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▶ エンリヴェックス セラピューティクス アールディーオー リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】癌治療のための治療的アポトーシス細胞
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20230728BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20230728BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230728BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 45/00 20060101ALN20230728BHJP
   A23L 33/10 20160101ALN20230728BHJP
【FI】
A61K35/17
A61K35/15
A61P35/02
A61P35/04
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61K45/00
A23L33/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019567641
(86)(22)【出願日】2018-06-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 IL2018050621
(87)【国際公開番号】W WO2018225072
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-04-27
(31)【優先権主張番号】62/516,714
(32)【優先日】2017-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/549,465
(32)【優先日】2017-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】321012580
【氏名又は名称】エンリヴェックス セラピューティクス アールディーオー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノヴィック、シャイ
(72)【発明者】
【氏名】メヴォラッチ、ドロール
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-501526(JP,A)
【文献】国際公開第2016/170541(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/132366(WO,A1)
【文献】特許第6803339(JP,B2)
【文献】特許第6884155(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
早期アポトーシス細胞集団を含む組成物であって、
前記組成物は、対象における癌または腫瘍の治療、増殖の抑制、疾患進行の遅延、腫瘍負荷の低減、または発生率の低減のための薬剤の調製に使用され、
前記癌または腫瘍は、白血病またはリンパ腫から選択される非固形癌または非固形腫瘍であり、
前記対象における癌または腫瘍の治療、増殖の抑制、疾患進行の遅延、腫瘍負荷の低減、または発生率の低減により、前記対象における腫瘍または癌の微小残存病変の低減、寛解の増加、寛解期間の増大、腫瘍再発率の低減、転移の防止、転移率の低減、またはそれらの任意の組み合わせをもたらし、
前記早期アポトーシス細胞集団が、
(a)単核濃縮早期アポトーシス細胞集団、または
(b)照射された単核濃縮早期アポトーシス細胞集団を含むか、
あるいは、
前記早期アポトーシス細胞集団が、
早期アポトーシス細胞のプールされた集団であって、
(d)単核濃縮早期アポトーシス細胞集団、または
(e)照射された単核濃縮早期アポトーシス細胞集団を含む、該早期アポトーシス細胞のプールされた集団、
を含み、
前記単核濃縮早期アポトーシス細胞集団を分析すると、少なくとも40%のアネキシンV陽性細胞、及び15%以下のヨウ化プロピジウム陽性細胞を含むことが示されることを特徴とする組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、
前記癌若しくは腫瘍の、サイズ、成長速度若しくはそれらの組み合わせの低下、前記対象の生存期間の延長、または、それらの組み合わせをもたらすことを特徴とする組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成物であって、
前記対象はヒト対象であることを特徴とする組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物であって、
前記早期アポトーシス細胞集団の単回投与のために製剤化されるか、または
前記早期アポトーシス細胞集団の複数回投与のために製剤化されることを特徴とする組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物であって、
抗体またはその機能的断片を含む、追加の免疫調節剤と共に投与するために製剤化され、
前記追加の免疫調節剤は、前記早期アポトーシス細胞の投与前、投与と同時、または投与後に、投与されることを特徴とする組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の組成物であって、
前記抗体またはその機能的断片は、抗CD20抗体またはその機能的断片を含むことを特徴とする組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物であって、
第一選択療法またはアジュバント療法に使用されることを特徴とする組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2017年6月8日に出願された米国仮出願第62/516,714号及び2016年8月24日に出願された米国仮出願第62/549,465号の優先権の利益を主張する。
【0002】
早期アポトーシス細胞集団を含有する組成物、及び癌治療のための方法が本明細書に開示される。本明細書に開示される組成物は、対象における癌または腫瘍の治療、予防、成長の阻害、またはその発生率の低減に使用され得る。さらに、組成物は、癌または腫瘍に罹患している対象の生存を増加させるために使用され得る。使用される組成物は、単独で投与されてもよく、または他の化学療法と組み合わせて投与されてもよい。
【背景技術】
【0003】
癌は、1以上の細胞集団が制御されずに増殖することによって正常な生物学的機能が妨げられる、異常な状態である。増殖性の変化は通常、分化度がより低く、発達的により原始的な状態への復帰を含む、細胞特性の他の変化を伴う。癌のインビトロでの相関は、細胞形質転換と呼ばれる。形質転換細胞は一般に、球状形態、胎児性抗原の発現、成長因子非依存、接触阻害の欠如、足場非依存性、及び高密度への成長のうち、いくつかまたはすべての特性を示す。
【0004】
肺癌や皮膚癌などの悪性疾患の致死性の主な原因は、転移性の広がりに起因する。多くの場合、癌は診断時までに転移するので、転移性疾患の発症を予防することはできず、また、この段階よりも前に癌が診断された場合でも、最終的に転移を生成する能力がある原発病変組織の完全な外科的除去または破壊は実現可能ではない。転移性病変の大きさが小さいこと、及び/または転移性疾患の存在を確実に予測する信頼性の高いマーカーが原発性病変に存在しないことに起因して、転移性疾患の早期診断は不可能であり得る。このような病変は、アクセス不能、播種性、及び/または局所性が低いことに起因して、アブレーション法による治療が困難または不可能であり得る。特定の転移性悪性腫瘍の治療に現在選択されている化学療法/放射線療法は、多くの場合、効果的でないか、または準最適に有効であり、特に有害及び/または潜在的に致命的な副作用に関連するという重大な欠点がある。
【0005】
抗原提示細胞(APC)ワクチン接種などの免疫療法の癌治療法は、アクセス不能な、播種性の、顕微鏡による、再発した、及び/または局所性の低い癌病変の治療のために最適に効力のある可能性を有している。有望な免疫療法の手段の1つには、樹状細胞(DC)などの専門的なAPCを使用した全身の抗癌免疫の誘発が含まれる。
【0006】
樹状細胞は、抗原物質を処理し、それを細胞表面で免疫系のT細胞に提示する哺乳類の免疫系の抗原作製細胞及び提示細胞であり、これによって、樹状細胞は、T細胞を新しい抗原とリコール抗原との両方に対して感作させることができる。DCは最も強力な抗原作製細胞であり、自然免疫系と適応免疫系との間のメッセンジャーとして機能する。DC細胞を使用して、腫瘍を攻撃及び溶解するエフェクター細胞を生成することにより、特定の抗腫瘍免疫が刺激され得る。
【0007】
アポトーシス細胞は、アポトーシスを介して最も一般的に発生する生理学的細胞死の1つの経路を示し、認識、免疫応答、及び除去プロセスを含む一連の分子恒常性メカニズムを誘発する。さらに、アポトーシス細胞は、樹状細胞及びマクロファージに対する免疫寛容を直接的及び間接的に誘導できる免疫調節細胞である。アポトーシス細胞は、樹状細胞及びマクロファージを調節し、それらを免疫寛容原性にして炎症誘発性サイトカインの分泌及び共刺激分子の発現などの炎症誘発性活性を阻害することが示されている。
【0008】
対象における癌または腫瘍の治療、予防、成長の阻害、またはその発生率の低減のための組成物及び方法についての必要性は満たされていない。本明細書で以下に記載されるアポトーシス細胞の調製物、組成物及びその使用は、対象における癌または腫瘍の治療、予防、成長の阻害、または発生の減少のために使用され得る早期アポトーシス細胞の集団を提供することによって、この必要性に対処する。さらに、本明細書に記載される使用方法は、癌または腫瘍の寛解の増加を含む、癌及び腫瘍に罹患している対象の生存を増加させる必要性に対処する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、対象における癌または腫瘍の治療、予防、成長の阻害、疾患進行の遅延、腫瘍負荷の低減、若しくは発生率の低減、またはそれらの任意の組み合わせの方法であって、早期アポトーシス細胞集団を含有する組成物を対象に投与するステップを含み、方法は、早期アポトーシス細胞集団が投与されていない対象と比較して、対象における癌または腫瘍の、治療、予防、成長の阻害、疾患進行の遅延、腫瘍負荷の低減、若しくは発生率の低減、またはそれらの任意の組み合わせを行う方法が本明細書に開示されている。
【0010】
関連する態様では、癌または腫瘍の大きさ若しくは成長速度、またはそれらの組み合わせが減少する。別の関連する態様では、対象の生存が増加する。
【0011】
関連する態様では、早期アポトーシス細胞集団は、単核濃縮細胞集団、若しくは24時間より長く安定したアポトーシス集団、若しくは細胞凝集体のないアポトーシス集団、若しくはアポトーシス誘導後に照射されたアポトーシス集団、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の関連する態様では、早期アポトーシス細胞集団は、早期アポトーシス細胞のプールされた集団を含む。
【0012】
関連する態様では、対象はヒト対象である。
【0013】
関連する態様では、癌または腫瘍は、固形腫瘍または非固形腫瘍を含む。別の関連する態様では、非固形腫瘍または非固形癌は、造血器悪性腫瘍、血球癌、白血病、骨髄異形成症候群、リンパ腫、多発性骨髄腫(形質細胞骨髄腫)、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、または形質細胞白血病を含む。別の関連する態様では、固形腫瘍は、肉腫若しくは癌腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮血管肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌若しくは腫瘍、乳癌若しくは腫瘍、卵巣癌若しくは腫瘍、前立腺癌若しくは腫瘍、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌若しくは腫瘍、子宮癌若しくは腫瘍、精巣癌若しくは腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、音響神経腫、乏突起膠腫、神経鞘腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、または網膜芽細胞腫を含む。別の関連する態様では、腫瘍または癌は、腫瘍または癌の転移を含む。
【0014】
関連する態様では、投与は、早期アポトーシス細胞集団の単一注入を含む。別の関連する態様では、投与は、アポトーシス細胞集団の複数注入を含む。別の関連する態様では、本方法は、追加の免疫療法、化学療法剤、若しくは免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせを対象に投与するステップをさらに含む。別の関連する態様では、追加の免疫療法、化学療法剤、若しくは免疫調節剤は、早期アポトーシス細胞の投与前、投与と同時、または投与後に、投与される。別の関連する態様では、免疫療法は、CAR-T細胞の投与を含む。別の関連する態様では、免疫調節剤は、抗体またはその機能的断片を含む。別の関連する態様では、抗体またはその機能的断片は、リツキシマブ(RtX)抗体またはその機能的断片を含む。
【0015】
関連する態様では、本方法は、CAR-T細胞が投与され、かつ早期アポトーシス細胞が投与されなかった対象と比較して、CAR-T細胞の効力を増加させる。
【0016】
関連する態様では、本方法は、第一選択療法を含む。
【0017】
関連する態様では、本方法は、アジュバント療法を含む。
【0018】
関連する態様では、本方法は、腫瘍若しくは癌の、微小残存病変の低減、寛解の増加、寛解期間の増大、腫瘍再発率の低減、転移の防止を行うか、若しくは、腫瘍若しくは癌の転移率の低減、またはそれらの任意の組み合わせを行う。
【0019】
一態様では、早期アポトーシス状態の単核細胞を含む単核アポトーシス細胞の集団であって、単核アポトーシス細胞集団は、非静止非アポトーシス生存細胞の割合の減少、非アポトーシス生細胞の細胞活性化の抑制、若しくは非アポトーシス生細胞の増殖の減少、またはそれらの任意の組み合わせを含むことを特徴とする集団、が本明細書に開示される。
【0020】
関連する態様では、非静止非アポトーシス生存細胞の減少割合は10%未満である。別の関連する態様では、単核アポトーシス細胞集団は、生存非アポトーシス細胞を含まない。
【0021】
関連する態様では、単核細胞集団は、リンパ球、単球、樹状細胞、及びナチュラルキラー細胞からなる群から選択される。
【0022】
関連する態様では、単核アポトーシス細胞集団は、早期アポトーシス細胞の作製後に照射される。別の関連する態様では、照射は、γ線照射、X線照射、またはUV照射を含む。別の関連する態様では、照射された細胞集団は、非照射アポトーシス細胞集団と比較して、集団あたりの非静止非アポトーシス細胞の割合の減少を含む。
【0023】
一態様では、早期アポトーシス状態の単核細胞を含む単核アポトーシス細胞の集団であって、単核アポトーシス細胞集団は、非静止非アポトーシス生存細胞の割合の減少、非アポトーシス生細胞の細胞活性化の抑制、若しくは非アポトーシス生細胞の増殖の減少、またはそれらの任意の組み合わせを含む集団、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物が本明細書に開示される。
【0024】
一態様では、非静止非アポトーシス生存細胞の減少、非アポトーシス生細胞の細胞活性化の抑制、若しくは非アポトーシス生細胞の増殖の減少、またはそれらの任意の組み合わせを含む単核アポトーシス細胞集団を生成する方法であって、末梢血の単核濃縮細胞集団を採取するステップ、抗凝固剤を含む凍結培地で単核濃縮細胞集団を凍結するステップ、単核濃縮細胞集団を解凍するステップ、約10-100μg/mLの最終濃度のメチルプレドニゾロン及び抗凝固剤を含むアポトーシス誘導インキュベーション培地で、単核濃縮細胞集団をインキュベートするステップ、アポトーシス細胞集団を投与培地に再懸濁するステップ、及び単核濃縮細胞集団を不活性化するステップを含み、不活性化するステップはインダクションの後に生じ、当該方法は、非静止非アポトーシス細胞の割合の減少、非アポトーシス生細胞の細胞活性化の抑制、若しくは非アポトーシス生細胞の増殖のことを特徴とする方法、が本明細書に開示される。
【0025】
関連する態様では、不活化するステップは、単核アポトーシス細胞集団内での、非静止非アポトーシス細胞の割合を減少させるステップ、非アポトーシス生細胞の細胞活性化を抑制するステップ、若しくは非アポトーシス生細胞の増殖を減少させるステップ、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の関連する態様では、非静止非アポトーシス細胞の割合は約10%に減少する。別の関連する態様では、非静止非アポトーシス細胞の割合は約0%に減少する。
【0026】
関連する態様では、単核濃縮細胞集団は、リンパ球、単球、樹状細胞、及びナチュラルキラー細胞からなる群から選択される。
【0027】
関連する態様では、インキュベートは、約2-12時間続く。
【0028】
関連する態様では、単核濃縮細胞集団を不活性化するステップ(f)は、免疫応答を抑制若しくは排除するステップ、細胞の交差反応性を抑制若しくは排除するステップ、またはT細胞受容体活性を低下若しくは排除するステップを含み、集団は、非アポトーシス生細胞の割合の減少、非アポトーシス生細胞の細胞活性化の抑制、若しくは非アポトーシス生細胞の増殖の減少、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の関連する態様では、不活性化するステップ(f)は、ステップ(e)において生成された単核濃縮アポトーシス細胞集団を照射するステップを含む。別の関連する態様では、照射は、γ線照射、X線照射、またはUV照射を含む。別の関連する態様では、照射は、約10-80のグレイ単位(Gy)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本明細書で開示される主題は、本明細書の結論部分で特に指摘され、かつ明確にクレームされている。しかしながら、本明細書に開示される組成物及び方法は、その構成及び動作方法、並びに、目的、特徴及び利点の両方に関して、添付の図面とともに読まれるときに以下の詳細な説明を参照することにより最もよく理解され得る。
【0030】
図1】早期アポトーシス細胞集団の生産プロセスの一実施形態中のステップを示すフローチャートであり、このプロセスには抗凝固剤が含まれている。
図2】インビトロのびまん性腫瘍SCIDマウスモデルについての生存曲線。曲線は、早期アポトーシス細胞(APO;太い破線)の投与が、アポトーシス細胞が投与されていないマウス(NO APO;点線)と比較して生存期間を延長したことを示しており、コントロールのSCIDマウスは、100%の生存を示した(実線)。
図3A】アポトーシス細胞の注入によって、白血病マウスの寿命が延び、完全寛解に達するマウスの数が増加した。コホート:白血病なし(コントロール-ストライプ)、白血病+早期アポトーシス細胞(斑点)、白血病のみ(灰色の塗りつぶし)。合計n=51(p<0.001)。アポトーシス細胞の注入によって、白血病誘導後の予想寿命の間生存するマウスの割合が増加した。
図3B】アポトーシス細胞の注入によって、白血病マウスの寿命が延び、完全寛解に達するマウスの数が増加した。コホート:白血病なし(コントロール-ストライプ)、白血病+早期アポトーシス細胞(斑点)、白血病のみ(灰色の塗りつぶし)。合計n=51(p<0.001)。アポトーシス細胞の注入によって、白血病誘導後の予想寿命の最大12%まで生存するマウスの割合が増加した。
図3C】アポトーシス細胞の注入によって、白血病マウスの寿命が延び、完全寛解に達するマウスの数が増加した。コホート:白血病なし(コントロール-ストライプ)、白血病+早期アポトーシス細胞(斑点)、白血病のみ(灰色の塗りつぶし)。合計n=51(p<0.001)。アポトーシス細胞の注入によって、白血病誘導後の予想寿命の最大30%まで生存するマウスの割合が増加した。
図3D】アポトーシス細胞の注入によって、白血病マウスの寿命が延び、完全寛解に達するマウスの数が増加した。コホート:白血病なし(コントロール-ストライプ)、白血病+早期アポトーシス細胞(斑点)、白血病のみ(灰色の塗りつぶし)。合計n=51(p<0.001)。アポトーシス細胞の注入によって、白血病誘導後の予想される寿命の100%まで生存し、完全寛解に達するマウスの割合が増加した。
図4A】アポトーシス細胞の注入によって、白血病マウスの寿命が延び、完全寛解に達するマウスの数が増加し、抗CD20モノクローナル抗体(mAb)の治療効果が向上した。コホート:白血病のみ(灰色の塗りつぶし)、白血病+早期アポトーシス細胞(ストライプ)、白血病+抗CD20mAb(市松模様)、白血病+抗CD20+早期アポトーシス細胞(斑点)。合計n=28(p<0.002)。
図4B】アポトーシス細胞の注入によって、白血病マウスの寿命が延び、完全寛解に達するマウスの数が増加し、抗CD20モノクローナル抗体(mAb)の治療効果が向上した。コホート:白血病のみ(灰色の塗りつぶし)、白血病+早期アポトーシス細胞(ストライプ)、白血病+抗CD20mAb(市松模様)、白血病+抗CD20+早期アポトーシス細胞(斑点)。合計n=28(p<0.002)。Raji細胞による白血病の誘導後のマウスの予想寿命の間のパーセント(%)生存率を示す。アポトーシス細胞の注入によって、白血病誘導後の予想寿命よりも最大24%長く生存するマウスの割合が増加した。
図4C】アポトーシス細胞の注入によって、白血病マウスの寿命が延び、完全寛解に達するマウスの数が増加し、抗CD20モノクローナル抗体(mAb)の治療効果が向上した。コホート:白血病のみ(灰色の塗りつぶし)、白血病+早期アポトーシス細胞(ストライプ)、白血病+抗CD20mAb(市松模様)、白血病+抗CD20+早期アポトーシス細胞(斑点)。合計n=28(p<0.002)。アポトーシス細胞の注入によって、白血病誘導後の予想寿命よりも最大59%長く生存するマウスの割合が増加し、白血病マウスの寿命に対する抗CD20mAbの効果が向上した。
図4D】アポトーシス細胞の注入によって、白血病マウスの寿命が延び、完全寛解に達するマウスの数が増加し、抗CD20モノクローナル抗体(mAb)の治療効果が向上した。コホート:白血病のみ(灰色の塗りつぶし)、白血病+早期アポトーシス細胞(ストライプ)、白血病+抗CD20mAb(市松模様)、白血病+抗CD20+早期アポトーシス細胞(斑点)。合計n=28(p<0.002)。アポトーシス細胞の注入によって、白血病誘導後の予想寿命よりも最大76%長く生存するマウスの割合が増加し、白血病マウスの寿命に対する抗CD20mAbの効果が向上した。
図4E】アポトーシス細胞の注入によって、白血病マウスの寿命が延び、完全寛解に達するマウスの数が増加し、抗CD20モノクローナル抗体(mAb)の治療効果が向上した。コホート:白血病のみ(灰色の塗りつぶし)、白血病+早期アポトーシス細胞(ストライプ)、白血病+抗CD20mAb(市松模様)、白血病+抗CD20+早期アポトーシス細胞(斑点)。合計n=28(p<0.002)。アポトーシス細胞の注入によって、完全寛解に達するマウスの割合が増加した。
図5A】ApoCellの存在下または非存在下で、HeLa-CD19(白血病)のIPモデルにおいてCD19-CAR-T細胞の有効性を試験した。HeLa-CD19-青、HeLa-CD19+Mock-緑、HeLa-CD19+CAR-T-紫、HeLa-CD19+CAR-T+ApoCell-オレンジ。0.5×10CAR-T陽性細胞。
図5B】ApoCellの存在下または非存在下で、HeLa-CD19(白血病)のIPモデルにおいてCD19-CAR-T細胞の有効性を試験した。HeLa-CD19-青、HeLa-CD19+Mock-緑、HeLa-CD19+CAR-T-紫、HeLa-CD19+CAR-T+ApoCell-オレンジ。2.2×10CAR-T陽性細胞。
図6】ApoCellを投与されたRaji白血病/リンパ腫に罹患したSCID-Bgマウスのカプラン・マイヤー生存プロット。(RPMI群、n=15;Raji群、n=23;Raji+ApoCell群、n=24)。RPMI(コントロール)-黒、Rajiのみ-オレンジ、Raji+ApoCell-青。
図7A】カプラン・マイヤー生存プロット。7週齢の雌SCID-Bgマウス(ENVIGO社、イスラエル、エルサレム所在)に、マウス(1群あたりn=10、3群)あたり0.1×10個のRaji細胞をIV注射した研究のデータを示す。30×10個のApoCellをマウスに3回IV投与した(5、8、11日目)。(RPMI-薄青、Raji-オレンジ、及びRaji+ApoCell-濃青)。
図7B】カプラン・マイヤー生存プロット。7週齢の雌SCID-Bgマウス(ENVIGO社、イスラエル、エルサレム所在)に、マウス(1群あたりn=10、3群)あたり0.1×10個のRaji細胞をIV注射した研究のデータを示す。30×10個のApoCellをマウスに3回IV投与した(5、8、11日目)。(RPMI-黒、Raji-オレンジ、及びRaji+ApoCell-濃青)。
図7C】カプラン・マイヤー生存プロット。8-9週齢の雌SCID-Bgマウス(ENVIGO社、イスラエル、エルサレム所在)に、マウス(1群あたりn=10、2群)あたり0.1×10個のRaji細胞をIV注射した研究のデータを示す。30×10個のApoCellをマウスに3回IV投与した(5、8、12日目)。(Raji-オレンジ、及びRaji+ApoCell-濃青)。
図8】RtX及びApoCellを投与したRaji白血病/リンパ腫に罹患したSCID-Bgマウスのカプラン・マイヤー生存プロット。(Rajiのみ-オレンジ;Raji+ApoCell-青;Raji+RtX2mg-緑;Raji+RtX2mg+ApoCell-黄色;Raji+RtX5mg-紫;Raji+RtX5mg+ApoCell-灰色)。
図9】Raji白血病/リンパ腫に罹患し、rtx及びApoCellを投与されたSCID-Bgマウスのカプラン・マイヤー生存プロット。(Rajiのみ-オレンジ;Raji+ApoCell-青;Raji+RtX2mg-緑;Raji+RtX2mg+ApoCell-黄色)。
図10A】標準的なCAR-T細胞療法を示す概略図。
図10B】アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清を生成するために患者自身の細胞(自家)を使用する、患者における安全かつ有効なCAR-T細胞癌療法の方法の実施形態を示す概略図。
図11】アポトーシス細胞またはアポトーシス上清を生成するためにドナー細胞を使用する、患者における安全かつ有効なCAR-T細胞癌療法の方法の実施形態を示す概略図。
図12A】CAR-T細胞療法単独、またはアポトーシス細胞の同時投与の後の生存を示す。実施例6に記載の5つの別々の実験の代表例であり、CAR-T細胞療法単独、またはCAR-T細胞療法とアポトーシス細胞との同時投与によって治療された腹膜の固形腫瘍Hela-CD19の生存曲線を示す。(HeLa-CD19:治療なしのコントロール、HeLa-CD19+CAR-T:CAR-T細胞による治療を含む、HeLa-CD19+Mock-T:モックT細胞のコントロール追加、Hela-CD19+CAR-T+OTS-ALC-4K:CAR-T細胞及び4000radで照射された「既製の」アポトーシス細胞で治療を行った。)
図12B】CAR-T細胞療法単独、またはアポトーシス細胞の同時投与の後の生存を示す。ルシフェラーゼインビボイメージングシステム(IVIS)の結果は、IVISによって視覚化された腫瘍の進行を示し、図12Aに示されている生存曲線の結果につながる発展を表す。腫瘍の広がりは15日目ですでに視覚化され得る(Hela-CD19-Luc;治療なし)が、CAR-T細胞で治療したマウスでは、43日目まで腫瘍の広がりは見られなかった。マウスに細胞CAR-T細胞治療とあわせてアポトーシス細胞を投与すると、予想外に、ほとんどのマウスは50日目まで腫瘍の広がりを示さず、腫瘍大きさ(相関についてはスケールを参照)は明らかに小さかった。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の詳細な説明では、本明細書に開示される方法の完全な理解を提供するために、多くの特定の詳細が記載されている。しかしながら、当業者であれば、これらの方法は、これらの特定の詳細なしで実施され得ることを理解するであろう。他の例では、本明細書で開示される方法を不明瞭にしないために、周知の方法、手順、及び構成要素は詳細に説明されていない。
【0032】
いくつかの実施形態では、対象における癌または腫瘍の治療、予防、成長の阻害、発生率の低減、またはそれらの任意の組み合わせの方法であって、対象に対して早期アポトーシス細胞集団を含有する組成物を投与するステップを含み、当該方法は、対象における癌または腫瘍の治療、予防、成長の阻害、発生率の低減、またはそれらの任意の組み合わせを行う、該方法が本明細書に開示される。
【0033】
いくつかの実施形態では、癌または腫瘍に罹患した対象の生存を増加させる方法であって、早期アポトーシス細胞集団を対象に投与するステップを含み、当該方法は、対象の生存を増加させる、該方法が本明細書に開示される。
【0034】
いくつかの実施形態では、対象における癌または腫瘍の大きさを縮小するか、若しくは成長速度を低下させるか、またはそれらの組み合わせである方法であって、早期アポトーシス細胞集団を対象に投与するステップを含み、当該方法は、癌または腫瘍の大きさを縮小するか、または成長速度を低下させる、該方法が本明細書に開示される。
【0035】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス状態の単核細胞の集団を含む早期アポトーシス細胞の組成物は、単核アポトーシス細胞集団は、非静止非アポトーシス生存細胞の割合の減少、非アポトーシス生細胞の細胞活性化の抑制、若しくは非アポトーシス生細胞の増殖の減少、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス状態の単核細胞の集団を含む不活化早期アポトーシス細胞の集団であって、単核アポトーシス細胞集団は、非静止非アポトーシス生存細胞の割合の減少、非アポトーシス生細胞の細胞活性化の抑制、若しくは非アポトーシス生細胞の増殖の減少、またはそれらの任意の組み合わせを含む、該集団が開示される。
【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される細胞集団は不活性されている。別の実施形態では、不活性化は照射を含む。別の実施形態では、不活性化は集団における免疫応答の抑制または排除を含む。別の実施形態では、不活性化は、早期アポトーシス細胞集団と任意の他の細胞集団との間の交差反応性の抑制または排除を含む。他の実施形態では、不活性化は、早期アポトーシス細胞集団におけるT細胞受容体活性の低減または排除することを含む。別の実施形態では、不活化された細胞調製物は、非アポトーシス生細胞の割合の減少、非アポトーシス生細胞の細胞活性化の抑制、若しくは非アポトーシス生細胞の増殖の減少、またはそれらの組み合わせを含む。
【0037】
別の実施形態では、不活性化細胞集団は、非照射細胞調製物と比較して減少した数の非静止非アポトーシス細胞を含む。いくつかの実施形態では、不活性化細胞集団は非アポトーシス生細胞を50パーセント(%)含む。いくつかの実施形態では、不活化細胞集団は、非アポトーシス生細胞を40%含む。いくつかの実施形態では、不活性化細胞集団は、非アポトーシス生細胞を30%含む。いくつかの実施形態では、不活性化細胞集団は、非アポトーシス生細胞を20%含む。いくつかの実施形態では、不活性化細胞集団は、非アポトーシス生細胞を100%含む。いくつかの実施形態では、不活性化細胞集団は、非アポトーシス生細胞を0%含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、不活性化早期アポトーシス細胞集団を調整する方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、割合の減少した非静止非アポトーシス生存細胞、細胞活性化の抑制された非アポトーシス生細胞、若しくは増殖の減少した非アポトーシス生細胞、またはそれらの組み合わせを含む単核アポトーシス細胞の集団を作製する方法であって、当該方法は、末梢血の単核濃縮細胞集団を得るステップと、抗凝固剤を含む凍結培地で単核濃縮細胞集団を凍結するステップと、単核濃縮細胞集団を解凍するステップと、約10-100μg/mLの最終濃度のメチルプレドニゾロン及び抗凝固剤を含むアポトーシス誘導インキュベーション培地で、単核濃縮細胞集団をインキュベートするステップと、アポトーシス細胞集団を投与培地に再懸濁するステップと、単核濃縮集団を不活性化するステップとを含み、不活性化は誘導後に生じ、当該方法は、割合の減少した非静止非アポトーシス細胞、細胞活性化の抑制された非アポトーシス生細胞、若しくは増殖の減少した非アポトーシス生細胞、またはその任意の組み合わせを含む単核アポトーシス細胞集団を作製する、該方法が本明細書に開示される。
【0039】
別の実施形態では、照射は、γ線照射、X線照射、またはUV照射を含む。さらに別の実施形態では、照射された調製物は、照射されていない細胞調製物と比較して、数の減少した非静止状態の非アポトーシス細胞を有する。
【0040】
アポトーシス細胞、及びその作製方法
【0041】
別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法における使用のためのアポトーシス細胞(「ApoCell」)の作製は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2014/087408号に記載されており、以下の実施例1に簡潔に記載されている。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法における使用のためのアポトーシス細胞は、当該技術分野で既知の任意の方法で作製される。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法における使用のためのアポトーシス細胞は、治療を受けている対象と自家である。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法における使用のためのアポトーシス細胞は、治療を受けている対象と同種である。別の実施形態では、アポトーシス細胞を含有する組成物は、本明細書に開示される、または当該技術分野で既知のアポトーシス細胞を含む。
【0042】
当業者であれば、「自家」という用語が、ドナーとレシピエントとが同一のヒトである組織、細胞、核酸分子またはポリペプチドを包含し得ることを理解するであろう。
【0043】
当業者であれば、「同種」という用語が、同一の種の別個の個体に由来する組織、細胞、核酸分子またはポリペプチドを包含し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、同種ドナー細胞は、レシピエントと遺伝的に異なる。
【0044】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される作製方法にしたがって単核濃縮細胞組成物を得るステップは、白血球アフェレーシスによって行われる。当業者であれば、「白血球アフェレーシス」という用語が、白血球がドナーの血液から分離されるアフェレーシス法を包含し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、ドナーの血液は白血球アフェレーシスを受け、したがって、本明細書に開示される生産方法にしたがって単核濃縮細胞組成物が得られる。採取された細胞の凝固を防ぐために、当該技術分野で知られているように、白血球アフェレーシス中に少なくとも1つの抗凝固剤の使用が必要であることに留意されたい。
【0045】
いくつかの実施形態では、白血球アフェレーシス法は、本明細書に開示される生産方法にしたがって単核濃縮細胞組成物の採取を可能にするように構成される。いくつかの実施形態では、白血球アフェレーシスによって得られた細胞コレクションは、少なくとも65%含む。他の実施形態では、本明細書に開示されるように、少なくとも70%、または少なくとも80%含む。いくつかの実施形態では、細胞ドナーからの血漿は、本明細書に開示される生産方法において、単核濃縮細胞組成物を得るステップに並行して採取される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示された作製方法にしたがって単核濃縮細胞組成物を得るステップと並行して、細胞ドナーからの約300-600mlの血漿が採取される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される作製方法にしたがって単核濃縮細胞組成物を得るステップに並行して採取された血漿は、凍結及び/またはインキュベーション培地の一部として使用される。本明細書に開示される組成物及び方法における使用のためにアポトーシス細胞の濃縮された集団を得る追加の詳細な方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2014/087408号に見出すことができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法において使用するための早期アポトーシス細胞は、少なくとも85%の単核細胞を含む。さらなる実施形態では、本明細書に開示される方法において使用するための早期アポトーシス細胞は、少なくとも85%の単核細胞、90%の単核細胞、または90%を超える単核細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法において使用するための早期アポトーシス細胞は、少なくとも90%の単核細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法において使用するための早期アポトーシス細胞は、少なくとも95%の単核細胞を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、細胞採取時の単核濃縮細胞調製物は、少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%の単核細胞を含むが、本明細書に開示される方法において使用するための早期アポトーシス細胞の作製方法後の最終医薬集団は、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の単核細胞を含むことに留意されたい。
【0048】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法において使用するための早期アポトーシス細胞の組成物の生成に使用される単核濃縮細胞調製物は、細胞採取時に少なくとも50%の単核細胞を含む。特定の実施形態では、ドナーの末梢血から少なくとも50%の単核細胞を含む単核濃縮細胞調製物を得るステップを含む、医薬集団の作製方法が本明細書に開示される。特定の実施形態では、少なくとも50%の単核細胞を含む単核濃縮細胞調製物を凍結するステップを含む、医薬集団の作製方法が本明細書に開示される。
【0049】
いくつかの実施形態では、細胞調製物は少なくとも85%の単核細胞を含み、調製物中の細胞の少なくとも40%は早期アポトーシス状態にあり、調製物中の細胞の少なくとも85%は生細胞である。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞調製物は、15%以下のCD15high発現細胞を含む。
【0050】
当業者であれば、「早期アポトーシス状態」という用語が、アポトーシスの後期徴候は示さず、アポトーシスの早期徴候を示す細胞を包含し得ることを理解するであろう。細胞のアポトーシスの早期兆候の例には、ホスファチジルセリン(PS)の暴露、及びミトコンドリア膜電位の喪失が含まれる。後期イベントの例には、ヨウ化プロピジウム(PI)が細胞へ入ること、及び最終的なDNA切断が含まれる。いくつかの実施形態では、細胞が「早期アポトーシス」状態にあることを証明するために、アネキシン-V及びPI染色によるPS曝露検出が使用され、PIではなくアネキシン-Vで染色された細胞は「早期アポトーシス細胞」であるとみなされる。別の実施形態では、アネキシン-V FITC及びPIの両方によって染色される細胞は、「後期アポトーシス細胞」であるとみなされる。別の実施形態では、アネキシン-VまたはPIのいずれについても染色されない細胞は、非アポトーシス生細胞であるとみなされる。
【0051】
いくつかの実施形態では、用語「早期アポトーシス細胞」、「アポトーシス細胞」、「アポ細胞(ApoCell)」、及びそれらの文法的変形は互換的に使用されてもよく、すべて同一の品質及び意味を有することを当業者であれば理解するであろう。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法が早期アポトーシス細胞を含むことを当業者であれば理解するであろう。
【0052】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、早期アポトーシス状態の細胞を含む。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、細胞の少なくとも90%が早期アポトーシス状態にある細胞を含む。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、細胞の少なくとも80%が早期アポトーシス状態にある細胞を含む。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、細胞の少なくとも70%が早期アポトーシス状態にある細胞を含む。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、細胞の少なくとも60%が早期アポトーシス状態にある細胞を含む。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、細胞の少なくとも50%が早期アポトーシス状態にある細胞を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞を含有する組成物は、抗凝固剤をさらに含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞は安定的である。いくつかの実施形態では、安定性は、例えば、約2-8℃での保管時の早期アポトーシス細胞特性の維持などの、経時的な早期アポトーシス細胞特性の維持を包含することを当業者であれば理解するであろう。いくつかの実施形態では、安定性は、凍結温度、例えば、0℃以下の温度での保管時の早期アポトーシス細胞特性の維持を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法において使用するための早期アポトーシス細胞の作製方法にしたがって得られた単核濃縮細胞集団は、凍結培地で凍結される。いくつかの実施形態では、凍結は漸進的である。いくつかの実施形態では、採取後、細胞は凍結まで室温で維持される。いくつかの実施形態では、細胞調製物は、細胞採取後及び凍結前に、洗浄培地中で少なくとも1回の洗浄ステップを受ける。
