(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】食品コーティング装置および食品生産方法
(51)【国際特許分類】
A23P 20/15 20160101AFI20230728BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20230728BHJP
【FI】
A23P20/15
A23L5/00 F
(21)【出願番号】P 2019516015
(86)(22)【出願日】2019-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2019008739
(87)【国際公開番号】W WO2019188057
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2018064601
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505126610
【氏名又は名称】株式会社ニチレイフーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【氏名又は名称】鈴木 順生
(72)【発明者】
【氏名】藤森 義人
(72)【発明者】
【氏名】中鏡 裕一
(72)【発明者】
【氏名】北村 次郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 峻一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 奈緒
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-128657(JP,A)
【文献】実開昭50-151892(JP,U)
【文献】米国特許第03885519(US,A)
【文献】実開昭51-006195(JP,U)
【文献】特開昭48-048678(JP,A)
【文献】特開平04-197143(JP,A)
【文献】実開昭56-050294(JP,U)
【文献】特開昭61-187759(JP,A)
【文献】特開昭53-032138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23P 20/15
A23L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状被覆材の流路となる流路部と、
前記流路部の底面上側において配設され、前記液状被覆材に浸漬され、前記液状被覆材を進行方向に流動させるコンベアと、
前記コンベアを駆動する駆動部と、
食品を投下する投下部
と、
制御部を備え、
前記投下部が前記食品を投下する投下位置では前記コンベアが前記液状被覆材に浸漬されており、前記流路部では、前記食品が前記コンベアによって支持された状態または、流動する前記液状被覆材に支持された状態で搬送され、前記食品が前記液状被覆材でコーティングされ
、
前記制御部が、少なくとも前記流路部の側壁に設けられたレベルセンサの計測値、前記液状被覆材の密度、前記食品の密度、前記食品の体積、前記食品の高さのいずれか1つに基づき、少なくとも前記流路部へ時間当たりに注入される前記液状被覆材の量または前記コンベアの移動速度を変更し、前記コンベアからみた前記液状被覆材の上面の高さを制御することを特徴とする、
食品コーティング装置。
【請求項2】
前記投下位置より、前記コンベアの進行方向とは反対方向にある位置において、前記液状被覆材を前記流路部に注入する、第1注入部を備えていることを特徴とする、
請求項1に記載の食品コーティング装置。
【請求項3】
前記投下位置より、前記コンベアの進行方向にある位置において、前記液状被覆材を前記コンベアの上方から注ぐ、第2注入部を備えていることを特徴とする、
請求項1または2に記載の食品コーティング装置。
【請求項4】
前記第2注入部では、容器に蓄えられた前記液状被覆材が、前記容器に設けられた第1開放部と、前記容器の前記第1開放部より前記コンベアの進行方向側に設けられた第2開放部から注がれることを特徴とする、
請求項3に記載の食品コーティング装置。
【請求項5】
前記コンベアの進行方向とは反対の方向に前記液状被覆材を流動させる循環機構を備えることを特徴とする、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の食品コーティング装置。
【請求項6】
前記投下位置より、前記コンベアの進行方向とは反対方向にある位置において、前記液状被覆材を前記流路部に注ぐ、第1注入部と、
前記投下位置より、前記コンベアの進行方向にある位置において、前記液状被覆材を前記コンベアの上方から注ぐ、第2注入部と、
前記液状被覆材を前記コンベアの進行方向とは反対の方向に流動させ、前記第1注入部または前記第2注入部の少なくともいずれかに前記液状被覆材を供給する循環機構を備えることを特徴とする、
請求項1に記載の食品コーティング装置。
【請求項7】
前記投下部は成形機であることを特徴とする、
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の食品コーティング装置。
【請求項8】
液状被覆材の流路となる流路部において、前記液状被覆材に浸漬されているコンベアを駆動し、前記液状被覆材を前記コンベアの進行方向に流動させるステップと、
前記コンベアが浸漬されている前記液状被覆材上に食品を投下するステップと、
前記流路部において前記食品を前記コンベアによって支持された状態または、流動する前記液状被覆材に支持された状態で搬送し、前記食品を前記液状被覆材でコーティングするステップと
、
前記コンベアからみた前記液状被覆材の上面の高さを、前記液状被覆材から前記食品の受ける浮力が前記食品の底面を前記コンベアから浮上させる浮力より小さくなるように制御するステップとを含むことを特徴とする、
食品生産方法。
【請求項9】
液状被覆材の流路となる流路部において、前記液状被覆材に浸漬されているコンベアを駆動し、前記液状被覆材を前記コンベアの進行方向に流動させるステップと、
前記コンベアが浸漬されている前記液状被覆材上に食品を投下するステップと、
前記流路部において前記食品を前記コンベアによって支持された状態または、流動する前記液状被覆材に支持された状態で搬送し、前記食品を前記液状被覆材でコーティングするステップと、
前記コンベアからみた前記液状被覆材の上面の高さを、前記コンベアからみた前記食品の上端の高さより低く制御するステップ
とを含むことを特徴とする、
食品生産方法。
【請求項10】
前記コンベアからみた前記液状被覆材の上面の高さを、前記コンベアからみた前記食品の上端の高さより低く制御するステップを含むことを特徴とする、請求項8に記載の食品生産方法。
【請求項11】
少なくとも前記流路部の側壁に設けられたレベルセンサの計測値、前記液状被覆材の密度、前記食品の密度、前記食品の体積、前記食品の高さのいずれかに基づき、少なくとも前記流路部へ時間当たりに注入される前記液状被覆材の量または前記コンベアの移動速度を変更し、前記コンベアからみた前記液状被覆材の上面の高さを制御するステップを含むことを特徴とする、
請求項8ないし10のいずれか一項に記載の食品生産方法。
【請求項12】
前記流路部の前記食品が配置される位置より前記コンベアの進行方向の反対側の位置で、前記液状被覆材を前記流路部に注ぐステップを含むことを特徴とする、
請求項8ないし11のいずれか一項に記載の食品生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品コーティング装置および食品生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の生産では、様々な食材にバッター液などの液体や粉をコーティング(付着)させる工程が行われている。ここでは様々な物理的性質の食材に対してコーティングを行う必要がある。例えば、柔らかく食感が良好な食品を実現するため、水分量が多い食材、気泡を含む食材、柔らかく変形しやすい食材、内部に空洞を有する食材、結着性が高くなく崩れやすい食材などをコーティングする技術が求められている。また、近年は高速な食品加工装置や調理装置の開発など、食品の生産ラインの効率化が進められている。このため、コーティング工程が生産工程全体のボトルネックとならないよう、効率的に食品をバッター液でコーティングする技術の開発が求められている。
【0003】
