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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】車両用エアコン装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20230728BHJP
【FI】
B60H1/00 102P
B60H1/00 102J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019131667
(22)【出願日】2019-07-17
(65)【公開番号】P2021017066
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】長野 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 晃一
【審査官】大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-278448(JP,A)
【文献】特開2002-293128(JP,A)
【文献】実開昭58-136813(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空気を送風可能なハウジング(30)と、
このハウジング(30)内に収納され、送風された空気を冷却可能な冷却用熱交換器(22)と、
前記ハウジング(30)内に収納され、送風された空気の流れを基準として、前記冷却用熱交換器(22)よりも下流に設けられていると共に、送風された空気を加熱可能な加熱用熱交換器(50)と、
前記ハウジング(30)の内部であって、前記冷却用熱交換器(22)の下流には、冷却された空気が前記加熱用熱交換器(50)を迂回して通流可能な第1冷風通路(32)と、この第1冷風通路(32)に隣接していると共に前記加熱用熱交換器(50)が設けられ冷却された空気を加熱可能な加熱用通路(33)と、この加熱用通路(33)に隣接していると共に冷却された空気が前記加熱用熱交換器(50)を迂回して通流可能な第2冷風通路(34)と、が形成され、
前記ハウジング(30)には、
前記第1冷風通路(32)を通過した空気、及び、前記加熱用通路(33)を通過した空気を、前記ハウジング(30)の外部に吐出可能な第1吐出部(41)と、
この第1吐出部(41)を開閉可能な第1開閉部材(26)と、
前記加熱用通路(33)を通過した空気、及び、前記第2冷風通路(34)を通過した空気を、前記ハウジング(30)の外部に吐出可能な第2吐出部(42)と、
この第2吐出部(42)を開閉可能な第2開閉部材(27)と、
前記加熱用熱交換器(50)の下流側に設けられて前記第1吐出部(41)と前記第2吐出部(42)との間を仕切る仕切壁(63)と、
前記第1冷風通路(32)及び前記加熱用通路(33)の開放量を調整可能な第1ミックスドア(24)と、
前記第2冷風通路(34)及び前記加熱用通路(33)の開放量を調整可能な第2ミックスドア(25)と、
前記第1開閉部材(26)により前記第1吐出部(41)が開放され、前記第2開閉部材(27)により前記第2吐出部(42)が閉じられ、前記第1ミックスドア(24)及び前記第2ミックスドア(25)により前記加熱用通路(33)が塞がれているとき、前記第2冷風通路(34)を通過した空気が前記加熱用熱交換器(50)の流出面(52a)へ到達することを防止可能な冷風到達防止部(70)と、が設けられ、
前記冷風到達防止部(70)は、前記第2開閉部材(27)と、前記第2吐出部(42)が閉じられている状態を基準として前記加熱用通路(33)の下流端部から前記第2開閉部材(27)まで延びる冷風到達防止壁部(62)と、を有し、
前記仕切壁(63)は、通路区画部材(60)に一体的に構成され、
前記通路区画部材(60)は、前記ハウジング(30)内に固定されていることを特徴とする車両用エアコン装置(10)
【請求項2】
内部に空気を送風可能なハウジング(30)と、
このハウジング(30)内に収納され、送風された空気を冷却可能な冷却用熱交換器(22)と、
前記ハウジング(30)内に収納され、送風された空気の流れを基準として、前記冷却用熱交換器(22)よりも下流に設けられていると共に、送風された空気を加熱可能な加熱用熱交換器(50)と、
