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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】タイヤ成型用モールド
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20230728BHJP
【FI】
B29C33/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019159362
(22)【出願日】2019-09-02
(65)【公開番号】P2021037665
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】二本木 聡
【審査官】田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-179046(JP,A)
【文献】特開2006-312251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に沿って配置されてタイヤのトレッド部を成型する複数のセグメントと、タイヤ幅方向に移動して複数のセグメントをタイヤ半径方向に移動するアウターリングと、を備えたタイヤ成型用モールドであって、
複数のセグメントをタイヤ半径方向の外側に付勢する付勢機構を備え、
セグメントは、タイヤ幅方向の一方側に移動するアウターリングと接触する第1接触部と、タイヤ幅方向の他方側に移動するアウターリングと接触する第2接触部と、を有し、
アウターリングは、タイヤ幅方向の一方側に移動するときにセグメントの第1接触部がスライド可能に接触して、セグメントの第1接触部をタイヤ半径方向の内側に押す第1スライド部と、タイヤ幅方向の他方側に移動するときにセグメントの第2接触部がスライド可能に接触して、付勢機構により付勢されたセグメントの第2接触部をタイヤ半径方向の外側に押す第2スライド部と、を有し、
セグメントの第1接触部がアウターリングの第1スライド部に接触した状態で、セグメントの第2接触部は、アウターリングの第2スライド部から離隔して配置され、
セグメントの第2接触部がアウターリングの第2スライド部に接触した状態で、セグメントの第1接触部は、アウターリングの第1スライド部から離隔して配置されるタイヤ成型用モールド。
【請求項2】
請求項1に記載されたタイヤ成型用モールドにおいて、
セグメントがタイヤのトレッド部からタイヤ半径方向の外側に離隔するときに、セグメントをタイヤのトレッド部を成型する成型姿勢からタイヤ半径方向の外側に傾ける傾け手段を備えたタイヤ成型用モールド。
【請求項3】
請求項2に記載されたタイヤ成型用モールドにおいて、
成型姿勢のセグメントのタイヤ半径方向の外側への傾きを許容する遊びを持ってセグメントと連結して、タイヤ半径方向に移動するセグメントをガイドするガイド部材を備えたタイヤ成型用モールド。
【請求項4】
請求項2又は3に記載されたタイヤ成型用モールドにおいて、
付勢機構は、タイヤ幅方向のいずれか一方側に位置するセグメントの端部をタイヤ半径方向の外側に付勢する付勢部を有し、
傾け手段は、付勢機構の付勢部であり、セグメントの端部の付勢により、成型姿勢のセグメントをタイヤ半径方向の外側に傾けるタイヤ成型用モールド。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載されたタイヤ成型用モールドにおいて、
セグメントの第1接触部と第2接触部は、互いの間にアウターリングが配置可能な間隔を開けて、タイヤ半径方向に離隔して配置され、
アウターリングは、セグメントの第1接触部と第2接触部の間でタイヤ幅方向に移動するタイヤ成型用モールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウターリングにより、複数のセグメントをタイヤ半径方向に移動するタイヤ成型用モールドに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ成型用モールドは、タイヤ加硫装置に設けられて、タイヤの加硫時に、タイヤを成型する。従来のタイヤ成型用モールドでは、アウターリングが複数のセグメントを囲み、アウターリングの移動に連動して複数のセグメントが移動する。また、複数のセグメントは、タイヤ周方向に沿って配置されて、タイヤ半径方向への移動により開閉する。タイヤの成型時(加硫時)には、複数のセグメントを閉じて、タイヤのトレッド部を複数のセグメントにより成型する。タイヤの成型後(加硫後)には、複数のセグメントを開いて、セグメントをタイヤのトレッド部から離隔する。
【0003】
従来のタイヤ成型用モールドでは、複数のセグメントを開くときに、セグメントの全体がタイヤのトレッド部からタイヤ半径方向の外側に向かって同時に離隔する。そのため、セグメントの移動に要する力が大きくなるとともに、タイヤのトレッド部に作用する力も大きくなる。また、セグメントの移動に要する力の大きさによっては、タイヤ成型用モールドの外部に、セグメントの移動機構を設ける必要もある。そこで、従来、金型着脱ユニット、複数の油圧シリンダ、及び、昇降シリンダにより、金型を開閉するタイヤ加硫装置が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された従来のタイヤ加硫装置では、セグメントを移動するための機構が複雑であり、セグメントの開閉に手間がかかる。また、超大型のタイヤ(例えば、建設車両用タイヤ)を成型する場合には、金型を含むタイヤ加硫装置が大きくなる。