特許文献1では、食材が完全にバッター液に浸漬される装置が示されている。この場合、投下時に食品がバッター液の中を浮動してしまう。食材の整列乱れや、食材どうしの癒着が起こるおそれがある。また、押さえコンベアにより、食材が変形する可能性がある。特許文献2では、食材の上方からバッター液を注入する装置が示されている。上方からの注入のみによって、食材の表面全体にコーティングを行うためには、大量のバッター液を流す必要がある。このような場合、バッター液により食材が流されてしまうおそれがある。
【0004】
また特許文献2には、浸漬と上方からのバッター液の注入を組み合わせた装置も示されているが、食材を前の工程からコンベアに投下する際に、型崩れや、コンベアへの付着が起こる可能性がある。また、食材にバッター液が上方から注がれるときに、変形や整列乱れが起こるおそれがある。特許文献3には、食材を成形機から油中に投下するフライヤーが示されている。食材は油の中を浮動するため、整列乱れが起こるリスクがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-234952号公報
【文献】特公平1-39747号公報
【文献】特開昭51-27781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術による装置を使って、柔らかい食材や崩れやすい食材のコーティングを行おうとすると、型崩れ、コンベアへの付着などが発生し、品質の低下や食材ロスの原因となっていた。また、コンベア上に配置された食材の整列が乱れ、食材どうしの癒着、変形などが起こるリスクもあった。これらのリスクを避けるため、コンベア上で食材どうしの距離を大きくとる必要もあり、食品の配置密度を上げるのが難しかった。
【0007】
これらの課題を踏まえ、本発明では食材投下時に加えられる衝撃を軽減し、食材の整列乱れや変形を抑えつつ、柔らかい食材や崩れやすい食材などに対しても効率的なコーティングを実現する、食品コーティング装置および食品生産方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る食品コーティング装置は、液状被覆材の流路となる流路部と、前記流路部の底面上側において配設され、前記液状被覆材に浸漬され、前記液状被覆材を進行方向に流動させるコンベアと、前記コンベアを駆動する駆動部と、食品を投下する投下部を備え、前記投下部が前記食品を投下する、投下位置では前記コンベアが前記液状被覆材に浸漬されており、前記流路部では、前記食品が前記コンベアによって支持された状態または、流動する前記液状被覆材に支持された状態で搬送され、前記食品が前記液状被覆材でコーティングされることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】食品コーティング装置の全体の第1の構成例を示した図。
【
図2】食品コーティング装置の全体の第2の構成例を示した図。
【
図3】被覆材がない場合における、コンベアへの食品の投下を示した図。
【
図4】コンベア上に食品を投下した場合における変形や破損の例を示した図。
【
図5】食品コーティング装置に係る流路部の斜視図。
【
図6】食品コーティング装置に係る流路部の平面図。
【
図7】食品コーティング装置に係る流路部の断面図。
【
図8】バッター液がある場合における、流路部への食品の投下を示した図。
【
図9】バッター液の液面を食品より高く調整した例を示した断面図。
【
図10】バッター液の液面を食品より低く調整した例を示した断面図。
【
図11】食品コーティング装置による食品の高密度な配置例を示した図。
【
図12】食品コーティング装置の構成の一例を示した断面図。
【
図13】バッター液の液面の高さを制御する処理の例を示したフローチャート。
【
図14】第2の実施形態に係る食品コーティング装置の例を示した図。
【
図15】第3の実施形態に係る食品コーティング装置の例を示した図。
【
図16】第4の実施形態に係る食品コーティング装置の例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。また、図面において同一の構成要素は、同じ番号を付し、説明は、適宜省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1、
図2は、食品コーティング装置全体の構成例を示す図である。以下では、本発明の食品コーティング装置の概要について説明する。
【0012】
食品コーティング装置1は、食品生産のいずれかの工程において、流動性を有する所定の被覆材で食材をコーティングする、コーティング工程に適用することができる。以下では、コーティング工程において、食品(食材)をバッター液に浸漬させるものとして説明するが、食材と被覆材の種類を限定するものではない。例えば、食品コーティング装置を使って、おにぎりや団子などに被覆材としてタレ(調味料)をつけてもよい。食材は、ヒト用の食品、動物用の食品、健康食品、経口医薬品の生産に用いられる食材のいずれであってもよい。被覆材は、例えば糖衣、デンプン、油脂、調味料、香辛料、チョコレート、クリームや複数の材料の混合物などであってもよい。
【0013】
なお、以降の説明では食品の原材料となる食材、生産工程の途中段階における食品または食材、食品に対して可食な段階まで加工調理された食品などをすべてまとめて食品とよぶものとする。食品はコーティング工程において液状の被覆材で被覆(コーティング)される。食品の全表面が液状の被覆材でコーティングされてもよいし、食品の表面の一部のみが液状の被覆材でコーティングされてもよい。液状の被覆材は食品の内部に浸透してもよい。以下では、液状の被覆材を液状被覆材とよぶものとする。液状被覆材は、コーティング工程において液状であればよく、後の工程や食品の生産後においては液状でなくなるものであってもよい。
【0014】
図1、
図2の食品コーティング装置1は、前の工程と次の工程との間のコーティング工程に配置されている。食品コーティング装置1は、例えば、食肉、加工食品、かまぼこ、パン、豆腐、餅、菓子類、野菜などの食品が前の工程から投下された後に、バッター液によるコーティングを行う。食品がバッター液でコーティングされた後、次の工程における調理や加工処理などが行われるものとする。
【0015】
バッター液とは、上述の液状被覆材の一例であり、食品の生産や調理においてつなぎとして用いられるデンプン質などを含んだ液体である。バッター液は一般に、衣の結着性を向上させたり、形状を保ったり、保水性や食感を改善させる目的で使用されるが、バッター液の用途については特に問わない。また、バッター液には塩分やタンパク質が含まれていてもよく、どのような組成のものであってもよい。
【0016】
本発明では、様々な性質に係る液状被覆材を用いることができる。例えば、液体中を気体が分散しているフォーム(foam)、複数の液体が混濁している乳濁液(emulsion)、固体粒子が液体の中で分散している懸濁液(suspension)である液状被覆材を用いることができる。液状被覆材は流動性を有していれば、純粋な液体ではなく、液体と固体の混合物であってもよい。例えば、液体の内部に粒子や固形物が混ざっているものを液状被覆材として使ってもよい。粒子や固形物は視認できる大きさのものであってもよいし、微細なものであってもよい。液体に混合させる粒子や固形物の例としては、砂糖、塩、各種の香辛料、かつおぶし、海苔、ナッツ類などがあるが、種類については特に問わない。また、液状被覆材の粘性の大小についても特に限定しない。
【0017】
なお、食品コーティング装置によるコーティング工程の前に行われる工程と、後に行われる工程の種類については特に限定しない。例えば、コーティング工程の次の工程では食品にパン粉を付着させてもよいし、食材を急速に冷却または乾燥させてもよい。また、コーティング工程の前の工程では、大きい原料の一部から、一食分の食品を切り出す工程が行われてもよいし、食材の成型、加熱、味付け、油ちょうなどの工程が行われていてもよい。
【0018】
第1の実施形態では、第1の構成例に係る食品コーティング装置と、第2の構成例に係る食品コーティング装置を説明する。以下では、はじめに第1の構成例に係る食品コーティング装置について述べる。
【0019】
(第1の構成例)
図1は、食品コーティング装置の第1の構成例を示している。
図1上段に示されているように、第1の構成例に係る食品コーティング装置1は、流路部2と、搬送部3と、配管部4と、バッター槽20とを備えている。
図1下段には、食品コーティング装置1を線BB´を通るy-z面で切断した断面図が示されている。以下では、
図1を参照しながら説明をする。
【0020】
流路部2は、液状被覆材の流路となる構造物である。
