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特許7321003連結部材および該連結部材を用いた固定構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】連結部材および該連結部材を用いた固定構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 37/08 20060101AFI20230728BHJP
   E05D 5/02 20060101ALI20230728BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20230728BHJP
   F16B 37/04 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
F16B37/08 B
E05D5/02
F16B5/02 U
F16B37/04 Q
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019114256
(22)【出願日】2019-06-20
(65)【公開番号】P2021001622
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390030340
【氏名又は名称】株式会社ノダ
(74)【代理人】
【識別番号】100085589
【弁理士】
【氏名又は名称】▲桑▼原 史生
(72)【発明者】
【氏名】浅川 豊幸
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-150945(JP,A)
【文献】実開平07-034214(JP,U)
【文献】特開平11-294427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 37/08
F16B 5/02
F16B 37/04
E05D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部材を挿通するネジを他部材に配置された連結部材に係合して該一部材を該他部材に取り付けるために用いられる該連結部材であって、軸方向においてネジが挿入される側の第一端部と、第一端部の反対側の第二端部と、これら第一端部と第二端部との間に形成されるネジ挿入空間とを有して略円筒形状に形成される内側円筒部と、この内側円筒部の外側に一体または連結可能に設けられる外側円筒部と、を有してなり、内側円筒部のネジ挿入空間の第一端部に近い第一の軸方向領域の内面は、ネジのネジ山を含めたネジ外径と略同一またはそれより若干大きい内径を有する平滑面とされ、ネジ挿入空間の第二端部に近い第二の軸方向領域の内面には、ネジと係合可能なネジ係合部が形成され、該ネジ係合部は弾性変形可能であって、且つ、その突出先端同士は、ネジのネジ山を含めたネジ外径より小さい直径の円を描き、内側円筒部の前記第二の軸方向領域には前記第二端部に開口するスリットが形成され、該第二の軸方向領域において内側円筒部の外面と外側円筒部の内面との間に隙間が形成されることを特徴とする連結部材。
【請求項2】
前記内側円筒部と前記外側円筒部が別部材からなり、内側円筒部に形成した雄ネジ部と外側円筒部に形成した雌ネジ部との螺合により結合一体化されることを特徴とする、請求項1記載の連結部材。
【請求項3】
前記第一端部または第二端部の外面に拡径した鍔部が形成され、この鍔部を除く部分の外面に突起が軸方向に沿って形成されることを特徴とする、請求項1または2記載の連結部材。
【請求項4】
前記ネジ係合部が、ネジと係合する雌ネジ部、または、ネジ挿入空間に向けてネジの挿入方向に傾斜するように対向して設けられる少なくとも一対の突片であることを特徴とする、請求項1ないしのいずれか記載の連結部材。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか記載の連結部材をネジと共に使用して一部材を他部材に取り付けて得られる固定構造であって、該一部材にはネジを挿通するネジ取付穴が形成され、該他部材にはネジ取付穴と整列する位置にネジ用下穴が形成されると共に連結部材を収容する連結部材用下穴が形成されており、該一部材のネジ取付穴からネジ用下穴に挿入されたネジが連結部材の前記ネジ係合部に係止されることを特徴とする固定構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2部材を連結するために使用される連結部材に関し、より詳しくは、たとえばドアを開口枠に開閉可能に設置するためにドアと開口枠(縦枠)とに丁番を取り付ける際にネジと共に使用される連結部材に関する。