前記ハウジング(30)の内部であって、前記冷却用熱交換器(22)の下流には、冷却された空気が前記加熱用熱交換器(50)を迂回して通流可能な第1冷風通路(32)と、この第1冷風通路(32)に隣接していると共に前記加熱用熱交換器(50)が設けられ冷却された空気を加熱可能な加熱用通路(33)と、この加熱用通路(33)に隣接していると共に冷却された空気が前記加熱用熱交換器(50)を迂回して通流可能な第2冷風通路(34)と、が形成され、
前記ハウジング(30)には、
前記第1冷風通路(32)を通過した空気、及び、前記加熱用通路(33)を通過した空気を、前記ハウジング(30)の外部に吐出可能な第1吐出部(41)と、
この第1吐出部(41)を開閉可能な第1開閉部材(26)と、
前記加熱用通路(33)を通過した空気、及び、前記第2冷風通路(34)を通過した空気を、前記ハウジング(30)の外部に吐出可能な第2吐出部(42)と、
この第2吐出部(42)を開閉可能な第2開閉部材(27)と、
前記加熱用熱交換器(50)の下流側に設けられて前記第1吐出部(41)と前記第2吐出部(42)との間を仕切る仕切壁(63)と、
前記第1冷風通路(32)及び前記加熱用通路(33)の開放量を調整可能な第1ミックスドア(24)と、
前記第2冷風通路(34)及び前記加熱用通路(33)の開放量を調整可能な第2ミックスドア(25)と、
前記第1開閉部材(26)により前記第1吐出部(41)が開放され、前記第2開閉部材(27)により前記第2吐出部(42)が閉じられ、前記第1ミックスドア(24)及び前記第2ミックスドア(25)により前記加熱用通路(33)が塞がれているとき、前記第2冷風通路(34)を通過した空気が前記加熱用熱交換器(50)の流出面(52a)へ到達することを防止可能な冷風到達防止部(70A)と、が設けられ、
前記冷風到達防止部(70A)は、前記第2開閉部材(27)と、前記加熱用通路(33)の下流端部の一部を閉じている壁部(65A)と、前記第2吐出部(42)が閉じられている状態を基準として前記第2開閉部材(27)から前記壁部(65A)まで延びている延長部(72A)と、を有し、
前記仕切壁(63)は、通路区画部材(60)に一体的に構成され、
前記通路区画部材(60)は、前記ハウジング(30)内に固定されていることを特徴とする車両用エアコン装置(10A)
【請求項3】
前記第2吐出部(42)から後方に向かって延び、前記第2吐出部(42)から吐出さ
れた空気が送風されるダクト部(13)をさらに有していることを特徴とする請求項1又
は請求項2のいずれか1項記載の車両用エアコン装置(10;10A)
【請求項4】
前記第1吐出部(41)は、乗員の上半身に向かって送風を行うベント吹出部、前記第2吐出部(42)は、後席の乗員に向かって送風を行う後席空調用吐出部であり、
前記ハウジング(30)には、さらに、フロントガラスに向かって送風を行うデフロスタ吐出部(44、45)、前席の乗員の脚部に向かって送風を行う前席フット吐出部(46)が設けられていることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項記載の車両用エアコン装置(10;10A)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの冷風通路の間に1つの加熱用通路が形成されてなる車両用エアコン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用エアコン装置として、ハウジングの内部に冷たい風が通過する冷風通路と、温かい風が通過する加熱用通路と、を有しているものが知られている。車両用エアコン装置は、冷風通路を通過する冷たい風に、加熱用通路の温かい風を混ぜ、温度を調節した上で車室内に送風する。一部の車両用エアコン装置は、複数の吹出部を有し、それぞれの吹出部に異なる温度の風を送ることができるよう、複数の冷風通路を有している。このような車両用エアコン装置に関する従来技術として、特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
図6を参照する。図6には、特許文献1に開示された車両用エアコン装置が示されている。なお、符号は、適宜振り直している。車両用エアコン装置110は、ハウジング130の内部に、空気を冷却可能な冷却用熱交換器122と、この冷却用熱交換器122の下流に配置され空気を加熱可能な加熱用熱交換器150と、冷却用熱交換器122を通過した空気が加熱用熱交換器150を迂回して流される第1冷風通路132と、加熱用熱交換器150が配置されている加熱用通路133と、加熱用通路133に隣接し冷却用熱交換器122を通過した空気が加熱用熱交換器150を迂回して流される第2冷風通路134と、第1冷風通路132を通過する風の流量を調節するためのドア181と、加熱用通路133を通過する風の流量を調節するためのドア124、125と、第2冷風通路134を通過する風の流量を調節するためのドア182と、2つの通路を接続可能な2つのドア183、184と、ハウジング130に形成された吹出部141、144を開閉可能な開閉部材126、128と、を有している。
