IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大阪瓦斯株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-触媒容器 図1
  • 特許-触媒容器 図2
  • 特許-触媒容器 図3
  • 特許-触媒容器 図4
  • 特許-触媒容器 図5
  • 特許-触媒容器 図6
  • 特許-触媒容器 図7
  • 特許-触媒容器 図8
  • 特許-触媒容器 図9
  • 特許-触媒容器 図10
  • 特許-触媒容器 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-27
(45)【発行日】2023-08-04
(54)【発明の名称】触媒容器
(51)【国際特許分類】
   B01J 8/02 20060101AFI20230728BHJP
   C01B 3/40 20060101ALI20230728BHJP
   C01B 3/48 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
B01J8/02 E
C01B3/40
C01B3/48
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020024590
(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公開番号】P2020131192
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2019027660
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】松本 明
(72)【発明者】
【氏名】桝本 幸嗣
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-137188(JP,A)
【文献】特開2010-222981(JP,A)
【文献】特開2005-214186(JP,A)
【文献】特開平9-85101(JP,A)
【文献】特公昭59-10543(JP,B2)
【文献】実開昭58-151440(JP,U)
【文献】特開2013-166106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 8/02
C01B 3/40
C01B 3/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状の触媒が収容され、処理対象ガスが通流可能な触媒容器であって、
前記処理対象ガスが下方から上方に向かって通流する容器本体と、
前記容器本体の下面に接続され、前記処理対象ガスを前記容器本体に供給する供給流路とを備え、
前記容器本体は、
前記供給流路が一部に接続され、前記処理対象ガスが導入される導入部と、
前記導入部に対して上方に位置し、前記粒状の触媒を収容する触媒収容部と、
前記導入部と前記触媒収容部とを区画する仕切り体とを有し、
前記仕切り体は、前記粒状の触媒の前記導入部への落下を阻止するとともに、前記処理対象ガスを前記導入部から前記触媒収容部へと通過させる複数の開口部を有しており、
前記供給流路は、前記導入部と面する前記仕切り体の下面と交差する上下方向に延びており、
前記仕切り体は、前記供給流路が前記導入部に接続された部分の上方に対応する部分において、前記処理対象ガスの通過を阻止する通過阻止領域を有する、触媒容器。
【請求項2】
前記仕切り体の前記通過阻止領域には開口部が形成されていない、請求項1に記載の触媒容器。
【請求項3】
前記仕切り体に形成された前記複数の開口部のうち、前記通過阻止領域に対応する複数の開口部を塞ぐ通過阻止部材を備える、請求項1に記載の触媒容器。
【請求項4】
前記仕切り体は板状部材であり、前記通過阻止部材は、前記仕切り体の板状面に沿う板状部材である、請求項3に記載の触媒容器。
【請求項5】
前記通過阻止部材は、液体状態から固体状態に硬化することで前記通過阻止領域に対応する複数の開口部を塞ぐ硬化性部材である、請求項3に記載の触媒容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池に供給する燃料ガスを生成する燃料改質システムが開示されている。燃料改質システムは、原燃料である処理対象ガスの供給を受け、触媒を用いて当該処理対象ガスに所定の処理を施すガス処理装置を有している。触媒はガス処理装置に収容されているが、装置の起動及び停止の繰り返しによって、触媒が収容された空間を形成する部材が膨張収縮し、当該空間に収容された粒状の触媒が圧壊して細分化する。細分化した細分化触媒が粒状の触媒の隙間に溜まると、処理対象ガスの通流が妨げられる。
【0003】
