(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】燃料ポンプモジュール
(51)【国際特許分類】
F02M 37/08 20060101AFI20230728BHJP
F02M 37/04 20060101ALI20230728BHJP
F02M 51/04 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
F02M37/08 E
F02M37/04 Z
F02M37/08 Z
F02M37/04 B
F02M51/04 M
(21)【出願番号】P 2019171966
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 太一
(72)【発明者】
【氏名】塚田 悟
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-105247(JP,A)
【文献】特開2013-150536(JP,A)
【文献】特開2014-025390(JP,A)
【文献】国際公開第2017/134997(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の燃料タンクの外側に搭載される燃料ポンプモジュールであって、
電動モータを内蔵するとともに、当該電動モータの複数の給電端子を有するポンプ本体と、
前記ポンプ本体を内部に収容するポンプ収容室を形成する周壁、及び、電源ケーブルが接続される給電コネクタを有する筒状形状のモジュールケースと、
前記モジュールケースに突設されて前記ポンプ本体が吐出した燃料を内燃機関に送出する送出配管と、
前記モジュールケースの外周面に突設されて、前記ポンプ収容室内の余剰燃料を燃料タンクに戻すリターン配管と、
前記ポンプ本体から吐出された余剰燃料を燃料排出口から前記ポンプ収容室内に戻して、前記送出配管に送出される燃料の圧力を調圧する圧力調整弁と、
前記給電コネクタと前記ポンプ本体の複数の前記給電端子を接続する中継ケーブルユニットと、を備え、
前記ポンプ本体は、当該ポンプ本体内の気体と燃料の一部を前記ポンプ収容室内に排出する脱気孔を有し、
前記電動モータの複数の前記給電端子と前記中継ケーブルユニットは接続部を介して接続され、
前記接続部のうちの、少なくとも二つの当該接続部が、車載状態において、前記脱気孔と前記燃料排出口のうちの、鉛直方向上側に位置するものよりも下方に位置されないように配置され
、
前記リターン配管の前記ポンプ収容室側の連通口は、前記脱気孔と前記燃料排出口のうちの、鉛直方向上側に配置されるものと、少なくとも一部が同高さとなる位置に配置されていることを特徴とする燃料ポンプモジュール。
【請求項2】
前記電動モータは、三つの前記給電端子を有する三相ブラシレスモータであり、
三つの前記接続部のうちの、少なくとも二つの当該接続部は、車載状態において、前記脱気孔と前記燃料排出口のうちの、鉛直方向上側に位置するものよりも上方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料ポンプモジュール。
【請求項3】
前記中継ケーブルユニットは、前記電動モータの複数の前記給電端子に接続されるモータ接続側コネクタを有し、
前記モータ接続側コネクタは、対応する前記給電端子に接続された状態において、前記ポンプ収容室内の滞留水から前記給電端子との接続部を遮蔽する遮蔽壁を有することを特徴とする請求項1
または2に記載の燃料ポンプモジュール。
【請求項4】
前記モータ接続側コネクタは、前記電動モータの各前記給電端子に接続される複数の雌型コネクタ部が一体のブロックによって構成されていることを特徴とする請求項
3に記載の燃料ポンプモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に燃料を供給するための燃料ポンプモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動二輪車等の内燃機関を搭載する車両において、燃料タンクの外側に配置され燃料タンク内の燃料を内燃機関に供給する燃料ポンプモジュールを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の燃料ポンプモジュールは、燃料を濾過するフィルタと、フィルタによって濾過された燃料を加圧して吐出するポンプ本体と、フィルタとポンプ本体を内部に収容するモジュールケースと、を備えている。モジュールケースには、ポンプ本体から吐出された燃料を内燃機関に送出するための送出配管が突設されるとともに、送出配管に流れる燃料の圧力を調圧するための圧力調整弁(プレッシャレギュレータ)が取り付けられている。圧力調整弁は、送出配管に流れる余剰な燃料をポンプモジュール内のポンプ収容室に排出する。ポンプモジュールには、ポンプ収容室内の余剰な燃料を燃料タンクに戻すためのリターン配管が接続されている。
