(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】缶成形装置のツールパック、および缶成形装置
(51)【国際特許分類】
B21D 22/28 20060101AFI20230728BHJP
B21D 51/26 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
B21D22/28 L
B21D22/28 A
B21D51/26 X
(21)【出願番号】P 2019220076
(22)【出願日】2019-12-05
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】松尾 昭二
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩二
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-100920(JP,A)
【文献】特開2018-118320(JP,A)
【文献】実開平05-012074(JP,U)
【文献】特開2018-192510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/28
B21D 51/26
B21D 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶を成形するツールと、
前記ツールが収容されるハウジングと、
前記ハウジングの外壁部に設けられ、上面に前記ツールを載置可能なツール載置台と、を備える、
缶成形装置のツールパック。
【請求項2】
前記ツールは、円筒状であり、
前記ツール載置台は、前記ツール載置台の上面に、前記ツールの外周面を保持可能な凹部を有する、
請求項1に記載の缶成形装置のツールパック。
【請求項3】
前記ハウジングは、
上側に開口する開口部を有する下ハウジングと、
前記開口部を開閉可能に上側から覆う上ハウジングと、を有し、
前記ツール載置台は、前記下ハウジングの外壁部のうち前記開口部と隣接する部分に配置される、
請求項1または2に記載の缶成形装置のツールパック。
【請求項4】
前記ハウジングは、閉状態とされた前記上ハウジングを前記下ハウジングと固定するロック機構を有し、
前記ツール載置台は、前記ロック機構の少なくとも一部を上側から覆う、
請求項3に記載の缶成形装置のツールパック。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の缶成形装置のツールパックと、
前記ツールの貫通孔に挿入されるパンチと、
前記ツールに対して前記パンチを、前記貫通孔の中心軸の軸方向に往復直線運動させる往復直線運動機構と、
前記ツールの前記貫通孔が開口する端面に押し付けられるカップホルダーと、を備える、
缶成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶成形装置のツールパック、および缶成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有底筒状のDI(Drawing&Ironing)缶が知られている。DI缶は、アルミニウム合金製の円板状のブランクに、カッピング加工およびDI加工等を施すことにより製造される。カッピング加工では、ブランクを絞り加工してカップ状体とする。DI加工では、カップ状体の内部にパンチを嵌合させ、カップ状体の外部に複数のダイを嵌合させて、これらの金型間でカップ状体を絞りしごき加工する。複数のダイは、ツールとして、ツールパックのハウジングに収容される(例えば下記特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016-532564号公報
【文献】特開2018-118320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の缶成形装置では、ツールパックのハウジングの内部と外部との間で、重量の大きいダイ等のツールを安定して移送する点に改善の余地があった。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、ハウジングの内部と外部との間でツールを安定して移送できる缶成形装置のツールパック、および缶成形装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の缶成形装置のツールパックの一つの態様は、缶を成形するツールと、前記ツールが収容されるハウジングと、前記ハウジングの外壁部に設けられ、上面に前記ツールを載置可能なツール載置台と、を備える。