そこで、特許文献1のガス処理装置では、触媒収容空間を、粒状の触媒を収容する上方の触媒収容部分と、細分化触媒を収容する下方の細分化触媒収容部分とに分離する。そして、触媒収容空間への処理対象ガスの供給を停止した状態で、加振手段により触媒収容空間の触媒を振動させる。これにより、処理対象ガスの流れにのって下流側に細分化触媒が流動するのを防止しつつ、粒状の触媒間に溜まっている細分化触媒を細分化触媒収容部分にふるい落とすことができる。よって、触媒収容空間を通流する処理対象ガスに偏流が生じるのを十分に抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6381458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のガス処理装置では、細分化触媒を下方の細分化触媒収容部分にふるい落とすことができるものの、ガス処理装置の下方に接続された処理対象ガスが通流する流路が、細分化触媒等によって閉塞する可能性がある。よって、処理対象ガスを触媒収容空間に通流させることができず、触媒による処理に供することができない場合がある。
【0006】
そこで、本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、触媒収容空間に処理対象ガスを供給する流路の閉塞を抑制可能な触媒容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る触媒容器の特徴構成は、
粒状の触媒が収容され、処理対象ガスが通流可能な触媒容器であって、
前記処理対象ガスが下方から上方に向かって通流する容器本体と、
前記容器本体の下面に接続され、前記処理対象ガスを前記容器本体に供給する供給流路とを備え、
前記容器本体は、
前記供給流路が一部に接続され、前記処理対象ガスが導入される導入部と、
前記導入部に対して上方に位置し、前記粒状の触媒を収容する触媒収容部と、
前記導入部と前記触媒収容部とを区画する仕切り体とを有し、
前記仕切り体は、前記粒状の触媒の前記導入部への落下を阻止するとともに、前記処理対象ガスを前記導入部から前記触媒収容部へと通過させる複数の開口部を有しており、
前記供給流路は、前記導入部と面する前記仕切り体の下面と交差する上下方向に延びており、
前記仕切り体は、前記供給流路が前記導入部に接続された部分の上方に対応する部分において、前記処理対象ガスの通過を阻止する通過阻止領域を有する点にある。
【0008】
処理対象ガスは、供給流路を介して容器本体の下面から導入部に導入される。導入部に導入された処理対象ガスは、仕切り体の複数の開口部を通過して触媒収容部へと導入され、触媒により所定の処理を施される。このように処理対象ガスは、供給流路から導入部及び触媒収容部へと導入されるが、仕切り体との接触及び導入部の内壁との接触により導入部内で処理対象ガスの旋回流が発生する場合がある。発生した旋回流が、仕切り体の複数の開口部を通過して触媒収容部に導入されると、粉粒が巻き上がり仕切り体の複数の開口部を介して導入部に落下し、供給流路を閉塞させる。粉粒としては、触媒が細分化した細分化触媒、及び粒状の触媒と処理対象ガスとの反応物等が挙げられる。なお、触媒容器が備えられた装置の起動及び停止等により触媒容器に膨張及び収縮の力が加わるが、これにより触媒収容部に収容された触媒が圧壊して細分化し、細分化触媒となる。
【0009】
上記特徴構成によれば、上下方向に延びる供給流路からは、処理対象ガスが上方の仕切り体に向かって吹き出されるが、仕切り体の通過阻止領域に向かった処理対象ガスは仕切り体を通過できない。ここで、供給流路から吹き出されて流速が速い状態で処理対象ガスが上方の仕切り体の通過阻止領域に到達すると、通過阻止領域及び導入部等との接触により、旋回流が発生する場合がある。
【0010】
しかし、通過阻止領域の存在により、旋回流は通過阻止領域により通過を阻止され、触媒収容部への通流が阻止されている。そして、通過阻止領域により仕切り体の通過を阻止された処理対象ガスは、通過阻止領域以外の通過可能領域に誘導される。このように、供給流路から導入部に吹き出された処理対象ガスが通過阻止領域から通過可能領域に亘って流れるため、処理対象ガスの吹き出し方向(流れ方向)の空間長さを、吹き出し方向(流れ方向)以外よりもある程度確保することができる。これにより、処理対象ガスは、吹出方向(流れ方向)の先端に向かって流速が低下していく。流速が低下した状態の処理対象ガスは、仕切り体の通過可能領域に到達し、複数の開口部を介して触媒収容部に導入される。よって、処理対象ガスの流速は、触媒収容部に導入されるときには低下しており、触媒収容部内の粉粒(細分化触媒及び反応物等)が巻き上げられ、導入部に落下するのを抑制でき、粉粒が供給流路に導入されて供給流路が閉塞するのを抑制できる。
【0011】
本発明に係る触媒容器の更なる特徴構成は、
前記仕切り体の前記通過阻止領域には開口部が形成されていない点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、仕切り体は、複数の開口部が形成される領域と、開口部が形成されない通過阻止領域とを有するように形成できる。よって、供給流路の上方に対応する部分に開口部を予め形成しないことで、通過阻止領域を有する仕切り体を用意できる。
【0013】
本発明に係る触媒容器の更なる特徴構成は、
