(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】缶成形装置
(51)【国際特許分類】
B21D 22/28 20060101AFI20230728BHJP
B21D 51/26 20060101ALI20230728BHJP
B21D 24/00 20060101ALI20230728BHJP
B21D 45/04 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
B21D22/28 F
B21D51/26 X
B21D22/28 D
B21D24/00 A
B21D45/04 F
B21D22/28 L
(21)【出願番号】P 2019196405
(22)【出願日】2019-10-29
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】松尾 昭二
(72)【発明者】
【氏名】日沼 貴則
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-071352(JP,A)
【文献】特開平06-071350(JP,A)
【文献】特開平05-131225(JP,A)
【文献】特開2018-054065(JP,A)
【文献】特開2005-169485(JP,A)
【文献】特開2006-055860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/28
B21D 51/26
B21D 24/00
B21D 45/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に内歯歯車を有するハウジングと、
前記内歯歯車と同軸の第1中心軸回りに回転自在に前記ハウジングに支持される第1回転体と、
前記第1中心軸に対して平行かつ離れて配置される第2中心軸回りに回転自在に前記第1回転体に支持され、前記内歯歯車に噛み合う外歯歯車を外周面に有する第2回転体と、
前記第2回転体に接続され、前記第1中心軸に直交する径方向のうち、所定方向に沿って往復直線運動する移動軸と、
前記移動軸に連結されるパンチと、
前記第1回転体の内部、前記第2回転体の内部、前記移動軸の内部および前記パンチの内部にわたって延びるエア供給路と、を備える、
缶成形装置。
【請求項2】
前記エア供給路は、
前記第1回転体の内部を延びる第1エア流路と、
前記第2回転体の内部を延びる第2エア流路と、
前記第1回転体と前記第2回転体との間に位置し、前記第1エア流路と前記第2エア流路とを繋ぐ接続エア室と、を有する、
請求項1に記載の缶成形装置。
【請求項3】
前記第1回転体と前記第2回転体との間をシールするシール部材を備え、
前記第1回転体は、軸方向に窪む凹部を有し、
前記第2回転体は、軸方向から前記凹部に挿入される凸部を有し、
前記シール部材は、前記第2中心軸を中心とする環状であり、前記凹部の内周面および前記凸部の外周面に、前記第2中心軸回りの全周にわたって接触し、
前記接続エア室は、前記凹部の内面、前記凸部の外面および前記シール部材により画成される、
請求項2に記載の缶成形装置。
【請求項4】
前記第1回転体が前記第1中心軸回りに回転自在に連結される回転式継手を備え、
前記回転式継手の内部を通して、前記エア供給路にエアが供給される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の缶成形装置。
【請求項5】
前記パンチが挿入される貫通孔を有するダイと、
前記ダイの前記貫通孔が開口する端面に押し付けられるカップホルダーと、を備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載の缶成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有底筒状のDI(Drawing&Ironing)缶が知られている。DI缶は、アルミニウム合金製の円板状のブランクに、カッピング加工およびDI加工等を施すことにより製造される。カッピング加工では、ブランクを絞り加工してカップ状体とする。DI加工では、カップ状体の内部にパンチを嵌合させ、カップ状体の外部に複数のダイを嵌合させて、これらの金型間でカップ状体を絞りしごき加工する。DI加工後には、缶をパンチから離型させるため、パンチから缶の内部にエアが噴射される。
【0003】