【0004】
また、特許文献1に記載の燃料ポンプモジュールは、ポンプ本体が電動モータを内蔵し、電動モータの複数の給電端子がポンプ本体の軸方向の端部に突設されている。電動モータの給電端子は、中継ケーブルユニットを介して、モジュールケースに設けられた給電コネクタに接続されている。給電コネクタは、電源ケーブルを通して駆動回路やバッテリに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種の燃料ポンプモジュールは、雨水等の水や燃料に混入している水分を燃料タンクから吸引するおそれがある。その場合、水がモジュールケースのポンプ収容室内に滞留し、その滞留水の水位が次第に増加することが想定される。
【0007】
特許文献1に記載の燃料ポンプモジュールでは、ポンプ収容室内の滞留水の水位と、電動モータの給電端子と中継ケーブルユニットの接続部の位置関係について特に考慮されていない。このため、ポンプ収容室内の滞留水の水位が増加すると、給電端子と中継ケーブルユニットの複数の接続部が滞留水の中に没してしまう状況が考えられる。この場合、電位の異なる複数の接続部が同時に滞留水の中に没すると、接続部に電食が生じることが懸念される。
【0008】
そこで本発明は、ポンプ収容室内の滞留水を通して電動モータの給電端子と中継ケーブルユニットの接続部に電食が生じるのを抑制することができる燃料ポンプモジュールを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る燃料ポンプモジュールは、以下の構成を採用した。
即ち、本発明に係る燃料ポンプモジュールは、車両の燃料タンクの外側に搭載される燃料ポンプモジュールであって、電動モータを内蔵するとともに、当該電動モータの複数の給電端子を有するポンプ本体と、前記ポンプ本体を内部に収容するポンプ収容室を形成する周壁、及び、電源ケーブルが接続される給電コネクタを有する筒状形状のモジュールケースと、前記モジュールケースに突設されて前記ポンプ本体が吐出した燃料を内燃機関に送出する送出配管と、前記モジュールケースの外周面に突設されて、前記ポンプ収容室内の余剰燃料を燃料タンクに戻すリターン配管と、前記ポンプ本体から吐出された余剰燃料を燃料排出口から前記ポンプ収容室内に戻して、前記送出配管に送出される燃料の圧力を調圧する圧力調整弁と、前記給電コネクタと前記ポンプ本体の複数の前記給電端子を接続する中継ケーブルユニットと、を備え、前記ポンプ本体は、当該ポンプ本体内の気体と燃料の一部を前記ポンプ収容室内に排出する脱気孔を有し、前記電動モータの複数の前記給電端子と前記中継ケーブルユニットは接続部を介して接続され、前記接続部のうちの、少なくとも二つの当該接続部が、車載状態において、前記脱気孔と前記燃料排出口のうちの、鉛直方向上側に位置するものよりも下方に位置されないように配置され、前記リターン配管の前記ポンプ収容室側の連通口は、前記脱気孔と前記燃料排出口のうちの、鉛直方向上側に配置されるものと、少なくとも一部が同高さとなる位置に配置されていることを特徴とする。
【0010】
前記電動モータは、三つの前記給電端子を有する三相ブラシレスモータによって構成し、三つの前記接続部のうちの、少なくとも二つの当該接続部は、車載状態において、前記脱気孔と前記燃料排出口のうちの、鉛直方向上側に位置するものよりも上方に配置されるようにしても良い。
【0012】
前記中継ケーブルユニットは、前記電動モータの複数の前記給電端子に接続されるモータ接続側コネクタを有し、前記モータ接続側コネクタは、対応する前記給電端子に接続された状態において、前記ポンプ収容室内の滞留水から前記給電端子との接続部を遮蔽する遮蔽壁を有する構成としても良い。
【0013】