そのため、タイヤ加硫装置の設置場所も大きくなり、金型及びタイヤ加硫装置のコストも上昇する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-326332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の問題に鑑みなされ、その目的は、簡易な構造のタイヤ成型用モールドにより、タイヤのトレッド部を成型する複数のセグメントを容易に開閉することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、タイヤ周方向に沿って配置されてタイヤのトレッド部を成型する複数のセグメントと、タイヤ幅方向に移動して複数のセグメントをタイヤ半径方向に移動するアウターリングと、を備えたタイヤ成型用モールドである。タイヤ成型用モールドは、複数のセグメントをタイヤ半径方向の外側に付勢する付勢機構を備える。セグメントは、タイヤ幅方向の一方側に移動するアウターリングと接触する第1接触部と、タイヤ幅方向の他方側に移動するアウターリングと接触する第2接触部と、を有する。アウターリングは、タイヤ幅方向の一方側に移動するときにセグメントの第1接触部がスライド可能に接触して、セグメントの第1接触部をタイヤ半径方向の内側に押す第1スライド部と、タイヤ幅方向の他方側に移動するときにセグメントの第2接触部がスライド可能に接触して、付勢機構により付勢されたセグメントの第2接触部をタイヤ半径方向の外側に押す第2スライド部と、を有する。セグメントの第1接触部がアウターリングの第1スライド部に接触した状態で、セグメントの第2接触部は、アウターリングの第2スライド部から離隔して配置される。セグメントの第2接触部がアウターリングの第2スライド部に接触した状態で、セグメントの第1接触部は、アウターリングの第1スライド部から離隔して配置される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な構造のタイヤ成型用モールドにより、タイヤのトレッド部を成型する複数のセグメントを容易に開閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態のタイヤ成型用モールドを示す断面図である。
図2】本実施形態のタイヤ成型用モールドを示す断面図である。
図3】本実施形態のタイヤ成型用モールドを示す断面図である。
図4】本実施形態のタイヤ成型用モールドを分解して示す断面図である。
図5図4の矢印X方向からみたタイヤ成型用モールドの背面図である。
図6】本実施形態のタイヤ成型用モールドの閉動作を示す断面図である。
図7】本実施形態のタイヤ成型用モールドの閉動作を示す断面図である。
図8】本実施形態のタイヤ成型用モールドの開動作を示す断面図である。
図9】本実施形態のタイヤ成型用モールドの開動作を示す断面図である。
図10】本実施形態のタイヤ成型用モールドの付勢機構を示す断面図である。
図11】本実施形態のタイヤ成型用モールドの付勢機構を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のタイヤ成型用モールドの一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態のタイヤ成型用モールドは、タイヤの成型に用いられるモールドであり、各種のタイヤ(例えば、超大型タイヤ、建設車両用タイヤ)を成型する。また、タイヤ成型用モールドは、タイヤ加硫装置に設けられて、タイヤの加硫時に、タイヤの外面を成型する。タイヤ加硫装置は、未加硫のタイヤ(生タイヤ)を成型しつつ加硫して、加硫されたタイヤ(製品タイヤ)を製造する。
【0011】
図1は、本実施形態のタイヤ成型用モールド1を示す断面図であり、タイヤ2の幅方向(タイヤ幅方向W)及びタイヤ2の半径方向(タイヤ半径方向R)を含む面で切断したタイヤ成型用モールド1を示している。また、図1は、タイヤ成型用モールド1により成型されるタイヤ2の断面を模式的に示している。
【0012】
図示のように、タイヤ2は、空気入りタイヤであり、タイヤ幅方向Wの両側に位置する一対のサイド部2Aと、路面に接するトレッド部2Bを有している。タイヤ成型用モールド1は、タイヤ2を収容する外型であり、タイヤ2の周方向(タイヤ周方向)に沿って環状に配置される。タイヤ2の加硫時に、タイヤ2(未加硫タイヤ)は、タイヤ2内のブラダ(図示せず)により加圧されて、タイヤ成型用モールド1に押し付けられる。また、タイヤ成型用モールド1により、タイヤ2のサイド部2Aとトレッド部2Bが成型される。
【0013】
なお、タイヤ成型用モールド1に関する方向は、タイヤ成型用モールド1により成型されるタイヤ2に関する方向で特定する。タイヤ2に関する方向は、タイヤ周方向、タイヤ半径方向R、タイヤ幅方向Wである。タイヤ2の各方向に基づいて、タイヤ成型用モールド1を説明する。タイヤ周方向は、タイヤ成型用モールド1の周方向(モールド周方向)に一致し、タイヤ半径方向Rは、タイヤ成型用モールド1の半径方向(モールド半径方向)に一致する。タイヤ幅方向Wは、タイヤ2の回転軸方向及びタイヤ成型用モールド1の幅方向(モールド幅方向)に一致する。ここでは、タイヤ幅方向Wは、上下方向であり、タイヤ半径方向Rは、水平方向である。タイヤ半径方向Rの内側R1は、タイヤ半径方向Rにおけるタイヤ2の中心側(回転軸側)であり、タイヤ半径方向Rの外側R2は、タイヤ半径方向Rにおけるタイヤ2の中心の反対側である。
【0014】
タイヤ成型用モールド1は、2つの環状のサイドモールド3、4(第1サイドモールド3、第2サイドモールド4)と、タイヤ半径方向Rに移動可能な複数のセグメント5と、複数のセグメント5を開閉するアウターリング6を備えている。2つのサイドモールド3、4は、タイヤ幅方向Wにおいて互いに対向して設けられて、タイヤ2のタイヤ幅方向Wの両側に配置される。第1サイドモールド3は、タイヤ2及びセグメント5の上側に配置される上サイドモールドであり、第2サイドモールド4は、タイヤ2及びセグメント5の下側に配置される下サイドモールドである。サイドモールド3、4は、タイヤ2のサイド部2Aに接触する成型部(サイド成型部)3A、4Aを有し、成型部3A、4Aにより、タイヤ2のサイド部2Aを成型する。