図1の流路部2は、バッター槽20の内側に配置されている。流路部2は、
図1下段に示されたように、流路部2の底部がバッター槽に貯えられたバッター液(液状被覆材)の上面近傍の高さとなり、なおかつ流路部2の底面上側がバッター槽に貯えられたバッター液(液状被覆材)の上面(液面)より低くなるように支持されている。流路部2の底面上側には、コンベアが配設されている。コンベアは、バッター液(液状被覆材)によって浸漬されており、バッター液(液状被覆材)を進行方向に流動させる。
図1のコンベアはx軸正方向に駆動されているため、バッター液(液状被覆材)はx軸正方向に流動させられる。
【0021】
なお、以降では流路部の底面上側における、コンベアの進行方向、すなわち液状被覆材が流動する方向にある端部を流路部の下流とよぶものとする。一方、流路部の底面上側における、コンベアの進行方向とは反対方向、すなわち液状被覆材が流動する方向とは反対方向にある端部を流路部の上流とよぶものとする。
図1の例では、流路部の上流と下流の位置がそれぞれ示されている。
【0022】
搬送部3は、上述のコンベアによる食品Fの搬送を行う搬送装置である。搬送部3は、コンベア、コンベアを移動可能に支持する構造、コンベアを駆動する駆動部を含む。コンベアを駆動する駆動部の例としては、電動機、内燃機関や蒸気などを使った回転機械などがあるが、駆動部の方式については特に問わない。
【0023】
食品Fは、投下部によって、コンベアがバッター液(液状被覆材)に浸漬されている、投下位置に投下される。流路部2内では、食品Fがコンベアによって支持された状態または流動するバッター液(液状被覆材)に支持された状態で搬送される。搬送される食品Fはバッター液(液状被覆材)でコーティングされる。なお、投下部の詳細については後述する。コーティング工程の完了した食品Fは搬送部3によって次の工程に搬送される。
【0024】
第1の構成例に係る食品コーティング装置1では、食品Fの投下時に少なくとも食品Fの一部がバッター液(液状被覆材)で浸漬される。食品Fは、投下位置よりコンベアの進行方向にある位置において、注入部によりバッター液を上方から注入されるため、表面全体がバッター液(液状被覆材)でコーティングされる。なお、
図1の食品コーティング装置はひとつの注入部を備えているが、食品コーティング装置は複数の注入部を備えていてもよい。複数の注入部を備えた食品コーティング装置の構成例については後述する。
【0025】
配管部4は、バッター槽20に貯留されたバッター液(液状被覆材)をポンプによって汲み上げ、注入部にバッター液(液状被覆材)を供給する。配管部4は、コンベアの進行方向とは反対の方向にバッター液(液状被覆材)を流動させる循環機構の一例である。
【0026】
なお、本発明に係る食品コーティング装置は必ず注入部と、配管部4を備えていなくてもよい。搬送されている食品Fの上方からバッター液(液状被覆材)をかけない場合、注入部と、配管部4を省略した構成を用いてもよい。すなわち、食品コーティング装置は必ず注入部やバッター液を循環させる、循環機構を備えていなくてもよい。
【0027】
次に、本発明に食品コーティング装置の第2の構成例について説明する。
【0028】
(第2の構成例)
第1の構成例に係る流路部の底部は、バッター槽に貯えられたバッター液(液状被覆材)の上面近傍の高さにあり、流路部2の底面上側はバッター槽に貯えられたバッター液(液状被覆材)の上面より低くなっていた。ただし、食品コーティング装置の流路部の底部はバッター槽に貯えられたバッター液(液状被覆材)の上面から離れていてもよい。第2の構成例に係る食品コーティング装置では、流路部の底部がバッター槽に貯えられたバッター液(液状被覆材)の上面から離れている。
【0029】
すなわち、第1の構成例と第2の構成例では流路部の底部と、バッター槽に貯えられたバッター液(液状被覆材)の上面の位置関係が異なっている。バッター槽に貯えられるバッター液(液状被覆材)の量によって、第1の構成例と第2の構成例を切り替えられるようにしてもよい。例えば、バッター槽に貯えるバッター液(液状被覆材)の量を多くすることによって、第1の構成例を実現し、バッター槽に貯えるバッター液(液状被覆材)の量を少なくすることによって、第2の構成例を実現してもよい。また、流路部2が可動に支持されており、流路部のバッター槽に対する相対的な高さを変更する機構を備えた食品コーティング装置を用いることによって、第1の構成例と第2の構成例を切り替えられるようにしてもよい。
【0030】
図2は第2の構成例に係る食品コーティング装置を示している。
図2の食品コーティング装置1は、流路部2と、搬送部3と、配管部4と、バッター槽20とを備えている。
【0031】
図2の流路部2では、x軸正方向に向かってコンベアが動いている。コンベアの上にはコンベアの移動方向と略同一方向にバッター液(液状被覆材)の流れが形成されている。コンベアは流路部の底面上側に配設されている。前の工程における処理を経た食品Fは、コンベアが浸漬されている液状被覆材上に投下される。このとき、食品Fの底部を含む食品Fの少なくとも一部がバッター液に浸漬(コーティング)される。
【0032】
食品Fは、コンベアによって支持された状態または、流動するバッター液(液状被覆材)に支持された状態で流路部2のx軸正方向に向かって搬送される。第2注入部は食品Fの投下位置よりコンベアの進行方向にある位置で、バッター液をコンベアの上方(y軸正側)から注いでいる。コンベアによって搬送されている食品Fの上方からバッター液が注がれるため、食品Fの表面全体をバッター液でコーティングすることができる。
図2の第2注入部では、コンベアが流路部2内に配設されている区間においてバッター液(液状被覆材)が注がれている。ただし、第2注入部は必ずバッター液(液状被覆材)をコンベアが流路部2内に配設されている区間に注がなくてもよい。後述するように、第2注入部はコンベアが流路部2の下流よりさらにx軸正方向に進んだ位置において、バッター液(液状被覆材)を注いでもよい。
【0033】
このとき、食品Fの一部がバッター液に浸漬されながらも下方から支持されているので、上方からバッター液を注入されても整列乱れや型崩れが発生しない。流路部2内では、バッター液(液状被覆材)の存在に関わらず、食品Fを支持された状態で搬送することができる。
【0034】
なお、以下では食品Fがコンベアによって支持された状態で搬送される場合を例に説明するが、食品Fは流動する液状被覆材に支持された状態で搬送されていてもよい。例えば、食品Fの底面がコンベアに接触していなくてもよいし、食品Fの底面の一部のみがコンベアに接触した状態であってもよい。また、搬送中の食品Fの底面とコンベアの間に液状被覆材の層が存在していてもよい。
【0035】
本発明の食品コーティング装置では、流路部内においてコンベアベルトの移動方向と略同一方向に液状被覆材の均一な流れが形成される。また、液状被覆材は一定の粘度を有する。したがって、食品Fが液状被覆材の中を浮いていても、食品Fが粘性を有する液状被覆材の均一な流れによって支持されるため、整列乱れの発生が抑制される。すなわち、本発明の食品コーティング装置では、食品Fがコンベアによって支持された状態で搬送されることが好ましいが、食品Fが液状被覆材の中を浮いている状態で本発明の食品コーティング装置を使用することを妨げるものではない。
【0036】
従来技術の食品コーティング装置では、食品の整列乱れを抑えるために、押さえコンベアを使って食品Fを上方から押さえつけていた。押さえコンベアを使用すると食品Fの付着、破損、型崩れ、被覆材のはがれなどが起こるおそれがある。本発明の食品コーティング装置は、食品Fが支持されながら搬送されるため、上方から押さえつける、押さえコンベアなどを使わなくても、食品の整列乱れを抑えることができる。
【0037】
搬送部3は、第1の構成例と同様、コンベアによる食品Fの搬送を行う搬送装置である。
【0038】
バッター液(液状被覆材)もコンベア上にあるため、粘性により、バッター液もコンベアの移動方向と略同一方向に流れを形成する。流路部2では略水平に配設されていた搬送部3のコンベアは、流路部2を通過したら上り勾配に変わる。上り勾配により、コンベア上の食品Fは流路部2におけるバッター液の水位より高い位置に移動される。一方、バッター液は、流路部2の下流で下側に設けられたバッター槽20に流れ落ちる。
【0039】
搬送部3のコンベアはさらにx軸正方向に向かうと再び略水平となる。搬送部3の終端(x軸正側の端部)は次の工程に係る装置の近傍に位置している。搬送部3の終端まで搬送された食品Fは、次の工程に係る装置の上に投下される。次の工程に係る装置の例としては、加熱(例えばボイル、グリル、油ちょうなど)、冷却、乾燥、味付け、香り付け、ブレッダー粉付け、カット、包装などを行う装置が挙げられるが、装置の種類については特に限定しない。