本発明は、さらに、この連結部材を用いて得られる固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、丁番は軸に対してそれぞれ回転可能に設けられる一対の取付片を有し、一方の取付片をドアの閉じ側木口端近くにネジで固定し、他方の取付片を閉じ側の縦枠にネジで固定することにより、ドアを開閉可能に設置する。このときに、ネジを丁番越しにドアおよび縦枠に単にねじ込んで丁番を取り付けることもあるが、ドアや縦枠が主としてMDFなどの木質材で形成される場合、主として金属で形成される丁番との材質の相違による比重差が大きくなり、単にネジをねじ込むだけでは十分な固定強度が得られないことがある。また、縦枠に対しては丁番を介してネジを縦枠の厚さ方向にねじ込んで固定することになるため、十分に長いネジを使用することができず、固定強度が不足しがちになる。
【0003】
このような場合に、縦枠を厚さ方向に貫通する貫通穴を形成し、この貫通穴の丁番取付側とは反対側の開口からナット状の連結部材を挿入して取り付け、この連結部材の雌ネジに、丁番を介して挿入されたネジを螺合させることにより、強固な連結を確保することが行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-155995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような連結部材を用いて丁番を縦枠に固定するには、ネジを連結部材の雌ネジに螺合させるために重い電動ドライバーなどの工具を用いて作業する必要があり、この作業を、一つの丁番について複数個所(たとえば特許文献1の図2記載の実施態様によればドアに対する固定と縦枠に対する固定とで各4箇所)で行い、さらに、ドア/縦枠の高さ方向において異なる2箇所またはそれ以上の箇所で繰り返して行わなければならず、作業手間と時間を要していた。近年では、大工技能者の減少に伴い、作業に不慣れな若年入職者や女性が作業する機会も増加しており、電動ドライバーなどの工具を用いずに丁番固定作業を行うことができるようにすることが望まれている。
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、電動ドライバーなどの工具を用いずに丁番をドアや縦枠に取り付けるなどの2部材連結作業を簡単に行うことができる連結部材を提供すると共に、この連結部材を用いて一部材を他部材に連結固定してなる固定構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するため、本願の請求項1に係る発明は、一部材を挿通するネジを他部材に配置された連結部材に係合して該一部材を該他部材に取り付けるために用いられる該連結部材であって、軸方向においてネジが挿入される側の第一端部と、第一端部の反対側の第二端部と、これら第一端部と第二端部との間に形成されるネジ挿入空間とを有して略円筒形状に形成される内側円筒部と、この内側円筒部の外側に一体または連結可能に設けられる外側円筒部と、を有してなり、内側円筒部のネジ挿入空間の第一端部に近い第一の軸方向領域の内面は、ネジのネジ山を含めたネジ外径と略同一またはそれより若干大きい内径を有する平滑面とされ、ネジ挿入空間の第二端部に近い第二の軸方向領域の内面には、ネジと係合可能なネジ係合部が形成され、該ネジ係合部は弾性変形可能であって、且つ、その突出先端同士は、ネジのネジ山を含めたネジ外径より小さい直径の円を描き、内側円筒部の前記第二の軸方向領域には前記第二端部に開口するスリットが形成され、該第二の軸方向領域において内側円筒部の外面と外側円筒部の内面との間に隙間が形成されることを特徴とする。
【0009】
本願の請求項に係る発明は、請求項記載の連結部材において、前記内側円筒部と前記外側円筒部が別部材からなり、内側円筒部に形成した雄ネジ部と外側円筒部に形成した雌ネジ部との螺合により結合一体化されることを特徴とする。
【0010】
本願の請求項に係る発明は、請求項1または2記載の連結部材において、前記第一端部または第二端部の外面に拡径した鍔部が形成され、この鍔部を除く部分の外面に突起が軸方向に沿って形成されることを特徴とする。
【0011】
本願の請求項に係る発明は、請求項1ないしのいずれか記載の連結部材において、前記ネジ係合部が、ネジと係合する雌ネジ部、または、ネジ挿入空間に向けてネジの挿入方向に傾斜するように対向して設けられる少なくとも一対の突片であることを特徴とする。