前記モータ接続側コネクタは、前記電動モータの各前記給電端子に接続される複数の雌型コネクタ部が一体のブロックによって構成されるようにしても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、給電端子と中継ケーブルユニットの少なくとも二つの接続部が、ポンプ本体の脱気孔と圧力調整弁の燃料排出口のうちの、鉛直方向上側に位置されるものよりも下方に位置されないように配置されている。脱気孔や燃料排出口からポンプ収容室内に噴射される燃料は、その噴射流によってポンプ収容室内の滞留水をリターン配管に誘導することができる。このため、電動モータの給電端子と中継ケーブルユニットの接続部は、少なくとも二つの接続部が同時にポンプ収容室内の滞留水に没することが無くなる。したがって、本発明を採用した場合には、ポンプ収容室内の滞留水を通して電動モータの給電端子と中継ケーブルユニットの接続部に電食が生じるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態の燃料ポンプモジュールの外観斜視図。
【
図2】実施形態の燃料ポンプジュールの分解斜視図。
【
図3】実施形態の燃料ポンプモジュールの
図6のIII-III断面に対応する断面図。
【
図4】実施形態の燃料ポンプモジュールの
図6のIV-IV断面に対応する断面図。
【
図8】実施形態のポンプ本体をポンプ吐出口側から見た斜視図。
【
図9】実施形態のポンプ本体をポンプ吸入口側から見た斜視図。
【
図10】実施形態の燃料ポンプモジュールの
図3のX矢視図。
【
図11】実施形態の燃料ポンプモジュールの
図1のXI-XI線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態の燃料ポンプモジュール1の外観斜視図である。
図2は、燃料ポンプモジュール1の分解斜視図である。また、
図3は、
図6のIII-III断面に対応する断面図である。
本実施形態の燃料ポンプモジュール1は、例えば、自動二輪車等の鞍乗型車両の燃料タンク(図示略)の外部に配置されて、燃料タンク内のガソリン等の液体燃料(以下、「燃料」と呼ぶ。)を内燃機関(不図示)に向けて圧送する用途に適用される。燃料ポンプモジュール1は、勿論、それ以外の自動四輪車両等の車両に搭載することも可能である。
【0017】
燃料ポンプモジュール1は、軸方向に長い略円筒状のモジュールケース2と、モジュールケース2の軸方向の一端側の開口3を閉塞する第1モジュールカバー4と、モジュールケース2の軸方向の他端側の開口(不図示)を閉塞する第2モジュールカバー6と、を備えている。モジュールケース2と第1,第2モジュールカバー4,6とは、いずれも樹脂材料によって形成されている。本実施形態の燃料ポンプモジュール1は、例えば、モジュールケース2の中心軸線を水平方向に向けた姿勢で、燃料タンク(不図示)の下方に搭載される。モジュールケース2の外周面には、燃料タンクから燃料を吸入する吸入配管7と、吸入した燃料を内燃機関に送出する送出配管8と、余剰燃料を燃料タンクに戻すリターン配管9と、が設けられている。これらの配管(吸入配管7、送出配管8、リターン配管9)は、ホース等を介して、燃料タンク側及び内燃機関側に接続される。燃料ポンプモジュール1は、吸入配管7とリターン配管9のホース接続端を上方側に向けた姿勢で燃料タンクの下方に搭載される。
【0018】
略円筒状のモジュールケース2の内部には、吸入配管7を通して内部に導入された燃料を濾過するフィルタカートリッジ10と、フィルタカートリッジ10のフィルタ10aを通過した燃料を加圧して吐出するポンプ本体11と、が収容されている。フィルタカートリッジ10は、蛇腹状に折り畳まれたフィルタ10a(フィルタエレメント)が環状に配置されている。フィルタ10aは、樹脂製のケース部10bに取り付けられている。環状に配置されたフィルタ10aは、外周側が燃料の導入側(濾過前側)とされ、内周側が燃料の導出側(濾過後側)とされている。ポンプ本体11は、電動モータ11a(
図3参照)を内蔵し、電動モータ11aの動力によって駆動される。ポンプ本体11は、フィルタ10aを通過した燃料を軸方向の一端側のポンプ吸入口11bから吸入し、軸方向の他端側のポンプ吐出口11cから吐出する。
【0019】
吸入配管7と送出配管8とリターン配管9とは、モジュールケース2の軸方向の一端側(開口3側)からモジュールケース2の軸長のほぼ3分の2の長さ分離間した位置に突設されている。モジュールケース2の内部のうちの、モジュールケース2の軸方向の一端側からモジュールケース2の軸長のほぼ3分の2の長さ分離間した位置には、モジュールケース2の内部をポンプ収容室12とフィルタ収容室(不図示)とに隔成する隔壁 (不図示)が形成されている。吸入配管7は、フィルタ収容室側に連通し、送出配管8とリターン配管9は、ポンプ収容室12側に連通している。モジュールケース2の隔壁には、貫通孔(不図示)が設けられ、その貫通孔にフィルタカートリッジ10のケース部10bの内筒10cが接続されている。なお、