【0056】
本明細書で使用される「細胞を採取する」及び「細胞採取」という用語は、互換的に使用され得る。いくつかの実施形態では、細胞調製物の細胞は、採取の3-6時間以内に凍結される。いくつかの実施形態では、細胞調製物は、細胞採取の最大6時間以内に凍結される。いくつかの実施形態では、細胞調製物の細胞は、採取の1、2、3、4、5、6、7、8時間以内に凍結される。他の実施形態では、細胞調製物の細胞は、採取の8、12、24、48、72時間までに凍結される。他の実施形態では、採取後、細胞は凍結まで2-8℃に維持される。
【0057】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞集団の作製にしたがって凍結するステップは、細胞調製物を約-18℃から-25℃で凍結後、細胞調製物を約-80℃で凍結するステップと、最後に、細胞調製物を解凍まで液体窒素中で凍結するステップとを含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞集団の作製にしたがって凍結するステップは、細胞調製物を約-18℃から-25℃で少なくとも2時間凍結するステップと、細胞調製物を約-80℃で少なくとも2時間凍結するステップと、最後に、細胞調製物を解凍まで液体窒素で凍結するステップとを含む。いくつかの実施形態では、細胞は、解凍前に少なくとも8、10または12時間の間、液体窒素中に保持される。いくつかの実施形態では、細胞調製物の細胞は、解凍及びアポトーシス誘導インキュベーション培地でのインキュベーションまで液体窒素中に保持される。いくつかの実施形態では、細胞調製物の細胞は、造血幹細胞移植の日まで液体窒素中に保持される。非限定的な例では、細胞採取及び凍結から最終集団の調製までの時間は、1-50日の間、あるいは6~30日の間であり得る。代替実施形態では、細胞調製物は、少なくとも数ヶ月などの、より長い期間にわたって液体窒素中に保持され得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞集団の作製にしたがって凍結するステップは、細胞調製物を約-18℃~-25℃で少なくとも0.5、1、2、4時間凍結するステップを含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞集団の作製にしたがって凍結するステップは、細胞調製物を約-18℃~-25℃で約2時間凍結するステップを含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞集団の作製における凍結するステップは、細胞調製物を約-80℃で少なくとも0.5、1、2、4、12時間凍結するステップを含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、20ヶ月間凍結されたままであり得る。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、少なくとも0.5、1、2、3、4、5年間凍結されたままであり得る。特定の実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、少なくとも20ヶ月間凍結されたままであり得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、少なくとも8、10、12、18、24時間凍結される。特定の実施形態では、単核濃縮細胞組成物の凍結は、少なくとも8時間の間行われる。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は少なくとも約10時間の間凍結される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は少なくとも約12時間の間凍結される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は約12時間の間凍結される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物の総凍結時間(約-18℃~-25℃、約-80℃、及び液体窒素中)は少なくとも8、10、12、18、24時間である。
【0061】
いくつかの実施形態では、凍結は、単核濃縮細胞組成物の細胞において早期アポトーシス状態を少なくとも部分的に誘導する。いくつかの態様では、凍結培地は、L-グルタミン、Hepes、Hes、ジメチルスルホキシド(DMSO)及び血漿を含むRPMI 1640培地を含むいくつかの実施形態では、凍結培地中の血漿は、集団の単核濃縮細胞を提供したドナーの自家血漿である。いくつかの態様では、凍結培地は、2mM L-グルタミン、10mM Hepes、5%Hes、10%ジメチルスルホキシド、及び20v/v%血漿を含むRPMI 1640培地を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、凍結媒体は抗凝固剤を含む。特定の実施形態では、凍結培地、インキュベーション培地、及び洗浄培地を含む早期アポトーシス細胞集団の作製中に使用される培地の少なくともいくつかは、抗凝固剤を含む。特定の実施形態では、抗凝固剤を含む早期アポトーシス細胞集団の作製中に使用されるすべての培地は、同何時の濃度の抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、細胞集団の最終懸濁培地に添加されない。
【0063】
いくつかの実施形態では、少なくとも凍結培地への抗凝固剤の添加により、細胞調製物の収率が改善する。他の実施形態では、凍結培地への抗凝固剤の添加により、高いトリグリセライドレベルの存在下での細胞調製物の収率が改善する。本明細書で使用する場合、細胞調製物の収率の改善は、凍結細胞中の生細胞の割合、生細胞中の早期状態のアポトーシス細胞の割合、及びそれらの組み合わせの少なくとも1つの改善に関する。
【0064】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞は少なくとも24時間の間安定的である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は24時間の間安定的である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は24時間より長く安定的である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は少なくとも36時間の間安定的である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は48時間の間安定的である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は少なくとも36時間の間安定的である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は36時間より長く安定的である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は少なくとも48時間の間安定的である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は48時間の間安定的である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は少なくとも48時間の間安定的である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は48時間より長く安定的である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は少なくとも72時間の間安定的である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は72時間の間安定的である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は72時間より長く安定的である。
【0065】
当業者であれば、「安定」という用語が、PS陽性(ホスファチジルセリン陽性)のままであり、PI陽性(ヨウ化プロピジウム陽性)の割合が非常に小さいアポトーシス細胞を包含することを理解するであろう。PI陽性細胞は膜の安定性の指標を提供し、PI陽性細胞は、細胞への進入を許可し、膜の安定性が低いことを示す。いくつかの実施形態では、安定的な早期アポトーシス細胞は、少なくとも24時間の間、少なくとも36時間の間、少なくとも48時間の間、または少なくとも72時間の間、早期アポトーシス状態のままである。別の実施形態では、安定的な早期アポトーシス細胞は、24時間の間、36時間の間、48時間の間、または72時間の間、早期アポトーシス状態のままである。別の実施形態では、安定的な早期アポトーシス細胞は、24時間以上、36時間以上、48時間以上、または72時間以上、早期アポトーシス状態のままである。別の実施形態では、安定的な早期アポトーシス細胞は、長期間にわたってその状態を維持する。
【0066】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞集団は細胞凝集体を欠いている。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞集団は大きな細胞凝集体を欠いている。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞集団は、ドナーからの細胞採取(白血球アフェレーシス)以外のステップにおいて抗凝固剤を添加することなく調製されたアポトーシス細胞集団と比較して、細胞凝集体の数が少ない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞集団またはその組成物は、抗凝固剤を含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は細胞凝集体を欠いており、アポトーシス細胞は血中トリグリセライドレベルが高い対象から得られる。いくつかの実施形態では、対象の血中トリグリセライドレベルは150mg/dLを超える。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞集団は細胞凝集体を欠いており、アポトーシス細胞集団は、正常な血中トリグリセライドレベルを有する対象から得られた細胞から調製される。いくつかの実施形態では、対象の血中トリグリセライドレベルは150mg/dL以下である。いくつかの実施形態では、細胞凝集体は、アポトーシス細胞の作製方法の間に細胞損失を生じる。
【0068】
当業者であれば、「凝集体」または「細胞凝集体」という用語が、低剪断力下または静止状態での血球の可逆的凝集を包含し得ることを理解するであろう。細胞凝集体は、アポトーシス細胞の作製のインキュベーションステップの間、視覚的に観察され得る。細胞凝集は、当該技術分野で公知の任意の方法、例えば、光学顕微鏡下でサンプルを視覚的に画像化するか、またはフローサイトメトリーを用いて測定され得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ヘパリン、酸性クエン酸デキストロース(ACD)-A、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ヘパリン、酸性クエン酸デキストロース(ACD)-A、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0070】
早期アポトーシス細胞集団及びその組成物を調製する方法のいくつかの実施形態では、集団の調製中に使用される少なくとも1つの培地に抗凝固剤が添加される。いくつかの実施形態では、集団の調製中に使用される少なくとも1つの培地は、凍結培地、洗浄培地、アポトーシス誘導インキュベーション培地、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0071】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ヘパリン、ACD-A、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。以下に限定しないが、例えばフォンダパリヌクス、ビバリルジン及びアルガトロバンなどの、当該技術分野で知られている他の抗凝固剤が使用され得ることに留意されたい。
【0072】
いくつかの実施形態では、集団の調製中に使用される少なくとも1つの培地は、10U/mlのヘパリンを含む5%のACD-A溶液を含む。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、細胞集団の最終懸濁培地に添加されない。本明細書で使用される「最終懸濁培地」及び「投与媒培地」という用語は互換的に使用され、すべて同一の品質及び意味を有する。
【0073】
一部の実施形態では、集団の調製中に使用される少なくとも1つの培地は、0.1~2.5U/mlの濃度のヘパリンを含む。いくつかの実施形態では、集団の調製中に使用される少なくとも1つの培地は、1v/v%~15v/v%の濃度のACD-Aを含む。いくつかの実施形態では、凍結媒体は抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション培地は抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、凍結培地とインキュベーション培地との両方が抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ヘパリン、ACD-A、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0074】
いくつかの実施形態では、凍結培地中のヘパリンは0.1~2.5U/mlの濃度である。いくつかの実施形態では、凍結媒体中のACD-Aは、1v/v%~15v/v%の濃度である。いくつかの実施形態では、インキュベーション培地中のヘパリンは、0.1~2.5U/mlの濃度である。いくつかの実施形態では、インキュベーション培地中のACD-Aは、1v/v%~15v/v%の濃度である。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、酸-クエン酸-デキストロース(ACD)-Aの溶液である。いくつかの実施形態では、集団の調製中に使用される少なくとも1つの培地に添加される抗凝固剤は、10U/mlの濃度のヘパリンを含むACD-Aである。
【0075】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞集団の作製に使用されるアポトーシス誘導インキュベーション培地は、抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞集団の作製に使用される凍結培地及びアポトーシス誘導インキュベーション培地の両方が抗凝固剤を含む。いかなる理論及びメカニズムに縛られることも望まないが、異なる細胞組成物において高く安定した細胞収率を維持するために、細胞採取プロトコールに関係なく、いくつかの実施形態では、抗凝固剤の添加は、アポトーシス細胞集団の作製中の、凍結培地及びアポトーシス誘導インキュベーション培地の両方への抗凝固剤の添加を含む。いくつかの実施形態では、組成物内の高く安定した細胞の収率は、アポトーシスの誘導に使用される初期細胞集団の少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、一般的には少なくとも50%の細胞収率を含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、凍結培地及びインキュベーション培地の両方が抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション培地及び凍結培地の両方への抗凝固剤の添加は、以下に限定しないが、例えばタイミング及び/または細胞採取中に添加される抗凝固剤の種類などの細胞採取条件に関係なく、集団の異なる調製物間の高く安定した細胞収率をもたらす。いくつかの実施形態では、インキュベーション培地及び凍結培地の両方への抗凝固剤の添加は、白血球アフェレーシス中に添加される抗凝固剤のタイミング及び/または種類に関係なく、細胞調製物の高く安定した収率をもたらす。いくつかの実施形態では、高いトリグリセライドレベルの存在下での細胞調製物の作製は、異なる調製物間の低い、及び/または不安定な細胞収率をもたらす。いくつかの実施形態では、高いトリグリセライドレベルを有するドナーの血液からの細胞調製物の作製は、細胞調製物の低い、及び/または不安定な細胞収率をもたらす。いくつかの実施形態では、「高いトリグリセライドレベル」という用語は、同一の性別及び年齢の健康な対象の正常レベルを上回るトリグリセライドレベルを指す。いくつかの実施形態では、「高いトリグリセライドレベル」という用語は、約1.7ミリモル/リットルを超えるトリグリセライドレベルを指す。本明細書で使用されるように、高く安定した収率は、対象に投与されたときに治療効率を実証する用量の調製を可能にするのに十分高い、集団における細胞収率を指す。いくつかの実施形態では、治療効率は、対象の免疫疾患、自己免疫疾患または炎症性疾患を治療、予防または改善する能力を指す。いくつかの実施形態では、高く安定した細胞収率は、最初に凍結した細胞からの集団における細胞の、少なくとも30%、おそらく少なくとも40%、一般的には少なくとも50%の細胞収率である。
【0077】
いくつかの実施形態では、高いトリグリセライドレベルを有するドナーから細胞調製物が得られる場合、ドナーは、以下からなる群より選択される少なくとも1つの手段をとる:これに限定しないが例えばスタチン及び/またはベザフィブラートなどのトリグリセライド低下薬の献血前の服用、献血の少なくとも8、10、12時間前の一定期間の断食、献血の少なくとも24、48、72時間前の血中トリグリセライドレベルを下げるための適切な食事の摂取、及びそれらの任意の組み合わせ。
【0078】
いくつかの実施形態では、集団における細胞収量は、アポトーシス誘導に供される細胞の最初の数のうちの組成物中の細胞数に関連する。本明細書で使用される場合、「早期アポトーシス状態の誘導」及び「アポトーシスの誘導」という用語は、互換的に使用され得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、凍結及び解凍後にインキュベーション培地でインキュベートされる。いくつかの実施形態では、解凍とインキュベーションとの間に少なくとも1つの洗浄ステップが存在する。本明細書で使用される場合、「インキュベーション培地」及び「アポトーシス誘導インキュベーション培地」という用語は互換的に使用される。いくつかの態様では、インキュベーション培地は、L-グルタミン、Hepesメチルプレドニゾロン及び血漿を含むRPMI1640培地を含む。一部の実施形態では、洗浄培地は、2mM L-グルタミン、10mM Hepes及び10v/v%血漿を含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション培地中の血漿は、細胞調製物の細胞が由来するドナーと同一のドナーに由来する。いくつかの実施形態では、血漿は、インキュベーションの日にインキュベーション培地に添加される。いくつかの態様では、インキュベーションは37℃及び5%COで行われる。
【0080】
いくつかの実施形態では、インキュベーション培地はメチルプレドニゾロンを含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション培地内のメチルプレドニゾロンは、単核濃縮細胞組成物中の細胞をさらに誘導して、早期アポトーシス状態に入れる。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物中の細胞は、メチルプレドニゾロンの存在下での凍結及びインキュベートの両方によって早期アポトーシス状態に入るように誘導される。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞集団の作製は、有利には、壊死を実質的に誘発することなく早期アポトーシス状態の誘導を可能にし、細胞は調製後約24時間の間、早期アポトーシス状態で安定したままである。
【0081】
いくつかの実施形態では、インキュベーション培地は、約10~100μg/mlの濃度のメチルプレドニゾロンを含む。いくつかの態様では、インキュベーション培地は、約40~60μg/ml、あるいは約45~55μg/mlの濃度のメチルプレドニゾロンを含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション培地は、50μg/mlの濃度のメチルプレドニゾロンを含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、インキュベーションは約2~12時間の間、おそらく4~8時間の間、一般的には約5~7時間の間、行われる。いくつかの実施形態では、インキュベーションは約6時間の間行われる。一部の実施形態では、インキュベーションは少なくとも6時間の間行われる。好ましい実施形態では、インキュベーションは6時間の間行われる。
【0083】
いくつかの実施形態では、インキュベーション培地は抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション培地への抗凝固剤の添加により、細胞調製物の収率が改善する。いくつかの実施形態では、インキュベーション培地中の抗凝固剤は、凍結培地内と同一の濃度である。いくつかの実施形態では、インキュベーション培地は、ヘパリン、ACD-A、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション培地で使用される抗凝固剤は、10U/mlの濃度でヘパリンを含むACD-Aである。
【0084】
いくつかの実施形態では、インキュベーション培地はヘパリンを含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション培地中のヘパリンは0.1~2.5U/mlの濃度である。いくつかの実施形態では、インキュベーション培地中のヘパリンは、0.1~2.5U/ml、おそらく0.3~0.7U/ml、一般的には約0.5U/mlの濃度である。特定の実施形態では、インキュベーション培地中のヘパリンは約0.5U/mlの濃度である。
【0085】
いくつかの態様では、インキュベーション培地はACD-Aを含む。いくつかの態様では、インキュベーション培地中のACD-Aは1~15v/v%の濃度である。いくつかの実施形態では、インキュベーション培地中のACD-Aは、1~15v/v%、おそらく4~7v/v%、一般的には約5v/v%の濃度である。いくつかの実施形態では、インキュベーション培地中のACD-Aは、約5v/v%の濃度である。
【0086】
いくつかの実施形態では、細胞調製物の収量の改善は、調製物が作製された凍結細胞の数のうちの、調製物の早期アポトーシス生細胞の数の改善を含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、凍結培地への抗凝固剤の添加により、医薬集団の異なる調製物間で高く安定した収率がもたらされる。好ましい実施形態では、少なくとも凍結培地及びインキュベーション培地への抗凝固剤の添加により、使用される細胞収集プロトコールに関係なく、医薬組成物の異なる調製物間で高く安定した収率がもたらされる。
【0088】
いくつかの実施形態では、凍結培地は、ヘパリン、ACD-A、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、凍結培地で使用される抗凝固剤は、10U/mlの濃度でヘパリンを含むACD-Aである。いくつかの実施形態では、凍結培地は、10U/mlの濃度でヘパリンを含む、5v/v%のACD-A溶液を含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、凍結培地はヘパリンを含む。いくつかの実施形態では、凍結培地中のヘパリンは0.1~2.5U/mlの濃度である。いくつかの実施形態では、凍結培地中のヘパリンは、0.1~2.5U/ml、おそらく0.3~0.7U/ml、一般的には約0.5U/mlの濃度である。特定の実施形態では、凍結培地中のヘパリンは、約0.5U/mlの濃度である。
【0090】
いくつかの実施形態では、凍結培地はACD-Aを含む。いくつかの実施形態では、凍結培地中のACD-Aは、1~15v/v%の濃度である。いくつかの実施形態では、凍結培地中のACD-Aは、1~15v/v%、おそらく4~7v/v%、一般的には約5v/v%の濃度である。いくつかの実施形態では、凍結培地中のACD-Aは、約5v/v%の濃度である。
【0091】
いくつかの実施形態では、インキュベーション培地及び/または凍結培地への抗凝固剤の添加により、ドナーの血液中のトリグリセライドレベルに関係なく、集団内で高く安定した細胞収率がもたらされる。いくつかの実施形態では、インキュベーション培地及び/または凍結培地への抗凝固剤の添加により、正常な、または高いトリグリセライドレベルを有するドナーの血液から得られる場合、本発明の組成物内で高く安定した細胞収率がもたらされる。いくつかの実施形態では、少なくともインキュベーション培地への抗凝固剤の添加により、ドナーの血液中のトリグリセライドレベルに関係なく、組成物内で高く安定した細胞収率がもたらされる。いくつかの実施形態では、凍結培地及びインキュベーション培地への抗凝固剤の添加により、ドナーの血液中のトリグリセライドレベルに関係なく、組成物内で高く安定した細胞収率がもたらされる。
【0092】
いくつかの実施形態では、凍結培地及び/またはインキュベーション培地及び/または洗浄培地は、少なくとも0.1U/ml、おそらく少なくとも0.3U/ml、一般的には少なくとも0.5U/mlの濃度のヘパリンを含む。いくつかの実施形態では、凍結培地及び/またはインキュベーション培地及び/または洗浄培地は、少なくとも1v/v%、おそらく少なくとも3v/v%、一般的には少なくとも5v/v%の濃度のACD-Aを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、細胞収集後、凍結培地中で再懸濁されて凍結される前に、少なくとも1回の洗浄ステップを受ける。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、凍結及び解凍後に少なくとも1回の洗浄ステップを受ける。いくつかの実施形態では、洗浄ステップは、単核濃縮細胞の組成物の遠心分離と、遠心分離後の上清の抽出及び洗浄培地中での再懸濁とを含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、早期アポトーシス細胞集団の作製の各段階の間に少なくとも1回の洗浄ステップを受ける。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、早期アポトーシス細胞集団の作製全体を通した洗浄ステップ中に、洗浄培地に添加される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、インキュベーション後に少なくとも1回の洗浄ステップを受ける。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、PBSを用いて、インキュベーション後に少なくとも1回の洗浄ステップを受ける。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、投与培地中の細胞調製物の再懸濁の前の最終洗浄ステップに加えられない。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、投与培地中の細胞調製物の再懸濁の前の最終洗浄ステップにおいて使用されるPBSに添加されない。特定の実施形態では、抗凝固剤は投与培地に添加されない。
【0095】
いくつかの実施形態では、インキュベーション中の細胞濃度は約5×10cells/mlである。
【0096】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、凍結、解凍、及びインキュベーション後に投与培地中で懸濁され、それにより医薬集団がもたらされる。いくつかの実施形態では、投与培地は適切な生理学的緩衝液を含む。適切な生理学的緩衝液の非限定的な例は、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)などである。いくつかの実施形態では、投与培地はPBSを含む。いくつかの実施形態では、投与培地は、細胞の生存率の維持を促すサプリメントを含む。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、投与前に濾過される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、少なくとも200μmのフィルタを用いて投与前に濾過される。
【0097】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞集団は、得られる細胞調製物の最終体積が100~1000ml、おそらく200~800ml、一般的には300~600mlになるように、投与培地中で再懸濁される。
【0098】
いくつかの実施形態では、細胞採取は、単核濃縮細胞の組成物を得ることを指す。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞集団の作製中に実行される洗浄ステップは、洗浄培地中で実行される。特定の実施形態では、早期アポトーシス細胞集団の作製のインキュベーションステップが洗浄培地中で実施されるまで、洗浄ステップが実施される。いくつかの実施形態では、洗浄培地は、L-グルタミン及びHepesが補われたRPMI 1640培地を含む。いくつかの実施形態では、洗浄培地は、2mM L-グルタミン及び10mM Hepesが補われたRPMI 1640培地を含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、洗浄培地は抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、洗浄培地は、ヘパリン、ACD-A、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、洗浄培地中の抗凝固剤の濃度は、凍結媒体中の濃度と同一の濃度である。いくつかの実施形態では、洗浄培地中の抗凝固剤の濃度は、インキュベーション培地中の濃度と同一の濃度である。いくつかの実施形態では、洗浄培地中で使用される抗凝固剤は、10U/mlの濃度でヘパリンを含むACD-Aである。
【0100】
いくつかの実施形態では、洗浄培地はヘパリンを含む。いくつかの実施形態では、洗浄培地中のヘパリンは0.1~2.5U/mlの濃度である。いくつかの実施形態では、洗浄培地中のヘパリンは、0.1~2.5U/ml、おそらく0.3~0.7U/ml、一般的には約0.5U/mlの濃度である。特定の実施形態では、洗浄培地中のヘパリンは、約0.5U/mlの濃度である。
【0101】
いくつかの実施形態では、洗浄培地はACD-Aを含む。いくつかの実施形態では、洗浄培地中のACD-Aは、1~15v/v%の濃度である。いくつかの実施形態では、洗浄培地中のACD-Aは、1~15v/v%、おそらく4~7v/v%、一般的には約5v/v%の濃度である。いくつかの実施形態では、洗浄培地中のACD-Aは、約5v/v%の濃度である。
【0102】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、対象への意図される集団の投与の数時間前に解凍される。いくつかの態様では、単核濃縮細胞の組成物は約33℃~39℃で解凍される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、約30~240秒間、好ましくは40~180秒間、最も好ましくは50~120秒間解凍される。
【0103】
いくつかの態様では、単核濃縮細胞の組成物は、意図される集団の投与の少なくとも10時間前、あるいは意図される集団の投与の少なくとも20、30、40または50時間前に解凍される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、意図される集団の投与の少なくとも15~24時間前に解凍される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、意図される集団の投与の少なくとも約24時間前に解凍される。いくつかの態様では、単核濃縮細胞の組成物は、意図される集団の投与の少なくとも20時間前に解凍される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、意図される集団の投与の30時間前に解凍される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、意図される集団の投与の少なくとも24時間前に解凍される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、解凍の前及び/または後に洗浄培地で洗浄する少なくとも1つのステップを受ける。
【0104】
いくつかの実施形態では、組成物はメチルプレドニゾロンをさらに含む。いくつかの実施形態では、メチルプレドニゾロンの濃度は30μg/mlを超えない。
【0105】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は高用量で使用される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は高濃度で使用される。いくつかの実施形態では、ヒトアポトーシス多形核好中球(PMNs)が使用される。いくつかの実施形態では、その50%がアポトーシス細胞である細胞群が使用される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、ギムザ染色されたcytoprepによって実証される。いくつかの実施形態では、細胞の生存率は、トリパンブルー色素排除によって評価される。いくつかの実施形態では、細胞のアポトーシス及び壊死状態は、FACSによる検出を伴うアネキシンV/ヨウ化プロピジウム染色によって確認される。
【0106】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるアポトーシス細胞は壊死細胞を含まない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるアポトーシス細胞は、1%未満の壊死細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるアポトーシス細胞は、2%未満の壊死細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるアポトーシス細胞は、3%未満の壊死細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるアポトーシス細胞は、4%未満の壊死細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるアポトーシス細胞は、5%未満の壊死細胞を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、約140×10~210×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。いくつかの実施形態では、約10~100×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。いくつかの実施形態では、約20×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。いくつかの実施形態では、約30×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。いくつかの実施形態では、約40×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。いくつかの実施形態では、約50×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。いくつかの実施形態では、60×10個のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約60×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。いくつかの実施形態では、約70×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。いくつかの実施形態では、約80×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。いくつかの実施形態では、約90×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。いくつかの実施形態では、約1~15×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。いくつかの実施形態では、約10×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。いくつかの実施形態では、約15×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。
【0108】
いくつかの実施形態では、10×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。別の実施形態では、10×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。別の実施形態では、10×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。別の実施形態では、10×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。別の実施形態では、10×1010個のアポトーシス細胞の用量が投与される。別の実施形態では、10×1011個のアポトーシス細胞の用量が投与される。別の実施形態では、10×1012個のアポトーシス細胞の用量が投与される。別の実施形態では、10×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。別の実施形態では、10×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。別の実施形態では、10×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。別の実施形態では、10×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。
【0109】
いくつかの実施形態では、高用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、35×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。別の実施形態では、210×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。別の実施形態では、70×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。別の実施形態では、140×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。別の実施形態では、35~210×10個のアポトーシス細胞の用量が投与される。
【0110】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞が1回投与される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の複数用量が投与される。いくつかの実施形態では、2用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、3用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、4用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、5用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、6用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、7用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、8用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、9用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、9用量を超えるアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の複数用量が投与される。