【0004】
吹出部141、144は、車室へ向かって送風を行うベント吐出部141と、フロントガラスへ送風を行うデフロスタ吐出部144である。
【0005】
車両用エアコン装置110によれば、2つの冷風通路132、134の間に1つの加熱用通路133が形成されている。それぞれの冷風通路132、134に応じて加熱用通路133を形成する場合に比べて、部品点数を削減し、車両用エアコン装置110を小型化することができる。吹出部141、144に応じて吹出温度を調節可能でありながら、小型且つ少ない部品点数の車両用エアコン装置110を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-137524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図7を参照する。図7は、特許文献1の図6を再掲した図である。矢印Aは、本発明者らが追記した。図に示す状態において、車両用エアコン装置110は、フルクールモードにある。つまり、加熱用熱交換器150への送風を遮断し、冷却用熱交換器122で冷却された空気を温めることなくベント吐出部141から吐出しようとするモードである。第1冷風通路132及び第2冷風通路134を通過した空気が、ベント吐出部141から車室内に吹き出される。
【0008】
本発明者らが研究したところ、フルクールモードにおいて、設定した温度よりも高い温度で空気が吹き出されることがあることが分かった。この理由については、以下のように考えられる。第1冷風通路132の形状と第2冷風通路134の形状とはそれぞれ異なり、また、第1冷風通路132からベント吹き出し口141までの距離と第2冷風通路134からベント吹き出し口141までの距離とも、それぞれ異なる。このため、第1冷風通路132を通過する風の流量や圧力と、第2冷風通路134を通過する風の流量や圧力とは、それぞれ異なるものと考えられる。これらを原因として、矢印Aによって示されるように、例えば、第2冷風通路134を通過した風の一部が、負圧によって第1冷風通路132側へ引っ張られることが起こりうる。又は、矢印Aとは逆に、第1冷風通路132を通過した風の一部が、正圧によって第2冷風通路134側へ押し出されることが起こりうる。このとき、加熱用熱交換器150を通過することにより、空気は温められる。このため、温められた空気が冷たい空気に合流することにより、ベント吐出部141から吹き出される空気は、設定された温度よりも高い温度となったものと考えられる。
【0009】
本発明は、より確実に温度調節を行うことができる車両用エアコン装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下の説明では、本発明の理解を容易にするために添付図面中の参照符号を括弧書きで付記するが、それによって本発明は図示の形態に限定されるものではない。
【0011】
本発明によれば、内部に空気を送風可能なハウジング(30)と、
このハウジング(30)内に収納され、送風された空気を冷却可能な冷却用熱交換器(22)と、
前記ハウジング(30)内に収納され、送風された空気の流れを基準として、前記冷却用熱交換器(22)よりも下流に設けられていると共に、送風された空気を加熱可能な加熱用熱交換器(50)と、
前記ハウジング(30)の内部であって、前記冷却用熱交換器(22)の下流には、冷却された空気が前記加熱用熱交換器(50)を迂回して通流可能な第1冷風通路(32)と、この第1冷風通路(32)に隣接していると共に前記加熱用熱交換器(50)が設けられ冷却された空気を加熱可能な加熱用通路(33)と、この加熱用通路(33)に隣接していると共に冷却された空気が前記加熱用熱交換器(50)を迂回して通流可能な第2冷風通路(34)と、が形成され、
前記ハウジング(30)には、
前記第1冷風通路(32)を通過した空気、及び、前記加熱用通路(33)を通過した空気を、前記ハウジング(30)の外部に吐出可能な第1吐出部(41)と、
この第1吐出部(41)を開閉可能な第1開閉部材(26)と、
前記加熱用通路(33)を通過した空気、及び、前記第2冷風通路(34)を通過した空気を、前記ハウジング(30)の外部に吐出可能な第2吐出部(42)と、