また、本発明の缶成形装置の一つの態様は、上述の缶成形装置のツールパックと、前記ツールの貫通孔に挿入されるパンチと、前記ツールに対して前記パンチを、前記貫通孔の中心軸の軸方向に往復直線運動させる往復直線運動機構と、前記ツールの前記貫通孔が開口する端面に押し付けられるカップホルダーと、を備える。
【0007】
本発明によれば、例えばツールの交換時など、ハウジングの内部と外部との間でツールを移送するときに、ツールをツール載置台の上面に仮置きすることができる。重量が大きく、引っ掛け治具等を用いて移送されるツールでも、ツール載置台を経由することにより、ハウジングの内部と外部との間で安定して移送することができる。ツールには金型等の高価な部材が含まれるが、本発明によれば、ツールが移送時に落下して破損するような不具合を抑制でき、設備費用の増大が抑えられる。また、ツールパックへのツールのセットや、取り外し等が効率よく安全に行え、生産性が向上する。
【0008】
上記缶成形装置のツールパックにおいて、前記ツールは、円筒状であり、前記ツール載置台は、前記ツール載置台の上面に、前記ツールの外周面を保持可能な凹部を有することが好ましい。
【0009】
この場合、転がりやすい円筒状のツールであっても、ツール載置台の上面の凹部に、ツールを安定して仮置きすることができる。
【0010】
上記缶成形装置のツールパックにおいて、前記ハウジングは、上側に開口する開口部を有する下ハウジングと、前記開口部を開閉可能に上側から覆う上ハウジングと、を有し、前記ツール載置台は、前記下ハウジングの外壁部のうち前記開口部と隣接する部分に配置されることが好ましい。
【0011】
この場合、上ハウジングが開状態とされ、開口部を通して下ハウジングの内部と外部との間でツールを移送する際に、開口部に隣接するツール載置台の上面にツールを仮置きすることで、ツールパックへのツールのセットや取り外し等が、より効率よく行える。
【0012】
上記缶成形装置のツールパックにおいて、前記ハウジングは、閉状態とされた前記上ハウジングを前記下ハウジングと固定するロック機構を有し、前記ツール載置台は、前記ロック機構の少なくとも一部を上側から覆うことが好ましい。
【0013】
この場合、ツール載置台によって、ロック機構の少なくとも一部が上側からカバーされる。ロック機構がツール載置台で覆われることにより、ロック機構に対して重量の大きいツール等が衝突することが抑制され、ロック機構の機能が良好に維持される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一つの態様の缶成形装置のツールパック、および缶成形装置によれば、ハウジングの内部と外部との間でツールを安定して移送できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態の缶成形装置を模式的に示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態の缶成形装置のツールパックを示す斜視図であり、上ハウジングが閉じた状態を表す。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態の缶成形装置のツールパックを示す縦断面図であり、上ハウジングが閉じた状態を表す。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態の缶成形装置のツールパックを示す斜視図であり、上ハウジングが開いた状態を表す。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態の缶成形装置のツールパックを示す縦断面図であり、上ハウジングが開いた状態を表す。
【
図6】
図6は、缶成形装置のツールパックのロック機構の一部を示す上面図であり、ツール載置台を透かして見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態の缶成形装置10、および缶成形装置10のツールパック13(以下、単にツールパック13と呼ぶ場合がある)について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の缶成形装置10は、ワークであるカップ状体WにDI加工を施してDI缶100とする、DI缶製造装置である。
【0017】
まず、DI缶100について説明する。