【0111】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、これらに限定しないが、例えば静脈内投与、皮下投与、結節内投与、腫瘍内投与、くも膜下腔内投与、胸膜内投与、腹腔内投与、及び胸腺への直接投与を含む当該技術分野で公知の任意の方法によって投与され得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、アポトーシス細胞が投与される対象以外の対象から得られた細胞から調製される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2013/0156794A1号明細書に記載される1以上のステップを含む、同種ドナー細胞の拒絶の克服において有用な追加のステップを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、いくつかの実施形態では同種のアポトーシス細胞であるアポトーシス細胞の投与前に、完全または部分的なリンパ球除去(lymphodepletion)のステップを含む。いくつかの実施形態では、リンパ球除去は、同種のアポトーシス細胞がサイトカイン放出を制御するのに十分な期間、宿主対移植片反応を遅延させるように調整される。いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に開示される組成物及び方法の一部として使用されることにより、効力を有し、かつ移植片対宿主病を開始させない同種のアポトーシス細胞の使用を可能にする、2-アミノー2-[2-(4-オクチルフェニル)エチル]プロパン-1,3-ジオール(FTY720)、5-[4-フェニル-5-(トリフルオロメチル)チオフェン-2-イル]-3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル-1]-1,2,4-オキサジアゾール(SEW2871)、3-(2-(-ヘキシルフェニルアミノ)-2-オキソエチルアミノ)プロパン酸(W123)、2-アンモニオ-4-(2-クロロ-4-(3-フェノキシフェニルチオ)フェニル)-2-(ヒドロキシメチル)リン酸水素ブチル(KRP-203リン酸塩)、または当該技術分野で既知の他の薬剤などの、リンパ節からの同種のアポトーシスT細胞の移出を遅延させる薬剤を投与するステップを含む。別の実施形態では、同種のアポトーシスT細胞によるMHC発現は、同種の細胞の拒絶を低減するために抑制される。
【0113】
いくつかの実施形態では、本方法は、割合が減少した非静止非アポトーシス細胞、細胞活性化が抑制された非アポトーシス生細胞、増殖が低下した非アポトーシス生細胞、またはそれらの任意の組み合わせを含む単核アポトーシス細胞集団を作製するステップを含み、方法は、末梢血の単核濃縮細胞集団を採取するステップ、抗凝固剤を含む凍結培地で単核濃縮細胞集団を凍結するステップ、単核濃縮細胞集団を解凍するステップ、約10~100μg/mLの最終濃度のメチルプレドニゾロン及び抗凝固剤を含むアポトーシス誘導インキュベーション培地で、単核濃縮細胞集団をインキュベートするステップ、アポトーシス細胞集団を投与培地中で再懸濁するステップ、及び単核濃縮集団を不活化するステップを含み、不活化するステップはアポトーシス誘導の後に行われ、方法は、割合が減少した非静止非アポトーシス細胞、細胞活性化が抑制された非アポトーシス生細胞、増殖が低下した非アポトーシス生細胞、またはそれらの任意の組み合わせを含む単核アポトーシス細胞集団を作製する。
【0114】
いくつかの実施形態では、本方法は、アポトーシス細胞の集団を同一の対象に投与する前に、対象に由来するアポトーシス細胞の集団を照射するステップを含む(自家のアポ細胞)。いくつかの実施形態では、本方法は、アポトーシス細胞の集団をレシピエントに投与する前に、対象に由来するアポトーシス細胞を照射するステップを含む(同種のアポ細胞)。
【0115】
いくつかの実施形態では、細胞は、アポトーシス細胞集団内の残存生細胞の増殖及び/または活性化を抑制する方法で照射される。いくつかの実施形態では、細胞は、集団内の非アポトーシス生細胞の割合を減少させる方法で照射される。いくつかの実施形態では、不活化された早期アポトーシス細胞集団内の非アポトーシス生細胞の割合は、集団の50%未満に減少する。いくつかの実施形態では、不活化された早期アポトーシス細胞集団内の非アポトーシス生細胞の割合は、集団の40%未満に減少する。いくつかの実施形態では、不活化された早期アポトーシス細胞集団内の非アポトーシス生細胞の割合は、集団の30%未満に減少する。いくつかの実施形態では、不活化された早期アポトーシス細胞集団内の非アポトーシス生細胞の割合は、集団の20%未満に減少する。いくつかの実施形態では、不活化された早期アポトーシス細胞集団内の非アポトーシス生細胞の割合は、集団の10%未満に減少する。いくつかの実施形態では、不活化された早期アポトーシス細胞集団内の非アポトーシス生細胞の割合は、集団の0%に減少する。
【0116】
別の実施形態では、照射されたアポトーシス細胞は、それらの早期のアポトーシス特性、免疫調節特性、安定性特性のすべてを維持する。別の実施形態では、照射するステップはUV照射を使用する。別の実施形態では、照射するステップはX線照射を使用する。別の実施形態では、照射するステップはγ線照射を使用する。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、割合が減少した非アポトーシス生細胞、アポトーシス細胞調製物内に存在する細胞活性化が抑制された非アポトーシス生細胞を有する調製物、アポトーシス細胞調製物内に存在する増殖が減少した非アポトーシス生細胞を有する調製物、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の照射は、照射されていないアポトーシス細胞と比較して死細胞の集団(PI+)を増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の照射は、照射されていないアポトーシス細胞と比較して死細胞の集団(PI+)を、約1%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の照射は、照射されていないアポトーシス細胞と比較して死細胞の集団(PI+)を、約2%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の照射は、照射されていないアポトーシス細胞と比較して死細胞の集団(PI+)を、約3%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の照射は、照射されていないアポトーシス細胞と比較して死細胞の集団(PI+)を、約4%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の照射は、照射されていないアポトーシス細胞と比較して死細胞の集団(PI+)を、約5%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の照射は、照射されていないアポトーシス細胞と比較して死細胞の集団(PI+)を、約6%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の照射は、照射されていないアポトーシス細胞と比較して死細胞の集団(PI+)を、約7%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の照射は、照射されていないアポトーシス細胞と比較して死細胞の集団(PI+)を、約8%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の照射は、照射されていないアポトーシス細胞と比較して死細胞の集団(PI+)を、約9%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の照射は、照射されていないアポトーシス細胞と比較して死細胞の集団(PI+)を、約10%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の照射は、照射されていないアポトーシス細胞と比較して死細胞の集団(PI+)を、約15%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の照射は、照射されていないアポトーシス細胞と比較して死細胞の集団(PI+)を、約20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%を超えて増加させない。
【0118】
いくつかの実施形態では、非アポトーシス生細胞の、含まれている画分が減少した、または存在しない細胞集団は、一実施形態では、生存可能な生細胞を有していない単核早期アポトーシス細胞集団を提供し得る。いくつかの実施形態では、非アポトーシス生細胞の、含まれている画分が減少した、または存在しない細胞集団は、一実施形態では、レシピエントにおいてGVHDを誘発しない単核アポトーシス細胞集団を提供し得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、照射されたアポ細胞を使用することにより、アポトーシス集団(生細胞のごく一部を含む)の使用によって生じ得る移植片対白血病効果が取り除かれ、実施例(実施例4を参照)に示される効果が、照射されたアポトーシス細胞からもたらされ、かつ、アポトーシス細胞集団内に存在する、細胞活性を有する生存可能な増殖細胞集団からはもたらされないことが実証される。
【0120】
別の実施形態では、本方法は、レシピエントへの投与の前に、ドナーからのWBCに由来するアポトーシス細胞を照射するステップを含む。いくつかの実施形態では、細胞は、アポトーシス細胞集団内の、残存する生細胞の増殖及び/または活性化を回避する方法で照射される。別の実施形態では、照射されたアポトーシス細胞は、それらの早期のアポトーシス特性、免疫調節特性、安定性特性のすべてを維持する。別の実施形態では、照射するステップはUV照射を使用する。別の実施形態では、照射するステップはX線照射を使用する。別の実施形態では、照射するステップはγ線照射を使用する。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、割合が減少した非アポトーシス生細胞、アポトーシス細胞調製物内に存在する細胞活性化が抑制された生非アポトーシス生細胞を有する調製物、アポトーシス細胞調製物内に存在する増殖が減少した非アポトーシス生細胞を有する調製物、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、プールされた単核アポトーシス細胞の調製物を含む。いくつかの実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞の調製物は、早期アポトーシス状態の単核細胞を含み、プールされた単核アポトーシス細胞は、割合が減少した非アポトーシス生細胞、細胞活性化が抑制された非アポトーシス生細胞を有する調製物、増殖が減少した非アポトーシス生細胞を有する調製物、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞は照射されている。別の実施形態では、いくつかの実施形態において、提供された血液から得られた白血球画分(WBC)に由来する、プールされた単核アポトーシス細胞調製物が本明細書に開示されている。
【0122】
いくつかの態様では、アポトーシス細胞調製物は照射される。別の実施形態では、照射は、γ線照射、X線照射、またはUV照射を含む。さらに別の実施形態では、照射された調製物は、照射されていないアポトーシス細胞調製物と比較して非アポトーシス細胞の数が少ない。別の実施形態では、照射された調製物は、照射されていないアポトーシス細胞調製物と比較して増殖した細胞の数が少ない。別の実施形態において、照射された調製物は、照射されていないアポトーシス細胞集団と比較して、潜在的に免疫学的に活性な細胞の数が少ない。
【0123】
いくつかの実施形態では、プールされた血液は、ドナーとレシピエントとの間で一致しない第三者の血液を含む。
【0124】
当業者であれば、「プールされた」という用語が、複数のドナーから収集され、後に使用するために調製され、保存され得る血液を包含し得ることを理解するであろう。この組み合わされた血液のプールは、その後処理され、プールされた単核アポトーシス細胞調製物が作製される。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、単核アポトーシス細胞の容易に利用可能な供給を確実にする。別の実施形態では、細胞は、アポトーシスが誘導されるインキュベーションステップの直前にプールされる。別の実施形態では、細胞は、インキュベーションステップ後に再懸濁のステップでプールされる。別の実施形態では、細胞は、照射ステップの直前にプールされる。別の実施形態では、細胞は、照射ステップ後にプールされる。別の実施形態では、細胞は、調製方法における任意のステップでプールされる。
【0125】
いくつかの実施形態では、プールされたアポトーシス細胞調製物は、約2-25単位の血液に存在する細胞に由来する。別の実施形態では、プールされたアポトーシス細胞調製物は、約2-5、2-10、2-15、2-20、5-10、5-15、5-20、5-25、10-15、10-20、10-25、6-13、または6-25単位の血液に存在する細胞から構成される。別の実施形態では、プールされたアポトーシス細胞調製物は、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25単位の血液に存在する細胞から構成される。必要な血液の単位数は、血液からのWBC回収効率にも依存する。例えば、低効率のWBC回収では単位を追加する必要があるが、高効率のWBC回収では必要な単位が少なくなる。いくつかの実施形態では、各単位は血液バッグである。別の実施形態では、プールされたアポトーシス細胞調製物は、少なくとも25単位の血液、少なくとも50単位の血液、または少なくとも100単位の血液に存在する細胞から構成される。
【0126】
いくつかの実施形態では、血液の単位は、献血からの白血球(WBC)画分を含む。別の実施形態では、献血は、血液センターまたは血液バンクから得られたものであり得る。別の実施形態では、献血は、プールされたアポトーシス細胞調製物の調製時に集められた病院のドナーから得られたものであり得る。別の実施形態では、複数のドナーから得られたWBCを含む血液の単位は、本明細書に開示される組成物及びその方法の目的のために作成された独立した血液バンクで保存及び維持される。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及びその方法の目的のために開発された血液バンクは、複数のドナーからのWBCを含む血液単位を供給することができ、白血球アフェレーシス装置を含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、プールされたWBCの単位はHLA適合によって制限されない。したがって、結果としてプールされたアポトーシス細胞調製物は、HLA適合によって制限されない細胞集団を含む。したがって、特定の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は同種細胞を含む。
【0128】
HLA適合によって制限されないプールされたWBCに由来するプールされた単核アポトーシス細胞調製物の利点は、WBC源の入手しやすさ、及びWBC取得コストの削減である。
【0129】
いくつかの実施形態では、プールされた血液は、HLA適合とは無関係の複数のドナーからの血液を含む。別の実施形態では、プールされた血液は、レシピエントとのHLA適合が考慮された複数のドナーからの血液を含む。例えば、ドナーとレシピエントの間で、1つのHLA対立遺伝子、2つのHLA対立遺伝子、3つのHLA対立遺伝子、4つのHLA対立遺伝子、5つのHLA対立遺伝子、6つのHLA対立遺伝子、または7つのHLA対立遺伝子が適合していた。別の実施形態では、複数のドナーが部分的に適合し、例えば、いくつかのドナーはHLA適合しており、1つのHLA対立遺伝子、2つのHLA対立遺伝子、3つのHLA対立遺伝子、4つのHLA対立遺伝子、5つのHLA対立遺伝子、6つのHLA対立遺伝子、または7つのHLA対立遺伝子が、いくつかのドナーとレシピエントとの間で適合していた。各可能性は、本明細書に開示される実施形態を含む。
【0130】
特定の実施形態では、いくつかの非アポトーシス生細胞(アポトーシス抵抗性)は、以下に記載されるアポトーシスの誘導ステップ後に残り得る(実施例1)。これらの非アポトーシス生細胞の存在は、いくつかの実施形態では、照射ステップの前に観察される。これらの非アポトーシス生細胞は、増殖または活性化される可能性がある。いくつかの実施形態では、複数のドナーに由来するプールされた単核アポトーシス細胞の調製物は、宿主に対して活性化されるか、互いに活性化されるか、またはその両方であってもよい。
【0131】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される照射された細胞調製物は、照射されていない細胞調製物と比較して細胞活性化を抑制され、増殖が低下した。別の実施形態では、照射は、γ線照射、X線照射、またはUV照射を含む。別の実施形態では、照射された細胞調製物は、照射されていない細胞調製物と比較して非アポトーシス細胞の数が減少している。別の実施形態では、照射は約10グレイ単位(Gy)を含む。別の実施形態では、照射は約15グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、照射は約20グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、照射は約25グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、照射は約30グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、照射は約35グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、照射は約40グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、照射は約45グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、照射は約50グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、照射は約55グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、照射は約60グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、照射は約65グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、照射は約70グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、照射は約75グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、照射は約80グレイ(Gy)で行われる。
【0132】
別の実施形態では、照射は約10~80グレイ単位(Gy)を含む。別の実施形態では、照射は約20~65グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、照射は約10~65グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、照射は約20~80グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、照射は約30~50グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、照射は最大2500Gyで行われる。別の実施形態では、照射されたプールされたアポトーシス細胞調製物は、照射されていないプールされたアポトーシス細胞調製物と同一または類似のアポトーシスプロファイル、安定性、及び有効性を維持する。
【0133】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるプールされた単核アポトーシス細胞調製物は、最大24時間安定的である。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は少なくとも24時間安定的である。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は24時間より長く安定的である。さらに別の実施形態では、本明細書に開示されるプールされた単核アポトーシス細胞調製物は、最大36時間安定的である。さらに別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、少なくとも36時間安定的である。さらなる態様では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は36時間より長く安定的である。別の実施形態では、本明細書に開示されるプールされた単核アポトーシス細胞調製物は、最大48時間安定的である。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は少なくとも48時間安定的である。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、48時間より長く安定的である。
【0134】
いくつかの実施形態では、プールされた細胞調製物を製造する方法は、細胞調製物を照射するステップを含み、それにより、単一の適合ドナーに由来するアポトーシス調製物において観察される、早期アポトーシス、免疫調節、及び安定性の各特性を維持する。なお、細胞調製物を照射するステップは、含まなくてもよい。別の実施形態では、本明細書に開示されるプールされた単核アポトーシス細胞調製物は、移植片対宿主病(GVHD)応答を誘発しない。
【0135】
細胞調製物の照射は、当該技術分野では安全であると考えられている。現在、WBCへの反応を防ぐべく、献血のために照射手順が日常的に行われている。
【0136】
別の実施形態では、本明細書に開示されるプールされた単核アポトーシス細胞調製物中のアポトーシス細胞の割合は100%に近く、それにより細胞調製物中の非アポトーシス生細胞の割合を減少させる。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の割合は少なくとも40%である。別の実施形態では、アポトーシス細胞の割合は少なくとも50%である。さらに別の実施形態では、アポトーシス細胞の割合は少なくとも60%である。さらに別の実施形態では、アポトーシス細胞の割合は少なくとも70%である。さらなる実施形態では、アポトーシス細胞の割合は少なくとも80%である。別の実施形態では、アポトーシス細胞の割合は少なくとも90%である。さらに別の実施形態では、アポトーシス細胞の割合は少なくとも99%である。したがって、非アポトーシス生細胞の、含まれている画分が減少した、または存在しない細胞調製物は、レシピエントにおいてGVHDを誘発しないプールされた単核アポトーシス細胞調製物を、一実施形態では提供し得る。各可能性は、本明細書で開示される実施形態を表す。
【0137】
あるいは、別の実施形態では、非アポトーシス性の生WBCの割合は、例えば標的沈殿により、生細胞集団を特異的に除去することによって低減される。別の実施形態では、ホスファチジルセリンに結合する磁気ビーズを使用して、非アポトーシス生細胞の割合を減少させてもよい。別の実施形態では、アポトーシス細胞の細胞表面上のマーカーに結合するが、非アポトーシス細胞の細胞表面上のマーカーには結合しない磁気ビーズを使用して、非アポトーシス生細胞の割合を減少させてもよい。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、アポトーシス細胞の細胞表面上のマーカーに結合するが、非アポトーシス細胞の細胞表面上のマーカーには結合しない磁気ビーズを使用して、さらなる調製のために選択されてもよい。さらに別の実施形態では、非アポトーシス性の生WBCの割合は、超音波の使用によって低減される。
【0138】
一実施形態では、アポトーシス細胞は、プールされた第三者のドナーから得られる。
【0139】
いくつかの実施形態では、プールされた細胞調製物は、リンパ球、単球、及びナチュラルキラー細胞からなる群から選択される少なくとも1つの細胞型を含む。別の実施形態では、プールされた細胞調製物は、単核細胞の濃縮された集団を含む。いくつかの実施形態では、プールされた単核は、リンパ球、単球、及びナチュラルキラー細胞からなる群から選択される細胞型を含む単核濃縮細胞調製物である。別の実施形態では、単核濃縮細胞調製物は、顆粒球(すなわち、好中球、好塩基球及び好酸球)としても知られる15%以下、あるいは10%以下、一般的には5%以下の多形核白血球を含む。別の実施形態では、プールされた単核細胞調製物は顆粒球を欠いている。
【0140】
別の実施形態では、プールされた単核濃縮細胞調製物は、15%以下、あるいは10%以下、一般的には5%以下のCD15高発現細胞を含む。いくつかの実施形態では、プールされたアポトーシス細胞調製物は、15%未満のCD15高発現細胞を含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるプールされた単核濃縮細胞調製物は、少なくとも80%の単核細胞、少なくとも85%の単核細胞、あるいは少なくとも90%の単核細胞、または少なくとも95%の単核細胞を含み、各可能性は本明細書に開示されている別個の実施形態である。いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示されるプールされた単核濃縮細胞調製物は、少なくとも85%の単核細胞を含む。
【0142】
別の実施形態では、単核細胞の最終的なプール・パーセンテージが80%以上である任意のプールされた細胞調製物は、本明細書に開示されるプールされた単核濃縮細胞調製物と見なされる。したがって、多形核細胞(PMN)が増加した多形核細胞を有する細胞調製物と、高単核細胞を有する細胞調製物とをプールし、単核細胞の「プール」を80%以上にした細胞調製物は、本明細書に開示される調製物を構成する。いくつかの実施形態によれば、単核細胞はリンパ球及び単球を含む。
【0143】
当業者であれば、「単核細胞」という用語が、1つの葉状の核を有する白血球を包含し得ることを理解するであろう。別の実施形態では、本明細書に開示されるプールされたアポトーシス細胞調製物は、5%未満の多形核白血球を含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞はT細胞である。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、CAR-T細胞と同一の、プールされた第三者ドナーのT細胞に由来する。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、CAR-T細胞集団に由来する。
【0145】
驚くべきことに、アポトーシス細胞は、CAR-T細胞療法の有効性を維持しながら、これらに限定しないが例えばIL-6及びインターフェロン-γ(IFN-γ)などのサイトカインストームに関連するサイトカインの産生を、単独または組み合わせで減少させる(実施例2)。一実施形態では、アポトーシス細胞はマクロファージにおけるサイトカイン発現レベルに影響を与える。別の実施形態では、アポトーシス細胞はマクロファージにおけるサイトカイン発現レベルを低下させる。一実施形態では、アポトーシス細胞はマクロファージにおけるサイトカイン発現レベルを抑制する。一実施形態では、アポトーシス細胞はマクロファージにおけるサイトカイン発現レベルを阻害する。一実施形態では、アポトーシス細胞はCAR-T細胞投与前に存在するレベルに一致するか、略一致するようにIFN-γレベルを維持する。別の実施形態では、アポトーシス細胞はマクロファージにおけるサイトカイン発現レベルに影響を与えるが、CAR-T細胞におけるサイトカイン発現レベルには影響を与えない。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、DCにおけるサイトカイン発現レベルに影響を与えるが、CAR-T細胞におけるサイトカイン発現レベルには影響を与えない。したがって、CAR-T細胞療法の有効性の維持においてアポトーシス細胞が有用であることは予期していなかった。
【0146】
別の実施形態では、マクロファージ、DC、またはそれらの組み合わせにおけるサイトカイン発現レベルに対するアポトーシス細胞の効果により、CRSが低下する。別の実施形態では、マクロファージ、DC、またはそれらの組み合わせにおけるサイトカイン発現レベルに対するアポトーシス細胞の効果により、重度のCRSが低下する。別の実施形態では、マクロファージ、DC、またはそれらの組み合わせにおけるサイトカイン発現レベルに対するアポトーシス細胞の効果により、CRSが抑制される。別の実施形態では、マクロファージ、DC、またはそれらの組み合わせにおけるサイトカイン発現レベルに対するアポトーシス細胞の効果により、重度のCRSが抑制される。別の実施形態では、マクロファージ、DC、またはそれらの組み合わせにおけるサイトカイン発現レベルに対するアポトーシス細胞の効果により、CRSが阻害される。別の実施形態では、マクロファージ、DC、またはそれらの組み合わせにおけるサイトカイン発現レベルに対するアポトーシス細胞の効果により、重度のCRSが阻害される。別の実施形態では、マクロファージ、DC、またはそれらの組み合わせにおけるサイトカイン発現レベルに対するアポトーシス細胞の効果により、CRSが予防される。別の実施形態では、マクロファージ、DC、またはそれらの組み合わせにおけるサイトカイン発現レベルに対するアポトーシス細胞の効果により、重度のCRSが予防される。
【0147】
別の実施形態では、アポトーシス細胞は、サイトカイン発現レベルの変化によることなく、T細胞の死を引き起こす。
【0148】
別の実施形態では、アポトーシス細胞は、さもなければサイトカインストームを増幅するサイトカインを分泌するマクロファージ及び樹状細胞のプライミングに拮抗する。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、炎症反応を抑制し、及び/またはサイトカインの過剰な放出を防ぐTregを増加させる。
【0149】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の投与は、1以上の炎症誘発性サイトカインを阻害する。いくつかの実施形態では、炎症誘発性サイトカインは、IL-1β、IL-6、TNF-α、IFN-γ、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与は、1以上の抗炎症性サイトカインの分泌を促進する。いくつかの実施形態では、抗炎症性サイトカインは、TGF-β、IL10、PGE2、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0150】
別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与により、TLRリガンドへの曝露後の樹状細胞の成熟が阻害される。別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与により、潜在的に寛容原性の樹状細胞が作製され、樹状細胞は、いくつかの実施形態では、移動することができ、いくつかの実施形態では、移動はCCR7に起因する。別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与により、いくつかの実施形態では抗原提示細胞の炎症を抑制する、一実施形態ではTAM受容体シグナル伝達(Tyro3、Axl及びMer)である様々なシグナル伝達事象が誘発される。
【0151】
いくつかの実施形態では、Tyro-3、Axl、及びMerは、キナーゼドメイン及び接着分子様細胞外ドメイン内の保存された配列によって特徴付けられる受容体チロシンキナーゼ(RTK)のTAMファミリーを構成する。別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与により、MerTKを介したシグナル伝達が活性化される。別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与により、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)/AKT経路が活性化され、いくつかの実施形態では、NF-κBが負に調節される。別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与により、インフラマソームが負に調節され、これは一実施形態において炎症誘発性サイトカイン分泌、DC成熟、またはそれらの組み合わせの阻害をもたらす。別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与により、Nr4a、Thbs1、またはそれらの組み合わせなどの抗炎症遺伝子の発現が上方制御される。別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与により、いくつかの実施形態ではパネキシン1に依存的に蓄積される、高レベルのAMPが誘導される。別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与により、炎症が抑制される。
【0152】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の早期アポトーシス細胞の使用方法は、抗体と組み合わせた早期アポトーシス細胞またはその組成物の使用を含む。いくつかの実施形態では、抗体は腫瘍細胞抗原に対するものである。別の実施形態では、抗体はCD20に対するものである。別の実施形態では、抗体はリツキシマブ(Rtx)である。
【0153】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞及び抗体は同一の組成物に含まれる。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞及び抗体は異なる組成物に含まれる。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞及び抗体またはその組成物の組み合わせの投与は同時に行われる。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞及び抗体またはその組成物の組み合わせの投与は、抗体の投与前のアポトーシス細胞またはその組成物の投与を含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞及び抗体またはその組成物の組み合わせの投与は、抗体の投与後のアポトーシス細胞またはその組成物の投与を含む。
【0154】
別の実施形態では、抗体はトラスツズマブ(Herceptin、Genentech社):ERBB2に対するヒトIgG1である。別の実施形態では、抗体はベバシズマブ(Avastin、Genentech/Roche社):VEGFに対するヒトIgG1である。別の実施形態では、抗体はセツキシマブ(Erbitux、Bristol-Myers Squibb社):EGFRに対するキメラヒト-マウスIgG1である。別の実施形態では、抗体はパニツムマブ(Vectibix、Amgen社):EGFRに対するヒトIgG2である。別の実施形態では、抗体はイピリムマブ(Yervoy、Bristol-Myers Squibb社):CTLA4に対するIgG1である。
【0155】
別の実施形態では、抗体はアレムツズマブ(Campath、Genzyme社):CD52に対するヒトIgG1である。別の実施形態では、抗体はオファツムマブ(Arzerra、Genmab社):CD20に対するヒトIgG1である。別の実施形態では、抗体はゲムツズマブオゾガマイシン(Mylotarg、Wyeth社):CD33に対するヒトIgG4である。別の実施形態では、抗体はブレンツキシマブベドチン(Adcetris、Seattle Genetics社):CD30に対するキメラIgG1である。別の実施形態では、抗体は90Y標識イブリツモマブ・チウキセタン(Zevalin、IDEC Pharmaceuticals社):CD20に対するマウスIgG1である。別の実施形態では、抗体は131I標識トシツモマブ(Bexxar、GlaxoSmithKline社):CD20に対するマウスIgG2である。
【0156】
別の実施形態では、抗体は、血管内皮増殖因子受容体-2(VEGFR-2)に対するラミュシルマブである。別の実施形態では、抗体は、ラムシルマブ(Cyramza Injection、Eli Lilly and Company社)、ブリナツモマブ(BLINCYTO、Amgen Inc.社)、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA、Merck Sharp&Dohme Corp.社)、オビヌツズマブ(GAZYVA、Genentech,Inc.社、GA101として以前から知られている)、ペルツズマブ注射(PERJETA、Genentech,Inc.社)、またはデノスマブ(Xgeva、Amgen Inc.社)である。別の実施形態では、抗体はバシリキシマブ(Simulect;Novartis社)である。別の実施形態では、抗体はダクリズマブ(Zenapax;Roche社)である。
【0157】
別の実施形態では、アポトーシス細胞と組み合わせて投与される抗体は、本明細書に記載されている、及び/または当該技術分野で知られている、腫瘍若しくは癌抗原またはその断片に対するものである。別の実施形態では、抗体は腫瘍関連抗原に対するものである。別の実施形態では、抗体は、血管新生因子である腫瘍関連抗原またはその断片に対するものである。
【0158】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体は、本明細書に記載される組成物、例えばこれに限定しないが、早期アポトーシス細胞を含有する組成物など、と組み合わせて使用され得る。
【0159】
キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)
【0160】
いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)は、細胞外腫瘍結合部分、最も一般的にはモノクローナル抗体由来の単鎖可変断片(scFv)に融合した細胞内T細胞シグナル伝達ドメインで構成される抗原標的化受容体の一種である。CARは、MHC媒介提示とは無関係に細胞表面抗原を直接認識し、すべての患者の任意の抗原に特異的な単一の受容体構築物の使用を可能する。初期のCARは、抗原認識ドメインをT細胞受容体(TCR)複合体のCD3ζ活性化鎖に融合させた。これらの第1世代のCARは、インビトロでT細胞エフェクター機能を誘導したが、インビボでの抗腫瘍効果が不十分なため大きく制限された。第2世代のCAR(subsequent CAR iterations)には、CD28または4-1BB(CD137)及びOX40(CD134)などの様々なTNF受容体ファミリー分子などの細胞内ドメインを含む、CD3ζと連携した二次共刺激シグナルが含まれる。さらに、第3世代の受容体には、CD3ζに加えて、最も一般的にはCD28及び4-1BBからの2つの共刺激シグナルが含まれる。第2世代及び第3世代のCARは抗腫瘍効果を劇的に改善し、ある場合には、進行癌患者の完全寛解を誘導した。
【0161】
いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は、その受容体がその抗原に結合すると活性化される抗原受容体を含む、免疫応答性細胞である。
【0162】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法で使用されるCAR-T細胞は、第1世代のCAR-T細胞である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法で使用されるCAR-T細胞は、第2世代のCAR-T細胞である。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される組成物及び方法で使用されるCAR-T細胞は、第3世代CAR-T細胞である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法で使用されるCAR-T細胞は、第四世代のCAR-T細胞である。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞の各世代は、より早い世代のCAR-T細胞よりも強力である。
【0163】
いくつかの実施形態では、第1世代のCARは、1つのシグナル伝達ドメイン、一般的にはCD3 TCRζ鎖の細胞質シグナル伝達ドメインを有する。
【0164】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるCAR-T細胞は、第2世代のCAR-T細胞である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるCAR-T細胞は、三者間キメラ受容体(TPCR)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるCAR-T細胞は、共刺激とは無関係にナイーブT細胞を活性化する1以上のシグナル伝達部分を含む。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は、腫瘍壊死因子受容体ファミリーの1以上のメンバーをさらにコードし、いくつかの実施形態では、メンバーは、CD27、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、またはそれらの組み合わせである。
【0165】
第3世代のCAR-T細胞は、2つの共刺激ドメインのシグナル伝達の可能性を利用しようとする:いくつかの実施形態では、CD28ドメインの後に4-1BBまたはOX-40シグナル伝達ドメインが続く。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される組成物及び方法で使用されるCAR-T細胞は、いくつかの実施形態ではCD28である共刺激シグナル伝達ドメインをさらにコードする。いくつかの態様では、シグナル伝達ドメインは、CD3ζ鎖、CD97、GDI 1a-CD18、CD2、ICOS、CD27、CD154、CDS、OX40、4-1BB、CD28シグナル伝達ドメイン、またはそれらの組み合わせである。
【0166】
いくつかの実施形態では、テロメアの長さ及び複製能力は、養子移入されたT細胞株の生着効率及び抗腫瘍効果と相関する。いくつかの態様では、CD28刺激はT細胞のテロメア長を維持する。
【0167】
いくつかの実施形態では、CAR修飾T細胞の効力は、増殖性サイトカイン(すなわち、IL-12)または共刺激リガンド(すなわち、4-1BBL)をコードする遺伝子を含む追加の遺伝子の導入によってさらに増強されてもよく、したがって「装甲の」第4世代のCAR修飾T細胞が作製される。いくつかの実施形態では、「装甲CAR-T細胞」は、抑制性腫瘍微小環境から保護されているCAR-T細胞である。いくつかの実施形態では、「装甲」CAR技術は、全身性副作用を最小化する目的で、腫瘍微小環境内の免疫応答を増幅するために、可溶性シグナル伝達タンパク質の局所分泌を組み込む。いくつかの態様では、シグナル伝達タンパク質シグナルはIL-12であり、これはT細胞の活性化及び動員を刺激することができる。いくつかの実施形態では、「装甲」CAR技術は、微小環境及び強力な免疫抑制機構によって堅牢な抗腫瘍応答の確立がより困難になる可能性のある固形腫瘍適応症において、特に有用である。