図2中の符号13aは、内筒10cと貫通孔の間を密閉するためのシール部材である。内筒10cは、貫通孔を通してポンプ本体11のポンプ吸入口11bと接続されている。
【0020】
また、モジュールケース2のポンプ収容室12の内部には、
図3に示すように、ポンプ本体11を保持するためのポンプ保持壁14が一体に形成されるとともに、送出配管8が延設されている。送出配管8は、モジュールケース2の周壁からモジュールケース2の径方向内側に延びた後に、開口3に向かってモジュールケース2の軸方向に略沿って延びている。また、モジュールケース2のポンプ収容室12の外側を取り囲む周壁2bには、三相の電源ケーブルを接続するための給電コネクタ15が一体に設けられている。給電コネクタ15の三相の端子60は、ポンプ収容室12の内部において、中継ケーブルユニット16を介してポンプ本体11(電動モータ11a)の給電端子35(
図8~
図11参照)に接続されている。
【0021】
第2モジュールカバー6は、モジュールケース2の他端の開口を覆うカバー底壁6aと、カバー底壁6aの外周縁部から軸方向に屈曲して延びる複数のロック舌片6bと、を有している。複数のロック舌片6bは、カバー底壁6aの外周縁部に等間隔に離間して延設されている。また、ロック舌片6bには、当該ロック舌片6bの厚み方向に貫通する係合孔6cが形成されている。一方、モジュールケース2の軸方向の他端側の外周面には、複数のロック凸部2aが突設されている。ロック凸部2aは、第2モジュールカバー6のロック舌片6bと一対一で対応するように設けられている。第2モジュールカバー6は、カバー底壁6aでモジュールケース2の開口を覆った状態において、各ロック舌片6bを弾性変形させつつ、各ロック舌片6bの係合孔6cが、対応するロック凸部2aに嵌合される。これにより、第2モジュールカバー6は、モジュールケース2の軸方向の端部にスナップフィット式に固定される。第2モジュールカバー6は、モジュールケース2のフィルタ収容室にフィルタカートリッジ10を収容した後に、モジュールケース2の軸方向の端部に固定される。なお、
図2中の符号13bは、第2モジュールカバー6とモジュールケース2の間を密閉するためのシール部材である。
【0022】
図4は、
図6のIV-IV断面に対応する断面図である。
図5は、第1モジュールカバー4の斜視図である。
第1モジュールカバー4は、モジュールケース2の軸方向の一端側の開口3を覆う円板状のベース壁4aと、ベース壁4aの外周縁部から径方向外側に延びる円環状の溶着壁4bと、ベース壁4aと溶着壁4bの境界部から(溶着壁4bの径方向内側位置から)円筒状に突出する内側周壁4cと、溶着壁4bの外周縁部から内側周壁4cと同側に突出する円筒状の外側周壁4dと、を備えている。内側周壁4cと外側周壁4dは、円板状のベース壁4aに対して同軸に形成されている。内側周壁4cは、モジュールケース2の軸方向の一端側の開口3内に挿入される。外側周壁4dは、モジュールケース2の軸方向の一端側の周壁2bの外周側を覆う。溶着壁4bには、モジュールケース2の周壁2bの軸方向の一端側の端面2cが突き当てられ、その状態で一端側の端面2cが溶着によって固定されている。
【0023】
モジュールケース2の周壁2bの軸方向の一端側の端面2cは、その内周縁部に面取り部2dが設けられている。面取り部2dは、周壁2bの先端側に向かって周壁2bの肉厚が次第に薄くなるようにテーパー状に形成されている。周壁2bの面取り部2dは、第1モジュールカバー4の内側周壁4cとの間でバリ受容部17を形成する。バリ受容部17は、モジュールケース2の周壁2bの端面2cに第1モジュールカバー4の溶着壁4bが溶着される際に、溶融した樹脂を受容する空間部である。
【0024】
また、第1モジュールカバー4の内側周壁4cは、モジュールケース2の開口3に微小な隙間を挟んで挿入される環状基部18と、環状基部18の突出端側に環状の段差面19を挟んで連設される小径部20と、を有する。小径部20の外周面は、環状基部18の外周面に対して小径に形成されている。小径部20の環状基部18寄りの外周面と段差面19とは、環状のシール部材21を保持するためのシール保持部22を構成している。シール部材21は、シール保持部22に保持された状態において、内側周壁4c(小径部20)の外周面とモジュールケース2の開口3の内周面とに密接する。