DI缶100は、飲料等の内容物が充填、密封される缶体(2ピース缶やボトル缶)に用いられる。2ピース缶の場合、缶体は、有底筒状のDI缶100と、このDI缶100の開口端部に巻き締められる円板状の缶蓋と、を備える。ボトル缶の場合、缶体は、DI缶100にネッキング加工およびねじ加工等が施されたボトル缶本体と、ボトル缶本体の開口端部に螺着されるキャップと、を備える。
【0018】
DI缶100は、アルミニウム合金製等の板材から打ち抜いた円板状のブランクに、カッピング工程(絞り工程)およびDI工程(絞りしごき工程)を施すことにより、有底筒状に形成される。具体的にDI缶100は、例えば2ピース缶の場合、板材打ち抜き工程、カッピング工程、DI工程、トリミング工程、印刷工程、塗装工程、ネッキング工程およびフランジング工程をこの順に経て、製造される。
【0019】
DI缶100を製造する過程では、ブランクをカッピングプレスによって絞り加工(カッピング加工)し、カップ状体Wに成形する。つまりカップ状体Wは、上記カッピング工程において、ブランクからDI缶100へ移行する過程で作製される成形中間体である。カップ状体Wは、DI缶100よりも周壁の高さ(缶軸方向に沿う長さ)が小さく、底壁の直径が大きい有底筒状である。
【0020】
次に、缶成形装置10について説明する。
缶成形装置10は、上記DI工程に用いられるものであり、カップ状体WにDI加工、すなわち絞り(再絞り)しごき加工を施して、DI缶100に成形する。また缶成形装置10は、上記DI工程において、DI缶100の缶底をドーム形状に成形する。
【0021】
図1において、缶成形装置10は、パンチ2と、往復直線運動機構4と、往復直線運動機構4とパンチ2とを繋ぐラム軸3と、ラム軸3をパンチ2の中心軸Oの軸方向に往復移動自在に支持する軸受5と、貫通孔7が形成されたツール8を有するツールパック13と、ツール8の貫通孔7が開口する端面9に押し付けられるカップホルダー6と、パンチ2との間でDI缶100の缶底を挟み込みドーム状に成形するドーマー11と、を備える。
【0022】
また缶成形装置10は、ツール8の端面9上にカップ状体Wを搬送するカップフィーダー(図示略)と、この端面9上にカップ状体Wを保持する受け座(図示略)と、成形後のDI缶100を装置外部へ搬送する缶搬出機構(図示略)と、パンチ2の先端面および外周面の少なくともいずれかに開口するエア吐出孔からエアを吐出し、パンチ2からDI缶100を離型させるエア吐出機構12と、往復直線運動機構4に同期して駆動され、カップホルダー6を中心軸Oの軸方向に往復移動させるカップホルダー駆動機構(図示略)と、駆動モータ等の駆動源(図示略)と、を備える。
【0023】
パンチ2、ラム軸3、軸受5、ツール8の貫通孔7、カップホルダー6およびドーマー11の各中心軸は、互いに同軸に配置される。本実施形態では、この共通軸を中心軸Oと呼ぶ。本実施形態では、中心軸Oが水平方向に延びる。つまり貫通孔7の中心軸Oは、水平方向に沿って延びる。
【0024】
本実施形態においては、中心軸Oが延びる方向を、軸方向と呼ぶ。ツールパック13の軸方向位置と、往復直線運動機構4の軸方向位置とは、互いに異なる。軸方向のうち、ツールパック13から往復直線運動機構4へ向かう方向を軸方向一方側と呼び、往復直線運動機構4からツールパック13へ向かう方向を軸方向他方側と呼ぶ。
中心軸Oと直交する方向を、径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Oに近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸Oから離れる方向を径方向外側と呼ぶ。
中心軸O回りに周回する方向を、周方向と呼ぶ。
【0025】
本実施形態では、各図に3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。
X軸方向は、中心軸Oの軸方向に相当する。X軸方向のうち、+X側は軸方向一方側に相当し、-X側は軸方向他方側に相当する。本実施形態においてX軸方向は、水平方向である。
Y軸方向は、X軸方向と直交する方向である。本実施形態においてY軸方向は、水平方向のうちX軸方向とは異なる方向である。
図3に示すように、ツールパック13を軸方向一方側から見て、Y軸は、左右方向に延びる。Y軸方向は、中心軸Oと直交する径方向のうち、左右方向(水平方向)に延びる所定の径方向である。Y軸方向は、第1の所定の径方向と言い換えてもよい。本実施形態では、Y軸方向を前後方向と呼ぶ。Y軸方向のうち、+Y側を後側と呼び、-Y側を前側と呼ぶ。
Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向と直交する方向である。本実施形態においてZ軸方向は、鉛直方向つまり上下方向である。Z軸方向のうち、+Z側を上側と呼び、-Z側を下側と呼ぶ。Z軸方向は、中心軸Oと直交する径方向のうち、上記第1の所定の径方向とは異なり上下方向に延びる。Z軸方向は、第2の所定の径方向と言い換えてもよい。
【0026】
図1に示すように、パンチ2は、軸方向に延びる円筒状または円柱状である。パンチ2は、往復直線運動機構4により、ラム軸3とともに軸方向に往復直線運動させられる。すなわちパンチ2は、
図1に符号Sの双方向矢印で示すように、往復直線運動機構4により中心軸Oの軸方向に沿って往復直線運動させられる。以下では、パンチ2が往復直線運動させられる向きを、ストローク方向Sと呼ぶ場合がある。パンチ2は、ツール8およびドーマー11に対して、ストローク方向Sに往復直線運動する。パンチ2は、ツール8の貫通孔7に挿入される。具体的に、パンチ2は、ツール8の軸方向一方側(+X側)から、軸方向他方側(-X側)へ向けてツール8の貫通孔7内に挿入され、貫通孔7から軸方向他方側に突出する。パンチ2は、ストローク方向Sの軸方向他方端の位置、つまり前進端位置において、ドーマー11に接近配置される。
【0027】
往復直線運動機構4は、駆動モータ等の駆動源から伝達された回転駆動力を中心軸Oの軸方向への往復直線運動に変換して、ラム軸3およびパンチ2を軸方向に往復直線移動させる。往復直線運動機構4は、ツール8およびドーマー11に対して、パンチ2を軸方向に往復直線運動させる。
【0028】
ラム軸3は、軸方向に延びる棒状である。ラム軸3の軸方向一方側の端部は、往復直線運動機構4に接続される。ラム軸3の軸方向他方側の端部は、パンチ2に接続される。ラム軸3は、軸方向に互いに離間して設けられる一対の軸受5により、軸方向に摺動自在に支持される。
【0029】
一対の軸受5のうち、軸方向他方側つまりツール8に近い位置に配置される一方の軸受5は、前軸受5Fであり、軸方向一方側つまり往復直線運動機構4に近い位置に配置される他方の軸受5は、後軸受5Rである。前軸受5Fおよび後軸受5Rは、例えばハイドロスタティック軸受や静圧軸受等と呼ばれる流体軸受の構造を有する。
【0030】
図1~
図5に示すように、ツールパック13は、ツール8と、ハウジング14と、ツール載置台15と、を備える。なお
図1においては、ハウジング14およびツール載置台15の図示を省略する。DI缶100の成形時において、ツールパック13には、潤滑と冷却のためソリュブル等の水溶性潤滑剤(クーラント液)が供給される。
【0031】
ツール8は、DI缶100つまり缶を成形するために設けられる。ツール8は、DI缶100の缶胴を成形する金型等を含む。つまりツール8は、缶成形用のツールである。
図1に示すように、ツール8は、複数設けられる。各ツール8は、中心軸Oを中心として軸方向に延びる円筒状である。複数のツール8は、全体としての形状、つまり組み合わせた状態の形状も、中心軸Oを中心とする円筒状である。複数のツール8には、例えば、複数のダイ8A,8Bと、複数のパイロットリング(図示省略)と、複数のセンタリングリング(図示省略)と、複数のワッシャー(図示省略)と、リュプリケータ(図示省略)と、ブロンズブッシング(図示省略)と、が含まれる。なおツール8は、1つのみ設けられてもよい。
【0032】
複数のダイ8A,8Bは、中心軸Oの軸方向に並んで配置される。各ダイ8A,8Bは、中心軸Oを中心とする円筒状または円形リング状である。複数のダイ8A,8Bは、中心軸Oを共通軸として互いに同軸に配置される。複数のダイ8A,8Bは、パンチ2との間でカップ状体Wを絞り(再絞り)加工する1つの再絞りダイ(リドローダイ)8Aと、パンチ2との間でカップ状体Wをしごき加工する複数のしごきダイ(アイオニングダイ)8Bと、を有する。
【0033】
再絞りダイ8Aは、ツールパック13の軸方向一方側の端部に配置される。再絞りダイ8Aの軸方向一方側を向く端面9には、カップ状体Wの底壁が接触する。端面9は、中心軸Oに垂直な方向に拡がる平面状である。再絞りダイ8Aの貫通孔7は、端面9の中央部に開口する。
【0034】
本実施形態では、しごきダイ8Bが3つ設けられる。3つのしごきダイ8Bは、ツールパック13の軸方向一方側の端部以外の部分に配置される。
複数のダイ8A,8Bの各貫通孔7は、中心軸Oに垂直な断面が円形状である。各貫通孔7は、中心軸Oを中心とする円孔状である。