DI缶を成形する缶成形装置として、例えば下記特許文献1、2が知られている。特許文献1の製缶プレス装置は、エア供給部に一端が回動自在に接続された第1管路と、コンロッド部のエア導入部に一端が回動自在に接続された第2管路と、第1管路の他端および第2管路の他端を互いに接続する連結パイプと、を備える。特許文献2の缶成形装置は、パンチの中心部に形成された気体吐出孔の先端から気体を吐出して、缶体をパンチの先端から離型させる気体吐出機構を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-169485号公報
【文献】特許第3158312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の缶成形装置は、パンチにエアを供給する構造が複雑であり、かつ可動部分が多いため、メンテナンスや部品交換の頻度が高かった。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、構造を簡素化でき、メンテナンスや部品交換の頻度を抑えられる缶成形装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の缶成形装置の一つの態様は、内周面に内歯歯車を有するハウジングと、前記内歯歯車と同軸の第1中心軸回りに回転自在に前記ハウジングに支持される第1回転体と、前記第1中心軸に対して平行かつ離れて配置される第2中心軸回りに回転自在に前記第1回転体に支持され、前記内歯歯車に噛み合う外歯歯車を外周面に有する第2回転体と、前記第2回転体に接続され、前記第1中心軸に直交する径方向のうち、所定方向に沿って往復直線運動する移動軸と、前記移動軸に連結されるパンチと、前記第1回転体の内部、前記第2回転体の内部、前記移動軸の内部および前記パンチの内部にわたって延びるエア供給路と、を備える。
【0008】
本発明では、エア供給路が、第1回転体、第2回転体、移動軸およびパンチの各内部にわたって延びる。DI加工した缶の内部に、パンチを通してエアを噴射することにより、パンチから缶を離型できる。本発明とは異なり、例えば、ハウジングの外部からホースや配管部材等により移動軸にエアを供給する構造と比べて、本発明では、部品点数および可動部分を少なく抑えることができる。本発明の缶成形装置によれば、構造を簡素化でき、メンテナンスや部品交換の頻度を抑えることができる。
【0009】
上記缶成形装置において、前記エア供給路は、前記第1回転体の内部を延びる第1エア流路と、前記第2回転体の内部を延びる第2エア流路と、前記第1回転体と前記第2回転体との間に位置し、前記第1エア流路と前記第2エア流路とを繋ぐ接続エア室と、を有することが好ましい。
【0010】
この場合、第1回転体と第2回転体とが相対的に移動(回転)しても、接続エア室を介することにより、第1エア流路と第2エア流路との接続状態が良好に維持される。接続エア室を介して、第1エア流路から第2エア流路へと安定してエアを供給できる。
【0011】
上記缶成形装置は、前記第1回転体と前記第2回転体との間をシールするシール部材を備え、前記第1回転体は、軸方向に窪む凹部を有し、前記第2回転体は、軸方向から前記凹部に挿入される凸部を有し、前記シール部材は、前記第2中心軸を中心とする環状であり、前記凹部の内周面および前記凸部の外周面に、前記第2中心軸回りの全周にわたって接触し、前記接続エア室は、前記凹部の内面、前記凸部の外面および前記シール部材により画成されることが好ましい。
【0012】
この場合、シール部材により接続エア室の密閉状態が良好に維持される。このため、接続エア室を介して、第1エア流路から第2エア流路へとエアが安定して供給される。
【0013】
上記缶成形装置は、前記第1回転体が前記第1中心軸回りに回転自在に連結される回転式継手を備え、前記回転式継手の内部を通して、前記エア供給路にエアが供給されることが好ましい。
【0014】
この場合、エア供給路のうち第1回転体の内部に位置する部分に、回転式継手からエアが供給される。回転式継手を用いることにより、例えば、回転式継手から2系統に分岐させてエアを供給することが可能である。具体的には、回転式継手から、缶を離型するためのエア供給路と、例えばクラッチブレーキ用のエア管路と、にエアをそれぞれ供給することができる。簡素な構造により、缶成形装置の機能を高めることができる。
【0015】
