周波数との間のシフトの値FMAO2は、好ましくはおよそ100MHz、例えばFMAO1は110MHz、FMAO2は111MHzに設定される。
【0044】
局所くしの各ストライプは、第1くしP1の対応する第1ストライプ、典型的には、その周波数が、局所くし上で考慮されるストライプの周波数に最も近い、第1くしのストライプの周波数に関連付けられ、同様に、局所くしの各ストライプは、第2くしP2の対応する第2ストライプ、典型的には、その周波数が、局所くし上で考慮されるストライプの周波数に最も近い、第2くしのストライプの周波数に関連付けられる。
【0045】
一実施形態によると、第1くしP1の第1ステップFMEO1と第2くしP2の第2ステップFMEO2とは、互いに等しく、局所くしの局所ステップFMEOLの値からは偏移値Dだけ異なっている。本発明の実施形態によると、偏移値は約10MHzである。
【0046】
1つの特定の実施形態によると、以下のパラメータの値は、よって、局所くしPOL、並びに第1及び第2くしP1,P2を規定するように設定される。すなわち、
偏移D=10.6MHz
局所くしのステップFMEOL: FMEOL=889.4MHz
第1くしP1のステップFMEO1: FMEO1=FMEOL+D=900MHz
第2くしP2のステップFMEO2: FMEO2=FMEOL+D=900MHz
発生周波数、すなわち局所くしの中心周波数と、第1くしP1の中心周波数との間のシフト: FMAO1=110MHz
発生周波数、すなわち局所くしの中心周波数と、第2くしP2の中心周波数との間のシフト: FMAO2=111MHz。
【0047】
例として提供されるこの特定の実施形態によると、発生周波数と局所くしPOLを構成する13本のストライプのそれぞれの周波数との間の、MHzで表され、順序0の(発生周波数における)ストライプの周りに配置された偏移は、以下の表1の第2列POLに概括される。
【0048】
【表1】
同様に、発生周波数FGと第1くしP1を構成する13本のストライプのそれぞれの周波数との間の、MHzで表され、順序0の(発生周波数における)ストライプの周りに配置された偏移は、表1の第3列P1に概括される。
【0049】
同様に、発生周波数FGと第2くしP2を構成する13本のストライプのそれぞれの周波数との間の、MHzで表され、順序0の(発生周波数における)ストライプの周りに配置された偏移は、表1の第4列P2に概括される。
【0050】
表1の同じ行に現れる周波数は、一方では、列POLにおいて局所くしのストライプの周波数であり、他方では、列P1及びP2において、局所くしのストライプに関連付けられ、それぞれ第1及び第2くしP1,P2に属する第1ストライプ及び第2ストライプに対応する周波数である。
【0051】
それぞれ第1音響光学変調器43及び第2音響光学変調器44の出力において、個別に同時に形成される第1くしP1及び第2くしP2は、結合器、好ましくは偏光面維持結合器によるその空間的重畳の後で、受信する信号の電力を増幅して分光によって遠隔で調べられる必要がある物質に向けて送出望遠鏡5によって放出される光放出信号6を生成するように構成された光増幅器45に、光ファイバを経由して送信される光信号を構成する。
【0052】
一実施形態によると、光増幅器45は、EDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier)タイプ又はYDFA(Ytterbium)タイプのものであり、それ自体最新技術において知られている。
【0053】
送出望遠鏡5は、これも最新技術において知られているが、放出信号6が調べられるべき物質を横切り、堅固なターゲット上で反射され、よって受信望遠鏡8に送り返される反射信号9を生成するように、増幅された信号6を受信して、それを調べられるべき物質に向けて放出するように構成されている。
【0054】
光受信チャネル7は、受信望遠鏡8と、光結合モジュール14と、検出システム10とを備え、これらの構成要素は、前に示したように、光ファイバリンクによって接続されている。
【0055】
一実施形態によると、送出望遠鏡5及び受信望遠鏡7は、モノスタティック構成と呼ばれる構成の場合には、単一の構成要素の形であり得る。
【0056】
受信望遠鏡7は、放出信号6が調べられるべき物質を横切った後に、反射信号9を受信するように構成され、反射信号9は、
・放出信号6の第1くしP1の少なくとも1つの第1ストライプによって物質を横切った後に反射される少なくとも1つの第1ストライプを備える第1反射くしと、
・放出信号6の第2くしP2の少なくとも1つの第2ストライプによって物質を横切った後に反射される少なくとも1つの第2ストライプを備える第2反射くしと
を備える。
【0057】
局所くしの各ストライプが、第1くしP1の対応する第1ストライプに、及び、第2くしP2の対応する第2ストライプに、関連付けられるのと同様に、局所くしの各ストライプは、第1反射くしの対応する第1ストライプに、すなわち、放出信号6によって物質を横切った後に反射された第1くしP1の対応するストライプに、及び、第2反射くしの対応する第2ストライプに、すなわち、放出信号6によって物質を横切った後に反射された第2くしP2の対応するストライプに、関連付けられる。