【0035】
複数のパイロットリングは、各しごきダイ8Bの軸方向他方側にそれぞれ接近して配置される。パイロットリングが設けられることにより、成形中のDI缶100がしごきダイ8Bから外れたときの衝撃で、パンチ2が各しごきダイ8Bに接触することが抑制される。
【0036】
複数のセンタリングリングは、各しごきダイ8Bの中心軸Oを互いに同軸に一致させる機能を有する。
複数のワッシャーは、各センタリングリングの内周部に嵌合する。
リュプリケータおよびブロンズブッシングは、軸方向に隣り合うしごきダイ8B同士の間に配置される。
【0037】
なお、本実施形態の再絞りダイ8A、しごきダイ8B、パイロットリング、センタリングリング、ワッシャー、リュプリケータおよびブロンズブッシングについては、例えば、特開2011-200938号公報に記載された各構成を用いることができる。
【0038】
図3に示すように、ハウジング14には、ツール8が収容される。本実施形態ではハウジング14に、複数のツール8が軸方向に並んで収容される。
ハウジング14は、下ハウジング16と、上ハウジング17と、回転軸18と、ロック機構20と、を有する。
【0039】
下ハウジング16は、ハウジング14のうち下側部分を構成する。下ハウジング16は、軸方向に延びる樋状つまり半割り円筒状である。
下ハウジング16は、上側に開口する開口部16aと、下ハウジング16の内壁部に設けられ、ツール8を下側から支持する下支持部16bと、下ハウジング16の外壁部に設けられ、この外壁部から径方向外側に突出する第1突出壁部(突出壁部)16cと、下ハウジング16の外壁部に設けられ、この外壁部から径方向外側に突出する第2突出壁部16dと、開状態とされた上ハウジング17を支持可能な支持壁部16eと、を有する。
【0040】
図4に示すように、開口部16aは、下ハウジング16の内壁部の上端部に位置する。開口部16aは、軸方向に沿って延びる。
図3に示すように、本実施形態では、開口部16aのうち中心軸Oよりも前側(-Y側)に位置する部分の上下方向の位置(高さ)が、開口部16aのうち中心軸Oよりも後側(+Y側)に位置する部分の上下方向の位置よりも下側である(つまり高さが低い)。
【0041】
図3および
図4に示すように、下支持部16bは、下ハウジング16の内壁部から径方向内側に突出する。下支持部16bは、軸方向に延びる板状であり、下ハウジング16の内壁部に固定される。下支持部16bの一対の板面は、径方向を向く。下支持部16bの一対の板面のうち、径方向内側を向く一方の板面は、ツール8の外周面と接触する。
下支持部16bは、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態では下支持部16bが、下ハウジングの内壁部のうち中心軸Oよりも前側に位置する部分と、中心軸Oよりも後側に位置する部分とに、一対設けられる。
【0042】
第1突出壁部16cは、下ハウジング16の外壁部の上端部かつ前側の端部から、前側に向けて突出する。第1突出壁部16cは、上下方向と垂直な方向に拡がる板状である。第1突出壁部16cは、開口部16aの前側に、開口部16aと隣接して配置される。第1突出壁部16cは、開口部16aに沿って軸方向に延びて配置される。第1突出壁部16cのうち前側部分の軸方向の長さ(幅)は、後側部分の軸方向の長さよりも小さい。
第1突出壁部16cは、ロック機構20の一部が収容される収容凹部16fと、収容凹部16f内に配置され、上下方向に延びるレバー回動軸16gと、を有する。
【0043】
第2突出壁部16dは、下ハウジング16の外壁部の上端部かつ後側の端部から、後側に向けて突出する。第2突出壁部16dは、上下方向と垂直な方向に拡がる板状である。第2突出壁部16dは、開口部16aの後側に、開口部16aと隣接して配置される。第2突出壁部16dは、開口部16aに沿って軸方向に延びて配置される。第1突出壁部16cの上面の上下方向の位置(高さ)は、第2突出壁部16dの上面の上下方向の位置よりも下側である(つまり高さが低い)。
【0044】
支持壁部16eは、第2突出壁部16dの上面に設けられる。支持壁部16eは、第2突出壁部16dの上面から上側に突出する。支持壁部16eは、板状であり、本実施形態の例では、軸方向から見てL字状である。
図5に示すように、上ハウジング17が開かれた状態(開状態)とされたときに、支持壁部16eの上端部の前側を向く部分が、上ハウジング17の上面と接触する。上ハウジング17が支持壁部16eと接触した状態で、上ハウジング17の開状態は維持される。