【0168】
いくつかの態様では、CAR-T細胞は、アポトーシスの予防、腫瘍微小環境の再構築、恒常性増殖の誘導、及び指向性T細胞ホーミングを促進するケモカイン受容体に関与する分子をコードするように遺伝的に改変される。
【0169】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法で使用されるCAR-T細胞療法は、サイトカイン導入遺伝子の発現、小分子阻害剤との併用療法、またはモノクローナル抗体を用いて強化される。いくつかの実施形態では、二重CAR(dual CAR)及びケモカイン受容体を用いた腫瘍細胞のより特異的な標的化を含む、CAR-T細胞療法の改善を目的とする他の方法は、本明細書に開示されるCAR-T細胞及びCAR-T細胞療法の一部とみなされるべきである。
【0170】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法のCAR-T細胞は、癌細胞と正常細胞とに対するCAR-T細胞の特異性を高めるために、阻害または増幅シグナルのいずれかをもたらすことができる第2の結合ドメインを含む。例えば、CAR-T細胞は、1つの標的タンパク質の存在下でトリガされるが、第2のタンパク質が存在する場合には阻害されるように設計され得る。あるいは、最大限の活性化のためには2つの標的タンパク質が必要であるようにも設計され得る。これらのアプローチは、正常組織と比較して腫瘍に対するCARの特異性を高め得る。
【0171】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される組成物及び方法で使用されるCAR-T細胞は、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフから構成されるシグナル伝達モジュールをコードする抗体ベースの外部受容体構造及びサイトゾルドメインをコードする。
【0172】
いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は、免疫抑制活性を有するポリペプチドに結合する単鎖可変断片(scFv)をさらにコードする。いくつかの実施形態では、免疫抑制活性を有するポリペプチドは、CD47、PD-1、CTLA-4、またはそれらの組み合わせである。
【0173】
いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は、免疫刺激活性を有するポリペプチドに結合する単鎖可変断片(scFv)をさらにコードする。いくつかの実施形態では、免疫刺激活性を有するポリペプチドは、CD28、OX-40、4-1BB、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は、いくつかの実施形態では抗原の免疫刺激活性を増強するCD40リガンド(CD40L)をさらにコードする。いくつかの実施形態では、免疫細胞は細胞傷害性である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変のための細胞傷害性細胞は、対象またはドナーの骨髄から得ることができる。他の場合には、細胞は幹細胞から得られる。例えば、細胞傷害性細胞は、ヒト胚性幹細胞またはヒト人工多能性T細胞などのヒト多能性幹細胞に由来し得る。人工多能性幹細胞(IPSC)の場合、そのような多能性T細胞は、遺伝的に改変された細胞傷害性細胞が提供される対象からの体細胞を使用して得ることができる。いくつかの実施形態では静脈穿刺、アフェレーシス法、アフェレーシス若しくは静脈穿刺後の白血球動員、または骨髄吸引によって細胞を採取することにより、対象またはドナーから、免疫細胞を得ることができる。
【0174】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、対象から免疫細胞を取得するステップと、キメラ抗原受容体を発現させるために免疫細胞を遺伝子改変するステップとを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、対象から免疫細胞を取得するステップと、キメラ抗原受容体を発現させるために免疫細胞を遺伝子改変するステップと、対象におけるサイトカイン産生を減少させるが、アポトーシス細胞集団とともに投与されないCARを発現する免疫細胞と比較して実質的に影響のない細胞毒性をもたらすアポトーシス細胞集団を組み合わせるステップとを含む(図10A-10B及び図11)。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、対象から免疫細胞を取得するステップと、キメラ抗原受容体を発現させるために免疫細胞を遺伝子改変するステップと、対象におけるサイトカイン産生を減少させるが、アポトーシス細胞上清とともに投与されないCARを発現する免疫細胞と比較して、実質的に影響のない細胞毒性をもたらすアポトーシス細胞上清または上清を含有する組成物を組み合わせるステップとを含む。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞集団またはアポトーシス細胞からの上清の投与は、キメラ抗原受容体を発現する免疫細胞の効力を低下させない。
【0175】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるのは免疫細胞であり、いくつかの実施形態では、T細胞が対象に対して自家であるCAR-T細胞である。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は対象に対して異種である。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は同種である。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は普遍的な同種CAR-T細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、自家、同種、または人工前駆細胞若しくは幹細胞からインビトロで由来するものであり得る。
【0176】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCAR-T細胞及びアポトーシス細胞は、両方とも同一の供給源に由来する。さらなる実施形態では、本明細書に記載のCAR-T細胞及びアポトーシス細胞は、両方とも対象に由来する(図10A及び10B)。代替実施形態では、本明細書に記載のCAR-T細胞及びアポトーシス細胞は、異なる供給源に由来する。さらに別の実施形態では、CAR-T細胞は自家であり、本明細書に記載のアポトーシス細胞は同種である(図11)。同様に、アポトーシス細胞上清は、いくつかの実施形態では自家細胞であってもよい、CAR-T細胞と同一の供給源に由来する細胞から作製されてもよく、または、アポトーシス細胞上清は、CAR-T細胞の供給源とは異なる供給源に由来する細胞から作製されてもよいことを当業者であれば理解するであろう。
【0177】
当業者であれば、「異種」という用語が、異なる生物に由来する組織、細胞、核酸分子またはポリペプチドを包含し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、異種タンパク質は、レシピエントとは異なるT細胞タイプまたは異なる種から最初にクローン化されたか、または由来し、細胞または細胞から得られたサンプルには通常存在しないタンパク質である。
【0178】
したがって、本明細書に開示される一実施形態は、細胞がそれらの細胞毒性機能を保持する、キメラ抗原受容体(CAR)を含む細胞毒性免疫細胞(例えば、NK細胞またはT細胞)に関する。いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体はT細胞に対して外因性である。いくつかの実施形態では、CARは組換えによって発現される。いくつかの実施形態では、CARはベクターから発現される。
【0179】
いくつかの態様では、CAR-T細胞を生成するために利用されるT細胞は、ナイーブCD4T細胞である。いくつかの態様では、CAR-T細胞を生成するために利用されるT細胞は、ナイーブCD8T細胞である。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞を生成するために利用されるT細胞は、エフェクターT細胞である。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞を生成するために利用されるT細胞は、制御性T細胞(Treg)である。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞を生成するために利用されるT細胞は、細胞傷害性T細胞である。
【0180】
遺伝的に改変された免疫細胞、例えばT細胞の供給源は、例えば、以下の文献に広範に記載されている:「Themelli et al.(2015)New Cell Sources for T Cell Engineering and Adoptive Immunotherapy.Cell Stem Cell16:357-366」、「Han et al.(2013)Journal of Hematology&Oncology6:47-53」、「Wilkie et al.(2010)J Bio Chem 285(33):25538-25544」、「van der Stegen et al.(2013)J.Immunol191:4589-4598」。CAR-T細胞は、Creative Biolabs社(米国、ニューヨーク州所在)などの商業的供給源から注文することができ、CreativeBiolabs社は、キメラ抗原受容体(CAR)のカスタム構築及び生産サービスを提供し、組換えアデノウイルスワクチンによってコードされた保護免疫を誘導可能な既製のCAR構築ストックも提供する。カスタム製造のCAR-T細胞は、特別に設計されたCAR-T細胞を提供するPromab Biotechnologies社(米国、カリフォルニア州所在)から入手することもできる。
【0181】
標的抗原
【0182】
いくつかの実施形態では、CARは、抗原に向けられた抗体または抗体断片を介して抗原のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はポリクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体断片は単鎖可変断片(scFv)である。
【0183】
いくつかの実施形態では、TCRは、遺伝子改変されたT細胞受容体を介して抗原のエピトープに結合する。
【0184】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物のCAR-T細胞は、腫瘍関連抗原(TAA)に結合する。いくつかの実施形態では、腫瘍関連抗原は、ムチン1、細胞表面関連(MUC1)若しくは多型上皮ムチン(PEM)、アルギニンリッチ、早期腫瘍での変異(Armet)、熱ショックタンパク質60(HSP60)、カルネキシン(CANX)、メチレンテトラヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼ(NADP+依存性)2、メテニルテトラヒドロ葉酸シクロヒドロラーゼ(MTHFD2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、マトリックスメタロペプチダーゼ(MMP6)、Bメラノーマ抗原-1(BAGE-1)、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(GnTV)の異常転写、Q5H943、癌胎児性抗原(CEA)、Pmel、カリクレイン-4、マンマグロビン-1、MART-1、GPR143-OA1、前立腺特異抗原(PSA)、TRP1、チロシナーゼ、FGP-5、NEUプロトオンコジーン、Aft、MMP-2、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、テロメラーゼ関連タンパク質-2、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、ウロプラキンII、またはプロテイナーゼ3である。
【0185】
いくつかの実施形態では、CARはCD19またはCD20に結合して、白血病のようにB細胞を破壊したい場合にB細胞を標的とする。CD19はB細胞系統に特異的な表面受容体であり、プロB細胞から早期形質細胞までの幅広い発現によって、B細胞悪性腫瘍の免疫療法の魅力的な標的となる。いくつかの実施形態では、CARはROR1、CD22、またはGD2に結合する。いくつかの実施形態では、CARはNY-ESO-1に結合する。いくつかの実施形態では、CARはMAGEファミリータンパク質に結合する。いくつかの実施形態では、CARはメソセリンに結合する。いくつかの実施形態では、CARはc-erbB2に結合する。いくつかの実施形態では、CARは、BRAFV600E突然変異及びBCR-ABL転座などの腫瘍特異的な突然変異抗原に結合する。いくつかの実施形態では、CARは、HDにおけるEBV、子宮頸癌におけるHPV、及びメルケル癌におけるポリオーマウイルスなどの、腫瘍特異的なウイルス抗原に結合する。いくつかの態様では、CAR-T細胞はHer2/neuに結合する。いくつかの態様では、CAR-T細胞はEGFRvIIIに結合する。
【0186】
いくつかの態様では、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞はCD19抗原に結合する。いくつかの実施形態では、CARはCD22抗原に結合する。いくつかの態様では、CARはα葉酸受容体に結合する。いくつかの実施形態では、CARはCAIXに結合する。いくつかの実施形態では、CARはCD20に結合する。いくつかの実施形態では、CARはCD23に結合する。いくつかの実施形態では、CARはCD24に結合する。いくつかの実施形態では、CARはCD30に結合する。いくつかの実施形態では、CARはCD33に結合する。いくつかの実施形態では、CARはCD38に結合する。いくつかの実施形態では、CARはCD44v6に結合する。いくつかの実施形態では、CARはCD44v7/8に結合する。いくつかの実施形態では、CARはCD123に結合する。いくつかの実施形態では、CARはCD171に結合する。いくつかの実施形態では、CARは癌胎児性抗原(CEA)に結合する。いくつかの実施形態では、CARはEGFRvIIIに結合する。いくつかの実施形態では、CARはEGP-2に結合する。いくつかの実施形態では、CARはEGP-40に結合する。いくつかの実施形態では、CARはEphA2に結合する。いくつかの実施形態では、CARはErb-B2に結合する。いくつかの実施形態では、CARはErb-B 2,3,4に結合する。いくつかの実施形態では、CARはErb-B3/4に結合する。いくつかの実施形態では、CARはFBPに結合する。いくつかの実施形態では、CARは胎児型アセチルコリン受容体に結合する。いくつかの実施形態では、CARはGD2に結合する。いくつかの実施形態では、CARはGD3に結合する。いくつかの実施形態では、CARはHER2に結合する。いくつかの実施形態では、CARはHMW-MAAに結合する。いくつかの実施形態では、CARはIL-11Rαに結合する。いくつかの実施形態では、CARはIL-13Rα1に結合する。いくつかの実施形態では、CARはKDRに結合する。いくつかの実施形態では、CARはカッパ軽鎖に結合する。いくつかの実施形態では、CARはルイスYに結合する。いくつかの実施形態では、CARはL1細胞接着分子に結合する。いくつかの実施形態では、CARはMAGE-A1に結合する。いくつかの実施形態では、CARはメソセリンに結合する。いくつかの実施形態では、CARはCMV感染細胞に結合する。いくつかの実施形態では、CARはMUC1に結合する。いくつかの実施形態では、CARはMUC16に結合する。いくつかの実施形態では、CARはNKG2Dリガンドに結合する。いくつかの態様では、CARはNY-ESO-1(アミノ酸157-165)に結合する。いくつかの実施形態では、CARは癌胎児性抗原(h5T4)に結合する。いくつかの実施形態では、CARはPSCAに結合する。いくつかの実施形態では、CARはPSMAに結合する。いくつかの実施形態では、CARはROR1に結合する。いくつかの実施形態では、CARはTAG-72に結合する。いくつかの実施形態では、CARはVEGF-R2または他のVEGF受容体に結合する。いくつかの実施形態では、CARはB7-H6に結合する。いくつかの実施形態では、CARはCA9に結合する。いくつかの実施形態では、CARはαvβインテグリンに結合する。いくつかの実施形態では、CARは8H9に結合する。いくつかの実施形態では、CARはNCAMに結合する。いくつかの実施形態では、CARは胎児型アセチルコリン受容体に結合する。
【0187】
いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞はCD19抗原を標的とし、B細胞悪性腫瘍、ALL、濾胞性リンパ腫、CLL、及びリンパ腫を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はCD22抗原を標的とし、B細胞悪性腫瘍を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はα葉酸受容体または葉酸受容体αを標的とし、卵巣癌または上皮癌を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は、CAIXまたはG250/CAIXを標的とし、腎細胞癌を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はCD20を標的とし、リンパ腫、B細胞悪性腫瘍、B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、及び低悪性度のB細胞リンパ腫を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はCD23を標的とし、CLLを有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態において、CAR-T細胞はCD24を標的とし、膵臓腺癌を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はCD30を標的とし、リンパ腫またはホジキンリンパ腫を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はCD33を標的とし、AMLを有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はCD38を標的とし、非ホジキンリンパ腫を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はCD44v6を標的とし、いくつかの悪性腫瘍を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はCD44v7/8を標的とし、子宮頸癌を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はCD123を標的とし、骨髄性悪性腫瘍を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はCEAを標的とし、結腸直腸癌を有する対象に対する治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はEGFRvIIIを標的とし、神経膠芽腫を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はEGP-2を標的とし、複数の悪性腫瘍を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はEGP-40を標的とし、結腸直腸癌を有する対象に対して治療効果を有する。一部の実施形態では、CAR-T細胞はEphA2を標的とし、神経膠芽腫を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は、Erb-B2またはErbB3/4を標的とし、乳癌など、前立腺癌、結腸癌、様々な腫瘍を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はErb-B 2,3,4を標的とし、乳癌などを有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はFBPを標的とし、卵巣癌を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は胎児型アセチルコリン受容体を標的とし、横紋筋肉腫を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はGD2を標的とし、神経芽細胞腫、黒色腫、またはユーイング肉腫を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はGD3を標的とし、黒色腫を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はHER2を標的とし、髄芽腫、膵臓腺癌、神経膠芽腫、骨肉腫、または卵巣癌を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はHMW-MAAを標的とし、黒色腫を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はIL-11Rαを標的とし、骨肉腫を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はIL-13Rα1を標的とし、神経膠腫、神経膠芽腫、または髄芽腫を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はIL-13受容体α2を標的とし、いくつかの悪性腫瘍を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はKDRを標的とし、腫瘍血管系を標的とすることによって、腫瘍を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はカッパ軽鎖を標的とし、B細胞悪性腫瘍(B-NHL、CLL)を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はルイスYを標的とし、様々な癌腫または上皮由来腫瘍を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はL1細胞接着分子を標的とし、神経芽細胞腫を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は、MAGE-A1またはHLA-A1 MAGE-A1を標的とし、黒色腫を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はメソセリンを標的とし、中皮腫を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はCMV感染細胞を標的とし、CMVを有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はMUC1を標的とし、乳癌または卵巣癌を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はMUC16を標的とし、卵巣癌を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はNKG2Dリガンドを標的とし、骨髄腫、卵巣腫瘍、及び他の腫瘍を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は、NY-ESO-1(157-165)またはHLA-A2 NY-ESO-1を標的とし、多発性骨髄腫を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は癌胎児性抗原(h5T4)を標的とし、様々な腫瘍を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はPSCAを標的とし、前立腺癌を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はPSMAを標的とし、前立腺癌/腫瘍血管系を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はROR1を標的とし、B-CLL及びマントル細胞リンパ腫を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はTAG?72を標的とし、腺癌または胃腸癌を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はVEGF-R2または他のVEGF受容体を標的とし、腫瘍血管新生を標的とすることによって、腫瘍を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態において、CAR-T細胞はCA9を標的とし、腎細胞癌を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はCD171を標的とし、腎神経芽細胞腫を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞はNCAMを標的とし、神経芽細胞腫を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は胎児型アセチルコリン受容体を標的とし、横紋筋肉腫を有する対象に対して治療効果を有する。いくつかの実施形態では、CARは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるSadelain et al.(Cancer Discov.2013 Apr;3(4):388-398)の表1に記載されている標的抗原の1つに結合する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は炭水化物または糖脂質構造に結合する。
【0188】
いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は血管新生因子に結合し、これにより腫瘍血管系を標的とする。いくつかの実施形態では、血管新生因子はVEGFR2である。いくつかの実施形態では、血管新生因子はエンドグリンである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される血管新生因子は、アンジオジェニン;アンジオポエチン-1;Del-1;線維芽細胞成長因子:酸性(aFGF)及び塩基性(bFGF);フォリスタチン;顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF);肝細胞増殖因子(HGF)/散乱因子(SF);インターロイキン-8(IL-8);レプチン;ミッドカイン;胎盤成長因子;血小板由来内皮細胞増殖因子(PD-ECGF);血小板由来成長因子-BB(PDGF-BB);プレオトロフィン(PTN);プログラニュリン;プロリフェリン;形質転換成長因子α(TGF-α);形質転換成長因子β(TGF-β);腫瘍壊死因子α(TNF-α);血管内皮増殖因子(VEGF)/血管透過性因子(VPF)である。いくつかの実施形態では、血管新生因子は血管新生タンパク質である。いくつかの実施形態では、成長因子は血管新生タンパク質である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法で使用される血管新生タンパク質は、線維芽細胞成長因子(FGF);VEGF;VEGFR及びニューロピリン1(NRP-1);アンジオポエチン1(Ang1)及びTie2;血小板由来成長因子(PDGF;BBホモダイマー)及びPDGFR;形質転換成長因子β(TGF-β)、エンドグリン及びTGF-β受容体;単球走化性タンパク質-1(MCP-1);インテグリンαVβ3、αVβ5及びα5β1;VE-カドヘリン及びCD31;エフリン;プラスミノーゲン活性化因子;プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1;一酸化窒素合成酵素(NOS)及びCOX-2;AC133;またはId1/Id3である。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される組成物及び方法で使用する血管新生タンパク質は、いくつかの実施形態ではアンジオポエチン1、アンジオポエチン3、アンジオポエチン4またはアンジオポエチン6であるアンジオポエチンである。いくつかの実施形態では、エンドグリンはCD105、EDG、HHT1、ORW、またはORW1としてしも知られている。いくつかの実施形態では、エンドグリンはTGFβ共受容体である。
【0189】
いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は、感染因子に関連する抗原に結合する。いくつかの実施形態では、感染因子は結核菌である。いくつかの実施形態では、結核菌に関連する抗原は、抗原85B、リポタンパク質IpqH、ATP依存性ヘリカーゼ(putative)、特徴付けされていないタンパク質Rv0476/MTO4941前駆体、または特徴付けされていないタンパク質Rv1334/MT1376前駆体である。
【0190】
いくつかの態様では、CAR-T細胞は抗体に結合する。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は「抗体結合T細胞受容体」(ACTR)である。この実施形態によれば、CAR-T細胞はユニバーサルCAR-T細胞である。いくつかの実施形態では、抗体受容体を有するCAR-T細胞は、抗体の投与前、投与後、または抗体と同時に投与され、その後抗体に結合し、T細胞を腫瘍または癌に近接させる。いくつかの実施形態では、抗体は腫瘍細胞抗原に対するものである。いくつかの実施形態では、抗体はCD20に対するものである。いくつかの実施形態では、抗体はリツキシマブである。
【0191】
いくつかの実施形態では、抗体はトラスツズマブ(Herceptin;Genentech社):ERBB2に対するヒトIgG1である。いくつかの実施形態では、抗体はベバシズマブ(Avastin;Genentech/Roche社):VEGFに対するヒトIgG1である。いくつかの実施形態では、抗体はセツキシマブ(Erbitux;Bristol-Myers Squibb社):EGFRに対するキメラヒト-マウスIgG1である。いくつかの実施形態では、抗体はパニツムマブ(Vectibix、Amgen社):EGFRに対するヒトIgG2である。いくつかの実施形態では、抗体はイピリムマブ(Yervoy、Bristol-Myers Squibb社):CTLA4に対するIgG1である。
【0192】
いくつかの実施形態では、抗体はアレムツズマブ(Campath、Genzyme社):CD52に対するヒトIgG1である。いくつかの実施形態では、抗体は、オファツムマブ(Arzerra、Genmab社):CD20に対するヒトIgG1である。いくつかの実施形態では、抗体はゲムツズマブオゾガマイシン(Mylotarg、Wyeth社):CD33に対するヒトIgG4である。いくつかの実施形態では、抗体は、ブレンツキシマブベドチン(Adcetris;Seattle Genetics社):CD30に対するキメラIgG1である。いくつかの実施形態では、抗体は、90Y標識イブリツモマブ・チウキセタン(Zevalin、IDEC Pharmaceuticals社):CD20に対して向けられたマウスIgG1である。いくつかの実施形態では、抗体は、131I標識トシツモマブ(Bexxar、GlaxoSmithKline社):CD20に対するマウスIgG2である。
【0193】
いくつかの実施形態では、抗体は、血管内皮成長因子受容体-2(VEGFR-2)に対するラムシルマブである。いくつかの実施形態では、抗体は、ラムシルマブ(Cyramza Injection、Eli Lilly and Company社)、ブリナツモマブ(BLINCYTO、Amgen Inc.社)、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA、Merck Sharp&Dohme Corp.社)、オビヌツズマブ(GAZYVA、Genentech,Inc.社、GA101として以前から知られている)、ペルツズマブ投与(PERJETA、Genentech,Inc.社)、またはデノスマブ(Xgeva、Amgen Inc.社)。いくつかの実施形態では、抗体はバシリキシマブ(Simulect、Novartis社)である。いくつかの実施形態では、抗体はダクリズマブ(Zenapax、Roche社)である。
【0194】
いくつかの実施形態では、CAR-T細胞が結合される抗体は、本明細書に記載されている及び/または当該技術分野で知られている腫瘍または癌抗原またはその断片に対するものである。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞が結合する抗体は、腫瘍関連抗原に対するものである。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞が結合する抗体は、血管新生因子である腫瘍関連抗原またはその断片に対するものである。
【0195】
いくつかの実施形態では、CAR-T細胞が結合される抗体は、本明細書に記載されている、及び/または当該技術分野で知られている腫瘍または癌抗原またはその断片に対するものである。
【0196】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、これに限定しないが、例えばCAR-T細胞、早期アポトーシス細胞、またはそれらの任意の組み合わせを含有する組成物などの本明細書に記載の組成物と組み合わせて使用され得る。
【0197】
医薬組成物
【0198】
いくつかの実施形態では、癌または腫瘍の治療、予防、増殖の抑制、または発生率の低減のための医薬組成物が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、癌または腫瘍に罹患している対象の生存期間を延長させるための医薬組成物が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、腫瘍または癌の、大きさまたは成長速度を低下させるための医薬組成物が本明細書に開示される。
【0199】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載の早期アポトーシス細胞集団を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載の早期アポトーシス細胞集団と、薬学的に許容される賦形剤とを含む。
【0200】
本明細書で使用される「組成物」及び「医薬組成物」という用語は、いくつかの実施形態では、互換的に使用され、すべて同一の品質及び意味を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される状態または疾患の治療のための医薬組成物が本明細書に開示される。
【0201】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、遺伝子改変された免疫細胞の増殖速度を維持または増加させるためのものである。さらなる実施形態では、遺伝子改変免疫細胞の増殖速度を維持または増加させる方法は、サイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生率の低減または阻害のためのステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変免疫細胞療法の効力を高めるための医薬組成物が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、免疫細胞療法の効力を増大させる方法で使用される組成物は、CRSまたはサイトカインストームの発生率の低減または阻害のためのステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、対象における腫瘍の癌を治療、予防、阻害、発生率の低減、改善、または緩和する方法のための組成物が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、対象における癌または腫瘍の治療、予防、発生率の低下、改善、または緩和のための方法で使用される組成物は、CRSまたはサイトカインストームの発生率の低減または阻害のためのステップをさらに含む。
【0202】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変免疫細胞は、キメラ抗原受容体CAR-T細胞を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変免疫細胞は、細胞傷害性Tリンパ球を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変受容体は、遺伝子改変T細胞受容体を含む。
【0203】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は早期アポトーシス細胞集団を含む。
【0204】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の状態または疾患の治療のための医薬組成物は、本明細書に記載の有効量のCAR-T細胞と、薬学的に許容される賦形剤とを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の状態または疾患の治療のための医薬組成物は、本明細書に記載の有効量の細胞傷害性T細胞と、薬学的に許容される賦形剤とを含む。さらに別の実施形態では、本明細書に記載の状態または疾患の治療のための医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤中に、本明細書に記載の有効量の早期アポトーシス細胞集団を含む。
【0205】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の状態または疾患は、腫瘍または癌である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の目的のタンパク質またはペプチドに結合する遺伝子改変免疫細胞またはその受容体、例えばCAR-T細胞を含有する組成物が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質またはペプチドは、腫瘍抗原またはその断片を含む。
【0206】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示され、かつ本明細書に開示される方法で使用される組成物は、アポトーシス細胞と、薬学的に許容される賦形剤とを含む。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞を含有する組成物は、例えば、対象における癌または腫瘍の治療、予防、増殖の抑制、疾患進行の遅延、腫瘍負荷の低減、発生率の低減、またはそれらの任意の組み合わせのために、本明細書に開示される方法で使用される。
【0207】
いくつかの実施形態では、有効量のCAR-T細胞またはTCR-T細胞を含有する組成物は、アポトーシス細胞集団を含有する組成物と同一の組成物であり得る。さらに別の実施形態では、有効量の遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR-T細胞を含有する組成物は、アポトーシス細胞集団を含有する組成物と同一の組成物ではない。いくつかの実施形態では、組成物は、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)及びアポトーシス細胞、並びに薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0208】
いくつかの実施形態では、組成物に含まれるアポトーシス細胞は、早期アポトーシス状態のアポトーシス細胞を含む。いくつかの実施形態では、組成物に含まれるアポトーシス細胞は、プールされた第三者ドナー細胞である。
【0209】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR-T細胞を含有する組成物は、サイトカイン放出症候群に罹患している患者またはサイトカインストームを経験している患者のサイトカイン放出を予防、抑制、または調節するための追加の医薬組成物をさらに含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR-T細胞、及びアポトーシス細胞を含有する組成物は、サイトカイン放出症候群に罹患している患者またはサイトカインストームを経験している患者のサイトカイン放出を予防、抑制、または調節するための追加の医薬組成物をさらに含む。
【0210】
いくつかの実施形態では、追加の医薬組成物は、いくつかの実施形態ではイピリムマブであるCTLA-4遮断剤を含む。いくつかの実施形態では、追加の医薬組成物は、本明細書に開示されるα1抗トリプシン若しくはその断片、またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、追加の医薬組成物は、本明細書に開示されるテルル系化合物を含む。いくつかの実施形態では、追加の医薬組成物は、本明細書に開示される免疫調節剤を含む。いくつかの実施形態では、追加の医薬組成物は、CTLA-4遮断剤、α-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、テルル系化合物、免疫調節化合物、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0211】