【0015】
タイヤ2、セグメント5、及び、アウターリング6は、2つのサイドモールド3、4の間に位置する。複数のセグメント5は、分割モールド(セグメントモールド)であり、タイヤ周方向に分割されている。また、複数のセグメント5は、トレッドモールドであり、タイヤ2のトレッド部2Bを囲んで、タイヤ周方向に沿って環状に配置される。セグメント5は、タイヤ2のトレッド部2Bに接触する成型部(トレッド成型部)5Aを有し、成型部5Aにより、タイヤ2のトレッド部2Bを成型する。なお、図1は、セグメント5の分割位置で切断したタイヤ成型用モールド1を示している。そのため、図1は、セグメント5の断面図ではなく、セグメント5の側面図を示している。
【0016】
アウターリング6は、環状に形成されたアウター部材であり、第1サイドモールド3に固定されている。アウターリング6は、第1サイドモールド3から第2サイドモールド4に向かってタイヤ幅方向Wに突出する。アウターリング6の基端部6Aは、第1サイドモールド3に固定され、アウターリング6の先端部6Bは、第2サイドモールド4と対向する。アウターリング6は、基端部6Aから先端部6Bに向かってタイヤ半径方向Rの外側R2に拡がる形状に形成されており、アウターリング6の直径(内径、外径)は、基端部6Aから先端部6Bに向かって大きくなる。セグメント5及びアウターリング6において、タイヤ半径方向Rの内側R1は、タイヤ2側であり、タイヤ半径方向Rの外側R2は、タイヤ2の反対側である。
【0017】
図2図3は、本実施形態のタイヤ成型用モールド1を示す断面図であり、図1に示す2つのセグメント5のうちの一方側のセグメント5を含む部分を示している。また、図2は、閉じた状態のタイヤ成型用モールド1を示し、図3は、開いた状態のタイヤ成型用モールド1を示している。図4は、本実施形態のタイヤ成型用モールド1を分解して示す断面図であり、図5は、図4の矢印X方向からみたタイヤ成型用モールド1の背面図である。図5に示す矢印S方向は、タイヤ周方向Sである。
図示のように、移動装置(例えば、クレーン装置)(図示せず)により、第1サイドモールド3がタイヤ幅方向Wに移動して、タイヤ成型用モールド1が開閉する。その際、アウターリング6は、第1サイドモールド3と一体にタイヤ幅方向Wに移動する。
【0018】
第1サイドモールド3とアウターリング6は、タイヤ幅方向Wの一方側(ここでは、下側)に移動して、第2サイドモールド4に接近し、タイヤ成型用モールド1を閉じる閉位置P1(図2参照)に配置される。また、第1サイドモールド3とアウターリング6は、タイヤ幅方向Wの他方側(ここでは、上側)に移動して、第2サイドモールド4から離隔し、タイヤ成型用モールド1を開く開位置P2(図3参照)に配置される。アウターリング6は、閉位置P1と開位置P2の間で移動するときに、複数のセグメント5と接触して、複数のセグメント5に移動のための力を加える。セグメント5は、第2サイドモールド4の載置部4B(ここでは、上面部)にスライド可能に載置され、アウターリング6から受ける力で、第2サイドモールド4の載置部4Bでスライドにより移動する。第2サイドモールド4の載置部4Bは、タイヤ半径方向Rに沿って形成されており、セグメント5は、載置部4Bでタイヤ半径方向Rにスライドして移動する。
【0019】
アウターリング6は、タイヤ幅方向Wに移動して、複数のセグメント5をタイヤ半径方向Rに移動する。複数のセグメント5は、タイヤ半径方向Rの内側R1と外側R2に移動して開閉する。これにより、セグメント5は、タイヤ半径方向Rの内側R1の内側位置T1(図2参照)とタイヤ半径方向Rの外側R2の外側位置T2(図3参照)とに移動して、内側位置T1と外側位置T2とに配置される。セグメント5のそれぞれにおいて、タイヤ半径方向Rの内側位置T1は、タイヤ2のトレッド部2Bを成型する成型位置であり、タイヤ半径方向Rの外側位置T2は、タイヤ2のトレッド部2Bからタイヤ半径方向Rの外側R2に離隔した離隔位置である。
【0020】
タイヤ2の成型時(加硫時)には、第1サイドモールド3とアウターリング6を開位置P2に配置して、タイヤ成型用モールド1を開く(図3参照)。また、複数のセグメント5をタイヤ半径方向Rの外側位置T2に配置して開く。その状態で、未加硫のタイヤ2を第2サイドモールド4の成型部4Aに載置して、第2サイドモールド4の成型部4Aをタイヤ2のサイド部2Aに接触させる。続いて、第1サイドモールド3とアウターリング6を開位置P2から閉位置P1までタイヤ幅方向Wの一方側に移動して閉位置P1に配置する(図2参照)。同時に、アウターリング6により、複数のセグメント5をタイヤ半径方向Rの内側R1に押す。これにより、セグメント5をタイヤ半径方向Rの外側位置T2から内側位置T1までタイヤ半径方向Rの内側R1に移動して内側位置T1に配置する。
【0021】
第1サイドモールド3とアウターリング6の閉位置P1への移動に伴い、第1サイドモールド3、第2サイドモールド4、及び、内側位置T1の複数のセグメント5を組み合わせる。これにより、複数のセグメント5及びタイヤ成型用モールド1を閉じて、タイヤ2をタイヤ成型用モールド1内に収容する。その状態で、第1サイドモールド3の成型部3Aは、タイヤ2のサイド部2Aに接触する。また、複数のセグメント5は、タイヤ周方向Sに沿って環状に組み合わされて、タイヤ2を囲む。セグメント5の成型部5Aは、タイヤ2のトレッド部2Bに接触して、アウターリング6により、トレッド部2Bに押し付けられる。タイヤ成型用モールド1を閉じた状態で、タイヤ2を加硫しつつ、タイヤ成型用モールド1によりタイヤ2を成型する。