【0045】
上ハウジング17は、ハウジング14のうち上側部分を構成する。上ハウジング17は、板状であり、一対の板面が上下方向を向く。上ハウジング17は、下ハウジング16の開口部16aを開閉可能に上側から覆う。
図2および
図3は、上ハウジング17が閉じた状態(閉状態)を表しており、
図4および
図5は、上ハウジング17が開いた状態(開状態)を表している。
【0046】
図3に示すように、上ハウジング17は、上ハウジング17の下面に設けられ、ツール8を上側から押さえるツール押さえ17aと、上ハウジング17に固定される操作ハンドル17bと、上ハウジング17の下面から垂下設される垂下部17cと、を有する。なお、
図4および
図5においては、ツール押さえ17aの図示を省略する。
【0047】
ツール押さえ17aは、上ハウジング17の下面から下側に突出する。ツール押さえ17aは、上下方向と垂直な方向に拡がる板状である。ツール押さえ17aは、ツール押さえ17aの下面に、軸方向から見て凹曲線状をなす凹曲面部17dを有する。凹曲面部17dは、ツール8の外周面のうち上端部に接触する。
【0048】
操作ハンドル17bは、上ハウジング17の上面に設けられる。本実施形態では操作ハンドル17bが、前後方向に延びる棒状である。操作ハンドル17bは、上ハウジング17の前側の端部よりも前側に突出する部分を有する。
【0049】
垂下部17cは、上ハウジング17の下面のうち前側の端部から、下側に突出する。
図4に示すように、垂下部17cは、軸方向に延びる角柱状である。垂下部17cの下面は、第1突出壁部16cのうち後側部分の上面と接触する。
【0050】
回転軸18は、下ハウジング16と上ハウジング17とを相対回転可能に連結する。具体的に、上ハウジング17は、下ハウジング16に対して回転軸18の中心軸回りに、閉状態と開状態との間で回転可能である。
【0051】
図3に示すように、ロック機構20は、閉状態とされた上ハウジング17を、下ハウジング16と固定する。ロック機構20は、下ハウジング16に上ハウジング17が固定されたロック状態(
図3参照)と、下ハウジング16と上ハウジング17とのロック状態が解除された状態、すなわち下ハウジング16に対して上ハウジング17が移動可能なロック解除状態(
図5参照)と、を切り替え可能に構成される。
【0052】
図3および
図6に示すように、ロック機構20は、ロックシャフト21と、第1ロックレバー22と、付勢部23と、第2ロックレバー24と、を有する。
図3に示すように、ロックシャフト21は、上下方向に延びる軸状である。ロックシャフト21は、上ハウジング17を上下方向に貫通する。ロックシャフト21は、上ハウジング17に対して、上下方向の所定範囲において移動可能である。ロックシャフト21は、上ハウジング17の前側の端部および垂下部17cを上下方向に貫通する。上ハウジング17が閉状態とされたときに、ロックシャフト21の下端部は、第1突出壁部16cの収容凹部16f内に位置する。
ロックシャフト21は、ロックシャフト21の下端部に係止部21aを有する。
【0053】
図6に示すように、第1ロックレバー22は、第1突出壁部16cに設けられる。第1ロックレバー22は、第1突出壁部16cの収容凹部16fに配置される。第1ロックレバー22は、上下方向と垂直な方向に拡がる板状である。第1ロックレバー22は、前後方向に延びる。収容凹部16fに設けられたレバー回動軸16gは、第1ロックレバー22を上下方向に貫通する。第1ロックレバー22は、レバー回動軸16gを中心に回動可能である。第1ロックレバー22の前側(-Y側)の端部は、第1突出壁部16cよりも前側に突出する。
【0054】
第1ロックレバー22は、第1ロックレバー22の後側(+Y側)の端部に被係止部22aを有する。被係止部22aは、第1ロックレバー22を上下方向に貫通する。被係止部22aは、第1ロックレバー22の上面、下面および軸方向他方側(-X側)を向く端面に開口する切り欠き状である。
図3に示すように、被係止部22aは、ロックシャフト21の係止部21aと係止可能である。具体的には、オペレーターが、第1ロックレバー22の前側の端部を把持して第1ロックレバー22をレバー回動軸16g回りに回動操作することにより、被係止部22aと係止部21aとを係止させたり、被係止部22aと係止部21aとの係止状態を解除したりすることが可能である。
【0055】
