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特許7321065セレンの定量分析装置および定量分析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】セレンの定量分析装置および定量分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/00 20060101AFI20230728BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20230728BHJP
   G01N 30/84 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
G01N31/00 T
G01N31/00 Y
G01N30/02 B
G01N30/84 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019212140
(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公開番号】P2021085661
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】315016723
【氏名又は名称】三菱重工パワー環境ソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】千代丸 勝
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-142387(JP,A)
【文献】特開2018-194342(JP,A)
【文献】特開2014-196977(JP,A)
【文献】特開2017-148728(JP,A)
【文献】特開2021-74663(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0016599(US,A1)
【文献】特開平11-2623(JP,A)
【文献】Mattigod, Shas V.,Selenium content and oxidation states in fly ashes from Western U.S. coals,Chemistry of Trace Elements in Fly Ash,2003年,Page.143-153
【文献】Mason, Claude F.,Spectrophotometric determination of oxidation states of selenium in glass,Analytical Chemistry,1981年,Vol.53 No.7,Page.1147-1149
【文献】渡辺和子,セレンのIV価をVI価に酸化してオンラインカラムICP‐MSでセレンを定量する手法の開発,日本化学会講演予稿集,1999年03月15日,Vol.76th No.1,Page.123 2E217
【文献】西岡洋,4,5ージメチル-o-フェニレンジアミンを用いるセレンのフローインジェクション分析,環境技術,1996年,Vol.25 No.5,Page.285-288
【文献】宮口真帆,超分子型固相抽出材を用いた排水中セレンの価数別分離定量,日本分析化学会年会講演要旨集,2018年08月29日,Vol.67th,Page.129
【文献】伊田健司,ひ素・セレン等有害重金属類の水環境中における存在形態把握と対策に関する研究,埼玉県環境科学国際センター報,2002年05月15日,No.2,Page.77
【文献】伊田健司,ひ素・セレン等有害重金属類の水環境中における存在形態把握と対策に関する研究,埼玉県環境科学国際センター報,2000年,No.1,Page.59
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/00
G01N 30/02
G01N 30/84
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象水が含有するセレンを化学形態別に定量するためのセレンの定量分析装置であって、
前記分析対象水に存在する前記セレンを前記化学形態別に分離するよう構成された分離部と、
分離後の前記分析対象水に、0価セレンを4価セレンに変換するための酸化剤を導入するよう構成された酸化剤導入部と、
前記酸化剤によって前記4価セレンに変換された前記0価セレンである4価変換セレンを含む前記分離後の前記分析対象水に発色剤を導入するよう構成された発色剤導入部と
前記4価変換セレンと前記発色剤との反応による反応物の吸光度を検出可能な吸光度検出器を有する検出部と、
前記吸光度の検出結果に基づいて、前記分析対象水中の前記0価セレンを定量するよう構成された定量部と、を備えるセレンの定量分析装置。
【請求項2】
前記酸化剤は、過酸化物、過マンガン酸カリウムまたはヨウ素酸カリウムである請求項1に記載のセレンの定量分析装置。
【請求項3】
前記発色剤は、4、5-ジメチル-o-フェニレンジアミンである請求項1または2に記載のセレンの定量分析装置。
【請求項4】
前記分析対象水は6価セレンをさらに含み、