【0025】
第1モジュールカバー4の外側周壁4dは、溶着壁4bからの突出長さが溶着壁4bからシール保持部22(シール部材21)までの長さよりも長く設定されている。このため、シール部材21を装着した第1モジュールカバー4をモジュールケース2の周壁2bに仮組みする際には、最初に外側周壁4dの端部をモジュールケース2の周壁2bの端部に外嵌することにより、周壁2bの端部とシール部材21との強接触を回避しつつ、第1モジュールカバー4をモジュールケース2に対してセンタリングすることができる。
なお、モジュールケース2の周壁2bの一端部寄りの外周面には、径方向外側に突出して、外側周壁4dの端面に対向する帯状の保護壁32が一体に設けられている。保護壁32の突出高さは、外側周壁4dの外径寸法よりも高くなるように設定されている。
【0026】
モジュールケース2内の第1モジュールカバー4の裏面に対向する位置には通路ブロック23が組み付けられている。以下では、説明の便宜上、通路ブロック23については、第1モジュールカバー4の裏面に対向する側を正面と呼び、正面と逆側を背面と呼ぶ。
【0027】
図6は、通路ブロック23の背面図であり、
図7は、通路ブロック23を正面側から見た斜視図である。
通路ブロック23は、樹脂材料によって全体が短軸円柱状に形成されている。通路ブロック23の軸方向は、モジュールケース2の開口3の深さ方向に沿う方向とされている。通路ブロック23の背面側の端面(軸方向のモジュールケース2内に臨む側の端面)には、ポンプ本体11のポンプ吐出口11cが接続される第1凹部24と、送出配管8のモジュールケース2内の端部が接続される第2凹部25と、圧力調整弁26(プレッシャレギュレータ)が圧入によって組付けられる第3凹部27と、が形成されている。
【0028】
第1凹部24、第2凹部25、第3凹部27は、いずれも略円形状の穴によって形成されている。第1凹部24には、ポンプ本体11のポンプ吐出口11cの形成されるボス部11dが嵌入され、第2凹部25には、送出配管8のモジュールケース2内の端部が嵌入されている。ポンプ本体11のポンプ吐出口11cには、
図3に示すように、通路ブロック23方向からの燃料の逆流を防止するための逆止弁50が取り付けられている。また、第1凹部24とボス部11d、第2凹部25と送出配管8の各間には、燃料の漏出を防止するためのシール部材51が介装されている。
【0029】
第3凹部27は、通路ブロック23の端面において、第1凹部24と第2凹部25の軸心を結ぶ直線に対してオフセットした位置に形成されている。即ち、第1凹部24、第2凹部25、及び、第3凹部27は、通路ブロック23の端面から見たときに、仮想の三角形の各頂点となる位置に配置されている。
【0030】
通路ブロック23には、第1凹部24と第2凹部25の底部同士を接続する第1接続孔28と、第3凹部27と第2凹部25の底部同士を接続する第2接続孔29が形成されている。第1接続孔28と第2接続孔29は、通路ブロック23の軸方向の同一高さ位置において、通路ブロック23の軸方向と略直交する方向に延びている。第1接続孔28の軸線28oと第2接続孔29の軸線29oは、第2凹部25の底部の近傍において相互に交差している。
本実施形態の場合、第1凹部24と第1接続孔28と第2凹部25が、ポンプ吐出口11cと送出配管8を接続する接続通路30を構成し、第2接続孔29と第3凹部27が接続通路30から分岐する分岐通路31を構成している。
【0031】
第3凹部27に組み付けられる圧力調整弁26は、
図4に示すように、燃料排出口52aを有する略筒状のケーシング52の内部に、弁孔53aを有する弁座部品53と、弁孔53aを開閉する球状の弁体54と、弁体54を閉弁方向(弁孔53aを閉じる方向)に付勢するスプリング55と、を備えている。弁体54は、モジュールケース2のポンプ収容室12側から弁孔53aを開閉する。圧力調整弁26は、ポンプ吐出口11cと送出配管8を接続する接続通路30内の燃料の圧力が設定圧力よりも高まると、弁体54がスプリング55の付勢力に抗して弁孔53aを開き、余剰の燃料を、燃料排出口52aを通してポンプ収容室12内に戻す。これにより、送出配管8に送られる燃料の圧力は、設定圧力以下になるように調圧される。圧力調整弁26は、金属製のケーシング52が第3凹部27に圧入される。また、第3凹部27と圧力調整弁26の間には、燃料の漏出を防止するためのシール部材56が介装されている。