【0040】
配管部4は、コンベアの進行方向とは反対の方向に液状被覆材を流動させる、循環機構の一例である。配管部は、例えば、ポンプや配管などを含むものとする。配管部はさらにバッター液を貯留するタンクを備えていてもよい。配管部4の配管は、バッター槽に溜まったバッター液をポンプにより汲み上げ、流路部2の上に設けられた注入部よりバッター液を供給する。
図2の例では、食品の投下位置より、コンベアの進行方向とは反対方向にある位置において、液状被覆材を流路部に注入する第1注入部が設けられている。一方、食品の投下位置より、コンベアの進行方向にある位置において、液状被覆材をコンベアの上方から注ぐ第2注入部が設けられている。
【0041】
循環機構として、ポンプと配管の組み合わせ以外の機構を使うことができる。例えば、流路部の下方や側面に、コンベアの進行方向とは反対の方向に液状被覆材が流れる別の流路を形成してもよい。また、復路のコンベア、水車、スクリューなどの回転機械を使って、液状被覆材をコンベアの進行方向とは反対の方向に流動させてもよい。
【0042】
バッター槽20は、流路部2の下流から流下したバッター液を流路部2の下方で回収する。バッター槽20は配管部4の配管に接続されているため、回収したバッター液を再び流路部2に供給することができる。
【0043】
本発明に係る食品コーティング装置の詳細を説明する前に、従来技術による食品のコーティングにおける課題について説明する
【0044】
図3は、緩衝材がない場合における、コンベアへの食品の投下を示している。
図3では、食品Fがコンベア20cの上に直接投下されたため、下部の形状がゆがんでしまった上に、複数の破片に分かれてしまっている。なお、
図3の例では、メッシュ状のネットベルトが使われたネットコンベア(メッシュコンベア)が示されているが、コンベアの種類は特に限定しない。開口部のないベルトコンベアを使ってもよいし、金属製や樹脂製のメッシュコンベアを使ってもよいし、ローラーコンベアを使ってもよい。また、ゴム、樹脂、織物、フェルト、テフロンなどで形成されたコンベアを使ってもよい。コンベアはメッシュ状であってもよいし、メッシュ状でなくてもよい。ただし、液状被覆材を食品Fの下面に付着させやすくするために、メッシュ状のネットコンベア(メッシュコンベア)を使うことが好ましい。
【0045】
食品コーティング工程で取り扱われる食品は、充分な弾力や硬さを有するものであるとは限らない。したがって、前の工程で所定の大きさおよび形状に加工された食品をコンベア上に投下すると、食品の破損、変形、変質や痛みが発生し、食材のロス、品質の低下、不良品の除去にかかる工数の増大などにつながってしまう。
【0046】
一方、
図4はコンベア上に直接食品を投下した場合における食品の変形や破損の例を示している。
図4では、コンベアの上方(y軸正側)に配置された食品投下装置から食品が投下されている。コンベアは、x軸正方向に移動しているため、コンベア上に投下された食品もx軸正方向に移動する。投下された食品は順次、次の工程に搬送されるが、
図4の例では、投下によって食品の潰れ、変形や崩れが起こっている。また、ネットコンベアを、用いた場合には食品のネットへの食い込みも発生する。このような場合、食品の歩止まりが悪く、商品として使うことができない食品を手作業などによって除去する必要がある。
【0047】
近年は、食生活の多様化、柔らかく食感の良い食品に対する需要の高まりなどもあり、例えば、含水量の多い食品、脆く崩れやすい食品、多孔質な食品、ゲル状の食品などを加工する技術が必要となっている。このため、コーティング工程では多様な物性に係る食品の形状、大きさ、品質を維持しつつ、所望の液状被覆材でコーティングを行うことが求められている。
【0048】
次に、複数の図を参照しながら本発明に係る食品コーティング装置に係る流路部の詳細について説明する。本発明に係る食品コーティング装置は、柔らかく変形しやすい食品や、崩れやすい食品などを変形させたり破損させたりすることなく、コーティングすることができる。
【0049】
図5は、食品コーティング装置に係る流路部の斜視図である。
図6は、食品コーティング装置に係る流路部の平面図である。
図5および
図6では、白抜きの矢印が流路部2におけるバッター液の流れの方向を示している。一方、細い矢印がコンベア22の動きの方向を示している。
【0050】
流路部2は、底板23と、側壁23aと、側壁23bとを含む構造物である。底板23の上面にはコンベア22が配設されている。そして、底板23の外周に沿って側壁23a、23bが設けられている。側壁23aは、底板23の長さ(x軸)方向の両側面に形成されている。側壁23bは、流路部2の上流にあたる底板23の幅方向の側面に形成されている。一方、流路部2の下流にあたる底板23の幅方向の縁部61には側壁が設けられておらず、開放されている。流路部2の側壁23a、23bと縁部61に囲まれた範囲はバッター液(液状被覆材)の流路となる。
【0051】
図5および
図6の例では、底板23の開放された縁部61が、第1注入部にあたる第1ノズル26と、第2注入部にあたる注入容器27から流路部2に注がれたバッター液の流れ出すことができる唯一の出口となる。駆動部は、コンベア22をx軸正方向、すなわち流路部2の上流から開放された下流(縁部61)に向かう方向に駆動させる。コンベア22の表面に接している流路部2内のバッター液(液状被覆材)は、粘性によりコンベア22の移動方向と略同一方向に、すなわち流路部2の上流(x軸負側)から下流(縁部61)に向かって流れを形成する。
【0052】
流路部2におけるバッター液の流れの速さや、コンベア22からみたバッター液の上面の高さ(液面の高さ)は、第1ノズル26(第1注入部)および注入容器27(第2注入部)から流路部2に注がれるバッター液の量とコンベア22の移動速度によって調節することができる。流路部2の底板23(本実施形態に係る流路部)は、略水平、すなわち
図5のz-x平面と一致するように配置されている。これにより、流路部2には均一かつ流速の遅い、穏やかな流れを形成することができ、バッター液の流れによる柔らかい食品に対する浸食、整列乱れや変形を最小限に抑えることができる。
【0053】
流路部2の縁部61の近傍には、両側の側壁23aから流路部2の内側に延出した押さえ部62が設けられている。押さえ部62と底板23の間では、コンベア22が挟み込まれた状態で移動する。押さえ部62により、コンベア22の途中の区間から上り傾斜をつけることができる。ここで、上り傾斜とは、コンベア22がx軸正方向に進むのにつれて、y軸正方向の高さの値が大きくなることをいう。コンベアのうち、上り傾斜をつけられた部分の始点が流路部2の下流(底板23の縁部61)にある場合を例として説明するが、上り傾斜の始点は底板23の縁部61より、コンベアの進行方向とは反対方向の位置にあってもよい。
【0054】
上述のように、流路部2の下流でバッター液は下方に流れ落ちる。本実施形態では流路部2より流れ落ちたバッター液がバッター槽20により回収されるが、バッター液が流れる先については特に問わない。例えば、流路部2の下流近傍にホースなどを設けてバッター液を回収してもよい。例えば、底板23の縁部61から流下したバッター液は別の流路に流れ込んでもよい。なお、上り傾斜が形成される区間22aの始点を底板23の縁部61より、コンベアの進行方向とは反対方向の位置に設定すると、コンベアによって搬送される食品Fを流れ落ちたバッター液(液状被覆材)の飛沫から離すことができる。
【0055】
コンベアがメッシュ状の穴を有するネットコンベアである場合、流路部2の下流(縁部61)でバッター液はネットコンベアのメッシュ状の穴から流れ落ちることができるし、コンベア22と側壁23aの間の隙間からも流れ落ちることができる。コンベアがメッシュ状の穴を有さないゴムベルトなどである場合、流路部2の下流(縁部61)でバッター液はコンベア22と側壁23aの間の隙間からバッター槽20に流れ落ちる。したがって、コンベア22としてネットコンベアを使った方が、流路部2の下流においてバッター液が流れ落ちやすくなる。
【0056】
コンベアがメッシュ状の穴を有するネットコンベアである場合、区間22aでは、食品Fやコンベアに付着した余剰なバッター液をさらにコンベア22のメッシュ状の穴から下方に落とすことができる。余剰なバッター液を切る効果を高めるため、区間22aにおいてコンベア22に振動を加えてもよい。ふるい落とされたバッター液を回収するため、区間22aの下方にバッター槽20を配置してもよい。