上記缶成形装置は、前記パンチが挿入される貫通孔を有するダイと、前記ダイの前記貫通孔が開口する端面に押し付けられるカップホルダーと、を備えることとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一つの態様の缶成形装置によれば、構造を簡素化でき、メンテナンスや部品交換の頻度を抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態の缶成形装置を模式的に示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態の缶成形装置の往復直線運動機構を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態の缶成形装置の往復直線運動機構を示す縦断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態の缶成形装置の往復直線運動機構の内部構造を示す部分透過斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態の缶成形装置10について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の缶成形装置10は、ワークであるカップ状体WにDI加工を施してDI缶とするDI缶製造装置である。
【0019】
まず、DI缶について説明する。
特に図示しないが、DI缶は、飲料等の内容物が充填、密封される缶体(2ピース缶やボトル缶)に用いられる。2ピース缶の場合、缶体は、有底筒状のDI缶と、このDI缶の開口端部に巻き締められる円板状の缶蓋と、を備える。ボトル缶の場合、缶体は、DI缶にネッキング加工およびねじ加工等を施したボトル缶本体と、ボトル缶本体の開口端部に螺着されるキャップと、を備える。
【0020】
DI缶は、アルミニウム合金製等の板材から打ち抜いた円板状のブランクに、カッピング工程(絞り工程)およびDI工程(絞りしごき工程)を施すことにより、有底筒状に形成される。具体的にDI缶は、例えば2ピース缶の場合、板材打ち抜き工程、カッピング工程、DI工程、トリミング工程、印刷工程、塗装工程、ネッキング工程およびフランジング工程をこの順に経て、製造される。
【0021】
DI缶を製造する過程では、ブランクをカッピングプレスによって絞り加工(カッピング加工)し、カップ状体Wに成形する。つまりカップ状体Wは、上記カッピング工程において、ブランクからDI缶へ移行する過程で作製される成形中間体である。カップ状体Wは、DI缶よりも周壁の高さ(缶軸方向に沿う長さ)が小さく、底壁の直径が大きい有底筒状である。
【0022】
次に、缶成形装置10について説明する。
缶成形装置10は、上記DI工程に用いられるものであり、カップ状体WにDI加工、すなわち絞り(再絞り)しごき加工を施して、DI缶に成形する。
【0023】
図1において、缶成形装置10は、往復直線運動機構1と、往復直線運動機構1の後述する移動軸2にラム軸を介して連結されるパンチ35と、パンチ35が挿入される貫通孔30aを有するダイ30と、ダイ30の貫通孔30aが開口する端面30bに押し付けられるカップホルダー36と、エア供給路40と、回転式継手(図示省略)と、エア供給手段(図示省略)と、を備える。
図2および
図3に示すように、往復直線運動機構1は、ハウジング4と、第1回転体11と、第2回転体12と、シール部材19と、移動軸2と、複数の軸受8,9,13,14,15と、を備える。つまり缶成形装置10は、ハウジング4と、第1回転体11と、第2回転体12と、シール部材19と、移動軸2と、複数の軸受8,9,13,14,15と、を備える。
【0024】
図1に示すように、パンチ35は、円筒状または円柱状である。パンチ35の中心軸は、ダイ30の貫通孔30aの中心軸と同軸に配置される。本実施形態ではパンチ35の中心軸が、水平方向に延びる。パンチ35は、往復直線運動機構1によりパンチ35の中心軸が延びる方向に往復直線運動させられる。パンチ35は、貫通孔30a内に嵌合する。具体的に、往復直線運動機構1の移動軸2は、
図1に符号Sの双方向矢印で示すように、パンチ35および貫通孔30aの各中心軸が延びる方向(以下、ストローク方向Sと呼ぶ場合がある)に沿って往復直線運動し、これにともないパンチ35が、ダイ30に対して往復直線運動する。本実施形態では、ストローク方向Sが水平方向である。つまりパンチ35および貫通孔30aの各中心軸は、水平方向に延びる。なお
図1においては、移動軸2のストローク方向Sへの往復直線運動のストローク(移動量)に比べて、ダイ30に対するパンチ35のストロークが大きく示されているが、実際にはこれらのストロークは互いに同じである。
【0025】