前記仕切り体に形成された前記複数の開口部のうち、前記通過阻止領域に対応する複数の開口部を塞ぐ通過阻止部材を備える点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、触媒容器の仕切り体に予め形成された複数の開口部のうち通過阻止領域に対応する開口部を塞ぐ通過阻止部材を備える。よって、仕切り体に予め形成された複数の開口部の一部を、別部材の通過阻止部材により後から塞ぐことができる。
【0015】
本発明に係る触媒容器の更なる特徴構成は、
前記仕切り体は板状部材であり、前記通過阻止部材は、前記仕切り体の板状面に沿う板状部材である点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、仕切り体及び通過阻止部材が板状部材であるため、通過阻止部材を仕切り体に沿わせることで仕切り体に予め形成された複数の開口部を塞ぐことができる。
【0017】
本発明に係る触媒容器の更なる特徴構成は、
前記通過阻止部材は、液体状態から固体状態に硬化することで前記通過阻止領域に対応する複数の開口部を塞ぐ硬化性部材である点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、仕切り体に予め形成された複数の開口部のうち、通過阻止領域に対応する複数の開口部に液体状態で硬化性部材を適用し、固体状態に硬化させる。これにより、仕切り体に予め形成された複数の開口部を塞ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ガス処理装置の全体構成を示すブロック図である。
図2】触媒容器の全体構成を示す斜視図である。
図3】+X及び-X方向からの触媒容器の側面図である。
図4】+X及び-X方向からの別の触媒容器の側面図である。
図5】通過阻止領域Iを有する仕切り体の構成図である。
図6】通過阻止領域Iを有する仕切り体の構成図である。
図7】通過阻止領域Iを有する仕切り体の構成図である。
図8】従来の触媒容器の全体構成を示す斜視図である。
図9】従来の触媒容器及び本実施形態の触媒容器それぞれに処理対象ガスを導入した場合の温度分布の違いを示す説明図である。
図10】従来の触媒容器及び本実施形態の触媒容器それぞれに処理対象ガスを導入した場合の速度ベクトルの違いを示す説明図である。
図11】従来の触媒容器及び本実施形態の触媒容器それぞれに処理対象ガスを導入した場合の流跡線の違いを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔実施形態〕
以下、図面に基づいて、本発明に係る触媒容器を水素含有ガス(燃料ガス)生成用のガス処理装置に適用した場合の実施形態を説明する。
【0021】
(1)ガス処理装置の全体構成
ガス処理装置10の全体構成について図1を用いて説明する。図1に示すように、水素含有ガス生成用のガス処理装置10は、処理対象ガスに所定の処理を施す処理部として、炭化水素系の原燃料ガス(例えば、13A等の天然ガスベースの都市ガス)に対して脱硫処理を施す脱硫器11と、脱硫器11から供給される脱硫後の原燃料ガスを改質して改質ガスを生成する改質器13と、改質ガス中の一酸化炭素ガスを二酸化炭素ガスに変成するCO変成器15と、改質済みの改質ガスに含まれる一酸化炭素ガスを選択的に酸化するCO選択酸化反応器17とを備えている。
なお、本実施形態では、原燃料ガスに硫黄が含まれる場合を例示しており、原燃料ガスを脱硫処理するために脱硫器11が設けられている。
【0022】
脱硫器11、改質器13、CO変成器15及びCO選択酸化反応器17は、通流する各ガスに処理を施すための触媒を収容する触媒収容部Ruを有する触媒容器30(図2等)から構成されている。触媒容器30の構成については後述する。なお、図1における脱硫器11、改質器13、CO変成器15及びCO選択酸化反応器17の接続配管の構成は、簡略化して記載している。
【0023】
脱硫器11の触媒収容部Ruには、脱硫処理用の脱硫触媒11cが収容されている。
そして、脱硫器11は、脱硫触媒11cを所定の脱硫処理用の脱硫処理温度(例えば200~270℃)に昇温させた状態で、原燃料ガスを脱硫する。この場合、改質器13を経た改質ガスの一部をリサイクルガスとして脱硫器11に供給してもよい。これにより、リサイクルガス中の水素ガスにより原燃料ガス中の硫黄化合物が水素化されると共に、脱硫触媒11cがその水素化物を吸着して脱硫する。なお、脱硫触媒11cは、例えば、ニッケル、コバルト、モリブデン、銅、亜鉛、アルミニウム、クロム等の触媒作用させる物質をセラミック製等の多孔質粒状体に担持させて構成される。
【0024】
改質器13の触媒収容部Ruには、改質処理用の改質触媒13cが収容されている。
改質器13には、脱硫器11により脱硫後の原燃料ガスが供給されるとともに、水蒸気化された改質水が供給される。改質器13は、改質触媒13cを所定の改質処理用の改質処理温度(例えば600~700℃の範囲)に昇温させた状態で、脱硫後の原燃料ガスを水蒸気改質する。
原燃料ガスがメタンガスを主成分とする天然ガスである場合、改質器13は、下記の反応式によりメタンガスを水蒸気と反応させて改質処理することで改質ガスを生成する。下記反応式では、改質ガスには、水素ガス、一酸化炭素ガス及び二酸化炭素ガスが含まれる。なお、改質触媒13cは、ルテニウム、ニッケル、白金等の触媒作用させる物質をセラミック製等の多孔質粒状体に担持させて構成される。