【0012】
本願の請求項に係る発明は、請求項1ないしのいずれか記載の連結部材をネジと共に使用して一部材を他部材に取り付けて得られる固定構造であって、該一部材にはネジを挿通するネジ取付穴が形成され、該他部材にはネジ取付穴と整列する位置にネジ用下穴が形成されると共に連結部材を収容する連結部材用下穴が形成されており、該一部材のネジ取付穴からネジ用下穴に挿入されたネジが連結部材の前記ネジ係合部に係止されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本願の請求項1に係る発明によれば、一部材を他部材に取り付けようとする際に、ネジを連結部材の第一端部から第二端部に向けてネジ挿入空間内に挿入して連結部材のネジ係合部に入り込もうとすると、該ネジ係合部が弾性変形可能であって、且つ、その突出先端同士が、ネジのネジ山を含めたネジ外径より小さい直径の円を描くように形成されていることから、ネジ山がネジ係合部を押し拡げながら前進させていくことができる。この作業は、従来のように電動ドライバーなどの工具を用いてネジを回す必要がなく、手やハンマーなどでネジを直線的に押し込むだけで良いので、作業に不慣れな若年入職者や女性でも簡単に連結作業を行うことができる。
【0014】
しかも、上記のようにして一部材が他部材に取り付けられた状態においては、ネジがネジ係合部に係合されているので、ネジを引き抜こうとしてもこの係合によって引き抜くことができない。したがって、強固な固定構造を維持することができる。この状態から解体するには、従来と同様に、電動ドライバーなどの工具を用いてネジを反時計回りに回転させれば良い。
【0015】
さらに、内側円筒部の前記第二の軸方向領域には前記第二端部に開口するスリットが形成されると共に、該第二の軸方向領域において内側円筒部の外面と外側円筒部の内面との間に隙間が形成されているので、ネジがネジ係合部を通過するときに、ネジ係合部が弾性変形により拡径することを容易にし、スムーズなネジ挿入作業を行うことができる。
【0016】
本願の請求項に係る発明によれば、別部材として形成された内側円筒部と外側円筒部をネジの螺合によって結合一体化されるので、各円筒部を所要の形状に成形することが容易であり、且つ、ネジの螺合によって強固に一体化された連結部材とすることができる。
【0017】
本願の請求項に係る発明によれば、他部材に形成した連結部材用下穴に連結部材を収容する際に、連結部材用下穴の開口に形成した拡径部に鍔部を収容した状態で、連結部材用下穴の筒状部の内面に突起を圧接させることができるので、位置決めが容易であり、また、不慮の抜け落ちを防ぐことができる。
【0018】
本願の請求項記載の発明によれば、ネジ係合部として、ネジ挿入空間に向けてネジの挿入方向に傾斜するように対向して設けられる少なくとも一対の突片を雌ネジに代えて用いることができる。ネジ係合部として少なくとも一対の突片を採用した場合、雌ネジに比べてネジ保持力は若干低下するが、ネジを押し込んだときに突片自体が弾性変形してネジの通過を許容するので、作業に要する力が少なくて済む利点がある。
【0019】
本願の請求項記載の発明によれば、この連結部材をネジと共に使用して一部材を他部材に取り付けて得られる固定構造が提供され、取り付けの際に、従来のように電動ドライバーなどの工具を用いてネジを回す必要がなく、ネジを直線的に押し込むだけで良いので、作業に不慣れな若年入職者や女性でも簡単に連結作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態(実施例1)による連結部材を示す拡大正面図である。
図2】この連結部材の上面図である。
図3図2におけるX-X断面図である。
図4】この連結部材の内側円筒部を示す斜視図である。
図5図1図4の連結部材をネジと共に用いて丁番をドアに固定する際の作業要領を示す断面図である。
図6】本発明の他実施形態(実施例2)による連結部材を示す、図3に対応した縦断面図である。
図7】本発明の他実施形態(実施例3)による連結部材を示す、図3に対応した縦断面図である。
図8】本発明の他実施形態(実施例4)による連結部材を示す、図3に対応した縦断面図である。
図9】本発明の他実施形態(実施例5)による連結部材を示す、図3に対応した縦断面図である。
図10図9の連結部材をネジと共に用いて丁番を縦枠に固定する際の作業要領を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に実施例を挙げて本発明について説明する。
【実施例1】
【0022】
