(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G03B 11/04 20210101AFI20230728BHJP
【FI】
G03B11/04 Z
(21)【出願番号】P 2019140044
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】潮 亮佐
(72)【発明者】
【氏名】今井 謙三
(72)【発明者】
【氏名】渡部 伸昭
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08988532(US,B2)
【文献】特開2002-135630(JP,A)
【文献】特開2004-184817(JP,A)
【文献】特開平08-240838(JP,A)
【文献】特開2014-167559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 11/04
G03B 11/00 - 11/06
G03B 17/02
G03B 17/22
H04N 5/222 - 5/257
H04N 23/40 - 23/76
H04N 23/90 - 23/959
G06F 1/00
G06F 1/16 - 1/18
G06T 1/00 - 1/00
G06T 1/60 - 1/60
G06F 3/01
G06F 3/048 - 3/04895
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ機能を作動又は停止するカメラ駆動部を備えるカメラモジュールと、
前記カメラモジュールのレンズ開口を開状態又は閉状態にする羽根部材と、
前記羽根部材が開動作又は閉動作するようにアクチュエータを駆動する羽根駆動部と、
前記カメラ駆動部と前記羽根駆動部とを制御する制御部と、
前記羽根駆動部を前記カメラ駆動部とは独立して強制的に駆動させる開動作信号又は閉動作信号を前記制御部に送信するスイッチ部とを備え、
前記制御部は、
前記スイッチ部から開動作信号が送信された場合に、前記カメラ駆動部のカメラ機能を作動させ
、かつ、カメラ機能動作入力時に、前記羽根部材の開状態を検知した場合には、前記羽根駆動部を閉動作させることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
カメラ機能を作動又は停止するカメラ駆動部を備えるカメラモジュールと、
前記カメラモジュールのレンズ開口を開状態又は閉状態にする羽根部材と、
前記羽根部材が開動作又は閉動作するようにアクチュエータを駆動する羽根駆動部と、
前記カメラ駆動部と前記羽根駆動部とを制御する制御部と、
前記羽根駆動部を前記カメラ駆動部とは独立して強制的に駆動させる開動作信号又は閉動作信号を前記制御部に送信するスイッチ部とを備え、
前記制御部は、
前記スイッチ部から開動作信号が送信された場合に、前記カメラ駆動部のカメラ機能を作動させ
、かつ、カメラ機能動作入力時に、前記羽根部材の閉状態を検知した場合には、前記羽根部材を開放して良いかの確認信号を出力し、前記確認信号に対しての確認操作がなされた場合に
、前記羽根駆動部を開動作させることを特徴とす
る電子機器。
【請求項3】
前記制御部は、
カメラ機能停止時に、前記羽根部材の開状態を検知した場合には、前記羽根駆動部を閉動作させることを特徴とする請求項1
又は2記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御部は、
電源投入時に、前記羽根部材の開状態を検知した場合には、前記羽根駆動部を閉動作させることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項記載の電子機器。
【請求項5】
前記スイッチ部は、前記制御部に開動作信号のみを送信することを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項記載の電子機器。
【請求項6】
前記制御部は、
前記スイッチ部から閉動作信号が送信された場合に、前記カメラ駆動部のカメラ機能を停止させることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項記載の電子機器。