【0025】
CH+2HO→CO+4H
CH+HO→CO+3H
【0026】
CO変成器15の触媒収容部Ruには、変成処理用の変成触媒15cが収容されている。
CO変成器15は、変成触媒15cを所定の変成処理用の変成処理温度(例えば150~250℃の範囲)に昇温させた状態で、下記の反応式にて改質ガス中の一酸化炭素ガスを水蒸気と反応させて、二酸化炭素ガスに変成させる。なお、変成触媒15cは、白金、ルテニウム、ロジウム等の触媒作用させる物質をセラミック製等の多孔質粒状体に担持させて構成される。
【0027】
CO+HO→CO+H
【0028】
CO選択酸化反応器17の触媒収容部Ruには、選択酸化処理用の選択酸化触媒17cが収容されている。
CO選択酸化反応器17は、選択酸化触媒17cを所定の選択酸化処理用の選択酸化処理温度(例えば、80~100℃の範囲)に昇温させた状態で、変成処理後の改質ガス中に残っている一酸化炭素ガスを選択酸化させる。これにより、CO選択酸化反応器17は、燃料電池20に供給可能な水素含有ガス(燃料ガス)を生成する。水素含有ガスは、一酸化炭素ガス濃度の低い(例えば10ppm以下)水素リッチな水素含有ガスとして生成される。なお、選択酸化触媒17cは、白金、ルテニウム、ロジウム等の触媒作用させる物質をセラミック製等の多孔質粒状体に担持させて構成される。
【0029】
CO選択酸化反応器17を出た水素含有ガスは、燃料電池20に供給される。燃料電池20は、供給された水素含有ガスと空気を反応させて発電する。燃料電池20は、水素含有ガスを燃料ガスとして発電できる装置であれば特に限定されず、例えば固体高分子膜からなる電解質層をアノードとカソードで挟持したセルを積層して構成される固体高分子形燃料電池である。
【0030】
(2)触媒容器
次に、触媒容器30について説明する。上述の通り脱硫器11、改質器13、CO変成器15及びCO選択酸化反応器17の各処理部は、それぞれ触媒容器30を有しており、各処理部で所定の処理を行うために所定の触媒11c、13c、15c、17cが収容されている。触媒容器30の構成は各処理部で構成が同様であるため、以下では脱硫器11の触媒容器30を例に挙げて説明する。
【0031】
図2図3に示すように、脱硫器11の触媒容器30は、処理対象ガスが下方から上方に向かって通流する容器本体Rと、容器本体Rの下面に接続され、処理対象ガスを容器本体に供給する供給流路31とを備えている。触媒容器30には、さらに触媒により所定の処理が施された処理済みの処理対象ガスが排出される排出流路39が容器本体Rの上面に接続されていてもよい。
【0032】
本実施形態では、容器本体Rは直方体状である。容器本体Rは、図2図3等の+X及び-X方向(以下、幅方向という場合もある)が長手方向であり、長手方向の長さはL2である。また、+Y及び-Y方向(以下、奥行方向という場合もある)が短手方向であり、短手方向の長さはW1(L2>W1)である。また、+Z及び-Z方向(以下、上下方向という場合もある)が高さ方向である。以下では、+X及び-X方向と+Y及び-Y方向が含まれる平面を水平面とし、水平面に沿う方向を水平面方向という。そして、水平面方向における容器本体Rの形状は概ね長方形状である。
【0033】
容器本体Rは、容器本体R内の空間を上下に区画する仕切り体41と、仕切り体41よりも上側の直方体状の空間であり、粒状の触媒である脱硫触媒11cを収容する触媒収容部Ruと、仕切り体41よりも下側の直方体状の空間であり、供給流路31が接続される導入部Rbとを備えている。触媒収容部Ruは、長手方向である+X及び-X方向の長さがL2であり、短手方向である+Y及び-Y方向の長さがW1(L2>W1)であり、高さは任意であり、例えばL2及びW1よりも大きい。導入部Rbは、長手方向の長さがL2であり、短手方向の長さがW1(L2>W1)であり、高さがL2よりも小さい。触媒収容部Ruは導入部Rbよりも広い空間に形成されており、より多くの触媒を収容可能となっている。
【0034】
仕切り体41は、板状部材から形成されており、複数の孔(開口部の一例)43を有している。複数の孔43は、触媒収容部Ruに収容された粒状の触媒が導入部Rbに落下するのを阻止するとともに、処理対象ガスが導入部Rbから触媒収容部Ruに通過可能な大きさに形成されている。
また、触媒収容部Ruは導入部Rbよりも広い空間に形成されており、より多くの触媒を収容可能となっている。
【0035】
供給流路31は、筒状部材であり、導入部Rbと接続部分を介して連通している。また、供給流路31は、少なくとも導入部Rbとの接続部分の近傍においては、+Z及び-Z方向(上下方向)に延びている。そして、供給流路31は、供給流路31の下方から導入された処理対象ガスを導入部Rbに向かって上方向に吹き出すように導入部Rbに接続されている。
【0036】
供給流路31は、導入部Rbの下面のうち周縁に近い位置に接続されている。本実施形態では、供給流路31は、導入部Rbの+X及び-X方向(幅方向)のうち、中央部よりも-X方向側に接続されている。また、本実施形態では、図3に示すように、導入部Rbの下面は、-Yから+Y方向に向かって同一の高さの水平面である。しかし、図4に示すように、導入部Rbの下面は、-Yから+Y方向に向かって高さが高くなるように傾斜していてもよい。これにより、供給流路31を導入部Rbの下面に溶接等により接続することが容易である。