被係止部22aと係止部21aとが係止されることで、第1ロックレバー22に対するロックシャフト21の上側への移動が規制される。これにより、閉状態とされた上ハウジング17が開かれること、つまり上ハウジング17が開状態となることが規制されて、上ハウジング17の閉状態が維持される。
【0056】
図6に示すように、付勢部23は、第1ロックレバー22をレバー回動軸16g回りのうち所定方向に向けて付勢する。これにより付勢部23は、被係止部22aと係止部21aとが係止された状態を維持する。被係止部22aと係止部21aとの係止状態を解除する場合は、オペレーターが、付勢部23の付勢力よりも大きな力で、第1ロックレバー22をレバー回動軸16g回りのうち上記所定方向とは反対方向へ向けて回動操作すればよい。
【0057】
図3に示すように、第2ロックレバー24は、ロックシャフト21の上端部に連結される。第2ロックレバー24は、ロックシャフト21に対して締付軸24aを中心に回動可能である。第2ロックレバー24の外面の一部は、上ハウジング17の上面と接触する。被係止部22aと係止部21aとが係止された状態で、オペレーターが第2ロックレバー24を締付軸24a回りのうち所定方向に回動操作することにより、ロックシャフト21は上側に僅かに引き上げられ、被係止部22aと係止部21aとの係止力が高められて、被係止部22aと係止部21aとの係止状態がロックされる。また、オペレーターが第2ロックレバー24を締付軸24a回りのうち上記所定方向とは反対方向に回動操作することにより、被係止部22aと係止部21aとの係止状態のロックが解除される。
【0058】
図5に示すように、ツール載置台15は、ハウジング14の外壁部に設けられ、上面にツール8を載置可能である。ツール載置台15は、下ハウジング16の外壁部のうち開口部16aと隣接する部分に配置される。ツール載置台15は、開口部16aの前側に隣り合って配置される。ツール載置台15は、下ハウジング16の外壁部のうち第1突出壁部16cに設けられる。詳しくは、ツール載置台15は、第1突出壁部16cのうち前側部分に対して上側からかぶせられ、固定される。
【0059】
ツール載置台15は、前側から見て、下側に開口する略コ字状である(
図2参照)。ツール載置台15は、第1突出壁部16cのうち前側部分を、上側、軸方向一方側(+X側)および軸方向他方側(-X側)から覆う。
図6に示すように、ツール載置台15は、第1突出壁部16cの収容凹部16fの一部およびレバー回動軸16gを上側から覆う。またツール載置台15は、第1ロックレバー22の一部および付勢部23を上側から覆う。すなわち、ツール載置台15は、ロック機構20の少なくとも一部を上側から覆う。
図4に示すように、ツール載置台15の上面の上下方向の位置(高さ)は、第1突出壁部16cのうち後側部分の上面の上下方向の位置と略同じである。
【0060】
ツール載置台15は、ツール載置台15の上面に、ツール8の外周面を保持可能な凹部15aを有する。凹部15aは、軸方向に延びる溝状である。凹部15aの軸方向の長さは、ツール8の軸方向の長さよりも大きい。凹部15aは、中心軸Oに垂直な断面の形状が、下側へ向けて窪む凹V字状である。ツール8は、その中心軸Oを軸方向に延ばした姿勢で、凹部15aに載せられる。
【0061】
図1に示すように、カップホルダー6は、軸方向に延びる円筒状である。カップホルダー6は、パンチ2の外側に嵌め合わされ、かつパンチ2に対して軸方向にスライド移動可能である。カップホルダー6は、再絞りダイ8Aつまりツール8の端面9にカップ状体Wの底壁を押圧可能である。カップホルダー6は、ツール8の端面9に配置されたカップ状体Wの内部に挿入され、カップ状体Wの底壁を端面9に押し付けて支持する。
特に図示しないが、カップホルダー駆動機構は、駆動モータ等の駆動源から伝達された回転駆動力を軸方向への往復運動に変換して、カップホルダー6を軸方向に往復直線移動させる。
【0062】
ドーマー11は、DI缶100の缶底を成形する金型である。ドーマー11は、略円筒状であり、軸方向に延びる。ドーマー11は、パンチ2と軸方向に対向する。
【0063】
缶成形装置10によるカップ状体WへのDI加工は、下記のように行われる。
まず、ワークであるカップ状体Wが、カップ軸(缶軸)を水平方向に延ばし、その開口を軸方向一方側つまりパンチ2側へ向けた姿勢で、パンチ2と再絞りダイ8A(ツール8)との間に配置される。カップ状体Wの底壁は、再絞りダイ8Aの端面9と対向する。
【0064】