【0022】
タイヤ2の成型後(加硫後)に、第1サイドモールド3とアウターリング6を閉位置P1から開位置P2までタイヤ幅方向Wの他方側に移動して開位置P2に配置する(図3参照)。同時に、アウターリング6により、複数のセグメント5をタイヤ半径方向Rの外側R2に押す。これにより、セグメント5をタイヤ半径方向Rの内側位置T1から外側位置T2までタイヤ半径方向Rの外側R2に移動して外側位置T2に配置する。複数のセグメント5は、タイヤ周方向Sに互いに離隔して、間隔をあけて配置される。第1サイドモールド3とアウターリング6の開位置P2への移動により、複数のセグメント5及びタイヤ成型用モールド1を開く。第1サイドモールド3は、タイヤ2のサイド部2Aからタイヤ幅方向Wに離隔し、複数のセグメント5は、タイヤ2のトレッド部2Bからタイヤ半径方向Rの外側R2に離隔する。その状態で、成型後のタイヤ2(製品タイヤ)をタイヤ成型用モールド1から取り出す。
【0023】
タイヤ成型用モールド1は、第2サイドモールド4に取り付けられたガイド部材10(図4図5参照)を備えており、ガイド部材10により、セグメント5の移動をガイドする。ガイド部材10は、複数のセグメント5に対応して、第2サイドモールド4の載置部4Bの複数箇所に設けられており、複数のセグメント5は、それぞれガイド部材10にスライド可能に連結されている。ガイド部材10は、第2サイドモールド4の載置部4Bから突出し、第2サイドモールド4の載置部4Bでタイヤ半径方向Rに沿って配置されている。また、ガイド部材10は、タイヤ半径方向Rに直交する断面においてT字形状に形成されたガイドブロック(Tブロック)であり、第2サイドモールド4の載置部4Bから離隔する位置に形成された張出部11を有している。ガイド部材10の張出部11は、ガイド部材10の基端部側(載置部4B側)の部分に対して、タイヤ周方向Sの両側に張り出す。
【0024】
セグメント5は、タイヤ2のトレッド部2Bを成型する成型部材20と、ガイド部材10にスライド可能に連結する連結部材30と、アウターリング6と接触する接触部材40と、接触部材40を保持する保持部材41と、複数のガイドロッド50、51(2つの第1ガイドロッド50、2つの第2ガイドロッド51)を有している。セグメント5の成型部材20、連結部材30、接触部材40、保持部材41、及び、ガイドロッド50、51は、一体にタイヤ半径方向Rに移動する。
【0025】
成型部材20は、セグメント5の本体部(モールド部)であり、タイヤ半径方向Rの内側R1(内周側)に位置する内周部21と、タイヤ半径方向Rの外側R2(外周側)に位置する背面部22を有している。成型部材20の内周部21は、タイヤ2のトレッド部2Bを成型するセグメント5の成型部5Aである。成型部材20の背面部22は、タイヤ周方向Sの中央部に形成された凹部23と、凹部23のタイヤ周方向Sの両側に形成された傾斜部24を有している。成型部材20の2つの傾斜部24は、アウターリング6と接触するセグメント5の第1接触部5Bであり、タイヤ幅方向Wに対して傾斜している。
【0026】
成型部材20の背面部22側で(図5参照)、2つの連結部材30が、タイヤ周方向Sにおいて互いに対向して配置されて、成型部材20に取り付けられている。2つの連結部材30は、互いの対向する部分に溝部31を有しており、互いの間に2つの溝部31を含む連結スロット32、及び、連結スロット32に開口する開放スロット33を形成している。連結部材30、連結スロット32、及び、開放スロット33は、成型部材20の凹部23内の位置から傾斜部24(第1接触部5B)のタイヤ半径方向Rの外側R2の位置まで、タイヤ半径方向Rに延びる。連結スロット32は、タイヤ半径方向Rに直交する断面においてT字形状に形成されたTスロットであり、第2サイドモールド4の載置部4B側(下側)において開口するとともに、開放スロット33により、載置部4Bの反対側(上側)において開放されている。
【0027】
ガイド部材10は、連結スロット32の端部の開口から連結スロット32内に挿入されて、連結スロット32及び連結部材30と連結する。その状態で、ガイド部材10の2つの張出部11は、それぞれ連結スロット32(連結部材30)の溝部31内に配置されて、溝部31にスライド可能に係合する。また、成型部材20と連結部材30は、第2サイドモールド4の載置部4Bにスライド可能に載置される。連結部材30がガイド部材10に沿ってタイヤ半径方向Rにスライドすることで、連結部材30及びセグメント5がガイド部材10によりタイヤ半径方向Rにガイドされる。セグメント5は、ガイド部材10によりガイドされて、タイヤ半径方向Rの内側R1と外側R2に移動する。
【0028】
セグメント5(成型部材20)は、タイヤ2のトレッド部2Bを成型するときの姿勢と同じ姿勢(成型姿勢)でタイヤ半径方向Rの内側R1に移動して、成型姿勢でタイヤ2のトレッド部2Bに接触する。連結スロット32内のガイド部材10とセグメント5の連結部材30の間には、セグメント5を成型姿勢からタイヤ半径方向Rの外側R2に傾けるための隙間(遊び)が設けられる。そのため、ガイド部材10は、成型姿勢のセグメント5のタイヤ半径方向Rの外側R2への傾きを許容する遊びを持ってセグメント5(連結部材30)と連結して、タイヤ半径方向Rに移動するセグメント5をガイドする。
【0029】