本発明の好適な一実施形態(実施例)について、図1図5を参照して以下に詳述する。この実施例では、ドア40の閉じ側木口端41に、丁番50のネジ取付穴51に合致させた箇所からネジ用下穴42,42および連結部材用下穴43,43をあらかじめ形成しておき、該木口端41に開口する連結部材用下穴43,43に各々篏合配置した連結部材10,10にドア木口端41の外側から丁番50越しにネジ(またはボルト。以下も同じ。)60を係合させることにより、丁番50をドア40に固定している(図5)。各ネジ用下穴42は、ネジ60の軸径と略同一またはそれより若干大きい内径を有し、ネジ60の軸長より十分に大きい長さを有する。各連結部材用下穴43は、各ネジ用下穴42がドア木口端41で開口する部分を連結部材10の外形に応じた形状および寸法を有するように拡径して形成される。
【0023】
図5に示す丁番固定構造を得るためにネジ60と共に用いられる連結部材10は、一例として、図1図4に示す形状を有する。この連結部材10は、内側円筒部20と外側円筒部30とからなり、ネジ60の軸長より十分に短い軸長を有する。内側円筒部20と外側円筒部30は、いずれも、ある程度の弾性変形を許容すると共に、元の形状に復帰しようとする形状復元力を保持することができる材料で形成され、たとえば、硬質PVC、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの合成樹脂材料や、アルミ、亜鉛などの金属材料から形成することができる。
【0024】
内側円筒部20のネジ60が挿入される側の端部21に近い軸方向略半分の領域は、外面に雄ネジ部23が形成され、内面は平滑面24とされている。内側円筒部20の反対側の端部22に近い軸方向略半分の領域には、軸方向に延長して該端部に開口する複数のスリット25(図示実施形態では等角度間隔に3つのスリット25)が形成され、スリット25の内面にはネジ60を係合可能な雌ネジ部26が形成されている。スリット25を除く該領域の外面は平滑面27とされている。符号28は平滑面24の内部に形成されたネジ挿入空間であり、ネジ60のネジ山を含めたネジ外径と略同等の内径を有する。雌ネジ部26は、そのネジ溝内径がネジ挿入空間28の内径と略同一であり、したがって、そのネジ山はネジ挿入空間28の平滑面24より内方に突出している。
【0025】
外側円筒部30は、ネジ挿入端部31に拡径した鍔部33が形成され、この鍔部33を除く部分の外面には突起34が軸方向に沿って複数形成されている。突起34は、ネジ挿入端部31側にネジ挿入方向に対して略垂直面となる係合面34aを有すると共に、反対側端部32に向かうにつれて外径が徐々に小さくなる傾斜面34bを有して、断面三角形の楔形状に形成されている。
【0026】
外側円筒部30の内面において、ネジ挿入端部31に近い軸方向略半分の領域には、内側円筒部20の雄ネジ部23と螺合可能な雌ネジ部35が形成されている。雄ネジ部23と雌ネジ部35との螺合により内側円筒部20の外側に外側円筒部30が一体に結合されたときに、内側円筒部20の端部22に近い軸方向略半分の領域と外側円筒部30の端部32に近い軸方向略半分の領域との間に隙間37が形成されるように、外側円筒部30の端部32に近い軸方向略半分の領域の内面は雌ネジ部35より大きな内径を有する後退面36として形成されている。
【0027】
この連結部材10は、雄ネジ部23と雌ネジ部35との螺合により内側円筒部20の外側に外側円筒部30が一体に結合された状態で、ドア40の閉じ側木口端41に形成した各連結部材用下穴43に配置される(図5)。既述したように、連結部材用下穴43は連結部材10の外形に応じた形状および寸法に形成されており、より詳しくは、その開口端には外側円筒部30の鍔部33を収める拡径部43aが形成され、該拡径部43aの奥方には突起34と弾性的に係合する内径寸法を有する筒状部43bが形成されている。連結部材10を連結部材用下穴43に挿入するには、突起34を弾性変形により圧縮させながら、鍔部33が拡径部43aに完全に収まるまで押し込んでいけば良い。このようにして連結部材用下穴43に所定の位置で配置された連結部材10は、突起34が拡径部43の筒状部43bに圧接して引き抜きに対する抵抗を与えるので、容易には離脱しない安定した取付状態を維持する。連結部材10の配置は、あらかじめ工場内で、または現場で行うことができる。
【0028】