このカップ状体Wに対して、カップホルダー6およびパンチ2が軸方向他方側に前進移動させられる。すなわち、カップホルダー6およびパンチ2が、ストローク方向Sにおいて、往復直線運動機構4からツールパック13側へ向けて移動する。そしてカップホルダー6が、再絞りダイ8Aの端面9にカップ状体Wの底壁を押し付けてカップ押し付け動作を行いつつ、パンチ2が、カップ状体Wを再絞りダイ8Aの貫通孔7内に押し込んでいくことで、再絞り加工を施す。
【0065】
再絞り加工により、カップ状体Wは小径に成形され、かつ軸方向に沿う長さ(高さ)が大きくなる。さらにこのカップ状体Wをパンチ2で押し込んでいき、複数のしごきダイ8Bの各貫通孔7を順次通過させながらしごき加工を施す。すなわち、カップ状体Wの周壁をしごいて延伸させ、周壁高さを高くするとともに周壁の厚さを薄くして、有底筒状のDI缶100とする。DI缶100は、周壁がしごかれることで冷間加工硬化され、強度が高められる。
【0066】
しごき加工が施されたDI缶100は、パンチ2によりツールパック13の軸方向他方側へと押し出される。そしてDI缶100の底部(缶底となる部分)が、パンチ2とドーマー11との間で軸方向に挟まれ押圧されることにより、DI缶100の底部が、ドーム形状に成形される。
【0067】
以上説明した本実施形態の缶成形装置10のツールパック13、および缶成形装置10によれば、例えばツール8の交換時など、ハウジング14の内部と外部との間でツール8を移送するときに、ツール8をツール載置台15の上面に仮置きすることができる。重量が大きく、引っ掛け治具等を用いて移送されるツール8でも、ツール載置台15を経由することにより、ハウジング14の内部と外部との間で安定して移送することができる。ツール8には金型等の高価な部材が含まれるが、本実施形態によれば、ツール8が移送時に落下して破損するような不具合を抑制でき、設備費用の増大が抑えられる。また、ツールパック13へのツール8のセットや、取り外し等が効率よく安全に行え、生産性が向上する。
【0068】
また本実施形態では、ツール載置台15が、ツール載置台15の上面に、ツール8の外周面を保持可能な凹部15aを有する。
この場合、転がりやすい円筒状のツール8であっても、ツール載置台15の上面の凹部15aに、ツール8を安定して仮置きすることができる。
【0069】
また本実施形態では、ツール載置台15が、下ハウジング16の外壁部のうち開口部16aと隣接する部分に配置される。
この場合、上ハウジング17が開状態とされ、開口部16aを通して下ハウジング16の内部と外部との間でツール8を移送する際に、開口部16aに隣接するツール載置台15の上面にツール8を仮置きすることで、ツールパック13へのツール8のセットや取り外し等が、より効率よく行える。
【0070】
また本実施形態では、ツール載置台15によって、ロック機構20の少なくとも一部が上側からカバーされている。ロック機構20がツール載置台15で覆われることにより、ロック機構20に対して重量の大きいツール8等が衝突することが抑制され、ロック機構20の機能が良好に維持される。
【0071】
また本実施形態では、開口部16aのうち中心軸Oよりも前側に位置する部分の上下方向の位置が、開口部16aのうち中心軸Oよりも後側に位置する部分の上下方向の位置よりも、下側である。
この場合、開口部16aのうち前側部分の高さが低いので、下ハウジング16に前側からツール8を出し入れしやすく、ツール8の移送がより効率よく行える。
【0072】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0073】
前述の実施形態では、ツール載置台15の凹部15aが、軸方向から見て下側へ向けて窪む凹V字状である例を挙げたが、これに限らない。例えば、凹部15aは、中心軸Oに垂直な断面の形状が、下側へ向けて窪む凹曲線状であってもよい。この場合、凹部15aは、軸方向に延びる凹曲面状に形成される。
【0074】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の缶成形装置のツールパック、および缶成形装置によれば、ハウジングの内部と外部との間でツールを安定して移送できる。ツールパックへのツールのセットや取り外し等が効率よく安全に行え、生産性が向上する。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0076】
2…パンチ、4…往復直線運動機構、6…カップホルダー、7…貫通孔、8…ツール、9…端面、10…缶成形装置、13…ツールパック、14…ハウジング、15…ツール載置台、15a…凹部、16…下ハウジング、16a…開口部、17…上ハウジング、20…ロック機構、O…中心軸