前記分離部は、前記分析対象水における前記0価セレンと前記6価セレンとを相互に分離するように構成されており、
前記検出部は、前記分離後の前記分析対象水に存在する前記6価セレンを電気伝導度に基づいて検出するための電気伝導度検出器をさらに有する請求項1~3のいずれか1項に記載のセレンの定量分析装置。
【請求項5】
前記分離部は、
前記分離後の前記分析対象水を排出するよう構成されたカラムと、
前記分析対象水を前記カラムまで運ぶキャリア液を前記カラムの内部に送り込むための送液ポンプと
前記キャリア液に前記分析対象水を導入するよう構成された試料導入部と、を有する請求項1~4のいずれか1項に記載のセレンの定量分析装置。
【請求項6】
前記分析対象水を含む前記キャリア液に、前記0価セレンの検出を妨害する妨害イオンを除去するよう構成された除去部をさらに備える請求項5に記載のセレンの定量分析装置。
【請求項7】
分析対象水が含有するセレンを化学形態別に定量するためのセレンの定量分析方法であって、
前記分析対象水に存在する前記セレンを前記化学形態別に分離するステップと、
分離後の前記分析対象水に、0価セレンを4価セレンに変換するための酸化剤を導入するステップと、
前記酸化剤によって前記4価セレンに変換された前記0価セレンである4価変換セレンを含む前記分離後の前記分析対象水に発色剤を導入するステップと
前記4価変換セレンと前記発色剤との反応による反応物の吸光度を検出するステップと、
前記吸光度の検出結果に基づいて、前記分析対象水中の前記0価セレンを定量するステップと、を備えるセレンの定量分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば排水などの分析対象水に含まれるセレンの化学形態別の定量技術に関し、特に、4、0価セレンの分別定量技術に関する。
【背景技術】
【0002】
各種プラントからの排水などの水質基準にセレン濃度が規定されている。例えば、石炭ガス化複合発電施設(IGCC)や、ボイラ排ガス処理の脱硫装置などから排出された排水中のセレンは、水質汚濁防止法に基づく有害物質であることから、排水処理工程において取り除くことが強く求められている。そして、セレンは、イオンの価数(酸化数)に応じて除去方法に違いがあり(特許文献1参照)、従来からセレンの定量を化学形態別に行う定量方法が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、試料(分析対象水)中に含有される4価セレンの濃度と、全てのセレン(全セレン)を4価セレンに変換させて求められる全セレンの総濃度と、4価未満のセレンを4価セレンに酸化するが4価セレンを6価セレンに酸化しない条件下での酸化処理により求められる4価以下のセレンの濃度とをそれぞれ誘導結合プラズマ発光分光分析により求める。そして、上記の総濃度と上記の4価以下のセレンの濃度との差から6価セレンの濃度を求め、4価以下のセレンの濃度と4価のセレンの濃度との差から、4価未満のセレンの濃度を求めるセレンの化学形態別定量法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、試料液中のセレン化合物をイオン交換クロマトグラフィーにより分離し、該イオン交換クロマトグラフィーから溶離したセレン化合物の溶液に酸(硫酸、硝酸等の酸)を添加した後、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)によりセレン含有量を定量することが開示されている。
【0005】
また、非特許文献1には、ICP-MSを用いない簡便な定量法として、フローインジェクションでのジアミノピアセレノール等を用いた0.1ppm相当の4価セレンの定量方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-196977号公報
【文献】特開平11-2623号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】西岡 洋、他5名、“4、5-ジメチル-o-フェニレンジアミンを用いるセレンのフローインジェクション分析”、1996年、環境技術、[令和元年11月4日検索]、インターネット<https://www.jstage.jst.go.jp/article/jriet1972/25/5/25_5_285/_article/-char/ja/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の酸化処理は、硝酸が揮発する温度(沸点)以上の温度が必要であり、また、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)などの高感度な分析装置を用いる必要である。このため、プラントなどでの排水のインライン分析には不向きである。他方、特許文献2のイオンクロマトグラフィーでは、0価セレン(SeCN)、4価セレン(亜セレン酸イオン)、および6価セレン(セレン酸イオン)の3種類の化学形態にセレンを分離することができ、3種の形態のセレンを3つのピークとして得ることができる。しかし、イオンクロマト分析で通常用いられる電気伝導度検出器では、分析濃度の検出限界は1ppmであるため、それ以下の濃度を有する化学形態のセレンを定量することができない(後述する図3参照)。なお、非特許文献1では、0.1ppm相当の4価のセレンの定量が可能であるが、他の化学形態のセレン(例えば0価や6価など)の定量は困難である。