【0058】
結合モジュール14は、局所くしの信号POLと反射信号9とを結合し、結合された信号を検出システム10に送信するように構成される。
【0059】
一実施形態によると、検出システム10は、
・局所くしの少なくとも1つのストライプの、第1反射くしの対応する第1ストライプとの、少なくとも1つの第1ビート信号11と、
・局所くしの少なくとも1つのストライプの、第2反射くしの対応する第2ストライプとの、少なくとも1つの第2ビート信号12と
を生じさせるように構成された光検出器を備える。
【0060】
一実施形態によると、光検出器は、局所くしPOLの各ストライプと反射信号9を構成する第2反射くしの対応する第2ストライプとの間に少なくとも1つの第2ヘテロダインビート信号12が生成されるのに加えて、局所くしPOLの各ストライプと反射信号9を構成する第1反射くしの対応する第1ストライプとの間に少なくとも1つの第1ヘテロダインビート信号11が生成される、第1光ビートレベルを、このように検出し、生じさせる。
【0061】
少なくとも1つの第1ビート信号11は、局所くしの各ストライプについて、局所くしのストライプと第1反射くしP1の対応する第1ストライプとの間の第1ビート信号を備える。同様に、少なくとも1つの第2ビート信号12は、局所くしの各ストライプについて、局所くしのストライプと第2反射くしP2の対応する第1ストライプとの間の第2ビート信号を備える。
【0062】
各ビート信号において、結合された信号の周波数の差に等しい中間周波信号により大きな興味が持たれていることが知られている。
【0063】
よって、例として、上のように設定されたパラメータの値に対応する実施形態によると、上述の表1に従って局所くしPOL、並びに第1及び第2くしP1,P2を規定するために、同じ表1が、局所くしの異なるストライプの、反射信号9を部分的に構成する第1反射くしの対応するストライプとの各第1ビート信号11を構成する信号の中間周波数をコラムB(POL,P1)において規定し、同じ表1が、局所くしの異なるストライプの、第2反射くしの対応するストライプとの各第2ビート信号12を構成する信号の中間周波数をコラムB(POL,P2)において規定し、第2反射くしも反射信号9を構成する。
【0064】
図3に示されているように、検出システム10は、局所くしに存在する異なるストライプと同じ数のビート信号CSBF1,CSBF2,CSBF3,…CSBFi,…を含む少なくとも1つの第3ビート信号13を、局所くしの各ストライプについて生成するために、少なくとも1つの第1ビート信号11のうちの、局所くしのこのストライプに対応する第1ビート信号と、少なくとも1つの第2ビート信号12のうちの、局所くしのこの同じストライプに対応する第2ビート信号とのビートを、第2電気ビートレベルで、局所くしの各ストライプについて生成するようにも構成される。
【0065】
この目的のために、局所くしの各ストライプについて、
・少なくとも1つの第1ビート信号11のうちのビート信号は、局所くしのストライプ及び第1反射くしP1の対応するストライプのそれぞれの周波数の平均に等しい周波数の周辺でフィルタが掛けられ、フィルタが掛けられた第1ビート信号を生成し、
・同様に、少なくとも1つの第2ビート信号12のうちの各ビート信号は、局所くしのストライプ及び第2反射くしP2の対応するストライプのそれぞれの周波数の平均に等しい周波数の周辺でフィルタが掛けられ、フィルタが掛けられた第2ビート信号を生成する。
【0066】
よって、局所くしの各ストライプについて、フィルタが掛けられた第1ビート信号と、フィルタが掛けられた第2ビート信号とが生成される。
【0067】
次に、第2ビートレベルにおいて、これらのフィルタが掛けられた第1及び第2ビート信号は、ビートを生じ第3ビート信号CSBF1を生成するために、混合される。
【0068】
この処理は、局所くし、P1及びP2に存在するストライプの数と同じ回数まで繰り返され、その結果、少なくとも1つの第3ビート信号13を構成するビート信号CSBF1,CSBF2,CSBF3,…CSBFi,…の列を生成する。
【0069】
一実施形態によると、探し求められている分光情報を搬送する信号を分離するために、局所くしの各ストライプについて、第3ビート信号に、第1周波数シフトFMAO1と第2周波数シフトFMAO2との間の差の絶対値に等しい周波数の周辺でフィルタを掛ける必要がある。
【0070】
よって、例として上記で設定されたパラメータの値に対応する実施形態によると、上記の表1に従って局所くしPOL、並びに第1及び第2くしP1,P2を規定するために、少なくとも1つの第3ビート信号13に1MHzの中間周波数の周辺でフィルタを掛けることによって、探し求められている分光情報を搬送する信号が、最大の信号対雑音比で分離されることが、表1の最後から2つ目のコラムに表示されている。この信号対雑音比の改善は、上述の処理によってもたらされ、そのデジタル実施形態が説明されている。