セグメント5は、成型姿勢からタイヤ半径方向Rの外側R2に向かって傾きつつ、タイヤ2のトレッド部2Bから離隔して、傾き姿勢でタイヤ半径方向Rの外側R2に移動する。セグメント5の傾き姿勢は、成型姿勢からタイヤ半径方向Rの外側R2に傾いたときのセグメント5の姿勢である。傾き姿勢のセグメント5は、タイヤ幅方向Wに対して傾くように配置される。セグメント5は、タイヤ幅方向Wの一方側(ガイド部材10側)の部分(ここでは、下側部分)がタイヤ幅方向Wの他方側の部分(ここでは、上側部分)に対してタイヤ半径方向Rの外側R2に変位するように成型姿勢から傾く。
【0030】
2つの接触部材40(図5参照)が保持部材41に固定されて、保持部材41が連結部材30に取り付けられている。連結部材30は、成型部材20の背面部22と保持部材41の間に位置しており、保持部材41と接触部材40は、連結部材30のタイヤ半径方向Rの外側R2の端部からタイヤ幅方向Wに突出する。接触部材40と保持部材41は、成型部材20の背面部22からタイヤ半径方向Rの外側R2に離隔する位置に配置され、2つの接触部材40は、タイヤ周方向Sに間隔をあけて配置されている。接触部材40は、タイヤ半径方向Rの内側R1(図4参照)に位置する傾斜部42を有している。接触部材40の傾斜部42は、アウターリング6と接触するセグメント5の第2接触部5Cであり、成型部材20の傾斜部24(第1接触部5B)に対応して、タイヤ幅方向Wに対して傾斜している。
【0031】
複数のガイドロッド50、51は、成型部材20と保持部材41に固定されて、成型部材20の背面部22と保持部材41の間で、タイヤ半径方向Rに沿って延びる。2つの第1ガイドロッド50は、タイヤ周方向Sにおけるセグメント5の中央部に位置し(図5参照)、タイヤ幅方向Wに並べて配置されている。2つの第2ガイドロッド51は、セグメント5の中央部のタイヤ周方向Sの両側に位置し、タイヤ周方向Sに並べて配置されている。ガイドロッド50、51は、それぞれ支持部材60の貫通孔61、62を貫通して、支持部材60によりスライド可能に支持される。貫通孔61、62は、支持部材60をタイヤ半径方向Rに貫通している。支持部材60は、ガイド部材10に取り付けられ、2つの連結部材30の間の開放スロット33を通って、開放スロット33からタイヤ幅方向Wに突出する。セグメント5は、ガイドロッド50、51によりガイドされて、タイヤ半径方向Rに移動する。その際、開放スロット33内で、支持部材60の位置が変化する。
【0032】
セグメント5は、成型部材20に形成された2つの第1接触部5Bと、接触部材40に形成された2つの第2接触部5Cを有している(図4参照)。第1接触部5Bと第2接触部5Cは、セグメント5において互いに異なる位置に設けられて、それぞれアウターリング6とスライド可能に接触する。第1接触部5Bは、タイヤ幅方向Wの一方側(下側)に移動するアウターリング6と接触し、第2接触部5Cは、タイヤ幅方向Wの他方側(上側)に移動するアウターリング6と接触する。第2接触部5Cは、第1接触部5Bのタイヤ半径方向Rの外側R2に位置し、第1接触部5Bと第2接触部5Cは、タイヤ半径方向Rにおいて互いに対向する。セグメント5の第1接触部5Bと第2接触部5Cは、互いの間にアウターリング6が配置可能な間隔(配置空間)をあけて、タイヤ半径方向Rに離隔して配置されている。
【0033】
アウターリング6は、先端部6Bから基端部6Aに向かって形成された凹形状の空所部6C(図5参照)と、セグメント5の第1接触部5Bがスライドする第1スライド部6D(図4参照)と、セグメント5の第2接触部5Cがスライドする第2スライド部6Eを有している。アウターリング6が閉位置P1に配置されたときに、支持部材60、ガイドロッド50、51、連結部材30、及び、ガイド部材10が、アウターリング6の空所部6C内に配置される。第1スライド部6Dと第2スライド部6Eは、アウターリング6において互いに異なる位置に設けられて、それぞれタイヤ幅方向Wに対して傾斜している。第1スライド部6Dは、アウターリング6のタイヤ半径方向Rの内側R1に位置する内周部であり、第2スライド部6Eは、アウターリング6のタイヤ半径方向Rの外側R2に位置する外周部である。
【0034】
アウターリング6は、開位置P2(図3参照)からタイヤ幅方向Wの一方側(下側)に移動して、セグメント5の第1接触部5Bと第2接触部5Cの間の箇所に配置される(図2参照)。その状態で、アウターリング6及び第1スライド部6Dは、セグメント5の成型部材20及び第1接触部5Bに対してタイヤ半径方向Rの外側R2に配置される。成型部材20がアウターリング6の内側に配置されて、アウターリング6が複数のセグメント5の成型部材20を囲む。アウターリング6の第1スライド部6Dは、タイヤ半径方向Rにおいて、セグメント5の第1接触部5Bと対向する。また、アウターリング6及び第2スライド部6Eは、セグメント5の接触部材40及び第2接触部5Cに対してタイヤ半径方向Rの内側R1に配置される。アウターリング6の第2スライド部6Eは、タイヤ半径方向Rにおいて、セグメント5の第2接触部5Cと対向する。
【0035】
アウターリング6は、タイヤ幅方向Wの一方側(下側)に移動して、第1スライド部6Dでセグメント5の第1接触部5Bと接触し、タイヤ幅方向Wの他方側(上側)に移動して、第2スライド部6Eでセグメント5の第2接触部5Cと接触する。また、アウターリング6は、セグメント5の第1接触部5Bと第2接触部5Cの間でタイヤ幅方向Wに移動して、複数のセグメント5をタイヤ半径方向Rに移動する。アウターリング6は、閉位置P1からタイヤ幅方向Wの他方側に移動して、セグメント5の第1接触部5Bと第2接触部5Cの間の箇所から抜け出す。
【0036】
図6図7は、本実施形態のタイヤ成型用モールド1の閉動作を示す断面図である。
図示のように、タイヤ成型用モールド1を閉じるときには、第1サイドモールド3とアウターリング6を開位置P2(図3参照)から閉位置P1(図2参照)までタイヤ幅方向Wの一方側(下側)に移動して閉位置P1に配置する。また、アウターリング6により、複数のセグメント5をタイヤ半径方向Rの外側位置T2から内側位置T1までタイヤ半径方向Rの内側R1に移動して内側位置T1に配置する。