上記のようにして各連結部材用下穴43に連結部材10が配置されたドア40に丁番50を取り付けるには、ネジ60を丁番50のネジ取付穴51から連結部材10の内側円筒部20のネジ挿入空間28に押し込んでいく。ネジ60の先端がネジ挿入空間28を通過して雌ネジ部26に当たってからもさらにネジ60を押し込むと、内側円筒部20の雌ネジ部26形成領域をネジ山のピッチごとに拡径させながらさらに前進して、ネジ60の先端が雌ネジ部26を通過してネジ用下穴42に入り込み、最終的にネジ60の頭部61が丁番50のネジ取付穴51に完全に収まる。連結部材10を形成する合成樹脂や金属などの材料自体が有する弾性に加えて、内側円筒部20の雌ネジ部26形成領域にはスリット25が形成されており、且つ、該形成領域の拡径を妨げないように隙間37が形成されているので、押し込まれたネジ60は雌ネジ部26のネジ山に当たりながらもスムーズに前進することができる。この際の作業は手またはハンマーなどでネジ60を真直ぐに押し込むだけであり、ネジ60を回転させる必要はないので、電動ドライバーなどは不要である。
【0029】
ネジ60を最奥まで押し込むことにより丁番50がドア40に取り付けられた状態になると、ネジ60のネジ山が雌ネジ部26のネジ溝に入り込んで確実に係合されるので、強固な固定構造が維持される。この状態を解除するときは、従来と同様に、電動ドライバーなどの工具を用いてネジ60を反時計回りに回転させて引き抜けば良い。
【実施例2】
【0030】
図5に示すようにして丁番50をドア40に取り付けるために使用される連結部材についての他の実施形態が図6に示されている。この実施形態(実施例2)による連結部材10は、内側円筒部20と外側円筒部30とがあらかじめ一体的に成形されてなる点において、実施例1の連結部材10と異なっている。したがって、内側円筒部20と外側円筒部30とを一体化させるための連結構成(内側円筒部20の雄ネジ部23,外側円筒部30の雌ネジ部35)はこの実施形態では不要である。
【0031】
実施例2の連結部材10についてのその他の構成や作用などは実施例1の連結部材10と同様であるので、同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【実施例3】
【0032】
図5に示すようにして丁番50をドア40に取り付けるために使用される連結部材についての他の実施形態が図7に示されている。この実施形態(実施例3)による連結部材10は、内側円筒部20の雌ネジ部26形成領域が端部22に向けて徐々に縮径するように形成されている点において、実施例1の連結部材10と異なっている。
【0033】
この実施形態においても、連結部材10を形成する合成樹脂や金属などの材料自体が有する弾性、および、内側円筒部20の雌ネジ部26の外側に形成されたスリット25の作用により、ネジ60を押し込んだときに、雌ねじ部26形成領域が隙間37の範囲内で雌ねじ部26形成領域を拡径させることができると共に、ネジ60を最奥まで押し込んだときに、元の形状に復元しようとする雌ねじ部26に対してより緊密に係合するので、強固な固定構造が得られる利点がある。
【0034】
実施例3の連結部材10についてのその他の構成や作用などは、実施例1の連結部材10と同様であるので、同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【実施例4】
【0035】
図5に示すようにして丁番50をドア40に取り付けるために使用される連結部材についての他の実施形態が図8に示されている。この実施形態(実施例4)による連結部材10は、内側円筒部20の端部22側の軸方向略半分の領域(外面にスリット25が形成された領域)の内面に、雌ネジ部26に代えて、ネジ挿入空間28に向けてネジ挿入方向に傾斜する少なくとも一対(図示実施形態では軸方向に等間隔に3対)の突片29,29が対向配置されている点において、実施例1の連結部材10と異なっている。突片29,29の先端同士の間隔は、ネジ60のネジ山を含めた外径よりわずかに小さく、且つ、ネジ60のネジ山を含まない軸径より大きく形成される。
【0036】
この実施形態によると、ネジ60を押し込んでいって突片29,29間を通過するときに、ネジ60のネジ山がピッチごとに突片29,29の先端にあたりながらその弾性により押し拡げながら前進していく。ネジ60を最奥まで押し込んだときには、突片29,29が元の形状に復元してネジ60のネジ溝に係合して強固な固定構造を維持する。なお、この実施形態によれば突片29,29自体が弾性変形してネジ60の挿通を許容するので、スリット25および隙間37は必ずしも形成する必要がなく、省略することができる。
【0037】
実施例4の連結部材10についてのその他の構成や作用などは、実施例1の連結部材10と同様であるので、同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【実施例5】