【0032】
また、通路ブロック23は、
図7等に示すように、モジュールケース2の開口3に微小な隙間を挟んで挿入される大径周壁23aと、大径周壁23aの軸方向の一端部に段差壁23bを挟んで連設された小径周壁23cと、小径周壁23cの端部を閉塞する頂部壁23dと、を有している。小径周壁23cの外径は大径周壁23aの外径よりも小さく設定されている。小径周壁23cと頂部壁23dとは、
図4に示すように、第1モジュールカバー4の内側周壁4cの内側に配置されている。段差壁23bには、第1モジュールカバー4の内側周壁4cの突出端(小径部20の突出端)が当接している。これにより、通路ブロック23は、第1モジュールカバー4の内側周壁4cによって外周縁部を軸方向で押さえ込まれ、その結果、軸方向の変位を規制されている。この状態において、通路ブロック23の頂部壁23dと第1モジュールカバー4のベース壁4aとの間には、所定の隙間dが確保されている。
また、段差壁23bの外周縁部には、第1モジュールカバー4の内側周壁4cの突出端(小径部20の突出端)の径方向の変位を規制するための規制突起23eが突設されている。
【0033】
第1凹部24の底部と第2凹部25の底部を接続する第1接続孔28と、第3凹部27の底部と第2凹部25の底部を接続する第2接続孔29は、通路ブロック23の型成形時に、図示しない成形ピンによって造形される。このとき、軸線28o,29oが第2凹部25の近傍で交差するように各成形ピンが配置される。各成形ピンは、通路ブロック23の小径周壁23cの一部を貫通するように配置されるため、通路ブロック23を型成形した後には、成形ピンを引き抜いた後の孔が小径周壁23cに残る。この孔は、孔の周縁部を熱かしめすることによって閉塞される。
【0034】
具体的には、通路ブロック23の型成形時には、小径周壁23c上の成形ピンの引き抜き孔が残る部分に径方向外側に突出するボス部が造形されるようにし、型成形の完了後に、凹球面状のかしめ治具によって、ボス部の先端部を球面状に潰すようにして熱かしめを行う。これにより、ボス部の先端部が中心方向に流れ込むように溶融し、その結果、残存している孔の端部が溶融樹脂によって閉塞される。
図7中の符号33は、熱かしめによる孔の閉塞部である。
【0035】
図8は、ポンプ本体11をポンプ吐出口11c側から見た斜視図であり、
図9は、ポンプ本体11をポンプ吸入口11b側から見た斜視図である。また、
図10は、燃料ポンプモジュール1の
図3のX矢視図であり、
図11は、燃料ポンプモジュール1の
図1のXI-XI線に沿う断面図である。なお、
図10中の矢印UPは、燃料ポンプモジュール1を軸線が略水平に向くように車両に搭載したときにおける鉛直上方を指している。
ポンプ本体11は、図示しないポンプ機構と、ポンプ機構を作動させるための電動モータ11a(
図3参照)が円筒状のケーシング42の内部に収容されている。なお、本実施形態では、電動モータ11aは、三つの給電端子35を有する三相ブラシレスモータによって構成されている。ケーシング42の軸方向の一端側の端部壁43aにはポンプ吸入口11bが設けられ、ケーシング62の軸方向の他端側の端部壁43bにはポンプ吐出口11cが設けられている。
【0036】
一端側の端部壁43aには、ポンプ本体11の作動時に、ポンプ室(不図示)内の気体と燃料の一部をポンプ収容室12内に排出する脱気孔45がさらに設けられている。端部壁43aに形成されたポンプ吸入口11bと脱気孔45は、いずれも端部壁43aの中心からオフセットした位置に形成されている。脱気孔45は、燃料ポンプモジュール1を軸線が略水平に向くように車両に搭載した状態(以下、「車載状態」と呼ぶ。)において、上端部がモジュールケース2の中心軸線oとほぼ同高さとなる位置に配置されている(
図10参照)。なお、
図10における線pは、中心軸線oを通る(脱気孔45の上端部の近傍を通る)水平な仮想線である。
【0037】
他端側の端部壁43bには、電動モータ11aに電力を供給するための三つの(三相の)給電端子35が突設されている。端部壁43bに形成されたポンプ吐出口11cは、端部壁43bの中心からオフセットした位置に配置されている。三つの給電端子35は、端部壁43bの外周縁部に等間隔に離間して突設されている。三つの給電端子35は、端部壁43bのうちのポンプ吐出口11cが偏心配置される側と逆側の縁部に突設されている。各給電端子35は、端部壁43bからの突出方向の長さが幅方向よりも長い略長方形状の金属板から成り、その金属板の幅方向が、円形の端部壁43bの接線方向に沿うように配置されている。