【0037】
アウターリング6がタイヤ幅方向Wの一方側に移動するときに、セグメント5の第1接触部5Bは、アウターリング6の第1スライド部6Dにスライド可能に接触して(図6参照)、第1スライド部6Dをスライドする(図7参照)。アウターリング6の第1スライド部6Dは、タイヤ半径方向Rの内側R1の力(閉方向の力)をセグメント5の第1接触部5Bに加えて、第1接触部5B及びセグメント5をタイヤ半径方向Rの内側R1に押す。これにより、複数のセグメント5は、タイヤ半径方向Rの内側R1に移動して閉じる(図2参照)。セグメント5は、アウターリング6の第1スライド部6Dにより押えられて、タイヤ2のトレッド部2Bに接触した状態で保持される。
【0038】
アウターリング6の第1スライド部6Dは、カム部であり、セグメント5の第1接触部5Bは、カムフォロア部である。第1スライド部6Dと第1接触部5Bからなるカム構造により、アウターリング6のタイヤ幅方向Wの一方側の運動が、セグメント5のタイヤ半径方向Rの内側R1の運動に変換される。セグメント5の第1接触部5Bがアウターリング6の第1スライド部6Dに接触した状態で、セグメント5の第2接触部5Cは、アウターリング6の第2スライド部6Eからタイヤ半径方向Rに離隔して配置される。第2接触部5Cと第2スライド部6Eは、互いに接触せず、互いの間に隙間をあけて対向する。第2スライド部6Eは、第2接触部5Cからタイヤ半径方向Rの内側R1に離隔した位置に配置される。
【0039】
図8図9は、本実施形態のタイヤ成型用モールド1の開動作を示す断面図である。
図示のように、タイヤ成型用モールド1を開くときには、第1サイドモールド3とアウターリング6を閉位置P1(図2参照)から開位置P2(図3参照)までタイヤ幅方向Wの他方側(上側)に移動して開位置P2に配置する。また、アウターリング6により、複数のセグメント5をタイヤ半径方向Rの内側位置T1から外側位置T2までタイヤ半径方向Rの外側R2に移動して外側位置T2に配置する。
【0040】
アウターリング6がタイヤ幅方向Wの他方側に移動するときに、セグメント5の第2接触部5Cは、アウターリング6の第2スライド部6Eにスライド可能に接触して(図8参照)、第2スライド部6Eをスライドする(図9参照)。アウターリング6の第2スライド部6Eは、タイヤ半径方向Rの外側R2の力(開方向の力)をセグメント5の第2接触部5Cに加えて、第2接触部5C及びセグメント5をタイヤ半径方向Rの外側R2に押す。これにより、複数のセグメント5は、タイヤ半径方向Rの外側R2に移動して開く(図3参照)。
【0041】
アウターリング6の第2スライド部6Eは、カム部であり、セグメント5の第2接触部5Cは、カムフォロア部である。第2スライド部6Eと第2接触部5Cからなるカム構造により、アウターリング6のタイヤ幅方向Wの他方側の運動が、セグメント5のタイヤ半径方向Rの外側R2の運動に変換される。セグメント5の第2接触部5Cがアウターリング6の第2スライド部6Eに接触した状態で、セグメント5の第1接触部5Bは、アウターリング6の第1スライド部6Dからタイヤ半径方向Rに離隔して配置される。第1接触部5Bと第1スライド部6Dは、互いに接触せず、互いの間に隙間をあけて対向する。第1スライド部6Dは、第1接触部5Bからタイヤ半径方向Rの外側R2に離隔した位置に配置される。
【0042】
アウターリング6の第1スライド部6Dがセグメント5の第1接触部5Bから離隔した後(図2参照)、アウターリング6及び第1サイドモールド3がタイヤ幅方向Wの他方側に移動して、アウターリング6の第2スライド部6Eがセグメント5の第2接触部5Cと接触する(図8参照)。アウターリング6は、第1接触部5Bと第2接触部5Cの間で、セグメント5と接触することなく、タイヤ幅方向Wに移動する。そのため、タイヤ成型用モールド1を開くときには、第1サイドモールド3の移動が開始した後に、第2スライド部6Eが第2接触部5Cと接触することで、セグメント5の移動が開始される。また、第1サイドモールド3がタイヤ2のサイド部2Aから離隔した後に、セグメント5がタイヤ2のトレッド部2Bから離隔する。セグメント5は、付勢機構7により付勢された状態で、アウターリング6によりタイヤ半径方向Rに押されて移動する。
【0043】
図10図11は、本実施形態のタイヤ成型用モールド1の付勢機構7を示す断面図であり、それぞれ図2図3に対応するタイヤ成型用モールド1を示している。また、図10図11は、付勢機構7の箇所で切断したセグメント5、ガイド部材10、及び、支持部材60の断面を示している。
図示のように、タイヤ成型用モールド1は、複数のセグメント5をタイヤ半径方向Rの外側R2に付勢する付勢機構7を備えている。セグメント5をタイヤ半径方向Rの内側位置T1から外側位置T2に向かって移動するときに、セグメント5は、付勢機構7によりタイヤ半径方向Rの外側R2に向かって付勢される。ここでは、付勢機構7は、セグメント5のそれぞれをタイヤ半径方向Rの外側R2に向かって常に付勢している。そのため、セグメント5は、付勢機構7によりタイヤ半径方向Rの外側R2に向かって付勢されつつ、タイヤ半径方向Rの内側R1に移動する。
【0044】
付勢機構7は、2つの付勢部7A、7B(第1付勢部7A、第2付勢部7B)を有している。第1付勢部7Aは、セグメント5と支持部材60に設けられ、第2付勢部7Bは、セグメント5とガイド部材10に設けられている。付勢機構7の第1付勢部7Aは、セグメント5(ここでは、成型部材20)のタイヤ幅方向Wにおける両端部の間に位置する中間部5Dに連結されて、セグメント5の中間部5Dをタイヤ半径方向Rの外側R2に付勢する。付勢機構7の第2付勢部7Bは、タイヤ幅方向Wのいずれか一方に位置するセグメント5の端部5E(ここでは、成型部材20の下端部)に連結されて、セグメント5の端部5Eをタイヤ半径方向Rの外側R2に付勢する。