【0009】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、コンパクトで分析感度が向上されたセレンの定量分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の少なくとも一実施形態に係るセレンの定量分析装置は、
分析対象水が含有するセレンを化学形態別に定量するためのセレンの定量分析装置であって、
前記分析対象水に存在する前記セレンを前記化学形態別に分離するよう構成された分離部と、
分離後の前記分析対象水に、0価セレンを4価セレンに変換するための酸化剤を導入するよう構成された酸化剤導入部と、
前記酸化剤によって前記4価セレンに変換された前記0価セレンである4価変換セレンを含む前記分離後の前記分析対象水に発色剤を導入するよう構成された発色剤導入部と
前記4価変換セレンと前記発色剤との反応による反応物の吸光度を検出可能な吸光度検出器を有する検出部と、
前記吸光度の検出結果に基づいて、前記分析対象水中の前記0価セレンを定量するよう構成された定量部と、を備える。
【0011】
本発明の少なくとも一実施形態に係るセレンの定量分析方法は、
分析対象水が含有するセレンを化学形態別に定量するためのセレンの定量分析方法であって、
前記分析対象水に存在する前記セレンを前記化学形態別に分離するステップと、
分離後の前記分析対象水に、0価セレンを4価セレンに変換するための酸化剤を導入するステップと、
前記酸化剤によって前記4価セレンに変換された前記0価セレンである4価変換セレンを含む前記分離後の前記分析対象水に発色剤を導入するステップと
前記4価変換セレンと前記発色剤との反応による反応物の吸光度を検出するステップと、
前記吸光度の検出結果に基づいて、前記分析対象水中の前記0価セレンを定量するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、コンパクトで分析感度が向上されたセレンの定量分析装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るセレンの定量分析装置の構成を概略的に示す図である。
図2図1のセレンの定量分析装置によって得られるクロマトグラムを例示する図である。
図3】電気伝導度検出器を用いたクロマトグラムの例を示す参考図である。
図4】本発明の一実施形態に係るセレンの定量分析装置の構成を概略的に示す図であり、検出部は吸光度検出器および電気伝導度検出器52を備える。
図5図4のセレンの定量分析装置によって得られるクロマトグラムを例示する図である。
図6】本発明の一実施形態に係るセレンの定量分析方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るセレンの定量分析装置1の構成を概略的に示す図である。図2は、図1のセレンの定量分析装置1によって得られるクロマトグラムを例示する図である。図3は、電気伝導度検出器52を用いたクロマトグラムの例を示す参考図である。図4は、本発明の一実施形態に係るセレンの定量分析装置1の構成を概略的に示す図であり、検出部5は吸光度検出器51および電気伝導度検出器52を備える。図5は、図4のセレンの定量分析装置1によって得られるクロマトグラムを例示する図である。
【0016】
セレンの定量分析装置1(以下、単に、定量分析装置1)は、分析対象水Wが含有するセレンを化学形態別に定量するための装置である。分析対象水Wは、例えばプラントなどの排水や水道水などの上水など、セレンの含有量(濃度)の定量分析の対象となる液体である。この分析対象水Wには、例えば、6価、4価、0価、-2価などのセレンのうちの少なくとも1種類のセレン(化合物)が存在しており、定量分析装置1は、特に0価セレンの濃度などを測定することが可能に構成される。
【0017】
例えば、石炭ガス化複合発電施設(IGCC:Integrated coal Gasification Combined Cycle)や、ボイラ排ガス処理の脱硫装置などから排出された排水中には、0価セレン(SeCN)、4価セレン(SeO 2-)、および6価セレン(SeO 2-)の3種類の化学形態のセレンが含まれているが、0価セレンの濃度は4価セレンや6価セレンに比べて低い。
【0018】
ここで、液体中のイオン種別の濃度を測定する液体クロマトグラフィー(分析技術)としてイオンクロマトグラフィーが知られている。イオンクロマトグラフ(分析装置)は、例えばプラントに設置し、インライン分析に用いることが可能なコンパクトな装置であるが、その装置で一般的に用いられる電気伝導度検出器52の検出限界(1ppm)を下回る濃度のセレンのイオン種(化合物。以下同様)は検出できない。そこで、本発明者らは、以下で説明するように定量分析装置1を構成することで、0価セレンの検出限界を0.1ppm程度まで向上させ、IGCCなどの排水中の0価セレンの濃度のインライン分析を可能とした。
【0019】
以下、セレンの定量分析装置1について、図1図5を用いて説明する。