【0057】
なお、必ずコンベアに
図5に示されたような上り傾斜をつける必要はないが、コンベアおよび食品Fに付着した余剰なバッター液を切り、次の工程に不要なバッター液が混入することを防ぐことができるため、流路部でコーティングされた食品Fは、上り傾斜がつけられて搬送されることが好ましい。
【0058】
上述の底板23、側壁23a、23b、押さえ部62、第1注入部、第2注入部は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、チタンなどの金属によって形成することができるが、樹脂、ホーロー、ガラスなどを使ってもよく、材質については特に問わない。
【0059】
以下では
図5、
図6を参照しながら、流路部2におけるそれぞれの構成要素を説明する。
【0060】
第1ノズル26は、流路部2における食品の投下位置より、コンベアの進行方向とは反対方向にある位置において、液状被覆材を流路部に注ぐ、第1注入部の一例である。
図5には、流路部2の幅方向の側壁23bに沿った細長い略矩形状の開口を有するノズルが示されているが、このノズルの形状は第1注入部の一例にしか過ぎず、これとは異なる形状に係るノズルを使ってもよい。
【0061】
第1注入部は、流路部2に液状被覆材を注げればよく、設置される位置については特に問わない。したがって、第1注入部は必ず流路部2の上流付近に設けられていなくてもよい。第1注入部の設置場所が
図5、
図6の例と異なっていてもよい。例えば、
図5、
図6のように、上流の側壁23bに沿って第1注入部を設けるのではなく、長さ方向の側壁23aに第1注入部を設けてもよい。また、第1注入部は複数の角度からのバッター液の注入を組み合わせて行ってもよい。また、第1注入部はひとつではなく、複数設けられていてもよい。ただし、流路部2に複雑な流れが生ずるのを防ぎ、均一な流れを形成するため、第1注入部は食品の投下位置より、コンベアの進行方向とは反対方向にある位置に設けられていることが好ましい。
【0062】
投下位置10aは、食品投下装置10の下方(y軸負側)にあたる。食品投下装置10は、コンベア22が浸漬されているバッター液21(液状被覆材)の上に食品を投下する。食品投下装置10は、食品コーティング装置における投下部の一例である。
図5、
図6の例では投下位置10aでコンベア22の幅方向に5個の食品が投下(配置)されているが、投下される食品の数はこれとは異なっていてもよい。
【0063】
使用する食品投下装置10の種類や構成については特に限定しない。例えば、ロボットハンドによって食品が投下位置10aに配置されてもよいし、食品の成形機や他の搬送装置(例えば、他のコンベアなど)から食品が投下位置10aに落とされてもよい。すなわち、食品を投下位置10aに配置する方法については特に問わない。
【0064】
成形機は、打ち抜き式の成形機であってもよいし、食材を押し出して射出する成形機であってもよいし、食材を圧延する成形機であってもよく、成形の方式については特に問わない。また、成形される食品の大きさと形状についても特に限定しない。成型される食品および食材の例としては、魚肉、食肉、野菜、果物、ご飯類、パン、ケーキ、麺類、コロッケ、ハンバーグ、つくね、和菓子、洋菓子、点心類などがあるが、種類については特に問わない。
【0065】
食品コーティング装置の投下部が成形機である場合、打ち出しや切り落としによる落下によって食品に衝撃が加わることが避けられないため、本発明の食品コーティング装置は、成形機から打ち出された食品をコーティングする工程での使用に好適であるといえる。
【0066】
投下位置10aからx軸正方向側に進んだ位置には、流路部2の幅方向(z軸方向)の線分AA´が示されている。
図7は、線分AA´で流路部2を切断した断面図である。
図7に示されているように、側壁23aと底板23はバッター液(液状被覆材)の流路を形成している。底板23の上にはコンベア22が設けられている。なお、
図7の例では、コンベア22が底板23の上側の面に接しているが、コンベア22と底板23の間に隙間があってもよい。また、コンベア22と底板23の間にゴム、ポリエチレン、気泡緩衝材などのクッション性を有する材料が配置されていてもよい。
【0067】
コンベア22の上には食品Fが配置されている。
図7の例では、バッター液21の液面の高さh
lがコンベア22からみた食品Fの上端の高さh
fより低いため、食品Fの一部がバッター液21に浸漬された状態となっている。また、食品Fの底面はコンベア22に接しており、バッター液21中を浮動していない。
【0068】
そこで、バッター液21は、投下位置10aにおいて、食品Fが投下されたときに緩衝材となり、食品の変形や破損を防止する。また、食品Fは直接コンベア22上に投下されないため、食品Fのコンベア22への付着を抑制し、食品Fをコンベア22から剥離しやすくなる。また、食品Fのコンベアとの衝突による型崩れを軽減することができる。
【0069】
図8は、バッター液がある場合における、流路部への食品の投下を示している。
図3の場合とは異なり、緩衝材となるバッター液21(液状被覆材)があるため、食品Fの形の変形や破損が防止されている。なお、
図8では、食品Fの底面がコンベア20cに接触していない。
図8の例のように、食品コーティング装置は食品Fを流動する液状被覆材に支持された状態で搬送してもよい。
【0070】
【0071】
流路部2の投下位置10aよりコンベアの進行方向にある位置の上方(y軸正方向)には、第2注入部である注入容器27が設けられている。注入容器27は、注入容器27のさらに上方(y軸正方向)から注がれたバッター液を一度受け止める。そして、注入容器27から溢れたバッター液は流路部2の幅方向(z軸方向)に設けられた開放部27a、27bから流路部2に降下する。これにより、バッター液は流路部2の幅方向において、滝状に流れ落ちるため、コンベア22の幅方向に配置された複数の食品Fの上部をバッター液21(液状被覆材)でコーティングすることができる。
【0072】
x軸正方向(コンベアの進行方向)に搬送される食品Fには開放部27a(第1開放部)から流下したバッター液が上から注がれる。食品Fは、さらにx軸正方向に進んだ位置で再び開放部27b(第2開放部)から流下したバッター液が上から注がれる。このため、食品Fに凹凸などがあっても、食品Fの表面をバッター液で漏れなくコーティングすることができる。
【0073】
なお、第2注入部でバッター液が幅方向に注がれる回数は、
図5、
図6の例とは異なる回数であってもよい。第2注入部でバッター液が幅方向に注がれる回数や、第2注入部におけるバッター液の注入量は食品Fのコーティングされていない部分の面積の大きさや、形状の複雑性に基づいて決めることができる。すなわち、第2注入部では、バッター液(液状被覆材)を搬送されている食品に注ぐことができればよく、第2注入部の構造、形状については特に問わない。例えば、
図2の例のように注入容器を介さず、直接バッター液(液状被覆材)が流路部に注がれていてもよい。また、第2注入部の数はひとつではなく、複数個であってもよい。特に、液状被覆材の粘度が低く、食品Fからはじかれやすい場合や、コンベアの移動速度が大きい場合には、複数の第2注入部を使うことによって、食品Fの表面を漏れなくコーティングすることができる。
【0074】
第2注入部では、搬送されている食品Fに対して直接ノズルからバッター液を注ぐのではなく、一旦注入容器27に蓄えられたバッター液を2箇所から分散して注ぐため、食品Fにかかるバッター液の水圧や衝撃を和らげることができる。これにより、柔らかい食品や脆い食品の変形や破損を防止することができる。
【0075】
なお、
図5、
図6における第2注入部(注入容器27)の構造は一例であり、これとは異なる構造に係るものを用いてもよい。例えば、シャワー状にバッター液を食品Fにかけるノズルを使ってもよいし、スプレー状にバッター液を食品Fに向けて噴射するノズルを使ってもよい。また、第2注入部において食品Fに対してバッター液をかける角度についても特に限定しない。例えば、食品Fの側面からバッター液をかけてもよいし、食品Fの斜め上方向からバッター液をかけてもよい。
【0076】
なお、食品Fの表面全体にバッター液を付着させる必要がない場合や、流路部2のバッター液21のみで食品Fの表面全体を浸漬することが可能な場合には、第2注入部を省略してもよい。
【0077】
図5、
図6の例では、流路部2の底面上側に配設されたコンベアが移動する方向が略一定となっているが、コンベアが移動する方向は必ず略一定でなくてもよい。例えば、カーブコンベアを使って、方向転換をしながら食品Fを搬送してもよい。また、直進する区間とカーブする区間が混在するコンベアを使ってもよい。