【請求項7】
前記制御部は、
前記スイッチ部から閉動作信号が送信された場合に、前記カメラ駆動部のカメラ機能を停止させることを特徴とする
請求項1~6のいずれか1項記載の電子機器。
【請求項8】
前記制御部は、
カメラ機能動作入力時に、カメラ機能を作動して良いかの確認信号を出力し、前記確認信号に対しての確認操作がなされた場合に、前記カメラ駆動部のカメラ機能を作動させることを特徴とする請求項
7記載の電子機器。
【請求項9】
前記アクチュエータは、前記羽根部材を前記開状態と前記閉状態の一方又は両方に無通電保持することを特徴とする請求項1~
8のいずれか1項記載の電子機器。
【請求項10】
前記羽根部材は、前記レンズ開口に入射する光の全部又は一部を遮光して撮影を阻害する遮光部を有することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項記載の電子機器。
【請求項11】
前記羽根部材は、前記レンズ開口に入射する光をフィルタリングして撮影を阻害するフィルタ部を有することを特徴とする請求項1~
10のいずれか1項記載の電子機器。
【請求項12】
前記羽根部材は、外表面に視認性を有する着色又は意匠が施されていることを特徴とする請求項1~
11のいずれか1項記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器は、取得した画像を処理・保存・送信する機能を備えるものが多く、画像取得のためにカメラモジュールを備えるものが一般化している。また、近年の電子機器は、「IoT:Internet of Things(モノのインターネット)」という言葉で表現されているように、ネットワークに接続された状態で使用するものが多くなっており、このような電子機器は、ネットワークを介した外部からの不正アクセスへの対策が不可欠になっている。
【0003】
このような電子機器は、取り付けられているカメラモジュールのレンズ開口が常に開放されているものが多いので、IoTにおいて悪意の外部操作でカメラ機能が作動すると、使用者の意図しない画像が取り込まれてしまうことになり、プライベート画像の流出や不正な画像取得による防犯機能の低下などと言った問題が生じる。
【0004】
カメラモジュールを備える電子機器の代表的なものとして、スマートフォンなどの携帯情報端末がある。このような携帯情報端末は、携帯している使用者が意図しない操作誤りなどでカメラ機能を作動させてしまう場合がある。このような場合にも、使用者の意図しない画像が電子機器内に取り込まれて記録されてしまうことになり、記録された画像の外部流出や意図しない画像の記録によって盗撮などの疑いを掛けられる問題があった。
【0005】
これに対しては、カメラを使用していないときに、開放されているレンズ開口を遮蔽部材で塞ぎ、カメラを使用するときだけレンズ開口を開放させることが有効であり、例えば、スライド式の遮蔽部材を電子機器の筐体に設けて、カメラの使用時にはレンズ開口から外れるように手動で遮蔽部材をスライドさせ、カメラの非使用時にはレンズ開口を覆うように手動で遮蔽部材をスライドさせるものなどが提案されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した従来技術によると、カメラ機能の非使用時にレンズ開口を遮蔽部材で塞ぐことで、使用者が意図しない画像が電子機器に取り込まれることを抑止することができる。しかしながら、手動で遮蔽部材を操作するものでは、遮蔽部材を開操作した後にカメラ機能の作動操作を行うことになるので、操作が二度手間になり、カメラ使用時に良好な操作性を得ることができない問題が生じる。
【0008】
また、手動で遮蔽部材を操作する従来技術は、使用者の操作忘れが起こりやすく、カメラ機能の停止時にレンズ開口を塞ぐことを忘れてしまうと、レンズ開口が開放された状態で、不正アクセスや誤操作によるカメラ機能の作動がなされてしまうリスクがあり、また、カメラ機能の作動時にレンズ開口を開放することを忘れてしまうと、所望の画像を撮影したつもりが、レンズ開口が塞がれていて画像を取り込むことができない事態が生じる。
【0009】