図1に示すように(図4も同様。以下同様)、定量分析装置1は、分離部2と、酸化剤導入部3と、発色剤導入部4と、検出部5と、定量部6と、を備える。
これらの構成について、分析対象水Wが上記のIGCCの排水である場合など、1ppmよりも小さい低濃度の0価セレンを含有する場合を例に説明する。
【0020】
分離部2は、分析対象水Wに存在するセレンを化学形態別に分離するよう構成された構成装置である。分離部2よって、分析対象水Wに混在していた複数の化学形態(本実施形態では0価、4価、6価)のセレンが、互いに分離される。具体的には、図1に示すように、分離部2は、HPLC(High Pressure Liquid Chromatography)などの液体クロマトグラフであっても良い。図1に示す分離部2は、イオンクロマトグラフのカラム21と、送液ポンプ22と、試料導入部23(インジェクタ)とを有する。
【0021】
詳述すると、カラム21は、分析対象水Wに存在するセレンをイオン種別に分離するよう構成される。送液ポンプ22は、分析対象水Wをカラム21まで運ぶキャリア液Wc(溶離液)をカラム21の内部に送り込むのに用いられる。試料導入部23は、カラム21の内部に送り込まれるキャリア液Wcに分析対象水W(試料)を導入するよう構成されている。図1に示す実施形態では、カラム21と送液ポンプ22とは管(以下、上流管24)とで接続されている。そして、送液ポンプ22は、送液タンク25に貯留されているキャリア液Wcを上流管24の内部に送り込むようになっており、キャリア液Wcは、上流管24の内部を通ってカラム21の内部に送り込まれるようになっている。また、試料導入部23は、上記の上流管24の内部に分析対象水Wを導入(注入)可能に構成されており、上流管24に導入された分析対象水Wは、上流管24の内部を流れているキャリア液Wcによって、キャリア液Wcと共にカラム21の内部に送り込まれるようになっている。
【0022】
このカラム21においては、分析対象水Wに含まれる各種のセレンのイオン種は、そのイオン種に応じた移動速度で進む。このため、各種のセレンのイオン種は、カラム21の出口からイオン種毎に異なるタイミングで排出される(図2図3図5参照)。つまり、分離部2に導入された分析対象水Wに存在するセレンのイオン種は、相互に分離された状態で得られる。
【0023】
酸化剤導入部3は、上記の分離部2によって分離された分離後の分析対象水W(以下、分離済み対象水Ws)に、0価セレンを4価セレンに変換するための酸化剤Oxを導入するよう構成された構成装置である。具体的には、酸化剤Oxは、過酸化水素水(H)や過塩素酸(HClO)などの過酸化物イオン(O2-)を含む過酸化物、過マンガン酸カリウム(KMnO)またはヨウ素酸カリウム(KlO)のいずれかであっても良い。酸化剤Oxは、これらのうちの少なくとも2種類を含むものであっても良い。
【0024】
発色剤導入部4は、上記の酸化剤導入部3によって導入された酸化剤Oxによって4価セレンに変換された0価セレン(以下、4価変換セレン)を含む分離済み対象水Wsに発色剤Cを導入するよう構成された構成装置である。具体的には、発色剤Cは、4、5-ジメチル-o-フェニレンジアミンであっても良い。発色剤Cが導入されることにより、分離済み対象水Ws中に存在する4価セレン(4価変換セレン)と発色剤Cとの反応によってジアミノピアセレノールが生成される。
【0025】
検出部5は、上記の発色剤導入部4によって導入された発色剤Cと上記の4価変換セレンとの反応により生成された生成物(反応物)を検出するよう構成された構成装置(検出器)であり、上記の反応物の吸光度を検出可能な吸光度検出器51を有する。具体的には、吸光度検出器51は、紫外可視光検出器や、PDA検出器(PODA:Photo Diode Array)であっても良い。例えば上記のジアミノピアセレノールは340nm付近に吸光を持つので、これを検出可能な吸光度検出器51の採用可能である。
【0026】
この検出部5による吸光度の検出結果として、例えば図2に示すようなクロマトグラム(チャート)が得られる。図2の横軸は、例えば分析対象水Wが導入されてからの経過時間であり、縦軸は検出器が検出した信号強度である(図3図5も同様)。一般に液体クロマトグラフィーでは、試料(分析対象水W)が時刻0において導入されてから信号強度のピークが表れるまでの時間である溶出時間(リテンションタイム)はイオン種毎に異なる。そして、検出部5は、分離済み対象水Wsを検出対象とするため、任意の化学形態を有するセレンは、検出器の検出限界以上の濃度があれば、検出部5による検出で得られるクロマトグラム上でその溶出時間に応じた時刻における信号強度のピークとなって表れる。
【0027】
具体的には、時刻t1は4価セレンの溶出時間に対応し、時刻t3(t1<t3)は0価セレンの溶出時間に対応している。この情報は、予め濃度が分かっている試料に対して上記と同様の分析を行うことにより予め得ている。よって、図2において、時刻t1のピークは分析対象水Wにもともと存在していた4価セレンを検出したものであり、時刻t3のピークは同様に分析対象水Wにもともと存在していた0価セレンを検出したものであることになる。この図2において0価セレンが検出されており、分離済み対象水Wsに存在する反応物の吸光度を検出することで、上記の反応物を0価セレンに由来するものとして検出することが可能となる。