【0038】
本発明の好適な他の実施形態(実施例5)について、図9および図10を参照して以下に詳述する。この実施例では、ドア40を開閉可能に設置する開口部に立設された縦枠70のドア閉じ側木口端近くにおいて、丁番50のネジ取付穴51に合致させた箇所で内面71から外面72に貫通するネジ用下穴73と、その外面72に開口する部分を連結部材80の外形に応じた形状および寸法を有するように拡径させた連結部材用下穴74とをあらかじめ形成しておき、連結部材用下穴74に篏合配置した連結部材80に縦枠内面71側から丁番50越しにネジ60を係合させることにより、丁番50を建枠70に固定している(図10)。ネジ用下穴73は、ネジ60の軸径と略同一またはそれより若干大きな内径に形成され、ネジ60は、縦枠内面71側から挿入したときに、連結部材用下穴45に篏合配置された連結部材80の雌ネジ部96(後述)に係合されるに十分な軸長を有する。図10において符号75は戸当たりを示す。
【0039】
図10に示す丁番固定構造を得るためにネジ60と共に用いられる連結部材80は、一例として、図9に示す形状を有する。この連結部材80は、内側円筒部90と外側円筒部100とからなり、ネジ60の軸長より十分に短い軸長を有する。内側円筒部90と外側円筒部100は、いずれも、ある程度の弾性変形を許容すると共に、元の形状に復帰しようとする形状復元力を保持することができる材料で形成され、たとえば、硬質PVC、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの合成樹脂材料や、アルミ、亜鉛などの金属材料から形成することができる。
【0040】
内側円筒部90は、実施例1の内側円筒部20と同一の形状および構成を有する。すなわち、内側円筒部90のネジ60が挿入される側の端部91に近い軸方向略半分の領域は、外面に雄ネジ部93が形成され、内面は平滑面94とされている。内側円筒部90の反対側の端部92に近い軸方向略半分の領域には、軸方向に延長して該端部に開口する複数のスリット95(図示実施形態では等角度間隔に3つのスリット95)が形成され、スリット95の内面にはネジ60を係合可能な雌ネジ部96が形成されている。スリット95を除く該領域の外面は平滑面97とされている。符号98は平滑面94の内部に形成されたネジ挿入空間であり、ネジ60のネジ山を含めたネジ外径と略同等の内径を有する。雌ネジ部96は、そのネジ溝内径がネジ挿入空間98の内径と略同一であり、したがって、そのネジ山はネジ挿入空間98の平滑面94より内方に突出している。
【0041】
外側円筒部100は、実施例1の外側円筒部30の内面を同一の形状および構成にして、その外面を軸方向に前後反転させた形状を有する。すなわち、外側円筒部100のネジ挿入端部101と反対側の端部102に拡径した鍔部103が形成され、この鍔部103を除く部分の外面には突起104が軸方向に沿って複数形成されている。突起104は、端部102側にネジ挿入方向に対して略垂直面となる係合面104aを有すると共に、ネジ挿入端部101に向かうにつれて外径が徐々に小さくなる傾斜面104bを有して、断面三角形の楔形状に形成されている。
【0042】
外側円筒部100の内面において、ネジ挿入端部101に近い軸方向略半分の領域には、内側円筒部90の雄ネジ部93と螺合可能な雌ネジ部105が形成されている。雄ネジ部93と雌ネジ部105との螺合により内側円筒部90の外側に外側円筒部100が一体に結合されたときに、内側円筒部90の端部92に近い軸方向略半分の領域と外側円筒部100の端部102に近い軸方向略半分の領域との間に隙間107が形成されるように、外側円筒部100の端部102に近い軸方向略半分の領域の内面は雌ネジ部105より大きな内径を有する後退面106として形成されている。
【0043】
この連結部材80は、雄ネジ部93と雌ネジ部105との螺合により内側円筒部90の外側に外側円筒部100が一体に結合された状態で、縦枠70のドア閉じ側木口端近くの外面に形成した連結部材用下穴74に配置される(図10)。既述したように、連結部材用下穴74は連結部材80の外形に応じた形状および寸法に形成されており、より詳しくは、その開口端には外側円筒部100の鍔部103を収める拡径部74aが形成され、該拡径部74aの奥方には突起104と弾性的に係合する内径寸法を有する筒状部74bが形成されている。連結部材80を連結部材用下穴74に挿入するには、突起104を弾性変形により圧縮させながら、鍔部103が拡径部74aに完全に収まるまで押し込んでいけば良い。このようにして連結部材用下穴74に所定の位置で配置された連結部材80は、突起104が拡径部74の筒状部74bに圧接して引き抜きに対する抵抗を与えるので、容易には離脱しない安定した取付状態を維持する。連結部材10の配置は、あらかじめ工場内で、または現場で行うことができる。
