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特許7321099刻み目が付けられたロータシャフトを備えている電気機械と、そのような機械の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】刻み目が付けられたロータシャフトを備えている電気機械と、そのような機械の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/28 20060101AFI20230728BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
H02K1/28 A
H02K15/02 K
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019563543
(86)(22)【出願日】2018-05-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-09
(86)【国際出願番号】 EP2018061154
(87)【国際公開番号】W WO2018210561
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】1754280
(32)【優先日】2017-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(73)【特許権者】
【識別番号】517357424
【氏名又は名称】マヴェル ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】MAVEL S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ファブレ、 ルカ
(72)【発明者】
【氏名】ベットーニ、 ダヴィデ
(72)【発明者】
【氏名】ディブ、 ヴィサム
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-294241(JP,A)
【文献】特開平02-007841(JP,A)
【文献】特開2006-067772(JP,A)
【文献】特開2015-231318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00- 1/16
H02K 1/18- 1/26
H02K 1/28- 1/34
H02K 15/00-15/02
H02K 15/04-15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータとステータとを含む電気機械であって、
前記ロータは、金属板の積層体から形成されたロータ本体を含み、前記ロータ本体は、刻み目が付けられたロータシャフトに固定され前記ロータシャフトには、少なくとも前記ロータ本体と協働するようになっている部分の長さにわたって刻み目が付けられており、前記ロータシャフトの外径部は前記ロータ本体の穴の内径部と干渉し、
前記ロータ本体は、磁束発生部を収容する一連の軸方向凹部を有し、一連の前記軸方向凹部には、前記ロータシャフトの最も近くに配置された凹部が含まれており、一連の前記軸方向凹部の各々が磁束発生部を収容しており、
前記磁束発生部を収容する、前記ロータシャフトの最も近くに配置された各凹部と、刻み目が付けられた前記ロータシャフトの外面との間を、材料のブリッジが延びており、
刻み目が付けられた前記ロータシャフトの外径は、前記ロータ本体の内径よりも、0.015mmから0.3mmまでの間の範囲内の値だけ大きく、
前記刻み目は、前記ロータシャフトの前記外径部上で一列に並ぶ平坦に研磨された尾根部を有し、
前記ロータ本体の内径部は平滑であり、平坦に研磨された前記尾根部と平行な線を形成するように前記穴の前記内径部を変形させる平坦に研磨された前記尾根部と係合することを特徴とする電気機械。
【請求項2】
前記ロータシャフトには、直線的な刻み目が付けられている、請求項1に記載の機械。
【請求項3】
前記金属板は円形であり、石を収容する前記軸方向凹部を有する、請求項1または2に記載の機械。
【請求項4】
前記金属板は、前記ロータ本体を形成するように積層されて一緒に固定されている、請求項1からのいずれか1項に記載の機械。
【請求項5】
可変リラクタンス型の同期機械である、請求項1からのいずれか1項に記載の機械。
【請求項6】
ロータとステータとを含む電気機械の製造方法であって、
a)磁束発生部を収容する軸方向凹部を有するロータ本体を形成するように金属板を積層するステップであって、前記ロータの内径部の最も近くに配置された軸方向凹部が、材料のブリッジによって前記ロータ本体の内径部から離れて位置する磁束発生部を収容するようにする、ステップと、
b)ロータシャフトの、少なくとも前記ロータ本体と協働するようになっている部分の長さにわたって刻み目を付けるステップであって、前記ロータシャフトの外径は、前記ロータ本体の平滑な内部よりも、0.05mmから0.3mmまでの間の範囲内の値だけ大きい、ステップと、