いくつかの実施形態では、遺伝的改変免疫細胞、例えばCAR-T細胞と、CTLA-4遮断剤、α-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、アポトーシス細胞、テルル系化合物、または免疫調節剤のいずれか1つを含む医薬組成物とを含有する組成物は、単一の組成物を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR-T細胞と、CTLA-4遮断剤、α-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、アポトーシス細胞、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせのいずれか1つとを含む医薬組成物は、複数の組成物を含み、いくつかの実施形態ではCAR-T細胞である遺伝子改変免疫細胞、CTLA-4遮断剤、α-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、アポトーシス細胞、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせのそれぞれは、別個の組成物に含まれる。いくつかの実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR-T細胞と、CTLA-4遮断剤、α-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、アポトーシス細胞、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせのいずれか1つとを含む医薬組成物は、複数の組成物を含み、いくつかの実施形態ではCAR-T細胞である遺伝子改変免疫細胞、CTLA-4遮断剤、α-1抗トリプシン若しくはその断片若しくはその類似体、アポトーシス細胞、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせのそれぞれは、複数の組成物に含まれる。
【0212】
いくつかの実施形態では、組成物は、アポトーシス細胞と、追加の薬剤とを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、アポトーシス細胞と、抗体またはその機能的断片とを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、アポトーシス細胞と、RtX抗体またはその機能的断片とを含む。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞と抗体またはその機能的断片とは、別個の組成物に含まれ得る。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞と抗体またはその機能的断片とは、同一の組成物に含まれ得る。
【0213】
当業者であれば、「医薬組成物」が、生理学的に適切な担体及び賦形剤などの他の化学成分を含む、本明細書に記載の1以上の活性成分の調製を包含し得ることを理解するであろう。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を促進することである。
【0214】
いくつかの実施形態では、癌または腫瘍の治療、予防、増殖の抑制、または発生率の低減のための医薬組成物が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、癌または腫瘍に罹患している対象の生存期間を延長させるための医薬組成物が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、腫瘍または癌の大きさを低下させるか、または成長速度を低下させるための医薬組成物が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、癌または腫瘍に罹患している対象の腫瘍負荷を低減させる医薬品が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、癌または腫瘍に罹患している対象の疾患進行を遅延させるための医薬品が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、癌または腫瘍に罹患している対象の、癌または腫瘍の発生率を低減させるための医薬組成物が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、癌または腫瘍に罹患している対象の、癌または腫瘍の大きさ及び/または成長速度を低下させるための医薬組成物が本明細書に開示される。
【0215】
当業者であれば、「生理学的に許容される担体」、「薬学的に許容される担体」、「生理学的に許容される賦形剤」、及び「薬学的に許容される賦形剤」という語句は互換的に使用されてもよく、担体、賦形剤、または、生物に大きな刺激を引き起こさず、投与された有効成分の生物学的活性及び特性を無効にしない希釈剤を包含し得ることを理解するであろう。
【0216】
当業者であれば、「賦形剤」が、活性成分の投与をさらに促進するために医薬組成物に添加される不活性物質を包含し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、賦形剤には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖及びデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0217】
薬物の製剤及び投与の手法は、参照により本明細書に組み込まれる、ペンシルバニア州イーストン所在のMack Publishing Co.社の「Remington's Pharmaceutical Sciences」の最新版に記載されている。
【0218】
いくつかの実施形態では、組成物は同時に投与される。代替実施形態では、組成物は異なる時間に投与される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞を含有する組成物は、遺伝子改変免疫細胞またはその受容体の注入の前に投与される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞を含有する組成物は、CAR-T細胞の注入の前に投与される。
【0219】
いくつかの実施形態では、組成物は同時に投与される。代替実施形態では、組成物は異なる時間に投与される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞を含有する組成物は、抗体若しくはその断片、または、抗体若しくはその断片を含有する組成物の投与の前に投与される。
【0220】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞を含有する組成物は、抗体若しくはその断片、または、抗体若しくはその断片を含有する組成物の、約2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、22時間、24時間、36時間、48時間、60時間、または72時間前に投与される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清を含有する組成物は、抗体若しくはその断片、または、抗体若しくはその断片を含有する組成物の、約2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、22時間、24時間、36時間、48時間、60時間、または72時間前に投与される。
【0221】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞を含有する組成物は、抗体若しくはその断片、または、抗体若しくはその機能的断片を含有する組成物の、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、または15日前に投与される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清を含有する組成物は、抗体若しくはその機能的断片、または、抗体若しくはその機能的断片を含有する組成物の、約2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、または8週間前に投与される。
【0222】
いくつかの態様では、アポトーシス細胞を含有する組成物は、抗体若しくはその断片、または、抗体若しくはその断片を含有する組成物の注入後に投与される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞を含有する組成物は、抗体若しくはその断片、または、抗体若しくはその断片を含有する組成物の後に投与される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清を含有する組成物は、抗体若しくはその断片、または、抗体若しくはその断片を含有する組成物の投与後に投与される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清を含有する組成物は、抗体若しくはその断片、または、抗体若しくはその断片を含有する組成物の投与後に投与される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞を含有する組成物は、抗体若しくはその断片、または、抗体若しくはその断片を含有する組成物の約24時間後に投与される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞を含有する組成物は、抗体若しくはその断片、または、抗体若しくはその断片を含有する組成物の投与後に投与される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞を含有する組成物は、抗体若しくはその断片、または、抗体若しくはその断片を含有する組成物の投与の約2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、22時間、24時間、36時間、48時間、60時間、または72時間後に投与される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清を含有する組成物は、抗体若しくはその断片、または、抗体若しくはその断片を含有する組成物の投与の約2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、22時間、24時間、36時間、48時間、60時間、または72時間後に投与される。
【0223】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞を含有する組成物は、抗体若しくはその断片、または、抗体若しくはその機能的断片を含有する組成物の、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、または15日後に投与される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清を含有する組成物は、抗体若しくはその断片、または、抗体若しくはその機能的断片を含有する組成物の、約2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、または8週間後に投与される。
【0224】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞を含有する組成物は、CAR-T細胞とは無関係に投与される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞を含有する組成物は、追加の薬剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は抗体である。
【0225】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は治療用の組成物を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は治療上の効果をもたらす。
【0226】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は1回投与される。いくつかの実施形態では、組成物は2回投与される。いくつかの実施形態では、組成物は3回投与される。いくつかの実施形態では、組成物は4回投与される。いくつかの実施形態では、組成物は少なくとも4回投与される。いくつかの実施形態では、組成物は4回を超えて投与される。
【0227】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるCAR-T細胞は1回投与される。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は2回投与される。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は3回投与される。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は4回投与される。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は少なくとも4回投与される。いくつかの実施形態では、組成物は4回を超えて投与される。
【0228】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は治療用の組成物である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は治療上の効果を有する。
【0229】
いくつかの実施形態では、CAR-T細胞のみを含有する組成物と比較して炎症性サイトカインまたはケモカイン放出を低減させるが、CAR-T細胞のみを含有する組成物と比較して同等の細胞毒性を有する組成物が本明細書に開示される。
【0230】
当業者であれば、「生理学的に許容される担体」、「薬学的に許容される担体」、「生理学的に許容される賦形剤」、及び「薬学的に許容される賦形剤」という語句は互換的に使用されてもよく、担体、賦形剤、または、生物に大きな刺激を引き起こさず、投与された有効成分の生物学的活性及び特性を無効にしない希釈剤を包含し得ることを理解するであろう。
【0231】
当業者であれば、「賦形剤」が、活性成分の投与をさらに促進するために医薬組成物に添加される不活性物質を包含し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、賦形剤には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖及びデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0232】
薬物の製剤及び投与の手法は、参照により本明細書に組み込まれる、ペンシルバニア州イーストン所在のMack Publishing Co.社の「Remington's Pharmaceutical Sciences」の最新版に記載されている。
【0233】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は治療用の組成物を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は治療上の効果をもたらす。
【0234】
製剤
【0235】
早期アポトーシス細胞集団を含む本明細書に開示される医薬組成物は、選択されたpHに緩衝され得る無菌の液体製剤、例えば、等張性水溶液、懸濁液、エマルジョン、分散液、または粘性組成物として都合よく提供することができる。液体製剤は、通常、ゲル、他の粘性組成物、及び固体組成物よりも調整が容易である。さらに、液体組成物は、特に注射による投与が、いくらか好都合である。一方、粘性組成物は、特定の組織とのより長い接触期間をもたらすために、適切な粘度範囲内で調製することができる。液体または粘性の組成物は、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る担体を含むことができる。
【0236】
無菌注射液は、本明細書に記載され、本明細書に開示された方法の実施において利用される早期アポトーシス細胞集団を、必要に応じて様々な量の他の成分を含む必要量の適切な溶媒に組み込むことによって調製することができる。そのような組成物は、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどの適切な担体、希釈剤、または賦形剤と混合してもよい。組成物は凍結乾燥することもできる。組成物は、投与経路及び所望の調整に応じて、湿潤剤、分散剤、または乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化または粘度増強添加剤、防腐剤、香味料、着色料などの補助物質を含むことができる。参照により本明細書に組み込まれる「REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCE」(第17版、1985)などの標準テキストを、過度の実験なしに適切な製剤を調整するために参照してもよい。
【0237】
抗菌防腐剤、抗酸化剤、キレート剤、及び緩衝液を含有する組成物の安定性及び無菌性を高める様々な添加剤を加えることができる。微生物の作用は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって確実に防止することができる。注射可能な医薬形態の長時間の吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によってもたらすことができる。しかしながら、本明細書の開示によれば、使用される媒体、希釈剤、または添加剤は、遺伝子改変免疫応答性細胞またはそれらの前駆体と適合する必要がある。
【0238】
本明細書に記載の組成物または製剤は、等張性であり得る、すなわち、血液及び涙液と同一の浸透圧を有し得る。本明細書に開示される組成物の所望の等張性は、塩化ナトリウム、または、デキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール、若しくは他の無機溶質若しくは有機溶質などの他の薬学的に許容される薬剤を用いて達成され得る。塩化ナトリウムは、ナトリウムイオンを含む緩衝液について特に好ましい。
【0239】
組成物の粘度は、所望に応じて、薬学的に許容される増粘剤を用いて選択したレベルに維持することができる。メチルセルロースは、容易かつ経済的に入手可能であり、扱いやすいので、好ましい。
【0240】
他の適切な増粘剤には、例えば、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマーなどが含まれる。増粘剤の好ましい濃度は、選択した薬剤に依存する。重要なポイントは、選択した粘度を達成する量を使用することである。適切な担体及び他の添加剤の選択は、投与の正確な経路と、例えば液体剤形などの特定の剤形の性質(例えば、組成物が溶液、懸濁液、ゲル、または時間放出型または液体充填型などの別の液体剤形に製剤化されるかどうか)とに依存することは明らかである。
【0241】
当業者であれば、本明細書に開示される方法で使用するために、組成物または製剤の成分は、化学的に不活性であるように選択されるべきであり、本明細書に記載の早期アポトーシス細胞集団の生存率または効力に影響を与えないことを認識するであろう。これは、化学及び薬学の原理の当業者に問題を提示しないか、または、本開示及び本明細書で引用した文書から、標準のテキストを参照するか、または単純な実験(過度の実験を伴わない)によって問題を容易に回避することができる。
【0242】
当業者は、本明細書に開示される方法で投与されるべき、組成物中の細胞及び任意の添加剤、媒体、及び/または担体の量を容易に決定することができる。一般的には、添加物(活性細胞、及び/または薬剤に添加される)は、リン酸緩衝生理食塩水中に0.001~50(重量)%溶液の量で存在し、活性成分は、約0.0001~約5重量%などの、マイクログラムからミリグラムのオーダーで存在する。いくつかの実施形態では、約0.0001~約1重量%である。さらに別の実施形態では、約0.0001~約0.05重量%、または約0.001~約20重量%である。さらなる実施形態では、約0.01~約10重量%である。いくつかの実施形態では、約0.05~約5重量%である。当然のことながら、動物またはヒトに投与される任意の組成物、及び特定の投与方法については、例えば、適切な動物モデル、例えばマウスなどのげっ歯動物における致死量(LD)及びLD50と、組成物の投与量、組成物中の成分の濃度、及び適切な応答を誘発する組成物を投与するタイミングとを決定することなどによって、毒性を決定することが好ましい。このような決定は、当業者、本開示、及び本明細書に引用された文書の知識からの過度の実験を必要としない。また、過度の実験を行うことなく、連続投与の時間を確認することができる。
【0243】
使用方法
【0244】
いくつかの実施形態では、癌または腫瘍の治療、予防、抑制、発生率の低減、改善、または緩和のための方法であって、本明細書に開示された組成物を投与するステップを含む方法が開示される。
【0245】
いくつかの実施形態では、対象の癌または腫瘍の治療、予防、抑制、発生率の低減、改善、または緩和のための方法であって、アポトーシス細胞を含有する組成物を投与するステップを含む方法が開示される。いくつかの実施形態では、対象の癌または腫瘍の治療、予防、増殖の抑制、疾患進行の遅延、腫瘍量の低減、または発生率の低減、またはそれらの任意の組み合わせのための方法が開示される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示された方法は、腫瘍または癌の大きさ及び/または増殖率を減少させる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示された方法は、腫瘍または癌に罹患している対象の生存率を増加させる。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞またはその組成物の使用は、遺伝子改変免疫細胞療法、これに限定しないが例えばCAR-T細胞療法の効果を増大させる。
【0246】
別の実施形態では、癌または腫瘍の治療、予防、抑制、発生率の低減、改善、または緩和のための方法であって、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)と、追加薬剤を含有する組成物とを投与するステップを含む方法が開示される。追加薬剤には、アポトーシス細胞、CTLA-4遮断剤、α-1抗トリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。この方法は、上記の遺伝子改変免疫細胞及び上記の追加薬剤の投与を受けていない対象と比較して、癌または腫瘍の治療、予防、抑制、発生率の低減、改善、または緩和を向上させる。
【0247】
別の実施形態では、アポトーシス細胞またはその組成物の投与は、キメラ抗原受容体発現T細胞の投与による、癌または腫瘍の治療、予防、抑制、発生率の低減、改善、または緩和の効果を低下させない。別の実施形態では、アポトーシス細胞、CTLA-4遮断剤、α-1抗トリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせ、あるいはそれらの組成物を含む追加薬剤の投与は、キメラ抗原受容体発現T細胞の投与による、癌または腫瘍の治療、予防、抑制、発生率の低減、改善、または緩和の効果を低下させない。
【0248】
別の実施形態では、アポトーシス細胞またはその組成物の投与は、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)の投与による、癌または腫瘍の治療、予防、抑制、発生率の低減、改善、または緩和の効果を増大させる。別の実施形態では、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞から得られた上清、CTLA-4遮断薬、α-1抗トリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせ、あるいはそれらの組成物を含む追加薬剤の投与は、キメラ抗原受容体発現T細胞の投与による、癌または腫瘍の治療、予防、抑制、発生率の低減、改善、または緩和の効果を増大させる。
【0249】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変免疫細胞癌療法、これに限定しないが例えばCAR-T細胞療法の効果を増大させる方法であって、遺伝子改変免疫細胞と、追加薬剤とを投与するステップを含む方法が開示される。追加薬剤には、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞から得られた上清、CTLA-4遮断薬、α-1抗トリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせ、あるいはそれらの組成物が含まれる。この方法は、上記の追加薬剤の投与を受けていない対象と比較して、遺伝子改変免疫細胞療法の効果を増大させる。別の実施形態では、上記の遺伝子改変免疫細胞は、T細胞である。別の実施形態では、T細胞は、ナイーブT細胞である。別の実施形態では、T細胞は、ナイーブCD4T細胞である。別の実施形態では、T細胞は、ナイーブCD8T細胞である。別の実施形態では、遺伝子改変免疫細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。別の実施形態では、遺伝子改変免疫細胞は、樹状細胞である。さらに別の実施形態では、遺伝子改変T細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL細胞)である。別の実施形態では、遺伝子改変T細胞は、制御性T細胞(Treg)である。別の実施形態では、遺伝子改変T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞である。別の実施形態では、遺伝子改変T細胞は、遺伝子改変T細胞受容体(TCR)細胞である。別の実施形態では、CAR-T細胞癌療法の効果を増大させる方法であって、遺伝子改変免疫細胞と、追加薬剤とを投与するステップを含む方法が開示される。追加薬剤には、アポトーシス細胞、CTLA-4遮断薬、α-1抗トリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせ、あるいはそれらの組成物が含まれる。この方法は、上記の追加薬剤の投与を受けていない対象と比較して、CAR-T細胞療法の効果を増大させる。
【0250】
別の実施形態では、本明細書に開示された方法は、免疫癌療法を受けており、かつ追加薬剤が投与されていない対象と比較して、少なくとも1つの炎症性サイトカインの産生レベルを低下させる。別の実施形態では、本明細書に開示された方法は、遺伝子改変免疫細胞癌療法を受けており、かつ追加薬剤が投与されていない対象と比較して、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの発生を抑制または減少させる。
【0251】
別の実施形態では、本明細書に開示された方法は、IL-6を減少させる。
【0252】
別の実施形態では、本明細書に開示された方法は、免疫癌療法を受けており、かつ追加薬剤が投与されていない対象と比較して、少なくとも1つのサイトカインの産生レベルを増加させる。いくつかの実施形態では、追加薬剤は、アポトーシス細胞である。他の実施形態では、追加薬剤は、アポトーシス細胞上清である。別の実施形態では、本明細書に開示された方法は、IL-2を増加させる。
【0253】
当業者であれば、本明細書でサイトカインに関して使用される場合、「生産」という用語が、細胞からのサイトカインの分泌だけでなくサイトカインの発現も包含し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、サイトカインの産生の増加は、細胞からのサイトカインの分泌の増加をもたらす。別の実施形態では、サイトカインの産生の減少は、細胞からのサイトカインの分泌の減少をもたらす。別の実施形態では、本明細書に開示された方法は、少なくとも1つのサイトカインの分泌を減少させる。別の実施形態では、本明細書に開示された方法は、IL-6の分泌を減少させる。別の実施形態では、本明細書に開示された方法は、少なくとも1つのサイトカインの分泌を増加させる。別の実施形態では、本明細書に開示された方法は、IL-2の分泌を増加させる。
【0254】
別の実施形態では、少なくとも1つのサイトカインを分泌する細胞は、腫瘍細胞である。別の実施形態では、少なくとも1つのサイトカインを分泌する細胞は、T細胞である。別の実施形態では、少なくとも1つのサイトカインを分泌する細胞は、免疫細胞である。別の実施形態では、少なくとも1つのサイトカインを分泌する細胞は、マクロファージである。別の実施形態では、少なくとも1つのサイトカインを分泌する細胞は、B細胞リンパ球である。別の実施形態では、少なくとも1つのサイトカインを分泌する細胞は、マスト細胞(肥満細胞)である。別の実施形態では、少なくとも1つのサイトカインを分泌する細胞は、内皮細胞である。別の実施形態では、少なくとも1つのサイトカインを分泌する細胞は、線維芽細胞である。別の実施形態では、少なくとも1つのサイトカインを分泌する細胞は、間質細胞である。当業者であれば、サイトカイン分泌細胞のサイトカインの分泌レベルが、サイトカイン分泌細胞を取り囲む環境に応じて増加または減少し得ることを認識するであろう。
【0255】
さらに別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される追加薬剤は、少なくとも1つのサイトカインの分泌を増加させる。さらに別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される追加薬剤は、少なくとも1つのサイトカインの分泌を維持する。さらなる別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される追加薬剤は、少なくとも1つのサイトカインの分泌を減少させない。別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される追加薬剤は、IL-2の分泌を増加させる。別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される追加薬剤は、IL-2Rの分泌を増加させる。別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される追加薬剤は、IL-2の分泌レベルを維持する。別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される追加薬剤は、IL-2Rの分泌レベルを維持する。別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される追加薬剤は、IL-2の分泌レベルを低下させない。別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される追加薬剤は、IL-2の分泌レベルを維持または増加させる。別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される追加薬剤は、IL-2Rの分泌レベルを維持または増加させる。別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される追加薬剤は、IL-2Rの分泌レベルを低下させない。
【0256】
さらに別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される追加薬剤は、IL-6の分泌を減少させる。別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される追加薬剤は、IL-6の分泌を減少させ、かつ、IL-2の分泌レベルを維持する、増加させる、または減少させない。別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される追加薬剤は、IL-6の分泌を減少させ、かつ、IL-2Rの分泌レベルを維持する、増加させる、または減少させない。
【0257】
いくつかの実施形態では、CAR-T細胞癌療法の効果を増大させる本明細書に開示された方法は、対象のIL-6のレベルを低下させることを含み、この方法は、CAR-T細胞と、追加薬剤とを投与するステップを含む。追加薬剤には、アポトーシス細胞、CTLA-4遮断薬、α-1抗トリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせ、あるいはそれらの組成物が含まれる。この方法は、上記の追加薬剤の投与を受けていない対象と比較して、CAR-T細胞癌療法の効果を増大させる。別の実施形態では、CAR-T細胞癌療法の効果を増大させる本明細書に開示された方法は、CAR-T細胞の増殖を増加させることを含み、この方法は、CAR-T細胞と、追加薬剤とを投与するステップを含む。追加薬剤には、アポトーシス細胞、CTLA-4遮断薬、α-1抗トリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせ、あるいはそれらの組成物が含まれる。この方法は、上記の追加薬剤の投与を受けていない対象と比較して、CAR-T細胞癌療法の効果を増大させる。
【0258】
いくつかの実施形態では、CAR-T細胞癌療法の効果を増大させる本明細書に開示された方法は、対象のサイトカイン産生を減少または抑制することを含み、この方法は、CAR-T細胞と追加薬剤とを含有する組成物を投与するステップを含む。追加薬剤には、アポトーシス細胞、CTLA-4遮断薬、α-1抗トリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせ、あるいはそれらの組成物が含まれる。別の実施形態では、癌または腫瘍の治療、予防、抑制、発生率の低減、改善、または緩和のための本明細書に開示された方法は、対象のサイトカイン産生を減少または抑制することを含み、この方法は、CAR-T細胞と追加薬剤とを含有する組成物を投与するステップを含む。追加薬剤には、アポトーシス細胞、CTLA-4遮断薬、α-1抗トリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせ、あるいはそれらの組成物が含まれる。
【0259】
別の実施形態では、CAR-T細胞癌療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを治療する方法が開示される。
【0260】
別の実施形態では、癌または腫瘍の治療、予防、抑制、発生率の低減、改善、または緩和、あるいは、対象のサイトカイン産生を減少または抑制する方法であって、CAR-T細胞と追加薬剤とを含有する組成物を投与するステップを含む方法が開示される。追加薬剤には、アポトーシス細胞、CTLA-4遮断薬、α-1抗トリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせ、あるいはそれらの組成物が含まれる。
【0261】
別の実施形態では、対象の癌または腫瘍を治療する方法であって、本明細書に開示されたいずれかの組成物を対象に投与するステップを含む方法が開示される。別の実施形態では、対象の癌または腫瘍を予防する方法であって、本明細書に開示されたいずれかの組成物を対象に投与するステップを含む方法が開示される。別の実施形態では、対象の癌または腫瘍を抑制する方法であって、本明細書に開示されたいずれかの組成物を対象に投与するステップを含む方法が開示される。別の実施形態では、対象の癌または腫瘍を減少させる方法であって、本明細書に開示されたいずれかの組成物を対象に投与するステップを含む方法が開示される。別の実施形態では、対象の癌または腫瘍を改善する方法であって、本明細書に開示されたいずれかの組成物を対象に投与するステップを含む方法が開示される。別の実施形態では、対象の癌または腫瘍を緩和する方法であって、本明細書に開示されたいずれかの組成物を対象に投与するステップを含む方法が開示される。
【0262】
いくつかの実施形態では、免疫療法中に遺伝子改変免疫細胞の増殖率を維持または増加させる方法であって、免疫療法中に、アポトーシス細胞を含有する組成物を投与するステップを含む方法が開示される。別の実施形態では、遺伝子改変免疫細胞には、T細胞、ナイーブT細胞、ナイーブCD4T細胞、ナイーブCD8T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、樹状細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL細胞)、制御性T細胞(Treg)、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、または遺伝子改変T細胞受容体(TCR)細胞が含まれる。別の実施形態では、免疫療法中にCAR-T細胞の増殖率を維持または増加させる方法であって、免疫療法中に、アポトーシス細胞を含有する組成物を投与するステップを含む方法が開示される。
【0263】
別の実施形態では、遺伝子改変免疫細胞の増殖率を維持または増加させる本明細書に開示された方法は、免疫療法の効果を低下または抑制しない。例えば、別の実施形態では、CAR-T細胞の増殖率を維持または増加させる本明細書に開示された方法は、CAR-T細胞癌療法の効果を低下または抑制しない。別の実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR-T細胞の増殖率を維持または増加させる本明細書に開示された方法は、対象におけるサイトカイン産生を減少または抑制する。
【0264】
別の実施形態では、本明細書に開示された組成物及び方法は、本明細書に開示されたアポトーシス細胞と、1以上のCTLA-4阻害剤(例えば、イピリムマブ)との併用療法を用いる。いくつかの実施形態では、CTLA-4は、T細胞活性化の強力な阻害剤であり、自己免疫寛容の維持を助ける。いくつかの実施形態では、抗CTLA-4阻害剤(別の実施形態では抗体)の投与により、T細胞活性化の正味の影響を生成する。別の実施形態では、本明細書に開示された組成物及び方法は、アポトーシス細胞と、CAR-T細胞と、1以上のCTLA-4阻害剤との併用療法を用いる。
【0265】
いくつかの場合では、本明細書に開示された方法で使用されるポリペプチドは、非修飾アミノ酸配列に対する、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を含む。他の場合では、ポリペプチドは、非保存的アミノ酸置換を含む。その場合、このような修飾を有するポリペプチドは、このようなアミノ酸置換を欠いているポリペプチドと比較して、向上した安定性またはより長い半減期を示す。
【0266】
いくつかの実施形態では、「治療(treating)」という用語は治療処置を含み、「予防(preventing)」という用語は予防的手段または防止的手段を含み、その目的は、上述した標的の病理学的な状態または障害を予防または軽減することにある。したがって、いくつかの実施形態では、治療は、疾患、障害または状態に関連する症状の、直接的な作用または治癒、抑止、抑制、予防、重症度の低減、発症の遅延、軽減、またはそれらの組み合わせを含み得る。このため、いくつかの実施形態では、「治療(treating)」、「改善(ameliorating)」、及び「緩和(alleviating)」は、とりわけ、進行の遅延、寛解の促進、寛解の誘導、寛解の増強、回復の加速、代替治療に対する効果の増大若しくは代替治療に対する抵抗の減少、またはそれらの組み合わせを指す。いくつかの実施形態では、「予防(preventing)」は、とりわけ、症状の発症の遅延、疾患の再発の防止、症状再発の回数または頻度の減少、症状発症間の潜伏期間の増加、またはそれらの組み合わせを指す。いくつかの実施形態では、「抑止(suppressing)」または「抑制(inhibiting)」は、とりわけ、症状の重症度の低減、急性発症の重症度の低減、症状の数の減少、疾患関連症状の発生率の低減、症状の潜伏期間の短縮、症状の改善、二次症状の低減、二次感染の低減、患者の生存期間の延長、またはそれらの組み合わせを指す。
【0267】
当業者であれば、「抗原認識受容体」という用語が、抗原結合に応答して免疫細胞(例えば、T細胞)を活性化させることができる受容体を包含し得ることを理解するであろう。例示的な抗原認識受容体は、腫瘍抗原結合ドメインが、免疫細胞(例えば、T細胞)を活性化させることができる細胞内シグナル伝達ドメインに融合された、天然または内在性のT細胞受容体またはキメラ抗原受容体であり得る。
【0268】
別の実施形態では、癌または腫瘍に罹患している対象の生存率を増加させる方法であって、初期アポトーシス細胞集団を対象に投与するステップを含む方法が開示される。この方法は、対象の生存率を増加させる。
【0269】
当業者であれば、「疾患」という用語が、細胞、組織または器官の正常な機能を損ねるか、または妨害する任意の状態または障害を包含し得ることを理解するであろう。疾患の例には、新生物、または細胞の病原体感染が含まれる。
【0270】
当業者であれば、「有効量」という用語が、治療効果を有するのに十分な量を包含し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、「有効量」は、新生物の継続的な増殖、成長、または転移(例えば、侵入または移動)を阻止、改善、または抑制するのに十分な量である。
【0271】
当業者であれば、「新生物」という用語が、細胞または組織の病理学的増殖、及びその後の他の組織または器官への移動または侵入により特徴付けられる疾患を包含し得ることを理解するであろう。新生物の成長は、一般的には制御されず、進行性であり、正常細胞の増殖を誘起しないか、または正常細胞の増殖の停止を引き起こす条件下で発生する。新生物は、様々な細胞型、組織、または器官に対して影響を与えることができる。そのようなものとしては、これに限定しないが、膀胱、骨、脳、乳房、軟骨、グリア、食道、卵管、胆嚢、心臓、腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、神経組織、卵巣、膵臓、前立腺、骨格筋、皮膚、脊髄、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、気管、尿生殖路、尿管、尿道、子宮、膣、またはそれらの組織若しくは細胞型からなる群より選択される器官が挙げられる。新生物には、肉腫、癌腫、または形質細胞腫(形質細胞の悪性腫瘍)などの癌が含まれる。
【0272】
当業者であれば、「病原体」という用語が、病気を引き起こすことができるウイルス、バクテリア、真菌、寄生虫、または原虫を包含し得ることを理解するであろう。
【0273】
当業者であれば、「腫瘍抗原」または「腫瘍関連抗原」という用語が、正常または非IS新生物細胞と比較して、腫瘍細胞上で一意的にまたは差次的に発現する抗原(例えば、ポリペプチド)を包含し得ることを理解するであろう。本明細書に開示された組成物及び方法に関して、腫瘍抗原は、抗原認識受容体(例えば、CD19、MUCI)を介して免疫応答を活性化または誘導することができるか、または受容体-リガンド結合(例えば、CD47、PD-L1/L2、B7.1/2)を介して免疫応答を抑制することができる腫瘍によって発現される任意のポリペプチドを含む。
【0274】
当業者であれば、「ウイルス抗原」という用語が、免疫応答を誘導することができるウイルスによって発現されるポリペプチドを包含し得ることを理解するであろう。