【0044】
上記のようにして連結部材用下穴74に連結部材80が配置された縦枠70に丁番50を取り付けるには、縦枠70の内面71側からネジ60を丁番50のネジ取付穴51およびネジ用下穴73に順次に挿通させ、さらに連結部材80の内側円筒部90のネジ挿入空間98に押し込んでいく。ネジ60の先端がネジ挿入空間98を通過して雌ネジ部96に当たってからもさらにネジ60を押し込むと、内側円筒部90の雌ネジ部96形成領域をネジ山のピッチごとに拡径させながらさらに前進して、最終的にネジ60の頭部61が丁番50のネジ取付穴51に完全に収まる。このとき、ネジ60の先端は雌ネジ部96の範囲内に位置している。連結部材80を形成する合成樹脂や金属などの材料自体が有する弾性に加えて、内側円筒部90の雌ネジ部96形成領域にはスリット95が形成されており、且つ、該形成領域の拡径を妨げないように隙間107が形成されているので、押し込まれたネジ60は雌ネジ部96のネジ山に当たりながらもスムーズに前進することができる。この際の作業は手またはハンマーなどでネジ60を真直ぐに押し込むだけであり、ネジ60を回転させる必要はないので、電動ドライバーなどは不要である。
【0045】
ネジ60を最奥まで押し込むことにより丁番50が縦枠70に取り付けられた状態になると、ネジ60のネジ山が雌ネジ部96のネジ溝に入り込んで確実に係合されるので、強固な固定構造が維持される。この状態を解除するときは、従来と同様に、電動ドライバーなどの工具を用いてネジ60を反時計回りに回転させて引き抜けば良い。
【0046】
なお、図10の丁番固定構造を得るために用いる連結部材80としての一実施形態を図9に示したが、この実施形態の連結部材80について、実施例2(図6)として既述したように内側円筒部90と外側円筒部100とを一体に形成する変形例や、実施例3(図7)として既述したように内側円筒部90の雌ネジ部96形成領域を端部92に向けて徐々に縮径するように形成した変形例や、実施例4(図8)として既述したように内側円筒部90の内面に雌ネジ部96に代えて突片(29)を対設した変形例などを採用しても良い。
【0047】
以上に本発明について実施例を挙げて詳述したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において多種多様に変形ないし変更して実施可能である。たとえば、連結部材の外面に形成される突起34,104を雄ネジ部に代え、これを連結部材用下穴43,74の筒状部43b,74bの内面に形成した(または埋設した別部材の)雌ネジ部に螺合させることによって、連結部材10,80を連結部材用下穴43,74に収容させるようにしても良い。また、本発明の連結部材の好適な一用途として、丁番をドアまたは縦枠に取り付けて丁番固定構造を得ることについての実施例を挙げて詳述したが、本発明の連結部材はこの用途に限定されず、広く一部材を他部材に取り付けるために用いることができる。
【符号の説明】
【0048】
10 連結部材
20 内側円筒部
21 ネジ挿入側の端部(第一端部)
22 ネジ挿入側とは反対側の端部(第二端部)
23 雄ネジ部
24 平滑面
25 スリット
26 雌ネジ部
27 平滑面
28 ネジ挿入空間
29 突片
30 外側円筒部
31 ネジ挿入側の端部(第一端部)
32 ネジ挿入側とは反対側の端部(第二端部)
33 鍔部
34 突起
35 雌ネジ部
36 後退面
37 隙間
40 ドア
41 ドア閉じ側木口端
42 ネジ用下穴
43 連結部材用下穴
50 丁番
51 ネジ取付穴
60 ネジ
61 ネジ頭部
70 縦枠
71 縦枠内面
72 縦枠外面
73 ネジ用下穴
74 連結部材用下穴
75 戸当たり
80 連結部材
90 内側円筒部
91 ネジ挿入側の端部(第一端部)
92 ネジ挿入側とは反対側の端部(第二端部)
93 雄ネジ部
94 平滑面
95 スリット
96 雌ネジ部
97 平滑面
98 ネジ挿入空間
100 外側円筒部
101 ネジ挿入側の端部(第一端部)
102 ネジ挿入側とは反対側の端部(第二端部)
103 鍔部
104 突起
105 雌ネジ部
106 後退面
107 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10