この第2吐出部(42)を開閉可能な第2開閉部材(27)と、
前記加熱用熱交換器(50)の下流側に設けられて前記第1吐出部(41)と前記第2吐出部(42)との間を仕切る仕切壁(63)と、
前記第1冷風通路(32)及び前記加熱用通路(33)の開放量を調整可能な第1ミックスドア(24)と、
前記第2冷風通路(34)及び前記加熱用通路(33)の開放量を調整可能な第2ミックスドア(25)と、
前記第1開閉部材(26)により前記第1吐出部(41)が開放され、前記第2開閉部材(27)により前記第2吐出部(42)が閉じられ、前記第1ミックスドア(24)及び前記第2ミックスドア(25)により前記加熱用通路(33)が塞がれているとき、前記第2冷風通路(34)を通過した空気が前記加熱用熱交換器(50)の流出面(52a)へ到達することを防止可能な冷風到達防止部(70)と、が設けられ、
前記冷風到達防止部(70)は、前記第2開閉部材(27)と、前記第2吐出部(42)が閉じられている状態を基準として前記加熱用通路(33)の下流端部から前記第2開閉部材(27)まで延びる冷風到達防止壁部(62)と、を有し、
前記仕切壁(63)は、通路区画部材(60)に一体的に構成され、
前記通路区画部材(60)は、前記ハウジング(30)内に固定されていることを特徴とする車両用エアコン装置(10)が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、内部に空気を送風可能なハウジング(30)と、
このハウジング(30)内に収納され、送風された空気を冷却可能な冷却用熱交換器(22)と、
前記ハウジング(30)内に収納され、送風された空気の流れを基準として、前記冷却用熱交換器(22)よりも下流に設けられていると共に、送風された空気を加熱可能な加熱用熱交換器(50)と、
前記ハウジング(30)の内部であって、前記冷却用熱交換器(22)の下流には、冷却された空気が前記加熱用熱交換器(50)を迂回して通流可能な第1冷風通路(32)と、この第1冷風通路(32)に隣接していると共に前記加熱用熱交換器(50)が設けられ冷却された空気を加熱可能な加熱用通路(33)と、この加熱用通路(33)に隣接していると共に冷却された空気が前記加熱用熱交換器(50)を迂回して通流可能な第2冷風通路(34)と、が形成され、
前記ハウジング(30)には、
前記第1冷風通路(32)を通過した空気、及び、前記加熱用通路(33)を通過した空気を、前記ハウジング(30)の外部に吐出可能な第1吐出部(41)と、
この第1吐出部(41)を開閉可能な第1開閉部材(26)と、
前記加熱用通路(33)を通過した空気、及び、前記第2冷風通路(34)を通過した空気を、前記ハウジング(30)の外部に吐出可能な第2吐出部(42)と、
この第2吐出部(42)を開閉可能な第2開閉部材(27)と、
前記加熱用熱交換器(50)の下流側に設けられて前記第1吐出部(41)と前記第2吐出部(42)との間を仕切る仕切壁(63)と、
前記第1冷風通路(32)及び前記加熱用通路(33)の開放量を調整可能な第1ミックスドア(24)と、
前記第2冷風通路(34)及び前記加熱用通路(33)の開放量を調整可能な第2ミックスドア(25)と、
前記第1開閉部材(26)により前記第1吐出部(41)が開放され、前記第2開閉部材(27)により前記第2吐出部(42)が閉じられ、前記第1ミックスドア(24)及び前記第2ミックスドア(25)により前記加熱用通路(33)が塞がれているとき、前記第2冷風通路(34)を通過した空気が前記加熱用熱交換器(50)の流出面(52a)へ到達することを防止可能な冷風到達防止部(70A)と、が設けられ、
前記冷風到達防止部(70A)は、前記第2開閉部材(27)と、前記加熱用通路(33)の下流端部の一部を閉じている壁部(65A)と、前記第2吐出部(42)が閉じられている状態を基準として前記第2開閉部材(27)から前記壁部(65A)まで延びている延長部(72A)と、を有し、
前記仕切壁(63)は、通路区画部材(60)に一体的に構成され、
前記通路区画部材(60)は、前記ハウジング(30)内に固定されていることを特徴とする車両用エアコン装置(10A)が提供される。
【0014】
好ましくは、前記第2吐出部(42)から後方に向かって延び、前記第2吐出部(42)から吐出された空気が送風されるダクト部(13)をさらに有している。
【0015】
好ましくは、前記第1吐出部(41)は、乗員の上半身に向かって送風を行うベント吹出部、前記第2吐出部(42)は、後席の乗員に向かって送風を行う後席空調用吐出部であり、