【0078】
なお、
図5および
図6に示された流路部2は、z軸方向の幅が略一定となっている。しかし、流路部2の幅は必ず略一定でなくてもよい。例えば、x軸正方向(コンベアの進行方向)に向かって幅が狭くなる流路部を使ってもよい。これにより、x軸正方向(コンベアの進行方向)に進むのにつれて、バッター液(液状被覆材)が深くなる流路を形成することができる。また、x軸正方向(コンベアの進行方向)に向かって幅が広くなる流路部を使ってもよい。この場合、x軸正方向(コンベアの進行方向)に進むのにつれて、バッター液(液状被覆材)が浅くなる流路を形成することができる。
【0079】
次に、バッター液21の液面の高さについて説明する。ここで、バッター液21の液面の高さは、コンベア22からみた液状被覆材の上面の高さの一例である。
図9は、バッター液の液面を食品Fより高く調整した例を示している。
図10は、バッター液の液面を食品より低く調整した例を示している。
図9、
図10はいずれも流路部2をx-y面で切断した断面図である。いずれの図においても、バッター液21の流動方向とコンベア22の進行方向はx軸正方向となっている。
【0080】
図9では、バッター液21の液面の高さh
lがコンベア22からみた食品Fの上端の高さh
fより高くなっている。食品Fのバッター液に対する比重が大きい場合、食品70のように食品Fの全体をバッター液に浸漬することができる。このような場合、食品Fに対して上からバッター液をかける必要がないため、第2注入部を省略することができる。ただし、常に食品Fのバッター液に対する比重が大きいとは限らない。
【0081】
食品Fのバッター液に対する比重が小さい場合、
図9の食品71のように食品Fはバッター液21の中を浮く。流路部2におけるバッター液21の流れが均一でない場合、所望の速度で食品Fを搬送することができなくなる場合がある。
【0082】
また、バッター液の均一な流れがないと、食品Fの進行方向が定まらなくなってしまい、側壁23aや他の食品に衝突するおそれが生ずる。浮動によって食品Fが変形したり、破損したりする可能性がある。また、食品71が側壁23aと付着し、流路部2を閉塞することもある。浮動する食品どうしが癒着し、分離が困難となるおそれもある。このような状況ではコンベア22の幅方向に複数の食品Fを配置し、食品コーティング工程の効率を高めるのは難しい。
【0083】
ただし、食品Fがバッター液の中を浮いていても、バッター液の均一な流れがあり、食品Fが流動するバッター液に支持された状態で搬送される場合には、整列乱れが抑制され、上述の衝突、変形、破損、付着などの発生を回避することができる。
【0084】
食品の品質確保と、食品コーティング工程の効率化の観点からは、食品Fがバッター液(液状被覆材)の中を浮かないことが好ましい。そこで、本発明に係る食品コーティング装置では、コーティングされる食品Fの高さh
f、食品Fの密度、食品Fの体積、バッター液の密度などに基づいて、バッター液21(液状被覆材)の液面の高さh
lを制御する。
図9の例のように、流路部2の側壁23aに液面センサ29(レベルセンサ)を設置し、バッター液21(液状被覆材)の液面の高さh
lを計測できるようにしてもよい。使用する液面センサの方式については特に問わない。また、作業員が目視で液面の高さを確認してもよい。
【0085】
図10では、バッター液21の液面の高さh
lがコンベア22からみた食品Fの上端の高さh
fより低くなっている。食品Fに対し、y軸正方向に働く浮力Bについて下記の式(1)が成立するのであれば食品Fがバッター液21の上を浮動することがなくなる。
【数1】
ここで、ρ
bはバッター液の密度、ρ
fは食品Fの密度、V
fbは食品Fのうち、バッター液の液面h
lより低い部分の体積、V
fは食品全体の体積、gは重力加速度である。ρ
fV
fgは食品Fにかかるy軸負方向の重力に相当する。
図10の場合、h
f>h
lの関係によりV
f>V
fbとなるため、
図9の場合に比べて食品Fが浮きにくくなっている。食品コーティング装置1の制御部は、式(1)が満たされるように、バッター液の液面の高さh
lを制御すればよい。
【0086】
食品Fのうち、バッター液の液面hlより低い部分の体積Vfbは、例えば食品全体の体積Vfとhl/hfの積を求めることによって推定することができる。この計算方法は一例であり、その他の方法を使ってVfbの値を求めてもよい。例えば、hlとVfbの関係を格納したテーブルを使ってもよいし、hlを関数に入力し、Vfbの値を計算してもよい。
【0087】
すなわち、コンベア22からみたバッター液21(液状被覆材)の液面(上面)の高さを、バッター液21(液状被覆材)から食品Fの受ける浮力が食品Fの底面をコンベア22から浮上させる浮力より小さくなるように制御することができる。また、hf>hlの関係が満たされるよう、コンベア22からみたバッター液21(液状被覆材)の上面の高さが、コンベア22からみた食品Fの上端の高さより低くなるように制御を行ってもよいし、さらに重ねて式(1)の条件が満たされるように制御を行ってもよい。
【0088】
式(1)の条件が満たされるよう、少なくとも流路部2の側壁23aに設けられたレベルセンサ29の計測値、バッター液21(液状被覆材)の密度、食品Fの密度、食品Fの体積、食品Fの高さのいずれかに基づき、流路部2へ時間当たりに注入されるバッター液21(液状被覆材)の量またはコンベア22の移動速度を変更し、コンベア22からみたバッター液21(液状被覆材)の液面(上面)の高さを制御することができる。バッター液21(液状被覆材)の量は、体積によって指定されてもよいし、質量によって指定されてもよい。
【0089】
図10の食品72、73については上述の式(1)が成立しているため、バッター液21の上を浮動せず、底面がコンベア22についた状態で、x軸正方向に搬送されている。h
f>h
lであるため、食品72の上部はバッター液によって浸漬されていない状態にある。しかし、コンベア22の進行方向にある食品73は注入容器27により、上方からバッター液を注がれているため、上部を含む表面全体がバッター液でコーティングされる。
【0090】
図11は、食品コーティング装置による食品の配置例を示している。
図10の例に示したように、食品Fの浮動を防止することができるのであれば、
図11の例のように、高速な食品投下装置10を使い、流路部2の幅方向に複数の食品Fを配置することができる。食品投下装置10から投下された食品Fに対してバッター液は緩衝剤として働くため、
図4のような食品Fの変形や破損が起こりにくくなっている。本発明に係る食品コーティング装置を使うことにより、コンベア上に従来に比べて高い密度で食品を配置することができる。
【0091】
図12は、本実施形態に係る食品コーティング工程の構成例を示している。
図12は、食品投下装置10と、食品コーティング装置1と、次の工程に係る装置50の断面図となっている。このうち、食品投下装置10は食品コーティング工程の前の工程に係る装置の一例である。装置50は食品コーティング工程の後の工程を行う装置である。
【0092】
図12には、食品コーティング装置に係る構成の一例が示されている。
図12の食品コーティング装置1の下部には車輪5が設けられているため、装置を移動することができる。これにより、生産ラインの配置変更、生産工程の変更などに柔軟に対応することができる。なお、食品コーティング装置1は必ず車輪などの移動手段を備えていなくてもよい。
【0093】
図12の食品コーティング装置1では、流路部2の下側全体にわたって大型のバッター槽20が設けられている。これにより、流路部2の下流だけでなく、底板23、側壁23a、23bなどからこぼれるバッター液のほとんどを回収することができ、装置の設置環境を清潔に保つことができる。
図12のバッター槽20の構造は一例であり、これとは異なる構造に係るバッター槽を用いてもよい。なお1の構成例のようにバッター槽に貯えられた液状被覆材を使って、
図12のバッター槽20の構造は一例であり、これとは異なる構造に係るバッター槽を用いてもよい。
【0094】
【0095】
バッター槽20に貯められたバッター液は、開口28より配管30を経てタンク31に流れ落ちる。作業員はタンク31を使ってバッター液の入れ替えや補充作業を行うことができる。
【0096】
タンク31は、配管31aを介してポンプ32と接続されている。ポンプ32は、タンク31からバッター液を汲み上げる機能を有する。ポンプ32としては電動式のポンプを使うことができるが、使用する動力の種類については特に限定しない。ポンプ32は、ターボ型ポンプ、容積式ポンプ、特殊型ポンプのいずれであってもよく、構造と種類については特に問わない。