【0275】
「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」という用語は、米国特許法に規定される広い意味を有することが意図されており、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」などを意味することができる。同様に、「からなる(consists of)」、「本質的に~からなっている(consisting essentially of)」という用語は、米国特許法に規定された意味を有する。本明細書に開示された組成物及び方法は、活性成分または特定のステップを含むか、活性成分または特定のステップを含むか、または本質的に活性成分または特定のステップからなることが想定される。
【0276】
当業者であれば、「治療(treatment)」という用語が、治療される個体または細胞の疾患経過を変化させるための臨床的介入を包含し、予防のため、または臨床病理の経過中に実施され得ることを理解するであろう。治療の効果には、これに限定しないが、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の直接的または間接的な病理学的結果の減少、転移の予防、疾患の進行速度の低下、疾患状態の改善または緩和、及び、寛解または改善された予後が含まれる。疾患または障害の進行を予防することにより、治療は、罹患したまたは診断された対象、またはその障害を有すると疑われる対象における障害による悪化を防ぐことができ、またさらには、障害のリスクのある対象、または障害を有すると疑われる対象における障害の発症または症状を予防することができる。
【0277】
当業者であれば、「対象(subject)」という用語が、脊椎動物、いくつかの実施形態では哺乳動物、いくつかの実施形態ではヒトを包含し得ることを理解するであろう。対象はまた、いくつかの実施形態では、ウシ、ヒツジ、ウマ、ネコ、イヌなどの家畜、及び、マウス、ラット、アレチネズミ、ハムスターなどの実験動物を指し得る。
【0278】
いくつかの実施形態では、CARが目的のペプチドを対象とするCAR-T細胞が開示される。いくつかの実施形態では、CARは、目的のペプチドに結合する。別の実施形態では、CARは、目的のペプチドを標的とする。別の実施形態では、CARは、目的のペプチドを活性化する。別の実施形態では、CARは、目的のペプチドのリガンドである。これらの実施形態の各々は、本明細書に開示された部分と見なされるべきである。
【0279】
免疫療法に対する1つのアプローチは、患者自身の免疫細胞を操作して、腫瘍を認識して攻撃する遺伝子改変免疫細胞を作り出すことを含む。本明細書に説明されるように、免疫細胞を収集し遺伝子改変することにより、免疫細胞(例えば、T細胞)が腫瘍または癌細胞上の特異的タンパク質抗原を認識することを可能にするキメラ抗原受容体(CAR)が、免疫細胞の表面上に生成される。その後、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR-T細胞の増殖集団を患者に投与する。いくつかの実施形態では、投与された細胞は患者の体内で増殖し、その表面上に抗原を有する癌及び腫瘍細胞を認識して死滅させる。別の実施形態では、投与された細胞は患者の体内で増殖し、腫瘍関連抗原を認識して死滅させ、癌及び腫瘍細胞の死をもたらす。
【0280】
いくつかの実施形態では、IL-6受容体アンタゴニストは、いくつかの実施形態ではトシリズマブであり、本明細書に開示された組成物及び方法と共に使用される。
【0281】
いくつかの実施形態では、養子移入されたT細胞は、リンパ球性宿主においてより効率的に生着及び増殖する。したがって、いくつかの実施形態では、対象は、CAR-T細胞または他の改変免疫細胞の移入の前にリンパ球枯渇の状態になる。別の実施形態では、CAR-T細胞を受ける対象に、T細胞支持サイトカインが投与される。
【0282】
いくつかの実施形態では、T細胞は、エフェクターT細胞である。別の実施形態では、T細胞は、ナイーブT細胞である。別の実施形態では、T細胞は、セントラルメモリー(TCM)T細胞である。別の実施形態では、T細胞は、Th17細胞である。別の実施形態では、T細胞は、幹細胞様メモリーT細胞である。別の実施形態では、T細胞は、高い複製能力を有する。別の実施形態では、T細胞増殖が患者において起きる。別の実施形態では、少数の細胞が患者に移入され得る。別の実施形態では、T細胞増殖はインビトロで起こる。別の実施形態では、多数の細胞の患者への移入、細胞及び/または上清の患者への複数回の移入、またはそれらの組み合わせが行われる。
【0283】
いくつかの実施形態では、CAR-T細胞の利点は、それらが細胞表面分子に対して特異的であるので、MHC制限TCR認識の制約を克服し、抗原提示またはヒト血球抗原発現の障害による腫瘍エスケープを回避することである。
【0284】
いくつかの実施形態では、対象において腫瘍負荷を低減させる方法であって、本明細書に開示されたいずれかの組成物を対象に投与するステップを含む方法が開示される。
【0285】
いくつかの実施形態では、腫瘍負荷を低減させることは、対象の腫瘍細胞の数を減少させることを含む。別の実施形態では、腫瘍負荷を低減させることは、対象の腫瘍の大きさを減少させることを含む。別の実施形態では、腫瘍負荷を低減させることは、対象の腫瘍を根絶することを含む。
【0286】
別の実施形態では、対象において腫瘍細胞死を誘導する方法であって、本明細書に開示されたいずれかの組成物を対象に投与するステップを含む方法が開示される。別の実施形態では、対象において腫瘍細胞死を誘導するための方法であって、操作されたキメラ抗原受容体を含むNK細胞またはT細胞などの免疫細胞を、少なくとも1つの追加薬剤と共に投与するステップを含み、それにより、対象における毒性サイトカイン放出、「サイトカイン放出症候群(CRS)」、「重度のサイトカイン放出症候群(sCRS)」、または「サイトカインストーム」を低減させる方法が開示される。
【0287】
別の実施形態では、新生物を有する対象の生存率を増加させるかまたは生存期間を延長する方法であって、本明細書に記載されたいずれかの組成物を投与するステップを含む方法が提供される。別の実施形態では、対象の生存率を増加させるかまたは生存期間を延長する方法であって、操作されたキメラ抗原受容体を含むNK細胞またはT細胞などの免疫細胞を、少なくとも1つの追加薬剤と共に投与するステップを含み、それにより、対象における毒性サイトカイン放出、「サイトカイン放出症候群(CRS)」、「重度のサイトカイン放出症候群(sCRS)」、または「サイトカインストーム」を低減させる方法が開示される。
【0288】
別の実施形態では、新生物を有する対象の生存率を増加させるかまたは生存期間を延長または長くする方法であって、本明細書に記載されたいずれかの組成物を投与するステップを含む方法が提供される。
【0289】
いくつかの実施形態では、対象における癌の進行を遅延させる方法であって、本明細書に開示された組成物または組成物の組み合わせを対象に投与するステップを含む方法が開示される。いくつかの実施形態では、対象における白血病またはリンパ腫の進行を遅延させる方法であって、本明細書に開示された組成物または組成物の組み合わせを対象に投与するステップを含む方法が開示される。いくつかの実施形態では、癌または腫瘍に罹患している対象の生存率を増加させるか、または生存期間を延長させる方法であって、本明細書に開示された組成物または組成物の組み合わせを対象に投与するステップを含む方法が開示される。いくつかの実施形態では、白血病またはリンパ腫に罹患している対象の生存率を増加させるか、または生存期間を延長させる方法であって、本明細書に開示された組成物または組成物の組み合わせを対象に投与するステップを含む方法が開示される。いくつかの実施形態では、対象における腫瘍細胞負荷を低減させる方法であって、本明細書に開示された組成物または組成物の組み合わせを対象に投与するステップを含む方法が開示される。いくつかの実施形態では、腫瘍負荷は、肝臓及び骨髄で減少する。
【0290】
別の実施形態では、対象における新生物を予防する方法であって、本明細書に開示された組成物または組成物の組み合わせを対象に投与するステップを含む方法が開示される。いくつかの実施形態では、新生物は、血液癌、B細胞白血病、多発性骨髄腫、リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0291】
別の実施形態では、血液癌を治療する方法であって、該治療を必要とする対象に対して、本明細書に記載されたいずれかの組成物を投与するステップを含む方法が開示される。いくつかの実施形態では、血液癌は、B細胞白血病、多発性骨髄腫、リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病、及び非ホジキンリンパ腫からなる群より選択される。
【0292】
別の実施形態では、固形腫瘍を治療する方法であって、該治療を必要とする対象に対して、本明細書に記載されたいずれかの組成物を投与するステップを含む方法が開示される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、細胞または器官起源の任意の腫瘍(起源不明の腫瘍を含む);原発性または転移性の任意の腹膜腫瘍;婦人科腫瘍、胃腸起源腫瘍、膵臓起源腫瘍、血管起源腫瘍、任意の固形腫瘍(例えば、腺癌、血液腫瘍、黒色腫など)からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、肉腫及び癌腫を含む。肉腫及び癌腫としては、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌または腫瘍、乳癌または腫瘍、卵巣癌または腫瘍、前立腺癌または腫瘍、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌または腫瘍、子宮癌または腫瘍、精巣癌または腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起膠腫、神経鞘腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、及び網膜芽細胞腫が挙げられる。別の関連する態様では、腫瘍または癌は、腫瘍または癌の転移を含む。
【0293】
いくつかの実施形態では、投与は、CAR-T細胞を含有する組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、投与は、初期アポトーシス細胞を含有する組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、投与は、初期アポトーシス細胞から得られた上清を含有する組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、投与は、本明細書に記載された組成物の組み合わせを投与することを含む。いくつかの実施形態では、投与は、CAR-T細胞とアポトーシス細胞とを、互いに同一または異なる組成物により投与することを含む。いくつかの実施形態では、投与は、CAR-T細胞を、本明細書に記載された追加薬剤と組み合わせて投与することを含む。いくつかの実施形態では、投与は、アポトーシス細胞と抗体またはその断片とを、互いに同一または異なる組成物により投与することを含む。
【0294】
いくつかの実施形態では、併用療法により、相乗効果が提供される。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞をCAR-T細胞と組み合わせて使用する方法は、CAR-T細胞の単独での使用と比較して、CAR-T細胞の効果を増大させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞をCAR-T細胞と組み合わせて使用する方法は、CAR-T細胞を単独で使用する場合と比較して、癌または腫瘍に罹患している対象の生存期間を延長させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞をCAR-T細胞と組み合わせて使用する方法は、CAR-T細胞を単独で使用する場合と比較して、リンパ腫または白血病に罹患している対象の生存期間を延長させる。
【0295】
いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を抗体またはその断片と組み合わせて使用する方法は、アポトーシス細胞または抗体のいずれかを単独で使用する場合と比較して、癌の発症または腫瘍の出現を遅延させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を抗体またはその断片と組み合わせて使用する方法は、アポトーシス細胞または抗体のいずれかを単独で使用する場合と比較して、癌の進行を遅延させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を抗体またはその断片と組み合わせて使用する方法は、アポトーシス細胞または抗体のいずれかを単独で使用する場合と比較して、腫瘍の増殖を遅延させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を抗体またはその断片と組み合わせて使用する方法は、アポトーシス細胞または抗体のいずれかを単独で使用する場合と比較して、癌または腫瘍に罹患している対象の生存期間を延長させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を抗体またはその断片と組み合わせて使用する方法は、アポトーシス細胞または抗体のいずれかを単独で使用する場合と比較して、リンパ腫または白血病に罹患している対象の生存期間を延長させる。
【0296】
いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を、RtXを含む抗体またはその断片と組み合わせて投与するステップを含む使用方法は、アポトーシス細胞または抗体のいずれかを単独で使用する場合と比較して、癌の発症または腫瘍の出現を遅延させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を、RtXを含む抗体またはその断片と組み合わせて投与するステップを含む使用方法は、アポトーシス細胞または抗体のいずれかを単独で使用する場合と比較して、癌の進行を遅延させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を、RtXを含む抗体またはその断片と組み合わせて投与するステップを含む使用方法は、アポトーシス細胞または抗体のいずれかを単独で使用する場合と比較して、腫瘍の増殖を遅延させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を、RtXを含む抗体またはその断片と組み合わせて投与するステップを含む使用方法は、アポトーシス細胞または抗体のいずれかを単独で使用する場合と比較して、癌または腫瘍に罹患している対象の生存期間を延長させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を、RtXを含む抗体またはその断片と組み合わせて投与するステップを含む使用方法は、アポトーシス細胞または抗体のいずれかを単独で使用する場合と比較して、リンパ腫または白血病に罹患している対象の生存期間を延長させる。
【0297】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された使用方法は、腫瘍負荷を低減させる。当業者であれば、「腫瘍負荷」という用語が、対象における癌細胞の数、対象における腫瘍の大きさ、または、対象の体内の癌の量を指すことを理解するであろう。「腫瘍負荷」という用語は、まったく同じ意味及び性質を有する「腫瘍量」という用語と互換的に使用することができる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を投与することを含む使用方法は、アポトーシス細胞を投与しない場合と比較して、対象における癌細胞の数を減少させる、対象における腫瘍の大きさを減少させる、または対象の体内の癌の量を減少させる、またはそれらの任意の組み合わせをもたらす。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を抗体またはその断片と組み合わせて投与することを含む使用方法は、アポトーシス細胞を投与しない場合、抗体を投与しない場合、またはそれらの組み合わせと比較して、対象における癌細胞の数を減少させる、対象における腫瘍の大きさを減少させる、または対象の体内の癌の量を減少させる、またはそれらの任意の組み合わせをもたらす。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞をRtX抗体またはその断片と組み合わせて投与することを含む使用方法は、アポトーシス細胞を投与しない場合、RtX抗体を投与しない場合、またはそれらの組み合わせと比較して、対象における癌細胞の数を減少させる、対象における腫瘍の大きさを減少させる、または対象の体内の癌の量を減少させる、またはそれらの任意の組み合わせをもたらす。
【0298】
いくつかの実施形態では、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームに罹患しているか、またはサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームに罹患しやすい対象におけるサイトカイン産生を減少または抑制する本明細書に開示された方法は、サイトカイン産生を減少させるかまたは抑制する。別の実施形態では、この方法は、炎症性サイトカイン産生を減少させるかまたは抑制する。さらなる実施形態では、この方法は、少なくとも1つの炎症性サイトカインを減少させるかまたは抑制する。別の実施形態では、対象はCAR-T細胞療法を受けており、この方法はCAR-T細胞療法の効果を低下させない。
【0299】
治療については、投与される量は、所望の効果を生成するのに有効な量である。有効量は、1回の投与、または一連の投与により提供することができる。有効量は、ボーラスまたは連続灌流により提供することができる。
【0300】
当業者であれば、「有効量」(または「治療有効量」)が、治療において有益な、または所望の臨床効果をもたらすのに十分な量を包含し得ることを認識するであろう。有効量は、1以上の用量で対象に投与することができる。治療に関しては、有効量は、疾患の進行を緩和、改善、安定化、逆行、または遅らせるか、または疾患の病理学的結果を低下させるのに十分な量である。有効量は一般的に、医師によってケースバイケースで決定され、当業者の技術の範囲内である。有効量を達成するための適切な用量を決定するときは、一般的に、いくつかの要因が考慮される。そのような要因には、対象の年齢、性別及び体重、治療される状態、状態の重症度、及び投与される抗原結合断片の形態及び有効濃度が含まれる。
【0301】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された方法は、単一の組成物に含まれる、遺伝子改変細胞を含有する組成物、追加薬剤、またはその組み合わせを投与するステップを含む。別の実施形態では、本明細書に開示された方法は、単一の組成物に含まれる、CAR-T細胞を含有する組成物、追加薬剤、またはその組み合わせを投与するステップを含む。別の実施形態では、本明細書に開示された方法は、単一の組成物に含まれる、TCR-T細胞を含有する組成物、追加薬剤、またはその組み合わせを投与するステップを含む。
【0302】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された方法は、少なくとも2つの組成物に含まれる、遺伝子改変細胞を含有する組成物、追加薬剤、またはその組み合わせを投与するステップを含む。別の実施形態では、本明細書に開示された方法は、少なくとも2つの組成物に含まれる、CAR-Tを含有する組成物、追加薬剤、またはその組み合わせを投与するステップを含む。別の実施形態では、本明細書に開示された方法は、少なくとも2つの組成物に含まれる、TCR-Tを含有する組成物、追加薬剤、またはその組み合わせを投与するステップを含む。
【0303】
抗原特異的T細胞、例えばCAR-T細胞を使用する養子免疫療法では、一般的に、10~1010個(例えば、10個)の細胞が投与される。遺伝子改変細胞が宿主に投与され分化すると、特異的抗原に対して特異的なT細胞が誘導される。T細胞の「誘導」は、欠失またはアネルギーなどによる抗原特異的T細胞の不活性化を含む。不活性化は、自己免疫異常などにおける耐性を確立または再確立するのに特に有用である。改変細胞は、これに限定しないが、静脈内投与、皮下投与、結節内投与、腫瘍内投与、髄腔内投与、胸腔内投与、腹腔内投与、及び胸腺への直接的投与を含む、当分野で既知の方法で投与される。いくつかの実施形態では、T細胞は、腹腔内に投与されない。いくつかの実施形態では、T細胞は、腫瘍内に投与される。
【0304】
CAR-T細胞を含有する組成物は、新生物、病原体感染、または感染症の治療のために、対象に対して全身的または直接的に提供され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示された細胞は、目的の器官(例えば、新生物の影響を受ける器官)に直接投与される。あるいは、CAR-T細胞を含有する組成物は、例えば、循環系(例えば、腫瘍血管系)への投与によって、目的の器官に対して間接的に提供される。増殖剤及び分化剤が、インビトロまたはインビボでT細胞、NK細胞、CTL細胞の産生を増加させるために、細胞の投与前、投与中、または投与後に提供され得る。
【0305】
本明細書に開示された方法において上述したように、追加薬剤を含有する組成物は、遺伝子改変免疫細胞の投与の前に、投与と同時に、または投与の後に提供され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されたように、本明細書に開示された方法では、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR-T細胞は、追加薬剤の投与前に投与される。別の実施形態では、本明細書に開示されたように、本明細書に開示された方法では、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR-T細胞は、追加薬剤の投与と同時に投与される。別の実施形態では、本明細書に開示された方法では、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR-T細胞は、追加薬剤の投与後に投与される。
【0306】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された方法は、本明細書に開示されたアポトーシス細胞を含有する組成物を投与する。
【0307】
CAR-T細胞は、生理学的に許容される任意のビヒクル中で、通常は血管内に投与することができるが、骨、または細胞が再生及び分化のための適切な部位(例えば、胸腺)を見つけ出すことができる他の適当な部位に導入してもよい。通常、少なくとも1×10個の細胞が投与され、最終的には1×1010個、またはそれ以上に達する。本明細書に開示された遺伝子改変免疫応答細胞は、精製された細胞集団を含み得る。当業者であれば、蛍光活性化セルソーティング(FACS)などの様々な公知の方法を用いて、細胞集団中の遺伝子改変免疫応答細胞の割合を容易に求めることができるであろう。いくつかの実施形態では、遺伝子改変免疫応答細胞を含有する細胞集団における純度の範囲は、約50~約55%、約55~約60%、及び約65%~約70%である。他の実施形態では、純度は、約70~約75%、約75~約80%、約80%~約85%である。さらなる実施形態では、純度は、約85~約90%、約90~約95%、及び約95%~約100%である。用量は、当業者によって容易に調節することができる(例えば、純度が低い場合は、用量を多くする必要がある)。細胞は、注入やカテーテルなどによって導入することができる。所望に応じて、因子は、これに限定しないが、インターロイキン(例えば、IL-2、IL-3、IL-6、IL-11、IL7、IL12、ILIS、IL21、及び他のインターロイキン)、コロニー刺激因子(G-、M-、GM-CSFなど)、インターフェロン(例えば、γインターフェロン、エリスロポエチン)を含むことができる。
【0308】
組成物には、遺伝子改変免疫応答細胞またはその前駆細胞と、薬学的に許容される担体とを含有する医薬組成物が含まれる。投与は、自家移植または異種移植であり得る。例えば、免疫応答細胞または前駆細胞は、或る対象から取得して、同一の対象または異なる適合性対象に対して投与することができる。本明細書に開示された末梢血由来の免疫応答細胞またはその後代(例えば、インビトロ、エクスビボ、またはインビトロ由来)は、カテーテル注入、全身注入、局所注入、静脈内注入、または非経口投与などの局所投与によって投与することができる。本明細書に開示された治療用組成物(例えば、遺伝子改変免疫応答細胞を含有する医薬組成物)を投与する場合、治療用組成物は一般的に、単位用量で投与可能な形態(溶液、懸濁液、乳剤)で製剤化されるであろう。
【0309】
別の実施形態では、本明細書に開示されたCAR-T細胞または他の免疫細胞と、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清とを含有する組成物の作製方法であって、目的の抗原に結合するCARをコードする核酸配列をT細胞または免疫細胞に導入するステップを含む方法が開示される。別の実施形態では、本明細書に開示されたCAR-T細胞または他の免疫細胞を含有する組成物は、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清を含有する組成物とは別個である。
【0310】
いくつかの実施形態では、悪性腫瘍の治療、予防、抑制、発生率の低減、改善、または緩和のための方法であって、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)及びアポトーシス細胞を含有する組成物を投与するステップを含む方法が開示される。
【0311】
当業者であれば、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR改変T細胞によって誘起された抗腫瘍免疫応答が、能動的または受動的な免疫応答であり得ることを理解するであろう。加えて、CAR媒介免疫応答は、CAR改変T細胞がCAR中の抗原結合部分に対して特異的な免疫応答を誘導する養子免疫療法アプローチの一部であり得る。
【0312】
当業者であれば、免疫療法が、免疫エフェクター細胞及び分子を使用して癌細胞を標的化及び破壊することを包含し得ることを理解するであろう。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上のいくつかのマーカーに対して特異的な抗体であり得る。抗体は、単独では、治療のエフェクターとしての役割を果たすか、または実際に細胞を殺滅するために他の細胞を動員することができる。また、抗体は、薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)に結合して、単に標的化剤として機能することもできる。あるいは、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接的または間接的に相互作用する表面分子を運ぶリンパ球であってもよい。様々なエフェクター細胞には、細胞傷害性T細胞及びNK細胞が含まれる。
【0313】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された初期アポトーシス細胞及びその組成物は、当分野で既知の血液腫瘍の治療、予防、増殖の抑制、または発生率の低減のために使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示された初期アポトーシス細胞及びその組成物は、これに限定しないが例えばびまん性乳癌などの当分野で既知のびまん性癌の治療、予防、増殖の抑制、または発生率の低減のために使用することができ、これにより、固形腫瘍が乳房に形成されない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示された初期アポトーシス細胞及びその組成物は、当分野で既知の血液腫瘍の生存期間を延長させるために使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示された初期アポトーシス細胞及びその組成物は、これに限定しないが例えばびまん性乳癌などの当分野で既知のびまん性癌の生存期間を延長させるために使用することができ、これにより、固形腫瘍が乳房内に形成されない。
【0314】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された初期アポトーシス細胞及びその組成物は、当分野で既知の血液腫瘍に罹患している対象の生存率を増加させるために使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示された初期アポトーシス細胞及びその組成物は、これに限定しないが例えばびまん性乳癌などの当分野で既知のびまん性癌に罹患している対象の生存率を増加させるために使用することができ、これにより、固形腫瘍が乳房内に形成されない。
【0315】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された初期アポトーシス細胞及びその組成物は、当分野で既知の血液腫瘍の増殖率を減少させるために使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示された初期アポトーシス細胞及びその組成物は、これに限定しないが例えばびまん性乳癌などの当分野で既知のびまん性癌の増殖率を減少させるために使用することができ、これにより、固形腫瘍が乳房内に形成されない。
【0316】
いくつかの実施形態では、治療される腫瘍または癌は、腫瘍または癌の転移物を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示された使用方法は、腫瘍または癌の転移を予防または低減する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示された使用方法は、転移物の増殖を抑制するか、または発生率を減少させる。
【0317】
いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、子供である。いくつかの実施形態では、対象は、大人である。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳動物である。
【0318】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された方法は、上記に詳細に説明したように、単核濃縮細胞集団を含む初期アポトーシス細胞集団を投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示された方法は、安定的な集団細胞を含む初期アポトーシス細胞集団を投与するステップを含み、この細胞集団は24時間を超えて安定的である。初期アポトーシス細胞の安定的な集団は、上記に詳細に説明されている。いくつかの実施形態では、本明細書に開示された方法は、細胞集合体を欠いている細胞集団を含む初期アポトーシス細胞集団を投与するステップを含む。細胞集合体を欠いている初期アポトーシス細胞集団及びその作製方法は、上記に詳細に説明されている。
【0319】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された方法は、治療を必要とする対象に、自家初期アポトーシス細胞集団を投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示された方法は、治療を必要とする対象に、同種初期アポトーシス細胞集団を投与するステップを含む。
【0320】
いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団またはその組成物の投与方法は、初期アポトーシス細胞集団またはその組成物の単一注入(single infusion)を投与することを含む。いくつかの実施形態では、単一注入は、癌または腫瘍のリスクがあると事前に判断された対象に対して予防として投与され得る。いくつかの実施形態では、単一注入は、対象の治療処置の一部として、癌または腫瘍に罹患している対象に対して定期的に投与され得る。いくつかの実施形態では、単一注入は、転移性癌の予防、リスクの低減、または出現の遅延のために、癌または腫瘍に罹患している対象に対して予防薬として投与され得る。
【0321】
いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団またはその組成物の投与方法は、初期アポトーシス細胞集団またはその組成物の複数注入(multiple infusions)を投与することを含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、癌または腫瘍のリスクがあると事前に判断された対象に対して予防として投与され得る。いくつかの実施形態では、複数注入は、対象の治療処置の一部として、癌または腫瘍に罹患している対象に対して定期的に投与され得る。いくつかの実施形態では、複数注入は、転移性癌の予防、リスクの低減、または出現の遅延のために、癌または腫瘍に罹患している対象に対して予防薬として投与され得る。
【0322】
いくつかの実施形態では、複数注入は、少なくとも2つの注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、2つの注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、2つを超える注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、少なくとも3つの注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、3つの注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、3つを超える注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、少なくとも4つの注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、4つの注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、4つを超える注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、少なくとも5つの注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、5つの注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、5つを超える注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、少なくとも6つの注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、6つの注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、6つを超える注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、少なくとも7つの注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、7つの注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、7つを超える注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、少なくとも8つの注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、8つの注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、8つを超える注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、少なくとも9つの注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、9つの注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、9つを超える注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、少なくとも10つの注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、10つの注入を含む。いくつかの実施形態では、複数注入は、10つを超える注入を含む。
【0323】
いくつかの実施形態では、複数注入は、より少ない量の初期アポトーシス細胞を含み、ここで、投与される細胞の総投与量は、全ての注入の合計である。
【0324】
いくつかの実施形態では、複数注入は、数時間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、複数注入は、数日間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、複数注入は、少なくとも12時間の間隔を置いて、数時間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、複数注入は、少なくとも24時間の間隔を置いて、数時間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、複数注入は、少なくとも1日の間隔を置いて、数時間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、複数注入は、少なくとも2日の間隔を置いて、数時間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、複数注入は、少なくとも3日の間隔を置いて、数時間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、複数注入は、少なくとも4日の間隔を置いて、数時間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、複数注入は、少なくとも5日の間隔を置いて、数時間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、複数注入は、少なくとも6日の間隔を置いて、数時間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、複数注入は、少なくとも7日の間隔を置いて、数時間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、複数注入は、少なくとも1週間の間隔を置いて、数時間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、複数注入は、少なくとも2週間の間隔を置いて、数時間にわたって投与される。
【0325】
いくつかの実施形態では、複数注入における細胞量は、互いに実質的に均一である。いくつかの実施形態では、複数注入における細胞量は、互いに異なる。
【0326】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載された方法は、追加の化学療法剤または免疫調節剤を対象に投与するステップをさらに含む。
【0327】
いくつかの実施形態では、追加の化学療法剤または免疫調節剤が、初期アポトーシス細胞の投与と同時にまたは実質的に同時に投与される。いくつかの実施形態では、追加の化学療法剤または免疫調節剤は、初期アポトーシス細胞を含有する組成物中に含まれる。いくつかの実施形態では、追加の化学療法剤または免疫調節剤は、初期アポトーシス細胞を含有する組成物とは別の組成物に含まれる。
【0328】
いくつかの実施形態では、追加の化学療法剤または免疫調節剤は、初期アポトーシス細胞の投与前に投与される。いくつかの実施形態では、追加の化学療法剤または免疫調節剤は、初期アポトーシス細胞の投与後に投与される。
【0329】
いくつかの実施形態では、化学療法剤は、アルキル化剤、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、テトラジン、アジリジン、シスプラチン及びその誘導体、非古典的アルキル化剤、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、イホスファミド、ブスルファン、N-ニトロソ-N-メチル尿素(MNU)、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(MeCCNU)、フォテムスチン、ストレプトゾトシン、ダカルバジン、ミトゾロミド、テモゾロミド、チオテパ、マイトマイシン、ジアジクオンン(AZQ)、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、プロカルバジン、ヘキサメチルメラミン、代謝拮抗薬、葉酸代謝拮抗薬、メトトレキサート、ペメトレキセド、フルオロピリミジン、フルオロウラシル、カペシタビン、デオキシヌクレオシド類似体、シタラビン、ゲムシタビン、デシタビン、アザシチジン、フルダラビン、ネララビン、クラドリビン、クロファラビン、ペントスタチン、チオプリン、チオグアニン、メルカプトプリン、微小管阻害薬、ビンカアルカロイド、タキサン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、半合成ビンカアルカロイド、ビノレルビン、ビンデシン、ビンフルニン、パクリタキセル、ドセタキセル、ポドフィロトキシン、エトポシド、テニポシド、トポイソメラーゼ阻害薬、イリノテカン、トポテカン、カンプトテシン、エトポシド、ドキソルビシン、ミトキサントロン、テニポシド、触媒阻害薬、ノボビオシン、メルバロン、アクラルビシン、細胞毒性抗生物質、アントラサイクリン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、アクチノマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、アントラサイクリン、ピラルビシン、アクラルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、マイトマイシン、標的療法剤、モノクローナル抗体、裸のモノクローナル抗体、複合モノクローナル抗体、化学標識抗体、二重特異性モノクローナル抗体、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0330】