【0038】
中継ケーブルユニット16は、三本の中継ケーブル36と、三本の中継ケーブル36の各一端側に接続されるケース接続側コネクタ37と、三本の中継ケーブル36の各他端側に接続されるモータ接続側コネクタ38と、を備えている。ケース接続側コネクタ37は、給電コネクタ15の三つの(三相の)端子60に接続される三つの雌型コネクタ部37aを有する。各雌型コネクタ部37aは、給電コネクタ15側の対応する端子60に接続される図示しない雌型端子を内蔵している。三つの雌型コネクタ部37aは、給電コネクタ15側の三つの端子60の配列に対応して略直線状に並び、かつ、一体のブロックによって構成されている。各雌型コネクタ部37aは、給電コネクタ15の対応する端子60に嵌合されることによって電気的に接続されている。
【0039】
モータ接続側コネクタ38は、ケース接続側コネクタ37と同様に、給電コネクタ15の三つの(三相の)給電端子35に接続される三つの雌型コネクタ部38aを有する。各雌型コネクタ部38aは、ポンプ本体11側の対応する給電端子35に接続される図示しない雌型端子を内蔵している。三つの雌型コネクタ部38aは、ポンプ本体11側の三つの給電端子35の配列に対応して略円弧状に並び、かつ、一体のブロックによって構成されている。各雌型コネクタ部38aは、ポンプ本体11の対応する給電端子35に嵌合されることによって電気的に接続されている。
モータ接続側コネクタ38は、給電端子35との接続部41を端部壁43bの中心側から覆う遮蔽壁38bをさらに有している。遮蔽壁38bは、モータ接続側コネクタ38が給電端子35に接続された状態において、ポンプ収容室12内の滞留水から給電端子35との接続部41を遮蔽する。
【0040】
本実施形態の場合、ポンプ本体11の三つ給電端子35のうちの一つは、車載状態において、
図10に示すように、ポンプ本体11の脱気孔45よりも下方側となる位置に配置されている。したがって、給電端子35と中継ケーブルユニット16(モータ接続側コネクタ38)の一つの接続部41は、ポンプ本体11の脱気孔45よりも下方に配置されている。
ポンプ本体11の三つ給電端子35のうちの残りの二つは、車載状態において、ポンプ本体11の脱気孔45aよりも上方側となる位置に配置されている。したがって、給電端子35と中継ケーブルユニット16(モータ接続側コネクタ38)の残りの二つ接続部41は、ポンプ本体11の脱気孔45よりも上方に配置されている。
【0041】
また、
図10に示すように、リターン配管9のポンプ収容室12側の連通口40は、鉛直方向に関して、圧力調整弁26の燃料排出口52aと一部が同一高さとなる(ラップする)ように形成されている。
【0042】
また、通路ブロック23に組付けられた圧力調整弁26は、車載状態において、その燃料排出口52aがポンプ本体11の脱気孔45よりも若干低くなる位置に配置されている。
【0043】
燃料ポンプモジュール1の車載状態での各部の鉛直方向の位置関係については、以下のことが言える。
(a)ポンプ本体11の脱気孔45は、圧力調整弁26の燃料排出口52aよりも上方に配置されている。
(b)一つの給電端子35(給電端子35と中継ケーブルユニット16の一つの接続部41)は、ポンプ本体11の脱気孔45よりも下方に配置されている。したがって、一つの接続部41は、脱気孔45と燃料排出口52aのうちの、鉛直方向上側に位置されるものより下方に配置されている。
(c)残余の二つの給電端子35(給電端子35と中継ケーブルユニット16の残りの二つの接続部41)は、ポンプ本体11の脱気孔45よりも上方に配置されている。したがって、少なくとも二つの接続部41は、脱気孔45と燃料排出口52aのうちの、鉛直方向上側に位置されるものよりも下方に位置されないように配置されている。
(d)リターン配管9のポンプ収容室12側の連通口40は、脱気孔45と燃料排出口52aのうちの、鉛直方向上側に配置されるものと一部が同高さとなる位置に配置されている。
【0044】
なお、上記の構成では、車載状態で、ポンプ本体11の脱気孔45が、圧力調整弁26の燃料排出口52aよりも上方に配置されているが、脱気孔45と燃料排出口52aは同じ高さに配置しても、逆に、燃料排出口52aが脱気孔45よりも上方となるように配置しても良い。この場合も、少なくとも二つの接続部41は、脱気孔45と燃料排出口52aのうちの、鉛直方向上側に位置されるものよりも下方に位置されないように配置する。