前記ハウジング(30)には、さらに、フロントガラスに向かって送風を行うデフロスタ吐出部(44、45)、前席の乗員の脚部に向かって送風を行う前席フット吐出部(46)が設けられている。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、第2冷風通路を通過した空気は、冷風到達防止部によって、加熱用熱交換器の流出面へ到達することを防止される。これにより、加熱用熱交換器で加熱されないとして温度調和に用いられる第2冷風通路を通過した冷却された空気が、意図せずに加熱用熱交換器で加熱されることが防止される。そして、意図せずに加熱された空気が、加熱用通路を経由して第1冷風通路に流入することも防止される。これにより、第1吐出部から調和空気を吐出するときに、調和空気の温度を適温に調節することができる。より確実に温度調節を行うことができる車両用エアコン装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1による車両用エアコン装置の斜視図である。
図2図1の2-2線に沿った断面図である。
図3図2に示された隔壁部材の斜視図である。
図4図2に示された車両用エアコン装置の作用を説明する図である。
図5】実施例2による車両用エアコン装置を模式的に示した図である。
図6】従来の車両用エアコン装置について説明する図である。
図7】従来の車両用エアコン装置の問題点について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。図中Frは前、Rrは後、Leは車室内の乗員を基準として左、Riは車室内の乗員を基準として右、Upは上、Dnは下を示している。
<実施例1>
【0019】
図1を参照する。車室内の温度を調節する車両用エアコン装置10(以下、「エアコン装置10」と略記する。)は、例えば、乗用車に搭載される。エアコン装置10は、車室内の前方で、概ね左右方向に延びるよう配置されている。
【0020】
エアコン装置10は、吸い込んだ空気を送風する送風部11と、この送風部11から送風された空気の温度調節を行い車室内に吐出する温調部20と、温調部20から後方へ延び後席へ空気を導くダクト部13、14と、を有する。
【0021】
送風部11には、図示しないインペラ及びモータが収納されている。モータの駆動によってインペラが回転し、車室内及び/又は車室外の空気が、送風部11内に吸い込まれる。送風部11に吸い込まれた空気は、温調部20の前部に供給される。
【0022】
ダクト部13、14は、後席の乗員の脚部に送風する左右のダクト部13、13と、これらのダクト部13、13の中央に位置し後席の乗員の上半身に送風する中央のダクト部14と、を有する。左右のダクト部13、13は、それぞれ後部左側に着座する乗員の脚部と、後部右側に着座する乗員の脚部とに合わせて設けられている。
【0023】
図2を参照する。温調部20は、送風部11(図1参照)に接続されているハウジング30の内部に、送風された空気を冷却可能な冷却用熱交換器22と、この冷却用熱交換器22の下流に設けられ送風された空気を加熱可能な加熱用熱交換器50と、これらの冷却用熱交換器22と加熱用熱交換器50との間に配置され加熱用熱交換器50を通過する空気の量を調節することにより温度を調節可能な第1ミックスドア24及び第2ミックスドア25と、風が通過する通路の一部を区画する通路区画部材60と、スイング可能に設けられている第1~第3開閉部材26~29(28、29は、共に第3開閉部材。詳細は後述する。)と、が収納されてなる。
【0024】
ハウジング30は、複数の樹脂成形品が組み合わされてなる。ハウジング30には、送風部11(図1参照)から送られた空気を冷却用熱交換器22へ導く導入路31と、冷却用熱交換器22を通過し冷却された空気が加熱用熱交換器50を迂回して通流可能な第1冷風通路32と、この第1冷風通路32に隣接し加熱用熱交換器50が設けられた加熱用通路33と、この加熱用通路33に隣接し冷却された空気が加熱用熱交換器50を迂回して通流可能な第2冷風通路34と、が設けられている。
【0025】
加えて、ハウジング30には、第2開閉部材27の軌道に向かって延び、第2開閉部材27の全開位置を規定する全開位置ストッパ部35が形成されている。全開時において、第2開閉部材27は、全開位置ストッパ部35に当接する。
【0026】