c)前記ロータシャフトを前記平滑な内部に嵌め込むことによって締まり嵌めを形成するステップと、
d)前記ロータシャフトの刻み目が付けられた外表面を研磨して、前記ロータシャフトの外径部である平坦な頂部を形成するステップと、
e)前記平坦な頂部を有する前記ロータシャフトの、研磨された前記外表面を、前記ロータ本体の内径部内に位置させるステップであって、前記ロータシャフトの前記平坦な頂部を、締まり嵌めによって、平滑な表面に係合させ、前記刻み目の平坦な頂部と平行な線を形成するように、前記ロータの穴の内径部を変形させる、ステップと、
f)前記ロータを前記ステータ内に配置するステップと、
を含むことを特徴とする電気機械の製造方法。
【請求項7】
直線的な刻み目を有する外表面を備えた前記ロータシャフトを形成することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記ロータシャフトを、前記ロータ本体とともに締まり嵌めを形成するように圧入することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ロータシャフトを、前記ロータ本体とともに締まり嵌めを形成するように圧入することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの磁石少なくとも1つの凹部内に配置することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの磁石を少なくとも1つの凹部内に配置することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの磁石を少なくとも1つの凹部内に配置することを含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械およびこの電気機械の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、磁石補助型の同期リラクタンス電気機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気機械は、互いに同軸に配置された固定部(ステータ)と回転部(ロータ)とを備えている。
【0003】
ロータは、ロータシャフトに配置された金属板の積層体を備えているロータ本体からなる。これらの金属板は、永久磁石のためのハウジングと、磁石の磁束を半径方向にステータの方へ向けることを可能にする磁束障壁(磁束バリア)を形成する孔部(perforations)と、を含む。
【0004】
このロータは、一般に、ロータを回転させることができる磁界を発生可能な電気コイルを支持するステータ内に収容されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロータシャフトと、ロータ本体を構成する金属板の積層体とを固定するために、ロータシャフトは、従来、(例えばプレスを使用して)負荷がかかった状態でロータ本体内に挿入(嵌合)される。従って、ロータシャフトの外径はロータ本体の内径よりも大きい。高いトルク伝達と高い回転速度とを可能にするために、これらの2つの直径の差は大きくなければならない。しかしながら、このように負荷がかかった組立体と、この直径の差とは、ロータ本体を構成する金属板に大きな機械的応力を与え、これは、特に磁気ブリッジにおいて、これらの金属板の著しい変形を生じさせ、電気機械の挙動を変更させることがある。実際に、磁気ブリッジおよび磁束障壁は変形することがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの課題を解決するために、本発明は、ロータとステータとを含む電気機械であって、ロータはロータ本体とロータシャフトとを組み立てることによって形成されている、電気機械に関する。本発明によると、ロータシャフトには刻み目が付けられ(molete)、ロータシャフトの外径が、ロータ本体の内径よりも、0.05mmから0.3mmまでの間の範囲内の値だけ大きい。さらに、本発明は、このような電気機械の製造方法に関する。ロータシャフトに刻み目を付けること(moletage)で、ロータシャフトとロータ本体との間の良好な密着性をもたらし、これは、ロータシャフトとロータ本体との直径の差を小さくすることを可能にする。このようにして、ロータ本体を形成する金属板内の応力が小さくなる。
【0007】
一実施形態によれば、ロータシャフトには、直線的な刻み目が付けられている。
【0008】
有利には、ロータシャフトに刻み目を付けることによって形成された尾根部が、研磨されている。
【0009】
一実施形態によれば、金属板は、開口および/または磁石を含む実質的に円形の金属板である。
【0010】
好ましくは、金属板は、ロータ本体を形成するように積層されて一緒に固定されている。
【0011】
1つの特徴によれば、電気機械は可変リラクタンス型の同期機械である。