【0028】
参考として示す図3は、酸化剤Oxや発色剤Cを導入することなく上記と同じ分離済み対象水Wsを対象に電気伝導度検出器52による化学形態別のセレンの検出を行った場合であり、時刻t3に出現するはずの0価セレンに由来するピークは出現していない。これは、電気伝導度検出器52では、0価セレンの濃度が検出限界よりも小さかったため、0価セレンを検出できなかったことを意味しており、上述した定量分析装置1において0価セレンの検出感度の向上が実現できている。
【0029】
定量部6は、上記の検出部5による吸光度の検出結果に基づいて、分析対象水W中の0価セレンを定量するよう構成された構成装置である。上記の検出部5によって検出される反応物は4価変換セレンに由来しており、その吸光度の検出結果は4価変換セレンの濃度に相関がある。さらに、この4価変換セレンの濃度は、0価セレンを4価セレンに変換したものの濃度であるため、0価セレンの濃度に相関がある。よって、上記の反応物の吸光度の検出結果は0価セレンの濃度に相関がある。このため、例えば電気伝導度検出器52で検出可能な濃度の0価セレンを分離部2に導入し、上述したような酸化および発色させた後の反応物の吸光度を測定するなどして得られる吸光度と0価セレンの濃度との相関関係を明らかにすることで、この相関関係に基づいて、吸光度の検出結果に基づいて分析対象水Wにおける0価セレンの濃度を求めることが可能となる。
【0030】
具体的には、定量部6は、コンピュータで構成されており、0価セレンの濃度と吸光度との関係を表す関係式を有している。この関係式(検量線)は、例えば0価セレンの濃度=係数a×吸光度x+係数bなどとなり、この関係式および上記の吸光度の検出結果に基づいて、0価セレンの濃度を算出する。より具体的には、図2に示すようなクロマトグラムにおける時刻t3をピークとする山なりの信号強度の面積を求め、求めた信号強度の面積を上記の関係式における吸光度の変数に代入することで、0価セレンの濃度を算出する。
【0031】
上述したような構成を備えることによって、定量分析装置1は、分離部2によって得られた分離済み対象水Wsに対して、酸化剤導入部3、発色剤導入部4、検出部5、定量部6を用いたフローインジェクション分析により0価セレンの定量を行う(ポストカラム法)。つまり、分析対象水Wにもともと0価セレンと共に4価セレンが存在していたとしても、0価セレンは4価セレンから分離された状態で検出されると共に、溶出時間の違いからクロマトグラムにおけるピークがどの化学形態のイオンに対応することかの同定が可能である。このため、分析対象水Wにもともと存在していた4価セレンと発色剤Cとの反応物と、4価変換セレンと発色剤Cとの反応物とは同じであるが、クロマトグラムにおける0価セレンの溶出時間に対応する信号強度に着目し、4価変換セレンと発色剤Cとの反応物の吸光度を0価セレンのものとして検出することにより、分析対象水Wにおける0価セレンの定量を適切に行うことが可能となる。
【0032】
図1に示す実施形態では、分離部2(カラム21)と検出部5とは管(下流管26)によって接続されており、分離部2から排出された分離済み対象水Wsは下流管26を通って検出部5に流入するようになっている。また、酸化剤導入部3は、酸化剤Oxを貯留する酸化剤タンク31と、酸化剤タンク31に貯留されている酸化剤Oxを酸化剤ポンプ32とを有しており、酸化剤ポンプ32によって酸化剤Oxが下流管26の内部に注入されるようになっている。同様に、発色剤導入部4は、発色剤Cを貯留する発色剤タンク41と、発色剤タンク41に貯留されている発色剤Cを発色剤ポンプ42とを有しており、発色剤ポンプ42によって発色剤Cが下流管26の内部に注入されるようになっている。
【0033】
また、酸化剤Oxは過酸化水素水(H)であり、発色剤Cは4、5-ジメチル-o-フェニレンジアミンとなっている。よって、分離済み対象水Wsと過酸化水素水とが混合されることで生成された4価変換セレン(SeO32-)と、4、5-ジメチル-o-フェニレンジアミンとが反応し、ジアミノピアセレノールが生成される。そして、吸光度検出器51は紫外可視光検出器であり、このように生成されたジアミノピアセレノールを波長340nm付近における吸光度で検出するようになっている。また、定量部6によって、例えば図2に示すようなクロマトグラムが作成され、ディスプレイやプリンタなどに出力されるようになっている。
【0034】
上記の構成によれば、例えば0価セレン、4価セレンや6価セレンなどの様々な化学形態のセレンを含有する排水などとなる分析対象水におけるセレンを化学形態別に分離する。その上で、分離された0価セレンを4価に変換すると共に変換後の4価セレン(4価変換セレン)を発色剤Cで発色させ、その吸光度を検出することで、分析対象水W中の0価セレンの濃度を求める。
【0035】
これによって、分析対象水W中の0価セレンの濃度が小さく、電気伝導度検出器52では検出できない場合であっても検出することが可能となり、0価セレンをより精度良く定量することができる。また、0価セレンの定量を、例えば誘導結合プラズマ質量分析法(ICMP-MS)を用いる高価で大型な分析装置を用いることなく行うことができ、現場に持ち込むことが可能なコンパクトな装置を提供することができる。よって、この定量分析装置1を排水処理の出口や入口に設置するなどしてプラントなどのインライン分析を行うことができる。また、このインライン分析による測定結果を排水処理条件(薬液添加量、薬液種選定など)に反映するようにすれば、セレンを処理するための薬液の過剰添加を防止しつつ、適切な排水処理を行うこともできる。