本実施形態ではダイ30が、パンチ35の中心軸が延びる方向(ストローク方向S)に並んで複数設けられる。複数のダイ30には、断面円形の貫通孔31aを有する1つの再絞りダイ31と、この再絞りダイ31と同軸にストローク方向Sに配列し、断面円形の貫通孔32a,33a,34aを有する複数(図示の例では3つ)のアイアニングダイ(しごきダイ)32,33,34と、が含まれる。また、各アイアニングダイ32,33,34の中心軸が延びる方向の往復直線運動機構1とは反対側には、パイロットリング37がそれぞれ配置される。パイロットリング37が設けられることにより、成形時に缶が各アイアニングダイ32,33,34を外れたときの衝撃でパンチ35が各アイアニングダイ32,33,34に接触することが抑制される。
また、成形時において再絞りダイ31およびアイアニングダイ32,33,34には、潤滑と冷却のためクーラント液が供給される。
【0026】
カップホルダー36は、円筒状である。カップホルダー36の中心軸は、パンチ35の中心軸と同軸である。カップホルダー36は、パンチ35の外側に嵌め合わされ、かつパンチ35に対してストローク方向Sにスライド移動可能である。カップホルダー36は、複数のダイ30のうち、ストローク方向Sにおいて最も往復直線運動機構1側に配置される再絞りダイ31の往復直線運動機構1側を向く端面31bに、カップ状体Wの底壁を押圧可能である。すなわち、カップホルダー36は、ダイ30の端面30bに配置されたカップ状体Wの内部に挿入され、カップ状体Wの底壁を端面30bに押し付けて支持する。
【0027】
缶成形装置10によるカップ状体WへのDI加工は、下記のように行われる。
まず、ワークであるカップ状体Wが、カップ軸(缶軸)を水平方向に延ばし開口をパンチ35側へ向けた姿勢で、パンチ35と再絞りダイ31との間に配置される。カップ状体Wの底壁は、再絞りダイ31の端面31bと対向する。
【0028】
このカップ状体Wに対して、カップホルダー36およびパンチ35が前進移動させられる。具体的には、カップホルダー36およびパンチ35が、ストローク方向Sにおいて、往復直線運動機構1からダイ30側へ向けて移動する。そしてカップホルダー36が、再絞りダイ31の端面31bにカップ状体Wの底壁を押し付けてカップ押し付け動作を行いつつ、パンチ35が、カップ状体Wを再絞りダイ31の貫通孔31a内に押し込んでいくことで、再絞り加工を施す。
【0029】
再絞り加工により、カップ状体Wは小径に成形され、かつカップ軸方向に沿う長さ(高さ)が大きくなる。さらにこのカップ状体Wをパンチ35で押し込んでいき、複数のアイアニングダイ32,33,34の各貫通孔32a,33a,34aを順次通過させながらしごき加工を施す。すなわち、カップ状体Wの周壁をしごいて延伸させ、周壁高さを高くするとともに周壁の厚さを薄くして、有底筒状のDI缶とする。DI缶は、周壁がしごかれることで冷間加工硬化され、強度が高められる。
【0030】
しごき加工が終了したDI缶は、パンチ35がさらに前方に押し出して底部(缶底となる部分)を不図示のボトム成形金型に押圧することにより、この底部がドーム形状に成形される。
【0031】
また缶成形装置10は、特に図示しないが、上述した構成以外に下記の構成を備える。缶成形装置10は、パンチ35およびカップホルダー36と、再絞りダイ31との間にカップ状体Wを供給する缶供給機構と、パンチ35と移動軸2とを連結し水平方向に延びるラム軸と、ラム軸をストローク方向Sに移動自在に軸支する複数(例えば2つ)の軸受と、カップホルダー36をパンチ35と同期させてストローク方向Sに往復直線移動させるカップホルダー駆動機構と、パンチ35から離型させられたDI缶を装置外部に排出する缶排出機構と、を備える。
【0032】
図2および
図3において、本実施形態では、第1回転体11の中心軸を第1中心軸C1と呼び、第2回転体12の中心軸を第2中心軸C2と呼ぶ。第1回転体11は、第1中心軸C1回りに回転自在にハウジング4に支持される。第2回転体12は、第2中心軸C2回りに回転自在に第1回転体11に支持される。第1中心軸C1と第2中心軸C2とは、互いに平行であり、かつ互いに離れて配置される。つまり第2中心軸C2は、第1中心軸C1に対して平行かつ離れて配置される。本実施形態では、第1中心軸C1および第2中心軸C2が、水平方向に延びる。
以下の説明では、第1中心軸C1が延びる方向および第2中心軸C2が延びる方向を、軸方向と呼ぶ。
【0033】
第1中心軸C1と直交する方向を、第1径方向または単に径方向と呼ぶ。第1径方向のうち、第1中心軸C1に近づく向きを第1径方向の内側と呼び、第1中心軸C1から離れる向きを第1径方向の外側と呼ぶ。