図1を併せて参照する。さらにハウジング30には、第1冷風通路32の下流に形成され前席の乗員の上半身に向かって風を吐出可能なベント吐出部41(第1吐出部41)と、第2冷風通路34の下流に形成され後席の乗員の脚部に向かって送風するための後席空調用吐出部42(第2吐出部42)と、第2冷風通路34の下流に形成され後席の乗員の上半身に向かって送風するための第2の後席空調用吐出部43と、フロントガラスに向かって送風し曇りを除去する前部デフロスタ吐出部44(デフロスタ吐出部44)及び後部デフロスタ吐出部45(デフロスタ吐出部45)と、前席の乗員の脚部に向かって送風するための前席フット吐出部46と、が形成されている。
【0027】
なお、後席空調用吐出部42から吐出される空気は、後席乗員の上半身に導かれてもよい。この場合、第2の後席空調用吐出部43を後席乗員の脚部に導いてもよい。また、第2の後席空調用吐出部43を用いずに、後席空調用吐出部42のみを用いてもよい。この場合、後席空調用吐出部42から吐出される風は、後席乗員の脚部に導かれてもよいし、後席乗員の上半身に導かれてもよい。
【0028】
さらに、第2吐出部は、後席空調吐出部42や第2の後席空調用吐出部43の他、デフロスタ吐出部44、45や前席フット吐出部46とすることもできる。
【0029】
前部デフロスタ吐出部44及び後部デフロスタ吐出部45は、いずれか一方のみが形成されていてもよい。前部デフロスタ吐出部44及び後部デフロスタ吐出部45を、適宜「デフロスタ吐出部44、45」と纏めて記す。
【0030】
図2を参照する。送風部11(図1参照)から送風された空気は、導入路31を通過して冷却用熱交換器22へ導かれる。冷却用熱交換器22へ導かれた空気は、冷却用熱交換器22を通過する際に冷却される。冷却された空気は、第1冷風通路32、加熱用通路33、第2冷風通路34のいずれかを通過する。このうち、加熱用通路33を通過した空気は、加熱用熱交換器50によって加熱される。
【0031】
予め設定された吹出温度に基づき、第1冷風通路32を通過した空気に、加熱用通路33を通過した空気が適宜混ぜられてベント吐出部41から車室内に吐出される。同様に、予め設定された吹出温度に基づき、第2冷風通路34を通過した空気に、加熱用通路33を通過した空気が適宜混ぜられて後席空調用吐出部42から吐出される。後席空調用吐出部42から吐出された空気は、ダクト部13を介して後席乗員の脚部に吐出される。
【0032】
冷却用熱交換器22は、例えば、内部に冷媒が流されている。送風部11から送られる空気の全量が冷却用熱交換器22を通過し、冷却される。
【0033】
加熱用熱交換器50は、第1ヒータ51と、第2ヒータ52と、からなる。第1ヒータ51、及び、第2ヒータ52は、共に空気を加熱可能である。例えば、第1ヒータ51は、電熱式のヒータであり、第2ヒータ52は、冷媒式のヒータである。
【0034】
なお、加熱用熱交換器50は、1つのヒータによって構成することもできる。また、2つのヒータによって構成する場合に、両方のヒータを冷媒式とすることもできるし、両方のヒータを電熱式とすることもできる。また、第1ヒータ51を冷媒式によって構成し、第2ヒータ52を電熱式によって構成することもできる。つまり、これらは任意に選択することができる。
【0035】
第1ミックスドア24は、回転可能に設けられピニオンギヤによって構成された第1ピニオン24aと、この第1ピニオン24aに噛み合っているラックによって構成された第1ラック24bと、この第1ラック24bに一体的に形成され第1冷風通路32及び加熱用通路33の開放量を調整可能な第1シャッタ24cと、を有する。
【0036】
第2ミックスドア25は、回転可能に設けられピニオンギヤによって構成された第2ピニオン25aと、この第2ピニオン25aに噛み合っているラックによって構成された第2ラック25bと、この第2ラック25bに一体的に形成され第2冷風通路34及び加熱用通路33の開放量を調整可能な第2シャッタ25cと、を有する。
【0037】
第1シャッタ24cが第1冷風通路32を全開にすると共に、第2シャッタ25cが第2冷風通路34を全開にすると、加熱用通路33は、全閉となる。つまり、図に示される状態において、第1冷風通路32及び第2冷風通路34は、全開であり、加熱用通路33は、全閉である。一方、加熱用通路33が全開とされている際、第1冷風通路32は、第1シャッタ24cによって全閉とされ、第2冷風通路34は、第2シャッタによって全閉とされる。
【0038】