【0036】
次に、定量分析装置1が備えることが可能なその他の構成について、図4図5を用いて説明する。
上述したように、例えばIGCCの排水中などのように、分析対象水Wが、0価セレンの他に6価セレンを含んでいる場合には、上記の分離部2は、分析対象水Wにおける0価セレンと6価セレンとを相互に分離するように構成されている(図5参照)。この場合において、図4に示すように、検出部5は、上記の分離済み対象水Wsに存在する6価セレンを電気伝導度に基づいて検出するための電気伝導度検出器52をさらに有しても良い。
【0037】
例えば発色剤Cとして、上記の4、5-ジメチル-o-フェニレンジアミンなど、6価セレンを発色させることができない試薬を用いる場合には、上記の検出部5で発色しない6価セレンを検出できず、その定量ができない。そこで、電気伝導度検出器52により6価セレンを検出するようにすれば、6価セレンの濃度が電気伝導度検出器52の検出限界以上である場合に、分析対象水Wに存在する6価セレンを検出することができ、その適切な定量が可能となる。
【0038】
図4図5に示す実施形態では、電気伝導度検出器52は、分離部2と酸化剤導入部3との間に設けられており、分離済み対象水Wsの電気伝導度を検出するようになっている。この際、6価セレンの濃度は、電気伝導度検出器52の検出限界よりも高かったため、図5に示すように、6価セレンの溶出時間に対応する時刻t2(t1<t2<t3)において、信号強度のピークが出現するようになっている。そして、この検出結果が定量部6に送られることで、6価セレンの定量結果が、4価セレンおよび0価セレンの濃度と共に得られるようになっている。
【0039】
なお、図4図5に示す実施形態では、分離部2は、分析対象水Wにおける0価セレン、4価セレン、6価セレンを相互に分離しており、4価セレンについては吸光度検出器51および電気伝導度検出器52の両方で検出可能であるが、このような場合には、いずれかの検出器による検出結果を採用しても良い。あるいは、これらの2つの検出器による検出結果に基づいてそれぞれ得られた濃度の例えば平均値などの統計値を算出し、4価セレンの濃度としても良い。
【0040】
ただし、図4に示す実施形態に本発明は限定されない。他の幾つかの実施形態では、電気伝導度検出器52は、下流管26における酸化剤導入部3と発色剤導入部4との間、発色剤導入部と吸光度検出器51との間、吸光度検出器51の下流側のいずれに設けられても良い。
【0041】
上記の構成によれば、電気伝導度検出器52によって分析対象水Wにもともと存在している6価セレンを定量することができる。
【0042】
また、幾つかの実施形態では、図4に示すように、定量分析装置1は、分析対象水Wを含むキャリア液Wcに、0価セレンの検出を妨害する妨害イオンを除去するよう構成された除去部7をさらに備えても良い。除去部7は、吸光度検出器51または電気伝導度検出器52の少なくとも一方の検出器による検出を妨害する妨害イオンを除去するように構成されている。除去部7は、オゾンバブリングを行うよう構成された装置であっても良い。
【0043】
例えば、分析対象水Wが、4価変換セレンと発色剤Cとの反応物と同じ波長で発色するようなセレン以外のイオン(妨害イオン)を含む場合には、上記の検出部5によって検出される信号強度は妨害イオンを含むものとなり、0価セレンの濃度の測定精度が低下する。このため、除去部7によって、分析対象水Wにおけるセレンの分離前に妨害イオンを取り除くことで、分離済み対象水Wsにおける各種のセレンのイオン種の溶出時間に影響を与えることなく、定量分析を行うことが可能となる。
【0044】
図4に示す実施形態では、除去部7は、上記の上流管24における試料導入部23とカラム21との間に設けられており、除去部7を通過した分析対象水Wがカラム21の入口からに導入されるようになっている。なお、図1に示す実施形態の定量分析装置1においても上記の除去部7が設けられていても良い。また、除去部7によって、0価セレン以外の4価や6価のセレンなどの妨害イオンを除去するように構成しても良い。
【0045】
上記の構成によれば、除去部7によって妨害イオンを除去した後にカラム21による分離を行う。これによって、各種のセレンの溶出時間に影響を与えることなく、セレンの化学形態別の定量の精度を高めることができる。
【0046】
以下、上述した定量分析装置1の分析に対応したセレンの定量分析方法を、図6を用いて説明する。図6は、本発明の一実施形態に係るセレンの定量分析方法を示す図である。
【0047】