第1中心軸C1回りに周回する方向を第1周方向と呼ぶ。第1周方向のうち、缶成形装置10の稼働時に、ハウジング4に対して第1回転体11が回転させられる向きを、第1回転方向T1と呼ぶ。
【0034】
第2中心軸C2と直交する方向を、第2径方向と呼ぶ。第2径方向のうち、第2中心軸C2に近づく向きを第2径方向の内側と呼び、第2中心軸C2から離れる向きを第2径方向の外側と呼ぶ。
第2中心軸C2回りに周回する方向を第2周方向と呼ぶ。第2周方向のうち、缶成形装置10の稼働時に、第1回転体11に対して第2回転体12が回転させられる向きを、第2回転方向T2と呼ぶ。
【0035】
図3に示すように、ハウジング4は、第1回転体11、第2回転体12および複数の軸受8,9,13,14を収容する。ハウジング4は、多段円筒状である。ハウジング4は、第1中心軸C1を中心として軸方向に延びる。ハウジング4は、大径筒部6と、小径筒部7と、内歯歯車3と、を有する。
【0036】
大径筒部6の外径は、小径筒部7の外径よりも大きい。大径筒部6の内径は、小径筒部7の内径よりも大きい。大径筒部6の内部と小径筒部7の内部とは、互いに連通する。大径筒部6の軸方向位置と、小径筒部7の軸方向位置とは、互いに異なる。大径筒部6と小径筒部7とは、軸方向において互いに隣接して配置される。
本実施形態では、軸方向のうち、小径筒部7から大径筒部6へ向かう方向を前側(軸方向一方側)と呼び、大径筒部6から小径筒部7へ向かう方向を後側(軸方向他方側)と呼ぶ。
【0037】
内歯歯車3は、ハウジング4の内周面に設けられる。
図3および
図5に示すように、内歯歯車3は、第1中心軸C1を中心とする環状である。具体的に内歯歯車3は、第1周方向に延びる円形リング状である。内歯歯車3は、内歯歯車3の内周部に、第1周方向に並ぶ複数の内歯3aを有する。内歯歯車3の外周部は、大径筒部6の内周部と固定される。本実施形態では内歯歯車3が、軸方向において、大径筒部6の両端部間に位置する中間部分に配置される。
【0038】
第1回転体11は、内歯歯車3と同軸に配置される。第1回転体11は、多段円柱状であり、軸方向に延びる。第1回転体11は、大径部16と、小径部17と、を有する。
大径部16は、第1回転体11のうち軸方向の前側の部分を構成する。大径部16の外径は、小径部17の外径よりも大きい。大径部16は、大径筒部6内に配置される。大径部16は、大径筒部6内に設けられる軸受8により、第1周方向に回転自在に支持される。すなわち第1回転体11は、軸受8を介して、ハウジング4に第1周方向に回転自在に支持される。
【0039】
大径部16は、収容室18を有する。収容室18は、大径部16の軸方向の前側を向く端面から軸方向の後側に窪む凹状である。収容室18は、第2中心軸C2を中心として軸方向に延びる。収容室18は、円穴状である。収容室18の内周部のうち、軸方向の両端部には、一対の軸受13,14が配置される。
【0040】
収容室18は、凹部18aと、シール溝18bと、を有する。つまり第1回転体11は、凹部18aと、シール溝18bと、を有する。
凹部18aは、収容室18の後端部に位置する。
図4に示すように、凹部18aは、大径部16のうち収容室18の後側の開口を塞ぐ底壁に設けられ、この底壁の前面から後側に窪む。つまり凹部18aは、軸方向に窪む。
シール溝18bは、凹部18aの内周面から第2径方向の外側に窪み、第2周方向に延びる。シール溝18bは、第2中心軸C2を中心とする環状の溝である。
【0041】
図3に示すように、小径部17は、第1回転体11のうち軸方向の後側の部分を構成する。小径部17の前端部は、大径部16の後端部と固定される。小径部17は、小径筒部7内に設けられる軸受9により、第1周方向に回転自在に支持される。すなわち第1回転体11は、軸受9を介して、ハウジング4に第1周方向に回転自在に支持される。
【0042】
小径部17は、小径筒部7内に配置される前側部分と、小径筒部7から軸方向の後側に突出する後側部分と、を有する。小径部17の後側部分には、図示しない駆動モータから伝達される第1回転方向T1の回転駆動力が入力される。すなわち第1回転体11は、駆動モータの回転駆動力により、ハウジング4に対して第1回転方向T1に回転させられる。
【0043】
第2回転体12は、多段円柱状であり、軸方向に延びる。第2回転体12は、収容室18内に配置される。第2回転体12は、大径部分20と、小径部分21と、外歯歯車5と、凸部12aと、を有する。
大径部分20は、第2回転体12のうち軸方向の前側の部分を構成する。大径部分20の外径は、小径部分21の外径よりも大きい。大径部分20は、収容室18内に設けられる軸受13により、第2周方向に回転自在に支持される。