【0012】
一つの実施オプションによれば、ロータ本体の内径部が平滑である。
【0013】
さらに、本発明は、ロータとステータとを含む電気機械の製造方法に関する。この方法では、以下のステップが実行される。
【0014】
a)ロータ本体を形成するように金属板を積層する。
【0015】
b)ロータシャフトの、少なくともロータ本体と協働するようになっている部分の長さにわたって刻み目を付ける。ロータシャフトの外径は、ロータ本体の内径よりも、0.05mmから0.3mmまでの間の範囲内の値だけ大きい。
【0016】
c)ロータシャフトをロータ本体内に嵌め込むことによってロータを形成する。
【0017】
d)ロータをステータ内に配置する。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、ロータシャフトには、直線的な刻み目が付けられる。
【0019】
有利には、ロータシャフトの刻み目が付けられた表面が研磨される。
【0020】
好ましくは、ロータシャフトを、プレスを用いてロータ本体内に嵌め込むことができる。
【0021】
さらに、前記方法は、少なくとも1つの磁石を金属板の少なくとも1つに挿入する準備ステップを含むことができる。
【0022】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照しながら、非限定的な例として提示する以下の説明を読むことによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態によるロータシャフトを示す図である。
図2】本発明の一実施形態による、刻み目が付けられたロータシャフトの一部を示す図である。
図3】本発明の一実施形態による、刻み目が付けられて研磨されたロータシャフトの一部を示す図である。
図4】本発明の一実施形態によるロータ本体の一部を示す図である。
図5】本発明の一実施形態によるロータシャフトとロータ本体との組立体の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、ロータとステータとを含む電気機械に関する。ロータは、ロータ本体からなり、ロータ本体自体は、金属板の積層体(金属シートの積み重ね)から構成されている。ロータは、ロータ本体に取り付けられてロータ本体に固定されたロータシャフトも備えており、ロータシャフトは、ロータ本体の中央穴に挿入されている。
【0025】
本発明によると、ロータシャフトは、少なくともロータ本体と協働するようになっている部分の長さにわたって、刻み目が付けられている。刻み目を付けることは、表面上に線を形成する作業である。刻み目をつけることで、部品の密着性を向上させることができる。刻み目をつけることは、ロータシャフトと接触する刻み目付け(ローレット)工具を用いて、あるいは、2つのローラの間または2つのラックの間で拘束された状態で刻み目を付けながら転がすことによって実現できる。さらに、ロータシャフトの外径は、ロータ本体の内径よりも、0.05mmから0.3mmまでの間の範囲、好ましくは0.1mmから0.15mmまでの間の範囲の値だけ大きい。このロータの構造により、高速で大きなトルクを伝達するように、ロータシャフトのロータ本体への最適な固定がもたらされる。刻み目をつけることによって得られる密着性の改善と、直径の差を小さくすることとによって、ロータ本体を構成する金属板内の機械的応力が小さくなる。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、ロータシャフトに設けられる刻み目は、直線的な刻み目であってよい。直線的な刻み目は、シャフトの軸方向にのみ延びる線を含む刻み目である。したがって、ロータシャフトとロータ本体との間の密着力を最適にし、さらにトルク伝達を最適にすることができる。しかしながら、他の線、例えば傾いた線または交差する線をロータシャフトに形成することもできる。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、刻み目付けの深さ、すなわち刻み目の溝部と尾根部との間の高さの差は、0.1mmから0.2mmまでの間の範囲であり、実質的に0.15mmであってよい。この数値範囲により、ロータ本体を形成する金属板の変形を制限しながら、密着性を最適化することができる。
【0028】
ロータ本体とロータシャフトの圧力の干渉を制御するために、刻み目付けによって形成された尾根部(頂部)を研磨することができる。研磨後に尾根部は平坦な頂部を有する。研磨は、トルクの伝達に適した寸法を提供する非常に厳しい公差を満たすことを可能にする。
【0029】
本発明の一実施例によると、ロータ本体の内径部は、ロータシャフトを挿入する前に平滑であってよく、換言すれば、ロータ本体の内径部には刻み目が付けられていない。実際に、ロータシャフトの刻み目とロータ本体の平滑な穴(l’alesage)とが協働することで、必要なトルクの伝達のために十分な密着性が得られる。しかしながら、いったんロータシャフトがロータ本体内に固定されると、ロータシャフトの刻み目と、直径の差とが、ロータシャフトの刻み目の線に平行な線を形成することによって、ロータ本体の穴の変形を生じさせる。