セレンの定量分析方法(以下、単に、定量分析方法)は、上述した分析対象水Wが含有するセレンを化学形態別に定量するための方法である。図6に示すように、定量分析方法は、定量分析装置1は、分析対象水Wに存在するセレンを化学形態別に分離する分離ステップと、上記の分離ステップによって分離された分離後の分析対象水W(分離済み対象水Ws)に上述した酸化剤Oxを導入する酸化剤導入ステップと、上記の酸化剤導入ステップによって得られる上述した4価変換セレンを含む分離済み対象水Wsに発色剤Cを導入する発色剤導入ステップと、上記の発色剤導入ステップによって導入された発色剤Cと上記の4価変換セレンとの反応による反応物の吸光度を検出する吸光度検出ステップと、上記の吸光度検出ステップによる吸光度の検出結果に基づいて、分析対象水W中の0価セレンを定量する定量ステップと、を備える。
【0048】
これらの分離ステップ、酸化剤導入ステップ、発色剤導入ステップと、吸光度検出ステップ、定量ステップは、それぞれ、既に説明した分離部2、酸化剤導入部3、発色剤導入部4、検出部5、定量部6によって実行される処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
【0049】
図6に示す実施形態では、ステップS1において、分析対象水Wが含有するセレンを化学形態別に分離する。ステップS2において、分離済み対象水Wsに酸化剤Oxを導入する。ステップS3において、分離済み対象水Wsに発色剤Cを導入する。ステップS4において、上記のステップS1~S3を経た分離済み対象水Wsの吸光度を検出する。ステップS5において、ステップS4での吸光度の検出結果に基づいて、分析対象水W中の0価セレンの濃度を算出する。
【0050】
また、幾つかの実施形態では、定量分析方法は、分離済み対象水Wsに存在する6価セレンを電気伝導度に基づいて検出により検出する第2検出ステップをさらに備えても良い。第2検出ステップは、電気伝導度検出器52を用いて電気伝導度を検出しても良い。第2検出ステップは、例えば図6におけるステップS1とステップS2との間で実行しても良い。これによって、6価セレンを適切に検出することができる。
【0051】
また、幾つかの実施形態では、上記の分離ステップは、0価セレンの検出を妨害する妨害イオンを除去する除去ステップを有しても良い。除去ステップは、カラム21を用いた分離の前に実行する。除去ステップは、既に説明した除去部7によって実行される処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
【0052】
[実施例1]
上述した定量分析装置1による分析条件、構成装置は例えば下記である。
(分析条件)
・キャリア液Wc(溶離液):純水(0.5ml/min)
・酸化剤Ox:4、5-ジメチル-o-フェニレンジアミン調整液(0.5ml/min)
・反応温度:80~100℃、0.5mmi.d.、5m
・検出波長:350nm
・分析対象水W(試料)の導入量:200uL
(構成装置)
・分離部2:イオンクロマト分析装置(ICS-1600、Thermo製)
・カラム21:Ion Pac AG22(2×50mm)、Ion Pac AS22(2×250mm)
・カラム温度:30℃
・吸光度検出器51:UV-vis検出器(340nm)(SPD-20AD、島津製作所製)
なお、濃度が0.1ppm以上で1.0ppm未満の0価セレンを含有し、0.1ppm以上の4価セレンを含有する分析対象水Wに対して、上記の分析条件で上記の構成装置を用いて測定を行ったところ、0価セレンや4価セレンの濃度の適切な測定結果が得られることが確認できた。
【0053】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
(付記)
【0054】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るセレンの定量分析装置(1)は、
分析対象水(W)が含有するセレンを化学形態別に定量するためのセレンの定量分析装置(1)であって、
前記分析対象水(W)に存在する前記セレンを前記化学形態別に分離するよう構成された分離部(2)と、
分離後の前記分析対象水(W)に、0価セレンを4価セレンに変換するための酸化剤(Ox)を導入するよう構成された酸化剤(Ox)導入部(3)と、
前記酸化剤(Ox)によって前記4価セレンに変換された前記0価セレンである4価変換セレンを含む前記分離後の前記分析対象水(W)に発色剤(C)を導入するよう構成された発色剤(C)導入部(4)と
前記4価変換セレンと前記発色剤(C)との反応による反応物の吸光度を検出可能な吸光度検出器(51)を有する検出部(5)と、
前記吸光度の検出結果に基づいて、前記分析対象水(W)中の前記0価セレンを定量するよう構成された定量部(6)と、を備える。
【0055】
上記(1)の構成によれば、例えば0価セレン、4価セレンや6価セレンなどの様々な化学形態のセレンを含有する排水などとなる分析対象水(W)におけるセレンを化学形態別に分離する。その上で、分離された0価セレンを4価に変換すると共に変換後の4価セレン(4価変換セレン)を発色剤(C)で発色させ、その吸光度を検出することで、分析対象水(W)中の0価セレンの濃度を求める。
【0056】