例えば、乗員が車室内に設けられたコントロール部を操作し、設定温度を変更する。これにより、制御部を介してモータが通電され、モータが作動する。モータが作動することにより第1ピニオン24a及び/又は第2ピニオン25aが回転する。回転した第1ピニオン24a及び/又は第2ピニオン25aに噛み合っている第1ラック24b及び/又は第2ラック25bは、第1ヒータ51の前方を直線的に変位する。これにより、第1冷風通路32及び第2冷風通路34、並びに、加熱用通路33の開放量が調整される。これらの開放量を調整することにより、冷たい風と温かい風との量が調整され、これらを混ぜることにより所定の温度の風を車室内に送風することができる。
【0039】
なお、第1ミックスドア24及び第2ミックスドア25は、それぞれドアをスイング可能に設けることによっても構成することができる。
【0040】
図3を併せて参照する。ハウジング30の内部に固定された通路区画部材60は、樹脂成形品によって構成されている。通路区画部材60は、第2冷風通路34の少なくとも一部を構成する通路部61と、加熱用通路33の下流端部から第2開閉部材27まで延び第2冷風通路34を通過した空気が第2ヒータ52の流出面52aへ到達することを防止する冷風到達防止壁部62と、第2開閉部材27の軸に向かって延び第1吐出部41と第2吐出部42との間を仕切る仕切壁63と、を有している。
【0041】
つまり、第2冷風通路34の少なくとも一部と、冷風到達防止壁部62と、仕切壁63とは、1つの通路区画部材60によって一体的に構成されている。
【0042】
通路部61は、風の流れ方向に垂直な断面を基準として略U字状を呈し、第2冷風通路34の上面及び両側面を区画している。第2冷風通路34の底面は、ハウジング30によて構成されている。
【0043】
冷風到達防止壁部62は、通路部61から連続して第2ヒータ52の流出面52aに沿って立てられている立ち上げ部62aと、この立ち上げ部62aの端部から後席空調用吐出部42に向かって延びる延長部62bと、を有している。
【0044】
延長部62bの先端は、閉じ状態の第2開閉部材27に当接している。これにより、第2冷風通路34を通過した空気が第2ヒータ52の流出面へ到達することを防止している。つまり、第2開閉部材27と、冷風到達防止壁部62と、によって冷風到達防止部70が形成されている、ということができる。
【0045】
仕切壁63は、第2開閉部材27が当接可能であり、第2開閉部材27の開方向へのストッパの役割も果たす。
【0046】
第1~第3開閉部材26~29は、それぞれハウジング30にスイング可能に設けられている。車室内が予め設定された温度となるよう、制御部を介してモータが作動し、第1~第3開閉部材26~29がスイングする。第1~第3開閉部材26~29がスイングすることにより、吐出部41~46の開度が調整され、それぞれの吐出部41~46からの送風量が調整される。
【0047】
第1開閉部材26は、ベント吐出部41を開閉可能であり、第2開閉部材27は、後席空調用吐出部42を開閉可能であり、前に設けられた第3開閉部材28は、前部デフロスタ吐出部44を開閉可能であり、後ろに設けられた第3開閉部材29は、後部デフロスタ吐出部45を開閉可能である。
【0048】
エアコン装置10の作用について説明する。
【0049】
図4を参照する。図4に示されるエアコン装置10は、フルクールモードとされている。つまり、第1ミックスドア24及び第2ミックスドア25によって、加熱用通路33が塞がれている。フルクールモードにおいて、第1開閉部材26は、ベント吐出部41を開放している。第2開閉部材27は、後席空調用吐出部42を閉じていると共に、冷風到達防止壁部62に当接している。
【0050】
図に示す状態において、導入路31から導入された空気は、冷却用熱交換器22を通過する際に冷却される。冷却された空気は、第1冷風通路32を通過し、ベント吐出部41より車室内に吐出される。これにより、車室内を冷却する。
【0051】
このとき、冷風到達防止部70によって、第2冷風通路34から第2ヒータ52の流出面52aへ空気が流れることを防止している。
【0052】
以上に説明したエアコン装置10は、以下の効果を奏する。
【0053】
第2冷風通路34を通過した空気は、冷風到達防止部70によって、加熱用熱交換器50の流出面52aへ到達することを防止される。これにより、加熱用熱交換器50で加熱されないとして温度調和に用いられる第2冷風通路34を通過した冷却された空気が、意図せずに加熱用熱交換器50で加熱されることが防止される。そして、意図せずに加熱された空気が、加熱用通路33を経由して第1冷風通路32に流入することも防止される。これにより、ベント吐出部32から調和空気を吐出するときに、調和空気の温度を適温に調節することができる。より確実に温度調節を行うことができるエアコン装置10を提供することができる。