【0097】
ポンプ32が汲み上げたバッター液は配管33、34により、食品コーティング装置1の上部に運ばれる。配管34は、第1ノズル26(第1注入部)と接続されており、流路部2にバッター液を供給する。配管33は、第2ノズル33aに接続されており、注入容器27(第2注入部)の上方よりバッター液を供給する。
【0098】
図12の配管部は一例であり、これとは異なる構造の配管部を使ってバッター液の供給を行ってもよい。
図12の例では、配管部によってバッター液が循環しているが、バッター液を循環させず、流路部2を流れたバッター液を廃棄し、第1注入部および第2注入部で新しいバッター液を供給してもよい。また、一部のバッター液を廃棄し、残りのバッター液を循環させ、減った分のバッター液を新しいバッター液で補充する構成の配管部を用いてもよい。
【0099】
【0100】
コンベア22は、電動機24の動力によって駆動されている。電動機24の動力はベルト25によって、伝達されている。電動機24と、ベルト25はコンベア22を駆動する駆動部の一例である。コンベア22は、流路部2の底に沿ってx軸正方向に進んだ後、途中で上り傾斜をつけられて移動する。コンベア22に上り傾斜をつけられる区間は上述の区間22aに相当する。そして、コンベア22は端部22bに達したら、再び略水平となる。そして、コンベアは終端22cで進行方向をx軸正方向からx軸負方向に転換する。終端22cに達した食品Fは、下方に設置されている次の工程に係る装置50に投下される。本発明に係る食品コーティング装置のコンベアは、複数の食品Fを整列した状態で次の工程に投入するため、複数の食品Fどうしが癒着するリスクを軽減することができる。
【0101】
装置50は、食品コーティング装置1によってコーティングが行われた食品Fに対して、調理、加工処理または包装処理などを行う装置である。装置50は、食品Fに対して加熱処理、冷却処理、乾燥処理、別のコーティング処理、ブレッダー粉付け、味付け、香り付けなどを行う調理装置であってもよい。加熱処理の例としては、グリル、ボイル、油ちょうなどが挙げられるが、どの種類の加熱処理であってもよい。また、装置50は食品Fのカット処理などを行う加工装置であってもよい。また、装置50は食品Fを容器に収納したり、包装を行ったりする装置であってもよい。すなわち、装置50で行われる処理については特に問わない。
【0102】
図12の食品コーティング装置1は、制御部40を備えている。制御部40は、食品コーティング装置1の操作手段を提供し、状態表示などを行う。また、制御部40は、コンベア22の移動速度の制御、バッター液に係る液面の高さの制御、バッター液(液状被覆材)の流量の制御などの制御処理を行う。側壁23aに設置された液面センサ29は、制御部40と電気的に接続されているものとする。したがって、制御部40は液面センサ29の計測値に基づき制御処理を実行することができる。制御部40には、操作手段としてボタン、スイッチ、タッチパネル、レバーなどが設けられていてもよい。また、状態表示のためのLED、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイなどが設けられていてもよい。状態表示や制御処理は、CPU(中央処理装置)で動作するプログラム、FPGA、ASICなどの半導体回路またはこれらの組み合わせによって実現することができる。
【0103】
次に、流路部2におけるバッター液の液面h
lの制御処理について説明する。
図13は、バッター液の液面の高さを制御する処理の例を示している。
図13の処理は、例えば制御部40によって実行される。以下では
図13のフローチャートを参照しながら、処理について説明する。バッター液の液面の高さは、液状被覆材の上面の高さの一例である。
【0104】
食品コーティング装置1が立ち上がったら、ポンプによるバッター液の汲み上げと、コンベア22の移動を開始する。バッター液の液面の高さが設定値hlと等しくなるよう、流路部2におけるバッター液の流量と、コンベア22の速度を調整する(ステップS101)。液面の高さに係る設定値hlは上述の式(1)を満たすよう、制御部40で設定することができる。バッター液の流量は、例えばポンプ32の吐出量、コンベア22の移動速度を調節することによって変更することができる。流路部2におけるバッター液の流速とコンベア22の速度の差が小さい方が、均一な流れが形成され、食品Fの配置乱れが軽減されるため、流路部2におけるバッター液の流速はコンベアの速度に近い値となることが望ましい。
【0105】
なお、第1の構成例を用いた場合には、バッター槽に貯えられたバッター液の量を変更することによってバッター液の液面(液状被覆材の上面)の高さhlを調整してもよい。また、流路部が可動に支持されているのであれば、流路部のバッター槽に対する相対的な高さを変更し、hlを調整してもよい。
【0106】
次に、食品投下装置は食品Fの投下を開始する(ステップS102)。食品Fの配置位置や配置方法については
図5および
図6に係る説明で述べた通りである。食品コーティング装置1の制御部40が食品投下装置10の稼働開始指令を送信してもよいし、その他の装置が送信してもよい。
【0107】
食品Fの投下が始まったら、制御部40は最新の液面の設定値h´lを取得する(ステップS103)。ユーザが液面の設定値を変更した場合、当該変更をステップS103で検出することができる。そして、現在の液面の高さhcが最新の液面の設定値h´lと等しいか否かを確認する(ステップS104)。制御部40は現在の液面の高さhcを液面センサ29から取得することができる。ステップS104における判定結果によって処理が分岐する。
【0108】
ステップS104でhc=h´lであることが確認されたら、一定期間の経過後、再びステップS103を実行する。ここで、一定期間として例えば30秒、1分などを使うことができるが、これとは異なる長さを使ってもよい。ステップS104の判定でhc≠h´lであった場合、次のステップS105に進む。
【0109】
ステップS105では現在の液面の高さhcが最新の液面の設定値h´lより高くなっているか否かを確認する。現在の液面の高さhcが最新の液面の設定値h´lより高い場合、流路部におけるバッター液の液面を下げる処理を実行する(ステップS106)。第2の構成例の場合、制御部40は、ポンプ32の吐出量を減らす制御、コンベアの移動速度を大きくする制御の少なくともいずれかを実行すればよい。第1の構成例が用いられた場合には、バッター槽に貯えられたバッター液の量を減らす制御、流路部のバッター槽に対する相対的な高さを大きくする制御の少なくともいずれかを実行する。
【0110】
一方、現在の液面の高さhcが最新の液面の設定値h´lより低い場合、流路部におけるバッター液の液面を上げる処理を実行する(ステップS107)。第2の構成例の場合、制御部40は、ポンプ32の吐出量を増やす制御、コンベア22の移動速度を小さくする制御の少なくともいずれかを実行すればよい。第1の構成例が用いられた場合には、バッター槽に貯えられたバッター液の量を増やす制御、流路部のバッター槽に対する相対的な高さを小さくする制御の少なくともいずれかを実行する。
【0111】
ステップS106またはステップS107の処理が実行されたら、食品の生産ラインが稼働中であるか否かを確認する(ステップS108)。食品ラインの稼働状態は、例えばコンベア22上に投下された食品Fが残存しているか否かを確認することによって判定することができる。食品の生産ラインが稼働中である場合、一定期間の経過後、再びステップS103を実行する。食品の生産ラインの稼働が停止している場合、ポンプ32によるバッター液の汲み上げと、コンベア22の移動を停止する(ステップS109)。作業員が目視で確認をし、手動でコンベア22の停止操作を行ってもよい。
【0112】
なお、
図13ではステップS108の確認処理がフローチャートの後半に実行されていたが、これとは異なるタイミングに実行されていてもよい。例えば、ステップS103~ステップS105のいずれかのタイミングでステップS108の確認処理が実行されてもよい。
【0113】
図13のフローチャートに示した処理を行うことにより、バッター液(液状被覆材)の液面の高さを食品Fが浮動しないように調整することができる。また、コーティングを行う食品の大きさや密度が変更されたら、当該変更に合わせてバッター液(液状被覆材)の液面の高さを変更することができる。
【0114】
(第2の実施形態)