【0044】
小径部分21は、第2回転体12のうち軸方向の後側の部分を構成する。小径部分21の前端部は、大径部分20の後端部と接続される。大径部分20と小径部分21とは、単一の部材により一体に形成される。小径部分21は、収容室18内に設けられる軸受14により、第2周方向に回転自在に支持される。
すなわち第2回転体12は、軸受13,14を介して、第1回転体11に第2周方向に回転自在に支持される。
【0045】
図3および
図5に示すように、外歯歯車5は、第2回転体12の外周面に設けられる。外歯歯車5は、第2中心軸C2を中心とする環状である。具体的に外歯歯車5は、第2周方向に延びる円形リング状である。外歯歯車5は、小径部分21の第2径方向の外側に配置される。外歯歯車5の内周部は、小径部分21の外周部と固定される。外歯歯車5は、軸方向において、収容室18内に設けられる一対の軸受13,14間に配置される。
外歯歯車5は、外歯歯車5の外周部に、第2周方向に並ぶ複数の外歯5aを有する。外歯歯車5の外歯5aと、内歯歯車3の内歯3aとは、互いに噛み合う。つまり外歯歯車5は、内歯歯車3に噛み合う。
【0046】
缶成形装置10の稼働時に、外歯歯車5は、内歯歯車3の内周に沿って第1回転方向T1に回転(公転)移動しつつ、第2回転方向T2に回転(自転)する。本実施形態では、往復直線運動機構1を軸方向の前側から後側へ向けて見て、つまり往復直線運動機構1の前面を正面に見て、第1回転方向T1は、第1中心軸C1を中心とする反時計回りの方向であり、第2回転方向T2は、第2中心軸C2を中心とする時計回りの方向である。
外歯歯車5のピッチ円直径は、内歯歯車3のピッチ円直径の1/2である。
【0047】
図4に示すように、凸部12aは、第2回転体12の後端部に位置する。凸部12aは、小径部分21の後端面から軸方向の後側へ向けて突出する。凸部12aは、凹部18a内に軸方向の前側から挿入される。つまり凸部12aは、軸方向から凹部18aに挿入される。軸方向において、凸部12aと凹部18aとの間には、隙間が設けられる。第2径方向において、凸部12aと凹部18aとの間には、隙間が設けられる。
【0048】
シール部材19は、第1回転体11と第2回転体12との間をシールする。シール部材19は、第2中心軸C2を中心とする環状である。具体的にシール部材19は、第2周方向に延びる円形リング状である。シール部材19は、凹部18aの内周面および凸部12aの外周面に、第2中心軸C2回りの全周にわたって接触する。シール部材19は、シール溝18b内に嵌め合わされる。
【0049】
図2および
図3に示すように、移動軸2は、ハウジング4よりも軸方向の前側へ突出する。移動軸2は、第2回転体12に接続され、第1中心軸C1に直交する径方向のうち、所定方向に沿って往復直線運動する。本実施形態ではこの所定方向が、ストローク方向Sである。移動軸2は、円柱状であり、軸方向に延びる。移動軸2の中心軸Aは、第1中心軸C1と平行である。移動軸2の中心軸Aは、第2中心軸C2に対して平行かつ離れて配置される。中心軸Aと第2中心軸C2との間の第2径方向の距離は、第1中心軸C1と第2中心軸C2との間の第2径方向の距離と等しい。往復直線運動機構1を軸方向から見て、移動軸2の中心軸Aは、外歯歯車5のピッチ円直径上に位置する。本実施形態では、移動軸2と第2回転体12とが、単一の部材により一体に形成される。
軸受15は、移動軸2の外周部に設けられる。軸受15は、図示しないラム軸と移動軸2とを、中心軸A回りに相対回転自在に連結する。
【0050】
図1および
図3に示すように、エア供給路40は、第1回転体11の内部、第2回転体12の内部、移動軸2の内部、図示しないラム軸の内部、およびパンチ35の内部にわたって延びる。
エア供給路40は、第1エア流路41と、第2エア流路42と、接続エア室43と、移動軸エア流路44と、ラム軸エア流路45と、パンチエア流路46と、を有する。
【0051】
図3および
図4に示すように、第1エア流路41は、第1回転体11の内部を延びるエアの流路である。第1エア流路41は、第1軸方向流路41aと、第1径方向流路41bと、を有する。
第1軸方向流路41aは、第1中心軸C1上に位置する。第1軸方向流路41aは、小径部17の軸方向の全長および大径部16の後端部にわたって配置され、軸方向に延びる。第1軸方向流路41aの後端部は、小径部17の後端面に開口する。
【0052】
第1径方向流路41bは、大径部16の後端部に配置される。第1径方向流路41bは、第1軸方向流路41aの前端部に接続する。第1径方向流路41bは、第1軸方向流路41aの前端部から第1径方向の外側に延びる。第1径方向流路41bの第1径方向の外端部は、凹部18aの内周面に開口する。