いくつかの実施形態では、免疫調節剤は、抗体またはその機能的断片を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその機能的断片は、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、Fab断片、F(ab´)2断片、またはFv断片を含む。
【0331】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されたポリペプチドまたはペプチドドメインのいずれか1つの活性断片が開示される。当業者であれば、「断片」という用語が、少なくとも5、10、13または15個のアミノ酸を包含し得ることを理解するであろう。他の実施形態では、断片は、少なくとも20個の連続するアミノ酸である。本明細書に開示された断片は、当業者に既知の方法で生成されるか、または正常なタンパク質プロセシング(例えば、生物活性に必要ではない新生プリペプチドからのアミノ酸の除去、または代替のmRNAスプライシング若しくは代替のタンパク質プロセシングイベントによるアミノ酸の除去)により生成され得る。
【0332】
「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、最も広い意味で互換的に使用され、具体的には、抗体の結合活性を保持するポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、またはその任意の断片を指す。特定の実施形態では、本明細書に開示された方法は、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体の使用を含む。
【0333】
いくつかの実施形態では、「抗体」という用語は、無傷分子及びその機能的断片(例えば、Fab、F(ab´)2、及びFvなど)であって、本明細書に記載されたような所望の標的と特異的に相互作用する(例えば、食細胞と結合する)ことができるものを指す。いくつかの実施形態では、抗体断片は、次の(1)~(5)を含む。
【0334】
(1)Fab:抗体分子の一価の抗原結合性断片を含む断片であって、抗体全体を酵素パパインで消化して、無傷の軽鎖及び一本の重鎖の一部を得ることにより生成することができる断片。
【0335】
(2)Fab´:抗体分子の断片であって、抗体全体をペプシンで処理し、次いで還元を行って、無傷の軽鎖及び重鎖の一部を得ることにより生成することができる断片。1つの抗体分子あたり、2つのFab´断片が得られる。
【0336】
(3)F(ab´)2:抗体分子の断片であって、抗体全体を酵素ペプシンで処理し、その後に還元を行わないことによって得られる断片。F(ab´)2は、2つのジスルフィド結合によって互いに結合された2つのFab´断片の二量体である。
【0337】
(4)Fv:軽鎖の可変領域と、2本の鎖として発現する重鎖の可変領域とを含む遺伝子組み換え断片である。
【0338】
(5)一本鎖抗体(「SCA」):遺伝的に融合した一本鎖分子としての適切なポリペプチドリンカーによって互いに連結された軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域とを含む遺伝子組み換え分子である。
【0339】
これらの断片の作製方法は当分野で既知である。例えば、参照により本明細書に援用される、「Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1988」を参照されたい。
【0340】
いくつかの実施形態では、抗体断片は、抗体のタンパク質分解加水分解によって、または断片をコードするDNAの大腸菌または哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養物、または他のタンパク質発現系)における発現によって作製することができる。
【0341】
抗体断片は、いくつかの実施形態では、従来の方法による抗体全体のペプシンまたはパパイン消化によって作製することができる。例えば、抗体断片は、抗体をペプシンで酵素的に切断して、F(ab´)2で表される5S断片を提供することによって作製することができる。この断片を、チオール還元剤、及び任意選択でジスルフィド結合の切断により生じたスルフヒドリル基のブロッキング基を使用してさらに切断することによって、3.5S Fab´一価断片を生成することができる。あるいは、ペプシンを使用した酵素的切断は、2つの一価Fab´断片と、Fc断片とを直接生成する。これらの方法は、例えば、Goldenbergの米国特許第4,036,945号明細書及び同4,331,647号明細書に記載されており、これらの特許文献の内容の全体は、参照により本明細書に援用される。また、「Porter, R. R., Biochem. J., 73: 119-126, 1959」も参照されたい。無傷抗体によって認識される抗原に断片が結合する限り、抗体を切断する他の方法、例えば、重鎖を分離して一価の軽重鎖断片を形成する方法、断片をさらに切断する方法、または他の酵素的、化学的、または遺伝的技術も使用することができる。
【0342】
Fv断片は、VH鎖とVL鎖との会合体を含む。この会合体は、「Inbar et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 69:2659-62, 1972.」に記載されているように、非共有結合であり得る。あるいは、可変鎖は、分子間ジスルフィド結合によって連結されるか、または、例えばグルタルアルデヒドなどの化学物質によって架橋され得る。好ましくは、Fv断片は、ペプチドリンカーによって互いに連結されたVH鎖及びVL鎖を含む。これらの一本鎖抗原結合タンパク質(sFv)は、オリゴヌクレオチドによって互いに連結されたVHドメイン及びVLドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって作製される。構造遺伝子は発現ベクターに挿入され、次いで、例えば大腸菌などの宿主細胞に導入される。組み換え宿主細胞は、2つのVドメインを架橋するリンカーペプチドを有する単一のポリペプチド鎖を合成する。sFvを作製する方法は、例えば、「Whitlow and Filpula, Methods, 2: 97-105, 1991」、「Bird et al., Science 242:423-426, 1988」、「Pack et al., Bio/Technology 11:1271-77, 1993」、及び、Ladnerらの米国特許第4,946,778号明細書に記載されている(これら文献の内容の全体は、参照により本明細書に援用される)。
【0343】
抗体断片の別の形態は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識単位」)は、目的の抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得ることができる。このような遺伝子は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて、抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成することによって作製される。例えば、「Larrick and Fry, Methods, 2: 106-10, 1991」を参照されたい。
【0344】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載された抗体または断片は、抗体の「ヒト化形態」を含み得る。いくつかの実施形態では、「抗体のヒト化形態」という用語は、非ヒト(例えば、ネズミ)抗体を指し、これは、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含む、免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖若しくはその断片(例えば、Fv、Fab、Fab´、F(ab´)2、または、他の抗原結合サブ配列)のキメラ分子である。ヒト化抗体は、レシピエントの相補的決定領域(CDR)を形成する残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基と置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基と置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体においても、移入されたCDRまたはフレームワーク配列においても見られない残基を含み得る。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、一般的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、CDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの該領域に対応しており、FR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン共通配列の該領域である。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、一般的には、ヒト免疫グロブリンの少なくとも一部を含む(Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature, 332:323-329 (1988); and Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596 (1992))。
【0345】
非ヒト抗体をヒト化する方法は、当分野において公知である。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒトのソースから導入された1以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば移入残基と呼ばれ、一般的に移入可変ドメインから取得される。ヒト化は、Winterらの方法「Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988); Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536 (1988)」に従って、げっ歯類のCDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することによって本質的に行うことができる。したがって、そのようなヒト化抗体は、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号明細書)であり、実質的に無傷ヒト可変ドメイン未満が、非ヒト種由来の対応する配列によって置換されている。実際には、ヒト化抗体は、一般的に、いくつかのCDR残基、あるいは、いくつかのFR残基がげっ歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
【0346】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリを含む、当分野で既知の様々な技術を用いて作製することができる(Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991); Marks et al., Mol. Biol., 222:581 (1991))。また、Coleら及びBoernerらの技術を、ヒトモノクローナル抗体の作製に用いることもできる(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985) and Boerner et al., J. Immunol., 147(1):86-95 (1991))。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、遺伝子導入動物、例えば内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されたマウスに導入することによって作製することができる。導入すると、ヒトの抗体産生が観察されるが、これは、遺伝子再構成、会合、抗体レパートリーなど、あらゆる点でヒトに見られるものとよく似ている。このアプローチは、例えば、下記の特許文献、米国特許5,545,807号明細書、同5,545,806号明細書、同5,569,825号明細書、同5,625,126号明細書、同5,633,425号明細書、及び同5,661,016号明細書、並びに、下記の化学論文、「Marks et al., Bio/Technology 10, 779-783 (1992)」、「Lonberg et al., Nature 368 856-859 (1994)」、「Morrison, Nature 368 812-13 (1994)」、「Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-51 (1996)」、「Neuberger, Nature Biotechnology 14, 826 (1996)」、及び「Lonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13 65-93 (1995)」に記載されている。
【0347】
いくつかの実施形態では、免疫調節剤は、抗CD20モノクローナル抗体を含む。いくつかの実施形態では、抗CD20モノクローナル抗体は、リツキシマブである。リツキシマブは市販されており、リツキサン(Rituxan)(登録商標)の名前で販売されており、バイオジェン社及びジェネンテックUSA社により共同販売されている。
【0348】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された方法は、第一選択療法を含む。
【0349】
当業者であれば、「第一選択療法」という用語が、疾患に対して最初に行われる治療を包含し得ることを理解するであろう。多くの場合、例えば手術とその後の化学療法及び放射線療法は、一連の標準治療の一部となっている。単独で使用する場合、第一選択療法は、最良の治療法として認められている。病気を治せなかったり、重い副作用が生じたりする場合は、他の治療法が追加されるか、または代わりに使用され得る。第一選択療法は、寛解導入療法、一次療法、一次治療とも呼ばれている。
【0350】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された方法は、アジュバント療法(術後補助療法)を含む。
【0351】
当業者であれば、「アジュバント療法」という用語が、一次治療または初期治療に加えて行われる治療を包含し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、アジュバント療法は、さらなる治療の準備において一次治療の前に行われる別の癌療法を含み得る。いくつかの実施形態では、アジュバント療法は、癌が再発するリスクを低減させるために、一次治療の後に行われる別の癌療法を含み得る。アジュバント療法には、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、標的療法、または生物学的療法などが含まれ得る。
【0352】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された方法は、微小残存病変を減少させる、寛解を増加させる、寛解期間を延長させる、腫瘍再発率を減少させる、腫瘍または癌の大きさを減少させる、腫瘍または癌の増殖率を減少させる、腫瘍または癌の転移を予防する、腫瘍または癌の転移率を減少させる、またはそれらの任意の組み合わせをもたらす。
【0353】
当業者であれば、「微小残存病変」という用語が、治療中または治療後に、疾患の症状または徴候が見られない患者の体内に残存する少数の癌細胞を包含し得ることを理解するであろう。
【0354】
加えて、「寛解」という用語は、癌が依然として体内に存在し得るが、癌の徴候及び症状の減少または消失を包含し得る。いくつかの実施形態では、寛解は、癌の徴候及び症状の全てではないが一部が消失した部分寛解を含む。いくつかの実施形態では、寛解は、癌は依然として体内に存在し得るが、癌の徴候及び症状の全てが消失した完全寛解を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示された方法は、初期アポトーシス細胞またはその組成物による初期治療によって、癌の徴候または症状を減少または消失させる寛解導入療法を含み得る。
【0355】
当業者であれば、「再発」という用語が、改善期間後における、疾患の再発、または疾患の徴候及び症状の再発を含み得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、本明細書に開示された方法は、無再発生存をもたらす。無再発生存は、癌の一次治療の終了後に、その癌の徴候または症状が現れることなく患者が生存する期間を含む。
【0356】
当業者であれば、「転移」という用語が、体内における、癌が最初に形成された部分から別の部分への癌細胞の拡散を包含することを理解するであろう。転移においては、癌細胞は、原腫瘍(原発腫瘍)から離脱し、血液系またはリンパ系を通って移動し、体内の他の臓器または組織に新たな腫瘍を形成する。いくつかの実施形態では、新しい転移性腫瘍は、原発腫瘍と同じ種類の癌である。例えば、乳癌が肺に転移した場合、肺に存在する癌細胞は、肺癌細胞ではなく乳癌細胞である。
【0357】
悪性腫瘍
【0358】
いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は、癌または腫瘍の治療、予防、抑制、発生率の低減、改善、または緩和のための方法であって、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)を投与するステップを含む方法で使用される。本明細書に開示されたように、これらの方法は、CRSまたはサイトカインストームの発生を抑制または減少させるための、追加薬剤を投与するステップをさらに含む。
【0359】
いくつかの実施形態では、対象の生存率を増加させる方法が開示される。いくつかの実施形態では、びまん性癌に罹患している対象の生存率を増加させるか、または生存期間を延長させる方法であって、初期アポトーシス細胞集団を対象に投与するステップを含む方法が開示される。この方法は、びまん性癌に罹患している対象の生存率を増加させるか、または生存期間を延長させる。
【0360】
いくつかの実施形態では、癌は、B細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は、白血病である。別の実施形態では、B細胞悪性腫瘍は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。別の実施形態では、B細胞悪性腫瘍は、慢性リンパ球性白血病である。
【0361】
いくつかの実施形態では、癌は、白血病である。いくつかの実施形態では、癌は、リンパ腫である。いくつかの実施形態では、リンパ腫は、大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0362】
いくつかの実施形態では、腫瘍は、固形腫瘍を含む。別の実施形態では、固形腫瘍は、腹部腫瘤を含む。
【0363】
いくつかの実施形態では、癌または腫瘍の大きさを減少させるか、または癌または腫瘍の増殖率を減少させる方法であって、初期アポトーシス細胞集団を対象に投与するステップを含む方法が開示される。この方法は、癌または腫瘍の大きさまたは増殖率を減少させる。いくつかの実施形態では、びまん性癌の増殖率を減少させる方法であって、初期アポトーシス細胞集団を対象に投与するステップを含む方法が開示される。この方法は、びまん性癌の増殖率を減少させる。いくつかの実施形態では、固形癌または腫瘍の大きさまたは増殖率を減少させる方法であって、初期アポトーシス細胞集団を対象に投与するステップを含む方法が開示される。この方法は、固形癌または腫瘍の大きさまたは増殖率を減少させる。
【0364】
いくつかの実施形態では、癌は、固形腫瘍を含み得る。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、嚢胞または液体領域を通常含まない異常な組織集団を含む。固形腫瘍は、良性(非癌)または悪性(癌)であり得る。固形腫瘍の様々な種類には、腫瘍を形成する細胞の種類に応じて名前が付けられている。固形腫瘍の例は、肉腫、癌腫、及びリンパ腫である。白血病(血液の癌)は一般的に、固形腫瘍を形成しない。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、肉腫または癌腫を含む。
【0365】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、血液、骨髄またはリンパ系細胞以外の生体組織細胞の異常増殖によって形成される新生物(細胞の新生物)または病変(解剖学的構造の損傷または生理学的機能の障害)である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、肝臓、結腸、乳房または肺などの様々な組織型に由来し得る異常な細胞集団からなり、その細胞起源の器官で最初に増殖する。しかし、このような癌は、疾患の進行したステージでは転移性腫瘍の成長により、他の器官に拡散し得る。
【0366】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍の例は、肉腫、癌腫、及びリンパ腫を含む。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、肉腫または癌腫を含む。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、腹腔内腫瘍である。
【0367】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、これに限定しないが、肺癌、乳癌、卵巣癌、胃癌、食道癌、子宮頸癌、頭頸部癌、膀胱癌、肝臓癌、及び皮膚癌を含む。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌または腫瘍、乳癌または腫瘍、卵巣癌または腫瘍、前立腺癌または腫瘍、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌または腫瘍、子宮癌または腫瘍、精巣癌または腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起膠腫、神経鞘腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、及び網膜芽細胞腫を含む。
【0368】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、副腎皮質腫瘍(腺腫及び癌腫)、癌腫、直腸結腸癌、類腱腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、内分泌腫瘍、ユーイング肉腫、胚細胞腫瘍、肝芽腫、肝細胞癌、黒色腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、横紋筋肉腫以外の軟部肉腫、及びウィルムス腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、乳房腫瘍である。別の実施形態では、固形腫瘍は、前立腺癌である。別の実施形態では、固形腫瘍は、大腸癌である。いくつかの実施形態では、腫瘍は、脳腫瘍である。別の実施形態では、腫瘍は、膵臓腫瘍である。別の実施形態では、腫瘍は、直腸結腸腫瘍である。
【0369】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された初期アポトーシス細胞またはその組成物は、例えば、肉腫及び癌腫(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起膠腫、神経鞘腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、及び網膜芽細胞腫)に対する治療効果及び/または予防効果を有する。
【0370】
本明細書に開示された初期アポトーシス細胞及びその組成物は、当分野で既知の任意の固形腫瘍の治療、予防、増殖の抑制、または発生率の低減のために使用され得る。
【0371】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された初期アポトーシス細胞及びその組成物は、本明細書に記載されたまたは当分野で既知の固形腫瘍に罹患している対象の生存率を増加させるために使用され得る。
【0372】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された初期アポトーシス細胞及びその組成物は、本明細書に記載されたまたは当分野で既知の固形腫瘍の大きさまたは増殖率を減少させるために使用され得る。
【0373】
いくつかの実施形態では、癌は、びまん性癌であり得、広く拡散し、局所化されるまたは特定位置に限定されることはない。いくつかの実施形態では、びまん性癌は、非固形腫瘍を含み得る。びまん性癌の例には、白血病が含まれる。白血病は、骨髄などの造血組織から発生する癌を含み、異常な血液細胞が大量に作製され血流に流入する。
【0374】
いくつかの実施形態では、びまん性癌は、B細胞悪性腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、びまん性癌は、白血病を含む。いくつかの実施形態では、びまん性癌は、リンパ腫である。いくつかの実施形態では、リンパ腫は、大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0375】
いくつかの実施形態では、びまん性の癌または腫瘍は、血液腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、血液腫瘍は、血液、骨髄、及びリンパ節に影響を与えるタイプの癌である。血液腫瘍は、2つの主要な血液細胞系統、すなわち骨髄系細胞株及びリンパ系細胞株のいずれかから誘導され得る。骨髄系細胞株は通常、顆粒球、赤血球、血小板、マクロファージ、及びマスト細胞を産生し、一方、リンパ系細胞株は、B細胞、NK細胞、及び形質細胞を産生する。リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫)、リンパ球性白血病、及び骨髄腫はリンパ球系に由来し、一方、急性または慢性の骨髄性白血病(AML、CML)、骨髄異形成症候群、及び骨髄増殖性疾患は、骨髄由来である。
【0376】
いくつかの実施形態では、非固形(びまん性)癌または腫瘍は、造血器悪性腫瘍、血液細胞癌、白血病、骨髄異形成症候群、リンパ腫、多発性骨髄腫(形質細胞骨髄腫)、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、または形質細胞白血病を含む。
【0377】
別の実施形態では、本明細書に開示された初期アポトーシス細胞及びその組成物は、びまん性癌に対する治療効果及び/または予防効果を有する。びまん性癌としては、これに限定しないが、例えば、白血病(例えば、急性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病、非ホジキン病)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、及び重鎖病が挙げられる。
【0378】
本明細書に開示された組成物及び方法は、当分野で既知の任意の血液腫瘍の治療、予防、抑制、改善、発生率の低減、また緩和のために使用され得る。
【0379】
当業者であれば、「含む(comprising)」という用語の使用が、特定の実施形態では、「本質的に~からなる」または「~からなる」という用語の使用に置き換えてもよいことを理解するであろう。当業者であれば、「含む(comprising)」という用語が、列挙された要素を含むが、任意選択であり得る他の要素を除外しないことを意味することを意図していることを理解するであろう。例えば、初期アポトーシス細胞を含むが、この細胞集団に限定されない組成物。さらに、「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という用語は、列挙された要素、例えば、本質的に初期アポトーシス細胞からなり、かつ、当該組成物の性能に対して本質的に有意な効果を有し得る他の要素を除外した組成物を包含することができる。したがって、そのような組成物は、癌の治療に不可欠な活性を含まない薬学的に許容可能な賦形剤を依然として含み得る。さらに、「~からなる(consisting of)」は、他の要素を完全に除外することを包含する。したがって、早期アポトーシス細胞からなるそのような組成物は、本明細書に開示された他の要素を完全に含まないであろう。
【0380】
当業者であれば、「約(about)」という用語が、示された数値または数値範囲から0.0001~5%の間の逸脱を包含し得ることを理解するであろう。さらに、「約」という用語は、示された数値または数値範囲から1~10%の逸脱を包含し得る。さらに、「約」という用語は、示された数値または数値範囲から最大25%の逸脱を包含し得る。
【0381】
当業者であれば、「a」、「an」及び「the」という単数形が、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含むことを理解するであろう。例えば、「1つの薬剤(an agent)」または「少なくとも1つの薬剤(at least an agent)」は、複数の薬剤(例えば、その混合物)を含み得る。
【0382】
本出願を通じて、本明細書に開示される様々な実施形態は、範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は、単に便宜上及び簡潔さのためのものであり、本発明の範囲の非柔軟な限定として解釈されるべきでないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、可能な下位範囲(サブ範囲)の全て、及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示したものと見なされるべきである。例えば、1~6のような範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの下位範囲、及びその範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5、6を具体的に開示したものと見なされるべきである。このことは、範囲の幅に関わらず適用される。
【0383】
本明細書で数値範囲が示されているときは常に、示された数値範囲内の任意の記載された数値(少数・分数または整数)を含むことを意味する。「1番目に示した数値と2番目に示した数値との間の範囲」という表現と、「1番目に示した数値から2番目に示した数値までの範囲」という表現とは、本明細書では同じ意味で使用され、1番目に示した数値、2番目に示した数値、及びその両数値間の全ての少数・分数及び整数を含むことを意味する。
【0384】
実施例
【0385】
実施例1:アポトーシス細胞の作製
【0386】
目的:アポトーシス細胞を作製する。
【0387】
方法:初期アポトーシス細胞集団を作製する方法は、国際公開第2014/087408号及び米国特許出願公開第2015/0275175A1号明細書に十分に記載されており、例えば、方法セクション及びその後の実施例の「初期アポトーシス細胞集団の作製」及び「アポトーシス細胞の作製」(段落[0223]~[0288])、並びに実施例11、12、13及び14を参照されたい(これらの記載内容の全体は本明細書に援用される)。
【0388】
図1に示すフローチャートは、初期アポトーシス細胞集団の作製プロセス中に用いられるステップの一実施形態の概要を提供し、本実施形態では、解凍ステップ及びアポトーシス誘導ステップにおいて、抗凝固剤が添加される。国際公開第2014/087408号及び米国特許出願公開第2015/0275175A1号明細書の実施例14に詳細に記載されているように、凍結時、インキュベート時、または、凍結時及びインキュベート時の両方において抗凝固剤を添加して、初期アポトーシス細胞集団を作製した。使用した抗凝固剤は酸性クエン酸デキストロースであり、NIH-A(ACD-A)にヘパリン10U/mlを添加して、総量の最終濃度が、ACD5%、ヘパリン0.5U/mlとなるようにした。
【0389】
簡潔な説明:細胞を収集し、次いで、5%の抗凝固剤クエン酸デキストロース-A及び10U/mlヘパリン(ACDhep)を凍結培地に添加して凍結した。そして、解凍し、5%のACDHepを含有するアポトーシス誘導培地中でインキュベートし、閉鎖系内で最終産物の作製を行った。
【0390】
アポトーシス及び生存率の分析、効力アッセイ、及び細胞集団の特徴付けを各実験において行った。初期アポトーシス細胞産物の作製における一貫性を確立するために、アポトーシス細胞の初期バッチの最終産物(FP)を2~80℃で保存し、t0、t24h、t48h及びt72hにおいて調べた。各時点のアポトーシス分析において、短時間の効力アッセイ(出願人のCD14+凍結細胞)、トリパンブルー測定、及び細胞集団の特徴付けを行った。FPの細胞数を調べて、保存中、アポトーシス分析中、及び生存率分析中の平均細胞喪失を評価した。
【0391】
前述の国際公開第2014/087408号及び米国特許出願公開第2015/0275175A1号明細書の方法セクション及び実施例11に、抗凝固剤の非存在下で他の実施形態のアポトーシス細胞集団の作製方法の詳細が記載されている(これらの記載内容の全体は本明細書に援用される)。
【0392】
放射線照射されたアポトーシス細胞を作製する方法:同様の方法を用いて、不活性化されたアポトーシス細胞集団を作製した。単核初期アポトーシス細胞集団は、非静止非アポトーシス細胞の割合の減少、任意の生存非アポトーシス細胞の細胞活性化の抑制、任意の生存非アポトーシス細胞の増殖の減少、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0393】
簡潔に説明すると、白血球アフェレーシス手法を用いて、健康な適格ドナーから濃縮単核細胞分画を収集した。アフェレーシスの完了後、細胞を洗浄し、5%の抗凝固剤クエン酸デキストロース溶液-A(ACD-A)、及び0.5U/mlのヘパリンを含む凍結培地中で再懸濁した。その後、細胞を徐々に凍結し、液体窒素中で長期保存した。
【0394】
放射線照射されたアポ細胞(ApoCell)の作製のために、凍結保存した細胞を解凍し、洗浄し、5%のACD-A、0.5U/mlのヘパリンナトリウム、及び50μg/mlのメチルプレドニゾロンを含有するアポトーシス誘導培地中で再懸濁した。その後、細胞を、5%のCO中で37°Cにて6時間インキュベートした。インキュベートの終了後、細胞を収集し、洗浄し、細胞処理システム(ドイツ国、Fresenius Kabi)を使用してハルトマン溶液中で再懸濁した。作製完了後、放射線治療ユニット(Hadassah Ein Kerem)のg-カメラを使用して、アポ細胞に対して4000cGyで放射線照射した。アネキシンV(Annexin V)及びPI(米国マサチューセッツ州、MBL)染色(それぞれ、40%以上及び15%以下)を用いて、アポ細胞のアポトーシス及び生存率をフローサイトメトリーによって測定した。結果を、FCS Expressソフトウェアを用いて解析した。
【0395】
この放射線照射されたアポ細胞集団は、初期アポトーシス細胞を含み、存在する生存細胞の細胞活性が抑制され、増殖能力が低下または抑止されたと考えられる。特定の場合では、アポ細胞集団は、生存する非アポトーシス細胞を有していない。
【0396】
結果:
【0397】
凍結時及びインキュベート(アポトーシス誘導)時に抗凝固剤を添加して作製し、2~8°Cで保存したFPの安定性を、下記の表1に示す。
【0398】
【表1】
【0399】
誘導培地に抗凝固剤を添加せずに細胞を作製した場合、その細胞は、24時間にわたって安定的であり、その後、不安定になった。
【0400】
表1に示すように、予期せぬことに、抗凝固剤の使用により、アポトーシス細胞集団の安定性が少なくとも72時間延長された。
【0401】
【表2】
【0402】
表2の結果は、FPの生存率が、少なくとも72時間にわたって高レベルに維持されたことを示す。
【0403】
【表3】
【0404】
表3の結果は、アポトーシス細胞対壊死細胞の割合が、初期アポトーシス細胞の割合と同様に、細胞の作製後少なくとも72時間の延長された時間にわたって維持されたことを示す。
【0405】
凍結時とアポトーシス誘導時との両方において抗凝固剤を添加した場合に、安定的な初期アポトーシス細胞が、最も一貫して高い収率で得られた(初期アポトーシス細胞の平均収率61.3±2.6%対48.4±5.0%、100%の収率は凍結時の細胞数に基づく)。この高収率は、2~8°Cで24時間保存しても維持された。
【0406】
次に、凍結時、解凍時、またはその両方における抗凝固剤の含有量を比較し、収集率(%)及び安定性を測定した。抗凝固剤は、すべての集団について、アポトーシスのインキュベート混合物に含まれていた。表4は、これらの試験結果を示す。
【0407】
【表4】
【0408】
抗凝固剤を添加して作製した初期アポトーシス細胞集団(細胞バッチ)と、抗凝固剤を添加しないで作製した初期アポトーシス細胞集団とのさらなる集団分析比較は、これらの結果の一貫性を示す。
【0409】
【表5】
【0410】
抗凝固剤の存在下または非存在下における最終産物細胞(収率)の割合:表1に示した上記の結果と同様に、表4に示したデータは、抗凝固剤の存在下で凍結された細胞から作製された初期アポトーシス細胞が、抗凝固剤の非存在下で凍結された細胞と比較して、新鮮な最終産物(FPt0)の平均収量において有益効果を有することを示している。有益効果は、抗凝固剤を凍結時にのみ使用した場合(61.3±2.6%対48.4±5.0%)と、抗凝固剤を凍結時及び解凍時の両方において使用した場合(56.5±5.2%対48.4±5.0%)とに見られた。抗凝固剤を解凍時にのみ使用した場合には、有益効果はそれほど顕著ではなかった(44.0±8.5%対48.4±5.0%)。これらは、非高トリグリセリド試料であった。
【0411】
凝集に対する抗凝固剤の効果:これらの3例の非高トリグリセリド試料、または21例の追加試料では、細胞凝集は見られなかった(データは示さない)。しかし、抗凝固剤の非存在下で作製された別の41例の非高トリグリセリド試料では、軽度の凝集が10例(24.4%)で見られ、重度の凝集が5例(12.2%)で見られた(データは示さない)。したがって、抗凝固剤は、完全な細胞凝集を阻止した。
【0412】
安定性に対する抗凝固剤の効果:抗凝固剤の存在下または非存在下で作製された新鮮なFPを、2~8°Cで24時間保存し、作製手順にACDhepを添加するとFPの安定性が損なわれるかどうかを調べた。24時間保存後、細胞をサンプリングし、収率を細胞数で計算した。表1に示した長期間(最大72時間)についての結果と同様に、表4は、抗凝固剤を凍結時にのみ使用した場合(59.8±2.1%対47.5±4.7%)と、抗凝固剤を凍結時及び解凍時の両方において使用した場合(56.4±5.3%対47.5±4.7%)とに、有益効果が維持及び観察されたことを示している。抗凝固剤を解凍時にのみ添加した場合には、有益効果はそれほど顕著ではなかった(42.4±6.1%対47.5±4.7%)。これらはすべて、非高トリグリセリド試料であった。これらの結果は、凍結中及び解凍中の両方において抗凝固剤で処理された細胞は、24時間のFP保存後の細胞喪失が、すべての処理中で最小であるという有意な利点を有することを示す。凍結時のみに抗凝固剤で処理した細胞の平均喪失は、抗凝固剤非存在下の場合の1.9±3.3%と比較して2.3±3.2%であった。解凍時のみに抗凝固剤で処理した細胞の平均喪失は、抗凝固剤非存在下の場合の1.9±3.3%と比較して3.0±4.7であった。また、細胞を凍結時及び解凍時にACDHepで処理した細胞の平均喪失は、抗凝固剤非存在下の場合の1.9±3.3%と比較して0.2±0.4%であった。要約すると、収率における抗凝固剤の有益効果は、少なくとも24時間維持された。
【0413】
FPの代表的な細胞集団の特徴を、下記の表6に示す。
【0414】
【表6】
【0415】
表6の結果は、凍結時または解凍時に抗凝固剤を添加して、または添加せずに作製された最終産物(FP)の細胞特性を示す。バッチをサンプリングし、単核マーカーを染色し、フローサイトメトリーにより分析して各試料における細胞分布を測定し、抗凝固剤の添加が細胞集団に影響を及ぼすかどうかを調べた。表5に示すように、凍結時または解凍時に抗凝固剤を添加して、または添加せずに作製された細胞集団において、有意差は検出されなかった。新鮮なFPにおける平均T細胞集団(CD3+細胞)は、凍結前の62.9±1.1%と比較して、処理間で62.3±1.2%であった。平均B細胞集団(CD19+細胞)は、凍結前の3.1±0.8%と比較して、処理間で8.3±2.5%であった。平均ナチュラルキラー細胞集団(CD56+細胞)は、凍結前の12.9±0.5%と比較して、処理間で9.5±0.7%であった。平均単球細胞集団(CD14+細胞)は、凍結前の17.5±0.3%と比較して、処理間で13.8±0.5%であった。平均顆粒球集団(CD15+細胞)は、新鮮FPでは0.0%、凍結時では0.35±0.2%であった。
【0416】
また、初期アポトーシス集団の効力を調べた。
【0417】
【表7】
【0418】
表7に示す結果は、各最終産物における、LPSで刺激した後の未成熟樹状細胞(iDC)における寛容原性状態を強化する能力を測定するために実施された効力アッセイの結果である。寛容原性効果は、初期アポトーシス細胞集団との相互作用及びLPS上方制御をもたらす様々な処理後に、iDCにおける共刺激分子HLA-DR及びCD86発現の下方制御を評価することによって測定した。DCsign+細胞の分析を行った。結果は、初期アポトーシス細胞集団との相互作用後、及びLPSの添加後の、LPS誘導成熟に対する成熟の遅延パーセントを表す。実験では、抗凝固剤の存在下または存在下で作製した新鮮なFP(t0)の効力を試験した。表7に示した結果は、抗凝固剤の存在下または非存在下で作製されたアポトーシス細胞が、両方の共刺激マーカーの耐性効果を用量依存的に高めることを示す。
【0419】
ここで作製した初期アポトーシス細胞は、非高トリグリセリド試料由来であった。この安定な初期アポトーシス細胞の一貫した高収率は、ドナー血漿のトリグリセリドが高い場合でも生じた(例えば、国際公開第2014/087408号及び米国特許出願公開第2015/0275175A1号明細書の実施例12及び13を参照されたい)。抗凝固剤が、投与される最終初期アポトーシス細胞の作製に使用されたPBS培地に添加されなかったことに留意されたい。