これによって、分析対象水(W)中の0価セレンの濃度が小さく、電気伝導度検出器(52)では検出できない場合であっても検出することが可能となり、0価セレンをより精度良く定量することができる。また、0価セレンの定量を、例えば誘導結合プラズマ質量分析法(ICMP-MS)を用いる高価で大型な分析装置を用いることなく行うことができ、現場に持ち込むことが可能なコンパクトな装置を提供することができる。よって、この定量分析装置(1)を排水処理の出口や入口に設置するなどしてプラントなどのインライン分析を行うことができる。また、このインライン分析による測定結果を排水処理条件(薬液添加量、薬液種選定など)に反映するようにすれば、セレンを処理するための薬液の過剰添加を防止しつつ、適切な排水処理を行うこともできる。
【0057】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記酸化剤(Ox)は、過酸化物、過マンガン酸カリウムまたはヨウ素酸カリウムである。
【0058】
上記(2)の構成によれば、酸化剤(Ox)は、例えば過酸化水素水(H2O2)や過塩素酸などの過酸化物イオン(O2-)を含む過酸化物、過マンガン酸カリウムまたはヨウ素酸カリウムである。これによって、0価セレンを4価セレンに適切に変換することができる。
【0059】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)~(2)の構成において、
前記発色剤(C)は、4、5-ジメチル-o-フェニレンジアミンである。
【0060】
上記(3)の構成によれば、4価セレンと発色剤(C)との反応によってジアミノピアセレノールを生成し、ジアミノピアセレノールの吸光度を検出する。これによって、予め得ている吸光度と0価セレンの濃度との関係式(検量線)を用いることで、吸光度から0価セレンの濃度を求めることができる。
【0061】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)~(3)の構成において、
前記分析対象水(W)は6価セレンをさらに含み、
前記分離部(2)は、前記分析対象水(W)における前記0価セレンと前記6価セレンとを相互に分離するように構成されており、
前記検出部(5)は、前記分離後の前記分析対象水(W)に存在する前記6価セレンを電気伝導度に基づいて検出するための電気伝導度検出器(52)をさらに有する。
上記(4)の構成によれば、電気伝導度検出器(52)によって分析対象水(W)にもともと存在している6価セレンを定量することができる。
【0062】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)~(4)の構成において、
前記分離部(2)は、
前記分離後の前記分析対象水(W)を排出するよう構成されたカラム(21)と、
前記分析対象水(W)を前記カラム(21)まで運ぶキャリア液(Wc)を前記カラム(21)の内部に送り込むための送液ポンプ(22)と
前記キャリア液(Wc)に前記分析対象水(W)を導入するよう構成された試料導入部(23)と、を有する。
【0063】
上記(5)の構成によれば、分離部(2)は、イオンクロマトグラフィーといったHPLCなどの液体クロマトグラフィーを構成するカラム(21)と、ポンプと、導入部とで構成される。これによって、例えば0価セレン、4価セレンや6価セレンなどを含むセレンから、これらの化学形態別のセレンを適切に分離することができる。
【0064】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、
前記分析対象水(W)を含む前記キャリア液(Wc)に、前記0価セレンの検出を妨害する妨害イオンを除去するよう構成された除去部(7)をさらに備える。
上記(6)の構成によれば、除去部(7)によって妨害イオンを除去した後にカラム(21)による分離を行う。これによって、各種のセレンの溶出時間(リテンションタイム)に影響を与えることなく、セレンの化学形態別の定量の精度を高めることができる。
【0065】
(7)本発明の少なくとも一実施形態に係るセレンの定量分析方法は、
分析対象水(W)が含有するセレンを化学形態別に定量するためのセレンの定量分析方法であって、
前記分析対象水(W)に存在する前記セレンを前記化学形態別に分離するステップと、
分離後の前記分析対象水(W)に、0価セレンを4価セレンに変換するための酸化剤(Ox)を導入するステップと、
前記酸化剤(Ox)によって前記4価セレンに変換された前記0価セレンである4価変換セレンを含む前記分離後の前記分析対象水(W)に発色剤(C)を導入するステップと
前記4価変換セレンと前記発色剤(C)との反応による反応物の吸光度を検出するステップと、
前記吸光度の検出結果に基づいて、前記分析対象水(W)中の前記0価セレンを定量するステップと、を備える。
上記(7)の構成によれば、上記(1)と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0066】
1 定量分析装置
2 分離部
21 カラム
22 送液ポンプ
23 試料導入部
24 上流管
25 送液タンク
26 下流管
3 酸化剤導入部
31 酸化剤タンク
32 酸化剤ポンプ
4 発色剤導入部
41 発色剤タンク
42 発色剤ポンプ
5 検出部
51 吸光度検出器
52 電気伝導度検出器
6 定量部
7 除去部
W 分析対象水
Wc キャリア液
Ws 分離済み対象水
Ox 酸化剤
C 発色剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6