第1の実施形態に係る食品コーティング装置の流路部は略水平であったが、傾斜の付けられた流路部を用いてもよい。第2の実施形態に係る食品コーティング装置では流路部の進行方向に向かって下り傾斜が付けられている。以下では第1の実施形態との差異点を中心に説明する。
【0115】
図14は、第2の実施形態に係る流路部の例を示している。
図14は、流路部2aをx-y平面について切断した断面図となっている。
図14の水平線80は、x軸と平行な線であり、流路部2aの上流の高さを示している。x軸正方向(進行方向)に進むのにつれて流路部2aのy軸方向の高さが低くなっている。したがって、流路部2aには上流から下流に向かって下り傾斜がつけられていることがわかる。
【0116】
図14の例では、流路部2aに水平方向に対し約1度の下り傾斜がつけられている。これにより、粘性が高く流動しにくい液状被覆材を使って食品コーティング工程を行うことができる。なお、この傾斜角度は一例であり、これとは異なる角度の傾斜を流路部2aにつけてもよい。
【0117】
図14の流路部2aには上流から下流に向かって下り傾斜がつけられているが、逆に上流から下流に向かって上り傾斜をつけてもよい。流路部2aにつけられる傾斜については特に問わない。なお、回転機構や昇降機構などを実装することによって、食品コーティング装置における流路部2aの傾斜を調整可能に構成してもよい。これにより、様々な物理的性質を備えた液状被覆材を使って食品をコーティングすることができる。
【0118】
(第3の実施形態)
上述の各実施形態では、流路部内の食品の搬送も、流路部と次の工程までの搬送も一連のコンベアによって実現されていた。ただし、本発明に係る食品コーティング装置では、必ず食品の搬送を一連のコンベアによって行わなくてもよい。
【0119】
図15は、第3の実施形態に係る食品コーティング装置の例を示している。以下では
図15を参照しながら、上述の各実施形態との差異点を中心に説明する。
【0120】
本実施形態に係る食品コーティング装置では、複数のコンベアが含まれている。コンベア22は、食品Fを流路部2のx軸正方向に搬送するが、底板23の縁部61にある流路部2の下流で終端している。そして、コンベア22の終端からx軸正方向に、間隙35を隔てて別のコンベア36の始端が位置している。
【0121】
間隙35のx軸正方向の幅は、食品Fがバッター槽20に落下したり、搬送中の食品Fがコンベア22の終端とコンベア36の始端との間に挟まったりしない大きさに抑えられている。一方、間隙35のx軸正方向の幅は、流路部2の下流(底板23の縁部61)からバッター槽20にバッター液が流れ落ちるのに充分な大きさが確保されているものとする。
【0122】
コンベア22によって流路部2の下流(底板23の縁部61)まで搬送された食品Fは、コンベア36に受け渡され、x軸正方向に搬送される。すなわち、食品Fは流路部内の区間においてはコンベア22によって搬送されるが、流路部を通過した後、次の工程までの区間についてはコンベア36によって搬送される。なお、
図15の例では、コンベア36はx軸正方向に食品Fを搬送しているが、これとは異なる方向に食品Fを搬送してもよい。
【0123】
なお、食品Fを次の工程までの区間において搬送するため、コンベア以外の搬送装置を用いてもよい。例えば、ロボットハンドによって流路部2の下流まで搬送された食品Fを持ち上げ、次の工程に係る装置に食品Fを搬送してもよい。流路部2の下流から次の工程の区間において自動的な搬送を行う装置を設けずに、作業員が食品Fを手作業で移動してもよい。
【0124】
本実施形態のように、流路部2のコンベア22と、次の工程まで食品Fを搬送する装置(例えば、コンベア36など)との間に間隙35を設けることにより、流路部2の下流からバッター液が流れ落ちやすくなる。これにより、次段における搬送装置へのバッター液の付着を軽減することができる。また、
図15の例のような構成を用いることにより、コンベア22としてメッシュを有さないゴムベルトなどを使った場合においても、バッター液の流下量の減少や、次段の搬送装置におけるバッター液の付着が発生しにくくなる。
【0125】
(第4の実施形態)
図5、
図6の第2注入部は、コンベアが流路部2内に配設されている区間においてバッター液(液状被覆材)を注いでいた。ただし、第2注入部は必ずバッター液(液状被覆材)をコンベアの流路部2内の区間に注がなくてもよい。第4の実施形態に係る第2注入部は、コンベアが流路部2の下流よりさらにx軸正方向に進んだ位置において、バッター液(液状被覆材)を注ぐ。
【0126】
図16は、第4の実施形態に係る食品コーティング装置の例を示している。
図16の食品コーティング装置では、注入容器27と、注入容器27にバッター液(液状被覆材)を注ぐ第2ノズル33aを備えた第2注入部が、
図15の例と比べてx軸正方向(コンベアの進行方向)に進んだ位置にある。
【0127】
注入容器27から溢れたバッター液(液状被覆材)は、コンベア36が配設されている下方へ注がれている。コンベア36がメッシュ状のネットコンベアである場合、
図16の例のように、注がれたバッター液(液状被覆材)はコンベア36の網目(開口部)を流れ落ち、コンベア36の下方(y軸負方向)にあるバッター槽20によって回収される。
【0128】
食品Fがコンベア36によって搬送されている場合、食品Fへ注入容器27から溢れたバッター液(液状被覆材)が上方から注がれる。食品Fは投下部からコンベア22がバッター液(液状被覆材)に浸漬されている投下位置に投下されたときに、少なくとも底面を含む表面の一部がバッター液(液状被覆材)でコーティング(被覆)されている。注入容器27から溢れたバッター液(液状被覆材)によって食品Fの表面における残りの領域がバッター液(液状被覆材)でコーティング(被覆)される。このように、コンベアが流路部2の下流よりさらにx軸正方向に進んだ位置において、バッター液(液状被覆材)が食品に注がれても、食品の表面全体のコーティングを行うことができる。
【0129】
なお、
図16の例では、流路部内におけるコンベア(コンベア22)と次の工程までの搬送用のコンベア(コンベア36)が分かれているが、一連のコンベアによる搬送が行われていてもよい。また、
図16における第2注入部は一例にしか過ぎない。したがって、第2注入部の形状や構造が
図16の例と異なっていてもよい。また、第2注入部がコンベアにバッター液(液状被覆材)を注ぐ回数については特に限定しない。
【0130】
本実施形態に係る食品コーティング装置のその他の構成要素の構造や機能は、上述の各実施形態と同様である。
【0131】
上述のように、本発明に係る食品コーティング装置を用いることによって、食品コーティング工程における複数の課題を解決することができる。本発明に係る食品コーティング装置では食品が投下時に受ける衝撃を軽減されるため、食品の変形や破損を防止することができる。コンベアの上にはバッター液が存在しているため、食品の底面がコンベアに付着するリスクも少なくなる。
【0132】
また、本発明に係る食品コーティング装置では、流路部において均一な流れが形成されるよう、バッター液(液状被覆材)の流動が制御されるため、食品の整列乱れに伴う問題の発生を防止する。具体的には、壁面への付着、食品どうしの癒着の発生を防ぎ、食品の高密度な配置を実現する。これにより、効率的な食品のコーティングが行われ、前の工程に高速な食品投下装置を設置することが可能となる。このように、本発明に係る食品コーティング装置を使うことにより、食品の品質低下や食材のロスが減らされ、従来はコーティング工程で扱うのが難しかった水分量が多い食品、気泡を有する食品、内部に空洞を有する食品、結着性が高くなく崩れやすい食品、粘着性の強い食品などのコーティングを行うことができるようになる。
【0133】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲の限定することは意図していない、これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0134】
F、70、71 食品
1 食品コーティング装置
2、2a 流路部
3 搬送部
4 配管部
5 車輪
10 食品投下装置
10a 投下位置
20 バッター槽
20c、22 コンベア
22a 区間
21 バッター液
22b 端部
22c 終端
23 底板
23a、23b 側壁
27a、27b 開放部
24 電動機
25 ベルト
26 第1ノズル
27 注入容器
28 開口
29 液面センサ(レベルセンサ)
30、31a、33、34 配管
31 タンク
32 ポンプ
33a 第2ノズル
40 制御部
50 装置
61 縁部
62 押さえ部
80 水平線