【0045】
付勢機構7の第1付勢部7Aは、支持部材60、第1ガイドロッド50、及び、付勢部材63から構成されている。付勢部材63は、ばね(ここでは、圧縮コイルばね)であり、支持部材60の貫通孔61内に配置されて、貫通孔61からタイヤ半径方向Rの外側R2に突出している。支持部材60は、貫通孔61の内側に形成された段部64を有している。段部64における貫通孔61の直径は、段部64以外の箇所における貫通孔61の直径よりも小さい。段部64は、貫通孔61のタイヤ半径方向Rの内側R1の端部に形成されて、貫通孔61の内側に向かって張り出す。
【0046】
付勢部材63は、貫通孔61の段部64と保持部材41の間で、第1ガイドロッド50の周りに配置されている。付勢部材63のタイヤ半径方向Rの内側R1の端部は、段部64に接触し、付勢部材63のタイヤ半径方向Rの外側R2の端部は、保持部材41に接触している。2つの第1ガイドロッド50がセグメント5の中間部5Dに固定されて、付勢部材63が2つの第1ガイドロッド50のそれぞれの周りに配置される。付勢機構7は、第1付勢部7Aの付勢部材63により、セグメント5の中間部5Dをタイヤ半径方向Rの外側R2に付勢する。
【0047】
付勢機構7の第2付勢部7Bは、ガイド部材10、ガイドロッド(第3ガイドロッド52)、及び、付勢部材12から構成されている。2つの第3ガイドロッド52が、セグメント5(成型部材20)の端部5Eに固定されている。2つの第3ガイドロッド52は、タイヤ周方向Sにおけるセグメント5の中央部に位置し、タイヤ幅方向Wに並べて配置されている。第3ガイドロッド52は、タイヤ半径方向Rに沿って延び、セグメント5と一体にタイヤ半径方向Rに移動する。また、第3ガイドロッド52は、ガイド部材10の貫通孔13の内部からセグメント5の端部5Eまで配置されて、ガイド部材10によりスライド可能に支持される。貫通孔13は、ガイド部材10をタイヤ半径方向Rに貫通している。セグメント5は、第3ガイドロッド52によりガイドされて、タイヤ半径方向Rに移動する。
【0048】
ガイド部材10は、貫通孔13の内側に形成された段部14を有している。段部14における貫通孔13の直径は、段部14以外の箇所における貫通孔13の直径よりも小さく、段部14は、貫通孔13の内側に向かって張り出す。付勢部材12は、ばね(ここでは、圧縮コイルばね)であり、ガイド部材10の貫通孔13内に配置されている。付勢部材12は、貫通孔13の段部14と第3ガイドロッド52の大径部53の間で、第3ガイドロッド52の周りに配置されている。大径部53の直径は、第3ガイドロッド52の大径部53以外の部分の直径よりも大きい。付勢部材12のタイヤ半径方向Rの内側R1の端部は、段部14に接触し、付勢部材12のタイヤ半径方向Rの外側R2の端部は、第3ガイドロッド52の大径部53に接触している。付勢部材63は、2つの第3ガイドロッド52のそれぞれの周りに配置される。付勢機構7は、第2付勢部7Bの付勢部材12により、セグメント5の端部5Eをタイヤ半径方向Rの外側R2に付勢する。
【0049】
タイヤ成型用モールド1を閉じるときに、アウターリング6の第1スライド部6Dは、付勢機構7(第1付勢部7A、第2付勢部7B)により付勢されたセグメント5の第1接触部5Bをタイヤ半径方向Rの内側R1に押す(図10参照)。セグメント5は、タイヤ2のトレッド部2Bを成型する成型姿勢でガイド部材10によりガイドされて、タイヤ半径方向Rの内側R1に移動する。セグメント5の移動に伴い、第1付勢部7Aの付勢部材63は、セグメント5の保持部材41により押されて、タイヤ半径方向Rの内側R1(段部64側)に圧縮される。また、第2付勢部7Bの付勢部材12は、第3ガイドロッド52の大径部53により押されて、タイヤ半径方向Rの内側R1(段部14側)に圧縮される。セグメント5は、付勢部材63、12を圧縮しつつ移動して、タイヤ2のトレッド部2Bを成型する位置(タイヤ半径方向Rの内側位置T1)に配置される。
【0050】
タイヤ成型用モールド1を開くときに、付勢機構7は、第1付勢部7Aと第2付勢部7Bにより、セグメント5(中間部5D、端部5E)をタイヤ半径方向Rの外側R2に付勢して、セグメント5をタイヤ半径方向Rの外側R2に押す。その際、第1付勢部7Aの付勢部材63は、圧縮形状から伸長形状に復元しつつ、セグメント5の保持部材41をタイヤ半径方向Rの外側R2に押して、セグメント5の中間部5Dをタイヤ半径方向Rの外側R2に付勢する。第2付勢部7Bの付勢部材12は、圧縮形状から伸長形状に復元しつつ、第3ガイドロッド52の大径部53をタイヤ半径方向Rの外側R2に押して、セグメント5の端部5Eをタイヤ半径方向Rの外側R2に付勢する。また、アウターリング6の第2スライド部6Eは、付勢機構7(第1付勢部7A、第2付勢部7B)により付勢されたセグメント5の第2接触部5Cをタイヤ半径方向Rの外側R2に押す。セグメント5は、付勢機構7とアウターリング6から受ける力で、タイヤ半径方向Rの外側R2に移動する。
【0051】
ガイド部材10は、セグメント5の成型姿勢からタイヤ半径方向Rの外側R2への傾きを許容している。タイヤ成型用モールド1は、傾け手段8を備えており、セグメント5がタイヤ半径方向Rの外側R2に移動するときに、傾け手段8によりセグメント5を傾ける。ここでは、傾け手段8は、付勢機構7の第2付勢部7Bである。第2付勢部7Bの付勢により、セグメント5の付勢される箇所がセグメント5の端部5E側に偏り、セグメント5が偏って付勢される。傾け手段8は、第2付勢部7Bによるセグメント5の端部5Eの付勢により、セグメント5の端部5Eをタイヤ半径方向Rの外側R2に変位させて、成型姿勢のセグメント5をタイヤ半径方向Rの外側R2に傾ける。セグメント5は、傾き姿勢でガイド部材10によりガイドされて、タイヤ半径方向Rの外側R2に移動する。