これに対して、前述した遮蔽部材の開閉動作をカメラ機能の動作に連動させると、使用者が意図しないカメラ機能の作動時にも遮蔽部材が開動作してしまい、電子機器に使用者の意図しない画像が取り込まれることを抑止するという、本来の課題が解決できなくなってしまう。
【0010】
本発明は、このような事情に対処するために提案されたものである。すなわち、不正アクセスや使用者の誤操作などによって使用者の意図しない画像が電子機器に取り込まれることを抑止すること、カメラ使用時の操作の二度手間を無くして、カメラ使用時の操作性向上を図ること、カメラ機能の動作をレンズ開口の開閉に連動させる場合においても、使用者が意図しない画像が取り込まれるリスクの低減を図ること、などを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
カメラ機能を作動又は停止するカメラ駆動部を備えるカメラモジュールと、前記カメラモジュールのレンズ開口を開状態又は閉状態にする羽根部材と、前記羽根部材が開動作又は閉動作するようにアクチュエータを駆動する羽根駆動部と、前記カメラ駆動部と前記羽根駆動部とを制御する制御部と、前記羽根駆動部を前記カメラ駆動部とは独立して強制的に駆動させる開動作信号又は閉動作信号を前記制御部に送信するスイッチ部とを備え、前記制御部は、前記スイッチ部から開動作信号が送信された場合に、前記カメラ駆動部のカメラ機能を作動させ、かつ、カメラ機能動作入力時に、前記羽根部材の開状態を検知した場合には、前記羽根駆動部を閉動作させることを特徴とする電子機器。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】羽根駆動部とカメラ駆動部と制御部の関係を示した説明図。
【
図6】アクチュエータの動作例を示した説明図((a)が開状態、(b)が閉状態、(c)が無通電状態)。
【
図7】アクチュエータの動作例を示した説明図((a)が開状態、(b)が閉状態、(c)が無通電状態)。
【
図8】羽根部材の構成例を示した説明図((a)が網目状の遮光部を有する例、(b)が同心スリット状の遮光部を有する例、(c)がモザイクフィルタの例)。
【
図9】羽根部材の構成例を示した説明図((a)が外表面に絵柄の意匠を施した例、(b)が外表面に文字の意匠を施した例)。
【
図10】電子機器の一例(ノードPC)を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0014】
図1に示すように、電子機器1は、カメラモジュールMと、カメラモジュールMのレンズ開口Lを開状態又は閉状態にする羽根部材10と、羽根部材10を開動作又は閉動作するアクチュエータ20と、アクチュエータ20を駆動する羽根駆動部30と、羽根駆動部30を開閉動作させる信号(開動作信号又は閉動作信号)を送信するスイッチ部40とを備えている。
【0015】
図示の例では、カメラモジュールMは、電子機器1の筐体Tの内側に設けられており、筐体Tに設けられた開口T1と同軸に配置されているカメラモジュールMのレンズ開口Lに対して、これを開状態又は閉状態にするように、羽根部材10が配置されている。羽根部材10は、レンズ開口Lの中心軸に沿った厚さを有する薄板状部材であり、レンズ開口Lの中心軸に対して交差する方向にスライドすることで、レンズ開口Lを塞いだ状態(閉状態)とレンズ開口Lを開放した状態(開状態)の間で移動する。
【0016】
アクチュエータ20は、羽根部材10を開状態と閉状態の2択位置に移動するように動作させるものである。図示の例では、ヨーク21と、ヨーク21に巻かれたコイル22と、コイル22への通電によって切り換えられるヨーク21端部の磁極に応じて回転するローターマグネット23と、ローターマグネット23と羽根部材10とを連結するレバー24を備えているが、アクチュエータ20の具体的な形態は特にこれに限定されない。
【0017】
羽根駆動部30は、アクチュエータ20を駆動するものであり、図示の例では、コイル22への通電を行うドライバー31とドライバー31が実装される回路基板32を備えている。スイッチ部40は、開動作信号と閉動作信号のいずれを選択的に送信するものである。図示の例では、スイッチ部40の操作部41が筐体Tの開口T2から外側に突出するように設けられていて、これを押圧操作することで、開動作信号と閉動作信号の一方が発生する。