【0037】
本実施形態では、導入部Rbには、導入部Rbの下面に接続された上下方向に延びる供給流路31から、下方から上方に向かって処理対象ガスが吹き出される。このような構成において、仕切り体41は、供給流路31が導入部Rbに接続された部分の上方に対応する部分において、処理対象ガスの通過を阻止する通過阻止領域Iを有する。
【0038】
ここで、処理対象ガスは、供給流路31から導入部Rb及び触媒収容部Ruへと導入されるが、仕切り体41との接触及び導入部Rbの内壁との接触により導入部Rb内で処理対象ガスの旋回流が発生する場合がある。そして、流速がある程度速い状態で処理対象ガスが仕切り体41及び導入部Rbの内壁等と接触することで、旋回流は発生し易くなる。発生した旋回流が、仕切り体41の複数の孔43を通過して触媒収容部Ruに導入されると、粉粒が巻き上がり、仕切り体41の複数の孔43を介して導入部Rbに落下し、供給流路31を閉塞させる。粉粒としては、触媒が細分化した細分化触媒、及び粒状の触媒と処理対象ガスとの反応物等が挙げられる。脱硫器11の場合、反応物として硫化銅が生じる。
なお、触媒容器30が備えられた装置の起動及び停止等により触媒容器30に膨張及び収縮の力が加わるが、これにより触媒収容部Ruに収容された触媒が圧壊して細分化し、細分化触媒となる。
【0039】
上記のように、仕切り体41には通過阻止領域Iが設けられている。よって、上下方向に延びる供給流路31からは、処理対象ガスが上方の仕切り体41に向かって吹き出されるが、仕切り体41の通過阻止領域Iに向かった処理対象ガスは仕切り体41を通過できない。ここで、供給流路31から吹き出されて流速が速い状態で処理対象ガスが上方の仕切り体41の通過阻止領域Iに到達すると、通過阻止領域I及び導入部Rb等との接触により、旋回流が発生する場合がある。
【0040】
しかし、通過阻止領域Iの存在により、旋回流は通過阻止領域Iにより通過を阻止され、触媒収容部Ruへの通流が阻止されている。そして、通過阻止領域Iにより仕切り体41の通過を阻止された処理対象ガスは、通過阻止領域I以外の通過可能領域IIに誘導される。このように、供給流路31から導入部Rbに吹き出された処理対象ガスが通過阻止領域Iから通過可能領域IIに亘って流れるため、処理対象ガスの吹き出し方向(流れ方向)の空間長さを、吹き出し方向(流れ方向)以外よりもある程度確保することができる。これにより、処理対象ガスは、吹出方向の先端に向かって流速が低下していく。流速が低下した状態の処理対象ガスは、仕切り体41の通過可能領域IIに到達し、複数の孔43を介して触媒収容部Ruに導入される。よって、処理対象ガスの流速は、触媒収容部Ruに導入されるときには低下しており、触媒収容部Ru内の粉粒(細分化触媒及び反応物等)が巻き上げられ、導入部Rbに落下するのを抑制でき、粉粒が供給流路31に導入されて供給流路31が閉塞するのを抑制できる。
【0041】
以下に、通過阻止領域Iを有する仕切り体41の具体例について、図2の+Y方向視である図5図7を用いてさらに説明する。
具体例としては、例えば複数の孔を形成しない領域を有する仕切り体41の検討例、複数の孔43の一部が板状部材で覆われた仕切り体41の検討例、複数の孔43の一部が硬化性部材で覆われた仕切り体41の検討例が挙げられる。以下に、それぞれについて説明する。
なお、図5図7に示すように、供給流路31は上下方向に延びており、供給流路31の上端部は容器本体Rの下面に接続されて、導入部Rbと連通している。そして、供給流路31の上下方向と、水平面である仕切り体41の下面とは交差している。
【0042】
(2-1)複数の孔を形成しない領域を有する仕切り体の検討例
図5では、上下方向に延びた供給流路31の上方において、仕切り体41には孔が形成されておらず、これにより処理対象ガスの通過が阻止される通過阻止領域Iが形成されている。そして、仕切り体41の板状面のうち、通過阻止領域Iを除く部分は、処理対象ガスの通過可能な通過可能領域IIとして形成されている。つまり、仕切り体41は、予め、孔が形成されない通過阻止領域Iと複数の孔43が形成されている通過可能領域IIとを有するように形成できる。
【0043】
より具体的に説明すると、供給流路31は、導入部Rbの+X及び-X方向(幅方向)のうち、中央部よりも-X方向側に接続されている。つまり、+X及び-X方向において、導入部RbはL2の長さがあり、供給流路31は、-X方向側の端部から長さL3の位置に、かつ+X方向側の端部から長さL4の位置において導入部Rbに接続されている。L4はL3より大きい(L4>L3)。また、仕切り体41は水平面方向に沿って配置されており、導入部Rbの上面と対向している。そして、L4の長さは、導入部Rbの下面から仕切り体41の上面までの長さL5よりも長い(L4>L5)。
【0044】