【0053】
第2エア流路42は、第2回転体12の内部を延びるエアの流路である。本実施形態では、第2エア流路42の断面積と、第1エア流路41の断面積とが、互いに同じである。第2エア流路42は、第2軸方向流路42aと、第2傾斜流路42bと、を有する。
第2軸方向流路42aは、第2中心軸C2上に位置する。第2軸方向流路42aは、第2回転体12の前端部以外の部分に配置され、軸方向に延びる。第2軸方向流路42aの後端部は、凸部12aの後端面に開口する。
【0054】
第2傾斜流路42bは、第2回転体12の前端部に配置される。第2傾斜流路42bは、第2軸方向流路42aの前端部に接続する。第2傾斜流路42bは、第2軸方向流路42aの前端部から第2径方向の外側へ向かうに従い軸方向の前側へ向けて傾斜して延びる。
【0055】
図4に示すように、接続エア室43は、第1回転体11と第2回転体12との間に位置し、第1エア流路41と第2エア流路42とを繋ぐエアの流路(エア室)である。接続エア室43は、凹部18aの内面、凸部12aの外面およびシール部材19により画成される空間である。具体的に、接続エア室43は、凹部18aの前側を向く面(底面)、凹部18aの内周面、凸部12aの後端面、凸部12aの外周面、およびシール部材19の後側を向く面により画成される。接続エア室43には、第1径方向流路41bが開口する。接続エア室43には、第2軸方向流路42aが開口する。
【0056】
図3に示すように、移動軸エア流路44は、移動軸2の内部を延びるエアの流路である。移動軸エア流路44は、移動軸傾斜流路44aと、移動軸軸方向流路44bと、を有する。
移動軸傾斜流路44aは、移動軸2の後端部に配置される。移動軸傾斜流路44aは、第2傾斜流路42bの前端部に接続する。移動軸傾斜流路44aは、第2傾斜流路42bの前端部から、第2径方向の外側へ向かうに従い軸方向の前側へ向けて傾斜して延びる。
【0057】
移動軸軸方向流路44bは、移動軸2の後端部以外の部分に配置される。移動軸軸方向流路44bは、移動軸2の中心軸A上に位置する。移動軸軸方向流路44bは、移動軸傾斜流路44aの前端部に接続する。移動軸軸方向流路44bは、移動軸傾斜流路44aの前端部から軸方向の前側へ向けて、軸方向に延びる。移動軸軸方向流路44bの前端部は、移動軸2の前端面に開口する。
【0058】
図1に示すように、ラム軸エア流路45は、ストローク方向Sに延びる。ラム軸エア流路45は、図示しないラム軸の内部を延びるエアの流路である。ラム軸エア流路45は、ラム軸の中心軸上に位置し、ラム軸の中心軸が延びる方向に沿って延びる。ラム軸エア流路45は、移動軸エア流路44の前端部に接続する。
【0059】
パンチエア流路46は、ストローク方向Sに延びる。パンチエア流路46は、パンチ35の内部を延びるエアの流路である。パンチエア流路46は、パンチ35の中心軸上に位置し、パンチ35の中心軸が延びる方向に沿って延びる。パンチエア流路46は、ラム軸エア流路45と繋がる。特に図示しないが、パンチエア流路46の両端部のうち、ラム軸エア流路45と接続する端部とは異なる端部は、パンチ35の外周面および先端面の少なくともいずれかに開口する。
【0060】
特に図示しないが、回転式継手は、第1回転体11の軸方向の後側に設けられる。回転式継手には、小径部17の後端部が第1周方向に回転自在に連結される。つまり回転式継手には、第1回転体11が第1中心軸C1回りに回転自在に連結される。本実施形態の回転式継手として、例えば、昭和技研工業社製のロータリージョイントのRXシリーズやKCシリーズ等を用いることができる。
【0061】
特に図示しないが、エア供給手段は、エアコンプレッサと、エアコンプレッサと回転式継手とを繋ぐ配管と、を有する。エア供給手段は、回転式継手の内部を通して、第1エア流路41つまりエア供給路40にエアを供給する。すなわち、回転式継手の内部を通して、エア供給路40にエアが供給される。
【0062】
以上説明した本実施形態の缶成形装置10では、図示しない駆動モータから第1回転体11に第1中心軸C1回りの回転駆動力が伝達されると、ハウジング4に対して第1回転体11が、第1中心軸C1回りに回転させられる。第1回転体11が第1中心軸C1回りに回転させられると、第1回転体11に支持された第2回転体12も、第1中心軸C1回りに回転させられる。
【0063】