【0018】
図示の例では、スイッチ部40は、羽根駆動部30の回路基板32に実装されていて、カメラモジュールMの近くに配備されており、羽根駆動部30とスイッチ部40をアクチュエータ20と一体に支持するしている。しかしながら、スイッチ部40は、カメラモジュールM側の回路基板に設けても良いし、カメラモジュールMから離れた位置に設けても良い。
【0019】
図2は、羽根駆動部30とカメラ駆動部50を制御する制御部(CPU)60を示している。制御部60は、スイッチ部40からの開動作信号又は閉動作信号に応じて羽根駆動部30を制御する。制御部60となるCPUは、羽根駆動部30の回路基板32に実装されていても良いし、カメラ駆動部50の回路基板に実装されていても良い。また、互いに送受信する2つのCPUにより、羽根駆動部30の回路基板32とカメラ駆動部50の回路基板の夫々に制御部60となるCPUを設けても良い。更には、電子機器1内の他の機能を制御するCPUを制御部60として代用しても良い。
【0020】
制御部60には、羽根部材10の開閉状態又はアクチュエータ20の開閉駆動状態を検知する検知手段(例えばPIセンサやホールセンサなど)62からの検知信号が入力されるか、或いは、スイッチ部40からの開動作信号又は閉動作信号の送信履歴を記憶するメモリ61からの信号が入力される。検知手段62とメモリ61は両方設けても良いがどちらか一方であっても良い。また図示の例では、制御部60は後述する確認信号を表示部70に出力する。制御部60は、検知手段62やメモリ61からの入力に応じて、羽根駆動部30とカメラ駆動部50を制御する。
【0021】
スイッチ部40は、カメラ駆動部50とは独立して強制的に羽根駆動部30を駆動するように、制御部60に開動作信号又は閉動作信号を送信する。これにより、スイッチ部40が閉操作された場合には、カメラ駆動部50がどのような動作状態であろうと、アクチュエータ20を駆動して羽根部材10を閉動作させることができ、逆に、スイッチ部40が開操作された場合には、カメラ駆動部50がどのような動作状態であろうと、アクチュエータ20を駆動して羽根部材10を開動作させることができる。
【0022】
スイッチ部40が開操作された場合には、使用者の意図的なカメラの使用が明らかであると言える。この場合に、制御部60は、スイッチ部40から送信された開動作信号に応じて羽根駆動部30を開動作させ、これに連動して、カメラ駆動部50のカメラ機能を作動させる。ここでの、カメラ機能の作動とは、例えば、カメラアプリを起動して、撮影待ちの状態にすることなどを含んでいる。
【0023】
これとは逆に、スイッチ部40が閉操作された場合には、使用者の意図的なカメラの非使用が明らかであると言える。この場合に、制御部60は、スイッチ部40から送信された閉操作信号に応じて羽根駆動部30を閉動作させ、これに連動して、カメラ駆動部50のカメラ機能を停止させる。ここでの、カメラ機能の停止は、例えば、カメラアプリを停止させてアプリ選択状態に戻すことなどを含んでいる。
【0024】
これによると、使用者が意図するカメラの使用時には、スイッチ部40の開操作によって、カメラモジュールMのレンズ開口Lを確実に開状態にすることができ、使用者が意図するカメラの非使用時には、スイッチ部40の閉操作によって、確実にカメラモジュールMのレンズ開口Lを閉状態にすることができる。また、カメラ使用時・非使用時に、羽根部材10の開閉動作とカメラ機能の作動・停止を連動させているので、操作の二度手間を省くことができる。
【0025】
また、電子機器1は、スイッチ部40の操作忘れに対応するように、カメラ駆動部50の作動状況に応じて、羽根部材10を自動開閉する機能を備えている。この自動開閉機能は、単純にカメラ駆動部50の作動に連動して羽根駆動部30を開動作させた場合には、不正アクセスによる外部操作や誤操作によるカメラ駆動部50の作動時にも羽根駆動部30が開動作を行うことになるので、これを避けるために、制御部60は、条件付きで羽根駆動部30の自動開閉を行う制御アルゴリズムを備えている。
【0026】
図3は、その制御アルゴリズムの一例を示している。この例では、先ず、スイッチ部40の操作がなされたか否かの判断がなされる(ステップS01)。この判断は、スイッチ部40が操作されて、スイッチ部40から制御部60に開又は閉動作信号が送信されたか否かで判断される。