このような構成において、図5では、導入部Rbに接続された供給流路31の上部において、仕切り体41が通過阻止領域Iを有している。図5においては、通過阻止領域Iは、+X及び-X方向の中央部よりも-X方向側に位置し、-X方向側の端部からL1であり、かつ+Y及び-Y方向(奥行方向)がW1である領域である。この通過阻止領域Iは、供給流路31の上方を中心とした領域であり、仕切り体41の水平面方向の長さL2及び奥行W1の領域の半分より小さい領域である。例えば、通過阻止領域Iの面積は、仕切り体41の面積の1/3~1/2である。さらに言えば、通過阻止領域Iの面積は供給流路31の上部に対応する位置であればよく、仕切り体41の面積の1/4~1/2であってもよい。
なお、通過阻止領域Iの端部は、触媒容器30の-X方向側の端部に接触して配置されている。これにより、触媒容器30の導入部Rbの-X方向側には、導入部Rbの底面と、-X方向の側面と、-Y方向の側面と、+Y方向の側面と、仕切り体41の通過阻止領域Iとにより閉塞空間が形成されている。そして、供給流路31は、図5等に示すように、触媒容器30の-X方向側に偏った位置に取り付けられており、通過阻止領域Iは、供給流路31の上方を中心に覆うように配置されている。
【0045】
供給流路31から、仕切り体41に向かって進んだ処理対象ガスは、通過阻止領域Iにより仕切り体41の通過を阻止され、通過阻止領域I以外の通過可能領域IIに誘導される。つまり、処理対象ガスは、導入部Rb内において、+X及び-X方向(幅方向)の中央部よりも-X方向側の供給流路31から上方の仕切り体41へ吹き出された後、通過阻止領域I(図5では、+X及び-X方向の中央部よりも-X方向側の領域)により仕切り体41の通過を阻止される。その後、処理対象ガスは、通過阻止領域Iを経て、通過可能領域II(+X方向側の領域)に向かって水平面方向に沿って流れる。
【0046】
(2-2)複数の孔の一部が板状部材で覆われた仕切り体の検討例
図6では、上下方向に延びた供給流路31の上方において、仕切り体41には複数の孔43の一部を塞ぐ通過阻止部材45が取り付けられている。通過阻止部材45には孔が形成されていない。よって、通過阻止部材45が取り付けられている部分によって、処理対象ガスの通過が阻止される通過阻止領域Iが形成されている。仕切り体41の板状面のうち、通過阻止領域Iを除く部分は、処理対象ガスの通過可能な通過可能領域IIとして形成されている。よって、仕切り体41に予め形成された複数の孔43の一部を、別部材の通過阻止部材45により後から塞ぎ、通過阻止領域Iを形成できる。
また、仕切り体41及び通過阻止部材45はともに板状部材であるため、通過阻止部材45を仕切り体41に沿わせることで仕切り体41に予め形成された複数の孔43を塞ぐことができる。
その他の構成は図5と同様であり、処理対象ガスの挙動も同様である。
なお、通過阻止部材45は、仕切り体41の上面に設けてもよいし、下面に設けてもよい。
【0047】
(2-3)複数の孔の一部が硬化性部材で覆われた仕切り体の検討例
図7では、上下方向に延びた供給流路31の上方において、仕切り体41には複数の孔43の一部を塞ぐように硬化性部材48が配置されており、この硬化性部材48により通過阻止領域Iが形成される。硬化性部材48は、例えば、仕切り体41に対して滴下及び塗布等された液体状態の硬化性材料が、液体状態から固体状態に硬化することで形成される。そして、仕切り体41の板状面のうち、通過阻止領域Iを除く部分は、処理対象ガスの通過可能な通過可能領域IIとなる。よって、仕切り体41に予め形成された複数の孔43の一部を、硬化性部材48により後から塞ぎ、通過阻止領域Iを形成できる。硬化性材料としては、硬化可能な材料であれば特に限定されないが、例えば硬化性樹脂等が挙げられる。
その他の構成は図5と同様であり、処理対象ガスの挙動も同様である。
なお、硬化性部材48は、仕切り体41の上面に設けてもよいし、下面に設けてもよい。
【0048】
図5図7に示すように、処理対象ガスは、供給流路31から導入部Rbに導入されて仕切り体41のうち通過阻止領域Iに到達する。この際、処理対象ガスは旋回流を生じさせる場合があるが、処理対象ガスは、通過阻止領域Iにより仕切り体41を通過できず、通過可能領域IIに向かって仕切り体41の下面に沿う水平面方向に流れる。
【0049】
また、供給流路31は、L4>L3となるように、導入部Rbの+X及び-X方向のうち、中央部よりも-X方向側に接続されている。そして、この導入部Rbの上部に通過阻止領域Iが設けられている。よって、前述の通り処理対象ガスは、通過阻止領域Iの存在により通過可能領域IIに向かって流れる。この処理対象ガスが流れる方向は、+X及び-X方向(幅方向)の長さが長いL4側、つまり、+X方向側である。さらに、L4の長さはL5よりも長い(L4>L5)。よって、導入部Rbにおいて、処理対象ガスの吹き出し方向(流れる方向)である水平面方向の空間長さ(L4)が、吹き出し方向(流れる方向)以外の空間長さの少なくとも一部(例えばL3、L5)よりも大きく構成されている。
【0050】
これらにより、処理対象ガスの吹き出し方向(流れ方向)である水平面方向の空間長さを、吹き出し方向(流れ方向)以外よりもある程度確保することができる。よって、処理対象ガスが仕切り体41及び導入部Rb等と接触するときには、その流速が低下しており、当該接触による旋回流の発生を抑制できる。これにより、旋回流の触媒収容部Ruへの導入を抑制し、触媒収容部Ruから粉粒が導入部Rbに落下することによって供給流路31が閉塞するのを抑制できる。