このとき、第2回転体12の外歯歯車5と、ハウジング4の内歯歯車3とが互いに噛み合っているため、第2回転体12は、第1中心軸C1回りに回転(公転)させられつつ、第2中心軸C2回りにも回転(自転)させられる。往復直線運動機構1を軸方向から見て、第2回転体12が第1中心軸C1回りに公転させられる第1回転方向T1と、第2回転体12が第2中心軸C2回りに自転させられる第2回転方向T2とは、互いに逆向きとなる。
【0064】
第2回転体12の前端部に接続された移動軸2は、第1径方向のうち所定方向、つまりストローク方向Sに沿って、往復直線運動する。
このようにして、本実施形態の往復直線運動機構1は、第1回転体11に入力された回転駆動力を、往復直線運動に変換して移動軸2に出力する。これにより、移動軸2にラム軸を介して連結されたパンチ35が、所定方向(ストローク方向S)に往復直線運動させられる。パンチ35、ダイ30、カップホルダー36等によりカップ状体WにDI加工を施すことが可能になり、カップ状体WをDI缶に成形することができる。
【0065】
そして本実施形態では、エア供給路40が、第1回転体11、第2回転体12、移動軸2およびパンチ35の各内部にわたって延びる。DI加工した缶の内部に、パンチ35を通してエアを噴射することにより、パンチ35から缶を離型できる。本実施形態とは異なり、例えば、ハウジングの外部からホースや配管部材等により移動軸にエアを供給する構造と比べて、本実施形態では、部品点数および可動部分を少なく抑えることができる。本実施形態の缶成形装置10によれば、構造を簡素化でき、メンテナンスや部品交換の頻度を抑えることができる。
【0066】
また本実施形態では、エア供給路40が、第1エア流路41と第2エア流路42とを繋ぐ接続エア室43を有する。
この場合、第1回転体11と第2回転体12とが相対的に移動(回転)しても、接続エア室43を介することにより、第1エア流路41と第2エア流路42との接続状態が良好に維持される。接続エア室43を介して、第1エア流路41から第2エア流路42へと安定してエアを供給できる。
【0067】
また本実施形態では、接続エア室43が、凹部18aの内面、凸部12aの外面およびシール部材19により画成される。
この場合、シール部材19により接続エア室43の密閉状態が良好に維持される。詳しくは、缶成形装置10の稼働時に、シール部材19に作用する外力は、第2周方向において一定であり、具体的にはシール部材19の内周部に対して第2回転方向T2に作用する一定の力であるので、シール部材19に対して大きく増減するような複雑な外力や過大な外力はかかりにくい。このため、シール部材19のシール機能が安定して維持され、接続エア室43を介して、第1エア流路41から第2エア流路42へとエアが安定して供給される。
【0068】
また本実施形態では、エア供給手段から回転式継手の内部を通して、エア供給路40にエアが供給される。具体的には、エア供給路40のうち第1回転体11の内部に位置する部分つまり第1エア流路41に、回転式継手からエアが供給される。回転式継手を用いることにより、例えば、回転式継手から2系統に分岐させてエアを供給することが可能である。具体的には、回転式継手から、缶を離型するためのエア供給路と、例えばクラッチブレーキ用のエア管路と、にエアをそれぞれ供給することができる。簡素な構造により、缶成形装置10の機能を高めることができる。
【0069】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0070】
前述の実施形態では、第1エア流路41の断面積と、第2エア流路42の断面積とが、互いに同じである例を挙げたが、これに限らない。例えば、第1エア流路41の断面積が、第2エア流路42の断面積より大きくてもよい。この場合、第1エア流路41を流れるエアの流速に比べて、第2エア流路42を流れるエアの流速を高めることができ、パンチ35から缶をより離型しやすくすることができる。
【0071】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の缶成形装置によれば、構造を簡素化でき、メンテナンスや部品交換の頻度を抑えられる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0073】
2…移動軸、3…内歯歯車、4…ハウジング、5…外歯歯車、10…缶成形装置、11…第1回転体、12…第2回転体、12a…凸部、18a…凹部、19…シール部材、30…ダイ、30a…貫通孔、30b…端面、35…パンチ、36…カップホルダー、40…エア供給路、41…第1エア流路、42…第2エア流路、43…接続エア室、C1…第1中心軸、C2…第2中心軸