【0027】
そして、スイッチ部40が操作された場合(ステップS01:YES)には、スイッチ部40の操作が開操作(開動作信号が送信された)か閉操作(閉動作信号が送信された)かが判断され(ステップS02)、開操作がなされた場合(ステップS02:開)には、制御部60は、羽根部材10を開動作させるように羽根駆動部30を制御し(ステップS03)、更には、カメラ機能を作動させるようにカメラ駆動部50を制御する(ステップS04)。また、スイッチ部40にて閉操作がなされた場合(ステップS02:閉)には、制御部60は、羽根部材10を閉動作させるように羽根駆動部30を制御し(ステップS05)、更には、カメラ機能を停止させるようにカメラ駆動部50を制御する(ステップS06)。
【0028】
ステップS01にてスイッチ部40の操作がなされていない場合(ステップS01:NO)には、制御部60は、カメラ機能の動作入力待ち(ステップS11:NO)になる。ここで、カメラ機能の作動入力が有った場合(ステップS11:YES)には、この入力は使用者が意図しない入力、すなわち、不正アクセスによる外部操作の入力或いは誤操作による入力の可能性があるので、この場合には、羽根部材10の開閉状態を検知する(ステップS12)。
【0029】
この検知に対する判断(ステップS13)は、一つには、前述した検知手段62によって、羽根部材10の位置或いはアクチュエータ20のローターマグネット23の回動状態が検知され、その検知信号に基づいて、羽根部材10が開状態であるか閉状態であるかを判断する。また一つには、メモリ61に記憶されているスイッチ部40の送信履歴から、直前の信号が開動作信号であるか閉動作信号であるによって、羽根部材10が開状態であるか閉状態であるかを判断する。
【0030】
ここで、開状態と判断した場合(ステップS13:YES)には、羽根部材10を閉動作するように羽根駆動部30を制御する(ステップS14)。これによって、不正アクセスや誤操作などで使用者が意図しないカメラ機能の動作入力がなされた場合に、レンズ開口Lを閉じて、使用者が意図しない画像が電子機器1に取り込まれることを抑止する。
【0031】
そして、レンズ開口Lを閉じた状態にした後に、制御部60は、羽根部材10を開放して良いかの確認信号を表示部70などに出力(ステップS15)して、確認メッセージの表示などを行う。これに対して、使用者の確認操作がなされなかった場合(ステップS16:NO)には、確認待ち状態になり、スイッチ部40の開操作がなされるなどの確認操作がなされた場合(ステップS16:YES)には、制御部60は、羽根部材10を開動作させるように羽根駆動部30を制御し(ステップS17)、更に、カメラ機能を作動させるようにカメラ駆動部50を制御する(ステップS18)。
【0032】
このような制御によると、使用者が意図して行うスイッチ部40の操作がなされた場合には、羽根部材10の開閉とカメラ機能作動・停止が連動するので、操作の二度手間を省くことができる。また、スイッチ部40の操作がなされていない状態で、カメラ機能の作動入力が入った場合には、使用者の意図しない入力の可能性があるので、レンズ開口Lを一端閉じた状態にして、前述した確認信号の出力を行い、使用者の意図が確認できた場合のみ、羽根部材10の開動作とカメラ機能の作動を連動させる。これにより、使用者の意図しない画像の取り込みを抑止しながら、カメラ使用時の操作性向上を図ることができる。
【0033】
図4は、別の制御アルゴリズムの例を示している。この制御では、スイッチ部40による操作は開操作のみであり、羽根部材10の閉動作は全て自動で行われる。先ず、電子機器1の電源投入時(電源ON)に(ステップS20)、羽根部材10の開閉状態を検知する(ステップS21)。この検知は、前述したステップS12と同様である。
【0034】
ここで、開状態であると判断された場合(ステップS22:YES)には、制御部60は、羽根部材10を閉動作するように羽根駆動部30を制御する(ステップS23)。これによって、電源投入前にレンズ開口Lが開状態になっていた場合にも、常にレンズ開口Lを閉じた状態にすることができる。