【0030】
一つの実施オプションとして、ロータ本体を形成する金属板は、開口(orifices)および/または永久磁石を含む実質的に円形の金属板であってよい。したがって、これらの金属板は、永久磁石のためのハウジングと、磁石の磁束を半径方向にステータの方へ向けることを可能にする磁束障壁を形成するための孔部とを備えている。ステータは、従来、磁束を発生させる少なくとも1つのコイルを含む。これらの磁束はロータの回転を発生させる。
【0031】
本発明の一実施例によると、周知のように、ロータ本体を形成する金属板は、接着やプレス等の公知の任意の手段によって穴と凹部とを整合させることで、1つに組み立てることができる。
【0032】
本発明の1つの特徴によると、ロータシャフトは鋼で作ることができる。
【0033】
有利には、電気機械は、可変リラクタンス同期型であってよい。
【0034】
図1は、非限定的な例として、本発明の一実施形態によるロータシャフト1を概略的に示している。ロータシャフト1は、好ましくはシャフトの構成材料の変形によって形成された刻み目2を備えている。図1の例では、刻み目の線がロータシャフトの軸方向に平行である(直線的な刻み目)。従来、ロータシャフトは、その端部3に、トルクの伝達や案内部材の設置等のいくつかの機能を果たす手段を備えている。
【0035】
図2は、非限定的な例として、直線的な刻み目2を含むロータシャフト1の一部を概略的に示している。図2はロータシャフト1の断面図である。
【0036】
図3は、非限定的な例として、研磨された刻み目2’を含むロータシャフト1の一部を概略的に示している。図3はロータシャフト1の断面図である。この図に示されたロータシャフト1は、刻み目の研磨作業の後の、図2のロータシャフト1に対応し、刻み目を付ける際に形成された尾根部は、平坦な頂部を有するように研磨されている。この図は、ロータシャフト1の外径であって刻み目2’の尾根部の直径に対応する直径D1も示している。
【0037】
図4は、非限定的な例として、図2および図3に示されているロータシャフト1と協働するようになっているロータ本体4の一部を概略的に示している。図4は、ロータ本体の断面図である。この図は、ロータ本体4の内径である直径D4も示している。ロータ本体の穴は平滑である(すなわち、刻み目が付けられていない)。本発明によれば、密着性およびトルク伝達を実現するために、直径D1は直径D4よりも大きい。さらに、直径D1とD4との間の差は、0.05mmから0.3mmまでの間の範囲である。
【0038】
図5は、非限定的な例として、図3のロータシャフト1と図4のロータ本体4との組立体を概略的に示している。図5は、ロータ本体およびロータシャフトの断面図である。直径D1は直径D4よりも大きく、刻み目の存在により、ロータ本体4は内径部に局所的な変形Defが生じている。
【0039】
図6および図7は、非限定的な例として、ステータ(図示せず)とロータ10とを備えている回転電気機械を概略的に示している。図6は(図7に示す)B-B軸に沿う断面図であり、図7は(図6に示す)A-A軸に沿う断面図である。
【0040】
図6に示すように、このロータは、好ましくは磁性を有する、刻み目の付いたシャフト1(刻み目は図示せず)を含み、シャフト1には、複数の磁束発生部16を支持する、同様な面を有する強磁性金属板14の積層体が配置されている。
【0041】
図7に関連して、円形の金属板14には、ロータシャフト1が貫通している中央穴18と、金属板14を貫通する複数の軸方向凹部とが設けられている。
【0042】
周知のように、金属板は、接着やプレス等の公知の任意の手段を用いて、穴と凹部とを整合させることによって1つに組み立てられている。
【0043】
このようにして組み立てられた金属板は、中心穴18を通るシャフト1を支持するロータ10の本体4を形成する。
【0044】
この構成は、以下により詳細に説明するように、特に可変リラクタンス電気機械に適用される。
【0045】
この構成では、本体は、磁束発生部を収容する第1系列の軸方向凹部と、磁束障壁の形成を可能にする他の系列の軸方向凹部とを備えている。
【0046】
第1系列の凹部22は、ここでは(非限定的な例として)四角形、この場合は長方形の形状を有する。これらの凹部22は、磁束発生部、ここでは、同様に長方形であって本体の長さと実質的に等しい長さを有するバーの形態の永久磁石24を受け入れる。これらの凹部は、以下の説明では「ハウジング」と呼ばれる。
【0047】
これらのハウジング22は、半径方向に上下に配置され、穴18の中心Oから互いに距離を置いて配置されている。
【0048】
図7にさらに見られるように、これらの長方形のハウジング22は、中心Oを通って実質的に直交するX-X’軸およびY-Y’軸に沿って分布される。
【0049】