【0045】
(実施形態の効果)
本実施形態の燃料ポンプモジュール1では、車載状態でポンプ本体11が作動すると、ポンプ本体11の脱気孔45や圧力調整弁26の燃料排出口52aからポンプ収容室12内に燃料が噴出される。このため、ポンプ収容室12内の脱気孔45や燃料排出口52aの近傍では、燃料の噴出流によってポンプ収容室12内の滞留水がリターン配管9の方向に誘導される。このため、ポンプ収容室12内の滞留水の水位が脱気孔45や燃料排出口52aと同じ高さまで上昇する前に、滞留水をリターン配管9を通してポンプ収容室12の外部に排出することができる。したがって、ポンプ収容室12内では、滞留水の水位が、脱気孔45と燃料排出口52aのうちの、鉛直方向上側に位置されるものよりも上昇しにくくなる。
【0046】
本実施形態の燃料ポンプモジュール1では、給電端子35と中継ケーブルユニット16の少なくとも二つの接続部41が、ポンプ本体11の脱気孔45と圧力調整弁26の燃料排出口52aのうちの、鉛直方向上側に位置されるものよりも下方に位置されないように配置されている。このため、ポンプ本体11の給電端子35と中継ケーブルユニット16の接続部41は、少なくとも二つの接続部41が同時にポンプ収容室12内の滞留水に没することが無くなる。したがって、本実施形態の燃料ポンプモジュール1を採用した場合には、ポンプ収容室12内の滞留水を通してポンプ本体11の給電端子35と中継ケーブルユニット16の接続部41に電食が生じるのを抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態の燃料ポンプモジュール1では、リターン配管9の連通口40が、脱気孔45と燃料排出口52aのうちの鉛直方向上側に配置されるものと、少なくとも一部が同高さとなる位置に配置されている。この場合、脱気孔45と燃料排出口52aのうちの鉛直方向上側のものから噴射された燃料の流れにより、ポンプ収容室12内の滞留水をリターン配管9の連通口40に向けてよりスムーズに誘導することができる。したがって、本構成を採用した場合には、ポンプ収容室12内の滞留水を、リターン配管9を通して外部に効率良く排出することができる。
【0048】
また、本実施形態の燃料ポンプモジュール1は、中継ケーブルユニット16が給電端子35に接続されるモータ接続側コネクタ38を有し、モータ接続側コネクタ38に遮蔽壁38bが形成されている。そして、遮蔽壁38bは、モータ接続側コネクタ38が対応する給電端子35に接続された状態においてポンプ収容室12内の滞留水から接続部41を遮蔽する。このため、ポンプ収容室12内の滞留水がポンプ本体11の給電端子35と中継ケーブルユニット16の接続部41に接触するのを遮蔽壁38bによって抑制することができる。したがって、本構成を採用した場合には、ポンプ本体11の給電端子35と中継ケーブルユニット16の接続部41に電食が生じるのをより有効に抑制することができる。
【0049】
さらに、本実施形態の燃料ポンプモジュール1は、モータ接続側コネクタ38の複数の雌型コネクタ部38aが一体のブロックによって構成されているため、中継ケーブルユニット16の組付け時に、複数の雌型コネクタ部38aをポンプ本体11の対応する給電端子35に一度に容易に接続することができる。
【0050】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態のポンプ本体は、三つの給電端子を備える電動モータを採用しているが、二つの給電端子を備える直流モータ等の電動モータを採用することも可能である。この場合、給電端子と中継ケーブルの二つの接続部は、脱気孔と燃料排出口のうちの、鉛直方向上側に位置されるものよりも下方にならないように配置する。この構成により、二つの接続部が同時に滞留水に没することがなくなり、接続部の電食を抑制することが可能になる。
【符号の説明】
【0051】
1…燃料ポンプモジュール
2…モジュールケース
2b…周壁
8…送出配管
9…リターン配管
11…ポンプ本体
11a…電動モータ
12…ポンプ収容室
15…給電コネクタ
16…中継ケーブルユニット
26…圧力調整弁
35…給電端子
38…モータ接続側コネクタ
38a…雌型コネクタ部
38b…遮蔽壁
40…連通口
41…接続部
45…脱気孔
52a…燃料排出口