【0051】
(3)実験結果
旋回流は、供給流路31から導入部Rbに導入された処理対象ガスが、ある程度流速の速い状態で仕切り体41及び導入部Rbの内壁等と接触することにより生じ易い。この旋回流が導入部Rb内に導入されることで粉粒が導入部Rbに落下し、供給流路31を閉塞させる。そこで、本実施形態では、上述の通り、仕切り体41に通過阻止領域Iを形成する。通過阻止領域Iを形成することにより旋回流が導入部Rb内に導入されるのが抑制できる点について以下に実験結果を示して説明する。
【0052】
図8は、従来の脱硫器11の触媒容器60の構成を示すものである。従来の触媒容器60は、本実施形態の触媒容器30と同様に、複数の孔73を有する仕切り体71と、脱硫触媒11cを収容する触媒収容部Ruと、導入部Rbと、供給流路61と、排出流路69とを備える。よって、従来の触媒容器60は、本実施形態の触媒容器30とは異なり、通過阻止領域Iを有していない。従来の触媒容器60では、供給流路61は上下方向に延びた状態で、-X方向側において導入部Rbと接続されている。また、仕切り体71は、水平面に沿って形成されており、仕切り体71の下面と導入部Rbの上面との間の高さは一定である。
【0053】
図6の本実施形態の触媒容器30の各部の寸法の一例について説明する。
図6の例において、導入部Rbは、L1=65mm、L2=200mm、L3=40mm、L4=160mm、L5=20mm、W1=20mmである。また、仕切り体41の開口率=23%である。
図8の従来の触媒容器60の各部の寸法の一例は、通過阻止領域Iを備えていない点以外、上記図6の例と同様である。
【0054】
図9は、図8の従来の触媒容器60の正面図及び図6の本実施形態の触媒容器30の正面図それぞれにおいて、ガス流量2.65L/minで供給流路61及び31それぞれから導入部Rb及び触媒収容部Ruに処理対象ガスを導入した場合の温度分布を示している。従来の触媒容器60及び本実施形態の触媒容器30内の触媒は、所定の処理温度に加熱されており、供給流路61及び31それぞれからは低温の処理対象ガスが導入部Rb及び触媒収容部Ruに導入される。
【0055】
図9に示すように、従来の触媒容器(通過阻止領域I無し)60では、供給流路61の上方において仕切り体71から触媒収容部Ruに処理対象ガスが導入されている。一方、本実施形態の触媒容器(通過阻止領域I有り)30では、供給流路31の上方において仕切り体41に通過阻止部材45が設けられて通過阻止領域Iが形成されている。よって、供給流路31の上方の仕切り体41から触媒収容部Ruへの処理対象ガスの導入は阻止されている。通過阻止領域Iで触媒収容部Ruへの通過を阻止された処理対象ガスは、通過可能領域IIから触媒収容部Ruへ導入されている。
【0056】
図10は、-X方向視の触媒容器の側面図において、従来の触媒容器60(通過阻止領域I無し)及び本実施形態の触媒容器(通過阻止領域I有り)30それぞれに処理対象ガスを導入した場合の速度ベクトルの違いを示している。処理対象ガスの流量は、2.65L/minである。なお、図10では、図4に示すように導入部Rbの下面が-Yから+Y方向に向かって高さが高くなるように傾斜している触媒容器30を用いている。
【0057】
従来の触媒容器60において、供給流路61から処理対象ガスが導入部Rbに導入されると、流速の速い領域Aの部分が仕切り体71に向かって勢いよく衝突し、領域B及びCにおいて旋回流が生じている。そして、従来の触媒容器60では、導入部Rbの領域B及びCにおいて生じた旋回流が、触媒収容部Ru内の領域Dに一部入り込んでおり、旋回流の挙動が仕切り体71の上方において矢印で示されている。
【0058】
一方、本実施形態の触媒容器30においても、供給流路31から処理対象ガスが導入部Rbに導入されると、流速の速い領域Aの部分が仕切り体41に向かって勢いよく衝突し、領域B及びCにおいて旋回流が生じている。本実施形態の触媒容器30では、導入部Rbの領域B及びCにおいて生じた旋回流は、通過阻止領域Iによって、触媒収容部Ru内の領域Dへの導入が阻止されている。このことは、触媒収容部Ru内の領域Dにおいて、矢印で示される旋回流の挙動が示されていないことから明らかである。
【0059】
図11は、+Y方向視において、従来の触媒容器(通過阻止領域I無し)60及び本実施形態の触媒容器(通過阻止領域I有り)30それぞれに処理対象ガスを導入した場合の流跡線の違いを示している。処理対象ガスの流量は、2.65L/minである。
従来の触媒容器60において、供給流路61から処理対象ガスが導入部Rbに導入されているが、流速の速い領域Aの部分が仕切り体71に向かって勢いよく衝突し、領域Eにおいて旋回流が生じている。そして、従来の触媒容器60では、導入部Rbの領域Eにおいて生じた旋回流が、触媒収容部Ru内の-X方向側の領域Gに一部入り込んでおり、領域Gにおいて多数の流跡線が示されている。なお、領域Fは、導入部Rbの空間が領域Eよりも+X及び-X方向において広い。よって、領域Fでは旋回流は生じていない。