【0035】
その後は、レンズ開口Lが閉じた状態で、スイッチ部40の開操作待ちの状態になる(ステップS24:NO)。この待ち状態で、スイッチ部40に開操作がなされると(ステップS24:YES)、前述したステップS17,S18と同様に、羽根部材10の開動作とカメラ機能の作動が連動して行われる。そして、その後はカメラ機能の停止待ち状態(ステップS27:NO)になる。
【0036】
カメラ機能の停止時(ステップS27:YES)には、ステップS21と同様に羽根部材10の開閉状態検知が行われる。その検知で、羽根部材10の開状態を検知した場合(ステップS29:YES)には、羽根部材10を閉動作して(ステップS30)、制御を終了し、羽根部材10の開状態が検知されなかった場合(ステップS29:NO)には、羽根部材10は閉状態にあるものと判断して、そのまま制御を終了する。
【0037】
このような制御によると、使用者が意図してスイッチ部40を開操作しない限り、羽根部材10は開動作されず、電源投入時やカメラ機能の停止時には、自動で羽根部材10が閉動作されるので、操作忘れでレンズ開口Lが開放状態になってしまうことがなく、使用者が意図しないカメラ機能の作動があっても常にレンズ開口Lは閉じた状態になっている。これにより、使用者の意図しない画像の取り込みを抑止しながら、カメラ使用時の操作性向上を図ることができる。
【0038】
図5は、別の制御アルゴリズムの例を示している。この制御では、スイッチ部40による操作は閉操作のみであり、羽根部材10の開動作は全て自動で行われる。先ず、スイッチ部40の閉操作がなされた場合(S30:YES)には、制御部60は、羽根部材10を閉動作するように羽根駆動部30を制御する。
【0039】
その後或いはスイッチ部40の閉動作がなされていない場合(ステップS30:NO)、カメラ機能の作動入力待ち(ステップS32:NO)になり、カメラ機能の入力が有った場合には(ステップS32:YES)、ステップS21と同様に羽根部材10の開閉状態検知を行い(ステップS33)、ステップS34,S35で羽根部材10を閉状態にする。
【0040】
そして、制御部60は、カメラ機能を作動して良いかの確認信号を表示部70などに出力(ステップS36)して、確認メッセージの表示などを行う。これに対して、使用者の確認操作がなされなかった場合(ステップS37:NO)には、確認待ち状態になり、確認操作がなされた場合(ステップS37:YES)には、制御部60は、羽根部材10を開動作させるように羽根駆動部30を制御し(ステップS38)、更に、カメラ機能を作動させるようにカメラ駆動部50を制御する(ステップS39)。
【0041】
このような制御によると、自動で羽根部材10を開動作する際には、常に確認信号が出力されて、カメラ機能の作動を使用者が意図しているかの確認がなされるので、使用者が意図しないカメラ機能の作動入力で、カメラ機能が作動して、画像が取り込まれてしまるリスクを回避することができる。
【0042】
図6及び
図7は、アクチュエータの動作例を示している。アクチュエータ20は、それ自体は周知のものを採用することができる。図示の例では、コイル22に一方向の電流を通電することで、(a)に示すように、ローターマグネット23に近接するヨーク21の両端を互いに逆極に着磁させ、その磁力による吸引でロータマグネット23を回転させて、レバー24を羽根部材10の開位置に移動させる。これに対して、コイル22に通電する電流の方向を反転させることで、(b)に示すように、ヨーク21の両端の磁極を反転させて、その磁力による吸引でロータマグネット23を逆方向に回転させて、レバー24を羽根部材10の閉位置に移動させる。
【0043】
そして、コイル22への通電が無通電状態の時には、
図6に示した例では、磁性体で形成されたレバー24を磁気吸着するマグネット25,26がレバー24の開閉位置にそれぞれ設けられていることで、
図6(c)に示すように、マグネット25,26がレバー24を開閉位置で吸着保持する。これによって、アクチュエータ20は、羽根部材10を開状態と閉状態の両方に無通電保持することができる。これによると、無通電時に、羽根部材10が開位置と閉位置の途中で止まってしまうことを防ぐことができる。
【0044】