図7の例では、各半軸(O-X、O-X’;O-Y、O-Y’)は、3つの軸方向ハウジング22を保持し、ハウジング22の長さの大きい側は半軸に対して垂直であり、それらの側面の寸法は、中心Oから金属板の積層体の外周に向かって小さくなる。同様に、これらのハウジングの高さは、中心Oからこの外周に向かって小さくなる。
【0050】
穴18に最も近いハウジング22には、この穴を有する材料のブリッジ26が残っており、材料のブリッジ28が各ハウジングの間に残っている。
【0051】
穴18から最も遠いハウジング22は、本体の周縁部から距離を置いて配置されている。
【0052】
他の系列の凹部は、実質的に一定の高さと傾いた半径方向とを有する孔部30からなり、孔部は、これらのハウジングから始まり、金属板の縁部の近傍まで延びている。
【0053】
これらの孔部は、ハウジング22の側縁部32から始まり、前述した近傍に到達するように、ハウジング22に平行な線に対して角度をなして上昇している。
【0054】
図6に示すように、傾いた孔部は、ハウジングに対して対称に配置されている。より正確には、一系列の3つの傾いた孔部が半軸の一方の側に設けられ、他の系列の3つの傾いた孔部がこの半軸の他方の側に設けられている。
【0055】
このようにして、ハウジング22によって形成された平坦な底部と、孔部30によって形成されたV字形の傾いた脚部とを有する、実質的にV字形で底部が平坦な幾何形状が、その都度形成されている。このようにして、穴から本体の外周に向かって小さくなる高さおよび幅寸法を有し、互いに距離をおいて重ね合わされたV字形状が、各半軸上に設けられている。
【0056】
従って、材料のブリッジ26,28の他に、各々がV字形である傾いた孔部同士の間に中実部分34が残っており、一系列の3つのV字形の孔部のうち、穴に最も近い孔部と、隣接する系列のV字形の孔部のうち、穴に最も近い孔部との間に、中実部分36が残っている。
【0057】
このようにして、孔部によって形成された磁束障壁46が生じている。そして、磁石からの磁束は、材料のブリッジおよび中実部分を通過するしかない。
【0058】
さらに、本発明は、電気機械の製造方法に関する。電気機械は、ロータとステータとを備えている。本発明による方法は、以下のステップを含む。
【0059】
a)ロータ本体を形成するように金属板を積層し、好ましくは固定する。
【0060】
b)ロータシャフトに、少なくともロータ本体と協働するようになっている部分の長さにわたって刻み目をつける。ロータシャフトの外径は、ロータ本体の内径よりも、0.05mmから0.3mmまでの間の範囲の値だけ大きい。
【0061】
c)ロータシャフトをロータ本体内に嵌め込むことによって、ロータを形成する。
【0062】
d)ロータをステータ内に配置する。
【0063】
ステップa)およびb)は、この順序で、同時に、または逆の順序で実行することができる。
【0064】
この製造方法は、前述した実施形態のうちの1つに係る電気機械を製造するように計画することができる。
【0065】
この方法のステップa)に使用される金属板は、図7に示されている金属板と同じであってよい。この金属板は、特に、永久磁石を受け入れるようにすることができる。その場合、この方法は、(金属板を積層する前に)少なくとも1つの永久磁石を金属板の少なくとも1つに挿入する準備ステップを含むことができる。
【0066】
ステップb)の後に得られるロータシャフトは、図1図3に示すロータシャフトと同じであってよい。
【0067】
ステップc)は、図5および図6に示されているような実施形態を実現することを可能にする。
【0068】
有利には、ロータシャフトへの刻み目付けは、ロータシャフトの構成材料を変形させることによって行われる。例えば、ロータシャフトに接触する刻み目付け工具を用いて、あるいは、2つのローラの間または2つのラックの間に拘束された状態で刻み目を付けながら回転することによって、刻み目付けを実現することができる。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、ロータシャフトに直線的な刻み目を設けることができる。このようにして、ロータシャフトとロータ本体との間の密着性と、さらにトルク伝達とを最適化することが可能である。しかしながら、例えば、他の線、例えば傾いた線または交差する線をロータシャフトに形成することができる。
【0070】
本発明の一実施形態によれば、ロータシャフトの刻み目が付いた表面を研磨するステップを実施することができる。これにより、刻み目付けによって形成された尾根部(頂部)を研磨することができる。研磨により、トルクの伝達に適した寸法をもたらす非常に厳しい公差を満たすことができる。
【0071】
ロータシャフトとロータ本体との固定を確実にするために、プレスを用いて嵌め込みを行うことができる。プレスによって加えられる力は、特に、ロータシャフトおよびロータ本体の直径に応じて決定することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7