【0060】
一方、本実施形態の触媒容器30においても、供給流路31から処理対象ガスが導入部Rbに導入されると、流速の速い領域Aの部分が仕切り体41に向かって勢いよく衝突し、領域Eにおいて旋回流が生じている。本実施形態の触媒容器30では、領域Eにおいて生じた旋回流は、通過阻止領域Iによって、触媒収容部Ru内の-X方向側の領域Gへの導入が阻止されている。このことは、触媒収容部Ru内の領域Gにおいて、流跡線が少ないことから明らかである。導入部Rb内の+X方向側では、導入部Rbから触媒収容部Ruの領域Hに処理対象ガスが導入されている。領域Eよりも空間が広い領域Fでは旋回流はほとんど生じていない。
【0061】
以上の実験結果から、仕切り体41に通過阻止領域Iを設けることで、旋回流が触媒収容部Ruに導入されるのが抑制される。これにより、旋回流による触媒収容部Ruから導入部Rbへの粉粒の落下が抑制され、また、粉粒による供給流路31の閉塞が抑制されることが分かった。
【0062】
〔他の実施形態〕
なお上述の実施形態(他の実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【0063】
(1)上記実施形態では、脱硫器11、改質器13、CO変成器15及びCO選択酸化反応器17の各処理部の触媒容器30が同様の構成であると説明した。しかし、脱硫器11、改質器13、CO変成器15及びCO選択酸化反応器17の触媒容器30の少なくとも1つが上記実施形態で説明した構成を採用していればよい。
【0064】
(2)上記実施形態では、触媒容器30は直方体状であるが、供給流路31から導入部Rbに吹き出された処理対象ガスによる旋回流が直接に触媒収容部Ruに導入されないようにできるのであれば、触媒容器30の形状はこれに限定されない。例えば、触媒容器30は、正方形状、円筒形状及び楕円形状等であってもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、供給流路31は、導入部Rbの下面のうち周縁に近い位置に接続されている。しかし、供給流路31から導入部Rbに吹き出された処理対象ガスによる旋回流が直接に触媒収容部Ruに導入されないようにできればよく、供給流路31の接続位置はこれに限定されない。例えば、供給流路31は、導入部Rbの下面の中央部等、導入部Rbの下面のうちいずれかの位置に接続されていればよい。この場合、通過阻止領域Iは、供給流路31の接続位置の上方に対応するように位置付けられる。
【0066】
また、上記実施形態では、排出流路39は、触媒容器30の上面に接続されている。しかし、触媒容器30で所定の処理が施されたガスを排出できればよく、排出流路39の接続位置はこれに限定されない。例えば、排出流路39は、触媒容器30の上部の側面等に接続されていてもよい。
【0067】
(3)上記実施形態では、燃料電池として固体高分子形燃料電池を例に挙げた。しかし、燃料電池20は、ジルコニア系及びセレン系等のセラミックス膜をアノードとカソードで挟持したセルを積層して構成される固体酸化物形燃料電池であってもよい。
【0068】
(4)上記実施形態では、脱硫器11を設けている。しかし、原燃料として硫黄を含まない、例えばプロパン等の炭化水素系ガスやアルコールなどが用いられる場合には、ガス処理装置10から脱硫器11を省略してもよい。よって、上記実施形態において、ガス処理装置10の処理部を、改質器13、CO変成器15及びCO選択酸化反応器17から構成することもできる。
【0069】
さらに、水蒸気改質後の改質ガス中に含まれる一酸化炭素濃度が低い場合には、ガス処理装置10からCO変成器15を省略してもよい。よって、上記実施形態において、ガス処理装置10の処理部を、改質器13及びCO選択酸化反応器17から構成することもできる。
【0070】
(5)上記実施形態のガス処理装置10には、CO変成器15とCO選択酸化反応器17との間に水蒸気凝縮分離器(図示せず)が設けられていてもよい。水蒸気凝縮分離器は、改質器13で水蒸気改質された改質ガスに含まれる水蒸気を凝縮分離して除去する。水蒸気を除去することで、各処理部を接続するラインの閉塞を抑制できる。
【0071】
また、水蒸気凝縮分離器を経て水蒸気が除去された改質ガスの一部を原燃料ガスに混合してもよい。また、改質器13を経て改質された改質ガスの一部を原燃料ガスに混合してもよい。また、CO変成器15を経たガスの一部を原燃料ガスに混合してもよい。さらには、CO選択酸化反応器17を経たガスの一部を原燃料ガスに混合してもよい。
【0072】
(6)上記実施形態のガス処理装置10で用いる原燃料ガスが気体であり、圧縮が必要な場合は、脱硫器11の上流側に圧縮機が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0073】
11c~17c :触媒
30 :触媒容器
31 :供給流路
41 :仕切り体
43 :孔
45 :通過阻止部材
48 :硬化性部材
I :通過阻止領域
II :通過可能領域
R :容器本体
Rb :導入部
Ru :触媒収容部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11