【0420】
要約
【0421】
本研究の目的は、安定的で高収量の初期アポトーシス細胞集団を作製することであった。抗凝固剤の使用の合理的な理由は、凝集体が、まず高トリグリセリドの患者で見られ、その後、他の患者のかなりの部分で見られることであった。ここでの関心事項は、米国特許第6、489、311号明細書における、抗凝固剤の使用が細胞アポトーシスを防止するという開示であった。
【0422】
手短に説明すると、抗凝固剤を添加した場合に、最終産物中の収集された細胞数(収率)において少なくとも10~20%の有意な改善があり、かつ、細胞の組成、生存率、安定性、及びアポトーシス性に対する影響は最小限であった。本研究では、収率において最大で13%の増加が示され、制御された条件下では収率の26.8%の増加を示し、実際のGMP条件下では最大で33%の増加を示し、細胞数のより多くの増加が単一の収集において得られた。この効果は、ドナーからの2回目のアフェレーシスの必要性を回避することができるので、極めて重要である。
【0423】
予想される影響は中程度の凝集体の溶解であったので、この効果は驚くべきものであった。抗凝固剤を添加して作製し凍結した細胞を解凍すると、凝集体の量が減少するという仮説が立てられていた。凝集体が形成されると、最終的に大量の細胞喪失がもたらされる。抗凝固剤を添加せずに作製し凍結した細胞は、解凍し、洗浄した直後に凝集体の形成を示した。さらに、抗凝固剤を添加せずに作製し凍結し、抗凝固剤を含有する培地中で再懸濁した細胞においても、高レベルの凝集体が検出された。抗凝固剤を添加して作製し凍結し、抗凝固剤を含有する培地中で再懸濁した細胞には、凝集体は見られなかった。まとめると、凍結時及びアポトーシス誘導時の抗凝固剤の添加は非常に重要であり、かつ、細胞集団に対する初期アポトーシスの誘導に悪影響を与えないように思われるという結論に達した。
【0424】
初期アポトーシス細胞の回復率を、安定性を目的として、例えば2~8°Cで24時間保存した後にさらに試験した。その間の平均細胞喪失は、作製条件にかかわらず3~4.7%であり、抗凝固剤を含有する培地で凍結及び解凍した細胞については良好な結果が得られた(24時間のFP保存後において、0.2±0.4%の細胞喪失)。これにより、凍結時及び解凍時の抗凝固剤の添加が重要であり、最終的に作製された後は、初期アポトーシス細胞集団が安定的であることが示唆された。延長された時点での実験は、この安定性が少なくとも72時間まで持続することを示した。
【0425】
FP(最終産物)のアポトーシス及び生存性並びに細胞組成は、凍結段階及び/または解凍段階での抗凝固剤の添加による有意な影響を受けなかった。幅広い特性から測定された値は類似しており、これは、ACDhepは初期のアポトーシス細胞特性を変化させず、最終産物が、アポトーシス細胞が40%以上という合格基準を満たしていることを示す。
【0426】
アポトーシス細胞の効力を試験するために用いたアッセイは、食作用、抗原提示、及びサイトカイン産生などの機能によって特徴付けられるDC、未成熟樹状細胞(iDC)に基づいている。
【0427】
HLA-DR(MHCクラスII)膜分子及び共刺激分子CD86が、抗原提示細胞(APC)の寛容原性効果を検出するマーカーとして選択された。フローサイトメトリーを用いて、iDC上のHLA-DR及びCD86の発現の変化を、LPSでの刺激後に測定し、また、抗凝固剤の存在下または非存在下で作製し、LPSで刺激した初期アポトーシス細胞集団の存在下で測定した。初期アポトーシス細胞集団は、iDC:初期アポトーシス細胞集団の比率が、1:2、1:4、及び1:8でDCに提供された。表6に示すように、初期アポトーシス細胞集団は、刺激されたDCにおいて、寛容原性効果を用量依存的に高め、凍結時及びアポトーシス誘導時の両方において抗凝固剤の存在下で作製した初期アポトーシス細胞集団では、わずかに良好な結果を示した。
【0428】
まとめると、凍結時及びアポトーシス培地への抗凝固剤の添加は、細胞の回収率を高め、凝集体に起因する大量の細胞喪失を回避し、かつ、多くの場合はドナーからの2回目のアフェレーシスを回避するために重要であるという結論に達した。すべての細胞が、有効なFPの合格基準を満たしていることが示され、抗凝固剤を添加してもFPが損なわれないことが示された。
【0429】
実施例2:非固形腫瘍モデルに対するアポトーシス細胞治療の効果
【0430】
目的:癌の生存に対するアポトーシス細胞の効果を測定するために、癌が広範囲に広がり、局在していない非固形腫瘍モデルに対するアポトーシス細胞の効果を試験する。
【0431】
方法:
【0432】
Raji細胞
【0433】
Raji細胞をECACC(カタログ番号:85011429)から購入し、完全培地(10%のH.I.FBS、1%のグルタマックス、1%のペニシリン/ストレプトマイシンを添加したRPMI-1640)でルーチン培養し、3×10~3×10個の細胞/mlの濃度に維持した。
【0434】
アポトーシス細胞は、実施例1に記載したようにして作製した。作製した初期のアポトーシス細胞は、少なくとも50%のアネキシンV陽性細胞であり、また、5%未満のPI陽性細胞であった。
【0435】
非固形(びまん性)腫瘍モデル
【0436】
実験の1日目に、SCIDマウスに対して、10個のRaji細胞を単回IV投与した。また、SCIDマウスの対照群に対して、生理食塩水を単回投与した。3コホートを試験した;2コホートにおいてRaji細胞を使用して白血病を誘導し、残りの1コホートは、対照として維持した。
【0437】
固形腫瘍モデル
【0438】
実験の1日目に、SCIDマウスに対して、105個のRaji細胞の単回のIP投与を行った。また、対照群に対して、生理食塩水の単一IP投与を行った。
【0439】
アポトーシス細胞治療
【0440】
予備研究において、マウスは、Raji細胞の投与の6日後に初期アポトーシス細胞の投与を受けた。その後の研究において、上記の白血病コホートの1つからのマウスは、Raji細胞の投与の6日後に開始して初期アポトーシス細胞(30×10個の細胞)の投与を3回受けた。
【0441】
結果
【0442】
SCIDマウスは、T細胞を有していないので、治療しなければ、白血病から回復できない。
【0443】
驚くべきことに、予備研究では、図2に示すように、Raji細胞の投与後6日目のアポトーシス細胞投与(APO)は、アポトーシス細胞の投与を受けなかったマウス(NO APO)と比較して、CD19+Rajiを投与したSCIDにおける腫瘍フリー死が有意に延長された。
【0444】
白血病(NO APO)コホートでは、予想寿命までの生存率は、Raji細胞を投与され、アポトーシス細胞を投与されなかったマウスでは70%であり、Raji細胞とアポトーシス細胞との両方を投与されたマウスでは94%であった(n=51 動物の総数、p<0.001)。予想通り、対照マウスの100%が、予想寿命(図3A)まで生存した。白血病コホートでは、予想寿命を12%超えた期間での生存率は、Raji細胞を投与され、アポトーシス細胞を投与されなかったマウスでは9%であり、Raji細胞とアポトーシス細胞との両方を投与されたマウスでは47%であった(図3B)。予想寿命を30%超えた期間での生存率は、Raji細胞を投与され、アポトーシス細胞を投与されなかったマウスは0%であり、Raji細胞とアポトーシス細胞との両方を投与されたマウスでは41%であった(図3C)。完全寛解に達した割合は、Raji細胞を投与され、アポトーシス細胞を投与されなかったマウスでは0%であり、Raji細胞とアポトーシス細胞との両方を投与されたマウスでは10%であった(図3D)。
【0445】
結論:
【0446】
アポトーシス細胞の投与は、白血病マウスの寿命を維持及び延長させ、特定の場合では、初期アポトーシス細胞を投与したマウスは完全寛解に達した(図2及び図3A-3D)。
【0447】
実施例3:びまん性腫瘍モデルに対するアポトーシス細胞と抗CD20mAbとの併用療法の効果
【0448】
目的:早期アポトーシス細胞と抗CD20mAbとの併用療法の生存率に対する効果を測定するために、癌が広範囲に広がり局在していないびまん性(非固形)腫瘍モデルに対する、初期アポトーシス細胞と抗CD20mAbとの組み合わせの投与の効果を試験する。
【0449】
Raji細胞、アポトーシス細胞、非固形(びまん性)腫瘍モデル、固形腫瘍モデル、及びアポトーシス細胞による治療は、上記の実施例2で説明した通りであった。
【0450】
抗CD20mAb
【0451】
市販の抗CD20mAbをロシュ(Roche)から入手した。
【0452】
抗CD20mAb治療
【0453】
マウスに、5mgの抗CD20mAbをIV投与した。
【0454】
アポトーシス細胞と抗CD20mAbとの併用療法
【0455】
Raji細胞の投与後6日目から開始して、マウスに30×10個のアポトーシス細胞を3回IV投与した。加えて、マウスに、5mgの抗CD20mAbをIV投与した。
【0456】
結果
【0457】
白血病マウスの予想寿命までの生存率は、Raji細胞、Raji細胞+抗CD20mAb、及びRaji細胞+抗CD20+アポトーシス細胞を投与したマウスでは100%であり、Raji細胞とアポトーシス細胞との両方を投与したマウスでは86%であった(図4A)(n=28 動物の総数、p<0.0002)。予想寿命を24%超えた期間での生存率は、Raji細胞を投与されたマウスでは0%であり、Raji細胞+アポトーシス細胞の両方を投与されたマウスでは29%であり、Raji細胞+抗CD20mAbまたはRaji細胞+抗CD20+アポトーシス細胞を投与されたマウスでは100%であった(図4B)。予想寿命を59%超えた期間での生存率は、Raji細胞を投与されたマウスでは0%であり、Raji細胞+アポトーシス細胞の両方を投与されたマウスでは29%であり、Raji細胞+抗CD20mAbの投与されたマウスでは57%であり、Raji細胞+抗CD20+アポトーシス細胞の投与されたマウスでは100%であった(図4C)。予想寿命を76%超えた期間での生存率は、Raji細胞を投与されたマウスでは0%であり、Raji細胞+アポトーシス細胞の両方を投与されたマウスでは29%であり、Raji細胞+抗CD20mAbの投与されたマウスでは14%であり、Raji細胞+抗CD20+アポトーシス細胞の投与されたマウスでは85%であった(図4D)。予想寿命を100%超えた期間での生存率は、Raji細胞またはRaji細胞+抗CD20mAbを投与されたマウスでは0%であり、Raji細胞+アポトーシス細胞またはRaji細胞+抗CD20+アポトーシス細胞を投与されたマウスでは29%であった(図4E)。
【0458】
結論:
【0459】
アポトーシス細胞の投与は白血病マウスの寿命を増加させ、完全寛解に到達するマウスの数を増加させ、抗CD20mAb治療の効果を高める(図4A図4E)。
【0460】
実施例4:アポトーシス細胞は、サイトカイン放出症候群(CRS)を下方制御し、CAR-T細胞効力を増大させる。
【0461】
目的:サイトカイン及びCAR-T細胞の細胞毒性に対する放射線照射初期アポトーシス細胞の長期間にわたる効果を試験する。CD19-CAR-T細胞のインビボでの効果を実証する。放射線照射初期アポトーシス細胞とCD19-CAR-T細胞との相乗効果を実証する。
【0462】
方法:CD19発現HeLa細胞(ProMab)を単独で、またはヒトマクロファージとの共培養後に使用して、マウスでの腹腔内実験及びインビトロ実験を行った。Raji細胞を、インビボで、白血病の誘導のために使用した。LPS及びIFN-gを使用して、さらなるサイトカイン放出を誘導した。第2世代細胞、CD28-保有細胞、CD19特異的細胞、CAR-修飾細胞(ProMabから購入するか、または、レトロネクチン作製プロトコール若しくはポリブレン作製プロトコールを用いて作製する)を使用して、CD19-保有細胞に対する抗腫瘍効果を調べた。細胞毒性アッセイを、インビボ(7-AADフローサイトメトリー)、及びインビトロ(生存曲線;骨髄及び肝臓における腫瘍負荷、フローサイトメトリー及び免疫組織化学)で調べた。CRSは、自然発生的に、またはLPS及びIFN-gに応答して発生した。マウスのIL-10、IL-1β、IL-2、IP-10、IL-4、IL-5、IL-6、IFN-a、IL-9、IL-13、IFN-g、IL-12p70、GM-CSF、TNF-a、MIP-1a、MIP-1β、IL-17A、IL-15/IL-15R、IL-7、及び32のヒトサイトカインを評価した(Luminex technology、MAPIX system;MILLIPLEX Analyst、Merck Millipore)。マウスIL-6Ra、MIG(CXCL9)、及びTGF-β1を評価した(Quantikine ELISA、R&D systems)。IFN-γ効果を評価した(STAT1リン酸化、生物学的産物)。ヒトマクロファージ及び樹状細胞は、単球から作製した。放射線照射初期アポトーシス細胞は、概ね、上記の実施例1で説明したようにして作製した。40%以上の細胞がアネキシンV陽性であり、細胞の15%以下はPI陽性であった。
【0463】
マウス:実験の1日目と2日目に、SCID-Bgマウス(雌、7~8週齢)に対して、0.25×10個のHeLa-CD19細胞を2連続で腹腔内(i.p)投与した。9日目に、4000rad(cGy)で放射線照射された10×10個のアポ細胞を(細胞処理システムを使用して)マウスに腹腔内投与した。そして、その翌日に、0.5×10個のCAR-T陽性細胞または2.2×10個のCAR-T陽性細胞を含む10×10個のCAR-T細胞集団をマウスに腹腔内投与した。対照として、マウスに対して、10×10個の活性化単核細胞またはMock-T細胞を投与した。IACUCのガイドラインにしたがって、マウスをSPF(特定病原体不在)動物施設で飼育した。マウスを、週2回体重を測定し、臨床徴候及び腹膜炎について毎日観察した。エンドポイントは、腹部の膨満及び緊張、嗜眠、可動性の低下または呼吸努力の増加として現れる重度の腹膜炎と定義した。生存分析は、Kaplan-Meier法にしたがって行った。
【0464】
結果:IL-6、IP-10、TNF-a、MIP-1a、MIP-1βを含む炎症誘発性サイトカインの有意な下方制御(p<0.01)が記録された(データは示さない)。IFN-gは、下方制御されなかったが、マクロファージ及び樹状細胞に対する効果はリン酸化STAT1のレベルで阻害された(データは示さない)。マクロファージにおけるCXCL10及びCXCL9のIFN-γ誘導発現は減少した(データは示さない)。
【0465】
0.5×10個のCAR-T陽性細胞を使用した実験では、各群について、2匹のマウスを17日目と21日目に犠牲にした。HeLa-CD19で治療したマウスは、腹膜における血液蓄積、脾臓肥大、及び腫瘍遺伝子座として現れる腹膜炎を示した(データは示さない)。対照MNCで治療したマウスは、腹膜における血液が若干少なく、腫瘍遺伝子座が少なかった。CAR-TまたはCAR-Tで治療し、放射線照射されたアポ細胞を投与したマウスでは、腹膜炎の徴候は認められなかった。この観察結果は、図5Aに示した生存曲線と相関する。
【0466】
2.2×10個のCAR-T陽性細胞を使用した実験では、4倍少ないCAR-T細胞において見られたのと同じ効果パターンが観察された(図5B)。腹膜HeLa-CD19によるCAR-T治療は、マウスの生存を延長した(p=0.0002)。この効果は、恐らくはCAR-T細胞の投与数が多いことに起因して(2.2対0.5×10個のCAR-T陽性細胞)、この実験でより有意であった。より有意で延長した効果を伴っても、放射線照射初期アポトーシス細胞は相乗効果を有し、生存を延長した(p=0.0032)。CAR-TのE/T比は、インビトロでの放射線照射アポトーシス細胞の存在下/非存在下と同等であった。驚くべきことに、放射線照射アポトーシス細胞存在下でのCAR-T細胞療法は、CAR療法単独の場合と比較して、マウスの生存期間を改善し、有意にかつ再現性を有して少なくとも12日間延長した。(p<0.0032、図5A及び5B)
【0467】
結論:腹膜HeLa-CD19細胞によるCAR-T細胞療法は、マウスの生存を延長した。CAR-Tの前日に放射線照射された初期アポトーシス細胞の投与は相乗効果を示し、CAR-T細胞療法単独の場合と比較して、マウスの生存期間を10日以上延長した(p<0.044、ログランク検定)。
【0468】
放射線照射アポトーシス細胞投与は、HeLa-CD19細胞によるSCIDマウスの治療において、CD19特異的CAR-T細胞に対して劇的な相乗効果を示した。この実施例では、実施例2及び実施例3に示した結果と同様の結果が観察された。本実施例では、放射線照射アポトーシス細胞を使用することにより、実施例2及び実施例3と比較して、「移植片対白血病効果」の可能性が排除された。したがって、この驚くべき相乗効果は、放射線照射アポトーシス細胞を介して媒介されたように思われる。
【0469】
CRSは、腫瘍生物学、単球/マクロファージ/樹状細胞との相互作用、及びCAR-T細胞の効果及び増殖に対する応答として、いくつかの因子から展開する。アポトーシス細胞は、先天性免疫に由来する前炎症性サイトカインを減少させ、IFN-γレベルまたはCAR-T細胞毒性を損なうことなく、かつ、CAR-T細胞効力を有意に増大させるとともに、単球/マクロファージ/樹状細胞に対するIFN-γ効果を阻害する。予期せぬことに、アポトーシス細胞による治療は、CAR-T細胞療法を補完し、CAR-T細胞療法の抗癌効果を効果的に増大させる。
【0470】
実施例5:アポ細胞(初期アポトーシス細胞)の白血病/リンパ腫に対する効果
【0471】
目的:ここに提示した研究は、次の3つの主な目標を有する。(1)白血病-リンパ腫マウスモデルにおけるアポ細胞の効果を、疾患発症、進行、及びその後の死亡に関して評価する。(2)アポ細胞による治療後の白血病-リンパ腫マウスモデルにおける腫瘍細胞の分布を評価する。(3)SCID-Bgマウスの白血病-リンパ腫治療におけるアポ細胞及びRituximab(RtX)の相乗効果を検討する。これらの目的を達成するための研究の一環として、アポ細胞投与後の白血病マウスの生存率を測定した。同様に、腫瘍細胞の分布を、アポ細胞による治療後に測定した。
【0472】
方法:
【0473】
ネズミ:7週齢(イスラエル国エルサレム、ENVIGO)の雌のSCID-Bgマウスに対して、0.1×10個のRaji細胞/マウスを静脈内投与した。実験の5日目、8日目、及び11日目に、マウスに対して、30×10個のアポ細胞を3回静脈内投与した。併用療法として、アポ細胞投与の1.5時間後に、マウスに対して、RtX(2または5mg/kg;スイス国バーゼル、ロシュのMabthera)を1回投与(8日目)した。
【0474】
マウスを毎日観察し、週2回体重を測定した。エンドポイントは、対麻痺(下半身麻痺)、マウス体重の開始時からの20%減少、嗜眠、可動性の低下、または呼吸努力の増加のいずれかの症状の発現に起因する死亡または犠牲と定義した。
【0475】
生存分析は、Kaplan-Meier法にしたがって行った。動物愛護使用委員会(IACUC)のガイドラインにしたがって、マウスを特定病原体不在(SPF)動物施設で飼育した。
【0476】
Raji細胞株:このヒトバーキットリンパ腫細胞株は、ECACC(European Collection of Authenticated Cell Cultures)(カタログ番号:85011429)から購入し、完全培地(10%の熱不活化FBS、1%のグルタミン酸、1%のペニシリン/ストレプトマイシンを添加したRPMI-1640)中でルーチン培養した。
【0477】
アポ細胞:基本的には、実施例1に記載した通りである。簡潔に説明すると、白血球アフェレーシス手法を用いて、健康な適格ドナーから濃縮単核細胞分画を収集した。アフェレーシスの完了後、細胞を洗浄し、pH7.4のPlasmaLyte-A、5%のヒト血清アルブミン、10%のジメチルスルホキシド(DMSO)、5%の抗凝固剤クエン酸デキストロース溶液-A(ACD-A)、及び0.5U/mlのヘパリンを含有する凍結培地中で再懸濁した。次いで、細胞を徐々に凍結し、液体窒素中で長期間保存した。
【0478】
アポ細胞の作製のために、凍結保存した細胞を解凍し、洗浄し、2mMのL-グルタミン及び10mMのHEPES、10%の自家血漿、5%のACD-A、0.5U/mlのヘパリンナトリウム、及び50μg/mlメチルプレドニゾロンを添加したRPMI-1640を含有するアポトーシス誘導培地中で再懸濁した。次いで、細胞を、5%のCO中で37°Cにて6時間インキュベートした。インキュベートの終了後、細胞を収集し、洗浄し、細胞処理システム(ドイツ国、Fresenius Kabi)を使用してHartmann溶液中で再懸濁した。アポ細胞を、290gで2~8°Cにて10分間遠心分離し、投与用のハルトマン溶液中で再懸濁した。アネキシンV及びヨウ化プロピジウム(PI)(日本国名古屋、Medical & Biological Laboratories)を使用して、FCS Expressソフトウェアによって、アポ細胞のアポトーシス及び生存率を測定した。
【0479】
フローサイトメトリー:犠牲にしたマウス(上記に定義した臨床徴候の悪化後)から脾臓、肝臓、及び骨髄を収集し、フローサイトメトリー(米国ニュージャージー州フランクリンレイクス、BD、FACSCalibur)によって、Raji腫瘍(抗CD20)の存在を分析した。
【0480】
結果:
【0481】
パートA:アポ細胞は、白血病マウスにおける疾患発症とその後の死亡を遅らせる。
【0482】
は、3つの個別の実験(RPMI群、n=15;Raji群、n=23;Raji+アポ細胞群、n=24)の結果を示すKaplan-Meier生存プロットである。各実験において、雌のSCID-Bgマウス(7~8週齢)に対しては0.1×10個のRaji細胞を静脈内投与し、対照群に対してはRPMIを投与した。その後、5日目、8日目、及び11日目に、マウスに対して、30×10個のアポ細胞を静脈内投与(IV)した。マウスを毎日観察し、週2回体重を測定した。エンドポイントは、対麻痺(下半身麻痺)、マウス体重の開始時からの20%減少、嗜眠、可動性の低下、または呼吸努力の増加のいずれかの症状の発現に起因する死亡または犠牲と定義した。実験の詳細を表11に示す。アポ細胞による有意な有益効果が認められた(p=0.002、ログランク(コックス・マンテル)検定)。
【0483】
【表8】
【0484】
個々の試験のデータを図A~図Cに示す。
【0485】
上述したように、Raji細胞の投与後に、3回投与のアポ細胞で治療したマウスは、疾患進行が遅く、未治療マウスよりも有意に遅く死亡した(p=0.002)。
【0486】
アポ細胞で治療した白血病マウスは、対照の未治療マウスと比較して、症状の発症が有意に遅延し、疾患進行がより遅く、より遅く死亡した。興味深いことに、Raji細胞及びアポ細胞を投与されたマウスの約10%は、この白血病/リンパ腫モデルに特徴的な予想される症状を全く発現せず、実験が終了するまで健康であった(53日目または60日目)。
【0487】
アポ細胞は、白血病マウスの腫瘍負荷を減少させる。
【0488】
上述したような臨床徴候の悪化後にマウスを犠牲にし、分析のために目的の臓器、すなわち肝臓、脾臓及び骨髄を採取した。これらの標的器官の細胞を、ヒト腫瘍細胞(Raji細胞はCD20に対して陽性である)の存在についてフローサイトメトリーによって分析した。
【0489】
下記のデータ(表12)は、上述した3つの実験における、犠牲マウスの標的器官における細胞集団の平均割合を示す。各実験における個々のマウスの値は、以下の表13~表18に示す。
【0490】
【表9】
【0491】
インビボ実験011
【0492】
骨髄、脾臓及び肝臓におけるCD20+細胞のFACS分析:
【0493】
アポ細胞を3回投与したマウスは、60日目に犠牲にしたときは健康であった。
【0494】
肝臓細胞、脾臓細胞及び骨髄細胞を採取し、フローサイトメトリー(BD、FACSCalibur)によって、ヒトCD20-FITC(Biolegend、カタログ番号:302206);mIgG1-FITC(Biolegend、カタログ番号:400110)の存在について分析した。
【0495】
インビボ実験019
【0496】
骨髄、脾臓及び肝臓における腫瘍細胞のFACS分析:
【0497】
マウスの脾臓、肝臓及び骨髄細胞を、上記の方法セクションで定義したように、臨床的悪化後に犠牲にしたマウスから採取し、フローサイトメトリー(BD、FACSCalibur)によってヒトCD20(FIT)の存在について分析した。
【0498】
脾臓、骨髄及び肝臓の分析結果を以下の表13~表15に示す。
【0499】
【表10】
【0500】
【表11】
【0501】
【表12】
【0502】
インビボ実験023
【0503】
フローサイトメトリーによって測定した、脾臓、骨髄及び肝臓におけるCD20腫瘍細胞の発現(%)。犠牲にしたマウス(方法セクションで定義したような臨床的悪化後)からマウス脾臓、肝臓及び骨髄を採取し、フローサイトメトリー(BD、FACSCalibur)によって、ヒトCD20(FIT)の存在を分析した。各マウスにおける脾臓、骨髄、肝臓の分析結果を表16~表18に示す。
【0504】
【表13】
【0505】
【表14】
【0506】
【表15】
【0507】
予備的結論:結論として、マウスの臓器における腫瘍分布は、生存プロットで見られる有益効果と相関しており、治療されたマウスの骨髄及び肝臓において有意に減少した。
【0508】
パートB:白血病/リンパ腫の治療における、アポ細胞とリツキシマブ(RtX)との相乗効果
【0509】
次に、白血病マウスに対するRtXとアポ細胞との併用効果を2つの実験で評価することにより、アポ細胞療法が、白血病/リンパ腫の他の従来療法と相乗的であるかどうかを検討した。
【0510】
目的:rtx及びアポ細胞の投与後における白血病マウスの生存の測定、及び白血病マウスの骨髄、肝臓及び脾臓における腫瘍細胞の検出。
【0511】
結果:
【0512】
アポ細胞は、白血病マウスの治療において、rtxと相乗的に作用する。
【0513】
方法:以下の研究は、併用療法実験(アポ細胞及びrtx)で得られた結果の代表的な記載である。簡潔に説明すると、雌のSCID-ベージュマウスに対して、0.1×10個のRaji細胞(全群n=7)を静脈内投与した。5日目、8日目、及び12日目に、マウスに対して、30×10個のアポ細胞を静脈内投与した。8日目、アポ細胞を投与した1.5時間後に、マウスに対して、2mg/kgまたは5mg/kgのRtXを単回静脈内投与した。マウスを毎日観察し、週2回体重を測定した。エンドポイントは、対麻痺(下半身麻痺)、マウス体重の開始時からの20%減少、嗜眠、可動性の低下、または呼吸努力の増加のいずれかの症状の発現に起因する死亡または犠牲と定義した。
【0514】
結果:
【0515】
に示すように、アポ細胞は、図に示した結果を裏付ける有益効果を示した。リツキサン(RtX:Rituxan)単独では、2mg用量及び5mg用量の両方においてアポ細胞よりも優れた効果を示した。一方、アポ細胞とリツキサンとの併用では、2mg用量(p=0.104)と5mg用量の両方で相乗効果を示したが、5mgで見られた相乗効果は統計的有意に達しなかった。マウス臓器の腫瘍分布は、有益効果と相関した(表19)。
【0516】
【表16】
【0517】
実験終了-57日目
【0518】
あるマウス(Raji+RtX2mg/kg+アポ細胞)は、実験終了時に無病と判断された。
【0519】
RtXの2mgの単回投与における相乗効果を追加実験で測定した。この実験で明らかに示されたように(図)、アポ細胞とRtXとの相乗効果が有意であることが再び実証された(p=0.01)。
【0520】
表20に示すように、脾臓には腫瘍細胞は存在せず(0.1~0.3はバックグラウンド染色を表す)、脾臓は対照として用いた。対照的に、骨髄及び肝臓は腫瘍の標的であった。アポ細胞とRtXとを別々に投与した治療は、骨髄及び肝臓の腫瘍数(CD20マーカーを用いて測定したRajji細胞)を減少させ、アポ細胞とRtXとを併用投与した場合に有益性が増大した(T検定:Raji+rtx(2mg/kg)+アポ細胞についてはp=0.0034(**)、Raji+rtx(5mg/kg)+アポ細胞についてはp=0.0031(**))。予想されたように、RtXは、白血病マウスの標的器官における腫瘍負荷を有意に減少させた。興味深いことに、アポ細胞単独での治療は、従来のRtX療法による治療と同等のレベルまで、これらの臓器の腫瘍細胞を減少させた。
【0521】
【表17】
【0522】
結論:要約すると、生存プロット(図、図及び図)により、アポ細胞及びRtxの有益効果、並びにアポ細胞及びRtXの併用による相乗効果が明確に実証された。注目すべきことに、従来のRtX療法をアポ細胞療法と併用した場合、RtX投与に関わらず生存期間が有意に増加し、2つの療法の強力な相乗効果を示した。裏付けとなる臨床観察は、骨髄及び肝臓における腫瘍細胞集団の減少であった(表12)。
【0523】
驚くべきことに、アポ細胞製剤は、白血病マウスモデルにおいて、他の療法から独立して、疾患の進行及び生存に対して顕著に有益な効果を奏した。Kaplan-Meier分析では、マウスの10~20%において、生存期間が延長され(図、図及び図)、肝臓及び骨髄における腫瘍細胞量が減少した。さらに、アポ細胞とRtXとを併用投与した場合に顕著な相乗効果が生じ、疾患の発症及び進行をさらに遅らせ、生存率を向上させた。
【0524】
実施例6:固形腫瘍モデルに対するアポトーシス細胞とCAR-T細胞との併用療法の効果
【0525】
目的:ヒト腹膜固形腫瘍モデルに対するCAR-T細胞療法の効果を試験し、CAR-T細胞療法抗癌作用に対するアポトーシス細胞投与の見込まれる相乗効果を評価する。
【0526】
方法
【0527】
HeLa-CD19細胞株:CD19を発現するHeLa細胞をProMab(米国、カタログ番号:PM-Hela-CD19)から購入した。インビボで腫瘍増殖を観察するために、HeLa-CD19をpLenti-PGK-V5-Luc-Neo(米国、Addgene、プラスミド番号:21471)で安定的にトランスフェクトし、単一クローンを、フローサイトメトリー細胞ソーターにより単離し、500μg/mlのG418(米国、シグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、カタログ番号:A1720-1G)を選択剤として使用して培養した。この細胞株は、PGKプロモーター下で、ホタルのluc遺伝子を安定的かつ連続的に発現する。ゲノム統合はPCRにより確認し、発現はフローサイトメトリー及び陽性クローンの生物発光イメージング(BLI)により確認した。
【0528】
細胞は、10%のFBS(米国、サーモフィッシャーサイエンティフィック(ThermoFisher Scientific)、Gibco、カタログ番号:12657-029)、2mMのGlutaMAX(米国、サーモフィッシャーサイエンティフィック、Gibco、カタログ番号:35050-038)、及び100U/mlのペニシリン+100U/mlのストレプトマイシン(米国、サーモフィッシャーサイエンティフィック、Gibco、カタログ番号:31870-025)が添加された、「完全培地」と称されるRPMI1640(米国、サーモフィッシャーサイエンティフィック、Gibco、カタログ番号:15140-122)中で培養した。標準培養中に、HeLa-CD19培地に、選択的抗生物質として1μg/mlピューロマイシン(米国、シグマ-アルドリッチ、カタログ番号:P9620)を添加した。
【0529】
生物発光イメージングのために、マウスに対して、150mg/kgのXenoLight D-ルシフェリン(米国、パーキンエルマー(PerkinElmer)、カタログ番号:122799)を腹腔内(IP)投与し、4%のイソフルランで麻酔した。投与の10分後、Caliper IVIS-Kinetics(米国、パーキンエルマー)及びLiving Imageソフトウェアv4.2(米国、パーキンエルマー)を使用して、生物発光を捕捉した。
【0530】
CD19-CAR-T細胞:新鮮な単核細胞(MNC)分画を、フィコール勾配法を用いて、健康なドナーの末梢血から分離した。次いで、細胞を徐々に凍結し、使用するまで液体窒素中で保存した。解凍後、細胞を洗浄し、製造業者の説明書にしたがって、1:2ビーズの細胞比で負荷されたCD28+CD3+ビーズ(Miltenyi biotech)を導入した。次いで、細胞を、300U/ml組換えヒトIL-2(Peprotech、rhIL-2)の存在下で3日間インキュベートした。MNC感染の48時間前に、293個のLenti-X細胞(Clontech-Takara、632180)を、JetPrime試薬(Polyplus、114-01#ポリプラス#)を使用して、2:1のJetPrime:DNA比で、第3世代CD19-CARプラスミド(Creative Biolabs)でトランスフェクトした。感染の24時間前に、未処理の24ウェルプレート(SPL、BN30006)を、製造者の説明書にしたがって、7.5ug/cmのレトロネクチン(Takara-Clontec、T100A)でコーティングした。感染の当日に、トランスフェクトされた293個のLenti-X細胞から収集したウイルス含有上清を、0.45umフィルター(Millipore)を使用して濾過し、レトロネクチンがコーティングされたプレート(ウェル当たり0.75mlのウイルス上清)に移し、そして、製造業者の説明書にしたがって遠心分離した。続いて、活性化T細胞をプレートに添加し(ウェル当たり0.5×10個の細胞)、290gで遠心分離した。次いで、プレートを、加湿インキュベーター内で60時間インキュベートした。インキュベート後、細胞を収集し、残存する接着性細胞を、トリプシンを使用して剥離した。細胞を、2.5%のHepes緩衝液(Lonza)を添加したHankの平衡塩溶液(HBSS、Biological industries)で2回洗浄した。300U/mlのrhIL-2の存在下で細胞を再播種し、300U/mlのrhIL-2を含有する新鮮な培地中で48時間毎に1.0×10の濃度に希釈した。感染後12日目に、細胞を、1:2ビーズの細胞比のCD28+CD3+ビーズで再び活性化させた。細胞をさらに2日間インキュベートし、次いで、感染後14日目に(RPMI中で)動物に投与し、動物当たり合計10×10個の細胞になるようにした。Mock-T細胞(Mock-T)を、抗CD19領域を欠くプラスミドを有するCAR-T細胞として作製し、対照として投与した。PCR及びEGFR(Erbitux、Merck)発現を形質導入効果に用いた。インビトロ細胞毒性アッセイをCAR-T細胞の機能試験に用いた。
【0531】
アポトーシス細胞:濃縮された単核細胞分画を、健康な適格ヒトドナーから白血球アフェレーシス法を用いて収集し、実施例1において説明したようにして、ガンマ線照射されたアポトーシス細胞(2000~6000rad照射)を作製した。この例で使用される放射線照射アポトーシス細胞は、「オーバー・ザ・シェルフ(over the shelf)」(OTS)であると考えられ、ドナー及びレシピエントは、必ずしもHLA適合性を有するとは限らない。いくつかの実施形態では、本明細書における使用方法においては、ドナー及びレシピエントはHLA適合性を有さない。いくつかの実施形態では、本明細書における使用方法において、ドナー及びレシピエントはHLA適合性を有する。アポトーシス細胞のアポトーシス率及び生存率は、本明細書に記載したように、アネキシンV及びPI染色(米国マサチューセッツ州、MBL)を用いて測定した。カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)染色及びビーズ刺激を用いて増殖の欠如が示された。
【0532】
CFSE染色:RPMI1640により細胞を10×10個の細胞/mLの最終濃度にし、室温(RT)にて5μMのCFSEで10分間染色し、穏やかに傾けて光から保護した。インキュベートの終了後、染色反応は、完全FBSで1分間停止した。次いで、細胞を2回洗浄して、過剰なCFSE色素を除去した。
【0533】
細胞播種:培養培地(2mMのL-グルタミン、10mMのHepes、10%の熱不活化FBS、及び100U/mLの組換えヒトIL-2を添加したRPMI1640及びBiotarget)を用いて、細胞の濃度を1×10個の細胞/mLにした。次いで、細胞を24ウェルプレート(ウェル当たり1mL)中に、1:3の細胞:ビーズ比でCD3+CD28+負荷ビーズの存在下または非存在下で播種した。プレートを、インキュベーター(Enlivex、機器番号:ENX01051)中で、5%のCOの存在下でインキュベートした。
【0534】
試料分析:細胞数及びCFSE染色を評価するために、48時間毎に各作製物をサンプリングし、カウントし、フローサイトメーターにより分析した。濃度が1.5×10個の細胞/mLを超えた作製物は、培地で1×10個の細胞/mLに希釈した。1.5×10個の細胞/mLを超えなかった作製物は、培地リフレッシュ(0.3mLの培地を廃棄し、新鮮な培地を添加した)で処理した。全体で4つの試験ポイントを8日間実施した。
【0535】
亜集団のFACS分析:腹腔細胞を、以下のマーカー及びアイソタイプ対照についてフローサイトメトリー(LSR-II、BD)により評価した:mMHC-II-PE(12-5321)、mCD19-FITC(11-0193)、mCD11c-PE-Cy5.5(35-0114)、mF4/80-eFlour450(48-4801)、mCD11b-APC-eFlour780(47-0112)、rIgG2b-PE(12-4031)、rIgG2a-FITC(11-4321)、アメリカン・ハムスターIgG-PE-Cy5.5(35-4888)、rIgG2a-eFlour450(48-4801)、rIgG2b-APC-eFlour780(47-4031)、hCD19-APC(17-0198)、及び、mIgG1-APC(17-4714)(eBiosciences)。マクロファージ亜集団の特徴付けは、「Ghosn et al. (PNAS 2010) February 9, 2010. 107 (6) 2568-2573 and Casado et al. (PlosOne 2011) published July 22, 2011.」にしたがって行った。
【0536】
簡潔に説明すると、非CD19、非CD11c腹腔細胞を、それらのCD11b及びF4/80発現によって、大型腹腔マクロファージ(LPM)-F4/80HighCD11bpos、小型腹腔マクロファージ(SPM)-F4/80lowCD11bpos、及び顆粒球(Gra)-F4/80lowCD11bnegに分けた(Ghosnら(2010 ibid))。Ghosnら(2010 ibid)は、同じマクロファージ亜集団をわずかに異なる方法で記載した。非CD19、非CD11c、F4/80陽性細胞を、そのMHC-II及びF4/80発現によって、LPM-F4/80highMHC-IIneg、SPM-F4/80lowMHC-IIpos、GraF4/80lowMHC-IInegに分けた。
【0537】
Luminex(登録商標)サイトカイン分析:ヒトまたはマウスのサイトカインをLuminexサイトカイン分析により試験した。カスタムマルチプレックスキットは、eBioscience(オーストリア国ウィーン)またはR&DSystems(米国、ミネアポリス)から購入した。
【0538】
腹腔内固形腫瘍モデルでは、実験の1日目と2日目に、SCID-Bgマウスに対して、0.25×10個のヒトHeLa-CD19-ルシフェラーゼ細胞を2回連続で腹腔内(i.p)投与した。また、マウスに、9日目に、10×10個のヒトアポトーシス細胞(上述したように、2000~6000radで放射線照射した)または賦形剤を投与した。また、10日目に、マウスに、10×10個のCD19-CAR-T(第3世代)細胞または偽T細胞を投与した。マウスは、週2回の体重測定し、臨床徴候及び腹膜液蓄積について毎日観察した。いくつかの実験では、細胞及びマクロファージサブ集団のプロファイルを特徴付けるために、予め計画された通り犠牲にした。残りのマウスは生存分析のために飼育した。生存エンドポイントは、腹部の肥大及び緊張、並びに可動性の低下または呼吸努力の増加として現れる重度の腹膜液蓄積に基づくスコアによって定義した。これらの臨床所見は、腹膜におけるHeLa細胞の大きな蓄積と相関した。生存分析は、Kaplan-Meier Logランク統計試験にしたがって行った。
【0539】
結果
【0540】
このモデルでは、マウスは、約30±5日(27~37)生存し、腹腔における固形腫瘍の形成と、その後の血性腹膜液の蓄積及び臨床的悪化により死亡した。モック処理は、固形腫瘍の有意な改善またはマウス生存の変化を示さなかった(34±4日;30~38の範囲)。CAR-T細胞療法単独では、マウス生存を55±11(範囲34-76、p<0.05)に有意に改善した。しかしながら、マウスが、アポトーシス細胞とCAR-T細胞との同時投与を受けた場合、生存のさらなる有意な増加が見られ、CAR-T細胞単独と比較した場合、生存は70±20日(範囲48-90、P<0.05)に達した。さらに、2/10のマウスは、150日間(実験終了時)にわたって無病であった。図12A(5つの別々の実験の代表)は、対照及び治療条件下での腹膜固形腫瘍Hela-CD19の生存曲線を示す。図12Bは、図12Aの生存曲線に使用された結果を表す、インビボイメージングシステム(IVIS)によって視覚化された腫瘍の進行を示す。腫瘍の拡がりは早ければ15日目には可視化できるが(Hela-CD19-Luc)、CARで治療されたマウスは43日目までいかなる腫瘍の拡がりも示さなかった。マウスがアポトーシス細胞を獲得すると、大部分のマウスは50日目までは腫瘍の拡がり、腫瘍サイズ(相関のスケールを参照)は、生存曲線に反映されるように明らかに小さい(図12A)。
【0541】
以上説明したように、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、新規で革新的な免疫療法である。CAR-T細胞は、癌特異的抗原に対する免疫応答を活性化することができるMHC非依存性特異的抗原受容体及び共刺激分子を搬送する、遺伝子操作されたT細胞である。この療法は、血液悪性腫瘍においては大きな結果を示したが、固形腫瘍においては血液学的及び非血液学的に同じ効果を達成できなかった。この失敗の可能性のある理由は、抗原の欠如、貧弱な輸送、及び敵対的な腫瘍微小環境であり得る。ここでは、SCIDマウスのヒト腹膜固形腫瘍モデルに対するCAR-T細胞療法の効果が実証され、CAR-T細胞療法の抗癌作用に対するアポトーシス細胞投与の相乗効果は有意であった。
【0542】
本明細書に開示された特定の特徴が本明細書に図示及び説明されたが、多くの修正、置換、変更、及び均等物が、当業者に想到されるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本明細書に開示された真の精神に該当するすべての改変及び変更を包含すべく意図されていることを理解されたい。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B