【0054】
冷風到達防止部70によって第2冷風通路34から加熱通路33側への空気の流れを遮る。例えば、加熱用通路33の下流側をラビリンス構造にする場合等に比べて、加熱通路33内の流路抵抗を低減することができる。加熱された空気を円滑に流すことができると共に、エアコン装置10全体の小型化に資する。
【0055】
さらに、冷風到達防止部70は、後席空調用吐出部42を開閉するための第2開閉部材27を利用して、閉じ状態の第2開閉部材27まで冷風到達防止壁部62を延ばすことにより構成されている。少ない部品点数、且つ、簡便な構成によってより確実に温度調節を行うことができる。
【0056】
さらに、第2吐出部は、後席空調用吐出部42である。車室の前後において適切に調節された空気を供給することができる。
【0057】
図1を併せて参照する。エアコン装置10は、例えば、デフロスタ吐出部44、45と、ベント吐出部41と、前席フット吐出部46と、後席空調用吐出部42が設けられている。第1吐出部であるベント吐出部41から冷風を吹き出すフルクールモードのとき、第2冷風通路34を通過した冷風が加熱用熱交換器50にて加熱され、加熱用通路33を経由して第1冷風通路32に混入することが防止されて、ベント吐出部41から吹き出される冷風の温度が上昇することが防止される。
【0058】
図2を参照する。冷風到達防止壁部62は、第2冷風通路34の端部から連続して一体的に形成されている。このため、冷風到達防止壁部62と第2冷風通路34との境界部から加熱用通路33へ空気が漏れることを防止できる。
【0059】
さらに、第2冷風通路34の少なくとも一部と、冷風到達防止壁部62と、仕切壁63とは、1つの通路区画部材60によって一体的に構成されている。ハウジング30の所定の位置に配置することにより、正確な位置にこれらの部位を配置することができる。また、第2冷風通路34を通過する空気の漏れをより確実に抑制することができる。
【0060】
<実施例2>
次に、実施例2によるエアコン装置10Aを図面に基づいて説明する。
【0061】
図7には、実施例2によるエアコン装置10Aが模式的に示されている。実施例2によるエアコン装置10Aにおいては、実施例1によるエアコン装置10(図4参照)とは、送風部20Aのうち、特に冷風到達防止部70Aの構造が異なる。その他の基本的な構成については、実施例1によるエアコン装置10と共通する。実施例1と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0062】
冷風到達防止部70Aは、後席空調用吐出部42を開閉可能な第2開閉部材27と、加熱用通路33の下流端部の一部を閉じている壁部65Aと、後席空調用吐出部42が閉じられている状態を基準として第2開閉部材27から壁部65Aまで延びている延長部72Aと、を有する。
【0063】
壁部65Aは、通路区画部材60(図3参照)によって、第2冷風通路34の端部から連続して一体的に形成されている。
【0064】
延長部72Aは、第2開閉部27の先端に一体的に形成されている。
【0065】
以上に説明したエアコン装置10Aも、本発明所定の効果を奏する。
【0066】
加えて、冷風到達防止部70Aは、後席空調用吐出部42を開閉するための第2開閉部材27と、加熱用通路33の下流端部に立てられた壁部65Aと、を利用して、閉じ状態の第2開閉部材27から壁部65Aまで延長部62bを延ばすことにより構成されている。少ない部品点数、且つ、簡便な構成によってより確実に温度調節を行うことができる。
【0067】
尚、本発明によるエアコン装置は、実施例に限られるものではない。本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の車両用エアコン装置は、乗用車両に搭載するのに好適である。
【符号の説明】
【0069】
10、10A…車両用エアコン装置
22…冷却用熱交換器
27…第2開閉部材
30…ハウジング
32…第1冷風通路
33…加熱用通路
34…第2冷風通路
41…ベント吐出部(第1吐出部)
42…後席空調用吐出部(第2吐出部)
44…前部デフロスタ吐出部(デフロスタ吐出部)
45…後部デフロスタ吐出部(デフロスタ吐出部)
46…前席フット吐出部
50…加熱用熱交換器
52a…流出面
62…冷風到達防止壁部
63…仕切壁
65A…壁部
70、70A…冷風到達防止部
72A…延長部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7