【0052】
第1スライド部6Dの第1接触部5Bからの離隔から第2スライド部6Eの第2接触部5Cへの接触までの間に、傾け手段8(第2付勢部7B)により、セグメント5が傾く。そのため、アウターリング6によるセグメント5のタイヤ半径方向Rの外側R2への移動が開始される前に、セグメント5の姿勢が成型姿勢から傾き姿勢に変化する。セグメント5がタイヤ2のトレッド部2Bからタイヤ半径方向Rの外側R2に離隔するときに、傾け手段8は、セグメント5をタイヤ2のトレッド部2Bを成型する成型姿勢からタイヤ半径方向Rの外側R2に傾ける。
【0053】
以上説明したタイヤ成型用モールド1では、アウターリング6により、セグメント5をタイヤ半径方向Rの内側R1に円滑に移動できるとともに、アウターリング6と付勢機構7により、セグメント5をタイヤ半径方向Rの外側R2に確実に移動することができる。また、簡易な構造のタイヤ成型用モールド1により、複数のセグメント5を容易に開閉することができる。コンパクトなタイヤ成型用モールド1により、タイヤ2を効率よく成型することができる。
【0054】
セグメント5は、成型姿勢から傾きつつ、タイヤ2のトレッド部2Bから離隔する。そのため、セグメント5は、タイヤ幅方向Wの一方側(下側)から他方側(上側)に向かってタイヤ2のトレッド部2Bから次第に外れる。これに伴い、セグメント5の全体がタイヤ2のトレッド部2Bから同時に外れるのを防止でき、セグメント5からタイヤ2のトレッド部2Bに作用する力を低減することができる。また、セグメント5の移動に要する力を低減することもできる。従って、セグメント5をタイヤ2のトレッド部2Bから円滑に離隔できるとともに、セグメント5をタイヤ半径方向Rの外側R2に容易に移動することができる。
【0055】
ガイド部材10のガイドにより、セグメント5をタイヤ半径方向Rに円滑に移動することができる。また、ガイド部材10により、セグメント5を成型姿勢から容易に傾けることができ、セグメント5を傾き姿勢でタイヤ半径方向Rの外側R2に円滑に移動することもできる。傾け手段8が付勢機構7の第2付勢部7Bを有しており、簡単な構造の傾け手段8により、セグメント5を安定して傾けることができる。アウターリング6は、セグメント5の第1接触部5Bと第2接触部5Cの間でタイヤ幅方向Wに移動して、セグメント5を移動させる。そのため、タイヤ成型用モールド1の構造が複雑になるのを抑制することができ、アウターリング6によるセグメント5の移動を円滑に行うこともできる。
【0056】
セグメント5の第1接触部5Bがアウターリング6の第1スライド部6Dと接触するときに、セグメント5の第2接触部5Cがアウターリング6の第2スライド部6Eから離隔する。そのため、セグメント5をタイヤ半径方向Rの内側R1に移動するときに、アウターリング6の第1スライド部6Dによりセグメント5の第1接触部5Bのみを押して、セグメント5の移動を正確に行うことができる。また、セグメント5の第2接触部5Cがアウターリング6の第2スライド部6Eと接触するときに、セグメント5の第1接触部5Bがアウターリング6の第1スライド部6Dから離隔する。そのため、セグメント5をタイヤ半径方向Rの外側R2に移動するときに、アウターリング6の第2スライド部6Eによりセグメント5の第2接触部5Cのみを押して、セグメント5の移動を正確に行うことができる。
【0057】
なお、アウターリング6を第1サイドモールド3に固定せずに、アウターリング6と第1サイドモールド3を可動部材に取り付けるようにしてもよい。可動部材をタイヤ幅方向Wに移動することで、アウターリング6と第1サイドモールド3をタイヤ幅方向Wに移動する。また、第2サイドモールド4をベース部材に固定して、セグメント5をベース部材の載置部にスライド可能に載置してもよい。付勢機構7の付勢部材12、63は、ばね以外の付勢部材(例えば、弾性体)であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1・・・タイヤ成型用モールド、2・・・タイヤ、2A・・・サイド部、2B・・・トレッド部、3・・・第1サイドモールド、3A・・・成型部、4・・・第2サイドモールド、4A・・・成型部、4B・・・載置部、5・・・セグメント、5A・・・成型部、5B・・・第1接触部、5C・・・第2接触部、5D・・・中間部、5E・・・端部、6・・・アウターリング、6A・・・基端部、6B・・・先端部、6C・・・空所部、6D・・・第1スライド部、6E・・・第2スライド部、7・・・付勢機構、7A・・・第1付勢部、7B・・・第2付勢部、8・・・傾け手段、10・・・ガイド部材、11・・・張出部、12・・・付勢部材、13・・・貫通孔、14・・・段部、20・・・成型部材、21・・・内周部、22・・・背面部、23・・・凹部、24・・・傾斜部、30・・・連結部材、31・・・溝部、32・・・連結スロット、33・・・開放スロット、40・・・接触部材、41・・・保持部材、42・・・傾斜部、50・・・第1ガイドロッド、51・・・第2ガイドロッド、52・・・第3ガイドロッド、53・・・大径部、60・・・支持部材、61・・・貫通孔、62・・・貫通孔、63・・・付勢部材、64・・・段部、P1・・・閉位置、P2・・・開位置、R・・・タイヤ半径方向、R1・・・内側、R2・・・外側、S・・・タイヤ周方向、T1・・・内側位置、T2・・・外側位置、W・・・タイヤ幅方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11