また、コイル22への通電が無通電状態の時に、
図7に示した例では、レバー24にバネなどの付勢部材27の一端が取り付けられており、
図7(c)に示すように、付勢部材27の引張力で、レバー24が閉位置に強制的に移動する。これによると、アクチュエータ20は、羽根部材10を閉状態に無通電保持することができる。なお、この例では、レバー24を閉位置に強制移動させているが、これとは逆に、レバー24を開位置に強制移動させるように付勢部材27を設けても良い。羽根部材10を閉状態に無通電保持する例では、無通電時に常にレンズ開口Lが閉じた状態になるので、制御部60の制御やスイッチ部40の操作で羽根部材10が閉操作されない場合にも、電源OFFでレンズ開口Lを閉じた状態にすることができる。
【0045】
ここで用いられる羽根部材10は、
図8に示すようなレンズ開口Lを塞ぐ遮蔽部10Aを有している。この遮蔽部10Aは、レンズ開口Lに入射する光の全部を遮光する遮光部であってもよいが、それ以外に、
図8(a),(b)に示すように、レンズ開口Lに入射する光の一部を遮光して撮影を阻害するものであってもよい。
図8(a)に示す例は、網目状の遮光部であり、
図8(b)に示す例は、同心スリット状の遮光部であって、これらを設けることで、レンズ開口Lに入射する光の一部を遮光して撮影を阻害することができる。また、羽根部材10の遮蔽部10Aは、
図8(c)に示すように、レンズ開口Lに入射する光をフィルタリングして撮影を阻害するフィルタ部であってもよい。
図8(c)に示す例は、モザイクフィルタによって、レンズ開口Lに入射する光をフィルタリングして撮影を阻害することができる。
【0046】
また、羽根部材10は、閉状態になっているときに、その状態が外観視できて、使用者が確認できることが好ましい。このため、羽根部材10の外表面は、視認性の高い赤色などで着色しておくことが好ましい。また、羽根部材10の遮蔽部10Aの外表面に、
図9(a)に示すような絵柄の意匠を設けたり、
図9(b)に示すように文字の意匠を設けたりして、外観性を高めることが好ましい。
【0047】
図10は、電子機器1の一例として、カメラ機能を備えたPC(ノート型PC)100を示している。電子機器1は、このようなPCだけでなく、スマートフォンなどの携帯情報端末、カメラ機能を備えたAIスピーカ(スマートスピーカ)、ホームセキュリティーカメラ、など、カメラ機能を備えたIoT全般を対象にすることができる。なお、ここでのカメラ機能は、赤外線カメラのセンサ機能を含んでいる。
【0048】
羽根部材10を駆動する機構は、薄型のアクチュエータ20を採用することで、
図1に示すように、カメラモジュールMが収まるスペースがあれば、その前面に大きなスペースを要することなく配備することができる。また、羽根駆動部30やスイッチ部40をアクチュエータ20と一体に支持してユニット化することで、電子機器1の筐体Tの内側に簡単に装備することができる。
【0049】
このような電子機器1は、使用者が意図していない画像が電子機器1内に取り込まれることを未然に防止することができるので、プライバシー画像の流出や盗撮の疑いを掛けられることを回避することができ、IoT環境下であっても安心してカメラ機能を有する電子機器1を使用することができる。
【0050】
また、 開口T1および開口T2の周囲には、筐体Tの内部に埃が入らないようにするために防塵部材が設けられていてもよい。たとえば、開口T1には無色透明な樹脂部材などがはめ込まれていてもよい。開口T2の周囲と開閉スイッチ40との間には、スポンジ状の樹脂などが防塵部材として配置されてもよい。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1:電子機器,
10:羽根部材,10A:遮蔽部,
20:アクチュエータ,21:ヨーク,22:コイル,
23:ローターマグネット,24:レバー,
25,26:マグネット,27:付勢部材,
30:羽根駆動部,31:ドライバー,32:回路基板,
40:スイッチ部,41:操作部,
50:カメラ駆動部,60:制御部(CPU),61:メモリ,62:検知手段,
70:表示部,T:筐体,T1,T2:開口,
M:カメラモジュール,L:レンズ開口,100:PC(ノート型PC)