【0071】
図3に示された実施形態によると、検出システム10は、少なくとも1つの第3ビート信号13を生成するために、少なくとも1つの第1ビート信号11と少なくとも1つの第2ビート信号12とを、局所くしの各ストライプについて、並行して処理するように構成されたデジタル処理ユニットUTNを備える。
【0072】
この実施形態によると、前記デジタル処理ユニットUTNは、
・デジタル信号11N,12Nを生成するために、前記少なくとも1つの第1ビート信号11及び前記少なくとも1つの第2ビート信号12を含む時間信号をデジタル化するように構成されたアナログ・デジタル変換器ADCと、
・前記デジタル信号11N,12Nの第1デジタルスペクトラムSN11,SN12を計算するように構成された第1計算ユニットFFTと、
・以前に計算された前記デジタルスペクトラムSN11,SN12の異なるスペクトル要素を分離するように構成された第1フィルタリングユニットUF1と、
・前記少なくとも1つの第1ビート信号11の少なくとも1つの第1時間要素及び前記少なくとも1つの第2ビート信号12の少なくとも1つの第2時間要素を含む少なくとも1つの時間要素を生成するために、前記第1フィルタリングユニットUF1によって分離された各スペクトル要素を並行してスペクトル領域から時間領域に変換するように構成され、前記少なくとも1つの時間要素の各第1時間要素及び前記少なくとも1つの第2時間要素の各第2時間要素が前記局所くしのストライプに対応する、第2計算ユニットFFT-1と、
・前記局所くしの各ストライプに対応する、前記少なくとも1つの第3ビート信号のうちの第3ビート信号を生成するために、前記局所くしの各ストライプについて並行して、前記少なくとも1つの第1ビート信号11の対応する前記第1時間要素と前記少なくとも1つの第2ビート信号12の対応する前記第2時間要素とのビートを生成するように構成された混合器MELと、
・前記少なくとも1つの第3ビート信号のうちの各第3ビート信号のデジタルスペクトラムを、各第3ビート信号に関して並行して、計算するように構成された第3計算ユニットFFT2と、
・前記少なくとも1つの第3ビート信号のうちの各第3ビート信号内で、低周波スペクトル要素CSBF1,CSBF2,CSBF3,…,CSBFi,…を分離するように構成された第2フィルタリングユニットUF2と
を備える。
【0073】
これらの装置によると、検出システムによる第3ビート信号の検出は、例えばデジタル的に行われる。第2ビートレベルは、一方ではくしP1と局部発振器との間の位相シフトを、他方ではくしP2と局部発振器との間の位相シフトを、常に除去し、それらは第1次において等しく、互いに打ち消し合う。これは、そうでなければ最終的なヘテロダイン信号を劣化させる無相関化を解消する。
【0074】
本発明は、物質の遠隔分光のためのライダー検出方法100にも関し、この方法は、
・レーザー源3によって、発生周波数FGにおいてレーザーストライプを放出するステップ101と、
・周波数発生器4によって、前記レーザーストライプから、
前記発生周波数FGから導出された安定した周波数を有する少なくとも1つの第1ストライプを含む第1くしP1、
前記発生周波数から導出された安定した周波数を有する少なくとも1つの第2ストライプを含む第2くしP2、及び、
前記発生周波数から導出された安定した周波数を有する少なくとも1つの局所ストライプを含む局所くしPOL
を生成するステップ102と、
・前記第1及び前記第2くしを含む放出信号6を、前記放出信号6によって横切られる前記物質に向けて、送出望遠鏡5によって放出するステップ103と、
・前記放出信号6によって横切られる物質によって反射された信号9を、受信望遠鏡8によって受信するステップ104であって、前記反射された信号9が、
前記放出信号の前記第1くしの前記少なくとも1つの第1ストライプによって横切られた前記物質によって反射された少なくとも1つの第1ストライプを備える第1反射くし、及び、
前記放出信号の前記第2くしの前記少なくとも1つの第2ストライプによって横切られた前記物質によって反射された少なくとも1つの第2ストライプを備える第2反射くし
を備え、前記局所くしの各ストライプが、前記第1反射くしの対応する第1ストライプ、及び前記第2反射くしの対応する第2ストライプと関連付けられた、受信するステップ104と、
・検出システム10によって、
前記局所くしの前記少なくとも1つのストライプの、前記第1反射くしの前記対応する第1ストライプとの少なくとも1つの第1ビート信号11、
前記局所くしの前記少なくとも1つのストライプの、前記第2反射くしの前記対応する第2ストライプとの少なくとも1つの第2ビート信号12、及び、
前記少なくとも1つの第1ビート信号の、前記少なくとも1つの第2ビート信号との第3ビート信号13
を検出するステップ105とを備える。
図1
図2
図3
図4